以下、本発明の一実施形態に係る間接活線作業用締付具(以下、締付具とする)について、図面を参照しつつ説明する。
締付具は、送配電設備において、取付部材を被取付部材に取り付けるための締結部材の締付部に嵌合して該締結部材を締め付けるために、絶縁操作棒に装着されるものである。本実施形態では、配電線と引下線とを接続するための引下線用コネクタ(以下、コネクタとする)を配電線に対して着脱させるために締付具が使用される場合について説明する。そのため、まず、該コネクタについて説明する。
図1及び図2に示すように、コネクタ9は、配電線W1が挿通されるコネクタ本体91と、前記コネクタ本体91に設けられ、前記コネクタ本体91を配電線W1に対して固定するためのボルト92と、を有する。即ち、本実施形態においては、取付部材としてコネクタ本体91、被取付部材として配電線W1、締結部材としてボルト92、締付部として後述するボルト92の頭部921であることを前提に締付具1の説明を行うものとする。
コネクタ本体91は、配電線W1と引下線W2とを保持する一対の保持部911を有する。一対の保持部911のそれぞれには、配電線W1を位置させる第1凹部912A,912Bと、引下線W2を位置させる第2凹部913A,913Bとが形成されている。該一対の保持部911を対向させることで、第1凹部912A,912B同士が対向し、配電線W1を保持するための第1保持部901が形成される。また、第2凹部913A,913B同士が対向し、引下線W2を保持するための第2保持部902が形成される。また、一対の保持部911のうちの一方の保持部911Bは、絶縁ヤットコ等で把持するための把持部915Bを有する。
第1凹部912A,912Bは、円弧状に湾曲しており、配電線W1を保持する領域は、略円形状に形成されている。また、第2凹部913A,913Bは、円弧状に湾曲しており、引下線W2を保持する領域は、略円形状に形成されている。第1保持部901及び第2保持部902は、互いの中心線が平行になるように形成されている。即ち、第1保持部901及び第2保持部902は、配電線W1と引下線W2とが平行な状態で保持されるように形成されている。
一対の保持部911は、導電性を有する板状の金属によって形成されている。一対の保持部911のそれぞれには、ボルト92が貫通する貫通孔914A,914Bが形成されている。また、各貫通孔914A,914Bは、中心線が第1保持部901の中心線と交差するように形成されている。本実施形態では、貫通孔914A,914Bは、中心線が、第1保持部901及び第2保持部902の中心線に対して直交するように各保持部911を厚み方向に貫通している。一対の保持部911のうちの一方の保持部911Bの貫通孔914Bには、ボルト92と螺合するネジ部(図示しない)が形成されている。
一対の保持部911のそれぞれは、第1凹部912A,912B、貫通孔914A,914B、第2凹部913A,913Bが、一端からこの順に並ぶように形成されている。
ボルト92は、締付具1と嵌合する頭部921と、該頭部921の外径よりも径が小さい軸部922と、を有し、軸部922には、一方の保持部911Bと螺合するネジ部923が形成されている。ボルト92は、一対の保持部911のうちの他方の保持部911A側の貫通孔914Aから挿通され、該他方の保持部911A側に頭部921を位置させている。
頭部921は、所定の厚みを有する角柱状に形成されており、一端921Aから、該一端921Aとは反対側(軸部922側)に位置する他端921Bに亘って同径で形成されている。本実施形態の頭部921は、六角形に形成されている。
以上のように構成されたコネクタ9は、第1保持部901の下方に貫通孔914A,914B及び第2保持部902が位置するように、配電線W1に対して固定される。本実施形態に係る締付具1は、以上のように構成されたコネクタ9を配電線W1に対して着脱させるために使用される。以下、本実施形態に係る締付具1について説明する。
締付具1は、前記ボルト92に嵌合可能な嵌合部2と、前記ボルト92と前記嵌合部2とが嵌合する嵌合方向を中心に回転可能な操作部3と、前記嵌合方向に前記嵌合部2と離間して配置された対向部4と、前記嵌合部2と前記対向部4とを連結する連結体5と、を備える。
以下、締付具1の嵌合部2がボルト92に嵌合した状態を基準として、嵌合部2とボルト92とが嵌合する嵌合方向を前後方向X、配電線W1が延びる方向を左右方向Y、前後方向及び左右方向に直交する方向を上下方向Zとする場合がある。この場合、嵌合部2が位置する側を前方、前方から後方に向かう方向に対して右側となる方向を右方、配電線W1が位置する側を上方とし、図面には、それぞれの方向に対応する座標軸が必要に応じて図示されている。
嵌合部2は、締付部としての頭部921に嵌合して締付操作及び緩め操作可能に構成されている。嵌合部2は、ボルト92の頭部921に嵌合する嵌合本体21と、該嵌合本体21の一端部を塞ぐキャップ22と、嵌合本体21の他端部が挿通され、嵌合本体21が連結体5から脱落するのを防止するソケット23と、を有する。
嵌合本体21は、締付対象となるボルト92の頭部921に嵌合し、該頭部921に係合してボルト92の締付操作及び緩め操作を行うものである。具体的には、嵌合本体21は、他端側に頭部921が嵌合する嵌合凹部214が形成された円筒体213と、該円筒体213の外周面に形成されたギヤ部215と、を備える。
円筒体213は、キャップ22が装着されるキャップ装着部211と、ソケット23に挿通されるソケット挿通部212と、を有する。円筒体213は、キャップ装着部211と、ソケット挿通部212との間にギヤ部215を位置させている。
キャップ装着部211の外径及びソケット挿通部212の外径は、略同一に形成されている。ソケット挿通部212の長さは、キャップ装着部211の長さよりも長く形成されている。また、ソケット挿通部212は、ギヤ部215が位置する一端212Aと、該一端212Aとは反対側に位置する他端212Bとを有しており、ソケット挿通部212の他端212B側に、ボルト92の頭部921が嵌合する嵌合凹部214が形成されている。
嵌合凹部214は、複数の凹凸が周方向に並んだ形状となっており、様々な形状のボルト92を嵌合可能に構成されている。嵌合凹部214は、ソケット挿通部212の内径を変化させることによって形成されている。具体的には、ソケット挿通部212の他端212Bから軸方向における所定距離、内径が他の部分の内径よりも広くなるように形成されている。
ギヤ部215は、円筒体213の中途部に形成されている。ギヤ部215の外径は、キャップ装着部211及びソケット挿通部212の外径よりも大きく形成されている。即ち、嵌合本体21は、ギヤ部215が形成された部分において、部分的に径が大きくなっている。
ギヤ部215は、円筒体213の周方向に等間隔に並ぶ複数の歯部を有する。歯部は、後述する操作部3の爪部(図示しない)と噛み合う部分であり、円筒体213の外方に突出している。
キャップ22には、嵌合本体21のキャップ装着部211を嵌め込む凹部が形成されている。凹部は、円形状に形成されている。該凹部の内径は、キャップ装着部211の外径と略同一に形成され、ギヤ部215の外径よりも小さく形成されている。キャップ22は、後述する接続部31における第1挿通孔311にギヤ部215を挿通し、ギヤ部215と爪部とを位置合わせさせた状態で、キャップ装着部211に対して固定される。
ソケット23は、連結体5に対して嵌合本体21を回転可能に接続する部分である。ソケット23は、嵌合本体21のソケット挿通部212を挿通可能な筒状に形成されている。ソケット23の内径は、ソケット挿通部212の外径と略同一に形成され、ギヤ部215の外径よりも小さく形成されている。ソケット23は、該ソケット23とギヤ部215との間に、連結体5の一端部を位置させた状態で、ソケット挿通部212に対して固定される。
本実施形態において、嵌合部2とボルト92との嵌合状態とは、配電線W1及びコネクタ9のうちの少なくとも一方を嵌合部2と対向部4との間に位置させた状態で、嵌合部2のソケット挿通部212の他端212Bが、ボルト92の一端921Aよりも後方(ボルト92の軸部922側)に位置する状態を意味している。そして、嵌合状態を維持する間隔とは、コネクタ9が最も後方に位置ずれした際に、コネクタ9(又は配電線W1)における対向部4と当接する部分とボルト92の一端921Aとの嵌合方向における距離D1よりも、対向部4におけるコネクタ9(又は配電線W1)と当接する部分とソケット挿通部212の他端212Bとの嵌合方向における距離D2が短くなる間隔を意味する。
操作部3は、嵌合部2を回動させるものである。本実施形態の操作部3は、嵌合部2を、嵌合方向Xを中心に回転操作させるものである。操作部3は、嵌合部2に接続された接続部31と、該接続部31に接続され、嵌合方向を中心に回転可能なハンドル32と、を有する。
接続部31は、板状の部材によって形成されている。接続部31は、ギヤ部215と歯合可能な爪部(図示しない)を有し、一端部に第1挿通孔311が前後方向Xに貫通し、他端部に、第2挿通孔312が前後方向Xに貫通している。爪部は、第1挿通孔311の内周面に設けられている。第1挿通孔311の内径は、ギヤ部215の外径よりも大きく形成されており、第1挿通孔311には、ギヤ部215が挿通されている。第2挿通孔312には、後述するハンドル32の軸ボルト322が挿通されている。第1挿通孔311及び第2挿通孔312は、円形状に接続部31を貫通している。
ハンドル32は、把持片321と、該把持片321を、接続部31に接続する軸ボルト322とを有する。把持片321には、軸ボルト322の先端と螺合する雌ネジ部が形成されている。把持片321は、絶縁ヤットコで把持するか、又はバインド打ち器を掛けることができるように構成されている。本実施形態の把持片321は、平板状に形成されている。また、把持片321の表面は、凹凸形状となっており、絶縁ヤットコ等の先端が掛止されやすくなっている。
軸ボルト322は、頭部322Aと、該頭部322Aの外径よりも径が小さい軸部322Bとを有する。軸部322Bの先端には、ハンドル32の雌ネジ部と螺合するネジ部が形成されている。軸部322Bの外径は、接続部31の第2挿通孔312の内径よりも小さく形成されている。軸部322Bは、接続部31の第2挿通孔312に挿通される。軸部322Bの先端は、頭部322Aと把持片321との間に接続部31を挟んだ状態で、ハンドル32の雌ネジ部と螺合する。ハンドル32は、接続部31に対して、嵌合方向を中心に回転可能となっている。
嵌合部2と対向部4とは、嵌合部2が締付部としてのボルト92の頭部921に嵌合した状態で少なくとも締結部材としてのボルト92が介在するように離間して構成され、且つ、嵌合部2の頭部921への嵌合が解除されるまでに、ボルト92、取付部材としてのコネクタ本体91、及び被取付部材としての配電線W1のうちの少なくとも1つに対向部4が当接するように、前記離間した状態を保持するように構成されている。
対向部4は、嵌合部2に対して離間して対向配置されている。嵌合部2と対向部4とは、前記離間した状態を保持した保持位置S1と、該保持位置S1よりも離間間隔が広く、嵌合部2の頭部921への嵌合が解除可能な間隔である解除位置S2とを切り替え可能となるよう相対的に接離するよう構成されている。本実施形態では、嵌合部2と対向部4とは、連結されており、対向部4は、嵌合部2に連結された状態で、保持位置S1と、解除位置S2とを移動可能に構成されている。対向部4は、配電線W1が延びる方向(左右方向)を中心に、連結体5に対して回動するように構成されており、嵌合部2に対して嵌合方向Xで接離可能に構成されている。
対向部4は、連結体5に連結された本体部41と、本体部41に設けられた調整機構42と、コネクタ9を支持する支持部43と、本体部41の回動中心となる回動軸44と、後述する連結体5の固定手段51と係合する被係合部45と、を有する。対向部4は、嵌合部2とボルト92との嵌合状態を維持する保持位置S1と、嵌合部2とボルト92との嵌合状態を解除する解除位置S2とを往復可能に構成されている。
本体部41は、コネクタ9に対して接離する接離部411と、連結体5に対して回動する回動部412と、接離部411と回動部412とを繋ぐ接続体413と、を有する。本実施形態では、接離部411、回動部412、及び接続体413は、一体的に形成されている。
回動部412には、回動軸44を挿通するための第3挿通孔412Aが左右方向に貫通している。また、回動部412は、対向部4を所定の解除位置S2で停止させるための規制部412Bを有する。規制部412Bは、連結体5(図2におけるC)と当接する部分であり、本体部41が、保持位置S1から所定角度後方に傾斜した状態で停止するように構成されている。本実施形態では、本体部41が、保持位置S1から30度後方に傾斜した状態で停止する。
接離部411と接続体413とは、板状部材によって一体的に形成されている。本実施形態では、接離部411と接続体413とは、屈曲して連続している。対向部4が保持位置S1にあるときに、接離部411は、上下方向に延びた姿勢となり、接続体413は、上下方向に対して、後方に傾斜した姿勢となる。
接離部411は、第1接離部411Bと、第2接離部411Cと、を有し、第2接離部411Cは、第1接離部411Bの後方に設けられている。第1接離部411B及び第2接離部411Cは、円盤状に形成されており、第2接離部411Cの外径は、第1接離部411Bの外径よりも小さく形成されている。即ち、第1接離部411Bと第2接離部411Cとは、階段状に、段差を形成している。第1接離部411B及び第2接離部411Cには、第3挿通孔412Aの貫通方向と直交する方向に第4挿通孔411Aが貫通している。本実施形態では、第4挿通孔411Aは、接離部411の厚み方向に第1接離部411B及び第2接離部411Cを貫通している。
調整機構42は、嵌合部2と対向部4との間隔を調整可能に構成されている。調整機構42は、可動片421と、該可動片421に取り付けられる調整部422と、可動片421を本体部41に固定するためのネジ423と、ネジ423と本体部41との間に位置する掛止部424と、を有する。本実施形態の調整機構42は、本体部41の接離部411に固定されている。
可動片421は、頭部421Aと、該頭部421Aの外径よりも径が小さい可動軸部421Bと、を有する。可動軸部421Bは、頭部421Aから延出している。可動軸部421Bは、円柱状に形成されており、外周面が滑らかに形成されている。可動軸部421Bの外径は、接離部411の第4挿通孔411Aの内径よりも小さく形成されている。可動軸部421Bには、ネジ423と螺合する雌ネジ部が形成されている。
本実施形態の支持部43は、調整機構42に設けられている。支持部43は、嵌合部2と対向部4との間にコネクタ9を位置させた状態で、コネクタ9を支持する部分である。支持部43は、嵌合部2と対向部4との間にコネクタ9を位置させた状態で、コネクタ本体91、又はボルト92を支持する。本実施形態の支持部43は、コネクタ9のボルト92の端部を支持する。具体的には、支持部43は、可動片421の頭部421Aにおける一端側に形成されており、ボルト92の軸部922の先端が嵌り込む凹状部431である。そして、嵌合部2のボルト92への嵌合が解除されるまでに、ボルト92が凹状部431の底部に当接するようになっている。
調整部422は、嵌合部2と対向部4との間隔を調整する部分である。本実施形態の調整部422は、図3に示すように、可動片421の可動軸部421Bに取り付けられる取付片422Aと、該取付片422Aから延びるつまみ部422Bと、を有する。
取付片422Aは、環状に構成されている。本実施形態の取付片422Aは、湾曲した一対の挟持片422aから構成されており、可動軸部421Bを挟み込むように構成されている。一対の挟持片422aが対向することによって、可動軸部421Bを挟み込む領域が形成されている。取付片422Aは、ビニル等の柔軟性のある材料で形成されている。一対の挟持片422aのそれぞれの先端部同士は、可動軸部421Bの外径よりも狭い隙間を保って近接しており、先端に向かうにつれて離間している。
本実施形態の取付片422Aは、対向部4の本体部41と、可動片421の頭部421Aとの間に取り付けられている。しかしながら、図4に示すように、取付片422Aは、可動片421を後方にスライドさせ、本体部41の後方に付け替えられてもよい。
つまみ部422Bは、取付片422Aを可動軸部421Bに取り付ける際に把持される部分である。つまみ部422Bは、一対の挟持片422aのそれぞれの基端部に繋がっている。
掛止部424は、可動片421が接離部411から抜けるのを防止する部分である。掛止部424は、環状に形成されている。掛止部424は、外径が第4挿通孔411Aの内径よりも大きく形成されている。本実施形態の掛止部424は、外径が、第2接離部411C及び取付片422Aの外径よりも大きく形成されている。接離部411の第4挿通孔411Aに可動軸部421Bが挿通され、掛止部424は、ネジ423と本体部41との間に挟まれた状態で、ネジ423が、可動軸部421Bの雌ネジ部と螺合する。
被係合部45は、回動部412に設けられている。被係合部45は、回動部412から上方に向かって突出する突出片である。被係合部45は、対向部4が保持位置S1にあるときに、上下方向に延びる姿勢となる被係合面451を有する。被係合面451は、保持位置S1で後方を向く姿勢となる。
連結体5は、絶縁操作棒Tへ取り付けるための取付部522と、対向部4との連結部分となる連結部523と、嵌合部2を回動可能に支持する回動支持部521と、対向部4の位置を固定する固定手段51と、を有する。本実施形態では、連結体5は、固定手段51が固定される連結本体52を有し、該連結本体52が、取付部522と、連結部523と、回動支持部521とを有する。本実施形態では、連結体5は、絶縁操作棒Tの先端に取り付けられる。
固定手段51は、図5及び図6に示すように、回転中心となる軸を挿通するための挿通部511と、対向部4の被係合部45と係合する係合部512と、係合部512の両端から延出する一対の延出部513と、を有する。挿通部511には、第5挿通孔511Aが左右方向に貫通している。固定手段51は、左右方向を中心に回動可能に構成されている。挿通部511、係合部512、及び一対の延出部513は、一体的に形成されている。挿通部511と係合部512とは、前後方向に連設されており、一対の延出部513は、係合部512の両端から左右方向に延出している。一方の延出部513の端部から他方の延出部513の端部までの長さは、操作部3の接続部31、対向部4の本体部41、及び連結体5の連結本体52の左右方向の幅よりも長く形成されている。そのため、一対の延出部513は、操作部3の接続部31、対向部4の本体部41、及び連結体5の連結本体52に対して、左右方向に突出している。
係合部512は、対向部4が保持位置S1にあるときに、上下方向に延びる姿勢となる係合面512Aを有する。係合面512Aは、保持位置S1で前方を向いており、対向部4の被係合部45と係合したときに、被係合部45の被係合面451と対向する。
連結本体52は、一方向に延びる部材によって形成されている。連結本体52は、一端部に回動支持部521、他端部に絶縁操作棒Tを取り付けて固定するための取付部522と、中央部に回動軸44を挿通するための第7挿通孔523Aが形成された連結部523と、を有する。本実施形態では、取付部522として菊座を採用しているが、取付部522は、ツイストロック式等、その他の手段も採用することができる。
回動支持部521は、薄板で形成されており、嵌合方向に第6挿通孔521Aが貫通している。第6挿通孔521Aは、嵌合部2のソケット挿通部212を挿通する部分である。第6挿通孔521Aは、円形状に形成されている。第6挿通孔521Aの内径は、該ソケット挿通部212の外径よりも大きく形成されている。また、第6挿通孔521Aの内径は、ギヤ部215の外径よりも小さく形成されている。
連結部523の第7挿通孔523Aは、連結部523を左右方向に貫通している。連結部523は、左右方向に間隔を開けて並ぶ一対の挟持片523Bを有し、一対の挟持片523B同士の間に対向部4の回動部412を位置させた状態で回動軸44が第7挿通孔523Aに挿通される。
本実施形態の締付具1の説明は以上である。次に、本実施形態の締付具1を用いて、コネクタ9を配電線W1に取り付ける方法及びコネクタ9を配電線W1から取り外す方法について説明する。
まず、コネクタ9を配電線W1に取り付ける方法について説明する。事前準備として、締付具1を絶縁操作棒Tに固定しておく。そして、係合部512と被係合部45との係合状態を解除して(ロックを解除して)、対向部4を解除位置S2に位置させておく。また、引下線W2をコネクタ本体91の第2保持部902に先端がコネクタ9からはみ出すように、予め挿入しておく。
絶縁ヤットコ等を用いてコネクタ9を配電線W1付近まで運び、コネクタ9を取り付ける位置に合わせて、引下線W2を配電線W1に巻き付ける。そして、締付具1の嵌合部2をボルト92の頭部921に嵌合させ、間接活線工具を用いて対向部4を保持位置S1に位置させる。
係合部512と被係合部45とを係合させ(ロックさせ)、対向部4の位置を固定する。そして、コネクタ本体91の第1保持部901に配電線W1を嵌め込む。
絶縁ヤットコやバインド打ち器を用いてハンドル32を回し、ボルト92を締め付ける。締付具1の保持と、ボルト92を締め付ける作業は、同じ作業者が行ってもよく、異なる作業者と共同で行ってもよい。また、一の作業者が、ストレーリングトング等の間接活線工具を用いて、作業に支障のない位置で配電線W1を保持し、配電線W1の揺れを抑えてもよい。配電線W1の揺れを抑える作業(配電線W1の保持)と、ボルト92の締め付け作業を複数の作業者が共同で行ってもよい。
ボルト92の締め付け作業が終了したら、間接活線工具を用いて係合部512と被係合部45との係合(ロック)を解除する。そして、対向部4を解除位置S2に位置させ、嵌合部2をボルト92の頭部921から抜き、締付具1をコネクタ本体91から取り外す。
次に、コネクタ9を配電線W1から取り外す方法について説明する。締付具1の事前準備は、コネクタ9を配電線W1に取り付ける場合と同様である。締付具1をコネクタ9が固定された位置まで持ち上げ、ボルト92と嵌合部2とを嵌合させる。間接活線工具を用いて対向部4を嵌合部2に対して接近させ、対向部4を保持位置S1に位置させる。係合部512と被係合部45とを係合させ(ロックさせ)、対向部4の位置を固定する。
絶縁ヤットコやバインド打ち器を用いてハンドル32を回し、ボルト92を緩める。作業者の作業分担については、コネクタ9を配電線W1に取り付ける場合と同様である。
ボルト92の緩め作業が終了したら、コネクタ9を配電線W1から取り外す。間接活線工具を用いて係合部512と被係合部45との係合(ロック)を解除する。そして、対向部4を解除位置S2に位置させ、嵌合部2をボルト92の頭部921から抜き、締付具1をコネクタ本体91から取り外す。
以上のように、本実施形態に係る間接活線作業用締付具1は、送配電設備において、取付部材(本実施形態ではコネクタ本体91)を被取付部材(本実施形態では配電線W1)に取り付けるための締結部材(本実施形態ではボルト92)の締付部(本実施形態ではボルト92の頭部921)に嵌合して該締結部材を締め付けるために、絶縁操作棒Tに装着される間接活線作業用締付具1であって、前記締付部に嵌合して締付操作可能な嵌合部2と、前記嵌合部2に対して離間して対向配置される対向部4と、を備え、前記嵌合部2と前記対向部4とは、前記嵌合部2が前記締付部に嵌合した状態で少なくとも前記締結部材が介在するように離間して構成され、且つ、前記嵌合部2の前記締付部への嵌合が解除されるまでに、前記締結部材、前記取付部材、及び前記被取付部材のうちの少なくとも1つに前記対向部4が当接するように、前記離間した状態を保持するように構成されている。
かかる構成によれば、締結部材を用いて取付部材を被取付部材に取り付ける際に、嵌合部2と対向部4との間に介在した締結部材が、嵌合部2と締付部との嵌合状態が解除される方向(以下、解除方向とする)に移動しても、嵌合部2と締付部との嵌合状態が解除される前に(嵌合部2が締付部から外れる前に)、対向部4は、締結部材、取付部材、及び被取付部材のうちの少なくとも1つに当接する。対向部4が締結部材、取付部材、及び被取付部材のうちの少なくとも1つと当接すると、締結部材の解除方向への移動が規制される。そのため、締結部材を用いて取付部材を被取付部材に取り付ける際に、締結部材が解除方向に移動しても、嵌合部2と締付部との嵌合状態が維持され、嵌合部2が締付部から脱落するのを防止することができる。
本実施形態において、前記嵌合部2と前記対向部4とは、前記離間した状態を保持した保持位置S1と、該保持位置S1よりも離間間隔が広く、前記嵌合部2の前記締付部への嵌合が解除可能な間隔である解除位置S2とを切り替え可能となるよう相対的に接離するよう構成されている。
かかる構成によれば、嵌合部2と対向部4とを接離させるだけで、嵌合部2と対向部4とを解除位置S2で位置決めした状態から保持位置S1に切り替えることができるため、締結部材の締付操作及び緩め操作に先立って、締付具1を締結部材に取り付ける作業が容易となる。
本実施形態において、前記嵌合部2と前記対向部4とは、連結されており、前記対向部4は、前記嵌合部2に連結された状態で、前記離間した状態を保持した保持位置S1と、該保持位置S1よりも離間間隔が広く、前記嵌合部2の前記締付部への嵌合が解除可能な間隔である解除位置とS2を移動可能に構成されている。
かかる構成によれば、対向部4が嵌合部2に連結された状態で対向部4が移動可能に構成されているため、対向部4を解除位置S2に位置させた状態で、予め嵌合部2を締付部に対して嵌合させることができる。作業者は、この状態から(解除位置S2から)対向部4を、他の間接活線工具等を用いて嵌合部2に対して接近(移動)させることで、対向部4を保持位置S1に位置させることができる。そのため、締結部材の締付操作及び緩め操作に先立って、締付具1を締結部材に取り付ける作業がより容易なものとなる。
また、嵌合部2と対向部4とは連結されているため、嵌合部2と対向部4とを一体的に取り扱うことができ、締付具1の取扱も容易になる。
本実施形態において、前記嵌合部2と前記対向部4とを連結する連結体5であって、絶縁操作棒Tの先端へ取り付けるための取付部522と、前記対向部4との連結部分となる連結部523と、前記嵌合部2を回動可能に支持する回動支持部521と、を有する連結体5と、前記嵌合部2を回動させる操作部3と、を備え、前記対向部4は、前記離間した状態を保持した保持位置S1と、該保持位置S1よりも離間間隔が広く、前記嵌合部2の前記締付部への嵌合が解除可能な間隔である解除位置S2とを移動可能に構成されている。
かかる構成によれば、締付具1を絶縁操作棒Tに取り付けることで、嵌合部2が、該絶縁操作棒Tに対して固定された状態となる。そのため、作業者は、絶縁操作棒Tを介して嵌合部2を締付部に容易に嵌合させることができる。嵌合部2と対向部4とは連結されているため、作業者は、他の間接活線工具等を用いて、解除位置S2にある対向部4を、嵌合部2に対して接近(移動)させることで、対向部4を保持位置S1に位置させることができる。続いて、作業者は、他の間接活線工具等を用いて、操作部3を操作して、締結部材の締付操作及び緩め操作を行うことができる。このように、かかる構成の締付具1によれば、作業者は、絶縁操作棒Tを把持したまま、締付具1を締結部材に取り付ける作業及び締結部材の締付操作及び緩め操作を行うことができ、取付部材を被取付部材に取り付ける一連の作業が容易なものとなる。
上記実施形態では、ギヤ部215と操作部3の爪部とによってラチェットを構成している。具体的には、ギヤ部215と該爪部とが噛み合うことによって、嵌合部2は、操作部3の回転に伴って回転する状態と、操作部3の回転に対して静止した状態とが切り替わるように構成されている。そのため、上記実施形態の締付具1では、所定の操作開始位置から締付操作及び緩め操作を行うと共に、嵌合部2とボルト92の頭部921との嵌合状態を維持したまま、操作部3を操作開始位置に戻すことができ、連続して締付操作及び緩め操作を行うことができる。
上記実施形態では、連結体5は、対向部4の位置を固定する固定手段51を備えているため、ボルト92の締付操作及び緩め操作の際に、嵌合部2と対向部4との間隔が変動するのを防止することができ、安定して作業を行うことができる。
上記実施形態では、対向部4は、調整機構42を有しているため、嵌合部2と対向部4との間隔を調整することができる。そのため、ボルト92の長さに応じて(異なる長さのボルト92に対して)、嵌合部2と対向部4との間隔を、現場の状況に応じて、柔軟に設定することができる。
上記実施形態では、可動軸部421Bは、円柱状に形成されており、外周面が滑らかに形成されている。また、可動軸部421Bの外径は、接離部411の第4挿通孔411Aの内径よりも小さく形成されている。そのため、可動片421は、本体部41に対して、可動軸部421Bの軸方向に移動可能(スライド可能)、且つ可動軸部421Bの軸方向を中心に回転可能に構成されている。従って、嵌合部2と対向部4との間隔を調整する際に、調整部422の着脱作業が容易となる。
上記実施形態では、支持部43は、可動片421の頭部421Aにおける一端側に形成されており、コネクタ9のボルト92の先端が嵌り込む凹状部431である。そのため、支持部43は、コネクタ9のボルト92の先端が、凹状部431の内周縁に掛止されることによって、コネクタ9を支持している。これにより、コネクタ9は、ボルト92の頭部921と軸部922の先端とで支持されることとなり、締付具1によって安定して支持される。
上記実施形態の取付片422Aでは、一対の挟持片422aのそれぞれの先端部は、先端に向かうにつれて離間している。また、一対の挟持片422aは、柔軟性のある材料によって形成されている。これにより、一対の挟持片422aの先端部を可動軸部421Bに宛がって押し込むことで、挟持片422a同士が容易に離間し、可動軸部421Bに対して取付片422Aを容易に取り付け可能となっている。
上記実施形態では、図5に戻って示すように、一対の延出部513は、操作部3の接続部31、対向部4の本体部41、及び連結体5の連結本体52に対して、左右方向に突出している。そのため、間接活線工具を用いて一対の延出部513を持ち上げることができ、係合部512と被係合部45とを係合させる作業や、係合状態を解除する作業が容易となる。
上記実施形態では、掛止部424は、外径が、第2接離部411C及び取付片422Aの外径よりも大きく形成されているため、掛止部424と第1接離部411Bとの間に窪みが形成される。そのため、対向部4を嵌合部2から離間させる際に、フック等を該窪みに対して掛止させることができ、対向部4を嵌合部2から離間させる作業が容易なものとなる。
尚、本発明の締付具1は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
上記実施形態では、締付具1は、配電線W1にコネクタ9を取り付ける際に使用される場合について説明し、取付部材としてコネクタ本体91、被取付部材として配電線W1、締結部材としてボルト92であることを前提としたが、これに限定されるものではない。締付具1は、送配電設備において、取付部材、被取付部材、及び締結部材として機能するものに対して使用される。例えば、取付部材としては、碍子や支持金具等、被取付部材としては、腕金や鉄塔等、締結部材としては、ネジやナット付きボルト等であってもよく、締付具1は、送配電設備における広い範囲で使用され得る。締結部材としてネジやナット付きボルトが使用される場合には、締結部材の締付部は、ネジの頭部や、ナットとなる。
上記実施形態では、嵌合部2と対向部4とが連結されている場合について説明したが、嵌合部2と対向部4とは連結されていなくてもよい。
上記実施形態では、締付具1として、嵌合部2と操作部3とによってラチェットを構成し、ラチェット機構を備えることを前提に説明したが、これに限定されるものではない。締付具1は、ラチェット機構を備えていない、一般的なレンチ等であってもよい。
上記実施形態では、対向部4が調整機構42を有する場合について説明したが、これに限定されるものではない。図7に示すように、対向部4は、本体部41と、支持部43と、回動軸44と、被係合部45とを有し、調整機構42を有していなくてもよい。この場合、支持部43は、対向部4の本体部41に、コネクタ9のボルト92の先端が嵌り込む凹状部431として設けられていてもよい。
また、上記実施形態では、嵌合部2のボルト92への嵌合が解除されるまでに、締結部材としてのボルト92が凹状部431の底部に当接する場合について説明したが、これに限定されるものではない。嵌合部2のボルト92への嵌合が解除されるまでに、取付部材としてのコネクタ本体91が対向部4に当接してもよい。例えば、図8及び図9に示すように、対向部4の接離部411は、上下方向に延びる一対の接離片414であって、左右方向に間隔をあけて配置された一対の接離片414を有していてもよい。一対の接離片414は、締結部材としてのボルト92を介装可能な間隔を開けて配置されていてもよい。この場合、一対の接離片414の上端同士は接続されていてもよく、ボルト92を介装可能な間隔で離間していてもよい。かかる構成によって、ボルト92を一対の接離片414同士の間に位置させる(逃がす)ことができるため、嵌合部2の頭部921への嵌合が解除されるまでに、一対の接離片414がコネクタ本体91と当接することとなり、ボルト92の締付操作及び緩め操作の際に、ボルト92が対向部4に当接することによる摩擦の発生を防止することができ、ボルト92の締付操作及び緩め操作を円滑に行うことができる。
また、一対の接離片414の上端同士がボルト92を介装可能な間隔で離間することで、コネクタ本体91が配電線W1に固定されている状態で、締付具1を、コネクタ本体91に対して下方から接近させることができ、現場の状況に応じて柔軟にコネクタ本体91にアクセスすることができる。
また、嵌合部2のボルト92への嵌合が解除されるまでに、被取付部材としての配電線W1が対向部4に当接してもよい。例えば、図10及び図11に示すように、一対の接離片414は、取付部材としてのコネクタ本体91を介装可能な間隔を開けて配置されていてもよい。このようにしても、配電線W1の揺動に伴って、コネクタ9が対向部4側に位置ずれしても、配電線W1が対向部4に当接するため、コネクタ9の位置ずれが規制され、締付具1がコネクタ9から外れるのを防止することができる。
また、本体部41の接離部411が、一対の挟持部411Dによってコネクタ本体91を挟み込むように構成されていてもよい。例えば、図12に示すように、接離部411は、コネクタ本体91を前後方向に挟み込む一対の挟持部411Dであって、接続体413に支持された一対の挟持部411Dを有していてもよい。例えば、一対の挟持部411Dは、コネクタ本体91の把持部915Bを挟み込むように構成されていてもよい。しかしながら、挟み込む部分については、上記に限定されない。
上記実施形態では、嵌合部2及び対向部4は、コネクタ9を前後方向から挟み込む場合について説明したが、これに限定されるものではない。締付具1は、ボルト92が、コネクタ本体91に対して左右方向や、上下方向に貫通しているコネクタ9に対しても使用することができる。即ち、締付具1は、左右方向や、上下方向から、嵌合部2及び対向部4をコネクタ9に接近させることによって、嵌合部2と対向部4との間に配電線W1及びコネクタ9のうちの少なくとも一方を位置させることができる。
上記実施形態では、対向部4を嵌合部2に対して接離させる場合について説明したが、これに限定されるものではない。対向部4が連結体5に固定され、嵌合部2が対向部4に対して接離することによって、嵌合部2と対向部4との間隔が調整可能に構成されていてもよい。
上記実施形態では、対向部4が回動軸44を有する構成とし、対向部4が該回動軸44を中心に回転することによって嵌合部2に対して嵌合方向で接離する場合について説明したが、これに限定されるものではない。対向部4は、連結体5に対してスライドするスライド機構を有し、保持位置S1と解除位置S2とを移動するものであってもよい。この場合、対向部4が連結体5に対してスライドする方向は限定されず、前後方向Xや上下方向Z等にスライド可能に構成されていてもよい。また、対向部4は、嵌合方向Xを中心に回転可能に構成されることによって、保持位置S1と解除位置S2とを移動可能であってもよい。
上記実施形態では、調整部422の取付片422Aが環状に形成されている場合について説明したが、これに限定されるものではない。取付片422Aは、可動片421の可動軸部421Bに取り付け可能に構成されていればよく、可動軸部421Bに掛止可能なフック状や、可動軸部421Bに付着可能な部材によって形成されていてもよい。
上記実施形態では、対向部4は、被係合部45を一つ有する場合について説明したが、これに限定されるものではない。対向部4は、被係合部45を複数有していてもよい。また、係合部512と被係合部45とによって、ラチェットを構成していてもよい。