JP2017032061A - 緩衝器及び緩衝器の製造方法 - Google Patents

緩衝器及び緩衝器の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】エア抜き等に支障がなく性能を維持した上で、製造効率を向上させることができる緩衝器を提供する。【解決手段】緩衝器1aのシリンダ3を鋳造成形する際、その軸方向後端部に第2〜第4溝部52〜54を一体成形することにより、緩衝器1aが取り付けられる対象車両に関係なく、共通のシリンダ3の鋳造成形品を使用することができる。その後、緩衝器1aが取り付けられる対象車両に対応するように、エア抜き等に支障がない位置にオリフィス56、57等を機械加工するので、緩衝器1aが取り付けられる対象車両それぞれに対応した複数種類のシリンダ3を個別に形成する形態に比べて、製造効率を大幅に向上させることができる。【選択図】図1

Description

本発明は、例えば鉄道車両等に使用されるダンパとしての緩衝器及びその製造方法に関するものである。
ダンパとしての緩衝器は、求められる減衰力特性や取付ける対象車両に対応できるよう種々の構造が提案されているが、該緩衝器を例えば鉄道車両に使用する場合には、自動車に使用する場合と比べて大きくストロークする場面が少ないため、エアが抜けにくく、該エアを抜くための工夫が必要になる。
例えば、従来技術として特許文献1には、シリンダの軸方向端部の上部側に形成され、中間室に連通する第1の連通路と、中間筒の軸方向端部の上部側に形成される第2の連通路と、中間筒の外側に配され、第2の連通路と連通する空間を形成する閉塞部材と、中間室と減衰力発生機構とを連通させる第3の連通路と、一端が前記空間と連通し、他端が前記リザーバ室に常時作動液中となる位置に配される排出通路と、を備えたシリンダ装置が開示されている。
特開2011−208692号公報
しかしながら、特許文献1の発明において、シリンダにエア抜き用の第2の連通路を機械加工にて形成しているが、第2の連通路はシリンダ装置の取り付け状態でシリンダの上部に配置される必要があるので、取付方向に自由度が無くなってしまい、その結果、対象車両への取付方向により第2の連通路がシリンダの上部に配置されない場合エア抜きに支障が出て不都合を生じる虞がある。要するに、シリンダ装置(緩衝器)を取り付ける対象車両が複数種類あり、これに対処するためには、対象車両それぞれに対応したシリンダ装置(緩衝器)、特にシリンダを個別に複数種類製造する必要があり、コスト等の観点から問題であった。
本発明は、エア抜き等に支障がなく性能を維持した上で、製造効率を向上させる緩衝器及びその製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための手段として、本発明に係る緩衝器の製造方法は、外筒と、該外筒内に設けられ、内部に作動液が満たされたシリンダと、該シリンダと前記外筒との間に画成され、作動液とガスが封入された環状のリザーバ室と、前記シリンダ内に摺動可能に挿嵌され、該シリンダ内を2つの液室に画成するピストンと、軸方向の一側が前記ピストンに取り付けられ、他側が前記シリンダの外部に突出したピストンロッドと、前記シリンダの外周面から突設され、前記シリンダ内の2つの液室にそれぞれ連通する2つの連通路を有する突起部と、該突起部内の2つの連通路に連通し、前記ピストンの摺動によって生じる作動液の流れを制御して減衰力を発生させる減衰力発生機構と、前記シリンダに設けたオリフィスからのエアを前記リザーバ室に排出するエア抜き部と、を備えた緩衝器の製造方法であって、前記シリンダの外周面の軸方向一端側に、前記エア抜き部として使用可能な周方向に延びる溝部を、軸方向に間隔を置いて複数一体成形することを特徴とするものである。
また、本発明に係る緩衝器は、外筒と、該外筒内に設けられ、内部に作動液が満たされたシリンダと、該シリンダと前記外筒との間に画成され、作動液とガスが封入された環状のリザーバ室と、前記シリンダ内に摺動可能に挿嵌され、該シリンダ内を2つの液室に画成するピストンと、軸方向の一側が前記ピストンに取り付けられ、他側が前記シリンダの外部に突出したピストンロッドと、前記シリンダの外周面から突設され、前記シリンダ内の2つの液室にそれぞれ連通する2つの連通路を有する突起部と、該突起部内の2つの連通路に連通し、前記ピストンの摺動によって生じる作動液の流れを制御して減衰力を発生させる減衰力発生機構と、前記シリンダに設けたオリフィスからエアを前記リザーバ室に排出するエア抜き部と、を備え、該エア抜き部は、前記シリンダの外周面に設けられ、周方向に延びる溝部を有し、該溝部は、前記シリンダの外周面の軸方向一端側に軸方向に間隔を置いて一体成形される複数の溝部から選択された溝部であることを特徴とするものである。
本発明の緩衝器及びその製造方法によれば、エア抜き等に支障がなく性能を維持した上で、製造効率を向上させることができる。
図1は、本発明の第1実施形態に係る緩衝器で、シリンダの突起部が下方を向いた緩衝器の断面図である。 図2は、本発明の第1実施形態に係る緩衝器に採用されたシリンダの鋳造成形後の側面図である。 図3は、図1のA−A線に沿う断面図である。 図4は、本発明の第2実施形態に係る緩衝器で、シリンダの突起部が左右方向を向いた緩衝器の断面図である。 図5は、図4のB−B線に沿う断面図である。 図6は、本発明の第3実施形態に係る緩衝器で、図1に示すA−A線に沿う箇所に相当する断面図である。
以下、本発明を実施するための形態を図1〜図6に基づいて詳細に説明する。
本発明の第1〜第3実施形態に係る緩衝器1a〜1cは、特に、鉄道車両用のダンパ(オイルダンパ)として提供されるものである。まず、シリンダ3の突起部40が下方を向くように対象車両に取り付けられる第1実施形態に係る緩衝器1aを図1〜図3に基づいて説明する。本緩衝器1aは、軸方向が対象車両への取付状態で左右方向(水平方向)に延びる外筒2と、該外筒2と同心状に配置されたシリンダ3とを備えている。これら外筒2及びシリンダ3の開口両端部は、前側端板4及び後側端板5によりそれぞれ閉鎖されており、外筒2の内周面とシリンダ3の外周面との間に環状のリザーバ室6が形成される。なお、説明の便宜のため、以下の説明では、図中左側を前側、右側を後側として説明する。
図1に示すように、外筒2は、全体として円筒状に形成される。外筒2の外周面には、その前方寄りに減衰力発生機構75が取り付けられる平面部10が突設される。該平面部10には、共に径方向に沿って延びる挿通孔8、9がそれぞれ形成される。また、外筒2の平面部10を除く外周面には、ボス部11が間隔を置いて不規則に複数突設される。外筒2は、鋳造にて、平面部10及び各ボス部11と共に一体成形される。外筒2は緩衝器1aが取り付られる対象車両に対応できるように適宜部位を切断してその全長を調整するようにしている。各ボス部11には、配線12をクランプするクランプ部13が取付ネジ14により取り付けられる。配線12のクランプが必要なボス部11だけが使用される。使用しない各ボス部11は、鋳造成形後に機械加工で切削して取り除いてもよいし、そのままの状態でもよい。
なお、本実施形態では、各ボス部11を外筒2の外周面から径方向外方に向かって突設させているが、図示しないが、各ボス部11を外筒2の内周面から径方向内方に向かって突設させてもよい。この形態の場合、外筒2の、各ボス部11が形成される位置の外周面に、配線12をクランプするクランプ部13を取付ネジ14により取り付けるようにする。
後側端板5は、外筒2の後端を閉鎖する主蓋部材5aと、シリンダ3の後端を閉鎖する副蓋部材5bとからなる分割構造となっている。主蓋部材5aには、車体側との連結用のブラケット20が固設されている。副蓋部材5bとシリンダ3の後端との間は液密的にシールされている。主蓋部材5aと外筒2の後端との間も液密的にシールされている。一方、前側端板4はロッドガイドとしても機能し、前側端板4が外筒2の前端内部に嵌合され、前側端板4の後方へ突出する突出部22がシリンダ3の前端内部が嵌合している。前側端板4の突出部22とシリンダ3の前端との間は液密的にシールされている。前側端板4と外筒2の前端部との間も液密的にシールされている。符号23はロックリングである。
シリンダ3は略円筒状に形成される。シリンダ3は鋳造で成形される。該シリンダ3内には、ピストン25が摺動可能に配設されている。該ピストン25にピストンロッド26の一端部が連結される。該ピストンロッド26の他端部が、前側端板4及びロックリング23内を液密的に挿通して外部へ延びている。ピストンロッド26の他端部には、例えば台車側と連結する連結用のブラケット27が固設されている。なお、シリンダ3の詳細な構造及び製造方法は後で詳述する。
シリンダ3内は、ピストン25によって、ロッド側油室30及び反ロッド側油室31に区画されている。これらのロッド側油室30及び反ロッド側油室31に作動油(作動液)が封入されている。この作動油はリザーバ室6にも部分的に封入されている。
ピストン25には、ピストンロッド26の縮み行程時に反ロッド側油室31からロッド側油室30への作動油の移動を阻止し、反ロッド側油室31内の作動油の圧力が所定圧力に到達した際、その作動油をロッド側油室30へリリーフするリリーフ弁32と、伸び行程時にロッド側油室30から反ロッド側油室31への作動油の移動を阻止し、ロッド側油室30内の作動油の圧力が所定圧力に到達した際、その作動油を反ロッド側油室31へリリーフするリリーフ弁33とが配設されている。また、後側端板5の副蓋部材5bには、反ロッド側油室31内の圧力に応じて開弁して、ロッド側油室30内の作動油をリザーバ室6へ逃がすリリーフ弁34と、リザーバ室6から反ロッド側油室31への作動油の流通のみを許容する逆止弁35とが配設されている。
シリンダ3には、突起部40がその外周面から径方向外方に向かって一体的に突設される。図3も参照して、該突起部40は、断面略矩形状に形成され、シリンダ3の軸方向全域に亘って形成される。該突起部40はリザーバ室6内に配置される。突起部40は、緩衝器1aの対象車両への取付状態において下方を向くようになる。
突起部40内には、シリンダ3内の反ロッド側油室31に連通する反ロッド側油室用連通路42と、シリンダ3内のロッド側油室30に連通するロッド側油室用連通路43とが形成される。ロッド側油室用連通路43は、突起部40を径方向に貫通される。一方、反ロッド側油室用連通路42は、突起部40を軸方向に延びる第1反ロッド側油室用連通路42aと、該第1反ロッド側油室用連通路42aに連通すると共に反ロッド側油室31に連通して径方向に延びる第2反ロッド側油室用連通路42bとから構成される。第1反ロッド側油室用連通路42aの後端開口は第1プラグ45で閉塞される。第2反ロッド側油室用連通路42bの下端開口は第2プラグ46で閉塞される。
図1及び図2に示すように、シリンダ3の前端外周面には、周方向に沿う第1溝部51が形成される。一方、シリンダ3の後端外周面には、周方向に沿う第2〜第4溝部52〜54が複数形成される。第2〜第4溝部52〜54は軸方向に沿って間隔を置いて複数形成される。本実施形態では、第2〜第4溝部52〜54が3箇所形成される。第1〜第4溝部51〜54は、突起部40を除く略全域に形成される。第1〜第4溝部51〜54は、第1〜第4リング用溝部51a〜54aと、該第1〜第4リング用溝部51a〜54aの底部に設けられ、軸方向の幅長が短く形成された第1〜第4連通用溝部51b〜54bとから構成される。図3も参照して、第1〜第4溝部51〜54は、突起部40を除く略全域に形成されるが、第1〜第4連通用溝部51b〜54bが、第1〜第4リング用溝部51a〜54aの両端部から若干突出する範囲で形成される。
なお、第2〜第4リング用溝部52a〜54aのシリンダ3の軸方向に沿う幅長寸法L2、L3、L4はそれぞれ相違している。具体的には、第2リング用溝部52aの幅長L2<第3リング用溝部53aの幅長L3<第4リング用溝部54aの幅長L4に設定される。参考であるが、第4リング用溝部54aの幅長L4<第1リング用溝部51aの幅長L1となる。また、第2〜第4リング用溝部52a〜54aの深さ寸法は同じである。第2〜第4連通用溝部52b〜54bの軸方向の幅長寸法及び深さ寸法は同じに設定される。
図1及び図3に示すように、第1溝部51の第1連通用溝部51bの最も上部に位置する底部に、シリンダ3内のロッド側油室30とを連通するロッド側油室用オリフィス56が形成される。ロッド側油室用オリフィス56は径方向に延びる。そして、ロッド側油室用オリフィス56は、緩衝器1aの対象車両への取付状態で、シリンダ3の最上部の位置に形成される。一方、第4溝部54の第4連通用溝部54bの最も上部に位置する底部に、シリンダ3内の反ロッド側油室31とを連通する反ロッド側油室用オリフィス57が形成される。反ロッド側油室用オリフィス57は径方向に延びる。そして、反ロッド側油室用オリフィス57も、緩衝器1aの対象車両への取付状態で、シリンダ3の最上部の位置に形成される。
第1溝部51の第1リング用溝部51aの全域に、C字状の第1リング61が装着される。その結果、シリンダ3の下部において、第1溝部51の第1連通用溝部51bの両端部がリザーバ室6に連通し、ひいては、第1連通用溝部51bは、ロッド側油室用オリフィス56に連通すると共にリザーバ室6に連通する。そして、第1溝部51の第1連通用溝部51b及びロッド側油室用オリフィス56がロッド側油室30からの第1エア抜き部71として機能する。一方、第4溝部54の第4リング用溝部54aの全域に、C字状の第4リング64が装着される。その結果、シリンダ3の下部において、第4溝部54の第4連通用溝部54の両端部がリザーバ室6に連通し、ひいては、第4連通用溝部54bは、反ロッド側油室用オリフィス57に連通すると共にリザーバ室6に連通する。そして、第4溝部54の第4連通用溝部54b及び反ロッド側油室用オリフィス57が反ロッド側油室31からの第4エア抜き部74として機能する。なお、第2〜第4リング用溝部52b〜54bは、その幅長L2〜L4がそれぞれ相違するので、第2〜第4リング用溝部52b〜54b専用の第2〜第4リング(第4リング64以外は図示略)が使用されることなる。また、第1実施形態に係る緩衝器1aでは、図1に示すように、シリンダ3の外周面には、エア抜き部として使用しない第2及び第3溝部52、53が形成されることになる。
図1に示すように、シリンダ3の突起部40に設けた反ロッド側油室用連通路42には、反ロッド側油室用連通パイプ65が連通される。該反ロッド側油室用連通パイプ65は減衰力発生機構75に連通される。詳しくは、反ロッド側油室用連通パイプ65は、反ロッド側油室用連通路42の第1反ロッド側油室用連通路42aの前端に接続され、外筒2の平面部10に設けた一方に挿通孔8に挿入されて減衰力発生機構75に連通される。一方、シリンダ3の突起部40に設けたロッド側油室用連通路43には、ロッド側油室用連通パイプ66が連通される。該ロッド側油室用連通パイプ66は、外筒2の平面部10に設けた他方に挿通孔9に挿入されて減衰力発生機構75に連通される。
次に、第1実施形態に係る緩衝器1aのシリンダ3の製造方法について説明する。
シリンダ3は、図2に示すように、突起部40を含め、その前端外周面に設けた第1溝部51及びその後端外周面に設けた第2〜第4溝部52〜54と一体で鋳造成形される。
次に、本緩衝器1aが取り付られる対象車両に対応できるように、シリンダ3の後端部の所定位置を切断してその全長を調整する。図1に示す実施形態では、シリンダ3は切断されず鋳造成形時のままである。
次に、第1溝部51の第1連通用溝部51bの最も上部に位置する底部にロッド側油室用オリフィス56を機械加工で形成する。また、第4溝部54の第4連通用溝部54bの最も上部に位置する底部に反ロッド側油室用オリフィス57を機械加工で形成する。その結果、ロッド側油室用オリフィス56及び反ロッド側油室用オリフィス57は、シリンダ3の、突起部40と180°相違する最上部に形成されることになる。
そこで、対象車両に対応できるようにシリンダ3の全長を短くする場合、図2に示すシリンダ3の鋳造成形品の後端部を所定長さ切断するようになる。例えば、シリンダ3の全長を短くするためにその後端部を切断して第4溝部54が無くなった場合には、第3溝部53の第3連通用溝部53aの最も上部に位置する底部に反ロッド側油室用オリフィス57を機械加工で形成する。そして、第3溝部53の第3リング用溝部53aに第3リング(図示略)を装着して、第3連通用溝部53b及び後側オリフィス(図示略)を反ロッド側油室31からの第3エア抜き部(図示略)として使用することになる。
また、シリンダ3の全長をさらに短くするためにその後端部を所定長さ切断して第3及び第4溝部53、54が無くなった場合には、第2溝部52の第2連通用溝部52aの最も上部に位置する底部に反ロッド側油室用オリフィス(図示略)を機械加工で形成する。そして、第2溝部52の第2リング用溝部52aに第2リング(図示略)を装着して、第2連通用溝部52b及び反ロッド側油室用オリフィス(図示略)を反ロッド側油室31からの第2エア抜き部(図示略)として使用することが可能になる。このように、鋳造成形時に、シリンダ3の後端部の外周面に複数の第2〜第4溝部52〜54を一体成形することで、鋳造成形後、シリンダ3の全長を調整するためにその後端部の一部を切断しても、シリンダ3の後端側に第2〜第4エア抜き部(第4エア抜き部74以外図示略)としての第2〜第4溝部52〜54のいずれかを残すことができ、汎用性が向上する。
次に、シリンダ3の突起部40に、ロッド側油室用連通路43を機械加工で形成する。また、シリンダ3の突起部40に、反ロッド側油室用連通路42の第1反ロッド側油室用連通路42a及び第2反ロッド側油室用連通路42bを機械加工で形成する。
これにより、第1実施形態に係る緩衝器1aのシリンダ3の製造が完了する。
なお、第1実施形態に係る緩衝器1aのシリンダ3は、第1〜第4溝部51〜54を一体に鋳造成形しているが、緩衝器1aの対象車両への取付方向が未定の場合には、第1〜第4溝部51〜54の第1〜第4リング用溝部51a〜54aを一体に鋳造成形して、その後、例えば、エア抜き部71、74として使用する第1及び第4リング用溝部51a及び54aの底部に第1及び第4連通用溝部51b及び54bを機械加工で形成することもできる。
次に、シリンダ3の突起部40が左右方向を向くように対象車両に取り付けられる第2実施形態に係る緩衝器1bを図4及び図5に基づいて説明する。この第2実施形態に係る緩衝器1bを説明する際には、第1実施形態に係る緩衝器1aと相違する点を主に説明する。
第2実施形態に係る緩衝器1bでは、シリンダ3の前端外周面に、周方向に沿う第1溝部51が形成され、シリンダの後端外周面に、周方向に沿う第2〜第4溝部52〜54が複数形成されるが、第1実施形態に係る緩衝器1aのシリンダ3とは、第1〜第4溝部51〜54において、第1〜第4連通用溝部51b〜54bの形成範囲が異なる。
すなわち、第1〜第4連通用溝部51b〜54bは、第1〜第4リング用溝部51a〜54aの、緩衝器1bの対象車両への取付状態で最も上部の位置から一周方向(図5にて時計周り方向)に沿って、第1〜第4リング用溝部51a〜54aの端部より若干奥まで形成される。第1〜第4連通用溝部51b〜54bは、突起部40を除く略270°の範囲で形成される。
また、図5に示すように、第1溝部51の第1連通用溝部51bの、最も上部に位置する端部の底部に、シリンダ3内のロッド側油室30と連通するロッド側油室用オリフィス56が形成される。そして、ロッド側油室用オリフィス56は、緩衝器1bの対象車両への取付状態で、シリンダ3の最上部の位置に形成される。一方、第4溝部54の第4連通用溝部54bの、最も上部に位置する端部の底部に、シリンダ3内の反ロッド側油室31と連通する反ロッド側油室用オリフィス57が形成される。そして、反ロッド側油室用オリフィス57は、緩衝器1bの対象車両への取付状態で、シリンダ3の最上部の位置に形成される。その結果、ロッド側油室用オリフィス56及び反ロッド側油室用オリフィス57は、シリンダ3の、突起部40と90°相違する最上部に形成されることになる。
そして、図1〜図3に示す第1実施形態に係る緩衝器1aと同様に、第1溝部51の第1連通用溝部51b及びロッド側油室用オリフィス56がロッド側油室30からの第1エア抜き部71として機能して、第4溝部54の第4連通用溝部54b及び反ロッド側油室用オリフィス57が反ロッド側油室31からの第4エア抜き部74として機能する。
次に、第2実施形態に係る緩衝器1bのシリンダ3の製造方法を説明するが、当該製造方法は、第1実施形態に係る緩衝器1aのシリンダ3の製造方法と同様であり、シリンダ3は、突起部40を含め、第1〜第4溝部51〜54(第1〜第4リング用溝部51a〜54a及び第1〜第4連通用溝部51b〜54b)と一体で鋳造成形される。その後、シリンダ3の全長を短くする場合は、鋳造成形されたシリンダ3の後端部を適宜切断して第2または第3溝部52または53をエア抜き部として使用する。その後、ロッド側油室用オリフィス56及び反ロッド側油室用オリフィス57等を機械加工で形成する。なお、第2実施形態に係る緩衝器1bも、図4に示すように、シリンダ3の外周面に、エア抜き部として使用しない第2及び第3溝部52、53が形成されることになる。
なお、緩衝器1bの対象車両への取付方向が未定の場合には、第1〜第4溝部51〜54の第1〜第4リング用溝部51a〜54aをシリンダ3と一体に鋳造成形して、その後、例えば、第1及び第4溝部51、54をエア抜き部71、74として使用する場合には、第1及び第4リング用溝部51a、54aの底部に第1及び第4連通用溝部51b、54bを機械加工で形成することもできる。
次に、シリンダ3の突起部40が左右方向を向くように対象車両に取り付けられる第3実施形態に係る緩衝器1cを図6に基づいて説明する。この第3実施形態に係る緩衝器1cを説明する際には、第1実施形態に係る緩衝器1aと相違する点を主に説明する。
第3実施形態に係る緩衝器1cでは、シリンダ3の前端外周面に、周方向に沿う第1溝部51が形成され、シリンダの後端外周面に、周方向に沿う第2〜第4溝部52〜54が複数形成されるが、第1実施形態に係る緩衝器1aのシリンダ3とは、第1〜第4溝部51〜54において、第1〜第4連通用溝部51b〜54bの形成範囲が異なる。
すなわち、第1〜第4リング用溝部51a〜54aは、突起部40を除く略全域に形成され、第1〜第4連通用溝部51b〜54bも第1〜第4リング用溝部51a〜54aと同じ範囲で形成される。
また、図6に示すように、第1溝部51の第1連通用溝部51bの、最も上部に位置する底部に、シリンダ3内のロッド側油室30と連通するロッド側油室用オリフィス56が形成される。一方、第4溝部54の第4連通用溝部54bの、最も上部に位置する底部に、シリンダ3内の反ロッド側油室31と連通する反ロッド側油室用オリフィス57が形成される。
第1溝部51の第1リング用溝部51aの全域に、C字状の第1リング61が装着される。該第1リング61の下部に挿通孔61aが形成される。この結果、シリンダ3内のロッド側油室30は、ロッド側油室用オリフィス56、第1溝部51の第1連通用溝部51b及び第1リング61の挿通孔61aを介してリザーバ室6に連通する。そして、ロッド側油室用オリフィス56、第1溝部51の第1連通用溝部51b及び第1リング61の挿通孔61aがロッド側油室30からの第1エア抜き部71として機能する。一方、第4溝部54の第4リング用溝部54aの全域にも、C字状の第4リング64が装着される。該第4リング64の下部に挿通孔(図示略)が形成される。この結果、シリンダ3内の反ロッド側油室31は、反ロッド側油室用オリフィス57、第4溝部54の第4連通用溝部54b及び第4リング64の挿通孔(図示略)を介してリザーバ室6に連通する。そして、反ロッド側油室用オリフィス57、第4溝部54の第4連通用溝部54b及び第4リング64の挿通孔(図示略)が反ロッド側油室31からの第4エア抜き部74として機能する。
次に、第3実施形態に係る緩衝器1cのシリンダ3の製造方法をするが、当該製造方法は、第1実施形態に係る緩衝器1aのシリンダ3の製造方法と同様であり、シリンダ3は、突起部40を含め、第1〜第4溝部51〜54(第1〜第4リング用溝部51a〜54a及び第1〜第4連通用溝部51b〜54b)と一体で鋳造成形される。その後、シリンダ3の全長を短くする場合は、鋳造成形されたシリンダ3の後端部を適宜切断して第2または第3溝部52または53をエア抜き部として使用する。その後、ロッド側油室用オリフィス56及び反ロッド側油室用オリフィス57等を機械加工で形成する。
なお、緩衝器1cの対象車両への取付方向が未定の場合には、第1〜第4溝部51〜54の第1〜第4リング用溝部51a〜54aをシリンダ3と一体に鋳造成形して、その後、例えば、第1及び第4溝部51、54をエア抜き部71、74として使用する場合には、第1及び第4リング用溝部51a、54aの底部に第1及び第4連通用溝部51b、54bを機械加工で形成することもできる。
次に、本発明の第1〜第3実施形態に係る緩衝器1a〜1cの作用を説明する。
本発明の実施形態に係る横置き緩衝器1a〜1cは、台車と車体との間に横置き状態で取り付けられており、台車にピストンロッド26側のブラケット27が連結され、車体に外筒2側のブラケット20が連結される。
そして、台車と車体とが水平方向へ相対移動すると、ピストンロッド26が伸縮動作する。その結果、ピストンロッド26の伸び行程時には、ロッド側油室30の作動油がシリンダ3の突起部40に設けたロッド側油室用連通路43及びロッド側油室用連通パイプ66を経て減衰力発生機構75に至り、該減衰力発生機構75から反ロッド側油室用連通パイプ65及び突起部40に設けた反ロッド側油室用連通路42を経て反ロッド側油室31に流れ、これに応じて伸び側の減衰力が発生する。このとき、作動油と共にエアがシリンダ3のロッド側油室30から、第1エア抜き部71、すなわちロッド側油室用オリフィス56及び第1溝部51の第1連通用溝部51b(第3実施形態では第1リング61の挿通孔61aを含む)を経てリザーバ室6内の作動油中へ排出される。なお、この伸び行程時には、ピストンロッド26の退出分の作動油が後側端板5の副蓋部材5bに設けた逆止弁35を経てリザーバ室6から反ロッド側油室31へ補給される。シリンダ3の上部にて、4連通用溝部54bがシリンダ3の外部に開放されていないので、この伸び行程時外筒2内の作動油の油面が低下した際、反ロッド油室31の負圧による、第4連通用溝部54bからシリンダ3の反ロッド油室31内へのエアの吸い込みを抑制することができる。
一方、ピストンロッド26の縮み行程時には、反ロッド側油室31の作動油がシリンダ3の突起部40に設けた反ロッド側油室用連通路42及び反ロッド側油室用連通パイプ65を経て減衰力発生機構75に至り、該減衰力発生機構75からロッド側油室用連通パイプ66及び突起部40に設けたロッド側油室用連通路43を経てロッド側油室30に流れ、これに応じて縮み側の減衰力が発生する。このとき、作動油と共にエアはシリンダ3の反ロッド側油室31から、第4エア抜き部74、すなわち、反ロッド側油室用オリフィス57及び第4溝部54の第4連通用溝部54b(第3実施形態では第4リング64の挿通孔を含む)を経てリザーバ室6内の作動油中へ排出される。なお、この縮み行程時には、ピストンロッド26の進入分の作動油が後側端板5の副蓋部材5bに設けたリリーフ弁34を経て反ロッド側油室31からリザーバ室6内へ排出され、この際も減衰力が発生する。
以上説明したように、第1〜第3実施形態では、緩衝器1a〜1cのシリンダ3を鋳造成形する際、その軸方向後端部に第2〜第4溝部52〜54の少なくとも第2〜第4リング用溝部52a〜54aをシリンダ3と共に一体成形することにより、緩衝器1a〜1cが取り付けられる対象車両に関係なく、共通のシリンダ3の鋳造成形品を使用することができる。その後、緩衝器1a〜1cが取り付けられる対象車両に対応するように、シリンダ3の後端部を切断することでその全長を調整して、またエア抜き用の各オリフィス56、57をエア抜きに支障がない、緩衝器1a〜1cの対象車両への取付状態におけるシリンダ3の最上部に機械加工により形成して、また第2〜第4連通用溝部52b〜54bのいずれかを適宜範囲機械加工により形成する。このように、本実施形態では、緩衝器1a〜1cが取り付けられる対象車両に関係なく、共通のシリンダ3の鋳造成形品を製造することができ、その後、緩衝器1a〜1cが取り付けられる対象車両に対応するようにオリフィス56、57等を機械加工するので、緩衝器1a〜1cが取り付けられる対象車両それぞれに対応した複数種類のシリンダ3を個別に形成する形態に比べて、製造効率が大幅に向上する。しかも、緩衝器1a〜1cとしての性能を維持することができる。
また、第1〜第3実施形態に係る緩衝器1a〜1cでは、シリンダ3の上部にて、第4連通用溝部54bがシリンダ3の外部に開放されていないために、緩衝器1a〜1cの揺動時や伸び行程時外筒2内の作動油の油面が低下した際、伸び行程時のシリンダ3内の反ロッド油室31の負圧による、第4連通用溝部54bからシリンダ3の反ロッド油室31内へのエアの吸い込みを抑制することができる。
なお、上述した第1〜第3実施形態に係る緩衝器1a〜1cは、鉄道車両の台車と車体の間に用いられ、レールの設置状態による振動を吸収して台車の蛇行を抑制する横置き型の緩衝器である、いわゆるヨーダンパを例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、鉄道車両において、台車と車体の間に用いられ、台車と車体の相対的な左右方向の振動を減衰する左右動ダンパに用いてもよく、台車の軸ばねに並列に設けられ、レールの設置状態による上下動を減衰する上下動ダンパに用いてもよいし、車体と車体に設けられレールのうねりや風などによる車体間の相対運動を抑制する車体間ダンパに用いてもよい。
さらに、例えば車両用の油圧緩衝器(この場合は、例えば上、下方向の振動を緩衝する縦置き型緩衝器)に適用してもよく、この他、振動源となる種々の機械、建築物等に用いる緩衝器にも適用することが可能である。
1a〜1c 緩衝器,2 外筒,3 シリンダ,6 リザーバ室,25 ピストン,26 ピストンロッド,30 ロッド側油室,31 反ロッド側油室,40 突起部,42 反ロッド側油室用連通路,43 ロッド側油室用連通路,56 ロッド側油室用オリフィス,57 反ロッド側油室用オリフィス,51 第1溝部,51a 第1リング用溝部,51b 第1連通用溝部,52 第2溝部,52a 第2リング用溝部,52b 第2連通用溝部,53 第3溝部,53a 第3リング用溝部,53b 第3連通用溝部,54 第4溝部,54a 第4リング用溝部,54b 第4連通用溝部,71 第1エア抜き部,74 第4エア抜き部,75 減衰力発生機構

Claims (4)

  1. 外筒と、
    該外筒内に設けられ、内部に作動液が満たされたシリンダと、
    該シリンダと前記外筒との間に画成され、作動液とガスが封入された環状のリザーバ室と、
    前記シリンダ内に摺動可能に挿嵌され、該シリンダ内を2つの液室に画成するピストンと、
    軸方向の一側が前記ピストンに取り付けられ、他側が前記シリンダの外部に突出したピストンロッドと、
    前記シリンダの外周面から突設され、前記シリンダ内の2つの液室にそれぞれ連通する2つの連通路を有する突起部と、
    該突起部内の2つの連通路に連通し、前記ピストンの摺動によって生じる作動液の流れを制御して減衰力を発生させる減衰力発生機構と、
    前記シリンダに設けたオリフィスからのエアを前記リザーバ室に排出するエア抜き部と、を備えた緩衝器の製造方法であって、
    前記シリンダの外周面の軸方向一端側に、前記エア抜き部として使用可能な周方向に延びる溝部を、軸方向に間隔を置いて複数一体成形することを特徴とする緩衝器の製造方法。
  2. 前記溝部は、リングを装着可能なリング用溝部と、該リング用溝部の底部に設けられ、前記オリフィスに連通すると共に前記リザーバ室に連通する連通用溝部と、を備え、
    少なくともリング用溝部を前記シリンダと一体成形することを特徴とする請求項1に記載の緩衝器の製造方法。
  3. 外筒と、
    該外筒内に設けられ、内部に作動液が満たされたシリンダと、
    該シリンダと前記外筒との間に画成され、作動液とガスが封入された環状のリザーバ室と、
    前記シリンダ内に摺動可能に挿嵌され、該シリンダ内を2つの液室に画成するピストンと、
    軸方向の一側が前記ピストンに取り付けられ、他側が前記シリンダの外部に突出したピストンロッドと、
    前記シリンダの外周面から突設され、前記シリンダ内の2つの液室にそれぞれ連通する2つの連通路を有する突起部と、
    該突起部内の2つの連通路に連通し、前記ピストンの摺動によって生じる作動液の流れを制御して減衰力を発生させる減衰力発生機構と、
    前記シリンダに設けたオリフィスからエアを前記リザーバ室に排出するエア抜き部と、を備え、
    該エア抜き部は、前記シリンダの外周面に設けられ、周方向に延びる溝部を有し、
    該溝部は、前記シリンダの外周面の軸方向一端側に軸方向に間隔を置いて一体成形される複数の溝部から選択された溝部であることを特徴とする緩衝器。
  4. 前記溝部は、リングを装着可能なリング用溝部と、該リング用溝部の底部に設けられ、前記オリフィスに連通すると共に前記リザーバ室に連通する連通用溝部とを備えることを特徴とする請求項3に記載の緩衝器。
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