JP2018062663A - 塗料用樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐候性、耐水性、および鉛直方向で塗膜を形成させた場合であっても塗膜が流下することを防止する性質に総合的に優れた塗膜を形成する塗料用樹脂組成物を提供する。【解決手段】単量体成分を乳化重合させてなる樹脂エマルションを含有する塗料用樹脂組成物であって、当該樹脂エマルションに含まれるエマルション粒子を構成する樹脂の原料として用いられる単量体成分における酸基含有単量体の含有率が0.3質量%以下であることを特徴とする。【選択図】なし

Description

本発明は、塗料用樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、例えば、建築物の外装や建材などの表面に塗装されるトップコートと呼ばれている上塗り塗料などに有用な塗料用樹脂組成物およびトップコート用樹脂エマルション、ならびに当該塗料用樹脂組成物またはトップコート用樹脂エマルションを含有する上塗り塗料に関する。
近年、大気中への揮発性有機化合物の放出などによる環境問題を回避するために、溶剤系塗料に代えて、水溶性樹脂、エマルションなどの水分散型樹脂を用いた水系塗料が用いられている。しかし、水系塗料は、一般に水を溶媒とすることに起因して有機溶媒系塗料と比較して耐水性、耐候性などに劣るという技術的課題がある。
そこで、耐候性および耐水性に優れた水性塗料組成物として、特定のガラス転移温度を有するアクリル重合体からなるコア部とシェル部を有する多層構造粒子が水中に分散された水性塗料組成物(例えば、特許文献1参照)などが提案されている。
しかし、前記水性塗料組成物は、ある程度の耐候性および耐水性を有するが、近年、耐候性および耐水性に優れているのみならず、さらに鉛直方向で塗膜を形成させた場合であっても塗膜が流下することを防止する性質(以下、パターン保持性という)にも優れた塗膜を形成する塗料用樹脂組成物およびトップコート用樹脂エマルション、ならびに当該塗料用樹脂組成物またはトップコート用樹脂エマルションを含有する上塗り塗料の開発が待ち望まれている。
特開2002−138123号公報
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、耐候性、耐水性、さらにパターン保持性にも優れた塗膜を形成する塗料用樹脂組成物および当該塗料用樹脂組成物を含有する上塗り塗料を提供することを課題とする。本発明は、また、耐候性、耐水性、さらにパターン保持性にも優れた塗膜を形成するトップコート用樹脂エマルションおよび当該トップコート用樹脂エマルションを含有する上塗り塗料を提供することを課題とする。
本発明は、単量体成分を乳化重合させてなる樹脂エマルションを含有する塗料用樹脂組成物であって、当該樹脂エマルションに含まれるエマルション粒子を構成する樹脂の原料として用いられる単量体成分における酸基含有単量体の含有率が0.3質量%以下であることを特徴とする塗料用樹脂組成物および当該塗料用樹脂組成物を含有する上塗り塗料、ならびに単量体成分を乳化重合させてなる樹脂エマルションであって、当該樹脂エマルションに含まれるエマルション粒子を構成する樹脂の原料として用いられる単量体成分における酸基含有単量体の含有率が0.3質量%以下であることを特徴とするトップコート用樹脂エマルションおよび当該トップコート用樹脂エマルションを含有する上塗り塗料に関する。
本発明の塗料用樹脂組成物は、耐候性、耐水性およびパターン保持性に総合的に優れた塗膜を形成するという優れた効果を奏する。本発明のトップコート用樹脂エマルションは、耐候性、耐水性およびパターン保持性に総合的に優れた塗膜を形成するという優れた効果を奏する。本発明の上塗り塗料は、耐候性、耐水性およびパターン保持性に総合的に優れた塗膜を形成するという優れた効果を奏する。
本発明の塗料用樹脂組成物は、前記したように、単量体成分を乳化重合させてなる樹脂エマルションを含有する塗料用樹脂組成物であり、当該塗料用樹脂組成物に含まれるエマルション粒子を構成する樹脂の原料として用いられる単量体成分における酸基含有単量体の含有率が0.3質量%以下であることを特徴とする。また、本発明のトップコート用樹脂エマルション(以下、単に樹脂エマルションともいう)は、前記したように、単量体成分を乳化重合させてなる樹脂エマルションであり、当該樹脂エマルションに含まれるエマルション粒子を構成する樹脂の原料として用いられる単量体成分における酸基含有単量体の含有率が0.3質量%以下であることを特徴とする。
本発明の塗料用樹脂組成物は、単量体成分を乳化重合させてなる樹脂エマルションを含有するものであり、当該樹脂エマルションに含まれるエマルション粒子を構成する樹脂の原料として用いられる単量体成分における酸基含有単量体の含有率が0.3質量%以下であるので、耐候性および耐水性に優れるのみならず、パターン保持性にも優れた塗膜を形成するという優れた効果が奏される。また、本発明の樹脂エマルションは、単量体成分を乳化重合させてなる樹脂エマルションであり、当該樹脂エマルションに含まれるエマルション粒子を構成する樹脂の原料として用いられる単量体成分における酸基含有単量体の含有率が0.3質量%以下であるので、耐候性および耐水性に優れるのみならず、パターン保持性にも優れた塗膜を形成するという優れた効果が奏される。
前記単量体成分における酸基含有単量体の含有率は、パターン保持性を向上させる観点から、0.3質量%以下、好ましくは0.2質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下である。
酸基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノブチルエステル、イタコン酸モノメチルエステル、イタコン酸モノブチルエステル、ビニル安息香酸などのカルボキシル基含有脂肪族系単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの酸基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの酸基含有単量体のなかでは、エマルション粒子の分散安定性を向上させる観点から、アクリル酸、メタクリル酸およびイタコン酸が好ましく、アクリル酸およびメタクリル酸がより好ましい。
本発明の樹脂エマルションに含まれているエマルション粒子は、1層のみで構成されていてもよく、複数層で構成されていてもよい。エマルション粒子が複数層で構成されている場合、その層の数は、好ましくは2〜5層であり、より好ましくは2〜4層である。
本発明の樹脂エマルションは、単量体成分を乳化重合させることによって得られる。
単量体成分としては、単官能単量体および多官能単量体があるが、本発明は、これらをいずれも用いることができる。単官能単量体および多官能単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、併用してもよい。
単官能単量体としては、例えば、エチレン性不飽和二重結合含有単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」または「メタクリレート」を意味し、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」または「メタクリル」を意味する。
エチレン性不飽和二重結合含有単量体としては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、水酸基含有(メタ)アクリレート、ピペリジン基含有単量体、オキソ基含有単量体、フッ素原子含有単量体、窒素原子含有単量体、エポキシ基含有単量体、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、シラン基含有単量体、カルボニル基含有単量体、アジリジニル基含有単量体、スチレン系単量体、アラルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのエチレン性不飽和二重結合含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどのエステル基の炭素数が1〜18のアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのアルキル(メタ)アクリレートは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのエステル基の炭素数が1〜18の水酸基含有(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの水酸基含有(メタ)アクリレートは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
ピペリジン基含有単量体としては、例えば、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイル−1−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのピペリジン基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
オキソ基含有単量体としては、例えば、エチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレングリコールメトキシ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールメトキシ(メタ)アクリレートなどの(ジ)エチレングリコール(メトキシ)(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのオキソ基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
フッ素原子含有単量体としては、例えば、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレートなどのエステル基の炭素数が2〜6のフッ素原子含有アルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのフッ素原子含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
窒素原子含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−モノメチル(メタ)アクリルアミド、N−モノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなどのアクリルアミド化合物、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの窒素原子含有(メタ)アクリレート化合物、N−ビニルピロリドン、(メタ)アクリロニトリルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの窒素原子含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
エポキシ基含有単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、α−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルアリルエーテルなどのエポキシ基含有(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのエポキシ基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
アルコキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレート、エトキシブチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリプロポキシ(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのアルコキシアルキル(メタ)アクリレートは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
シラン基含有単量体としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、2−スチリルエチルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヒドロキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルヒドロキシシランなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのシラン基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
カルボニル基含有単量体としては、例えば、アクロレイン、ホウミルスチロール、ビニルエチルケトン、(メタ)アクリルオキシアルキルプロペナール、アセトニル(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートアセチルアセテート、ブタンジオール−1,4−アクリレートアセチルアセテート、2−(アセトアセトキシ)エチル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのカルボニル基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
アジリジニル基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリロイルアジリジン、(メタ)アクリル酸2−アジリジニルエチルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのアジリジニル基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、tert−メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのスチレン系単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。スチレン系単量体は、ベンゼン環にメチル基、tert−ブチル基などのアルキル基、ニトロ基、ニトリル基、アルコキシル基、アシル基、スルホン基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子などの官能基が存在していてもよい。スチレン系単量体のなかでは、塗膜の耐水性を高める観点から、スチレンが好ましい。
アラルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート、メチルベンジル(メタ)アクリレート、ナフチルメチル(メタ)アクリレートなどの炭素数が7〜18のアラルキル基を有するアラルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのアラルキル(メタ)アクリレートは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
好適な単官能単量体としては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、水酸基含有(メタ)アクリレート、ピペリジン基含有単量体、オキソ基含有単量体、フッ素原子含有単量体、窒素原子含有単量体、エポキシ基含有単量体、スチレン系単量体などが挙げられ、これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。単官能単量体のなかでは、耐候性を向上させる観点から、ピペリジン基含有単量体が好ましく、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジンがより好ましい。
単量体成分におけるピペリジン系単量体の含有率は、耐候性を向上させる観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上であり、耐水性を向上させる観点から、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。なお、エマルション粒子が複数層で形成されている場合には、ピペリジン基含有単量体は、いずれの層を構成する単量体成分に含まれていてもよいが、耐候性を向上させる観点から、少なくとも最外層を構成する単量体成分に含まれていることが好ましい。したがって、単量体成分にピペリジン基含有単量体が含まれていることが好ましく、エマルション粒子が複数層で形成されている場合には、少なくとも最外層を構成する単量体成分にピペリジン基含有単量体が含まれていることが好ましく、単量体成分におけるピペリジン基含有単量体の含有率が0.5〜30質量%であることがより好ましく、0.5〜20質量%であることがより一層好ましく、0.5〜10質量%であることがさらに好ましい。
多官能単量体としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの炭素数1〜10の多価アルコールのジ(メタ)アクリレート;エチレンオキシドの付加モル数が2〜50のポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシドの付加モル数が2〜50のポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの炭素数2〜4のアルキレンオキシド基の付加モル数が2〜50であるアルキルジ(メタ)アクリレート;エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノヒドロキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリエトキシトリ(メタ)アクリレートなどの炭素数1〜10の多価アルコールのトリ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートなどの炭素数1〜10の多価アルコールのテトラ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール(モノヒドロキシ)ペンタ(メタ)アクリレートなどの炭素数1〜10の多価アルコールのペンタ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの炭素数1〜10の多価アルコールのヘキサ(メタ)アクリレート;ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2−(2’−ビニルオキシエトキシエチル)(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有(メタ)アクリレート;ウレタン(メタ)アクリレートなどの多官能(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの多官能単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
多官能単量体のなかでは、塗膜硬度と成膜性とを両立させる観点から、水酸基を2個有するアルキル基の炭素数が4〜8のアルキルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシドの付加モル数が2〜50のポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシドの付加モル数が2〜50のポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、多価アルコールのトリ(メタ)アクリレート、多価アルコールのテトラ(メタ)アクリレート、多価アルコールのペンタ(メタ)アクリレートおよび多価アルコールのヘキサ(メタ)アクリレートが好ましく、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシドの付加モル数が2〜50のポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートおよびジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートがより好ましい。
また、本発明においては、エマルション粒子に紫外線吸収性を付与する観点から、本発明の目的が阻害されない範囲内で、紫外線吸収性単量体を単量体成分に含有させてもよい。
紫外線吸収性単量体としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収性単量体、ベンゾフェノン系紫外線吸収性単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの紫外線吸収性単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収性単量体としては、例えば、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシメチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシメチルフェニル]−5−tert−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルアミノメチル−5’−tert−オクチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチル−3’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−5−シアノ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−5−tert−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(β−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)−3’−tert−ブチルフェニル]−4−tert−ブチル−2H−ベンゾトリアゾールなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのベンゾトリアゾール系紫外線吸収性単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
ベンゾフェノン系紫外線吸収性単量体としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−(メタ)アクリロイルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−[2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシ]プロポキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]エトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−[3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ]ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]ブトキシベンゾフェノンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのベンゾフェノン系紫外線吸収性単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
単量体成分を乳化重合させる方法としては、例えば、メタノールなどの低級アルコールなどの水溶性有機溶媒と水とを含む水性媒体、水などの媒体中に乳化剤を溶解させ、撹拌下で単量体成分および重合開始剤を滴下させる方法、乳化剤および水を用いてあらかじめ乳化させておいた単量体成分を水または水性媒体中に滴下させる方法などが挙げられるが、本発明は、かかる方法のみに限定されるものではない。なお、媒体の量は、得られる樹脂エマルションに含まれる不揮発分量を考慮して適宜設定すればよい。媒体は、あらかじめ反応容器に仕込んでおいてもよく、あるいはプレエマルションとして使用してもよい。また、媒体は、必要により、単量体成分を乳化重合させ、樹脂エマルションを製造しているときに用いてもよい。
単量体成分を乳化重合させる際には、単量体成分、乳化剤および媒体を混合した後に乳化重合を行なってもよく、単量体成分、乳化剤および媒体を攪拌することによって乳化させ、プレエマルションを調製した後に乳化重合を行なってもよく、あるいは単量体成分、乳化剤および媒体のうちの少なくとも1種類とその残部のプレエマルションとを混合して乳化重合を行なってもよい。単量体成分、乳化剤および媒体は、それぞれ一括添加してもよく、分割添加してもよく、あるいは連続滴下してもよい。
前記で得られた樹脂エマルションに含まれているエマルション粒子上に外層を形成させる場合には、前記樹脂エマルション中で前記と同様にして単量体成分を乳化重合させることにより、前記エマルション粒子上に外層を形成させることができる。また、前記外層が形成されたエマルション粒子上にさらに外層を形成させる場合には、前記と同様にして樹脂エマルション中で単量体成分を乳化重合させることにより、前記エマルション粒子上にさらに外層を形成させることができる。このように多段乳化重合法により、多層構造を有するエマルション粒子を含有する樹脂エマルションを調製することができる。
なお、多層構造を有するエマルション粒子を調製する際、前記内層を形成する乳化重合を行なう前に1段または複数段の乳化重合を行なってもよく、前記内層を形成する乳化重合と前記中間層を形成する乳化重合との間に1段または複数段の乳化重合を行なってもよい。また、前記中間層を形成する乳化重合と前記外層を形成する乳化重合との間に1段または複数段の乳化重合を行なってもよい。さらに、前記外層を形成する乳化重合の後に1段または複数段の乳化重合を行なってもよい。
乳化剤としては、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、両性乳化剤、高分子乳化剤などが挙げられ、これらの乳化剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
アニオン性乳化剤としては、例えば、アンモニウムドデシルサルフェート、ナトリウムドデシルサルフェートなどのアルキルサルフェート塩;アンモニウムドデシルスルホネート、ナトリウムドデシルスルホネート、ナトリウムアルキルジフェニルエーテルジスルホネートなどのアルキルスルホネート塩;アンモニウムドデシルベンゼンスルホネート、ナトリウムドデシルナフタレンスルホネートなどのアルキルアリールスルホネート塩;ポリオキシエチレンアルキルスルホネート塩;ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩;ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩;ジアルキルスルホコハク酸塩;アリールスルホン酸−ホルマリン縮合物;アンモニウムラウリレート、ナトリウムステアリレートなどの脂肪酸塩;ビス(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル)メタクリレートスルホネート塩、プロペニル−アルキルスルホコハク酸エステル塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンスルホネート塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンホスフォネート塩、アリルオキシメチルアルキルオキシポリオキシエチレンのスルホネート塩などのアリル基を有する硫酸エステルまたはその塩;アリルオキシメチルアルコキシエチルポリオキシエチレンの硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
ノニオン性乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの縮合物、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、エチレンオキサイドと脂肪族アミンとの縮合生成物、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
カチオン性乳化剤としては、例えば、ドデシルアンモニウムクロライドなどのアルキルアンモニウム塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
両性乳化剤としては、例えば、ベタインエステル型乳化剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
高分子乳化剤としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウムなどのポリ(メタ)アクリル酸塩;ポリビニルアルコール;ポリビニルピロリドン;ポリヒドロキシエチルアクリレートなどのポリヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;これらの重合体を構成する単量体のうちの1種類以上を共重合成分とする共重合体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
また、前記乳化剤として、耐水性を向上させる観点から、重合性基を有する乳化剤、すなわち、いわゆる反応性乳化剤が好ましく、環境保護の観点から、非ノニルフェニル型の乳化剤が好ましい。
反応性乳化剤としては、例えば、プロペニル−アルキルスルホコハク酸エステル塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンスルホネート塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンホスフォネート塩〔例えば、三洋化成工業(株)製、商品名:エレミノールRS−30など〕、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテルスルホネート塩〔例えば、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンHS−10など〕、アリルオキシメチルアルキルオキシポリオキシエチレンのスルホネート塩〔例えば、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンKH−10など〕、アリルオキシメチルノニルフェノキシエチルヒドロキシポリオキシエチレンのスルホネート塩〔例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSE−10など〕、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン硫酸エステル塩〔例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR−10、SR−30など〕、ビス(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル)メタクリレート化スルホネート塩〔例えば、日本乳化剤(株)製、商品名:アントックスMS−60など〕、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン〔例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープER−20など〕、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル〔例えば、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンRN−20など〕、アリルオキシメチルノニルフェノキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン〔例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープNE−10など)などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
単量体成分100質量部あたりの乳化剤の量は、重合安定性を向上させる観点から、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは2質量部以上、特に好ましくは3質量部以上であり、耐水性を向上させる観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは6質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下、特に好ましくは4質量部以下である。
重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス(2―ジアミノプロパン)ハイドロクロライド、4,4−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)などのアゾ化合物;過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩;過酸化水素、ベンゾイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、過酸化アンモニウムなどの過酸化物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
単量体成分100質量部あたりの重合開始剤の量は、重合速度を高め、未反応の単量体成分の残存量を低減させる観点から、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、耐水性を向上させる観点から、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下である。
重合開始剤の添加方法は、特に限定されない。その添加方法としては、例えば、一括仕込み、分割仕込み、連続滴下などが挙げられる。また、重合反応の終了時期を早める観点から、単量体成分を反応系内に添加する終了前またはその終了後に、重合開始剤の一部を添加してもよい。
なお、重合開始剤の分解を促進するために、例えば、亜硫酸水素ナトリウムなどの還元剤、硫酸第一鉄などの遷移金属塩などの重合開始剤の分解剤を反応系内に適量で添加してもよい。
また、エマルション粒子の重量平均分子量を調整するために、連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては、例えば、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、tert−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、2−メルカプトエタノール、α−メチルスチレン、α−メチルスチレンダイマーなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの連鎖移動剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。単量体成分100質量部あたりの連鎖移動剤の量は、エマルション粒子の重量平均分子量を適切に調整する観点から、0.01〜10質量部であることが好ましい。
また、反応系内には、必要により、pH緩衝剤、キレート剤、造膜助剤などの添加剤を添加してもよい。添加剤の量は、その種類によって異なるので一概には決定することができない。通常、単量体成分100質量部あたりの添加剤の量は、好ましくは0.01〜5質量部程度、より好ましくは0.1〜3質量部程度である。
単量体成分を乳化重合させる際の雰囲気は、特に限定されないが、重合開始剤の効率を高める観点から、窒素ガスなどの不活性ガスであることが好ましい。
単量体成分を乳化重合させる際の重合温度は、特に限定がないが、通常、好ましくは50〜100℃、より好ましくは60〜95℃である。重合温度は、一定であってもよく、重合反応の途中で変化させてもよい。
単量体成分を乳化重合させる重合時間は、特に限定がなく、重合反応の進行状況に応じて適宜設定すればよいが、通常、2〜9時間程度である。
なお、単量体成分を乳化重合させるとき、得られる重合体が有する酸性基の一部または全部が中和剤で中和されるようにしてもよい。中和剤は、最終段で単量体成分を添加した後に使用してもよく、例えば、1段目の重合反応と2段目の重合反応との間に使用してもよく、初期の乳化重合反応の終了時に使用してもよい。
中和剤としては、例えば、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物;炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウムなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸化物;アンモニア、モノメチルアミンなどの有機アミンなどのアルカリ性物質が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの中和剤のなかでは、耐水性を向上させる観点から、アンモニアなどの揮発性を有するアルカリ性物質が好ましく、エマルション粒子の貯蔵安定性を向上させる観点から、炭酸水素ナトリウムが好ましい。中和剤は、例えば、水溶液として用いることができる。
また、単量体成分を乳化重合させるとき、耐水性を向上させる観点から、シランカップリング剤を適量で用いてもよい。シランカップリング剤としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基などの重合性不飽和結合を有するシランカップリング剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。なお、「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイル」または「メタアクリロイル」を意味する。
以上のようにして単量体成分を乳化重合させることにより、樹脂エマルションが得られる。
樹脂エマルションに含まれているエマルション粒子を構成する重合体の重量平均分子量は、耐水性および耐候性を向上させる観点から、好ましくは10万以上、より好ましくは30万以上、さらに好ましくは55万以上、特に好ましくは60万以上である。重合体の重量平均分子量の上限値は、成膜性および耐水性を向上させる観点から、好ましくは500万以下である。
なお、本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー〔東ソー(株)製、品番:HLC−8120GPC、カラム:TSKgel G−5000HXLとTSKgel GMHXL−Lとを直列に使用〕を用いて測定された重量平均分子量(ポリスチレン換算)を意味する。
前記で得られたエマルション粒子上に外層を形成させる場合には、前記樹脂エマルションを製造する際の重合反応率が90%以上、好ましくは95%以上に到達した後に外層を構成する単量体成分を乳化重合させることが、エマルション粒子内で層分離構造を形成させる観点から好ましい。
なお、エマルション粒子の内層を形成させた後、外層を形成させる前に、本発明の目的が阻害されない範囲内で、必要により、他の重合体からなる層が形成されていてもよい。したがって、本発明の樹脂エマルションを製造する際には、エマルション粒子の内層を形成させた後、外層を形成させる前に、本発明の目的が阻害されない範囲内で、必要により、他の重合体からなる層を形成させてもよい。
外層を構成するために用いられる単量体成分は、前記樹脂エマルションの原料として用いられる単量体成分と同様であればよい。また、外層を形成させる際の乳化重合の方法および重合条件は、前記樹脂エマルションを製造する際の方法および重合条件と同様であればよい。
以上のようにして内層および外層を有するエマルション粒子を得ることができる。なお、外層の表面上には、本発明の目的が阻害されない範囲内で、必要により、他の重合体からなる表面層がさらに形成されていてもよい。
外層を形成する重合体の重量平均分子量は、耐水性および耐候性を向上させる観点から、好ましくは1万以上、より好ましくは10万以上、さらに好ましくは30万以上、特に好ましくは50万以上であり、成膜性および耐水性を向上させる観点から、好ましくは500万以下である。
エマルション粒子が1層で構成されている場合には、当該エマルション粒子を構成する重合体、またエマルション粒子が複数層で構成されている場合には、最外層を構成する重合体のガラス転移温度は、成膜性を向上させる観点から、好ましくは50℃以下、より好ましくは45℃以下、さらに好ましくは40℃以下であり、耐ブロッキング性を向上させる観点から、好ましくは−40℃以上、より好ましくは−25℃以上、さらに好ましくは−10℃以上である。重合体のガラス転移温度は、単量体成分に使用される単量体の組成を調整することにより、容易に調節することができる。
なお、本明細書において、重合体のガラス転移温度は、当該重合体を構成する単量体成分に使用されている単量体の単独重合体のガラス転移温度を用いて、式:
1/Tg=Σ(Wm/Tgm)/100
〔式中、Wmは重合体を構成する単量体成分における単量体mの含有率(質量%)、Tgmは単量体mの単独重合体のガラス転移温度(絶対温度:K)を示す〕
で表されるフォックス(Fox)の式に基づいて求められた温度を意味する。
重合体のガラス転移温度は、例えば、アクリル酸の単独重合体では95℃、メタクリル酸の単独重合体では130℃、メチルメタクリレートの単独重合体では105℃、スチレンの単独重合体では100℃、シクロヘキシルメタクリレートの単独重合体では83℃、n−ブチルメタクリレートの単独重合体では20℃、2−エチルヘキシルアクリレートの単独重合体では−70℃、n−ブチルアクリレートの単独重合体では−56℃、ヒドロキシエチルメタクリレートの単独重合体では55℃、アクリルアミドの単独重合体では165℃、4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジンの単独重合体では130℃、2−[2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾールの単独重合体では100℃である。
重合体のガラス転移温度は、前記フォックス(Fox)の式に基づいて求められた値であるが、重合体のガラス転移温度の実測値は、前記フォックス(Fox)の式に基づいて求められた値と同じであることが好ましい。重合体のガラス転移温度の実測値は、例えば、その示差走査熱量の測定によって求めることができる。
本明細書においては、(メタ)アクリル系粘着性樹脂のガラス転移温度は、特に断りがない限り、前記式に基づいて求められたガラス転移温度を意味する。なお、特殊単量体、多官能単量体などのようにガラス転移温度が不明の単量体については、単量体成分における当該ガラス転移温度が不明の単量体の合計量が10質量%以下である場合には、ガラス転移温度が判明している単量体のみを用いてガラス転移温度が求められる。単量体成分におけるガラス転移温度が不明の単量体の合計量が10質量%を超える場合には、(メタ)アクリル系粘着性樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量分析(DSC)、示差熱量分析(DTA)、熱機械分析(TMA)などによって求められる。
示差走査熱量の測定装置としては、例えば、セイコーインスツル(株)製、品番:DSC220Cなどが挙げられる。また、示差走査熱量を測定する際、示差走査熱量(DSC)曲線を描画する方法、示差走査熱量(DSC)曲線から一次微分曲線を得る方法、スムージング処理を行なう方法、目的のピーク温度を求める方法などには特に限定がない。例えば、前記測定装置を用いた場合には、当該測定装置を用いることによって得られたデータから作図すればよい。その際、数学的処理を行なうことができる解析ソフトウェアを用いることができる。当該解析ソフトウェアとしては、例えば、解析ソフトウェア〔セイコーインスツル(株)製、品番:EXSTAR6000〕などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。なお、このようにして求められたピーク温度には、上下5℃程度の作図による誤差が含まれることがある。
エマルション粒子が多層構造を有する場合には、最外層を構成する樹脂のガラス転移温度とその内層を構成する樹脂のガラス転移温度との差の絶対値は、耐水性を向上させる観点から、好ましくは35℃以上、より好ましくは40℃以上であり、耐水性および耐汚染性を向上させる観点から、好ましくは70℃以下、より好ましくは60℃以下である。
エマルション粒子が2層で構成されている場合、内層を構成する重合体と外層を構成する重合体との質量比〔内層を構成する重合体/外層を構成する重合体〕は、耐候性、耐水性およびパターン保持性に総合的に優れた塗膜を形成する観点から、25/75以上、好ましくは35/65以上であり、耐候性、耐水性およびパターン保持性に総合的に優れた塗膜を形成する観点から、75/25以下、好ましくは65/35以下である。
エマルション粒子における内層を構成する重合体と外層を構成する重合体との合計含有率は、パターン保持性を向上させる観点から、50質量%以上、好ましくは65質量%以上であり、エマルション粒子における内層を構成する重合体と外層を構成する重合体との合計含有率が多いほど好ましく、その上限値は100質量%である。
以上のようにしてエマルション粒子の内層を調製した後、当該内層上に外層を形成させることにより、内層および外層を有するエマルション粒子を含む樹脂エマルションが得られる。本発明の樹脂エマルションは、このようにして得られたエマルション粒子を含有するものであってもよい。
本発明の樹脂エマルションの最低造膜温度は、耐候性および耐水性を向上させる観点から、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下、さらに好ましくは40℃以下である。また、本発明の樹脂エマルションの最低造膜温度の下限値は、耐水性および耐汚染性を向上させる観点から、好ましくは−5℃以上、より好ましくは5℃以上、さらに好ましくは10℃以上である。
なお、本明細書において、樹脂エマルションの最低造膜温度は、熱勾配試験機の上に置いたガラス板上に樹脂エマルションを厚さが0.2mmとなるようにアプリケーターで塗工して乾燥させ、クラックが生じたときの温度を意味する。
本発明の樹脂エマルションにおける不揮発分量は、生産性を向上させる観点から、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上であり、取り扱い性を向上させる観点から、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。
なお、本明細書において、樹脂エマルションにおける不揮発分量は、樹脂エマルション1gを秤量し、熱風乾燥機で110℃の温度で1時間乾燥させ、得られた残渣を不揮発分とし、式:
〔樹脂エマルションにおける不揮発分量(質量%)〕
=(〔残渣の質量〕÷〔樹脂エマルション1g〕)×100
に基づいて求められた値を意味する。
エマルション粒子の平均粒子径は、エマルション粒子の貯蔵安定性を向上させる観点から、好ましくは30nm以上、より好ましくは50nm以上、さらに好ましくは70nm以上であり、耐候性および耐水性を向上させる観点から、好ましくは250nm以下、より好ましくは200nm以下である。
なお、本明細書において、エマルション粒子の平均粒子径は、動的光散乱法による粒度分布測定器〔パーティクル・サイジング・システムズ(Particle Sizing Systems)社製、商品名:NICOMP Model 380)を用いて測定された体積平均粒子径を意味する。
本発明の樹脂エマルションには、さらに架橋剤を含有させることにより、架橋性を付与することができる。架橋剤としては、常温で架橋反応を開始するものであってもよく、熱により架橋反応を開始するものであってもよい。本発明の樹脂エマルションに架橋剤を含有させることにより、耐候性および耐汚染性を向上させることができる。
好適な架橋剤としては、例えば、オキサゾリン基含有化合物、イソシアネート基含有化合物、アミノプラスト樹脂などが挙げられる。これらの架橋剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの架橋剤のなかでは、本発明の樹脂エマルションの保存安定性を向上させる観点から、オキサゾリン基含有化合物が好ましい。
オキサゾリン基含有化合物は、オキサゾリン基を分子中に2個以上有する化合物である。オキサゾリン基含有化合物としては、例えば、2,2’−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−メチレン−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−トリメチレン−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレン−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−ヘキサメチレン−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−オクタメチレン−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレン−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、ビス(2−オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィド、ビス(2−オキサゾリニルノルボルナン)スルフィド、オキサゾリン環含有重合体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのオキサゾリン基含有化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。オキサゾリン基含有化合物のなかでは、反応性を向上させる観点から、水溶性のオキサゾリン基含有化合物が好ましく、水溶性のオキサゾリン環含有重合体がより好ましい。
オキサゾリン環含有重合体は、付加重合性オキサゾリンを必須成分として含み、必要に応じて付加重合性オキサゾリンと共重合可能な単量体を含む単量体成分を重合させることにより、容易に調製することができる。
付加重合性オキサゾリンとしては、例えば、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの付加重合性オキサゾリンは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの付加重合性オキサゾリンのなかでは、入手が容易であることから、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが好ましい。
付加重合性オキサゾリンと共重合可能な単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸とポリエチレングリコールとのモノエステル化物、2−アミノエチル(メタ)アクリレートおよびその塩、(メタ)アクリル酸のカプロラクトン変性物、(メタ)アクリル酸−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、(メタ)アクリル酸−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジンなどの(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カリウム、(メタ)アクリル酸アンモニウムなどの(メタ)アクリル酸塩;(メタ)アクリロニトリルなどの不飽和ニトリル;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミドなどの不飽和アミド;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどのビニルエーテル;エチレン、プロピレンなどのα−オレフィン;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニルなどのハロゲン含有α,β−不飽和脂肪族炭化水素化合物;スチレン、α−メチルスチレン、スチレンスルホン酸ナトリウムなどのα,β−不飽和芳香族炭化水素化合物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの付加重合性オキサゾリンと共重合可能な単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
オキサゾリン基含有化合物は、例えば、(株)日本触媒製、商品名:エポクロスWS−500、エポクロスWS−700、エポクロスK−2010、エポクロスK−2020、エポクロスK−2030などとして商業的に容易に入手することができる。これらのなかでは、反応性を向上させる観点から、(株)日本触媒製、商品名:エポクロスWS−500、エポクロスWS−700などの水溶性を有するオキサゾリン基含有化合物が好ましい。
イソシアネート基含有化合物は、単量体成分として用いられる水酸基含有単量体が官能基として有する水酸基と反応し得るイソシアネート基を含有する化合物である。
イソシアネート基含有化合物としては、例えば、水分散型(ブロック)ポリイソシアネートなどが挙げられる。なお、(ブロック)ポリイソシアネートとは、ポリイソシアネートおよび/またはブロックポリイソシアネートを意味する。
水分散型ポリイソシアネートとしては、例えば、ポリエチレンオキシド鎖によって親水性が付与されたポリイソシアネートをアニオン性分散剤またはノニオン性分散剤で水に分散させたものなどが挙げられる。
ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどのジイソシアネート;これらのジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ビューレット体、イソシアヌレート体などのポリイソシアネートの誘導体(変性物)などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのポリイソシアネートは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
水分散型ポリイソシアネートは、例えば、日本ポリウレタン工業(株)製、商品名:アクアネート100、アクアネート110、アクアネート200、アクアネート210など;住化バイエルウレタン(株)製、商品名:バイヒジュールTPLS−2032、SUB−イソシアネートL801など;三井武田ケミカル(株)製、商品名:タケネートWD−720、タケネートWD−725、タケネートWD−220など;大日精化工業(株)製、商品名:レザミンD−56などとして商業的に容易に入手することができる。
水分散型ブロックポリイソシアネートは、水分散型ポリイソシアネートのイソシアネート基をブロック化剤でブロックさせたものである。ブロック化剤としては、例えば、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、ε−カプロラクタム、ブタノンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、1,2,4−トリアゾール、ジメチル−1,2,4−トリアゾール、3,5−ジメチルピラゾール、イミダゾールなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのブロック化剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのブロック化剤なかでは、160℃以下の温度、好ましくは150℃以下の温度で開裂するものが望ましい。好適なブロック化剤としては、例えば、ブタノンオキシム、シクロへキサノンオキシム、3,5−ジメチルピラゾールなどが挙げられる。これらのなかでは、ブタノンオキシムがより好ましい。
水分散型ブロックポリイソシアネートは、例えば、三井武田ケミカル(株)製、商品名:タケネートWB−720、タケネートWB−730、タケネートWB−920など;住化バイエルウレタン(株)製、商品名:バイヒジュールBL116、バイヒジュールBL5140、バイヒジュールBL5235、バイヒジュールTPLS2186、デスモジュールVPLS2310などとして商業的に容易に入手することができる。
アミノプラスト樹脂は、メラミン、グアナミンなどのアミノ基を有する化合物とホルムアルデヒドとの付加縮合物であり、アミノ樹脂とも呼ばれている。
アミノプラスト樹脂としては、例えば、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン、完全アルキル型メチル化メラミン、完全アルキル型ブチル化メラミン、完全アルキル型イソブチル化メラミン、完全アルキル型混合エーテル化メラミン、メチロール基型メチル化メラミン、イミノ基型メチル化メラミン、メチロール基型混合エーテル化メラミン、イミノ基型混合エーテル化メラミンなどのメラミン樹脂;ブチル化ベンゾグアナミン、メチル/エチル混合アルキル化ベンゾグアナミン、メチル/ブチル混合アルキル化ベンゾグアナミン、ブチル化グリコールウリルなどのグアナミン樹脂などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのアミノプラスト樹脂は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
アミノプラスト樹脂は、例えば、三井サイテック(株)製、商品名:マイコート506、マイコート1128、サイメル232、サイメル235、サイメル254、サイメル303、サイメル325、サイメル370、サイメル771、サイメル1170などとして商業的に容易に入手することができる。
アミノプラスト樹脂の量は、通常、エマルション粒子に含まれている重合体の固形分とアミノプラスト樹脂の固形分との質量比〔重合体の固形分/アミノプラスト樹脂の固形分〕が60/40〜99/1となるように調整することが好ましい。
なお、本発明においては、前記した架橋剤以外にも、例えば、カルボジイミド化合物;ジルコニウム化合物、亜鉛化合物、チタニウム化合物、アルミニウム化合物などに代表される多価金属化合物などの架橋剤を本発明の目的が阻害されない範囲内で用いることができる。
本発明の樹脂エマルションには、必要により、顔料を含有させることができる。顔料としては、有機顔料および無機顔料が挙げられ、これらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
有機顔料としては、例えば、ベンジジン、ハンザイエローなどのアゾ顔料、アゾメチン顔料、メチン顔料、アントラキノン顔料、フタロシアニンブルーなどのフタロシアニン顔料、ペリノン顔料、ペリレン顔料、ジケトピロロピロール顔料、チオインジゴ顔料、イミノイソインドリン顔料、イミノイソインドリノン顔料、キナクリドンレッドやキナクリドンバイオレットなどのキナクリドン顔料、フラバントロン顔料、インダントロン顔料、アントラピリミジン顔料、カルバゾール顔料、モノアリーライドイエロー、ジアリーライドイエロー、ベンゾイミダゾロンイエロー、トリルオレンジ、ナフトールオレンジ、キノフタロン顔料などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの有機顔料は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
無機顔料としては、例えば、二酸化チタン、三酸化アンチモン、亜鉛華、リトポン、鉛白、赤色酸化鉄、黒色酸化鉄、酸化クロムグリーン、カーボンブラック、黄鉛、モリブデン赤、フェロシアン化第二鉄(プルシアンブルー)、ウルトラマリン、クロム酸鉛などをはじめ、雲母(マイカ)、クレー、アルミニウム粉末、タルク、ケイ酸アルミニウムなどの扁平形状を有する顔料、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウムなどの体質顔料などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの無機顔料は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
樹脂エマルションの不揮発分100質量部あたりの顔料の量は、本発明の樹脂エマルションから形成された塗膜の隠蔽性を向上させる観点から、好ましくは50質量部以上、より好ましくは60質量部以上であり、耐候性を向上させる観点から、好ましくは190質量部以下である。
なお、本発明の樹脂エマルションには、本発明の目的が阻害されない範囲内で、前記樹脂エマルション以外の他の樹脂エマルションが含まれていてもよいが、その場合、樹脂エマルションに含まれているエマルション粒子全体の平均粒子径が前記範囲内となるように調整すればよい。
また、本発明の樹脂エマルションには、本発明の目的が阻害されない範囲内で、例えば、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、充填剤、レベリング剤、分散剤、増粘剤、湿潤剤、可塑剤、安定剤、染料、酸化防止剤などの添加剤が適量で含まれていてもよい。
本発明の樹脂エマルションは、それ単独で1層で塗工してもよく、2層以上に重ね塗りすることによって塗工してもよい。2層以上に重ね塗りすることによって塗工する場合、その一部の層のみが本発明の樹脂エマルションによって形成されてもよく、全部の層が本発明の樹脂エマルションで形成されてもよい。重ね塗りは、例えば、プライマー処理やシーラー処理などを施した被塗物に、第1層(例えば、下塗り層)用塗料を塗布して乾燥させた後、第2層(例えば、上塗り層)用塗料を上塗りし、乾燥させる方法などが挙げられるが、本発明は、かかる方法によって限定されるものではない。本発明の樹脂エマルションを塗布する方法としては、例えば、刷毛、バーコーター、アプリケーター、エアスプレー、エアレススプレー、ロールコーター、フローコーターなどを用いた塗布方法が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
本発明の樹脂エマルションは、例えば、建築物の外装や窯業系建材などの表面に塗装されるトップコートと呼ばれている上塗り材(水性塗料)に好適に使用することができる。
本発明の塗料用樹脂組成物は、前記樹脂エマルションを含有するものである。本発明の塗料用樹脂組成物は、前記樹脂エマルションそれ自体であってもよく、添加剤などを含有するものであってもよい。
本発明の上塗り塗料は、例えば、前記塗料用樹脂組成物または前記樹脂エマルションと、成膜助剤、抑泡剤、顔料、増粘剤、艶消し剤などの1種類または2種類以上とを適宜混合することにより、容易に調製することができる。上塗り塗料としては、例えば、エナメル塗料、クリヤー塗料などが挙げられる。上塗り塗料は、トップコートに好適に用いることができる。
本発明の塗料用樹脂組成物、樹脂エマルションおよび上塗り塗料は、いずれも、例えば、建築物の外壁などに現場塗装する際に好適に使用することができるほか、窯業系建材などの無機質建材にも好適に使用することができる。窯業系建材としては、例えば、瓦、外壁材などが挙げられる。窯業系建材は、無機質硬化体の原料となる水硬性膠着材に無機充填剤、繊維質材料などを添加し、得られた混合物を成形し、得られた成形体を養生し、硬化させることによって得られる。建築物の外装を構成する無機質建材としては、例えば、フレキシブルボード、珪酸カルシウム板、石膏スラグパーライト板、木片セメント板、プレキャストコンクリート板、ALC板、石膏ボードなどが挙げられる。
なお、本発明の塗料用樹脂組成物、樹脂エマルションまたは上塗り塗料を建材の表面および裏面に塗布する際には、両面に塗膜を有する建材を効率よく製造する観点から、必要により、当該建材を加熱しておいてもよい。本発明の塗料用樹脂組成物、樹脂エマルションまたは上塗り塗料を建材に塗布する際には、例えば、スプレー、ローラー、ハケ、コテなどを用いることができる。前記建材の表面には、所望の意匠を付与するために、上塗り材(水性塗料)が塗布されていてもよい。
次に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の実施例において、特に断りがない限り、「部」は「質量部」を意味し、「%」は「質量%」を意味する。
実施例1
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に、脱イオン水716部を仕込んだ。滴下ロートに、脱イオン水417部、乳化剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソーブSR−10〕の25%水溶液120部、メチルメタクリレート350部、スチレン99部、n−ブチルメタクリレート100部、2−エチルヘキシルアクリレート220部、n−ブチルアクリレート200部、ヒドロキシエチルメタクリレート30部およびアクリル酸1部からなる滴下用プレエマルションを調製し、そのうち全単量体成分の総量の5%にあたる77部をフラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら70℃まで昇温し、5%過硫酸アンモニウム水溶液10部を添加し、重合を開始した。その後、滴下用プレエマルションの残部と5%過硫酸アンモニウム水溶液30部を240分間にわたり均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を70℃で60分間維持し、25%アンモニア水を添加することによってpHを8に調整し、重合を終了した。得られた反応液を室温まで冷却した後、300メッシュ(JISメッシュ、以下同じ)の金網で濾過することにより、樹脂エマルションを調製した。この樹脂エマルションにおける不揮発分の含有率は45%であり、単量体成分における酸基含有単量体(アクリル酸)の含有率は0.1%であり、樹脂エマルションに含まれているエマルション粒子を構成している樹脂のガラス転移温度は2℃であった。
実施例2
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に、脱イオン水716部を仕込んだ。滴下ロートに、脱イオン水417部、乳化剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソーブSR−10〕の25%水溶液120部、シクロヘキシルメタクリレート400部、n−ブチルメタクリレート200部、2−エチルヘキシルアクリレート200部、n−ブチルアクリレート150部、アクリルアミド20部および4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン30部からなる滴下用プレエマルションを調製し、そのうち全単量体成分の総量の5%にあたる77部をフラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら70℃まで昇温し、5%過硫酸アンモニウム水溶液10部を添加し、重合を開始した。その後、滴下用プレエマルションの残部と5%過硫酸アンモニウム水溶液30部を240分間にわたり均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を70℃で60分間維持し、25%アンモニア水を添加することによってpHを8に調整し、重合を終了した。得られた反応液を室温まで冷却した後、300メッシュの金網で濾過することにより、樹脂エマルションを調製した。この樹脂エマルションにおける不揮発分の含有率は45%であり、単量体成分における酸基含有単量体の含有率は0%であり、樹脂エマルションに含まれている樹脂のガラス転移温度は5℃であった。
実施例3
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に、脱イオン水716部を仕込んだ。満下ロートに、脱イオン水209部、乳化剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソーブSR−10〕の25%水溶液60部、シクロヘキシルメタクリレート200部、2−エチルヘキシルアクリレート230部、n−ブチルアクリレート59部、ヒドロキシエチルメタクリレート10部およびメタクリル酸1部からなる1段目滴下用プレエマルションを調製し、そのうち全単量体成分の総量の5%にあたる77部をフラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら70℃まで昇温し、5%過硫酸アンモニウム水溶液10部を添加し、重合を開始した。その後、滴下用プレエマルションの残部と5%過硫酸アンモニウム水溶液15部を120分間にわたりフラスコ内に均一に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を70℃で60分間維持し、引き続いて、脱イオン水209部、乳化剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソーブSR−10〕の25%水溶液60部、メチルメタクリレート250部、シクロヘキシルメタクリレート100部、2−エチルヘキシルアクリレート130部および4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン10部からなる2段目滴下用プレエマルションと5%過硫酸アンモニウム水溶液15部を120分間にわたって均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を70℃で60分間維持し、25%アンモニア水を添加することによってpHを8に調整し、重合を終了した。得られた反応液を室温まで冷却した後、300メッシュの金網で濾過することにより、樹脂エマルションを調製した。この樹脂エマルションにおける不揮発分の含有率は45%であり、単量体成分における酸基含有単量体(メタクリル酸)の含有率は0.1%であり、樹脂エマルションに含まれているエマルション粒子を構成している内層の樹脂のガラス転移温度は−23℃であり、外層の樹脂のガラス転移温度は32℃であり、外層を構成する樹脂のガラス転移温度と内層を構成する樹脂のガラス転移温度との差の絶対値は、55℃であった。
実施例4
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に、脱イオン水716部を仕込んだ。満下ロートに、脱イオン水209部、乳化剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソーブSR−10〕の25%水溶液60部、メチルメタクリレート208部、シクロヘキシルメタクリレート100部、n−ブチルアクリレート100部、アクリルアミド10部および4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン10部からなる1段目滴下用プレエマルションを調製し、そのうち全単量体成分の総量の5%にあたる77部をフラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら70℃まで昇温し、5%過硫酸アンモニウム水溶液10部を添加し、重合を開始した。その後、滴下用プレエマルションの残部と5%過硫酸アンモニウム水溶液15部を120分間にわたりフラスコ内に均一に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を70℃で60分間維持し、引き続いて、脱イオン水209部、乳化剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソーブSR−10〕の25%水溶液60部、シクロヘキシルメタクリレート200部、2−エチルヘキシルアクリレート200部、n−ブチルアクリレート70部、アクリルアミド10部、4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン10部および2−[2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール10部からなる2段目滴下用プレエマルションと5%過硫酸アンモニウム水溶液15部を120分間にわたって均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を70℃で60分間維持し、25%アンモニア水を添加することによってpHを8に調整し、重合を終了した。得られた反応液を室温まで冷却した後、300メッシュの金網で濾過することにより、樹脂エマルションを調製した。この樹脂エマルションにおける不揮発分の含有率は45%であり、単量体成分における酸基含有単量体(メタクリル酸)の含有率は0.1%であり、樹脂エマルションに含まれているエマルション粒子を構成している内層の樹脂のガラス転移温度は54℃であり、外層の樹脂のガラス転移温度は−16℃であり、外層を構成する樹脂のガラス転移温度と内層を構成する樹脂のガラス転移温度との差の絶対値は、70℃であった。
比較例1
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に、脱イオン水716部を仕込んだ。滴下ロートに、脱イオン水417部、乳化剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソーブSR−10〕の25%水溶液120部、アクリル酸10部、メチルメタクリレート350部、スチレン90部、n−ブチルメタクリレート100部、2−エチルヘキシルアクリレート220部、n−ブチルアクリレート200部およびヒドロキシエチルメタクリレート30部からなる滴下用プレエマルションを調製し、そのうち全単量体成分の総量の5%にあたる77部をフラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら70℃まで昇温し、5%過硫酸アンモニウム水溶液10部を添加し、重合を開始した。その後、滴下用プレエマルションの残部と5%過硫酸アンモニウム水溶液30部を240分間にわたり均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を70℃で60分間維持し、25%アンモニア水を添加することによってpHを8に調整し、重合を終了した。得られた反応液を室温まで冷却した後、300メッシュの金網で濾過することにより、樹脂エマルションを調製した。この樹脂エマルションにおける不揮発分の含有率は45%であり、単量体成分における酸基含有単量体(アクリル酸)の含有率は1%であり、樹脂エマルションに含まれているエマルション粒子を構成している樹脂のガラス転移温度は2℃であった。
次に、各実施例または比較例1で得られた樹脂エマルション100部に成膜助剤として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート〔チッソ(株)製、品番:CS−12〕10部を添加し、ホモディスパーで回転速度1500min-1にて10分間攪拌した後、白色ペースト30部および消泡剤〔サンノプコ(株)製、商品名:ノプコ8034L〕0.5部を添加し、クレーブス単位粘度計(ブルックフィールド社製、品番:KU−1)を用いて25℃で測定したときの粘度が80KUになるように増粘剤〔(株)日本触媒製、商品名:アクリセットWR−503A〕を添加し、その状態で30分間攪拌することにより、試料を調製した。
なお、白色ペーストは、脱イオン水210部、分散剤〔花王(株)製、商品名:デモールEP〕60部、分散剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:ディスコートN−14〕50部、湿潤剤〔花王(株)製、商品名:エマルゲンLS−106〕10部、プロピレングリコール60部、酸化チタン〔石原産業(株)製、品番:CR−95〕1000部およびガラスビーズ(直径:1mm)200部をホモディスパーで回転速度3000min-1にて60分間分散させることによって調製した。
前記で得られた試料を用いて以下の物性を調べた。その結果を表1に示す。なお、物性において×の評価が1つでもあるものは、不合格であると判定される。
(1)パターン保持性
スレート板〔日本テストパネル(株)製、縦:70mm、横:150mm、厚さ:6mm〕にシーラー〔エスケー化研(株)製、商品名:EXシーラー〕をエアスプレーで150g/m2の塗布量で均一に塗布し、23℃で1週間乾燥させた。
次に、試料100部あたり水10部の割合で試料と水を混合することにより、当該試料の水溶液を調製し、この水溶液をサグテスター(4mil、8mil、10mil、15mil、20milの5段階の膜厚を一度に塗工が可能、各塗膜の間隔:5mm)で塗布した直後に、90°の角度で垂直に立てかけ、そのままの状態で23℃にて1日間乾燥させた後、塗膜の外観を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいてパターン保持性を評価した。
〔評価基準〕
◎:各塗膜が明確に分かれており、塗装直後からの変化が認められない。
○:各塗膜は接近しているが、分かれている。
△:各塗膜のうち、膜厚が10mil以上である塗膜のみが接近して馴染んでいるため、塗膜間の境界が不明瞭である。
×:膜厚が10mil未満である塗膜がいずれも馴染んでいるため、各塗膜の膜厚が保持されていない。
(2)耐水性
スレート板〔日本テストパネル(株)製、縦:70mm、横:150mm、厚さ:6mm〕にシーラー〔エスケー化研(株)製、商品名:EXシーラー〕をエアスプレーで150g/m2の塗布量で均一に塗布し、23℃で1週間乾燥させた。
次に、試料を10milアプリケーターで前記シーラーが塗布されたスレート板に塗布し、23℃で1日間乾燥させ、次いで常温で水中に1日間浸漬させた後、当該スレート板を水中から取り出し、その塗膜の外観を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて耐水性を評価した。
〔評価基準〕
◎:異常なし
○:小さく膨れた箇所が僅かに存在する。
△:大きく膨れた箇所がわずかに存在する。
×:全面に膨れた箇所が存在する。
(3)耐候性
スレート板〔日本テストパネル(株)製、縦:70mm、横:150mm、厚さ:6mm〕にシーラー〔エスケー化研(株)製、商品名:EXシーラー〕をエアスプレーで150g/m2の塗布量で均一に塗布し、23℃で1週間乾燥させた。
次に、試料を10milアプリケーターで塗布し、23℃にて1週間乾燥させた後、当該試料が塗布されたスレート板の側面および背面をアルミニウムテープでシールし、試料が塗布された面の60°鏡面光沢を光沢計〔日本電色工業(株)製、品番:VG2000〕で測定し、さらに以下の条件にて1000時間耐候性試験を行ない、前記光沢計で当該スレート板の塗装面の光沢を測定し、式:
[光沢保持率(%)]
=〔[耐候性試験後の光沢]÷[耐候性試験前の光沢]〕×100
に基づいて求め、以下の評価基準に基づいて耐候性を評価した。
〔耐候性試験の試験条件〕
・試験機:メタルウェザー〔ダイプラ・ウィンテス(株)製、品番:KU−R4〕
・照射:気温65℃で相対湿度50%の雰囲気で4時間照射(照射強度:80mW/cm2
・湿潤:気温35℃で相対湿度98%の雰囲気で4時間
・シャワー:湿潤前後に各30秒間
〔評価基準〕
◎:光沢保持率が85%以上
○:光沢保持率が70%以上85%未満
△:光沢保持率が60%以上70%未満
×:光沢保持率が60%未満
(4)総合評価
パターン保持性、耐水性および耐候性における評価において、×の評価を0点、△の評価を10点、○の評価を20点、◎の評価を30点とし、各得点の合計点を総合評価の指標とした(最高得点:90点)。
Figure 2018062663
表1に示された結果から、各実施例で得られた樹脂エマルションは、いずれも、パターン保持性、耐水性および耐候性に総合的に優れていることがわかる。
本発明の塗料用樹脂組成物および樹脂エマルションは、例えば、建築物の外装や窯業系建材などの表面に塗装されるトップコートと呼ばれている上塗り材(水性塗料)などに好適に使用することができる。
本発明は、
(1) 単量体成分を乳化重合させてなるトップコート用樹脂エマルションであって、前記樹脂エマルションに含まれるエマルション粒子を構成する樹脂の原料として用いられる単量体成分がアルキル(メタ)アクリレートおよびピペリジン基含有単量体を含有し、当該単量体成分における酸基含有単量体の含有率が0質%でり、当該エマルション粒子が複数の樹脂層で構成され、当該複数の樹脂層のうち最外層を構成する樹脂のガラス転移温度と当該複数層のうち最外層以外の内層を構成する樹脂のガラス転移温度との差の絶対値が35〜70℃であることを特徴とするトップコート用樹脂エマルション
(2) 前記(1)に記載のトップコート樹脂エマルションを含有することを特徴とする上塗り塗料、および
(3) 単量体成分を乳化重合させて複数の樹脂層を有するトップコート樹脂エマルションを製造する方法であって、前記樹脂エマルションに含まれるエマルション粒子を構成する樹脂の原料として用いられる単量体成分としてアルキル(メタ)アクリレートおよびピペリジン基含有単量体を含有する単量体成分を用い、当該単量体成分における酸基含有単量体の含有率を0質量%に調整し、前記複数の樹脂層のうち最外層を構成する樹脂のガラス転移温度と当該複数層のうち最外層以外の内層を構成する樹脂のガラス転移温度との差の絶対値を35〜70℃に調整することを特徴とするトップコート樹脂エマルションの製造方法
に関する。

Claims (1)

  1. 単量体成分を乳化重合させてなる樹脂エマルションを含有する塗料用樹脂組成物であって、当該樹脂エマルションに含まれるエマルション粒子を構成する樹脂の原料として用いられる単量体成分における酸基含有単量体の含有率が0.3質量%以下であることを特徴とする塗料用樹脂組成物。
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