JP2017083247A - 血液試料中に含まれる目的細胞の検出方法 - Google Patents
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血液試料を溶血する工程と、
溶血した血液試料中に含まれる目的細胞を、当該目的細胞内で発現するタンパク質を利用して検出する工程とを含む、
血液試料中に含まれる目的細胞を検出する方法であって、
血液試料を溶血する工程を、生理的浸透圧よりも低い浸透圧条件で行なう、前記方法である。
(1)目的細胞を含む血液試料から、比重分離を用いて当該目的細胞を含む画分を分離回収する工程
(2)(1)で得られた画分を、生理的浸透圧よりも低い浸透圧条件にさらすことで溶血後、遠心分離により目的細胞を含むペレットを回収する工程
(3)(2)で得られたペレットの懸濁液から、目的細胞内で発現するタンパク質を利用して当該目的細胞を検出する工程
また本発明の第三の態様は、以下の(1)から(4)の工程を含む、血液試料中に含まれる目的細胞を検出する方法である。
(1)目的細胞を含む血液試料から、比重分離を用いて当該目的細胞を含む画分を分離回収する工程
(2)(1)で得られた画分を、生理的浸透圧よりも低い浸透圧条件にさらすことで溶血後、遠心分離により目的細胞を含むペレットを回収する工程
(3)(2)で得られたペレットを、親水性高分子を結合したタンパク質および糖を含んだ溶液に懸濁させた後、遠心分離により目的細胞を含むペレットを回収する工程
(4)(3)で得られたペレットの懸濁液から、目的細胞内で発現するタンパク質を利用して当該目的細胞を検出する工程
また本発明の第四の態様は、目的細胞内で発現するタンパク質を利用して当該目的細胞を検出する工程を、前記目的細胞内で発現するタンパク質に対する標識化抗体を用いて行なう、前記第一から第三の態様のいずれかに記載の方法である。
(1)がんの疑いのある患者から血液を採取する。なお血液を採取する際、クエン酸、ヘパリン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などの抗凝固剤を添加してもよい。また必要に応じ、採取した血液を生理食塩水などで希釈してもよい。
(2)採取した血液(または希釈した血液)を密度勾配遠心を用いて、CTCを含む画分分離する。密度勾配遠心は細胞をその比重に基づき分離する方法であり、密度勾配を形成した媒体(密度勾配溶液)上に採取した血液(または希釈した血液)を重層した後、遠心分離を行ない、目的とするCTCを含む層(上層)を回収することで、不要な細胞を除去したCTCを含む画分を得る。なお密度勾配遠心を行なう前に、採取した血液(または希釈した血液)に、不要な細胞である赤血球、白血球と結合可能な結合剤(例えば、RosetteSep(StemCell Technologies社製))を添加するとよい。前記結合剤は、赤血球、白血球、および/またはこれら細胞の表面抗原と結合することで細胞凝集体を形成し、これら細胞の密度を大きくすることができるため、密度勾配遠心法によるCTCの分離を容易にする。
(3)(2)で得られたCTCを含む画分に純水を添加して撹拌し、浸透圧を生理的浸透圧(純水添加前のCTCを含む画分が有する浸透圧)よりも低くする(低張にする)ことで、当該画分に混入した赤血球を溶血させる。本操作により、分離回収したCTCの観察が良好になる。溶血処理を行なう撹拌時間は10分以内がよく、2分以内であればより好ましく、1分以内であればさらに好ましい。また、浸透圧の高い溶液を添加することで溶血処理を停止させることもよい。前記操作は、溶液の添加により溶液の浸透圧を生理的浸透圧と同じ(等張)条件に戻すことができるため好ましい。
(4)(3)で得られた溶血処理後のCTCを含む溶液を遠心分離することで血液成分を除去し、当該CTCをペレット状にした後、適切な溶液を用いてCTCを懸濁させる。なおCTCを懸濁させる溶液に、親水性高分子を結合したタンパク質(例えば、ポリエチレングリコールを結合したBSAやポリエチレングリコールを結合したカゼイン)を含ませてもよい。親水性高分子を結合したタンパク質の濃度は、懸濁液での血液由来タンパク質の終濃度として、0.01から25%(w/v)の間であればよく、0.02から5%(w/v)の間であればより好ましく、0.05から2%(w/v)の間であればさらに好ましい。
(5)(4)で調製したCTCを含む懸濁液を再度遠心分離し、CTCを含むペレットを回収する。なお必要に応じ、前記回収したペレットを親水性高分子を結合したタンパク質を含む溶液に再度懸濁させ、遠心分離する工程を追加してもよい。
(6)(5)で得られたCTCを含む細胞を保持部へ保持させた後、(6)で得られたCTCを、例えばWO2011/149032号に記載の装置を用いて、保持部へ保持させた後、当該CTCに対し保存および膜透過処理を施す。保存処理剤としては、ホルムアルデヒド、ホルムアルデヒドドナー化合物(加水分解を受けることでホルムアルデヒドを放出可能な化合物)、グルタルアルデヒドなどのアルデヒド類や、メタノール、エタノールなどのアルコール類や、重金属を含む溶液が例示できる。細胞膜透過処理剤としては、メタノール、エタノールなどのアルコール類や、サポニンなどの界面活性剤が例示できる。
(7)抗体による非特異的な反応を防ぐため、保存および膜透過処理後のCTCを保持した保持部に対しタンパク質によるブロッキング処理を施した後、蛍光基が修飾されたCTCが発現するタンパク質に対する抗体や、細胞核を蛍光染色させる試薬を添加し、洗浄後、蛍光顕微鏡などで細胞の蛍光像を観察することで、CTCを検出する。CTCが発現するタンパク質に対する抗体としては、抗サイトケラチン抗体や抗ビメンチン抗体などを用いることができる。またノイズである白血球を検出することを目的に、抗CD45抗体といった白血球を特異的に認識する抗体を用いてもよい。細胞核を蛍光染色させる試薬としては、4’,6−diamidino−2−phenylindole(DAPI)やHoechst 33342(商品名)などを用いることができる。
(1)一方の末端がメトキシ基であり、もう一方の末端がN−ヒドロオキシスクシンイミドエステル基である、分子量5000のポリエチレングリコール(mPEG−NHS)と、ウシ血清アルブミン(BSA)(300mg、4.5μmol)とを、炭酸水素ナトリウム緩衝液(0.1M、15mL)に溶解させ、当該溶液を室温で3時間撹拌することでポリエチレングリコールを結合したBSA(PEG−BSA)を調製した。なお調製する際、mPEG−NHSとBSAとのモル比(mPEG−NHS/BSA)を2となるようにした。調製後、分画分子量10000の透析膜を用いて、純水への溶液置換を3日間行なった。
(2)ヒト非小細胞肺がん細胞(PC9)を、5%CO2環境下、10%FBSを含むD−MEM/Ham’s F−12培地を用いて37℃で24時間から96時間培養後、0.25%トリプシン/1mM EDTAを用いて培地から細胞を剥離した。剥離したPC9細胞を目的細胞とした。
(3)インフォームドコンセントを得た健常人から血液をEDTA−2K採血管(VP−DK050K、テルモ社製)に3mL採血後、前記採血管に3mLの生理食塩水、75μLの白血球・赤血球結合剤(RosetteSep、StemCell Technologies社製)および約105個のPC9細胞を添加することで、希釈血液試料を調製した。
(4)調製した希釈血液試料を、密度1.091g/mLの密度勾配溶液上に重層し、2000×gで10分間、室温にて遠心後、上清を回収した。
(5)(4)で回収した上清に、純水を16mL添加し、30秒間撹拌することで、溶血処理後、900mMマンニトールを含む溶液8mLを添加して、300×gで10分間、室温にて遠心分離し、上清を除去した。
(6)PC9細胞を含むペレットを、純水16mLで再懸濁し、30秒撹拌した後、(1)で調製したPEG−BSA(BSAとして0.1%(w/v))および900mMマンニトールを含む溶液8mLを添加した。(5)の操作および本操作により上清に混入した赤血球が破壊(溶血)され、分離回収したPC9細胞の観察が良好になる。
(7)再懸濁液を300×gで5分間、室温にて遠心分離後、上清を除去し、PC9細胞を含むペレットをPEG−BSA(BSAとして0.1%(w/v))および300mMマンニトールを含む溶液30mLで再懸濁した。本操作は、血液成分を除去し、目的とするPC9細胞を濃縮するための操作である。
(8)(7)で得られたPC9細胞懸濁液を300×gで5分間、室温にて遠心分離し、上清を除去した。
(9)(8)で上清を除去したPC9細胞を含む懸濁液を細胞診断チップに導入し、交流電圧を3分間印加することで前記チップが有する保持部にPC9細胞を保持させた。本実施例で用いた細胞診断チップは、直径30μmで深さ30μmの微細孔からなる微細孔を複数有した絶縁体と前記絶縁体と下部電極基板の間に設置した遮光性のクロム膜とからなる保持部を、厚さ1mmのスペーサーと下部電極基板とで挟んだ構造であり、前記スペーサーを上部電極基板と下部電極基板とで挟んだ構造である。
(10)(9)の条件で交流電圧を印加しながら、0.01(w/v)%のポリ−L−リジンを含む300mMマンニトール水溶液を導入し、2分間静置後、前記交流電圧の印加を停止し、前記水溶液を吸引除去した。
(11)50%(v/v)エタノールと1%(w/v)ホルムアルデヒドを含む水溶液(以下、細胞膜透過試薬)を導入し、10分間静置することで、細胞膜を透過させ、保持部に導入した細胞を標本化した。
(12)細胞膜透過試薬を吸引除去し、PBS(Phosphate buffered saline)を導入することで、残留した細胞膜透過試薬を洗浄した。
(13)細胞膜内外のタンパク質と特異的に結合可能な蛍光標識された抗体と、細胞核を標識する蛍光試薬を含む水溶液(以下、標識試薬)を導入し、10分間静置した。なお前記標識された抗体として、白血球表面に発現しているCD45に対する抗体と、血中循環がん細胞の細胞質内で発現しているサイトケラチンに対する抗体を用いている。
(14)標識試薬を吸引除去し、PBSを導入することで、残留した標識試薬を除去した。
(15)(14)で標識した細胞を含む細胞診断チップを蛍光顕微鏡のステージ上に載置した後、蛍光顕微鏡による蛍光観察を行なった。細胞核の蛍光が確認され、かつCD45抗体の蛍光が確認されない細胞を血液に添加したPC9細胞として、前記PC9細胞へのサイトケラチン抗体の結合度合いを、蛍光輝度分布を基に評価した。
(1)実施例1(3)から(4)と同様な方法で、PC9細胞を添加した血液を密度勾配遠心した。
(2)(1)で回収した上清に、0.9%(w/v)塩化アンモニウムと0.1%(w/v)炭酸水素カリウムと含む溶血液で30mLまでメスアップし、300×gで10分間、室温にて遠心分離した。当該操作により上清に混入した赤血球が破壊(溶血)され、分離回収したSKBR3細胞の観察が良好になる。
(3)上清を除去後、PC9細胞を含むペレットを、実施例1(1)で調製したPEG−BSA(BSAとして0.1%(w/v))および300mMマンニトールを含む溶液30mLで再懸濁した。
(4)実施例1(7)から(15)と同様な方法で、PC9細胞へのサイトケラチン抗体の結合度合いを、蛍光輝度分布を基に評価した。
(1)実施例1(2)で剥離したPC9細胞約105個を懸濁させる溶液として、
(a)10%FBSを含むD−MEM/Ham’s F−12培地、
(b)健常人から血液を前記EDTA−2K採血管に採血後、当該血液を遠心することで得られた血漿、または、
(c)0.9%(w/v)塩化アンモニウムと0.1%(w/v)炭酸水素カリウムと含む溶液、
をそれぞれ1mL添加し、10分間静置した。
(2)細胞懸濁液を300×gで10分間、室温にて遠心分離後、上清を除去し、PC9細胞を含むペレットをPEG−BSA(BSAとして0.1%(w/v))および300mMマンニトールを含む溶液1mLで再懸濁した。
(3)(2)で得られたPC9細胞懸濁液を300×gで5分間、室温にて遠心分離し、上清を除去した。
(4)実施例1(9)から(15)と同様な方法で、PC9細胞へのサイトケラチン抗体の結合度合いを、蛍光輝度分布を基に評価した。
(1)実施例1(2)と同様な方法で、PC9細胞を剥離した後、蛍光染色色素(CFSE(5− or 6−(N−Succinimidyloxycarbonyl)fluorescein 3’,6’−diacetate)、同仁化学研究所社製)で標識することで、蛍光標識されたPC9細胞を調製し、これを目的細胞とした。
(2)実施例1(3)と同様な方法で、採血した血液3mLに、3mLの生理食塩水、75μLの白血球・赤血球結合剤(RosetteSep、StemCell Technologies社製)および蛍光標識した約100個のPC9細胞を添加することで、希釈血液試料を調製した。
(3)実施例1(4)から(9)と同様な方法で、細胞診断チップが有する保持部にPC9細胞を保持させた。
(4)細胞診断チップに保持されたPC9細胞数を計測し、(2)で添加したPC9細胞数で除することで回収率を算出した。
(1)実施例2(1)から(2)、および実施例1(4)と同様な方法で、PC9細胞を含む希釈血液試料を密度勾配遠心した。
(2)比較例1(2)から(3)、および実施例1(7)から(9)と同様な方法で、細胞診断チップが有する保持部にPC9細胞を保持させた。
(3)実施例2(4)と同様な方法で、PC9細胞の回収率の算出を行なった。
Claims (5)
- 血液試料を溶血する工程と、
溶血した血液試料中に含まれる目的細胞を、当該目的細胞内で発現するタンパク質を利用して検出する工程とを含む、
血液試料中に含まれる目的細胞を検出する方法であって、
血液試料を溶血する工程を、生理的浸透圧よりも低い浸透圧条件で行なう、前記方法。 - 以下の(1)から(3)の工程を含む、血液試料中に含まれる目的細胞を検出する方法。
(1)目的細胞を含む血液試料から、比重分離を用いて当該目的細胞を含む画分を分離回収する工程
(2)(1)で得られた画分を、生理的浸透圧よりも低い浸透圧条件にさらすことで溶血後、遠心分離により目的細胞を含むペレットを回収する工程
(3)(2)で得られたペレットの懸濁液から、目的細胞内で発現するタンパク質を利用して当該目的細胞を検出する工程 - 以下の(1)から(4)の工程を含む、血液試料中に含まれる目的細胞を検出する方法。
(1)目的細胞を含む血液試料から、比重分離を用いて当該目的細胞を含む画分を分離回収する工程
(2)(1)で得られた画分を、生理的浸透圧よりも低い浸透圧条件にさらすことで溶血後、遠心分離により目的細胞を含むペレットを回収する工程
(3)(2)で得られたペレットを、親水性高分子を結合したタンパク質および糖を含んだ溶液に懸濁させた後、遠心分離により目的細胞を含むペレットを回収する工程
(4)(3)で得られたペレットの懸濁液から、目的細胞内で発現するタンパク質を利用して当該目的細胞を検出する工程 - 目的細胞内で発現するタンパク質を利用して当該目的細胞を検出する工程を、前記目的細胞内で発現するタンパク質に対する標識化抗体を用いて行なう、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
- 目的細胞が腫瘍細胞であり、目的細胞内で発現するタンパク質がサイトケラチンである、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
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