JP2017028803A - 磁石温度推定システム、モータ、及び、磁石温度推定方法 - Google Patents

磁石温度推定システム、モータ、及び、磁石温度推定方法 Download PDF

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Abstract

【課題】永久磁石の温度の測定精度を向上させることができる。
【解決手段】磁石温度推定システムは、固定子コイルを備える固定子と、永久磁石を備える回転子とからなるモータ、及び、永久磁石の温度を推定する磁石温度推定装置を有する、磁石温度推定システムであって、回転子は、永久磁石の磁束の少なくとも一部と鎖交する磁石コイルと、磁石コイルと接続されるとともに、永久磁石と接触するように設けられるサーミスタと、を有し、磁石温度推定装置は、回転子を回転駆動させる駆動周波数の交流電力を固定子コイルに印加する電力供給部と、駆動周波数とは周波数が異なる測定周波数の交流電力を駆動周波数の交流電力に重畳させる重畳部と、測定周波数の電力に基づいてインピーダンスを測定し、測定したインピーダンスに応じて永久磁石の温度を推定する温度推定部と、を有する。
【選択図】図3

Description

本発明は、磁石温度推定システム、モータ、及び、磁石温度推定方法に関する。
同期電動機の一つとして、回転子に永久磁石を備える永久磁石型のモータが知られている。このような永久磁石型のモータにおいては、固定子に設けられた固定子コイルは電力が印加されると回転磁界が発生し、回転磁界が永久磁石に作用することにより、回転子が固定子内にて回転する。
一般に、モータの回転速度が速くなるほど、回転子に設けられた永久磁石の温度が上昇する。また、永久磁石は、ある上限温度を超えると不可逆に消磁してしまい磁力を失ってしまうことが知られている。そのため、永久磁石の温度を測定し、永久磁石が上限温度に達しないようにモータの回転速度を制限する必要がある。
しかしながら、永久磁石の温度を測定するために温度センサを用いると、温度センサを回転子に組み込む必要があるため、モータの小型化が困難になる。そこで、温度センサを用いずに永久磁石の温度を推定する方法が検討されている。例えば、特許文献1には、モータに印加される電流と、固定子にて発生する誘起電圧とを用いて、永久磁石の温度を推定する方法が開示されている。
特開2007−6613号公報
特許文献1に開示された方法では、モータの回転速度が遅い場合には、誘起電圧が小さくなるため、永久磁石の温度の推定精度が悪くなるという課題がある。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、モータの回転子が備える永久磁石の温度の推定精度を向上させることができる、磁石温度推定システム、モータ、及び、磁石温度推定方法を提供することである。
本発明の磁石温度推定システムは、固定子コイルを備える固定子と、永久磁石を備える回転子とからなるモータ、及び、永久磁石の温度を推定する磁石温度推定装置を有する。回転子は、永久磁石の磁束の少なくとも一部と鎖交する磁石コイルと、磁石コイルと接続されるとともに、永久磁石と接触するように設けられるサーミスタと、を有する。磁石温度推定装置は、回転子を回転駆動させる駆動周波数の交流電力を固定子コイルに印加する電力供給部と、駆動周波数とは周波数が異なる測定周波数の交流電力を駆動周波数の交流電力に重畳させる重畳部と、測定周波数の電力に基づいてインピーダンスを測定し、測定したインピーダンスに応じて永久磁石の温度を推定する温度推定部と、を有する。
本発明によれば、磁石温度推定装置により測定される測定周波数でのインピーダンスは、永久磁石の温度と相関関係があることが知られている。そのため、測定周波数でのインピーダンスを測定することにより、永久磁石の温度を推定することができる。
また、モータの回転時には、磁石コイルと鎖交する回転磁界の磁束量の変化に起因して誘起電力が発生し、サーミスタに電流が流れる。ここで、サーミスタは、ある温度範囲を上回ると抵抗値が大きく変わるような温度特性を有している。また、サーミスタは永久磁石と隣接するように設けられているため、サーミスタと永久磁石とは温度が同じであるとみなすことができる。したがって、測定周波数でのインピーダンスと永久磁石の温度との相関関係にサーミスタの温度特性が影響を及ぼすことになる。そのため、測定周波数でのインピーダンスの単位温度あたりの変化量が大きくなり、測定周波数でのインピーダンスと永久磁石の温度との相関関係が顕著になる。したがって、磁石温度推定装置が、永久磁石の温度がサーミスタの抵抗値の変化量が大きく変わる温度範囲に達したか否かの判定を確実に行うことができるようになるため、永久磁石の温度の推定精度を向上させることができる。
図1は、第1実施形態による磁石温度推定システムの概略構成図である。 図2は、モータの断面図である。 図3は、磁石部の概略構成図である。 図4は、PTCサーミスタの温度特性を示す図である。 図5は、磁石温度推定装置のシステム構成図である。 図6は、一般的なモータをモデル化した等価回路を示す図である。 図7は、高調波インピーダンスの実部Rdと磁石温度Tmとの相関関係を示すグラフである。 図8は、本実施形態のモータをモデル化した等価回路を示す図である。 図9は、高調波インピーダンスの実部Rdと磁石温度Tmとの相関関係を示すグラフである。 図10は、第2実施形態にて用いられるCTRサーミスタの温度特性を示す図である。 図11は、高調波インピーダンスの実部Rdと磁石温度Tmとの相関関係を示すグラフである。 図12は、第3実施形態にて用いられる並列サーミスタの温度特性を示す図である。 図13は、高調波インピーダンスの実部Rdと磁石温度Tmとの相関関係を示すグラフである。 図14Aは、第4実施形態のモータの断面図である。 図14Bは、図14Aに示した磁石部の概略構成図である。 図15Aは、第5実施形態のモータの断面図である。 図15Bは、図15Aに示した磁石部の概略構成図である。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による磁石温度推定システムについて説明する。
図1は、第1実施形態による磁石温度推定システムの概略構成図である。
磁石温度推定システム100は、モータ1と、磁石温度推定装置2とにより構成される。
モータ1は、3相で動作する永久磁石型の回転同期機(PMSM:Permanent Magnet Synchronous Motor)である。モータ1は、中空円柱状の固定子11と、固定子11の中空部に回転可能に設けられた回転子12とにより構成されている。
固定子11は、固定子コイルを備えており、所定の駆動周波数の交流電力が固定子コイルに供給されると所定のタイミングで回転磁界を発生する。
回転子12は、永久磁石を備えている。固定子11の固定子コイルにより発生する回転磁界が永久磁石に作用することにより、固定子コイルと永久磁石とが誘引または反発することで回転駆動力が発生して、回転子12が固定子11内で回転する。
磁石温度推定装置2は、モータ1に駆動周波数の交流電力を供給するとともに、モータ1の回転子12が備える永久磁石の温度を推定する。
次に、図2を参照して、モータ1の詳細な構成について説明する。
図2は、モータ1の断面図である。
モータ1の固定子11には、固定子11の軸方向に貫通するスロット21が、固定子11の周方向に等間隔に複数形成されている。このように固定子11にスロット21を複数形成することにより、隣接するスロット21の間にティース22が構成される。そして、ティース22を巻回するように、固定子コイル23が設けられている。
回転子12においては、軸方向に延在する空隙24が形成されており、空隙24に磁石部25が挿入されている。磁石部25は、略対向するように対をなしており、対をなした磁石部25が、周方向に等間隔に設けられる。略対向する磁石部25は、対向面が同じ極性となるように配置される。また、略対向する磁石部25と、その隣にて略対向する磁石部25とは、互いの対向面の極性が異なるように配置される。具体的には、図2に示すように、略対向する磁石部25Aと磁石部25Bの隣に略対向する磁石部25C及び磁石部25Dが設けられている場合には、磁石部25Aと磁石部25Bの対向面がN極であれば、磁石部25Cと25Dの対向面がS極となる。
固定子コイル23は、磁石温度推定装置2から交流電力が印加されると回転磁界を発生させる。固定子コイル23による回転磁界の方向は印加される交流電力の位相に応じて変化するため、固定子コイル23と回転子12の磁石部25とが誘引と反発とを交互に繰り返すことで回転駆動力が発生し、固定子11内で回転子12が回転する。
次に、図3を参照して、磁石部25の詳細な構成について説明する。
図3は、磁石部25の概略構成図である。図3における上下方向は、回転子12の軸方向、すなわち、図2における紙面に向かう方向を示している。
磁石部25は、回転子12の軸方向に積層された複数の永久磁石31により構成されている。例えば、モータ1が高効率の運転が求められる電動自動車などに用いられる場合には、磁石部25は、複数の永久磁石31により構成されることが多い。固定子コイル23が印加される交流電流に応じた回転磁界を発生させると、回転子12の磁石部25の表面において渦電流が発生して損失が発生してしまう。そこで、磁石部25を複数の永久磁石31により構成することにより、磁石部25を1つの永久磁石により構成する場合と比較すると、表面積を小さくすることができる。このようにすることで、渦電流の経路が短くなり、渦電流による損失を低減することができる。
また、磁石部25においては、永久磁石31の磁束の少なくとも一部と鎖交するように磁石コイル32が巻回されている。また、永久磁石31と隣接するようにサーミスタ33が設けられており、サーミスタ33と磁石コイル32とは接続されている。なお、永久磁石31とサーミスタ33とは熱伝導性が高い接着部材34により接合されている。なお、接着部材34は、例えば、アルミナや、窒化アルミニウム、窒化ホウ素などの熱伝導性に優れた材料がフィラーとして含有された接着剤である。
サーミスタ33は、所定の温度領域を上回ると抵抗値が急激に変化する性質を有する電子部材である。本実施形態においては、サーミスタ33は、PTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスタであり、ある温度範囲を超えると抵抗値が急激に大きくなる温度特性を有する。PTCサーミスタの詳細な温度特性について、図4を用いて説明する。
図4は、PTCサーミスタの温度特性を示す図である。横軸に温度が示されており、縦軸に抵抗値が常用対数で示されている。図4を参照すると、PTCサーミスの抵抗は、キュリー温度Tcを超えると急激に大きくなる。また、一般に、永久磁石は、ある温度を上回ると消磁してしまい常温に戻っても着磁しないという不可逆消磁の性質がある。なお、サーミスタの抵抗値の変化量が急激に変わる温度は、一般に、キュリー温度と称される。本実施形態においては、キュリー温度Tcが永久磁石31の不可逆消磁温度Teよりも低いPTCサーミスタが、サーミスタ33として用いられるものとする。
次に、図5を用いて、磁石温度推定装置2について説明する。
図5は、磁石温度推定装置2のシステム構成図である。なお、各構成の入出力の線に付された2本斜線および3本斜線は、それぞれ、各構成にて入出力される値が2次元、3次元のベクトルであることを示している。
図5に示すように、磁石温度推定装置2は、電力供給部51と、重畳部52と、磁石温度推定部53とを有する。
電力供給部51は、不図示のモータコントローラなどからリミッタ533を経て入力される基本波電流指令値idsf**、iqsf**に応じて、駆動周波数(基本波)の交流電力である3相電圧vu、vv、vwをモータ1に出力することにより、モータ1を回転駆動させる。
重畳部52には、磁石部25の温度を推定するために、基本波の駆動周波数よりも周波数が高い高調波である測定周波数の高調波電流指令値idsc*、iqsc*が入力される。そして、重畳部52は、入力に応じた高調波電圧指令値vdsc*、vqsc*を電力供給部51に出力することで、電力供給部51がモータ1に供給する交流電力に高調波成分の電力を重畳する。
磁石温度推定部53は、入力される高調波電流指令値idsc*、iqsc*、及び、高調波電圧指令値vdsc*、vqsc*を用いて、測定周波数でのインピーダンスを求め、求めたインピーダンスを用いて磁石部25の磁石温度Tmを推定する。そして、磁石温度推定部53は、推定した磁石温度Tmに応じて、リミッタ533を用いて電力供給部51に入力される基本波電流指令値idsf**、iqsf**を制限し、モータ1の回転速度を制限する。
なお、基本波電流指令値idsf*、iqsf*の周波数は、モータ1を回転させる回転速度に応じて変化する。また、基本波電流指令値idsf*、iqsf*は、回転座標軸(dq軸)を用いて表されている。
高調波電流指令値idsc*、iqsc*は、上述のように、磁石部25の温度の推定に用いる高調波の電力をモータ1に供給するための指令値である。高調波電流指令値idsc*、iqsc*の周波数は、モータ1の回転中には変更されず一定であるものとする。また、本実施形態では、高調波成分の指令値によってモータ1に回転トルクを発生させないように、q軸成分の高調波電流指令値iqsc*をゼロとし、d軸成分の高調波電流指令値idsc*だけが変更されて磁石温度推定装置2に入力されるものとする。また、高調波電流指令値の振幅は、モータ1への影響を小さくするために、基本波電流指令値の振幅よりも小さいものとする。
以下では、電力供給部51、重畳部52、及び、磁石温度推定部53の詳細な構成について説明する。
電力供給部51は、減算器511、電流制御部512、加算器513、座標変換部514、電力変換部515、電流検出部516、座標変換部517、及び、バンドストップフィルター518を備える。
また、電力供給部51においては、磁石温度推定部53のリミッタ533を経た基本波電流指令値idsf**、iqsf**が、減算器511に入力されるとともに、重畳部52の共振制御部522から高調波電圧指令値vdsc*、vqsc*が、加算器513に入力される。そして、電力供給部51は、これらの入力に応じて、3相電圧vu、vv、vwをモータ1に出力する。
減算器511は、基本波電流指令値idsf**、iqsf**から、それぞれ基本波検出電流値idsf、iqsfを減算し、これらの減算結果を電流制御部512に出力する。なお、基本波検出電流値idsf、iqsfは、モータ1に印加され電流の検出値の基本波成分である。
電流制御部512は、減算器511の減算結果がそれぞれゼロに近づくように、すなわち、基本波電流指令値idsf**、iqsf**と、基本波電流検出値idsf、iqsfとの偏差がなくなるように比例積分制御を行い、第1電圧指令値vd0*、vq0*を加算器513に出力する。
加算器513は、電流制御部512から出力された第1電圧指令値vd0*、vq0*に、重畳部52の共振制御部522から出力された高調波電圧指令値vdsc*、vqsc*を加算する。そして、加算器513は、高調波成分が重畳された第2電圧指令値vds*、vqs*を座標変換部514へ出力する。
座標変換部514は、加算器513から出力された第2電圧指令値vds*、vqs*に対して、回転座標(dq軸)から3相座標(uvw相)への変換を行い、3相電圧指令値vu*、vv*、vw*を算出する。そして、座標変換部514は、算出した3相電圧指令値vu*、vv*、vw*を、電力変換部515に出力する。
電力変換部515は、例えばコンバータとインバータで構成される電力変換回路を備えている。また、電力変換部515には、不図示のバッテリーから直流電力が供給されている。電力変換部515は、3相電圧指令値vu*、vv*、vw*によりインバータが制御されることで、バッテリーからの直流電力を交流である3相電圧vu、vv、vwに変換して、モータ1に出力する。なお、インバータとしては、電圧型インバータまたは電流型インバータを用いることができる。
電流検出部516は、例えばホール素子などを用いて構成され、3相電圧vu、vv、vwがモータ1に印加される際に、磁石温度推定装置2からモータ1へと流れる3相電流iu、iv、iwを検出する。電流検出部516は、検出した3相電流iu、iv、iwを座標変換部517に出力する。
座標変換部517は、電流検出部516により検出された3相電流iu、iv、iwに対して、3相座標から回転座標への座標変換を行い、検出電流ids、iqsを求める。そして、座標変換部517は、求めた検出電流ids、iqsを、バンドストップフィルター518、および、重畳部52のバンドパスフィルター523に出力する。
バンドストップフィルター518は、重畳された高調波の周波数帯の信号をカットする。これにより、バンドストップフィルター518は、検出電流ids、iqsの高調波成分をカットして求めた基本波検出電流値idsf、iqsfを減算器511に出力する。
重畳部52は、減算器521と、共振制御部522と、バンドパスフィルター523とを備える。重畳部52は、減算器521への高調波電流指令値idsc*、iqsc*の入力に応じて、高調波電圧指令値vdsc*、vqsc*を電力供給部51の加算器513および磁石温度推定部53の温度推定部531に出力する。
バンドパスフィルター523は、高調波の周波数帯の信号のみを通す。これにより、バンドパスフィルター523は、座標変換部517から出力される検出電流ids、iqsの基本波成分をカットして求めた高調波検出電流値idsc、iqscを減算器521に出力する。
減算器521には、高調波電流指令値idsc*、iqsc*が入力されるとともに、バンドパスフィルター523からの高調波検出電流値idsc、iqscがフィードバック入力される。減算器521は、高調波電流指令値idsc*、iqsc*から高調波検出電流値idsc、iqscを減算し、その減算結果を共振制御部522に出力する。
共振制御部522は、減算器521からの出力がゼロに近づくように、高調波電圧指令値vdsc*、vqsc*を生成する。そして、共振制御部522は、高調波電圧指令値vdsc*、vqsc*を、電力供給部51の加算器513、及び、磁石温度推定部53の温度推定部531に出力する。
なお、共振制御部522は、高調波電圧指令値の振幅や、高調波電圧指令値の出力間隔を任意に設定することができる。なお、q軸成分の高調波電圧指令値vqsc*は、モータ1の回転トルクの制御に用いられる。そのため、モータ1の回転トルクに影響を与えないように、共振制御部522は、q軸成分の高調波電圧指令値vqsc*としてゼロを出力し、d軸成分の高調波電圧指令値vdsc*のみを変化させて出力する。
本実施形態では、共振制御部522は、パルセイティング・ベクトル・インジェクション(Pulsating vector injection)方式によって高調波電圧指令値vdsc*を出力するものとする。具体的には、共振制御部522は、高調波電圧指令値vdsc*に正負の符号を交互に付して出力する。このようにすることにより、モータ1への指令値として加算器513から出力される第2電圧指令値vds*、vqs*においては、d軸方向に高調波電圧指令値vdsc*の進みと遅れとが交互に生じることになる。
磁石温度推定部53は、温度推定部531と、磁石保護部532と、リミッタ533とを備える。リミッタ533には、基本波電流指令値idsf*、iqsf*が入力される。また、温度推定部531には、高調波電流指令値idsc*、iqsc*が入力されるとともに、重畳部52の共振制御部522から高調波電圧指令値vdsc*、vqsc*が入力される。なお、上述のように、q軸成分の高調波電流指令値iqsc*、及び、高調波電圧指令値vqsc*はゼロである。そして、磁石温度推定部53は、高調波電圧指令値と高調波電流指令値とを用いて測定したインピーダンスに応じて、磁石部25の温度を推定する。
温度推定部531は、重畳される高調波の周波数に応じた不図示のバンドパスフィルターを有しており、パルセイティング・ベクトル・インジェクション方式で印加された高調波電圧指令値vdsc*の正または負のいずれかの値を抽出する。温度推定部531は、入力された高調波電流指令値idsc*と、バンドパスフィルターを経た高調波電圧指令値vdsc*とを用いて、高調波成分のインピーダンスZhを算出することができる。
ここで、高調波成分のインピーダンスZhの実部Rdは、固定子11の磁石部25の温度と相関関係があることが知られている。そのため、温度推定部531は、高調波インピーダンスの実部Rdと磁石部25の温度との相関関係を示すテーブルを予め記憶しておき、算出した高調波インピーダンスの実部Rdと記憶している相関関係を示すテーブルとを用いて、磁石部25の温度を推定することができる。
磁石保護部532は、温度推定部531により推定された磁石部25の磁石温度Tmに応じて、モータ1への供給電力の上限指令値である最大電流指令値idsf_max*、iqsf_max*を出力する。また、磁石保護部532は、サーミスタ33のキュリー温度Tcを、モータ1の回転を停止する停止温度Tstopとして記憶している。
磁石保護部532は、磁石温度Tmと停止温度Tstopとを比較し、比較結果に応じて最大電流指令値idsf_max*、iqsf_max*を出力する。磁石温度Tmが停止温度Tstop以下である場合には(Tm≦Tstop)、磁石保護部532は、モータ1を停止する必要はないと判断し、設計上の最大の電流指令値を最大電流指令値idsf_max*、iqsf_max*として出力する。一方、磁石温度Tmが停止温度Tstopより大きい場合には(Tm>Tstop)、磁石保護部532は、モータ1を停止する必要があると判断し、最大電流指令値idsf_max*、iqsf_max*としてゼロを出力する。
リミッタ533には、モータコントローラなどからの基本波電流指令値idsf*、iqsf*が入力されるとともに、磁石保護部532から最大電流指令値idsf_max*、iqsf_max*が入力される。リミッタ533は、基本波電流指令値idsf*、iqsf*と、最大電流指令値idsf_max*、iqsf_max*とのうちの小さい方の指令値を、基本波電流指令値idsf**、iqsf**として出力する。このようにすることで、例えば、磁石保護部532が最大電流指令値としてゼロをリミッタ533に出力した場合には、リミッタ533から出力される基本波電流指令値がゼロになるため、モータ1を停止することができる。
ここで、図6を用いて、温度推定部531により測定される高調波インピーダンスの実部Rdと、磁石部25の温度との相関関係について説明する。
図6は、磁石温度推定装置2にて磁石温度が推定される一般的なモータをモデル化した等価回路を示す図である。この図においては、図6(6)にモータの構成が示されており、図6(6)には図6(a)のモータと等価な磁束回路が示されている。この図におけるモータの磁石部25は、磁石コイル32およびサーミスタ33を備えておらず、永久磁石31のみで構成されているものとする。
なお、この図においては、図5に示した電力変換部515から出力される3相電圧vu、vv、vwの高調波成分が高調波電圧Vhとして固定子コイル23に印加される。また、固定子コイル23に印加される電流の高調波成分が高調波電流Ihとして示されている。この高調波電流Ihは、図5の電流検出部516にて検出される3相電流iu、iv、iwの高調波成分である。
図6を参照すれば、固定子コイル23に磁石温度推定装置2(図6では不図示)から高調波電圧Vhが印加されると、固定子コイル23と磁石部25との間に高調波成分を有する回転磁界が発生する。一方、磁石部25の表面においては、固定子コイル23により発生する回転磁界の高調波成分に応じて渦電流が発生する。そのため、磁石部25は、インダクタンス成分を有することになる。このようにして、モータ1が回転しているときには、固定子11と回転子12とにより磁束回路が構成されることになる。
ここで、固定子コイル23は、抵抗成分がRcであり、インダクタンス成分がLcであるものとする。
また、磁石部25は、抵抗成分がRmであり、インダクタンス成分がLmであるものとする。磁石部25の抵抗成分Rmは、複数の永久磁石31の抵抗値を合成した値となる。また、磁石部25の抵抗成分Rmは、磁石温度Tmに応じて変化するためRm(Tm)と示すことができる。磁石部25のインダクタンス成分Lmは、複数の永久磁石31のインダクタンス成分を合成した値となる。また、磁石部25のインダクタンス成分Lmは、磁石温度Tm、および、高調波電流値Ihに応じて変化するため、Lm(Tm,Ih)と示すことができる。
ここで、高調波電圧Vhと高調波電流値Ihとから、Zh=Vh/Ihの関係を用いて高調波インピーダンスZhを演算する。そのような場合には、高調波インピーダンスZhの実部Rdは、式(1)で表される。
Figure 2017028803
ただし、Mは相互インダクタンス、ωは高調波電圧Vhの角周波数である。なお、相互インダクタンスMは、磁石温度Tm、および、高調波電流値Ihに応じて変化するため、M(Tm,Ih)と示される。式(1)によれば、高調波インピーダンスの実部Rdは、磁石部25の温度である磁石温度Tmと、図7に示すような相関関係がある。
図7は、図6に示したような、磁石部25が磁石コイル32およびサーミスタ33を備えていないモータにおける、高調波インピーダンスの実部Rdと磁石温度Tmとの相関関係を示すグラフである。横軸は、磁石温度Tmを示し、縦軸は、高調波インピーダンスの実部Rdを示している。図7には、磁石温度Tmが増加すると高調波インピーダンスの実部Rdが増加するような相関関係が示されている。そのため、温度推定部531は、求めた高調波インピーダンスの実部Rdと、図7に示したような相関関係とを用いることにより、磁石温度Tmを推定することができる。
次に、本実施形態のように、磁石部25が磁石コイル32およびサーミスタ33を備えているモータについて説明する。このようなモータでは、回転子12が回転する場合には、固定子コイル23による回転磁界が磁石コイル32を交番するため、磁石コイル32において誘起電力が発生し、磁石コイル32およびサーミスタ33に電流が流れる。したがって、モータ1は、図8に示したような等価回路となる。
図8は、本実施形態のような、磁石部25が磁石コイル32およびサーミスタ33を備えるモータ1の等価回路を示す図である。図8は、図6に示した一般的なモータの等価回路と比較すると、磁石コイル32およびサーミスタ33に起因する抵抗成分及びインダクタンス成分が追加されている。ここで、この等価回路においては、永久磁石31は、抵抗成分がRm1であり、インダクタンス成分がLm1であるものとする。また、磁石コイル32及びサーミスタ33は、抵抗成分がRm2であり、インダクタンス成分がLm2であるものとする。
ここで、式(1)における磁石部25の抵抗成分Rmは、永久磁石31の抵抗成分Rm1と、磁石コイル32及びサーミスタ33の抵抗成分Rm2とを合成することで求められる。また、磁石部25のインダクタンス成分Lmは、永久磁石31のインダクタンス成分Lm1と、磁石コイル32及びサーミスタ33のインダクタンス成分Lm2とを合成することで求められる。
図4に示したように、サーミスタ33の抵抗値は、キュリー温度Tcを上回ると急激に大きくなる温度特性がある。そのため、式(1)における磁石部25の抵抗値Rm(Tm)の温度特性に、このようなサーミスタ33の温度特性が加味されることになる。したがって、磁石部25の抵抗値Rmは、サーミスタ33のキュリー温度Tcを上回ると急激に大きくなる。
図9は、磁石部25が磁石コイル32およびサーミスタ33を備えるモータ1における高調波インピーダンスの実部Rdと磁石温度Tmとの相関関係を示す図である。横軸は、磁石温度Tmを示し、縦軸は、高調波インピーダンスの実部Rdを示している。
図9に示すように、高調波インピーダンスの実部Rdは、サーミスタ33のキュリー温度Tcを下回る温度範囲においては、図7と同様に磁石温度Tmの上昇に伴って増加する。そして、高調波インピーダンスの実部Rdは、サーミスタ33のキュリー温度Tcを上回ると、急激に大きくなる。そのため、単位温度あたりの高調波インピーダンスの実部Rdの変化量は、キュリー温度Tcを上回ると急激に大きくなることになる。
したがって、図5の温度推定部531が図9の相関関係を用いて磁石部25の磁石温度Tmを推定する際には、高調波インピーダンスの実部Rdの単位時間あたりの変化量である変化率が急増したか否かを判定することにより、サーミスタ33のキュリー温度Tcに達したか否かを正確に判定することができる。
なお、本実施形態においては、サーミスタ33のキュリー温度Tcを、磁石保護部532によりモータ1の回転を停止させる停止温度Tstopとしたが、これに限らない。サーミスタ33のキュリー温度Tcよりも高く、かつ、不可逆消磁温度Teよりも低い温度を、磁石保護部532によりモータ1の回転を停止させる停止温度Tstopとしても、永久磁石31の不可逆消磁を防ぐことができる。
第1実施形態の磁石温度推定システムによって、以下の効果を得ることができる。
第1実施形態の磁石温度推定システム100によれば、磁石温度推定装置2において、重畳部52は、電力供給部51から出力されてモータ1へ供給される基本波の電力に、高調波の電力を重畳させる。そして、温度推定部531は、高調波電圧Vhを高調波電流Ihにて除することにより、高調波成分のインピーダンスを求める。
モータ1の回転子12においては、モータ1の回転時には、固定子コイル23により発生する回転磁界が磁石コイル32を交番することにより、磁石コイル32にて誘起電力が発生する。そのため、磁石コイル32と接続されたサーミスタ33には、発生した誘起電力に応じた電流が流れることになる。
このようにサーミスタ33に電流が流れることで、図9に示したように、温度推定部531により測定される高調波インピーダンスの実部Rdと磁石温度Tmとの相関関係において、サーミスタ33の温度特性が加味される。すなわち、図7に示した一般的なモータの相関関係と比較すると、サーミスタ33のキュリー温度Tcの近傍にて高調波インピーダンスの実部Rdの単位温度あたりの変化量である変化率が急激に大きくなる。したがって、磁石部25がキュリー温度Tcに達したか否かを正確に判定することができるため、温度推定部531による磁石部25の温度の推定精度を向上させることができる。
また、第1実施形態の磁石温度推定システム100によれば、サーミスタ33はPTCサーミスタである。PTCサーミスタは、キュリー温度Tcを上回ると抵抗値が急激に大きくなる。したがって、図9に示すように、キュリー温度Tcよりも低い温度においては、磁石コイル32及びサーミスタ33を備えていないモータと同様に磁石部25の磁石温度Tmを推定することができる。さらに、サーミスタ33が設けられていることにより、磁石部25がサーミスタ33のキュリー温度Tcに達したか否かを正確に判定することができるため、温度推定部531による磁石部25の温度の推定精度を向上させることができる。
また、第1実施形態の磁石温度推定システム100によれば、サーミスタ33として、キュリー温度Tcが永久磁石31の不可逆消磁が起こってしまう不可逆消磁温度Teよりも低いPTCサーミスタが用いられている。そして、磁石保護部532は、サーミスタ33のキュリー温度Tcを、モータ1の回転を停止させるか否かの判定に用いる停止温度Tstopとして記憶しておく。
本実施形態では、温度推定部531は、磁石部25がサーミスタ33のキュリー温度Tc、すなわち、停止温度Tstopに達したことを正確に検出できる。そのため、磁石部25が不可逆消磁温度Teを上回る前に、磁石保護部532はリミッタ533を用いてモータ1を確実に停止させることができる。このようにして、永久磁石31が不可逆消磁してしまうおそれを低減することにより、永久磁石31を確実に保護することができる。
また、第1実施形態の磁石温度推定システム100によれば、良好な熱伝導性を有する接着部材34によって、永久磁石31とサーミスタ33とは接合されているため、永久磁石31とサーミスタ33との間の温度差を小さくすることができる。したがって、温度推定部531は永久磁石31がサーミスタ33のキュリー温度に達したか否かの判定をより正確に行うことができるため、温度推定部531による磁石部25の温度の推定精度を向上させることができる。
(第2実施形態)
第1実施形態においては、サーミスタ33がPTCサーミスタである例について説明したが、サーミスタ33として他のサーミスタが用いられてもよい。第2実施形態においては、サーミスタ33がCTRサーミスタである例について説明する。
本実施形態においては、図3のサーミスタ33は、CTR(Critical Temperature Resistor)サーミスタである。CTRサーミスタの温度特性について、図10を用いて説明する。
図10は、CTRサーミスタの温度特性を示す図である。横軸に温度が示されており、縦軸に抵抗値が示されている。また、図10を参照すると、CTRサーミスの抵抗は、キュリー温度Tcを上回ると急激に小さくなる。なお、第1実施形態と同様に、サーミスタ33のキュリー温度Tcは、永久磁石31の不可逆消磁温度Teよりも低いものとする。
このように、サーミスタ33がCTRサーミスタである場合には、式(1)にて求められる高調波インピーダンスの実部Rdと磁石部25の磁石温度Tmとの相関関係は、図11のようになる。
図11は、本実施形態における磁石部25の磁石温度Tmと高調波インピーダンスZhの実部Rdとの相関関係を示す図である。横軸は、磁石温度Tmを示し、縦軸は、高調波インピーダンスの実部Rdを示している。
図11に示すように、本実施形態においては、図7に示した相関関係と比較すると、磁石温度Tmがサーミスタ33のキュリー温度Tcを下回る温度範囲においては、サーミスタ33の温度特性が加味されるので、高調波インピーダンスの実部Rdは大きくなる。そして、磁石温度Tmがサーミスタ33のキュリー温度Tcを上回ると、高調波インピーダンスの実部Rdは、急激に小さくなる。
第2実施形態の磁石温度推定システムによって、以下の効果を得ることができる。
第2実施形態の磁石温度推定システム100によれば、サーミスタ33を構成するCTRサーミスタは、PTCサーミスタと比較すると、キュリー温度Tcよりも低い温度範囲において、抵抗値が大きい。
ここで、モータ1が通常の速度で回転している場合には、磁石温度Tmは比較的高くならず、CTRサーミスタのキュリー温度Tcより低い。また、CTRサーミスタは、キュリー温度Tcよりも低い温度においては、抵抗値が大きいため、磁石コイル32及びサーミスタ33に流れる電流が小さい。したがって、磁石コイル32及びサーミスタ33における発熱が抑制されることにより、モータ1の発熱に起因して磁石部25の温度が高くなり不可逆消磁してしまうおそれを低減することができる。
また、サーミスタ33は、キュリー温度Tcを上回ると抵抗の値が急激に小さくなるCTRサーミスタである。このようなサーミスタ33を備えることにより、図11に示したように、モータ1が回転速度を速めており磁石温度Tmが高くなっている場合には、磁石温度Tmがキュリー温度Tcを上回ると、高調波インピーダンスの実部Rdが急減する。したがって、磁石部25がキュリー温度Tcに達したことを正確に判定することができるため、磁石温度Tmの推定精度を向上させることができる。
(第3実施形態)
第1及び第2実施形態においては、サーミスタ33がPTCサーミスタまたはCTRサーミスタのいずれかである例について説明した。第3実施形態では、サーミスタ33がPTCサーミスタとCTRサーミスタとが並列に接続されて構成される例について説明する。なお、このような、PTCサーミスタとCTRサーミスタとが並列に接続されて構成されるサーミスタを、以下では、並列サーミスタと称する。
図12は、サーミスタ33に用いられる並列サーミスタの温度特性の一例を示す図である。この図においては、並列サーミスタの温度特性が実線で示されている。また、比較のために、並列サーミスタを構成するPTCサーミスタのみの温度特性が一点破線で、CTRサーミスタのみの温度特性が二点破線で示されている。
図12に示すように、PTCサーミスタのキュリー温度Tc_pは、CTRサーミスタのキュリー温度Tc_cよりも低いものとする。また、CTRサーミスタのキュリー温度Tc_cは、不可逆消磁温度Teよりも低いものとする。
この図によれば、並列サーミスタの抵抗値は、温度が上昇すると、温度Tc_pにおいて大きくなり始め、Tc_pとTc_cとの間の温度T1において増加しなくなり略一定の値となる。そして、Tc_cよりも大きな温度T2を超えると減少し始める。なお、並列サーミスタの抵抗の値が減少し始める温度T2は、磁石部25の不可逆消磁温度Teよりも低いものとする。
図13は、並列サーミスタをサーミスタ33に用いた場合における、高調波インピーダンスの実部Rdと磁石温度Tmとの相関関係を示すグラフである。横軸は、磁石温度Tmを示し、縦軸は、高調波インピーダンスの実部Rdを示している。なお、この図における、温度Tc_p、T1、Tc_c、T2、Teは、図12におけるそれぞれの温度が示されている。
図13に示す相関関係は、磁石温度TmがTc_pよりも低い温度においては、図7に示した相関関係と同様である。高調波インピーダンスの実部Rdは、磁石温度TmがTc_pを上回ると急激に大きくなり始める。また、磁石温度TmがT2を上回ると急激に小さくなる。なお、温度T1〜T2の間においては、磁石温度Tmが変化しても、高調波インピーダンスの実部Rdは、大きく変化しない。
ここで、磁石保護部532は、PTCサーミスタのキュリー温度Tc_pを制限温度Tlimとして記憶している。制限温度Tlimとは、モータ1の回転に伴って磁石温度Tmが上昇する場合に、モータ1を停止させる前にモータ1の回転の制限を開始する温度である。さらに、磁石保護部532は、高調波インピーダンスの実部Rdが低下し始める温度T2を、停止温度Tstopとして記憶している
モータ1の回転速度の増加に伴って磁石温度Tmが上昇している場合には、制限温度Tlim以下である温度範囲(Tm≦Tlim)では、磁石保護部532は、設計上の最大電流指令値を、最大電流指令値idsf_max*、iqsf_max*として出力する。磁石温度Tmが制限温度Tlimより大きく、かつ、停止温度Tstop以下である温度範囲(Tlim<Tm≦Tstop)では、磁石保護部532は、磁石温度Tmが高くなるほど最大電流指令値idsf_max*、iqsf_max*が小さくなるように制御する。磁石温度Tmが停止温度Tstopよりも大きい温度範囲(Tstop<Tm)では、磁石保護部532は、最大電流指令値idsf_max*、iqsf_max*としてゼロを出力する。
このような構成とすることにより、第1実施形態と同様に停止温度Tstopにてモータ1の回転を停止させることができることに加えて、モータ1の回転の制限を開始する制限温度Tlimを設けることにより、2段階でモータ1を保護することができる。そのため、停止温度Tstopにおいてモータ1が突然停止されることがなくなるため、動作範囲を広げることができる。
なお、本実施形態においては、サーミスタ33のキュリー温度Tcを制御温度Tlimとし、温度T2を停止温度Tstopとしたが、これに限らない。サーミスタ33のキュリー温度Tcの近傍の温度を制御温度Tlimとし、温度T2の近傍の温度を停止温度Tstopとしても、磁石保護部532によって永久磁石31の不可逆消磁力を防ぐことができる。
第3実施形態の磁石温度推定システムによって、以下の効果を得ることができる。
第3実施形態の磁石温度推定システムによれば、永久磁石31に設けられるサーミスタ33は、CTRサーミスタとPTCサーミスタとを並列に接続したものである。なお、PTCサーミスタのキュリー温度Tc_pは、CTRサーミスタのキュリー温度Tc_cよりも低く、また、CTRサーミスタのキュリー温度Tc_cは、永久磁石31の不可逆消磁温度Teよりも低いものとする。
このような2種類の異なる温度特性のサーミスタを並列に設けることにより、図13に示したように、高調波インピーダンスの実部Rdと磁石温度Tmとの相関関係において、高調波インピーダンスの実部Rdの変化率が大きく変化する温度領域が複数設けられることになる。そのため、磁石部25の磁石温度Tmが達したか否かを判定できる温度が複数設けられることになる。
そこで、磁石保護部532は、モータ1の回転速度が増加している場合においては、高調波インピーダンスの実部Rdの増加を検出すると、磁石部25がPTCサーミスタのキュリー温度Tc_pに達したと判断し、モータ1の回転の制限を開始する。そして、磁石保護部532は、高調波インピーダンスの実部Rdの減少を検出すると、磁石部25が温度T2に達したと判定して、モータ1の回転を停止させる。
このように、本実施形態においては第1実施形態と比較すると、高調波インピーダンスの実部Rdと磁石温度Tmとの相関関係において変化率が変わる温度が複数設けられることにより、モータ1の回転の停止だけでなく、モータ1の回転の制限を行うことができる。このように2段階でモータ1の回転を制限することにより、モータ1が突然停止することがなくなるため、モータ1の動作範囲を大きくすることができる。
(第4実施形態)
第4実施形態においては、磁石部25の構成の他の例について説明する。
図14Aは、本実施形態のモータ1の断面図の一部である。図14Aは、図2に示した第1実子形態のモータ1の断面図と比較すると、空隙24に設けられた磁石部25が熱伝導性の高い樹脂1401にて封入されている点が異なる。樹脂1401は、例えば、シリコン系の樹脂や、マイクロ銀ペーストなどがある。また、樹脂1401は、例えば、アルミナや、窒化アルミニウム、窒化ホウ素などの熱伝導性に優れた材料がフィラーとして含有されたエポキシ樹脂などであってもよい。なお、永久磁石31とサーミスタ33とを熱伝導性が高い接着部材34により接合した後に、樹脂1401にて封入されているものとする。なお、接着部材34を用いずに樹脂1401のみで永久磁石31とサーミスタ33とを固定してもよい。
図14Bは、図14Aの磁石部25の構成の斜視図である。なお、樹脂1401の内部の構成が、点線にて示されている。図14Bによれば、磁石部25の全体が樹脂1401によりモールドされている。このようにすることにより、永久磁石31とサーミスタ33との温度差を低減することができる。
第4実施形態の磁石温度推定システムによって、以下の効果を得ることができる。
第4実施形態の磁石温度推定システム100によれば、磁石部25が、熱伝導性が高い樹脂1401によりモールドされている。そのため、磁石部25において、永久磁石31とサーミスタ33との温度差をさらに低減することができる。したがって、温度推定部531により検出されるサーミスタ33のキュリー温度Tcは、永久磁石31の磁石温度Tmとより一致することになるため、磁石温度Tmの推定精度を向上させることができる。
(第5実施形態)
第5実施形態においては、サーミスタ33の構成の他の一例について説明する。
図15Aは、本実施形態のモータ1の断面図の一部である。モータ1の回転時には、磁石部25の表面のうちの固定子11に最も近い径方向端面が、最も温度が高くなる面であるものとする。本実施形態では、この磁石部25の径方向端面に、サーミスタ33が設けられている。なお、このような磁石部25の表面のうちの最も温度が高くなる場所は、設計において求めることができる。
図15Bは、磁石部25の斜視図である。図15Bによれば、サーミスタ33は、磁石部25の表面のうちの最も温度が高い面である回転子12の軸方向に沿った面において磁石コイル32と接続されている。このようにすることにより、永久磁石31の表面に温度の偏りがある場合でも、最も温度が高い場所の温度に応じてサーミスタ33の抵抗値が変化することになる。
第5実施形態の磁石温度推定システムによって、以下の効果を得ることができる。
第5実施形態の磁石温度推定システム100によれば、磁石部25の表面のうちの最も高温になる場所にサーミスタが設けられている。そのため、磁石部25の表面において温度が均一でなく偏りがある場合であっても、磁石部25の表面において、サーミスタ33の温度を上回る箇所はないことになる。そのため、温度推定部531が検出したキュリー温度Tcに応じて磁石保護部532がモータ1の回転を制限することによって、永久磁石31の一部が不可逆消磁温度Teに達してしまうことが回避され、永久磁石31を確実に保護することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。また、上記実施形態は、適宜組み合わせ可能である。
100 磁石温度推定システム
1 モータ
11 固定子
12 回転子
2 磁石温度推定装置
21 スロット
22 ティース
23 固定子コイル
24 空隙
25、25A、25B、25C、25D 磁石部
31 永久磁石
32 コイル
33 サーミスタ
34 接着部材
51 電力供給部
511 減算器
512 電流制御部
513 加算器
514 座標変換部
515 電力変換部
516 電流検出部
517 座標変換部
518 バンドストップフィルター
52 重畳部
521 減算器
522 共振制御部
523 バンドパスフィルター
53 磁石温度推定部
531 温度推定部
532 磁石保護部
533 リミッタ
1401 樹脂

Claims (11)

  1. 固定子コイルを備える固定子と、永久磁石を備える回転子とからなるモータ、及び、前記永久磁石の温度を推定する磁石温度推定装置を有する、磁石温度推定システムであって、
    前記回転子は、
    前記永久磁石の磁束の少なくとも一部と鎖交する磁石コイルと、
    前記磁石コイルと接続されるとともに、前記永久磁石と接触するように設けられるサーミスタと、を有し、
    前記磁石温度推定装置は、
    前記回転子を回転駆動させる駆動周波数の交流電力を前記固定子コイルに印加する電力供給部と、
    前記駆動周波数とは周波数が異なる測定周波数の交流電力を前記駆動周波数の交流電力に重畳させる重畳部と、
    前記測定周波数の電力に基づいてインピーダンスを測定し、前記測定したインピーダンスに応じて前記永久磁石の温度を推定する温度推定部と、を有する、
    ことを特徴とする磁石温度推定システム。
  2. 請求項1に記載の磁石温度推定システムであって、
    前記サーミスタは、所定の温度領域において抵抗値が急激に変化する、
    ことを特徴とする磁石温度推定システム。
  3. 請求項1又は2に記載の磁石温度推定システムであって、
    前記サーミスタは、キュリー温度を上回ると抵抗値が急激に増加するPTCサーミスタである、
    ことを特徴とする磁石温度推定システム。
  4. 請求項1又は2に記載の磁石温度推定システムであって、
    前記サーミスタは、キュリー温度を上回ると抵抗値が急激に減少するCTRサーミスタである、
    ことを特徴とする磁石温度推定システム。
  5. 請求項1から4のいずれか1項に記載の磁石温度推定システムであって、
    前記サーミスタは、キュリー温度が前記永久磁石の不可逆消磁温度よりも低く、
    前記磁石温度推定装置は、前記温度推定部により推定される前記永久磁石の温度に応じて、前記電力供給部により前記固定子コイルに印加される交流電力を制限する磁石保護部を、さらに有する、
    ことを特徴とする磁石温度推定システム。
  6. 請求項1又は2に記載の磁石温度推定システムであって、
    前記サーミスタは、PTCサーミスタ、及び、CTRサーミスタを互いに並列に接続することにより構成され、
    前記PTCサーミスタは、キュリー温度がCTRサーミスタのキュリー温度よりも低く、
    前記CTRサーミスタは、キュリー温度が前記永久磁石の不可逆消磁温度よりも低く、
    前記磁石温度推定装置は、前記温度推定部により測定されるインピーダンスの上昇を検知すると、前記固定子コイルへの電力の供給を制限し、前記インピーダンスの下降を検知すると、前記固定子コイルへの電力の供給を停止する磁石保護部を、さらに有する、
    ことを特徴とする磁石温度推定システム。
  7. 請求項1から6のいずれか1項に記載の磁石温度推定システムであって、
    前記サーミスタと前記永久磁石とは、熱伝導部材により接合される、
    ことを特徴とする磁石温度推定システム。
  8. 請求項1から7のいずれか1項に記載の磁石温度推定システムであって、
    前記固定子には、前記永久磁石を配置するための空隙が形成され、
    前記永久磁石は、前記空隙において熱伝導樹脂によりモールドされる、
    ことを特徴とする磁石温度推定システム。
  9. 請求項1から8のいずれか1項に記載の磁石温度推定システムであって、
    前記サーミスタは、前記永久磁石の表面のうち前記モータの回転時に温度が最も高くなる場所に設けられる、
    ことを特徴とする磁石温度推定システム。
  10. 固定子コイルを備える固定子と、永久磁石を備える回転子とを有し、磁石温度推定装置によって、前記回転子を回転駆動させる駆動周波数とは周波数が異なる測定周波数の交流電力が重畳された前記駆動周波数の交流電力が印加され、前記測定周波数の交流電力に基づいて測定されるインピーダンスに応じて前記永久磁石の温度が推定されるモータであって、
    前記回転子は、
    前記永久磁石の磁束の少なくとも一部と鎖交する磁石コイルと、
    前記磁石コイルと接続されるとともに、前記永久磁石と接触するように設けられるサーミスタと、を有する、
    ことを特徴とするモータ。
  11. 固定子コイルを備える固定子と、永久磁石を備える回転子とにより構成され、前記回転子は、前記永久磁石の磁束の少なくとも一部と鎖交する磁石コイルと、前記磁石コイルと接続されるとともに、前記永久磁石と接触するように設けられるサーミスタと、を有するモータにおいて、前記永久磁石の温度を推定する磁石温度推定方法であって、
    前記回転子を回転駆動させる駆動周波数の交流電力を前記固定子コイルに印加する電力供給ステップと、
    前記駆動周波数とは周波数が異なる測定周波数の交流電力を前記駆動周波数の交流電力に重畳させる重畳ステップと、
    前記測定周波数の電力に基づいてインピーダンスを測定し、前記測定したインピーダンスに応じて前記永久磁石の温度を推定する温度推定ステップと、を有する、
    ことを特徴とする磁石温度推定方法。
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