しかしながら、特許文献1に記載されているハンドシャワにおいては、以下に示す課題がある。(1)通水路の方向と同じ方向に開閉弁を移動させるよう押しボタンが把手部分と同軸上の上部に配置されており、使用者は押しボタンの操作において、通水路を流れる湯水の圧力による抵抗をまともに受けるおそれがある。また、(2)回転する押しボタンに関連する構成要素である前記軸を流量調整が可能な構造とするため、前記軸を、押しボタン側に配置される上側軸および開閉弁側に配置される下側軸の2部材で構成し、前記下側軸の上端にねじ部を設け、このねじ部に螺着可能なねじ部を前記上側軸の下端に設けたり、更に、(3)下側軸に縦長のスリットを形成し、開閉弁の近傍に設けたガイド部に突設した突起を前記スリットに遊嵌して押しボタンを回転させると上側軸のみが回転し、下側軸は前記スリットを備える回転規制部よって回転せず、前記ねじ部同士の螺着により下側軸が上下に進退し、下側軸の先端と主弁との間の遊びをなす距離が変更され軸全体としての前記主弁を押す距離を調整するといった複雑な、流量調整のための内部構造を採用したり、(4)押しボタンに関連する構成要素である前記開閉弁を、弁体と通水用開口を備えている弁体カバーとで構成し、弁体と弁体カバーとを係止して結合することにより前記開閉弁の外部形状を形成するとともに、前記開閉弁を、通水口を中央に有する円錐弁座、通水路の方向と同じ方向に移動して前記弁座を開閉する前記主弁、前記主弁が前記弁座に着座するように前記主弁を通水路の方向と同じ方向に不勢するばねなどの弾性体、前記弁体カバーの内側に設けたOリングなどのパッキン、前記主弁との間に前記パッキンを介在させるため弁体カバー内に形成されたスライドガイドといった多数の部材で構成しており、部品点数が多く組立が極めて煩雑である。
本発明は上述の事柄を考慮に入れてなされたものであり、押しボタンの操作において、通水路を流れる湯水の圧力による抵抗を軽減しながらシャワヘッドから吐水する流量を確保することができるとともに、少ない部品点数で、かつ、簡易な構成で吐水状態と止水状態の切替操作ならび流量調整操作ができるハンドシャワを提供することを目的としている。
上記目的を達成するため、本願の請求項1に係る発明は、シャワヘッドと、シャワヘッドから下方に連設され内側に通水路を有する把手部分とを有し、前記通水路を開閉する開閉用弁体と、前記開閉を行うため前記通水路に対し交差する方向に前記開閉用弁体を移動させる一対の押しボタンと、前記一対の押しボタンのうち一方の押しボタンの回動により前記開閉用弁体に設けた通水口の開口度を調整する流量調整部材とを備えたハンドシャワを提供する。
また、本願の請求項2に係る発明は、前記流量調整部材は、前記一方の押しボタンの回動に伴い直線運動して前記開口度を調整するものである請求項1に記載のハンドシャワを提供する。
また、本願の請求項3に係る発明は、前記流量調整部材は、前記一方の押しボタンの回動に伴い回転運動して前記開口度を調整するものである請求項1に記載のハンドシャワを提供する。
前記従来技術では、押しボタンを押すことにより弁座の中央に形成されている通水口が開いてシャワー吐水するが、従来技術において前述した軸の方向が通水路の方向と同じ方向に向いており、この軸を介して通水路の方向と同じ方向に開閉弁を移動させるよう押しボタンを押す必要があることから、使用者は押しボタンの操作において、通水路を流れる湯水の圧力による抵抗をまともに受けるおそれがある。これに対し、本願の請求項1に係る発明では、開閉用弁体を、通水路に対し交差する方向に移動させるよう一対の押しボタンを操作できるので、使用者は、通水路の方向と同じ方向に開閉弁を移動させる従来技術に比べて、一対の押しボタン操作において、通水路を流れる湯水の圧力による抵抗を軽減することができるとともに、シャワヘッドから吐水する流量を確保することができ、使い勝手を向上させることができる。
また、前記従来技術では、流量調整のための内部構造が上述したように複雑である。これに対し、本願の請求項1に係る発明では、一対の押しボタンのうち一方の押しボタンの回動により開閉用弁体に設けた通水口の開口度を調整する流量調整部材を備えている。すなわち、本願の請求項1に係る発明では、前記従来技術のように主弁と軸とスリット絡みの複雑な構成に比べて、一方の押しボタンと、一方の押しボタンの回動に連動して動作する流量調整部材と、一方の押しボタンの回動動作を流量調整部材に伝達する手段といった簡易な構成部材を採用することによって、シャワヘッドから吐水する流量を使用者の好みに応じた流量に設定することができる。
また、前記従来技術では、開閉弁の構成部品点数が多く組立が極めて煩雑である。これに対し、本願の請求項1に係る発明では、少ない部品点数で、かつ、簡易な構成によって吐水状態と止水状態の切替操作を確実にできるようにしており、コスト的にも有利である。
本願の請求項2に係る発明では、一方の押しボタンの回動動作に伴って流量調整部材を直線運動させる機構を採用している。すなわち、流量調整部材を通水路に対し交差する方向に直線運動させることによって、開閉用弁体に設けた前記通水口の開口度を使用者の好みに応じて適宜調整できる。
本願の請求項3に係る発明では、一方の押しボタンの回動動作に伴って流量調整部材を回転運動させる機構を採用している。すなわち、流量調整部材を通水路に対し交差する方向(開閉用弁体の移動方向)を軸心として回転運動させることによって、開閉用弁体に設けた前記通水口の開口度を使用者の好みに応じて適宜調整できる。
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、それによって本発明は限定されるものではない。図1〜図5は、一方の押しボタンの回動に伴い直線運動して開閉用弁体に設けた通水口の開口度を調整する流量調整部材を用いた本発明の一実施形態を示す。
図1〜図5において、ハンドシャワDは、シャワヘッド1と、シャワヘッド1から下方に連設され内側に通水路iを有する把手部分(グリップ)2とを有し、通水路iを開閉する開閉用弁体3と、前記開閉を行うため通水路iに対し交差する方向(この実施形態では通水路iに対し直交する方向を採用している)に開閉用弁体3を移動させる、前ボタン〔図1に示すようにハンドシャワDの正面側(シャワ板側)に位置するボタン〕および後ボタン〔ハンドシャワDの背面側(シャワ板のある側とは反対側)に位置するボタン〕)よりなる一対の押しボタン4および5と、一対の押しボタン4,5のうち一方の押しボタン(この実施形態では前ボタン)4の回動により開閉用弁体3に設けた通水口Hの開口度を調整する流量調整部材6とを主として備えている。ハンドシャワDの正面側に位置する前ボタン4(図1参照)の外形は、平面視円形で下に凸状の湾曲面を有する天板4aとスカート板4bとよりなるキャップ体に形成されている。ハンドシャワDの背面側に位置する後ボタン5(図2参照)の外形は、平面視楕円形で上に凸状の湾曲面を有する天板5aとスカート板5bとよりなるキャップ体に形成されている。把手部分2は、図1に示すように、上流側部材2aと、下流側部材2bと、両部材2a,2b間に位置して把手部分2の中間を構成する中間部材(筐体)13よりなる。この筐体13は、両部材2a,2b間において接続されており、筐体13には、開閉用弁体3と、前後一対の前ボタン4および後ボタンと、流量調整部材6の三部材が組付けられている。また、把手部分2の下端部(上流側部材2aの下端部)には湯水流入口Kが形成されており、この実施形態では湯水流入口Kに継手(図示せず)を介してシャワホース(図示せず)が接続されている。通水路iは、筐体13内に形成されるシャワホース側からの一次側流路11およびシャワヘッド1の吐水口側に通ずる二次側流路12を含むものである。開閉用弁体3は、この実施形態では、中心軸S(図5参照)が通水路iに直交するよう筐体13に取付られており、一次側流路11と二次側流路12を連通させる吐水状態と前記両流路11,12を遮断させる止水状態とに切替えるよう縦長に形成された切替軸部材よりなる。すなわち、後ボタン5を強く押すと吐水状態となり、反対に前ボタン4を強くを押すと止水状態に切替わる。なお、図2において、90、91および92は、それぞれオーリング、93はバネである。流量調整部材6は、前ボタン4の前記中心軸Sまわりの回動に伴い前後方向(両矢印Gで示す中心軸Sの方向)(図2,3,5参照)に直線運動して開閉用弁体3に設けた通水口Hの前記開口度を調整するものである。シャワヘッド1は前面(正面)にシャワ口部7を有している。シャワ口部7は、シャワヘッド1の吐水口を覆う正面視円形でディスク状のシャワ板よりなる。8は、所定の散水状態が可能な複数の散水孔である。
前記前ボタン4および後ボタン5が設けられる位置として、この実施形態では、把手部分2の中間に設けているが、把手部分2の端部でもよい。把手部分2の端部とは、(1)図1において二点鎖線で示すように把手部分2とシャワヘッド1との間、(2)把手部分2と前記シャワホースとの間などである。把手部分2とシャワホースとの間に設ける場合、上述したような筐体13を前記継手に代えて用いることができる。すなわち、把手部分2の下端部の湯水流入口Kに形成された接続部Jに筐体13の第1接続部16(後述する)が、また、シャワホースの下流端に形成された接続部(図示せず)に筐体13の第2接続部18(後述する)が接続される。なお、前ボタン4および後ボタン5をハンドシャワDの前後(正面・背面)に設ける例を示したが、これらボタン4,5をハンドシャワDの左右に設けてもよい。また、開閉用弁体3と、前ボタン4および後ボタン5と、流量調整部材6の三部材が組付けられた筐体13を接続するものを示したが、筐体13を用いることなく、開閉用弁体3と、前ボタン4および後ボタン5と、流量調整部材6の三部材を、把手部分2の任意の位置に直接組付けてもよく、この場合、把手部分(グリップ)2を図1,2に示すような通水路iを形成する筒状の一重構造に構成してもよく、また、一重構造ではなく、把手部分(グリップ)2を外筒と内筒より構成される二重構造に構成してもよく、二重構造にした場合、外筒をメッキし、内筒内に通水路iを形成するようにしてもよい。
図2において、筐体13は、シャワホース側からの一次側流路11およびシャワヘッド1の吐水口側に通ずる二次側流路12を形成する縦穴Eとこの縦穴Eに交差(この実施形態では直交)する横穴Lを有し、この横穴Lに、通水路i(一次側流路11、二次側流路12)に対し交差する方向(この実施形態では直交する方向)に摺動可能に挿通されてG方向に前後移動する開閉用弁体3を有するとともに、縦穴Eの下流端に把手部分2の前記下流側部材2bの接続部15に接続可能な第1接続部16を有する一方、縦穴Eの上流端に把手部分2の前記上流側部材2aの接続部17に接続可能な第2接続部18を有する。すなわち、縦穴Eと横穴Lを直交させて開閉用弁体3の移動方向(G方向)、および前ボタン4、後ボタン5の押圧方向(G方向)が湯水の流れiに対して垂直に配置されるよう構成されている。
開閉用弁体3の開状態(ハンドシャワDの吐水状態)では一次側流路11と二次側流路12が開閉用弁体3に設けた前記通水口Hを介して連通し、閉状態(ハンドシャワDの止水状態)では一次側流路11と二次側流路12が開閉用弁体部分(筐体部分)3a(図2,4参照)によって遮断されるよう前ボタン4、後ボタン5が操作される。すなわち、筐体13には、一次側流路11の最下流端に開口20が形成されている。この開口20は第2接続部18の下流側に連設されている。また、この実施形態では、止水状態において開閉用弁体3の開閉用弁体部分(筐体部分)3aによって閉塞される開口21が形成されている筒状体22を設けている。この筒状体22は開口20の下流側に突出状態で嵌込まれている。なお、開閉用弁体3に設けた通水口Hの開口度とは、例えば、通水口Hと開口20(あるいは開口21)が連通している場合に形成される通水口Hの開口面積を意味し、一次側流路11と二次側流路12が連通ている状態で、一方の押しボタン4の回動により流量調整部材6のG方向における移動位置により前記通水口Hの開口面積を変化させることができるので、ハンドシャワDの吐水量の微調整ができる。
開閉用弁体3は、その中心軸Sが通水路iに直交するよう把手部分2の一部を構成する筐体13に取付られる。開閉用弁体3は、図5に示すように、上部分23と下部分24と両部分23,24の間に位置する中間部分25とから構成されている。上部分23の先端部26は略円柱状で、例えば平面視円形状とせずに一部円弧をカットしており(カットした部分26a)、平面視略D字形状に形成されている一方、先端部26の外周面に嵌合する略リング状の嵌合片27が、他方の押しボタン(後ボタン)5の天板5aの内側中央に天板5aから下方に突出した状態で形成されている。また、開閉用弁体3の上部分23は、先端部26から下方に連設され中心軸Sの方向に沿う形で上下(前後)に配置された一対の外向きフランジ30,31を有する。また、筐体13は、前記横穴Lを形成する前後一対のリング部28,29をハンドシャワDの背面側と前面側に対向する形で備えている。リング部28の前面側に形成された外向きフランジ28aは開閉用弁体3の中心軸Sまわりに形成されている。そして、外向きフランジ30,31がリング体28に嵌込まれている。また、開閉用弁体3の中間部分25は、縦長の直方体形状をなす前記開閉用弁体部分(筐体部分)3aと、筐体部分3aの上側に形成され所定の開口大きさを有して通水路iと直交する方向に貫通している前記通水口Hと、前記筐体部分3aから下方に連設された、外向きフランジ30,31と同じ大きさの外向きフランジ32とを有している。前記通水口Hの上流側および下流側の開口面は前記先端部26のカットした部分26aに沿っている(カットした部分26aに平行である)。さらに、縦長の直方体形状をなす前記開閉用弁体部分(筐体部分)3aには、後述する流量調整部材6の調整板61を前後のG方向にガイドする縦孔Fが通水口Hの下方側から通水口Hに連通するよう中心軸Sに沿って形成されている。前記縦孔Fは所定長さLを有する。前記縦孔Fの平面視形状は調整板61が摺動可能な直線状の細溝形状で通水路iに直交している。一方、開閉用弁体3の下部分24は、流量調整部材6の下部を構成する柄62(後述する)とネジ結合する軸受け部材39が内側に嵌込まれた軸受け部材嵌込部33と、この嵌込部33下方に形成されたリング部34とを有している。前記軸受け部材39は、通水口Hの開口度を調整するため軸受け部材嵌込部33に対し一方の押しボタン(前ボタン)4と一体的に回動する。嵌込部33は、中間部分25の前記開閉用弁体部分(筐体部分)3aの外向きフランジ32から下方に連設されている。そして、筐体13の前記リング部29内に開閉用弁体3の外向きフランジ32および軸受け部材嵌込部33が嵌込まれている。さらに、軸受け部材39の下部中央から下方に連設される軸部分39aが嵌込まれるリング状の嵌合片36が、一方の押しボタン(前ボタン)4の天板4aの内側中央に天板4aから上方に突出した状態で形成されている。
一方、リング部29の背面側に形成された外向きフランジ部材29aに連設されリング部29の外周面とで環状の隙間Nを形成するよう形成された肉厚の外向きフランジ部材29bが開閉用弁体3の中心軸Sまわりに形成されている。すなわち、前記フランジ部材29bとリング部29間に形成された前記環状の隙間Nに一方のキャップ状の押しボタン4のスカート部分4bが中心軸Sまわりに遊嵌可能に配置されており、また、軸受け部材嵌込部33の軸部分35が嵌合片36が天板4aの内側に形成された嵌合片36に嵌込まれることから、一方の押しボタン4が回動可能となる。
流量調整部材6は、図3に示すように、例えば鋤形状をなしており、幅の広い平面視長方形の調整板61を上部に有し、この調整板61の下辺部mの中央から下方に連設された細長い真直な柄62を下部に有する。調整板61の長さQは図5(C)に示すように、一次側流路11と二次側流路12が開閉用弁体部分(筐体部分)3a(図2,4参照)によって遮断されている止水状態では、通水口Hとは隙間Vを有しながら通水口Hの下面35から所定長さだけ突出した長さに設定されている。そして、柄62と軸受け部材39は二条ネジ結合するよう構成されている。なお、柄62と軸受け部材39は一条ネジ結合するよう構成されてもよい。そして、吐水状態になるよう一対の押しボタン4,5を操作する。すなわち、図2(B)に示す止水状態から、後ボタン(他方の押しボタン)5を背面側から正面側に押すと吐水状態になる。後ボタン5を押しながら、開閉用弁体3を通水路iに対し直交するG方向に移動させ吐水状態のまま後ボタン5の押圧操作を停止する。この状態で、使用者は、手前正面に位置している前ボタン(一方の押しボタン)4を例えばハンドシャワDを持っていない左手で回動操作すると、回動操作に連動して軸受け部材39が中心軸Sまわりに回動し、柄62と軸受け部材39の二条ネジ結合により柄62を介して調整板61は所定長さLの縦孔F内をG方向に上下に摺動し、調整板61は通水口Hの下面35の上方に所定長さだけ移動し、一方の押しボタン4の回動操作を停止する。すなわち、図5(C)は止水状態であるが、吐水状態において、開閉用弁体3に設けた通水口Hには仮想線で示す隙間Vができて、調整板61は移動位置において停止する。この隙間Vを介して一次側流路11と二次側流路12は連通し、これにより、隙間Vの開口面積に応じてハンドシャワDの吐水量の微調整ができる。
なお、軸受け部材39の軸部分39aが嵌合片36に強固に嵌合し、軸受け部材39が軸受け部材嵌込部33内を摺動しながら中心軸Sまわりを回動するとともに、柄62と軸受け部材39はネジ結合しているので、一方の押しボタン4の回動操作を途中で止めても調整板61はG方向に上下に移動することなく停止してその上下位置が維持されうる。
図6〜図12は、一方の押しボタン(前ボタン)の回動に伴い回転運動して開閉用弁体に設けた通水口の開口度を調整する流量調整部材を用いた本発明の他の実施形態を示す。なお、図6〜図12において、図1〜図5に示した符号と同一のものは、同一または相当物である。図6は、図2に対応するもので、把手部分2の中間を構成する中間部材(筐体)13を示している。上記実施形態と同様にこの実施形態でも筐体13は、上流側部材2aおよび下流側部材2b間において接続されており、筐体13には、開閉用弁体70と前ボタン4および後ボタン5と流量調整部材50の三部材が組付けられている。
この実施形態で用いる筐体13には、開閉用弁体70と前ボタン4および後ボタン5と流量調整部材50の三部材が組付けられている。そして、この実施形態で用いる筐体13の構成は上記実施形態のものと同一構成である。そして、この実施形態では、主として、開閉用弁体70の構成と流量調整部材50の二部材の構成が上記実施形態と異なっている。
例えば図8に示すように、流量調整部材50は、その中心軸が開閉用弁体70の中心軸Sに一致するよう上下軸51,52がそれぞれ開閉用弁体70および前ボタン4に取付られ、前ボタン4の中心軸Sまわりの回動に伴い中心軸Sまわりに回転運動して開閉用弁体70に設けた通水口(後述する)の開口度を調整する。流量調整部材50は、上軸51と下軸52と両軸51,52の間に位置する中間部53とから構成されている。下軸52は略円柱状で、例えば平面視円形状とせずに一部円弧をカットしており(カットした部分52a)、平面視略D字形状に形成されている一方、図6(B)に示すように下軸52の外周面に嵌合する凹部54が、前ボタン4の天板4aの内側中央に形成されている。
一方、開閉用弁体70は、その中心軸Sが通水路iに直交するよう把手部分2の一部を構成する筐体13に取付られる。開閉用弁体70は、図12(A)に示すように、上部分81と下部分82と両部分81,82の間に位置する中間部分83とから構成されている。開閉用弁体70の上部分81は、開閉用弁体3の上部分23(図5参照)と略同じ形状をしており、上部分81の先端部81aから下方に連設され中心軸Sの方向に沿う形で上下に配置された一対の外向きフランジ30,31を有する。そして、この上部分81の下面中央に形成された軸孔72〔図6(B)参照〕に流量調整部材50の上軸51が遊嵌可能に軸支されており、前ボタン4の中心軸Sまわりの回動に伴い前ボタン4と一体に流量調整部材50が中心軸Sまわりに回転運動する。また、開閉用弁体70の上部分81の先端部81aは略円柱状で、例えば平面視円形状とせずに一部円弧をカットしており(カットした部分81b)、平面視略D字形状に形成されている一方、先端部81aの外周面に嵌合する略リング状の嵌合片84が、他方の押しボタン(後ボタン)5の天板5aの内側中央に天板5aから下方に突出した状態で形成されている。また、筐体13は、図6(B)に示すように前記横穴Lを形成する前後一対のリング部28および29を、それぞれ、ハンドシャワDの背面側および前面側に対向する形で備えている。リング部28の前面側に形成された外向きフランジ28aは開閉用弁体3の中心軸Sまわりに形成されている。そして、外向きフランジ30,31がリング体28に嵌込まれている。
また、開閉用弁体70の中間部分83は、縦長の略円筒形状で、外面の一部がカットされている形状をなす。すなわち、例えば平面視円形状とせずに円弧をカットしている。83aはカットして形成された平坦面部である。すなわち、中間部分83は、平面視略D字形状に形成されている平坦面部83aを備えた縦長の切替軸部分(筐体部分)よりなる。そして、通水路iに対し直交する方向に、切替軸部分(筐体部分)83に形成された対向する一対の一次側および二次側側面部が位置し、これら側面部にそれぞれ通水口が形成されている。すなわち、カットした平坦面部(一次側の側面部)83aには、一次側流路11に連通する流入口部(一次側の通水口)40が穿設され、また、平坦部分83aに対向する切替軸部分(筐体部分)83の円弧部(二次側の側面部)83bには、正面視縦長の切欠きUが設けられており、この切欠きUによって二次側流路12に連通する流出口部(二次側の通水口)41が形成される。そして、切替軸部分(筐体部分)83内は中空空間が形成されているので、流入口部40と流出口部41は連通している。流入口部40は正面視上下に偏平な楕円形をしている。
一方、流量調整部材50の中間部53は、略円柱体に形成されており、開閉用弁体70の中間部分83の円形内周面を回動自在に摺動する外周面Jを有する。さらに、中間部53は、円柱部53aを下側に、円柱部53aの上面Rに形成された円弧状の外周壁53cを上側に有している。そして、この外周壁53cが、流入口部40の一部を閉塞したり、流入口部40を閉塞しない状態になるよう開閉用弁体70の切替軸部分(筐体部分)83内の前記中空空間に位置して流出口部41からの湯水の流量を調整する調整面部を構成する。前記外周壁53cは、図8(E)、図10、図11に示すように薄肉で、所定の高さT〔図8(B)参照〕を有しており、円柱部53aの上面Rの外周位置から所定の円周角度αだけ上方に、高さTを有して連設されている。さらに、中間部53は、外周壁53cの上方に連設され上面中央に前記上軸51を有する薄肉の円板部分53dを備えている。そして、この流量調整部材50が開閉用弁体70の中間部分83の前記中空空間に設置される。すなわち、流量調整部材50の円柱部53aの上面Rより上方の空間Xと流出口部41が連通する構成となっている。外周壁53cは、流入口部40に流入する湯水の流量を調整するためのものであり、一次側流路11を閉塞しない程度の流入面積(開口面積)を得るようその高さTおよび横の長さ(円周角度α)が偏平な楕円形の流入口部40の高さtおよび横の長さfに対し適宜設定される。そして、開閉用弁体70に設けた通水口は、流入口部40と中間部分83を貫通する前記中空空間と流出口部41より構成され、前ボタン4の回動に伴い流量調整部材50が回転運動して外周壁53cと流入口部40の整合面積の大きさにより前記通水口の開口度が調整される。
而して、図6(B)に示すように、止水状態では、一次側流路11と二次側流路12が開閉用弁体70の中間部分83の平坦面部(一次側の側面部)83aによって遮断されている。すなわち、一次側流路11の最下流端に形成された開口20、および、開口20の下流側に突出状態で嵌込まれている筒状体22の開口21を平坦面部(一次側の側面部)83aが遮断している。そして、吐水状態になるよう一対の押しボタン4,5を操作する。すなわち、図6(B)に示す止水状態から、後ボタン(他方の押しボタン)5をハンドシャワDの背面側からハンドシャワDの正面側に押すと一次側流路11と開口20,21が連通して吐水状態になる。すなわち、後ボタン5を押しながら、開閉用弁体70を通水路iに対し直交するG方向に移動させ吐水状態のまま後ボタン5の押圧操作を停止する。この状態で、使用者は、手前正面に位置している前ボタン(一方の押しボタン)4を例えばハンドシャワDを持っていない左手で回動操作すると、その回動操作に連動して流量調整部材50が中心軸Sまわりに回動し、図11に示すように、流入口部40の一部が流量調整部材50の外周壁53cによって閉塞されてハンドシャワDの吐水量(流量)を少なくできたり、また、図10に示すように、流入口部40の全体が流量調整部材50の外周壁53cによって閉塞されない場合はハンドシャワDの吐水量(流量)を大きくできる。なお、流量調整部材50の回動範囲は、流出口部41が閉塞されずに常時開放されるように設定される。