JP2017038618A - 改良型β−フルクトフラノシダーゼ - Google Patents
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Abstract
【課題】ニストースなどの副生成物が生成する割合を抑えてケストースを効率よく生成することができる改良型β−フルクトフラノシダーゼの提供。
【解決手段】特定の配列を有する野生型β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列と60%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるβ−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列に対して、アラインメントで前記の野生型β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列においてN末端から395番目の位置に相当するヒスチジン(H)を、アルギニン(R)またはリシン(K)に置換するアミノ酸変異を導入したアミノ酸配列からなる改良型β−フルクトフラノシダーゼ。
【選択図】図1
【解決手段】特定の配列を有する野生型β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列と60%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるβ−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列に対して、アラインメントで前記の野生型β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列においてN末端から395番目の位置に相当するヒスチジン(H)を、アルギニン(R)またはリシン(K)に置換するアミノ酸変異を導入したアミノ酸配列からなる改良型β−フルクトフラノシダーゼ。
【選択図】図1
Description
本発明は、改良型β−フルクトフラノシダーゼに関し、特に、ニストースなどの副生成物が生成することを効果的に抑えてケストースを効率よく大量に生成することができる改良型β−フルクトフラノシダーゼ、そのアミノ酸配列を含むポリペプチド、改良型β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNA、当該DNAを含む組換えベクター、当該DNAまたは当該組換えベクターを宿主に導入して得られる形質転換体、改良型β−フルクトフラノシダーゼの製造方法およびそれらを用いたケストースの製造方法に関する。
β−フルクトフラノシダーゼは、スクロースのフルクトースを認識して、スクロースをフルクトースとグルコースとに加水分解する活性(スクロース加水分解活性)を有する酵素である。β−フルクトフラノシダーゼの中には、加水分解によって生じたフルクトースをスクロースに転移させる活性(フルクトース転移活性)を有し、1分子のグルコースと2分子のフルクトースとが結合した3糖であるケストースを生成するものも存在する。
ケストースの中でも1−ケストースは、スクロース(砂糖)と似た甘味質であり、砂糖の三分の一程度の甘さを生じる一方で、砂糖の約半分のカロリーであること、摂取しても血糖値を上昇させにくいこと、アレルギー抑制機能を奏すること(特許文献1)などから、有用なオリゴ糖であることが知られている。1−ケストースを生成するβ−フルクトフラノシダーゼとしては、例えば、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)由来のβ−フルクトフラノシダーゼおよびそのアミノ酸配列にアミノ酸変異を導入した変異体のβ−フルクトフラノシダーゼが開示されている(特許文献2)。
β−フルクトフラノシダーゼを用いてケストースを製造する際には、通常、副生成物として4糖のニストースが生成する。ニストースはクロマトグラフィーにおいてケストースとの分離が困難であり、クロマトグラフィーによる分離精製工程を経ても反応液中に残存し易い。また、液中に存在する一定量以上のニストースは、晶析工程でのケストースの結晶化を阻害する。これらのことから、ケストースを効率的に製造するためにはニストースの生成を低減させることが必要である。そこで、ニストースなどの副生成物を生成する割合が小さく、効率的にケストースを生成することができるβ−フルクトフラノシダーゼが求められている。
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、ニストースなどの副生成物が生成する割合を抑えてケストースを効率よく大量に生成することができる改良型β−フルクトフラノシダーゼ、そのアミノ酸配列を含むポリペプチド、改良型β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNA、当該DNAを含む組換えベクター、当該DNAまたは当該組換えベクターを宿主に導入して得られる形質転換体、改良型β−フルクトフラノシダーゼの製造方法およびそれらを用いたケストースの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意研究の結果、Beijerinckia indica subsp.indica NBRC3744(以下「B.Indica」と略記する。)由来野生型β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列(配列番号2)と60%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるβ−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列に対して、アラインメントで前記配列番号2に示す野生型β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列のN末端から395番目の位置に相当するヒスチジン(H)を、アルギニン(R)またはリシン(K)に置換するアミノ酸変異を導入することにより、ニストースなどの副生成物の生成する割合が顕著に低下し、ケストースの生成する割合が増加して、ケストースの生成量が増加することを見出した。
また、前記配列番号2に示す野生型β−フルクトフラノシダーゼに対して、i)N末端から123番目のロイシン(L)をシステイン(C)に置換するアミノ酸変異、ii)N末端から395番目のヒスチジン(H)をアルギニン(R)またはリシン(K)に置換するアミノ酸変異、およびiii)N末端から473番目のフェニルアラニン(F)をチロシン(Y)に置換するアミノ酸変異のi)〜iii)のアミノ酸変異のうち、少なくとも1のアミノ酸変異を導入することにより、ニストースなどの副生成物の生成する割合が顕著に低下し、ケストースの生成する割合が増加して、ケストースの生成量が増加することを見出した。
また、前記配列番号2に示す野生型β−フルクトフラノシダーゼに対して、i)N末端から123番目のロイシン(L)をシステイン(C)に置換するアミノ酸変異およびiii)N末端から473番目のフェニルアラニン(F)をチロシン(Y)に置換するアミノ酸変異のi)およびiii)のアミノ酸変異のうち、少なくとも1のアミノ酸変異を導入することにより、ラクトスクロースの生成する割合およびラクトスクロースの生成量が増加することを見出した。
そこで、これらの知見に基づいて、下記の各発明を完成した。
そこで、これらの知見に基づいて、下記の各発明を完成した。
(1)本発明に係る改良型β−フルクトフラノシダーゼの一態様は、配列番号2に示す野生型β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列と60%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるβ−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列に対して、アラインメントで前記配列番号2に示す野生型β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列のN末端から395番目の位置に相当するヒスチジン(H)を、アルギニン(R)またはリシン(K)に置換するアミノ酸変異を導入したアミノ酸配列からなる。
(2)本発明に係る改良型β−フルクトフラノシダーゼのもう一つの態様は、下記(a)または(b)のアミノ酸配列からなる;(a)配列番号2に示す野生型β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列に対して、以下のi)〜iii)から選択される1または2以上のアミノ酸変異を導入したアミノ酸配列;i)N末端から123番目のロイシン(L)をシステイン(C)に置換するアミノ酸変異、ii)N末端から395番目のヒスチジン(H)をアルギニン(R)またはリシン(K)に置換するアミノ酸変異、iii)N末端から473番目のフェニルアラニン(F)をチロシン(Y)に置換するアミノ酸変異、(b)アミノ酸配列(a)において、アミノ酸変異が導入されたアミノ酸を除く1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつβ−フルクトフラノシダーゼ活性を有するアミノ酸配列。
(3)本発明に係るポリペプチドは、(1)または(2)に記載の改良型β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列を含む。
(4)本発明に係るDNAは、(1)または(2)に記載の改良型β−フルクトフラノシダーゼをコードする。
(5)本発明に係る組換えベクターは、(4)に記載のDNAを含む。
(6)本発明に係る形質転換体は、(4)に記載のDNAまたは(5)に記載の組換えベクターを宿主に導入して得られる、形質転換体である。
(7)本発明に係る形質転換体において、(4)に記載のDNAまたは(5)に記載の組換えベクターを導入する宿主は大腸菌であってもよい。
(8)本発明に係る改良型β−フルクトフラノシダーゼの製造方法は、(6)または(7)に記載の形質転換体を培養して得られる培養物から改良型β−フルクトフラノシダーゼを取得する工程を有する。
(9)本発明に係るケストースの製造方法は、(1)もしくは(2)に記載の改良型β−フルクトフラノシダーゼ、(6)もしくは(7)に記載の形質転換体または(6)もしくは(7)に記載の形質転換体を培養して得られる培養物とスクロースとを接触させる工程を有する。
本発明に係る改良型β−フルクトフラノシダーゼや本発明に係る形質転換体、本発明に係るケストースの製造方法によれば、ニストースなどの副生成物が生成する割合を抑えて、ケストースを効率よく大量に製造することができる。また、本発明に係るポリペプチドや本発明に係るDNA、本発明に係る組換えベクター、本発明に係る形質転換体、本発明に係る改良型β−フルクトフラノシダーゼの製造方法によれば、ニストースが生成する割合を抑えてケストースを効率よく大量に製造することができる改良型β−フルクトフラノシダーゼを得ることができる。
以下、本発明に係る改良型β−フルクトフラノシダーゼ、ポリペプチド、DNA、組換えベクター、形質転換体、改良型β−フルクトフラノシダーゼの製造方法およびケストースの製造方法について詳細に説明する。
ケストースは、通常、スクロースにフルクトースが結合して生成され、フルクトースが結合する位置により、1−ケストース、6−ケストースおよびネオケストースの3種類が生じうる。すなわち、1−ケストースはフルクトースがスクロース中のフルクトース単位にβ(2→1)結合して生成し、6−ケストースはフルクトースがスクロース中のフルクトース単位にβ(2→6)結合して生成し、ネオケストースはフルクトースがスクロース中のグルコース単位にβ(2→6)結合して生成する。また、ニストースは、フルクトースが1−ケストース中のフルクトース単位にβ(2→1)結合して生成する4糖である。
本発明における「ケストース」とは、1分子のグルコースと2分子のフルクトースとが結合した3糖を意味し、1−ケストース、6−ケストースおよびネオケストースを包含する。
また、ラクトスクロースは、フルクトース、グルコースおよびガラクトースが結合してなる3糖であり、化学的にはβ−D−フルクトフラノシル4−O−β−D−ガラクトピラノシル−α−D−グルコピラノシドまたは4G−ガラクトシルスクロースで示される。すなわち、その分子構造のなかに、スクロース(ショ糖)とラクトース(乳糖)の部分構造を有することを特徴としており、「乳果オリゴ糖」、「乳糖果糖オリゴ糖」とも呼ばれる。ラクトスクロースは、腸内のビフィズス菌を増やして便性・便通を改善することなどから、有用なオリゴ糖であることが知られている。
ラクトスクロースは、スクロースなどの末端にフルクトース残基を含む糖質およびラクトースにβーフルクトフラノシダーゼを作用させて、ラクトースにフルクトースを結合することにより生成する。ここで、「末端にフルクトース残基を含む糖質」としては、具体的には、例えば、スクロースなどの末端にフルクトース残基を含む二糖やケストースなどの末端にフルクトース残基を含むオリゴ糖、末端にフルクトース残基を含む多糖のほか、末端にフルクトース残基を含む糖アルコールや末端にフルクトース残基を含む配糖体などを挙げることができる。
なお、本発明において、「β−フルクトフラノシダーゼ」は、「フルクトシルトランスフェラーゼ」、「サッカラーゼ」、「β−D−フルクトフラノシダーゼ」、「インベルターゼ」、「インバーターゼ」または「インベルチン」と交換可能に用いられる場合がある。また、本発明における「野生型β−フルクトフラノシダーゼ」とは、遺伝子工学の手法を用いてアミノ酸変異を導入していないアミノ酸配列からなるβ−フルクトフラノシダーゼをいい、「改良型β−フルクトフラノシダーゼ」とは、野生型β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列に対して、1または2以上のアミノ酸変異を導入したアミノ酸配列からなるβ−フルクトフラノシダーゼをいう。
本発明に係る改良型β−フルクトフラノシダーゼの一態様は、配列番号2に示す野生型β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列と60%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるβ−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列に対して、アラインメントで配列番号2に示す野生型β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列のN末端から395番目の位置に相当するヒスチジン(H)を、アルギニン(R)またはリシン(K)に置換するアミノ酸変異を導入したアミノ酸配列からなる。
配列番号2に示す野生型β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列とそれ以外のアミノ酸配列との同一性は、常法に従って確認することができ、例えば、FASTA(http://www.genome.JP/tools/fasta/)、Basic local alignment search tool(BLAST;http://www.ncbi.nlm.nih.gov.)、Position−Specific Iterated BLAST(PSI−BLAST;http://www.ncbi.nlm.nih.gov.)などのプログラムを用いて確認することができる。なお、「同一性」とは一致性を指し、「identity」と交換可能に用いられる。
配列番号2に示す野生型β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列と60%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるβ−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列は、配列番号2のアミノ酸配列において、配列番号2のアミノ酸配列との同一性が60%未満とならない範囲で1または複数個のアミノ酸を欠失、置換、挿入または付加することにより得ることができる。また、常法に従い、Protein Information Resource(PIR)、SWISS−PROT、TrEMBL、Protein Research Foundation(PRF)、GenPept(NCBI Protein database)などのアミノ酸配列データベースから、FASTA(http://www.genome.JP/tools/fasta/)、Basic local alignment search tool(BLAST;http://www.ncbi.nlm.nih.gov.)、Position−Specific Iterated BLAST(PSI−BLAST;http://www.ncbi.nlm.nih.gov.)などのプログラムを用いて配列番号2のアミノ酸配列とのホモロジー検索をすることにより得ることができる。
配列番号2に示す野生型β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列と60%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるβ−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列は、細菌や酵母、カビ、植物などのいずれの生物に由来するβ−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列でもよい。配列番号2に示す野生型β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列と60%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるβ−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列として、具体的には、例えば、配列番号2のアミノ酸配列において、配列番号2のアミノ酸配列との同一性(以下、「所定の同一性」という場合がある。)が60%未満とならない範囲で1または複数個のアミノ酸を欠失、置換、挿入または付加したアミノ酸配列や、Beijerinckia indica subsp.indica ATCC9039由来β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列(GenBank:ACB95643.1;所定の同一性99%)、Burkholderia cenocepacia由来β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列(GenBank:CCE47348.1;所定の同一性77%)、Burkholderia phymatum STM815由来β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列(GenBank:ACC75109.1;所定の同一性75%)、Burkholderia vietnamiensis由来β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列(GenBank:ERJ38440.1;所定の同一性77%)、Burkholderia ambifaria AMMD由来β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列(GenBank:ACB66635.1;所定の同一性76%)、Burkholderia cepacia GG4由来β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列(GenBank:AFQ50734.1;所定の同一性76%)、Burkholderia graminis由来β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列(GenBank:EDT09014.1;所定の同一性74%)、Cupriavidus sp. HPC(L)由来β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列(GenBank:ESJ23133.1;所定の同一性70%)、Burkholderia pseudomallei 1106a由来β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列(GenBank:AFR18711.1;所定の同一性73%)、Gluconacetobacter diazotrophicus SRT4由来β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列(GenBank:AAB36606.1;所定の同一性66%)などを挙げることができる。
ここで、本発明において「配列番号2のアミノ酸配列において、配列番号2のアミノ酸配列との同一性が60%未満とならない範囲で1または複数個のアミノ酸を欠失、置換、挿入または付加したアミノ酸配列」という場合の、欠失、置換、挿入または付加するアミノ酸の個数は、例えば、1〜200個、1〜180個、1〜160個、1〜140個、1〜120個、1〜100個、1〜80個、好ましくは1〜60個、より好ましくは1〜50個、さらに好ましくは1〜40個、よりさらに好ましくは1〜30個を挙げることができる。
また、本発明に係る「配列番号2に示す野生型β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列と同一性を有するアミノ酸配列」において、同一性の値は、60%以上を挙げることができるほか、例えば、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上などを挙げることができる。「配列番号2に示す野生型β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列のうち、シグナル配列(配列番号2の1〜28番目に相当)を除いたアミノ酸配列(配列番号2の29〜534番目に相当)」との同一性の値としては、例えば、65%以上、66%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上などを挙げることができる。
アラインメントは、「シーケンスアラインメント」や「アライメント」と呼ばれる場合があるが、同義である。本発明において、アラインメントは常法に従って行うことができ、例えば、FASTA(http://www.genome.JP/tools/fasta/)、Basic local alignment search tool(BLAST;http://www.ncbi.nlm.nih.gov.)、Position−Specific Iterated BLAST(PSI−BLAST;http://www.ncbi.nlm.nih.gov.)、CLUSTALW(http://www.genome.jp/ja/)、MAFFT(http://www.genome.jp/ja/)などのプログラムを用いて行うことができる。
次に、本発明に係る改良型β−フルクトフラノシダーゼのもう一つの態様は、下記(a)または(b)のアミノ酸配列からなる;
(a)配列番号2に示す野生型β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列に対して、以下のi)〜iii)から選択される1または2以上のアミノ酸変異を導入したアミノ酸配列;
i)N末端から123番目のロイシン(L)をシステイン(C)に置換するアミノ酸変異、
ii)N末端から395番目のヒスチジン(H)をアルギニン(R)またはリシン(K)に置換するアミノ酸変異、
iii)N末端から473番目のフェニルアラニン(F)をチロシン(Y)に置換するアミノ酸変異、
(b)アミノ酸配列(a)において、アミノ酸変異が導入されたアミノ酸を除く1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつβ−フルクトフラノシダーゼ活性を有するアミノ酸配列。
(a)配列番号2に示す野生型β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列に対して、以下のi)〜iii)から選択される1または2以上のアミノ酸変異を導入したアミノ酸配列;
i)N末端から123番目のロイシン(L)をシステイン(C)に置換するアミノ酸変異、
ii)N末端から395番目のヒスチジン(H)をアルギニン(R)またはリシン(K)に置換するアミノ酸変異、
iii)N末端から473番目のフェニルアラニン(F)をチロシン(Y)に置換するアミノ酸変異、
(b)アミノ酸配列(a)において、アミノ酸変異が導入されたアミノ酸を除く1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつβ−フルクトフラノシダーゼ活性を有するアミノ酸配列。
上記(b)の「1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、もしくは付加されたアミノ酸配列」とは、例えば、1〜30個、1〜20個、好ましくは1〜15個、より好ましくは1〜10個、よりさらに好ましくは1〜5個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を意味する。
本発明に係る改良型β−フルクトフラノシダーゼは、いずれも野生型β−フルクトフラノシダーゼに比べ、ケストースの生成量が増加し、ニストースなどの副生物が生成する割合が顕著に低下するという特徴を有する。
また、本発明に係る改良型β−フルクトフラノシダーゼが、下記(c)または(d)のアミノ酸配列からなる場合は、野生型β−フルクトフラノシダーゼに比べ、ラクトスクロースを生成する割合および生成量が増加するという特徴を有する。
(c)配列番号2に示す野生型β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列に対して、以下のi)およびiii)から選択される1または2のアミノ酸変異を導入したアミノ酸配列;
i)N末端から123番目のロイシン(L)をシステイン(C)に置換するアミノ酸変異、
iii)N末端から473番目のフェニルアラニン(F)をチロシン(Y)に置換するアミノ酸変異、
(d)アミノ酸配列(a)において、アミノ酸変異が導入されたアミノ酸を除く1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつβ−フルクトフラノシダーゼ活性を有するアミノ酸配列。
(c)配列番号2に示す野生型β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列に対して、以下のi)およびiii)から選択される1または2のアミノ酸変異を導入したアミノ酸配列;
i)N末端から123番目のロイシン(L)をシステイン(C)に置換するアミノ酸変異、
iii)N末端から473番目のフェニルアラニン(F)をチロシン(Y)に置換するアミノ酸変異、
(d)アミノ酸配列(a)において、アミノ酸変異が導入されたアミノ酸を除く1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつβ−フルクトフラノシダーゼ活性を有するアミノ酸配列。
本発明に係る改良型β−フルクトフラノシダーゼは、常法に従って得ることができ、そのような方法としては、例えば、化学合成する方法や、遺伝子組換え技術による方法を挙げることができる。化学合成する方法では、例えば、本発明に係る改良型β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列情報に基づいて、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t−ブチルオキシカルボニル法)などの化学合成法に従って本発明に係る改良型β−フルクトフラノシダーゼを合成することができる他、各種の市販のペプチド合成機を利用して合成することもできる。
また、遺伝子組換え技術による方法では、本発明に係る改良型β−フルクトフラノシダーゼを好適な発現系にて発現させることにより、本発明に係る改良型β−フルクトフラノシダーゼを得ることができる。すなわち、本発明に係る改良型β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNAを適当な宿主に導入して形質転換体を得る。あるいは、後述する実施例3および実施例4に示すように、本発明に係る改良型β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNAを、適当なベクターに挿入して組換えベクターを得た後、その組換えベクターを適当な宿主に導入して形質転換体を得る。そして、得られた形質転換体を培養して改良型β−フルクトフラノシダーゼを発現させることにより、本発明に係る改良型β−フルクトフラノシダーゼを得ることができる。
ここで、本発明に係る改良型β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNAは、市販されている種々のDNA合成機を用いて合成することができるほか、野生型β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNAや改良型β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNAを鋳型として、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行うことにより得ることができる。
例えば、アミノ酸変異を導入したアミノ酸配列からなる改良型β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNAを得る場合は、後述する実施例3および実施例4に示すように、まず、導入するアミノ酸変異をコードするDNAプライマーを設計し、そのDNAプライマーを用いて、野生型β−フルクトフラノシダーゼまたは当該アミノ酸変異を導入していない改良型β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNAを鋳型として、PCRを行うことにより得ることができる。
また、上記(b)のアミノ酸配列からなる改良型β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNAもまた、PCRにより得ることができる。すなわち、まず、アミノ酸配列(a)において、アミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加された箇所に相当するアミノ酸配列をコードするDNAプライマーを設計し、そのDNAプライマーを用いて、アミノ酸配列(a)をコードするDNAを鋳型として、PCRを行うことにより得ることができる。
本発明において、あるタンパク質がβ−フルクトフラノシダーゼ活性を有するか否かは、常法に従い確認することができ、例えば、後述する実施例2(1)[1−3]、実施例2(2)[2−1]〈2−1−3〉および実施例3(1)[1−3]に示すように、当該タンパク質をスクロースを含む反応液中でインキュベートし、または当該タンパク質を発現させた形質転換体をスクロースを含む反応液中で培養した後、その反応液のケストース含有量を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などにより測定する。その結果、ケストースの含有量が有意に大きければ、当該タンパク質はβ−フルクトフラノシダーゼ活性を有すると判断することができる。
また、本発明は、改良型β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列を含むポリペプチドを提供する。なお、本発明に係るポリペプチドにおいて、上述した本発明に係る改良型β−フルクトフラノシダーゼと同じまたは相当する構成については、再度の説明を省略する。
本発明に係るポリペプチドは、本発明に係る改良型β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列を含む限り、その配列長は特に限定されず、本発明に係る改良型β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列のみからなるものでもよく、本発明に係る改良型β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列のアミノ末端および/またはカルボキシル末端に、1もしくは複数個のアミノ酸残基が付加されたアミノ酸配列からなるものでもよい。また、本発明に係るポリペプチドは、上述した本発明に係る改良型β−フルクトフラノシダーゼを得る方法と同様の方法により得ることができる。
次に、本発明は、改良型β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNAを提供する。本発明に係る改良型β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNAにおいて、上述した本発明に係る改良型β−フルクトフラノシダーゼおよびポリペプチドと同じまたは相当する構成については、再度の説明を省略する。
また、本発明は、改良型β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNAを含む組換えベクターを提供する。なお、本発明に係る組換えベクターにおいて、上述した本発明に係る改良型β−フルクトフラノシダーゼ、ポリペプチドおよびDNAと同じまたは相当する構成については、再度の説明を省略する。
本発明に係る組換えベクターは、例えば、本発明に係る改良型β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNAをベクターに挿入することにより得ることができる。DNAのベクターへの挿入は、常法に従って行うことができ、例えば、DNAと線状化したベクターのDNA断片とをライゲーションすることにより行うことができる。ここで、ベクターとしては、例えば、ファージベクターやプラスミドベクター、コスミド、ファージミドなどを挙げることができ、宿主や操作性などに応じて適宜選択することができる。また、本発明に係る組換えベクターは、本発明に係る改良型β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNAのほかに、薬剤耐性マーカー遺伝子や栄養要求マーカー遺伝子などの形質転換体の選択マーカー遺伝子、改良型β−フルクトフラノシダーゼの発現に必要なプロモーター、転写開始信号、リボゾーム結合部位、翻訳停止シグナル、転写終結信号などの転写調節信号や翻訳調節信号などを含むものであってもよい。
また、本発明は、形質転換体も提供する。なお、本発明に係る形質転換体において、上述した本発明に係る改良型β−フルクトフラノシダーゼ、ポリペプチド、DNAおよび組換えベクターと同じまたは相当する構成については、再度の説明を省略する。
本発明に係る形質転換体は、改良型β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNAまたは本発明に係る改良型β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNAを含む組換えベクターを宿主に導入して得られる。ここで、宿主としては、例えば、大腸菌や枯草菌などの細菌、酵母、カビ、糸状菌などを挙げることができ、組換えベクターの種類や操作性などに応じて適宜選択することができる。DNAや組換えベクターの宿主への導入(形質転換)は常法に従って行うことができ、例えば、プラスミドを用いた組換えベクターを大腸菌に導入する場合であれば、大腸菌のコンピテントセルに組換えベクターを加えて氷上で30分間静置し、続いて42℃のウォーターバスに入れて45秒間静置した後、氷上で2分間静置し、その後、培地を加えて、37℃で1時間振とうすることにより行うことができる。また、宿主の染色体に直接目的のDNAを導入するには、相同組換え法などを用いることができる。
次に、本発明は、改良型β−フルクトフラノシダーゼの製造方法を提供する。本発明に係る改良型β−フルクトフラノシダーゼの製造方法は、本発明に係る形質転換体を培養して得られる培養物から改良型β−フルクトフラノシダーゼを取得する工程を有する。なお、本発明に係る改良型β−フルクトフラノシダーゼの製造方法において、上述した本発明に係る改良型β−フルクトフラノシダーゼ、ポリペプチド、DNA、組換えベクターおよび形質転換体と同じまたは相当する構成については、再度の説明を省略する。
本発明に係る形質転換体を培養して得られる培養物から改良型β−フルクトフラノシダーゼを取得する工程において、改良型β−フルクトフラノシダーゼを取得する方法は、形質転換体の態様などに応じて適宜選択することができる。具体的には、形質転換体を培養して得られる培養物をそのまま改良型β−フルクトフラノシダーゼとして取得してもよく、培養物から改良型β−フルクトフラノシダーゼを精製して取得してもよい。
形質転換体を培養して得られる培養物をそのまま改良型β−フルクトフラノシダーゼとして取得する方法としては、例えば、改良型β−フルクトフラノシダーゼが形質転換体の細胞表面あるいは細胞内部に発現されるようにDNAあるいは組換えベクターを設計した場合は、培養物を遠心分離に供して形質転換体を回収し、これをそのまま改良型βフルクトフラノシダーゼとして取得する方法や、回収した形質転換体を破砕して、これを改良型β−フルクトフラノシダーゼとして取得する方法を挙げることができる。
培養物から改良型β−フルクトフラノシダーゼを精製する方法としては、例えば、改良型β−フルクトフラノシダーゼが形質転換体の外部に分泌されるようにDNAあるいは組換えベクターを設計した場合は、培養物を遠心分離に供して培養上清を回収することにより改良型β−フルクトフラノシダーゼを精製することができる。また、改良型β−フルクトフラノシダーゼが形質転換体の内部に発現される場合は、培養物を遠心分離に供して沈殿させた形質転換体を回収し、これを、緩衝液中に懸濁、凍結融解、超音波処理または磨砕するなどして形質転換体を破砕した後、遠心分離に供して上清を回収することにより改良型β−フルクトフラノシダーゼを精製することができる。その他、精製する方法としては、培養物を熱処理、塩沈澱、溶媒沈澱、透析、限外ろ過、ゲルろ過、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、等電点電気泳動などに供する方法を挙げることができる。
また、本発明は、ケストースの製造方法を提供する。本発明に係るケストースの製造方法は、本発明に係る改良型β−フルクトフラノシダーゼ、本発明に係る形質転換体または本発明に係る形質転換体を培養して得られる培養物とスクロースとを接触させる工程を有する。なお、本発明に係るケストースの製造方法において、上述した本発明に係る改良型β−フルクトフラノシダーゼ、ポリペプチド、DNA、組換えベクター、形質転換体および改良型β−フルクトフラノシダーゼの製造方法と同じまたは相当する構成については、再度の説明を省略する。
本発明に係る改良型β−フルクトフラノシダーゼとスクロースとを接触させる方法としては、例えば、改良型β−フルクトフラノシダーゼをスクロースを含む溶液に添加し、20℃〜60℃で20時間程度静置する方法を挙げることができる。また、本発明に係る形質転換体とスクロースとを接触させる方法としては、例えば、宿主が大腸菌の場合は、本発明に係る形質転換体をスクロースを含む溶液に添加し、50℃で数日間振盪培養する方法を挙げることができる。
また、本発明に係る形質転換体を培養して得られる培養物とスクロースとを接触させる方法としては、例えば、本発明に係る形質転換体を培養して得られる培養物をスクロースを含む溶液に添加し、20℃〜60℃で20時間程度静置あるいは振盪する方法を挙げることができる。ここで、本発明に係る培養物は、破砕、磨砕、緩衝液への懸濁、凍結融解、超音波処理、遠心分離、熱処理、塩沈澱、溶媒沈澱、透析、限外ろ過、ゲルろ過、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、等電点電気泳動などの何らかの処理に供したものでもよく、処理に供していないものでもよい。
最後に、本発明はラクトスクロースの製造方法を提供する。本発明に係るラクトスクロースの製造方法は、下記(I)の改良型β−フルクトフラノシダーゼ、(II)の形質転換体または(III)の培養物と、末端にフルクトース残基を含む糖質およびラクトースとを接触させる工程を有する;
(I)下記(c)または(d)のアミノ酸配列からなる改良型β−フルクトフラノシダーゼ
(c)配列番号2に示す野生型β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列に対して、以下のi)およびiii)から選択される1または2のアミノ酸変異を導入したアミノ酸配列;
i)N末端から123番目のロイシン(L)をシステイン(C)に置換するアミノ酸変異、
iii)N末端から473番目のフェニルアラニン(F)をチロシン(Y)に置換するアミノ酸変異、
(d)アミノ酸配列(a)において、アミノ酸変異が導入されたアミノ酸を除く1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつβ−フルクトフラノシダーゼ活性を有するアミノ酸配列、
(II)上記(I)の改良型β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNA、または、当該DNAを含む組換えベクターを宿主に導入して得られる、形質転換体、
(III)上記(II)の形質転換体を培養して得られる培養物。
なお、本発明に係るラクトスクロースの製造方法において、上述した本発明に係る改良型β−フルクトフラノシダーゼ、ポリペプチド、DNA、組換えベクター、形質転換体、改良型β−フルクトフラノシダーゼの製造方法およびケストースの製造方法と同じまたは相当する構成については、再度の説明を省略する。
(I)下記(c)または(d)のアミノ酸配列からなる改良型β−フルクトフラノシダーゼ
(c)配列番号2に示す野生型β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列に対して、以下のi)およびiii)から選択される1または2のアミノ酸変異を導入したアミノ酸配列;
i)N末端から123番目のロイシン(L)をシステイン(C)に置換するアミノ酸変異、
iii)N末端から473番目のフェニルアラニン(F)をチロシン(Y)に置換するアミノ酸変異、
(d)アミノ酸配列(a)において、アミノ酸変異が導入されたアミノ酸を除く1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつβ−フルクトフラノシダーゼ活性を有するアミノ酸配列、
(II)上記(I)の改良型β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNA、または、当該DNAを含む組換えベクターを宿主に導入して得られる、形質転換体、
(III)上記(II)の形質転換体を培養して得られる培養物。
なお、本発明に係るラクトスクロースの製造方法において、上述した本発明に係る改良型β−フルクトフラノシダーゼ、ポリペプチド、DNA、組換えベクター、形質転換体、改良型β−フルクトフラノシダーゼの製造方法およびケストースの製造方法と同じまたは相当する構成については、再度の説明を省略する。
(I)の改良型β−フルクトフラノシダーゼと末端にフルクトース残基を含む糖質およびラクトースとを接触させる方法としては、例えば(I)の改良型β−フルクトフラノシダーゼを、末端にフルクトース残基を含む糖質およびラクトースを含む溶液に添加し、20℃〜60℃で20時間程度静置する方法を挙げることができる。また、(II)の形質転換体と末端にフルクトース残基を含む糖質およびラクトースとを接触させる方法としては、例えば、宿主が大腸菌の場合は、本発明に係る形質転換体を、末端にフルクトース残基を含む糖質およびラクトースを含む溶液に添加し、50℃で数日間振盪培養する方法を挙げることができる。
また、(III)の培養物と末端にフルクトース残基を含む糖質およびラクトースとを接触させる方法としては、例えば、(III)の培養物を、末端にフルクトース残基を含む糖質およびラクトースを含む溶液に添加し、20℃〜60℃で20時間程度静置あるいは振盪する方法を挙げることができる。
本発明に係るケストースの製造方法やラクトスクロースの製造方法には、本発明に係るケストースの製造方法やラクトスクロースの製造方法の特徴を損なわない限り、他の工程を有してもよく、例えば、クロマトグラフィーによるケストースの分離工程や煎糖などの結晶化工程、乾燥工程、洗浄工程、濾過工程、殺菌工程、食品添加物を添加する工程などを有してもよい。
以下、本発明に係る改良型β−フルクトフラノシダーゼ、ポリペプチド、DNA、組換えベクター、形質転換体、改良型β−フルクトフラノシダーゼの製造方法、ケストースの製造方法およびラクトスクロースの製造方法について、各実施例に基づいて説明する。なお、本発明の技術的範囲は、これらの実施例によって示される特徴に限定されない。
<実施例1> B.Indica由来野生型β−フルクトフラノシダーゼの塩基配列の決定
Beijerinckia indica subsp.indica NBRC3744(以下「B.Indica」と略記する。)のβ−フルクトフラノシダーゼのクローニングを行った。具体的には、まず、B.IndicaのゲノムDNAを常法に従って抽出した。続いて、下記配列番号3および配列番号4のプライマーを設計した。続いて、下記の条件でポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction;PCR)を行うことにより、B.Indica由来野生型β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNAを増幅した。また、B.Indica由来野生型β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNAについて、常法に従って全長の塩基配列を決定した。B.Indica由来野生型β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNAの全長の塩基配列を配列番号1に、また、それにコードされるB.Indica由来野生型β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列を配列番号2に、それぞれ示す。
Beijerinckia indica subsp.indica NBRC3744(以下「B.Indica」と略記する。)のβ−フルクトフラノシダーゼのクローニングを行った。具体的には、まず、B.IndicaのゲノムDNAを常法に従って抽出した。続いて、下記配列番号3および配列番号4のプライマーを設計した。続いて、下記の条件でポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction;PCR)を行うことにより、B.Indica由来野生型β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNAを増幅した。また、B.Indica由来野生型β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNAについて、常法に従って全長の塩基配列を決定した。B.Indica由来野生型β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNAの全長の塩基配列を配列番号1に、また、それにコードされるB.Indica由来野生型β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列を配列番号2に、それぞれ示す。
《B.Indica由来野生型β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNA増幅用PCRの条件》
鋳型;B.IndicaのゲノムDNA
フォワードプライマー;5’−atggcaagtcgatcgtttaatgtttgtatac−3’(配列番号3)
リバースプライマー;5’−tttaccagactcgagttactggccgttcgtgac−3’(配列番号4)
PCR用酵素;KOD−Plus−(東洋紡社)
反応条件;95℃で10秒、60℃で20秒および68℃で2分を1サイクルとして30サイクル。
鋳型;B.IndicaのゲノムDNA
フォワードプライマー;5’−atggcaagtcgatcgtttaatgtttgtatac−3’(配列番号3)
リバースプライマー;5’−tttaccagactcgagttactggccgttcgtgac−3’(配列番号4)
PCR用酵素;KOD−Plus−(東洋紡社)
反応条件;95℃で10秒、60℃で20秒および68℃で2分を1サイクルとして30サイクル。
続いて、Beijerinckia indica subsp.indica ATCC9039(ゲノムDNA;GenBank:CP001016.1)のβ−フルクトフラノシダーゼをコードするDNAの塩基配列を参考に、SignalP4.1サーバー(http://www.cbs.dtu.dk/services/SignalP/)を用いてシグナル配列を予測した。その結果、B.Indica由来野生型β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列(配列番号2)において、シグナル配列は1〜28番目に相当することが明らかになった。
<実施例2>β−フルクトフラノシダーゼ発現系の構築
(1)大腸菌菌体内発現系
[1−1]組換えベクターの構築
まず、下記の条件でPCRを行うことにより、B.Indica由来野生型β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNAを増幅した。
《B.Indica由来野生型β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNA増幅用PCRの条件》
鋳型;B.IndicaのゲノムDNA
フォワードプライマー;5’−ccgcgcggcagccatggttacccgataccgactccgcattcgggacaagcctatgatcc−3’(配列番号5)
リバースプライマー;5’−gtggtggtgctcgagttactggccgttcgtgacaccatggccattaccttggccaagcgcgggaagat−3’(配列番号6)
PCR用酵素;KOD−Plus−(東洋紡社)
反応条件;95℃で10秒、60℃で20秒および68℃で2分を1サイクルとして30サイクル。
(1)大腸菌菌体内発現系
[1−1]組換えベクターの構築
まず、下記の条件でPCRを行うことにより、B.Indica由来野生型β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNAを増幅した。
《B.Indica由来野生型β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNA増幅用PCRの条件》
鋳型;B.IndicaのゲノムDNA
フォワードプライマー;5’−ccgcgcggcagccatggttacccgataccgactccgcattcgggacaagcctatgatcc−3’(配列番号5)
リバースプライマー;5’−gtggtggtgctcgagttactggccgttcgtgacaccatggccattaccttggccaagcgcgggaagat−3’(配列番号6)
PCR用酵素;KOD−Plus−(東洋紡社)
反応条件;95℃で10秒、60℃で20秒および68℃で2分を1サイクルとして30サイクル。
続いて、下記の条件でPCRを行うことにより、pET28aプラスミドのDNAを増幅した。
《pET28aプラスミドのDNA増幅用PCRの条件》
鋳型;pET28aプラスミド(Merck社)
フォワードプライマー;5’−ctcgagcaccaccaccaccaccactga−3’(配列番号7)
リバースプライマー;5’−atggctgccgcgcggcaccaggccgct −3’(配列番号8)
PCR用酵素;KOD−Plus−(東洋紡社)
反応条件;95℃で10秒、60℃で20秒および68℃で6分を1サイクルとして30サイクル。
《pET28aプラスミドのDNA増幅用PCRの条件》
鋳型;pET28aプラスミド(Merck社)
フォワードプライマー;5’−ctcgagcaccaccaccaccaccactga−3’(配列番号7)
リバースプライマー;5’−atggctgccgcgcggcaccaggccgct −3’(配列番号8)
PCR用酵素;KOD−Plus−(東洋紡社)
反応条件;95℃で10秒、60℃で20秒および68℃で6分を1サイクルとして30サイクル。
増幅したB.Indica由来野生型β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNA断片とpET28aプラスミドのDNA断片とを、In−Fusion HD Cloning Kit(タカラバイオ社)を用いて連結することにより、pET28aプラスミドにB.Indica由来野生型β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNAを挿入し、これをpET28a−indica組換えベクターとした。
[1−2]形質転換および形質転換体の培養と回収
pET28a−indica組換えベクターをE.coli BL21(DE3)コンピテントセル(コスモバイオ社)に導入して、形質転換体として組換え大腸菌を得た。これを37℃で20時間プレート培養した後、組換え大腸菌のクローンをピックアップしてM9 SEED培地1mLに植菌し、30℃、220rpmで18時間振盪培養した。続いて、培養物のうち10μLをM9 Main培地2mLに植え継ぎ、25℃、220rpmで24時間振盪培養した。その後、培養物を3500rpmで10分間遠心分離することにより組換え大腸菌を回収した。M9 SEED培地およびM9 Main培地の組成を以下に示す。
pET28a−indica組換えベクターをE.coli BL21(DE3)コンピテントセル(コスモバイオ社)に導入して、形質転換体として組換え大腸菌を得た。これを37℃で20時間プレート培養した後、組換え大腸菌のクローンをピックアップしてM9 SEED培地1mLに植菌し、30℃、220rpmで18時間振盪培養した。続いて、培養物のうち10μLをM9 Main培地2mLに植え継ぎ、25℃、220rpmで24時間振盪培養した。その後、培養物を3500rpmで10分間遠心分離することにより組換え大腸菌を回収した。M9 SEED培地およびM9 Main培地の組成を以下に示す。
M9 SEED培地(計100mL);水 72mL、5×M9塩 20mL、20% カザミノ酸 5mL、20% D−グルコース 2mL、2mg/mL チミン 1mL、50mM CaCl2 0.2mL、2.5M MgCl2 40μL、100mg/mL FeSO4 28μL、25mg/mL カナマイシン塩 120μL
M9 Main培地(計100mL);水 67mL、5×M9塩 20mL、20% カザミノ酸 5mL、2mg/mL チミン 1mL、50mM CaCl2 0.2mL、100mg/mL FeSO4 28μL、Overnight Express Autoinduction System 1(O.N.E.;Merck社)Sol.1 2mL、O.N.E.Sol.2 5mL、O.N.E.Sol.3 100μL、25mg/mL カナマイシン塩 120μL
M9 Main培地(計100mL);水 67mL、5×M9塩 20mL、20% カザミノ酸 5mL、2mg/mL チミン 1mL、50mM CaCl2 0.2mL、100mg/mL FeSO4 28μL、Overnight Express Autoinduction System 1(O.N.E.;Merck社)Sol.1 2mL、O.N.E.Sol.2 5mL、O.N.E.Sol.3 100μL、25mg/mL カナマイシン塩 120μL
[1−3]β−フルクトフラノシダーゼ活性の確認
本実施例2(1)[1−2]の組換え大腸菌にBugBuster(Novagen社)0.5mLを加えて37℃で30分静置することにより菌体を破砕してタンパク質を抽出した。その後、12000rpmで30分間遠心分離を行って上清を回収し、これを粗β−フルクトフラノシダーゼ液とした。続いて、下記の組成のケストース生成反応液を調製して、37℃または50℃で22時間静置することによりケストースの生成反応を行った。
《ケストース生成反応液の組成》
20(w/w)% スクロース水溶液;450μL
0.2M リン酸バッファー;25μL
粗β−フルクトフラノシダーゼ液; 25μL
本実施例2(1)[1−2]の組換え大腸菌にBugBuster(Novagen社)0.5mLを加えて37℃で30分静置することにより菌体を破砕してタンパク質を抽出した。その後、12000rpmで30分間遠心分離を行って上清を回収し、これを粗β−フルクトフラノシダーゼ液とした。続いて、下記の組成のケストース生成反応液を調製して、37℃または50℃で22時間静置することによりケストースの生成反応を行った。
《ケストース生成反応液の組成》
20(w/w)% スクロース水溶液;450μL
0.2M リン酸バッファー;25μL
粗β−フルクトフラノシダーゼ液; 25μL
その後、ケストース生成反応液を下記の条件でHPLCに供して、ケストース生成反応液に含まれる各糖(フルクトース、グルコース、スクロース、ケストース、ニストースおよびその他の糖)の割合ならびにケストースおよびニストースの量を確認した。各糖の割合は、検出された全ピークの面積の総和に対する各ピークの面積の割合として、百分率で算出した。また、ケストースおよびニストースの量は、ケストース生成反応液のスクロースの質量にケストースおよびニストースのそれぞれの割合を乗じて算出した。
《HPLCの条件》
カラム;Cosmosil Sugar−D 4.6×150mm
移動相;A:H2O、B:75%アセトニトリル水溶液(0〜6分、8〜11分)、50%アセトニトリル水溶液(6〜8分)
流速;1.5mL/分
注入量;2.5μL
温度;25℃
検出;コロナ荷電化粒子検出器(CAD;日本ダイオネクス社)、レンジ:500pA
《HPLCの条件》
カラム;Cosmosil Sugar−D 4.6×150mm
移動相;A:H2O、B:75%アセトニトリル水溶液(0〜6分、8〜11分)、50%アセトニトリル水溶液(6〜8分)
流速;1.5mL/分
注入量;2.5μL
温度;25℃
検出;コロナ荷電化粒子検出器(CAD;日本ダイオネクス社)、レンジ:500pA
その結果、ケストース生成反応液に含まれるケストースは検出限界以下ないしごく微量であったことから、ケストースがほとんど生成しなかったことが明らかになった。この結果から、β−フルクトフラノシダーゼの大腸菌菌体内発現系は、ケストース生成に不適であることが示された。
(2)大腸菌細胞表面発現系
[2−1]PgsAアンカータンパク質による細胞表面提示
〈2−1−1〉組換えベクターの構築
下記の条件でPCRを行うことにより、Bacillus subtilis(IAM1026、ATCC9466)のPgsAアンカータンパク質(GenBank:AB016245.1)をコードするDNAを増幅した。得られたPCR産物を常法に従って制限酵素NdeIおよびBglIIで消化し、これをPgsA−DNA断片とした。
《PgsAアンカータンパク質をコードするDNA増幅用PCRの条件》
鋳型;Bacillus subtilis(IAM1026、ATCC9466)のゲノムDNA
フォワードプライマー(下線はNdeIサイトを示す);5’−aaacatatgaaaaaagaactgagctttcatg−3’(配列番号9)
リバースプライマー(下線はBglIIサイトを示す);5’−aaaagatcttttagattttagtttgtcactatg−3’(配列番号10)
PCR用酵素;KOD−Plus−(東洋紡社)
反応条件;95℃で10秒、60℃で20秒および68℃で2分を1サイクルとして30サイクル。
[2−1]PgsAアンカータンパク質による細胞表面提示
〈2−1−1〉組換えベクターの構築
下記の条件でPCRを行うことにより、Bacillus subtilis(IAM1026、ATCC9466)のPgsAアンカータンパク質(GenBank:AB016245.1)をコードするDNAを増幅した。得られたPCR産物を常法に従って制限酵素NdeIおよびBglIIで消化し、これをPgsA−DNA断片とした。
《PgsAアンカータンパク質をコードするDNA増幅用PCRの条件》
鋳型;Bacillus subtilis(IAM1026、ATCC9466)のゲノムDNA
フォワードプライマー(下線はNdeIサイトを示す);5’−aaacatatgaaaaaagaactgagctttcatg−3’(配列番号9)
リバースプライマー(下線はBglIIサイトを示す);5’−aaaagatcttttagattttagtttgtcactatg−3’(配列番号10)
PCR用酵素;KOD−Plus−(東洋紡社)
反応条件;95℃で10秒、60℃で20秒および68℃で2分を1サイクルとして30サイクル。
また、PgsA−DNA断片について、常法に従って塩基配列を確認した。確認したPgsAアンカータンパク質をコードするDNAの塩基配列を配列番号11に、それにコードされるPgsAアンカータンパク質のアミノ酸配列を配列番号12に、それぞれ示す。
次に、下記の条件でPCRを行い、B.Indica由来野生型β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNAを増幅し、常法に従って制限酵素BamHIおよびXhoIで消化して、これをB.Indica由来野生型β−フルクトフラノシダーゼDNA断片とした。
《B.Indica由来野生型β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNA増幅用PCRの条件》
鋳型;B.IndicaのゲノムDNA
フォワードプライマー(下線はBamHIサイトを示す);5’−aaaggatcctcgggttacccgataccgactccgcattcgggaca−3’(配列番号13)
リバースプライマー(下線はXhoIサイトを示す);5’−cccctcgagttactggccgttcgtgacaccatggccattaac−3’(配列番号14)
PCR用酵素;KOD−Plus−(東洋紡社)
反応条件;95℃で10秒、60℃で20秒および68℃で2分を1サイクルとして20サイクル。
《B.Indica由来野生型β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNA増幅用PCRの条件》
鋳型;B.IndicaのゲノムDNA
フォワードプライマー(下線はBamHIサイトを示す);5’−aaaggatcctcgggttacccgataccgactccgcattcgggaca−3’(配列番号13)
リバースプライマー(下線はXhoIサイトを示す);5’−cccctcgagttactggccgttcgtgacaccatggccattaac−3’(配列番号14)
PCR用酵素;KOD−Plus−(東洋紡社)
反応条件;95℃で10秒、60℃で20秒および68℃で2分を1サイクルとして20サイクル。
続いて、DNA Ligation Kit Ver.2.1(タカラバイオ社)を用いて、添付の使用書に従いpCDFDuet−1プラスミド(Merck社)のNdeIサイトおよびXhoIサイトにPgsA−DNA断片およびB.Indica由来野生型β−フルクトフラノシダーゼDNA断片を挿入し、これをpCDF−Indica組換えベクターとした。
〈2−1−2〉形質転換および形質転換体の培養と回収
本実施例2(2)[2−1]〈2−1−1〉のpCDF−Indica組換えベクター、およびコントロールとしてpCDFDuet−1プラスミドを、本実施例2(1)[1−2]に記載の方法により大腸菌に導入し、得られた組換え大腸菌を培養して回収した。ただし、M9 SEED培地は1mLに代えて0.5mLとし、M9 SEED培地での培養時間は18時間に代えて20時間とした。また、抗生物質は、「25mg/mL カナマイシン塩 120μL」に代えて「50mg/mL ストレプトマイシン硫酸塩 100μL」を使用した。
本実施例2(2)[2−1]〈2−1−1〉のpCDF−Indica組換えベクター、およびコントロールとしてpCDFDuet−1プラスミドを、本実施例2(1)[1−2]に記載の方法により大腸菌に導入し、得られた組換え大腸菌を培養して回収した。ただし、M9 SEED培地は1mLに代えて0.5mLとし、M9 SEED培地での培養時間は18時間に代えて20時間とした。また、抗生物質は、「25mg/mL カナマイシン塩 120μL」に代えて「50mg/mL ストレプトマイシン硫酸塩 100μL」を使用した。
〈2−1−3〉β−フルクトフラノシダーゼ活性の確認
本実施例2(2)[2−1]〈2−1−2〉の組換え大腸菌を用いて下記の組成のケストース生成反応液を調製し、30℃、220rpmで20時間振盪することにより、ケストース生成反応を行った。その後、3500rpmで10分間遠心分離を行って上清を回収した。回収した上清に50%アセトニトリルを加えることにより100倍に希釈した後、本実施例2(1)[1−3]の条件でHPLCに供した。その結果のHPLCクロマトグラムを図1に示す。
《ケストース生成反応液の組成》
20(w/w)% スクロース水溶液;430μL
0.2M リン酸バッファー;50μL
組換え大腸菌;全量
本実施例2(2)[2−1]〈2−1−2〉の組換え大腸菌を用いて下記の組成のケストース生成反応液を調製し、30℃、220rpmで20時間振盪することにより、ケストース生成反応を行った。その後、3500rpmで10分間遠心分離を行って上清を回収した。回収した上清に50%アセトニトリルを加えることにより100倍に希釈した後、本実施例2(1)[1−3]の条件でHPLCに供した。その結果のHPLCクロマトグラムを図1に示す。
《ケストース生成反応液の組成》
20(w/w)% スクロース水溶液;430μL
0.2M リン酸バッファー;50μL
組換え大腸菌;全量
図1の下側の図に示すように、pCDFDuet−1プラスミドを導入した組換え大腸菌を用いたケストース生成反応液においては、ケストースが確認されなかった。これに対して、同図の上側の図に示すように、pCDF−Indica組換えベクターを導入した組換え大腸菌のケストース生成反応液においては、ケストースが確認された。この結果から、β−フルクトフラノシダーゼを大腸菌の細胞表面に提示させると、当該大腸菌を用いてケストースを生成することができることが明らかになった。
[2−2]CapAアンカータンパク質による細胞表面提示
〈2−2−1〉組換えベクターの構築
PgsAアンカータンパク質についてBasic Local Alignment Search Tool(BLAST)を用いて検索し、PgsAアンカータンパク質と同一性が55%であるBacillus megaterium DSM319株のCapAアンカータンパク質を抽出した。CapAアンカータンパク質を大腸菌の最適化コドンでコードした塩基配列を設計し、これをcapA_opti遺伝子とした。capA_opti遺伝子の塩基配列を配列番号15に、それにコードされるアミノ酸配列を配列番号16に、それぞれ示す。
〈2−2−1〉組換えベクターの構築
PgsAアンカータンパク質についてBasic Local Alignment Search Tool(BLAST)を用いて検索し、PgsAアンカータンパク質と同一性が55%であるBacillus megaterium DSM319株のCapAアンカータンパク質を抽出した。CapAアンカータンパク質を大腸菌の最適化コドンでコードした塩基配列を設計し、これをcapA_opti遺伝子とした。capA_opti遺伝子の塩基配列を配列番号15に、それにコードされるアミノ酸配列を配列番号16に、それぞれ示す。
次に、capA_opti遺伝子のDNAを人工合成し、これを鋳型として下記の条件でPCRを行うことにより、CapAアンカータンパク質をコードするDNAを増幅した。得られたPCR産物をcapA_opti−DNA断片とした。
《CapA配列のDNA増幅用PCRの条件》
鋳型;人工合成したcapA_opti遺伝子のDNA
フォワードプライマー;5’−taagaaggagatatacatatgaaagaaaagaaactgaacttccaag−3’(配列番号17)
リバースプライマー;5’−cgggtaacccgattgagatctatttgcctgggcttcgttctttttg−3’(配列番号18)
PCR用酵素;KOD−Plus−(東洋紡社)
反応条件;94℃で15秒、58℃で20秒および68℃で2分を1サイクルとして21サイクル。
《CapA配列のDNA増幅用PCRの条件》
鋳型;人工合成したcapA_opti遺伝子のDNA
フォワードプライマー;5’−taagaaggagatatacatatgaaagaaaagaaactgaacttccaag−3’(配列番号17)
リバースプライマー;5’−cgggtaacccgattgagatctatttgcctgggcttcgttctttttg−3’(配列番号18)
PCR用酵素;KOD−Plus−(東洋紡社)
反応条件;94℃で15秒、58℃で20秒および68℃で2分を1サイクルとして21サイクル。
次に、下記の条件でインバースPCRを行って改良型β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNAを増幅し、得られたPCR産物を改良型β−フルクトフラノシダーゼDNA断片とした。
《改良型β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNA増幅用PCRの条件》
鋳型;実施例3(1)[1−1]のIndica−H395R/F473Y組換えベクター
フォワードプライマー;5’−agatctcaatcgggttacccgataccgac−3’(配列番号19)
リバースプライマー;5’−catatgtatatctccttcttatacttaac−3’(配列番号20)
PCR用酵素;KOD−Plus−(東洋紡社)
反応条件;94℃で15秒および68℃で6分を1サイクルとして35サイクル。
《改良型β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNA増幅用PCRの条件》
鋳型;実施例3(1)[1−1]のIndica−H395R/F473Y組換えベクター
フォワードプライマー;5’−agatctcaatcgggttacccgataccgac−3’(配列番号19)
リバースプライマー;5’−catatgtatatctccttcttatacttaac−3’(配列番号20)
PCR用酵素;KOD−Plus−(東洋紡社)
反応条件;94℃で15秒および68℃で6分を1サイクルとして35サイクル。
続いて、capA_opti遺伝子DNA断片とβ−フルクトフラノシダーゼDNA断片とを、In−Fusion HD Cloning Kit(タカラバイオ社)を用いて連結することにより、PgsAアンカータンパク質をコードするDNAに代えてCapAアンカータンパク質をコードするDNAが挿入されたIndica−H395R/F473Y組換えベクターを得て、これをIndica−CapA−H395R/F473Y組換えベクターとした。
〈2−2−2〉形質転換および形質転換体の培養と回収
本実施例2(2)[2−2]〈2−2−1〉のIndica−CapA−H395R/F473Y組換えベクター、および、コントロールとして実施例3(1)[1−1]のIndica−H395R/F473Y組換えベクターを、本実施例2(1)[1−2]に記載の方法により大腸菌に導入し、得られた組換え大腸菌を培養して2mLの培養物から回収した。
本実施例2(2)[2−2]〈2−2−1〉のIndica−CapA−H395R/F473Y組換えベクター、および、コントロールとして実施例3(1)[1−1]のIndica−H395R/F473Y組換えベクターを、本実施例2(1)[1−2]に記載の方法により大腸菌に導入し、得られた組換え大腸菌を培養して2mLの培養物から回収した。
〈2−2−3〉β−フルクトフラノシダーゼ活性の確認
本実施例2(2)[2−2]〈2−2−2〉の組換え大腸菌を用いて、下記の組成のケストース生成反応液を調製した。これを、50℃、200rpmで24時間振盪することによりケストース生成反応を行った。反応後のケストース生成反応液100μLに超純水を900μL加えることにより10倍に希釈した後、イオン交換樹脂(アンバーライト MB−4)を加え、30秒〜1分間撹拌した。続いて、14000×gで5分間遠心分離を行って上清を回収した。これを下記の条件によりHPLCに供し、本実施例2(1)[1−3]に記載の方法により各糖の割合およびケストースの量を算出した。その結果を以下の表1に示す。表1中、n.d.は検出限界以下であったことを示す。
《ケストース生成反応液の組成》
60(w/w)% スクロース溶液(0.04M リン酸バッファー(pH7)にスクロースを60(w/w)%となるよう溶解したもの);500μL
組換え大腸菌;全量
本実施例2(2)[2−2]〈2−2−2〉の組換え大腸菌を用いて、下記の組成のケストース生成反応液を調製した。これを、50℃、200rpmで24時間振盪することによりケストース生成反応を行った。反応後のケストース生成反応液100μLに超純水を900μL加えることにより10倍に希釈した後、イオン交換樹脂(アンバーライト MB−4)を加え、30秒〜1分間撹拌した。続いて、14000×gで5分間遠心分離を行って上清を回収した。これを下記の条件によりHPLCに供し、本実施例2(1)[1−3]に記載の方法により各糖の割合およびケストースの量を算出した。その結果を以下の表1に示す。表1中、n.d.は検出限界以下であったことを示す。
《ケストース生成反応液の組成》
60(w/w)% スクロース溶液(0.04M リン酸バッファー(pH7)にスクロースを60(w/w)%となるよう溶解したもの);500μL
組換え大腸菌;全量
《HPLCの条件》
カラム;TSKgel Amide−80 4.6×250mm
移動相;70%アセトニトリル水溶液
流速;1.0mL/分
注入量;20μL
温度;70℃
検出;示差屈折率検出器(RID;アジレントテクノロジー社)
カラム;TSKgel Amide−80 4.6×250mm
移動相;70%アセトニトリル水溶液
流速;1.0mL/分
注入量;20μL
温度;70℃
検出;示差屈折率検出器(RID;アジレントテクノロジー社)
表1に示すように、Indica−CapA−H395R/F473Y組換えベクターを導入した組換え大腸菌のケストース生成反応液においても、Indica−H395R/F473Y組換えベクターを導入した組換え大腸菌のケストース生成反応液と同様に、ケストースが生成し、かつ、ニストースの量は検出限界以下であった。この結果から、PgsAアンカータンパク質やCapAアンカータンパク質などを用いてβ−フルクトフラノシダーゼを大腸菌の細胞表面に提示させると、当該大腸菌を用いてケストースを効率的に生成することができることが明らかになった。
<実施例3>改良型β−フルクトフラノシダーゼの作成と評価
(1)改良型β−フルクトフラノシダーゼの作成
B.Indica由来野生型β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列(配列番号2)のうち、N末から123番目のロイシン(L)をシステイン(C)に、395番目のヒスチジン(H)をアルギニン(R)またはリシン(K)に、473番目のフェニルアラニン(F)をチロシン(Y)に、それぞれ置換するアミノ酸変異(以下、それぞれのアミノ酸変異を「L123C」、「H395R」、「H395K」および「F473Y」と略記する。)を導入したアミノ酸配列からなる一重変異体、二重変異体および三重変異体のβ−フルクトフラノシダーゼを作成し、これらを改良型β−フルクトフラノシダーゼとした。具体的な手順を以下に示す。
(1)改良型β−フルクトフラノシダーゼの作成
B.Indica由来野生型β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列(配列番号2)のうち、N末から123番目のロイシン(L)をシステイン(C)に、395番目のヒスチジン(H)をアルギニン(R)またはリシン(K)に、473番目のフェニルアラニン(F)をチロシン(Y)に、それぞれ置換するアミノ酸変異(以下、それぞれのアミノ酸変異を「L123C」、「H395R」、「H395K」および「F473Y」と略記する。)を導入したアミノ酸配列からなる一重変異体、二重変異体および三重変異体のβ−フルクトフラノシダーゼを作成し、これらを改良型β−フルクトフラノシダーゼとした。具体的な手順を以下に示す。
[1−1]組換えベクターの構築
まず、下記の条件でPCRを行い、改良型β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNAを増幅した。
《改良型β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNA増幅用PCRの条件》
鋳型;表2のとおり
フォワードプライマーおよびリバースプライマー;表2のとおり
PCR用酵素;KOD−Plus−NEO(東洋紡社)
反応条件;95℃で1分、95℃で10秒、68℃で20秒および68℃で3.5分を1サイクルとして15サイクル。
まず、下記の条件でPCRを行い、改良型β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNAを増幅した。
《改良型β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNA増幅用PCRの条件》
鋳型;表2のとおり
フォワードプライマーおよびリバースプライマー;表2のとおり
PCR用酵素;KOD−Plus−NEO(東洋紡社)
反応条件;95℃で1分、95℃で10秒、68℃で20秒および68℃で3.5分を1サイクルとして15サイクル。
続いて、PCR産物に制限酵素DpnIを加えて37℃で1時間消化した後、アガロースゲル電気泳動に供してゲルを切り出し、精製した。これに、Ligation high(東洋紡社)およびT4 Polynucleotide Kinase(東洋紡社)を加えて16℃で1時間静置することによりライゲーションして、組換えベクターを構築した。
得られた一重変異体の組換えベクターについて、L123C、H395RおよびF473Yをそれぞれ導入した改良型β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNAを挿入した組換えベクターを、それぞれ、Indica−L123C組換えベクター、Indica−H395R組換えベクターおよびIndica−F473Y組換えベクターとした。
同様に、二重変異体の組換えベクターについては、H395RおよびL123C、H395RおよびF473Y、ならびにF473YおよびL123Cをそれぞれ導入した改良型β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNAを挿入した組換えベクターを、Indica−H395R/L123C組換えベクター、Indica−H395R/F473Y組換えベクターおよびIndica−F473Y/L123C組換えベクターとした。
また、三重変異体の組換えベクターについては、L123C、H395RおよびF473Yを導入した改良型β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNAを挿入した組換えベクターを、Indica−H395R/F473Y/L123C組換えベクターとした。
[1−2]形質転換および形質転換体の培養と回収
本実施例3(1)[1−1]の組換えベクターを実施例2(1)[1−2]に記載の方法に準じてE.coli JM109コンピテントセルに導入して、組換え大腸菌を回収した。続いて、組換え大腸菌から組換えベクターを回収し、これを、E.coli BL21(DE3)コンピテントセル(コスモバイオ社)に導入して、形質転換体として組換え大腸菌を得た。これを37℃で20時間プレート培養した後、組換え大腸菌のクローンをピックアップしてM9 SEED培地0.5mLに植菌し、30℃、800rpmで20時間振盪培養した。続いて、培養物のうち5μLをM9 Main培地2mLに植え継ぎ、25℃、800rpmで23時間振盪培養した。その後、培養物を3500rpmで10分間遠心分離することにより組換え大腸菌を回収した。
本実施例3(1)[1−1]の組換えベクターを実施例2(1)[1−2]に記載の方法に準じてE.coli JM109コンピテントセルに導入して、組換え大腸菌を回収した。続いて、組換え大腸菌から組換えベクターを回収し、これを、E.coli BL21(DE3)コンピテントセル(コスモバイオ社)に導入して、形質転換体として組換え大腸菌を得た。これを37℃で20時間プレート培養した後、組換え大腸菌のクローンをピックアップしてM9 SEED培地0.5mLに植菌し、30℃、800rpmで20時間振盪培養した。続いて、培養物のうち5μLをM9 Main培地2mLに植え継ぎ、25℃、800rpmで23時間振盪培養した。その後、培養物を3500rpmで10分間遠心分離することにより組換え大腸菌を回収した。
(2)改良型β−フルクトフラノシダーゼの評価
[2−1]ケストース生成活性の確認
本実施例3(1)[1−2]の組換え大腸菌、および、コントロールとして実施例2(2)[2−1]〈2−1−2〉のpCDF−Indica組換えベクターを導入した組換え大腸菌を用いて、実施例2(2)[2−2]〈2−2−3〉に記載の方法によりケストース生成反応を行い、ケストース生成反応液をHPLCに供した。その結果を表3に示す。表3中、n.d.は検出限界以下であったことを示す。
[2−1]ケストース生成活性の確認
本実施例3(1)[1−2]の組換え大腸菌、および、コントロールとして実施例2(2)[2−1]〈2−1−2〉のpCDF−Indica組換えベクターを導入した組換え大腸菌を用いて、実施例2(2)[2−2]〈2−2−3〉に記載の方法によりケストース生成反応を行い、ケストース生成反応液をHPLCに供した。その結果を表3に示す。表3中、n.d.は検出限界以下であったことを示す。
表3に示すように、ケストースの量は、pCDF−Indica組換えベクターを導入した組換え大腸菌のケストース生成反応液では39.7mgであったのに対して、Indica−L123C組換えベクター、Indica−H395R組換えベクター、Indica−H395K組換えベクター、Indica−F473Y組換えベクター、Indica−H395R/L123C組換えベクター、Indica−H395R/F473Y組換えベクター、Indica−F473Y/L123C組換えベクターおよびIndica−H395R/F473Y/L123C組換えベクターを導入した組換え大腸菌のケストース生成反応液では、それぞれ、44.5mg、163.5mg、105.3mg、89.9mg、175.5mg、184.3mg、120.5mgおよび218.8mgであった。
また、ケストースの割合は、pCDF−Indica組換えベクターを導入した組換え大腸菌のケストース生成反応液では10.25%であったのに対して、Indica−L123C組換えベクター、Indica−H395R組換えベクター、Indica−H395K組換えベクター、Indica−F473Y組換えベクター、Indica−H395R/L123C組換えベクター、Indica−H395R/F473Y組換えベクター、Indica−F473Y/L123C組換えベクターおよびIndica−H395R/F473Y/L123C組換えベクターを導入した組換え大腸菌のケストース生成反応液では、それぞれ、11.50%、42.26%、27.20%、23.23%、45.34%、47.63%、31.13%および56.54%であった。
また、ニストースの割合は、pCDF−Indica組換えベクターを導入した組換え大腸菌のケストース生成反応液では5.11%であったのに対して、Indica−L123C組換えベクター、Indica−H395R組換えベクター、Indica−H395K組換えベクター、Indica−F473Y組換えベクター、Indica−H395R/L123C組換えベクター、Indica−H395R/F473Y組換えベクター、Indica−F473Y/L123C組換えベクターおよびIndica−H395R/F473Y/L123C組換えベクターを導入した組換え大腸菌のケストース生成反応液では、それぞれ、3.99%、n.d.、1.95%、3.42%、n.d.、n.d.、1.32%および0.07%であった。
さらに、その他の糖の割合は、pCDF−Indica組換えベクターを導入した組換え大腸菌のケストース生成反応液では9.02%であったのに対して、Indica−L123C組換えベクター、Indica−H395R組換えベクター、Indica−H395K組換えベクター、Indica−F473Y組換えベクター、Indica−H395R/L123C組換えベクター、Indica−H395R/F473Y組換えベクター、Indica−F473Y/L123C組換えベクターおよびIndica−H395R/F473Y/L123C組換えベクターを導入した組換え大腸菌のケストース生成反応液では、それぞれ、3.52%、2.41%、3.28%、8.37%、0.32%、2.95%、1.68%および1.51%であった。
すなわち、Indica−L123C組換えベクター、Indica−H395R組換えベクター、Indica−H395K組換えベクター、Indica−F473Y組換えベクター、Indica−H395R/L123C組換えベクター、Indica−H395R/F473Y組換えベクター、Indica−F473Y/L123C組換えベクターおよびIndica−H395R/F473Y/L123C組換えベクターを導入した組換え大腸菌のケストース生成反応液では、pCDF−Indica組換えベクターを導入した組換え大腸菌のケストース生成反応液と比較して、ケストースの量が増加するとともに、ニストースの割合およびその他の糖の割合のいずれもが低下して、ケストースの割合が増加した。このことからL123C、H395R、H395KおよびF473Yのうち少なくとも1つのアミノ酸変異を導入したアミノ酸配列からなる改良型β−フルクトフラノシダーゼによるケストース生成反応では、野生型β−フルクトフラノシダーゼによるケストース生成反応と比較して、ニストースなどの副生成物の割合が顕著に低下してケストースの割合が向上し、その結果としてケストースの量が増加したことが明らかになった。
これらの結果から、野生型β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列(配列番号2)に対して、N末から123番目のロイシン(L)をシステイン(C)に、395番目のヒスチジン(H)をアルギニン(R)またはリシン(K)に、473番目のフェニルアラニン(F)をチロシン(Y)に、それぞれ置換するアミノ酸変異のうち少なくとも1つのアミノ酸変異を導入することにより、ニストースなどの副生成物が生成する割合を抑えて、ケストースを効率よく大量に生成することができるβ−フルクトフラノシダーゼを得ることができることが明らかになった。
[2−2]ラクトスクロース生成活性の確認
本実施例3(1)[1−2]のIndica−L123C組換えベクターおよびIndica−F473Y組換えベクターを導入した組換え大腸菌、ならびに、コントロールとして実施例2(2)[2−1]〈2−1−2〉のpCDF−Indica組換えベクターを導入した組換え大腸菌を用いて、下記の組成のラクトスクロース生成反応液を調製した。
ただし、組換え大腸菌は0.5mLの培養物から回収した全量を用いた。また、培養物からの組換え大腸菌の回収は、4℃、15000×gで10分間、培養物を遠心分離に供することにより行った。
《ラクトスクロース生成反応液の組成》
スクロース/ラクトース溶液(0.05M リン酸バッファー(pH6.0)にスクロースを22(w/w)%、ラクトースを18(w/w)%となるよう溶解したもの);350μL
組換え大腸菌;全量
本実施例3(1)[1−2]のIndica−L123C組換えベクターおよびIndica−F473Y組換えベクターを導入した組換え大腸菌、ならびに、コントロールとして実施例2(2)[2−1]〈2−1−2〉のpCDF−Indica組換えベクターを導入した組換え大腸菌を用いて、下記の組成のラクトスクロース生成反応液を調製した。
ただし、組換え大腸菌は0.5mLの培養物から回収した全量を用いた。また、培養物からの組換え大腸菌の回収は、4℃、15000×gで10分間、培養物を遠心分離に供することにより行った。
《ラクトスクロース生成反応液の組成》
スクロース/ラクトース溶液(0.05M リン酸バッファー(pH6.0)にスクロースを22(w/w)%、ラクトースを18(w/w)%となるよう溶解したもの);350μL
組換え大腸菌;全量
これを、55℃、220rpmで6時間振盪することによりラクトスクロース生成反応を行った。反応後のラクトスクロース生成反応液50μLに超純水450μLおよびアセトニトリル500μLを加えて希釈した後、35℃にて10分間加熱した。続いて、25℃、15000×gで10分間遠心分離を行って上清を回収しフィルター濾過した。これを下記の条件によりHPLCに供し、実施例2(1)[1−3]に記載の方法により各糖の割合およびラクトスクロースの量を算出した。その結果を表4に示す。表4中、n.d.は検出限界以下であったことを示す。
《HPLCの条件》
カラム;TSKgel Amide−80 4.6×250mm
移動相;70%アセトニトリル水溶液
流速;1.0mL/分
注入量;20μL
温度;35℃
検出;示差屈折率検出器(RID;昭和電工社)
《HPLCの条件》
カラム;TSKgel Amide−80 4.6×250mm
移動相;70%アセトニトリル水溶液
流速;1.0mL/分
注入量;20μL
温度;35℃
検出;示差屈折率検出器(RID;昭和電工社)
表4に示すように、ラクトスクロースの量は、pCDF−Indica組換えベクターを導入した組換え大腸菌のラクトスクロース生成反応液では29.4mgであったのに対して、Indica−L123C組換えベクターおよびIndica−F473Y組換えベクターを導入した組換え大腸菌のラクトスクロース生成反応液では、それぞれ、54.8mgおよび45.6mgであった。また、ラクトスクロースの割合は、pCDF−Indica組換えベクターを導入した組換え大腸菌のラクトスクロース生成反応液では17.8%であったのに対して、Indica−L123C組換えベクターおよびIndica−F473Y組換えベクターを導入した組換え大腸菌のラクトスクロース生成反応液では、それぞれ、33.2%および27.6%であった。
すなわち、Indica−L123C組換えベクターおよびIndica−F473Y組換えベクターを導入した組換え大腸菌のラクトスクロース生成反応液では、pCDF−Indica組換えベクターを導入した組換え大腸菌のラクトスクロース生成反応液と比較して、ラクトスクロースの量およびラクトスクロースの割合が顕著に増加した。このことからL123CおよびF473Yのうち少なくとも1つのアミノ酸変異を導入したアミノ酸配列からなる改良型β−フルクトフラノシダーゼによるラクトスクロース生成反応では、野生型β−フルクトフラノシダーゼによるラクトスクロース生成反応と比較して、ラクトスクロースの割合およびラクトスクロースの量が増加したことが明らかになった。
これらの結果から、野生型β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列(配列番号2)に対して、N末から123番目のロイシン(L)をシステイン(C)に、473番目のフェニルアラニン(F)をチロシン(Y)に、それぞれ置換するアミノ酸変異のうち少なくとも1つのアミノ酸変異を導入することにより、ラクトスクロースを効率よく大量に生成することができるβ−フルクトフラノシダーゼを得ることができることが明らかになった。
<実施例4>B.Indica由来野生型β−フルクトフラノシダーゼと相同なβ−フルクトフラノシダーゼにおける改良型β−フルクトフラノシダーゼの作成と評価
(1)アラインメント
B.Indica由来野生型β−フルクトフラノシダーゼと75%の同一性を有するアミノ酸配列からなるβ−フルクトフラノシダーゼとして下記(ア)を、B.Indica由来野生型β−フルクトフラノシダーゼと66%の同一性を有するアミノ酸配列からなるβ−フルクトフラノシダーゼとして下記(イ)を、それぞれ抽出した。なお、B.Indica由来野生型β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列からシグナル配列(配列番号2の1〜28番目に相当)を除いたアミノ酸配列(配列番号2の29〜534番目に相当)との同一性を括弧内に示す。
(ア)75%の同一性(シグナル配列を除いた場合の同一性:76%):Burkholderia phymatum STM815 (以下「Burk」と略記する。)のβ−フルクトフラノシダーゼ(GenBank:ACC75109.1)
(イ)66%の同一性(シグナル配列を除いた場合の同一性:65%):Gluconacetobacter diazotrophicus SRT4(以下「Glucono」と略記する。)のβ−フルクトフラノシダーゼ(GenBank:AAB36606.1)
(1)アラインメント
B.Indica由来野生型β−フルクトフラノシダーゼと75%の同一性を有するアミノ酸配列からなるβ−フルクトフラノシダーゼとして下記(ア)を、B.Indica由来野生型β−フルクトフラノシダーゼと66%の同一性を有するアミノ酸配列からなるβ−フルクトフラノシダーゼとして下記(イ)を、それぞれ抽出した。なお、B.Indica由来野生型β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列からシグナル配列(配列番号2の1〜28番目に相当)を除いたアミノ酸配列(配列番号2の29〜534番目に相当)との同一性を括弧内に示す。
(ア)75%の同一性(シグナル配列を除いた場合の同一性:76%):Burkholderia phymatum STM815 (以下「Burk」と略記する。)のβ−フルクトフラノシダーゼ(GenBank:ACC75109.1)
(イ)66%の同一性(シグナル配列を除いた場合の同一性:65%):Gluconacetobacter diazotrophicus SRT4(以下「Glucono」と略記する。)のβ−フルクトフラノシダーゼ(GenBank:AAB36606.1)
次に、B.Indica由来野生型β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列(配列番号2)について、(ア)および(イ)に対してClustalW法(http://www.genome.jp/tools/clustalw/)でアラインメントを行った。その結果、B.Indica由来野生型β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列におけるN末から395番目のヒスチジン(H)は、(ア)ではN末から393番目のヒスチジン(H)、(イ)ではN末から419番目のヒスチジン(H)に、それぞれ相当することが明らかになった。
(2)組換えベクターの構築
[2−1]野生型β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNAを挿入した組換えベクターの構築
下記の条件によりPCRを行い、Burk由来野生型β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNAを増幅し、得られたPCR産物をBurk野生型DNA断片とした。Burk由来野生型β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNAの塩基配列を配列番号37に、それにコードされるBurk由来野生型β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列を配列番号38に、それぞれ示す。
《Burk由来野生型β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNA増幅用PCRの条件》
鋳型;BurkのゲノムDNA
フォワードプライマー;5’−aaactaaaatctaaaagatctcagactgcaacgccaggcttccccg−3’(配列番号39)
リバースプライマー;5’−ggtttctttaccagactcgagttactggctgttgccgccctgcccgtttcc−3’(配列番号40)
PCR用酵素;KOD−Plus−(東洋紡社)
反応条件;94℃で15秒、58℃で20秒および68℃で2分を1サイクルとして21サイクル。
[2−1]野生型β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNAを挿入した組換えベクターの構築
下記の条件によりPCRを行い、Burk由来野生型β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNAを増幅し、得られたPCR産物をBurk野生型DNA断片とした。Burk由来野生型β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNAの塩基配列を配列番号37に、それにコードされるBurk由来野生型β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列を配列番号38に、それぞれ示す。
《Burk由来野生型β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNA増幅用PCRの条件》
鋳型;BurkのゲノムDNA
フォワードプライマー;5’−aaactaaaatctaaaagatctcagactgcaacgccaggcttccccg−3’(配列番号39)
リバースプライマー;5’−ggtttctttaccagactcgagttactggctgttgccgccctgcccgtttcc−3’(配列番号40)
PCR用酵素;KOD−Plus−(東洋紡社)
反応条件;94℃で15秒、58℃で20秒および68℃で2分を1サイクルとして21サイクル。
また、Gluconoのβ−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列(GenBank:AAB36606.1)を大腸菌の最適化コドンでコードする塩基配列を設計し、これをGlucono_opti遺伝子とした。Glucono_opti遺伝子の塩基配列を配列番号41に、それにコードされるアミノ酸配列を配列番号42に、それぞれ示す。
次に、Glucono_opti遺伝子のDNAを人工合成し、これを鋳型として下記の条件でPCRを行うことにより、Glucono由来野生型β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNAを増幅し、得られたPCR産物をGlucono野生型DNA断片とした。
《Glucono由来野生型β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNA増幅用PCRの条件》
鋳型;人工合成したGlucono_opti遺伝子のDNA
フォワードプライマー;5’−aaactaaaatctaaaagatctcaaggcaatttttctcgccaggaag−3’(配列番号43)
リバースプライマー;5’−ggtttctttaccagactcgagttattgattcagaaattgacggacctgt−3’(配列番号44)
PCR用酵素;KOD−Plus−(東洋紡社)
反応条件;94℃で15秒、58℃で20秒および68℃で2分を1サイクルとして21サイクル。
次に、Glucono_opti遺伝子のDNAを人工合成し、これを鋳型として下記の条件でPCRを行うことにより、Glucono由来野生型β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNAを増幅し、得られたPCR産物をGlucono野生型DNA断片とした。
《Glucono由来野生型β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNA増幅用PCRの条件》
鋳型;人工合成したGlucono_opti遺伝子のDNA
フォワードプライマー;5’−aaactaaaatctaaaagatctcaaggcaatttttctcgccaggaag−3’(配列番号43)
リバースプライマー;5’−ggtttctttaccagactcgagttattgattcagaaattgacggacctgt−3’(配列番号44)
PCR用酵素;KOD−Plus−(東洋紡社)
反応条件;94℃で15秒、58℃で20秒および68℃で2分を1サイクルとして21サイクル。
次に、下記の条件でPCRを行うことにより、PgsAアンカータンパク質をコードするDNAを挿入したpCDFDuet−1プラスミドのDNAを増幅し、得られたPCR産物をpCDF−PgsA−DNA断片とした。
《PgsAアンカータンパク質をコードするDNAを挿入したpCDFDuet−1のDNA増幅用PCRの条件》
鋳型;実施例2(2)[2−1]〈2−1−1〉のpCDF−Indica組換えベクター
フォワードプライマー;5’−tctggtaaagaaaccgctgctgcgaaattt−3’(配列番号45)
リバースプライマー;5’−tttagattttagtttgtcactatgatcaat−3’(配列番号46)
《PgsAアンカータンパク質をコードするDNAを挿入したpCDFDuet−1のDNA増幅用PCRの条件》
鋳型;実施例2(2)[2−1]〈2−1−1〉のpCDF−Indica組換えベクター
フォワードプライマー;5’−tctggtaaagaaaccgctgctgcgaaattt−3’(配列番号45)
リバースプライマー;5’−tttagattttagtttgtcactatgatcaat−3’(配列番号46)
Burk野生型DNA断片およびpCDF−PgsA−DNA断片、ならびにGlucono野生型DNA断片およびpCDF−PgsA−DNA断片を、In−Fusion HD Cloning Kit(タカラバイオ社)を用いてそれぞれ連結することにより組換えベクターを得て、前者をpCDF−Burk組換えベクターとし、後者をpCDF−Glucono組換えベクターとした。
[2−2]改良型β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNAを挿入した組換えベクターの構築
実施例3(1)[1−1]の方法により、Burk由来野生型β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列におけるN末から393番目のヒスチジン残基、およびGlucono由来野生型β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列のN末から419番目のヒスチジン(H)を、それぞれアルギニン(R)に置換するアミノ酸変異(以下、それぞれのアミノ酸変異を「Burk−H393R」および「Glucono−H419R」と略記する。)を導入したアミノ酸配列からなる改良型β−フルクトフラノシダーゼ(一重変異体)をコードするDNAを挿入した組換えベクターを調製した。ただし、PCRの鋳型およびプライマーは表5に記載のものを用いた。
得られた一重変異体の組換えベクターについて、Burk−H393RおよびGlucono−H419Rをそれぞれ導入したアミノ酸配列からなる改良型β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNAを挿入した組換えベクターを、それぞれ、Burk−H393R組換えベクターおよびGlucono−H419R組換えベクターとした。
実施例3(1)[1−1]の方法により、Burk由来野生型β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列におけるN末から393番目のヒスチジン残基、およびGlucono由来野生型β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列のN末から419番目のヒスチジン(H)を、それぞれアルギニン(R)に置換するアミノ酸変異(以下、それぞれのアミノ酸変異を「Burk−H393R」および「Glucono−H419R」と略記する。)を導入したアミノ酸配列からなる改良型β−フルクトフラノシダーゼ(一重変異体)をコードするDNAを挿入した組換えベクターを調製した。ただし、PCRの鋳型およびプライマーは表5に記載のものを用いた。
得られた一重変異体の組換えベクターについて、Burk−H393RおよびGlucono−H419Rをそれぞれ導入したアミノ酸配列からなる改良型β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNAを挿入した組換えベクターを、それぞれ、Burk−H393R組換えベクターおよびGlucono−H419R組換えベクターとした。
(3)β−フルクトフラノシダーゼ活性の確認
本実施例4(2)[2−1]のpCDF−Burk組換えベクターおよびpCDF−Glucono組換えベクター、ならびに本実施例4(2)[2−2]のBurk−H393R組換えベクターおよびGlucono−H419R組換えベクターを、実施例3(1)[1−2]の方法により大腸菌に導入し、得られた組換え大腸菌を培養して2mLの培養物から回収した。続いて、これらの組換え大腸菌を用いて、実施例2(2)[2−2]〈2−2−3〉の方法によりケストース生成量およびニストース生成量を測定した。その結果を表6に示す。なお、比較のために、表3に示す結果のうちpCDF−Indica組換えベクターおよびIndica−H395R組換えベクターを導入した組換え大腸菌における結果を表6の下二段に示す。表6中、n.d.は検出限界以下であったことを示す。
本実施例4(2)[2−1]のpCDF−Burk組換えベクターおよびpCDF−Glucono組換えベクター、ならびに本実施例4(2)[2−2]のBurk−H393R組換えベクターおよびGlucono−H419R組換えベクターを、実施例3(1)[1−2]の方法により大腸菌に導入し、得られた組換え大腸菌を培養して2mLの培養物から回収した。続いて、これらの組換え大腸菌を用いて、実施例2(2)[2−2]〈2−2−3〉の方法によりケストース生成量およびニストース生成量を測定した。その結果を表6に示す。なお、比較のために、表3に示す結果のうちpCDF−Indica組換えベクターおよびIndica−H395R組換えベクターを導入した組換え大腸菌における結果を表6の下二段に示す。表6中、n.d.は検出限界以下であったことを示す。
表6に示すように、ケストースの量は、pCDF−Burk組換えベクター、pCDF−Glucono組換えベクターおよびpCDF−Indica組換えベクターを導入した組換え大腸菌のケストース生成反応液では、それぞれ57.6mg、56.8mgおよび39.7mgであったのに対して、Burk−H393R組換えベクター、Glucono−H419R組換えベクターおよびIndica−H395R組換えベクターを導入した組換え大腸菌のケストース生成反応液では、それぞれ106.4mg、60.3mgおよび163.5mgであり、いずれも増加した。
また、ケストースの割合は、pCDF−Burk組換えベクター、pCDF−Glucono組換えベクターおよびpCDF−Indica組換えベクターを導入した組換え大腸菌のケストース生成反応液では、それぞれ14.87%、14.67%および10.25%であったのに対して、Burk−H393R組換えベクター、Glucono−H419R組換えベクターおよびIndica−H395R組換えベクターを導入した組換え大腸菌のケストース生成反応液では、それぞれ、27.49%、15.59%および42.26%であり、いずれも増加した。
また、ニストースの割合は、pCDF−Burk組換えベクター、pCDF−Glucono組換えベクターおよびpCDF−Indica組換えベクターを導入した組換え大腸菌のケストース生成反応液では、それぞれ4.53%、5.03%および5.11%であったのに対して、Burk−H393R組換えベクター、Glucono−H419R組換えベクターおよびIndica−H395R組換えベクターを導入した組換え大腸菌のケストース生成反応液では、それぞれn.d.、0.23%およびn.d.であり、いずれも低下した。
さらに、その他の糖の割合は、pCDF−Burk組換えベクター、pCDF−Glucono組換えベクターおよびpCDF−Indica組換えベクターを導入した組換え大腸菌のケストース生成反応液では、それぞれ3.26%、4.46%および9.02%であったのに対して、Burk−H393R組換えベクター、Glucono−H419R組換えベクターおよびIndica−H395R組換えベクターを導入した組換え大腸菌のケストース生成反応液では、それぞれ0.82%、0.99%および2.41%であり、いずれも低下した。
すなわち、Burk−H393R、Glucono−H419RまたはH395Rを導入したアミノ酸配列からなる改良型β−フルクトフラノシダーゼによるケストース生成反応では、これらのアミノ酸変異を導入しない野生型β−フルクトフラノシダーゼによるケストース生成反応と比較して、ケストースの量が増加するとともに、ニストースの割合およびその他の糖の割合のいずれもが低下して、ケストースの割合が増加したことが明らかになった。
これらの結果から、B.Indica由来野生型β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列(配列番号2)と60%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるβ−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列に対して、アラインメントでB.Indica由来野生型β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列(配列番号2)におけるN末から395番目の位置に相当するヒスチジン(H)を、アルギニン(R)またはリシン(K)に置換するアミノ酸変異を導入することにより、ニストースなどの副生成物が生成する割合を抑えて、ケストースを効率よく大量に生成することができる改良型β−フルクトフラノシダーゼを得ることができることが明らかになった。
Claims (9)
- 配列番号2に示す野生型β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列と60%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるβ−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列に対して、アラインメントで前記配列番号2に示す野生型β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列のN末端から395番目の位置に相当するヒスチジン(H)を、アルギニン(R)またはリシン(K)に置換するアミノ酸変異を導入したアミノ酸配列からなる改良型β−フルクトフラノシダーゼ。
- 下記(a)または(b)のアミノ酸配列からなる改良型β−フルクトフラノシダーゼ;
(a)配列番号2に示す野生型β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列に対して、以下のi)〜iii)から選択される1または2以上のアミノ酸変異を導入したアミノ酸配列;
i)N末端から123番目のロイシン(L)をシステイン(C)に置換するアミノ酸変異、
ii)N末端から395番目のヒスチジン(H)をアルギニン(R)またはリシン(K)に置換するアミノ酸変異、
iii)N末端から473番目のフェニルアラニン(F)をチロシン(Y)に置換するアミノ酸変異、
(b)アミノ酸配列(a)において、アミノ酸変異が導入されたアミノ酸を除く1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつβ−フルクトフラノシダーゼ活性を有するアミノ酸配列。 - 請求項1または請求項2に記載の改良型β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列を含むポリペプチド。
- 請求項1または請求項2に記載の改良型β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNA。
- 請求項4に記載のDNAを含む組換えベクター。
- 請求項4に記載のDNAまたは請求項5に記載の組換えベクターを宿主に導入して得られる、形質転換体。
- 宿主が大腸菌である、請求項6に記載の形質転換体。
- 請求項6または請求項7に記載の形質転換体を培養して得られる培養物から改良型β−フルクトフラノシダーゼを取得する工程を有する改良型β−フルクトフラノシダーゼの製造方法。
- 請求項1もしくは請求項2に記載の改良型β−フルクトフラノシダーゼ、請求項6もしくは請求項7に記載の形質転換体または請求項6もしくは請求項7に記載の形質転換体を培養して得られる培養物とスクロースとを接触させる工程を有するケストースの製造方法。
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