スチレン系単量体を50重量%以上の含有率で含有する単量体成分を重合させることによって得られる樹脂層を使用した場合、形成される塗膜は、例えば、特開平7−70513号公報などに記載されているように耐候性に劣るとともに造膜性にも劣り、硬くて脆くなることから、エマルション粒子の原料として用いられる単量体成分中にスチレン系単量体を50重量%以上の含有率で含有させることは、好ましくないと考えられている。
これに対して、本発明の樹脂エマルションは、50質量%を遥かに超える80質量%以上の含有率でスチレン系単量体を含有する単量体成分からなる重合体がエマルション粒子の樹脂層に用いられているにもかかわらず、耐候性、凍結流動保持性、パターン保持性、低温造膜安定性および耐変形性に総合的に優れた塗膜を形成することができる。このように、本発明の樹脂エマルションは、50質量%を遥かに超える80質量%以上の含有率でスチレン系単量体を含有する単量体成分からなる重合体をエマルション粒子の樹脂層に用いることを可能とし、耐候性、凍結流動保持性、パターン保持性、低温造膜安定性および耐変形性に総合的に優れた塗膜を形成することから、産業上の利用的価値が極めて高いものである。
本発明の塗料用樹脂エマルションは、前記したように、内層および外層を有するエマルション粒子を含有する。
本発明の塗料用樹脂エマルションは、内層がスチレン系単量体80〜100質量%および当該スチレン系単量体以外の単量体0〜20質量%を含有する単量体成分Aを乳化重合させてなる重合体(I)で形成され、前記外層が紫外線安定性基含有単量体0.1〜30質量%および当該紫外線安定性基含有単量体以外の単量体70〜99.9質量%を含有する単量体成分Bを乳化重合させてなる重合体(II)で形成され、重合体(I)と重合体(II)との質量比〔重合体(I)/重合体(II)〕が15/85〜85/15であり、前記エマルション粒子における重合体(I)と重合体(II)との合計含有率が30〜100質量%であることを特徴とする。
なお、本発明においては、本発明の目的が阻害されない範囲内で、前記内層および前記外層以外の層がエマルション粒子に形成されていてもよい。したがって、本発明においては、例えば、内層の内側にさらに内層が形成されていてもよく、内層と外層との間に中間層が形成されていてもよく、外層の外側にさらに外層が形成されていてもよい。
前記内層を形成する重合体(I)は、スチレン系単量体80〜100質量%および当該スチレン系単量体以外の単量体0〜20質量%を含有する単量体成分Aを乳化重合させることによって得られる。
単量体成分Aにおけるスチレン系単量体の含有率は、耐候性、凍結流動保持性、パターン保持性、低温造膜安定性および耐変形性に総合的に優れた塗膜を形成する観点から、80〜100質量%である。したがって、単量体成分Aは、スチレン系単量体のみで構成されていてもよい。また、単量体成分Aには、耐候性、凍結流動保持性、パターン保持性、低温造膜安定性および耐変形性に総合的に優れた塗膜を形成するから、0〜20質量%の範囲内でスチレン系単量体以外の単量体が含有されていてもよい。
スチレン系単量体は、スチレン骨格を有する単量体を意味する。スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、tert−ブチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。スチレン系単量体は、ベンゼン環にメチル基、tert−ブチル基などのアルキル基、ニトロ基、ニトリル基、アルコキシル基、アシル基、スルホン基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子などの官能基が存在していてもよい。スチレン系単量体のなかでは、塗膜の耐候性を高める観点から、スチレンが好ましい。
スチレン系単量体以外の単量体としては、例えば、スチレン系単量体以外のエチレン性不飽和単量体などが挙げられる。
スチレン系単量体以外のエチレン性不飽和単量体としては、例えば、スチレン系単量体以外の芳香族系単量体、芳香族系単量体以外のエチレン性不飽和単量体などが挙げられ、これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
スチレン系単量体以外の芳香族系単量体としては、例えば、アラルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。アラルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート、メチルベンジル(メタ)アクリレート、ナフチルメチル(メタ)アクリレートなどの炭素数が7〜18のアラルキル基を有するアラルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」または「メタクリレート」を意味し、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」または「メタクリル」を意味する。
芳香族単量体以外のエチレン性不飽和単量体としては、例えば、エチレン性不飽和脂肪族系単量体、エチレン性不飽和脂環構造含有単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
芳香族単量体以外のエチレン性不飽和単量体の具体例としては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、水酸基含有(メタ)アクリレート、カルボキシル基含有単量体、カルボニル基含有単量体、オキソ基含有単量体、フッ素原子含有単量体、窒素原子含有単量体、エポキシ基含有単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレートなどのエステル基の炭素数が1〜18のアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのアルキル(メタ)アクリレートのなかでは、耐候性、凍結流動保持性、パターン保持性、低温造膜安定性および耐変形性に総合的に優れた塗膜を形成する観点から、エステル基の炭素数が4〜8のアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのエステル基の炭素数が1〜18の水酸基含有(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
カルボキシル基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、無水マレイン酸などのカルボキシル基含有脂肪族系単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのカルボキシル基含有単量体のなかでは、エマルション粒子の分散安定性を向上させる観点から、アクリル酸、メタクリル酸およびイタコン酸が好ましく、アクリル酸およびメタクリル酸がより好ましい。
カルボニル基含有単量体としては、例えば、アクロレイン、ホウミルスチロール、ビニルエチルケトン、(メタ)アクリルオキシアルキルプロペナール、アセトニル(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートアセチルアセテート、ブタンジオール−1,4−アクリレートアセチルアセテート、2−(アセトアセトキシ)エチル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのカルボニル基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
オキソ基含有単量体としては、例えば、エチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレングリコールメトキシ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールメトキシ(メタ)アクリレートなどの(ジ)エチレングリコール(メトキシ)(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
フッ素原子含有単量体としては、例えば、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレートなどのエステル基の炭素数が2〜6のフッ素原子含有アルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
窒素原子含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなどのアクリルアミド化合物、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの窒素原子含有(メタ)アクリレート化合物、N−ビニルピロリドンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
エポキシ基含有単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
したがって、スチレン系単量体以外の単量体としては、例えば、スチレン系単量体以外の芳香族系単量体、アルキル(メタ)アクリレート、水酸基含有(メタ)アクリレート、カルボキシル基含有単量体、オキソ基含有単量体、フッ素原子含有単量体、窒素原子含有単量体、エポキシ基含有単量体などが挙げられ、これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
スチレン系単量体以外の単量体のなかでは、耐候性、凍結流動保持性、パターン保持性、低温造膜安定性および耐変形性に総合的に優れた塗膜を形成する観点から、エチレン性不飽和単量体が好ましく、アルキル(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリル酸がより好ましく、エステルの炭素数が炭素数4〜8であるアルキル(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリル酸がさらに好ましく、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリル酸がさらに一層好ましい。
単量体成分Aを乳化重合させる方法としては、例えば、メタノールなどの低級アルコールなどの水溶性有機溶媒と水とを含む水性媒体、水などの媒体中に乳化剤を溶解させ、撹拌下で単量体成分Aおよび重合開始剤を滴下させる方法、乳化剤および水を用いてあらかじめ乳化させておいた単量体成分を水または水性媒体中に滴下させる方法などが挙げられるが、本発明は、かかる方法のみに限定されるものではない。なお、媒体の量は、得られる樹脂エマルションに含まれる不揮発分の含有率を考慮して適宜設定すればよい。
乳化剤としては、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、両性乳化剤、高分子乳化剤などが挙げられ、これらの乳化剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。例えば、乳化剤として、アニオン性乳化剤とノニオン性乳化剤とを併用した乳化剤を用いることができる。
アニオン性乳化剤としては、例えば、アンモニウムドデシルサルフェート、ナトリウムドデシルサルフェートなどのアルキルサルフェート塩;アンモニウムドデシルスルホネート、ナトリウムドデシルスルホネートなどのアルキルスルホネート塩;アンモニウムドデシルベンゼンスルホネート、ナトリウムドデシルナフタレンスルホネートなどのアルキルアリールスルホネート塩;ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩;ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩;ジアルキルスルホコハク酸塩;アリールスルホン酸−ホルムアルデヒド縮合物;アンモニウムラウリレート、ナトリウムステアリレートなどの脂肪酸塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
ノニオン性乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの縮合物、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、エチレンオキサイドと脂肪族アミンとの縮合生成物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
カチオン性乳化剤としては、例えば、ドデシルアンモニウムクロライドなどのアルキルアンモニウム塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
両性乳化剤としては、例えば、ベタインエステル型乳化剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
高分子乳化剤としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウムなどのポリ(メタ)アクリル酸塩;ポリビニルアルコール;ポリビニルピロリドン;ポリヒドロキシエチルアクリレートなどのポリヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;これらの重合体を構成する単量体のうちの1種以上を共重合成分とする共重合体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
また、前記乳化剤として、耐候性、凍結流動保持性、パターン保持性、低温造膜安定性および耐変形性に総合的に優れた塗膜を形成する観点から、重合性基を有する乳化剤、すなわち、いわゆる反応性乳化剤が好ましく、環境保護の観点から、非ノニルフェニル型の乳化剤が好ましい。
反応性乳化剤としては、例えば、プロペニル−アルキルスルホコハク酸エステル塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンスルホネート塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンホスフォネート塩〔例えば、三洋化成工業(株)製、商品名:エレミノールRS−30など〕、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテルスルホネート塩〔例えば、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンHS−10など〕、アリルオキシメチルアルキルオキシポリオキシエチレンのスルホネート塩〔例えば、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンKH−10など〕、アリルオキシメチルノニルフェノキシエチルヒドロキシポリオキシエチレンのスルホネート塩〔例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSE−10など〕、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン硫酸エステル塩〔例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR−10、SR−30など〕、ビス(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル)メタクリレート化スルホネート塩〔例えば、日本乳化剤(株)製、商品名:アントックスMS−60など〕、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン〔例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープER−20など〕、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル〔例えば、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンRN−20など〕、アリルオキシメチルノニルフェノキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン〔例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープNE−10など)などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
乳化剤の量は、単量体成分A100質量部あたり、重合安定性を向上させる観点から、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは2質量部以上、さらに一層好ましくは3質量部以上であり、耐候性、凍結流動保持性、パターン保持性、低温造膜安定性および耐変形性に総合的に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは6質量部以下、さらに一層好ましくは5質量部以下である。
重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス(2―ジアミノプロパン)ハイドロクロライド、4,4−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)などのアゾ化合物;過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩;過酸化水素、ベンゾイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、過酸化アンモニウムなどの過酸化物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
単量体成分A100質量部あたりの重合開始剤の量は、重合速度を高め、未反応の単量体成分Aの残存量を低減させる観点から、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、塗膜の耐透水性を向上させる観点から、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下である。
重合開始剤の添加方法は、特に限定されない。その添加方法としては、例えば、一括仕込み、分割仕込み、連続滴下などが挙げられる。また、重合反応の終了時期を早める観点から、単量体成分Aを反応系内に添加する終了前またはその終了後に、重合開始剤の一部を添加してもよい。
なお、重合開始剤の分解を促進するために、例えば、亜硫酸水素ナトリウムなどの還元剤、硫酸第一鉄などの遷移金属塩などの重合開始剤の分解剤を反応系内に適量で添加してもよい。
また、反応系内には、必要により、例えば、tert−ドデシルメルカプタンなどのチオール基を有する化合物などの連鎖移動剤、pH緩衝剤、キレート剤、造膜助剤などの添加剤を添加してもよい。添加剤の量は、その種類によって異なるので一概には決定することができないが、通常、単量体成分A100質量部あたり、好ましくは0.01〜5質量部、より好ましくは0.1〜3質量部である。
単量体成分Aを乳化重合させる際の雰囲気は、特に限定されないが、重合開始剤の効率を高める観点から、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスであることが好ましい。
単量体成分Aを乳化重合させる際の重合温度は、特に限定がないが、通常、好ましくは50〜100℃、より好ましくは60〜95℃である。重合温度は、一定であってもよく、重合反応の途中で変化させてもよい。
単量体成分Aを乳化重合させる重合時間は、特に限定がなく、重合反応の進行状況に応じて適宜設定すればよいが、通常、2〜9時間程度である。
以上のようにして単量体成分Aを乳化重合させることにより、内層を形成する重合体(I)がエマルション粒子の形態で得られる。
重合体(I)は、架橋構造を有していてもよい。重合体(I)の重量平均分子量は、重合体(I)が架橋構造を有する場合および架橋構造を有しない場合のいずれの場合であっても、塗膜の耐透水性を向上させる観点から、好ましくは10万以上、より好ましくは30万以上、さらに好ましくは55万以上、特に好ましくは60万以上である。重合体(I)の重量平均分子量の上限値は、架橋構造を有する場合、その重量平均分子量を測定することが困難なため、特に限定されないが、架橋構造を有しない場合には、造膜性を向上させる観点から、500万以下であることが好ましい。
なお、本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー〔東ソー(株)製、品番:HLC−8120GPC、カラム:TSKgel G−5000HXLとTSKgel GMHXL−Lとを直列に使用〕を用いて測定された重量平均分子量(ポリスチレン換算)を意味する。
次に、重合体(I)からなる内層を形成させた後、当該内層上に紫外線安定性基含有単量体0.1〜30質量%および当該紫外線安定性基含有単量体以外の単量体70〜99.9質量%を含有する単量体成分Bを乳化重合させることにより、重合体(II)からなる外層を形成させる。
単量体成分Bを乳化重合させる際には、重合体(I)の重合反応率が90%以上、好ましくは95%以上に到達した後、単量体成分Bを乳化重合させることが、エマルション粒子内で層分離構造を形成させる観点から好ましい。
なお、重合体(I)からなる内層を形成させた後、重合体(II)からなる外層を形成させる前に、本発明の目的が阻害されない範囲内で、必要により、他の重合体からなる層が形成されていてもよい。したがって、本発明の塗料用樹脂エマルションの製造方法においては、重合体(I)からなる内層を形成させた後、重合体(II)からなる外層を形成させる前に、本発明の目的が阻害されない範囲内で、必要により、他の重合体からなる層を形成させる操作が含まれていてもよい。
単量体成分Bに用いられる紫外線安定性基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリロイル基含有ピペリジン化合物などが挙げられる。(メタ)アクリロイル基含有ピペリジン化合物としては、例えば、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイル−1−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの(メタ)アクリロイル基含有ピペリジン化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの(メタ)アクリロイル基含有ピペリジン化合物のなかでは、耐候性、凍結流動保持性、パターン保持性および耐変形性に総合的に優れた塗膜を形成する観点から、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイル−1−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどの(メタ)アクリロイルオキシアミノ基含有ピペリジンが好ましい。
単量体成分Bにおける紫外線安定性基含有単量体の含有率は、耐候性、凍結流動保持性、パターン保持性、低温造膜安定性および耐変形性に総合的に優れた塗膜を形成する観点から、0.1質量%以上、好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上、さらに一層好ましくは1質量%以上であり、耐候性、凍結流動保持性、パターン保持性、低温造膜安定性および耐変形性に総合的に優れた塗膜を形成する観点から、30質量%以下、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
単量体成分Bに用いられる紫外線安定性基含有単量体以外の単量体としては、例えば、エチレン性不飽和単量体などが挙げられる。
エチレン性不飽和単量体としては、例えば、芳香族系単量体、エチレン性不飽和脂肪族系単量体、エチレン性不飽和脂環構造含有単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
芳香族系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、tert−ブチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエンなどのスチレン系単量体;ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート、メチルベンジル(メタ)アクリレート、ナフチルメチル(メタ)アクリレートなどの炭素数が7〜18のアラルキル基を有するアラルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。スチレン系単量体は、ベンゼン環にメチル基、tert−ブチル基などのアルキル基、ニトロ基、ニトリル基、アルコキシル基、アシル基、スルホン基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子などの官能基が存在していてもよい。
エチレン性不飽和脂肪族系単量体およびエチレン性不飽和脂環構造含有単量体としては、例えば、前記単量体成分Aに用いられる、アルキル(メタ)アクリレート、水酸基含有(メタ)アクリレート、カルボキシル基含有単量体、オキソ基含有単量体、フッ素原子含有単量体、窒素原子含有単量体、エポキシ基含有単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
紫外線安定性基含有単量体以外の単量体のなかでは、耐候性、凍結流動保持性、パターン保持性、低温造膜安定性および耐変形性に総合的に優れた塗膜を形成する観点から、エステルの炭素数が1〜8であるアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、メチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートおよびシクロヘキシル(メタ)アクリレートがより好ましい。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
単量体成分Bにおける紫外線安定性基含有単量体以外の単量体の含有率は、耐候性、凍結流動保持性、パターン保持性、低温造膜安定性および耐変形性に総合的に優れた塗膜を形成する観点から、70質量%以上、好ましくは75質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上であり、耐候性、凍結流動保持性、パターン保持性、低温造膜安定性および耐変形性に総合的に優れた塗膜を形成する観点から、99.9質量%以下、好ましくは99.7質量%以下、より好ましくは99.5質量%以下である。
単量体成分Bを乳化重合させる方法および重合条件は、前記単量体Aを乳化重合させる方法および重合条件と同様であればよい。
以上のようにして単量体成分Bを乳化重合させることにより、外層を形成する重合体(II)が前記内層の表面に形成されたエマルション粒子を得ることができる。なお、重合体(II)からなる外層の表面上には、本発明の目的が阻害されない範囲内で、必要により、他の重合体からなる表面層がさらに形成されていてもよい。
重合体(II)は、架橋構造を有していてもよい。重合体(II)の重量平均分子量は、重合体(I)が架橋構造を有する場合および架橋構造を有しない場合のいずれの場合であっても、塗膜の耐透水性を向上させる観点から、好ましくは10万以上、より好ましくは30万以上、さらに好ましくは55万以上、特に好ましくは60万以上である。重合体(II)の重量平均分子量の上限値は、架橋構造を有する場合、その重量平均分子量を測定することが困難なため、特に限定されないが、架橋構造を有しない場合には、造膜性を向上させる観点から、好ましくは100万以下、より好ましくは70万以下である。
重合体(II)のガラス転移温度は、耐候性、凍結流動保持性、パターン保持性および耐変形性に総合的に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは−20℃以上、より好ましくは−15℃以上、さらに好ましくは0℃以上、さらに一層好ましくは5℃以上であり、耐候性、凍結流動保持性、パターン保持性、低温造膜安定性および耐変形性に総合的に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは40℃以下、より好ましくは35℃以下である。重合体(II)のガラス転移温度は、単量体成分に使用される単量体の組成を調整することにより、容易に調節することができる。
なお、本明細書において、重合体のガラス転移温度は、当該重合体を構成する単量体成分に使用されている単量体の単独重合体のガラス転移温度を用いて、式:
1/Tg=Σ(Wm/Tgm)/100
〔式中、Wmは重合体を構成する単量体成分における単量体mの含有率(重量%)、Tgmは単量体mの単独重合体のガラス転移温度(絶対温度:K)を示す〕
で表されるフォックス(Fox)の式に基づいて求められた温度を意味する。
重合体のガラス転移温度は、例えば、スチレンの単独重合体では100℃、2−エチルヘキシルアクリレートの単独重合体では−70℃、アクリル酸の単独重合体では95℃、メタクリル酸の単独重合体では130℃、メチルメタクリレートの単独重合体では105℃、4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンの単独重合体では130℃、シクロヘキシルメタクリレートの単独重合体では83℃、n−ブチルメタクリレートの単独重合体では20℃、n−ブチルアクリレートの単独重合体では−56℃、4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジンの単独重合体では130℃である。
重合体のガラス転移温度は、前記フォックス(Fox)の式に基づいて求められた値であるが、重合体のガラス転移温度の実測値は、前記フォックス(Fox)の式に基づいて求められた値と同じであることが好ましい。重合体のガラス転移温度の実測値は、例えば、その示差走査熱量の測定によって求めることができる。
本明細書においては、重合体のガラス転移温度は、特に断りがない限り、前記式に基づいて求められたガラス転移温度を意味する。なお、特殊単量体、多官能単量体などのようにガラス転移温度が不明の単量体については、単量体成分における当該ガラス転移温度が不明の単量体の合計量が10質量%以下である場合には、ガラス転移温度が判明している単量体のみを用いてガラス転移温度が求められる。単量体成分におけるガラス転移温度が不明の単量体の合計量が10質量%を超える場合には、重合体のガラス転移温度は、示差走査熱量分析(DSC)、示差熱量分析(DTA)、熱機械分析(TMA)などによって求められる。
示差走査熱量の測定装置としては、例えば、セイコーインスツル(株)製、品番:DSC220Cなどが挙げられる。また、示差走査熱量を測定する際、示差走査熱量(DSC)曲線を描画する方法、示差走査熱量(DSC)曲線から一次微分曲線を得る方法、スムージング処理を行なう方法、目的のピーク温度を求める方法などには特に限定がない。例えば、前記測定装置を用いた場合には、当該測定装置を用いることによって得られたデータから作図すればよい。その際、数学的処理を行なうことができる解析ソフトウェアを用いることができる。当該解析ソフトウェアとしては、例えば、解析ソフトウェア〔セイコーインスツル(株)製、品番:EXSTAR6000〕などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。なお、このようにして求められたピーク温度には、上下5℃程度の作図による誤差が含まれることがある。
なお、エマルション粒子自体のガラス転移温度は、耐候性、凍結流動保持性、パターン保持性、低温造膜安定性および耐変形性に総合的に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは−5℃以上、より好ましくは5℃以上、さらに好ましくは15℃以上であり、耐候性、凍結流動保持性、パターン保持性、低温造膜安定性および耐変形性に総合的に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは65℃以下、より好ましくは60℃以下、さらに好ましくは55℃以下である。
また、重合体(I)のガラス転移温度は、耐候性、凍結流動保持性、パターン保持性、低温造膜安定性および耐変形性に総合的に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは65℃以上、さらに好ましくは70℃以上であり、耐候性、凍結流動保持性、パターン保持性、低温造膜安定性および耐変形性に総合的に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは120℃以下、より好ましくは115℃以下、さらに好ましくは110℃以下である。重合体(I)のガラス転移温度は、単量体成分に使用される単量体の組成を調整することにより、容易に調節することができる。
重合体(II)の溶解パラメーター(以下、SP値ともいう)は、重合体(I)のSP値よりも高いことが、エマルション粒子内で層分離構造を形成させる観点から好ましい。また、重合体(I)のSP値と重合体(II)のSP値の差は、エマルション粒子内で層分離構造を形成させる観点から、大きいことが好ましい。本発明では、エマルション粒子は、SP値が低いスチレン系単量体が多量で使用されている重合体(I)と、SP値が高い重合体(II)で構成されているので、内層と外層とが明確に分離されているという理想的な構造を有する。
SP値は、ヒルデブラント(Hildebrand)によって導入された正則溶液論によって定義される値であり、2成分系溶液の溶解度の目安にもなっている。一般に、SP値が近い物質同士は互いに混ざりやすい傾向がある。したがって、SP値は、溶質と溶媒との混ざりやすさを判断する目安にもなっている。
重合体(I)と重合体(II)との質量比〔重合体(I)/重合体(II)〕は、耐候性、凍結流動保持性、パターン保持性、低温造膜安定性および耐変形性に総合的に優れた塗膜を形成する観点から、15/85以上、好ましくは20/80以上、より好ましくは25/75以上であり、耐候性、凍結流動保持性、パターン保持性、低温造膜安定性および耐変形性に総合的に優れた塗膜を形成する観点から、85/15以下、好ましくは80/20以下、より好ましくは75/25以下である。
エマルション粒子における重合体(I)と重合体(II)との合計含有率は、耐候性、凍結流動保持性、パターン保持性、低温造膜安定性および耐変形性に総合的に優れた塗膜を形成する観点から、30質量%以上、好ましくは35質量%以上、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは45質量%以上であり、エマルション粒子における重合体(I)と重合体(II)との合計含有率が高いほど好ましく、その上限値は100質量%である。
本発明においては、エマルション粒子を構成している重合体に原料として使用されている全単量体成分におけるスチレン系単量体の含有率は、凍結流動保持性、パターン保持性および耐変形性に総合的に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上であり、耐候性、凍結流動保持性、パターン保持性、低温造膜安定性および耐変形性に総合的に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下である。したがって、エマルション粒子を構成している重合体に原料として使用されている全単量体成分におけるスチレン系単量体以外の単量体の含有率は、耐候性、凍結流動保持性、パターン保持性、低温造膜安定性および耐変形性に総合的に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上であり、耐候性、凍結流動保持性、パターン保持性、低温造膜安定性および耐変形性に総合的に優れた塗膜を形成する観点を向上させる観点から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下である。
エマルション粒子の平均粒子径は、エマルション粒子の貯蔵安定性を向上させる観点から、好ましくは30nm以上、より好ましくは50nm以上、さらに好ましくは70nm以上であり、塗膜の耐透水性を向上させる観点から、好ましくは250nm以下、より好ましくは200nm以下である。
なお、本明細書において、エマルション粒子の平均粒子径は、動的光散乱法による粒度分布測定器〔パーティクル・サイジング・システムズ(Particle Sizing Systems)社製、商品名:NICOMP Model 380)を用いて測定された体積平均粒子径を意味する。
本発明の塗料用樹脂エマルションにおける不揮発分の含有率は、生産性を向上させる観点から、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上であり、取り扱い性を向上させる観点から、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。
なお、本明細書において、塗料用樹脂エマルションにおける不揮発分の含有率は、塗料用樹脂エマルション1gを秤量し、熱風乾燥機で110℃の温度で1時間乾燥させ、得られた残渣を不揮発分とし、式:
〔塗料用樹脂エマルションにおける不揮発分の含有率(質量%)〕
=(〔残渣の質量〕÷〔塗料用樹脂エマルション1g〕)×100
に基づいて求められた値を意味する。
本発明の塗料用樹脂エマルションの最低造膜温度は、塗膜硬度を高める観点から、好ましくは−5℃以上、より好ましくは5℃以上、さらに好ましくは10℃以上であり、造膜性を向上させる観点から、好ましくは70℃以下、より好ましくは65℃以下、さらに好ましくは60℃以下である。
なお、本明細書において、塗料用樹脂エマルションの最低造膜温度は、熱勾配試験機の上に置いたガラス板上に塗料用樹脂エマルションを厚さが0.2mmとなるようにアプリケーターで塗工して乾燥させ、クラックが生じたときの温度を意味する。
以上のようにして得られる本発明の塗料用樹脂エマルションは、耐候性、凍結流動保持性、パターン保持性、低温造膜安定性および耐変形性に総合的に優れた塗膜を形成するので、例えば、建築物の内装および外装、窯業系建材などの表面に塗装されるトップコートと称されている上塗り塗料(水性塗料)などに好適に使用することができる。
本発明の塗料用樹脂エマルションは、本発明の目的が阻害されない範囲内で、例えば、成膜助剤、可塑剤、抑泡剤、顔料、増粘剤、艶消し剤、分散剤、湿潤剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、充填剤、レベリング剤、安定剤、顔料、染料、酸化防止剤などの添加剤が適量で含まれていてもよい。
上塗り塗料は、前記塗料用樹脂エマルションを含有するものである。本発明の上塗り塗料は、前記塗料用樹脂エマルションのみで構成されていてもよく、本発明の目的が阻害されない範囲内で、例えば、成膜助剤、可塑剤、抑泡剤、顔料、増粘剤、艶消し剤、分散剤、湿潤剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、充填剤、レベリング剤、安定剤、顔料、染料、酸化防止剤などの1種類または2種類以上を含有していてもよい。上塗り塗料としては、例えば、エナメル塗料、クリヤー塗料などが挙げられる。
本発明の上塗り塗料は、それ単独で1層で塗工してもよく、2層以上に重ね塗りすることによって塗工してもよい。2層以上に重ね塗りすることによって塗工する場合、その一部の層のみが本発明の上塗り塗料によって形成されてもよく、全部の層が本発明の上塗り塗料で形成されてもよい。重ね塗りは、例えば、プライマー処理やシーラー処理などを施した被塗物に、第1層(例えば、下塗り層)用塗料を塗布して乾燥させた後、第2層(例えば、上塗り層)用塗料を上塗りし、乾燥させる方法などが挙げられるが、本発明は、かかる方法によって限定されるものではない。本発明の上塗り塗料を塗布する方法としては、例えば、刷毛、バーコーター、アプリケーター、エアスプレー、エアレススプレー、ロールコーター、フローコーターなどを用いた塗布方法が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
前記上塗り塗料は、例えば、建築物の内装および外装、外壁などに現場塗装する際に好適に使用することができるほか、窯業系建材などの無機質建材にも好適に使用することができる。窯業系建材としては、例えば、瓦、外壁材などが挙げられる。窯業系建材は、無機質硬化体の原料となる水硬性膠着材に無機充填剤、繊維質材料などを添加し、得られた混合物を成形し、得られた成形体を養生し、硬化させることによって得られる。建築物の外装を構成する無機質建材としては、例えば、フレキシブルボード、珪酸カルシウム板、石膏スラグパーライト板、木片セメント板、プレキャストコンクリート板、ALC板、石膏ボードなどが挙げられる。
本発明の上塗り塗料を建材に塗布する際には、例えば、スプレー、ローラー、ハケ、コテなどを用いることができる。
なお、本発明の上塗り塗料を建材の表面および裏面に塗布する際には、両面に塗膜を有する建材を効率よく製造する観点から、必要により、当該建材を加熱しておいてもよい。
次に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の実施例において、特に断りがない限り、「部」は「質量部」を意味し、「%」は「質量%」を意味する。
調製例1
脱イオン水223部、分散剤〔花王(株)製、商品名:デモールEP〕60部、分散剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:ディスコートN−14〕50部、湿潤剤〔花王(株)製、商品名:エマルゲンLS−106〕10部、プロピレングリコール50部、酸化チタン〔石原産業(株)製、商品名:タイペークCR−95〕1000部およびガラスビーズ(直径:1mm)200部をホモディスパーで回転速度3000min-1にて60分間分散させた後、100メッシュ(JISメッシュ、以下同じ)の金網で濾過することにより、白色ペーストを調製した。
実施例1
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に脱イオン水764部を仕込んだ。滴下ロートに脱イオン水189部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンBC−10〕の25%水溶液40部、スチレン450部、2−エチルヘキシルアクリレート40部およびメタクリル酸10部からなる滴下用プレエマルションを調製し、そのうち全単量体成分の総量の5%にあたる73部をフラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら80℃まで昇温し、5%過硫酸アンモニウム水溶液10部を添加し、重合を開始した。その後、滴下用プレエマルションの残部と5%過硫酸アンモニウム水溶液15部を120分間にわたり均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を80℃で60分間維持し、引き続いて脱イオン水189部、乳化剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR−10〕の25%水溶液40部、メチルメタクリレート200部、2−エチルヘキシルアクリレート270部および4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン30部からなる2段目滴下用プレエマルションを調製し、当該段目滴下用プレエマルションを5%過硫酸アンモニウム水溶液15部とともに120分間にわたりフラスコ内に均一に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を80℃で60分間維持し、25%アンモニア水を添加することによってpHを8に調製し、重合を終了した。得られた反応液を室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュの金網で濾過することにより、樹脂エマルションを調製した。この樹脂エマルションにおける不揮発分の含有率は45%であった。
前記で得られた樹脂エマルションに含まれるエマルション粒子は、2層構造を有し、内層を構成する単量体成分におけるスチレンの含有率は90%であり、外層を構成する単量体成分における紫外線安定性基含有単量体の含有率は6.0%であり、内層と外層との質量比は50/50であり、エマルション粒子における内層と外層との合計含有率は100%であり、エマルション粒子を構成する全単量体におけるスチレンの含有率は45%であり、外層を構成する重合体(II)のガラス転移温度は−15℃であり、内層を構成する重合体(I)のガラス転移温度は77℃であり、エマルション粒子全体のガラス転移温度は24℃であった。
前記で得られた樹脂エマルション100部に成膜助剤として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート〔JNC(株)製、品番:CS−12〕12部を添加し、ホモディスパーで回転速度1500min-1にて30分間攪拌した後、調製例1で得られた白色ペースト30部および消泡剤〔サンノプコ(株)製、商品名:SNデフォーマー777〕0.5部を添加し、クレーブス単位粘度計(ブルックフィールド社製、品番:KU−1)を用いて25℃で測定したときの粘度が80KUとなるように増粘剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカノールUH−420〕を添加し、その状態で30分間攪拌することにより、上塗り塗料を調製した。
実施例2
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に脱イオン水764部を仕込んだ。滴下ロートに脱イオン水94.5部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンBC−10〕の25%水溶液20部およびスチレン250部からなる滴下用プレエマルションを調製し、そのうち全単量体成分の総量の5%にあたる73部をフラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら80℃まで昇温し、5%過硫酸アンモニウム水溶液10部を添加し、重合を開始した。その後、滴下用プレエマルションの残部と5%過硫酸アンモニウム水溶液7.5部を60分間にわたり均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を80℃で60分間維持し、引き続いて脱イオン水283.5部、乳化剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR−10〕の25%水溶液60部、メチルメタクリレート400部、2−エチルヘキシルアクリレート345部および4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン5部からなる2段目滴下用プレエマルションを調製し、5%過硫酸アンモニウム水溶液22.5部とともに180分間にわたり均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコ内の内容物を80℃で60分間維持し、25%アンモニア水を添加することによってpHを8に調製し、重合を終了した。得られた反応液を室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュの金網で濾過することにより、樹脂エマルションを調製した。この樹脂エマルションにおける不揮発分の含有率は45%であった。
前記で得られた樹脂エマルションに含まれるエマルション粒子は、2層構造を有し、内層を構成する単量体成分におけるスチレンの含有率は100%であり、外層を構成する単量体成分における紫外線安定性基含有単量体の含有率は0.7%であり、内層と外層との質量比は25/75であり、エマルション粒子における内層と外層との合計含有率は100%であり、エマルション粒子を構成する全単量体におけるスチレンの含有率は25%であり、外層を構成する重合体(II)のガラス転移温度は0℃であり、内層を構成する重合体(I)のガラス転移温度は100℃であり、エマルション粒子全体のガラス転移温度は20℃であった。
次に、前記で得られた樹脂エマルション100部に成膜助剤として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート〔JNC(株)製、品番:CS−12〕12部を添加し、ホモディスパーで回転速度1500min-1にて30分間攪拌した後、調製例1で得られた白色ペースト30部および消泡剤〔サンノプコ(株)製、商品名:SNデフォーマー777〕0.5部を添加し、クレーブス単位粘度計(ブルックフィールド社製、品番:KU−1)を用いて25℃で測定したときの粘度が80KUとなるように増粘剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカノールUH−420〕を添加し、その状態で30分間攪拌することにより、上塗り塗料を調製した。
実施例3
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に脱イオン水764部を仕込んだ。滴下ロートに脱イオン水94.5部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンBC−10〕の25%水溶液20部およびスチレン250部からなる滴下用プレエマルションを調製し、そのうち全単量体成分の総量の5%にあたる73部をフラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら80℃まで昇温し、5%過硫酸アンモニウム水溶液10部を添加し、重合を開始した。その後、滴下用プレエマルションの残部と5%過硫酸アンモニウム水溶液7.5部を60分間にわたり均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を80℃で60分間維持し、引き続いて脱イオン水189部、乳化剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR−10〕の25%水溶液40部、メチルメタクリレート245部、2−エチルヘキシルアクリレート250部およびメタクリル酸5部からなる2段目滴下用プレエマルションを調製し、5%過硫酸アンモニウム水溶液15部とともに120分間にわたり均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を80℃で60分間維持し、引き続いて脱イオン水94.5部、乳化剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR−10〕の25%水溶液20部、メチルメタクリレート175部、2−エチルヘキシルアクリレート70部および4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン5部からなる滴下用プレエマルションを調製し、5%過硫酸アンモニウム水溶液7.5部とともに60分間にわたり均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコ内の内容物を80℃で60分間維持し、25%アンモニア水を添加することによってpHを8に調製し、重合を終了した。得られた反応液を室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュの金網で濾過することにより、樹脂エマルションを調製した。この樹脂エマルションにおける不揮発分の含有率は45%であった。
前記で得られた樹脂エマルションに含まれるエマルション粒子は、3層構造を有し、内層を構成する単量体成分におけるスチレンの含有率は100%であり、外層を構成する単量体成分における紫外線安定性基含有単量体の含有率は2.0%であり、内層と外層との質量比は50/50であり、エマルション粒子における内層と外層との合計含有率は50%であり、エマルション粒子を構成する全単量体におけるスチレンの含有率は25%であり、外層を構成する重合体(II)のガラス転移温度は32℃であり、内層を構成する重合体(I)のガラス転移温度は100℃であり、エマルション粒子全体のガラス転移温度は23℃であった。
次に、前記で得られた樹脂エマルション100部に成膜助剤として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート〔JNC(株)製、品番:CS−12〕12部を添加し、ホモディスパーで回転速度1500min-1にて30分間攪拌した後、調製例1で得られた白色ペースト30部および消泡剤〔サンノプコ(株)製、商品名:SNデフォーマー777〕0.5部を添加し、クレーブス単位粘度計(ブルックフィールド社製、品番:KU−1)を用いて25℃で測定したときの粘度が80KUとなるように増粘剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカノールUH−420〕を添加し、その状態で30分間攪拌することにより、上塗り塗料を調製した。
実施例4
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に脱イオン水764部を仕込んだ。滴下ロートに脱イオン水189部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンBC−10〕の25%水溶液40部、スチレン450部、2−エチルヘキシルアクリレート45部、アクリル酸2.5部およびメタクリル酸2.5部からなる滴下用プレエマルションを調製し、そのうち全単量体成分の総量の5%にあたる73部をフラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら80℃まで昇温し、5%過硫酸アンモニウム水溶液10部を添加し、重合を開始した。その後、滴下用プレエマルションの残部と5%過硫酸アンモニウム水溶液15部を120分間にわたり均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を80℃で60分間維持し、引き続いて脱イオン水94.5部、乳化剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR−10〕の25%水溶液20部、メチルメタクリレート100部および2−エチルヘキシルアクリレート150部からなる2段目滴下用プレエマルションを調製し、5%過硫酸アンモニウム水溶液7.5部とともに60分間にわたり均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を80℃で60分間維持し、引き続いて脱イオン水94.5部、乳化剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR−10〕の25%水溶液20部、メチルメタクリレート100部、2−エチルヘキシルアクリレート100部および4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン50部からなる滴下用プレエマルションを調製し、5%過硫酸アンモニウム水溶液7.5部とともに60分間にわたり均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコ内の内容物を80℃で60分間維持し、25%アンモニア水を添加することによってpHを8に調製し、重合を終了した。得られた反応液を室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュの金網で濾過することにより、樹脂エマルションを調製した。この樹脂エマルションにおける不揮発分の含有率は45%であった。
前記で得られた樹脂エマルションに含まれるエマルション粒子は、3層構造を有し、内層を構成する単量体成分におけるスチレンの含有率は90%であり、外層を構成する単量体成分における紫外線安定性基含有単量体の含有率は20.0%であり、内層と外層との質量比は67/33であり、エマルション粒子における内層と外層との合計含有率は75%であり、エマルション粒子を構成する全単量体におけるスチレンの含有率は45%であり、外層を構成する重合体(II)のガラス転移温度は11℃であり、内層を構成する重合体(I)のガラス転移温度は74℃であり、エマルション粒子全体のガラス転移温度は27℃であった。
次に、前記で得られた樹脂エマルション100部に成膜助剤として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート〔JNC(株)製、品番:CS−12〕12部を添加し、ホモディスパーで回転速度1500min-1にて30分間攪拌した後、調製例1で得られた白色ペースト30部および消泡剤〔サンノプコ(株)製、商品名:SNデフォーマー777〕0.5部を添加し、クレーブス単位粘度計(ブルックフィールド社製、品番:KU−1)を用いて25℃で測定したときの粘度が80KUとなるように増粘剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカノールUH−420〕を添加し、その状態で30分間攪拌することにより、上塗り塗料を調製した。
実施例5
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に脱イオン水764部を仕込んだ。滴下ロートに脱イオン水189部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンBC−10〕の25%水溶液40部、スチレン450部、2−エチルヘキシルアクリレート45部およびメタクリル酸5部からなる滴下用プレエマルションを調製し、そのうち全単量体成分の総量の5%にあたる73部をフラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら80℃まで昇温し、5%過硫酸アンモニウム水溶液10部を添加し、重合を開始した。その後、滴下用プレエマルションの残部と5%過硫酸アンモニウム水溶液15部を120分間にわたり均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を80℃で60分間維持し、引き続いて脱イオン水94.5部、乳化剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR−10〕の25%水溶液20部、メチルメタクリレート100部および2−エチルヘキシルアクリレート150部からなる2段目滴下用プレエマルションを調製し、5%過硫酸アンモニウム水溶液7.5部とともに60分間にわたり均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を80℃で60分間維持し、引き続いて脱イオン水94.5部、乳化剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR−10〕の25%水溶液20部、メチルメタクリレート100部、2−エチルヘキシルアクリレート100部および4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン50部からなる滴下用プレエマルションを調製し、5%過硫酸アンモニウム水溶液7.5部とともに60分間にわたり均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を80℃で60分間維持し、25%アンモニア水を添加することによってpHを8に調製し、重合を終了した。得られた反応液を室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュの金網で濾過することにより、樹脂エマルションを調製した。この樹脂エマルションにおける不揮発分の含有率は45%であった。
前記で得られた樹脂エマルションに含まれるエマルション粒子は、3層構造を有し、内層を構成する単量体成分におけるスチレンの含有率は90%であり、外層を構成する単量体成分における紫外線安定性基含有単量体の含有率は20.0%であり、内層と外層との質量比は67/33であり、エマルション粒子における内層と外層との合計含有率は75%であり、エマルション粒子を構成する全単量体におけるスチレンの含有率は45%であり、外層を構成する重合体(II)のガラス転移温度は11℃であり、内層を構成する重合体(I)のガラス転移温度は74℃であり、エマルション粒子全体のガラス転移温度は27℃であった。
次に、前記で得られた樹脂エマルション100部に成膜助剤として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート〔JNC(株)製、品番:CS−12〕12部を添加し、ホモディスパーで回転速度1500min-1にて30分間攪拌した後、調製例1で得られた白色ペースト30部および消泡剤〔サンノプコ(株)製、商品名:SNデフォーマー777〕0.5部を添加し、クレーブス単位粘度計(ブルックフィールド社製、品番:KU−1)を用いて25℃で測定したときの粘度が80KUとなるように増粘剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカノールUH−420〕を添加し、その状態で30分間攪拌することにより、上塗り塗料を調製した。
実施例6
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に脱イオン水764部を仕込んだ。滴下ロートに脱イオン水94.5部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンBC−10〕の25%水溶液20部、メチルメタクリレート100部および2−エチルヘキシルアクリレート150部からなる滴下用プレエマルションを調製し、そのうち全単量体成分の総量の5%にあたる73部をフラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら80℃まで昇温し、5%過硫酸アンモニウム水溶液10部を添加し、重合を開始した。その後、滴下用プレエマルションの残部と5%過硫酸アンモニウム水溶液7.5部を60分間にわたり均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を80℃で60分間維持し、引き続いて脱イオン水189部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンBC−10〕の25%水溶液40部、スチレン450部、2−エチルヘキシルアクリレート45部およびメタクリル酸5部からなる2段目滴下用プレエマルションを調製し、5%過硫酸アンモニウム水溶液15部とともに120分間にわたり均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を80℃で60分間維持し、引き続いて脱イオン水94.5部、乳化剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR−10〕の25%水溶液20部、メチルメタクリレート100部、2−エチルヘキシルアクリレート100部および4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン50部からなる滴下用プレエマルションを調製し、5%過硫酸アンモニウム水溶液7.5部とともに60分間にわたり均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を80℃で60分間維持し、25%アンモニア水を添加することによってpHを8に調製し、重合を終了した。得られた反応液を室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュの金網で濾過することにより、樹脂エマルションを調製した。この樹脂エマルションにおける不揮発分の含有率は45%であった。
前記で得られた樹脂エマルションに含まれるエマルション粒子は、3層構造を有し、内層を構成する単量体成分におけるスチレンの含有率は90%であり、外層を構成する単量体成分における紫外線安定性基含有単量体の含有率は20.0%であり、内層と外層との質量比は67/33であり、エマルション粒子における内層と外層との合計含有率は75%であり、エマルション粒子を構成する全単量体におけるスチレンの含有率は45%であり、外層を構成する重合体(II)のガラス転移温度は11℃であり、内層を構成する重合体(I)のガラス転移温度は74℃であり、エマルション粒子全体のガラス転移温度は27℃であった。
次に、前記で得られた樹脂エマルション100部に成膜助剤として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート〔JNC(株)製、品番:CS−12〕12部を添加し、ホモディスパーで回転速度1500min-1にて30分間攪拌した後、調製例1で得られた白色ペースト30部および消泡剤〔サンノプコ(株)製、商品名:SNデフォーマー777〕0.5部を添加し、クレーブス単位粘度計(ブルックフィールド社製、品番:KU−1)を用いて25℃で測定したときの粘度が80KUとなるように増粘剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカノールUH−420〕を添加し、その状態で30分間攪拌することにより、上塗り塗料を調製した。
比較例1
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に脱イオン水764部を仕込んだ。滴下ロートに脱イオン水189部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンBC−10〕の25%水溶液40部、スチレン450部、2−エチルヘキシルアクリレート40部およびメタクリル酸10部からなる滴下用プレエマルションを調製し、そのうち全単量体成分の総量の5%にあたる73部をフラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら80℃まで昇温し、5%過硫酸アンモニウム水溶液10部を添加し、重合を開始した。その後、滴下用プレエマルションの残部と5%過硫酸アンモニウム水溶液15部を120分間にわたり均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコ内容物を80℃で60分間維持し、引き続いて脱イオン水189部、乳化剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR−10〕の25%水溶液40部、メチルメタクリレート220部、2−エチルヘキシルアクリレート270部およびメタクリル酸10部からなる2段目滴下用プレエマルションを調製し、5%過硫酸アンモニウム水溶液15部とともに120分間にわたり均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を80℃で60分間維持し、25%アンモニア水を添加することによってpHを8に調製し、重合を終了した。得られた反応液を室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュの金網で濾過することにより、樹脂エマルションを調製した。この樹脂エマルションにおける不揮発分の含有率は45%であった。
前記で得られた樹脂エマルションに含まれるエマルション粒子は、2層構造を有し、内層を構成する単量体成分におけるスチレンの含有率は90%であり、外層を構成する単量体成分における紫外線安定性基含有単量体の含有率は0%であり、内層と外層との質量比は50/50であり、エマルション粒子における内層と外層との合計含有率は100%であり、エマルション粒子を構成する全単量体におけるスチレンの含有率は45%であり、外層を構成する重合体(II)のガラス転移温度は−15℃であり、内層を構成する重合体(I)のガラス転移温度は77℃であり、エマルション粒子全体のガラス転移温度は24℃であった。
次に、前記で得られた樹脂エマルション100部に成膜助剤として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート〔JNC(株)製、品番:CS−12〕12部を添加し、ホモディスパーで回転速度1500min-1にて30分間攪拌した後、調製例1で得られた白色ペースト30部および消泡剤〔サンノプコ(株)製、商品名:SNデフォーマー777〕0.5部を添加し、クレーブス単位粘度計(ブルックフィールド社製、品番:KU−1)を用いて25℃で測定したときの粘度が80KUとなるように増粘剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカノールUH−420〕を添加し、その状態で30分間攪拌することにより、上塗り塗料を調製した。
比較例2
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に脱イオン水764部を仕込んだ。滴下ロートに脱イオン水189部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンBC−10〕の25%水溶液40部、スチレン250部、メチルメタクリレート200部、2−エチルヘキシルアクリレート40部およびメタクリル酸10部からなる滴下用プレエマルションを調製し、そのうち全単量体成分の総量の5%にあたる73部をフラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら80℃まで昇温し、5%過硫酸アンモニウム水溶液10部を添加し、重合を開始した。その後、滴下用プレエマルションの残部と5%過硫酸アンモニウム水溶液15部を120分間にわたり均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を80℃で60分間維持し、引き続いて脱イオン水189部、乳化剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR−10〕の25%水溶液40部、スチレン200部、2−エチルヘキシルアクリレート270部および4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン30部からなる2段目滴下用プレエマルションを調製し、5%過硫酸アンモニウム水溶液15部とともに120分間にわたり均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコ内の内容物を80℃で60分間維持し、25%アンモニア水を添加することによってpHを8に調製し、重合を終了した。得られた反応液を室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュの金網で濾過することにより、樹脂エマルションを調製した。この樹脂エマルションにおける不揮発分の含有率は45%であった。
前記で得られた樹脂エマルションに含まれるエマルション粒子は、2層構造を有し、内層を構成する単量体成分におけるスチレンの含有率は50%であり、外層を構成する単量体成分における紫外線安定性基含有単量体の含有率は6.0%であり、内層と外層との質量比は50/50であり、エマルション粒子における内層と外層との合計含有率は100%であり、エマルション粒子を構成する全単量体におけるスチレンの含有率は45%であり、外層を構成する重合体(II)のガラス転移温度は−16℃であり、内層を構成する重合体(I)のガラス転移温度は79℃であり、エマルション粒子全体のガラス転移温度は24℃であった。
次に、前記で得られた樹脂エマルション100部に成膜助剤として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート〔JNC(株)製、品番:CS−12〕12部を添加し、ホモディスパーで回転速度1500min-1にて30分間攪拌した後、調製例1で得られた白色ペースト30部および消泡剤〔サンノプコ(株)製、商品名:SNデフォーマー777〕0.5部を添加し、クレーブス単位粘度計(ブルックフィールド社製、品番:KU−1)を用いて25℃で測定したときの粘度が80KUとなるように増粘剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカノールUH−420〕を添加し、その状態で30分間攪拌することにより、上塗り塗料を調製した。
比較例3
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に脱イオン水764部を仕込んだ。滴下ロートに脱イオン水19部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンBC−10〕の25%水溶液4部およびスチレン50部からなる滴下用プレエマルションを調製し、得られた滴下用プレエマルションの全量をフラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら80℃まで昇温し、5%過硫酸アンモニウム水溶液10部を添加し、重合を開始した。その後、フラスコ内容物を80℃で30分間維持し、引き続いて脱イオン水359部、乳化剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR−10〕の25%水溶液76部、スチレン400部、メチルメチクリレート215部、2−エチルヘキシルアクリレート305部および4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン30部からなる2段目滴下用プレエマルションを調製し、5%過硫酸アンモニウム水溶液30部とともに240分間にわたり均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を80℃で60分間維持し、25%アンモニア水を添加することによってpHを8に調製し、重合を終了した。得られた反応液を室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュの金網で濾過することにより、樹脂エマルションを調製した。この樹脂エマルションにおける不揮発分の含有率は45%であった。
前記で得られた樹脂エマルションに含まれるエマルション粒子は、2層構造を有し、内層を構成する単量体成分におけるスチレンの含有率は100%であり、外層を構成する単量体成分における紫外線安定性基含有単量体の含有率は3.2%であり、内層と外層との質量比は5/95であり、エマルション粒子における内層と外層との合計含有率は100%であり、エマルション粒子を構成する全単量体におけるスチレンの含有率は45%であり、外層を構成する重合体(II)のガラス転移温度は22℃であり、内層を構成する重合体(I)のガラス転移温度は100℃であり、エマルション粒子全体のガラス転移温度は25℃であった。
次に、前記で得られた樹脂エマルション100部に成膜助剤として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート〔JNC(株)製、品番:CS−12〕12部を添加し、ホモディスパーで回転速度1500min-1にて30分間攪拌した後、調製例1で得られた白色ペースト30部および消泡剤〔サンノプコ(株)製、商品名:SNデフォーマー777〕0.5部を添加し、クレーブス単位粘度計(ブルックフィールド社製、品番:KU−1)を用いて25℃で測定したときの粘度が80KUとなるように増粘剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカノールUH−420〕を添加し、その状態で30分間攪拌することにより、上塗り塗料を調製した。
比較例4
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に脱イオン水764部を仕込んだ。滴下ロートに脱イオン水189部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンBC−10〕の25%水溶液40部、スチレン400部、2−エチルヘキシルアクリレート90部およびメタクリル酸10部からなる滴下用プレエマルションを調製し、そのうち全単量体成分の総量の5%にあたる73部をフラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら80℃まで昇温し、5%過硫酸アンモニウム水溶液10部を添加し、重合を開始した。その後、滴下用プレエマルションの残部と5%過硫酸アンモニウム水溶液15部を120分間にわたり均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を80℃で60分間維持し、引き続いて脱イオン水189部、乳化剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR−10〕の25%水溶液40部、スチレン50部、メチルメタクリレート320部、2−エチルヘキシルアクリレート100部および4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン30部からなる2段目滴下用プレエマルションを調製し、5%過硫酸アンモニウム水溶液15部とともに120分間にわたり均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を80℃で60分間維持し、25%アンモニア水を添加することによってpHを8に調製し、重合を終了した。得られた反応液を室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュの金網で濾過することにより、樹脂エマルションを調製した。この樹脂エマルションにおける不揮発分の含有率は45%であった。
前記で得られた樹脂エマルションに含まれるエマルション粒子は、2層構造を有し、内層を構成する単量体成分におけるスチレンの含有率は80%であり、外層を構成する単量体成分における紫外線安定性基含有単量体の含有率は6.0%であり、内層と外層との質量比は50/50であり、エマルション粒子における内層と外層との合計含有率は100%であり、エマルション粒子を構成する全単量体におけるスチレンの含有率は45%であり、外層を構成する重合体(II)のガラス転移温度は50℃であり、内層を構成する重合体(I)のガラス転移温度は77℃であり、エマルション粒子全体のガラス転移温度は63℃であった。
次に、前記で得られた樹脂エマルション100部に成膜助剤として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート〔JNC(株)製、品番:CS−12〕12部を添加し、ホモディスパーで回転速度1500min-1にて30分間攪拌した後、調製例1で得られた白色ペースト30部および消泡剤〔サンノプコ(株)製、商品名:SNデフォーマー777〕0.5部を添加し、クレーブス単位粘度計(ブルックフィールド社製、品番:KU−1)を用いて25℃で測定したときの粘度が80KUとなるように増粘剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカノールUH−420〕を添加し、その状態で30分間攪拌することにより、上塗り塗料を調製した。
次に、前記で得られた上塗り塗料を用い、以下の方法に基づいて各物性を調べた。その結果を表1に示す。なお、×の評価が1つでもあるものは、不合格である。
(1)耐候性
スレート板〔日本テストパネル(株)製、縦:70mm、横:150mm、厚さ:6mm〕にシーラー〔エスケー化研(株)製、商品名:EXシーラー〕をエアスプレーで150g/m2の塗布量で均一に塗布し、23℃の空気中で1週間乾燥させた。
次に、上塗り塗料を10milアプリケーターで塗布し、23℃の空気中にて1週間乾燥させた後、当該上塗り塗料が塗布されたスレート板の側面および背面をアルミニウムテープでシールし、上塗り塗料が塗布された面の60°鏡面光沢を光沢計〔日本電色工業(株)製、品番:VG2000〕で測定し、さらに以下の条件にて500時間耐候性試験を行ない、前記光沢計で当該スレート板の塗装面の光沢を測定し、式:
[光沢保持率(%)]
=〔[耐候性試験後の光沢]÷[耐候性試験前の光沢]〕×100
に基づいて求め、以下の評価基準に基づいて耐候性を評価した。
〔耐候性試験の試験条件〕
・試験機:メタルウェザー〔ダイプラ・ウィンテス(株)製、品番:KU−R4〕
・照射:気温65℃で相対湿度50%の空気中で4時間照射(照射強度:80mW/cm2)
・湿潤:気温35℃で相対湿度98%の空気中で4時間
・シャワー:湿潤前後に各30秒間
(評価基準)
◎:光沢性保持率90%以上
○:光沢性保持率80%以上90%未満
△:光沢性保持率60%以上80%未満
×:光沢性保持率60%未満
(2)凍結流動保持性
樹脂エマルション100部を200mL容の金属缶〔善友金属(株)製、プライマー丸缶〕内に入れ、−3℃の空気中で1日間放置し、次いで23℃の空気中に1日間放置する操作を1サイクルとし、当該操作を3サイクル行なった後、樹脂エマルションの凍結流動保持性を以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:流動性に変化がなく、−3℃の空気中で凍結なし
○:流動性に変化がなく、−3℃の空気中で凍結あり
△:流動性の低下あり
×:流動性がなく、固化
(3)パターン保持性
ストレート板(日本テストパネル製、縦:7cm、横:15cm、厚さ:6mm)にシーラー〔エスケー化研(株)製、商品名:EXシーラー〕をエアスプレーにて150g/m2の塗布量で均一に塗布し、23℃の空気中で1週間乾燥させた。
前記スレート板のシーラーの塗布面に、上塗り塗料100部に対して水5部を添加することによって調製した試料を垂れ試験器〔大佑基材(株)製、商品名:サグテスターBOX75−175〕(膜厚:4mil、8mil、10mil、15mil、20milの5段階の膜厚変化塗工機、各膜厚間距離:5mm)で塗布し、その直後にこのスレート板を90°立面状態に立てかけ、その状態で23℃の空気中にて1日間乾燥させた後、塗膜状態を目視で観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:塗膜の境界が明確に分かれており、塗装直後と変化なし。
○:塗膜の境界が接近しているが、分かれている。
△:塗膜の境界が不明瞭になっている。
×:塗膜の境界が保持されていない。
(4)低温造膜安定性
ストレート板(日本テストパネル製、縦:7cm、横:15cm、厚さ:6mm)にシーラー〔エスケー化研(株)製、商品名:EXシーラー〕をエアスプレーにて150g/m2の塗布量で均一に塗布し、23℃の空気中で1週間乾燥させた。
前記スレート板のシーラーの塗布面に、上塗り塗料100部に対して水10部を添加することによって調製した試料を10mil厚のアプリケーターで塗布し、5℃に調温した恒温装置内で24時間乾燥させた。
次に、前記スレート板を常温の水中に24時間浸漬させた後、水中から引き上げ、室温(約25℃)で24時間乾燥させた。その後、スレート板の塗膜状態をルーペで10倍に拡大して目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて低温造膜安定性を評価した。
(評価基準)
◎:クラックなし
○:塗膜に小さいクラック(長さ5mm未満)が見受けられる。
×:塗膜に大きいクラック(長さ5mm以上)が見受けられる。
(5)耐変形性
ストレート板(日本テストパネル製、縦:7cm、横:15cm、厚さ:6mm)にシーラー〔エスケー化研(株)製、商品名:EXシーラー〕をエアスプレーにて150g/m2の塗布量で均一に塗布し、23℃の空気中で1週間乾燥させた。
前記スレート板のシーラーの塗布面に、上塗り塗料100部に対して水10部を添加することによって調製した試料を10mil厚のアプリケーターで塗布し、23℃の空気中で24時間乾燥させた。
次に、形成された塗膜の表面上にガーゼ(縦:7cm、横:7cm)を載置し、このガーゼの上に250gのおもりを載せ、室温(約25℃)の空気中で2時間放置した後、塗膜の表面を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて耐変形性を評価した。
(評価基準)
◎:塗膜の表面にガーゼの残痕なし
○:塗膜の表面に浅いガーゼの残痕あり
×:塗膜の表面に深いガーゼの残痕あり
(6)総合評価
前記各物性の評価において、◎を20点、○を15点、△を5点、×を0点とし、各物性の得点を合計することによって総合得点(最高得点:100点、最低得点:0点)を求め、総合評価の指標とした。その結果を表1に示す。
表1に示された結果から、各実施例で得られた塗料用樹脂エマルションおよび上塗り塗料は、いずれも、耐候性、凍結流動保持性、パターン保持性、低温造膜安定性および耐変形性に総合的に優れた塗膜を形成するものであることがわかる。