JP2017082252A - 鋼部材の熱処理方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】従来の熱処理方法では鋼部材の熱処理工程における生産性が低い問題があった。【解決手段】本発明の熱処理方法は、熱処理油を用いて焼入れ処理と焼戻し処理とを行う鋼部材の熱処理方法であって、浸炭処理後の鋼部材を第1の油槽に浸漬させて焼入れ処理を行うステップS2と、焼入れ処理後の鋼部材を、第1の油槽よりも高温の第2の油槽の上に第2の油槽に連通するように設けられた予備室に収容するステップと、予備室に鋼部材が収容された状態で前記予備室の雰囲気を不活性ガスに置換するステップと、予備室に不活性ガスが充填された状態で、第2の油槽内を撹拌すると共に、鋼部材を前記第2の油槽に浸漬させて焼き戻し処理を行うステップと、を有する。【選択図】図4
Description
本発明は鋼部材の熱処理方法に関し、例えば、焼入れ処理及び焼戻し処理を含む鋼部材の熱処理方法に関する。
鋼部材の硬度を高める技術に焼入れ焼戻し処理がある。この焼入れ焼戻し処理の一例が特許文献1に開示されている。特許文献1に記載の技術では、浸炭処理した鋼部材を油槽にて焼入れ処理した後、油槽上に設けられた前室において鋼部材を窒素ガスにてさらに冷却し、焼入れ処理を行った油槽と同じ油槽にて焼戻し処理を行う。
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、焼入れ処理と焼戻し処理とを同一の油槽で行うため、両処理の間で実施するガス冷却のための時間が必要になる。また、特許文献1に記載の技術では、焼入れ処理と焼戻し処理とを同一の油槽で行うため、両処理を並列して実施することができない。このようなことから、特許文献1に記載の技術では、焼入れ焼戻し処理工程に関する生産性に劣る問題がある。
ところで、一般的に、焼戻し温度を高温にすれば、焼戻し処理時間を短くし、生産性を向上させることができる。しかしながら、特許文献1に記載の技術では、焼戻し温度を高温にした場合、焼入れ処理後のガス冷却の時間が長くなるため、熱処理全体として時間を短縮することが難しい。
他方、焼戻し温度を高温にした場合には、焼戻し処理時間が短いため、熱処理油を撹拌するなどして、鋼部材をより均一に昇温させる必要がある。ここで、高温の熱処理油を大気中で撹拌したり、高温の熱処理油に大気中から鋼部材を浸漬させると、熱処理油が大気中の酸素を巻き込み、熱処理油が酸化劣化し易いという問題があった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、熱処理工程における生産性を向上させると共に、熱処理油の酸化劣化を抑制することを目的とするものである。
本発明にかかる鋼部材の熱処理方法の一態様は、熱処理油を用いて焼入れ処理と焼戻し処理とを行う鋼部材の熱処理方法であって、浸炭処理後の鋼部材を第1の油槽に浸漬させて焼入れ処理を行うステップと、前記焼入れ処理後の前記鋼部材を、前記第1の油槽よりも高温の第2の油槽の上に前記第2の油槽に連通するように設けられた予備室に収容するステップと、前記予備室に前記鋼部材が収容された状態で前記予備室の雰囲気を不活性ガスに置換するステップと、前記予備室に前記不活性ガスが充填された状態で、前記第2の油槽内を撹拌すると共に、前記鋼部材を前記第2の油槽に浸漬させて焼戻し処理を行うステップと、を有する。
上記本発明の一態様によれば、焼入れ処理を行う第1の油槽と、焼戻し処理を行う第2の油槽とを設けたため、焼入れ処理と焼戻し処理とを並列して行うことができる。また、上記本発明の一態様によれば、焼入れ処理と焼戻し処理との間で行われる空冷処理も焼入れ処理と焼戻し処理と並列して行うことができる。そのためため、本発明の一態様によれば、鋼部材の熱処理工程における生産性を高めることができる。また、予備室に不活性ガスが充填された状態で、第2の油槽内を撹拌すると共に、鋼部材を第2の油槽に浸漬させるため、第2の油槽内の熱処理油の酸化劣化を抑制することができる。すなわち、熱処理処理工程における生産性を向上させると共に、熱処理油の酸化劣化を抑制することができる。
また、前記第2の油槽に蓄えられる熱処理油の温度は、170℃から200℃の範囲であることが好ましい。焼戻し処理に要する時間を短縮することができる。
さらに、前記第2の油槽に蓄えられる熱処理油は、前記第1の油槽に蓄えられる熱処理油と同一種であることが好ましい。焼入れ処理後の油洗浄処理が不要になると共に、熱処理油の廃棄量を削減することができる。
本発明にかかる鋼部材の熱処理方法によれば、鋼部材の熱処理工程における生産性を向上させることができる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
まず、図1に実施の形態1にかかる熱処理工程で用いる油槽の概略図を示す。図1に示すように、実施の形態1にかかる熱処理工程で用いる油槽は、熱処理油が蓄えられる油槽11と予備室10とが一体に形成される。予備室10は、油槽11上において油槽11と連通するように設けられる。また、実施の形態1にかかる熱処理工程で用いる油槽は、撹拌機12、昇降機13、コンベア14、吸気経路15a、排気経路16a、熱電対17、ヒータ18a〜18c、扉19a、19bを有する。
撹拌機12は、油槽11内の熱処理油を撹拌する。昇降機13は、コンベア14を予備室10と油槽11との間で昇降させる。コンベア14は、ワーク20を搬送する。このワーク20は、複数の部品が1つの荷として運ばれる荷姿となっているものである。吸気経路15aは、不活性ガス(例えば、窒素、アルゴンなど)を予備室10に充填するための経路である。吸気経路15aにはバルブ15bが設けられており、このバルブ15bにより吸気経路15aの開閉が行われる。排気経路16aは、吸気経路15aから予備室10に不活性ガスが充填されるときにそれまであった大気を予備室10に排出するための経路である。排気経路16aには、バルブ16bが設けられており、このバルブ16bにより排気経路16aの開閉が行われる。
熱電対17は、油槽11の熱処理油の温度を計測する。ヒータ18a〜18cは、油槽11の熱処理油を加熱する。扉19a、19bは、ワーク20の搬入及び搬出の経路となる搬送口に対して設けられるものであり、予備室10を密閉状態とする。
続いて、実施の形態1にかかる熱処理方法で用いられる熱処理装置の全体像と、熱処理工程におけるワーク20の移動経路について説明する。そこで、図2に実施の形態1にかかる熱処理工程におけるワークの流れを説明する図を示す。図2では、矢印にてワークの移動経路を示した。
図2に示すように、実施の形態1にかかる熱処理装置は、浸炭室1、第1の油槽(例えば、焼入れ油槽2)、第2の油槽(例えば、焼戻し油槽3)を有する。図1に示した油槽は、焼入れ油槽2及び焼戻し油槽3として用いられる。浸炭室1は、鋼部材を金属組織がオーステナイト組織になるまで加熱する浸炭処理を行う加熱装置である。焼入れ油槽2は、浸炭室1と連通するように設けられる。そして、浸炭処理が完了したワーク20は、浸炭室1から焼入れ油槽2へ搬送される。このワーク20の搬送にはコンベア14が用いられる。
続いて、焼入れ油槽2の予備室10に搬送されたワーク20を焼入れ油槽2の油槽11に浸すことで、焼入れ処理が行われる。そして、焼入れ処理が完了したワーク20は、コンベア14及び駆動ローラー30により焼戻し油槽3の予備室10に搬送される。焼戻し油槽3の予備室10に搬送されたワーク20は、焼戻し油槽3の油槽11に蓄えられた熱処理油に浸されることで焼戻し処理が施される。そして、焼戻し処理完了後にワーク20は、後工程に移送される。
ここで、実施の形態1にかかる熱処理工程では、焼入れ油槽2の熱処理油と、焼戻し油槽3の熱処理油として、互いの油が混合されたとしても問題のない油種を用いる。理想的には、焼入れ油槽2と焼戻し油槽3とで同一の油種を用いることが好ましい。熱処理油は、油に添加される添加剤の濃度、種類等により異なる品番となることがあるが、以下の説明では、互いの油が混合されたとしても問題のない油種について同一油種と称する。
また、実施の形態1にかかる熱処理工程では、焼戻し油槽3の熱処理油を焼入れ油槽2の熱処理油よりも高い温度に設定する。この焼戻し油槽3の熱処理油の温度は、油の酸化が進みやすくなる170℃程度から油の発火を確実に回避できる200℃程度の範囲で設定することが好ましい。
続いて、実施の形態1にかかる熱処理工程をタイミングチャートを用いてより詳細に説明する。そこで、図3に実施の形態1にかかる熱処理工程を説明するタイミングチャートを示す。図3では、縦軸にワーク20の温度、横軸に時間をとった。
図3に示すように、実施の形態1にかかる熱処理工程では、まず、鋼の金属組織がオーステナイト組織となるオーステナイト領域の範囲内の温度で一定時間加熱する浸炭処理を期間TM1で行う。その後、ワーク20を焼入れ油槽2の熱処理油に浸すことで、ワーク20の温度を130℃程度まで冷却する焼入れ処理を期間TM2で行う。この焼入れ処理では、鋼部材の金属組織をマルテンサイト変態させる。その後、空冷処理を期間TM3で行うことで、マルテンサイト変態させる金属組織を増加させる。この空冷処理は、図2の説明では図示を省略した焼入れ油槽2と焼戻し油槽3との間に設けられる空冷室で行われる。
その後、ワーク20を焼戻し油槽3の油槽11に入れて鋼部材を焼戻す焼戻し処理を期間TM4において行う。この焼戻し処理では、ワークを焼戻し油槽3の予備室10に収容した後に予備室10に窒素パージを行い、予備室10に窒素ガスが充填された状態とした後に、ワーク20を焼戻し油槽3の油槽11に浸す。そして、ワーク20が焼戻し油槽3の熱処理油に浸されている状態で熱処理油を強めに撹拌する。また、実施の形態1にかかる熱処理工程では、焼戻し処理における熱処理油の温度を185℃程度とする。そして、焼戻し処理終了後は、期間TM5で焼戻し油の洗浄を行う。
ここで、焼戻し処理における撹拌強度について説明する。撹拌強度は、撹拌機12の回転周波数に相当するものである。焼戻し処理において、撹拌強度が弱い場合、ワーク20にヒータ18a〜18cで加熱された熱処理油が、ワーク20を構成する部材の間に十分に行き渡らずにワーク20の温度が想定された温度まで上昇しないことが実験により確認されている。これは、ワーク20が複数の部品が1つの荷となった荷姿の状態であるため、部品間の狭い隙間に加熱された熱処理油が行き渡りにくいことに起因する。実施の形態1にかかる熱処理工程では、熱処理油の温度を油の酸化の影響が少ない150℃程度とした場合に比べて3倍程度の撹拌強度で熱処理油を撹拌しながら焼戻し処理を行うことが好ましい。
続いて、図4及び図5を用いて熱処理工程における油槽間での熱処理油の増減及び焼戻し時間について説明する。図4は、実施の形態1にかかる熱処理工程を説明するフローチャートである。図5は、比較例にかかる熱処理工程を説明するフローチャートである。この比較例は、第1の油槽と第2の油槽とで異なる油種の熱処理油を用い、かつ、焼戻し処理を熱処理油の酸化の影響が小さい150℃程度に設定したものである。
図4に示すように、実施の形態1にかかる熱処理工程では、まず、ワーク20の温度を950℃程度にする浸炭処理を行う(ステップS1)。次いで、ワーク20を浸炭室1から焼入れ油槽2に移送して、熱処理油の温度を130℃程度に設定してワーク20に対する浸炭油焼入れ処理を行う(ステップS2)。次いで、ワーク20を焼入れ油槽2から焼戻し油槽3に移送して、熱処理油の温度を185℃程度に設定してワーク20に対する油浸漬焼戻し処理を行う(ステップS3)。このステップS2からステップS3の間のワーク20の移送により、ワーク20に付着して200ml程度の熱処理油が焼入れ油槽2から焼戻し油槽3に移る。また、ステップS3の焼戻し処理は、熱処理油の昇温処理を除いた正味の加熱時間が5分程度となるように実施する。次いで、ワーク20を焼戻し油槽3から引き上げて、焼戻し油を洗浄する(ステップS4)。このステップS4では、ワーク20に付着した焼戻し油槽3の熱処理油が85ml程度廃棄される。なお、焼戻し油槽3では、ワーク20の投入及び引き上げの処理により油量が増加するが、増加した油は更液時になくなる。
図5に示すように、比較例にかかる熱処理工程では、まず、ワーク20の温度を950℃程度にする浸炭処理を行う(ステップS11)。次いで、ワーク20を浸炭室1から焼入れ油槽2に移送し、熱処理油の温度を130℃程度に設定してワーク20に対する浸炭油焼入れ処理を行う(ステップS12)。次いで、比較例にかかる熱処理工程では、ワーク20を焼入れ油槽2から引き上げて、焼入れ油を洗浄する(ステップS13)。このステップS13では、ワーク20に付着した焼入れ油槽2の熱処理油が200ml程度廃棄される。次いで、ワーク20を焼戻し油槽3に移送して油浸漬焼戻し処理を、熱処理油の温度を150℃程度に設定して行う(ステップS14)。このステップS14の焼戻し処理は、熱処理油の昇温処理を除いた正味の加熱時間が60分程度となるように実施する。次いで、ワーク20を焼戻し油槽3から引き上げて、焼戻し油を洗浄する(ステップS15)。このステップS4では、ワーク20に付着した焼戻し油槽3の熱処理油が130ml程度廃棄される。
図4及び図5の説明より、実施の形態1にかかる熱処理工程では、廃棄される熱処理油が85ml程度であるのに対して、比較例にかかる熱処理工程では、廃棄される熱処理油が330ml程度である。この廃棄される油の量の差は2つの理由によって生じる。第1の理由は、比較例にかかる熱処理工程では、2つの油槽で異なる油種を利用しているため、油槽間で油の混合が生じると油の汚染が進むため、ワーク20を油槽間で移送する場合には一度油を洗浄する必要があるためである。つまり、実施の形態1にかかる熱処理工程では、2つの油槽間で利用している油が同一油種であるため、油槽間で油が混ざり合っても問題ないため、比較例にかかる熱処理工程のステップS13の洗浄処理が必要なく廃棄油が少なくなる。第2の理由は、焼戻し処理における熱処理油の温度が実施の形態1にかかる熱処理工程の方が高いため、実施の形態1にかかる熱処理工程では焼戻し処理時の熱処理油の粘度が低下することに起因するものである。つまり、実施の形態1にかかる熱処理工程では、焼戻し処理時の熱処理油の粘度が低いため、焼戻し処理後のワーク20の引き上げで持ち出される油の量が比較例にかかる熱処理工程よりも少なくなる。
また、実施の形態1にかかる熱処理工程の焼戻し処理に要する時間は、比較例にかかる熱処理工程で焼戻し処理に要する時間よりも短い。この時間差を図6を用いて説明する。図6は、実施の形態1にかかる熱処理工程における焼戻し処理に要する時間を説明するグラフである。焼入れ処理は、鋼部材の表面硬度を高める処理であるが、この表面硬度は焼入れ処理の対象部品毎に規格値が決められている。図6に示す例では、焼戻し処理時の熱処理油の温度が150℃である場合に予め決定した規格値を満たす表面硬度を実現するためには60分程度の時間を要する。一方、焼戻し処理時の熱処理油の温度が180℃である場合に予め決定した規格値を満たす表面硬度を実現するためには5分程度の時間を要する。図6に示すように、焼戻し処理の温度を高く設定すると鋼部材の表面硬度の低下が早く進む。
表面硬度、焼戻し温度及び焼戻し時間の関係は、(1)式によって求めることができる。
M=(T+273.15)((21.3−5.8×C[%])+log t)・・・(1)
ここでMは焼戻しパラメータ、Tは焼戻し温度、tは焼戻し保持時間、Cは材料の炭素濃度である。この(1)式に、焼戻し条件として、T=150℃、t=3600秒、C=0.8%を代入するとMは7005.8となる。そして、T=170℃とした場合にM=7005.8となるtを算出すると10.7分、T=180℃とした場合にM=7005.8となるtを算出すると4.8分となる。つまり、焼戻し処理で用いる熱処理油の温度を180℃とすることで、焼戻し時間を60分から5分に短縮することができる。
M=(T+273.15)((21.3−5.8×C[%])+log t)・・・(1)
ここでMは焼戻しパラメータ、Tは焼戻し温度、tは焼戻し保持時間、Cは材料の炭素濃度である。この(1)式に、焼戻し条件として、T=150℃、t=3600秒、C=0.8%を代入するとMは7005.8となる。そして、T=170℃とした場合にM=7005.8となるtを算出すると10.7分、T=180℃とした場合にM=7005.8となるtを算出すると4.8分となる。つまり、焼戻し処理で用いる熱処理油の温度を180℃とすることで、焼戻し時間を60分から5分に短縮することができる。
上記説明より、実施の形態1にかかる熱処理工程では、焼入れ処理を行う焼入れ油槽2と、焼戻し処理を行う焼戻し油槽3とを個別に設けることで、焼入れ処理、焼戻し処理及び2つの処理間で必要になる空冷処理とを並列して実施することができる。これにより、実施の形態1にかかる熱処理工程では、工程の生産効率を高めることができる。
また、実施の形態1にかかる熱処理工程では、上述の通り、焼戻し温度が高く、焼戻し処理で用いる熱処理油が拡販やワーク20の浸漬により酸化劣化し易い。そのため、焼戻し油槽3の予備室10を不活性ガスで充填した後に、熱処理油を強撹拌すると共に、ワーク20を浸漬させ、焼戻し処理を実施する。これにより、実施の形態1にかかる熱処理工程では、焼戻し処理で利用する熱処理油の温度を酸化の影響が大きくなる温度まで高めて焼戻し処理の時間を短縮しながら、熱処理油の酸化を防止することができる。つまり、熱処理油は酸化が進むと入れ替えが必要なり工程の効率を低下させるが、実施の形態1にかかる熱処理工程では熱処理油の酸化が極めてゆっくり進むため、工程の効率を高めることができる。
また、実施の形態1にかかる熱処理工程では、焼入れ油槽2と焼戻し油槽3に同一油種の熱処理油を採用する。これにより、ワーク20を焼入れ油槽2から焼戻し油槽3に移送する際の油洗浄処理と油洗浄により発生する廃棄油の発生とを削減することができる。
また、実施の形態1にかかる熱処理工程では、焼戻し処理を温度の高い熱処理油によって行う。これにより、熱処理油の粘度が低下するため、焼戻し処理後の油洗浄工程を簡略化することができる。例えば、焼戻し処理を150℃程度の熱処理油を用いて実施した場合、洗浄工程では湯洗浄シャワー、ディッピングアルカリ洗浄及びシャワー、リンスシャワー、液きりブローの4つの工程を含む。しかし、実施の形態1にかかる熱処理工程では、洗浄工程は湯洗浄シャワー及び液きりブローを行うのみで良い。具体的な洗浄工程の時間で比較すると、比較例にかかる熱処理工程では40分を要するところ、実施の形態1にかかる熱処理工程では10分程度で洗浄が完了する。
上記説明は、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。
1 浸炭室
2 焼入れ油槽
3 焼戻し油槽
10 予備室
11 油槽
12 撹拌機
13 昇降機
14 コンベア
15a 吸気経路
15b バルブ
16a 排気経路
16b バルブ
17 熱電対
18 ヒータ
19 扉
20 ワーク
30 駆動ローラー
2 焼入れ油槽
3 焼戻し油槽
10 予備室
11 油槽
12 撹拌機
13 昇降機
14 コンベア
15a 吸気経路
15b バルブ
16a 排気経路
16b バルブ
17 熱電対
18 ヒータ
19 扉
20 ワーク
30 駆動ローラー
Claims (3)
- 熱処理油を用いて焼入れ処理と焼戻し処理とを行う鋼部材の熱処理方法であって、
浸炭処理後の鋼部材を第1の油槽に浸漬させて焼入れ処理を行うステップと、
前記焼入れ処理後の前記鋼部材を、前記第1の油槽よりも高温の第2の油槽の上に前記第2の油槽に連通するように設けられた予備室に収容するステップと、
前記予備室に前記鋼部材が収容された状態で前記予備室の雰囲気を不活性ガスに置換するステップと、
前記予備室に前記不活性ガスが充填された状態で、前記第2の油槽内を撹拌すると共に、前記鋼部材を前記第2の油槽に浸漬させて焼き戻し処理を行うステップと、
を有する鋼部材の熱処理方法。 - 前記第2の油槽に蓄えられる熱処理油の温度は、170℃から200℃の範囲である請求項1に記載の鋼部材の熱処理方法。
- 前記第2の油槽に蓄えられる熱処理油は、前記第1の油槽に蓄えられる熱処理油と同一種である請求項1又は2に記載の鋼部材の熱処理方法。
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