JP4802903B2 - 鉛蓄電池 - Google Patents

Description

本発明は、本鉛蓄電池の正極板、特にエキスパンド方式による極板の製造方法に関するものである。

鉛蓄電池は、安価で信頼性が高いという特徴を有するために、自動車用のバッテリ、ゴルフカート等の電動車両の動力源、更には無停電電源装置等の産業機器用の蓄電池として広く使用をされている。

鉛電池の格子には、生産性の向上やメンテナンスフリー性の向上を目的として、従来の鉛−アンチモン系合金からなる鋳造格子に代わって、アンチモンを含有しない鉛−カルシウム−スズ系合金シートをエキスパンド加工したエキスパンド格子が普及している。このエキスパンド格子は格子の水素過電圧を低下させるアンチモンを含有しないので、電池の充電中におけるガス発生と、これによる電解液量の減少を抑制すると共に自己放電を抑制することができる利点がある。しかしながら正極にこのようなアンチモンを含まない格子を用いた場合には、電池の深い充放電サイクルにおいて早期に容量が低下するという問題がある。

このような問題点を解決するために特許文献１では格子表面にアンチモンを多量に含んだ層を形成させたエキスパンド格子が示されている。格子表面層に存在するアンチモンは充放電の繰り返しによる格子と活物質との密着性の低下を抑制し、それにより格子−活物質界面の硫酸鉛化を防ぐことができ、早期容量低下を抑制する。

特開昭６３−１４８５５６号公報

しかしながら、特許文献１ではアンチモンを含有した格子のためガス発生による電解液の減少と自己放電が増大する可能性がありメンテナスフリー性に問題がある。

本発明では、鉛−カルシウム系合金からなるエキスパンド格子を用いた鉛蓄電池において、深い充放電サイクルによっておこる早期容量低下を抑制したメンテナスフリー性に優れる鉛蓄電池を提供する。

本発明は、エキスパンド加工されたアンチモンを含有しない鉛−カルシウム系合金からなる格子に酸化鉛を主成分とする鉛粉と、鉛丹、カットファイバ、硫酸、水を混合したペーストを充填した正極板を備えた鉛蓄電池であって、該正極板の格子空間体積Ｘ（ｃｍ³）と活物質充填量Ｙ（ｇ）の関係が、５．２Ｘ≦Ｙ≦６．１Ｘで表されることを特徴とする。

本発明により、鉛−カルシウム系合金のエキスパンド加工された格子を用いた正極板において、深い充放電サイクルによっておこる早期容量低下を抑制した鉛蓄電池を提供する。

以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において、適宜変更して実施することができる。

以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。

アンチモンを含有しない鉛−カルシウム系合金からなる連続シートをエキスパンド加工して種々の格子空間体積Ｖを持つ巾Ｗ、高さＨ_１の格子を得た（図１参照）。この格子の厚みは、図２に示すように交点部１の厚みＴが最大となる。また、格子空間体積Ｖとは、Ｖ＝（Ｗ×H_２×Ｔ）−内格子体積で表される〔W：内格子幅（格子幅）、H_２：内格子高さ、Ｔ：交点部厚み、内格子体積：内格子の重量（ｇ）／鉛の密度（ｇ／ｃｍ^３）〕。

図１の内格子部２に酸化鉛を主成分とする鉛粉と、鉛丹、カットファイバ、硫酸、水を混合したペーストを種々の充填量で充填した。このようにして充填したものを熟成、乾燥して、未化成の正極板を作製した。次にこの未化成の正極板７枚と未化成の負極板８枚とをセパレーターを介して交互に配置し、希硫酸中で化成し２Ｖ単電池とした。

この電池の早期容量低下抑制効果を確認するため、５時間率容量試験の繰り返しを行い（放電電流：７．２Ａ、温度２５℃、放電終止電圧：１．７５Ｖ、終止充電容量：放電量の１３０％）、数サイクルで初期容量の半分まで落ちるものは早期容量低下抑制効果なしとした。この結果を表１に示す。

この結果から明らかなように格子空間体積Ｘ（ｃｍ³）と活物質充填量Ｙ（ｇ）の関係が５．２Ｘ≦Ｙであれば、初期容量の５０％になるサイクルが６０サイクル以上となり、アンチモンを含有しない鉛−カルシウム系合金の格子を用いた場合でも早期容量低下を抑制することが可能であった。このことは、図３に模式的に示すように、充填量を多くすることによって硫酸が極板の深部にまで供給されず、未放電の活物質３が存在し、この未放電の活物質３が存在する領域では、格子４−活物質界面の硫酸鉛化を抑制する領域６が存在すると考えられる。その結果、アンチモンを含有しない鉛−カルシウム系合金の格子を用いた場合でも早期容量低下を抑制し、良好なサイクル特性を示したと考えられる。Ｙが６．１Ｘを超えると、充填量が多くなりすぎて、既存のラインでは極板のしなりなどが生じたり、極板群を組み立てたときに既成の電槽に収納できない等の不具合が生じるので、Ｙの範囲は５．２Ｘ≦Ｙ≦６．１Ｘが適当と判断する。

また、本発明品を用いた１２Ｖ電池で減液特性試験（充電電圧：１４．４Ｖ、周囲温度４０℃、２８日間）を行ったところ、本発明品を用いた電池の減液量は、アンチモンを含有する格子を用いた電池の減液量の約７５％であり、メンテナンスフリー性に優れていることが確認された。

エキスパンド極板の外観図である。 交点部断面を示す図である。 本発明の効果を模式的に示した図である。 本発明品を用いた電池の減液特性を表した図である。

符号の説明

１ 交点部、２ 内格子部、３ 未放電の活物質、４ 格子、
５ 格子−活物質界面が硫酸鉛化している領域
６ 格子−活物質界面の硫酸鉛化を抑制している領域
７ 放電した活物質

Claims (1)

1. エキスパンド加工されたアンチモンを含有しない鉛−カルシウム系合金からなる格子に酸化鉛を主成分とする鉛粉と、鉛丹、カットファイバ、硫酸、水を混合したペーストを充填した正極板を備えた鉛蓄電池であって、該正極板の格子空間体積Ｘ（ｃｍ³）と活物質充填量Ｙ（ｇ）の関係が、５．２Ｘ≦Ｙ≦６．１Ｘで表されることを特徴とする鉛蓄電池。

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