以下、添付の図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の実施の形態を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
まず、図1を参照して、本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の全体構成及び動作について説明する。
図1に示す画像形成装置1は、カラーレーザープリンタであり、その装置本体の中央には、4つの作像部4Y,4M,4C,4Kが設けられている。各作像部4Y,4M,4C,4Kは、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の異なる色の現像剤を収容している以外は同様の構成となっている。
具体的に、各作像部4Y,4M,4C,4Kは、潜像担持体としてのドラム状の感光体5と、感光体5の表面を帯電させる帯電装置6と、感光体5の表面にトナーを供給する現像装置7と、感光体5の表面をクリーニングするクリーニング装置8などを備える。なお、図1では、ブラックの作像部4Kが備える感光体5、帯電装置6、現像装置7、クリーニング装置8のみに符号を付しており、その他の作像部4Y,4M,4Cにおいては符号を省略している。
各作像部4Y,4M,4C,4Kの下方には、感光体5の表面を露光する露光装置9が配置されている。露光装置9は、光源、ポリゴンミラー、f−θレンズ、反射ミラー等を有し、画像データに基づいて各感光体5の表面へレーザー光を照射する。
また、各作像部4Y,4M,4C,4Kの上方には、転写装置3が配置されている。転写装置3は、中間転写体としての中間転写ベルト30と、一次転写手段としての4つの一次転写ローラ31と、二次転写手段としての二次転写ローラ36と、二次転写バックアップローラ32と、クリーニングバックアップローラ33と、テンションローラ34と、ベルトクリーニング装置35とを備える。
中間転写ベルト30は、無端状のベルトであり、二次転写バックアップローラ32、クリーニングバックアップローラ33及びテンションローラ34によって張架されている。ここでは、二次転写バックアップローラ32を回転駆動することによって、中間転写ベルト30は図の矢印で示す方向に周回走行(回転)する。
4つの一次転写ローラ31は、それぞれ、各感光体5との間で中間転写ベルト30を挟み込んで一次転写ニップを形成している。また、各一次転写ローラ31には、電源が接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が各一次転写ローラ31に印加される。
二次転写ローラ36は、二次転写バックアップローラ32との間で中間転写ベルト30を挟み込んで二次転写ニップを形成している。また、上記一次転写ローラ31と同様に、二次転写ローラ36にも電源が接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が二次転写ローラ36に印加される。
ベルトクリーニング装置35は、中間転写ベルト30に当接するように配置されたクリーニングブラシとクリーニングブレードを有する。このベルトクリーニング装置35で回収された廃トナーは、廃トナー移送ホースを介して廃トナー収容器に収容される。
画像形成装置本体の上部には、ボトル収容部2が設けられており、ボトル収容部2には、補給用のトナーを収容する4つのトナーボトル2Y,2M,2C,2Kが着脱可能に装着されている。各トナーボトル2Y,2M,2C,2Kと上記各現像装置7との間に設けた補給路を介して、各トナーボトル2Y,2M,2C,2Kから各現像装置7にトナーが補給される。
一方、画像形成装置本体の下部には、記録媒体としての用紙Pを収容した給紙トレイ10や、給紙トレイ10から用紙Pを搬出する給紙ローラ11等が設けられている。なお、記録媒体には、普通紙以外に、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ、OHPシート等が含まれる。また、手差し給紙機構が設けてあってもよい。
画像形成装置本体内には、用紙Pを給紙トレイ10から二次転写ニップを通過させて装置外へ排出するための搬送路Rが配置されている。搬送路Rにおいて、二次転写ローラ36の位置よりも用紙搬送方向上流側には、搬送タイミングを計って用紙Pを二次転写ニップへ搬送するタイミングローラとしての一対のレジストローラ12が配置されている。
また、二次転写ローラ36の位置よりも用紙搬送方向下流側には、用紙Pに転写された未定着画像を定着するための定着装置20が配置されている。さらに、定着装置20よりも搬送路Rの用紙搬送方向下流側には、用紙を装置外へ排出するための一対の排紙ローラ13が設けられている。また、装置本体の上面部には、装置外に排出された用紙をストックするための排紙トレイ14が設けてある。
続いて、図1を参照して、本実施形態に係るプリンタの基本的動作について説明する。 作像動作が開始されると、各作像部4Y,4M,4C,4Kにおける各感光体5が図の時計回りに回転駆動され、各感光体5の表面が帯電装置6によって所定の極性に一様に帯電される。帯電された各感光体5の表面には、露光装置9からレーザー光がそれぞれ照射されて、各感光体5の表面に静電潜像が形成される。このとき、各感光体5に露光する画像情報は所望のフルカラー画像をイエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの色情報に分解した単色の画像情報である。このように各感光体5上に形成された静電潜像に、各現像装置7によってトナーが供給されることにより、静電潜像はトナー画像として顕像化(可視像化)される。
また、作像動作が開始されると、二次転写バックアップローラ32が図の反時計回りに回転駆動し、中間転写ベルト30を図の矢印で示す方向に周回走行させる。また、各一次転写ローラ31に、トナーの帯電極性と逆極性の定電圧又は定電流制御された電圧が印加されることによって、各一次転写ローラ31と各感光体5との間の一次転写ニップにおいて転写電界が形成される。
その後、各感光体5の回転に伴い、感光体5上の各色のトナー画像が一次転写ニップに達したときに、上記一次転写ニップにおいて形成された転写電界によって、各感光体5上のトナー画像が中間転写ベルト30上に順次重ね合わせて転写される。かくして、中間転写ベルト30の表面にフルカラーのトナー画像が担持される。また、中間転写ベルト30に転写しきれなかった各感光体5上のトナーは、クリーニング装置8によって除去される。そして、各感光体5の表面が除電装置によって除電され、表面電位が初期化される。
プリンタの下部では、給紙ローラ11が回転駆動を開始し、給紙トレイ10から用紙Pが搬送路Rに送り出される。搬送路Rに送り出された用紙Pは、レジストローラ12によって搬送が一旦停止される。
その後、所定のタイミングでレジストローラ12の回転駆動を開始し、中間転写ベルト30上のトナー画像が二次転写ニップに達するタイミングに合わせて、用紙Pを二次転写ニップへ搬送する。このとき、二次転写ローラ36には、中間転写ベルト30上のトナー画像のトナー帯電極性と逆極性の転写電圧が印加されており、これにより、二次転写ニップに転写電界が形成されている。そして、この転写電界によって、中間転写ベルト30上のトナー画像が用紙P上に一括して転写される。また、このとき用紙Pに転写しきれなかった中間転写ベルト30上の残留トナーは、ベルトクリーニング装置35によって除去され、廃トナー収容器へと搬送される。
その後、用紙Pは定着装置20へと搬送され、定着装置20によって用紙P上のトナー画像が当該用紙Pに定着される。そして、用紙Pは、排紙ローラ13によって装置外へ排出され、排紙トレイ14上にストックされる。
以上の説明は、用紙上にフルカラー画像を形成するときの画像形成動作であるが、4つの作像部4Y,4M,4C,4Kのいずれか1つを使用して単色画像を形成したり、2つ又は3つの作像部を使用して、2色又は3色の画像を形成したりすることも可能である。
図2は、本実施形態に係る定着装置の断面図である。
図2に示すように、定着装置20は、定着部材としての定着ベルト21と、定着ベルト21の外周面に対向する対向部材としての加圧ローラ22と、定着ベルト21を加熱する加熱源としての2本のハロゲンヒータ23a,23bと、定着ベルト21の内周側に配置されたニップ形成部材24と、ニップ形成部材24を支持する支持部材としてのステー25と、各ハロゲンヒータ23a,23bから放射される熱(輻射熱)又は光を定着ベルト21へ反射する反射部材26と、主に一方のハロゲンヒータ23bから放射される熱(輻射熱)又は光を遮蔽する可動遮蔽部材27と、両方のハロゲンヒータ23a,23bから放射される熱(輻射熱)又は光を遮蔽する固定遮蔽部材28と、定着ベルト21の温度を検知する温度検知手段としての温度センサ29等を備える。
上記定着ベルト21は、薄肉で可撓性を有する無端状のベルト部材(フィルムも含む)で形成される。詳しくは、定着ベルト21は、ニッケルもしくはSUS等の金属材料又はポリイミド(PI)などの樹脂材料で形成された内周側の基材と、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などで形成された外周側の離型層によって構成されている。基材と離型層との間に、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム、又はフッ素ゴム等のゴム材料で形成された弾性層を介在させてもよい。
弾性層が無い場合は、熱容量が小さくなり定着性の向上を達成できるが、未定着トナーを押しつぶして定着させるときにベルト表面の微小な凹凸が画像に転写されて画像のベタ部に光沢ムラを生じる可能性がある。これを防止するには、厚さ100μm以上の弾性層を設けることが望ましい。厚さ100μm以上の弾性層を設けることで、弾性層の弾性変形により微小な凹凸を吸収することができるので、光沢ムラの発生を回避することができるようになる。
本実施形態では、定着ベルト21の低熱容量化を図るために、定着ベルト21を薄くかつ小径化している。具体的には、定着ベルト21を構成する基材、弾性層、離型層のそれぞれの厚さを、20〜50μm、100〜300μm、10〜50μmの範囲に設定し、全体としての厚さを1mm以下に設定している。また、定着ベルト21の直径は、20〜40mmに設定している。さらに低熱容量化を図るためには、望ましくは、定着ベルト21全体の厚さを0.2mm以下にするのがよく、さらに望ましくは、0.16mm以下の厚さとするのがよい。
加圧ローラ22は、芯金22aと、芯金22aの表面に設けられた発泡性シリコーンゴム、シリコーンゴム、又はフッ素ゴムといったゴム材料等から成る弾性層22bと、弾性層22bの表面に設けられたPFA又はPTFE等から成る離型層22cとによって構成されている。加圧ローラ22は、加圧機構によって定着ベルト21側へ加圧され、定着ベルト21を介してニップ形成部材24に当接している。この加圧ローラ22と定着ベルト21とが圧接する箇所では、加圧ローラ22の弾性層22bが押しつぶされることで、所定の幅のニップ部Nが形成されている。
また、加圧ローラ22は、装置本体に設けられたモータ等の駆動源によって回転駆動するように構成されている。加圧ローラ22が回転すると、その駆動力が定着ニップNで定着ベルト21に伝達され、定着ベルト21が従動回転する。
本実施形態では、加圧ローラ22を中実のローラとしているが、中空のローラであってもよい。その場合、加圧ローラ22の内部にハロゲンヒータ等の加熱源を配置してもよい。また、弾性層22bはソリッドゴムでもよいが、加圧ローラ22の内部に加熱源が無い場合は、スポンジゴムを用いてもよい。スポンジゴムの方が、断熱性が高まり定着ベルト21の熱が奪われにくくなるのでより望ましい。
各ハロゲンヒータ23a,23bは、定着ベルト21の内周側に配置され、ニップ部N以外の箇所で定着ベルト21を直接加熱する。本実施形態では、各ハロゲンヒータ23a,23bが、定着ベルト21内の用紙搬送方向上流側の領域において定着ベルト21と直接対向しており、この上流側の領域において定着ベルト21は直接加熱される。
また、各ハロゲンヒータ23a,23bは、装置本体に設けられた電源部により出力制御されて発熱する。その出力制御は、温度センサ29による定着ベルト21の表面温度の検知結果に基づいて行われる。このようなヒータ23の出力制御によって、定着ベルト21は所望の温度(定着温度)に維持される。なお、定着ベルト21の温度を検知する温度センサの代わりに、加圧ローラ22の温度を検知する温度センサを設け、その温度センサで検知した温度により、定着ベルト21の温度を予測するようにしてもよい。
用紙P上に担持された未定着画像Tを定着する際は、まず、加圧ローラ22の回転駆動を開始して定着ベルト21を従動回転させ、ハロゲンヒータ23a,23bの一方又は両方を発熱させて定着ベルト21を加熱する。そして、定着ベルト21の温度が所望の温度にまで上昇した状態で、ニップ部Nに用紙Pを通過させることにより、用紙P上の未定着画像T(トナー)が加熱されると共に加圧されて定着される。
本実施形態では、ハロゲンヒータは2本設けられているが、プリンタで使用する用紙のサイズ等に応じて、ハロゲンヒータの本数を3本以上としてもよい。また、定着ベルト21を輻射熱を用いて加熱する加熱源として、ハロゲンヒータ以外にカーボンヒータ等を用いることも可能である。
ニップ形成部材24は、定着ベルト21の内側でかつ定着ベルト21を介して加圧ローラ22と対向する位置に配置されている。ニップ形成部材24は、基材241と熱伝導部材242とを有する。基材241は、耐熱性に富む樹脂材料、例えばポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等で形成されている。一方、熱伝導部材242は、基材241よりも大きい熱伝導率の部材、例えばカーボンナノチューブ(熱伝導率:3000〜5500W/mK)、グラファイトシート(熱伝導率:700〜1750W/mK)、銀(熱伝導率:420W/mK)、銅(熱伝導率:398W/mK)、アルミニウム(熱伝導率:236W/mK)、又はSECC(電気亜鉛メッキ鋼)等で形成されている。熱伝導部材242の熱伝導率は236W/mK以上であることが好ましい。
熱伝導部材242は、基材241のニップ部N側に配置されている。また、基材241は、ステー25によって支持されている。これにより、加圧ローラ22による加圧力でニップ形成部材24に撓みが生じるのを防止し、定着ベルト21と加圧ローラ22の対向領域の軸方向全体で均一なニップ幅を形成することができる。ステー25は、ニップ形成部材24の撓み防止機能を満足するために、ステンレス等の鋼材をはじめとする金属材料で形成されるが、撓み防止に十分な効果があれば樹脂材料でステー25を形成してもよい。
また、熱伝導部材242のニップ部N側の面には、低摩擦シート243が取り付けられている。定着ベルト21が回転すると、この低摩擦シート243に対して定着ベルト21の内周面が摺動することで、定着ベルト21に作用する摩擦抵抗の低減が図られる。なお、低摩擦シート243を省略することも可能である。
反射部材26は、ステー25とハロゲンヒータ23a,23bとの間に配置され、ステー25に固定支持されている。この反射部材26によって、ハロゲンヒータ23a,23bからの熱を定着ベルト21へ反射することで、熱がステー25等に伝達されるのを抑制し、定着ベルト21を効率良く加熱できるようにして省エネルギー化を図っている。反射部材26の材料としては、アルミニウムやステンレス等が用いられる。特に、アルミニウム製の基材に輻射率の低い(反射率の高い)銀を蒸着したものを用いた場合、定着ベルト21の加熱効率を向上させることが可能である。
可動遮蔽部材27は、例えば、厚さ0.1mm〜1.0mmの金属板を、定着ベルト21の内周面に沿った円弧状の断面形状に形成して構成されている。また、可動遮蔽部材27は、定着ベルト21とハロゲンヒータ23a,23bとの間を周方向に移動可能に構成されている。一方、固定遮蔽部材28は、ステー25に固定されている。固定遮蔽部材28は、定着ベルト21の両端部側にそれぞれ配置され、各ハロゲンヒータ23a,23bの定着ベルト21側を覆っている。可動遮蔽部材27と固定遮蔽部材28はいずれも耐熱性を要するため、これらの素材には、アルミニウム、鉄、ステンレス等の金属材料、又はセラミックを用いることが好ましい。
図3は、本実施形態に係る定着装置の主要部の概略構成を示す斜視図である。
図3に示すように、可動遮蔽部材27は、その幅方向の両端部側に配置された一対の遮蔽部271と、遮蔽部271同士を連結する連結部272とを有する。遮蔽部271は、定着ベルト21への熱を遮蔽する部分であり、定着ベルト21の内周面に沿って周方向に円弧状に形成されている。連結部272は、遮蔽部271よりも周方向に短く形成されており、各遮蔽部271のベルト回転方向上流側に接続されている。このため、遮蔽部271同士の間で連結部272が介在しない部分(ベルト回転方向下流側及び中間部)は、ハロゲンヒータ23a,23bからの光が透過する開放部となっている。
また、図3に示すように、定着ベルト21の両端部の内周側には、ベルト保持部材40が挿入されている。定着ベルト21は、その両端部側でベルト保持部材40によって回転可能に支持されており、基本的にベルト保持部材40以外に定着ベルト21を支持する部材は存在しない。つまり、定着ベルト21は、ローラ等に架け渡されていない無張架の状態にある。ベルト保持部材40は、ハロゲンヒータ23a,23b及びステー25と共に、定着ベルト21の軸方向両側に設けられた一対の側板に固定支持されている。
図4は、定着装置のベルト保持部材が配置された一端部側の構成を示す斜視図、図5は、ベルト保持部材の斜視図である。
図4及び図5に示すように、ベルト保持部材40は、定着ベルト21を回転可能に保持する保持部401と、定着ベルト21の軸方向の寄りを規制する規制部402と、定着装置の側板39にネジなどの締結具で固定される固定部403とを有する。保持部401は、周方向の一部に開口部404を有する部分円筒状に形成されている。この保持部401が定着ベルト21の端部内に挿入されることで、定着ベルト21が保持部401によって回転可能に保持される。
図4に示すように、各部材を組み付けた状態では、保持部401の開口部404にはニップ形成部材24の端部が配置される。また、保持部401の内周側には、固定遮蔽部材28が配置される。これにより、ハロゲンヒータ23a,23bからの熱によってベルト保持部材40が過剰に温度上昇するのが抑制され、熱による変形や破損が防止される。
規制部402は、少なくとも定着ベルト21の外径よりも大きく形成されている。図5に示すように、定着ベルト21は、その端部が規制部402に対向した状態で配置される。そして、駆動中に定着ベルト21に軸方向への寄り移動が生じた場合は、定着ベルト21の端部が規制部402に当接することでその寄り移動が規制される。
図6及び図7は、可動遮蔽部材の駆動機構の構成を示す斜視図である。
図6に示すように、可動遮蔽部材27は、ベルト保持部材40に取り付けられた円弧状のスライド部材41を介して支持されている。本実施形態では、可動遮蔽部材27の端部に設けられた突起270が、スライド部材41に設けられた孔部410に挿入されることで、可動遮蔽部材27がスライド部材41に取り付けられる。また、スライド部材41には凸部411が設けてあり、その凸部411がベルト保持部材40に設けられた円弧状の溝部405に挿入されることで、スライド部材41は溝部405に沿ってスライド移動可能に構成されている。これにより、可動遮蔽部材27は、スライド部材41と一体的に、ベルト保持部材40の周方向に往復移動可に構成されている。
また、図7に示すように、スライド部材41には、その周方向にギア部412が設けられている。このギア部412には、複数の伝達ギア43,44,45から成るギア列を介して駆動源であるモータ42が連結されている。これにより、モータ42が駆動すると、その駆動力がギア列(伝達ギア43,44,45)を介してスライド部材41に伝達され、可動遮蔽部材27が正逆方向に回転する。
図8は、可動遮蔽部材の移動位置を示す断面図である。
図8において、(a1)(a2)は、可動遮蔽部材27を待機位置に配置した状態を示す図であり、(a1)は、可動遮蔽部材27の幅方向端部側の断面図(図3中のX−X位置での断面図)、(a2)は、可動遮蔽部材27の幅方向中央部側の断面図(図3中のY−Y位置での断面図)である。また、図8において、(b1)(b2)は、可動遮蔽部材27を遮蔽位置に配置した状態を示す図であり、(b1)は、可動遮蔽部材27の幅方向端部側の断面図(図3中のX−X位置での断面図)、(b2)は、可動遮蔽部材27の幅方向中央部側の断面図(図3中のY−Y位置での断面図)である。
可動遮蔽部材27が待機位置から遮蔽位置に移動すると、特に遮蔽部271がハロゲンヒータ23a,23bと定着ベルト21との間の領域に多く進入した状態で配置される。これにより、定着ベルト21に対するハロゲンヒータ23a,23bの光照射範囲が減少し、定着ベルト21の加熱が抑制される。反対に、可動遮蔽部材27が遮蔽位置から待機位置に移動すると、遮蔽部271はハロゲンヒータ23a,23bと定着ベルト21との間の領域から退避する。これにより、定着ベルト21に対するハロゲンヒータ23a,23bの光照射範囲が広がり、定着ベルト21の加熱が促進されるようになる。
図9〜図11は、各種サイズの用紙が定着処理される際の可動遮蔽部材の位置を示す図である。
図9〜図11に示すように、2本のハロゲンヒータ23a,23bは、互いに発熱領域が異なるヒータで構成されている。一方のハロゲンヒータ23aは、定着ベルトの幅方向中央側に発熱部(発光部)h1を有する第1加熱源としての中央ヒータであり、他方のハロゲンヒータ23bは、定着ベルトの幅方向両端部側に発熱部(発光部)h2を有する第2加熱源としての端部ヒータである。また、端部ヒータ23bの各発熱部h2における内側端部(定着ベルト21の幅方向中央側の端部)は、中央ヒータ23aの発熱部h1の両端部に対応する位置に配置されている。
図9において、通紙幅Aはハガキサイズに対応し、通紙幅DはA3ノビサイズに対応する。これらのサイズの用紙の定着処理を行う場合は、可動遮蔽部材27を待機位置に配置する。そして、ハガキサイズ(通紙幅A)の用紙の定着処理を行う場合は、中央ヒータ23aのみに通電し、幅方向中央側の発熱部h1を発熱させる。一方、A3ノビサイズ(通紙幅D)の用紙の定着処理を行う場合は、中央ヒータ23aと端部ヒータ23bの両方に通電し、幅方向中央側の発熱部h1と幅方向両端部側の発熱部h2を発熱させる。
図10において、通紙幅CはA3縦サイズに対応する。この場合、中央ヒータ23aと端部ヒータ23bの両方に通電して両方の発熱部h1,h2を発熱させるが、可動遮蔽部材27は、上記図9に示す待機位置から図の下方へ少し移動した遮蔽位置に配置される。これにより、端部ヒータ23bの発熱部h2のうち、通紙幅Cよりも外側の部分が可動遮蔽部材27によって覆われ、A3縦サイズの通紙幅Cに対応した範囲が加熱される。
図11において、通紙幅BはA4縦サイズに対応する。この場合も、中央ヒータ23aと端部ヒータ23bの両方に通電して両方の発熱部h1,h2を発熱させるが、可動遮蔽部材27は、上記図10に示す遮蔽位置からさらに図の下方へ少し移動した別の遮蔽位置に配置される。これにより、端部ヒータ23bの発熱部h2のうち、通紙幅Bよりも外側の部分が可動遮蔽部材27によって覆われ、A4縦サイズの通紙幅Bに対応した範囲が加熱される。
このように、本実施形態に係る定着装置では、用紙のサイズに応じて可動遮蔽部材27を待機位置と遮蔽位置との間で移動させることで、端部ヒータ23bの発熱部h2を覆ったり露出させたりして定着ベルト21に対する光照射範囲(加熱範囲)を調整する。また、本実施形態では、各遮蔽部271の互いに向かい合う端縁に移動方向に対して傾斜する傾斜部273が設けられている。これにより、待機位置からの移動距離(回転角)を制御することで、種々の用紙サイズに応じて端部ヒータ23bの発熱部h2を覆う範囲を調整することができる。
ところで、種々のサイズの用紙に対して少ない本数のヒータを用いて定着処置を行う定着装置においては、上述のように、非通紙領域(記録媒体非通過領域)において定着ベルトの温度が過剰に上昇するといった課題がある。そして、斯かる課題に対しては、可動遮蔽部材を設けて熱を遮蔽する方法と、熱伝導率の高い熱伝導部材を用いて熱を拡散する方法とがある。
図12は、ニップ形成部材を熱伝導率の高い熱伝導部材で構成した場合の作用・効果を説明するための参考図である。
この例では、ニップ形成部材24を構成する基材241のニップ部側(図の下側)に、基材241よりも熱伝導率の大きい熱伝導部材242を設けている。図12におけるニップ形成部材24の図は、定着ベルトの幅方向中央から一端部までの断面図である。なお、本発明の実施形態と同様に、ニップ形成部材24の他に、定着ベルト、加圧ローラ、ハロゲンヒータ等も勿論設けられている。
非通紙領域における定着ベルトの温度上昇は、ハロゲンヒータの発熱部の長さ(発熱長)よりも通紙幅が短い場合に生じ得る。図12に示すような発熱長と通紙幅の関係で定着ベルトの加熱を行った場合、ニップ形成部材24に熱伝導部材242が設けられていない構成では、グラフ中の点線に示すように、特に通紙領域近傍の非通紙領域で定着ベルトの温度が高くなる。一方、同様の発熱長と通紙幅の関係で、ニップ形成部材24に熱伝導部材242が設けられた構成では、定着ベルトの熱が熱伝導部材によって幅方向に拡散するので、グラフ中の実線に示すように、非通紙領域での温度上昇が抑制される。
このように、熱伝導部材242を設けることで非通紙領域における温度上昇を抑制することができる。また、このような温度上昇抑制効果は、熱伝導部材242を長く配置するほど高まる傾向にある。しかしながら、熱伝導部材242を長く配置すると、定着ベルトの端部温度が立ち上げ直後に低下するといった不具合が生じる場合がある。
例えば、図13に示す例で説明すると、A3縦サイズ(通紙幅C)の用紙の非通紙領域における温度上昇を効果的に抑制する観点からすれば、熱伝導部材242を端部ヒータ23bの発熱部h2を越えた位置まで伸ばすのが好ましい。しかしながら、この場合、最大用紙サイズであるA3ノビサイズ(通紙幅D)の用紙を定着処理する場合に、その通紙領域の端部側で定着ベルトの温度が低下する可能性がある。これは、端部ヒータ23bの発熱部h2の外側端部では発熱量が低下しがちであるため、この外側端部を越えた位置まで熱伝導部材242が配置されていると、幅方向外側に拡散する熱量が多くなり、十分な蓄熱が得られないためである。そして、このような温度低下が生じた場合は、生産性(定着処理速度)を低下させるなどの対応が必要になる。また、これを改善するには、発熱部h2を幅方向外側に長くすればよいが、そうすると無駄なエネルギー消費や装置の大型化に繋がる。
従って、最大通紙幅の用紙を定着処理する際の温度低下を防止するには、熱伝導部材の長さを端部ヒータの発熱部の外側端部を越えない長さに設定しなければならないといった制約がある。しかしながら、そのように設定すると、最大通紙幅のA3ノビサイズよりも小さいA3縦サイズ等の用紙を定着処理する際に、非通紙領域における温度上昇抑制効果が限定的となってしまう。このように、熱伝導部材を用いた構成では、最大通紙幅の端部温度低下防止と、最大通紙幅よりも小さいサイズの非通紙領域における温度上昇抑制の両方を満足するように調整することは困難であった。
また、非通紙領域における温度上昇を抑制する別の手段として可動遮蔽部材を用いた方法があるが、可動遮蔽部材だけで種々のサイズの非通紙領域における温度上昇を効果的に抑制するのは容易ではない。例えば、中央ヒータと端部ヒータを有する構成においては、可動遮蔽部材のみで対応しようとすると、両ヒータを覆うことができる遮蔽位置まで可動遮蔽部材を移動させる必要がある。しかしながら、近年のコンパクト化に対応して定着ベルトのサイズが小さくなりつつあることから、定着ベルト内での可動遮蔽部材の移動ストロークが制限され、待機位置から遠い側のヒータを十分に覆うことが困難となってきている。これに対して、限られた移動ストロークでも十分に遮蔽できるように、予め可動遮蔽部材が届かない範囲に反射部材等を伸ばしてヒータを部分的に覆っておくこともできる。しかしながら、そうすると、ヒータの照射範囲が絞られるため、効率のよい加熱ができなくなるといったデメリットがある。
以上のように、熱伝導部材と可動遮蔽部材のいずれか一方のみを用いた構成では、種々の用紙サイズに対応して非通紙領域における温度上昇を効果的に抑制しつつ、さらに生産性を考慮して温度低下を防止することは容易には実現し難いといった事情がある。
そこで、本発明では、熱伝導部材と可動遮蔽部材の両方を用いて、一方のみを用いた場合の課題を解消できるように工夫している。そのため、本発明の実施形態では、熱伝導部材の長さ及び可動遮蔽部材の配置を以下のように設定している。
図14は、本発明の実施形態における、各種用紙サイズ、熱伝導部材の長さ、可動遮蔽部材及び固定遮蔽部材の配置の関係を示す図である。
なお、以下の説明において、定着ベルトの幅方向中央側を「幅方向内側」と称し、定着ベルトの幅方向端部側を「幅方向外側」と称することにする。
図14に示すように、熱伝導部材242の長さは、その両方の幅方向外側端部242outが端部ヒータ23bの発熱部h2の幅方向内側端部h2inから幅方向外側端部h2outまでの範囲に配置される長さに設定されている。ここで、本実施形態では、熱伝導部材242の幅方向両端部側に形成された開口部47の幅方向内側端部の位置を、上記熱伝導部材242の幅方向外側端部242outとしている。
これらの開口部47は、熱伝導部材242を上記ニップ形成部材24の基材241に対して位置決めするために設けられたものである。各開口部47に対して基材241に設けられた位置決め部としての突起が挿入されることで、基材241に対する熱伝導部材242の幅方向の位置決めがなされる。
開口部47が形成された箇所では、熱伝導部材242が定着ベルト21に対して接触する面積が少なくなるため、開口部47が形成された箇所から幅方向外側への熱伝導機能は低くなる。特に、本実施形態では、開口部47の用紙搬送方向長さ(記録媒体搬送方向長さ)L2が熱伝導部材242の用紙搬送方向長さ(記録媒体搬送方向長さ)L1の半分以上であるため、開口部47から幅方向外側への熱伝導量は少なくなる。すなわち、本実施形態では、熱伝導部材242の幅方向領域のうち、幅方向中央から開口部47に至るまでの領域Eが、主に熱伝導部として機能が期待される部分である。これに対し、開口部47から幅方向外側の領域Fは、熱伝導機能を多少有するものの前記熱伝導部に比べて熱伝導機能が低く、主に位置決め部として機能のために設けられた部分である。
以上の理由から、本実施形態では、熱伝導部材242を構成する部分のうち、熱伝導部材としての本来の機能が期待される熱伝導部(領域E)の幅方向外側端部(開口部47の幅方向内側端部)を、上記熱伝導部材242の幅方向外側端部242outとしている。なお、本実施形態とは異なり、開口部47の用紙搬送方向長さL2が熱伝導部材242の用紙搬送方向長さL1の半分未満である場合は、開口部47から幅方向外側の部分(領域F)も主に熱伝導部として機能するものと判断する。従って、この場合は、開口部47から幅方向外側の部分(領域F)も含めた熱伝導部材242全体における幅方向外側端部を上記熱伝導部材242の幅方向外側端部242outとする。
また、図15に示すように、熱伝導部材242は、その幅方向外側端部側に上記のような位置決め部としての開口部を有しない構成であってもよい。この場合、熱伝導部材242は、その幅方向全体に渡って定着ベルト21に対する接触幅(用紙搬送方向の幅)が同じとなるため、全体が熱伝導部として機能する。従って、この場合は、図15に示すように、熱伝導部材242全体における幅方向外側端部を上記熱伝導部材242の幅方向外側端部242outとする。
続いて、上記端部ヒータ23bの発熱部h2の幅方向内側端部h2in及び幅方向外側端部h2outについて説明する。図16に示すように、本実施形態では、中央ヒータ23a及び端部ヒータ23bはハロゲンヒータであり、発熱体として、円筒状のガラス管50内に挿入されたフィラメント51を有する。このフィラメント51が長手方向に渡って連続して密に巻かれることで各発熱部h1,h2が構成される。よって、本実施形態のように、加熱源としてハロゲンヒータを用いた構成においては、上記端部ヒータ23bの発熱部h2の幅方向内側端部h2in及び幅方向外側端部h2outを、フィラメント51の密に巻かれた部分の幅方向内側端部及び幅方向外側端部とする。
上記の如く、熱伝導部材242の幅方向外側端部242outが端部ヒータ23bの発熱部h2の幅方向外側端部h2outよりも幅方向外側に位置しないように長さを設定することで、熱伝導部材242が長くなり過ぎないようにしている。これにより、定着ベルト21の熱が最大通紙領域の幅方向外側に拡散するのを抑制することができ、最大通紙幅の用紙(ここでは通紙幅DのA3ノビサイズ)を定着処理する際の温度低下を抑制することが可能となる。
また、上記の如く、熱伝導部材242の幅方向外側端部242outが端部ヒータ23bの発熱部h2の幅方向内側端部h2inよりも幅方向内側に位置しないように長さを設定することで、熱伝導部材242が短くなり過ぎないようにしている。これにより、熱伝導部材242による温度上昇抑制効果を十分に確保し、主にハガキサイズ(通紙幅A)等の小サイズ用紙を通紙する際の非通紙領域における温度上昇を効果的に抑制できるようにしている。
特に、本実施形態では、熱伝導部材242の幅方向外側端部242outが、通紙幅Dの最大通紙領域(最大記録媒体通過領域)よりも幅方向外側で、端部ヒータ23bの発熱部h2の幅方向外側端部h2outよりも幅方向内側に配置されている。すなわち、熱伝導部材242長さを最大幅用紙通紙時の温度低下を抑制できる範囲内に抑えつつできるだけ長くすることで、非通紙領域における温度上昇抑制をより効果的に発揮できるようにしている。
本実施形態では、1つの熱伝導部材242を幅方向に渡って連続して設けているが、図17に示す例のように、2つの熱伝導部材242a,242bを幅方向に並べて配置してもよい。さらに、図18に示す例のように、2つの熱伝導部材242a,242bを互いに幅方向に離して配置してもよい。また、この例では、ニップ部に段差が生じないように、熱伝導部材242a,242b同士の間に基材241等を配置している。いずれの例においても、上記と同様に、各熱伝導部材242a,242bの幅方向外側端部242outを、端部ヒータ23bの発熱部h2の幅方向内側端部h2inから幅方向外側端部h2outまでの範囲に配置することで、小サイズ用紙の非通紙領域における温度上昇を効果的に抑制しつつ、最大通紙領域の端部側での温度低下を抑制することが可能である。
また、各熱伝導部材242a,242bの幅方向内側端部242inは、ハガキサイズの通紙幅Aの端部と同じ位置かそれよりは幅方向内側に配置されることが望ましい。言い換えれば、熱伝導部材242a,242bは、最小用紙サイズの通紙領域(最小記録媒体通過領域)の幅方向端部あるいはそれよりも幅方向内側の位置から幅方向外側へ連続して配置されることが望ましい。このように構成することで、最小通紙幅の非通紙領域における温度上昇抑制機能を確保することができる。
可動遮蔽部材27は、主にA3縦サイズ(通紙幅C)やA4縦サイズ(通紙幅B)の比較的大サイズの用紙の非通紙領域における温度上昇を抑制するために設けられている。このため、本実施形態では、可動遮蔽部材27がA4縦サイズ以上のサイズの非通紙領域における端部ヒータ23bの発熱部h2を覆うことができるように、一対の遮蔽部271の幅方向内側端部271inがA4縦サイズ(通紙幅B)の通紙領域端部に対応する位置に配置されている(図14参照)。ただし、遮蔽部271の配置はこの位置に限定されるものではなく、用いられる用紙のサイズに応じて適宜変更可能である。また、遮蔽部271の幅方向外側端部271outは、固定遮蔽部材28と重なる位置に配置されている。このように構成することで、可動遮蔽部材27と固定遮蔽部材28との間から光が漏れるのを抑制し、熱(光)の遮蔽を確実に行えるようにしている。
上述のように、端部ヒータ23bは、主に大サイズ用紙(最大サイズを除く)の非通紙領域における温度上昇を抑制するために設けられているので、図9に示すように、最大サイズ又は小サイズの用紙を定着処理する場合は、可動遮蔽部材27はいずれのヒータ23a,23bの発熱部h1,h2も覆わない待機位置に配置される。この場合、特に小サイズ用紙(通紙幅A)に対しては、熱伝導部材242が十分な長さで配置されているため、非通紙領域に蓄積される熱が熱伝導部材242によって幅方向に拡散され、非通紙領域おける温度上昇が効果的に抑制される。一方、最大サイズ用紙(通紙幅D)に対しては、熱伝導部材242が長く配置されているわけではないが、もともと端部ヒータ23bの発熱部h2の幅方向外側端部h2outが最大通紙幅の端部とほぼ同等の位置に配置されているため、非通紙領域において熱が蓄積されにくく温度上昇は生じ難い。
また、大サイズ用紙を定着処理する場合は、図10又は図11に示すように可動遮蔽部材27を所定の遮蔽位置に移動させ、端部ヒータ23bの発熱部h2を覆うことで、主に端部ヒータ23bからの熱を遮蔽する。これにより、大サイズ用紙の場合の非通紙領域における温度上昇を効果的に抑制できる。なお、この場合の温度上昇抑制効果としては、可動遮蔽部材27による熱遮蔽機能が大きく寄与するが、これに加え熱伝導部材242による熱拡散機能もある程度寄与している。
以上のように、本発明によれば、熱伝導部材242と可動遮蔽部材27の両方を用いることで、種々の用紙サイズに対応して非通紙領域における温度上昇を効果的に抑制しつつ、最大通紙領域の端部側での温度低下も抑制することができる。すなわち、熱伝導部材242によって、主にハガキサイズやA4縦サイズ等の比較的小サイズの用紙の非通紙領域における温度上昇を抑制し、可動遮蔽部材27によって、主にA3縦サイズやA4縦サイズ等の比較的大サイズの用紙の非通紙領域における温度上昇を抑制することで、非通紙領域における温度上昇抑制と通紙領域における温度低下抑制の両立を実現できる。これにより、生産性(定着処理速度)の維持も図れるようになる。
また、本発明においては、可動遮蔽部材27は少なくとも端部ヒータ23bの発熱部h2を覆うことができるように構成されていればよい。このため、図9に示すように、端部ヒータ23bを中央ヒータ23aよりも可動遮蔽部材27の待機位置に近い位置(待機位置から可動遮蔽部材27の移動方向側に近い位置)に配置することで、遮蔽部材27は短い移動ストロークで端部ヒータ23bからの熱を遮蔽することができるようになる。このような構成にすることで、例えば直径が40mm以下、さらには35mm以下の径の小さい定着ベルト21を用いた定着装置においても可動遮蔽部材27を配置することができるようになる。すなわち、本実施形態に係る構成は、特にこのような径の小さい定着ベルトを用いた構成に対して有利である。ただし、定着ベルト21の直径があまり小さすぎるとステー25等の剛性が確保できなくなったり、ハロゲンヒータ23a,23b等を配置できなくなったりするため、定着ベルト21の直径は少なくとも20mm以上、好ましくは25mm以上であるのがよい。
また、上記のように、待機位置から遠い側のヒータを可動遮蔽部材27によって覆わなくてもよい構成にすることで、遠い側のヒータを覆うために可動遮蔽部材の届かない範囲に反射部材等を伸ばすような構成を採用する必要がない。このため、ヒータの光照射範囲を広く確保することができ、効率のよい加熱を実現することができる。
以上、本発明について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。上述の実施形態では、用紙サイズとして、ハガキサイズ、A4縦サイズ、A3縦サイズ、A3ノビサイズを例に挙げて説明したが、その他に、例えばレター縦サイズやダブルレター縦サイズ等の用紙にも対応した定着装置においても、本発明の構成を適用可能である。また、本発明に係る定着装置を搭載する画像形成装置は、図1に示すようなカラープリンタに限らず、モノクロプリンタであってもよい。また、プリンタに限らず、複写機、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等であってもよい。