JP6519054B2 - トロリ線ねじれ直し工具 - Google Patents

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Description

本発明はトロリ線ねじれ直し工具に関するものである。
トロリ線は、パンタグラフを通じて車両に給電を行う接触電線であり、その外周の上部には電線の長手方向に沿って二本の凹溝が形成されている。そして、吊架線の各所から吊るされた複数のハンガーが、その下端部に設けられた一対の爪によりトロリ線の二本の凹溝を挟持してトロリ線を吊架支持している。トロリ線は、このように、上部に設けられた二本の凹溝によって吊架支持されるので、外周のほぼ下半分をパンタグラフとの摺接領域として使用することができる。
ところで、トロリ線T同士を連結する場合には、図9〜図11に示すように、トロリ線Tの接続端部を隣り合うように並べた状態でそれぞれのトロリ線Tの凹溝Mをクランプして保持する連結具であるダブルイヤー200が使用される。
このダブルイヤー200は、側面視略台形のブロック状であり、その底面部には接続するトロリ線を並べて保持するための二本の挟持溝201が形成されており、各挟持溝201の内側にはトロリ線Tの凹溝Mに嵌合する一対の爪202が向き合うように形成されている。
そして、このダブルイヤー200は、二本の挟持溝201を境にして三つの部材204〜206に分離可能である。二本のトロリ線Tを連結する際には、各部材を分離させた状態で各爪をトロリ線Tの凹溝Mに嵌合させながら挟持溝201の内側に挟み、三つの部材をボルト203によって締結して一体化させることにより各トロリ線Tをクランプし連結する。
一方、トロリ線Tはパンタグラフとの接触圧を確保する必要が有るためある程度の剛性を有しており、長いものはねじれの癖がついている場合が多い。このため、上記ダブルイヤー200によるトロリ線T同士の連結の際には、図12に示すトロリキー210という専用工具を使用して二本のトロリ線Tの向きを揃える作業が必要となる。
トロリキー210は、棒状であって、その先端部が円弧状に湾曲して内側に爪211が形成されている。そして、この爪211をトロリ線Tの一方の凹溝Mに嵌合させながら湾曲部の内側にトロリ線Tを抱持し、トロリ線Tを中心にしてトロリキー210を回動させることで、テコの原理によってトロリ線Tのねじれを解消することができる。
つまり、ダブルイヤー200によりトロリ線Tを連結する作業を行う場合には、トロリキー210によりトロリ線Tのねじれを直す作業者と、二本のトロリ線Tにダブルイヤー200を取り付ける作業者の二名が必要だった。
また、このダブルイヤー200の取り付けは熟練を要する作業だが、高所で行うことが多く、作業をさらに困難なものとしていた。
また、給電を受ける車両の走行を中断させている場合等には、トロリ線Tの連結作業は迅速に行う必要があるので、接続作業をより簡単に迅速に行うことが求められていた。
そこで、ダブルイヤーの203のネジ穴に棒状の把手をねじ込み、一方のトロリ線Tのみを一方の挟持溝201に挟持して、把手により一方のトロリ線Tを回動させて他方のトロリ線Tと凹溝Mの向きを揃え、他方のトロリ線Tもダブルイヤー200に挟持する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2000−280795号公報
しかしながら、上記従来のトロリ線Tの連結作業では、一方のトロリ線Tはダブルイヤー200により拘束されているが、他方のトロリ線Tは拘束されていない状態になるので、他方のトロリ線Tを拘束する作業者とダブルイヤー200のボルト203を締結する作業者とが必要であり、作業者人数の低減を図ることはできなかった。
また、把手により一方のトロリ線の向きを調整した状態を維持しながら他方のトロリ線をダブルイヤー200に挟持しボルト203を締結しなければならず、未だ作業の困難性は高かった。
本発明は、トロリ線の連結作業の容易化をその目的とする。
本発明は、二本のトロリ線を個別に挿通させる二つの挿通部を備える工具本体を有し、それぞれの前記挿通部の内側に、前記二本のトロリ線の凹溝の位置が揃うように前記凹溝に嵌まる突起部が設けられ、前記工具本体を複数の部材から構成して、前記二つの挿通部内の前記トロリ線の拘束状態と解放状態の切り替えを可能とし、少なくとも一方の前記挿通部内の前記突起部は、押し込み可能であって弾性体により突出方向に押圧されていることを特徴とする。
上記構成によれば、工具本体の二つの挿通部のそれぞれにトロリ線を挿通状態としたときに、トロリ線の凹溝に突起部を嵌合させることができる。また、少なくとも一方の突起部は押し込み可能なので、凹溝と突起部がずれた状態であっても、トロリ線を挿通部に拘束された状態で回動させることにより凹溝に突起部を嵌合させることができる。
このようにして、二本のトロリ線を、凹溝の位置を揃えた状態で拘束することができるので、ダブルイヤーの取り付け時に、トロリ線の向きを揃えた状態で維持する作業やトロリ線を取り付けに適した位置に拘束する作業を並行して行う必要性が解消される。
また、前記工具本体を第一部材と第二部材と第三部材とから構成し、前記第一部材における前記第二部材との対向面に凹溝が設けられ、前記第三部材における前記第二部材との対向面に凹溝が設けられ、前記第二部材は前記第一部材の凹溝と前記第三部材の凹溝との間に仕切り壁部が設けられ、前記第一部材の凹溝と前記第二部材の仕切り壁部との間と前記第三部材の凹溝と前記第二部材の仕切り壁部との間とに前記二つの挿通部がそれぞれ形成されるようにする。
上記構成によれば、第一部材と第二部材と第三部材の相互間の対向面を接離させることにより、二つの挿通部内のトロリ線の拘束状態と解放状態の切り替えを容易に行うことが可能となる。
本発明は、二本のトロリ線にダブルイヤーを取り付けて連結する際に、ダブルイヤーの取り付け時に、トロリ線の向きを揃えた状態で維持する作業やトロリ線を取り付けに適した位置に拘束する作業を並行して行う必要性が解消されるので、単独の作業者によるダブルイヤーの取り付け作業が可能となり、また、作業の容易化により作業時間の短縮化を図ることが可能となる。
本発明の実施形態であるトロリ線ねじれ直し工具の正面図である。 トロリ線ねじれ直し工具の側面図である。 トロリ線ねじれ直し工具の平面図である。 トロリ線ねじれ直し工具の底面図である。 トロリ線の解放状態を示す動作説明図である。 トロリ線に対するダブルイヤーの取り付け作業の工程を示す作業説明図であり、図6(A)〜図6(G)の順番で作業工程を示す。 トロリ線に対するダブルイヤーの他の取り付け作業の工程を示す作業説明図であり、図7(A)〜図7(G)の順番で作業工程を示す。 工具本体を二部材から構成したトロリ線ねじれ直し工具の例を示す正面図である。 ダブルイヤーをトロリ線に取り付けた状態の斜視図である。 ダブルイヤーをトロリ線に取り付けた状態の側面図である。 ダブルイヤーをトロリ線に取り付けた状態の平面図である。 トロリキーの使用状態を示す説明図である。
[発明の実施形態概要]
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態はトロリ線ねじれ直し工具10を例示する。
図1はトロリ線ねじれ直し工具10の正面図、図2は側面図、図3は平面図、図4は底面図、図5はトロリ線の解放状態を示す動作説明図である。
[トロリ線ねじれ直し工具の全体構成]
トロリ線ねじれ直し工具10は、二本のトロリ線Tを個別に挿通させる二つの挿通部21,22を備える工具本体20と、二つの挿通部21,22の内側に個別に設けられ、二本のトロリ線Tの凹溝Mの位置を揃えるために二本のトロリ線Tの凹溝Mに嵌まる突起部としての突起部材61を有するラッチ機構60と、工具本体20を構成する第一〜第三部材30,40,50を連結して各トロリ線Tを拘束状態に維持する連結機構70とを備えている。
以下の説明において、トロリ線ねじれ直し工具10の二つの挿通部21,22で保持した二本のトロリ線Tがいずれも水平且つ平行であって地面から同じ高さであると仮定した場合において、各トロリ線Tに平行な方向を前後方向、水平であって前後方向に直交する方向を左右方向、前後方向及び左右方向に直交する上下方向として、トロリ線ねじれ直し工具10の各部について説明する。
[工具本体]
工具本体20は、第一〜第三部材30,40,50から構成され、第一部材30と第三部材50との間に第二部材40が配置されている。
そして、第一部材30と第二部材40とは前後方向に沿った回動軸23により回動可能に連結され、第一部材30と第三部材50とは前後方向に沿った回動軸24により回動可能に連結されている。
また、工具本体20の各部材30,40,50は、強度及び耐久性から金属、特に耐食性も考慮してステンレス、アルミ合金等により、各部材ごとに一体的に形成されている。
そして、挿通部21は、第一部材30と第二部材40の間に形成され、第一部材30と第二部材40とによりトロリ線Tの周囲全体を囲繞した状態した拘束状態(図1の状態)と、第一部材30が回動して当該第一部材30と第二部材40とによって囲繞した状態を解消した解放状態(図5の状態)とに切り替えることができる。
同様に、挿通部22は、第二部材40と第三部材50の間に形成され、第二部材40と第三部材50とによりトロリ線Tの周囲全体を囲繞した状態した拘束状態(図1の状態)と、第三部材50が回動して当該第二部材40と第三部材50とによって囲繞した状態を解消した解放状態(図5の状態)とに切り替えることができる。
なお、これ以降、トロリ線ねじれ直し工具10の各構成の方向や配置の説明は、特にことわりがない限りは、第一部材30及び第三部材50が第二部材40に対して拘束状態にあるときの方向や配置を示すこととする。
上記第二部材40は、上部に四枚の支持壁部41を備え、下部に挿通部21と挿通部22とを仕切る仕切り壁部42を備えている。
各支持壁部41は、いずれも前後方向に対して垂直な平面に沿った平板状であり、その平板形状は左右方向に沿った略矩形である。そして、四つの支持壁部41は、前後方向に並んで配置されており、四つの支持壁部41の三つの間隙の左側には第一部材30から延出された三つの回動腕部31が挿入され、三つの間隙の右側には第三部材50から延出された三つの回動腕部51が挿入されている。
そして、各支持壁部41の左端部において、当該各支持壁部41及び第一部材30の各回動腕部31を貫通する回動軸23により第一部材30が連結されている。
また、同様に、各支持壁部41の右端部において、当該各支持壁部41及び第三部材50の各回動腕部51を貫通する回動軸23により第三部材50が連結されている。
仕切り壁部42は、左右方向に対して垂直な平面に沿った平板状であり、その左側の平面が挿通部21の内面の一部を構成し、その右側の平面が挿通部22の内面の一部を構成している。
また、仕切り壁部42の上部左側と上部右側とには、それぞれ凹状に凹んだ周面部43,44を備えている。
周面部43には、トロリ線Tの外径と同一か僅かに大きな内径の内周面が周方向に90°の範囲で形成され、当該内周面は仕切り壁部42の左側の平面に連続して形成されている。この周面部43の内周面も、挿通部21の内面の一部を構成している。
また、周面部44には、トロリ線Tの外径と同一か僅かに大きな内径の内周面が周方向に90°の範囲で形成され、当該内周面は仕切り壁部42の右側の平面に連続して形成されている。この周面部44の内周面も、挿通部22の内面の一部を構成している。
第一部材30は、上部右側において右方に延出された三つの回動腕部31を備え、前述したように、第二部材40の四つの支持壁部41に対して前後方向に沿った回動軸23回りに回動可能に連結されている。
また、第一部材30は、その右側であって各回動腕部31の下側に、第二部材40に対向する配置で、凹状に凹んだ凹溝としての周面部32を備えている。当該周面部32には、トロリ線Tの外径と同一か僅かに大きな内径の内周面が周方向に180°の範囲で形成され、この周面部32の内周面は、挿通部21の内面の一部を構成している。
さらに、第一部材30は、その下部に、右方に延出された水平な平板状の延出部33を備えている。この延出部33の上面は周面部32の内周面に連続して形成されており、当該延出部33の上面も挿通部21の内面の一部を構成している。また、挿通部21の拘束状態において、この延出部33の先端部の上面は、第二部材40の仕切り壁部42の下端面に当接する。
上述のように、挿通部21は、第一部材30の周面部32及び延出部33と第二部材40の仕切り壁部42及び周面部43とにより構成されている。従って、挿通部21によるトロリ線T拘束状態から、第二部材40に対して第一部材30を回動させることにより、トロリ線Tの周囲全体を囲繞した状態を分断して解放状態となり、トロリ線Tを挿通部21の外部に取り出すことができる。
また、第一部材30の左側面から周面部32の内周面にかけて、後述するラッチ機構60を格納する格納孔34が左右方向に沿って貫通形成されている。この格納孔34は、第一部材30の左側面の大径部341と周面部32の内周面側の小径部342とから構成されている。そして、第一部材30の左側面には、格納孔34を塞ぐカバー35がネジ止めにより取り付けられている。
また、第一部材30の底面には、後述する連結機構70のレバー71の基端部を前後方向に沿った軸回りに回動可能に支持する支持ブロック36が設けられている。この支持ブロック36は、当該支持ブロック36を前後に分断するように左右方向に沿った溝361が形成されており、当該溝361の内側において連結機構70のレバー71が支持されている。
第三部材50は、上部左側において左方に延出された三つの回動腕部51を備え、前述したように、第二部材40の四つの支持壁部41に対して前後方向に沿った回動軸24回りに回動可能に連結されている。
また、第三部材50は、その左側であって各回動腕部51の下側に、第二部材40に対向する配置で、凹状に凹んだ凹溝としての周面部52を備えている。当該周面部52には、トロリ線Tの外径と同一か僅かに大きな内径の内周面が周方向に180°の範囲で形成され、この周面部52の内周面は、挿通部22の内面の一部を構成している。
さらに、第三部材50は、その下部に、左方に延出された水平な平板状の延出部53を備えている。この延出部53の上面は周面部52の内周面に連続して形成されており、当該延出部53の上面も挿通部22の内面の一部を構成している。また、挿通部22の拘束状態において、この延出部53の先端部の上面は、第二部材40の仕切り壁部42の下端面に当接する。
上述のように、挿通部22は、第三部材50の周面部52及び延出部53と第二部材40の仕切り壁部42及び周面部44とにより構成されている。従って、挿通部22によるトロリ線Tの拘束状態から、第二部材40に対して第三部材50を回動させることにより、トロリ線Tの周囲全体を囲繞した状態を分断して解放状態となり、トロリ線Tを挿通部22の外部に取り出すことができる。
また、第三部材50の右側面から周面部52の内周面にかけて、後述するラッチ機構60を格納する格納孔54が左右方向に沿って貫通形成されている。この格納孔54は、第三部材50の右側面の大径部541と周面部52の内周面側の小径部542とから構成されている。そして、第三部材50の右側面には、格納孔54を塞ぐカバー55がネジ止めにより取り付けられている。
また、第三部材50の底面には、後述する連結機構70のレバー71の回動端部近傍の部分が挿入される凹部としての溝561が形成された連結ブロック56が設けられている。溝561は、左右方向に沿って形成されている。レバー71の回動端部には、当該レバー71よりも外径が大きなストッパー72が装備されており、レバー71を溝561内に挿入したときに、ストッパー72は連結ブロック56の右側面部に圧接する。そして、このストッパー72の圧接により、第一部材30と第三部材50とを拘束する。連結ブロック56の右下角部には、レバー71の回動によりストッパー72が圧接位置に円滑に移動できるように、面取り562が施されている。
[ラッチ機構]
ラッチ機構60は、第一部材30の格納孔34と第三部材50の格納孔54とにそれぞれ配置されているが、これらは同一の構成なので、主に、第一部材30側のラッチ機構60のみについて説明する。
ラッチ機構60は、格納孔34の内部において、周面部32側に先端部を向けて格納された突起部としての突起部材61と、突起部材61を周面部32側に向かって押圧する弾性体としてのコイルバネ62とを備えている。
突起部材61は、先端部が楔状にやや尖っており、後端部側は拡径部が設けられている。突起部材61の先端部は周面部32の内周面から突出して、トロリ線Tの凹溝Mに嵌合して当該トロリ線T回りの回転方向についてトロリ線Tを適正な向きに保持することができる。
突起部材61の後端部の拡径部は、格納孔34の大径部341と小径部342との境界の段差に当接して突起部材61の過剰な飛び出しや脱落を防止している。
なお、格納孔34は、当該格納孔34から周面部32内に突出する突起部材61の先端部が挿通部21内のトロリ線Tの所定の一方の凹溝Mに嵌合したときに、二つの凹溝Mが共にトロリ線Tにおける上部となるように、配置が決められている。
コイルバネ62は、突起部材61を後方から押圧し、突起部材61が拡径部により規制される位置まで突出した状態を維持する。また、突起部材61は、その先端部を押圧することでコイルバネ62に抗して退避させることができる。
例えば、挿通部21にトロリ線Tを格納した場合に、その凹溝Mが突起部材61の位置から離れている場合には、突起部材61はコイルバネ62に抗して退避位置に押し戻された状態を維持し、トロリ線Tの回転操作が行われて凹溝Mの位置と突起部材61の位置とが合致したときに突起部材61は突出して、その先端部を凹溝Mに嵌合させることができる。
なお、第三部材50側のラッチ機構60は、第一部材30のラッチ機構60と同一構成であり、第三部材50の格納孔54は、当該格納孔54から周面部52内に突出する突起部材61の先端部が挿通部22内のトロリ線Tの所定の一方の凹溝Mに嵌合したときに、二つの凹溝Mが共にトロリ線Tにおける上部となるように、配置が決められている。
これらによって、各挿通部21,22において、二本のトロリ線の向きを適正に揃えることができる。
[連結機構]
連結機構70は、第一部材30の支持ブロック36により回動可能に支持されたレバー71と、レバー71の回動端部に装備されたストッパー72とから主に構成されている。
レバー71は、前述したように、その基端部が支持ブロック36の溝361の内側において、前後方向に沿った軸回りに回動可能に支持されており、その回動端部には雄ネジが形成されている。
そして、ストッパー72は、中心が貫通して、その内側にレバー71の回動端部の雄ネジに螺合する雌ネジが形成れている。このストッパー72は、円筒部721と作業者が手で回転を加えるためのグリップ部722とが例えば樹脂により一体的に形成された部材である。
連結機構70のレバー71は、各挿通部21,22の拘束状態において、図1における二点鎖線の状態から、回動させてレバー71を連結ブロック56の溝561内に挿入することで、ストッパー72の円筒部721の端面が連結ブロック56の右側面に圧接した状態となり、各挿通部21,22の拘束状態を維持するように第一部材30,第二部材40,第三部材50を固定的に連結する。
なお、ストッパー72は、樹脂製であり、多少の弾性を有するので、レバー71に対して回転させて位置調節することにより、連結ブロック56に対する圧接力を調節することができる。
また、前述した第一部材30と第三部材50は、間に第二部材40を挟む配置であり、第一部材30側の支持ブロック36に支持されたレバー71及びストッパー72を第三部材50側の連結ブロック56に掛け渡して連結する構造なので、一つのレバー71の一回の回動操作のみで三つの部材30,40,50を介して二本のトロリ線Tを同時に拘束状態に保持することができ、作業性を向上させることができる。
[トロリ線に対するダブルイヤーの取り付け作業]
図6に基づいてトロリ線Tに対するダブルイヤー200の取り付け作業について説明する。
連結する前の二本のトロリ線Tがいずれも捻れを生じて不適正な向きを向いている状態において(図6(A))、挿通部21,22をいずれも解放状態としたトロリ線ねじれ直し工具10を装着する(図6(B)、図5)。即ち、第二部材40の仕切り壁部42を二本のトロリ線Tの間に介挿するようにして、各トロリ線Tを挿通部21,22に個別に格納する。
そして、第一部材30と第三部材50とを第二部材40側に回動させて拘束状態とし、連結機構70のレバー71を回動させて拘束状態を保持する状態にする(図6(C))。
この時、各挿通部21,22内では、各トロリ線Tはいずれも向きが不適正な方向を向いているので、凹溝Mと突起部材61とが合致せず、各突起部材61はトロリ線Tにより退避位置に押し戻された状態となっている。
そこで、トロリキー210(図12参照)により、一方のトロリ線Tを回動させ、所定の凹溝Mに突起部材61を嵌合させる(図6(D))。
同様に、もう一方のトロリ線Tを回動させ、所定の凹溝Mに突起部材61を嵌合させる(図6(E))。
なお、図6では挿通部22のトロリ線Tから先に向き調整を行っているが、挿通部21,22のいずれから先に行っても良い。
これにより、二本のトロリ線Tはいずれも二本の凹溝Mが上部に位置する適正な向きで保持され、また、各トロリ線Tは互いに近接して同じ高さで水平に並んだ状態で保持することができる(図6(F))。
かかる状態において、ダブルイヤー200を二本のトロリ線Tに取り付ける。この時、図9〜図11に示すように、二本のトロリ線Tが隣り合って並んだ範囲に複数のダブルイヤー200を取り付けても良い。
また、各トロリ線Tの接続端部の先端部は、図10に示すように、車両のパンタグラフとの干渉を生じないように、専用の工具を使用して斜め上方に湾曲させる。
そして、ダブルイヤー200の取り付けが終わると、レバー71を下方に回動させてストッパー72を連結ブロック56から外し、第一部材30及び第三部材50を第二部材40から離間する方向に回動させる(図6(G)、図5)。これにより、各挿通部21,22が解放状態となり、内部のトロリ線Tを外部に取り出すことができる。
このとき、各トロリ線Tからトロリ線ねじれ直し工具10を取り外す際に、第二部材40の下端部に位置する仕切り壁部42が左右方向に一定の幅となっているので、ダブルイヤー200により近接状態で連結された二本のトロリ線Tの間から容易に引き抜くことができ、トロリ線ねじれ直し工具10を容易に取り外すことができる。
[トロリ線に対するダブルイヤーの他の取り付け作業]
トロリ線Tに対するダブルイヤー200の取り付け作業については他の方法でも行うことができる。
図7に基づいてトロリ線Tに対するダブルイヤー200の他の取り付け作業について説明する。
連結する前の二本のトロリ線Tがいずれも捻れを生じて不適正な向きを向いている状態において(図7(A))、一方のトロリ線Tの凹溝Mに挿通部22の突起部材61が嵌合するようにトロリ線ねじれ直し工具10を傾けた状態で当該トロリ線ねじれ直し工具10を装着する(図7(B))。
なお、二本のトロリ線Tのいずれにトロリ線ねじれ直し工具10の向きを合わせても良いが、ここでは、挿通部22に格納するトロリ線Tに向きを合わせる場合を例示する。
そして、第一部材30と第三部材50とを第二部材40側に回動させて拘束状態とし、連結機構70のレバー71を回動させて拘束状態を保持する状態にする(図7(C))。
そして、トロリ線ねじれ直し工具10を水平となる向きに回動させることにより、挿通部22内のトロリ線Tも回動させて向きを適正化する(図7(D))。
さらに、トロリキー210により、もう一方のトロリ線Tを回動させ、所定の凹溝Mに突起部材61を嵌合させる(図7(E))。
これにより、二本のトロリ線Tはいずれも二本の凹溝Mが上部に位置する適正な向きで保持され、また、各トロリ線Tは互いに近接して同じ高さで水平に並んだ状態で保持することができる(図7(F))。
この状態でダブルイヤー200を取り付け、各トロリ線Tからトロリ線ねじれ直し工具10を取り外すことにより作業が完了する(図7(G))。
この図7の方法では、一方のトロリ線Tはトロリ線ねじれ直し工具10と共に回動させて捻れを解消させるので、トロリキー210によるトロリ線Tの回動作業を片方のみに対して行えば良く、より効率的且つ迅速にダブルイヤー200の取り付け作業を行うことができる。
[発明の実施形態の技術的効果]
トロリ線ねじれ直し工具10は、工具本体20を第一〜第三複数30,40,50から構成して、二つの挿通部21,22内のトロリ線Tの拘束状態と解放状態の切り替えを可能とし、挿通部21,22の内側に、二本のトロリ線Tの凹溝Mの位置が揃うように凹溝Mに嵌まる突起部材61を設けると共に、各突起部材61を押し込み可能であってコイルバネ62により突出方向に押圧する構成としている。
このため、各挿通部21,22内に拘束した状態で各トロリ線Tの捻れを直す作業を行うことができ、ダブルイヤー200を取り付ける際にも、各トロリ線Tは近接して並んだ状態で向きも適正に保持された状態を維持することができ、トロリ線を適正な位置に保持する作業者や捻れを適正な位置に保持する作業者を不要とし、単独の作業者によるダブルイヤー200の取り付け作業が可能となり、また、作業の容易化により作業時間の短縮化を図ることが可能となる。
また、工具本体20を第一部材30と第二部材40と第三部材50とから構成したので、第二部材40に対する第一部材30の回動と第二部材40に対する第三部材50の回動とにより、二つの挿通部21,22内のトロリ線Tの拘束状態と解放状態の切り替えを容易に行うことが可能となる。
また、第一部材30及び第三部材50は、第二部材40に対して、回動端部が接近又は離間するので、二本のトロリ線Tが互いに離れている場合でも、第一部材30及び第三部材50が第二部材40側に引き寄せて各挿通部21,22に格納させることができ、トロリ線Tに対するトロリ線ねじれ直し工具10の取り付けを容易に行うことができる。
また、第一部材30と第二部材40と第三部材50とは、回動軸23,24により回動可能に連結されているので、拘束状態、解放状態に拘わらず、工具本体20が一体化され、作業時における各部材30〜50の落下や紛失の発生を低減することができ、作業性の向上を図ることが可能となる。
また、トロリ線ねじれ直し工具10は、二つの挿通部21,22内のトロリ線Tの拘束状態を維持するように、第一〜第三部材30〜50を保持する連結機構70を備え、当該連結機構70は、第一部材30に設けられ、第三部材50に設けられた溝561に対して、回動により嵌合するレバー71と、レバー71の回動端部に設けられ、回転操作により位置調節可能なストッパー72とを備えている。これにより、レバー71の回動動作とストッパー72の回転操作により、各挿通部21,22が拘束状態を維持するように第一〜第三部材30〜50を保持することができ、二本のトロリ線Tにトロリ線ねじれ直し工具10を取り付ける作業を容易且つ迅速に行うことが可能となる。
また、連結機構70をレバー71とストッパー72とから構成したので、連結機構70を工具本体20に一体的に連結することができ、分離した部材が存在せず、作業性の向上を図ることが可能となる。さらに、連結機構70の各構成の落下や紛失の発生を低減することが可能となる。
[工具本体の他の例]
トロリ線ねじれ直し工具10の工具本体20は三つの部材30,40,50から構成されているが、部材の数は、複数であれば良く、三つに限定されない。
図8に、工具本体を第一部材30Aと第二部材40Aの二部材から構成した例を示す。この例において、前述したトロリ線ねじれ直し工具10と同一の構成については同符号を付して重複する説明は省略する。
この工具本体は、第一部材30Aと第二部材40Aとを互いの一端部で回動可能に連結し、
第二部材40Aにおける第一部材30Aとの対向部分に一つの凹溝からなる挿通部21,22を形成し、第一部材30Aにおける第二部材40Aとの対向部分に凹溝内を二つの挿通部21,22に仕切る凸部を設けている。
また、各挿通部21,22内で適正な向きのトロリ線Tの凹溝Mに突起部材61が嵌合するように第二部材40Aには二つのラッチ機構60が設けられている。さらに、第一部材30Aと第二部材40Aの互いの回動端部を連結するように連結機構70が設けられている。
このように工具本体を二部材で構成したトロリ線ねじれ直し工具の場合には、前述したトロリ線ねじれ直し工具10のように、二本のトロリ線Tを引き寄せて各挿通部21,22内に格納することはできないが、構造の簡略化と部材数の低減を図ることができ、工具の製造コストの低減を図ることが可能である。
[その他]
また、トロリ線ねじれ直し工具10では、各挿通部21,22内の突起部としての突起部材61は、いずれも背圧を受けて進退可能に配置されているが、いずれか一方の突起部については、進退移動せずに固定的に設けても良い。このように、一方の突起部を固定した場合には、ダブルイヤー200の取り付けは、図7の方法で行う。
即ち、図7(B)の工程で、固定された突起部が、捻れを生じた一方のトロリ線Tの凹溝Mに嵌合するように、トロリ線ねじれ直し工具10を傾けて取り付けを行う。そして、これ以降は、前述した図7の各工程と同じである。
また、連結機構70は、一つの機構で第一〜第三部材30,40,50の全てを同時連結可能なものを例示したが、これに限らない。
例えば、第一部材30と第二部材40の連結を行う連結機構と第二部材40と第三部材50の連結を行う連結機構とを個別に設けてもよい。
この場合、トロリ線ねじれ直し工具10の取り付けの際に作業が一つ増えることになるが、トロリ線Tを一本ずつ拘束することができるので、二本のトロリ線Tを同時に拘束する場合よりも少ない力でトロリ線ねじれ直し工具10の取り付け作業を行うことができる。
また、ラッチ機構60の突起部材61は、トロリ線Tの予定しない方の凹溝Mに間違って嵌合させてしまう場合もあり得るので、工具本体20の外部から突起部材61を後退させる操作部を設けてもよい。これにより、突起部材61を後退させて、トロリ線Tの回動作業をやり直すことが可能となる。
また、突起部材61をトロリ線Tの予定しない方の凹溝Mに嵌合させてしまうことの対策として、突起部材61を外部操作可能なストッパーで後退状態に維持可能とし、トロリ線Tを回動させて適正な向きであることを確認してから工具本体20の外部から解除操作を行い、突起部材61を突出させる構成を設けてもよい。
10 トロリ線ねじれ直し工具
20 工具本体
21,22 挿通部
23 回動軸
24 回動軸
30,30A 第一部材
32 周面部(凹溝)
34 格納孔
36 支持ブロック
40,40A 第二部材
42 仕切り壁部
50 第三部材
52 周面部(凹溝)
54 格納孔
56 連結ブロック
60 ラッチ機構
61 突起部材(突起部)
62 コイルバネ(弾性体)
70 連結機構
71 レバー
72 ストッパー
200 ダブルイヤー
210 トロリキー
361 溝
561 溝(凹部)
M 凹溝
T トロリ線

Claims (2)

  1. 二本のトロリ線を個別に挿通させる二つの挿通部を備える工具本体を有し、
    それぞれの前記挿通部の内側に、前記二本のトロリ線の凹溝の位置が揃うように前記凹溝に嵌まる突起部が設けられ、
    前記工具本体を複数の部材から構成して、前記二つの挿通部内の前記トロリ線の拘束状態と解放状態の切り替えを可能とし、
    少なくとも一方の前記挿通部内の前記突起部は、押し込み可能であって弾性体により突出方向に押圧されていることを特徴とするトロリ線ねじれ直し工具。
  2. 前記工具本体を第一部材と第二部材と第三部材とから構成し、
    前記第一部材における前記第二部材との対向面に凹溝が設けられ、
    前記第三部材における前記第二部材との対向面に凹溝が設けられ、
    前記第二部材は前記第一部材の凹溝と前記第三部材の凹溝との間に仕切り壁部が設けられ、
    前記第一部材の凹溝と前記第二部材の仕切り壁部との間と前記第三部材の凹溝と前記第二部材の仕切り壁部との間とに前記二つの挿通部がそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項1記載のトロリ線ねじれ直し工具。
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