以下、添付の図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の実施の形態を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
まず、図1を参照して、本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の全体構成及び動作について説明する。
図1に示す画像形成装置1は、カラーレーザープリンタであり、その装置本体の中央には、4つの作像部4Y,4M,4C,4Kが設けられている。各作像部4Y,4M,4C,4Kは、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の異なる色の現像剤を収容している以外は同様の構成となっている。
具体的に、各作像部4Y,4M,4C,4Kは、潜像担持体としてのドラム状の感光体5と、感光体5の表面を帯電させる帯電装置6と、感光体5の表面にトナーを供給する現像装置7と、感光体5の表面をクリーニングするクリーニング装置8などを備える。なお、図1では、ブラックの作像部4Kが備える感光体5、帯電装置6、現像装置7、クリーニング装置8のみに符号を付しており、その他の作像部4Y,4M,4Cにおいては符号を省略している。
各作像部4Y,4M,4C,4Kの下方には、感光体5の表面を露光する露光装置9が配置されている。露光装置9は、光源、ポリゴンミラー、f−θレンズ、反射ミラー等を有し、画像データに基づいて各感光体5の表面へレーザー光を照射する。
また、各作像部4Y,4M,4C,4Kの上方には、転写装置3が配置されている。転写装置3は、中間転写体としての中間転写ベルト30と、一次転写手段としての4つの一次転写ローラ31と、二次転写手段としての二次転写ローラ36と、二次転写バックアップローラ32と、クリーニングバックアップローラ33と、テンションローラ34と、ベルトクリーニング装置35とを備える。
中間転写ベルト30は、無端状のベルトであり、二次転写バックアップローラ32、クリーニングバックアップローラ33及びテンションローラ34によって張架されている。ここでは、二次転写バックアップローラ32を回転駆動することによって、中間転写ベルト30は図の矢印で示す方向に周回走行(回転)する。
4つの一次転写ローラ31は、それぞれ、各感光体5との間で中間転写ベルト30を挟み込んで一次転写ニップを形成している。また、各一次転写ローラ31には、電源が接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が各一次転写ローラ31に印加される。
二次転写ローラ36は、二次転写バックアップローラ32との間で中間転写ベルト30を挟み込んで二次転写ニップを形成している。また、上記一次転写ローラ31と同様に、二次転写ローラ36にも電源が接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が二次転写ローラ36に印加される。
画像形成装置本体の上部には、ボトル収容部2が設けられており、ボトル収容部2には、補給用のトナーを収容する4つのトナーボトル2Y,2M,2C,2Kが着脱可能に装着されている。各トナーボトル2Y,2M,2C,2Kと上記各現像装置7との間に設けた補給路を介して、各トナーボトル2Y,2M,2C,2Kから各現像装置7にトナーが補給される。
一方、画像形成装置本体の下部には、記録媒体としての用紙Pを収容した給紙トレイ10や、給紙トレイ10から用紙Pを搬出する給紙ローラ11等が設けられている。なお、記録媒体には、普通紙以外に、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ、OHPシート等が含まれる。また、手差し給紙機構が設けてあってもよい。
画像形成装置本体内には、用紙Pを給紙トレイ10から二次転写ニップを通過させて装置外へ排出するための搬送路Rが形成されている。搬送路Rにおいて、二次転写ローラ36の位置よりも用紙搬送方向上流側には、搬送タイミングを計って用紙Pを二次転写ニップへ搬送するタイミングローラとしての一対のレジストローラ12が配置されている。
また、二次転写ローラ36の位置よりも用紙搬送方向下流側には、用紙Pに転写された未定着画像を定着するための定着装置20が配置されている。さらに、定着装置20よりも搬送路Rの用紙搬送方向下流側には、用紙を装置外へ排出するための一対の排紙ローラ13が配置されている。また、装置本体の上面部には、装置外に排出された用紙をストックするための排紙トレイ14が設けてある。
続いて、図1を参照して、本実施形態に係るプリンタの基本的動作について説明する。
作像動作が開始されると、各作像部4Y,4M,4C,4Kにおける各感光体5が図の時計回りに回転駆動され、各感光体5の表面が帯電装置6によって所定の極性に一様に帯電される。帯電された各感光体5の表面には、露光装置9からレーザー光がそれぞれ照射されて、各感光体5の表面に静電潜像が形成される。このとき、各感光体5に露光する画像情報は所望のフルカラー画像をイエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの色情報に分解した単色の画像情報である。このように各感光体5上に形成された静電潜像に、各現像装置7によってトナーが供給されることにより、静電潜像はトナー画像として顕像化(可視像化)される。
また、作像動作が開始されると、二次転写バックアップローラ32が図の反時計回りに回転駆動し、中間転写ベルト30を図の矢印で示す方向に周回走行させる。また、各一次転写ローラ31に、トナーの帯電極性と逆極性の定電圧又は定電流制御された電圧が印加されることによって、各一次転写ローラ31と各感光体5との間の一次転写ニップにおいて転写電界が形成される。
その後、各感光体5の回転に伴い、感光体5上の各色のトナー画像が一次転写ニップに達したときに、上記一次転写ニップにおいて形成された転写電界によって、各感光体5上のトナー画像が中間転写ベルト30上に順次重ね合わせて転写される。かくして、中間転写ベルト30の表面にフルカラーのトナー画像が担持される。また、中間転写ベルト30に転写しきれなかった各感光体5上のトナーは、クリーニング装置8によって除去される。
プリンタの下部では、給紙ローラ11が回転駆動を開始し、給紙トレイ10から用紙Pが搬送路Rに送り出される。搬送路Rに送り出された用紙Pは、レジストローラ12によって搬送が一旦停止される。
その後、所定のタイミングでレジストローラ12の回転駆動を開始し、中間転写ベルト30上のトナー画像が二次転写ニップに達するタイミングに合わせて、用紙Pを二次転写ニップへ搬送する。このとき、二次転写ローラ36には、中間転写ベルト30上のトナー画像のトナー帯電極性と逆極性の転写電圧が印加されており、これにより、二次転写ニップに転写電界が形成されている。そして、この転写電界によって、中間転写ベルト30上のトナー画像が用紙P上に一括して転写される。また、このとき用紙Pに転写しきれなかった中間転写ベルト30上の残留トナーは、ベルトクリーニング装置35によって除去される。
その後、用紙Pは定着装置20へと搬送され、定着装置20によって用紙P上のトナー画像が当該用紙Pに定着される。そして、用紙Pは、排紙ローラ13によって装置外へ排出され、排紙トレイ14上にストックされる。
以上の説明は、用紙上にフルカラー画像を形成するときの画像形成動作であるが、4つの作像部4Y,4M,4C,4Kのいずれか1つを使用して単色画像を形成したり、2つ又は3つの作像部を使用して、2色又は3色の画像を形成したりすることも可能である。
図2は、本実施形態に係る定着装置の概略構成を示す側面図である。
以下、図2に基づき、定着装置20の基本構成について説明する。
図2に示すように、定着装置20は、定着部材としての定着ベルト21と、定着ベルト21に対向して配置される対向部材としての加圧ローラ22と、定着ベルト21を加熱する加熱源としての2本のヒータ23a,23bと、定着ベルト21を介して加圧ローラ22と対向する位置に配置されたニップ形成部材24と、ニップ形成部材24を支持する支持部材としてのステー25と、ヒータ23a,23bから放射される光又は熱を定着ベルト21へ反射する反射部材26と、定着ベルト21の温度を検知する温度検知手段としての温度センサ27と、定着ベルト21から用紙を分離する分離部材28とを備える。
定着ベルト21は、薄肉で可撓性を有する無端状のベルト部材(フィルムも含む)で構成されている。詳しくは、定着ベルト21は、ニッケルもしくはSUS等の金属材料又はポリイミド(PI)等の樹脂材料で形成された内周側の基材と、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等で形成された外周側の離型層によって構成されている。また、基材と離型層との間に、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム、又はフッ素ゴム等のゴム材料で形成された弾性層を介在させてもよい。
加圧ローラ22は、芯金22aと、芯金22aの表面に設けられた発泡性シリコーンゴム、シリコーンゴム、又はフッ素ゴム等から成る弾性層22bと、弾性層22bの表面に設けられたPFA又はPTFE等から成る離型層22cによって構成されている。加圧ローラ22は、バネ等を有する加圧手段によって定着ベルト21側へ加圧され、定着ベルト21を介してニップ形成部材24に当接している。加圧ローラ22とニップ形成部材24とが当接する箇所では、加圧ローラ22の弾性層22bが押しつぶされることで、加圧ローラ22と定着ベルト21との間に所定幅のニップ部Nが形成されている。また、加圧ローラ22は、プリンタ本体に設けられたモータ等の駆動源によって回転駆動するように構成されている。加圧ローラ22が回転駆動すると、その駆動力がニップ部Nで定着ベルト21に伝達され、定着ベルト21が従動回転する。
本実施形態では、加圧ローラ22を中実のローラとしているが、中空のローラであってもよい。その場合、加圧ローラ22の内部にヒータを配置してもよい。また、弾性層が無い場合は、熱容量が小さくなり定着性が向上するが、未定着トナーを押しつぶして定着させるときにベルト表面の微小な凹凸が画像に転写されて画像のベタ部に光沢ムラが生じる可能性がある。これを防止するには、厚さ100μm以上の弾性層を設けることが望ましい。厚さ100μm以上の弾性層を設けることで、弾性層の弾性変形により微小な凹凸を吸収することができるので、光沢ムラの発生を回避することができるようになる。弾性層22bはソリッドゴムでもよいが、加圧ローラ22の内部にヒータが無い場合は、スポンジゴムを用いてもよい。スポンジゴムの方が、断熱性が高まり定着ベルト21の熱が奪われにくくなるのでより望ましい。また、定着部材と対向部材は、互いに圧接する場合に限らず、加圧を行わず単に接触させるだけの構成とすることも可能である。
2本のヒータ23a,23bは、定着ベルト21の内周側に配置され、それぞれの両端部が定着装置20の側板に固定されている。本実施形態では、ヒータ23a,23bによって定着ベルト21を直接加熱する直接加熱方式を採用している。直接加熱方式では、定着ベルト21を効率良く加熱できるため、省エネルギー性に優れ、目標温度に達するまでの立ち上げ時間等の短縮化を図れる。各ヒータ23a,23bの出力制御は、上記温度センサ27による定着ベルト21の表面温度の検知結果に基づいて行われる。これにより、定着ベルト21の温度(定着温度)が所望の温度となるように制御される。温度センサ27は、サーモパイル、サーモスタット、サーミスタ、NCセンサ等、温度を検知できるものであれば何であってもよい。
ニップ形成部材24は、加圧ローラ22と対向するように定着ベルト21の内周側に配置され、定着ベルト21の軸方向に延びる長手状の部材である。このように形成されたニップ形成部材24に加圧ローラ22が当接することで、ニップ部Nが軸方向に渡って連続して形成される。また、ニップ形成部材24は、ステー25によって固定支持されている。これにより、加圧ローラ22による圧力でニップ形成部材24に撓みが生じるのを防止し、加圧ローラ22の軸方向に渡って均一なニップ幅が得られるようにしている。
また、ニップ形成部材24は、定着ベルト21と接触する表面に低摩擦シート29を有している。定着ベルト21が回転する際、この低摩擦シート29に対し定着ベルト21が摺動することで、定着ベルト21に生じる駆動トルクが低減され、定着ベルト21への摩擦力による負荷が軽減される。また、ニップ形成部材24のニップ出口側には突出部45が形成されている。突出部45は、定着ベルト21を介して加圧ローラ22と接触しておらず、加圧ローラ22との接触により形成されるものではない。このような突出部45が形成されていることで、ニップ部Nでの定着後の用紙Pを定着ベルト21から浮かすことができ、分離性が高められる。
ニップ形成部材24の材料としては、耐熱温度200℃以上の耐熱性部材を用いることが望ましい。具体的には、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の一般的な耐熱性樹脂が挙げられる。このような耐熱性部材でニップ形成部材24を形成することで、トナー定着温度域で、熱によるニップ形成部材24の変形を防止することができるため、安定したニップ部Nの状態が確保でき、出力画質の安定化を図れる。
ステー25は、定着ベルト21の内周側に配置され、その両端部が定着装置20の側板に固定されている。ステー25の材料としては、ニップ形成部材24の撓み防止機能を満足するために、ステンレスや鉄等の機械的強度が高い金属材料を用いることが望ましい。しかし、必要な強度が得られるのであれば、ステー25を樹脂製とすることも可能である。
反射部材26は、ステー25とヒータ23a,23bとの間に配置され、ステー25によって固定支持されている。このように反射部材26を配置することで、ヒータ23a,23bからステー25側に放射された光又は熱が定着ベルト21へ反射され、定着ベルト21を効率良く加熱することができる。また、反射部材26によって熱がステー25等に伝達されるのを抑制することができ、省エネルギー化も図れる。反射部材26は、ヒータ23a,23bによって直接加熱されるため、高融点の金属材料等で形成されることが望ましい。なお、本実施形態のような反射部材26を設けずに、ステー25のヒータ23a,23b側の面を研磨又は塗装等の鏡面処理をし、反射面を形成してもよい。また、このようなステー25の反射面、上記反射部材26の反射率は、90%以上であることが望ましい。
また、本実施形態では、定着ベルト21の低熱容量化を図るために、定着ベルト21を薄くかつ小径化している。具体的には、定着ベルト21を構成する基材、弾性層、離型層のそれぞれの厚さを、20〜50μm、100〜300μm、10〜50μmの範囲に設定し、全体としての厚さを1mm以下に設定している。また、定着ベルト21の直径は、20〜40mmに設定している。さらに低熱容量化を図るためには、望ましくは、定着ベルト21全体の厚さを0.2mm以下にするのがよく、さらに望ましくは、0.16mm以下の厚さとするのがよい。また、定着ベルト21の直径は、30mm以下とするのが望ましい。
また、本実施形態では、加圧ローラ22の直径を20〜40mmに設定しており、定着ベルト21の直径と加圧ローラ22の直径を同等となるように構成している。これに限らず、定着ベルト21の直径が加圧ローラ22の直径よりも小さくなるように形成してもよい。この場合、ニップ部Nにおける定着ベルト21の曲率が加圧ローラ22の曲率よりも大きくなるため、ニップ部Nから排出される用紙Pが定着ベルト21から分離されやすくなる。
上述のように構成された定着装置20の基本動作について簡単に説明する。
プリンタの電源スイッチが投入されると、ヒータ23a,23bに電力が供給されると共に、加圧ローラ22と定着ベルト21との回転が開始される。その後、定着ベルト21の温度が所定の目標温度に達すると、給紙トレイ10から用紙Pが給送されて、二次転写ローラ36の位置で、用紙P上に未定着のカラー画像が担持(転写)される。未定着画像T(トナー画像)が担持された用紙Pは、図2中の矢印A1方向に搬送されて、圧接状態にある定着ベルト21と加圧ローラ22との間のニップ部Nに送入される。そして、定着ベルト21の熱と加圧ローラ22の加圧力とによって、用紙Pの表面にトナー画像Tが定着される。その後、用紙Pは、ニップ部Nから送り出され、分離部材28によって定着ベルト21から分離された後、図2中の矢印A2方向に搬送される。
以下、上記各ヒータ23a,23bの構成について詳しく説明する。
図3に示すように、各ヒータ23a,23bは、それぞれの長手方向(用紙幅方向)に渡って互いに異なる領域に発熱部231を有する。本実施形態では、定着ベルト21の回転方向の下流側に配置される第1の加熱源としてのヒータ23bは、主に定着ベルト21の幅方向中央側を加熱する中央ヒータであり、その長手方向の中央側(定着ベルト21の幅方向中央側)に発熱部231を有する。一方、第1の加熱源よりも上流側に配置される第2の加熱源としてのヒータ23aは、主に定着ベルト21の幅方向両端部側を加熱する端部ヒータであり、その長手方向の両端部側(定着ベルト21の幅方向両端部側)に発熱部231を有する。
端部ヒータ23aと中央ヒータ23bのそれぞれの発熱部231以外の部分は、ほとんど発熱しない非発熱部232である。図3に示すように、端部ヒータ23aと中央ヒータ23bは、互いの発熱部231と非発熱部232が対向するように配置されている。
本実施形態に係る定着装置20においては、定着処理される用紙の幅が中央ヒータ23bの発熱部231の長さ以下のサイズである場合は、主に中央ヒータ23bを発熱させる。これにより、定着ベルト21の中央部側が加熱され、そこを通過する用紙が定着処理される。なお、この場合、端部ヒータ23aは、中央ヒータ23bの発熱部231の端部で温度低下が生じないようにある程度発熱している。ただし、あくまでも温度低下の防止を目的としており、定着処理する目的ではないので、端部ヒータ23aに関して精密な温度制御は行われない。一方、定着処理される用紙の幅が中央ヒータ23bの発熱部231の長さよりも大きいサイズである場合は、中央ヒータ23bと端部ヒータ23aの両方を発熱させる。なお、このときの端部ヒータ23aの発熱は、精密な温度制御が行われる。これにより、定着ベルト21の中央部側から端部側に渡る広範囲が加熱され、大きい幅サイズの用紙を定着処理することができる。
また、図3に示すように、本実施形態では、温度センサ27として、定着ベルト21の軸方向中央部(中央ヒータ23bの発熱部231)に対応する位置に配置された中央センサ(第1温度検知手段)27aと、定着ベルト21の軸方向端部側(端部ヒータ23aの発熱部231)に対応する位置に配置された端部センサ(第2温度検知手段)27bとが1つずつ設けられている。これらのセンサ27a,27bによって定着ベルト21の中央と端部とで別個に温度が検知され、それぞれの検知結果に基づき定着ベルト21の温度が所定の温度範囲に維持されるように制御される。
図4に、端部ヒータ23aと中央ヒータ23bの詳細な構成を示す。
図4に示すように、端部ヒータ23aと中央ヒータ23bは、いずれもフィラメントランプであり、石英ガラス等で構成された円筒状のガラス管40内にタングステン等から成るフィラメント41が設けられている。しかしながら、本実施形態では、端部ヒータ23a、中央ヒータ23bとして、性質の異なるフィラメントランプを用いている。
具体的に、端部ヒータ23aは、その発熱部231の全体に渡って、フィラメント41が螺旋状に密に巻かれた発熱部(発光部)411を有する。一方、端部ヒータ23aの非発熱部232では、フィラメント41が略直線状に形成されている。しかしながら、非発熱部232においても、フィラメント41が密に巻かれた密巻部が部分的に存在する。この非発熱部232におけるフィラメント41の密巻部は、「捨て巻」と呼ばれ、フィラメント41の形状を維持するために環状のサポータ42によって保持される部分である。サポータ42は、タングステン等で構成され、発熱部231にも配置されている。
中央ヒータ23bは、端部ヒータ23aと同様に、その発熱部231の全体に渡って、フィラメント41が螺旋状に密に巻かれた発熱部(発光部)411を有する。また、発熱部411は、部分的にサポータ42によって保持されている。一方、中央ヒータ23bの非発熱部232は、端部ヒータ23aの非発熱部232とは構成が異なっている。中央ヒータ23bの非発熱部232では、モリブデン等の金属材料で構成された短絡用芯棒43が設けられ、この短絡用芯棒43にフィラメント41が巻き付けられている。また、非発熱部232では、フィラメント41が密に巻かれた密巻部が部分的に形成されており、この密巻部をサポータ42によって保持している。
上述のように、端部ヒータ23aと中央ヒータ23bは、非発熱部232において短絡用芯棒43があるかないかという点で大きく異なっている。非発熱部232に短絡用芯棒43を設けることで、非発熱部232におけるフィラメント41の密巻部の発熱を抑制することが可能である。すなわち、中央ヒータ23bの非発熱部232では、短絡用芯棒43が設けられていることで、フィラメント41の密巻部における電気抵抗が小さくなり、端部ヒータ23aの密巻部(捨て巻)に比べて発熱が抑制される。
このように、本実施形態では、中央ヒータ23bに短絡用芯棒43を有するヒータを用いることで、端部側での中央ヒータ23bの部分的な発熱を抑制することができる。これにより、定着ベルト21の温度のばらつきが生じにくくなり、温度制御性が向上する。また、中央ヒータ23bでは、非発熱部232における不必要な発熱を抑制できるため、ヒータ消費電力を低減することができ、照明器具等がヒータと共通の電源系統に接続されている場合に生じ得るフリッカ(ちらつき現象)を抑制することができる。また、フリッカは、ヒータの消費電力が高くなること以外に、ヒータの制御周期(点灯周期)が短くなることでも生じやすくなるが、本実施形態では、ヒータの消費電力を低減できる分、ヒータの制御周期を短くすることができるため、温度制御性が向上する。
ここで、図5を参照しつつ、端部センサの配置と課題について説明する。
端部センサ27bを設置する目的は大きく2つある。1つは、中央ヒータ23bの発熱長より大きい用紙サイズ(定着処理のために端部ヒータ23aを精密に制御しながら発熱させる必要がある用紙サイズ)のうち、小さいサイズ用紙を通紙する際に非通紙領域で生じる定着ベルト21の温度上昇を検知するためである。このため、端部センサ27bは、中央ヒータ23bの発熱長より大きい用紙サイズの中で特に最小サイズ{図5(a)の通紙領域Wa}の非通紙領域の箇所{図5(a)の破線Haで示す箇所}で生じる温度上昇を検知できる位置に配置される必要がある。端部センサ27bが精度良く温度検知できる検知領域Sはある程度幅{図5(a)の矢印で示す範囲}があるので、この検知領域S内に温度上昇の生じる箇所Haが含まれるように端部センサ27bを配置しなければならない。
もう1つの目的は、大きいサイズの用紙を通紙する際に通紙領域端部で生じる定着ベルト21の温度低下を検知することである。このため、端部センサ27bは、特に最大サイズ{図5(a)の通紙領域Wb}の通紙領域端部{図5(a)の破線Jbで示す箇所}で生じる温度低下を検知できる位置に配置される必要がある。すなわち、端部センサ27bの検知領域S内に温度低下の生じる箇所Jbが含まれるように端部センサ27bを配置しなければならない。
ところで、図5(b)に示すように、定着処理可能な最大用紙サイズを、同図(a)に示す最大用紙サイズ(通紙領域Wb)よりも大きいサイズ(通紙領域Wc)にすると、これに伴って、最大サイズ通紙時の温度低下が生じる箇所{図5(c)の破線Jcで示す箇所}が定着ベルト21の幅方向中央位置から遠くなる。この場合、仮に、端部センサ27bの位置を図5(a)の場合と同様の位置に配置すると、最大サイズの用紙を通紙する際に温度低下の生じる箇所Jcが端部センサ27bの検知領域S内に含まれなくなるため、最大サイズ通紙時の温度低下を検知しにくくなる。
一方、これを改善するために、図5(c)に示すように、端部センサ27bを幅方向外側寄りに配置すると、中央ヒータ23bの発熱長よりも大きい最小サイズの用紙を通紙する際の温度上昇箇所Haが端部センサ27bの検知領域S内に含まれなくなるため、最小サイズ通紙時の温度上昇を検知しにくくなる。
このように、定着処理可能な用紙の最大サイズが大きくなると、検知しなければならない範囲が広がるため、1つの端部センサ27bでは、小サイズの非通紙領域における温度上昇と大サイズの通紙領域端部における温度低下の両方を精度良く検知することが困難となる。斯かる課題に対し、本実施形態に係る定着装置では、以下のような対策を講じている。
まず、本実施形態では、図2に示すように、ニップ形成部材24に高熱伝導部材51を設けている。詳しくは、ニップ形成部材24は、ニップ部Nとは反対側に配置される基材50と、基材50のニップ部N側に配置される高熱伝導部材51とを有する。なお、本実施形態では、高熱伝導部材51のニップ部N側の面に、低摩擦シート29が取り付けられているが、低摩擦シート29を省略することも可能である。
高熱伝導部材51は、基材50よりも熱伝導率の高い材料で構成される。例えば、高熱伝導部材51は、カーボンナノチューブ(熱伝導率:3000〜5500W/mK)、グラファイトシート(熱伝導率:700〜1750W/mK)、銀(熱伝導率:420W/mK)、銅(熱伝導率:398W/mK)、アルミニウム(熱伝導率:236W/mK)、又はSECC(電気亜鉛メッキ鋼)等で形成される。高熱伝導部材51の熱伝導率は236W/mK以上であることが好ましい。一方、基材50は、耐熱性に富む樹脂材料、例えばポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等で形成される。
次に、図6に、本実施形態に係る定着装置における定着ベルト21、加圧ローラ22、各ヒータ23a,23b、高熱伝導部材51、端部センサ27bのそれぞれの位置、及び各用紙サイズの通紙領域(記録媒体通過領域)Wα,Wβ,Wγの関係を示す。なお、図6中のカッコ書きで示す数値は、各部材に関する定着ベルト21の幅方向中央位置からの距離又は長さである。また、以下の説明において、定着ベルト21の幅方向中央側を「幅方向内側」と称し、定着ベルト21の幅方向端部側を「幅方向外側」と称することにする。
図6に示す通紙領域Wαは、中央ヒータ23bの発熱長よりも僅かに大きい最小サイズの通紙領域である。また、通紙領域Wβは、前記通紙領域Wαよりは大きいサイズの通紙領域であって、例えばA3用紙の通紙領域である。また、通紙領域Wγは、最大サイズの通紙領域であって、例えばA3ノビ用紙の通紙領域である。ただし、ここで挙げる用紙の種類は一例であって、他の種類の用紙であってもよい。
端部ヒータ23aは、最大サイズであるA3ノビ幅(通紙領域Wγ)に対応するため、発熱部231の幅方向外側端部231outがA3ノビの通紙領域Wγの端部よりも幅方向外側に位置するように配置されている。一方、端部ヒータ23aの発熱部231の幅方向内側端部231inは、中央ヒータ23bの発熱部231の幅方向外側端部と同じ又はほぼ同等の位置に配置されている。
本実施形態において、端部センサ27bは、その検知領域Sの幅方向中央位置(又は端部センサ27bの幅方向中央位置)gが定着ベルトの幅方向中央から125mm離れた位置になるように配置されている。このような位置に端部センサ27bが配置されている場合、図6に示すように、端部センサ27bの検知領域S内に、最小サイズ紙(通紙領域Wα)の非通紙領域で生じる温度上昇箇所Hαと、A3サイズ(通紙領域Wβ)の通紙領域で生じる温度低下箇所Jβは含まれる。しかしながら、A3ノビサイズ(通紙領域Wγ)の通紙領域で生じる温度低下箇所Jγは、端部センサ27bの検知領域S内に含まれない。すなわち、本実施形態では、見た目上、A3ノビサイズ通紙時の温度低下箇所Jγが、端部センサ27bによって精度良く検知できる範囲から外れている。
しかしながら、本実施形態では、上記高熱伝導部材51を定着ベルト21の幅方向に渡って連続して配置しているため、A3ノビサイズ通紙時の温度低下の影響を端部センサ27bの検知領域S内にまで及ぼすことができる。すなわち、高熱伝導部材51によって定着ベルト21の熱が幅方向に渡って伝達されやすくなるため、A3ノビサイズ通紙時に生じる温度低下が素早く周囲に拡散する。これにより、温度低下箇所Jγが検知領域Sの外側であっても、温度低下の影響がその後素早く検知領域S内に現れるため、端部センサ27bによって温度低下の発生を検知することができる。
このように、最大通紙領域(最大記録媒体通過領域)の端部側で生じる温度低下を端部センサ27bの検知領域S内へ伝達できるようにするため、高熱伝導部材51は、最大通紙領域であるA3ノビ通紙領域Wγの幅方向端部から端部センサ27bの検知領域S内へ向かって幅方向に連続して配置されることが望ましい。図6に示す本実施形態では、高熱伝導部材51の幅方向外側端部51outが、A3ノビ通紙領域Wγの幅方向端部よりも幅方向外側に位置し、そこから幅方向中央位置まで高熱伝導部材51が連続して延びている。
ここで、本実施形態では、高熱伝導部材51の幅方向外側端部51outを、高熱伝導部材51全体の幅方向の最も外側に位置する端部ではなく、高熱伝導部材51の両端部側に形成された開口部51aの幅方向内側端部の位置に規定している。以下、このように規定している理由について説明する。
高熱伝導部材51に設けられた各開口部51aは、高熱伝導部材51をニップ形成部材24の基材50に対して位置決めするためのものである。各開口部51aに対して基材50に設けられた位置決め部としての突起が挿入されることで、基材50に対する高熱伝導部材51の幅方向の位置決めがなされる。
開口部51aが形成された箇所では、高熱伝導部材51が定着ベルト21に対して接触する面積が少なくなるため、開口部51aが形成された箇所から幅方向外側への熱伝導機能は低くなる。特に、本実施形態では、図7に示すように、開口部51aの用紙搬送方向長さ(記録媒体搬送方向長さ)L2が高熱伝導部材51の用紙搬送方向長さ(記録媒体搬送方向長さ)L1の半分以上であるため、開口部51aから幅方向外側への熱伝導量は少なくなる。すなわち、本実施形態では、高熱伝導部材51の幅方向領域のうち、幅方向中央位置から開口部51aに至るまでの領域Qが、主に熱伝導部として機能が期待される部分である。これに対し、開口部51aから幅方向外側の領域Zは、熱伝導機能を多少有するものの前記熱伝導部に比べて熱伝導機能が低く、主に位置決め部として機能のために設けられた部分である。
このため、本実施形態では、高熱伝導部材51を構成する部分のうち、高熱伝導部材としての本来の機能が期待される熱伝導部(領域Q)の幅方向外側端部、すなわち開口部51aの幅方向内側端部を、高熱伝導部材51の幅方向外側端部51outと規定している。なお、本実施形態とは異なり、開口部51aの用紙搬送方向長さL2が高熱伝導部材51の用紙搬送方向長さL1の半分未満である場合は、開口部51aから幅方向外側の部分(領域Z)も主に熱伝導部として機能するものと判断する。従って、この場合は、開口部51aから幅方向外側の部分(領域Z)も含めた高熱伝導部材51全体における幅方向外側端部を高熱伝導部材51の幅方向外側端部51outと規定する。
また、図8に示すように、高熱伝導部材51は、その幅方向外側端部側に上記のような位置決め部としての開口部を有しない構成であってもよい。この場合、高熱伝導部材51は、その幅方向全体に渡って定着ベルト21に対する接触幅(用紙搬送方向の幅)が同じとなるため、全体が熱伝導部として機能する。従って、この場合は、図8に示すように、高熱伝導部材51全体における幅方向外側端部を上記高熱伝導部材51の幅方向外側端部51outと規定する。
また、上記高熱伝導部材51によって拡散される温度低下を端部センサ27bが確実に検知できるようにするため、端部センサ27bは、温度低下の発生箇所と高熱伝導部材51の熱伝達可能な範囲とを考慮して配置されることが望ましい。例えば、高熱伝導部材51の熱伝達可能な範囲が定着ベルト21の幅方向に20mmである場合は、温度低下が最も顕著に生じるA3ノビ通紙領域Wγの幅方向端部から内側へ20mmに渡る領域が端部センサ27bの検知領域Sの少なくとも一部と重なるように端部センサ27bを配置するのが望ましい。なお、高熱伝導部材51の熱伝達可能な範囲は、高熱伝導部材51の厚さや素材によって変化する。本実施形態では、高熱伝導部材51の厚さが0.4mm、熱伝導率が236W/mK以上の素材を用いているので、熱伝達可能な範囲が20mmであるが、高熱伝導部材51の厚さや素材を変更することで、熱伝達可能な範囲は適宜変更可能である。また、高熱伝導部材51はニップ形成部材24の幅方向全体に渡って配置されている場合に限らない。図9に示すように、A3ノビ通紙領域Wγの幅方向端部から内側へ少なくとも20mm(高熱伝導部材51の熱伝達可能な範囲)に渡る領域で、かつ、端部センサ27bの検知領域Sと重なる領域に配置されていればよい。
以上のように、本実施形態では、高熱伝導部材51を用いることで、端部センサの数を増やすことなしに、端部センサ27bによって検知可能な範囲を実質的に拡大させることができる。すなわち、端部ヒータ23aが長くなったことで検知する領域が増えても、1つの端部センサ27bで温度を検知することが可能である。これにより、最大通紙幅がA3サイズであった機種を、A3ノビサイズにまで対応できるように端部ヒータ23aの発熱部231を長くしても、端部センサ27bをこれまでよりも幅方向外側寄りに配置する必要はなく、最大通紙領域の幅方向端部から離れた位置に端部センサ27bを配置することができる。具体的には、端部センサ27bを、最大通紙領域Wγの幅方向端部から幅方向内側へ25mm以上離れた位置に配置することができる。
また、端部センサ27bを最大通紙領域の幅方向端部から離れた位置に配置できるため、図6に示す端部センサ27bの検知領域Sの幅方向中央位置gから端部ヒータ23aの発熱部231の幅方向内側端部231inまでの長さLbに対する、端部センサ27bの検知領域Sの幅方向中央位置gから端部ヒータ23aの発熱部231の幅方向外側端部231outまでの長さLaの比(La/Lb)を、7/3より大きく設定することができる。なお、この数値(7/3)は、最大通紙幅がA3サイズであった機種において、上記長さLbに対する上記長さLaの比(La/Lb)が7/3であったことを根拠としている。すなわち、本実施形態では、A3サイズ対応の機種よりも端部センサ27bの位置を最大通紙領域の幅方向端部から遠ざけて配置することができること意味する。
ただし、上記長さLaを大きくしすぎると、端部センサ27bが高熱伝導部材51によって熱伝達できる範囲から遠くなって、最大サイズ通紙時の温度低下を精度良く検知しにくくなる。このため、上記長さLbに対する上記長さLaの比(La/Lb)は10/3より小さいことが好ましい。
また、本実施形態では、端部センサ27bを最大通紙領域の幅方向端部から離れた位置に配置できることで、図6に示す端部センサ27bの検知領域Sの幅方向中央位置gから最大通紙領域Wγの幅方向端部までの長さLdを、端部センサ27bの検知領域Sの幅方向中央位置gから端部ヒータ23aの発熱部231の幅方向内側端部231inまでの長さLcよりも長くすることができる。具体的には、長さLcに対する長さLdの比(Ld/Lc)が2.06より大きくなる位置に、端部センサ27bを配置することができる。なお、この数値(2.06)は、最大通紙幅がA3サイズであった機種において、上記長さLcが16.5mm、上記長さLdが33.99mmであったことから、これらの比(Ld/Lc)が2.054・・・(=33.9/16.5)となることを根拠としている。
ただし、上記長さLcに対する上記長さLdの比(Ld/Lc)を大きくしすぎると、端部センサ27bが高熱伝導部材51によって熱伝達できる範囲から遠くなって、最大サイズ通紙時の温度低下を精度良く検知しにくくなるので、長さLcに対する長さLdの比(Ld/Lc)は2.50以下であることが好ましい。
また、本発明は、端部ヒータ23aの発熱長が長い構成、すなわち、定着処理のために端部ヒータ23aを精密に制御しながら発熱させる必要がある用紙サイズが幅広いサイズを含む場合に大きな効果を期待できる。具体的には、端部ヒータ23aの発熱長(各発熱部231の発熱長)が51.5mmより大きい構成に適用された場合に大きな効果を期待できる。なお、この数値(51.5mm)は、最大通紙幅がA3サイズであった機種において、端部ヒータの発熱長が51.5mmであったことを根拠としている。
また、定着処理のために端部ヒータ23aを精密に制御しながら発熱させる必要がある用紙サイズが幅広いサイズを含む場合、すなわち、中央ヒータ23bの発熱長より大きい用紙サイズの中で最小サイズと最大サイズの差が大きい場合にも、本発明は大きな効果を期待できる。具体的には、中央ヒータ23bの発熱長とほぼ同等のサイズ(217mm)を最小サイズとし、A3ノビサイズ(320mm)を最大サイズとすると、最大用紙サイズ(320mm)が最小用紙サイズ(217mm)の1.48倍より大きい場合に大きな効果を期待できる。同様の理由で、定着装置が定着処理できる最大用紙サイズは、A3(通紙幅297mm)より大きい場合に大きな効果を期待できる。
上述の説明では、定着装置として定着ベルトを直接加熱するタイプを例に挙げたが、本発明は、このような定着装置に限らず、定着ベルト内部に設けられた金属パイプを介して定着ベルトを間接的に加熱する定着装置にも適用可能である。また、上述の実施形態では、中央ヒータに短絡用芯棒を有するヒータを用いているが、同様のヒータを端部ヒータ23に用いてもよい。また、本発明は、複数の加熱源のいずれもが短絡用芯棒を有しないヒータである定着装置にも適用可能である。また、定着ベルトを加熱する加熱源は、3つ以上であってもよい。また、上述の実施形態では、用紙サイズにかかわらず用紙の幅方中央を基準にして用紙を搬送する、所謂センター基準方式を採用しているが、本発明は、用紙の幅方向片側の端部を基準にして用紙を搬送する、所謂端部基準方式を採用する画像形成装置に対しても適用可能である。また、本発明に係る定着装置を搭載する画像形成装置は、図1に示すようなカラープリンタに限らず、モノクロプリンタや、その他のプリンタ、複写機、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等であってもよい。
以下、上記本発明とは別の参考例の構成について説明する。
上記実施形態のように、中央ヒータ23bに短絡用芯棒43を有するヒータを用いた場合、非発熱領域における温度リップルを低減し、温度制御の向上を図ることが可能となる。しかしながら、短絡用芯棒43を有するヒータは、捨て巻部分における発熱がほとんど生じないため、短絡用芯棒43を有しないヒータに比べて、発熱領域と非発熱領域との境界における温度低下が急峻となる性質がある。
このため、ヒータの取付誤差あるいは寸法公差などによって端部ヒータ23aと中央ヒータ23bの配置が長手方向にずれが生じ、各発熱部231の互いに対応して配置される端部同士(図3中の破線で囲む箇所の端部同士)のオーバーラップ量が少なくなったり、端部同士が互いに離れたりすると、これらの間の箇所で温度が低下してしまう。このような課題に対して、以下のような解決手段を提案する。
まず、図1を参照して、参考例を適用する画像形成装置の全体構成及び動作について説明する。
図1に示す画像形成装置1は、カラーレーザープリンタであり、その装置本体の中央には、4つの作像部4Y,4M,4C,4Kが設けられている。各作像部4Y,4M,4C,4Kは、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の異なる色の現像剤を収容している以外は同様の構成となっている。
具体的に、各作像部4Y,4M,4C,4Kは、潜像担持体としてのドラム状の感光体5と、感光体5の表面を帯電させる帯電装置6と、感光体5の表面にトナーを供給する現像装置7と、感光体5の表面をクリーニングするクリーニング装置8などを備える。なお、図1では、ブラックの作像部4Kが備える感光体5、帯電装置6、現像装置7、クリーニング装置8のみに符号を付しており、その他の作像部4Y,4M,4Cにおいては符号を省略している。
各作像部4Y,4M,4C,4Kの下方には、感光体5の表面を露光する露光装置9が配置されている。露光装置9は、光源、ポリゴンミラー、f−θレンズ、反射ミラー等を有し、画像データに基づいて各感光体5の表面へレーザー光を照射する。
また、各作像部4Y,4M,4C,4Kの上方には、転写装置3が配置されている。転写装置3は、中間転写体としての中間転写ベルト30と、一次転写手段としての4つの一次転写ローラ31と、二次転写手段としての二次転写ローラ36と、二次転写バックアップローラ32と、クリーニングバックアップローラ33と、テンションローラ34と、ベルトクリーニング装置35とを備える。
中間転写ベルト30は、無端状のベルトであり、二次転写バックアップローラ32、クリーニングバックアップローラ33及びテンションローラ34によって張架されている。ここでは、二次転写バックアップローラ32を回転駆動することによって、中間転写ベルト30は図の矢印で示す方向に周回走行(回転)する。
4つの一次転写ローラ31は、それぞれ、各感光体5との間で中間転写ベルト30を挟み込んで一次転写ニップを形成している。また、各一次転写ローラ31には、電源が接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が各一次転写ローラ31に印加される。
二次転写ローラ36は、二次転写バックアップローラ32との間で中間転写ベルト30を挟み込んで二次転写ニップを形成している。また、上記一次転写ローラ31と同様に、二次転写ローラ36にも電源が接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が二次転写ローラ36に印加される。
画像形成装置本体の上部には、ボトル収容部2が設けられており、ボトル収容部2には、補給用のトナーを収容する4つのトナーボトル2Y,2M,2C,2Kが着脱可能に装着されている。各トナーボトル2Y,2M,2C,2Kと上記各現像装置7との間に設けた補給路を介して、各トナーボトル2Y,2M,2C,2Kから各現像装置7にトナーが補給される。
一方、画像形成装置本体の下部には、記録媒体としての用紙Pを収容した給紙トレイ10や、給紙トレイ10から用紙Pを搬出する給紙ローラ11等が設けられている。なお、記録媒体には、普通紙以外に、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ、OHPシート等が含まれる。また、手差し給紙機構が設けてあってもよい。
画像形成装置本体内には、用紙Pを給紙トレイ10から二次転写ニップを通過させて装置外へ排出するための搬送路Rが形成されている。搬送路Rにおいて、二次転写ローラ36の位置よりも用紙搬送方向上流側には、搬送タイミングを計って用紙Pを二次転写ニップへ搬送するタイミングローラとしての一対のレジストローラ12が配置されている。
また、二次転写ローラ36の位置よりも用紙搬送方向下流側には、用紙Pに転写された未定着画像を定着するための定着装置20が配置されている。さらに、定着装置20よりも搬送路Rの用紙搬送方向下流側には、用紙を装置外へ排出するための一対の排紙ローラ13が配置されている。また、装置本体の上面部には、装置外に排出された用紙をストックするための排紙トレイ14が設けてある。
続いて、図1を参照して、参考例に係るプリンタの基本的動作について説明する。
作像動作が開始されると、各作像部4Y,4M,4C,4Kにおける各感光体5が図の時計回りに回転駆動され、各感光体5の表面が帯電装置6によって所定の極性に一様に帯電される。帯電された各感光体5の表面には、露光装置9からレーザー光がそれぞれ照射されて、各感光体5の表面に静電潜像が形成される。このとき、各感光体5に露光する画像情報は所望のフルカラー画像をイエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの色情報に分解した単色の画像情報である。このように各感光体5上に形成された静電潜像に、各現像装置7によってトナーが供給されることにより、静電潜像はトナー画像として顕像化(可視像化)される。
また、作像動作が開始されると、二次転写バックアップローラ32が図の反時計回りに回転駆動し、中間転写ベルト30を図の矢印で示す方向に周回走行させる。また、各一次転写ローラ31に、トナーの帯電極性と逆極性の定電圧又は定電流制御された電圧が印加されることによって、各一次転写ローラ31と各感光体5との間の一次転写ニップにおいて転写電界が形成される。
その後、各感光体5の回転に伴い、感光体5上の各色のトナー画像が一次転写ニップに達したときに、上記一次転写ニップにおいて形成された転写電界によって、各感光体5上のトナー画像が中間転写ベルト30上に順次重ね合わせて転写される。かくして、中間転写ベルト30の表面にフルカラーのトナー画像が担持される。また、中間転写ベルト30に転写しきれなかった各感光体5上のトナーは、クリーニング装置8によって除去される。
プリンタの下部では、給紙ローラ11が回転駆動を開始し、給紙トレイ10から用紙Pが搬送路Rに送り出される。搬送路Rに送り出された用紙Pは、レジストローラ12によって搬送が一旦停止される。
その後、所定のタイミングでレジストローラ12の回転駆動を開始し、中間転写ベルト30上のトナー画像が二次転写ニップに達するタイミングに合わせて、用紙Pを二次転写ニップへ搬送する。このとき、二次転写ローラ36には、中間転写ベルト30上のトナー画像のトナー帯電極性と逆極性の転写電圧が印加されており、これにより、二次転写ニップに転写電界が形成されている。そして、この転写電界によって、中間転写ベルト30上のトナー画像が用紙P上に一括して転写される。また、このとき用紙Pに転写しきれなかった中間転写ベルト30上の残留トナーは、ベルトクリーニング装置35によって除去される。
その後、用紙Pは定着装置20へと搬送され、定着装置20によって用紙P上のトナー画像が当該用紙Pに定着される。そして、用紙Pは、排紙ローラ13によって装置外へ排出され、排紙トレイ14上にストックされる。
以上の説明は、用紙上にフルカラー画像を形成するときの画像形成動作であるが、4つの作像部4Y,4M,4C,4Kのいずれか1つを使用して単色画像を形成したり、2つ又は3つの作像部を使用して、2色又は3色の画像を形成したりすることも可能である。
図21は、参考例に係る定着装置の概略構成を示す側面図である。
以下、図21に基づき、定着装置20の基本構成について説明する。
図21に示すように、定着装置20は、定着部材としての定着ベルト21と、定着ベルト21に対向して配置される対向部材としての加圧ローラ22と、定着ベルト21を加熱する加熱源としての2本のヒータ23a,23bと、定着ベルト21を介して加圧ローラ22と対向する位置に配置されたニップ形成部材24と、ニップ形成部材24を支持する支持部材としてのステー25と、ヒータ23a,23bから放射される光又は熱を定着ベルト21へ反射する反射部材26と、定着ベルト21の温度を検知する温度検知手段としての温度センサ27と、定着ベルト21から用紙を分離する分離部材28とを備える。
定着ベルト21は、薄肉で可撓性を有する無端状のベルト部材(フィルムも含む)で構成されている。詳しくは、定着ベルト21は、ニッケルもしくはSUS等の金属材料又はポリイミド(PI)等の樹脂材料で形成された内周側の基材と、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等で形成された外周側の離型層によって構成されている。また、基材と離型層との間に、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム、又はフッ素ゴム等のゴム材料で形成された弾性層を介在させてもよい。
加圧ローラ22は、芯金22aと、芯金22aの表面に設けられた発泡性シリコーンゴム、シリコーンゴム、又はフッ素ゴム等から成る弾性層22bと、弾性層22bの表面に設けられたPFA又はPTFE等から成る離型層22cによって構成されている。加圧ローラ22は、バネ等を有する加圧手段によって定着ベルト21側へ加圧され、定着ベルト21を介してニップ形成部材24に当接している。加圧ローラ22とニップ形成部材24とが当接する箇所では、加圧ローラ22の弾性層22bが押しつぶされることで、加圧ローラ22と定着ベルト21との間に所定幅のニップ部Nが形成されている。また、加圧ローラ22は、プリンタ本体に設けられたモータ等の駆動源によって回転駆動するように構成されている。加圧ローラ22が回転駆動すると、その駆動力がニップ部Nで定着ベルト21に伝達され、定着ベルト21が従動回転する。
参考例では、加圧ローラ22を中実のローラとしているが、中空のローラであってもよい。その場合、加圧ローラ22の内部にヒータを配置してもよい。また、弾性層が無い場合は、熱容量が小さくなり定着性が向上するが、未定着トナーを押しつぶして定着させるときにベルト表面の微小な凹凸が画像に転写されて画像のベタ部に光沢ムラが生じる可能性がある。これを防止するには、厚さ100μm以上の弾性層を設けることが望ましい。厚さ100μm以上の弾性層を設けることで、弾性層の弾性変形により微小な凹凸を吸収することができるので、光沢ムラの発生を回避することができるようになる。弾性層22bはソリッドゴムでもよいが、加圧ローラ22の内部にヒータが無い場合は、スポンジゴムを用いてもよい。スポンジゴムの方が、断熱性が高まり定着ベルト21の熱が奪われにくくなるのでより望ましい。また、定着部材と対向部材は、互いに圧接する場合に限らず、加圧を行わず単に接触させるだけの構成とすることも可能である。
2本のヒータ23a,23bは、定着ベルト21の内周側に配置され、それぞれの両端部が定着装置20の側板に固定されている。参考例では、ヒータ23a,23bによって定着ベルト21を直接加熱する直接加熱方式を採用している。直接加熱方式では、定着ベルト21を効率良く加熱できるため、省エネルギー性に優れ、目標温度に達するまでの立ち上げ時間等の短縮化を図れる。各ヒータ23a,23bの出力制御は、上記温度センサ27による定着ベルト21の表面温度の検知結果に基づいて行われる。これにより、定着ベルト21の温度(定着温度)が所望の温度となるように制御される。
ニップ形成部材24は、加圧ローラ22と対向するように定着ベルト21の内周側に配置され、定着ベルト21の軸方向に延びる長手状の部材である。このように形成されたニップ形成部材24に加圧ローラ22が当接することで、ニップ部Nが軸方向に渡って連続して形成される。また、ニップ形成部材24は、ステー25によって固定支持されている。これにより、加圧ローラ22による圧力でニップ形成部材24に撓みが生じるのを防止し、加圧ローラ22の軸方向に渡って均一なニップ幅が得られるようにしている。
また、ニップ形成部材24は、定着ベルト21と接触する表面に低摩擦シートを有している。定着ベルト21が回転する際、この低摩擦シートに対し定着ベルト21が摺動することで、定着ベルト21に生じる駆動トルクが低減され、定着ベルト21への摩擦力による負荷が軽減される。また、ニップ形成部材24のニップ出口側には突出部45が形成されている。突出部45は、定着ベルト21を介して加圧ローラ22と接触しておらず、加圧ローラ22との接触により形成されるものではない。このような突出部45が形成されていることで、ニップ部Nでの定着後の用紙Pを定着ベルト21から浮かすことができ、分離性が高められる。
ニップ形成部材24の材料としては、耐熱温度200℃以上の耐熱性部材を用いることが望ましい。具体的には、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の一般的な耐熱性樹脂が挙げられる。このような耐熱性部材でニップ形成部材24を形成することで、トナー定着温度域で、熱によるニップ形成部材24の変形を防止することができるため、安定したニップ部Nの状態が確保でき、出力画質の安定化を図れる。
ステー25は、定着ベルト21の内周側に配置され、その両端部が定着装置20の側板に固定されている。ステー25の材料としては、ニップ形成部材24の撓み防止機能を満足するために、ステンレスや鉄等の機械的強度が高い金属材料を用いることが望ましい。しかし、必要な強度が得られるのであれば、ステー25を樹脂製とすることも可能である。
反射部材26は、ステー25とヒータ23a,23bとの間に配置され、ステー25によって固定支持されている。このように反射部材26を配置することで、ヒータ23a,23bからステー25側に放射された光又は熱が定着ベルト21へ反射され、定着ベルト21を効率良く加熱することができる。また、反射部材26によって熱がステー25等に伝達されるのを抑制することができ、省エネルギー化も図れる。反射部材26は、ヒータ23a,23bによって直接加熱されるため、高融点の金属材料等で形成されることが望ましい。なお、参考例のような反射部材26を設けずに、ステー25のヒータ23a,23b側の面を研磨又は塗装等の鏡面処理をし、反射面を形成してもよい。また、このようなステー25の反射面、上記反射部材26の反射率は、90%以上であることが望ましい。
また、参考例では、定着ベルト21の低熱容量化を図るために、定着ベルト21を薄くかつ小径化している。具体的には、定着ベルト21を構成する基材、弾性層、離型層のそれぞれの厚さを、20〜50μm、100〜300μm、10〜50μmの範囲に設定し、全体としての厚さを1mm以下に設定している。また、定着ベルト21の直径は、20〜40mmに設定している。さらに低熱容量化を図るためには、望ましくは、定着ベルト21全体の厚さを0.2mm以下にするのがよく、さらに望ましくは、0.16mm以下の厚さとするのがよい。また、定着ベルト21の直径は、30mm以下とするのが望ましい。
また、参考例では、加圧ローラ22の直径を20〜40mmに設定しており、定着ベルト21の直径と加圧ローラ22の直径を同等となるように構成している。これに限らず、定着ベルト21の直径が加圧ローラ22の直径よりも小さくなるように形成してもよい。この場合、ニップ部Nにおける定着ベルト21の曲率が加圧ローラ22の曲率よりも大きくなるため、ニップ部Nから排出される用紙Pが定着ベルト21から分離されやすくなる。
上述のように構成された定着装置20の基本動作について簡単に説明する。
プリンタの電源スイッチが投入されると、中央ヒータ23bのみ、又は中央ヒータ23bと端部ヒータ23aの両方に電力が供給されると共に、加圧ローラ22と定着ベルト21との回転が開始される。その後、定着ベルト21の温度が所定の目標温度に達すると、給紙トレイ10から用紙Pが給送されて、二次転写ローラ36の位置で、用紙P上に未定着のカラー画像が担持(転写)される。未定着画像T(トナー画像)が担持された用紙Pは、図21中の矢印A1方向に搬送されて、圧接状態にある定着ベルト21と加圧ローラ22との間のニップ部Nに送入される。そして、定着ベルト21の熱と加圧ローラ22の加圧力とによって、用紙Pの表面にトナー画像Tが定着される。その後、用紙Pは、ニップ部Nから送り出され、分離部材28によって定着ベルト21から分離された後、図21中の矢印A2方向に搬送される。
以下、上記各ヒータ23a,23bの構成について詳しく説明する。
図3に示すものと同様に、各ヒータ23a,23bは、それぞれの長手方向(用紙幅方向)に渡って互いに異なる領域に発熱領域231を有する。参考例では、定着ベルト21の回転方向の上流側に配置される第1の加熱源としてのヒータ23aは、主に定着ベルト21の軸方向両端部を加熱する端部ヒータであり、その長手方向の両端部側に発熱領域231を有する。一方、第1の加熱源よりも下流側に配置される第2の加熱源としてのヒータ23bは、主に定着ベルト21の軸方向中央部側を加熱する中央ヒータであり、その長手方向の中央部側に発熱領域231を有する。
端部ヒータ23aと中央ヒータ23bのそれぞれの発熱領域231以外の部分は、ほとんど発熱しない非発熱領域232である。図3に示すように、端部ヒータ23aと中央ヒータ23bは、互いの発熱領域231と非発熱領域232が対向するように配置されている。
参考例に係る定着装置20においては、定着処理される用紙の幅が中央ヒータ23bの発熱領域231よりも小さいサイズである場合は、中央ヒータ23bのみに通電する。これにより、定着ベルト21の中央部側が加熱され、そこを通過する用紙が定着処理される。また、この場合、定着処理に必要のない端部側は加熱されないため、無駄なエネルギー消費を低減することができる。一方、定着処理される用紙の幅が中央ヒータ23bの発熱領域231よりも大きいサイズである場合は、中央ヒータ23bと端部ヒータ23aの両方に通電する。これにより、定着ベルト21の中央部側から端部側に渡る広範囲が加熱され、大きい幅サイズの用紙を定着処理することができる。
また、図3に示すように、参考例では、温度センサ27として、定着ベルト21の軸方向中央部に対向して配置された中央センサ27aと、定着ベルト21の軸方向端部側に対向して配置された端部センサ27bとが設けられている。これらのセンサ27a,27bによって定着ベルト21の中央と端部とで別個に温度が検知され、それぞれの検知結果に基づき定着ベルト21の温度が所定の温度範囲に維持されるように制御される。
図4に、参考例に係る端部ヒータ23aと中央ヒータ23bの詳細な構成を示す。
図4に示すように、端部ヒータ23aと中央ヒータ23bは、いずれもフィラメントランプであり、石英ガラス等で構成された円筒状のガラス管40内にタングステン等から成るフィラメント41が設けられている。しかしながら、参考例では、端部ヒータ23a、中央ヒータ23bとして、性質の異なるフィラメントランプを用いている。
具体的に、端部ヒータ23aは、その発熱領域231の全体に渡って、フィラメント41が螺旋状に密に巻かれた発熱部(発光部)411を有する。一方、端部ヒータ23aの非発熱領域232では、フィラメント41が略直線状に形成されている。しかしながら、非発熱領域232においても、フィラメント41が密に巻かれた密巻部が部分的に存在する。この非発熱領域232におけるフィラメント41の密巻部は、「捨て巻」と呼ばれ、フィラメント41の形状を維持するために環状のサポータ42によって保持される部分である。サポータ42は、タングステン等で構成され、発熱領域231にも配置されている。
中央ヒータ23bは、端部ヒータ23aと同様に、その発熱領域231の全体に渡って、フィラメント41が螺旋状に密に巻かれた発熱部(発光部)411を有する。また、発熱部411は、部分的にサポータ42によって保持されている。一方、中央ヒータ23bの非発熱領域232は、端部ヒータ23aの非発熱領域232とは構成が異なっている。中央ヒータ23bの非発熱領域232では、モリブデン等の金属材料で構成された短絡用芯棒43が設けられ、この短絡用芯棒43にフィラメント41が巻き付けられている。また、非発熱領域232では、フィラメント41が密に巻かれた密巻部が部分的に形成されており、この密巻部をサポータ42によって保持している。
上述のように、端部ヒータ23aと中央ヒータ23bは、非発熱領域232において短絡用芯棒43があるかないかという点で大きく異なっている。非発熱領域232に短絡用芯棒43を設けることで、非発熱領域232におけるフィラメント41の密巻部の発熱を抑制することが可能である。すなわち、中央ヒータ23bの非発熱領域232では、短絡用芯棒43が設けられていることで、フィラメント41の密巻部における電気抵抗が小さくなり、端部ヒータ23aの密巻部(捨て巻)に比べて発熱が抑制される。
このように、参考例では、中央ヒータ23bに短絡用芯棒43を有するヒータを用いることで、端部側での中央ヒータ23bの部分的な発熱を抑制することができる。これにより、定着ベルト21の温度のばらつきが生じにくくなり、温度制御性が向上する。また、中央ヒータ23bでは、非発熱領域232における不必要な発熱を抑制できるため、ヒータ消費電力を低減することができ、照明器具等がヒータと共通の電源系統に接続されている場合に生じ得るフリッカ(ちらつき現象)を抑制することができる。また、フリッカは、ヒータの消費電力が高くなること以外に、ヒータの制御周期(点灯周期)が短くなることでも生じやすくなるが、参考例では、ヒータの消費電力を低減できる分、ヒータの制御周期を短くすることができるため、温度制御性が向上する。
ところで、中央ヒータ23bと端部ヒータ23aの両方を発熱させる際、両ヒータ23a,23bの各発熱領域231の間で温度が低くなる部分が生じないように、各発熱領域231の対応する端部同士(図3中の破線で囲む箇所の端部同士)は多少オーバーラップするように配置されている。
しかしながら、ヒータの取付誤差あるいは寸法公差などによって端部ヒータ23aと中央ヒータ23bの配置が長手方向にずれが生じ、各発熱領域231の互いに対応して配置される端部同士のオーバーラップ量が少なくなったり、端部同士が互いに離れたりすると、これらの間の箇所で温度が低下してしまう。特に参考例のように、中央ヒータ23bに短絡用芯棒43を有するヒータを用いている場合は、短絡用芯棒43を有しないヒータを用いる場合に比べて、発熱領域231と非発熱領域232との境界での温度低下が急峻となる。このため、上記のような両ヒータ23a,23b同士の配置のずれが生じた場合に、各発熱領域231の互いに対応して配置される端部同士の間で温度低下が顕著に現れる。そこで、このような発熱領域端部間における温度低下の問題に対して、参考例に係る定着装置20では、以下のような対策を講じている。
図22に示すように、参考例に係るニップ形成部材24は、低熱伝導部材としての基材50と、基材50のニップ部N側に配置された高熱伝導部材(均熱部材)51とを有する。高熱伝導部材51は、ニップ部Nが形成された状態で、定着ベルト21の内周面に接触する。
高熱伝導部材51は、基材50よりも熱伝導率の高い材料で構成されている。具体的には、カーボンナノチューブ、グラファイトシート、銀、銅、アルミニウム、SECC(電気亜鉛メッキ鋼)等を用いることができる。一方、基材50は、耐熱性に富む樹脂材料、例えばポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等が挙げられる。
図10に示す参考例では、高熱伝導部材51を、端部ヒータ23aの発熱部231と中央ヒータ23bの発熱部231との互いに対応して配置される端部位置D,Eに対応して配置している。すなわち、高熱伝導部材51は、端部ヒータ23aの発熱部231における長手方向内側の端部位置Dと、中央ヒータ23bの発熱部231における長手方向両外側の端部位置Eとを含む範囲に配置されている。
このように高熱伝導部材51を配置することで、万が一、端部ヒータ23aと中央ヒータ23bの配置が長手方向にずれたとしても、高熱伝導部材51によって定着ベルト21の温度の高い箇所から低い箇所への軸方向の熱移動を促進することができ、各発熱部231の対応する端部D,E間における温度低下を緩和することができる。これにより、ヒータの設定温度を高くしたり、温度検知センサを別途設けたりしなくてもよいので、省エネ性の向上や低コスト化を図れるようになる。
また、図11に示すように、高熱伝導部材51の長さLは、端部ヒータ23a又は中央ヒータ23bが長手方向にずれたとしても、高熱伝導部材51が各発熱部231の対応する端部位置D,Eを含む範囲に配置されるように設定されることが望ましい。特に、本参考例では、中央ヒータ23bの発熱部231の端部位置Eにおいて温度低下が急峻となるため、ずれが生じても当該端部位置Eが含まれる範囲に高熱伝導部材51が配置されることが望ましい。
また、ニップ形成部材24に高熱伝導部材51を設けることに加え、さらに、定着ベルト21における上記発熱部231の端部位置D,Eに対応する部分を、熱伝導率50W/m・K以上の材料で構成してもよい。これにより、定着ベルト21自体の軸方向の熱移動が促進されるようになるので、両ヒータ23a,23bの相対的位置がずれた場合の温度低下をさらに効果的に緩和することができるようになる。
図10及び図11の参考例では、高熱伝導部材51が、ニップ形成部材24の長手方向(用紙幅方向)の範囲の一部に配置されているが、図12に示す例のように、高熱伝導部材51は、ニップ形成部材24の長手方向の全体に渡って配置されていてもよい。この場合、定着ベルト21の軸方向全体に渡って軸方向の熱移動を促進させ、表面温度を均一化させることができる。また、高熱伝導部材51を長手方向の全体に渡って配置する場合は、ニップ形成部材24のニップ形成面(ニップ部N側の面)に段差が生じるのを回避することができ、ニップ部Nにおける加圧力のばらつきが生じにくくなる点で好ましい。
ここで、図12において、符号W1で示す範囲は、最小幅の用紙が通過する範囲を示す。一方、同図中の符号W2で示す範囲は、端部ヒータ23aと中央ヒータ23bによって加熱可能な範囲Xにおける最小幅の用紙が通過しない非通過領域である。最小幅の用紙を連続通紙して定着処理を行う際、中央ヒータ23bを発熱させると、最小幅の用紙が通過しない範囲では用紙によって定着ベルト21の熱があまり奪われないため、次第に温度が上昇する、いわゆる端部温度上昇の問題が発生する。そこで、図12に示すように、最小幅の用紙が通過しない非通過領域W2全体にも高熱伝導部材51を配置することで、非通過領域W2の熱量が軸方向へ移動して端部温度上昇の問題を緩和することができるようになる。
また、図13に示す参考例のように、高熱伝導部材51を、端部ヒータ23aと中央ヒータ23bの各発熱部231の互いに対応して配置される端部位置D,Eと、端部ヒータ23aの発熱部231の幅方向外側端部とのそれぞれに対応する位置に、部分的に配置してもよい。特に、この場合は、各発熱部231の対応する端部D,E間における温度低下を緩和することに加え、端部ヒータ23aの発熱部231の幅方向外側端部における温度低下を緩和することができる。
図14は、ニップ形成部材24の別の参考例の構成を示す図である。
図14に示す参考例では、ニップ形成部材24が、第1の高熱伝導部材である上記高熱伝導部材51のほか、基材50よりも熱伝導率の高い第2の高熱伝導部材としての吸熱部材52と、基材50よりも熱伝導率の高い第3の高熱伝導部材としての吸熱部材53とを有する。各吸熱部材52,53の材料としては、上述の高熱伝導部材51に用いる材料を適用可能である。
第2の高熱伝導部材としての吸熱部材52は、高熱伝導部材51のニップ部N側とは反対側に接触するように配置されている。また、この吸熱部材52は、ニップ形成部材24の長手方向(用紙幅方向)の一部に配置され、吸熱部材52が配置されていない部分は、基材50で構成されている。具体的に、吸熱部材52は、最小幅の用紙を通紙した際に端部温度上昇が生じやすい箇所、すなわち、最小幅の用紙の非通過領域W2における通過領域W1側に配置されている。
第3の高熱伝導部材としての吸熱部材53は、上記吸熱部材52及び基材50で構成される層の高熱伝導部材51側とは反対側に接触するように配置されている。また、この吸熱部材53は、ニップ形成部材24の長手方向(用紙幅方向)全体に渡って配置されている。
本参考例では、吸熱部材52が最小幅の用紙を通紙した際に端部温度上昇が生じやすい箇所に配置されていることで、この箇所で定着ベルト21の局部的な温度上昇が生じたとしても、吸熱部材52が熱を吸収することで、温度上昇を抑制することができる。そして、吸熱部材52によって吸収された熱は、吸熱部材53へと伝達される。要するに、各吸熱部材52,53は、高熱伝導部材51で吸収しきれない熱を吸収し、ニップ形成部材24の厚み方向への熱移動を促進させるために設けられている。ただし、各吸熱部材52,53の機能は、厚み方向への熱の移動に限らない。吸熱部材52,53も、高熱伝導部材51と同様に軸方向に幅があることからすれば、軸方向への熱移動機能も有するのは当然である。また、高熱伝導部材51も、軸方向への熱移動機能に限らず、厚み方向への熱移動機能も有する。
図14に示す参考例では、部分的に吸熱部材52を配置することで、非通過領域W2における定着ベルト21の局部的な温度上昇を抑制することができる。しかしながら、吸熱部材52が配置される箇所を用紙が通過する場合に、必要以上に熱が吸収されることで、反対に局部的な温度低下が生じることも考えられる。
そのような場合は、図15及び図16に示す参考例のように、吸熱部材52と高熱伝導部材51との間に、吸熱部材52よりも低い熱伝導率の樹脂層54を配置することで、高熱伝導部材51から吸熱部材52への熱の移動を低減することができる。これにより、非通過領域W2における定着ベルト21の局部的な温度低下を緩和することができる。なお、図15及び図16に示す参考例において、樹脂層54を設けている以外は、図14に示す参考例と同様の構成であるので、同様の構成の部分についての説明は省略する。
図17と図18に、図15及び図16に示すニップ形成部材24のさらに詳細な構成を示す。
図17は、ニップ部側から見たニップ形成部材24の分解斜視図、図18は、ステー側から見たニップ形成部材24の分解斜視図である。
高熱伝導部材51は、その幅方向(用紙搬送方向)の両端部においてステー25側へ折り曲げられた一対の壁部62を有し、断面略U字型に形成されている。このように形成された高熱伝導部材51の一対の壁部62の間に、基材50、各吸熱部材52,53及び樹脂層54が収容される。このように、高熱伝導部材51が壁部62を有することで、高熱伝導部材51が定着ベルト21の摺接によりベルト回転方向に力を受けた際に、壁部62が基材50や吸熱部材53に当接することで高熱伝導部材51のベルト回転方向のずれを規制することができる。
また、各吸熱部材52,53には穴56,57,58が形成され、基材50及び樹脂層54にはこれらの穴56,57,58に挿入される突起59,60,61が設けられている(図18参照)。穴56は、樹脂層54の突起59が挿入されて吸熱部材52を保持するためのものである。また、穴57,58は、基材50の突起60,61が挿入されて吸熱部材53を保持するためのものである。さらに、基材50の突起61は、他の突起59,60よりも長く形成されており、ステー25に設けられた嵌合穴に嵌合し、ニップ形成部材24全体をステー25に固定する機能を有する。
この構成では、図19(a)に示すように、高熱伝導部材51のニップ部側に配置される低摩擦シート29の用紙搬送方向Aの端部が、高熱伝導部材51の壁部62に巻きつけられ、壁部62と基材50との間に挟まれるようにして固定される。また、図19(b)に示すように、高熱伝導部材51が壁部62を有しない構成であってもよい。この場合は、低摩擦シート29の用紙搬送方向Aの端部を基材50あるいは吸熱部材53に固定する。
また、図17、図18に示すように、各壁部62の先端部(ステー25側の端部)には、鋸歯状部63が長手方向に渡って部分的に設けられている。この鋸歯状部63によって、低摩擦シート29の端部が確実に保持されるため、低摩擦シート29は、定着ベルト21が回転してもその回転方向にずれにくくなる。また、鋸歯状部63が設けられていない部分は、低摩擦シート29を組み付けるために用いられる治具を当接させる平坦部となっている。図17及び図18に示す例では、両方の壁部62に鋸歯状部63を設けているが、定着ベルト21の回転に伴う低摩擦シート29のずれを防止するには、少なくとも用紙搬送方向Aの上流側に配置される壁部62にのみ鋸歯状部63があればよい。
上述の図15〜図19に示す参考例では、樹脂層54を吸熱部材52と高熱伝導部材51との間に介在させているが、図20に示す参考例のように、基材50の一部を吸熱部材52と高熱伝導部材51との間に介在させてもよい。すなわち、図20に示す参考例では、基材50の高熱伝導部材51側とは反対側の面に開口する凹部55が設けられており、この凹部55内に吸熱部材52が嵌め込まれている。凹部55は、基材50を厚さ方向に貫通していないため、凹部55の底面を形成する部分(基材50)が吸熱部材52と高熱伝導部材51との間に介在している。
このように、低熱伝導部材である基材50が吸熱部材52と高熱伝導部材51との間に介在することで、上記樹脂層54を有する参考例と同様に、高熱伝導部材51から吸熱部材52への熱移動を低減することができる。すなわち、上述の図15〜図19に示す参考例では、吸熱部材52と高熱伝導部材51との間に介在させる低熱伝導部材を基材50とは別体の樹脂層54で構成しているのに対し、図20に示す参考例では、吸熱部材52と高熱伝導部材51との間に介在させる低熱伝導部材を基材50と一体的に構成しているといえる。また、凹部55の厚み(深さ)や用紙搬送方向Aの幅を適宜変更することで、高熱伝導部材51から吸熱部材52への熱移動量を調整することができる。例えば、吸熱すべき熱量が多い場合は、凹部55の厚さを小さくしたり、凹部55の用紙搬送方向Aの幅を大きくしたりすればよい。
以上、参考例について説明したが、各参考例において種々の変更を加えてもよい。上述の図14〜図20に示す参考例では、高熱伝導部材51をニップ形成部材24の長手方向全体に渡って配置しているが、図10に示す参考例と同様に、高熱伝導部材51を、端部ヒータ23aと中央ヒータ23bとのそれぞれの発熱部231の互いに対応して配置される端部位置D,Eにのみ対応するように配置してもよい。