JP6935326B2 - ガス浸炭方法 - Google Patents

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Description

本発明は、高濃度CO雰囲気を用いたガス浸炭方法に関するものである。
〔一般の浸炭〕
従来から、浸炭焼入で用いる雰囲気ガスには吸熱型の変性ガスが使用されている。上記吸熱型の変性ガスは、一般にRXガスと呼ばれるもので、炭化水素系のガスと空気を混合し、Ni触媒上において1050℃で吸熱反応を起こすことにより生成される。その組成は、23%CO+30%H+残部Nを主成分とし、あと若干のCOおよびHOを含むものである。
上記RXガスは、カーボンポテンシャルと炭素移行係数がそれほど高くなく、上記RXガス雰囲気だけでは、十分な焼入れ硬度が得られるだけの炭素量まで浸炭できない。そこで、浸炭焼入を行うときには、エンリッチガスを添加することにより、雰囲気のカーボンポテンシャルを上げることが行われる。
上記エンリッチガスには一般に、炭化水素ガスが用いられる。上記エンリッチガスの添加により、COやHOが還元され、雰囲気のカーボンポテンシャルが上がり、処理品の表面に炭素を均等に侵入させ、十分な焼入れ硬度を得る炭素量まで浸炭できる。
浸炭処理では一般に、処理品の温度を浸炭温度まで上げる昇温工程、処理品の温度バランスを均等にするための前均熱工程、処理品の表面から炭素を侵入させる浸炭工程、処理品表面の炭素濃度を調整し、それと同時に表面炭素を内部に拡散させる拡散工程が行われる。上記RXガスは、上述した昇温、前均熱、浸炭、拡散の各工程においてキャリアガスとして導入される。上記エンリッチガスは、上記浸炭工程において供給される。その後の拡散工程では、エンリッチガスを減少させるか、あるいは酸化性ガスが供給される。
〔高濃度CO浸炭〕
近年、COを40%以上の高濃度に上げ、炭素移行係数とカーボンポテンシャルの高い雰囲気ガスを発生する方法および装置が開発されている。このような高濃度CO雰囲気を使用することにより、浸炭処理の生産効率を向上することが提案されている。たとえば、50%CO+50%Hガス発生装置を使用すれば、高負荷処理品の積載量の増加や、浸炭時間の短縮が可能となる。
高濃度CO雰囲気を用いた浸炭処理では、従来のRXガスに比べ、炭素移行係数とカーボンポテンシャルが格段に高い。このため、処理品が浸炭温度に到達するまでの昇温工程において、処理品への炭素の侵入が始まってしまう。RXガスでも昇温工程での炭素侵入は生じるが、炭素移行係数とカーボンポテンシャルが低いことから、その侵入量は微々たるもので問題にならない。その後の浸炭工程においてエンリッチガスによる雰囲気のカーボンポテンシャルの上昇により炭素侵入が行われるため、その影響が残らないのである。
また、高濃度CO雰囲気を用いた浸炭処理では、処理品の形状によって、目的以上に浸炭してしまうことがある。たとえば薄肉部分があるとか鋭角のエッジがあるような異形の処理品では、その部分への炭素侵入量が多い。これは浸炭工程だけでなくその前の昇温工程でも起きる。これにより、薄肉部やエッジ部の炭素濃度が想定以上に高くなってしまう。その結果、処理品の場所によって、浸炭深さが異なったり、異常組織が発生したりするという不都合が生じる。
また、高濃度CO雰囲気は、炭素移行係数とカーボンポテンシャルが高いゆえに、浸炭処理の際に低温度域においてスーティングが発生し、炉内に煤が堆積することが問題になる。
このように、高濃度CO雰囲気は、昇温工程や前均熱工程において、従来のRXガスでは問題にならなかった問題が発生する。
〔先行技術文献〕
高濃度CO雰囲気を用いたガス浸炭方法に関する先行技術文献として、出願人は下記の特許文献1〜3を把握している。
特許文献1には、つぎの記載がある。
[0005]
しかしながら、浸炭炉内における浸炭処理において高濃度COを含む浸炭用ガスを用いた場合、煤の発生量が多くなる傾向にある。浸炭炉内における煤の発生量の増加により浸炭処理品の品質が低下したり、浸炭炉のクリーニング頻度が増加して歩留まりが低下したりするという問題がある。
[0017]
本発明はまた、表面硬化鋼材の製造方法であって、
浸炭炉に投入した鋼材を浸炭温度まで加熱する昇温工程、
前記鋼材の表面に炭素を侵入させる浸炭工程、
前記鋼材の表面に侵入させた炭素を前記鋼材の内部に拡散させる拡散工程、
前記鋼材の温度を焼入温度まで低下させる降温工程、及び
前記鋼材を焼入温度で保持する焼入工程
を含み、
前記昇温工程、前記拡散工程、前記降温工程及び前記焼入工程の間は、一酸化炭素を含む浸炭用ガスと不活性ガスとを前記浸炭炉に導入し、
前記浸炭工程の間は前記浸炭用ガスを前記浸炭炉に導入し、前記不活性ガスの前記浸炭炉への導入を停止する表面硬化鋼材の製造方法に関する。
[0018]
当該製造方法では、浸炭処理を行う間では不活性ガスの導入を停止してCO濃度が高めることにより迅速かつ均一な浸炭が可能となるとともに、浸炭処理以外の処理を行う間は不活性ガスの導入によりCO濃度を低下させてプロセス全体での煤の発生量を抑制することができ、高品質の表面硬化鋼材を歩留まり良く製造することができる。
[0057]
煤の発生量は、上述したとおり、CO濃度が高い場合に多くなる傾向にある。従って、図2に示すガス組成プロファイルでは、浸炭工程におけるCO(50%)及びH(50%)のガス組成をとる間に煤が発生することになる。なお、浸炭工程以外の工程では、ガス組成がCO(25%)、H(25%)、N(50%)となっており、CO濃度が低くなっているので、これらの工程における煤の発生量は実質的に無視し得る。従って、煤の発生量は、全工程を行うのに要する時間のうち、CO濃度が高くなっている時間の比率によって見積もることができる。
特許文献2には、つぎの記載がある。
[請求項2]
被処理物の搬送方向上流側に位置する仕切扉と、この仕切扉に続いて設けられた昇温ゾーンと、この昇温ゾーンに続いて炉内搬送方向下流側に設けられた浸炭ゾーンと拡散ゾーンとを備える浸炭炉の各ゾーンに、変成炉で作製したキャリアガスを供給して前記浸炭ゾーンと拡散ゾーンに浸炭性雰囲気を形成し、前記被処理物に連続的に浸炭処理を施す連続浸炭方法であって、
前記被処理物を昇温ゾーンに搬入して前記仕切扉を閉鎖した直後、前記昇温ゾーンに供給されるキャリアガスに、所定流量のCOガスを、所定の時間添加することを特徴とする連続浸炭方法。
[0005]
ところで、上記のような従来の連続浸炭炉においては、ワーク(被処理物)が搬入される昇温ゾーンの温度が低いため、カーボンポテンシャルの高い浸炭ゾーンや拡散ゾーンの雰囲気ガスが昇温ゾーンに流れ込むと、まだ温度の低い被処理物の表面に煤を発生させ、いわゆるスーティングを起こすことがある。また、このスーティングに起因して、浸炭むらが発生する場合があることが知られている。
[0007]
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、過大なコストアップを招くことなく、浸炭むらの発生を抑えるとともに、表面異常層の増加も抑制することのできる連続浸炭方法を提供することを目的としている。
[0017]
[実施例]
次に、このCOガス供給設備を備える連続浸炭炉を用いて行った試験の結果について述べる。
試験は、工程の稼動(ランニング)中に行い、下記した以外の試験条件は、通常の製品製造と同じである。
鋼種:SCr20,SCM20
ワーク(被処理物):アウトプットシャフト,ギヤカウンタなど
ワーク単重量:0.4〜4.7kg
チャージ:170〜200kg/トレー(昇温〜拡散ゾーンに15トレー)
タクトタイム:15〜20分(サイクルタイム)
なお、炭化水素ガスとしてブタンを使用(ただし、メタン,プロパン等でも可)。
また、COガスの添加時間は、炉の搬送方向上流側の仕切扉の閉鎖後1分間とした。
[0018]
(実施例1)
ブタン:(エアー):CO=1:(9.5〜11):10 [単位:L/min]を第1仕切扉の閉鎖後1分間添加した。
(実施例2)
ブタン:(エアー):CO=1:(15):10 [単位:L/min]を第1仕切扉の閉鎖後1分間添加した。
(比較例1)
ブタン:(エアー)=1:(9.5〜11) [単位:L/min]を供給して従来通り製造。
(比較例2)
ブタン:(エアー)=1:(15) [単位:L/min]を供給して従来通り製造。
(比較例3)
ブタン:(エアー)=1:(30) [単位:L/min]を供給して従来通り製造。
特許文献3には、つぎの記載がある。
[0004]
一般に,真空浸炭処理方法では,850〜1050℃に加熱された浸炭室に,トレーに積載した鋼材品を真空(減圧)雰囲気下で挿入する。その後,処理品を浸炭処理温度まで昇温する。その際,例えばNガスなどの鋼材品に対して不活性なガスを浸炭室内に導入し,更に浸炭室内に設けられたファンにより浸炭室内の雰囲気を攪拌させることで,鋼材品への熱伝達効率を上げ,鋼材品が浸炭処理温度に到達するまでに要する時間を短縮させるようにしている。
[0006]
しかしながら,鋼材品を早く昇温させるためにNなどの不活性ガスを用いた場合,昇温工程を終了した後,浸炭工程に移る前に,再度浸炭室内を真空排気する操作が必要となる。このため,昇温工程を終了後,すぐに浸炭工程に移行できず,処理時間が長くなってしまう。また,真空排気に要するエネルギーも必要となる。
[0008]
この目的を達成するために,本発明にあっては,鋼材品を浸炭処理する方法であって,減圧下の浸炭室内において,鋼材品の昇温を開始後,遅くとも鋼材品の昇温を終了する前に,浸炭室内に浸炭ガスを供給することにより,鋼材品を浸炭性雰囲気中で昇温させることを特徴としている。
特開2017−106054号公報 特開2008−303444号公報 特開2005−105396号公報
上記特許文献1は、高濃度COを含む浸炭用ガスを使用する浸炭方法において煤の発生を抑制しようとするものである。上記特許文献1には、昇温工程、拡散工程、降温工程の間は、浸炭用ガスと不活性ガスを浸炭炉に導入し、浸炭工程の間は、不活性ガスの導入を停止して浸炭用ガスを導入することが記載されている。具体的には、浸炭工程では、CO(50%)+H(50%)のガス組成であり、浸炭工程以外の工程では、CO(25%)+H(25%)+N(50%)のガス組成とする。
しかしながら、CO(25%)+H(25%)+N(50%)のガス組成では、低温域でカーボンポテンシャルが1を超えてしまう。カーボンポテンシャルは、COおよびCOとのあいだで下記の式(1)を満たす関係であり、上記のガス組成では、COが限りなく小さい値となることによって、カーボンポテンシャルが高くなるからである。したがって、実際には昇温工程で煤が発生するのを避けられない。
K×(CO)/CO∝Cp・・・(1)
※Cp:カーボンポテンシャル
※K:その温度における係数
上記特許文献2は、連続浸炭方法において、スーティングに起因した浸炭むらの発生を抑え、表面異常層の増加を抑制しようとするものである。上記特許文献2には、被処理物を昇温ゾーンに搬入して仕切扉を閉鎖した直後、昇温ゾーンに供給されるキャリアガスに、所定流量のCOガスを、所定の時間添加することが記載されている。上記COガスの添加時間は、仕切扉の閉鎖後1分間程度である。
しかしながら、上記特許文献2では、COガスの添加は、仕切扉が閉鎖されてから昇温が開始される最初の1分間程度だけである。現実問題として浸炭温度まで昇温されるまでに40〜60分程度を要し、その後、処理品の温度を均一にするため、20〜30分程度温度を保つ前均熱を行う必要がある。このため、浸炭温度に近い昇温終了の間際や前均熱のあいだは、添加したCOガスの効果が薄れてしまう。したがって、高濃度CO雰囲気を使用した浸炭では炭素移行係数とカーボンポテンシャルが高いため、特許文献2の方法は適用できない、仮に適用したとしても、部分的に異常組織が出たり、浸炭深さにバラツキが出ることになる。
上記特許文献3は、真空浸炭方法に関するものであり、窒素ガス中で行っていた昇温工程を、減圧下に浸炭ガスを供給する雰囲気で実施し、浸炭時間を短縮しようとするものである。
しかしながら、上記特許文献3には、高濃度CO雰囲気を用いたガス浸炭方法においてスーティングや異常組織を防止しようとする技術思想は存在しない。また、上記特許文献3の方法は、昇温工程における炭素の侵入が避けられず、薄肉部やエッジ部のある処理品において、浸炭深さが異なったり異常組織が発生したりする不都合の要因となる。
本発明の目的はつぎに示すとおりであり、上記課題を解決することにある。
高濃度CO雰囲気ガスを使用した浸炭において、スーティング,浸炭深さのばらつきおよび異常組織の発生を効果的に防止するガス浸炭方法を提供する。
請求項1記載のガス浸炭方法は、上記目的を達成するため、つぎの構成を採用した。
雰囲気中に処理品を存在させた状態で、昇温工程,前均熱工程,浸炭工程を行うガス浸炭方法であって、
上記雰囲気に、CO濃度が40容量%以上の高濃度CO雰囲気ガスを使用し、
上記昇温工程の開始から上記前均熱工程が終了するまでのあいだ、上記雰囲気のカーボンポテンシャルを0.8%以下に制御する雰囲気制御を行い、
上記雰囲気制御は、上記雰囲気への酸化性ガスの導入を行う。
請求項記載のガス浸炭方法は、請求項記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記酸化性ガスは、空気,CO,HO,Oのうち少なくともいずれかである。
請求項記載のガス浸炭方法は、請求項1または2記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記高濃度CO雰囲気ガスは、CO濃度が40〜70容量%である。
請求項記載のガス浸炭方法は、請求項1〜のいずれか一項に記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記浸炭工程において、上記雰囲気制御を行う。
請求項記載のガス浸炭方法は、請求項1〜のいずれか一項に記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記浸炭工程の後で、拡散工程と後均熱工程の少なくともいずれかを行い、
上記拡散工程と後均熱工程の少なくともいずれかにおいて、上記雰囲気制御を行う。
請求項記載のガス浸炭方法は、請求項1〜のいずれか一項に記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記浸炭工程の後で、拡散工程と後均熱工程の少なくともいずれかを行い、
上記拡散工程と後均熱工程の少なくともいずれかにおいて、上記雰囲気への不活性ガスの導入を行う。
請求項記載のガス浸炭方法は、請求項記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記拡散工程と後均熱工程の少なくともいずれかにおいて、上記雰囲気制御を行う。
請求項1記載のガス浸炭方法は、CO濃度が40容量%以上の高濃度CO雰囲気ガスを雰囲気に使用する。そして、昇温工程の開始から前均熱工程が終了するまでのあいだ、上記雰囲気のカーボンポテンシャルを0.8%以下に制御する。
このように、処理品の温度が十分に上がりきらない昇温工程の開始から、処理品の温度が不均一で安定しない前均熱工程が終了するまでのあいだ、雰囲気のカーボンポテンシャルを0.8%以下に制御する。これにより、高濃度CO雰囲気ガスを使用した浸炭において、昇温時に温度が上がりきらないときに発生するスーティングを抑制できる。また、昇温や前均熱の過程で起こる炭素の侵入を抑え、浸炭深さのばらつきや異常組織の発生を抑制することができる。
請求項記載のガス浸炭方法は、上記雰囲気制御として上記雰囲気への酸化性ガスの導入を行う。高濃度CO雰囲気ガスを使用した雰囲気に酸化性ガスを導入することにより、カーボンポテンシャルを0.8%以下に確実に制御し、昇温時のスーティングを抑制し、昇温および前均熱工程で起こる浸炭深さのばらつきや異常組織の発生を抑制できる。
請求項記載のガス浸炭方法は、上記酸化性ガスとして、空気,CO,HO,Oのうち少なくともいずれかを用いる。これにより、カーボンポテンシャルを0.8%以下に確実に制御し、昇温時のスーティングを抑制し、昇温および前均熱工程で起こる浸炭深さのばらつきや異常組織の発生を抑制できる。
請求項記載のガス浸炭方法は、CO濃度が40〜70容量%の高濃度CO雰囲気ガスを使用した浸炭処理において、昇温時のスーティングを抑制し、昇温および前均熱工程で起こる浸炭深さのばらつきや異常組織の発生を抑制できる。
請求項記載のガス浸炭方法は、上記浸炭工程において、上記雰囲気制御を行う。これにより、浸炭工程において過剰な炭素が侵入し続けることが抑制される。これにより、浸炭深さのばらつきや異常組織の発生を抑制できる。
請求項記載のガス浸炭方法は、上記浸炭工程の後で行う拡散工程と後均熱工程の少なくともいずれかにおいて、上記雰囲気制御を行う。これにより、浸炭工程の後の拡散工程や後均熱工程まで過剰な炭素が侵入し続けることが抑制される。これにより、浸炭深さのばらつきや異常組織の発生を抑制できる。
請求項記載のガス浸炭方法は、上記浸炭工程の後で行う拡散工程と後均熱工程の少なくともいずれかにおいて、上記雰囲気への不活性ガスの導入を行う。これにより、浸炭工程の後の拡散工程や後均熱工程まで過剰な炭素が侵入し続けることが抑制される。これにより、浸炭深さのばらつきや異常組織の発生を抑制できる。
請求項記載のガス浸炭方法は、上記拡散工程と後均熱工程の少なくともいずれかにおいて、上記雰囲気制御を行う。これにより、浸炭工程の後の拡散工程や後均熱工程まで過剰な炭素が侵入し続けることが抑制される。これにより、浸炭深さのばらつきや異常組織の発生を抑制できる。
本実施例の熱処理チャート図である。 比較例1の熱処理チャート図である。 比較例2の熱処理チャート図である。 実施例で得られた浸炭品の表層部顕微鏡写真である。 上記実施例の浸炭品の断面硬度分布グラフである。 比較例1で得られた浸炭品の表層部顕微鏡写真である。 上記比較例1の浸炭品の断面硬度分布グラフである。
つぎに、本発明を実施するための形態を説明する。
本実施形態のガス浸炭方法は、雰囲気中に処理品を存在させた状態で、昇温工程,前均熱工程,浸炭工程を行う。
〔処理品〕
本実施形態のガス浸炭方法が対象とする処理品は鋼である。一般的に低炭素鋼または中炭素鋼が対象となり、JIS G 4051に記載されている機械構造用炭素鋼材や、JIS G 4052,4053に記載されている機械構造用合金鋼材、JIS G 4805に記載されている高炭素クロム軸受鋼材、JIS G 4401等に記載されている工具鋼等を使用することができる。具体的には、たとえばS09C,S15C,S20C等をあげることができる。また、合金鋼としてSMn,SCr,SCM材などの合金鋼を用いることができる。
〔浸炭炉〕
本実施形態のガス浸炭方法は、雰囲気と温度の制御が可能な浸炭炉を用いて実施することができる。上記浸炭炉は、雰囲気ガスや添加ガスの導入口を有する加熱室を有する。上記加熱室には、処理品の装入や取出しを行うための開閉扉やコンベヤ装置等の搬入搬出手段を有している。上記浸炭炉には、必要に応じて焼入槽を付設することができる。
〔工程〕
上記昇温工程は、処理品を装入することにより冷却された加熱室内の温度が、所定の浸炭温度に達するまで、所定の時間で昇温させる工程である。上記昇温工程の雰囲気は、後述するように、高濃度CO雰囲気ガスをキャリアガスとし、そこに酸化性ガスを添加したものとする。上記酸化性ガスと併せてエンリッチガスを添加することでカーボンポテンシャルを制御することもできる。
上記前均熱工程は、上記加熱室内が所定の浸炭温度まで昇温したのち、装入された処理品の全体が均一に上記浸炭温度に達するまでの時間、上記加熱室内を上記浸炭温度に維持する工程である。上記前均熱工程の雰囲気は、後述するように、高濃度CO雰囲気ガスをキャリアガスとし、そこに酸化性ガスを添加したものとする。上記酸化性ガスと併せてエンリッチガスを添加することでカーボンポテンシャルを制御することもできる。
上記浸炭工程は、上記処理品の全体が均一に上記浸炭温度に達したのち、加熱室内に浸炭性の雰囲気下で所定時間保持し、処理品の表面から炭素を浸透させる。上記浸炭工程の雰囲気は、後述するように、酸化性ガスの供給を継続し、高濃度CO雰囲気ガスをキャリアガスとし、エンリッチガスを添加したものとする。
上記昇温工程に先立って、ガス置換工程を行うことができる。ガス置換工程は、開閉扉を開放して加熱室に処理品を装入することにより、加熱室内に大量に侵入した大気を不活性ガスと置換する。具体的には、加熱室内にNガスを導入して大気圧以上に保ち、大気を排出することが行われる。また、Nガスの代わりに、高濃度CO雰囲気ガスに酸化性ガスを添加したガスで置換してもよい。
上記浸炭工程のあとに、拡散工程,後均熱工程,焼入れ工程を行うことができる。
上記拡散工程は、上記浸炭工程の終了後、所定時間処理品を加熱保持して処理品の表層に侵入した炭素の濃度を調整し、また、内部へ拡散させる。上記拡散工程の雰囲気は、後述するように、加熱室内に不活性ガスを導入し、高濃度CO雰囲気ガスと酸化性ガスを不活性ガスで希釈する。またエンリッチガスの添加量を上記浸炭処理よりも減少させる。
上記後均熱工程は、上記拡散工程の終了後、たとえば焼入れを行う前に、処理品の全体が均一に、所定の焼入れ温度になるまでの時間、保持する。上記後均熱工程の雰囲気は、後述するように、高濃度CO雰囲気ガスおよびエンリッチガスの供給を停止し、加熱室内の雰囲気を不活性ガスに置換する。また、Nガスの代わりに、高濃度CO雰囲気ガスに酸化性ガスを添加したガスで置換してもよい。
上記焼入れ工程は、所定の焼入れ温度に保った処理品を焼入れ油中に投入して急冷し、マルテンサイト変態を起こさせる。
〔高濃度CO雰囲気ガス〕
上記雰囲気には、CO濃度が40容量%以上の高濃度CO雰囲気ガスを使用する。
上記高濃度CO雰囲気ガスは、CO濃度が40〜70容量%とするのが好ましい。より好ましいCO濃度は45〜55容量%である。
高濃度CO雰囲気ガスの具体的な組成は、たとえばCO濃度50容量%+H濃度50容量%を使用することができる。
高濃度CO雰囲気ガスは、たとえば、ニッケル触媒層を有する変成炉に、炭化水素,COおよびOを導入し、350〜900℃の高温で変性反応させることによって得ることができる。
〔雰囲気制御〕
本実施形態では、上記昇温工程の開始から上記前均熱工程が終了するまでのあいだ、雰囲気制御を行う。
上記雰囲気制御は、上記雰囲気のカーボンポテンシャルを0.8%以下に制御する。より好ましくは、上記カーボンポテンシャルを0.4%以下に制御する。
上記カーボンポテンシャルとは、所定の浸炭性の雰囲気で浸炭処理を行ったときの、処理品表面の平衡炭素濃度をいう。カーボンポテンシャルが0.8%以下の雰囲気とは、その雰囲気で平衡に達するまで浸炭したときの処理品表面の炭素濃度が0.8重量%以下ということである。
上記雰囲気制御として、好ましいのは、上記雰囲気への酸化性ガスの導入である。
上記酸化性ガスとして好ましいのは、空気,CO,HO,Oのうち少なくともいずれかである。これらは単独で用いることもできるし、2種類以上を併せて用いることもできる。上記HOは、ガスバブリングで添加してもよいし、液体を滴下して添加してもよい。
上記昇温工程の開始から上記前均熱工程の終了まで行う雰囲気制御において、上記酸化性ガスの添加量は、0.2〜3L/min程度にするのが好ましい。
上記浸炭工程において、上記雰囲気制御を行うこともできる。
また、上記浸炭工程の後で、拡散工程と後均熱工程の少なくともいずれかを行い、上記拡散工程と後均熱工程の少なくともいずれかにおいて、上記雰囲気制御を行うこともできる。
上記拡散工程と後均熱工程の少なくともいずれかにおいて、上記雰囲気への不活性ガスの導入を行うようにしてもよい。
また、上記拡散工程と後均熱工程の少なくともいずれかにおいて、上記雰囲気制御と、上記雰囲気への不活性ガスの導入と、併用して行うようにすることもできる。
上記不活性ガスとしては例えばNガスを使用することができる。
上記不活性ガスの導入により高濃度CO雰囲気ガスを希釈し、CO濃度を40容量%未満まで下げる。上記拡散工程の雰囲気は、たとえば、CO濃度約25容量%+H濃度25容量%+N濃度50容量%とすることができる。
また、上記拡散工程や後均熱工程では、エンリッチガスの添加量を上記浸炭処理のときよりも減少させるのが好ましい。上記エンリッチガスの添加量は、Oセンサーの起電力やCO濃度の自動制御により的確な値に制御される。
上記拡散工程や後均熱工程において、上記雰囲気に導入する酸化性ガスは、空気,CO,HO,Oのうち少なくともいずれかである。これらは単独で用いることもできるし、2種類以上を併せて用いることもできる。上記HOは、ガスバブリングで添加してもよいし、液体を滴下して添加してもよい。
上記拡散工程や後均熱工程での酸化性ガスの添加量は、0.2〜3L/min程度にするのが好ましい。
〔まとめ〕
高濃度CO雰囲気ガスによる浸炭において昇温工程と前均熱工程で生じるスーティングや浸炭ばらつき・異常組織などの原因は、高CO濃度ガス雰囲気のもつ炭素移行係数とカーボンポテンシャルの高さである。これは、浸炭処理の効率を向上させるために必要な利点である。つまり、これらはトレードオフの関係にあると考えられていた。
本発明は、高濃度CO雰囲気に酸化性ガスを添加することにより、高濃度CO雰囲気ガスがもつ浸炭工程においてメリットとなる特性を100%発揮させ、昇温工程や前均熱工程にデメリットとなる特性を弱めることができる。これにより、高濃度CO雰囲気を使用することにより発生する問題を解消したのである。
従来のRXガス雰囲気による浸炭処理では、浸炭工程が終了した後の拡散工程で、エンリッチガスによる増炭の影響を弱めるために酸化性ガスを添加し、表面炭素濃度を最適値に調整することが行われてきた。しかし、RXガス雰囲気による浸炭処理では、カーボンポテンシャルや炭素移行係数が低いRXガス雰囲気で昇温工程と前均熱工程が行われるため、昇温工程と前均熱工程に酸化性ガスを添加するという発想は生まれていない。
一方、CO濃度を40容量%以上まで上げた高濃度CO雰囲気では、昇温工程と前均熱工程中に部分的に炭素の侵入がはじまる結果、浸炭層の深さバラツキや、部分的な組織異常が発生していた。本発明はこのような問題を解消したものである。高濃度CO雰囲気の浸炭に関する過去の文献も、本願の技術思想を示唆するものは存在しない。
〔実施形態の効果〕
本実施形態は、つぎの効果を奏する。
本実施形態のガス浸炭方法は、CO濃度が40容量%以上の高濃度CO雰囲気ガスを雰囲気に使用する。そして、昇温工程の開始から前均熱工程が終了するまでのあいだ、上記雰囲気のカーボンポテンシャルを0.8%以下に制御する。
このように、処理品の温度が十分に上がりきらない昇温工程の開始から、処理品の温度が不均一で安定しない前均熱工程が終了するまでのあいだ、雰囲気のカーボンポテンシャルを0.8%以下に制御する。これにより、高濃度CO雰囲気ガスを使用した浸炭において、昇温時に温度が上がりきらないときに発生するスーティングを抑制できる。また、昇温や前均熱の過程で起こる炭素の侵入を抑え、浸炭深さのばらつきや異常組織の発生を抑制することができる。
本実施形態のガス浸炭方法は、上記雰囲気制御として上記雰囲気への酸化性ガスの導入を行う。高濃度CO雰囲気ガスを使用した雰囲気に酸化性ガスを導入することにより、カーボンポテンシャルを0.8%以下に確実に制御し、昇温時のスーティングを抑制し、昇温および前均熱工程で起こる浸炭深さのばらつきや異常組織の発生を抑制できる。
本実施形態のガス浸炭方法は、上記酸化性ガスとして、空気,CO,HO,Oのうち少なくともいずれかを用いる。これにより、カーボンポテンシャルを0.8%以下に確実に制御し、昇温時のスーティングを抑制し、昇温および前均熱工程で起こる浸炭深さのばらつきや異常組織の発生を抑制できる。
本実施形態のガス浸炭方法は、CO濃度が40〜70容量%の高濃度CO雰囲気ガスを使用した浸炭処理において、昇温時のスーティングを抑制し、昇温および前均熱工程で起こる浸炭深さのばらつきや異常組織の発生を抑制できる。
本実施形態のガス浸炭方法は、上記浸炭工程において、上記雰囲気制御を行う。これにより、浸炭工程において過剰な炭素が侵入し続けることが抑制される。これにより、浸炭深さのばらつきや異常組織の発生を抑制できる。
本実施形態のガス浸炭方法は、上記浸炭工程の後で行う拡散工程と後均熱工程の少なくともいずれかにおいて、上記雰囲気制御を行う。これにより、浸炭工程の後の拡散工程や後均熱工程まで過剰な炭素が侵入し続けることが抑制される。これにより、浸炭深さのばらつきや異常組織の発生を抑制できる。
本実施形態のガス浸炭方法は、上記浸炭工程の後で行う拡散工程と後均熱工程の少なくともいずれかにおいて、上記雰囲気への不活性ガスの導入を行う。これにより、浸炭工程の後の拡散工程や後均熱工程まで過剰な炭素が侵入し続けることが抑制される。これにより、浸炭深さのばらつきや異常組織の発生を抑制できる。
本実施形態のガス浸炭方法は、上記拡散工程と後均熱工程の少なくともいずれかにおいて、上記雰囲気制御を行う。これにより、浸炭工程の後の拡散工程や後均熱工程まで過剰な炭素が侵入し続けることが抑制される。これにより、浸炭深さのばらつきや異常組織の発生を抑制できる。
つぎに、実施例について説明する。
〔実施例の工程〕
図1は、本実施例のガス浸炭方法における熱処理チャート図である。
本実施例のガス浸炭方法はつぎのようにして行った。
◇処理品=ワーク:SCM420のリング切片および棒切片を使用した。
◇浸炭炉の起動:加熱室内にNガスを導入して加熱を開始する。
◇ワークの入炉:加熱室が800℃になったときに処理品(ワーク)を入炉する。
◇置換工程:ワークの入炉から30分間、入炉のときに加熱室内に侵入した大気をNガスと置換する。
◇昇温工程:高濃度COガス(CO濃度50容量%+H濃度50容量%)を加熱室に導入し、加熱室内を930℃まで昇温する。このとき、酸化性ガスとして空気を添加する。このときの雰囲気のカーボンポテンシャルは、0.4〜0.6%に制御した。
◇前均熱工程:加熱室内が930℃(浸炭温度)に達したら、処理品の全体が均一に浸炭温度になるまで30分間、その温度で加熱室を保持する。このときの雰囲気は、昇温工程と同じで、高濃度COガス(CO濃度50容量%+H濃度50容量%)に酸化性ガスとして空気を添加している。このときの雰囲気のカーボンポテンシャルは、上記昇温工程と同じである。
◇浸炭工程:雰囲気にエンリッチガスを供給することによりカーボンポテンシャルを1%とし、40分間保持した。
◇拡散工程:加熱室内にNガスを導入して高濃度COガスをNガスで希釈した。雰囲気の組成は、CO濃度25容量%+H濃度25容量%+N濃度50容量%に、空気が添加されている。さらにエンリッチガスの供給量を減少させた。これにより、カーボンポテンシャルを0.8%とした。その状態で270分保持した。
◇降温工程:高濃度COガス,エンリッチガス,酸化性ガスの供給を停止し、加熱室内にNガスを導入して置換し、850℃(焼入れ温度)まで加熱室の温度をさげた。
◇焼入工程:850℃(焼入れ温度)で処理品の全体が均一な温度になるまで後均熱を行ったのち、焼入れを行い処理品を急冷した。油温は100℃である。
〔比較例1の工程〕
図2は、比較例1の熱処理チャート図である。
比較例1はつぎのようにして行った。
◇処理品=ワーク:SCM420のリング切片および棒切片を使用した。
◇浸炭炉の起動:加熱室内にNガスを導入して加熱を開始する。
◇ワークの入炉:加熱室が800℃になったときに処理品(ワーク)を入炉する。
◇置換工程:ワークの入炉から30分間、入炉のときに加熱室内に侵入した大気をNガスと置換する。
◇昇温工程:高濃度COガス(CO濃度50容量%+H濃度50容量%)を加熱室に導入し、加熱室内を930℃まで昇温する。酸化性ガスは添加しない。このときの雰囲気のカーボンポテンシャルは、1.0〜1.4%まで上昇した。
◇前均熱工程:加熱室が930℃(浸炭温度)に達したら、処理品の全体が均一に浸炭温度になるまで30分間、その温度で加熱室を維持する。このときの雰囲気は昇温工程とおなじで、高濃度COガス(CO濃度50容量%+H濃度50容量%)を加熱室に導入し、酸化性ガスは添加しない。このときのカーボンポテンシャルは1.2〜1.4%まで上昇した。
◇浸炭工程:前均熱工程が完了し、浸炭工程を開始したら、雰囲気ガスに空気を添加してカーボンポテンシャルを下げ、その後すぐ、エンリッチガスを供給することによりカーボンポテンシャルを1.0%とし、40分間保持した。
◇拡散工程:加熱室内にNガスを導入して高濃度COガスをNガスで希釈した。雰囲気の組成は、CO濃度25容量%+H濃度25容量%+N濃度50容量%に空気を添加した。さらにエンリッチガスの供給量を減少させた。これにより、カーボンポテンシャルを0.8%とした。その状態で270分保持した。
◇降温工程:高濃度COガス,エンリッチガスの供給を停止し、加熱室内にNガスを導入して置換し、850℃(焼入れ温度)まで加熱室の温度をさげた。
◇焼入工程:850℃(焼入れ温度)で処理品の全体が均一な温度になるまで後均熱を行ったのち、焼入れを行い処理品を急冷した。油温は100℃である。
〔比較例2の工程〕
図3は、比較例2の熱処理チャート図である。
比較例2はつぎのようにして行った。
◇処理品=ワーク:SCM420のリング切片および棒切片を使用した。
◇浸炭炉の起動:加熱室内にNガスを導入して加熱を開始する。
◇ワークの入炉:加熱室が800℃になったときに処理品(ワーク)を入炉する。
◇置換工程:ワークの入炉から30分間、入炉のときに加熱室内に侵入した大気をNガスと置換する。
◇昇温工程:RXガス(CO濃度23容量%+H濃度30容量%+N濃度47容量%)を加熱室に導入し、加熱室内を930℃まで昇温する。酸化性ガスは添加しない。
◇前均熱工程:実施しない。
◇浸炭工程:加熱室内が930℃(浸炭温度)に達したら、雰囲気にエンリッチガスを供給することによりカーボンポテンシャルを1.1%とし、その雰囲気で300分間保持した。
◇拡散工程:エンリッチガスの供給量を減少させ、カーボンポテンシャルを0.8%とし、その状態で210分保持した。
◇降温工程:RXガス,エンリッチガスの供給を停止し、加熱室内にNガスを導入して置換し、850℃(焼入れ温度)まで加熱室の温度をさげた。
◇焼入工程:850℃(焼入れ温度)で処理品の全体が均一な温度になるまで後均熱を行ったのち、焼入れを行い処理品を急冷した。油温は100℃である。
〔実施例の結果〕
図4は、実施例で得られた浸炭品の表層部顕微鏡写真である。
図5は、上記実施例の浸炭品の断面硬度分布グラフである。
表層部は針状マルテンサイトによる正常な焼入れ組織を呈している。
表面が最も硬度が高く、徐々に低下している。正常な浸炭焼入れ層が形成されていると認められる。
〔比較例1の結果〕
図6は、比較例1で得られた浸炭品の表層部顕微鏡写真である。
図7は、上記比較例1の浸炭品の断面硬度分布グラフである。
マルテンサイトのなかに白い残留オーステナイトが混じり、異常組織といえる。
表面から100〜200ミクロン程度のところに硬度の低い層が存在し、異常層が形成されている。
〔実施例のまとめ〕
小型のガス浸炭炉で実際に浸炭品のサンプルを試作した。
比較例1に示すように、高濃度CO雰囲気において、昇温工程と前均熱工程で酸化性ガスを添加しなければ、浸炭品質にばらつきが生じた。厚肉の部分は正常な浸炭組織が得られるのに対し、特に薄肉部は炭素が入りすぎて異常組織になる。
高濃度CO雰囲気は、炭素移行係数とカーボンポテンシャルが高いため、昇温工程の途中や、前均熱工程のあいだ、エンリッチガスを添加しなくても炭素の侵入が始まり、上述したような組織異常や浸炭深さのばらつきが生じる。
比較例2に示すように、RXガス雰囲気でも、昇温工程の終了後すぐにエンリッチガスを添加して浸炭を行うと、上記と同様の問題が発生する。これを防ぐためには、昇温工程が終了しても前均熱工程が終わって処理品の温度バランスが均一になるまでエンリッチガスを添加しないことが必要である。
本実施例では、昇温工程の開始時に酸化性ガスの添加を開始し、その後の前均熱工程がおわるまで酸化性ガスの添加を続け、その後、酸化性ガスを添加しながらエンリッチガスを添加した浸炭処理を実施した。これにより、浸炭深さのばらつきが解消して良好な組織が得られ、浸炭時間も短縮された。
〔変形例〕
以上は本発明の特に好ましい実施形態について説明したが、本発明は示した実施形態に限定する趣旨ではなく、各種の態様に変形して実施することができ、本発明は各種の変形例を包含する趣旨である。
炉の形態によっては、ワークの入炉前や降温時ならびに焼入れ時にも、キャリアガスに酸化性ガスを添加することができる。

Claims (7)

  1. 雰囲気中に処理品を存在させた状態で、昇温工程,前均熱工程,浸炭工程を行うガス浸炭方法であって、
    上記雰囲気に、CO濃度が40容量%以上の高濃度CO雰囲気ガスを使用し、
    上記昇温工程の開始から上記前均熱工程が終了するまでのあいだ、上記雰囲気のカーボンポテンシャルを0.8%以下に制御する雰囲気制御を行い、
    上記雰囲気制御は、上記雰囲気への酸化性ガスの導入を行
    ことを特徴とするガス浸炭方法。
  2. 上記酸化性ガスは、空気,CO,HO,Oのうち少なくともいずれかである
    請求項記載のガス浸炭方法。
  3. 上記高濃度CO雰囲気ガスは、CO濃度が40〜70容量%である
    請求項1または2記載のガス浸炭方法。
  4. 上記浸炭工程において、上記雰囲気制御を行う
    請求項1〜のいずれか一項に記載のガス浸炭方法。
  5. 上記浸炭工程の後で、拡散工程と後均熱工程の少なくともいずれかを行い、
    上記拡散工程と後均熱工程の少なくともいずれかにおいて、上記雰囲気制御を行う
    請求項1〜のいずれか一項に記載のガス浸炭方法。
  6. 上記浸炭工程の後で、拡散工程と後均熱工程の少なくともいずれかを行い、
    上記拡散工程と後均熱工程の少なくともいずれかにおいて、上記雰囲気への不活性ガスの導入を行う
    請求項1〜のいずれか一項に記載のガス浸炭方法。
  7. 上記拡散工程と後均熱工程の少なくともいずれかにおいて、上記雰囲気制御を行う
    請求項記載のガス浸炭方法。
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