以下、本発明に係る車両用変速機の実施形態について、図面を用いて説明する。
図1〜図9は、本発明の一実施形態に係る車両用変速機を示す図である。
まず、構成を説明する。
図1において、車両1は、車体1Aを備えており、車体1Aの前部に設置のされたエンジンンルーム3には変速機2が搭載されている。なお、図1〜図9において、上、下、右、左で示す方向は、運転席から見た方向である。
変速機2は、クラッチハウジング4およびトランスミッションケース5を備えており、クラッチハウジング4は、内燃機関としてのエンジン6に連結されている。図8において、クラッチハウジング4の内部にはクラッチ機構7が収容されており、トランスミッションケース5には入力軸8が収容されている。
クラッチ機構7は、図示しないフライホイールを介してエンジン6の図示しないクランク軸と入力軸8とを接続および切断することにより、クランク軸から入力軸8に動力を伝達および遮断する。すなわち、入力軸8にはクラッチ機構7を介してエンジン6の動力が伝達される。
図2、図3において、クラッチハウジング4は、上壁4Aと、上壁4Aの下方に位置する下壁4Bと、上壁4Aと下壁4Bとを連結する側壁4Cとを有し、側壁4Cのうちのトランスミッションケース5側に対向する側壁4Cは、隔壁4Dを構成している。
図5において、トランスミッションケース5は、上壁5Aと、上壁5Aの下方に位置する下壁5Bと、上壁5Aと下壁5Bとを連結する側壁5Cとを有し、側壁5Cのうち、クラッチハウジング4側は、開口している。
図2において、トランスミッションケース5には入力軸8、カウンタ軸9、10およびディファレンシャル装置11(図8参照)が収容されており、これら入力軸8、カウンタ軸9、10およびディファレンシャル装置11の回転軸は、平行に設置されている。
クラッチハウジング4には隔壁4Dが形成されており(図2、図3参照)、トランスミッションケース5は、隔壁4Dを挟んで対向するようにしてクラッチハウジング4に連結されている(図4参照)。
本実施の形態のクラッチハウジング4は、本発明の第1のケースを構成し、トランスミッションケース5は、本発明の第2のケースを構成する。また、クラッチハウジング4およびトランスミッションケース5は、本発明の変速機ケース31を構成する。
図8において、隔壁4Dは、変速機2の内部を、クラッチ機構7を収容するクラッチ室22と入力軸8およびカウンタ軸9、10(カウンタ軸10は図示省略)を収容する変速室23に区画している。なお、隔壁4Dは、トランスミッションケース5に設けられてもよい。
入力軸8およびカウンタ軸9は、隔壁4Dおよびトランスミッションケース5に回転自在に取付けられている。なお、カウンタ軸10も隔壁4Dおよびトランスミッションケース5に回転自在に取付けられている。
図2、図8において、入力軸8には入力軸8の軸線方向に複数の入力ギヤ12が設けられている。図2において、カウンタ軸9は、入力軸8より下方に設置されている。図8に示すように、カウンタ軸9にはカウンタ軸9の軸線方向に複数のカウンタギヤ13が設けられており、カウンタギヤ13は、入力ギヤ12に噛み合っている。
図2において、カウンタ軸10は、入力軸8よりも上方に設置されている。カウンタ軸10にはカウンタ軸10の軸線方向に複数のカウンタギヤ14が設けられており、カウンタギヤ14は、入力ギヤ12に噛み合っている。
図8において、ディファレンシャル装置11は、ディファレンシャルギヤケース15およびディファレンシャルギヤケース15に取付けられたファイナルギヤ16を備えており、ファイナルギヤ16は、カウンタ軸9に設けられたファイナルドライブギヤ9Fに噛み合っている。なお、カウンタ軸10にも図示しないファイナルドライブギヤが設けられており、このファイナルドライブギヤは、ファイナルギヤ16に噛み合っている。
ディファレンシャルギヤケース15の内部にはディファレンシャルギヤケース15と一体で回転するピニオン軸17と、ピニオン軸17の前後端に回転自在に支持された一対のピニオンギヤ18A、18Bと、ピニオンギヤ18A、18Bのそれぞれに噛み合う一対のサイドギヤ19A、19Bとを備えている。
ディファレンシャルギヤケース15の回転軸線に沿った車幅方向の両端側にはドライブシャフト21L、21Rの一端部が挿入されており、ドライブシャフト21L、21Rの一端部は、サイドギヤ19A、19Bに嵌合される。なお、ディファレンシャル装置11の回転軸は、ドライブシャフト21L、21Rから構成されており、ディファレンシャル装置11の回転中心であるディファレンシャルギヤケース15およびドライブシャフト21L、21Rは、本発明の出力軸を構成する。
ドライブシャフト21L、21Rは、それぞれ左右の駆動輪24L、24Rに接続されている(図1参照)。ピニオン軸17は、その軸線方向がディファレンシャルギヤケース15の回転軸線に対して直交する方向に向けてディファレンシャルギヤケース15に取付けられている。
一対のピニオンギヤ18A、18Bは、それぞれがディファレンシャルギヤケース15の回転時に、ディファレンシャルギヤケース15の回転軸線を中心として公転するとともに、ピニオン軸17の軸線を中心として自転する。
さらに、一対のサイドギヤ19A、19Bは、それぞれがディファレンシャルギヤケース15の回転軸線と同軸にしてディファレンシャルギヤケース15の内部に対向して配置されているとともに、その回転軸線に沿ってドライブシャフト21L、21Rの一端部をスプライン結合するための複数のスプライン歯を有する。
このように構成されるディファレンシャル装置11は、車両1が平坦路を直進する場合には、ファイナルドライブギヤ9Fからファイナルギヤ16に動力が伝達されると、ディファレンシャルギヤケース15が回転する。
このとき、左右の駆動輪24L、24Rの転がる距離が等しいので、一対のサイドギヤ19A、19Bは、同じ回転速度で回転し、サイドギヤ19A、19Bの間に挟まれたピニオンギヤ18A、18Bは、自転せず、ディファレンシャルギヤケース15、ピニオンギヤ18A、18Bおよびサイドギヤ19A、19Bが一体となって公転する。
車両1がカーブを曲がる場合には、カーブ外側の駆動輪24Lおよび24Rの一方の転がる距離がカーブ内側の駆動輪24Lおよび24Rの他方よりも長いため、カーブ外側のサイドギヤ19A、19Bの一方は、カーブ内側のサイドギヤ19A、19Bの他方よりも速く回転する。
このとき、カーブ外側のサイドギヤ19A、19Bの一方は、ディファレンシャルギヤケース15よりも速く回転しており、カーブ内側のサイドギヤ19A、19Bの他方は、ディファレンシャルギヤケース15よりも遅く回転している。
したがって、一対のサイドギヤ19A、19Bに挟まれたピニオンギヤ18A、18Bは、公転だけでなく自転もするようになり、異なる速度で回転している左右のサイドギヤ19A、19Bにディファレンシャルギヤケース15からの動力を伝えることができる。
図2、図3において、トランスミッションケース5の底部は、オイル溜まり部25を構成しており、オイル溜まり部25にはオイルOが貯留される。なお、図2、図3において、オイルOの液面を破線で示す。
本実施の形態のカウンタギヤ13およびファイナルギヤ16の下部は、オイルOに浸かっている。換言すれば、オイルOは、カウンタギヤ13およびファイナルギヤ16の下部が浸かる量だけオイル溜まり部25に貯留される。
図2において、トランスミッションケース5の側壁5Cのうち、入力軸8に対して一方側(後方)に位置する側壁は、第1の側壁5aを構成しており、入力軸8を挟んで第1の側壁5aに対向する側壁は、第2の側壁5bを構成している。
図5において、ファイナルギヤ16は、入力軸8に対して第1の側壁5a側に位置するように設置されており、図4、図5において、入力軸8に対して第2の側壁5b側に位置する上壁5Aには開口部5cが形成されている。
トランスミッションケース5の開口部5cにはシフトケース40のシフトケース本体40Aが取付けられており、シフトケース本体40Aは、開口部5cを覆い、外周部が複数のボルト41(図1、図4参照)によって上壁5Aに締結されている。
シフトケース本体40Aは、図示しないシール部材を介してトランスミッションケース5に取付けられることにより、トランスミッションケース5の内部が密閉されている。このため、トランスミッションケース5の内部に収容されるオイルOが外部に漏出することが防止される。
図2、図4、図5において、トランスミッションケース5にはシフト装置30が設けられており、シフト装置30は、シフトアンドセレクト軸39およびシフトケース40を備えている。シフトアンドセレクト軸39は、セレクト操作に応じてシフトケース本体40Aに対して軸線方向に移動自在、かつ、シフト操作に応じてシフトケース本体40Aに対して軸線周りに回転する。
図2、図4、図5において、シフトアンドセレクト軸39の軸線方向への移動をセレクト方向42で示し、シフトアンドセレクト軸39の軸線周りの回転をシフト方向43で示す。また、シフトアンドセレクト軸39とシフトケース40に付随して設けられた後述する部材は、シフト装置30を構成するものである。
図1、図2に示すように、シフトケース本体40Aの外方に突出するシフトアンドセレクト軸39の上端部にはセレクトアウタレバー44とシフトアウタレバー45とが取付けられている。
セレクトアウタレバー44の一端部には図示しないセレクトケーブルの一端部が連結されており、セレクトアウタレバー44の他端部は、シフトアンドセレクト軸39の軸線方向上端部に連結されている。
セレクトケーブルの他端部は、運転席近傍に設けられて運転者によって操作される図示しないシフトレバーの下端部に連結されており、運転手によってシフトレバーがセレクト方向に操作されると、セレクトケーブルを介してセレクトアウタレバー44がシフトアンドセレクト軸39を軸線方向に移動させる。
シフトアウタレバー45の一端部には図示しないシフトケーブルの一端部が連結されており、シフトアウタレバー45の軸線方向中央部は、シフトアンドセレクト軸39の軸線方向上端部に固定されている。
シフトケーブルの他端部は、上述したシフトレバーの下端部に連結されており、運転手によってシフトレバーがシフト方向に操作されると、シフトケーブルを介してシフトアウタレバー45がシフトアンドセレクト軸39を軸線方向周りに回転させる。
なお、本実施の形態のシフト装置30は、所謂、リモートコントロール型のシフト装置30から構成されているが、これに限られるものではなく、シフトアンドセレクト軸39に直接シフトレバーを取付けた、所謂、ダイレクトコントロール方式のシフト装置30であってもよく、これらの方式に限定されるものでもない。
図6、図7において、シフトアンドセレクト軸39には第1のカム部材46が固定されている。第1のカム部材46は、カム面46Aと、カム面46Aと直交する方向からシフトアンドセレクト軸39の径方向外方に突出する第1のフィンガー部46Bと、第1のフィンガー部46Bの取付け面と反対側の面からシフトアンドセレクト軸39の径方向外方に突出するガイドピン46Cとを有する。第1のカム部材46は、本発明のカム部材を構成し、第1のフィンガー部46Bは、本発明のフィンガー部を構成する。
図5において、第1のフィンガー部46Bは、2つのシフトピース81A、81Bのいずれかに係合してシフトピース81A、81Bのいずれかをシフト方向43に移動させる。
図7において、シフトアンドセレクト軸39には第1のカム部材46を覆うようにインタロックプレート47が取付けられている。インタロックプレート47は、シフトアンドセレクト軸39に相対回転自在に取付けられており、インタロックプレート47は、第1のカム部材46を挟み込むようにC字状に形成されている。
インタロックプレート47にはスリット47aが形成されており、第1のカム部材46の第1のフィンガー部46Bは、スリット47aを通してインタロックプレート47の外方に突出することにより、2つのシフトピース81A、81Bのいずれかに係合する。本実施の形態のスリット47aは、本発明のスリットを構成する。
シフトアンドセレクト軸39には図示しないスナップリングが取付けられており、スナップリングは、インタロックプレート47の内周面に接触している。これにより、インタロックプレート47は、シフトアンドセレクト軸39と一体で軸線方向に移動し、かつ、シフトアンドセレクト軸39と相対回転する。本実施の形態のインタロックプレート47は、本発明のインタロック部材を構成する。
図2、図5に示すように、シフトピース81Aは、シフタ軸82Aに連結されており、シフトピース81Bは、シフタ軸82Bに連結されている。それぞれのシフタ軸82A、82Bは、シフトアンドセレクト軸39と直交方向で、かつ、互いに平行に延びており、シフタ軸82A、82Bの延びる方向は、エンジン6の図示しないクランク軸と略平行となっている。シフタ軸82A、82Bにはシフトフォーク83A、83Bの一端部が連結されている。
シフトフォーク83A、83Bの他端部は、それぞれ図示しない噛み合いクラッチに連絡しており、シフトフォーク83A、83Bが噛み合いクラッチを図2中、車幅方向に移動させることで変速が行なわれる。
インタロックプレート47は、スリット47aに第1のフィンガー部46Bが設置されており、第1のフィンガー部46Bは、シフトピース81A、81Bのいずれか一方に係合し、シフトピース81A、81Bのいずれか一方をシフタ軸82A、82Bの延びる方向に移動させる。
このとき、シフトピース81A、81Bの他方は、インタロックプレート47の外周面に当接して、第1のフィンガー部46Bに係合しない。このようにインタロックプレート47は、第1のフィンガー部46Bがシフトピース81A、81Bの両方を同時に選択することを防止する機能を有している。
図6、図7において、シフトアンドセレクト軸39には第2のカム部材48が固定されており、図6示すように、第2のカム部材48は、シフトアンドセレクト軸39の径方向外方に突出する第2のフィンガー部48Aを有する。
図2において、第2のフィンガー部48Aは、2つのシフトピース81C、81Dのいずれかに係合してシフトピース81C、81Dのいずれかをシフト方向43に移動させる。
図6、図7において、シフトアンドセレクト軸39にはインタロックプレート49が設けられており、インタロックプレート49は、第2のカム部材48を覆うようにインタロックプレート47の下方に設置されている。
インタロックプレート49は、シフトアンドセレクト軸39に相対回転自在に取付けられており、インタロックプレート49は、第2のカム部材48を挟み込むようにC字状に形成されている。
インタロックプレート49にはスリット49aが形成されており(図6参照)、第2のフィンガー部48Aは、スリット49aを通してインタロックプレート49の外方に突出することにより、2つのシフトピース81C、81Dのいずれかに係合する。
シフトアンドセレクト軸39には図示しないスナップリングが取付けられており、スナップリングは、インタロックプレート49の内周面に接触している。これにより、インタロックプレート49は、シフトアンドセレクト軸39と一体で軸線方向に移動し、かつ、シフトアンドセレクト軸39と相対回転する。
図2において、シフトピース81Cは、シフタ軸82Cに連結されており、シフトピース81Dは、シフタ軸82Dに連結されている。それぞれのシフタ軸82C、82Dは、シフトアンドセレクト軸39と直交方向で、かつ、互いに平行に延びており、シフタ軸82C、82Dの延びる方向は、エンジン6のクランク軸と略平行となっている。
シフタ軸82Cは、シフトフォーク83Cの一端部を保持しており、シフタ軸82Dは、シフトフォーク83Dの一端部を保持している。
シフトフォーク83C、83Dの他端部は、それぞれ噛み合いクラッチ50(図8参照)に連絡しており、シフトフォーク83C、83Dが噛み合いクラッチ50を図2中、車幅方向に移動させることで変速が行なわれる。なお、噛み合いクラッチ50は、シフトフォーク83C、83Dに対して1つずつ設けられる。
インタロックプレート49は、スリット49aに第2のフィンガー部48Aが設置されており、第2のフィンガー部48Aは、シフトピース81C、81Dのいずれか一方に係合し、シフトピース81C、81Dのいずれか一方をシフタ軸82C、82Dの延びる方向に移動させる。
このとき、シフトピース81C、81Dの他方は、インタロックプレート49の外周面に当接して、第2のフィンガー部48Aに係合しない。このようにインタロックプレート49は、第2のフィンガー部48Aがシフトピース81C、81Dの両方を同時に選択することを防止する機能を有している。
本実施の形態の変速機2は、シフトアンドセレクト軸39がニュートラル位置からセレクト方向42の上方に移動すると、第1のフィンガー部46Bに係合されるシフトピース81A、81Bが選択される。
その後、シフトアンドセレクト軸39がシフト方向43に回転すると、第1のフィンガー部46Bに係合したシフトピース81A、81Bのいずれか1つに連結されるシフトフォーク83A、83Bのいずれか1つが、噛み合いクラッチのいずれか1つをシフト方向43である図2中、車幅方向に移動させることで変速が行なわれる。
シフトアンドセレクト軸39がニュートラル位置からセレクト方向42の下方に移動すると、第2のフィンガー部48Aに係合されるシフトピース81C、81Dが選択される。その後、シフトアンドセレクト軸39がシフト方向43に回転すると、第2のフィンガー部48Aに係合したシフトピース81C、81Dのいずれか1つに連結されるシフトフォーク83C、83Dのいずれか1つが、噛み合いクラッチのいずれか1つをシフト方向43である図2中、車幅方向に移動させることで変速が行なわれる。
カウンタギヤ14は、カウンタ軸10に対して空転し、シフトアンドセレクト軸39が、シフト方向43に回転して噛み合いクラッチのいずれか1つがシフタ軸82A、82Bの軸線方向に移動すると、空転するカウンタギヤ14のいずれか1つがカウンタ軸10に噛み合ってカウンタ軸10と共に回転する。これにより、入力軸8からカウンタ軸10に動力が伝達される。
本実施の形態のカウンタ軸10は、最上位に位置するシフタ軸82Aがカウンタ軸9の軸線方向に移動することで5速または6速の変速を実行し、シフタ軸82Aの下方に位置するシフタ軸82Bがカウンタ軸10の軸線方向に移動することで3速または4速の変速を実行する。
カウンタギヤ13は、カウンタ軸9に対して空転し、シフトアンドセレクト軸39が、シフト方向43に回転して噛み合いクラッチ50のいずれか1つがシフタ軸82C、82Dの軸線方向に移動すると、空転するカウンタギヤ13のいずれか1つがカウンタ軸9に噛み合ってカウンタ軸9に共に回転する。これにより、入力軸8からカウンタ軸9に動力が伝達される。
本実施の形態のカウンタ軸9は、上方に位置するシフタ軸82Cがカウンタ軸9の軸線方向に移動することでリバース段の変速を実行し、シフタ軸82Cの下方に位置するシフタ軸82Dがカウンタ軸9の軸線方向に移動することで1速または2速の変速を実行する。
このように本実施の形態の変速機2は、複数の入力ギヤ12と複数のカウンタギヤ13、14との組み合わせによって前進6速、後進1速の変速段が構成される。本実施の形態の変速機2は、6速の変速段に限定されるものではなく、5速以下または7速以上の変速段を実行する変速機に適用してもよい。
本実施の形態の入力ギヤ12およびカウンタギヤ13、14は、本発明のギヤ列を構成し、シフトピース81A〜81D、シフタ軸82A〜82D、シフトフォーク83A〜83Dおよび噛み合いクラッチ50は、本発明の変速機構を構成する。
さらに、カウンタ軸9に設けられたファイナルドライブギヤ9F、カウンタ軸10に設けられた図示しないファイナルドライブギヤおよびファイナルギヤ16は、本発明の終減速機構を構成する。
図2、図4、図5、図6、図7において、シフトケース本体40Aにはハウジング部51が一体に形成されており、図4に示すように、ハウジング部51は、シフトケース本体40Aからトランスミッションケース5の下壁5Bに向かって延びている。
図6、図7において、ハウジング部51は、インタロックプレート47および第1のカム部材46を取り囲む3つの縦壁52〜54を有し、縦壁52〜54は、シフトアンドセレクト軸39の径方向外方に設置され、第1のカム部材46およびインタロックプレート47を取り囲んでいる。
ハウジング部51において、縦壁52〜54を除いて、第1のフィンガー部46Bに対向してする部位には開放口55が形成されており、開放口55は、シフトアンドセレクト軸39に対してファイナルギヤ16側に設置されている(図5参照)。
縦壁52は、鉛直方向と入力軸8の軸線方向と同方向とに延びており、縦壁53、54は、鉛直方向と縦壁52の延びる方向の両端から縦壁52に対して直交して入力軸8に向かう方向とに延びている。本実施の形態の縦壁52は、本発明の縦壁および第1の縦壁を構成する。縦壁53は、本発明の第2の縦壁を構成し、縦壁54は、本発明の第3の縦壁を構成する。
図6、図7において、インタロックプレート47にはディテント部材56が取付けられている。ディテント部材56は、インタロックプレート47に固定されており、ディテント部材56は、シフトアンドセレクト軸39がセレクト方向42およびシフト方向43に回転するときに、カム面46Aに押し付け力を作用させる。これにより、シフトアンドセレクト軸39が軸線方向であるセレクト方向42および回転方向であるシフト方向43に移動するときの操作力を付与する。
ハウジング部51の縦壁52にはガイド部材57がボルト58によって固定されており、ガイド部材57はガイドピン46Cに対向している。ガイド部材57にはシフトパターンに沿った形状を有するガイド溝57Aが形成されており、ガイド溝57Aにはガイドピン46Cの先端部46c(図5参照)が挿入されている。
ガイドピン46Cは、シフトアンドセレクト軸39がセレクト方向42に移動するとともに、シフト方向43に回転するのに伴ってガイド溝57Aに沿って移動する。シフト終了後(変速終了後)にガイドピン46Cの先端部46cが、各変速段に応じたガイド溝57Aの部位に移動すると、ガイド溝57Aの壁面に当接する。
これにより、シフトアンドセレクト軸39のセレクト方向42およびシフト方向43への移動量が規制されて、シフトアンドセレクト軸39がセレクト方向42およびシフト方向43にがたつくことが防止される。
ハウジング部51の縦壁53にはボルト59が取付けられている。インタロックプレート47にはスリット47bが形成されており(図4参照)、スリット47bは、シフトアンドセレクト軸39の軸線方向に延び、かつ、ボルト59の先端部59aと同程度の幅を有する。
ボルト59の先端部59aは、インタロックプレート47のスリット47bに係合しており、インタロックプレート47は、ボルト59の先端部59aに沿ってシフトアンドセレクト軸39の軸線方向に移動自在で、かつ、ボルト59の先端部59aに係合することでシフトアンドセレクト軸39の回転方向に回転することが規制される。本実施の形態のボルト59は、本発明の規制部材を構成する。
縦壁54には貫通孔54Aが形成されており(図2参照)、貫通孔54Aにはディテント部材56が貫通されている。具体的には、ディテント部材56は、インタロックプレート47から貫通孔54Aを通してシフトアンドセレクト軸39の径方向に突出している。
貫通孔54Aは、シフトアンドセレクト軸39の軸線方向に延びており、シフトアンドセレクト軸39が軸線方向に移動したときに、ディテント部材56が貫通孔54Aに沿ってシフトアンドセレクト軸39の軸線方向に移動自在となる。
このように本実施の形態のシフト装置30には、ハウジング部51を構成する縦壁52、53にガイド部材57およびボルト59が取付けられるとともに、縦壁54にディテント部材56が貫通され、かつ、ディテント部材56をシフトアンドセレクト軸39の軸線方向で移動自在とする貫通孔54Aが形成される。
図5において、縦壁52は、シフトアンドセレクト軸39と第2の側壁5bとの間に設置されており、縦壁52と第2の側壁5bとの間にはブリーザ通路60が形成されている。シフトケース本体40Aには連通孔40aが形成されており、連通孔40aは、ブリーザ通路60とトランスミッションケース5の外部とを連通している。
連通孔40aにはブリーザパイプ61が接続されており、ブリーザパイプ61は、バルブ61Aを有する。バルブ61Aは、トランスミッションケース5の内部の圧力が所定圧力以上となったときに開放し、トランスミッションケース5の内部の空気Aiを外部に逃がす。ブリーザパイプ61の上部にはキャップ61Bが設けられており、キャップ61Bによってブリーザパイプ61にゴミ等が侵入することを防止できる。
図2、図3において、クラッチハウジング4の上壁4Aは、傾斜部4aおよび湾曲部4bから構成されている。図5において、トランスミッションケース5の上壁5Aは、傾斜部4aと湾曲部4bとに沿って延びる傾斜部5dと湾曲部5eとを備えている。傾斜部5dは、ファイナルギヤ16からカウンタ軸10に向かって斜め上方に傾斜しており、湾曲部5eは、傾斜部5dから入力軸8の上方を跨いで下方に湾曲している。なお、湾曲部5eの湾曲方向の先端は、後述するキャッチタンク62のオイル導入口62Aに指向している。
トランスミッションケース5の上壁5Aにはボス部63が形成されており、ボス部63は、開口部5cの周縁を構成している。シフトケース本体40Aは、ボルト41によってボス部63に締結されている。
ボス部63は、湾曲部5eの延びる方向の先端部5tとトランスミッションケース5の第2の側壁5bとの間において湾曲部5eの先端部5tよりも高い位置に設置されている。図5において、ボス部63の上端は、湾曲部5eの先端部5tよりも距離Lだけ上方に設置されている。
連通孔40aは、ボス部63によって囲まれる空間51aに向けて開口しており、ボス部63は、湾曲部5eの先端部5tよりも上方に設置されている。
図3、図4、図9において、クラッチハウジング4およびトランスミッションケース5にはキャッチタンク62が設けられており、キャッチタンク62は、隔壁4Dとハウジング部51との間に設置されている。
キャッチタンク62は、隔壁4Dに沿って鉛直方向に延びる断面コの字形状のプレート形状に形成されており、キャッチタンク62は、ファイナルギヤ16によって掻き上げられたオイルを隔壁4Dとの間に形成される空間64に貯留する。キャッチタンク62は、オイルが導入されるオイル導入口62Aおよびオイルを排出するオイル排出口62Bを有し、オイル導入口62Aは、湾曲部5eの先端部5tに向かって開口している。
図2、図3、図5において、トランスミッションケース5の下方には仕切壁66が設けられており、仕切壁66は、隔壁4Dからカウンタギヤ13およびファイナルギヤ16の下方に突出している。
仕切壁66は、キャッチタンク62の下方からカウンタギヤ14およびファイナルギヤ16の下縁に沿ってファイナルギヤ16の下方に延びており、オイル溜まり部25は、仕切壁66を挟んで上部オイル溜まり部25Aおよび下部オイル溜まり部25Bに分割されている。
図8において、ファイナルギヤ16は、カウンタ軸9のクラッチ機構7側の端部に設けられており、車両1の前後方向においてキャッチタンク62に対向している。したがって、ファイナルギヤ16によって掻き上げられたオイルは、オイル導入口62Aからキャッチタンク62の内部に導入される。
図2、図3、図5において、下部オイル溜まり部25Bは、キャッチタンク62のオイル排出口62Bよりも下方に設置されている。
図2、図3において、下部オイル溜まり部25Bは、オイル排出口62Bおよび上部オイル溜まり部25Aと連通するオイル連通口25aと、ファイナルギヤ16に向かって開口し、下部オイル溜まり部25Bからファイナルギヤ16にオイルを供給するオイル供給口25bとを有する。したがって、本実施の形態の下部オイル溜まり部25Bは、オイル排出口62Bおよび上部オイル溜まり部25Aにそれぞれ連通している。
図4、図8において、縦壁53は、シフトアンドセレクト軸39に対してキャッチタンク62側に設置されており、図4に示すように、縦壁53は、シフトケース本体40Aからキャッチタンク62の上部まで延びている。
図8において、縦壁54は、シフトアンドセレクト軸39に対してキャッチタンク62と反対側に設置されており、連通孔40aは、入力軸8の軸線方向において縦壁53とシフトアンドセレクト軸39との間の領域に形成されている。
次に、作用を説明する。
図2、図3、図4、図5のいずれかにおいて、矢印O1〜O4は、オイルの流れを示しており、矢印R1、R2は、車両1の前進時の入力軸8、カウンタ軸9、10およびファイナルギヤ16の回転方向を示している。
図2において、車両1の前進時には、エンジン6のクランク軸の回転がクラッチ機構7を介して入力軸8に伝達され、入力軸8が反時計回転方向R1に回転すると、入力ギヤ12からカウンタギヤ13、14を介してカウンタ軸9、10が時計回転方向R2に回転する。
このとき、ファイナルドライブギヤ9Fからファイナルギヤ16に動力が伝達されてディファレンシャルギヤケース15が反時計回転方向R1に回転することにより、ドライブシャフト21L、21Rが反時計回転方向R1に回転して車両1が前進する。
ファイナルギヤ16の下部は、オイルOに浸かっているので、ファイナルギヤ16の回転によってオイルOがオイルO1で示すように上方に掻き上げられ、このオイルO1がトランスミッションケース5の上壁5A、すなわち、傾斜部5dおよび湾曲部5eを伝って前方に移動する。
本実施の形態の変速機2によれば、隔壁4Dからカウンタギヤ13およびファイナルギヤ16の下方に突出するとともに、キャッチタンク62の下方からカウンタギヤ13およびファイナルギヤ16の下縁に沿ってファイナルギヤ16の下方に延びる仕切壁66が設けられる。
これにより、上部オイル溜まり部25Aにおいてカウンタギヤ13およびファイナルギヤ16が浸かるオイル量を低減して、カウンタギヤ13およびファイナルギヤ16の回転によって攪拌されるオイル量を低減できる。
また、本実施の形態の変速機2によれば、入力軸8に対してカウンタ軸9と反対側に設置され、ファイナルギヤ16によって掻き上げられたオイルを貯留するキャッチタンク62を備える。
これにより、上部オイル溜まり部25Aにおいてカウンタギヤ13およびファイナルギヤ16が浸かるオイル量をさらに低減でき、カウンタギヤ13およびファイナルギヤ16の回転によって攪拌されるオイル量をさらに低減できる。
また、本実施の形態の変速機2によれば、下部オイル溜まり部25Bを、オイル排出口62Bよりも下方に設置し、下部オイル溜まり部25Bを、オイル排出口62Bに連通させている。これにより、キャッチタンク62のオイル排出口62Bから排出されるオイルO2を下部オイル溜まり部25Bに排出することができる。このため、カウンタギヤ13およびファイナルギヤ16の回転によって攪拌されるオイル量を低減できる。
さらに、本実施の形態の変速機2によれば、下部オイル溜まり部25Bを、オイル排出口62Bおよび上部オイル溜まり部25Aにそれぞれ連通させている。これにより、カウンタギヤ13の回転によってキャッチタンク62側に流れるオイルO3を、オイル排出口62Bから下部オイル溜まり部25Bに排出されるオイルO2の流れによって上部オイル溜まり部25Aから下部オイル溜まり部25Bに流入させることができる。これにより、ファイナルギヤ16の回転によって攪拌されるオイル量を低減できる。
以上の結果、カウンタギヤ13およびファイナルギヤ16の攪拌抵抗を低減でき、変速機2の動力損失を低減できる。
また、本実施の形態の変速機2によれば、入力軸8に対して第1の側壁5a側に位置するようにファイナルギヤ16を設置し、入力軸8に対して第2の側壁5b側に位置するように上壁5Aに開口部5cを形成し、シフトケース本体40Aに形成された縦壁52をシフトアンドセレクト軸39と第2の側壁5bとの間に設置した。
これに加えて、シフトケース本体40Aに連通孔40aを形成し、連通孔40aが、縦壁52と第2の側壁5bとの間に形成されるブリーザ通路60とトランスミッションケース5の外部とをブリーザパイプ61を介して連通している。
これにより、トランスミッションケース5の内部の圧力が所定圧力以上となったときに、ブリーザパイプ61のバルブ61Aが開放し、トランスミッションケース5の内部の空気をブリーザ通路60から連通孔40aおよびブリーザパイプ61を通して排出できる。このため、トランスミッションケース5の内部の圧力変動を緩和できる。
このように、本実施の形態の変速機2によれば、シフトケース本体40Aに設けられた縦壁52とトランスミッションケース5の第2の側壁5bとを利用して、縦壁52と第2の側壁5bとの間にブリーザ通路60を形成することができ、ブリーザ通路60からシフトケース本体40Aに形成された連通孔40aからブリーザパイプ61を通して空気を排出することができる。
また、オイルを掻き上げるファイナルギヤ16からブリーザ通路60を離すことができ、オイルが連通孔40aに容易に到達しないようにできる。また、ファイナルギヤ16によって掻き上げられたオイルがブリーザ通路60に到達する前に縦壁52に衝突させることができるので、連通孔40aにオイルを侵入し難くでき、ブリーザパイプ61からオイルが漏れることを抑制できる。
また、縦壁52と第2の側壁5bとの間に形成されるブリーザ通路60を形成しているので、縦壁52と第2の側壁5bとの隙間を容易に小さくできる。これにより、ブリーザ通路60にオイルが侵入することを抑制して、オイルが連通孔40aに容易に到達しないようにでき、ブリーザパイプ61からオイルが漏れることをより効果的に抑制できる。
この結果、トランスミッションケース5に専用のブリーザ室を形成することを不要にして、簡素なブリーザ構造でブリーザ性能を向上することができ、クラッチハウジング4およびトランスミッションケース5からなる変速機ケース31が大型化することを抑制できる。
また、本実施の形態の変速機2によれば、シフトアンドセレクト軸39が、シフトアンドセレクト軸39に固定され、シフトピース81A、81Bを押圧してシフタ軸82A、82Dをシフト方向43に移動させる第1のフィンガー部46Bを有する第1のカム部材46と、第1のカム部材46を挟み込むようにC字状に形成されるとともに、第1のフィンガー部46Bの先端を突出させるスリット47aを有し、シフトアンドセレクト軸39と一体で軸線方向に移動し、かつ、シフトアンドセレクト軸39と相対回転するインタロックプレート47とを備えている。
これに加えて、シフトケース40に、第1のカム部材46およびインタロックプレート47を取り囲み、縦壁52を含んだハウジング部51を形成し、さらに、縦壁52と対向するハウジング部51に開放口55を形成し、開放口55をシフトアンドセレクト軸39に対してファイナルギヤ16側に設置した。
これにより、ファイナルギヤ16によって掻き上げられたオイルを、開放口55を通してハウジング部51の内部で受け止めることができる。このため、ハウジング部51の内部に設置される第1のカム部材46やインタロックプレート47を容易に潤滑することができる。
さらに、シフトアンドセレクト軸39を取り囲むようにハウジング部51を設置したので、オイルが縦壁52に衝突した勢いで縦壁52の両側からブリーザ通60に回り込むことを抑制できる。このため、オイルがブリーザ通路60を通して連通孔40aに侵入し難くして、オイルがブリーザパイプ61から吹き出ることを抑制できる。
これに加えて、シフトアンドセレクト軸39を取り囲むようにハウジング部51が設置されることで、ハウジング部51の剛性を高くできる。これにより、車両1の走行時にファイナルギヤ16の駆動やハウジング部51にオイルが衝突することによる衝撃でシフトケース本体40Aに対してハウジング部51が振動することや振幅することを抑制できる。
このため、縦壁52を第2の側壁5b側に近づけて設置しても、縦壁52と第2の側壁5bとの間に小さい隙間を容易に形成することができ、オイルがブリーザ通路60に侵入することを抑制できる。このため、オイルが連通孔40aにより効果的に侵入し難くして、オイルがブリーザパイプ61から吹き出ることをより効果的に抑制できる。
また、本発明の変速機2によれば、トランスミッションケース5の上壁5Aが、ファイナルギヤ16からカウンタ軸10に向かって斜め上方に傾斜する傾斜部5dと、傾斜部5dから入力軸8の上方を跨いで下方に湾曲する湾曲部5eとを有する。
さらに、トランスミッションケース5が、上端部にシフトケース本体40Aが取付けられ、開口部5cの周縁を構成するボス部63を有し、ボス部63が、湾曲部5eの延びる方向の先端部5tとトランスミッションケース5の第2の側壁5bとの間において湾曲部5eの先端部5tよりも高い位置に設置され、連通孔40aがボス部63によって囲まれる空間51aに向けて開口する。
これにより、ファイナルギヤ16によって掻き上げられたオイルを傾斜部5dから湾曲部5eに沿って案内し、湾曲部5eを流れるオイルをボス部63の手前で下方に指向させることができる。
このため、ファイナルギヤ16によって掻き上げられたオイルが湾曲部5eの先端部5tからシフトケース本体40A側に流れ込み難くして、シフトケース本体40Aに形成された連通孔40aにオイルが侵入することをより効果的に抑制できる。
また、本実施の形態の変速機2によれば、変速機ケース31が、クラッチ機構7を収容するトランスミッションケース5と、トランスミッションケース5に隔壁4Dを挟んで対向して連結され、内部にオイルを貯留するオイル溜まり部25を有するクラッチハウジング4とを含んで構成される。
さらに、クラッチハウジング4に、ファイナルギヤ16によって掻き上げられたオイルを貯留するキャッチタンク62を設け、キャッチタンク62を、隔壁4Dに沿って鉛直方向に延びるようにして隔壁4Dとハウジング部51との間に設置した。
これに加えて、キャッチタンク62は、キャッチタンク62の上端部に開口し、オイルが導入されるオイル導入口62Aを有し、オイル導入口62Aは、湾曲部5eの先端部5tに向かって開口している。
これにより、ファイナルギヤ16によって掻き上げられたオイルを傾斜部5dから湾曲部5eに沿って案内した後に、キャッチタンク62に確実に流し込むことができる。このため、ファイナルギヤ16の回転時にキャッチタンク62に一定量のオイルを貯留することができる。このため、オイル溜まり部25に貯留されるオイルの量を少なくしてファイナルギヤ16の攪拌抵抗を低減できる。
これに加えて、オイル溜まり部25に貯留されるオイルの量を少なくすることで、ファイナルギヤ16によって掻き上げられるオイルの量を変速機構や終減速機構を潤滑するのに十分な量だけにして、ブリーザ通路60に流れ込むオイルの量を少なくできる。
また、キャッチタンク62を、隔壁4Dに沿って鉛直方向に延びるようにして隔壁4Dとハウジング部51との間に設置したので、ファイナルギヤ16によって掻き上げられた後に、上壁5Aよりも下方で、隔壁4Dに沿って流れるオイル(図4に符号O4でオイルの流れを示す)がブリーザ通路60に回り込むことを抑制できる。これらの結果、連通孔40aにオイルが流れ込むことをより効果的に抑制できる。
また、本実施の形態のシフト装置30は、シフト装置30がシフトパターンに沿ったゲート形状のガイド溝57Aを有するガイド部材57と、第1のカム部材46に設けられ、先端部がガイド溝57Aに挿入されることにより、シフトアンドセレクト軸39の軸線方向および回転方向への移動量を規制するガイドピン46Cとを備えている。
さらに、シフト装置30は、インタロックプレート47に係合することにより、インタロックプレート47がシフトアンドセレクト軸39の軸線方向周りに回転することを規制するボルト59と、第1のカム部材46のカム面46Aに押し付け力を作用させることにより、シフトアンドセレクト軸39が軸線方向および回転方向に移動するときの操作力を付与するディテント部材56とを備えている。
さらに、シフト装置30のハウジング部51が、入力軸8の軸線方向と同方向に延びる縦壁52と、縦壁52の延びる方向の両端から縦壁52に対して直交して入力軸8に向かって延びる縦壁53、54とを備えている。
これに加えて、縦壁52に、ガイド部材57を取付け、縦壁53に、ボルト59を取付け、縦壁54に、ディテント部材56が貫通され、かつ、ディテント部材56をシフトアンドセレクト軸39の軸線方向で移動自在とする貫通孔54Aを形成した。
これにより、軸線方向長さが長いボルト59とディテント部材56とを入力軸8の延びる方向に設置し、板厚の小さいガイド部材57を縦壁52に設置できる。これにより、縦壁52と第2の側壁5bとの隙間を小さくすることができ、ブリーザ通路60を構成するための空間を小さくでき、ブリーザ通路60にオイルが侵入することをより効果的に抑制できる。
また、ハウジング部51が入力軸8と直交する方向に長くなることを防止することができるので、入力軸8と直交する方向におけるトランスミッションケース5の寸法を短くすることができ、その分だけ、変速機ケース31が大型化することを抑制できる。
また、ハウジング部51を構成する縦壁52〜54のそれぞれにガイド部材57、ボルト59およびディテント部材56を集約できるとともに、シフトケース本体40Aに連通孔40aを形成することができる。
これにより、トランスミッションケース5にガイド部材57、ボルト59およびディテント部材56の設置スペースを設けることを不要にできるとともに、専用のブリーザ室を形成することを不要にできる。このため、変速機ケース31の構造を簡素化かつ、変速機ケース31が大型化することをより効果的に抑制できる。
さらに、作業者は、ガイド部材57、ボルト59、ディテント部材56およびブリーザパイプ61を一体にした状態でシフト装置30をトランスミッションケース5に組み付けることができる。これに加えて、作業者は、シフト装置30とトランスミッションケース5との距離を考慮することなく、シフト装置30をトランスミッションケース5に組み付けることができる。これにより、シフト装置30の組み付け作業の作業性を向上できる。
また、本実施の形態の変速機2によれば、縦壁53がシフトアンドセレクト軸39に対してキャッチタンク62側に設置されてシフトケース本体40Aからキャッチタンク62の上部まで延びている。
さらに、縦壁54が、シフトアンドセレクト軸39に対してキャッチタンク62と反対側に設置され、連通孔40aが、入力軸8の軸線方向において縦壁54とシフトアンドセレクト軸39との間の領域に形成される。
これにより、図4に示すように、キャッチタンク62の上方に指向するオイルO4を縦壁53と隔壁4Dとによって捕捉してキャッチタンク62に流し込むことができる。これにより、ファイナルギヤ16によってより多くのオイルをキャッチタンク62に導くことができ、オイル溜まり部25に貯留されるオイルの量を低減して、ファイナルギヤ16の攪拌抵抗をより効果的に低減できる。
また、万が一、キャッチタンク62から縦壁52にオイルが流れ込んだ場合に、連通孔40aが、入力軸8の軸線方向において縦壁54とシフトアンドセレクト軸39との間の領域に形成されることで、オイルが連通孔40aに到達し難くできる。このため、オイルがブリーザパイプ61から吹き出ることをより効果的に抑制できる。
本発明の実施形態を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。