JP2017052888A - セルロース微小繊維分散液、セルロース微小繊維分散液の製造方法及び繊維複合樹脂 - Google Patents

セルロース微小繊維分散液、セルロース微小繊維分散液の製造方法及び繊維複合樹脂 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、セルロース微小繊維の分散性に優れ、複合樹脂とした際に優れた透明性を有する、セルロース微小繊維を含む分散液、セルロース微小繊維分散液の製造方法及び繊維複合樹脂を提供することを目的とする。【解決手段】少なくとも、セルロース微小繊維と、ビニル基を有する第4級アンモニウム化合物と、水と、水溶性UV硬化性モノマーとを含むことを特徴とするセルロース微小繊維分散液。好ましい態様としては、前記ビニル基を有する第4級アンモニウム化合物の対イオンがハロゲン化物イオンである。【選択図】なし

Description

本発明は、セルロース微小繊維分散液、セルロース微小繊維分散液の製造方法及び繊維複合樹脂に関する。
省資源、省エネルギー、二酸化炭素排出量削減、生分解性等の観点から、近年、植物由来の素材やエネルギーが注目を浴びており、木材、植物や微生物が産出するセルロースの有効利用が進みつつある。中でも、セルロースをN−オキシル化合物とハロゲン化アルカリ金属塩を触媒として酸化することで得られる酸化セルロースは、セルロース残基の1級アルコールを選択的に酸化し、カルボン酸(塩)を導入することが可能であり、簡便な解繊処理を行うのみで、幅数nm程度のセルロース微小繊維に容易に変換可能であることが知られている(非特許文献1)。このセルロース微小繊維は、カルボン酸を多量に有し得ること、非常に微細な繊維であることから、成型体に配合した際、優れた力学特性、光学特性、界面活性等の特性を持つ可能性があり、機能性材料、構造材料などへの応用が期待されている。これまで、セルロース微小繊維の疎水性材料への混合の際の凝集の問題解決や、セルロース微小繊維と疎水性材料との界面密着性向上の面から、以下のような検討が行われてきた。
例えば、特許文献1には、天然セルロースに、N−オキシル化合物、および共酸化剤を作用させることにより得られる反応物繊維を、特定のカチオン構造を有する有機オニウム化合物の存在下に湿式分散処理することを特徴とする微細修飾セルロース繊維の製造方法が提案されている。
また、特許文献2には、 直径が4〜1000nmである微細セルロース繊維と、有機性カチオン化合物とからなることを特徴とする、有機化繊維が提案されている。
さらに、特許文献3には、(A)天然セルロース繊維をN−オキシル化合物存在下で酸化して得られたセルロースナノファイバーと、分散媒と、アクリル酸系モノマー又はメタクリル酸系モノマーとの混合物を得る工程、(B)前記混合物から分散媒を除去してゲル状体を得る工程、及び(C)前記ゲル状体中のアクリル酸系モノマー又はメタクリル酸系モノマーを重合反応に付す工程を有するセルロースナノファイバーと、アクリル樹脂又はメタクリル樹脂とを含有する樹脂組成物の製造方法が開示されている。
しかしながら前記したいずれの開示技術においても、セルロース微小繊維と、ビニル基を有する第4級アンモニウム化合物と、水と、水溶性UV硬化性モノマーとを含むことを特徴とするセルロース微小繊維分散液を複合樹脂とした際に優れた透明性を得るまでは至っていない。
特開2011−127067 特開2011−47084 特開2015−935
Biomacromolecules、7巻6号、1687−1691頁、2006年
本発明は、セルロース微小繊維の分散性に優れ、複合樹脂とした際に優れた透明性を有する、セルロース微小繊維を含む分散液、セルロース微小繊維分散液の製造方法及び繊維複合樹脂を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、天然セルロース繊維をN−オキシル化合物触媒存在下で酸化して得られた酸化セルロース繊維カルボン酸塩型と、ビニル基を有する第4級アンモニウム化合物とを混合し、洗浄後に水系溶剤中で解繊処理して得られたセルロース微小繊維カルボン酸第4級アンモニウム塩を水溶性UV硬化性モノマーで希釈することにより得られるセルロース微小繊維分散液、及び、該セルロース微小繊維分散液をUV硬化して得られる繊維複合樹脂が、前記課題を解消し得ることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、
(1)少なくとも、セルロース微小繊維と、ビニル基を有する第4級アンモニウム化合物と、水と、水溶性UV硬化性モノマーとを含むことを特徴とするセルロース微小繊維分散液、
(2)前記ビニル基を有する第4級アンモニウム化合物の対イオンがハロゲン化物イオンである前記(1)のセルロース微小繊維分散液、
(3)前記セルロース微小繊維分散液の製造方法であって、
(A)セルロース繊維をN−オキシル化合物触媒存在下で酸化して得られた酸化セルロース繊維カルボン酸塩型と、水と、ビニル基を有する第4級アンモニウム化合物とを混合し、酸化セルロース繊維カルボン酸第4級アンモニウム塩混合物を得る工程。
(B)前記混合物から副生する塩を除去して酸化セルロース繊維カルボン酸第4級アンモニウム塩を得る工程。
(C)前記酸化セルロース繊維カルボン酸第4級アンモニウム塩を、水中で解繊、分散し、ゲル状体を得る工程、及び
(D)前記ゲル状体を水溶性UV硬化性モノマーで希釈し、モノマー分散液を得る工程、
を有するセルロース微小繊維分散液の製造方法、
(4)前記(1)のセルロース微小繊維分散液に光重合開始剤を混合し、UV硬化して得られる繊維複合樹脂、
である。
本発明によれば、ビニル基を有する第4級アンモニウム化合物を用いてセルロース微小繊維の表面物性を改質することにより、セルロース微小繊維がUV硬化性モノマーに均一に水分散したセルロース微小繊維分散液を得ることができる。また、好ましい態様としてN−オキシル化合物触媒を用いて得られる酸化セルロース繊維カルボン酸第4級アンモニウム塩を得る工程を有することから、簡便な解繊処理のみで高光透過率、高いセルロース微小繊維収率を有する、改質セルロース微小繊維を含む分散液を容易に製造することができる。更に、該分散液をUV硬化して得られる繊維複合樹脂は、セルロース微小繊維と樹脂との親和性が高く、優れた透明性を有する。
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。本発明は少なくとも、セルロース微小繊維と、ビニル基を有する第4級アンモニウム化合物と、水と、水溶性UV硬化性モノマーとを含むことを特徴とするセルロース微小繊維分散液である。
本発明におけるセルロース微小繊維は、分散液とするまでにセルロースが微小繊維となっていればよく、セルロースを変性した後、セルロース微小繊維とする形態が好ましく、セルロース繊維を予め解繊処理などで微細化することによっても得られる。セルロース繊維表面にカルボキシ基を導入したカルボキシ酸基含有セルロース微小繊維であることが特に好ましく、微細化はカルボキシ基の導入前であっても導入後であっても構わない。中でも、セルロース繊維をN−オキシル化合物触媒存在下で酸化して得られた酸化セルロース繊維を解繊処理したものが、容易にカルボキシ基含有セルロース微小繊維を得ることができるので好ましい。
セルロース繊維としては、天然セルロースが挙げられる。天然セルロースは、植物、動物、バクテリア産生ゲル等のセルロース生合成系から単離した精製セルロースである。具体的には、針葉樹系パルプ、広葉樹系パルプ、コットンリンターやコットンリント等の綿系パルプ、麦わらパルプやバガスパルプ等の非木材系パルプ、バクテリアセルロース、ホヤから単離されるセルロース、海藻から単離されるセルロースなどを例示することができる。
本発明におけるビニル基を有する第4級アンモニウム化合物は、ビニル基を有する第4級アンモニウム化合物であれば、他の官能基を有していてもよく、例えば、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート塩化メチル4級塩、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート塩化ベンジル4級塩、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドなどが挙げられる。中でも、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドが水分散液中での耐加水分解性の点から好ましい。
本発明における水溶性UV硬化性モノマーは、前記したビニル基を有する第4級アンモニウム化合物以外の、水に可溶で、光重合開始剤を用いた紫外線硬化によりポリマー化できるモノマーであれば、特に限定されない。イオン性はアニオン性や両性であっても構わないが、ノニオン性またはカチオン性であることが好ましい。1分子中に炭素―炭素二重結合を2個以上有する多官能モノマーも用いることができる。中でも、セルロース微小繊維と水素結合を形成できる理由で、エステル基にヘテロ原子を持つ(メタ)アクリル酸エステル及びN−置換(メタ)アクリルアミドが好ましい。具体的な例としては、アクリロイルモルホリン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、トリエチレングリコールジアクリレート等が挙げられる。また、これらを単独、或いは二種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明における水溶性UV硬化性モノマー以外に、本発明の効果を損ねない範囲であれば、水不溶性UV硬化性モノマーを用いることができる。水不溶性UV硬化性モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル類等が挙げられる。使用割合としては、本発明のセルロース微小繊維分散液に供されるUV硬化性モノマー全体の1割を限度に、これらを単独、或いは二種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明のセルロース微小繊維分散液は、セルロース微小繊維の乾燥質量に対して、ビニル基を有する第4級アンモニウム化合物を0.1〜50質量%含有することがUV硬化性モノマーへの分散性や、UV硬化後のセルロース微小繊維とポリマー材料との界面密着性を向上させる上で好ましい。
また本発明のセルロース微小繊維分散液は、水溶性UV硬化性モノマーの質量に対して、セルロース微小繊維の乾燥質量を0.1〜10質量%含有することが、成形体の力学特性及び光学特性を向上させる上で好ましい。
本発明のセルロース微小繊維分散液は、少なくともこれら前記した成分を水に分散させて得られる。必要により、溶剤を加えても良い。溶剤としてはメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、t−ブチルアルコール、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルアセトアミド、ジエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
本発明のセルロース微小繊維分散液は、水および溶剤以外の成分が0.1〜50質量%であることが、実用性の面から好ましい。
次に、セルロース微小繊維分散液の製造方法について説明するが、本発明のセルロース微小繊維分散液の製造方法は好ましい一態様を示すものであって、本発明のセルロース微小繊維分散液は以下の製造方法で製造されたものに限定されない。
本発明のセルロース微小繊維分散液の製造方法は、以下の(A)ないし(D)の工程に大別される。
(A)セルロース繊維をN−オキシル化合物触媒存在下で酸化して得られた酸化セルロース繊維カルボン酸塩型と、水と、ビニル基を有する第4級アンモニウム化合物とを混合し、酸化セルロース繊維カルボン酸第4級アンモニウム塩混合物を得る工程。
(B)前記混合物から副生する塩を除去して酸化セルロース繊維カルボン酸第4級アンモニウム塩を得る工程。
(C)前記酸化セルロース繊維カルボン酸第4級アンモニウム塩を、水中で解繊、分散し、ゲル状体を得る工程、及び
(D)前記ゲル状体を水溶性UV硬化性モノマーで希釈し、モノマー分散液を得る工程。
以下、それぞれの工程について説明する。
(A)の工程で用いる酸化セルロース繊維カルボン酸塩型は、カルボキシ基含有量が所定の範囲にあり、酸化セルロース繊維のカルボキシ基が塩を形成しているものである。具体的には、(A)の工程で用いる酸化セルロース繊維を構成するセルロースのカルボキシ基含有量は、好ましくは0.1mmol/g以上、更に好ましくは0.4mmol/g以上、特に好ましくは0.6mmol/g以上であり、そして、好ましくは3mmol/g以下、更に好ましくは2mmol/g以下、特に好ましくは1.8mmol/g以下である。より具体的には、好ましくは0.1mmol/g以上3mmol/g以下、更に好ましくは0.4mmol/g以上2mmol/g以下、特に好ましくは0.6mmol/g以上1.8mmol/g以下である。
酸化セルロース繊維カルボン酸塩型のカルボキシ基含有量が0.1mmol/g以上3mmol/g以下であることは、後の解繊工程において、微小な平均繊維径を持つ酸化セルロース繊維を安定的に得る上で重要な要素である。特に、水中では、カルボキシ基間の電気的反発力により、酸化セルロース繊維同士が凝集することなく均一に分散する原動力となる。
(A)の工程において用いる酸化セルロース繊維は、例えば天然セルロースを酸化反応に付すことで得ることができる。以下にその工程を詳細に説明する。
前記酸化工程では、まず、水中に天然セルロースを分散させた分散液を調製する。天然セルロースに対して、叩解等の表面積を拡大する処理を施しても良い。これにより反応効率を高めることができ、生産性を高めることができる。また、天然セルロースは、単離、精製の後、未乾燥状態で保存したものを用いることが好ましい。未乾燥状態で保存することで、ミクロフィブリルの収束体を膨潤しやすい状態に保持することができるので、反応効率を高めるとともに、繊維径の細い酸化セルロース繊維を得やすくなる。
酸化工程における天然セルロースの分散媒には、典型的には水が用いられる。反応溶液中の天然セルロース濃度は、試薬の十分な溶解が可能であれば特に限定されない。通常は、反応溶液の重量に対して5%以下の濃度とすることが望ましい。
酸化工程の反応溶液に添加される触媒としては、N−オキシル化合物が用いられる。N−オキシル化合物としては、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル(以下、TEMPOと略することがある)及びC4位に各種の官能基を有するTEMPO誘導体を用いることができる。TEMPO誘導体としては、4−アセトアミドTEMPO、4−カルボキシTEMPO、4−フォスフォノキシTEMPO、4−アミノ−TEMPO、4−(2−ブロモアセトアミド)−TEMPO、4−ヒドロキシTEMPO、4−オキシTEMPOなどを挙げることができる。特に、TEMPO及び4−アセトアミドTEMPOは、反応速度において望ましい。
N−オキシル化合物の添加量は触媒量で十分であり、具体的には、反応溶液に対して0.1〜4mmol/Lの範囲で添加すれば良い。好ましくは、0.1〜2mmol/Lの添加量範囲である。
酸化工程の再酸化剤としては、次亜ハロゲン酸またはその塩(次亜塩素酸またはその塩、次亜臭素酸またはその塩、次亜ヨウ素酸またはその塩など)が用いられる。再酸化剤の添加量は、1〜50mmol/Lの範囲とすることが望ましい。
次亜ハロゲン酸塩としては、次亜塩素酸の場合に、次亜塩素酸リチウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸ナトリウムなどのアルカリ金属塩や、次亜塩素酸カルシウム、次亜塩素酸マグネシウム、次亜塩素酸ストロンチウムなどのアルカリ土類金属塩、次亜塩素酸アンモニウムなどを例示することができる。また、これらに対応する次亜臭素酸塩、次亜ヨウ素酸塩を用いることもできる。
酸化工程における好ましい再酸化剤は次亜ハロゲン酸アルカリ金属塩であり、より好ましい再酸化剤は次亜塩素酸アルカリ金属塩(次亜塩素酸ナトリウムなど)である。
さらに、酸化工程においては、N−オキシル化合物に、臭化物やヨウ化物を添加した触媒成分を用いてもよい。例えば、アンモニウム塩(臭化アンモニウム、ヨウ化アンモニウム)、臭化またはヨウ化アルカリ金属(臭化リチウム、臭化カリウム、臭化ナトリウムなどの臭化物、ヨウ化リチウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウムなどのヨウ化物)、臭化またはヨウ化アルカリ土類金属(臭化カルシウム、臭化マグネシウム、臭化ストロンチウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化ストロンチウムなど)を用いることができる。これらの臭化物及びヨウ化物は、単独または2種以上の組み合わせでも使用することができる。
酸化工程では、反応溶液のpHは、再酸化剤である次亜ハロゲン酸塩が作用するのに適したpH8〜12の範囲に保持される。さらには、pH10〜11の範囲に保持することが望ましい。また、酸化工程の温度は、1℃以上50℃以下において任意であるが、室温でも反応可能であり、温度制御は特に必要としない。また、反応時間は1分以上240分以下が望ましい。
酸化工程の後、精製工程を実施し、未反応の酸化剤などの、酸化セルロース繊維及び水以外の不純物を除去することが望ましい。前記酸化セルロース繊維は通常、この段階ではセルロースミクロフィブリル単位まで解繊されていないため、水洗と濾過を繰り返し行うことにより精製が可能である。また、この精製工程を行わず、酸化反応終了時に続けて第4級アンモニウム化合物を系中に添加することで、直接的に酸化セルロース繊維カルボン酸塩から第4級アンモニウム塩を得ることも可能である。
酸化セルロース繊維カルボン酸塩と、水と、ビニル基を有する第4級アンモニウム化合物とを混合することで、イオン交換が進行し、酸化セルロース繊維第4級アンモニウム塩が得られる。ここで、イオン交換とは、酸化セルロース繊維カルボキシ基上の金属陽イオンと、添加した第4級アンモニウム化合物のアンモニウム陽イオンが交換することを意味する。第4級アンモニウム化合物における陰イオンは特に限定されないが、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオンなどのハロゲン化物イオンや、水酸化物イオン、酢酸イオン、硫酸水素イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオンなどを用いることができる。この中でも、ハロゲン化物イオンが特に好ましい。酸化セルロース繊維のカルボキシ基に対して、前記第4級アンモニウム化合物は等モル量反応する。この場合、酸化セルロース繊維中のカルボキシ基全てが第4級アンモニウム塩化されていても良く、あるいは一部のみ第4級アンモニウム塩化されていても良い。また、ビニル基を有さない第4級アンモニウム化合物と併用することも可能である。
(B)の工程においては、前記イオン交換反応の後、圧搾により、副生する塩を除去する。前記酸化セルロース繊維カルボン酸塩型から第4級アンモニウム塩(酸化セルロース繊維カルボン酸第4級アンモニウム塩と略することがある)とすることができ、この段階ではセルロースミクロフィブリル単位まで解繊されていないため、水洗と濾過を繰り返し行うことにより精製が可能である。
(C)の工程においては、前記精製工程を経た酸化セルロース繊維第4級アンモニウム塩を水中に分散させ、微細化処理を施す。この微細化工程を経ることにより、酸化セルロース繊維がミクロフィブリル単位まで解繊される。
前記微細化処理で使用する分散機としては、カッターミル、ボールミル、ジェットミル、単軸押出機、二軸押出機、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、家庭用ジューサーミキサー等の解繊装置を用いることができる。
上記の微細化工程により、セルロース微小繊維が媒体に分散したゲル状体が得られる。このセルロース微小繊維を含むゲル状体は、セルロースの一部においてC6位の第1級水酸基がカルボン酸第4級アンモニウム塩(カルボキシ基の第4級アンモニウム化合物塩)に酸化されたセルロース微小繊維が、カルボキシ基同士の荷電反発によって媒体中に均一分散したものである。
(D)の工程においては、前記微細化処理によって得られたセルロース微小繊維を含むゲル状体を、水溶性UV硬化性モノマーで希釈し、セルロース微小繊維分散液を得る。
本発明の繊維複合樹脂は、前記セルロース微小繊維分散液に光重合開始剤を混合し、UV硬化することで得られる。光重合開始剤は、セルロース微小繊維分散液が貯蔵・運搬中に硬化しないよう、遮光状態で常温下、密閉保存されるのであれば、前記(D)の工程において予め添加しておいても差し支えない。
光重合開始剤としては、ラジカル系光重合開始剤、カチオン系光重合開始剤、アニオン系光重合開始剤など公知のものが何れも使用できる。好ましくは、ベンゾフェノン系、アルキルフェノン系光重合開始剤が挙げられる。
光重合開始剤は、水や溶剤に溶解させた状態で加えても良い。溶剤は、水及び水溶性UV硬化性モノマーに可溶なものであればよく、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、t−ブチルアルコール、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルアセトアミド、ジエチレングリコールジメチルエーテル等を好適に用いることができ、これらを単独、或いは二種以上を組み合わせて使用することができる。
また、分子量を調整するために、公知の連鎖移動剤であるイソプロピルアルコール、四塩化炭素、クメン、チオグリコール酸エステル、アルキルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン等を適宜使用しても良い。
更には、本発明のセルロース微小繊維分散液または繊維複合樹脂に所望の機能を装備する上で必要な、各種添加剤を予めセルロース微小繊維分散液に添加、あるいはUV硬化前に添加することもできる。添加剤としては、例えば、粘度調整剤、顔料、染料等の着色剤、導電性あるいは帯電性を有するフィラー・金属ナノ粒子・金属ナノワイヤ、架橋剤、レベリング剤、防腐剤、酸化防止剤等が挙げられる。
本発明のセルロース微小繊維を含む繊維複合樹脂は、光学フィルムや包装フィルム等の機能性フィルムなどのフィルム状成型体、透析膜や蒸留膜などの膜状成型体、耐候性塗膜、耐水性塗膜、抗菌性塗膜や蛍光・蓄光塗膜などの塗膜状成型体、耐水性、形態安定性、感温・保温性は撥水性を有するなどの繊維状の、あるいは、布や不織布など布状の成型体、電化機器用部材、家電製品用部材、家具用部材、自動車用部材、建築材料、スポーツ用品用部材や食品・飲料・洗剤用容器、浴槽などに使用される射出・押出・圧縮・中空・溶融・機械的・粉末・熱・発泡・切削・研磨成型体、医薬品などのカプセル状成型体などとして用いることができ、使用する目的に合わせた任意の形状をとることができる。
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下に%とあるのは特に記載されていない場合は質量%を示す。
(酸化セルロース繊維の製造例1)
撹拌装置を備えた3L容ガラス製ビーカーに天然セルロースとして未叩解の針葉樹晒クラフトパルプの2.0%スラリー1200gを投入して緩やかに撹拌し、N−オキシル化合物として2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシル0.3gとハロゲン化アルカリ金属塩として臭化ナトリウム3.0gを触媒として加えて溶解させ、更にイオン交換水を加えて総量を1800gとした。このパルプスラリーに次亜塩素酸ナトリウム水溶液(塩素濃度8%)を63.8g投入し、室温で撹拌しつつパルプスラリーのpHが10.5を保持するように4%水酸化ナトリウム水溶液を断続的に滴下した。次亜塩素酸ナトリウム水溶液投入後約120分でpHの変動が殆ど無くなったことを確認して撹拌を停止し、酸化反応の終点とした。それまでに滴下した4%水酸化ナトリウム水溶液は64gだった。このようにして酸化セルロース繊維1を得た。
(酸化セルロース繊維の製造例2)
酸化セルロース繊維1を150メッシュのナイロン製濾布で濾過した後、残存する水溶性薬品を除去するために濾過物を再度3L容ガラス製ビーカーに投入し、イオン交換水2000gを加えて撹拌し、150メッシュのナイロン製濾布で濾過する操作を3回繰り返すことで、酸化セルロース繊維2を得た。酸化セルロース繊維2の固形分は、110℃で3時間加熱乾燥した後の残存重量より、5.6%であった。また、酸化セルロース繊維2はカルボン酸塩型となっており、カルボキシ基含有量は1.6mmol/gであった。
(酸化セルロース繊維の製造例3)
酸化セルロース繊維2に対し、1N塩酸水溶液を加えてpHを2に調整し、120分撹拌した後、該分散液を吸引濾過した。次いで、濾紙上に形成された酸化セルロース繊維のマットに、0.01N塩酸水溶液100gを加えて、再度吸引濾過を行った。0.01N塩酸による処理を2回繰り返した後、イオン交換水100gを用いて3回洗浄することで、酸化セルロース繊維3を得た。なお、酸化セルロース繊維3は酸化セルロース繊維カルボン酸型となっている。
(酸化セルロース繊維のカルボキシ基含有量の測定方法)
乾燥質量0.5gとなるように酸化セルロース繊維2を100mLビーカーに怦量し、イオン交換水を加えて全量で55mLとし、そこに0.01M塩化ナトリウム水溶液5mLを加えて分散液を調製し、均一に分散するまで撹拌した。この分散液に0.1M塩酸を加えてpHを2.5〜3に調整し、平沼自動滴定装置CSM−1750(日立ハイテクサイエンス株式会社製)を用い、0.05M水酸化ナトリウム水溶液を待ち時間60秒の条件で上記分散液に滴下し、1分ごとの伝導度及びpHを測定し、pH11になるまで測定を続け、伝導度曲線を得る。この伝導度曲線から、水酸化ナトリウム滴定量を求め、次式により、酸化セルロース繊維のカルボキシ基含有量を算出する。
酸化セルロース繊維のカルボキシ基含有量(mmol/g)=水酸化ナトリウム滴定量×水酸化ナトリウム濃度(0.05M)/酸化セルロース繊維の質量(0.5g)
(製造例1)
撹拌装置を備えた3L容ガラス製ビーカーに酸化セルロース繊維2を乾燥質量として10gとなるように投入し、イオン交換水を加えて総量を1000gとした。このパルプスラリーに、ビニル基を有する第4級アンモニウム化合物としてN,N−ジメチルアミノエチルアクリレート塩化メチル4級塩(KJケミカルズ株式会社製:以下、DMAEA−Qと略することがある)を3.1g添加し、緩やかに撹拌しながら1時間イオン交換を行った。反応後のパルプスラリーを150メッシュのナイロン製濾布で濾過した後、複製した塩を除去するために濾過物を再度3L容ガラス製ビーカーに投入し、イオン交換水1000gを加えて撹拌し、150メッシュのナイロン製濾布で濾過する操作を3回繰り返すことで、酸化セルロース繊維カルボン酸DMAEA−Q塩を得た。最終的な濾過物の固形分は、110℃で3時間加熱乾燥した後の残存重量より、4.7%であった。得られた酸化セルロース繊維カルボン酸DMAEA−Q塩(乾燥質量1g)を、固形分0.2%になるようにイオン交換水で徐々に希釈しながら、家庭用ジューサーミキサーで解繊処理を行うことで、ゲル状体1を得た。
(製造例2)
製造例1において、第4級アンモニウム化合物としてDMAEA−Qの代わりに75%N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩(KJケミカルズ株式会社製:以下、DMAPAA−Qと略することがある)4.4gを添加した以外は製造例1と同様にしてゲル状体2を得た。
(製造例3)
製造例1において、第4級アンモニウム化合物としてDMAEA−Qの代わりに76%N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート塩化ベンジル4級塩(星光PMC株式会社製:以下、DMBz水溶液と略することがある)5.9gを添加した以外は製造例1と同様にしてゲル状体3を得た。
(製造例4)
製造例1において、第4級アンモニウム化合物としてDMAEA−Qの代わりに65%ジアリルジメチルアンモニウムクロリド水溶液(ダイソー株式会社製:以下、DADMACと略することがある)3.9gを添加した以外は製造例1と同様にしてゲル状体4を得た。
(製造例5)
製造例1において、第4級アンモニウム化合物としてDMAEA−Qの代わりに75%DMAPAA−Q水溶液(KJケミカルズ株式会社製)4.0gおよび24%塩化ステアリルトリメチルアンモニウム水溶液(ニッサンカチオンAB−600:日油株式会社製)2.4gの混合物(モル比9:1)を添加した以外は製造例1と同様にしてゲル状体5を得た。
(製造例6)
製造例1において、第4級アンモニウム化合物としてDMAEA−Qの代わりに65%DADMAC水溶液(ダイソー株式会社製)2.1g(カルボキシ基量に対して半量)を添加した以外は製造例1と同様にしてゲル状体6を得た。
(製造例7)
酸化セルロース繊維2(乾燥質量10g)に第4級アンモニウム化合物として65%DADMAC水溶液(ダイソー株式会社製)4.0g(カルボン酸基量に対して当量)を添加し、穏やかに2時間撹拌した。洗浄、解繊、分散操作は製造例1と同様にしてゲル状体7を得た。なお、本製造例は、酸化セルロース繊維製造時に精製工程を経ず、酸化反応終了時に第4級アンモニウム化合物を添加し、直接酸化セルロース繊維第4級アンモニウム塩を製造した例である。
(製造例8)
酸化セルロース繊維2(乾燥質量5g)を、固形分0.2%になるようにイオン交換水で徐々に希釈しながら、家庭用ジューサーミキサーで解繊処理を行うことで、ゲル状体8を得た。
(製造例9)
酸化セルロース繊維3を、固形分0.2%になるようにイオン交換水で希釈し、家庭用ジューサーミキサーで分散処理を行うことで、ゲル状体9を得た。本製造例は、酸化セルロース繊維として酸化セルロース繊維カルボン酸型を用いたものである。
(製造例10)
酸化セルロース繊維3に対して、ビニル基を有さない第4級アンモニウム化合物として25%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(東京化成工業株式会社製、以下、NMeと略することがある)12.8gを添加した以外は製造例2と同様にしてゲル状体10を得た。
(製造例11)
本製造例は、背景技術の項で述べた特許文献2に記載の方法に相当するものである。本製造例では有機オニウム化合物とのイオン交換反応において、微細化処理済みのセルロース微小繊維を用いていない。詳細には、ビニル基を有さない第4級アンモニウム化合物として、24%塩化ステアリルトリメチルアンモニウム水溶液(ニッサンカチオンAB−600:日油株式会社製)24.0gを添加した以外は製造例1と同様にしてゲル状体11を得た。
(評価)
各製造例で得られたゲル状体について、以下に述べる方法でセルロース微小繊維収率、全光線透過率を測定した。
(セルロース微小繊維収率の算出)
セルロース微小繊維収率は、遠心分離を用いて算出した。なお、ゲル状体粘度が高い場合、遠心分離における未解繊繊維の分離が困難であったため、固形分濃度約0.1%のゲル状体を調製し、遠心分離を行った。具体的には、ゲル状体1〜11の各々を5g怦量し、イオン交換水5gで希釈することで、固形分濃度約0.1%のゲル状体とした。この水分散液に対し、回転数9000rpmで10分間、遠心分離を行った。遠心分離後の上澄み液を採取し、110℃で3時間乾燥させることで固形分を算出した。セルロース微小繊維収率は以下の式によって求めた。
セルロース微小繊維収率(%)=上澄み液の固形分(%)/遠心分離処理前の固形分(%)×100
(光透過率の測定)
光透過率は、光電比色計AP−101(アペレ社製)を用いて、25℃、波長600nmにおける光透過率を測定した。
各製造例で得られた水分散液の評価結果を、以下の表に示す。
Figure 2017052888
注1)直接法とは、酸化反応終了時に、精製工程を経ずに直接第4級アンモニウム化合物を添加することを示す。
なお、表中の略号として、NMeはセルロース繊維としてビニル基を有さない第4級アンモニウム塩であるテトラメチルアンモニウムヒドロキシドを用いて調製した酸化セルロース繊維テトラメチルアンモニウム塩型を用いたことを示している。
また、AB600は、ニッサンカチオンAB−600(日油株式会社製)を示す。
(セルロース微小繊維分散液の調製)
製造例1で得られたゲル状体1(固形分0.2%)50.0gに対し、溶剤としてn−プロパノールを1g、モノマーとしてアクリロイルモルホリン(KJケミカルズ株式会社製:以下、ACMOと略することがある)を1.88g、光重合開始剤としてイルガキュア2959を0.02g添加し、室温下穏やかに撹拌することでセルロース微小繊維分散液A−1を調製した。
上記セルロース微小繊維分散液A−1の調整において、ゲル状体1の代わりにゲル状体2〜10を用いることで、セルロース微小繊維分散液A−2〜A−10を調製した。
(セルロース微小繊維複合樹脂としてのフィルムの作製)
(実施例B−1)
ポリエチレンテレフタラート(PET)フィルム基材シート上に、セルロース微小繊維分散液A−1をバーコーター(♯34)にて塗布した後、110℃で5分間乾燥させ、樹脂層を形成した。得られた乾燥フィルムを、紫外線照射装置UV1501C−SZ(センエンジニアリング株式会社製)を用いて、照射強度42mW/cm、速度1cm/s、ランプ高さ25cm、667mJ/cmの条件でUV照射することで光重合反応を行い、厚さ約78μmのフィルムB−1を作成した。
(実施例B−2)
セルロース微小繊維水分散液A−1の代わりにセルロース微小繊維分散液A−2を用いた以外は実施例B−1と同様にしてフィルムB−2を得た。
(実施例B−3)
セルロース微小繊維水分散液A−1の代わりにセルロース微小繊維分散液A−3を用いた以外は実施例B−1と同様にしてフィルムB−3を得た。
(実施例B−4)
セルロース微小繊維水分散液A−1の代わりにセルロース微小繊維分散液A−4を用いた以外は実施例B−1と同様にしてフィルムB−4を得た。
(実施例B−5)
セルロース微小繊維水分散液A−1の代わりにセルロース微小繊維分散液A−5を用いた以外は実施例B−1と同様にしてフィルムB−5を得た。
(実施例B−6)
セルロース微小繊維水分散液A−1の代わりにセルロース微小繊維分散液A−6を用いた以外は実施例B−1と同様にしてフィルムB−6を得た。
(実施例B−7)
セルロース微小繊維水分散液A−1の代わりにセルロース微小繊維分散液A−7を用いた以外は実施例B−1と同様にしてフィルムB−7を得た。
(比較例b−1)
セルロース微小繊維水分散液A−1の代わりにセルロース微小繊維分散液A−8を用いた以外は実施例B−1と同様にしてフィルムb−1を得た。
(比較例b−2)
セルロース微小繊維水分散液A−1の代わりにセルロース微小繊維分散液A−9を用いた以外は実施例B−1と同様にしてフィルムb−2を得た。
(比較例b−3)
セルロース微小繊維水分散液A−1の代わりにセルロース微小繊維分散液A−10を用いた以外は実施例B−1と同様にしてフィルムb−3を得た。
(比較例b−4)
本比較例は、特許文献3に記載の方法に相当するものである。ビニル基を有さず、かつ第4級アンモニウム化合物ではない有機アミン化合物として、ステアリルアミンを用いた例である。詳細には、以下の操作を行った。
ゲル状体9を乾燥質量が4.0gとなるように投入し、イオン交換水/IPA混合溶媒(800g、1/1)で希釈し、ビニル基を有さず、かつ第4級アンモニウム化合物ではないアミンとしてステアリルアミンを0.08g添加し、1時間穏やかに撹拌した後、イオン交換水1600gを加えた。この処理によって生じたセルロース微小繊維凝集体を吸引濾過した。次いで、濾紙上に形成されたセルロース微小繊維のマットに対し、IPAを400g加えて再度吸引濾過を行った。この操作を3回繰り返すことで、セルロース微小繊維ステアリルアミン塩X−1を得た。
得られたセルロース微小繊維ステアリルアミン塩X−1(乾燥質量0.5g)と分散媒としてのIPA248gを混合し、家庭用ジューサーミキサーで分散処理を行うことで、セルロース微小繊維ステアリルアミン塩IPA分散液(固形分0.2%)を得た。
上記IPA分散液50gに対し、モノマーとしてアクリロイルモルホリンを1.88g、光重合開始剤としてイルガキュア2959を0.02g添加し、穏やかに撹拌することでセルロース微小繊維分散液A−11を得た。得られた分散液を実施例B−1と同様にポリエチレンテレフタラートフィルム上に塗工し、フィルムb−4を得た。
(実施例C−1)
水溶性UV硬化性モノマーとしてACMOの代わりに2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下、HEMAと略することがある)を用いた以外は実施例B−1と同様にしてフィルムC−1を得た。
(実施例C−2)
水溶性UV硬化性モノマーとしてACMOの代わりにHEMAを用いた以外は実施例B−2と同様にしてフィルムC−2を得た。
(実施例C−3)
水溶性UV硬化性モノマーとしてACMOの代わりにHEMAを用いた以外は実施例B−3と同様にしてフィルムC−3を得た。
(実施例C−4)
水溶性UV硬化性モノマーとしてACMOの代わりにHEMAを用いた以外は実施例B−4と同様にしてフィルムC−4を得た。

(実施例C−5)
水溶性UV硬化性モノマーとしてACMOの代わりにHEMAを用いた以外は実施例B−5と同様にしてフィルムC−5を得た。
(実施例C−6)
水溶性UV硬化性モノマーとしてACMOの代わりにHEMAを用いた以外は実施例B−6と同様にしてフィルムC−6を得た。
(実施例C−7)
水溶性UV硬化性モノマーとしてACMOの代わりにHEMAを用いた以外は実施例B−7と同様にしてフィルムC−7を得た。
(比較例c−1)
水溶性UV硬化性モノマーとしてACMOの代わりにHEMAを用いた以外は比較例b−1と同様にしてフィルムc−1を得た。
(比較例c−2)
水溶性UV硬化性モノマーとしてACMOの代わりにHEMAを用いた以外は比較例b−2と同様にしてフィルムc−2を得た。
(比較例c−3)
水溶性UV硬化性モノマーとしてACMOの代わりにHEMAを用いた以外は比較例b−3と同様にしてフィルムc−3を得た。
(比較例c−4)
水溶性UV硬化性モノマーとしてACMOの代わりにHEMAを用いた以外は比較例b−4と同様にしてフィルムc−4を得た。
(実施例D−1)
水溶性UV硬化性モノマーとしてACMOの代わりにトリエチレングリコールジアクリレート(共栄社化学株式会社製:以下、3−EGAと略することがある)を用いた以外は実施例B−2と同様にしてフィルムD−1を得た。
(実施例D−2)
水溶性UV硬化性モノマーとしてACMOの代わりに3−EGAを用いた以外は実施例B−3と同様にしてフィルムD−2を得た。
(実施例D−3)
水溶性UV硬化性モノマーとしてACMOの代わりに3−EGAを用いた以外は実施例B−6と同様にして実施例用セルロース微小繊維担持フィルムD−3を得た。
(実施例D−4)
水溶性UV硬化性モノマーとしてACMOの代わりに3−EGAを用いた以外は実施例B−7と同様にしてフィルムD−4を得た。
(比較例d−1)
水溶性UV硬化性モノマーとしてACMOの代わりに3−EGAを用いた以外は比較例b−3と同様にしてフィルムd−1を得た。
(評価)
上記の実施例及び比較例で得られたフィルムについて、以下に述べる方法で全光線透過率、ヘイズ、表面抵抗を測定した。その結果を表2〜表4に示す。
(全光線透過率の測定)
フィルムを、ヘイズメーターNDH−5000(日本電色工業株式会社製)を用いて、JIS K7361に準拠して測定した。
(ヘイズの測定)
フィルムを、ヘイズメーターNDH−5000(日本電色工業株式会社製)を用いて、JIS K7136に準拠して測定した。
(表面抵抗の測定)
フィルムを平板試料用電極SME−8311(東亜ディーケーケー株式会社製)に挟み、電圧250Vでの表面抵抗を、極超絶縁計SM−10E(東亜電波工業株式会社製)を用いて測定した。
Figure 2017052888
表中、AB600は、ニッサンカチオンAB−600(日油株式会社製)を示す。
Figure 2017052888
表中、AB600は、ニッサンカチオンAB−600(日油株式会社製)を示す。
Figure 2017052888
なお、表中の略号として、NMeはセルロース繊維としてビニル基を有さない第4級アンモニウム塩であるテトラメチルアンモニウムヒドロキシドを用いて調製した酸化セルロース繊維テトラメチルアンモニウム塩型を用いたことを示している。
また、AB600は、ニッサンカチオンAB−600(日油株式会社製)を示す。
実施例B−1〜7、C−1〜7、D−1〜4及び比較例b−1〜4、c−1〜4、d−1は、何れも、前述した製造方法により得られたセルロース微小繊維複合樹脂としてのフィルムである。表に示す結果から明らかなように、ビニル基を有する第4級アンモニウム化合物を用いて改質した本発明のセルロース微小繊維分散液をPETフィルムに塗工し、UV硬化してなるフィルムを調製したところ、従来技術よりも低いヘイズを示し、透明性に優れる結果であった。比較例b−2及びb−4、c−2、c−4は、酸化セルロースカルボン酸型誘導体を用いたフィルムであるところ、PETフィルム上で酸化セルロース繊維が凝集し白濁、ヘイズが悪化した。比較例b−4及びc−4は特にセルロース微小繊維の凝集が著しく、表面抵抗が測定できなかった。実施例に示すビニル基を有する第4級アンモニウム化合物を用いて改質したセルロース微小繊維複合樹脂は、高い透明性及び低いヘイズを実現することが可能であった。

Claims (4)

  1. 少なくとも、セルロース微小繊維と、ビニル基を有する第4級アンモニウム化合物と、水と、水溶性UV硬化性モノマーとを含むことを特徴とするセルロース微小繊維分散液。
  2. 前記ビニル基を有する第4級アンモニウム化合物の対イオンがハロゲン化物イオンであることを特徴とする請求項1に記載のセルロース微小繊維分散液。
  3. 前記セルロース微小繊維分散液の製造方法であって、
    (A)セルロース繊維をN−オキシル化合物触媒存在下で酸化して得られた酸化セルロース繊維カルボン酸塩型と、水と、ビニル基を有する第4級アンモニウム化合物とを混合し、酸化セルロース繊維カルボン酸第4級アンモニウム塩混合物を得る工程。
    (B)前記混合物から副生する塩を除去して酸化セルロース繊維カルボン酸第4級アンモニウム塩を得る工程。
    (C)前記酸化セルロース繊維カルボン酸第4級アンモニウム塩を、水中で解繊、分散し、ゲル状体を得る工程、及び
    (D)前記ゲル状体を水溶性UV硬化性モノマーで希釈し、モノマー分散液を得る工程、
    を有するセルロース微小繊維分散液の製造方法。
  4. 請求項1に記載のセルロース微小繊維分散液に光重合開始剤を混合し、UV硬化して得られる繊維複合樹脂。
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