JP2017063001A - 鉛蓄電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 正極板と負極板とをセパレータを介して積層した極板群と、電解液と、前記極板群を収納した電槽を備えた鉛蓄電池であって、前記負極板の耳を接続する負極ストラップ直下の両端の耳の外端間の長さA、及び前記正極板の耳を接続する正極ストラップ直下の両端の耳の外端間の長さA´が、それぞれ、前記各ストラップに接続された極板のうち両端に位置する極板における上部枠骨部の積層方向外端間の長さB、B´より小さく、前記セパレータは、前記正極板の上部と向かい合う領域及び前記負極板の上部と向かい合う領域にリブを有することを特徴とする。
【選択図】 図2
Description
例えば、アイドリングストップ車(IS)では、停車の都度エンジンを停止させることにより燃料消費量を小さくし、発進時に蓄電池からの電力でエンジンを起動している。このため蓄電池は、充電不足の状態で使用される。IS用途に限らず、エネルギー効率を向上させるために、蓄電池への充電を避け、しかも蓄電池から取り出す電力が増加しているので、蓄電池は充電不足な状態に置かれることが多い。
このリブについて、「極板表面に電解液を確保する空隙ができるばかりでなく、ガス抜けを良くすることができる。」(第4頁)と記載されている。
この発明によると、「極板、とくに負極板と、セパレータとの間の電解液の供給、拡散を良好にし、活物質が濃厚な硫酸によって充放電に寄与しない硫酸鉛に変化することを防止して電池の充放電サイクル寿命を向上させることができる。」(段落[0037])と記載されている。
さらに、「一般社団法人電池工業会規格 SBA S 0101:2006に規定されたQ−55形のアイドリングストップ車用鉛蓄電池に、それぞれ異なるセパレータを適用したものを供試電池として用い、SBA S 0101:2006に準拠して、アイドリングストップ寿命試験を行った。」と記載されている。
また、COS方式においては、鋳型の形状を変更しない場合、電極板を厚くするなどして積層方向における極板群の厚さ寸法が相当に長くなったときは、図1に示す極板群の上部における積層方向の寸法B、より正確には、ストラップに接続された極板のうち両端に位置する極板の集電体における上部枠骨部の積層方向外端間の長さB(以下、「上部極板群長B」といい、単に「長さB」又は「B」ともいう。)が、ストラップ直下の耳群長Aとくらべて長くなる。正極ストラップ直下の耳群長をA´、正極ストラップに接続された正極板のうち両端に位置する極板における上部枠骨部の積層方向外端間の長さ(上部極板群長B´)とすると、A´とB´も同様の関係となる(A´、B´は図示していない。)。以下、AとB、及びA´とB´の大小関係について、AとBとで代表して述べる。
しかし、COS方式によってストラップを形成することは記載されていないし、ストラップ直下の耳群長Aと、上部極板群長Bの大小関係については、何も示唆するところがない。また、低温高率放電性能やPSOC寿命性能についての知見もない。
特許文献3には、PSOC寿命性能について記載されているが、COS方式によってストラップを形成することは記載されていない。また、セパレータは正極対向面にリブを有することが示されているだけであり、耐浸透短絡性能や低温高率放電性能についての知見はない。
本第一発明は、正極板と負極板とをセパレータを介して積層した極板群と、電解液と、前記極板群を収納した電槽を備えた鉛蓄電池であって、
前記負極板の耳を接続する負極ストラップ直下における両端の耳の外端間の長さA、及び前記正極板の耳を接続する正極ストラップ直下における両端の耳の外端間の長さA´が、それぞれ、前記各ストラップに接続された極板のうち両端に位置する極板における上部枠骨部の外端面間の長さB、B´より小さく、
前記セパレータは、前記正極板の上部と向かい合う領域及び前記負極板の上部と向かい合う領域にリブを有することを特徴とする。
本第二乃至第六発明によれば、浸透短絡の抑制に加え、PSOC寿命性能が向上した鉛蓄電池を提供することができる。
本第七発明によれば、浸透短絡が抑制され、かつ、十分なPSOC寿命性能を備えたアイドリングストップ車用鉛蓄電池を提供することができる。
本明細書において、正極板と向かい合う領域に形成されるリブを「正極リブ」という。負極板と向かい合う領域に形成されるリブを「負極リブ」という。
セパレータの平板状の部分(以下、「ベース」又は「ベース部」という。)の厚さを「ベース厚」という。セパレータの正極リブ形成箇所における「ベース厚」を含めたリブの高さを「正極リブ高さ」又は「リブ高さ」という。セパレータの負極リブ形成箇所における「ベース厚」を含めたリブの高さを「負極リブ高さ」という。
正極リブ形成箇所、又は正極リブ及び負極リブ形成箇所におけるセパレータの厚さを「セパレータ総厚」又は「総厚」という。
ライン状のリブ(以下、「ラインリブ」ということもある。)であって、セパレータの一端から他端まで連続したリブ、又は、ドット状のリブ(以下、「ドットリブ」ということもある。)であって、セパレータの一端から他端まで一様に分布したリブを「全リブ」という。
ライン状のリブであって、セパレータの上部の一端から下部方向に所定距離のみ連続したリブ、若しくはセパレータの上部の一端から下部方向の他端まで断続的なリブ、又は、ドット状のリブであって、セパレータの上部のみを含んで分布したリブを「部分リブ」という。
なお、本発明においては、セパレータの総厚を上記のように定義したから、セパレータの横断面(セパレータの上下方向に対して直角方向にカットした断面)で見た場合、図2に示すように、正極リブ形成箇所及び負極リブ形成箇所には重複する箇所が存在する。
上記のポリオレフィンとしては、たとえばポリエチレンを用いることができる。本発明のセパレータは袋状であってもよいし、平板状であってもよい。袋状の場合、この袋内に正極板、負極板のいずれを収納してもよい。
本発明で用いるセパレータは、ベースとリブの合計厚さ(セパレータ総厚)は、0.5mm以上1.0mm以下が好ましく、後述する実施例によると、0.5mm以上0.9mm以下がより好ましい。正極側のリブ高さ及び幅は、上記の機能が発揮できる寸法を用いることができる。
本発明で用いるセパレータの厚さに関する定義を図2を用いて説明する。セパレータのベース部の厚さ(ベース厚)はTで示した寸法とする。セパレータ総厚は、両面にリブがある場合はTBで示した寸法とし、片面にのみリブがある場合はTAで示した寸法とする。リブの高さはベース部の厚さを含むこととし、例えば正極側に突出するリブの高さ(正極リブ高さ)は、HPで示した寸法とする。
PSOCで使用される鉛蓄電池においては、過放電状態になりやすく、極板の表面付近で放電反応により硫酸が消費され、電解液の低比重領域となっている。COS方式を採用した鉛蓄電池のストラップ直下の耳群長Aと上部極板群長BがA<Bであると、極板上部において極間が狭くなりがちであるから、セパレータを極板の表面あるいは表面近傍に形成されると推定される低比重領域から離すことができない。低比重の電解液中では鉛イオンの濃度が高いので、この鉛イオンが充電時に負極で還元・析出してデンドライトが成長し、セパレータのベース部に鉛が浸透する浸透短絡が加速すると考えられる(後述の比較例:A1電池)。
さらに、リブ高さを極間距離を下部にかけて小さくなる設計とすることにより、低温高率放電性能とともにPSOC寿命性能を向上する効果が得られる。この効果は、下部での反応を起こりやすくしてサルフェーションを抑制するとともに、上部での反応を緩和して正極板上部の活物質の劣化を抑制すること起因するものと推察される。
前記極板の上部30%以下の領域と向かい合う領域のみにリブを有することが好ましい。
なぜなら、アイドリングストップ車用の鉛蓄電池は、PSOC条件下で使用されるので他の用途の電池と比べて浸透短絡が生じる確率が高く、その結果として、本発明を適用する意義が大きいからである。
また、本発明をアイドリングストップ車用の鉛蓄電池に適用することで初めて得られる効果もある。アイドリングストップ車用の鉛蓄電池は、非アイドリングストップ車用途のものと比べて、高い充電受入れ性能を達成するため多くの活物質が必要であり、その結果として、極板群の積層方向の寸法(たとえば長さB)は大きくなりがちである。このような極板群を用いた電池を製造する場合、A=B及びA´=B´あるいはA>B及びA´>B´としたときは、ストラップが大形化することとなるので、電槽に収納するのが困難となることがある。とくに、JISD5301に規定されている型式の電池は、電槽サイズに上限が設定されているため、ストラップが長すぎると実質的に電池を製造できなくなることもある。これに対して、A<B及びA´<B´としたときは、ストラップを大形化する必要がないので、極板群の積層方向の寸法を大きくした場合でも、電槽に収納するのが困難という問題は解決可能となる。したがって、本発明においては、セパレータの両面にリブを設け、そのリブを電極板の上部に向かい合う領域に配置することとし、A<B及びA´<B´という構成とし、さらにアイドリングストップ車用の鉛蓄電池として用いることによって、極板上部における浸透短絡を抑制する効果と、ストラップを小形化できる効果と、アイドリングストップ車用途に適した電極群を、規格により上限が定められた電槽内の空間に収納できる設計が可能となる効果とを同時に得ることができる。すなわち、本発明を採用して初めて、極板上部における浸透短絡が抑制され、かつ、十分なPSOC条件下での寿命性能を備えたアイドリングストップ車用鉛蓄電池が製造可能となるのである。
(正極活物質)
ボールミル法による鉛酸化物、補強材である合成樹脂繊維、水及び硫酸を混合することによって正極ペーストを調製した。このペーストをアンチモンフリーのPb−Ca−Sn系合金から成るエキスパンドタイプの格子状の正極集電体に充填し、熟成、乾燥を施して、幅100mm、高さ110mm、厚さ1.6mmの未化成の正極板を作製した。
ボールミル法による鉛酸化物、鱗片状グラファイト、硫酸バリウム、リグニン、及び補強材の合成樹脂繊維、水及び硫酸を混合することによって負極ペーストを調製した。このペーストをアンチモンフリーのPb−Ca−Sn系合金から成るエキスパンドタイプの負極格子に充填し、熟成、乾燥を施して、幅100mm、高さ110mm、厚さ1.3mの未化成の負極板を作製した。鱗片状グラファイト、硫酸バリウム、リグニン及び合成樹脂繊維の混合量は、化成後でかつ満充電の状態で測定した時に、それぞれ、2mass%、0.6mass%、0.2mass%及び0.1mass%になるように調節した。
ポリエチレンを基材とする合成樹脂製であって、後述するリブをそれぞれ有する袋状セパレータとした。セパレータ総厚は、以下の電池すべて0.70mmで一定である。
前記袋状セパレータに前記負極板を収納し、前記負極板7枚と、前記正極板6枚とを、負極板が外側になるように交互に積層した。
前記正極板同士の耳、及び前記負極板同士の耳をそれぞれCOS方式により正極ストラップ、負極ストラップで溶接して極板群を作製し、この極板群をポリプロピレン製の電槽に収納し、硫酸を加え、電槽化成を施して、化成後の電解液比重が1.285、5hR容量が30Ahの液式鉛蓄電池を作製した。なお、電槽内では6個の極板群が直列に接続されている。また、寸法を確認するための電池を別途作成し、電槽化成のあと、さらに満充電したあと、蓋を取り外して正極側及び負極側のストラップ群長A、A´、上部極板群長B及びB´をそれぞれ測定した。A<B及びA´<B´となっているものについては以下の表では「A<B」と表記した。A=B及びA´=B´になっているものについては以下の表では「A=B」と表記した。A>B及びA´>B´となっているものについては以下の表では「A>B」と表記した。
図2の従来例に示すセパレータであって、負極リブを有さず、正極板全面と向かい合う領域に正極リブを有し、ベース厚Tが0.25mm、リブ高さ(正極リブ高さ)Hが総厚TAと等しい0.70mmのセパレータを用い、ストラップ直下の耳群長A、A´がそれぞれ上部極板群長B、B´より小さい比較例1に係るA1電池を作製した。
なお、A1〜A9電池におけるリブは、全て図5の左図に示すようなラインリブである。ライン幅Wは1mmとした。また、ラインリブとラインリブの間隔は、9mmとした。また、AとB、及びA´とB´との大小関係は同じにしているので、以下、AとBとの関係を代表して述べる。
比較例1と同じセパレータを用い、ストラップ直下の耳群長Aがそれぞれ上部極板群長Bより大きい従来例1に係るX電池を作製した。
比較例1と同じセパレータを用い、ストラップ直下の耳群長Aがそれぞれ上部極板群長Bと同じである従来例2に係るY電池を作製した。
満充電が完了した上記のA1、X、Y電池を16時間以上−15℃±1℃の冷却室に置いた後、150Aの放電電流で端子電圧が6Vに低下するまでの放電時間を記録した(JIS D5301の高率放電特性試験に準拠)。
低温高率放電性能試験を行ったものとは別に新たに液式鉛蓄電池を、25℃の恒温水槽中で、表1に示す工程1〜5を実行した後に電池を解体して短絡の有無を調べた。各実施例及び比較例について、それぞれ20個の鉛蓄電池を試験し、浸透短絡の発生率を評価した。
また、A<BであるA1電池は、X,Y電池と同等以上の低温高率放電性能を有することも分かった。
A1電池のセパレータに代えて、図2に示す、ベース厚Tが0.25mm、正極リブ高さHPが0.50mm、負極リブ高さHLが0.45mmのリブを有し、総厚TBが0.70mmであって、負極リブを負極板の格子部の上部20%の領域と向かい合う領域のみに有し、正極リブを正極板全面と向かい合う領域に有するセパレータを用いた以外は、比較例1と同様にして実施例に係るA2電池を作製した。
負極板の上部30%、50%、70%の領域と向かい合う領域のみ、又は負極板全面に向かい合う領域に負極リブを有し、正極板全面と向かい合う領域に正極リブを有するセパレータを用いた以外は、A2電池と同様にして実施例に係るA3、A5、A7、及びA8電池を作製した。
また、正極板の上部30%、50%の領域と向かい合う領域のみに正極リブを有し、負極板全面に向かい合う領域に負極リブを有するセパレータを用いた以外は、実施例A2と同様にして実施例に係るA4、A6電池を作製した。
負極板の下部50%の領域と向かい合う領域のみに負極リブを有し、正極板全面に向かい合う領域に正極リブを有するセパレータを用いた以外は、A2電池と同様にして比較例に係るA9電池を作製した。
A2、A3、及びA5電池で用いたセパレータの負極リブを、図5の右図に示すような半球状のドットリブ(円の直径Rは1mm)に変更した以外はA2電池と同様にして、実施例に係るB1〜B3電池を作製した。
(PSOC寿命試験)
40℃の恒温漕内で、表3、及び図6に示す寿命試験パターンを繰り返し、端子電圧が7.2Vに到達するまでのサイクル数を記録した。サイクル数は、工程1から5までを1回行ったことを1サイクルとして数えることとした。
なお、「極板面積比」は、極板の格子部の面積100%に対してリブが向かい合う領域の面積比を示し、「PSOC寿命」は、A1電池のサイクル数を100%とした比を示し、「低温HR性能」は、A1電池の放電時間を100%とした比を示し、浸透短絡発生率は5%刻みで示す。
なお、ストラップを小形化することなしに、所定水準のPSOC寿命性能を達成する極板群をJIS等により上限寸法が設定された電槽に収納する場合、セパレータのリブの配置個所を片面のみにして層厚さを薄くし、その分の活物質量を増量させる方法や、活物質の増量以外にPSOC寿命性能を向上させる方法を採用することも可能であるが、前者の方法では極板上部の浸透短絡を抑制する効果は得られず、後者の方法では、今のところ活物質の増量と同程度の効果のある技術はないため十分な性能向上がはかれない可能性が高い。
さらになお、A=BやA>Bの場合、ストラップの小形化が図れないので、規定の大きさの電槽に収納するためには極板群の寸法を制限せざるを得ない。そのため、PSOC条件下での寿命性能に影響が大きい活物質の使用量を十分に多くできないこととなり、その結果として、アイドリングストップ車用に求められる水準のPSOC寿命性能を達成できないこととなる可能性が高い。
B 極同極の極板の両端に位置する極板間の上部枠骨部における距離(上部極板群長)
Claims (7)
- 正極板と負極板とをセパレータを介して積層した極板群と、電解液と、前記極板群を収納した電槽を備えた鉛蓄電池であって、
前記負極板の耳を接続する負極ストラップ直下の両端の耳の外端間の長さA、及び前記正極板の耳を接続する正極ストラップ直下の両端の耳の外端間の長さA´が、それぞれ、前記各ストラップに接続された極板のうち両端に位置する極板における上部枠骨部の積層方向外端間の長さB、B´より小さく、
前記セパレータは、前記正極板の上部と向かい合う領域及び前記負極板の上部と向かい合う領域にリブを有することを特徴とする鉛蓄電池。 - 前記セパレータは、一方の面において、前記正極板の上部と向かい合う領域又は前記負極板の上部と向かい合う領域にリブを有し、他方の面において、前記正極板の上部と向かい合う領域のみ、又は前記負極板の上部と向かい合う領域のみにリブを有することを特徴とする請求項1に記載の鉛蓄電池。
- 前記セパレータは、前記他方の面において、前記正極板の上部50%以下の領域と向かい合う領域のみ、又は前記負極板の上部50%以下の領域と向かい合う領域のみにリブを有することを特徴とする請求項2に記載の鉛蓄電池。
- 前記セパレータは、前記他方の面において、前記正極板の上部と向かい合う領域のみ、又は前記負極板の上部と向かい合う領域のみにドット状のリブを有することを特徴とする請求項2又は請求項3のいずれかに記載の鉛蓄電池。
- 前記セパレータは、ポリエチレンを主成分とすることを特徴とする請求項1〜4の少なくともいずれか一つに記載の鉛蓄電池。
- 前記セパレータは、一方の極板と向かい合う面において、当該極板の下部の一部又は全部と向かい合う領域において前記リブが切り欠かれた構造となっていることを特徴とする請求項1〜5の少なくともいずれか一つに記載の鉛蓄電池。
- アイドリングストップ車用の鉛蓄電池であることを特徴とする請求項1〜6の少なくともいずれか一つに記載の鉛蓄電池。
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