図1は本発明にかかる基板洗浄装置の第1実施形態を示す図である。また、図2は図1に示す装置の部分平面図である。この基板洗浄装置1は、図示を省略する処理チャンバ内で基板Wの表面Wfを上方に向けたフェイスアップ状態で基板Wを保持しながら2種類の洗浄液(第1液体に超音波を印加した超音波印加液、第2液体中の溶存気体濃度を高めた飽和液)によって半導体ウエハ等の基板Wの表面Wfに付着しているパーティクル(図3A〜3C中の符号PT)などの不要物を除去する装置である。より具体的には、上記第1液体および第2液体として、DIW(脱イオン水:De Ionized Water)を用いている。特に第1液体については脱気処理を施した脱気水に超音波を印加して超音波印加液を作成している。また、第2液体については、窒素気体などの気体を溶解させて第2液体中の気体濃度を飽和レベル程度にまで高めた飽和水を作成している。そして、これら超音波印加液および飽和水を基板Wの表面Wfに供給して表面洗浄処理を施す。また、裏面Wbに対しては、DIWを供給して裏面洗浄処理を施す。こうした洗浄処理を実行した後、DIWで濡れた基板Wをスピン乾燥させる。なお、図面への図示を省略するが、基板Wの表面Wfにはpoly−Si等からなるデバイスパターンが形成されている。
基板洗浄装置1は、基板Wの表面Wfを上方に向けた状態で基板Wを略水平姿勢に保持して回転させるスピンチャック10を備えている。スピンチャック10は、回転支軸11がモータを含むチャック回転機構20の回転支軸に連結されており、チャック回転機構20の駆動により回転軸J(鉛直軸)回りに回転可能となっている。回転支軸11の上端部には、円盤状のスピンベース12が一体的にネジなどの締結部品によって連結されている。したがって、装置全体を制御する制御ユニット30からの動作指令に応じてチャック回転機構20が作動することによりスピンベース12が回転軸J回りに回転する。また、制御ユニット30はチャック回転機構20を制御してスピンチャック10の回転数を調節する。
スピンベース12の周縁部付近には、基板Wの周縁部を把持するための複数個のチャックピン13が立設されている。チャックピン13は、円形の基板Wを確実に保持するために複数個設けてあればよく、スピンベース12の周縁部に沿って基板Wの回転中心(回転軸J)に対して等角度間隔で配置されている。なお、本実施形態では、図2に示すように、3つのチャックピン13が設けられている。
チャックピン13のそれぞれは、基板Wの周縁部を下方から支持する基板支持部と、基板支持部に支持された基板Wの外周端面を押圧して基板Wを保持する基板保持部とを備えている。各チャックピン13は、基板保持部が基板Wの外周端面を押圧する押圧状態と、基板保持部が基板Wの外周端面から離れる解放状態との間を切り替え可能に構成されている。
スピンベース12に対して基板Wが受渡しされる際には、複数個のチャックピン13を解放状態とし、基板Wに対して洗浄処理を行う際には、複数個のチャックピン13を押圧状態とする。押圧状態とすることによって、複数個のチャックピン13は基板Wの周縁部を把持してその基板Wをスピンベース12から所定間隔を隔てた上方位置で略水平姿勢に保持することができる。これにより、基板Wはその表面(パターン形成面)Wfを上方に向け、裏面Wbを下方に向けた状態、つまりフェイスアップ状態で支持される。このように、本実施形態では、基板Wの裏面Wbは、鉛直方向においてスピンチャック10のスピンベース12と所定距離だけ離間しながら対向して配置された状態で、スピンチャック10に保持される。
このように基板Wを保持したスピンチャック10をチャック回転機構20により回転駆動することで基板Wを所定の回転数で回転させる。そして、後で詳述するように3方向から洗浄液を供給して洗浄処理を行う(図1参照)。その1つ目の洗浄液はDIWであり、基板Wの鉛直下方側から基板Wの裏面Wbの中央部に供給される。2つ目の洗浄液は飽和水SWであり、基板Wの鉛直上方側から基板Wの表面Wfの中央部に供給される。3つ目の洗浄液は超音波印加液ULであり、基板Wの径方向外側上方から基板Wの表面Wfの周縁部に供給される。こうした3つの吐出位置から吐出される洗浄液によって洗浄処理がスピンチャック10に保持された基板Wに対して実行される。
本実施形態では、回転支軸11は中空形状に仕上げられており、DIWを裏面Wbに向けて供給するための供給管14が回転支軸11の中空部分に挿通されている。この供給管14はスピンベース12の上面まで延び、その端面が基板Wの裏面Wbの中央部を臨んでいる。つまり、供給管14の上端部がノズル口141として機能する。また、供給管14の下端部はバルブ15を介してDIW供給源と接続されている。このため、制御ユニット30からの開指令に対応してバルブ15が開くと、供給管14にDIWが圧送され、ノズル口141から基板Wの裏面Wbの中央部に吐出される。一方、制御ユニット30からの閉指令に応じてバルブ15が閉じると、供給管14へのDIWの圧送が停止される。その結果、ノズル口141から基板Wの裏面Wbの中央部へのDIWの吐出も停止される。なお、上記DIW供給源としては、装置1が設置される工場に装備される用力を用いてもよい。もちろん、装置1内にDIWの貯留タンクを設け、これをDIW供給源として用いてもよい。
ノズル口141の鉛直上方には、飽和水ノズル41が固定配置されている。この飽和水ノズル41は、その下方端部に設けられたノズル口411を基板Wの表面Wfの中央部に対向させて配置されている。また、飽和水ノズル41の上端部は飽和水供給部50と接続されている。この飽和水供給部50では、配管51が飽和水ノズル41とDIW供給源とを相互に接続するとともに、当該配管51に対してバルブ52、飽和水用流量調節機構53および気体濃度調節機構54がノズル側から上記順序で介設されている。
気体濃度調節機構54は、DIW供給源から供給されるDIWに窒素気体などの気体を溶解させてDIW中の気体濃度を飽和レベル程度にまで高め、これによって気体リッチな飽和水SWを作成する機能を有している。具体的な構成としては例えば特開2004−79990号公報に記載されたものを用いることができる。このようにDIWでの溶存気体濃度を増大させた飽和水SWを、後で説明するように超音波印加液ULに混合させると、その混合領域で飽和水SWへの超音波の印加によって気泡の発生と消滅、つまりキャビテーションが促進され、優れた洗浄効果が得られる。
飽和水SWは配管51を介して飽和水用流量調節機構53に与えられる。この飽和水用流量調節機構53は、マスフローコントローラ(mass flow controller, MFC)などで構成されており、制御ユニット30からの流量指令に応じた流量の飽和水SWを飽和水ノズル41に向けて流す機能を有している。そして、制御ユニット30からの開指令を受けてバルブ52が開くと、飽和水用流量調節機構53により流量調節された飽和水SWが飽和水ノズル41に送られる。その結果、制御ユニット30により設定された流量の飽和水SWが飽和水ノズル41のノズル口411から吐出し、基板Wの表面Wfの中央部に供給される。一方、制御ユニット30からの閉指令に応じてバルブ52が閉じると、飽和水ノズル41への飽和水SWの圧送が停止される。その結果、飽和水ノズル41からの飽和水SWの吐出も停止される。
また、図1に示すように、スピンチャック10に保持された基板Wの径方向外側上方に超音波ノズル61が固定配置されている。この超音波ノズル61は、先端部に設けられたノズル口611を基板Wの表面Wfの周縁部に対向させて配置されている。この超音波ノズル61は、上記ノズル口611以外に、脱気水を導入するための導入口612および振動子613を有している。導入口612は脱気水供給部70に接続されており、脱気水供給部70で生成される脱気水を超音波ノズル61の内部に案内する機能を有している。
脱気水供給部70では、配管71が超音波ノズル61の導入口612とDIW供給源とを相互に接続するとともに、当該配管71に対してバルブ72、脱気水用流量調節機構73および脱ガス機構74がノズル側から上記順序で介設されている。この脱ガス機構74はDIW供給源から送られてくるDIWから溶存気体を取り去る、つまり脱気処理を施してDIW中の溶存気体濃度を低下させる。このように脱気処理を受けたDIWに超音波を印加してもDIW内でのキャビテーションの発生を抑制することができる。したがって、後で詳述するように、超音波印加液ULが上記飽和水SWと混合されるまでに超音波印加液UL内で超音波が減衰されるのを抑え、混合領域に超音波を効率的に供給することが可能となっている。
脱気水は配管71を介して脱気水用流量調節機構73に与えられる。この脱気水用流量調節機構73は、飽和水用流量調節機構53と同様に、マスフローコントローラなどで構成されており、制御ユニット30からの流量指令に応じた流量の脱気水がバルブ72を介して超音波ノズル61に圧送される。ここで、制御ユニット30からの開指令に応じてバルブ72が開くと、脱気水が導入口612を介して超音波ノズル61の内部に送り込まれる。また、この脱気水は超音波の印加を受けて超音波印加液ULとなり、ノズル口611から基板Wの表面Wfの周縁部に向けて吐出される。より詳しくは、超音波ノズル61には振動子613が図1に示すようにノズル口611から吐出される超音波印加液ULの吐出方向(図1中の矢印の方向)においてノズル口611の反対側に配置されている。そして、制御ユニット30からの制御信号に基づき発振器63から発振信号が超音波ノズル61内の振動子613に出力されると、振動子613が振動して超音波を発生させる。これによって、超音波が脱気水に印加されて超音波印加液ULが生成され、基板Wの径方向外側上方位置を吐出位置とし、基板Wの表面Wfの周縁部に向けて吐出される。一方、制御ユニット30からの閉指令に応じてバルブ72が閉じると、超音波ノズル61への脱気水の圧送が停止され、超音波印加液ULの供給も停止される。その結果、超音波ノズル61からの超音波印加液ULの吐出も停止される。
なお、図1中の符号31は、タッチパネルなどにより構成される表示操作部であり、制御ユニット30から与えられる画像情報を表示する表示部として機能と、ユーザが表示部に表示されたキーやボタンなどを操作して入力した情報を受け取り、制御ユニット30の送信する操作入力部として機能とを兼ね備えている。もちろん、表示部と操作入力部とを個別に設けてもよいことは言うまでもない。また、図1中の符号32は制御ユニット30に設けられた記憶部であり、洗浄処理を行うに際して予め設定される種々の条件、つまり処理条件や洗浄プログラム等を記憶する機能を有している。そして、制御ユニット30が洗浄プログラムにしたがって装置各部を制御することで上記混合領域の位置を制御して基板Wの表面全体に対して超音波洗浄処理を施す。このように本実施形態では、制御ユニット30が本発明の「混合位置制御部」として機能する。以下においては、制御ユニット30による混合領域の位置制御によって表面Wfが超音波洗浄される理由について図3Aないし図3Cを参照しつつ説明した後で、上記した基板洗浄装置1の動作について説明する。
図3Aは図1に示す装置において基板を低速回転させながら超音波印加液ULおよび飽和水SWを吐出したときの基板の表面状態および洗浄原理を示す図である。また、図3Bは図1に示す装置において基板を中速回転させながら超音波印加液ULおよび飽和水SWを吐出したときの基板の表面状態および洗浄原理を示す図である。さらに、図3Cは図1に示す装置において基板を高速回転させながら超音波印加液ULおよび飽和水SWを吐出したときの基板の表面状態および洗浄原理を示す図である。ここでいう「低速」、「中速」および「高速」とは超音波洗浄処理に適した回転数範囲内での速度を意味しており、スピン乾燥時の回転数とは区別されるものである。なお、ここでは、図3Aないし図3C中の各(a)欄に示すように、回転数による混合領域の位置制御を検証するために、直径300[mm]の半導体ウエハ(基板W)に対して飽和水ノズル41から吐出される飽和水SWの流量および超音波ノズル61から吐出される超音波印加液ULの流量をともに2.0[L/min]に固定したまま、「低速」、「中速」および「高速」として、それぞれ「30rpm」、「80rpm」および「500rpm」と設定した場合を例示している。なお、裏面Wbに対してDIWを供給しているが、これは上記混合領域の位置制御と直接関係しない。
図3Aに示すように、基板Wの回転数が低速に設定された状態で、超音波ノズル61は基板Wの径方向外側上方から超音波印加液ULを基板Wの表面Wfの周縁部に吐出すると、超音波印加液ULは基板Wの表面Wfの中央部にまで広がり、表面Wf全体に超音波印加液ULの液膜が形成される。その後で飽和水ノズル41から表面Wfの中央部に吐出された飽和水SWは超音波印加液ULと混合し、混合領域MRを形成する。ただし、低速回転であるため、基板Wの径方向への飽和水ノズル41の広がりは弱く、その結果、同図に示すように、混合領域MRは表面Wfの中央部近傍に形成される。なお、図3A、図3Bおよび図3C中の符号「BD」は混合領域MRの超音波ノズル61側の境界を表している。
混合領域MRでは、表面Wfの中央側から供給される飽和水SWと、表面Wfの周縁側から供給される超音波印加液ULとが混合される。このため、同図の(b)欄中の模式図で示されるように、混合領域MRには数多くの溶存気体DGが存在するとともに、超音波印加液UL中を伝播してきた超音波が混合領域MRに到達し、基板Wの表面Wfの近傍で発生するキャビテーションによって混合領域MRに対応する表面領域からパーティクルPTが効果的に除去される。また、実施形態では、超音波印加液ULは脱気水に超音波を印加したものであるため、超音波印加液UL内での超音波のエネルギー減衰は少なく、効率的な超音波洗浄を行うことができる。このように、基板Wの回転数を例えば30[rpm]に設定することによって、基板Wの表面Wfのうち当該回転数に対応した領域を効果的に洗浄することができる。
このようにして超音波洗浄される領域は基板Wの回転数の変化に伴って変位する。つまり、図3Bに示すように、基板Wの回転数が中速に設定されると、回転数が増大された分だけ混合領域MRは超音波ノズル61側にシフトする。そして、当該混合領域MRにおいても、低速回転の場合と同様に、飽和水SW由来の溶存気体DGと超音波印加液ULを伝播してきた超音波とによって混合領域MRでキャビテーションが発生し、混合領域MRに対応する表面領域からパーティクルPTが効果的に除去される。
さらに、回転数が増大されると、図3Cに示すように、混合領域MRは基板Wの周縁部近傍までシフトする。そして、低速回転および中速回転の場合と同様にして混合領域MRに対応する表面領域からパーティクルPTが効果的に除去される。
これらの検証および考察から明らかなように、混合領域MRを基板Wの表面Wf上に形成することで表面Wfを部分的に、かつ良好に超音波洗浄することができる。しかも、飽和水ノズル41および超音波ノズル61の両方を固定配置しているものの、スピンチャック10に保持された基板Wの回転数を制御することで混合領域MRを移動させることができる。したがって、基板Wの回転数を所望値に設定することで基板Wの表面Wfのうち任意の表面領域を良好に超音波洗浄することができる。また、図3Aないし図3Cから容易に類推できるように、基板Wの回転数を連続的あるいはステップ状に変化させることで基板Wの表面Wfを広範囲にわたって効率的に洗浄することができる。例えば回転数を例えば30[rpm]から500[rpm]の範囲で変化させることで基板Wの表面全体を良好に洗浄することができる。このような洗浄原理に基づき、本実施形態では、制御ユニット30は装置各部を図4に示すように制御して基板洗浄処理を行っている。
図4は図1に示す基板洗浄装置の動作を示すフローチャートである。処理の開始前には、バルブ15、52、72はいずれも閉じられており、スピンチャック10は静止している。そして、制御ユニット30は予め記憶部32に記憶されているプログラムにしたがって装置各部を以下のように制御して基板Wの洗浄処理および乾燥処理を行う。すなわち、基板搬送ロボット(図示省略)により1枚の基板Wがスピンチャック10に載置されチャックピン13により保持される(ステップS1)。
次のステップS2ではバルブ72を開いて脱気水を超音波ノズル61に圧送し、ノズル口611から基板Wの表面Wfの周縁部に向けて吐出する。この段階では、脱気水への超音波印加を行っておらず、上記脱気水を基板Wの表面Wfに供給する。これと同時に、バルブ15を開いてDIWを供給管14に圧送し、ノズル口141から基板Wの裏面Wbの中央部に向けて吐出する。なお、裏面WbへのDIWの供給は乾燥処理前まで継続される。
そして、脱気水の液膜が表面Wfに形成される(ステップS3で「YES」)と、発振器63から発振信号を振動子613に出力する(ステップS4)。こうして、超音波印加液ULが基板Wの表面Wfに供給され、超音波印加液ULの液膜が形成される。なお、超音波ノズル61からの脱気水および超音波印加液ULの吐出流量については、脱気水用流量調節機構73によって調節可能であり、予め指定された値に設定することができる。また、液膜を形成するときの脱気水の流量と、液膜形成後の超音波印加液ULの流量とを異ならせるように制御してもよい。
これに続いて、バルブ52を開いて飽和水SWを飽和水ノズル41に圧送し、ノズル口611から基板Wの表面Wfの中央部に向けて吐出する(ステップS5)。このときの飽和水SWは飽和水用流量調節機構53によって調節される。また、チャック回転機構20によるスピンチャック10の回転駆動を開始する(ステップS6)。この回転初期では、例えば図3Aに示すように、基板Wの回転中心近傍に混合領域MRが形成される。そして、当該混合領域MRで溶存気体DGと超音波とによってキャビテーションが効率的に発生し、混合領域MRに対応する表面領域からパーティクルPTが効果的に除去される(超音波洗浄処理)。
この実施形態では、次のステップS7で回転数を調節して混合領域MRが形成される位置を基板Wの径方向にシフトさせ、上記のようにして超音波洗浄処理が実行される領域を移動させる。このような回転数の調節による混合領域MRのシフトはステップS8で「YES」と判定されるまで、つまり基板Wの表面全面に対する洗浄処理を完了するまで繰り返して行われる。なお、本実施形態では、超音波洗浄処理を行っている間、飽和水SWおよび超音波印加液ULの吐出流量は一定に維持されている。したがって、混合領域MRのシフト態様は基板Wの回転数のみで制御されており、回転数パターンを選択することで種々の態様で超音波洗浄処理を行うことができる。例えば、回転数を低速から高速に変更させる低高速パターンでは、混合領域MRが表面中央部から周縁部に移動しながら基板Wの表面Wfが洗浄される。また、回転数を高速から低速に変更させる高低速パターンでは、混合領域MRが周縁部から表面中央部に移動しながら基板Wの表面Wfが洗浄される。また、低高速パターンおよび高低速パターンを交互に繰り返すことで往復洗浄が実行される。さらに、回転数の変化についても、その変化率を一定に設定してもよいし、表面中央部と周縁部とで異ならせる、例えば表面中央部で比較的大きく、周縁部に進むにしたがって小さくなるように回転数を変化させてもよい。
こうして、基板Wの表面全体に対して超音波洗浄処理が実行される(ステップS8で「YES」と判定される)と、発振器63が発振信号の出力を停止し、それに続いてバルブ15、52、72を閉じて飽和水SW、脱気水およびDIWの供給を停止して洗浄処理を終了する。また、洗浄処理の完了とともに、基板Wの表面Wfおよび裏面Wbに残るDIWを除去する乾燥処理を行う。すなわち、スピンチャック10の回転数を上げて基板Wを高速回転させ(ステップS9)、基板Wの表面Wfおよび裏面Wbの液体成分、実質的にはDIWを振り切ることによって基板Wを乾燥させる。なお、別途、窒素気体を吐出するノズルを設け、乾燥処理の実行中に窒素気体を基板Wの表面Wfおよび裏面Wbに吹き付けるように構成してもよく、これによって乾燥した基板Wの表面Wfへのミスト等の付着や酸化を防止することができる。
こうした乾燥処理が終了すると、スピンチャック10の回転を停止する(ステップS10)。そして、基板搬送ロボットが乾燥された基板Wをスピンチャック10から取り出し、別の装置へ搬出することで(ステップS11)、1枚の基板Wに対する洗浄処理が完了する。また上記処理を繰り返すことにより、複数の基板Wを順次処理することができる。
以上のように、この実施形態では、飽和水ノズル41および超音波ノズル61を固定配置し、飽和水ノズル41から吐出される飽和水SWと超音波ノズル61から吐出される超音波印加液ULとを混合させて超音波洗浄処理を行っている。したがって、超音波洗浄処理において超音波ノズル61の移動が不要となり、装置構成が簡素で、しかも処理チャンバの小型化を図ることができ、高い汎用性を有している。
また、基板Wの回転数を所定範囲内で連続的あるいは段階的に調節することで基板Wの表面全体を効率的に超音波洗浄することができる。一方、基板Wの回転数を個別に設定することによって、例えば図3A〜図3Cに示すように、基板Wの表面Wfの任意の領域を超音波洗浄することができる。
また、飽和水SWに溶存する気体の濃度を超音波印加液ULよりも高く設定しているため、混合領域MRで数多くの溶存気体が存在し、数多くのキャビテーションが混合領域MRで発生して高い洗浄能力で超音波洗浄処理を行うことができる。特に、本実施形態では、超音波印加液ULを脱気水で構成しているため、混合領域MRに到達するまでの超音波のエネルギー減衰は少なく、混合領域MRでの超音波洗浄をさらに効率的に行うことができる。
なお、上記実施形態では、制御ユニット30が基板Wの回転数を調節することで混合領域MRの位置を制御しているが、制御ユニット30が飽和水用流量調節機構53を制御することで飽和水SWの流量を調節し、混合領域MRの位置を制御することも可能である。また、制御ユニット30が脱気水用流量調節機構73を制御することで超音波印加液ULの流量を調節し、混合領域MRの位置を制御することも可能である。このように制御ユニット30が基板Wの回転数、飽和水SWの流量および超音波印加液ULの流量のうち少なくとも1つ以上を調節することで混合領域MRの位置を制御するように構成してもよく、いずれの場合も、制御ユニット30は本発明の「混合位置制御部」として機能する。また、飽和水SWの流量および超音波印加液ULの流量のうち少なくとも一方を調節することで混合領域MRの位置を制御する場合には、基板Wを静止させた状態で上記超音波洗浄処理を行ってもよい。これらの点については、後で説明する実施形態においても同様である。
図5は本発明にかかる基板洗浄装置の第2実施形態を示す図である。この第2実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は、飽和水ノズル41が基板Wの上方空間で表面Wfと平行に往復移動可能に配置され、制御ユニット30からの移動指令に応じてノズル移動機構80が飽和水ノズル41を往復移動させる。なお、その他の構成は第1実施形態と同一であるため、同一符号を付して構成説明を省略する。
第2実施形態では、第1実施形態と同様に、基板Wの表面Wfに液膜が形成された後で飽和水ノズル41のノズル口411から飽和水SWが吐出される。すると、飽和水ノズル41の直下位置で飽和水SWと超音波印加液ULとの混合領域MRが形成され、キャビテーションによる超音波洗浄処理が実行される。また、本実施形態では、飽和水ノズル41はノズル口411から飽和水SWを吐出した状態のまま基板Wの表面Wfと平行に移動する。このため、混合領域MRが基板Wの径方向に移動し、それに伴って超音波洗浄された表面領域が基板Wの表面全体に広がる。
以上のように、第2実施形態においても、超音波ノズル61を固定配置した状態のまま、超音波洗浄処理を行うことができ、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。なお、ここでは、飽和水ノズル41を表面中央部の上方位置から表面周縁部の上方位置に移動させる、つまり基板Wの径方向に走査させることで基板Wの表面全体を超音波洗浄しているが、基板Wの表面Wfの一部、つまり特定の洗浄対象領域を洗浄したい場合には、洗浄対象領域の上方位置に飽和水ノズル41を位置決めした後でノズル口411から飽和水SWを吐出し、当該洗浄対象領域に混合領域MRを形成すればよい。このように第2実施形態では、水平方向における飽和水ノズル41の位置決めによって基板Wの表面Wfでの飽和水SWの着液地点(図5中の符号PS)をピンポイントで制御することができ、任意の表面領域を超音波洗浄することができる。この場合、基板Wを回転させた状態のみならず、基板Wを静止させた状態で上記超音波洗浄処理を行ってもよい。この点については、次に説明する第3実施形態においても同様である。
また、飽和水ノズル41を位置決めした状態で飽和水ノズル41のノズル口411から吐出される飽和水SWの吐出流量を絞る、例えばノズル口411から飽和水SWが液滴状に吐出される程度に絞ると、飽和水SWの拡散を最小限に抑制することができる。その結果、混合領域MRのサイズを最小化し、微小な表面領域のみに対して超音波洗浄処理を施すことができる。
飽和水SWの拡散を抑制して混合領域MRの微小化を図るためには、例えば飽和水ノズル41のノズル口411を基板Wの表面Wfに形成されている超音波印加液ULの液膜に近接させて液跳ねを抑制するのが望ましい。この要求を満足するためには、飽和水ノズル41を鉛直方向に昇降自在に構成するとともにノズル移動機構80によって飽和水ノズル41を鉛直方向に位置決めするように構成するのが好適である。
図6は本発明にかかる基板洗浄装置の第3実施形態を示す図である。この第3実施形態が第2実施形態と大きく相違する点は、同図に示すように飽和水ノズル41が揺動可能に設けられ、制御ユニット30からの移動指令に応じてノズル移動機構80が飽和水ノズル41を揺動移動させて飽和水SWの着液地点PSを調節可能となっている点である。なお、その他の構成は第1実施形態および第2実施形態と同一であるため、同一符号を付して構成説明を省略する。
このように構成された第3実施形態においても、第1実施形態と同様に、基板Wの表面Wfに液膜が形成された後で飽和水ノズル41のノズル口411から飽和水SWが吐出される。すると、飽和水ノズル41の直下位置で飽和水SWと超音波印加液ULとの混合領域MRが形成され、キャビテーションによる超音波洗浄処理が実行される。また、本実施形態では、飽和水ノズル41はノズル口411から飽和水SWを吐出した状態のまま図6の紙面に対して垂直な方向に延びる揺動軸SA回りに揺動して着液地点PSを基板Wの径方向に変位させる。このため、混合領域MRが基板Wの径方向に移動し、それに伴って超音波洗浄された表面領域が基板Wの表面全体に広がる。
以上のように、第3実施形態においても、超音波ノズル61を固定配置した状態のまま、超音波洗浄処理を行うことができ、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。なお、ここでは、飽和水ノズル41を揺動軸SA回りに揺動させることで基板Wの表面全体を超音波洗浄しているが、基板Wの表面Wfの一部、つまり洗浄対象領域を洗浄したい場合には、ノズル口411が洗浄対象領域を向くように飽和水ノズル41を位置決めした後でノズル口411から飽和水SWを吐出し、当該洗浄対象領域に混合領域MRを形成すればよい。このように第3実施形態では、飽和水ノズル41の揺動姿勢の制御によって基板Wの表面Wfでの飽和水SWの着液地点PSをピンポイントで制御することができ、任意の表面領域を超音波洗浄することができる。
図7は本発明にかかる基板洗浄装置の第4実施形態を示す図である。この第4実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は、超音波洗浄処理の対象となる面(本発明の「一方主面」に相当)が基板Wの裏面Wbであるという点である。この第4実施形態では、供給管14の下端部が飽和水供給部50と接続されている。すなわち、飽和水供給部50では、配管51が供給管14とDIW供給源とを相互に接続するとともに、当該配管51に対してバルブ52、飽和水用流量調節機構53および気体濃度調節機構54が供給管14側から上記順序で介設されている。このため、制御ユニット30により設定された流量の飽和水SWが供給管14に圧送され、制御ユニット30からの開指令に応じてバルブ52が開くと、供給管14のノズル口141から吐出し、基板Wの裏面Wbの中央部に供給される。一方、制御ユニット30からの閉指令に応じてバルブ52が閉じると、供給管14への飽和水SWの圧送が停止される。その結果、供給管14のノズル口141からの飽和水SWの吐出も停止される。このように、第4実施形態では、供給管14が飽和水ノズルとして機能している。
ノズル口141の鉛直上方には、DIWノズル91が固定配置されている。このDIWノズル91は、その下方端部に設けられたノズル口911を基板Wの表面Wfの中央部に対向させて配置されている。また、DIWノズル91の上端部は配管92を介してDIW供給源と接続されるとともに、当該配管92に対してバルブ93が介設されている。このため、制御ユニット30からの開指令に応じてバルブ93が開くと、DIWノズル91のノズル口911からDIWが吐出し、基板Wの表面Wfの中央部に供給される。なお、その他の構成は第1実施形態と基本的に同一であるため、同一符号を付して構成説明を省略する。
このように構成された第4実施形態では、処理の開始前には、バルブ52、72、93はいずれも閉じられており、スピンチャック10は静止している。そして、基板搬送ロボット(図示省略)により1枚の基板Wがスピンチャック10に載置されチャックピン13により保持されると、バルブ72を開いて脱気水を超音波ノズル61に圧送し、ノズル口611から基板Wの裏面Wbの周縁部に向けて吐出する。これと同時に、バルブ93を開いてDIWをDIWノズル91に圧送し、ノズル口911から基板Wの表面Wfの中央部に向けて吐出する。なお、表面WfへのDIWの供給は乾燥処理前まで継続される。
そして、脱気水の液膜形成後に発振器63から発振信号を振動子613に出力して超音波印加液ULを基板Wの裏面Wbに供給する。これによって、超音波印加液ULの液膜が形成される。これに続いて、バルブ52を開いて飽和水SWを飽和水ノズル41に圧送し、ノズル口141から基板Wの裏面Wbの中央部に向けて吐出するとともに、チャック回転機構20によるスピンチャック10の回転駆動を開始する。この回転初期では、例えば図8Aに示すように、基板Wの回転中心近傍に混合領域MRが形成される。そして、当該混合領域MRで溶存気体DGと超音波とによってキャビテーションが発生し、混合領域MRに対応する裏面領域からパーティクルPTが効果的に除去される(超音波洗浄処理)。
また、回転数の調節によって混合領域MRが形成される位置を基板Wの径方向にシフトさせ、例えば図8Bに示すように超音波洗浄処理が実行される裏面領域を移動させる。こうした混合領域MRのシフトを、基板Wの裏面全面に対する洗浄処理の完了まで行う。なお、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、飽和水SWおよび超音波印加液ULの吐出流量は一定に維持されているが、回転数パターンを選択することで種々の態様で超音波洗浄処理を行うことができる。また、回転数の変化についても、その変化率を一定に設定してもよいし、裏面中央部と周縁部とで異ならせる、例えば表面中央部で比較的大きく、周縁部に進むにしたがって小さくなるように回転数を変化させてもよい。
こうして、基板Wの裏面全体に対して超音波洗浄処理が実行されると、発振器63が発振信号の出力を停止し、それに続いてバルブ52、72、93を閉じて飽和水SW、脱気水およびDIWの供給を停止して洗浄処理を終了する。また、洗浄処理の完了とともに、基板Wの表面Wfおよび裏面Wbに残るDIWを除去する乾燥処理を行った後でスピンチャック10の回転を停止する。そして、基板搬送ロボットが乾燥された基板Wをスピンチャック10から取り出し、別の装置へ搬出する。
以上のように、第4実施形態においても、超音波ノズル61を固定配置した状態のまま、基板Wの裏面全体を超音波洗浄することができ、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。また、基板Wの回転数を個別に設定することによって、例えば図8Aや図8Bに示すように、基板Wの裏面Wbの任意の領域を超音波洗浄することも可能である。
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば上記実施形態では、常に基板Wを回転させた状態で混合領域MRを形成して当該混合領域MRに対応する基板Wの表面領域や裏面領域を洗浄しているが、基板Wを回転させることは必須要件ではなく、飽和水SWや超音波印加液ULの吐出流量によって混合領域MRを位置決めする場合には、基板Wを静止状態のまま超音波洗浄処理を行うことも可能である。
また、上記実施形態では、超音波印加液ULおよび飽和水SWはともにDIWであり、DIWが本発明の「第1液体」および「第2液体」に相当している。つまり、上記実施形態で使用している「第1液体」および「第2液体」は同一組成を有している。ここで、DIWの代わりに、水素水やオゾン水などの機能水、SC1(ammonia-hydrogen peroxide mixture:アンモニア過酸化水素水)、SC2(hydrochloric acid/hydrogen peroxide mixture:塩酸過酸化水素水)、希塩酸、FPM(hydrofluoric acid-hydrogen peroxide mixture:ふっ酸/過酸化水素水溶液)、FOM(hydrofluoric acid-hydrogen ozone mixture: ふっ酸/オゾン水溶液)、HFE(hydrofluoroether:ハイドロフルオロエーテル)などの有機溶剤を上記「第1液体」および「第2液体」として用いてもよい。また、「第1液体」および「第2液体」として互いに異なる組成の液体を用いてもよく、上記した液体を適宜組み合わせて用いることができる。ただし、超音波ノズル61は振動子613を内蔵するため、振動子613の耐薬性を考慮すると、DIWを「第1液体」とするのが望ましい。
以上説明したように、上記実施形態においては、超音波ノズル61が本発明の「第1吐出部」の一例に相当している。また、基板Wの表面Wfに対して超音波洗浄処理を施す第1実施形態ないし第3実施形態においては基板Wの表面Wfが本発明の「基板の一方主面」に相当し、飽和水ノズル41が本発明の「第2吐出部」の一例に相当している。一方、基板Wの裏面Wbに対して超音波洗浄処理を施す第4実施形態においては基板Wの表面Wfが本発明の「基板の一方主面」に相当し、供給管14が本発明の「第2吐出部」の一例に相当している。また、スピンチャック10が本発明の「基板保持部」の一例に相当している。また、チャック回転機構20が本発明の「基板回転部」の一例に相当している。また、ノズル移動機構80が本発明の「移動部」の一例に相当している。
以上、具体的な実施形態を例示して説明してきたように、本発明は、例えば混合位置制御部が、第1吐出部からの超音波印加液の吐出流量および第2吐出部からの第2液体の吐出流量のうちの少なくとも一方を調節して混合領域の位置を制御するように構成してもよい。
また、基板を水平に保持する基板保持部と、基板保持部により保持された基板の回転中心を通る鉛直軸回りに基板保持部を回転させる基板回転部をさらに備え、混合位置制御部が、基板保持部に保持された基板Wの回転数を調節して混合領域の位置を制御するように構成してもよい。
また、第2吐出部を基板に対して移動させる移動部をさらに備え、混合位置制御部が移動部を制御することで一方主面での第2液体の着液地点を調節して混合領域の位置を制御するように構成してもよい。
また、混合位置制御部が着液地点を一方主面内で走査させるように構成してもよい。
また、スピンベースと、スピンベースに設けられる複数のチャックとを有し、一方主面をスピンベースと対向させながらスピンベースから鉛直上方に所定距離だけ離間させた状態で複数のチャックによって保持する基板保持部をさらに備え、第1吐出部が基板保持部に保持される基板の径方向外側下方に設けられ、第2吐出部がスピンベースの中央部に設けられてもよい。
また、基板保持部により保持された基板の回転中心を通る鉛直軸回りに基板保持部を回転させる基板回転部をさらに備え、混合位置制御部が、基板保持部に保持された基板Wの回転数を調節して混合領域の位置を制御するように構成してもよい。
さらに、第1液体と第2液体とが同一組成を有するように構成してもよい。