<硬化膜形成用組成物>
当該硬化膜形成用組成物は、[A]バインダー樹脂、[B]重合性化合物、[C]QD及び[D]化合物を含有する。また、当該硬化膜形成用組成物は、感放射線性化合物(以下、[E]感放射線性化合物ともいう)を含有していてもよく、さらに溶媒(以下、[F]溶媒ともいう)を含有していてもよい。
当該硬化膜形成用組成物は、上記構成を有することにより、QDの蛍光量子収率の低下を抑制できる。当該硬化膜形成用組成物が上記構成を有することで上記効果を奏する理由については必ずしも明確ではないが、例えば以下のように推察される。すなわち、従来の硬化膜形成用組成物は、[A]バインダー樹脂を形成する際の重合反応終了時に残存する未反応のモノマー(以下、「残存モノマー」ともいう)、酸素、水分等を不可避的不純物として一定量含む。しかし、当該硬化膜形成用組成物は、[D]化合物がチオール基によって[C]QDの表面に効果的に結合することにより、[C]QDの蛍光量子収率を低下させる原因となる酸素、水分、残存モノマー等がその表面に付着することが抑制される。さらに、[D]化合物が2以上のチオール基を有する場合、1のチオール基で[C]QDの表面と結合しつつ、別のチオール基で[A]バインダー樹脂と結合することもできる。この場合、[D]化合物を介して[A]バインダー樹脂及び[C]QDが近接することで上述の酸素、水分、残存モノマー等の付着がより顕著に抑制される。これらの結果、[C]QDの蛍光量子収率の低下を抑制できると考えられる。
さらに、青色発光有機EL素子を用いたディスプレイにQDを適用する際、従来の硬化膜形成用組成物では、酸素、水分、残存モノマー等がR−QDやG−QDの表面に付着することにより、青色発光有機EL素子から発せられた青色光の強度に対して、R−QDからの赤色蛍光の強度及びG−QDからの緑色蛍光の強度が低下し、色再現性が低下する場合がある。これに対し、当該硬化膜形成用組成物を用いた場合は、上述のように[D]化合物がR−QDやG−QD等の[C]QDの表面に付着することにより[C]QDの蛍光量子収率の低下を抑制できる。その結果、青色発光有機EL素子から発せられた青色光の強度に対して、[C]QDからの蛍光強度を維持でき、高い色再現性を維持することができると考えられる。
以下、当該硬化膜形成用組成物の各成分について詳細に説明する。
〔[A]バインダー樹脂〕
[A]バインダー樹脂は、特に限定されず、硬化膜の母材となり得れば如何なるものであってもよい。
また、[A]バインダー樹脂として、以下に例示するような[A’]アルカリ可溶性樹脂を用いることもできる。[A]バインダー樹脂として、[A’]アルカリ可溶性樹脂を用いることにより、アルカリ現像液によるパターニングが可能となる。
〔[A’]アルカリ可溶性樹脂〕
[A’]アルカリ可溶性樹脂は、アルカリ性溶液に可溶な樹脂である。[A’]アルカリ可溶性樹脂としては、カルボキシ基を含む不飽和化合物をモノマーとして用いてラジカル重合することにより得られるポリマー(以下、「[a]ポリマー」ともいう)、ポリイミド、ポリシロキサン、ノボラック樹脂、及びこれらの組み合わせが好ましい。以下、[a]ポリマー、ポリイミド、ポリシロキサン及びノボラック樹脂のそれぞれについて詳細に説明する。
[[a]ポリマー]
[a]ポリマーは、カルボキシ基を含む構造単位を有する。また、[a]ポリマーは、感度向上のため、重合性基を含む構造単位を有していてもよい。重合性基を含む構造単位としては、エポキシ基を含む構造単位、(メタ)アクリロイル基を含む構造単位、及びビニル基を含む構造単位が好ましい。[a]ポリマーが上記特定の重合性基を含む構造単位を有することで、表面硬化性及び深部硬化性に優れる硬化膜形成用組成物とすることができる。
また、[a]ポリマーは、水酸基を含む構造単位、及びその他の構造単位を有していてもよい。
上記カルボキシ基を含む構造単位は、例えば不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸の無水物、多価カルボン酸のモノ〔(メタ)アクリロイルオキシアルキル〕エステル等のカルボン酸系不飽和化合物をモノマーとして用いて、適宜他のモノマーと共にラジカル重合することにより形成できる。
上記不飽和モノカルボン酸としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等が挙げられる。
上記不飽和ジカルボン酸としては、例えばマレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸等が挙げられる。
上記不飽和ジカルボン酸の無水物としては、例えば上記不飽和ジカルボン酸として例示した化合物の無水物等が挙げられる。
上記多価カルボン酸のモノ〔(メタ)アクリロイルオキシアルキル〕エステルとしては、例えばコハク酸モノ〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕、フタル酸モノ〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕等が挙げられる。
これらのカルボン酸系不飽和化合物のうち、重合性の観点から、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸及びコハク酸モノ〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕が好ましい。
これらのカルボン酸系不飽和化合物は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
[a]ポリマー中のカルボキシ基を含む構造単位の含有割合の下限としては、[a]ポリマーを構成する全構造単位に対して、1モル%が好ましく、5モル%がより好ましく、10モル%がさらに好ましい。また、上記含有割合の上限としては、80モル%が好ましく、70モル%がより好ましく、60モル%がさらに好ましい。カルボキシ基を含む構造単位の含有割合が上記範囲である場合、アルカリ現像液への溶解性をより向上させることができる。
上記エポキシ基を含む構造単位は、例えばエポキシ基含有不飽和化合物をモノマーとして用いて、適宜他のモノマーと共にラジカル重合することにより形成できる。エポキシ基含有不飽和化合物としては、例えばオキシラニル基(1,2−エポキシ構造)、オキセタニル基(1,3−エポキシ構造)等を含む不飽和化合物などが挙げられる。
上記オキシラニル基を有する不飽和化合物としては、例えばアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−メチルグリシジル、アクリル酸3,4−エポキシブチル、メタクリル酸3,4−エポキシブチル、アクリル酸6,7−エポキシヘプチル、メタクリル酸6,7−エポキシヘプチル、α−エチルアクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、メタクリル酸3,4−エポキシシクロへキシル、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル等が挙げられる。
上記オキセタニル基を有する不飽和化合物としては、例えば3−(アクリロイルオキシメチル)オキセタン、3−(アクリロイルオキシメチル)−2−メチルオキセタン、3−(アクリロイルオキシメチル)−3−エチルオキセタン、3−(アクリロイルオキシメチル)−2−フェニルオキセタン、3−(2−アクリロイルオキシエチル)オキセタン、3−(2−アクリロイルオキシエチル)−2−エチルオキセタン、3−(2−アクリロイルオキシエチル)−3−エチルオキセタン、3−(2−アクリロイルオキシエチル)−2−フェニルオキセタン等のアクリル酸エステル;
3−(メタクリロイルオキシメチル)オキセタン、3−(メタクリロイルオキシメチル)−2−メチルオキセタン、3−(メタクリロイルオキシメチル)−3−エチルオキセタン、3−(メタクリロイルオキシメチル)−2−フェニルオキセタン、3−(2−メタクリロイルオキシエチル)オキセタン、3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−2−エチルオキセタン、3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−3−エチルオキセタン、3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−2−フェニルオキセタン、3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−2,2−ジフルオロオキセタン等のメタクリル酸エステルなどが挙げられる。
これらのエポキシ基含有不飽和化合物のうち、重合性の観点から、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシル及び3−(メタクリロイルオキシメチル)−3−エチルオキセタンが好ましい。
これらのエポキシ基含有不飽和化合物は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
[a]ポリマーがエポキシ基を含む構造単位を有する場合、この構造単位の含有割合の下限としては、[a]ポリマーを構成する全構造単位に対して、1モル%が好ましく、5モル%がより好ましく、10モル%がさらに好ましい。また、上記含有割合の上限としては、80モル%が好ましく、70モル%がより好ましく、60モル%がさらに好ましい。エポキシ基を含む構造単位の含有割合が上記範囲である場合、硬度がより高く、耐溶剤性により優れる硬化膜を形成できる。
上記(メタ)アクリロイル基を含む構造単位は、例えばエポキシ基を有するポリマーと(メタ)アクリル酸とを反応させる方法、カルボキシ基を有するポリマーとエポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルとを反応させる方法、水酸基を有するポリマーとイソシアネート基を有する(メタ)アクリル酸エステルとを反応させる方法、酸無水物基を有するポリマーと(メタ)アクリル酸とを反応させる方法等により形成できる。これらの方法のうち、カルボキシ基を有するポリマーとエポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルとを反応させる方法が好ましい。
上記エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えばアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−メチルグリシジル、アクリル酸3,4−エポキシブチル、メタクリル酸3,4−エポキシブチル、アクリル酸6,7−エポキシヘプチル、メタクリル酸6,7−エポキシヘプチル、α−エチルアクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、メタクリル酸3,4−エポキシシクロへキシル等が挙げられる。
これらのエポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルのうち、反応性の観点から、メタクリル酸グリシジル及びメタクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルが好ましい。
これらのエポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
[a]ポリマーが(メタ)アクリロイル基を含む構造単位を有する場合、この構造単位の含有割合の下限としては、[a]ポリマーを構成する全構造単位に対して、1モル%が好ましく、5モル%がより好ましく、10モル%がさらに好ましい。また、上記含有割合の上限としては、80モル%が好ましく、70モル%がより好ましく、60モル%がさらに好ましい。(メタ)アクリロイル基を含む構造単位の含有割合が上記範囲である場合、硬度がより高く、耐溶剤性により優れる硬化膜を形成できる。
上記ビニル基を含む構造単位は、例えばカルボキシ基を有するポリマーと、エポキシ基及びビニル基を有する化合物とを反応させる方法により形成できる。
上記エポキシ基及びビニル基を有する化合物としては、例えばビニルグリシジルエーテル、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル等が挙げられる。
これらのエポキシ基及びビニル基を有する化合物のうち、反応性の観点から、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル及びp−ビニルベンジルグリシジルエーテルが好ましい。
これらのエポキシ基及びビニル基を有する化合物は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
[a]ポリマーがビニル基を含む構造単位を有する場合、この構造単位の含有割合の下限としては、[a]ポリマーを構成する全構造単位に対して、1モル%が好ましく、5モル%がより好ましく、10モル%がさらに好ましい。また、上記含有割合の上限としては、80モル%が好ましく、70モル%がより好ましく、60モル%がさらに好ましい。ビニル基を含む構造単位の含有割合が上記範囲である場合、硬度がより高く、耐溶剤性により優れる硬化膜を形成できる。
上記水酸基を含む構造単位は、例えば水酸基含有不飽和化合物をモノマーとして用いて、適宜他のモノマーと共にラジカル重合することにより形成できる。
上記水酸基含有不飽和化合物としては、例えばアルコール性水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル、フェノール性水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシスチレン等が挙げられる。
上記アルコール性水酸基を有するアクリル酸エステルとしては、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、アクリル酸5−ヒドロキシペンチル、アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル等が挙げられる。
上記アルコール性水酸基を有するメタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸5−ヒドロキシペンチル、メタクリル酸6−ヒドロキシヘキシル等が挙げられる。
上記フェノール性水酸基を有するアクリル酸エステルとしては、アクリル酸2−ヒドロキシフェニル、アクリル酸4−ヒドロキシフェニル等が挙げられる。
上記フェノール性水酸基を有するメタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸2−ヒドロキシフェニル、メタクリル酸4−ヒドロキシフェニル等が挙げられる。
上記ヒドロキシスチレンとしては、o−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、α−メチル−p−ヒドロキシスチレン等が挙げられる。
これらの水酸基含有不飽和化合物のうち、重合性の観点から、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル及びα−メチル−p−ヒドロキシスチレンが好ましい。
これらの水酸基含有不飽和化合物は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
[a]ポリマーが水酸基を含む構造単位を有する場合、この構造単位の含有割合の下限としては、[a]ポリマーを構成する全構造単位に対して、1モル%が好ましく、5モル%がより好ましく、10モル%がさらに好ましい。また、上記含有割合の上限としては、30モル%が好ましく、20モル%がより好ましい。水酸基を含む構造単位の含有割合が上記範囲である場合、アルカリ現像液への溶解性をより向上させることができる。
上記その他の構造単位を与えるモノマーとしては、例えばメタクリル酸鎖状アルキルエステル、メタクリル酸環状アルキルエステル、アクリル酸鎖状アルキルエステル、アクリル酸環状アルキルエステル、メタクリル酸アリールエステル、アクリル酸アリールエステル、不飽和ジカルボン酸ジエステル、マレイミド化合物、不飽和芳香族化合物、共役ジエン、テトラヒドロフラン骨格を有する不飽和化合物、その他の不飽和化合物等が挙げられる。
上記メタクリル酸鎖状アルキルエステルとしては、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸イソデシル、メタクリル酸n−ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸n−ステアリル等が挙げられる。
上記メタクリル酸環状アルキルエステルとしては、例えばメタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−メチルシクロヘキシル、メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル、メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イルオキシエチル、メタクリル酸イソボルニル等が挙げられる。
上記アクリル酸鎖状アルキルエステルとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソデシル、アクリル酸n−ラウリル、アクリル酸トリデシル、アクリル酸n−ステアリル等が挙げられる。
上記アクリル酸環状アルキルエステルとしては、例えばアクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸−2−メチルシクロヘキシル、アクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル、アクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イルオキシエチル、アクリル酸イソボルニル等が挙げられる。
上記メタクリル酸アリールエステルとしては、例えばメタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル等が挙げられる。
上記アクリル酸アリールエステルとしては、例えばアクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル等が挙げられる。
上記不飽和ジカルボン酸ジエステルとしては、例えばマレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジエチル等が挙げられる。
上記マレイミド化合物としては、例えばN−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド、N−(4−ヒドロキシベンジル)マレイミド、N−スクシンイミジル−3−マレイミドベンゾエート、N−スクシンイミジル−4−マレイミドブチレート、N−スクシンイミジル−6−マレイミドカプロエート、N−スクシンイミジル−3−マレイミドプロピオネート、N−(9−アクリジニル)マレイミド等が挙げられる。
上記不飽和芳香族化合物としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン等が挙げられる。
上記共役ジエンとしては、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等が挙げられる。
上記テトラヒドロフラン骨格を有する不飽和化合物としては、例えばメタクリル酸テトラヒドロフルフリル、2−メタクリロイルオキシ−プロピオン酸テトラヒドロフルフリルエステル、3−(メタ)アクリロイルオキシテトラヒドロフラン−2−オン等が挙げられる。
上記その他の不飽和化合物としては、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニル等が挙げられる。
上記その他の構造単位を与えるモノマーのうち、重合性の観点から、スチレン、メタクリル酸メチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−ラウリル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル、p−メトキシスチレン、アクリル酸2−メチルシクロヘキシル、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、及びメタクリル酸テトラヒドロフルフリルが好ましい。
上記その他の構造単位を与えるモノマーは、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
[a]ポリマーがその他の構造単位を有する場合、この構造単位の含有割合の下限としては、[a]ポリマーを構成する全構造単位に対して、1モル%が好ましく、5モル%がより好ましく、10モル%がさらに好ましい。また、上記含有割合の上限としては、80モル%が好ましく、70モル%がより好ましい。上記含有割合が上記範囲内の場合、上述した効果を妨げることなく、例えば[a]ポリマーの分子量等を調整できる。
[a]ポリマーの重量平均分子量(Mw)の下限としては、1,000が好ましく、2,000がより好ましく、3,000がさらに好ましい。上記Mwの上限としては、30,000が好ましく、20,000がより好ましく、15,000がさらに好ましい。[a]ポリマーのMwを上記範囲とすることで、保存安定性及び感度をより向上させることができる。
また、上記Mwと、[a]ポリマーの数平均分子量(Mn)との比、すなわち分子量分布(Mw/Mn)の下限としては、通常1であり、1.2が好ましく、1.5がより好ましい。上記Mw/Mnの上限としては、5が好ましく、4がより好ましく、3がさらに好ましい。[a]ポリマーのMw/Mnを上記範囲とすることで、保存安定性及び感度をより向上させることができる。
なお、本明細書におけるMw及びMnは、下記の条件によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した値である。
装置:例えば昭和電工社の「GPC−101」
カラム:例えば昭和電工社の「GPC−KF−801」、「GPC−KF−802」、「GPC−KF−803」及び「GPC−KF−804」を連結したもの
移動相:テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
流速:1.0mL/分
試料濃度:1.0質量%
試料注入量:100μL
検出器:示差屈折計
標準物質:単分散ポリスチレン
([a]ポリマーの合成方法)
[a]ポリマーの合成方法は特に限定されず、公知の方法を採用できる。例えば溶媒中で重合開始剤の存在下、上述したモノマーを重合反応させることによって合成できる。
上記溶媒としては、例えばアルコール、グリコールエーテル、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノアルキルエーテルプロピオネート、その他のエステル、ケトン等が挙げられる。
上記重合開始剤としては、一般的にラジカル重合開始剤として知られているものが使用できる。ラジカル重合開始剤としては、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物が挙げられる。
上述したモノマーの重合反応は、[a]ポリマーの分子量の調整や重合速度の制御の観点から、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン等の連鎖移動剤の存在下で行うことが好ましい。
[ポリイミド]
上記ポリイミドとしては、構造単位中にカルボキシ基、フェノール性水酸基、スルホ基、チオール基、又はこれらの組み合わせを含むポリイミドが好ましい。構造単位中にこれらのアルカリ可溶性の基を含むことでアルカリ現像性(アルカリ可溶性)を備え、アルカリ現像時に露光部のスカム発生を抑えることができる。
上記ポリイミドは、例えば酸成分とアミン成分とを縮合して得られる。酸成分としてはテトラカルボン酸二無水物が好ましく、アミン成分としてはジアミンが好ましい。
ポリイミドの形成に用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、例えば3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物、9,9−ビス{4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル}フルオレン二無水物等が挙げられる。これらを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリイミドの形成に用いられるジアミンの例としては、例えば3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン等が挙げられる。これらを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記ポリイミドは、例えば公知の方法を用いてポリイミド前駆体を得た後、これを公知のイミド化反応法を用いてイミド化させる方法により合成することができる。ポリイミド前駆体の公知の合成法としては、例えば低温中でテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させる方法、テトラカルボン酸二無水物とアルコールとによりジエステルを得た後、縮合剤の存在下でジアミンと反応させる方法等がある。
上記ポリイミドの重量平均分子量(Mw)の下限としては、1,000が好ましく、2,000がより好ましく、3,000がさらに好ましい。上記Mwの上限としては、30,000が好ましく、20,000がより好ましく、15,000がさらに好ましい。ポリイミドのMwを上記範囲とすることで、保存安定性及び感度をより向上させることができる。
[ポリシロキサン]
上記ポリシロキサンとしては、加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物が挙げられる。ここで「加水分解性シラン化合物」とは、加水分解してシラノール基を生成することができる基又はシロキサン縮合物を形成することができる基を含む化合物を指す。また、加水分解性シラン化合物の加水分解反応においては、生成されるポリシロキサン中に、一部の加水分解性基が未加水分解の状態で残っていてもよい。ここで「加水分解性基」とは、上述した加水分解してシラノール基を生成することができる基又はシロキサン縮合物を形成することができる基を指す。また、当該硬化膜形成用組成物中において、一部の加水分解性シラン化合物は、その分子中の一部又は全部の加水分解性基が未加水分解の状態で、かつ他の加水分解性シラン化合物と縮合せずにモノマーの状態で残っていてもよい。なお、「加水分解縮合物」は加水分解されたシラン化合物のシラノール基同士が縮合した縮合物を意味する。
上記加水分解縮合物としては、ラジカル反応性官能基を含む加水分解縮合物が好ましい。この場合、加水分解縮合物をラジカル重合により硬化させることができ、膜の硬化収縮を最小限に抑えることが可能である。ラジカル反応性官能基としては、例えばビニル基、α−メチルビニル基、(メタ)アクリロイル基、スチリル基等の不飽和有機基が挙げられる。このうち、硬化反応が円滑に進むことから、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
上記加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物の中でも、下記式(S−1)で示される加水分解性シラン化合物(以下、「(s1)化合物」ともいう)と、下記式(S−2)で示される加水分解性シラン化合物(以下、「(s2)化合物」ともいう)とを含む加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物が好ましい。
上記式(S−1)中、R11は炭素数1〜6のアルキル基である。R12はラジカル反応性官能基を含む有機基である。pは1〜3の整数である。但し、複数のR11及びR12を含む場合、複数のR11及びR12は同一であっても異なっていてもよい。
上記式(S−2)中、R13は炭素数1〜6のアルキル基である。R14は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のフッ素化アルキル基、フェニル基、トリル基、ナフチル基、エポキシ基、アミノ基又はイソシアネート基である。nは0〜20の整数である。qは0〜3の整数である。但し、複数のR13及びR14を含む場合、複数のR13及びR14は同一であっても異なっていてもよい。
((s1)化合物)
(s1)化合物は、上記式(S−1)で示される加水分解性シラン化合物である。
上記R11で表される炭素数1〜6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、ブチル基等が挙げられる。これらのうち、R11がメチル基及びエチル基である場合は、(s1)化合物の加水分解が容易であるため好ましい。上記pとしては、加水分解縮合反応が円滑に進むことから1及び2が好ましく、1がより好ましい。
上記R12で表されるラジカル反応性官能基を含む有機基としては、例えば上述のラジカル反応性官能基により1個以上の水素原子が置換された炭化水素基等が挙げられる。この炭化水素基としては、直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜12のアラルキル基等が挙げられる。また、R12で表される有機基はヘテロ原子を有していてもよい。そのような有機基としては、例えばエーテル基、エステル基、スルフィド基等のヘテロ原子含有基を含む有機基が挙げられる。
pが1の場合における(s1)化合物としては、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、o−スチリルトリメトキシシラン、o−スチリルトリエトキシシラン、m−スチリルトリメトキシシラン、m−スチリルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、メタクリロイルオキシトリメトキシシラン、メタクリロイルオキシトリエトキシシラン、メタクリロイルオキシトリプロポキシシラン、アクリロイルオキシトリメトキシシラン、アクリロイルオキシトリエトキシシラン、アクリロイルオキシトリプロポキシシラン、2−メタクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、2−メタクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、2−メタクリロイルオキシエチルトリプロポキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリプロポキシシラン、2−アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、2−アクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、2−アクリロイルオキシエチルトリプロポキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリプロポキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリプロポキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、トリフルオロブチルトリメトキシシラン、3−(トリメトキシシリル)プロピル無水コハク酸等のトリアルコキシシラン化合物などが挙げられる。
pが2の場合における(s1)化合物としては、例えばビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルフェニルジメトキシシラン、ビニルフェニルジエトキシシラン、アリルメチルジメトキシシラン、アリルメチルジエトキシシラン、フェニルトリフルオロプロピルジメトキシシラン等のジアルコキシシラン化合物などが挙げられる。
pが3の場合における(s1)化合物としては、例えばアリルジメチルメトキシシラン、アリルジメチルエトキシシラン、ジビニルメチルメトキシシラン、ジビニルメチルエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルジフェニルメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルジフェニルメトキシシラン、3,3’−ジメタクリロイルオキシプロピルジメトキシシラン、3,3’−ジアクリロイルオキシプロピルジメトキシシラン、3,3’,3’’−トリメタクリロイルオキシプロピルメトキシシラン、3,3’,3’’−トリアクリロイルオキシプロピルメトキシシラン、ジメチルトリフルオロプロピルメトキシシラン等のモノアルコキシシラン化合物などが挙げられる。
これらの(s1)化合物のうち、硬化膜の耐擦傷性等を高いレベルで達成できるとともに縮合反応性が高くなることから、ビニルトリメトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、及び3−(トリメトキシシリル)プロピル無水コハク酸が好ましい。
((s2)化合物)
(s2)化合物は、上記式(S−2)で示される加水分解性シラン化合物である。
上記R13で表される炭素数1〜6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、ブチル基等が挙げられる。これらのうち、R13がメチル基及びエチル基である場合は、(s2)化合物の加水分解が容易であるため好ましい。上記のqとしては、加水分解縮合反応が円滑に進むことから1及び2が好ましく、1がより好ましい。
上記R14で表される炭素数1〜20のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、3−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1−メチルブチル基、2,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、4−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−メチルペンチル基、3,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、5−メチルヘキシル基、4−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、1−メチルヘキシル基、4,4−ジメチルペンチル基、3,4−ジメチルペンチル基、2,4−ジメチルペンチル基、1,4−ジメチルペンチル基、3,3−ジメチルペンチル基、2,3−ジメチルペンチル基、1,3−ジメチルペンチル基、2,2−ジメチルペンチル基、1,2−ジメチルペンチル基、1,1−ジメチルペンチル基、2,3,3−トリメチルブチル基、1,3,3−トリメチルブチル基、1,2,3−トリメチルブチル基、n−オクチル基、6−メチルヘプチル基、5−メチルヘプチル基、4−メチルヘプチル基、3−メチルヘプチル基、2−メチルヘプチル基、1−メチルヘプチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノナニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘプタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基等が挙げられる。中でも、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、炭素数1〜3のアルキル基がより好ましい。
qが0の場合における(s2)化合物としては、例えば4個の加水分解性基で置換されたシラン化合物、すなわち、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン等が挙げられる。
qが1の場合における(s2)化合物としては、1個の非加水分解性基と3個の加水分解性基とで置換されたシラン化合物、例えばメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−i−プロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ−i−プロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ナフチルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ナフチルトリエトキシシラン、アミノトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4―エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシ、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアノプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアノプロピルトリエトキシシラン、o−トリルトリメトキシシラン、m−トリルトリメトキシシラン、p−トリルトリメトキシシラン等が挙げられる。
qが2の場合における(s2)化合物としては、2個の非加水分解性基と2個の加水分解性基とで置換されたシラン化合物、例えばジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジトリルジメトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン等が挙げられる。
qが3の場合における(s2)化合物としては、3個の非加水分解性基と1個の加水分解性基とで置換されたシラン化合物、例えばトリメチルメトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリトリルメトキシシラン、トリブチルメトキシシラン等が挙げられる。
これらの(s2)化合物のうち、4個の加水分解性基で置換されたシラン化合物、及び1個の非加水分解性基と3個の加水分解性基とで置換されたシラン化合物が好ましく、1個の非加水分解性基と3個の加水分解性基とで置換されたシラン化合物がより好ましい。特に好ましい加水分解性シラン化合物としては、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−i−プロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、トリルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ナフチルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、及びγ−イソシアネートプロピルトリメトキシシランが挙げられる。このような加水分解性シラン化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(s1)化合物の使用量の下限としては、(s1)化合物及び(s2)化合物の合計モル数に対して5モル%が好ましい。(s1)化合物が5モル%未満の場合、得られる硬化膜の耐擦傷性等が低下する傾向がある。
((s1)化合物及び(s2)化合物の加水分解縮合)
上述の(s1)化合物と(s2)化合物とを加水分解縮合させる方法は、(s1)化合物及び(s2)化合物の少なくとも一部を加水分解して、加水分解性基をシラノール基に変換し、縮合反応を起こさせるものである限り特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用できる。
加水分解縮合反応に使用する水としては、逆浸透膜処理、イオン交換処理、蒸留等の方法により精製された水が挙げられる。このような精製水を用いることによって、副反応を抑制し、加水分解の反応性を向上させることができる。上記(s1)化合物及び(s2)化合物の加水分解性基の合計量1モルに対する水の使用量の下限としては、0.1モルが好ましく、0.3モルがより好ましく、0.5モルがさらに好ましい。また、上記水の使用量の上限としては、3モルが好ましく、2モルがより好ましく、1.5モルがさらに好ましい。このような範囲の量の水を用いることによって、加水分解縮合の反応速度を最適化することができる。
加水分解縮合反応に使用する溶媒は特に限定されるものではないが、例えばアルコール系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒等が挙げられる。なお、溶媒は、単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
アルコール系溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール、1−ヘキサノール、1−オクタノール、1−ノナノール、1−ドデカノール、ジアセトンアルコール等のアルキルアルコール;
ベンジルアルコール等の芳香族アルコールなどが挙げられる。
エーテル系溶媒としては、例えば
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル;
プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル;
ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のジエチレングリコールモノアルキルエーテル;
ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル等のジエチレングリコールジアルキルエーテル;
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等のジプロピレングリコールモノアルキルエーテルなどが挙げられる。
エステル系溶媒としては、例えば
酢酸エチル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸アミル、乳酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル等のカルボン酸エステル;
プロピレングリコールジアセテート等の多価アルコールカルボキシレート系溶媒;
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の多価アルコール部分エーテルカルボキシレート系溶媒などが挙げられる。
ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン等が挙げられる。
これらの中でも、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン及びシクロヘキサノンが好ましく、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル及びプロピレングリコールモノエチルエーテルがより好ましい。
加水分解縮合反応させる際には触媒を添加してもよい。触媒としては、例えば塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ポリリン酸等の無機酸;蟻酸、シュウ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、(無水)マレイン酸、酒石酸、乳酸、クエン酸等の有機酸;酸性イオン交換樹脂;アンモニア水、トリエチルアミン、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基などを挙げることができる。
触媒を添加する場合、触媒の使用量の下限としては、加水分解性シラン化合物の加水分解性基の合計1モルに対して0.00001モルが好ましく、0.0001モルがより好ましい。また、触媒の使用量の上限としては、加水分解性シラン化合物の加水分解性基の合計1モルに対して0.2モルが好ましく、0.1モルがより好ましい。触媒の使用量を上記範囲とすることにより、加水分解縮合反応を効果的に促進させることができる。なお、触媒は、最初から反応系内に投入しておいても、所定温度となった際に投入しても、段階的に投入しても、連続的に投入してもよい。
上記ポリシロキサンの重量平均分子量(Mw)の下限としては、500が好ましく、1,000がより好ましい。また、上記Mwの上限としては、10,000が好ましく、5,000がより好ましい。上記Mwを上記下限以上とすることで、当該硬化膜形成用組成物の成膜性を向上させることができる。一方、上記Mwを上記上限以下とすることにより、感度の低下を抑制できる。
[ノボラック樹脂]
上記ノボラック樹脂は、公知の方法を用いてフェノール類をホルムアルデヒド等のアルデヒド類により重縮合することによって得ることができる。
ノボラック樹脂を得るために用いられるフェノール類としては、例えばフェノール、p−クレゾール、m−クレゾール、o−クレゾール、2,3−ジメチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、3,4−ジメチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール、2,3,4−トリメチルフェノール、2,3,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、2,4,5−トリメチルフェノール、メチレンビスフェノール、メチレンビスp−クレゾール、レゾルシン、カテコール、2−メチルレゾルシン、4−メチルレゾルシン、o−クロロフェノール、m−クロロフェノール、p−クロロフェノール、2,3−ジクロロフェノール、m−メトキシフェノール、p−メトキシフェノール、p−ブトキシフェノール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、2,3−ジエチルフェノール、2,5−ジエチルフェノール、p−イソプロピルフェノール、α−ナフトール、β−ナフトール等が挙げられる。これらを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、ノボラック樹脂を得るために用いられるアルデヒド類としては、ホルムアルデヒドの他、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロロアセトアルデヒド等が挙げられる。これらを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記ノボラック樹脂の重量平均分子量(Mw)の下限としては、2,000が好ましく、3,000がより好ましい。また、上記Mwの上限としては、50,000が好ましく、40,000がより好ましい。上記Mwを上記下限以上とすることで、当該硬化膜形成用組成物の成膜性を向上させることができる。一方、上記Mwを上記上限以下とすることにより、感度の低下を抑制できる。
当該硬化膜形成用組成物中の[A]バインダー樹脂の含有量の下限としては、1質量%が好ましく、5質量%がより好ましい。また、上記含有量の上限としては、50質量%が好ましく、40質量%がより好ましい。[A]バインダー樹脂の含有量を上記下限以上とすることにより、感度をより高めつつ、硬度がより高く、耐溶剤性により優れる硬化膜を形成できる。一方、上記含有量を上記上限以下とすることにより、保存安定性をより向上させることができる。
なお、[A]バインダー樹脂には残存モノマーが不可避的不純物として含まれる。そのため、当該硬化膜形成用組成物は、通常[A]バインダー樹脂の残存モノマーを一定量含有する。当該硬化膜形成用組成物における上記残存モノマーの含有量としては、例えば固形分換算で1質量%以上15質量%以下である。なお、[A]バインダー樹脂が[a]ポリマーである場合、上記残存モノマーの分子中におけるエポキシ基、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の重合性基の数としては、通常2以下であり、1が好ましい。また、上記「固形分」とは、当該硬化膜形成用組成物中の[F]溶媒以外の成分をいう。
〔[B]重合性化合物〕
[B]重合性化合物は、放射線照射や加熱等により重合する化合物であれば特に限定されないが、感度向上の観点から(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、ビニル基又はこれらの組み合わせを有する化合物が好ましく、分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物がより好ましい。
分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する[B]重合性化合物としては、例えばジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタアクリレート、トリペンタエリスリトールオクタアクリレート、テトラペンタエリスリトールノナアクリレート、テトラペンタエリスリトールデカアクリレート、ペンタペンタエリスリトールウンデカアクリレート、ペンタペンタエリスリトールドデカアクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタメタクリレート、トリペンタエリスリトールオクタメタクリレート、テトラペンタエリスリトールノナメタクリレート、テトラペンタエリスリトールデカメタクリレート、ペンタペンタエリスリトールウンデカメタクリレート、ペンタペンタエリスリトールドデカメタクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、(2−アクリロイルオキシプロポキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)−3、5−ジメチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)−3、5−ジメチルフェニル]フルオレン等が挙げられる。
これらの中でも、感度向上の観点から、3つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する重合性化合物が好ましく、4つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する重合性化合物がより好ましく、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタアクリレート及びトリペンタエリスリトールオクタアクリレートがさらに好ましい。
[A]バインダー樹脂100質量部に対する[B]重合性化合物の含有量の下限としては、1質量部が好ましく、10質量部がより好ましく、20質量部がさらに好ましい。また、上記含有量の上限としては、200質量部が好ましく、150質量部がより好ましく、120質量部がさらに好ましい。上記含有量を上記範囲内とすることにより、保存安定性及び感度をより高めつつ、硬度がより高く、かつ耐溶剤性により優れる硬化膜を形成できる。
〔[C]QD〕
[C]QDとしては特に限定されないが、CdやPbを構成元素とせず、例えばIn(インジウム)やSi(珪素)等を構成元素として構成された安全な材料からなる半導体量子ドットが好ましい。
[C]QDを構成する材料としては、2族元素、11族元素、12族元素、13族元素、14族元素、15族元素、16族元素の元素及びこれらの組み合わせを含む化合物等が挙げられる。
上記元素としては、例えばBe(ベリリウム)、Mg(マグネシウム),Ca(カルシウム)、Sr(ストロンチウム)、Ba(バリウム)、Cu(銅)、Ag(銀)、金(Au)、亜鉛(Zn)、B(ホウ素)、Al(アルミニウム)、Ga(ガリウム)、In(インジウム)、Tl(タリウム)、C(炭素)、Si(珪素)、Ge(ゲルマニウム)、Sn(錫)、N(窒素)、P(リン)、As(ヒ素)、Sb(アンチモン)、Bi(ビスマス)、O(酸素)、S(硫黄)、Se(セレン)、Te(テルル)、Po(ポロニウム)等が挙げられる。
また、[C]QDが、500nm以上600nm以下の緑色光の波長領域に蛍光極大を有する化合物(A)、及び/又は600nm以上700nm以下の赤色光の波長領域に蛍光極大を有する化合物(B)を含むことが好ましい。
[C]QDが上記蛍光発光特性を有する化合物(A)及び/又は化合物(B)を含むことで、可視光を用いて画像の表示を行う発光表示素子の発光層用の硬化膜形成用組成物に当該硬化膜形成用組成物を適用できる。
また、[C]QDは、1種の化合物からなる均質構造型であってもよいし、2種以上の化合物からなるコアシェル構造型であってもよい。
コアシェル構造型の[C]QDは、1つの種類の化合物でコア構造を形成し、別の種類の化合物でコア構造を被覆して構成される。例えばバンドギャップのより大きい半導体を用いてコアの半導体を被覆することにより、光励起によって生成された励起子(電子−正孔対)がコア内に閉じ込められる。その結果、[C]QD表面での無輻射遷移の確率が減少し、蛍光量子収率が向上する。
[C]QDとしては、Inを構成元素として含む化合物からなる半導体量子ドットが好ましく、コアシェル構造型半導体量子ドットであるInP/ZnS、InP/ZnSe、CuInS2/ZnS及び(ZnS/AgInS2)固溶体/ZnS、並びに均質構造型半導体量子ドットであるAgInS2及びZnドープAgInS2がより好ましく、InP/ZnSがさらに好ましい。なお、上記InP/ZnSは、InPをコアとし、ZnSをシェルとする半導体量子ドットである。その他のコアシェル構造型半導体量子ドットも同様である。
[C]QDの平均粒径の下限としては、0.5nmが好ましく、1.0nmがより好ましい。また、上記平均粒径の上限としては、20nmが好ましく、10nmがより好ましい。平均粒径が上記下限未満である場合は、[C]QDの蛍光特性が不安定になる場合がある。一方、[C]QDの平均粒径が上記上限を超える場合は、量子閉じ込め効果が得られない場合があり、所望の蛍光特性が得られなくなるおそれがある。ここで「平均粒径」とは、分散液中の[C]QDの粒度分布の体積中心径D50で表される平均粒径を指す。
なお、[C]QDの蛍光の波長領域は、[C]QDの構成材料や平均粒径を適宜選択することにより制御できる。
[C]QDの形状は特に限定されず、例えば球状、棒状、円盤状、その他の形状であってもよい。[C]QDの形状、分散状態等の情報については、透過型電子顕微鏡により得ることができる。
[C]QDを得る方法としては、例えば配位性有機溶媒中で有機金属化合物を熱分解する公知の方法を利用することができる。また、コアシェル構造型の[C]QDは、例えば反応により均質なコア構造を形成した後、反応系内にコア表面にシェルを形成するための前駆体を添加し、コア表面にシェルを形成した後、反応を停止させ、溶媒から分離することで得られる。[C]QDの平均粒径を制御する方法としては、例えば反応温度や反応時間等を調整する方法が挙げられる。なお、市販されているものを利用することも可能である。
また、コアシェル構造型半導体量子ドットであるInP/ZnSは、例えば半導体量子ドットに関する技術文献「Chemistry of Materials. 2015, 27, 4893−4898」に記載されている方法等を参照して合成することもできる。
当該硬化膜形成用組成物における[C]QDの含有量の下限としては、[A]バインダーポリマー100質量部に対して、1質量部が好ましく、10質量部がより好ましい。また、上記含有量の上限としては、[A]バインダーポリマー100質量部に対して、150質量部が好ましく、100質量部がより好ましい。[C]QDの含有量を上述の範囲とすることで、優れた蛍光特性を有する硬化膜(発光層)を形成することができる。
〔[D]化合物〕
[D]化合物は、上述したように、チオール基によって[C]QDの表面に効果的に結合することにより、[C]QDの蛍光量子収率を低下させる原因となる酸素、水分、残存モノマー等がその表面に付着することを抑制する。さらに、[D]化合物が2以上のチオール基を有する場合、1のチオール基で[C]QDの表面と結合しつつ、別のチオール基で[A]バインダー樹脂と結合することで[A]バインダー樹脂及び[C]QDを近接させ、上述の酸素、水分、残存モノマー等の付着をより顕著に抑制する。
[D]化合物の有するチオール基の数の下限は、通常1であり、2が好ましく、3がより好ましく、4がさらに好ましい。一方、[D]化合物の有するチオール基の数の上限としては、8が好ましく、6がより好ましい。[D]化合物の有するチオール基の数を上記下限以上とすることで、酸素、水分、残存モノマー等の[C]QDの表面への付着を効果的に抑制できる。一方、[D]化合物の有するチオール基の数を上記上限以下とすることで、[C]QDの凝集等を抑制できる。
[D]化合物としては、チオール基を有する化合物であれば特に限定されないが、チオール基を有する連鎖移動剤が好ましい。このように、当該硬化膜形成用組成物が[D]化合物としてチオール基を有する連鎖移動剤を含有することで、QDの蛍光量子収率の低下をより抑制できる。当該硬化膜形成用組成物が上記構成を有することで上記効果を奏する理由については必ずしも明確ではないが、例えば以下のように推察される。すなわち、上述の通り、当該硬化膜形成用組成物は、通常[A]バインダー樹脂の残存モノマーを一定量含有し、この残存モノマーが[C]QDの蛍光量子収率を低下させる原因となる。しかし、当該硬化膜形成用組成物がチオール基を有する連鎖移動剤を含有することで、[B]重合性化合物の重合の際、上記連鎖移動剤が[B]重合性化合物と上記残存モノマーとの重合を促進する。その結果、当該硬化膜形成用組成物により形成される硬化膜は、遊離した上記残存モノマーの含有量が低減され、[C]QDの蛍光量子収率の低下がより抑制されると考えられる。また、[D]化合物がチオール基を有する連鎖移動剤であることで、青色発光有機EL素子を用いたディスプレイにQDを適用する際、遊離する上記残存モノマーの含有量を低減することで、[C]QDの蛍光量子収率の低下をより抑制できる。その結果、青色発光有機EL素子から発せられた青色光の強度に対して、[C]QDからの蛍光強度を維持し易くなり、高い色再現性をより容易かつ確実に維持することができると考えられる。
[D]化合物としては、下記式(1)で表される化合物(以下、「化合物(I)」ともいう)が好ましい。
上記式(1)中、Xは、炭素数1〜20のn価の有機基である。R1は、炭素数1〜10のアルカンジイル基である。nは、1〜8の整数である。複数のR1は、同一でもよく、異なっていてもよい。
上記Xで表される有機基としては、例えば炭素数1〜20のn価の炭化水素基、この炭化水素基の炭素−炭素間に2価のヘテロ原子含有基を有する基、上記炭化水素基及び上記へテロ原子含有基を有する基の水素原子の一部又は全部を1価のヘテロ原子含有基で置換した基等が挙げられる。
ここで「炭化水素基」とは、鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基が含まれる。この「炭化水素基」は、飽和炭化水素基でも不飽和炭化水素基でもよい。「鎖状炭化水素基」とは、環状構造を含まず、鎖状構造のみで構成された炭化水素基をいい、直鎖状炭化水素基及び分岐状炭化水素基の両方を含む。「脂環式炭化水素基」とは、環構造としては脂環構造のみを含み、芳香環構造を含まない炭化水素基をいい、単環の脂環式炭化水素基及び多環の脂環式炭化水素基の両方を含む。但し、脂環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造を含んでいてもよい。「芳香族炭化水素基」とは、環構造として芳香環構造を含む炭化水素基をいう。但し、芳香環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造や脂環構造を含んでいてもよい。
上記炭化水素基としては、例えば
メタン、エタン、プロパン、n−ブタン、イソブタン等のアルカン;
エテン、プロペン、1−ブテン、2−ブテン、2−メチルプロペン等のアルケン;
エチン、プロピン、1−ブチン、2−ブチン等のアルキンなどの鎖状炭化水素、
シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン等の単環のシクロアルカン;
シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン等の単環のシクロアルケン;
ノルボルナン、トリシクロデカン、アダマンタン等の多環のシクロアルカン;
ノルボルネン、トリシクロデセン等の多環のシクロアルケンなどの脂環式炭化水素、
ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン等の芳香族炭化水素などの炭化水素からn個の水素原子を除いた基等が挙げられる。
上記炭素−炭素間に含まれていてもよい2価のヘテロ原子含有基としては、例えば−O−、−S−、−NR’−、−CO−、−CS−等が挙げられる。上記R’は、水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基である。上記2価のヘテロ原子含有基としては、−O−が好ましい。
上記水素原子を置換していてもよい1価のヘテロ原子含有基としては、例えば−OH、−SH、−NHR’、−COR’、−CSR’等が挙げられる。
上記Xで表される有機基の炭素数の下限としては、通常1であり、3が好ましく、4がより好ましい。一方、上記炭素数の上限としては、15が好ましく、10がより好ましく、6がさらに好ましい。
上記nの下限としては、通常1であり、2が好ましく、3がより好ましく、4がさらに好ましい。一方、上記nの上限としては、6が好ましい。
上記Xで表される有機基としては、下記式(X−1)で表される基、下記式(X−2)で表される基、及び下記式(X−3)で表される基が好ましい。
上記式(X−1)〜(X−3)中、*は、式(1)における−O−との結合部位を示す。上記式(X−3)中、mは、1〜5の整数である。
上記R1で表されるアルカンジイル基としては、例えばメタンジイル基、1,2−エタンジイル基、1,1−エタンジイル基、1,3−プロパンジイル基、1,2−プロパンジイル基、1,1−プロパンジイル基、2,2−プロパンジイル基等が挙げられる。上記R1としては、炭素数1〜3のアルカンジイル基が好ましく、1,2−エタンジイル基及び1,2−プロパンジイル基がより好ましい。
上記mとしては、1〜4の整数が好ましく、2〜4の整数がより好ましく、3がさらに好ましい。
[C]QDの表面に酸素、水分、残存モノマー等が付着することをより効果的に抑制する観点から、化合物(I)としては、下記式で表される化合物が好ましい。
[A]バインダー樹脂100質量部に対する[D]化合物の含有量の下限としては、0.1質量部が好ましく、5質量部がより好ましく、15質量部がさらに好ましい。また、上記含有量の上限としては、60質量部が好ましく、40質量部がより好ましく、25質量部がさらに好ましい。上記含有量を上記範囲内とすることにより、酸素、水分、残存モノマー等の[C]QDへの付着をより抑制することができ、結果として[C]QDの蛍光量子収率の低下をより抑制することができる。
〔[E]感放射線性化合物〕
当該硬化膜形成用組成物は、[E]感放射線性化合物をさらに含有してもよい。この場合、当該硬化膜形成用組成物に感放射線性を付与できる。[E]感放射線性化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
[E]感放射線性化合物としては、例えば感放射線性ラジカル重合開始剤、感放射線性酸発生剤、感放射線性塩基発生剤、これらの組み合わせ等が挙げられる。
上記感放射線性ラジカル重合開始剤は、例えば[B]重合性化合物としてラジカル重合性の化合物を用いる場合、当該硬化膜形成用組成物の放射線による硬化反応をより促進させることができる。
上記感放射線性ラジカル重合開始剤としては、例えば可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等の放射線の露光により、[B]重合性化合物のラジカル重合反応を開始し得る活性種を発生することができる化合物等が挙げられる。
上記感放射線性ラジカル重合開始剤の具体例としては、例えばO−アシルオキシム化合物、α−アミノケトン化合物、α−ヒドロキシケトン化合物、アシルホスフィンオキシド化合物等が挙げられる。
上記O−アシルオキシム化合物としては、例えば1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−エタン−1−オンオキシム−O−アセタート、1−[9−エチル−6−ベンゾイル−9.H.−カルバゾール−3−イル]−オクタン−1−オンオキシム−O−アセテート、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル]−エタン−1−オンオキシム−O−ベンゾエート、1−[9−n−ブチル−6−(2−エチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル]−エタン−1−オンオキシム−O−ベンゾエート、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロフラニルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロピラニルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチル−5−テトラヒドロフラニルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)、エタノン,1−[9−エチル−6−{2−メチル−4−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラニル)メトキシベンゾイル}−9.H.−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロフラニルメトキシベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)、1,2−オクタンジオン−1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)等が挙げられる。
上記α−アミノケトン化合物としては、例えば2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルホリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン等が挙げられる。
上記α−ヒドロキシケトン化合物としては、例えば1−フェニル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−i−プロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられる。
上記アシルホスフィンオキシド化合物としては、例えばジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド等が挙げられる。
上記感放射線性ラジカル重合開始剤としては、放射線による硬化反応をより促進させる観点から、O−アシルオキシム化合物、α−アミノケトン化合物及びアシルホスフィンオキシド化合物が好ましく、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)、1,2−オクタンジオン−1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン及びジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドがより好ましい。
上記感放射線性酸発生剤は、[A]バインダー樹脂としてポリシロキサン等の酸により硬化反応が促進される化合物を用いる場合、当該硬化膜形成用組成物の放射線感度を高めることができる。感放射線性酸発生剤としては、例えば可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等の放射線の露光により酸を発生させる化合物などが挙げられる。
上記感放射線性酸発生剤の具体例としては、例えばヨードニウム塩系感放射線性酸発生剤、スルホニウム塩系感放射線性酸発生剤、テトラヒドロチオフェニウム塩系感放射線性酸発生剤、イミドスルホネート系感放射線性酸発生剤、オキシムスルホネート系感放射線性酸発生剤、キノンジアジド化合物等が挙げられる。
上記ヨードニウム塩系感放射線性酸発生剤としては、例えばジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムピレンスルホネート、ジフェニルヨードニウムドデシルベンゼンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロn−ブタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムドデシルベンゼンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムナフタレンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロn−ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。
上記スルホニウム塩系感放射線性酸発生剤としては、例えばトリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムナフタレンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、(ヒドロキシフェニル)ベンゼンメチルスルホニウムトルエンスルホネート、シクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジシクロヘキシル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムカンファースルホネート、(4−ヒドロキシフェニル)ベンジルメチルスルホニウムトルエンスルホネート、1−ナフチルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ナフチルジエチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−シアノ−1−ナフチルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−ニトロ−1−ナフチルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−メチル−1−ナフチルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−シアノ−1−ナフチル−ジエチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−ニトロ−1−ナフチルジエチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−メチル−1−ナフチルジエチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−ヒドロキシ−1−ナフチルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート等が挙げられる。
上記テトラヒドロチオフェニウム塩系感放射線性酸発生剤としては、例えば4−ヒドロキシ−1−ナフチルテトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−メトキシ−1−ナフチルテトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−エトキシ−1−ナフチルテトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−メトキシメトキシ−1−ナフチルテトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−エトキシメトキシ−1−ナフチルテトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−(1−メトキシエトキシ)−1−ナフチルテトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−(2−メトキシエトキシ)−1−ナフチルテトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−メトキシカルボニルオキシ−1−ナフチルテトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−エトキシカルボニルオキシ−1−ナフチルテトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−n−プロポキシカルボニルオキシ−1−ナフチルテトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−i−プロポキシカルボニルオキシ−1−ナフチルテトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−n−ブトキシカルボニルオキシ−1−ナフチルテトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−t−ブトキシカルボニルオキシ−1−ナフチルテトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−(2−テトラヒドロフラニルオキシ)−1−ナフチルテトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−(2−テトラヒドロピラニルオキシ)−1−ナフチルテトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−ベンジルオキシ−1−ナフチルテトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(ナフチルアセトメチル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4,7−ジブトキシ−1−ナフチル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート等が挙げられる。
上記イミドスルホネート系感放射線性酸発生剤としては、例えばトリフルオロメチルスルホニルオキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エンジカルボキシイミド、スクシンイミドトリフルオロメチルスルホネート、フタルイミドトリフルオロメチルスルホネート、N−ヒドロキシナフタルイミドメタンスルホネート、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドプロパンスルホネート等が挙げられる。
上記オキシムスルホネート系感放射線性酸発生剤としては、例えば(5−プロピルスルホニルオキシイミノ−5H−チオフェン−2−イリデン)−(2−メチルフェニル)アセトニトリル、(5−オクチルスルホニルオキシイミノ−5H−チオフェン−2−イリデン)−(2−メチルフェニル)アセトニトリル、(カンファースルホニルオキシイミノ−5H−チオフェン−2−イリデン)−(2−メチルフェニル)アセトニトリル、(5−p−トルエンスルホニルオキシイミノ−5H−チオフェン−2−イリデン)−(2−メチルフェニル)アセトニトリル、(5−オクチルスルホニルオキシイミノ)−(4−メトキシフェニル)アセトニトリル等が挙げられる。
上記キノンジアジド化合物としては、例えばトリヒドロキシベンゾフェノンの1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル、テトラヒドロキシベンゾフェノンの1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル、ペンタヒドロキシベンゾフェノンの1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル、ヘキサヒドロキシベンゾフェノンの1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル、(ポリヒドロキシフェニル)アルカンの1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル等が挙げられる。
上記トリヒドロキシベンゾフェノンの1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルとしては、例えば2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンアジド−4−スルホン酸エステル、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,4,6−トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,4,6−トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル等が挙げられる。
上記テトラヒドロキシベンゾフェノンの1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルとしては、例えば2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,3,4,3’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,3,4,3’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,3,4,2’−テトラヒドロキシ−4’−メチルベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,3,4,2’−テトラヒドロキシ−4’−メチルベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,3,4,4’−テトラヒドロキシ−3’−メトキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,3,4,4’−テトラヒドロキシ−3’−メトキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル等が挙げられる。
上記ペンタヒドロキシベンゾフェノンの1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルとしては、例えば2,3,4,2’,6’−ペンタヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,3,4,2’,6’−ペンタヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル等が挙げられる。
上記ヘキサヒドロキシベンゾフェノンの1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルとしては、例えば2,4,6,3’,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,4,6,3’,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、3,4,5,3’,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、3,4,5,3’,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル等が挙げられる。
上記(ポリヒドロキシフェニル)アルカンの1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルとしては、例えばビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、トリ(p−ヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、トリ(p−ヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、1,1,1−トリ(p−ヒドロキシフェニル)エタン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、1,1,1−トリ(p−ヒドロキシフェニル)エタン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,2−ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,2−ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、1,1,3−トリス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルプロパン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、1,1,3−トリス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルプロパン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル等が挙げられる。
上記感放射線性酸発生剤としては、硬化反応をより促進させる観点から、オキシムスルホネート系感放射線性酸発生剤、及びキノンジアジド化合物が好ましく、(5−プロピルスルホニルオキシイミノ−5H−チオフェン−2−イリデン)−(2−メチルフェニル)アセトニトリル、及び1,1,1−トリ(p−ヒドロキシフェニル)エタン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルがより好ましい。
上記感放射線性塩基発生剤は、[A]バインダー樹脂としてポリシロキサン等の塩基により硬化反応が促進される化合物を用いる場合、当該硬化膜形成用組成物の放射線感度をより高めることができる。感放射線性塩基発生剤としては、例えば可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等の放射線の露光により塩基を発生する化合物などが挙げられる。
感放射線性塩基発生剤の具体例としては、例えば
4−(メチルチオベンゾイル)−1−メチル−1−モルホリノエタン、(4−モルホリノベンゾイル)−1−ベンジル−1−ジメチルアミノプロパン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン、N−(2−ニトロベンジルオキシカルボニル)ピロリジン、1−(アントラキノン−2−イル)エチルイミダゾールカルボキシレート等の複素環基含有感放射線性塩基発生剤;
2−ニトロベンジルシクロヘキシルカルバメート、[[(2,6−ジニトロベンジル)オキシ]カルボニル]シクロヘキシルアミン、ビス[[(2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]ヘキサン−1,6−ジアミン、トリフェニルメタノール、o−カルバモイルヒドロキシルアミド、o−カルバモイルオキシム、ヘキサアンミンコバルト(III)トリス(トリフェニルメチルボレート)、1,2−ジシクロヘキシル−4,4,5,5−テトラメチルビグアニジウムn−ブチルトリフェニルボラートなどが挙げられ、硬化反応をより促進させる観点から、1,2−ジシクロヘキシル−4,4,5,5−テトラメチルビグアニジウムn−ブチルトリフェニルボラートが好ましい。
当該硬化膜形成用組成物が[E]感放射線性化合物を含有する場合、[E]感放射線性化合物の含有量の下限としては、[A]バインダー樹脂100質量部に対して1質量部が好ましく、10質量部がより好ましい。また、上記含有量の上限としては、[A]バインダー樹脂100質量部に対して50質量部が好ましく、40質量部がより好ましい。上記含有量を上記範囲とすることにより、当該硬化膜形成用組成物の放射線感度をより高めることができる。
〔[F]溶媒〕
当該硬化膜形成用組成物は上記成分以外に[F]溶媒を含有してもよい。当該硬化膜形成用組成物が[F]溶媒を含有すると、その塗布性が向上する。[F]溶媒としては、上記各成分を溶解又は分散させることができる限り特に限定されないが、例えば上述した[a]ポリマーやポリシロキサンを合成する際に使用する溶媒等が挙げられる。なお、[F]溶媒は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
〔[G]その他の成分〕
当該硬化膜形成用組成物は、上述した成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、熱重合開始剤、保存安定剤、接着助剤等のその他の成分を含有してもよい。[G]その他の成分は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。当該硬化膜形成用組成物が[G]その他の成分を含有する場合、その含有量の上限としては[A]バインダー樹脂100質量部に対して10質量部が好ましく、1質量部がより好ましい。
当該硬化膜形成用組成物は、適宜の方法により調製することが可能であるが、例えば[F]溶媒中で、[A]バインダー樹脂、[B]重合性化合物、[C]QD、[D]化合物及び必要に応じて任意成分を混合することにより調製できる。混合する際の組成物中の固形分の濃度の下限としては、5質量%が好ましく、10質量%がより好ましい。また、上記濃度の上限としては、80質量%が好ましく、70質量%がより好ましい。固形分の濃度を上記範囲とすることにより、塗布性を向上させることができる。
<硬化膜>
当該硬化膜は、バインダー樹脂、及びこのバインダー樹脂中に分散し、かつ少なくとも一部の表面に下記式(1)で表される化合物に由来する構造が結合している半導体量子ドットを含有する。
上記式(1)中、Xは、炭素数1〜20のn価の有機基である。R1は、炭素数1〜10のアルカンジイル基である。nは、1〜8の整数である。複数のR1は、同一でもよく、異なっていてもよい。
当該硬化膜は、例えば当該硬化膜形成用組成物により得られる。この場合、上記バインダー樹脂は、当該硬化膜形成用組成物の[A]バインダー樹脂と、[B]重合性化合物により形成される重合体とを含有する。なお、[B]重合性化合物により形成される重合体には、[A]バインダー樹脂の残存モノマーに由来する構造単位が含まれていてもよい。
当該硬化膜は、半導体量子ドットの表面に上記式(1)で表される化合物に由来する構造が結合しているため、上記QDの表面に酸素、水分、残存モノマー等が付着することによる蛍光量子収率の低下が抑制され、例えば高い色再現性を有する硬化膜を提供することができる。また、上記式(1)のnが2以上の場合、上記式(1)で表される化合物に由来する構造は、上記QDの表面及び上記バインダー樹脂の双方に結合していることが好ましい。すなわち、当該硬化膜の含有するQDは、上記式(1)で表される化合物に由来する構造を介して上記バインダー樹脂に結合していることが好ましい。この場合、酸素、水分、残存モノマー等の上記QDの表面への付着をより効果的に抑制することができ、その結果、蛍光量子収率の低下を顕著に抑制できる。
当該硬化膜は、パターン化されていてもよいし、パターン化されていなくてもよいが、当該硬化膜がパターン化されていると、サブ画素として有用な発光層に適用することができる。当該硬化膜の形成方法は、特に限定されず、例えば放射線照射により硬化させる方法であっても、加熱により硬化させる方法であってもよいが、後述する放射線照射により硬化させる方法を適用することが好ましい。この方法によれば、パターン化された硬化膜(発光層)を形成することができる。
当該硬化膜は、発光表示素子の発光層としての利用に適している。以下、当該発光表示素子の好適な実施形態について説明する。
<発光表示素子>
図1は、一実施形態の発光表示素子100を模式的に示す断面図である。発光表示素子100は、第1基材12上に発光層13(13a、13b、13c)及びブラックマトリクス14を設けて構成された波長変換基板11と、波長変換基板11上に接着剤層15を介して貼り合わされた光源基板18とを有する。
第1基材12は、ガラス、石英、透明樹脂等により構成される。上記透明樹脂としては、例えば透明ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、環状オレフィン系樹脂等が挙げられる。
波長変換基板11の発光層13は、上述した硬化膜形成用組成物を用い、パターニングして形成される。発光層13は、当該硬化膜形成用組成物を用いて形成しているため、QDの蛍光量子収率の低下を抑制することができ、例えば色再現性の高い発光層とすることができる。
波長変換基板11は、発光層13のそれぞれが含有するQDにより、光源基板18の光源17からの励起光を波長変換し、所望とする波長の蛍光を発する。波長変換基板11では、第1発光層13aと第2発光層13bと第3発光層13cとが、それぞれ異なるQDを含んで構成され、異なる蛍光を発することができる。例えば波長変換基板11は、第1発光層13aが励起光を赤色の光に変換し、第2発光層13bが励起光を緑色の光に変換し、第3発光層13cが励起光を青色の光に変換するように構成することができる。
その場合、発光層13a、発光層13b及び発光層13cは、それぞれが所望とする蛍光特性を有するように、含有するQDの選択がなされる。そのため、波長変換基板11の発光層13a、発光層13b及び発光層13cの形成においては、異なる発光特性のQDを含む、例えば3種の硬化膜形成用組成物が準備される。
波長変換基板11の発光層13の平均厚さの下限としては、100nmが好ましく、1μmがより好ましい。また、上記平均厚さの上限としては、100μmが好ましい。上記平均厚さが上記下限未満であると、励起光を十分吸収することができず、光変換効率が低下するために発光表示素子の輝度が十分に確保できないおそれがある。
第1基材12上の各発光層13の間には、ブラックマトリクス14が配置されている。ブラックマトリクス14は、公知の遮光性の材料を用い、公知の方法に従ってパターニングして形成することができる。なお、ブラックマトリクス14は、波長変換基板11において、必須の構成要素ではなく、波長変換基板11は、ブラックマトリクス14を設けない構成とすることも可能である。
接着剤層15は、後述する紫外光又は青色光を透過する公知の接着剤を用いて形成される。なお、接着剤層15は、図1に示すように、第1基材12上に各発光層13の全面を被覆するように設ける必要はなく、波長変換基板11の外縁のみに設けることも可能である。
光源基板18は、第2基材16と、第2基材16の波長変換基板11側に配置された光源17とを備えている。光源17からはそれぞれ励起光として紫外光又は青色光が出射される。
光源17(17a、17b、17c)としては、特に限定されるものではなく、公知の構造の紫外発光有機EL素子、青色発光有機EL素子等の使用が可能であり、公知の製造方法により作製することが可能である。ここで、紫外光としては、主発光ピークが360nm以上435nm以下であることが好ましく、青色光としては、主発光ピークが435nmを超えて480nm以下であることが好ましい。光源17は、それぞれの出射光が対向する発光層13を照射するように、指向性を有していることが好ましい。
発光表示素子100は、第1光源17aからの励起光を波長変換基板11の第1発光層13aのQDにより波長変換する。同様に、第2光源17bからの励起光を波長変換基板11の第2発光層13bのQDにより波長変換し、第3光源17cからの励起光を波長変換基板11の第3発光層13cのQDにより波長変換する。このようにして、各光源17からの励起光が、それぞれ所望とする波長の可視光に変換されて表示に用いられる。
発光表示素子100においては、第1発光層13aの設けられた部分が、赤色表示を行うサブ画素を構成する。すなわち、波長変換基板11の第1発光層13aは、光源基板18の対向する第1光源17aからの励起光を赤色光に変換する。また、第2発光層13bの設けられた部分が、緑色表示を行うサブ画素を構成する。すなわち、第2発光層13bは、光源基板18の対向する第2光源17bからの励起光を緑色光に変換する。また、第3発光層13cの設けられた部分は、青色表示を行うサブ画素を構成する。例えば励起光として紫外光を用いる場合、第3発光層13cは、光源基板18の対向する第3光源17cからの紫外光を青色光に変換する。
なお、発光表示素子100においては、第3光源17cからの励起光として青色光を用いることもできる。この場合、波長変換基板11は、第3発光層13cの代わりに樹脂中に光散乱粒子を分散して構成された光散乱層を用いることも可能である。こうすることで、励起光である青色光を波長変換することなく、そのままの波長特性で使用することができる。
発光表示素子100は、第1発光層13aを備えたサブ画素、第2発光層13bを備えたサブ画素及び第3発光層13cを備えたサブ画素の3種のサブ画素により、画像を構成する最小単位となる1つの画素を構成する。
以上の構成を有する発光表示素子100は、第1発光層13aを備えたサブ画素、第2発光層13bを備えたサブ画素及び第3発光層13cを備えたサブ画素毎に、赤色、緑色又は青色の光の発光が制御され、フルカラーの表示が行われる。
なお、発光表示素子100においては、発光層13と第1基材12との間に、カラーフィルタを設けることが可能である。すなわち、第1発光層13aと第1基材12との間に赤色のカラーフィルタを設け、第2発光層13bと第1基材12との間に緑色のカラーフィルタを設け、第3発光層13cと第1基材12との間に青色のカラーフィルタを設けることができる。これにより、表示の色の純度を高めることができる。ここで、カラーフィルタとしては、液晶表示素子用等として公知のものを公知の方法で形成して用いることができる。
<硬化膜の形成方法>
当該硬化膜の形成方法は、基板の一方の面側に塗膜を形成する工程(以下、「塗膜形成工程」ともいう)、上記塗膜の少なくとも一部に放射線を照射(露光)する工程(以下、「放射線照射工程」ともいう)、放射線照射後の塗膜を現像する工程(以下、「塗膜現像工程」ともいう)、及び塗膜を加熱する工程(以下、「塗膜加熱工程」ともいう)を備え、感放射線性化合物を含有する当該硬化膜形成用組成物により上記塗膜を形成する。
当該硬化膜の形成方法によれば、上述した当該硬化膜形成用組成物を用いているため、QDの蛍光量子収率の低下が抑制された硬化膜を容易かつ確実に形成することができる。以下、各工程についてそれぞれ説明する。
[塗膜形成工程]
塗膜形成工程では、例えば当該硬化膜形成用組成物を基板上に塗布することにより塗膜を形成する。当該硬化膜形成用組成物を塗布後、塗布面を加熱(プレベーク)することにより溶媒等を除去してもよい。
塗膜を形成する基板の材質としては、特に限定されるものではないが、例えばガラス、石英、シリコン、樹脂等が挙げられる。上記樹脂の具体例としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリイミド、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンの開環重合体、その水素添加物等が挙げられる。また、これらの基板には、所望により、シランカップリング剤等による薬剤処理、プラズマ処理、イオンプレーティング、スパッタリング、真空蒸着等の前処理を施しておいてもよい。
当該硬化膜形成用組成物の塗布方法としては特に限定されず、例えばスプレー法、ロールコート法、回転塗布法(スピンコート法)、スリットダイ塗布法、バー塗布法等の方法を採用することができる。これらの塗布方法の中でも、スピンコート法及びスリットダイ塗布法が好ましい。加熱(プレベーク)の条件は、各成分の種類、配合割合等によっても異なるが、例えば70℃以上130℃以下の温度で1分以上10分以下の加熱時間とすればよい。
[放射線照射工程]
放射線照射工程では、基板上に形成された塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する。塗膜の一部にのみ放射線を照射する際には、例えば所望の形状のパターンを有するフォトマスクを介して放射線を照射してもよい。このフォトマスクを用いることにより、照射された放射線の一部がフォトマスクを通過し、その一部の放射線が塗膜に照射される。
照射に使用される放射線としては、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等が挙げられる。これらの放射線の中でも、波長が190nm以上450nm以下の範囲にある放射線が好ましく、365nmの紫外線を含む放射線がより好ましい。
放射線照射工程における積算照射量(露光量)の下限としては、100J/m2が好ましく、200J/m2がより好ましい。また、上記積算照射量の上限としては、2,000J/m2が好ましく、1,000J/m2がより好ましい。なお、本明細書において「積算照射量」とは、放射線の波長365nmにおける強度を照度計(例えばOAI Optical Associates Inc.社の「OAI model 356」)により測定した値の積算値をいう。
[塗膜現像工程]
塗膜現像工程では、放射線照射後の塗膜を現像して不要な部分を除去する。
現像に使用される現像液としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等のアルカリ性化合物の少なくとも1種を溶解した水溶液を使用することができる。上述のアルカリ性化合物の水溶液には、メタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒を適当量添加して使用することもできる。
現像方法としては、例えば液盛り法、ディッピング法、揺動浸漬法、スプレー法等が挙げられる。現像時間は、硬化膜形成用組成物の組成によって異なるが、その現像時間の下限としては、5秒が好ましく、10秒がより好ましい。また、現像時間の上限としては、300秒が好ましく、180秒がより好ましい。現像処理に続いて、例えば流水洗浄を30秒以上90秒以下の時間で行った後、圧縮空気や圧縮窒素で乾燥させることにより、所望のパターンが得られる。
[塗膜加熱工程]
塗膜加熱工程では、ホットプレート、オーブン等の適当な加熱装置により塗膜を加熱する(ポストベーク)。これにより基板上に硬化膜が形成される。
本工程の加熱温度の下限としては100℃が好ましい。また、上記加熱温度の上限としては250℃が好ましい。加熱をホットプレートで行う場合、加熱時間の下限としては、5分が好ましく、上限としては30分が好ましい。また、加熱をオーブン中で行う場合、加熱時間の下限としては10分が好ましく、上限としては180分が好ましい。
上述した発光表示素子100の発光層の形成に上記方法を適用する場合は、3種の硬化膜形成用組成物をそれぞれ用いて、上述した工程を含む発光層の形成方法を繰り返して、第1発光層13a、第2発光層13b及び第3発光層13cをそれぞれ形成すればよい。
<フィルム>
当該フィルムは、当該硬化膜形成用組成物により形成される。そのため、当該フィルムは、バインダー樹脂、及びこのバインダー樹脂中に分散し、かつ少なくとも一部の表面に上記式(1)で表される化合物に由来する構造が結合している半導体量子ドットを含有する。上記バインダー樹脂は、当該硬化膜形成用組成物の[A]バインダー樹脂と、[B]重合性化合物により形成される重合体とを含有する。当該フィルムは、例えば発光フィルム等として好適に用いることができる。
当該フィルムとしては、当該硬化膜形成用組成物により形成される層のみを備える単層フィルムでもよく、当該硬化膜形成用組成物により形成される層と、この層の少なくとも一方の面に積層される他の層とを備える多層フィルムでもよい。上記他の層としては、例えば樹脂を主成分とする層等が挙げられる。
当該フィルムの平均厚さの下限としては、10μmが好ましく、20μmがより好ましく、50μmがさらに好ましい。一方、当該フィルムの平均厚さの上限としては、1,000μmが好ましく、400μmがより好ましく、200μmがさらに好ましい。当該フィルムの平均厚さが上記下限未満であると、励起光を十分吸収することができず、光変換効率が低下するために発光強度が十分に確保できないおそれがある。逆に、当該フィルムの平均厚さが上記上限を超えると、柔軟性が低下するおそれがある。
<フィルムの製造方法>
当該フィルムは、当該硬化膜形成用組成物を公知の方法でフィルム状に成形することにより製造できる。当該フィルムの製造方法としては、例えば支持体上に当該硬化膜形成用組成物の塗膜を形成し、この塗膜を当該フィルムとして回収する方法、カレンダー成形法、押出成形法、インフレーション成形法等が挙げられる。なお、支持体上に当該硬化膜形成用組成物の塗膜を形成する方法としては、例えば上述した当該硬化膜の製造方法の塗膜形成工程において基板の代わりに適当な支持体を用いる方法等が挙げられる。
<他の実施形態>
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。例えば上記好適な実施形態では、本発明の硬化膜形成用組成物を発光表示素子のサブ画素に適用した例について説明したが、本発明はこれに限定されず、液晶ディスプレイのバックライトユニット等にも適用することができる。例えばバックライトユニットの光源として青色発光ダイオードを用いる場合、上述したG−QD及びR−QDを含む本発明の硬化膜形成用組成物により得られた硬化膜と組み合わせることで、純度の高い白色光を再現できる。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
[重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)]
なお、実施例では、下記条件によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりMw及びMnを測定した。また、分子量分布(Mw/Mn)は得られたMw及びMnより算出した。
装置:昭和電工社の「GPC−101」
カラム:昭和電工社の「GPC−KF−801」、「GPC−KF−802」、「GPC−KF−803」及び「GPC−KF−804」を連結したもの
移動相:テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
流速:1.0mL/分
試料濃度:1.0質量%
試料注入量:100μL
検出器:示差屈折計
標準物質:単分散ポリスチレン
<バインダー樹脂([a]ポリマー)の合成>
[合成例1]ポリマー(A−1)の合成
冷却管と攪拌機を備えたフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート150質量部を仕込んで窒素置換した。80℃に加熱して、同温度で、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート50質量部、メタクリル酸10質量部、メタクリル酸シクロヘキシル30質量部、スチレン10質量部、コハク酸モノ〔2−(メタクリロイルオキシ)エチル〕20質量部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル3質量部、メタクリル酸2−エチルヘキシル15質量部、N−シクロヘキシルマレイミド12質量部、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)6質量部、及び2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン6質量部の混合溶液を2時間かけて滴下し、この温度を保持して1時間重合した。その後、反応溶液の温度を100℃に昇温させ、さらに1時間重合することにより、ポリマー(A−1)のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液(固形分濃度:33質量%)を得た。なお、ポリマー溶液の固形分濃度は、重合に用いた原料に基づいて計算した値であり、バインダー樹脂の含有量(残存モノマーの含有量を含めた含有量)に相当する。得られたポリマー(A−1)は、Mw=10,800、Mn=5,900、Mw/Mn=1.83であった。このポリマー(A−1)のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液は、残存モノマーの含有量が固形分換算で6質量%であった。
なお、上記ポリマー溶液における残存モノマーの固形分換算の含有量は、以下の方法により測定した。まず、ポリマー(A−1)のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液(固形分濃度:33質量%)をアルミホイルに0.1g滴下し、このアルミホイルを175℃のホットプレートで1時間乾燥させて揮発物質(溶媒及び残存モノマー)を除いた残分の質量X(g)を測定し、ポリマー溶液の残分の含有量(質量%)(100×X/0.1)を求めた。このポリマー溶液の残分の含有量は、バインダー樹脂の含有量から残存モノマーの含有量を除いた値に相当する。次に、ポリマー溶液の残分の含有量と、ポリマー溶液の固形分濃度とを組み合わせ、下記式(Y)によりポリマー溶液における残存モノマーの固形分換算の含有量を求めた。
ポリマー溶液における残存モノマーの固形分換算の含有量(質量%)=100×(ポリマー溶液の固形分濃度(質量%)−ポリマー溶液の残分の含有量(質量%))/ポリマー溶液の固形分濃度(質量%) ・・・(Y)
<硬化膜形成用組成物の調製、硬化膜の形成、及び物性評価>
各硬化膜形成用組成物の調製に用いた各成分を下記に示す。
[[A]バインダー樹脂]
A−1:ポリマー(A−1)
[[B]重合性化合物]
B−1:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
[[C]QD]
C−1:コアシェル構造型半導体量子ドットであるInP/ZnS(平均粒径:4nm)
[[D]化合物]
D−1:ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)
D−2:ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)
D−3:ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)
D−4:テトラエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)
以下に(D−1)〜(D−4)の構造を示す。なお、(D−1)〜(D−4)は、チオール基を有する連鎖移動剤である。
[[E]感放射線性化合物]
E−1:ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(BASF社の「LUCIRIN TPO」)
E−2:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド(BASF社の「イルガキュア819」)
[[F]溶媒]
F−1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
[実施例1]
上記合成したポリマー(A−1)のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液90質量部([A]バインダー樹脂としての(A−1)30質量部、及び[F]溶媒としての(F−1)60質量部を含有)に、[B]重合性化合物としての(B−1)30質量部と、[C]QDとしての(C−1)10質量部と、[D]化合物としての(D−1)6質量部と、[E]感放射線性化合物としての(E−1)4質量部及び(E−2)1質量部とを加え、実施例1の硬化膜形成用組成物を調製した。
[実施例2〜4及び比較例1]
各配合成分の種類及び配合量を下記表1に記載の通りとしたこと以外は、実施例1と同様にして各硬化膜形成用組成物を調製した。なお、表1中の「−」は、該当する成分を使用しなかったことを示す。
得られた各硬化膜形成用組成物について、下記の方法に従い評価した。評価結果を表1に示す。
[蛍光量子収率]
蛍光量子収率は、下記形成方法により得られた硬化膜について、絶対PL蛍光量子収率測定装置(浜松ホトニクス社の「C11347−01」)を用いて、25℃において測定した。また、別途、下記形成方法により得られた硬化膜をクリーンオーブンにて180℃×20分の加熱処理(ポストベーク)を行った後に、上記と同様の方法で蛍光量子収率を測定した。前者の蛍光量子収率を「未処理」とし、後者の蛍光量子収率を「熱処理後」として表1に示す。
(硬化膜の形成方法)
無アルカリガラス基板上に、各硬化膜形成用組成物をスピンナにより塗布した後、90℃のホットプレート上で2分間プレベークすることにより塗膜を形成した。次に、得られた塗膜に、フォトマスクを介さずに、高圧水銀ランプを用いて365nm、405nm及び436nmの各波長を含む放射線を700J/m2の積算照射量で照射することにより、平均厚さ3μmの硬化膜を形成した。
[蛍光量子収率の変化率]
蛍光量子収率の変化率は、上記未処理の蛍光量子収率をΦ1とし、上記熱処理後の蛍光量子収率をΦ2として以下の式で算出した。この蛍光量子収率の変化率が小さいほど、ポストベーク後の[C]QDの蛍光量子収率の低下が抑制されていると評価できる。
蛍光量子収率の変化率(%)={(Φ1−Φ2)/Φ1}×100
表1の結果から明らかなように、実施例1〜4は、未処理及び熱処理後の蛍光量子収率、並びに蛍光量子収率の変化率がいずれも良好であった。これに対し、比較例1は、上記評価項目のいずれについても実施例に比べ劣っていた。