以下、添付の図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の実施の形態を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
まず、図1を参照して、本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の全体構成および動作について説明する。
図1に示す画像形成装置1は、カラーレーザープリンタであり、その装置本体の中央には、4つの作像部4Y,4M,4C,4Kが設けられている。各作像部4Y,4M,4C,4Kは、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の異なる色の現像剤を収容している以外は同様の構成となっている。
具体的に、各作像部4Y,4M,4C,4Kは、潜像担持体としてのドラム状の感光体5と、感光体5の表面を帯電させる帯電装置6と、感光体5の表面にトナーを供給する現像装置7と、感光体5の表面をクリーニングするクリーニング装置8などを備える。なお、図1では、ブラックの作像部4Kが備える感光体5、帯電装置6、現像装置7、クリーニング装置8のみに符号を付しており、その他の作像部4Y,4M,4Cにおいては符号を省略している。
各作像部4Y,4M,4C,4Kの下方には、感光体5の表面を露光する露光装置9が配設されている。露光装置9は、光源、ポリゴンミラー、f−θレンズ、反射ミラー等を有し、画像データに基づいて各感光体5の表面へレーザー光を照射するようになっている。
また、各作像部4Y,4M,4C,4Kの上方には、転写装置3が配設されている。転写装置3は、中間転写体としての中間転写ベルト30と、一次転写手段としての4つの一次転写ローラ31と、二次転写手段としての二次転写ローラ36と、二次転写バックアップローラ32と、クリーニングバックアップローラ33と、テンションローラ34と、ベルトクリーニング装置35とを備える。
中間転写ベルト30は、無端状のベルトであり、二次転写バックアップローラ32、クリーニングバックアップローラ33およびテンションローラ34によって張架されている。ここでは、二次転写バックアップローラ32を回転駆動することによって、中間転写ベルト30は図の矢印で示す方向に周回走行(回転)するようになっている。
4つの一次転写ローラ31は、それぞれ、各感光体5との間で中間転写ベルト30を挟み込んで一次転写ニップを形成している。また、各一次転写ローラ31には、電源が接続されており、所定の直流電圧(DC)および/又は交流電圧(AC)が各一次転写ローラ31に印加されるようになっている。
二次転写ローラ36は、二次転写バックアップローラ32との間で中間転写ベルト30を挟み込んで二次転写ニップを形成している。また、上記一次転写ローラ31と同様に、二次転写ローラ36にも電源が接続されており、所定の直流電圧(DC)および/又は交流電圧(AC)が二次転写ローラ36に印加されるようになっている。
ベルトクリーニング装置35は、中間転写ベルト30に当接するように配設されたクリーニングブラシとクリーニングブレードを有する。このベルトクリーニング装置35で回収された廃トナーは、廃トナー移送ホースを介して廃トナー収容器に収容される。
画像形成装置本体の上部には、ボトル収容部2が設けられており、ボトル収容部2には、補給用のトナーを収容する4つのトナーボトル2Y,2M,2C,2Kが着脱可能に装着されている。各トナーボトル2Y,2M,2C,2Kと上記各現像装置7との間に設けた補給路を介して、各トナーボトル2Y,2M,2C,2Kから各現像装置7にトナーが補給される。
一方、画像形成装置本体の下部には、記録媒体としての用紙Pを収容した給紙トレイ10や、給紙トレイ10から用紙Pを搬出する給紙ローラ11等が設けられている。なお、記録媒体には、普通紙以外に、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ、OHPシート等が含まれる。また、手差し給紙機構が設けてあってもよい。
画像形成装置本体内には、用紙Pを給紙トレイ10から二次転写ニップを通過させて装置外へ排出するための搬送路Rが配設されている。搬送路Rにおいて、二次転写ローラ36の位置よりも用紙搬送方向上流側には、搬送タイミングを計って用紙Pを二次転写ニップへ搬送するタイミングローラとしての一対のレジストローラ12が配設されている。
また、二次転写ローラ36の位置よりも用紙搬送方向下流側には、用紙Pに転写された未定着画像を定着するための定着装置20が配設されている。さらに、定着装置20よりも搬送路Rの用紙搬送方向下流側には、用紙を装置外へ排出するための一対の排紙ローラ13が設けられている。また、装置本体の上面部には、装置外に排出された用紙をストックするための排紙トレイ14が設けてある。
続いて、図1を参照して、本実施形態に係るプリンタの基本的動作について説明する。 作像動作が開始されると、各作像部4Y,4M,4C,4Kにおける各感光体5が図の時計回りに回転駆動され、各感光体5の表面が帯電装置6によって所定の極性に一様に帯電される。帯電された各感光体5の表面には、露光装置9からレーザー光がそれぞれ照射されて、各感光体5の表面に静電潜像が形成される。このとき、各感光体5に露光する画像情報は所望のフルカラー画像をイエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの色情報に分解した単色の画像情報である。このように各感光体5上に形成された静電潜像に、各現像装置7によってトナーが供給されることにより、静電潜像はトナー画像として顕像化(可視像化)される。
また、作像動作が開始されると、二次転写バックアップローラ32が図の反時計回りに回転駆動し、中間転写ベルト30を図の矢印で示す方向に周回走行させる。また、各一次転写ローラ31に、トナーの帯電極性と逆極性の定電圧又は定電流制御された電圧が印加されることによって、各一次転写ローラ31と各感光体5との間の一次転写ニップにおいて転写電界が形成される。
その後、各感光体5の回転に伴い、感光体5上の各色のトナー画像が一次転写ニップに達したときに、上記一次転写ニップにおいて形成された転写電界によって、各感光体5上のトナー画像が中間転写ベルト30上に順次重ね合わせて転写される。かくして、中間転写ベルト30の表面にフルカラーのトナー画像が担持される。また、中間転写ベルト30に転写しきれなかった各感光体5上のトナーは、クリーニング装置8によって除去される。そして、各感光体5の表面が除電装置によって除電され、表面電位が初期化される。
プリンタの下部では、給紙ローラ11が回転駆動を開始し、給紙トレイ10から用紙Pが搬送路Rに送り出される。搬送路Rに送り出された用紙Pは、レジストローラ12によって搬送が一旦停止される。
その後、所定のタイミングでレジストローラ12の回転駆動を開始し、中間転写ベルト30上のトナー画像が二次転写ニップに達するタイミングに合わせて、用紙Pを二次転写ニップへ搬送する。このとき、二次転写ローラ36には、中間転写ベルト30上のトナー画像のトナー帯電極性と逆極性の転写電圧が印加されており、これにより、二次転写ニップに転写電界が形成されている。そして、この転写電界によって、中間転写ベルト30上のトナー画像が用紙P上に一括して転写される。また、このとき用紙Pに転写しきれなかった中間転写ベルト30上の残留トナーは、ベルトクリーニング装置35によって除去され、廃トナー収容器へと搬送される。
その後、用紙Pは定着装置20へと搬送され、定着装置20によって用紙P上のトナー画像が当該用紙Pに定着される。そして、用紙Pは、排紙ローラ13によって装置外へ排出され、排紙トレイ14上にストックされる。
以上の説明は、用紙上にフルカラー画像を形成するときの画像形成動作であるが、4つの作像部4Y,4M,4C,4Kのいずれか1つを使用して単色画像を形成したり、2つ又は3つの作像部を使用して、2色又は3色の画像を形成したりすることも可能である。
次に、図2に基づき、上記定着装置20の構成について説明する。
図2に示すように、定着装置20は、回転可能な第一定着部材としての定着ベルト21と、定着ベルト21に対向して回転可能に設けられた第二定着部材としての加圧ローラ22と、定着ベルト21を加熱する加熱源としてのハロゲンヒータ23と、定着ベルト21の内側に配設されたニップ形成部材24と、ニップ形成部材24を支持する支持部材としてのステー25と、ハロゲンヒータ23から放射される光を定着ベルト21へ反射する反射部材26と、定着ベルト21の温度を検知する温度検知手段としての温度センサ27と、定着ベルト21から用紙を分離する分離部材28と、加圧ローラ22を定着ベルト21へ加圧する加圧手段等を備えている。
上記定着ベルト21は、薄肉で可撓性を有する無端状のベルト部材(フィルムも含む)で構成されている。詳しくは、定着ベルト21は、ニッケルもしくはSUS等の金属材料又はポリイミド(PI)などの樹脂材料で形成された内周側の基材と、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などで形成された外周側の離型層によって構成されている。また、基材と離型層との間に、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム、又はフッ素ゴム等のゴム材料で形成された弾性層を介在させてもよい。
上記加圧ローラ22は、芯金22aと、芯金22aの表面に設けられた発泡性シリコーンゴム、シリコーンゴム、又はフッ素ゴム等から成る弾性層22bと、弾性層22bの表面に設けられたPFA又はPTFE等から成る離型層22cによって構成されている。加圧ローラ22は、加圧手段によって定着ベルト21側へ加圧され定着ベルト21を介してニップ形成部材24に当接している。この加圧ローラ22と定着ベルト21とが圧接する箇所では、加圧ローラ22の弾性層22bが押しつぶされることで、所定の幅のニップ部Nが形成されている。また、加圧ローラ22は、プリンタ本体に設けられたモータ等の駆動源によって回転駆動するように構成されている。加圧ローラ22が回転駆動すると、その駆動力がニップ部Nで定着ベルト21に伝達され、定着ベルト21が従動回転するようになっている。
本実施形態では、加圧ローラ22を中実のローラとしているが、中空のローラであってもよい。その場合、加圧ローラ22の内部にハロゲンヒータ等の加熱源を配設してもよい。また、弾性層が無い場合は、熱容量が小さくなり定着性が向上するが、未定着トナーを押しつぶして定着させるときにベルト表面の微小な凹凸が画像に転写されて画像のベタ部に光沢ムラが生じる可能性がある。これを防止するには、厚さ100μm以上の弾性層を設けることが望ましい。厚さ100μm以上の弾性層を設けることで、弾性層の弾性変形により微小な凹凸を吸収することができるので、光沢ムラの発生を回避することができるようになる。弾性層22bはソリッドゴムでもよいが、加圧ローラ22の内部に加熱源が無い場合は、スポンジゴムを用いてもよい。スポンジゴムの方が、断熱性が高まり定着ベルト21の熱が奪われにくくなるのでより望ましい。
上記ハロゲンヒータ23は、それぞれの両端部が定着装置20の側板に固定されている。ハロゲンヒータ23は、プリンタ本体に設けられた電源部により出力制御されて発熱するように構成されており、その出力制御は、上記温度センサ27による定着ベルト21の表面温度の検知結果に基づいて行われる。このようなハロゲンヒータ23の出力制御によって、定着ベルト21の温度(定着温度)を所望の温度に設定できるようになっている。また、定着ベルト21を加熱する加熱源として、ハロゲンヒータ以外に、IH、抵抗発熱体、又はカーボンヒータ等を用いてもよい。
図3に示す様に、ハロゲンヒータ23は、幅Eの範囲で発熱部としてのヒータ部231を有し、この範囲で定着ベルト21を加熱する。以下、ハロゲンヒータ23がヒータ部231を有する幅を、発熱幅としてのヒータ幅Eと呼ぶ。
図2に示す様に、上記ニップ形成部材24は、定着ベルト21の軸方向又は加圧ローラ22の軸方向に渡って長手状に配設される。ニップ形成部材24は、ベース部241と、ベース部241よりも熱伝導率の高い部材によって構成される、高熱伝導部としての均熱部242を有する。均熱部242は、定着ベルト21を挟んで加圧ローラ22と対向する。
ニップ形成部材24は、ステー25によって固定支持されている。これにより、加圧ローラ22による圧力でニップ形成部材24に撓みが生じるのを防止し、加圧ローラ22の軸方向に渡って均一なニップ幅が得られるようにしている。なお、ステー25は、ニップ形成部材24の撓み防止機能を満足するために、ステンレスや鉄等の機械的強度が高い金属材料で形成することが望ましいが、ステー25を樹脂製とすることも可能である。
均熱部242は、定着ベルト21を挟んで加圧ローラ22と対向する。ベース部241は耐熱性に富む樹脂材料、例えばポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等で形成されている。均熱部242は、ベース部241よりも熱伝導性の高い部材によって構成され、例えば、カーボンナノチューブ、グラファイトシート、銀、銅、アルミニウム、SECC(電気亜鉛メッキ鋼)等を用いる事ができる。
また、ニップ形成部材24は、均熱部242の表面に低摩擦シートを設ける事もできる。定着ベルト21が回転する際、この低摩擦シートに対し定着ベルト21が摺動することで、定着ベルト21に生じる駆動トルクが低減され、定着ベルト21への摩擦力による負荷が軽減される。低摩擦シートの素材としては、例えば、東レ社製のトヨフロン(登録商標)401などが好ましい。
上記反射部材26は、ステー25とハロゲンヒータ23との間に配設されている。本実施形態では、反射部材26をステー25に固定している。また、反射部材26は、ハロゲンヒータ23によって直接加熱されるため、高融点の金属材料等で形成されることが望ましい。例えば、反射部材26の材料としては、アルミニウムやステンレス等が挙げられる。このように反射部材26を配設していることにより、ハロゲンヒータ23からステー25側に放射された光が定着ベルト21へ反射される。これにより、定着ベルト21に照射される光量を多くすることができ、定着ベルト21を効率良く加熱することが可能となる。また、ハロゲンヒータ23からの輻射熱がステー25等に伝達されるのを抑制することができるので、省エネルギー化も図れる。
また、本実施形態のような反射部材26を設けずに、ステー25のハロゲンヒータ23側の面を研磨又は塗装などの鏡面処理をし、反射面を形成してもよい。また、上記反射部材26又はステー25の反射面の反射率は、90%以上であることが望ましい。
ただ、ステー25はその強度を確保するために形状や材質が自由に選択できないため、本実施形態のように反射部材26を別途設けた方が、形状や材質の選択の自由度が広がり、反射部材26とステー25はそれぞれの機能に特化することができる。また、反射部材26をハロゲンヒータ23とステー25との間に設けることにより、ハロゲンヒータ23に対する反射部材26の位置が近くなるので、定着ベルト21を効率良く加熱することが可能となる。
また、本実施形態に係る定着装置20は、さらなる省エネ性及びファーストプリントタイムなどの向上のために、種々の構成上の工夫が施されている。
具体的には、ハロゲンヒータ23によって定着ベルト21をニップ部N以外の箇所において直接加熱できるようにしている(直接加熱方式)。本実施形態では、ハロゲンヒータ23と定着ベルト21の図2の左側の部分の間に何も介在させないようにし、その部分においてハロゲンヒータ23からの輻射熱を定着ベルト21に直接与えるようにしている。
また、定着ベルト21の低熱容量化を図るために、定着ベルト21を薄くかつ小径化している。具体的には、定着ベルト21を構成する基材、弾性層、離型層のそれぞれの厚さを、20〜50μm、100〜300μm、10〜50μmの範囲に設定し、全体としての厚さを1mm以下に設定している。また、定着ベルト21の直径は、20〜40mmに設定している。さらに低熱容量化を図るためには、望ましくは、定着ベルト21全体の厚さを0.2mm以下にするのがよく、さらに望ましくは、0.16mm以下の厚さとするのがよい。また、定着ベルト21の直径は、30mm以下とするのが望ましい。
なお、本実施形態では、加圧ローラ22の直径を20〜40mmに設定しており、定着ベルト21の直径と加圧ローラ22の直径を同等となるように構成している。ただし、この構成に限定されるものではない。例えば、定着ベルト21の直径が加圧ローラ22の直径よりも小さくなるように形成してもよい。その場合、ニップ部Nにおける定着ベルト21の曲率が加圧ローラ22の曲率よりも小さくなるため、ニップ部Nから排出される記録媒体が定着ベルト21から分離されやすくなる。
ここで、本実施形態とは異なる図4の構成を用いて、定着ベルト21の端部温度上昇の問題について説明する。図4の構成では、ニップ形成部材24に均熱部を設けずに耐熱性の樹脂部材によってニップ形成部材24が形成される。
図5(a)は、図4で示した構成の定着装置に、用紙幅の異なる4つの用紙PA〜PD(図5c参照)を通紙した場合の、定着ニップNにおける定着ベルト21の表面の温度分布を示したものである。用紙PDは定着装置20に通紙される頻度の高い用紙(例えば、A3サイズの用紙)でヒータ幅Eは用紙PDの幅と同じ幅に設定されている。図5(b)は、図4のG−G矢視断面図であり、図4の例では、ハロゲンヒータ23のヒータ幅E(図3参照)とニップ形成部材24の幅が同一に設定される。図5(a)〜(c)において、図の左側が定着ベルト21の幅方向中央側、図の右側が端部側を示す。定着ベルト21の幅方向とは、加圧ローラ22の軸方向と同方向を指す。
図5(a)の横軸に示す中央からの距離は、定着ベルト21の幅方向中央からの距離を示す。また、それぞれの用紙PA〜PDを通紙した際の、定着ベルト21における通紙部の温度(定着温度)をtA〜tDで示し、非通紙部の上昇温度をTA〜TCで示す。なお、用紙PDが通紙される際には非通紙部が存在しない。
ヒータ幅Eよりも幅の小さい用紙PA〜PCを通紙した場合、それぞれ非通紙部でTA〜TCだけ温度が上昇している。これは、非通紙部ではヒータ部231による発熱量が用紙や用紙上のトナーへ伝わらず、非通紙部に熱が蓄積されていくためである。
そして、非通紙部の幅が大きくなるほど(通紙される用紙Pの幅が小さくなるほど)、非通紙部における温度上昇は大きくなっており、特に用紙PAを通紙した場合には、定着ベルト21の目標上限温度を超えて、温度上昇している。この様な非通紙部における温度上昇(端部温度上昇)により、定着ベルト21の幅方向の温度分布を均一に保つことが困難であった。
また、図4の定着装置では、ニップ形成部材24が樹脂部材のみからなるため、定着ベルト21からニップ形成部材24への伝熱がほとんど行われず、通紙部における温度の落ち込みは発生しない。
図6に示す定着装置は、本実施形態とは異なる構成で、上記の非通紙部における端部温度上昇を緩和する構成を示すものである。図6に示す定着装置20には、本実施形態と同様、ニップ形成部材24に均熱部242を設ける。
図6の定着装置20における定着ベルト21の表面の温度分布を示した結果を図7(a)に示す。
図7(a)に示す様に、用紙PA〜PCのそれぞれを通紙した場合において、定着ベルト21の非通紙部における温度上昇TA〜TCが図5(a)の場合と比べて小さくなっている。これは、熱伝導性の高い均熱部242をニップ形成部材24の定着ベルト21に当接する側に設けた事により、定着ベルト21の非通紙部から通紙部へ均熱部242を介して熱が伝達したため、また、非通紙部の熱が均熱部242によって一部吸収されたためである。
この様に、ニップ形成部材24に均熱部242を設ける事により、定着ベルト21の非通紙部における端部温度上昇を緩和する事ができる。
また、定着ベルト21に当接して均熱部242を設ける事により、通紙部の熱量の一部が均熱部242に吸収され、通紙部の温度tA〜tDは、図5(a)の場合の定着温度(図7aの点線)と比べて低下している。
次に、本実施形態が解決する課題について説明する。
図8(a)は、図6の構成において、ハロゲンヒータ23の温度Tの幅方向の分布を示した図で、図8(b)はハロゲンヒータ23等の幅方向の位置関係を示した図である。それぞれ図の左側がハロゲンヒータ23の幅方向中央側、図の右側が端部側を示す。
図8(a)および図8(b)に示す様に、ハロゲンヒータ23の温度Tは、ヒータ部231が設けられるヒータ幅Eの範囲内では高温度を維持しているが、ヒータ幅Eの境界部分を境に、それより外側(図の右側)へ行くに従って、温度Tの落ち込みが生じている。
そして、図8の構成では、均熱部242の幅をヒータ幅Eと同じに設定している。ヒータ部231は、使用頻度の高い用紙Pの幅に合わせて、そのヒータ幅Eが設定されており、図8(b)に示す様に、ヒータ幅Eよりも幅の大きい用紙PEが定着装置20に通紙される場合がある(例えば、ヒータ幅EをA3サイズの用紙幅に合わせて設定していた場合に、A3ノビサイズの用紙PEが通紙される)。
この様な場合、用紙Pの端部P1が、前述のハロゲンヒータ23の温度Tの落ち込み領域に重なり、当該端部P1が十分に加熱されなくなってしまう。これにより、端部P1において十分なトナー画像の定着がなされず、トナーのオフセットや光沢度の低下が生じてしまう。
そこで、本実施形態では、図9(a)および図9(b)に示す様に、均熱部242の幅を、ヒータ幅Eよりも長く設け、前述の温度Tの落ち込み領域まで均熱部242を設ける構成とする。これにより、ヒータ幅Eよりも大きな幅の用紙PEが通紙された場合にも、当該用紙PEの幅方向端部に対応する位置に均熱部242が配置されているため、均熱部242を介して用紙PEの端部に熱が伝達され、前述の加熱が十分にされないという問題を緩和する事ができる。
それぞれの幅方向の端部位置は、ヒータ幅E<用紙Pの最大幅<均熱部242<ハロゲンヒータ23の順に設けられる。
上記の様に、ヒータ幅Eの外側の温度落ち込み領域において、均熱部242によって用紙Pの端部に熱を伝達する場合、均熱部242に一定量の熱を蓄積した上で、定着装置20に通紙する必要がある。このため、画像形成装置1において、ヒータ幅Eを超える幅の用紙Pが作業者等により選択され、画像形成動作が開始された場合には、図1で示した給紙トレイ10から給紙ローラ11によって用紙Pが搬送経路へ送り出されるタイミングを遅らせ、用紙Pが定着ニップNに搬送されるまでの均熱部242の蓄熱の時間(ハロゲンヒータ23による加熱時間)を通常よりも長くしている。また、用紙Pが定着ニップNに搬送されるまでの均熱部242の蓄熱時において、定着ベルト21の周回速度を小さくする事により、均熱部242に蓄熱しやすくする事もできる。
ステー25(図2参照)は、その凸部で均熱部242に当接する。これにより、ステー25と均熱部242の接触面積を減らし、ステー25への伝熱をできる限り小さくする事ができる。
均熱部242の幅方向外側には、その一部に孔部243aを設けることにより、均熱部242と比べて熱の伝達を行いにくくした端部243を設ける。
また、ニップ形成部材24の両端を熱伝達が行われにくい端部243としたのは、以下の理由による。つまり、ニップ形成部材24の両端は、通紙される用紙Pの最大幅よりも外側に設けられ、用紙Pへの熱伝導を行う必要がないためであり、均熱部242を必要以上に長く設けると、均熱作用が不要な部分にまで熱伝達がされ、均熱部242による、温度落ち込み領域に配置された用紙Pの端部への熱の伝達効果が弱まってしまうためである。均熱部242の両端には端部243を必ずしも設ける必要はないが、例えば、この位置で均熱部242とベース部241の係合部を設ける場合等に、前述の孔部243aを設ける事により、熱伝達作用をできる限り小さくし、かつ、係合部としての役割をする端部243を設ける事ができる。端部243は、孔部243aを設ける事により当該部分で熱伝達を行いにくくしたが、その方法はこれに限らず、例えば、端部243の厚みを薄くすることにより、均熱部242と比べて熱伝達を行いにくくしてもよい。
均熱部242をニップ形成部材24の幅方向端部側のみだけでなく、中央側にも設ける事により、ハロゲンヒータ23の幅方向中央側における発熱を均熱部242が受け取る事ができ、均熱部242が、より効率良く端部側へ熱を伝達する事ができる。
本実施形態のハロゲンヒータ23は、図2で示した定着ベルト21の周方向に移動可能に設けられる。これにより、ハロゲンヒータ23と定着ニップNの距離を調整する事ができ、適切な加熱量が得られる様に調整することができる。
次に、図10を用いて、図2とは異なる実施形態の定着装置について説明する。図2と共通する構成については、適宜その説明を省略する。
図10に示す様に、定着装置20は、ハロゲンヒータ23と定着ベルト21の間に、ハロゲンヒータ23から定着ベルト21への熱を遮蔽する遮蔽部材29を有する。
遮蔽部材29は、厚さ0.1mm〜1.0mmの金属板を、定着ベルト21の内周面に沿った円弧状の断面形状に形成して構成されている。また、遮蔽部材29は、定着ベルト21とハロゲンヒータ23の間を周方向に移動可能に設けられている。本実施形態では、定着ベルト21の周方向領域に、ハロゲンヒータ23と対向し、ハロゲンヒータ23に直接加熱される被加熱領域αと、ハロゲンヒータ23との間に、側板等に固定された他部材(反射部材26、ステー25、ニップ形成部材24等)が介在し、ハロゲンヒータ23に直接加熱されない非加熱領域βとが形成される。熱遮蔽の必要がない場合は、遮蔽部材29を非加熱領域β側に移動させ、熱遮蔽する必要がある場合は、遮蔽部材29を被加熱領域α側に移動させることが可能となっている。
このように遮蔽部材29を回転させることで、定着ベルト21の被加熱領域αの面積を変更して、ハロゲンヒータ23から定着ベルト21に照射される輻射熱の熱量を調整するようになっている。これにより、連続通紙時の定着ベルト21の非通紙領域における過剰な温度上昇を抑制することができ、定着ベルト21の熱による劣化や損傷を防止することができる。遮蔽部材29は耐熱性を要するため、その素材には、アルミニウム、鉄、ステンレス等の金属材料、又はセラミックを用いることが好ましい。
ハロゲンヒータ23には、2本のヒータが設けられ、遮蔽部材29の側に端部ヒータ23a、それとは反対側に中央ヒータ23bを有する。図11に示す様に、端部ヒータ23aと中央ヒータ23bは、それぞれハロゲンヒータ23の軸方向端部側と中央側に、ヒータ部231を有する。ヒータ部231が設けられる幅がヒータ幅Eである。本実施形態では、ハロゲンヒータ23は2本設けられているが、プリンタで使用する用紙のサイズ等に応じて、ハロゲンヒータ23の本数を3本以上としてもよい。
図12に示すように、定着ベルト21の両端部の内周には、ベルト保持部材40が挿入されている。定着ベルト21は、両端部のベルト保持部材40で回転自在に支持されており、基本的にベルト保持部材40以外に定着ベルト21を支持する部材は存在しない。つまり、定着ベルト21は、ローラ等に架け渡されていない無張架の状態にある。ベルト保持部材40は、ハロゲンヒータ23、およびステー25と共に、定着装置20の軸方向(加圧ローラ22の軸方向と同方向)の両側に設けられた一対の側板に固定されている。ステー25の全長は、ハロゲンヒータ23よりも長く設けられる。
定着ベルト21の端面とそれに対向するベルト保持部材40の対向面との間には、定着ベルト21の端部を保護するスリップリングが設けられている。これにより、定着ベルト21に軸方向の寄りが生じた場合に、定着ベルト21の端部がベルト保持部材40に直接当接するのを防止することができ、端部の摩耗や破損を防ぐことができる。また、スリップリングは、ベルト保持部材40に外周に対し余裕を持って嵌められている。このため、定着ベルト21の端部がスリップリングに接触した際に、スリップリングは定着ベルト21と連れ回り可能となっているが、スリップリングが連れ回りせず、静止していても構わない。スリップリングの材料としては、耐熱性に優れたいわゆるスーパーエンプラ、例えば、PEEK、PPS、PAI、PTFE等を適用することが好ましい。
本実施形態では、端部ヒータ23aと中央ヒータ23b、および遮蔽部材29を用いて、定着装置20に通紙される用紙Pの幅に応じて、定着ベルト21を加熱する範囲を変更する。以下、定着ベルト21を加熱する範囲を変更する方法について説明する。
図13は、それぞれの大きさの用紙PA〜PDとヒータ部231および遮蔽部材29との幅方向の関係を示した図である。
まず、最も小さい用紙PAが通紙された場合には、端部ヒータ23aのヒータ部231は加熱をせず、中央ヒータ23bのみによって定着ベルト21が加熱される。中央ヒータ23bのヒータ部231の幅は、用紙PAと同じ幅に設定されており、定着ベルト21がヒータ部によって加熱される被加熱領域に非通紙部が生じないため、前述の端部温度上昇の問題は発生しない。
2番目に小さい用紙PBが通紙された場合にも、用紙PAの場合と同様に、端部ヒータ23aのヒータ部231は加熱をせず、中央ヒータ23bのみによって定着ベルト21の加熱がされる。この場合、用紙PBの両端の領域J1はヒータ部231によって直接加熱されないが、均熱部242を介して熱を伝達される事により、熱定着が行われる。定着ベルト21がヒータ部によって加熱される被加熱領域に非通紙部が生じないため、前述の端部温度上昇の問題が発生しない点は同様である。以上の様にして、中央ヒータ23bのヒータ部231よりも幅の大きい用紙PBを通紙する場合にも、均熱部242を用いる事により、用紙端部まで熱を十分に伝達する事が可能である。2番目に小さい用紙PBでは、中央ヒータ23bのヒータ部231のみによる加熱であるとしたが、後述する3番目に小さい用紙PCの場合と同様に、端部ヒータ23aのヒータ部231を同時に加熱させ、遮蔽部材29によってその一部を遮蔽する構成としてもよい。これにより、均熱部242の用紙PBの端部に対応する部分での温度低下を抑制し、用紙PBの端部を十分な温度で熱定着させる事ができる。
3番目に小さい用紙PCが通紙された場合には、中央ヒータ23bと端部ヒータ23aの両方のヒータ部231によって定着ベルト21が加熱される。この場合、端部ヒータ23aのヒータ部231の端部J2が用紙PCの端部よりも幅方向の外側の非通紙部領域に配置され、前述の端部温度上昇が問題となる。
そこで、本実施形態では、用紙PCが定着装置20に通紙された場合には、遮蔽部材29が端部ヒータ23aの側へ移動して端部J2を覆うことによりヒータ部231からの熱を遮蔽する。これにより、定着ベルト21の非通紙部がヒータ部231から加熱されることによる定着ベルト21の端部温度上昇を防止している。
4つの中で最も大きい用紙PDが通紙された場合には、中央ヒータ23bと端部ヒータ23aの両方のヒータ部231を発熱させる。ヒータ幅Eは、用紙PDの幅に合わせて設けられており、中央ヒータ23bと端部ヒータ23aのヒータ部231により、定着ベルト21に非通紙部を設けることなく、用紙PDを加熱する事ができる。
以上の様に、本実施形態では、遮蔽部材29は端部ヒータ23aのヒータ部231を遮るために用いられるため、端部ヒータ23aが遮蔽部材29の側に配置される。これにより、遮蔽部材29の移動距離を小さくする事ができる。
2番目に小さい用紙PBが通紙される場合、上記の様に均熱部242によって用紙PBの端部に伝熱が行われるので、ヒータ幅Eよりも幅の大きな用紙PEが通紙される場合と同様に、均熱部242の蓄熱の時間を通常よりも長くしたり、定着ベルト21の周回速度を遅らせて、均熱部242に蓄熱しやすくしたりしてもよい。
図2の実施形態では、定着ニップNが平面状の構成を示したが、図10に示す様に、曲面と平面の複合面により構成する事もできる。以下、本実施形態の定着装置20において形成される定着ニップNの形状について説明する。
図14は、均熱部(ニップ形成部)242で形成される定着ニップNを概略図示した断面図である。なお、図14では、定着ニップNの形状を明確に表すため、ニップ形成部材24の第一の平坦面Aと第二の平坦面Cの間の段差を誇張して描いている。そのため、均熱部242の前面242aや定着ニップNの形状は実際とは異なる。また、図14では、図面を簡略化するために定着ベルト21の図示を省略している。
図14に示すように、均熱部242の加圧ローラ22と対向する面242a(前面)は、用紙搬送方向で定着ニップNよりも大きい搬送方向の長さを有する。この前面242aには、定着ニップNの入口側(図面下方)から、第一の平坦面A、接続面B、第二の平坦面C、およびガイド面Dが形成されている。
このうちの二つの平坦面A,Cは、互いに平行となるように形成されている。一方の平坦面A(第一の平坦面)は定着ニップNの入口側に配置され、他方の平坦面C(第二の平坦面)は、第一の平坦面Aよりも定着ニップNの出口側に配置されている。また、第二の平坦面Cは、第一の平坦面Aよりも加圧ローラ22への接近側(図面右方)に位置している。第一および第二の平坦面A,Cは、定着ニップNの入口部N1に対する用紙Pの突入方向と平行となるように形成するのが好ましい。具体的に、本実施形態では、定着ベルト21の回転中心O1と加圧ローラ22の回転中心O2とを結ぶ仮想線m(図14参照)に対してほぼ直交する方向に沿って第一の平坦面Aおよび第二の平坦面Cを配置している。
第一の平坦面Aと第二の平坦面Cは、接続面Bを介して滑らかに接続される。接続面Bの形状は任意であり、平面や曲面、あるいはこれらを組み合わせた複合面で形成することができる。図14は、接続面Bを定着ニップNの入口側の第一曲面部B1と、定着ニップNの出口側の第二曲面部B2とからなる複合曲面で形成した場合を例示している。
この実施形態において、第一曲面部B1および第二曲面部B2は、曲率の向きを逆としている。具体的には、第一曲面部B1は単一の曲率半径を有する、加圧ローラ22側から見て凹状の円筒面であり、第二曲面部B2は単一の曲率半径を有する、加圧ローラ22側から見て凸状の円筒面である。
ガイド面Dの形状は任意であり、例えば平面や曲面、あるいはこれらを組み合わせた複合面で形成することができる。本実施形態のガイド面Dは、単一の曲率半径を有する、加圧ローラ22側から見て凹状の円筒面である。ガイド面Dと第二の平坦面Cは、境界部に共通接線を持つようにして接続されている。
なお、ここでは、第一曲面部B1、第二曲面部B2、およびガイド面Dを、それぞれ単一の曲率半径を有するものとして説明したが、第一曲面部B1、第二曲面部B2、およびガイド面Dの各々を、曲率の異なる複数の曲面で構成してもよい。
以上に述べた均熱部242に定着ベルト21を介して加圧ローラ22を押し当てると、加圧ローラ22の弾性層22bが弾性変形して、定着ベルト21と加圧ローラ22の間に定着ニップNが形成される。この時、定着ベルト21は均熱部242の前面242aの形状に倣って変形する。
定着ニップNのうち、均熱部242の第一の平坦面Aおよび第二の平坦面Cで形成される部分は、何れも両平坦面A,Cの形状に対応する平面形状となる。また、均熱部242の接続面Bで形成される部分は、接続面Bの形状に対応する形状(本実施形態では曲面形状)となる。以下の説明では、定着ニップNのうち、均熱部242の第一の平坦面Aで形成される領域を第一の平坦部Naと称し、接続面Bで形成される領域を接続部Nbと称し、第二の平坦面Cで形成される領域を第二の平坦部Ncと称する。
この定着ニップNにおいて、入口部N1は第一の平坦部Naで構成され(均熱部242の第一の平坦面Aが入口部N1を形成する)、出口部N2は第二の平坦部Ncで構成されている(均熱部242の第二の平坦面Cが出口部N2を形成する)。また、第二の平坦部Ncの長さは、第一の平坦部Naの長さよりも短い。
用紙Pは、トナーTを定着ベルト21側に向けた状態で定着ニップNの入口部N1に到達し、第一の平坦部Naに進入する。この第一の平坦部Naでは、その下流側ほど加圧ローラ22の弾性層22bの圧縮率Xaが大きくなり、これに伴って用紙Pに作用する面圧が徐々に増加する。次いで、用紙Pは接続部Nbに進入する。接続部Nbでは、弾性層22bの圧縮率Xbが急激に増大して最大値をとり、用紙Pに作用する面圧が最大となる。その後、用紙Pが接続部Nbを経て第二の平坦部Ncを移動する間は、下流側ほど弾性層22bの圧縮率Xbが小さくなるため、用紙Pに作用する面圧も徐々に小さくなる。従って、トナーの定着プロセス(溶融・流動・合体・浸透・固化)は、主として接続部Nbから第二の平坦部Ncに至るまでの領域で進行する。
定着ニップNの出口部N2に達した用紙Pは、ニップ形成部材24のガイド面Dにより、第二の平坦部Ncの延長方向に対して僅かに加圧ローラ22側に傾いた方向Fに排出され、さらに分離爪と当接して定着ベルト21から分離される。均熱部242の前面242aの搬送方向下流側の端部には、曲率半径の小さい曲面部242bが設けられており、定着ベルト21は、この曲面部242bに沿って大きな曲率で加圧ローラ22から離反する方向に曲げられる。そのため、定着ニップNから排出された用紙Pの分離性が良好なものとなる。
このように本発明では、定着ニップNにおける高面圧領域を定着ニップNの出口側に設けている。この面圧分布を実現するため、定着ニップNのうち、弾性層22bの圧縮率が最大となる部分(本実施形態では接続部Nb)は、加圧ローラ22の回転中心O2よりも定着ニップNの出口側、つまり加圧ローラ22の回転中心O2から均熱部242の第一の平坦面A(もしくはその延長線)に垂線を降ろした時の交点よりも定着ニップNの出口側に設ける。本実施形態では、図14に示すように、定着ベルト21の回転中心O1と加圧ローラ22の回転中心O2を結ぶ仮想線m付近に第一の平坦部Naと接続部Nbの境界部を配置しているため、弾性層22bの最大圧縮部分を確実に上記の条件下に配置することができる。
以下、以上のように定着ニップNを構成したことによる作用効果について説明する。
定着ニップNの第一の平坦部Naでは、これを加圧ローラ22側から見て凹曲面形状にする場合に比べて、定着ベルト21の表面にしわが生じにくい。また、第一の平坦部Naでは、加圧ローラ22の弾性層22bの圧縮量Xaが小さいため、定着ベルト21と加圧ローラ22の間の線速差も小さくなる。さらに、未定着トナーに作用するずれ力を考えても、第一の平坦部Naが低面圧領域であるため、当該ずれ力の影響は小さい。以上の理由から、定着ニップNの上流側での未定着トナーのずれを抑制し、定着に伴う画像品質の劣化を防止することが可能となる。
その一方で、ニップ形成部材24の第二の平坦面Cが第一の平坦面Aよりも加圧ローラ22への接近側に配置されているため、第一の平坦部Naよりも下流側の少なくとも接続部Nb(あるいは接続部Nbと第二の平坦部Ncの双方)で、第一の平坦部Naにおける弾性層22bの圧縮量Xaよりも大きな圧縮量を得ることができる。これにより、定着ニップNの出口側を高面圧領域にすることができ、トナーに十分な熱と圧力を与えて未定着画像を確実に定着させることができる。
このように定着ニップの接触面圧を局所的に高めることで、ハロゲンヒータ23による加熱量を抑えて省エネルギー化を図ることも可能となる。また、均熱部242と定着ベルト21を高面圧下で接触させる事ができ、定着ベルト21から均熱部242への熱伝導を効率良く行わせる事により、ヒータ幅Eの外側の用紙P端部にも効率良く熱を伝達する事ができる。
また、本実施形態では、局所的な面圧上昇による定着ベルト21やニップ形成部材24の破損を防ぐため、第二の平坦面Cが接続面Bの円弧面の接線状に連続するように形成されている。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
本発明に係る画像形成装置は、図1に示すカラー画像形成装置に限らず、モノクロ画像形成装置や、複写機、プリンタ、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等であってもよい。