以下、一実施形態によるヒートポンプ式乾燥機について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、ヒートポンプ式乾燥機としての洗濯乾燥機10は、外箱11、水槽12、回転槽13、回転槽モータ14、及び扉15を備えている。洗濯乾燥機10は、ヒートポンプ方式の乾燥機能を備え、例えば回転槽13の回転軸が地面に対して傾斜したいわゆるドラム式の洗濯乾燥機である。外箱11は、鋼板などによって略矩形の箱状に形成されている。水槽12は、外箱11の内部に収容されている。回転槽13は、水槽12の内部に収容されている。水槽12及び回転槽13は、いずれも円筒状に形成されている。
水槽12は、円筒状の一方の端部に開口部121が形成され、他方の端部に水槽端板122が設けられている。開口部121は、傾斜した水槽12において水槽端板122よりも上側に位置している。同様に、回転槽13は、円筒状の一方の端部に開口部131が形成され、他方の端部に回転槽端板132が設けられている。開口部131は、傾斜した回転槽13において回転槽端板132よりも上側に位置している。回転槽13の開口部131は、水槽12の開口部121に周囲を覆われている。水槽12及び回転槽13は、衣類を収容する乾燥室として機能する。
水槽12は、排気口16及び給気口17を有している。排気口16は、水槽12の筒状部分を構成する周壁にあって上部前寄り部分に設けられている。給気口17は、水槽端板122にあって、該水槽端板122の中心よりやや上寄り部分に設けられている。排気口16及び給気口17は、水槽12の内部と外部とを連通している。
水槽12は、重力方向の下方に位置する底部の後端側に排水部18を有している。排水部18は、排気口16及び給気口17の下方に位置している。排水部18は、排水口123、排水弁19、及び排水ホース20から構成されている。排水弁19が開放されることにより、水槽12内の水は、排水口123から排水弁19及び排水ホース20を経由して洗濯乾燥機10の外部へ排出される。
回転槽13は、複数の孔21及び複数の連通口22を有している。孔21及び連通口22は、回転槽13の内部と外部とを連通している。孔21は、回転槽13の円筒状の筒状部分を構成する周壁の全域に形成されている。連通口22は、回転槽端板132の全域に形成されている。孔21及び連通口22は、洗濯運転時及び脱水運転時には、主に水が出入りする通水孔として機能し、乾燥工程時には空気が出入りする通風孔として機能する。なお、図1では、簡単のため複数の孔21及び連通口22のうち一部のみを示している。また、詳細は図示しないが、回転槽13には、筒状部分の内側に複数のバッフルが設けられている。バッフルは、回転槽13の内側に収容された洗濯物を撹拌する。
回転槽モータ14は、水槽12の外側にあって水槽端板122に設けられている。回転槽モータ14は、例えばアウターロータ型のDCブラシレスモータである。回転槽モータ14の軸部141は、水槽端板122を貫いて水槽12の内側へ突出し、回転槽端板132の中心部に固定されている。これにより、回転槽モータ14は、水槽12に対して回転槽13を相対的に回転させる。この場合、軸部141、回転槽13の回転軸、及び水槽12の中心軸は、それぞれ一致している。
扉15は、図示しないヒンジを介して外箱11の外面側に設けられている。扉15は、ヒンジを支点に回動し、外箱11の前面に形成された図示しない開口部を開閉する。この外箱11に形成された開口部は、ベローズ112によって、水槽12の開口部121に接続されている。衣類などの洗濯物は、扉15を開放した状態で、開口部121、131を通して回転槽13内に出し入れされる。
洗濯乾燥機10は、図4に示す制御装置23や操作パネル24、及び図2に示す給水装置25を備えている。制御装置23は、マイクロコンピュータなどから構成されており、洗濯乾燥機10の作動全般を制御する。操作パネル24は、図1に示すように、外箱11の前面にあって扉15の上側に設けられている。操作パネル24は、図4に示すように、制御装置23に接続されており、ユーザは、操作パネル24を操作することによって運転コースの選択など各種設定を行う。また、操作パネル24は、報知部241を有している。報知部241は、洗濯乾燥機10に異常等が生じた場合に、例えば画像や音等によって異常が生じた旨をユーザに報知するためのものである。報知部241は、例えば液晶パネルやスピーカ等である。
給水装置25は、図2に示すように、給水ケース26、給水弁27、及び給水ホース28などから構成されている。給水弁27は、制御装置23に接続され、制御装置23の制御を受けて開閉駆動される。給水ホース28は、一端が給水弁27に接続され、他端が水道などの外部の水源に接続されている。制御装置23は、給水弁27を開閉駆動することにより、水源からの水を、給水ホース28、給水弁27、及び給水ケース26を介して水槽12内へ供給する。
洗濯乾燥機10は、図3にも示すように循環風路30を備えている。循環風路30は、水槽12の外側に設けられており、排気口16と給気口17とを繋いでいる。具体的には、循環風路30は、排気ダクト31、フィルタ装置32、接続ダクト33、熱交換部34、及び給気ダクト35から構成されている。
排気ダクト31は、図1にも示すように、水槽12の排気口16とフィルタ装置32とを接続している。排気ダクト31は、例えば蛇腹状のホースで構成されている。フィルタ装置32は、外箱11の内側上部にあって、水槽12及び回転槽13の上方に設けられている。フィルタ装置32内には、フィルタ321が設けられている。フィルタ装置32は、排気口16から排気された空気をフィルタ321に通過させることで、排気口16から排気された空気に含まれるリントなどの異物を取り除く。
フィルタ装置32は、接続ダクト33を介して熱交換部34の上流側に接続されている。熱交換部34は、外箱11の内側下部にあって、フィルタ装置32、水槽12及び回転槽13の下方に設けられている。熱交換部34は、内部を通過する空気を除湿及び加熱することで乾燥した温風を生成する。熱交換部34内には、ヒートポンプユニット40を構成する蒸発器41及び凝縮器42が設けられている。蒸発器41は、乾燥工程時における熱交換部34内の空気の流れに対して、凝縮器42よりも上流側に設けられている。熱交換部34内を通る空気は、蒸発器41によって冷却され、これにより除湿される。蒸発器41によって除湿された空気は、その後、凝縮器42によって加熱されて温風になる。
熱交換部34の下流側は、給気ダクト35を介して水槽12の給気口17に接続されている。熱交換部34と給気ダクト35との接続部分には、循環ファン36が設けられている。循環ファン36は、例えばシロッコファンなどで構成されている。循環ファン36は、制御装置23の制御によって回転数が変更可能に構成されている。本実施形態において、制御装置23は、循環ファン36のファンモータの誘起電圧を検知することで、ソフトウェア的に循環ファン36の回転状態を判断することができる。なお、循環ファン36のファンモータにエンコーダ等の回転検出器を設けて、この回転検出器によって、循環ファン36の回転状態をハードウェア的に検出するようにしてもよい。
循環ファン36は、熱交換部34内の空気を吸い込み、給気ダクト35側へ吐出する。これにより、図1、図2、及び図3の矢印Aで示すように、水槽12及び循環風路30を循環する空気の流れが生じる。この場合、循環風路30内の空気の流れについて見ると、排気口16が最上流側となり、給気口17が最下流側となる。
この構成において、圧縮機43及び循環ファン36を駆動させると、熱交換部34内で除湿及び加熱された温風は、循環ファン36の送風作用により、給気ダクト35を介して給気口17から水槽12内へ供給される。その後、温風は、主に連通口22から回転槽13内へ入り、回転槽13内の洗濯物から湿気を奪った後、主に孔21から回転槽13の外側へ出る。そして、湿気を含んだ空気は、排気口16から循環風路30に吸い込まれる。循環風路30に吸い込まれた空気は、まず排気ダクト31及びフィルタ装置32を通過する。その後、接続ダクト33を介して熱交換部34へ流れる。このように、乾燥工程は、水槽12と循環風路30との間で空気を循環させ、その空気を循環風路30内で除湿及び加熱することによって行われる。
次に、ヒートポンプユニット40について説明する。ヒートポンプユニット40は、図3に示すように、蒸発器41及び凝縮器42の他、圧縮機43及び減圧装置44を有している。圧縮機43及び減圧装置44は、熱交換部34の外側に設けられている。ヒートポンプユニット40は、圧縮機43を基準とした冷媒が流れる方向に対して順に、凝縮器42、減圧装置44、及び蒸発器41を環状に接続して構成されている。蒸発器41及び凝縮器42は、例えば微小な間隔で設けられた多数のフィンを有する管で構成されており、この管の内部に冷媒を流すことで、フィン間を通る空気と冷媒との熱交換を行う。蒸発器41及び凝縮器42は、熱交換器として機能する。
圧縮機43は、圧送により冷媒を凝縮器42へ供給する。圧縮機43は、制御装置23に接続され、制御装置23の制御により駆動及び停止される。圧縮機43は、例えば供給される交流電源の周波数に応じて一定周波数で駆動する。また、圧縮機43の吸込側431には、アキュムレータ45が設けられている。アキュムレータ45は、圧縮機43に流入する冷媒の圧力変動を抑制する。減圧装置44は、凝縮器42から吐出された高圧で液状の冷媒を、減圧して低圧の気液混合状態にする。この場合、減圧装置44は、例えばキャピラリチューブなどで構成されているが、制御装置23の制御によって開閉可能な電磁開閉式の膨張弁などであってもよい。
洗濯乾燥機10は、図3及び図4に示すように、給気温度センサ51、排気温度センサ52、圧縮機温度センサ53、凝縮器温度センサ54、蒸発器入口温度センサ55、蒸発器出口温度センサ56、及び外気温度センサ57を備えている。給気温度センサ51、排気温度センサ52、圧縮機温度センサ53、凝縮器温度センサ54、蒸発器入口温度センサ55、蒸発器出口温度センサ56、及び外気温度センサ57は、それぞれ制御装置23に接続されている。
給気温度センサ51及び排気温度センサ52は、図3に示すように、循環風路30内に設けられ、循環風路30内の空気の温度を検出する。このうち、給気温度センサ51は、凝縮器42と給気口17との間でかつ給気口17の近傍に設けられている。給気温度センサ51は、給気ダクト35を通って乾燥室である水槽12及び回転槽13内へ供給される空気、つまり熱交換部34で熱せられて乾燥室内へ供給される空気の温度を検出する。排気温度センサ52は、蒸発器41と排気口16との間でかつ排気口16の近傍に設けられている。排気温度センサ52は、乾燥室である水槽12及び回転槽13から排気されて排気ダクト31内を通る空気の温度を検出する。
圧縮機温度センサ53は、圧縮機43の吐出側の冷媒管に設けられており、圧縮機43から吐出される冷媒の温度つまり圧縮機43の温度を検出する。凝縮器温度センサ54は、凝縮器42の中央部に設けられており、凝縮器42の温度を検出する。蒸発器入口温度センサ55は、蒸発器41に対して冷媒の入口側に設けられている。蒸発器入口温度センサ55は、蒸発器41の入口側部分の温度つまり蒸発器41に流入する冷媒の温度を検出する。蒸発器出口温度センサ56は、蒸発器41に対して冷媒の出口側に設けられている。蒸発器出口温度センサ56は、蒸発器41の出口側部分の温度つまり蒸発器41から流出した冷媒の温度を検出する。
外気温度センサ57は、図2に示すように、外箱11内において、ヒートポンプユニット40の外部であってヒートポンプユニット40から極力離れた位置、つまりヒートポンプユニット40に生じる熱の影響を受け難い位置に設けられている。この場合、外気温度センサ57は、外箱11内にあって外箱11の外部近傍に設けられている。外気温度センサ57は、外箱11内におけるヒートポンプユニット40の外部の空気の温度、つまり実質的には洗濯乾燥機10が設置されている部屋の室温である外気温度を検出する。
制御装置23は、洗濯運転と乾燥運転と洗乾運転とを選択的に実行可能である。このうち、乾燥運転及び洗乾運転で実行される乾燥工程について、図5から図7も参照して説明する。制御装置23は、乾燥工程を実行すると(図5のスタート)、ステップS11において、ヒートポンプユニット40の圧縮機43、循環ファン36、及び回転槽モータ14を駆動させる。これにより、回転槽13を回転させつつ、水槽12及び回転槽13内に対する温風の供給が開始される。
次に、制御装置23は、ステップS12〜S15を実行し、乾燥工程を開始してから所定期間経過するまで、ヒートポンプユニット40の立ち上がり状態が正常であるか否かを判断する。ここで、制御装置23は、蒸発器出口温度T1、外気温度T2、及び排気温度T3を検出可能である。蒸発器出口温度T1は、蒸発器41の出口側から流出する冷媒の温度であり、蒸発器出口温度センサ56によって検出される。外気温度T2は、ヒートポンプユニット40の外部の温度、実質的には外箱11の外部の温度であり、外気温度センサ57によって検出される。排気温度T3は、水槽12及び回転槽13から循環風路30内へ排気された空気の温度であり、排気温度センサ52によって検出される。
制御装置23は、ステップS12において、第1異常が発生したか否かを判断する。第1異常とは、循環風路30内を流れる循環風の風量が無くなるか又は極端に低下して、熱交換部34において熱交換が行われなくなるか又はほとんど行われなくなったことによる異常である。この場合、熱交換部34における冷媒と循環風路30内を流れる空気との熱交換が正常に行われなくなっており、圧縮機43に流入する冷媒の圧力が不安定となる。その結果、第1異常が生じた状態では、圧縮機43にチャタリングが生じ易い状態となっている。第1異常の発生要因としては、例えばフィルタ321にリントが堆積して空気がフィルタ321を通過できなくなったり、何らかの要因によって循環ファン36が停止したりすることが考えられる。
ここで、本願発明者は、ヒートポンプユニット40の立ち上がり初期の状態における蒸発器出口温度T1と外気温度T2とについて、次の相関を見出した。すなわち、図6では、蒸発器出口温度T1と外気温度T2との温度差Tdについて、「正常時」及び「第1異常時」の場合を示している。この温度差Tdは、圧縮機43を起動してヒートポンプユニット40の運転を開始した直後は、「正常時」及び「第1異常時」のいずれにおいても、ほとんど差は生じておらず、「0」に近い値となっている。
そして、循環風路30内に循環風が正常に流れており蒸発器41及び凝縮器42での熱交換が正常に行われてれば、図6の「正常時」の曲線で示すように、負の値に一端低下した後、数分程度例えば4、5分程度の時間が経過した後に正の値に上昇する。つまり、ヒートポンプユニット40の立ち上がり初期が正常である場合、蒸発器出口温度T1は、ヒートポンプユニット40の運転を開始した直後に外気温度T2よりも一旦低くなり、その後、数分経過した後に外気温度T2よりも高くなる。
一方、循環風路30内に循環風が流れていないか又は循環風量が極端に低下して蒸発器41及び凝縮器42での熱交換が正常に行われていない場合、蒸発器出口温度T1と外気温度T2との温度差Tdは、図6の「第1異常時」の曲線で示すように、負の値に減少することなく、上昇を続ける。すなわち、ヒートポンプユニット40の立ち上がり初期が正常でない場合、蒸発器出口温度T1は、外気温度T2よりも常に高くなる。
以上より、本実施形態では、ヒートポンプユニット40の立ち上がり初期の第1異常を、蒸発器出口温度T1と外気温度T2との温度差Tdに基づいて判断する。すなわち、制御装置23は、図5のステップS12において、蒸発器出口温度T1が外気温度T2よりも所定温度Ta以上高くなっているか否かを判断する。つまり、制御装置23は、ステップS12において、蒸発器出口温度T1と外気温度T2との差つまり温度差Tdが所定温度Ta以上であるか否かを判断する。この場合、所定温度Taは、例えば7℃から8℃程度である。なお、所定温度Taは、例示した7℃から8℃の範囲に限られず、圧縮機43の回転周波数や蒸発器41及び凝縮器42のサイズ等、ヒートポンプユニット40の能力に応じて適宜変更することができる。
そして、制御装置23は、蒸発器出口温度T1と外気温度T2との温度差Tdが所定温度Ta以上である場合(ステップS12でYES)、ステップS20へ処理を移行し、第1異常を検知したと判断する。一方、制御装置23は、蒸発器出口温度T1と外気温度T2との温度差Tdが所定温度Ta未満である場合(ステップS12でNO)、ステップS13へ処理を移行する。そして、制御装置23は、ステップS13において、乾燥工程を開始してから第1期間A1が経過したか否かを判断する。本実施形態の場合、第1期間A1は、例えば5分間である。なお、第1期間A1は、例示した5分間に限られず、圧縮機43の回転周波数や蒸発器41及び凝縮器42のサイズ等、ヒートポンプユニット40の能力に応じて適宜変更することができる。
制御装置23は、乾燥工程を開始してから第1期間A1が未だ経過していない場合(ステップS13でNO)、ステップS12へ処理を移行し、第1期間A1が経過するまでステップS12、S13を繰り返す。そして、蒸発器出口温度T1と外気温度T2との温度差Tdが所定温度Taを超えることなく第1期間A1が経過すると(ステップS12でNO、かつ、ステップS13でYES)、制御装置23は、ステップS14へ処理を移行する。
制御装置23は、ステップS14において、第2異常が発生したか否かを判断する。第2異常とは、第1異常の要因以外を要因とする異常をいう。第2異常は、例えば圧縮機43に故障が生じたり、冷媒の漏れが生じたりすることによって、ヒートポンプユニット40による冷凍サイクルが正常に立ち上がらないような異常をいう。この場合、第2異常とは、圧縮機43にチャタリングが発生する可能性が低い異常を意味する。
ここで、ヒートポンプユニット40の立ち上がりが正常であれば、排気温度T3は、図7の「正常時」の曲線で示すように、ヒートポンプユニット40の運転開始から例えば30分程度で、所定温度Tb例えば外気温度T2+10℃以上に上昇する。一方、ヒートポンプユニット40の立ち上がりが正常でないつまり第2異常である場合、排気温度T3は、図7の「第2異常時」の曲線で示すように、ヒートポンプユニット40の運転開始から例えば30分間経過しても、所定温度Tb以上には上昇しない。
そこで、本実施形態において、制御装置23は、ステップS14において、排気温度T3が所定温度Tb以上になったか否かを判断する。所定温度Tbは、例えば外気温度T2+10℃である。すなわち、制御装置23は、ステップS14において、乾燥工程の開始から排気温度T3が所定温度Tb℃以上に上昇したか否かを判断する。制御装置23は、排気温度T3が所定温度Tb以上になっていれば(ステップS14でYES)、図5のステップS16へ処理を移行し、ヒートポンプユニット40の立ち上がりが正常であると判断する。一方、制御装置23は、排気温度T3が所定温度Tb未満であれば(ステップS14でNO)、ステップS15へ処理を移行する。
制御装置23は、ステップS15において、乾燥工程の開始から第2期間A2が経過したか否かを判断する。本実施形態の場合、第2期間A2は、第1期間A1よりも長い期間であり、例えば30分間である。なお、第2期間A2は、例示した30分間に限られず、回転槽13内に収容された衣類の重量やヒートポンプユニット40の性能等に応じて適宜変更することができる。制御装置23は、乾燥工程の開始から第2期間A2が経過していれば(ステップS15でYES)、ステップS21へ処理を移行し、第2異常を検知したと判断する。一方、制御装置23は、乾燥工程を開始してから第2期間A2が経過していなければ(ステップS15でNO)、ステップS14へ処理を移行し、ステップS14、S15の処理を繰り返す。
このように、制御装置23は、乾燥工程を開始した後、蒸発器出口温度T1と外気温度T2と温度差Tdが所定温度Ta以上になることなく第1期間A1が経過し(ステップS12でNO及びステップS13でYES)、かつ、第2期間A2を経過する前に排気温度T3が所定温度Tb以上になった場合(ステップS14でYES)、ステップS16へ処理を移行し、乾燥工程の立ち上がりすなわちヒートポンプユニット40の立ち上がりが正常であると判断する。
そして、ヒートポンプユニット40の立ち上がりが正常であった場合、制御装置23は、ステップS17へ処理を移行し、圧縮機43、循環ファン36、及び回転槽モータ14の駆動を継続して、乾燥工程を継続する。その後、制御装置23は、ステップS18において、乾燥工程が終了であるか否かを判断する。この場合、制御装置23は、例えば給気温度センサ51による給気温度T4と排気温度T3との差が所定値Tc以上であれば、未だ乾燥工程は終了していないと判断し(ステップS18でNO)、ステップSS17へ処理を以降して乾燥工程を継続する。一方、制御装置23は、給気温度T4と排気温度T3との差が所定値Tc未満となった場合には、乾燥工程が終了したと判断し(ステップS18でYES)、ステップS19へ処理を移行する。そして、制御装置23は、ステップS19において、圧縮機43、循環ファン36、及び回転槽モータ14を停止させて、これにより乾燥工程を終了する(エンド)。
これに対し、制御装置23は、ステップS20を実行して第1異常を検知した場合、又はステップS21を実行して第2異常を検知した場合、ステップS22へ処理を移行する。そして、制御装置23は、報知部241によって、第1異常又は第2異常を検知した旨をユーザへ報知する。この場合、報知部241は、例えば液晶パネルやスピーカ等である。そして、制御装置23は、液晶パネルに表示される画像や記号、又はスピーカから発生される音によって、第1異常と第2異常とを区別して、ユーザに報知する。その後、制御装置23は、ステップS19へ処理を移行させ、圧縮機43、循環ファン36、及び回転槽モータ14を停止させて、乾燥工程を終了する(エンド)。
ここで、通常、制御装置23は、例えば循環ファン36のファンモータの誘起電圧を検知することで、ソフトウェア的に循環ファン36の回転状態を判断している。しかし、何らかの要因で循環ファン36が停止していても、ノイズ等によって誘起電圧に相当する信号が入力されると、制御装置23は、循環ファン36が回転していると誤判断する可能性がある。この場合、実際には循環ファン36の回転は停止しているのに、その循環ファン36の停止を検知できないまま乾燥工程を続けると、熱交換器41、42での熱交換量が極端に低下して、圧縮機43にチャタリングが生じるおそれがある。そして、圧縮機43にチャタリングが生じている状態を放置すると、異音や騒音の基になるだけでなく、圧縮機43そのものも損傷を受けるおそれがある。
これに対し、本実施形態によれば、制御装置23は、乾燥工程を開始してから所定期間つまり第1期間Aが経過するまでに、蒸発器出口温度T1が、外気温度T2よりも所定温度Ta以上高くなった場合に、ヒートポンプユニット40の立ち上がりが第1異常であると判断する。そしてこの場合、制御装置23は、ヒートポンプユニット40の立ち上がりが第1異常である旨を、報知部241によってユーザに報知するとともに、圧縮機43を停止してヒートポンプユニット40を停止する。これによれば、循環ファン36が故障して停止したりフィルタ321にリントが堆積したりして、循環風路30内を流れる空気の風量が低下することにより生じるヒートポンプユニット40の立ち上がり異常を早期に発見することができる。
すなわち、従来構成において、ヒートポンプユニット40が正常に立ち上がったか否かは、例えば排気温度T3が、ヒートポンプユニット40の運転を開始してから所定期間A2に所定温度Tb以上に上昇したか否かによって判断していた。しかし、排気温度T3は、正常に立ち上がった場合と正常に立ち上がっていない場合のいずれにおいても、外気温度T2に対して高い値となる。そのため、ヒートポンプユニット40が正常に立ち上がった場合の排気温度T3と、正常に立ち上がっていない場合の排気温度T3との差が明確になるまでには、比較的長時間を要する。この場合、従来構成のように、例えば排気温度T3のみでヒートポンプユニット40の立ち上がり状態を判断していると、圧縮機43にチャタリングが生じるような異常が発生していても、その異常を早期に発見することができない。
これに対し、蒸発器出口温度T1と外気温度T2との温度差Tdについて見ると、ヒートポンプユニット40の立ち上がりが正常である場合、温度差Tdは、ヒートポンプユニット40の運転開始から負の値に一端減少した後、数分程度例えば4、5分程度の時間が経過した後に正の値に上昇する。一方、圧縮機43にチャタリングが生じるような異常が発生している場合、温度差Tdは、ヒートポンプユニット40の運転開始から負の値に減少することなく、上昇を続ける。そのため、ヒートポンプユニット40が正常に立ち上がっている場合の温度差Tdと、圧縮機43にチャタリングが生じるような異常が発生した場合の温度差Tdとは、ヒートポンプユニット40の運転開始から比較的短時間で明確に区別できるようになる。
したがって、本実施形態によれば、制御装置23は、圧縮機43にチャタリングが生じるような異常が発生した場合であっても、その異常を早期に発見することができる。そして、制御装置23は、ヒートポンプユニット40の立ち上がり異常を検知した場合には、圧縮機43、循環ファン36、及び回転槽モータ14を停止して乾燥工程を停止することで、その異常に対応している。これにより、圧縮機43にチャタリングが生じたまま運転が継続されることを防いで、圧縮機43の損傷及び劣化を極力防止することができる。その結果、安全性を高めたヒートポンプ式乾燥機を提供することができる。
以上、本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。