以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るベーンポンプ100について説明する。
ベーンポンプ100は、作動流体を貯留するタンクの外部に配置され、車両等に搭載される流体圧機器、例えば、パワーステアリング装置や無段変速機等に加圧された作動流体を供給する流体圧供給源として用いられる。作動流体は、作動油やその他の水溶性代替液等である。
図1及び図2に示すように、ベーンポンプ100は、ポンプ収容凹部10aが形成されたポンプボディ10と、ポンプ収容凹部10aを覆いポンプボディ10に固定されるポンプカバー20と、ポンプボディ10及びポンプカバー20に軸受7,8を介して回転自在に支持される駆動軸1と、駆動軸1に連結されポンプ収容凹部10aに収容されるロータ2と、ロータ2の外周に開口し放射状に形成される複数のスリット2aと、各スリット2aに摺動自在に収装されるベーン3と、ロータ2及びベーン3を収容しベーン3の先端部3aが摺接する内周カム面4aを有するカムリング4と、を備える。
ベーンポンプ100は、例えばエンジン(図示せず)等によって駆動され、駆動軸1に連結されたロータ2が、図2の矢印で示すように時計回りに回転駆動されることで流体圧を発生させる。ベーンポンプ100は、図1〜4中において「上方」と記載される方向が鉛直上方となるように、パワーステアリング装置や無段変速機等の流体圧機器やエンジンや電動モータ等の駆動源に搭載される。
ベーン3は、各スリット2aに摺動自在に挿入され、スリット2aから突出する方向の端部である先端部3aと、先端部3aとは反対側の端部である基端部3bと、を有する。スリット2aの底部側には、ベーン3の基端部3bによって区画され作動流体としての作動油が導かれる背圧室5が形成される。ベーン3は、背圧室5の圧力によってスリット2aから突出する方向に押圧される。
カムリング4は、略長円形状をした内周面である内周カム面4aを有する環状の部材である。ベーン3が背圧室5の圧力によってスリット2aから突出する方向に押圧されると、ベーン3の先端部3aがカムリング4の内周カム面4aに摺接する。これにより、カムリング4の内部には、ロータ2の外周面と、カムリング4の内周カム面4aと、隣り合う2つのベーン3と、によってポンプ室6が画成される。
カムリング4の内周カム面4aは略長円形状であるので、ロータ2の回転に伴って内周カム面4aを摺接する各ベーン3間によって区画されるポンプ室6の容積は、拡張と収縮とを繰り返す。ポンプ室6が拡張する吸込領域では作動油が吸入され、ポンプ室6が収縮する吐出領域では作動油が吐出される。
ポンプ室6は、ロータ2が1回転する間に、拡張と収縮とをそれぞれ2回行う。ベーンポンプ100は、2つの吸込領域及び2つの吐出領域を有するが、これに限らず、1つまたは3つ以上の吸込領域及び1つまたは3つ以上の吐出領域を有する構成としてもよい。
ベーンポンプ100は、ポンプ収容凹部10aの底面とロータ2との間に設けられる円盤状のボディ側サイドプレート30と、ロータ2とポンプカバー20との間に設けられる円盤状のカバー側サイドプレート40と、をさらに備える。ボディ側サイドプレート30とカバー側サイドプレート40とは、ロータ2及びカムリング4の両側面に互いに対向した状態で配置され、ボディ側サイドプレート30及びカバー側サイドプレート40には、ロータ2が摺接するとともにカムリング4が当接する。
ボディ側サイドプレート30は、ポンプ室6から吐出される作動油が導かれる吐出ポート31と、ポンプ室6へ作動油を導く第1吸込ポート14を画定する第1吸込用凹部32と、ポンプ室6へ作動油を導く第2吸込ポート15を画定する第2吸込用凹部33と、を有する。
吐出ポート31は、ロータ2の回転中心Cを挟んで対向して二か所に設けられる。吐出ポート31は、ボディ側サイドプレート30を貫通して形成され、ポンプ室6とポンプボディ10に形成される後述の高圧室16とを連通する。
第1吸込用凹部32と第2吸込用凹部33とは、カムリング4に当接する当接面30aに、ロータ2の回転中心Cを挟んで対向して設けられる。第1吸込用凹部32と第2吸込用凹部33とは、図5及び図6に示されるように、一端がポンプ室6に開口し、他端がボディ側サイドプレート30の径方向外側に開口する凹形状に形成される。
第1吸込用凹部32は、図5に示されるように、対向するカムリング4のボディ側当接面4bとともに第1吸込ポート14を画定し、第2吸込用凹部33は、図6に示されるように、対向するカムリング4のボディ側当接面4bとともに第2吸込ポート15を画定する。
図3に示されるように、カバー側サイドプレート40は、カバー側サイドプレート40の外縁の一部を切り欠くようにして形成される第1吸込切欠部41と第2吸込切欠部42とを有する。第1吸込切欠部41は、図5に示されるように、対向するカムリング4のカバー側当接面4cとともに第1吸込ポート14を画定し、第2吸込切欠部42は、図6に示されるように、対向するカムリング4のカバー側当接面4cとともに第2吸込ポート15を画定する。
カムリング4とボディ側サイドプレート30とカバー側サイドプレート40とによって画定される第1吸込ポート14及び第2吸込ポート15を通じて、ポンプ室6は後述の吸込圧室13と連通する。第1吸込ポート14と第2吸込ポート15とは、ベーンポンプ100が流体圧機器等に搭載された状態において、ロータ2の回転中心Cを通る水平線H上に配置される。そして、ベーンポンプ100が流体圧機器等に搭載された状態において、第1吸込ポート14は、ポンプ室6のうちロータ2の回転中心Cよりも下方において圧縮されるポンプ室6へ作動油を導き、第2吸込ポート15は、ポンプ室6のうちロータ2の回転中心Cよりも上方において圧縮されるポンプ室6へ作動流体を導く。
ポンプボディ10のポンプ収容凹部10aには、ボディ側サイドプレート30、ロータ2、カムリング4、及びカバー側サイドプレート40が収容され、ポンプボディ10にポンプカバー20が取付けられることで、ポンプ収容凹部10aは封止される。
ベーンポンプ100は、ポンプボディ10の外面に開口する吸込開口端12aを有する吸込通路12と、吸込通路12と接続部12bを通じて接続される吸込圧室13と、をさらに備える。
吸込開口端12aには、一端がタンク60に接続される吸込管61の他端が接続される。吸込通路12には、吸込管61を通じてタンク60内に貯留される作動油が導かれる。吸込通路12の吸込開口端12aは、ベーンポンプ100が流体圧機器等に搭載された状態において、第1吸込ポート14及び第2吸込ポート15よりも上方に位置するように設けられる。
吸込圧室13は、ポンプボディ10内に形成され、第1吸込ポート14と第2吸込ポート15とを通じてポンプ室6に吸い込まれる作動油を貯留する貯留室として機能する。吸込圧室13は、第1吸込ポート14と第2吸込ポート15とを連通する連通部13aを有する。吸込圧室13と第1吸込ポート14とは、吸込圧室13と第2吸込ポート15とが連通する部分よりも接続部12bの近くにおいて連通する。このため、ベーンポンプ100を駆動させる際には、第2吸込ポート15よりも第1吸込ポート14に優先的に作動油が供給される。
連通部13aは、図2及び図3に記載されるように、第1吸込ポート14が開口する部分から第2吸込ポート15が開口する部分に渡って、ポンプ収容凹部10aの内周面に沿って形成される。連通部13aは、ベーンポンプ100が流体圧機器等に搭載された状態において、ロータ2の回転中心Cを通る水平線Hの下方に位置するように設けられる。このように、連通部13aは、接続部12bから流入する作動油を第2吸込ポート15へと導く流路として機能するとともに、第1吸込ポート14及び第2吸込ポート15を通じてポンプ室6に吸い込まれる作動油を貯留する貯留室としても機能する。つまり、作動油は、貯留室として機能する連通部13aから第1吸込ポート14及び第2吸込ポート15に吸い込まれるため、単なる供給通路から吸い込まれる場合と比較し、吸込抵抗を低減させることができる。
ポンプカバー20のポンプボディ10に接合される面側には、吸込圧室13と連通する副吸込圧室21が凹状に形成される。副吸込圧室21は、吸込圧室13とともにポンプ室6に吸い込まれる作動油を貯留する貯留室として機能する。また、副吸込圧室21は、図4に示すように、カバー側サイドプレート40の第1吸込切欠部41及び第2吸込切欠部42に対向する部分に渡って形成される。このため、第1吸込ポート14及び第2吸込ポート15には、径方向外側からは吸込圧室13を通じて作動油が供給され、軸方向からは副吸込圧室21を通じて作動油が供給される。
ベーンポンプ100は、ポンプボディ10の外面に開口する吐出開口端17aを有する吐出通路17と、吐出通路17と連通する高圧室16と、をさらに備える。高圧室16は、ポンプボディ10のポンプ収容凹部10aの底面側に環状に形成される空間であり、ポンプボディ10とボディ側サイドプレート30とによって区画される。吐出開口端17aには、一端がベーンポンプ100の外部に設けられる流体圧機器70に接続される供給管71の他端が接続される。吐出開口端17aは、ベーンポンプ100が流体圧機器等に搭載された状態において、第1吸込ポート14及び第2吸込ポート15よりも上方に位置するように設けられる。
次に、ベーンポンプ100の動作について説明する。
図示しないエンジンなどの駆動装置の動力によって駆動軸1が回転駆動されることで、ロータ2が図2に矢印で示す方向に回転する。ロータ2の回転に伴って、吸込領域に位置するポンプ室6は拡張する。これにより、タンク60内の作動油が、図2に矢印で示すように、吸込管61、吸込通路12、吸込圧室13、第1吸込ポート14及び第2吸込ポート15を通ってポンプ室6に吸い込まれる。
また、吐出領域に位置するポンプ室6は、ロータ2の回転に伴って収縮する。これにより、ポンプ室6内の作動油が、図1に矢印で示すように、吐出ポート31を通って高圧室16に吐出される。高圧室16に吐出された作動油は、吐出通路17及び供給管71を通じて外部の流体圧機器70へと供給される。ベーンポンプ100では、ロータ2が1回転する間に、各ポンプ室6が作動油の吸込、吐出を2度繰り返す。
高圧室16に吐出された作動油の一部は、図示しない通路を通じて背圧室5に供給され、ベーン3の基端部3bを内周カム面4aに向かって押圧する。したがって、ベーン3は、基端部3bを押圧する背圧室5の流体圧力と、ロータ2の回転に伴って働く遠心力と、によってスリット2aから突出する方向に付勢される。これにより、ベーン3の先端部3aがカムリング4の内周カム面4aに摺接しながら回転するので、ポンプ室6内の作動油は、ベーン3の先端部3aとカムリング4の内周カム面4aとの間から漏れることなく吐出ポート31から吐出される。
ベーンポンプ100が停止されると、ポンプ室6で吸込み圧が生じなくなるため、タンク60からベーンポンプ100への作動油の移動が停止し、これに伴って、ポンプ室6から高圧室16への作動油の吐出も停止する。そして、流体圧機器70やエンジンが再び駆動されることに伴って、ベーンポンプ100も再び駆動される。
ここで、ベーンポンプ100が流体圧機器等に搭載された状態において、タンク60とベーンポンプ100との接続部である吸込通路12の吸込開口端12aの位置が、ポンプ室6に作動油を導く第1吸込ポート14及び第2吸込ポート15や吸込圧室13よりも低い位置に設けられている場合、ベーンポンプ100が停止されると、ベーンポンプ100内の作動油が吸込通路12を通じてタンク60へと戻ってしまう。このようにベーンポンプ100内に作動油がない状態でベーンポンプ100が再び駆動されると、まずタンク60からポンプ室6へ至る通路が作動油によって満たされなければならないため、ポンプ室6から作動油が吐出されるまでに時間がかかり、結果として、吐出圧の立ち上がりが遅れるおそれがある。
本実施形態では、ベーンポンプ100が流体圧機器等に搭載された状態において、吸込通路12の吸込開口端12aは、第1吸込ポート14及び第2吸込ポート15や吸込圧室13よりも高い位置に設けられる。このため、ベーンポンプ100が停止してもベーンポンプ100内の作動油が吸込通路12を通じてタンク60へと戻ることなく、ベーンポンプ100内に留まることになる。特に、ロータ2の回転中心Cを通る水平線Hよりも下方に配置される吸込圧室13と副吸込圧室21とには、作動油が貯留されやすくなる。このようにベーンポンプ100内に作動油が貯留された状態でベーンポンプ100が再び駆動されると、ポンプ室6から作動油が吐出されるまでに時間がかからないため、結果として、吐出圧の立ち上がりを向上させることができる。つまり、ベーンポンプ100が流体圧機器等に搭載された状態において、吸込圧室13及び副吸込圧室21が吸込通路12の吸込開口端12aよりも低い位置に配置されていれば、上記効果を奏するため、例えば、吸込圧室13及び副吸込圧室21をロータ2の回転中心Cを通る水平線Hよりも下方に設け、吸込開口端12aをロータ2の回転中心Cを通る水平線Hよりも上方に設けた構成とすればよい。
また、本実施形態では、ベーンポンプ100が流体圧機器等に搭載された状態において、吐出通路17の吐出開口端17aも、第1吸込ポート14及び第2吸込ポート15や吸込圧室13よりも高い位置に設けられる。このため、ベーンポンプ100が停止してもベーンポンプ100内の作動油が吐出通路17を通じて流体圧機器70に流出することなく、ベーンポンプ100内に留まることになる。
また、ベーンポンプ100が流体圧機器等に搭載された状態において、第1吸込ポート14と第2吸込ポート15とのうち何れか一方を下方に向けて配置しておけば、ベーンポンプ100が再び駆動されたときに、下方に配置された吸込ポートを通じてポンプ室6に作動油が導かれ、早期に作動油が吐出されると考えられる。しかしながら、この場合、上方に配置された吸込ポートを通じてポンプ室6に作動油が導かれるまでに時間がかかるため、結果として、ベーンポンプ100の吐出圧の立ち上がりが遅れるおそれがある。
これに対して、本実施形態では、第1吸込ポート14と第2吸込ポート15とは、ベーンポンプ100が流体圧機器等に搭載された状態において、ロータ2の回転中心Cを通る水平線H上に配置される。このため、ベーンポンプ100が再び駆動されたとき、第1吸込ポート14と第2吸込ポート15との両方の吸込ポートから同時にポンプ室6に作動油が導かれる。この結果、吐出圧の立ち上がりを向上させることができる。
さらに本実施形態では、ベーンポンプ100が流体圧機器等に搭載された状態において、ポンプ室6のうちロータ2の回転中心Cよりも下方において圧縮されるポンプ室6へ作動油を導く第1吸込ポート14が、吸込通路12に近い位置に配置される。ここで、ベーンポンプ100が停止されると、吐出圧が低下するため、背圧室5の圧力も低下し、ベーン3はその自重によって変位することとなる。つまり、ロータ2の回転中心Cよりも下方にあるベーン3はその自重によって内周カム面4aに向かって変位した状態となる。このため、ロータ2の回転中心Cより上方にあるポンプ室6よりも下方にあるポンプ室6の方が作動油を吐出しやすい状態となる。つまり、本実施形態では、第1吸込ポート14と第2吸込ポート15とのうち、作動油を吐出しやすい状態にあるポンプ室6に連通する第1吸込ポート14に作動油を優先して供給することができる。加えて、本実施形態では、吸込通路12から第1吸込ポート14と第2吸込ポート15とに対して作動油を導く分岐通路を有しない構成であるため、流路を簡素化できるとともに、吸込通路12の近くに配置される第1吸込ポート14に至る流路の吸込抵抗を低減させることができる。
以上のように、上記実施形態によれば、ベーンポンプ100を再駆動したときの吐出圧の立ち上がりを向上させることができる。
以上のように構成された本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
ベーンポンプ100は、回転駆動されるロータ2と、ロータ2に摺動自在に挿入される複数のベーン3と、ロータ2が回転するのに伴ってベーン3の先端部3aが摺接するカムリング4と、カムリング4を収容するポンプボディ10と、ポンプボディ10を封止するポンプカバー20と、隣り合うベーン3と、カムリング4と、の間に画成されるポンプ室6と、ポンプ室6へ作動油を導く吸込ポート14,15と、吸込ポート14,15に連通し、作動油が貯留される吸込圧室13と、吸込圧室13に接続される接続部12bと、ポンプボディ10の外面に開口する吸込開口端12aと、を有する吸込通路12と、を備え、ベーンポンプ100が搭載された状態で、吸込圧室13は、吸込通路12の吸込開口端12aよりも下方に設けられることを特徴とする。
この構成によれば、ベーンポンプ100が流体圧機器等に搭載された状態で、吸込圧室13は、吸込通路12の吸込開口端12aよりも下方に設けられる。このため、ベーンポンプ100が停止してもベーンポンプ100内の作動油は吸込圧室13に留まり、吸込通路12を通じてタンク60へ戻ることはない。このように、ベーンポンプ100内に作動油が貯留された状態でベーンポンプ100が再び駆動されると、ポンプ室6から作動油が吐出されるまでに時間がかからないため、結果として、吐出圧の立ち上がりを向上させることができる。
また、吸込ポート14,15は、ロータ2の回転中心Cを挟んで対向して設けられる第1吸込ポート14と第2吸込ポート15とを有し、吸込圧室13は、第1吸込ポート14と第2吸込ポート15とを連通する連通部13aを有することを特徴とする。
この構成では、第1吸込ポート14と第2吸込ポート15とを連通する連通部13aが吸込圧室13の一部として設けられる。つまり、ベーンポンプ100が停止した際に第1吸込ポート14と第2吸込ポート15とを連通する連通部13aには、作動油が貯留される。連通部13aに貯留された作動油は、ベーンポンプ100が再び駆動されるとき、第1吸込ポート14と第2吸込ポート15との少なくとも一方に対して速やかに供給される。この結果、ポンプ室6から作動油が吐出されるまでに時間がかかることなく、吐出圧の立ち上がりを向上させることができる。
また、ベーンポンプ100が搭載された状態で、第1吸込ポート14と第2吸込ポート15とは、ロータ2の回転中心Cを通る水平線H上に配置されることを特徴とする。
この構成では、第1吸込ポート14と第2吸込ポート15とは、ベーンポンプ100が流体圧機器等に搭載された状態において、ロータ2の回転中心Cを通る水平線H上に配置される。このため、ベーンポンプ100が再び駆動されたとき、第1吸込ポート14と第2吸込ポート15との両方の吸込ポートからほぼ同時にポンプ室6に作動油が導かれる。この結果、一方の吸込ポートのみが下方に配置される場合と比較し、吐出圧の立ち上がりを向上させることができる。
また、ベーンポンプ100が搭載された状態で、第1吸込ポート14は、ポンプ室6のうちロータ2の回転中心Cよりも下方において圧縮されるポンプ室6へ作動油を導き、第2吸込ポート15は、ポンプ室6のうちロータ2の回転中心Cよりも上方において圧縮されるポンプ室6へ作動油を導き、第1吸込ポート14は、第2吸込ポート15よりも、接続部12bに近い部分において吸込圧室13に連通することを特徴とする。
この構成では、ベーンポンプ100が流体圧機器等に搭載された状態において、ポンプ室6のうちロータ2の回転中心Cよりも下方において圧縮されるポンプ室6へ作動油を導く第1吸込ポート14が接続部12bに近い位置、すなわち、吸込通路12に近い位置に配置される。ベーンポンプ100が停止した状態において、ロータ2の回転中心Cよりも下方にあるベーン3はその自重によって内周カム面4aに向かって変位した状態となるため、ロータ2の回転中心Cより上方にあるポンプ室6よりも下方にあるポンプ室6の方が作動油を吐出しやすい状態となる。つまり、この構成では、第1吸込ポート14と第2吸込ポート15とのうち、作動油を吐出しやすい状態にあるポンプ室6に連通する第1吸込ポート14に作動油を優先して供給可能な構成とされている。このため、ベーンポンプ100の吐出圧の立ち上がりをさらに向上させることができる。また、この構成では、吸込通路12から第1吸込ポート14と第2吸込ポート15とのそれぞれに作動油を導く分岐通路が設けられないため、流路を簡素化できるとともに、吸込通路12の近くに配置される第1吸込ポート14に至る流路の吸込抵抗を低減させることができる。
また、吸込圧室13,21は、ポンプボディ10とポンプカバー20とに跨って設けられることを特徴とする。
この構成では、ポンプボディ10とポンプカバー20とに跨って吸込圧室13,21が設けられる。このように、作動油を貯留する吸込圧室13,21の体積が確保されると、ベーンポンプ100が停止したときに多くの作動油をベーンポンプ100内に留めておくことができる。ベーンポンプ100内に多くの作動油が貯留された状態でベーンポンプ100が再び駆動されると、ポンプ室6から作動油が吐出されるまでに時間がかからないため、結果として、吐出圧の立ち上がりを向上させることができる。さらに、第1吸込ポート14と第2吸込ポート15とに作動油を導く油路である吸込圧室13,21の体積が確保されると、各吸込ポート14,15においてキャビテーションが発生することを抑制することができる。
また、ベーンポンプ100は、ポンプ室6から吐出される作動油が導かれる吐出ポート31と、吐出ポート31が連通し、加圧された作動油が貯留される高圧室16と、ポンプボディ10の外面に開口する吐出開口端17aを有し高圧室16と連通する吐出通路17と、をさらに備え、ベーンポンプ100が搭載された状態で、吸込圧室13は、吐出通路17の吐出開口端17aよりも下方に設けられることを特徴とする。
この構成では、ベーンポンプ100が流体圧機器等に搭載された状態において、吸込圧室13は、吐出通路17の吐出開口端17aよりも下方に設けられる。このため、ベーンポンプ100が停止してもベーンポンプ100内の作動油は吸込圧室13に留まり、吐出通路17を通じて流体圧機器70に流出することはない。このように、ベーンポンプ100内に作動油が貯留された状態でベーンポンプ100が再び駆動されると、ポンプ室6から作動油が吐出されるまでに時間がかからないため、結果として、吐出圧の立ち上がりを向上させることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
例えば、ベーンポンプ100は、タンク60の外に配置されるものに限定されず、タンク60内に配置され、作動油に浸漬されていてもよい。
また、ベーンポンプ100は、吐出容量(ポンプ押しのけ容積)が一定である形式のポンプに限定されず、カムリングを変位させることによって吐出容量を変更可能な可変容量型のポンプであってもよい。