以下、添付の図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の実施の形態を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
まず、図1を参照して、本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の全体構成および動作について説明する。
図1に示す画像形成装置1は、カラーレーザープリンタであり、その装置本体の中央には、4つの作像部4Y,4M,4C,4Kが設けられている。各作像部4Y,4M,4C,4Kは、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の異なる色の現像剤を収容している以外は同様の構成となっている。
具体的に、各作像部4Y,4M,4C,4Kは、潜像担持体としてのドラム状の感光体5と、感光体5の表面を帯電させる帯電装置6と、感光体5の表面にトナーを供給する現像装置7と、感光体5の表面をクリーニングするクリーニング装置8などを備える。なお、図1では、ブラックの作像部4Kが備える感光体5、帯電装置6、現像装置7、クリーニング装置8のみに符号を付しており、その他の作像部4Y,4M,4Cにおいては符号を省略している。
各作像部4Y,4M,4C,4Kの下方には、感光体5の表面を露光する露光装置9が配設されている。露光装置9は、光源、ポリゴンミラー、f−θレンズ、反射ミラー等を有し、画像データに基づいて各感光体5の表面へレーザー光を照射するようになっている。
また、各作像部4Y,4M,4C,4Kの上方には、転写装置3が配設されている。転写装置3は、中間転写体としての中間転写ベルト30と、一次転写手段としての4つの一次転写ローラ31と、二次転写手段としての二次転写ローラ36と、二次転写バックアップローラ32と、クリーニングバックアップローラ33と、テンションローラ34と、ベルトクリーニング装置35とを備える。
中間転写ベルト30は、無端状のベルトであり、二次転写バックアップローラ32、クリーニングバックアップローラ33およびテンションローラ34によって張架されている。ここでは、二次転写バックアップローラ32を回転駆動することによって、中間転写ベルト30は図の矢印で示す方向に周回走行(回転)するようになっている。
4つの一次転写ローラ31は、それぞれ、各感光体5との間で中間転写ベルト30を挟み込んで一次転写ニップを形成している。また、各一次転写ローラ31には、電源が接続されており、所定の直流電圧(DC)および/又は交流電圧(AC)が各一次転写ローラ31に印加されるようになっている。
二次転写ローラ36は、二次転写バックアップローラ32との間で中間転写ベルト30を挟み込んで二次転写ニップを形成している。また、上記一次転写ローラ31と同様に、二次転写ローラ36にも電源が接続されており、所定の直流電圧(DC)および/又は交流電圧(AC)が二次転写ローラ36に印加されるようになっている。
ベルトクリーニング装置35は、中間転写ベルト30に当接するように配設されたクリーニングブラシとクリーニングブレードを有する。このベルトクリーニング装置35で回収された廃トナーは、廃トナー移送ホースを介して廃トナー収容器に収容される。
画像形成装置本体の上部には、ボトル収容部2が設けられており、ボトル収容部2には、補給用のトナーを収容する4つのトナーボトル2Y,2M,2C,2Kが着脱可能に装着されている。各トナーボトル2Y,2M,2C,2Kと上記各現像装置7との間に設けた補給路を介して、各トナーボトル2Y,2M,2C,2Kから各現像装置7にトナーが補給される。
一方、画像形成装置本体の下部には、記録媒体としての用紙Pを収容した給紙トレイ10や、給紙トレイ10から用紙Pを搬出する給紙ローラ11等が設けられている。なお、記録媒体には、普通紙以外に、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ、OHPシート等が含まれる。また、手差し給紙機構が設けてあってもよい。
画像形成装置本体内には、用紙Pを給紙トレイ10から二次転写ニップを通過させて装置外へ排出するための搬送路Rが配設されている。搬送路Rにおいて、二次転写ローラ36の位置よりも用紙搬送方向上流側には、搬送タイミングを計って用紙Pを二次転写ニップへ搬送するタイミングローラとしての一対のレジストローラ12が配設されている。
また、二次転写ローラ36の位置よりも用紙搬送方向下流側には、用紙Pに転写された未定着画像を定着するための定着装置20が配設されている。さらに、定着装置20よりも搬送路Rの用紙搬送方向下流側には、用紙を装置外へ排出するための一対の排紙ローラ13が設けられている。また、装置本体の上面部には、装置外に排出された用紙をストックするための排紙トレイ14が設けてある。
続いて、図1を参照して、本実施形態に係るプリンタの基本的動作について説明する。 作像動作が開始されると、各作像部4Y,4M,4C,4Kにおける各感光体5が図の時計回りに回転駆動され、各感光体5の表面が帯電装置6によって所定の極性に一様に帯電される。帯電された各感光体5の表面には、露光装置9からレーザー光がそれぞれ照射されて、各感光体5の表面に静電潜像が形成される。このとき、各感光体5に露光する画像情報は所望のフルカラー画像をイエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの色情報に分解した単色の画像情報である。このように各感光体5上に形成された静電潜像に、各現像装置7によってトナーが供給されることにより、静電潜像はトナー画像として顕像化(可視像化)される。
また、作像動作が開始されると、二次転写バックアップローラ32が図の反時計回りに回転駆動し、中間転写ベルト30を図の矢印で示す方向に周回走行させる。また、各一次転写ローラ31に、トナーの帯電極性と逆極性の定電圧又は定電流制御された電圧が印加されることによって、各一次転写ローラ31と各感光体5との間の一次転写ニップにおいて転写電界が形成される。
その後、各感光体5の回転に伴い、感光体5上の各色のトナー画像が一次転写ニップに達したときに、上記一次転写ニップにおいて形成された転写電界によって、各感光体5上のトナー画像が中間転写ベルト30上に順次重ね合わせて転写される。かくして、中間転写ベルト30の表面にフルカラーのトナー画像が担持される。また、中間転写ベルト30に転写しきれなかった各感光体5上のトナーは、クリーニング装置8によって除去される。そして、各感光体5の表面が除電装置によって除電され、表面電位が初期化される。
プリンタの下部では、給紙ローラ11が回転駆動を開始し、給紙トレイ10から用紙Pが搬送路Rに送り出される。搬送路Rに送り出された用紙Pは、レジストローラ12によって搬送が一旦停止される。
その後、所定のタイミングでレジストローラ12の回転駆動を開始し、中間転写ベルト30上のトナー画像が二次転写ニップに達するタイミングに合わせて、用紙Pを二次転写ニップへ搬送する。このとき、二次転写ローラ36には、中間転写ベルト30上のトナー画像のトナー帯電極性と逆極性の転写電圧が印加されており、これにより、二次転写ニップに転写電界が形成されている。そして、この転写電界によって、中間転写ベルト30上のトナー画像が用紙P上に一括して転写される。また、このとき用紙Pに転写しきれなかった中間転写ベルト30上の残留トナーは、ベルトクリーニング装置35によって除去され、廃トナー収容器へと搬送される。
その後、用紙Pは定着装置20へと搬送され、定着装置20によって用紙P上のトナー画像が当該用紙Pに定着される。そして、用紙Pは、排紙ローラ13によって装置外へ排出され、排紙トレイ14上にストックされる。
以上の説明は、用紙上にフルカラー画像を形成するときの画像形成動作であるが、4つの作像部4Y,4M,4C,4Kのいずれか1つを使用して単色画像を形成したり、2つ又は3つの作像部を使用して、2色又は3色の画像を形成したりすることも可能である。
図2および図21は、本実施形態の定着装置の断面図である。
以下、図2(あるいは図21)に基づき、定着装置20の構成について説明する。
図2(あるいは図21)に示すように、定着装置20は、反時計回りの方向へ回転可能な定着部材としての定着ベルト21と、定着ベルト21の外周面に当接し、時計回りの方向へ回転可能な対向部材としての加圧ローラ22と、定着ベルト21を加熱する加熱源としてのハロゲンヒータ23と、定着ニップNを形成するニップ形成部材24と、ニップ形成部材24を支持する支持部材としてのステー25と、ハロゲンヒータ23からの熱を定着ベルト21へ反射する反射部材26と、ハロゲンヒータ23からの熱を遮蔽する遮蔽部材27と、定着ベルト21の温度を検知する温度検知手段としての温度センサ28とを備える。
上記定着ベルト21は、可撓性を有するフィルム状の無端ベルトで形成される。詳しくは、定着ベルト21は、ニッケルもしくはSUS等の金属材料又はポリイミド(PI)などの樹脂材料で形成された内周側の基材と、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などで形成された外周側の離型層によって構成されている。基材と離型層との間に、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム、又はフッ素ゴム等のゴム材料で形成された弾性層を介在させてもよい。
弾性層が無い場合は、熱容量が小さくなり定着性の向上を達成できるが、未定着トナーを押しつぶして定着させるときにベルト表面の微小な凹凸が画像に転写されて画像のベタ部に光沢ムラを生じる可能性がある。これを防止するには、厚さ100μm以上の弾性層を設けることが望ましい。厚さ100μm以上の弾性層を設けることで、弾性層の弾性変形により微小な凹凸を吸収することができるので、光沢ムラの発生を回避することができるようになる。
本実施形態では、定着ベルト21の低熱容量化を図るために、定着ベルト21を薄くかつ小径化している。具体的には、定着ベルト21を構成する基材、弾性層、離型層のそれぞれの厚さを、20〜50μm、100〜300μm、10〜50μmの範囲に設定し、全体としての厚さを1mm以下に設定している。また、定着ベルト21の直径は、20〜40mmに設定している。さらに低熱容量化を図るためには、望ましくは、定着ベルト21全体の厚さを0.2mm以下にするのがよく、さらに望ましくは、0.16mm以下の厚さとするのがよい。また、定着ベルト21の直径は、30mm以下とするのが望ましい。
なお、本実施形態では、加圧ローラ22の直径を20〜40mmに設定しており、定着ベルト21の直径と加圧ローラ22の直径が同等となるように構成している。ただし、この構成に限定されるものではなく、例えば定着ベルト21の直径が加圧ローラ22の直径よりも小さくなるように構成してもよい。
図3に示すように、定着ベルト21の両端部の内周には、ベルト保持部材40が挿入されている。定着ベルト21は、その軸方向(加圧ローラ22の軸方向と同方向)の両端部に設けられたベルト保持部材40で回転自在に支持されており、基本的にベルト保持部材40以外に定着ベルト21を支持する部材は存在しない。つまり、定着ベルト21は、ローラ等に架け渡されていない無張架の状態にある。ベルト保持部材40は、ハロゲンヒータ23、およびステー25と共に、定着装置20の軸方向の両側に設けられた一対の側板に固定されている。ステー25の全長は、ハロゲンヒータ23よりも長く設けられる。
定着ベルト21の端面とそれに対向するベルト保持部材40の対向面との間には、定着ベルト21の端部を保護するスリップリングが設けられている。これにより、定着ベルト21に軸方向の寄りが生じた場合に、定着ベルト21の端部がベルト保持部材40に直接当接するのを防止することができ、端部の摩耗や破損を防ぐことができる。また、スリップリングは、ベルト保持部材40に外周に対し余裕を持って嵌められている。このため、定着ベルト21の端部がスリップリングに接触した際に、スリップリングは定着ベルト21と連れ回り可能となっているが、スリップリングが連れ回りせず、静止していても構わない。スリップリングの材料としては、耐熱性に優れたいわゆるスーパーエンプラ、例えば、PEEK、PPS、PAI、PTFE等を適用することが好ましい。
図2(あるいは図21)に示す様に、加圧ローラ22は、芯金22aと、芯金22aの表面に設けられた発泡性シリコーンゴム、シリコーンゴム、又はフッ素ゴムといったゴム材料等から成る弾性層22bと、弾性層22bの表面に設けられたPFA又はPTFE等から成る離型層22cとによって構成されている。加圧ローラ22は、加圧力付与手段によって定着ベルト21側へ加圧され、定着ベルト21を介してニップ形成部材24に当接している。この加圧ローラ22と定着ベルト21とが圧接する箇所では、加圧ローラ22の弾性層22bが押しつぶされることで、所定の幅の定着ニップNが形成されている。
また、加圧ローラ22は、装置本体に設けられた定着モータ等の駆動源によって回転駆動するように構成されている。加圧ローラ22が回転すると、その駆動力が定着ニップNで定着ベルト21に伝達され、定着ベルト21が従動回転するようになっている。
本実施形態では、加圧ローラ22を中実のローラとしているが、中空のローラであってもよい。その場合、加圧ローラ22の内部にハロゲンヒータ等の加熱源を配設してもよい。また、弾性層22bはソリッドゴムでもよいが、加圧ローラ22の内部に加熱源が無い場合は、スポンジゴムを用いてもよい。スポンジゴムの方が、断熱性が高まり定着ベルト21の熱が奪われにくくなるのでより望ましい。
図2(あるいは図21)に示す様に、ハロゲンヒータ23は、定着ベルト21の定着ニップN以外の箇所を加熱できるように、定着ベルト21の内周側で、かつ、定着ニップNの用紙搬送方向の上流側に配設されている。ハロゲンヒータ23は、装置本体に設けられた電源部により出力制御されて発熱するように構成されており、その出力制御は、温度センサ28による定着ベルト21の表面温度の検知結果に基づいて行われる。このようなハロゲンヒータ23の出力制御によって、定着ベルト21の温度(定着温度)を所望の温度に設定できるようになっている。なお、定着ベルト21の温度を検知する温度センサの代わりに、加圧ローラ22の温度を検知する温度センサを設け、その温度センサで検知した温度により、定着ベルト21の温度を予測するようにしてもよい。温度センサ28は、定着ベルト21の軸方向の中央に設けられるが、この他、軸方向の端部付近にも、定着ベルト21の表面温度を検知する温度センサが設けられる。
ハロゲンヒータ23は、端部ヒータ23aと中央ヒータ23bの2本のヒータを有しており、中央ヒータ23bは、定着ベルト21の周方向において、端部ヒータ23aよりも定着ニップNの入口側に配置されている。本実施形態では、ハロゲンヒータ23には2本のヒータが設けられているが、プリンタで使用する用紙のサイズ等に応じて、ハロゲンヒータ23の本数を3本以上としてもよい。また、定着ベルト21を加熱する加熱源として、ハロゲンヒータ以外に、IH、抵抗発熱体、又はカーボンヒータ等を用いることも可能である。
反射部材26は、ハロゲンヒータ23と対向するようにステー25に固定支持されている。この反射部材26によって、ハロゲンヒータ23からの輻射熱を定着ベルト21へ反射することで、熱がステー25等に伝達されるのを抑制し、定着ベルト21を効率良く加熱できるようにして省エネルギー化を図っている。反射部材26の材料としては、アルミニウムやステンレス等が用いられる。特に、アルミニウム製の基材に輻射率の低い(反射率の高い)銀を蒸着したものを用いた場合、定着ベルト21の加熱効率を向上させることが可能である。
遮蔽部材27は、厚さ0.1mm〜1.0mmの金属板を、定着ベルト21の内周面に沿った円弧状の断面形状に形成して構成されている。また、遮蔽部材27は、定着ベルト21とハロゲンヒータ23の間を周方向に移動可能となっている。本実施形態では、定着ベルト21の周方向領域に、ハロゲンヒータ23と対向し、ハロゲンヒータ23に直接加熱される被加熱領域αと、ハロゲンヒータ23との間に、側板等に固定された他部材(反射部材26、ステー25、ニップ形成部材24等)が介在し、ハロゲンヒータ23に直接加熱されない非加熱領域βとが形成される。熱遮蔽の必要がない場合は、遮蔽部材27を非加熱領域β側に移動させ、熱遮蔽する必要がある場合は、遮蔽部材27を被加熱領域α側に移動させることが可能となっている。なお、図2(あるいは図21)で示すα、βは領域の一例である。
このように遮蔽部材27を回転させることで、定着ベルト21の被加熱領域αの面積を変更して、ハロゲンヒータ23から定着ベルト21に照射される輻射熱の熱量を調整するようになっている。これにより、連続通紙時の定着ベルト21の非通紙領域における過剰な温度上昇を抑制することができ、定着ベルト21の熱による劣化や損傷を防止することができる。遮蔽部材27は耐熱性を要するため、その素材には、アルミニウム、鉄、ステンレス等の金属材料、又はセラミックを用いることが好ましい。
ニップ形成部材24は、定着ベルト21の内側でかつ定着ベルト21を介して加圧ローラ22と対向する位置に配置されている。
ニップ形成部材24はステー25で支持される。これにより、加圧ローラ22による加圧力でニップ形成部材24に撓みが生じるのを防止し、定着ベルト21と加圧ローラ22の対向領域の軸方向全体で均一なニップ幅を形成することができる。ステー25は、ニップ形成部材24の撓み防止機能を満足するために、ステンレス等の鋼材をはじめとする金属材料で形成されるが、撓み防止に十分な効果があれば樹脂材料でステー25を形成することもできる。
ニップ形成部材24の定着ベルト21と摺動する面には、低摩擦シートが取り付けられる。定着ベルト21が回転すると、この低摩擦シートに対して定着ベルト21の内面が摺動することで、定着ベルト21に作用する摩擦抵抗の低減が図られる。
次に、実施形態のハロゲンヒータ23の構成についてより詳しく説明する。
図4に示す様に、ハロゲンヒータ23は、第一加熱源としての端部ヒータ23aと、第二加熱源としての中央ヒータ23bを有する。
端部ヒータ23aは、例えばタングステンからなる一本の素線(以下、フィラメント素線とも呼ぶ。)が、例えば石英ガラスからなる、発光管としてのガラス管233の中に設けられたフィラメントランプである。
端部ヒータ23aは、ハロゲンヒータ23の軸方向(前述の定着ベルト21の軸方向と同方向である。以下、単に軸方向とも呼ぶ。)の両端部側に、定着ベルト21を加熱するための領域である第一強発熱領域231aを有する。第一強発熱領域231aは、フィラメント素線がコイル状に密に巻回されてなる強発熱部(強発光部)としての密巻部237と、密巻部237を保持するサポータ(詳しくは後述する)からなる。
端部ヒータ23aは、軸方向の中央部に、定着ベルト21の加熱を目的とする領域以外の領域である第一弱発熱領域232aを有する。第一弱発熱領域232aは、フィラメント素線がそのままの状態で直線状に設けられ、強発熱部よりも素線が疎に設けられた、弱発熱部(弱発光部)としての素線部234と、素線部234の間に一定の間隔で設けられ、フィラメント素線が密に巻回されてなる部分である、強発熱部としての被保持部235が設けられる。それぞれの被保持部235には、保持部としてのサポータが設けられる。素線部234は、フィラメント素線が螺旋状に延びる形状等、フィラメント素線が被保持部235や密巻部237よりも疎に巻回された疎巻部であってもよい。
図5(a)および図5(b)に示すように、端部ヒータ23aのサポータ236は、例えばタングステンからなる一本の素線(以下、サポータ素線とも呼ぶ。)によって形成され、バネ性を有する。サポータ236は、ガラス管233に当接する大径環状部236aと、フィラメントを保持する小径環状部236bと、これらの環状部をつなぐ延出部236cからなる。
サポータ236は、大径環状部236aがガラス管233の内周壁に沿う様に設けられることで、ガラス管233に取り付けられる。またサポータ236は、小径環状部236bによって被保持部235を保持する。これらにより、端部ヒータ23a内部のフィラメント素線が、間接的にガラス管233に保持される。
第一弱発熱領域232aは、定着ベルト21の加熱を目的とする領域ではないため、その全てを素線部234によって構成し、第一弱発熱領域232aにおける発熱量を最小限に抑える構成とすることも考えられる。しかし、この場合、サポータ236が保持するだけの十分な太さが素線部234にはないため、サポータ236によってフィラメントを保持することができず、ガラス管233内でフィラメントが垂れ下がってしまう等、ガラス管233内でのフィラメントの形状を維持することができない。このため、上記の様に、第一弱発熱領域232aに、「捨て巻」と呼ばれるフィラメント巻部よりなる被保持部235を設けてサポータ236に保持させ、ガラス管233内でのフィラメントの形状を維持している。これにより、ガラス管233の内部でのフィラメントの形状を維持する事ができ、軸方向視で、ガラス管233の中央にフィラメントを安定して位置させることができる。図5では、被保持部235を保持するサポータ236を用いて説明したが、端部ヒータ23aおよび中央ヒータ23bの強発熱領域231においても、密巻部237を保持するサポータが同様に設けられる。
図4に示すように、中央ヒータ23bは、軸方向の中央部に第二強発熱領域231bを有し、両端部に第二弱発熱領域232bを有する。中央ヒータ23bは、第二弱発熱領域232bにおいて、被保持部235に代えて、フィラメント素線の形状維持のために金属製の短絡用芯棒を設けたパーシャルヒータである。
第二強発熱領域231bにおいては、端部ヒータ23aの第一強発熱領域231aと同様に、密巻部237が軸方向に設けられ、それを保持するサポータが間隔を置いて設けられる。
第二弱発熱領域232bにおいては、その軸方向に渡って上記の芯棒が設けられ、この芯材にフィラメント素線が螺旋状に巻き付けられている。また、ガラス管233の内周壁に沿う様に設けられたサポータが芯棒を保持することにより、フィラメント素線が間接的にガラス管233に保持され、ガラス管233内でその形状を維持している。なお、1本の短絡用芯棒をガラス管233の軸方向にわたって設け、第二強発熱領域231bにおいては、この芯棒にフィラメントを密に巻回してなる密巻部を設けた構成とすることもできる。
なお、図4および以下の図では、適宜、端部ヒータ23aおよび中央ヒータ23bに設けられるサポータ236の記載を省略している。
前述の通り、端部ヒータ23aは、フィラメント素線が密に巻回された密巻部237を有する第一強発熱領域231aが定着ベルト21を主に加熱する。しかしながら、第一弱発熱領域232aに設けられた被保持部235のフィラメント素線等も発熱しており、少なからず定着ベルト21を加熱する。
さらに、第一弱発熱領域232aは、素線部234と被保持部235とからなっており、フィラメント素線の密度が軸方向に一定ではない。このため、第一弱発熱領域232aにおける発熱量は、その軸方向に沿って変化し、定着ベルト21に対する加熱量も一定ではない。以下、第一弱発熱領域232aにおける軸方向の発熱量の違い(定着ベルト21の加熱量の違い)について詳しく説明する。
図6は、端部ヒータ23aの第一弱発熱領域232aが配置された軸方向の位置(範囲C)における、定着ベルト21の軸方向の温度Tの分布を示す図で、図6(b)の横軸が定着ベルト21の軸方向の各位置を示し、縦軸が定着ベルト21の温度Tを示す。
図6(a)および図6(b)に示す様に、第一弱発熱領域232aの軸方向において、被保持部235では、フィラメント素線が密に巻回され、サポータが取り付けられているため、当該部分に対応する定着ベルト21の温度Tは、素線部234に対応する定着ベルト21の温度Tに比べて高くなっている。このため、第一弱発熱領域232aの軸方向において、定着ベルト21の温度T(つまり、定着ベルト21の加熱量)には温度差T1(以下、温度リップルT1とも呼ぶ)が生じ、定着ベルト21の表面温度は図6(b)の波線の様な温度分布となる。
ここで、図7(a)に示す様に、第一弱発熱領域232aに設けられるサポータおよび被保持部235の数を減らすことにより、第一弱発熱領域232aにおける捨て巻の量を減らす事ができる。これにより、第一弱発熱領域232aからの余分な発熱量を減らす事ができ、装置の省エネルギー化につながる。
しかし一方で、図7(b)に示す様に、捨て巻を減らすことにより、捨て巻同士(サポータ同士、あるいは被保持部235同士)の間隔が大きくなって素線部234における温度落ち込みが大きくなり、被保持部235と素線部234の温度差が広がるため、温度リップルT1は、図6(b)と比較して大きくなる。
以上のように、被保持部235の数を減らし、被保持部235同士の間隔を広げることにより、捨て巻の数を減らして無駄な発熱を減らすことができるが、一方で、被保持部235同士の間隔が広がることで、温度リップルが大きくなったり、フィラメントを保持するサポータの同士の間隔が広がることによりガラス管233の内部でフィラメントの形状を維持することが難しくなったりしてしまう。このため、被保持部235の間隔(素線部234の幅)を、ガラス管233内部でのフィラメントの形状を維持できる範囲において、無駄な発熱量を極力減らし、かつ、温度リップルを大きくし過ぎない間隔で設定する必要がある。
被保持部235同士の間隔は、弱発熱領域に設ける被保持部235の数と各被保持部235の幅により変化するため、被保持部235の幅を適切な幅で設けることが必要である。この点、被保持部235の幅は、サポータ236によって保持させるために一定の太さ(密度)で設けると共に、一定の幅をもって設ける必要がある。つまり、被保持部235の幅をできるだけ小さくして捨て巻の部分を減らし、不要な発熱を減らすことが望ましいが、一方で、被保持部235をサポータ236によって確実に保持させるための製造時の取り付け公差等を考慮すると、被保持部235を一定の幅で設けることが必要である。これらを考慮して、被保持部235は4〜7mmの幅で設けることが好ましく、本実施形態では6mmの幅で設けている。
本実施形態では、第一弱発熱領域232aの幅が、A4縦サイズの用紙幅に対応する幅である214mmで設けている。また、被保持部235同士の間隔(図4の間隔D)は、温度リップルが大きくなり過ぎず、フィラメントの形状を維持できる間隔として、11mmに設定している。214mmの幅の第一弱発熱領域232aにおいて、6mmの幅の被保持部235をそれぞれ11mmの間隔で、12個設けている。ただし、それぞれの被保持部235の幅および間隔D(素線部234の幅)には部品公差などの若干の誤差があり、厳密にこの幅で設けられているわけではない。また、被保持部235を保持するサポータがそれぞれの被保持部235に設けられており、サポータ同士の間隔は約16〜17mmである。ただし、被保持部235の幅や密度、フィラメントの太さ等に応じて、サポータ同士の間隔を適切な距離に適宜設定することができる。
それぞれの被保持部235の幅および間隔D(素線部234の幅)を等間隔に設けることにより、温度リップルの変化を軸方向に均等にすることができる。ただし、これに限るものではなく、被保持部235の幅および間隔D(素線部234の幅)を部分的に小さくしたり、逆に大きくしたりすることもできる。
前述の様に、発熱量の無駄を減らし、温度リップルを大きくし過ぎない等の観点から、定着ベルト21の軸方向において、被保持部235が第一弱発熱領域232aに対して占める割合は30%以上35%以下の範囲に設定される。特に本実施形態では、前述の様に、第一弱発熱領域232aの幅214mmに対して、幅6mmの被保持部235が12個設けられており、定着ベルト21の軸方向において、被保持部235が、第一弱発熱領域232aに対して占める割合は、約34%に設定されている。なお、本実施形態では、A4縦サイズに対応する幅である214mmで第二強発熱領域231bの幅を設け、それに対応するように、12個の被保持部235を第一弱発熱領域232aに設けたが、対応する用紙の幅に応じて第二強発熱領域231bの幅(および第一弱発熱領域232aの幅)を設け、それに応じて、上記の被保持部235の第一弱発熱領域232aに対して占める割合の条件を満たす範囲で、第一弱発熱領域232aに設ける被保持部235の個数を変更することができる。
弱発熱領域における発熱量を減らすとともに、温度リップルを大きくし過ぎない範囲として、被保持部235同士の間隔は、被保持部235の幅の1.50倍以上1.90倍以下に設定される。より好ましくは、本実施形態のように、被保持部235同士の間隔を被保持部235の幅の1.83倍で設けることで、上記の弱発熱領域における発熱量と温度リップルのバランスを取る事ができる。
本実施形態とは異なる第一弱発熱領域の各部の間隔として、210mm程度の第一弱発熱領域に対して、5.5mmの被保持部(捨て巻)235を、8mm間隔で15個設けた構成がある(ただし、それぞれの被保持部235の幅および被保持部235の間隔に誤差があることはもちろんである)。この場合、定着ベルト21の軸方向において、被保持部235が第一弱発熱領域に対して占める割合は約39%で、被保持部235同士の間隔は、被保持部235の幅の約1.45倍となる。この第一弱発熱領域と比較すると、本実施形態の第一弱発熱領域は、より被保持部235同士の幅を大きく設けることで、第一弱発熱領域における無駄な発熱量を減らし、かつ、温度リップルをできる限り大きくしない範囲で設定したものである。
ここで、本実施形態の定着装置20では、定着ベルト21の回転方向において、定着ニップNの下流端よりも下流側で、ハロゲンヒータ23の加熱位置α1の上流側近傍に設けられた温度センサ28(図2参照)により、ハロゲンヒータ23によって加熱される前の定着ベルト21の表面温度を検知し、その結果に基づいて、ハロゲンヒータ23による定着ベルト21の加熱量を決定している。
しかし、前述の様に温度リップルT1が大きくなると、温度センサ28が定着ベルト21のいずれの位置を検知するかによって、検知される表面温度が大きく異なり、適切な加熱量を設定する事が困難になる。例えば、定着ベルト21の表面温度が高い位置を温度センサ28が検知すると、ハロゲンヒータ23による加熱量が、適切な加熱量よりも小さく設定され、定着ベルト21が十分に加熱されずにコールドオフセットの原因となる。また、ハロゲンヒータ23による加熱量を大きくすることにより、コールドオフセットを防止する事はできるが、余分な加熱によるエネルギーの無駄が生じてしまい、装置の省エネルギー性を犠牲にしてしまう。
そこで、本実施形態では、図8に示す様に、定着ベルト21の幅方向において、温度センサ28を、端部ヒータ23aの第一弱発熱領域232aにおけるサポータとサポータの中間位置(被保持部235と被保持部235の中間位置)で、端部ヒータ23aの中央位置付近(定着ベルト21の中央位置付近)に配置する。
被保持部235と被保持部235の中間位置は、定着ベルト21の加熱量が小さくなり、図6等で示した温度曲線の谷間の位置である。本実施形態では、定着装置20に通紙される用紙Pは、軸方向の中央位置を基準として、その軸方向の通紙位置が設定されているため、端部ヒータ23aの中央位置付近は、通紙される用紙Pの幅方向の中央位置付近であり、定着ベルト21表面の熱量が用紙Pに流れ込み、最もその表面温度が低くなりやすい位置である。
この様に、定着ベルト21の軸方向において、定着ベルト21の表面温度が最も低くなりやすい位置に配置された温度センサ28により、定着ベルト21の温度を検知する。そして、定着ベルト21の軸方向に生じる温度リップルT1をあらかじめ実測などによって求め、この温度リップルT1により、検知された温度の位置でも十分な定着温度が得られ、かつ、最高温度の位置でも定着温度が大きくなり過ぎない温度になる様に、ハロゲンヒータ23の加熱量を決定する。
以上の様に、定着ベルト21の最低温度を基準に加熱量を決定する事により、定着ベルト21の最低温度の位置において十分な定着温度とする事を保証できるので、コールドオフセットの問題が生じない。また、コールドオフセットが生じない様に余分な加熱をする必要もないので、装置の省エネルギー化を実現する事ができる。
なお、定着ベルト21の加熱位置α1は、遮蔽部材27等によって遮蔽される事無くハロゲンヒータ23によって加熱することができる位置で、ハロゲンヒータ23に最も近い定着ベルト21表面上の位置を指す。
温度センサ28を上記の様に配置する事により、定着ニップNで用紙Pによって熱量を奪われた後で、ハロゲンヒータ23によって加熱される直前の定着ベルト21の表面温度を検知することができる。これにより、ハロゲンヒータ23の定着ベルト21に対する必要な加熱量をより適切に設定する事ができる。
ハロゲンヒータ23による必要な加熱量を検知するためには、より好ましくは加熱の直前の位置である本実施形態の位置に温度センサ28を配置する事が好ましいが、定着ニップNの下流側で、加熱位置α1の上流側であれば、いずれの位置にも温度センサ28を配置する事ができる。ただし、本実施形態では、加熱位置α1の近傍でハロゲンヒータ23の近傍に設ける事により、定着装置20の安全装置としての機能を果たす事ができる。つまり、ハロゲンヒータ23による加熱量が何らかの不具合によって大きくなり過ぎた場合に、温度センサ28がその異常を検知し、装置の電源を落とす等の処理をすることができる。
本実施形態では、軸方向において、端部ヒータ23aの中央位置付近に温度センサ28を配置するとしたが、温度センサ28の配置は必ずしもこれに限らず、定着装置20に通紙される用紙Pの中央位置付近であればよい。さらに、通紙される用紙Pの中央位置付近に温度センサ28を配置する事が好ましいが、それ以外の位置であっても、被保持部235と被保持部235の間に配置する事により、本発明の効果を得る事ができる。例えば、用紙Pの通紙位置が端部揃えで設定される定着装置20においては、用紙Pの中央位置は通紙される用紙Pの大きさによって異なるため、温度センサ28の配置を、いずれかの用紙Pの中央位置付近にする等、適宜変更が可能である。
図4等では、第一強発熱領域231aおよび第二強発熱領域231bにおいて、密巻部237が幅方向に連続して設けられる構成を説明したが、例えば図9に示すように、密巻部237と密巻部237の間に小さな幅で素線部238が設けられ、断続的に密巻部237が設けられた構成であってもよい。また密巻部237と密巻部237の間に素線部238が設けられる構成の他、密巻部237と密巻部237の間に、密巻部237よりもフィラメントの巻きの密度が薄い疎巻部が設けてあってもよい。
強発熱領域231に素線部や疎巻部を設けることにより、強発熱領域231におけるフィラメント素線の重量を軽減し、サポータによって支持するフィラメントの重量を軽減する事ができるので、強発熱領域231において、サポータ同士の間隔を広げる事ができる。
この様にして強発熱領域231に素線部や疎巻部を設けた場合であっても、その幅が密巻部237に比べて十分に小さい場合には、素線部や疎巻部によって温度リップルはほとんど生じない。さらに、図9に示すように、中央ヒータ23bの素線部238に対向して端部ヒータ23aの被保持部235を設けることにより、定着ベルト21の幅方向の温度リップルを、いくらか低減することができるため好ましい。つまり、端部ヒータ23aの第一弱発熱領域232aにおいて温度が高くなる部分である被保持部235に対向して、中央ヒータ23bの第二強発熱領域231bにおいて温度が低くなる部分である素線部238を配置することにより、幅方向の温度差を一部相殺することができ、定着ベルト21の軸方向の温度リップルを低減することができる。
次に、中央ヒータ23bの幅方向端部における温度落ち込みについて説明する。中央ヒータ23bにおいては、第二弱発熱領域232bに被保持部235が設けられていないため、第二弱発熱領域232bにおける発熱がほとんどなく、第二弱発熱領域232bにおける温度リップルがほとんど生じない。一方で、第二弱発熱領域232bにおける加熱がほとんどないため、第二弱発熱領域232bと第二強発熱領域231bの境目での温度落ち込みが急峻となる。このため、端部ヒータ23aと中央ヒータ23bともに非パーシャルヒータを用いた場合と比べて、端部ヒータ23aと中央ヒータ23bのそれぞれの強発熱領域231の境目に対応する位置で定着ベルト21が十分に加熱されず、用紙Pが十分に加熱定着されない場合がある。つまり、組み立ての誤差や部品の寸法のばらつき等により、軸方向において、端部ヒータ23aと中央ヒータ23bの第二強発熱領域231bのつなぎ目に隙間が生じると、この部分の加熱量がそれ以外の部分に比べて大きく低下してしまうという問題がある。
上記の端部ヒータ23aと中央ヒータ23bの強発熱領域231のつなぎ目部分における加熱量の低下や、用紙Pの端部に対応する位置における定着ベルト21の温度上昇の問題等を解決するために、本実施形態では、ニップ形成部材24に均熱部材が設けられる。以下、ニップ形成部材24の構成について説明する。
図2に示すように、ニップ形成部材24は、低熱伝導部材としての基材51と、基材51よりも定着ニップNの側に設けられた高熱伝導部材としての均熱部材41からなる。
均熱部材41は、基材51よりも熱伝導率の高い部材によって構成され、定着ベルト21の側(図2の右側)に配置される。均熱部材41が定着ベルト21に軸方向にわたって当接することにより、定着ベルト21表面の熱量を軸方向に移動させ、定着ベルト21の表面温度を均一化させる事ができる。
均熱部材41は、例えば、カーボンナノチューブ(熱伝導率:3000〜5500W/mK)、グラファイトシート(熱伝導率:700〜1750W/mK)、銀(熱伝導率:420W/mK)、銅(熱伝導率:398W/mK)、アルミニウム(熱伝導率:236W/mK)、SECC(電気亜鉛メッキ鋼)等を用いる事ができる。均熱部材41の熱伝導率は236W/mK以上であることが好ましい。また、基材51は、耐熱性に富む樹脂材料、例えばポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等で形成されている。
本実施形態では、図10に示すように、均熱部材41の幅方向外側端部41outを、均熱部材41全体の幅方向の最も外側に位置する端部ではなく、均熱部材41の両端部側に形成された開口部41aの幅方向内側端部の位置に規定している。以下、このように規定している理由について説明する。
均熱部材41に設けられた各開口部41aは、均熱部材41をニップ形成部材24の基材51に対して位置決めするためのものである。各開口部41aに対して基材51に設けられた位置決め部としての突起が挿入されることで、基材51に対する均熱部材41の幅方向の位置決めがなされる。
開口部41aが形成された箇所では、均熱部材41が定着ベルト21に対して接触する面積が少なくなるため、開口部41aが形成された箇所から幅方向外側への熱伝導機能は低くなる。特に、本実施形態では、図10に示すように、開口部41aの用紙搬送方向長さ(記録媒体搬送方向長さ)L2が均熱部材41の用紙搬送方向長さ(記録媒体搬送方向長さ)L1の半分以上であるため、開口部41aから幅方向外側への熱伝導量は少なくなる。すなわち、本実施形態では、均熱部材41の幅方向領域のうち、幅方向中央位置から開口部41aに至るまでの領域Qが、主に熱伝導部として機能が期待される部分である。これに対し、開口部41aから幅方向外側の領域Zは、熱伝導機能を多少有するものの前記熱伝導部に比べて熱伝導機能が低く、主に位置決め部として機能のために設けられた部分である。
このため、本実施形態では、均熱部材41を構成する部分のうち、均熱部材としての本来の機能が期待される熱伝導部(領域Q)の幅方向外側端部、すなわち開口部41aの幅方向内側端部を、均熱部材41の幅方向外側端部41outと規定している。なお、本実施形態とは異なり、開口部41aの用紙搬送方向長さL2が均熱部材41の用紙搬送方向長さL1の半分未満である場合は、開口部41aから幅方向外側の部分(領域Z)も主に熱伝導部として機能するものと判断する。従って、この場合は、開口部41aから幅方向外側の部分(領域Z)も含めた均熱部材41全体における幅方向外側端部を均熱部材41の幅方向外側端部41outと規定する。
また、図11に示すように、均熱部材41は、その幅方向外側端部側に上記のような位置決め部としての開口部を有しない構成であってもよい。この場合、均熱部材41は、その幅方向全体に渡って定着ベルト21に対する接触幅(用紙搬送方向の幅)が同じとなるため、全体が熱伝導部として機能する。従って、この場合は、図11に示すように、均熱部材41全体における幅方向外側端部を上記均熱部材41の幅方向外側端部41outと規定する。
また、ニップ形成部材24の構成として、上記の様な基材51と均熱部材41の2層構成の他、3層構成のニップ形成部材24とすることもできる。以下、この3層構成のニップ形成部材24について説明する。
ニップ形成部材24は、図12および図13に示す様に、高熱伝導部材としての均熱部材41と、吸熱部材42,43と、樹脂部材44および低熱伝導部材としての基材51を有する。
吸熱部材42、43は、基材51よりも熱伝導率の高い部材によって構成され、例えば、均熱部材41の材料として使用される、前述のカーボンナノチューブなどを使用する事ができる。吸熱部材43は、後述する端部温度上昇の問題が発生する位置に対応して設けられる。吸熱部材42、43を設ける事により、ニップ形成部材24の厚み方向(図12の上下方向で図2の左右方向)の熱移動を促進することができる。これにより、軸方向において、吸熱部材43が設けられている位置では、基材51が設けられている位置と比較して、熱量が厚み方向へ移動しやすくなり、定着ベルト21のこの位置での温度上昇を抑制する事ができる。吸熱部材42,43は、均熱部材41の熱容量不足を補うものであるが、厚みを大きくしすぎる事により、熱移動が過剰になる場合もあるため、図12の構成よりも軸方向に長く設ける事もできるし、定着ベルト21の周方向に飛び出す構成としてもよい。
樹脂部材44は、均熱部材41と吸熱部材43の間に設けられる、均熱部材41および吸熱部材42,43よりも熱伝導率の低い部材である。吸熱部材42,43を設ける事により、厚み方向へ熱を移動させる事ができるが、熱移動が過剰になり、特に軸方向の吸熱部材42が設けられた部分で、定着ベルト21の温度が低くなり過ぎてしまう。そこで、樹脂部材44を均熱部材41と吸熱部材43の間に設けることにより、厚み方向の熱移動が過剰にならない様に抑制している。
以上の様に、ニップ形成部材24は、熱伝導率の異なる複数の部材が厚み方向に設けられている。
図13に示す様に、定着ベルト21の軸方向において、二つの吸熱部材43によって囲まれた基材51の幅が、矢印Aの方向へ通紙される最小の大きさの用紙PA(例えばA6サイズの用紙)の幅と略同じに設けられている。
図14は、3層のニップ形成部材24とハロゲンヒータ23の位置関係について説明する図である。
図14に示す様に、軸方向において、均熱部材41および吸熱部材42は、ハロゲンヒータ23の強発熱領域231が設けられる発熱幅Eの全域にわたって設けられる。また、軸方向において、吸熱部材43は、端部ヒータ23aの第一強発熱領域231aと、中央ヒータ23bの第二強発熱領域231bのつなぎ目の位置を中心に設けられる。これにより、前述のつなぎ目部分での加熱量の急激な低下を抑制する事ができる。
通紙される用紙Pよりも定着ベルト21の軸方向の外側では、定着ベルト21の熱量が用紙Pに移動せず、定着ベルト21の温度が上昇する、いわゆる端部温度上昇の問題が発生する。
ここで、端部温度上昇が発生する定着ベルト21の非通紙領域は、最小幅の用紙PAが通紙される際に最大幅となり、この最大非通過領域としての最大非通紙領域(用紙PAの幅よりも外側で、発熱幅Eの内側の領域)の全域にわたって、均熱部材41が設けられる。これにより、非通紙領域の熱量が軸方向および厚み方向へ移動して端部温度上昇の問題を緩和する事ができる。
また均熱部材41の通紙方向両端部に、上方へ突出する枠部が軸方向にわたって形成されていてもよい。これにより、均熱部材41の断面はU字状となり、均熱部材41上に載置される基材51、樹脂部材44、吸熱部材42、吸熱部材43を確実に受容することができる。また、均熱部材41の上面に突起を形成し、基材51、樹脂部材44、吸熱部材43等に該突起が嵌合する穴部を形成してもよい。
このとき、吸熱部材42と吸熱部材43を1つの部材として製造せず、別個に製造することでコストの削減になる。これを1つの部材として製造する場合、基材51を受容するための凹部を削り加工により形成する必要があるからである。
また、ニップ形成部材24を構成する各部材の厚みとしては、ニップ幅10mm程度の時に、均熱部材41は0.2〜0.6mm、吸熱部材42は1.8〜6.0mm、吸熱部材43は1.0〜2.0mm、樹脂部材44は0.5〜1.5mm、基材51は1.5〜3.5mmであると好ましい。しかし、これらの範囲に限らない。
図15は、軸方向に見たニップ部出口部分の概略断面図である。
図15(a)の例では、ニップ形成部材24の基材51のニップ部側に設けられた均熱部材41のニップ出口側に、下方に突出した突出部45が形成されている。このように突出部45を形成することで、ニップ部Nでの定着後の用紙Pを定着ベルト21から浮かすことができ、分離性が高められる。また、ニップ形成部材24の周囲には低摩擦シート59が巻きつけられており、具体的には、低摩擦シート59は均熱部材41、基材51及び吸熱部材42を覆っている。
図15(b)の例では、均熱部材41のニップ出口側に下方に突出した突出部45が形成され、突出部45の上部46はニップ形成部材24の基材51の側面に沿って上方に延在している。これにより、定着ベルト21や用紙Pから一定の力を受ける均熱部材41が周方向へずれ難くなる。また、ニップ形成部材24の周囲には低摩擦シート59が巻きつけられており、具体的には、低摩擦シート59は均熱部材41を覆っており、その端部は基材51と上部46の間に挟まれ、固定されている。
次に、図16を用いて、本発明の第二実施形態の定着装置について、ニップ形成部材24の構成を説明する。図16に示す様に、本実施形態では、軸方向において、端部ヒータ23aの第一弱発熱領域232aの被保持部235およびサポータが設けられる位置において、吸熱部材42に基材51の側への突出部421を設け、当該部分における吸熱部材42の厚みを大きくする。これにより、端部ヒータ23aの第一弱発熱領域232aにおいて、発熱量の大きい当該部分に対応して吸熱部材42の厚みを大きくすることができるので、定着ベルト21の軸方向の温度をより均一化する事ができる。
また、本実施形態の構成では、樹脂部材44をニップ形成部材24の全幅にわたって設けた。また、突出部421の突出分を吸収するために、突出部421に対応する位置で、樹脂部材44の厚みを薄くする、一部を切り抜くなどして、その部分に空隙を設けた。
本実施形態では、吸熱部材42の厚みを大きくするとしたが、軸方向において、被保持部235およびサポータが設けられる位置における均熱部材41の厚みを厚くすることにより、当該位置における熱容量を大きくして、定着ベルト21の軸方向の温度の均一化を図ってもよい。特に、均熱部材41は、そのニップ入口においてストレート形状、ニップ出口に向かって傾斜した形状とすると、用紙Pの搬送性を確保し、用紙Pのしわ防止に効果的である。
次に、図17を用いて、本発明の第三実施形態の定着装置のハロゲンヒータ23の構成について説明する。図17に示す様に、本実施形態では、中央ヒータ23bに、端部ヒータ23aと同じく非パーシャルのヒータが用いられ、軸方向に一定間隔で、サポータ236が設けられており、端部ヒータ23aと中央ヒータ23bのサポータ236が、軸方向において交互に設けられている。
具体的には、中央ヒータ23bのサポータ236は、端部ヒータ23aの素線部234の位置に設けられ、また逆に、端部ヒータ23aの被保持部235およびサポータ236は、中央ヒータ23bのサポータ236が配置されていない位置(サポータ236が配置される位置よりも相対的に発熱量の小さい位置)に設けられている。これにより、それぞれのヒータの温度分布が山となる位置と谷になる位置を重ね合わせ、定着ベルト21の軸方向の加熱量(定着ベルト21の軸方向の温度分布)をより均一化する事ができる。特に、一方のヒータの被保持部235(およびサポータ236)の数を奇数とし、他方のヒータの被保持部235(およびサポータ236)の数を偶数にする事により、交互に一方の温度分布の山と他方の温度分布の谷の数を合わせる事ができる。なお、図17では、軸方向の中央位置のみを用いて説明したが、軸方向の端部側でも同様の関係になっている。また、軸方向中央および端部のいずれかの位置でサポータが交互に配置さていてもよい。
本実施形態においても、温度センサ28は、端部ヒータ23aの第一弱発熱領域232aの領域内で、第一弱発熱領域232aのサポータ236とサポータ236の中間位置(被保持部235と被保持部235の中間位置)であって、端部ヒータ23aの幅方向の中央位置付近(定着ベルト21の中央位置付近)に配置される。ハロゲンヒータ23の幅方向中央側において、中央ヒータ23bの温度リップルは、端部ヒータ23aの温度リップルに比べて小さいため、温度センサ28を上記配置とする事により、温度センサ28を定着ベルト21の表面温度が最も低くなる位置に配置する事ができる。
また、温度センサ28を端部ヒータ23aの中央付近に設けるため、端部ヒータ23aの第一弱発熱領域232aにおける被保持部235(およびサポータ236)の数を偶数にする。
図では、軸方向の中央位置における被保持部235のみを示したが、端部位置においても、同様に被保持部235が交互に設けられる。
次に、図18を用いて第四実施形態の定着装置の構成を説明する。図18はニップ部構成の概略分解斜視図である。
本実施形態では、上記実施形態と同様の長手方向位置に、均熱部材41と吸熱部材42の間に吸熱部材43を設けているが、吸熱部材43は基材51に形成された凹部52に嵌めこまれている。よって、本例では、ニップ形成部材24は、基材51、均熱部材41、吸熱部材42及び吸熱部材43を有する。凹部52は基材51を貫通しておらず、凹部52の厚みは凹部が形成されていない基材51の部分の厚みより薄い。均熱部材41から吸熱部材43を介する吸熱部材42への熱移動量を調節するため、凹部52の厚みは適宜選択することができる。さらに、吸熱すべき熱量の大きさに応じて凹部52の通紙方向の幅も適宜選択することができる。吸熱すべき熱量が大きい場合には凹部52の通紙方向の幅を大きく、吸熱すべき熱量が小さい場合には凹部52の通紙方向の幅を小さくすればよい。吸熱部材43と基材51の上面は面一になっている。凹部52は基材51を貫通していて、凹部52の厚みは凹部が形成されていない基材51の部分の厚みと等しくてもよい。
次に、図19,20を用いて、第五実施形態の定着装置の構成を説明する。図19は、ニップ部側から見たニップ部構成の概略分解斜視図、図20は、ステー側から見たニップ部構成の概略分解斜視図である。
以下では主に、本実施形態の他の実施形態と異なる部分を説明する。先ず、均熱部材41の断面がU字状になるように均熱部材41の通紙方向両端部が上方に折り曲げられている。これにより、均熱部材41上に載置される基材51、樹脂部材44、吸熱部材42、吸熱部材43を確実に受容することができる。また、均熱部材41の通紙方向両端部の上部は鋸歯状部56を有する。鋸歯状部56は長手方向に連続的に形成されておらず、鋸歯状部の無い平坦部が所要の間隔で形成されている。組み立てられたニップ形成部材24の周面に巻きつけられる低摩擦シートは鋸歯状部56によって確実に保持され、定着ベルト21の回転に伴いずれにくくなる。平坦部は低摩擦シートを取り付けるためのジグが当接する箇所である。図示の例では、均熱部材41の通紙方向両端部の上部に鋸歯状部56が形成されているが、鋸歯状部56はニップ入口部(図中下方の端部)にのみ形成されてもよい。定着ベルト21はニップ入口部からニップ出口部に向かって回転するため、低摩擦シートがニップ入口部側でしっかり固定されていればニップ出口部は必ずしも鋸歯状部56で固定される必要がないからである。
また、吸熱部材42,43に穴53,54,55が形成され、基材51及び樹脂部材44はその内面にこれら穴に挿入される突起57,58(図20)を備えている。穴53は、樹脂部材44の突起57が挿入して吸熱部材43を保持するためのものであり、穴54は、基材51の突起57が挿入して吸熱部材42を保持するためのものである。穴55には基材51の突起58が挿入して吸熱部材42が保持されるだけでなく、該突起58は他の突起57より長く形成されており、ステー25の嵌合穴に嵌合し、ニップ形成部材24全体をステー25に固定する機能を有する。
均熱部材41のニップ出口側には下方に突出した突出部45が形成されている。具体的には、均熱部材41は、1枚の銅板で形成され、ニップ入口側からニップ出口側にかけて(図中下方から上方に)平坦な形状を有するが、均熱部材41はニップ出口側では加圧ローラ22側に屈曲され、屈曲部が突出部45として形成されている。
以上で説明した実施形態と異なる各実施形態の定着装置について以下に説明する。なお、以下の説明では、以上で示したハロゲンヒータの強発熱領域を主発熱領域、弱発熱領域を非主発熱領域、強発熱部を発熱部、弱発熱部を非発熱部と呼ぶ。
図22に示す第6実施形態の定着装置では、ハロゲンヒータ23は、端部加熱源としての端部ヒータ23aと、中央部加熱源としての中央ヒータ23bを有する。
端部ヒータ23aは、例えばタングステンからなる一本の素線(以下、フィラメント素線とも呼ぶ。)が、例えば石英ガラスからなる、発光管としてのガラス管233の中に設けられたフィラメントランプである。
端部ヒータ23aは、ハロゲンヒータ23の軸方向(前述の定着ベルト21の軸方向と同方向である。以下、単に軸方向とも呼ぶ。)の両端部側に、主発熱領域231を有する。主発熱領域231は、フィラメント素線がコイル状に密に巻回されてなる発熱部(発光部)としての密巻部237からなる。
端部ヒータ23aは、軸方向の中央部に、非主発熱領域232を有する。非主発熱領域232は、フィラメント素線がそのままの状態で直線状に設けられ、発熱部よりも素線が疎に設けられた、非発熱部(非発光部)としての素線部234と、素線部234の間に一定の間隔で設けられる、発熱部としての被保持部235と、被保持部235上に設けられる、保持部としてのサポータ236を有する。素線部234は、フィラメント素線が螺旋状に延びる形状であってもよい。
中央ヒータ23bは、軸方向の中央部に主発熱領域231を有し、両端部に非主発熱領域232を有する。中央ヒータ23bは、後述するパーシャルヒータであり、被保持部235やサポータ236が設けられていない。
端部ヒータ23aのサポータ236は、例えばタングステンからなる一本の素線(以下、サポータ素線とも呼ぶ。)によって形成される環状部分で、ガラス管233の内周面に当接する。被保持部235は、フィラメント素線が密に巻回されてなる部分で、この被保持部235にサポータ236が取り付けられる。これにより、端部ヒータ23a内部のフィラメント素線が、間接的にガラス管233に保持され、ガラス管233の内部での形状を維持する事ができる。
図22では、便宜上、端部ヒータ23aの主発熱領域231に設けられるサポータ236の記載を省略しているが、非主発熱領域232と同様、主発熱領域231においても、サポータ236が等間隔に設けられ、サポータ236により、主発熱領域231におけるフィラメント素線の形状を維持する事ができる。
前述の通り、端部ヒータ23aは、フィラメント素線が密に巻回された密巻部237を有する主発熱領域231が定着ベルト21を主に加熱する。しかしながら、非主発熱領域232に設けられた被保持部235のフィラメント素線等も発熱しており、少なからず定着ベルト21を加熱する。
つまり、非主発熱領域232は、素線部234と、フィラメント素線が密に巻回され、サポータ236に保持された被保持部235とからなっており、フィラメント素線の密度が軸方向に一定ではない。このため、非主発熱領域232における発熱量は、その軸方向に沿って変化し、定着ベルト21の加熱量も一定ではない。以下、非主発熱領域232における軸方向の発熱量の違い(定着ベルト21の加熱量の違い)について詳しく説明する。
図23は、端部ヒータ23aの非主発熱領域232が配置された軸方向の位置における、定着ベルト21の軸方向の温度Tの分布を示す図で、図23(b)の横軸が定着ベルト21の軸方向の各位置を示し、縦軸が定着ベルト21の温度Tを示す。
図23(a)および図23(b)に示す様に、非主発熱領域232の軸方向において、被保持部235では、フィラメント素線が密に巻回され、サポータ236が取り付けられているため、当該部分に対応する定着ベルト21の温度Tは、素線部234に対応する定着ベルト21の温度Tに比べて高くなっている。このため、非主発熱領域232の軸方向において、定着ベルト21の温度T(つまり、定着ベルト21の加熱量)には温度差T1(以下、温度リップルT1とも呼ぶ)が生じ、定着ベルト21の表面温度は図23の波線の様な温度分布となる。
ここで、図24(a)に示す様に、非主発熱領域232に設けられるサポータ236および被保持部235の数を減らすことにより、非主発熱領域232における捨て巻の量を減らす事ができる。これにより、非主発熱領域232からの余分な発熱量を減らす事ができ、装置の省エネルギー化につながる。
しかし一方で、図24(b)に示す様に、捨て巻を減らすことにより、捨て巻同士(サポータ236同士、あるいは被保持部235同士)の間隔が大きくなって素線部234における温度落ち込みが大きくなり、被保持部235と素線部234の温度差が広がるため、温度リップルT1は、図23(b)と比較して大きくなる。
ここで、本実施形態の定着装置20では、定着ベルト21の回転方向において、定着ニップNの下流端よりも下流側で、ハロゲンヒータ23の加熱位置α1の上流側近傍に設けられた温度センサ28(図21参照)により、ハロゲンヒータ23によって加熱される前の定着ベルト21の表面温度を検知し、その結果に基づいて、ハロゲンヒータ23による定着ベルト21の加熱量を決定している。
しかし、前述の様に温度リップルT1が大きくなると、温度センサ28が定着ベルト21のいずれの位置を検知するかによって、検知される表面温度が大きく異なり、適切な加熱量を設定する事が困難になる。例えば、定着ベルト21の表面温度が高い位置を温度センサ28が検知すると、ハロゲンヒータ23による加熱量が、適切な加熱量よりも小さく設定され、定着ベルト21が十分に加熱されずにコールドオフセットの原因となる。また、ハロゲンヒータ23による加熱量を大きくすることにより、コールドオフセットを防止する事はできるが、余分な加熱によるエネルギーの無駄が生じてしまい、装置の省エネルギー性を犠牲にしてしまう。
そこで、本実施形態では、図25に示す様に、定着ベルト21の幅方向において、温度センサ28を、端部ヒータ23aの非主発熱領域232におけるサポータ236とサポータ236の中間位置(被保持部235と被保持部235の中間位置)で、端部ヒータ23aの中央位置付近(定着ベルト21の中央位置付近)に配置する。
サポータ236とサポータ236の中間位置は、定着ベルト21の加熱量が小さくなり、図23等で示した温度曲線の谷間の位置である。本実施形態では、定着装置20に通紙される用紙Pは、軸方向の中央位置を基準として、その軸方向の通紙位置が設定されているため、端部ヒータ23aの中央位置付近は、通紙される用紙Pの幅方向の中央位置付近であり、定着ベルト21表面の熱量が用紙Pに流れ込み、最もその表面温度が低くなりやすい位置である。
この様に、定着ベルト21の軸方向において、定着ベルト21の表面温度が最も低くなりやすい位置に配置された温度センサ28により、定着ベルト21の温度を検知する。そして、定着ベルト21の軸方向に生じる温度リップルT1をあらかじめ実測などによって求め、この温度リップルT1により、検知された温度の位置でも十分な定着温度が得られ、かつ、最高温度の位置でも定着温度が大きくなり過ぎない温度になる様に、ハロゲンヒータ23の加熱量を決定する。
以上の様に、定着ベルト21の最低温度を基準に加熱量を決定する事により、定着ベルト21の最低温度の位置において十分な定着温度とする事を保証できるので、コールドオフセットの問題が生じない。また、コールドオフセットが生じない様に余分な加熱をする必要もないので、装置の省エネルギー化を実現する事ができる。
なお、定着ベルト21の加熱位置α1は、遮蔽部材27等によって遮蔽される事無くハロゲンヒータ23によって加熱することができる位置で、ハロゲンヒータ23に最も近い定着ベルト21表面上の位置を指す。
温度センサ28を上記の様に配置する事により、定着ニップNで用紙Pによって熱量を奪われた後で、ハロゲンヒータ23によって加熱される直前の定着ベルト21の表面温度を検知することができる。これにより、ハロゲンヒータ23の定着ベルト21に対する必要な加熱量をより適切に設定する事ができる。
ハロゲンヒータ23による必要な加熱量を検知するためには、より好ましくは加熱の直前の位置である本実施形態の位置に温度センサ28を配置する事が好ましいが、定着ニップNの下流側で、加熱位置α1の上流側であれば、いずれの位置にも温度センサ28を配置する事ができる。ただし、本実施形態では、加熱位置α1の近傍でハロゲンヒータ23の近傍に設ける事により、定着装置20の安全装置としての機能を果たす事ができる。つまり、ハロゲンヒータ23による加熱量が何らかの不具合によって大きくなり過ぎた場合に、温度センサ28がその異常を検知し、装置の電源を落とす等の処理をすることができる。
本実施形態では、軸方向において、端部ヒータ23aの中央位置付近に温度センサ28を配置するとしたが、温度センサ28の配置は必ずしもこれに限らず、定着装置20に通紙される用紙Pの中央位置付近であればよい。さらに、通紙される用紙Pの中央位置付近に温度センサ28を配置する事が好ましいが、それ以外の位置であっても、サポータ236とサポータ236の間に配置する事により、本発明の効果を得る事ができる。例えば、用紙Pの通紙位置が端部揃えで設定される定着装置20においては、用紙Pの中央位置は通紙される用紙Pの大きさによって異なるため、温度センサ28の配置を、いずれかの用紙Pの中央位置付近にする等、適宜変更が可能である。
中央ヒータ23bは、軸方向の中央に主発熱領域231を有する。中央ヒータ23bは、サポータ236に代えて、フィラメント素線の形状維持のために銅線を設けたパーシャルヒータである。当該銅線は中央ヒータ23bの軸方向にわたって設けられ、螺旋状に設けられたフィラメント素線が銅線に巻回されることで、フィラメント素線の形状を維持することができる。
パーシャルヒータにおいては、被保持部235が非パーシャルヒータに比べて少ないため、非主発熱領域232における発熱がほとんどない。このため、非主発熱領域232における温度リップルがほとんど生じない。一方で、非主発熱領域232における加熱がほとんどないため、非主発熱領域232と主発熱領域231の境目での温度落ち込みが急峻となる。このため、端部ヒータ23aと中央ヒータ23bともに非パーシャルヒータを用いた場合と比べて、端部ヒータ23aと中央ヒータ23bのそれぞれの主発熱領域231の境目に対応する位置で定着ベルト21が十分に加熱されず、用紙Pが十分に加熱定着されない場合がある。つまり、組み立ての誤差や部品の寸法のばらつき等により、軸方向において、端部ヒータ23aと中央ヒータ23bの主発熱領域231のつなぎ目に隙間が生じると、この部分の加熱量がそれ以外の部分に比べて大きく低下してしまうという問題がある。
上記の端部ヒータ23aと中央ヒータ23bの主発熱領域231のつなぎ目部分における加熱量の低下や、用紙Pの端部に対応する位置における定着ベルト21の温度上昇の問題等を解決するために、本実施形態では、ニップ形成部材24に均熱部材が設けられる。以下、ニップ形成部材24の構成について説明する。
ニップ形成部材24は、図12および図13に示す様に、高熱伝導部材としての均熱部材41と、吸熱部材42,43と、樹脂部材44および低熱伝導部材としての基材51を有する。
均熱部材41は、基材51よりも熱伝導率の高い部材によって構成され、定着ベルト21の側(図21の右側)に配置される。均熱部材41が定着ベルト21に軸方向にわたって当接することにより、定着ベルト21表面の熱量を軸方向に移動させ、定着ベルト21の表面温度を均一化させる事ができる。
吸熱部材42、43は、基材51よりも熱伝導率の高い部材によって構成される。吸熱部材43は、後述する端部温度上昇の問題が発生する位置に対応して設けられる。吸熱部材42、43を設ける事により、ニップ形成部材24の厚み方向(図12の上下方向で図21の左右方向)の熱移動を促進することができる。これにより、軸方向において、吸熱部材43が設けられている位置では、基材51が設けられている位置と比較して、熱量が厚み方向へ移動しやすくなり、定着ベルト21のこの位置での温度上昇を抑制する事ができる。吸熱部材42,43は、均熱部材41の熱容量不足を補うものであるが、厚みを大きくしすぎる事により、熱移動が過剰になる場合もあるため、図12の構成よりも軸方向に長く設ける事もできるし、定着ベルト21の周方向に飛び出す構成としてもよい。
樹脂部材44は、均熱部材41と吸熱部材43の間に設けられる、均熱部材41および吸熱部材42,43よりも熱伝導率の低い部材である。吸熱部材42,43を設ける事により、厚み方向へ熱を移動させる事ができるが、熱移動が過剰になり、特に軸方向の吸熱部材42が設けられた部分で、定着ベルト21の温度が低くなり過ぎてしまう。そこで、樹脂部材44を均熱部材41と吸熱部材43の間に設けることにより、厚み方向の熱移動が過剰にならない様に抑制している。
以上の様に、ニップ形成部材24は、熱伝導率の異なる複数の部材が厚み方向に設けられている。
均熱部材41および吸熱部材42,43は、例えば、カーボンナノチューブ、グラファイトシート、銀、銅、アルミニウム、SECC(電気亜鉛メッキ鋼)等を用いる事ができる。また、基材51は、耐熱性に富む樹脂材料、例えばポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等で形成されている。
図13に示す様に、定着ベルト21の軸方向において、二つの吸熱部材43によって囲まれた基材51の幅が、矢印Aの方向へ通紙される最小の大きさの用紙PA(例えばA6サイズの用紙)の幅と略同じに設けられている。
図26は、ニップ形成部材24とハロゲンヒータ23の位置関係について説明する図である。
図26に示す様に、軸方向において、均熱部材41および吸熱部材42は、ハロゲンヒータ23の主発熱領域231が設けられる発熱幅Eの全域にわたって設けられる。また、軸方向において、吸熱部材43は、端部ヒータ23aの主発熱領域231と、中央ヒータ23bの主発熱領域231のつなぎ目の位置を中心に設けられる。これにより、前述のつなぎ目部分での加熱量の急激な低下を抑制する事ができる。
通紙される用紙Pよりも定着ベルト21の軸方向の外側では、定着ベルト21の熱量が用紙Pに移動せず、定着ベルト21の温度が上昇する、いわゆる端部温度上昇の問題が発生する。
ここで、端部温度上昇が発生する定着ベルト21の非通紙領域は、最小幅の用紙PAが通紙される際に最大幅となり、この最大非通過領域としての最大非通紙領域(用紙PAの幅よりも外側で、発熱幅Eの内側の領域)の全域にわたって、均熱部材41が設けられる。これにより、非通紙領域の熱量が軸方向および厚み方向へ移動して端部温度上昇の問題を緩和する事ができる。
また均熱部材41の通紙方向両端部に、上方へ突出する枠部が軸方向にわたって形成されていてもよい。これにより、均熱部材41の断面はU字状となり、均熱部材41上に載置される基材51、樹脂部材44、吸熱部材42、吸熱部材43を確実に受容することができる。また、均熱部材41の上面に突起を形成し、基材51、樹脂部材44、吸熱部材43等に該突起が嵌合する穴部を形成してもよい。
このとき、吸熱部材42と吸熱部材43を1つの部材として製造せず、別個に製造することでコストの削減になる。これを1つの部材として製造する場合、基材51を受容するための凹部を削り加工により形成する必要があるからである。
また、ニップ形成部材24を構成する各部材の厚みとしては、ニップ幅10mm程度の時に、均熱部材41は0.2〜0.6mm、吸熱部材42は1.8〜6.0mm、吸熱部材43は1.0〜2.0mm、樹脂部材44は0.5〜1.5mm、基材51は1.5〜3.5mmであると好ましい。しかし、これらの範囲に限らない。
図15は、軸方向に見たニップ部出口部分の概略断面図である。
図15(a)の例では、ニップ形成部材24の基材51のニップ部側に設けられた均熱部材41のニップ出口側に、下方に突出した突出部45が形成されている。このように突出部45を形成することで、ニップ部Nでの定着後の用紙Pを定着ベルト21から浮かすことができ、分離性が高められる。また、ニップ形成部材24の周囲には低摩擦シート59が巻きつけられており、具体的には、低摩擦シート59は均熱部材41、基材51及び吸熱部材42を覆っている。
図15(b)の例では、均熱部材41のニップ出口側に下方に突出した突出部45が形成され、突出部45の上部46はニップ形成部材24の基材51の側面に沿って上方に延在している。これにより、定着ベルト21や用紙Pから一定の力を受ける均熱部材41が周方向へずれ難くなる。また、ニップ形成部材24の周囲には低摩擦シート59が巻きつけられており、具体的には、低摩擦シート59は均熱部材41を覆っており、その端部は基材51と上部46の間に挟まれ、固定されている。
次に、図27を用いて、本発明の第七実施形態の定着装置について、ニップ形成部材24の構成を説明する。図27に示す様に、本実施形態では、軸方向において、端部ヒータ23aの非主発熱領域232の被保持部235およびサポータ236が設けられる位置において、吸熱部材42に基材51の側への突出部421を設け、当該部分における吸熱部材42の厚みを大きくする。これにより、端部ヒータ23aの非主発熱領域232において、発熱量の大きい当該部分に対応して吸熱部材42の厚みを大きくすることができるので、定着ベルト21の軸方向の温度をより均一化する事ができる。
また、本実施形態の構成では、樹脂部材44をニップ形成部材24の全幅にわたって設けた。また、突出部421の突出分を吸収するために、突出部421に対応する位置で、樹脂部材44の厚みを薄くする、一部を切り抜くなどして、その部分に空隙を設けた。
本実施形態では、吸熱部材42の厚みを大きくするとしたが、軸方向において、被保持部235およびサポータ236が設けられる位置における均熱部材41の厚みを厚くすることにより、当該位置における熱容量を大きくして、定着ベルト21の軸方向の温度の均一化を図ってもよい。特に、均熱部材41は、そのニップ入口においてストレート形状、ニップ出口に向かって傾斜した形状とすると、用紙Pの搬送性を確保し、用紙Pのしわ防止に効果的である。
次に、図28を用いて、本発明の第八実施形態の定着装置のハロゲンヒータ23の構成について説明する。図28に示す様に、本実施形態では、中央ヒータ23bに、端部ヒータ23aと同じく非パーシャルのヒータが用いられ、軸方向に一定間隔で、被保持部235およびサポータ236が設けられる。
中央ヒータ23bの被保持部235およびサポータ236は、端部ヒータ23aの素線部234の位置に設けられ、また逆に、端部ヒータ23aの被保持部235およびサポータ236は、中央ヒータ23bの素線部234の位置に設けられている。つまり、互いの被保持部235およびサポータ236が軸方向に交互に設けられる。これにより、それぞれのヒータの温度分布が山となる位置と谷になる位置を重ね合わせ、定着ベルト21の軸方向の加熱量(定着ベルト21の軸方向の温度分布)をより均一化する事ができる。特に、一方のヒータの被保持部235(およびサポータ236)の数を奇数とし、他方のヒータの被保持部235(およびサポータ236)の数を偶数にする事により、交互に一方の温度分布の山と他方の温度分布の谷の数を合わせる事ができる。
本実施形態においても、温度センサ28は、端部ヒータ23aの非主発熱領域232の領域内で、サポータ236とサポータ236の中間位置(被保持部235と被保持部235の中間位置)であって、端部ヒータ23aの幅方向の中央位置付近(定着ベルト21の中央位置付近)に配置される。ハロゲンヒータ23の幅方向中央側において、中央ヒータ23bの温度リップルは、端部ヒータ23aの温度リップルに比べて無視できるほど小さいため、温度センサ28を上記配置とする事により、温度センサ28を定着ベルト21の表面温度が最も低くなる位置に配置する事ができる。
また、温度センサ28を端部ヒータ23aの中央付近に設けるため、端部ヒータ23aの非主発熱領域232における被保持部235(およびサポータ236)の数を偶数にする。
図では、軸方向の中央位置における被保持部235およびサポータ236のみを示し、端部位置における記載を省略したが、端部位置においても、同様に被保持部235およびサポータ236が交互に設けられる。
次に、図18を用いて第九実施形態の定着装置の構成を説明する。図18はニップ部構成の概略分解斜視図である。
本実施形態では、上記実施形態と同様の長手方向位置に、均熱部材41と吸熱部材42の間に吸熱部材43を設けているが、吸熱部材43は基材51に形成された凹部52に嵌めこまれている。よって、本例では、ニップ形成部材24は、基材51、均熱部材41、吸熱部材42及び吸熱部材43を有する。凹部52は基材51を貫通しておらず、凹部52の厚みは凹部が形成されていない基材51の部分の厚みより薄い。均熱部材41から吸熱部材43を介する吸熱部材42への熱移動量を調節するため、凹部52の厚みは適宜選択することができる。さらに、吸熱すべき熱量の大きさに応じて凹部52の通紙方向の幅も適宜選択することができる。吸熱すべき熱量が大きい場合には凹部52の通紙方向の幅を大きく、吸熱すべき熱量が小さい場合には凹部52の通紙方向の幅を小さくすればよい。吸熱部材43と基材51の上面は面一になっている。凹部52は基材51を貫通していて、凹部52の厚みは凹部が形成されていない基材51の部分の厚みと等しくてもよい。
次に、図19,20を用いて、第十実施形態の定着装置の構成を説明する。図19は、ニップ部側から見たニップ部構成の概略分解斜視図、図20は、ステー側から見たニップ部構成の概略分解斜視図である。
以下では主に、本実施形態の他の実施形態と異なる部分を説明する。先ず、均熱部材41の断面がU字状になるように均熱部材41の通紙方向両端部が上方に折り曲げられている。これにより、均熱部材41上に載置される基材51、樹脂部材44、吸熱部材42、吸熱部材43を確実に受容することができる。また、均熱部材41の通紙方向両端部の上部は鋸歯状部56を有する。鋸歯状部56は長手方向に連続的に形成されておらず、鋸歯状部の無い平坦部が所要の間隔で形成されている。組み立てられたニップ形成部材24の周面に巻きつけられる低摩擦シートは鋸歯状部56によって確実に保持され、定着ベルト21の回転に伴いずれにくくなる。平坦部は低摩擦シートを取り付けるためのジグが当接する箇所である。図示の例では、均熱部材41の通紙方向両端部の上部に鋸歯状部56が形成されているが、鋸歯状部56はニップ入口部(図中下方の端部)にのみ形成されてもよい。定着ベルト21はニップ入口部からニップ出口部に向かって回転するため、低摩擦シートがニップ入口部側でしっかり固定されていればニップ出口部は必ずしも鋸歯状部56で固定される必要がないからである。
また、吸熱部材42,43に穴53,54,55が形成され、基材51及び樹脂部材44はその内面にこれら穴に挿入される突起57,58(図20)を備えている。穴53は、樹脂部材44の突起57が挿入して吸熱部材43を保持するためのものであり、穴54は、基材51の突起57が挿入して吸熱部材42を保持するためのものである。穴55には基材51の突起58が挿入して吸熱部材42が保持されるだけでなく、該突起58は他の突起57より長く形成されており、ステー25の嵌合穴に嵌合し、ニップ形成部材24全体をステー25に固定する機能を有する。
均熱部材41のニップ出口側には下方に突出した突出部45が形成されている。具体的には、均熱部材41は、1枚の銅板で形成され、ニップ入口側からニップ出口側にかけて(図中下方から上方に)平坦な形状を有するが、均熱部材41はニップ出口側では加圧ローラ22側に屈曲され、屈曲部が突出部45として形成されている。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
本発明に係る画像形成装置は、図1に示すカラー画像形成装置に限らず、モノクロ画像形成装置や、複写機、プリンタ、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等であってもよい。
以上の実施形態では、無端状の定着ベルトを加熱源が直接加熱する定着装置について説明した。この他、ローラ形状の定着部材や定着ベルト内部に金属パイプを用いた定着装置等にも本発明を適用する事ができる。ただし、本実施形態のような低熱容量の定着ベルトが直接加熱される定着装置では、定着ベルトの軸方向の温度リップルが大きくなりやすく、本発明の効果をより発揮する事ができる。