以下に、図1を用いて本発明の実施形態にかかる画像形成装置の構成を説明する。図1に示した画像形成装置100は、複数の色画像を形成する作像部が回転ベルトの回転方向に沿って並べて配置された、タンデム方式と呼ばれるカラープリンタである。
画像形成装置100は、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色に分解された色にそれぞれ対応する像としての画像を形成可能な像担持体としての感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkを並べて配置したタンデム構造が採用されている。
画像形成装置の一例としてタンデム方式のカラープリンタを説明したが、本発明はこの方式に限られない。また、プリンタだけではなく複写機やファクシミリ装置などを対象とすることも可能である。
画像形成装置100では、各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkに形成された可視像が、各感光体ドラムに対峙しながら矢印A1方向に移動可能な無端ベルトである中間転写体(以下、転写ベルトという)11に対して1次転写される。この1次転写工程の実行によってそれぞれの色の画像が重畳転写され、その後、記録シートなどが用いられる、記録媒体としての記録材Sに対して2次転写工程を実行することで一括転写される。
各感光体ドラムの周囲には、感光体ドラムの回転に従い画像形成処理するための装置が配置され、作像ユニットを構成している。作像ユニットは、ブラック画像形成を行う感光体ドラム20Bkを代表として説明すると、感光体ドラム20Bkの回転方向に沿って画像形成処理を行う帯電装置30Bk、現像装置40Bk、1次転写ローラ12Bkおよびクリーニング装置50Bkが配置されている。帯電後に行われる書き込み光Lbを用いた書き込みには、光書き込み装置8が用いられる。
転写ベルト11に対する重畳転写では、転写ベルト11がA1方向に移動する過程において、各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkに形成された可視像が、転写ベルト11の同じ位置に重ねて転写される。このために、転写は、転写ベルト11を挟んで各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkに対向して配設された1次転写ローラ12Y、12C、12M、12Bkによる電圧印加によって、A1方向上流側から下流側に向けてタイミングをずらして行われる。
各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkは、A1方向の上流側からこの順で並んでいる。各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkは、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの画像をそれぞれ形成するための作像ユニットに備えられている。
画像形成装置100は、色毎の画像形成処理を行う4つの作像ユニットと、各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkの上方に対向して配設され、転写ベルト11及び1次転写ローラ12Y、12C、12M、12Bkを備えた転写ベルトユニット10と、転写ベルト11に対向して配設され転写ベルト11に従動し、連れ回りする2次転写ローラ5と、転写ベルト11に対向して配設され転写ベルト11をクリーニングするベルトクリーニング装置13と、これら4つの作像ユニットの下方に対向して配設された光書き込み装置8とを有している。
光書き込み装置8は、光源としての半導体レーザ、カップリングレンズ、fθレンズ、トロイダルレンズ、折り返しミラーおよび偏光手段としての回転多面鏡などを装備している。光書き込み装置8は、各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkに対して色毎に対応した書き込み光Lbを出射して感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkに静電潜像を形成するよう構成されている。書き込み光Lbは、図1では、便宜上、ブラック画像の作像ユニットのみを対象として符号が付けてあるが、その他の作像ユニットも同様である。
画像形成装置100には、2次転写ローラ5と転写ベルト11との間に向けて搬送される記録材Sを積載した給紙カセットとしてのシート給送装置61が設けられている。また、シート給送装置61から搬送されてきた記録材Sを、作像ユニットによるトナー像の形成タイミングに合わせた所定のタイミングで、2次転写ローラ5と転写ベルト11との間の転写部に向けて繰り出すレジストローラ対4が設けられている。記録材Sの先端がレジストローラ対4に到達したことは周知のセンサで検知される。
また、画像形成装置100には、トナー像が転写された記録材Sにトナー像を定着させるためのローラ定着方式の定着ユニットとしての定着装置200と、定着済みの記録材Sを画像形成装置100の本体外部に排出する排出ローラ7が備えられている。また、画像形成装置100の本体上部には、排出ローラ対7により画像形成装置100の本体外部に排出された記録材Sを積載する排紙トレイ17が備えられている。また、排紙トレイ17の下側には、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色のトナーを充填されたトナーボトル9Y、9C、9M、9Bkが備えられている。
転写ベルトユニット10は、転写ベルト11、1次転写ローラ12Y、12C、12M、12Bkの他に、転写ベルト11が掛け回されている駆動ローラ72及び従動ローラ73を有している。
従動ローラ73は、転写ベルト11に対する張力付勢手段としての機能も備えており、このため、従動ローラ73には、バネなどを用いた付勢手段が設けられている。このような転写ベルトユニット10と、1次転写ローラ12Y、12C、12M、12Bkと、2次転写ローラ5と、ベルトクリーニング装置13とで転写装置71が構成されている。
シート給送装置61は、画像形成装置100の本体下部に配設されており、最上位の記録材Sの上面に当接する給送ローラ3を有している。給送ローラ3が図中反時計回りに回転駆動されることにより、最上位の記録材Sをレジストローラ対4に向けて給送する。
転写装置71に装備されているベルトクリーニング装置13は、転写ベルト11に対向、当接するように配設されたクリーニングブラシとクリーニングブレードとを有している。ベルトクリーニング装置13は、転写ベルト11上の残留トナー等の異物をクリーニングブラシとクリーニングブレードとにより掻き取り、除去して、転写ベルト11をクリーニングする。
ベルトクリーニング装置13はまた、転写ベルト11から除去した残留トナーを搬出し廃棄するための排出手段を有している。
図2は、本実施形態にかかる定着装置を示す概略構成図である。定着装置200は、回転可能な定着部材の一例としての定着ベルト201と、これに対向配置されて回転可能な加圧部材の一例としての加圧ローラ203とを有する。定着ベルト201および加圧ローラ203はいずれも、回転軸対し垂直、つまり図2において紙面に対し垂直方向に、記録材Sの幅より長く延びた形状を有し、その間に記録材Sを挟んで搬送できる。また、定着装置200は、加熱部材の一例としてのヒータ202を有する。ヒータ202は、中央部ヒータ202A、および端部ヒータ202Bを有し、それぞれが定着ベルト201を内周側から輻射熱により直接加熱する。後述するようにそれぞれが定着ベルト201回転軸方向で互いに異なる発熱領域を有し、定着ベルト201のそれぞれ異なる領域を加熱する。ヒータ202としては一例としてハロゲンヒータが用いられるがこれに限られず、定着部材に接触させて加熱するセラミックヒータや、電磁誘導を利用して定着部材内部から加熱するIH(Induction Heating)ヒータでもよい。
さらに定着装置200は、定着ベルト201の温度を検知するため、温度検知部材の一例としての温度センサ230を有する。温度センサ230としては一例として非接触サーモパイルが用いられるがこれに限られない。温度センサ230は後述するようにそれぞれが定着ベルト201回転軸方向で検知位置の異なる二つの温度センサである中央部温度センサ230A、端部温度センサ230Bを有し、定着ベルト201の外表面温度を検知している。制御部18は、後述のように、温度センサ230の検知温度に応じてヒータ202の点灯率を制御し、定着ベルト201の温度を所望の温度に制御する。
このとき、図2の定着ベルト201の内側には、ニップ形成部材206と熱移動補助部材216とからなるニップ部材が設けられている。ニップ部材は定着ベルト201を介して加圧ローラ203との間でニップ部(図2に示すN)を形成する。つまり、ニップ部材と加圧ローラ203とで定着ベルト201を挟み、定着ベルト201と加圧ローラ203との間にニップ部を形成している。このニップ部において、記録材S上のトナー像は定着に十分な熱と圧を加えられ、記録材に定着される。ニップ形成部材206は熱移動補助部材216に接触し、熱移動補助部材216のニップ形成部材206と接触する面の反対側の面は、定着ベルト201の内面に接触している。定着ベルト201は図中矢印の向きに熱移動補助部材216と接触しながら回転する。
図3は、前述の温度制御の制御ブロック図である。制御部18はCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read−Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を有する周知のマイクロコンピュータからなる。制御部18は、温度センサ230からの温度検知結果に基づき、ヒータ202への通電を制御できる。すなわち、中央部温度センサ230A、端部温度センサ230Bそれぞれからの温度情報に基づき、周知のトライアック等を介してハロゲンヒータである中央部ヒータ202Aおよび端部ヒータ202Bそれぞれに対する通電制御を行うことで点灯率を調整する、いわゆるフィードバック制御を行う。制御部18は一例として画像形成装置100の装置本体に設けられ、画像形成装置100内の定着装置200以外の部材の制御や、画像形成装置と外部との通信制御を行うことも可能である。制御部18は定着装置200に設けてもよいし、画像形成装置100外部に設けてもよい。
図2に示されるように、熱移動補助部材216の加圧ローラ203側の面は平坦状である。その面は平坦状でなくとも、加圧ローラ203の外周面に沿った凹形状やその他の形状であっても良い。ニップ部が凹形状である場合には、記録材Sの先端が排出される方向が加圧ローラ寄りになるため、分離性が向上し、ジャムの発生が抑制される。
定着ベルト201の内側には加圧ローラ203に対向して配置されたニップ形成部材206と、ニップ形成部材206の定着ベルト201の内面に対向する面を覆う熱移動補助部材216と、ニップ形成部材206を加圧ローラ203からの加圧力に対抗して保持するステー部材207とを有している。ニップ形成部材206、熱移動補助部材216及びステー部材207は、いずれも定着ベルト201の回転軸方向に延びる長さを有している(以下「長手方向」という場合がある)。そして、この回転軸に対し略直角に記録材Sが搬送される方向には、ニップ部を形成するのに必要な長さをそれぞれ有している(以下「短手方向」という場合がある)。
熱移動補助部材216は、定着ベルト201の熱が局所的に留まることを防止し、積極的に長手方向に熱を移動させて長手方向の温度不均一性を低減するために設けられている。このため、熱移動補助部材216は短時間で熱移動が可能な材料であることが望ましく、例えば熱伝導率の高い銅やアルミニウム、銀といった金属材料であることが望ましい。コスト、入手容易性、熱伝導率特性、加工性を総合的に考慮すると、銅を用いることが最も望ましい。
本実施形態では、熱移動補助部材216の定着ベルト201の内面に対向する面は、少なくともその一部が定着ベルト201内面に直接接触する面であり、ニップ形成面となる。
定着ベルト201は、例えばニッケルやSUS(ステンレス鋼)などの金属やポリイミドなどの樹脂材料を用いた、無端ベルトまたはフィルムで構成される。定着ベルト201の表層は、トナーが付着しないように、PFA(ポリテトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)またはPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)層などで形成される。定着ベルト201の基材とPFAまたはPTFE層の間にはシリコーンゴムの層などで形成された弾性層があっても良い。弾性層を設けないと熱容量が小さくなり、定着性は向上するが、未定着画像を押し潰して定着させるときにベルト表面の微小な凹凸が画像に転写されて画像のベタ部に光沢ムラが残るという不具合が生じ得る。これを改善するには弾性層を100[μm]以上設ける必要がある。弾性層の変形により、微小な凹凸が吸収され画像の光沢ムラが改善する。
ステー部材207はニップN側と反対側に起立した起立部を有する。起立部は、定着熱源としての中央部ヒータ202A、端部ヒータ202Bのそれぞれを隔てる位置に配置されている。定着ベルト201は、中央部ヒータ202A、端部ヒータ202Bにより内面側から輻射熱により直接加熱される。
定着ベルト201の内部にはニップ形成部材206とニップ部Nを支持するための支持部材としてのステー部材207を設け、加圧ローラ203により圧力を受けるニップ形成部材206の撓みを防止し、長手方向で均一なニップ幅を得られるようにしている。ニップ形成部材206のステー部材207側には、突起部206aを有している。突起部206aは長手方向に二列に並んでおり、図2においては端部の二つが示されている。ステー部材207とニップ形成部材206が面同士で接触すると熱がこもり、ニップ形成部材206が変形するなどの可能性もある。本実施の形態では、両者が突起部206aにおいて接触しているため、熱のこもりを防いでいる。さらにニップ形成部材206はボス206bを有している。ステー部材207に設けられたボス穴でニップ形成部材206とステー部材207が互いの位置を決めることができる。
ニップ形成部材206は、機械的強度が高く、200℃以上の耐熱性のある材料として例えば耐熱性樹脂が好ましい。耐熱性樹脂の例として、ポリイミド(PI)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂等が挙げられ、それらをガラス繊維で強化したものを用いることができる。
ステー部材207は両端部で、後述する保持部材としてのフランジ209に保持され位置決めされている。また、ヒータ202とステー部材207との間には、反射部材208が設けられている。これにより、ヒータ202からの輻射熱によりステー部材207が加熱されることによって生じる無駄なエネルギー消費を抑制している。ここで反射部材208を備える代わりに、ステー部材207の表面に断熱もしくは鏡面処理を行っても同様の効果を得ることが可能となる。ステー部材207はニップ形成部材206を支持してニップ形成部材206の撓みを防止する為に、機械的強度が高い材料を用いるとよい。例えばステンレスや鉄などの金属材料が好ましいが、樹脂製であってもよい。
加圧ローラ203は芯金205の周りに弾性ゴム層204が形成されている。そして、弾性ゴム204の表面には、離型性を得るために離型層(例えば、PFAまたはPTFE層)が設けられている。加圧ローラ203は、画像形成装置に設けられたモータなどの駆動源からギヤを介して駆動力が伝達され回転する。また、加圧ローラ203は、スプリングなどにより定着ベルト201側に押し付けられており、弾性ゴム層204が押し潰されて変形することにより、所定のニップ幅を維持している。加圧ローラ203は中空のローラであっても良く、加圧ローラ203にハロゲンヒータなどの加熱源を有していても良い。弾性ゴム層204はソリッドゴムでも良いが、加圧ローラ203内部にヒータが無い場合は、スポンジゴムを用いても良い。スポンジゴムの方が、断熱性が高まり定着ベルト201の熱が奪われにくくなるので、より望ましい。
定着ベルト201は加圧ローラ203により連れ回り回転する。図2の場合は加圧ローラ203が駆動源により回転し、ニップ部Nで定着ベルト201に駆動力が伝達されることにより定着ベルト201が回転する。定着ベルト201はニップ部Nで挟み込まれて回転し、ニップ部以外では両端部で後述するフランジ209にガイドされ、走行する。
上記のような構成により安価で、ウォームアップが早い定着装置を実現することが可能となる。
ここで図2の定着装置における熱移動補助部材216の軸方向長さについて述べる。加圧ローラ203の長手方向の長さは、本定着装置の最大通紙幅(一例として320mm幅)に対し、ユーザーの用紙セット位置のずれを加味して長く設計されている。また、加圧ローラ203に対し、熱移動補助部材216はさらに長手方向に長く設計されている。これは熱移動補助部材216が加圧ローラ203よりも短いと、ニップ部で定着ベルト201が熱移動補助部材216の長手方向端部で屈曲し定着ベルト201に破損の可能性があるからである。その為、各部材の製造公差が生じることや、組み立てに必要なあそびを設けることを考慮した上で加圧ローラ203よりも熱移動補助部材216の方が長くなるように設計する。その結果、熱移動補助部材216は、本定着装置の最大通紙幅よりもかなり長く設計されており、一例として両側それぞれにおいて約20mm長く設計されている。
図4は、第二の実施形態にかかる定着装置200の構成を示している。図2と同じ構成には同じ符号を付している。図2では中央部ヒータ202A、端部ヒータ202Bがステー部材207を挟む位置に配置された構成であったが、本実施の形態では、二つのヒータをどちらも、ニップ部の定着ベルト201回転方向上流側に配置している。
図2に示されるようにステー部材207を挟んだ構成では、二つのハロゲンヒータからの放射熱がステー部材207で遮られるため、一方のハロゲンヒータから放射した熱が他方のハロゲンヒータを構成するガラス管等の部材に吸収されることによって生じるエネルギーロスが少ない。図4に示されるようにハロゲンヒータがニップ部の上流側にある構成であれば、ハロゲンヒータにより加熱した部分が定着ベルト201の熱が回転に伴ってニップ部まで移動する間に放熱されるエネルギーロスを少なくすることが可能である。このように定着装置は種々の変形が可能である。
図5は、定着装置200の長手方向の一方の端部を示す概略的な斜視図である。定着ベルト201の両端には、フランジ209が設けられる。図5はその片側を示す。
フランジ209は、長手方向両側を開口させた中空形状をなし、長手方向に延びる受け部209aと、受け部209aから半径方向に突出する顎部209bとを一体に有する。受け部209aは、周方向の一部領域に切り欠き209cを有する部分円筒状に形成されている。この切り欠き209cで形成された空間に、ニップ形成部材206及び熱移動補助部材216が挿入されている。
受け部209aは、定着ベルト201の長手方向にベルト寄りが発生した際、定着ベルト201の端部と接触し、定着ベルト201の長手方向への移動を規制する。顎部209bは、定着装置200の本体側板に保持される。また、定着ベルト201の端部と受け部209aとの間に定着ベルト201に対して摺動性の良い材質のリング状プレートをさらに設けてもよい。
図6はニップ部材を構成するニップ形成部材及び熱移動補助部材の第一の実施形態を示す分解斜視図である。一点鎖線はそれぞれ中央部温度センサ230A、端部温度センサ230Bが定着ベルト201表面の温度を検知する定着ベルト201長手方向(回転軸方向)の位置を示している。
詳述すると、ニップ形成部材206及び熱移動補助部材216が定着装置200に組み付けられ定着装置200が動作した際には、図2、図4に示されるように、定着ベルト201の回転に伴い定着ベルト201内周面は熱移動補助部材216と接触することとなる。図6中の熱移動補助部材216上の一点鎖線は、各温度センサ230A,230Bが検知する定着ベルト201表面の裏面にあたる部分が、定着ベルト201の回転に伴って通過しつつ接触する熱移動補助部材216上の長手方向位置を示している。
ここで中央部温度センサ230A、端部温度センサ230Bが一例として図中丸で示される領域A、領域Bの検知範囲を有する場合、定着ベルト201の回転に伴いそれぞれ一点鎖線を中心として点線の幅内の定着ベルト201表面が検知され、定着ベルト201の回転に伴いその幅に対応する裏面が、熱移動補助部材216と接触することとなる。なお図中の一点鎖線は前述の通り、各温度センサの長手方向検知位置を示しているのに対し、設置位置は必ずしも一点鎖線と一致していなくてもよい。特に非接触センサであれば、例えば装置内レイアウトの都合上、検知位置とはずれた位置に設置することも可能である。
熱移動補助部材216は、ニップ形成部216aと屈曲部216bを有し、ニップ形成部材206のニップ部側を長手方向に覆うように形成される。ニップ形成部216aは、図2、図4に示されるような長手方向に垂直な断面でみたときに、ニップ形成部材206の外面に沿うように形成され、ニップ形成部材206のニップ部に面する側に接する部分である。ニップ形成部216aのニップ形成部材206と接する面と反対側の面は定着ベルト201と接している。
屈曲部216bはそのニップ形成部216aから略直角に屈曲している。定着ベルト201の回転に伴って、定着ベルト201と熱移動補助部材216との間に生じる摩擦により、ニップ形成部材206と熱移動補助部材216との間で記録材S搬送方向にずれを生じさせる力が働くことがある。その際には、ニップ形成部材206と屈曲部216bとが接触する事で、ニップ形成部材206と熱移動補助部材216との記録材S搬送方向の位置がずれるのを防止し、互いの位置を維持することができる。
熱移動補助部材216はさらに、第一の延長部216cと第二の延長部216dを有する。第一の延長部216cと第二の延長部216dは、屈曲部216bの長手方向中央領域において、長手方向に垂直な方向に突出する凸部を構成する。第一の延長部216cと第二の延長部216dは、図7に示すように熱移動補助部材216を平坦な状態に展開したときに屈曲部216bの長手方向中央領域において短手方向に突出する凸部を構成するということもできる。
本実施の形態における第一の延長部216cと第二の延長部216dは長手方向に同一幅を有し、端部温度センサ230Bが検知する長手方向の位置を含む領域から突出している。凸部は、熱移動補助部材216の長手方向中央から端部温度センサ230Bが設置されている側の端部に向かって、端部温度センサ230Bが検知する長手方向位置を含む領域が、その領域のさらに端部側領域よりも熱容量が大きくなるように設けられている。一例として、端部温度センサ230Bが設置されている位置(一点鎖線)から、端部に10mm離れた位置まで凸部が設けられている。一方、反対側の端部に向かっては、端部温度センサ230Bが検知する位置を含む領域の長手方向に定着ベルト201の長手方向の中心に対し略対称の領域が、その領域のさらに端部側領域よりも熱容量が大きくなるように幅広に設けられている。一例として熱移動補助部材216が、熱移動補助部材216の長手方向中心に略対称となる位置まで凸部が設けられている。
上述したように、ニップ形成部材206に熱移動補助部材216を被せて定着装置200に取り付けた状態において、熱移動補助部材216の長手方向に垂直な断面の外周長さは、第一の延長部216cと第二の延長部216dを合わせた分だけ端部近傍に比べて中央部近傍が長くなっている。言い換えると、熱移動補助部材216は、長手方向端部がそれ以外の領域に比べて長手方向に対し垂直断面の外周長さが短くなるように延長部の延長方向に切欠かれた形状に設計されている。
ここで、長手方向に垂直な断面の外周長さを長くするには、板状である熱移動補助部材216の厚さを厚くすることでも可能である。つまり本実施の形態においては熱移動補助部材216の厚さがほぼ一定であるため、延長部の延長方向長さを長くするとその分だけ外周長さが長くなり、断面積が大きくなる。したがって長手方向の単位長さあたりの体積が大きくなる結果、熱容量が大きくなっている。また、板状である熱移動補助部材216の厚さを厚くしても断面積は大きくなる。したがって別の実施の形態として、板状である熱移動補助部材216の厚みを長手方向位置によって異ならせることによっても、長手方向の位置によって熱容量を変えることが可能である。
第一の延長部216cは、ニップ形成部材206に沿ってニップ部、又は定着ベルトを介しニップ部を形成している加圧ローラ203と反対に向かい折れ曲がり延びている。第二の延長部216dは、第一の延長部216cからさらに内側に折れ曲がり、ニップ形成部材206のニップNを形成する面と略平行つまり、略短手方向に伸びている。このとき、第二の延長部216dは、突起部206aと接する程度まで延びている。第一の延長部216cおよび第二の延長部216dによって熱移動補助部材216はニップ形成部材206を覆って、その背面、言い換えるとニップ部を形成する面と反対側の面を係止できる形状となっている。
図8はニップ部材を構成するニップ形成部材及び熱移動補助部材の第二の実施形態を示す分解斜視図である。図6と同じ部材には同じ符号を付している。本実施形態ではニップ形成部材206に熱移動補助部材216を被せて取り付けた状態において、長手方向に端部温度センサ230Bが設置されている位置を中心に両側10mmの範囲で第一の延長部216c、第二の延長部216dを設けて熱移動補助部材216の長手方向垂直断面の長さを長くすることで、他の部分に比べて熱容量を大きくしている。反対側の端部は端部センサが設けられていないが、長手方向に対称になるように第一の延長部216c、第二の延長部216dを設け、端部とそれ以外の箇所とで長手方向に対し垂直断面の外周長さを異ならせている。
第一の実施形態と比較して熱移動補助部材216の長手方向中央部分が、第一の延長部216c、第二の延長部216dを形成した部分より短くなっている。こうすることで中央部が短い分熱移動補助部材216の熱容量はより小さくなるため、熱移動補助部材216全体の温まりは早く、ウォームアップ時間を短くすることができる。また、第一の実施形態と比較して、第二の延長部216dの長さは、より長く延長されている。それにともない、図8に示されているように、216dが延長される部分については突起部206aを設けない構成に変形することも可能である。突起部206aを設けたまま、突起部206aを避けるように延長する事も可能である。
図8を用いて上述の熱容量の比較の第一の例について述べる。端部温度センサ230B位置から両側10mmの範囲、つまり延長部216c、216dが形成されている長手方向に20mmの範囲の略長方形を、端部温度センサ230Bを含む長手方向領域として第一の領域とする。それより長手方向端部で、第一の領域と同じ20mmの範囲を抽出して第二の領域とすると、第一の領域は延長部216c、216d分、第二の領域よりも熱容量が大きい。
図8を用いた熱容量の大きさの比較の他の例について述べる。端部温度センサ230B位置から両側5mmの範囲、つまり長手方向に10mmの範囲を、端部温度センサ230Bを含む長手方向領域として第一の領域とする。それより長手方向端部側で、第一の領域と同じ10mmの範囲を抽出して第二の領域とすると、第二の領域には延長部216c、216d分形成されていない分、第一の領域の熱容量の方が大きくなる。第二の領域としての10mmの範囲は、第一の領域より長手方向端部側領域内で長手方向に連続的に選択可能であるが、延長部216c、216d分が無い部分を含んで抽出可能な限り、その分やはり第一の領域の熱容量の方が大きくなり、本実施形態の効果を得られる。
図6、図8に記載の実施形態では、凸部が検知領域Bの長手方向全体をカバーするように長手方向の長さにわたって形成されているがこれに限られず、検知領域Bの一部をカバーするものでもよい。また、ニップ部の上流側、下流側両方に延長部216c、216dを設けてもよいし、片側のみ設けることもできる。
また、熱移動補助部材216端部と比べて端部温度センサ230Bの周辺の熱移動補助部材216の延長部の長さを変えているが、前述のように熱移動補助部材216の厚みを部分的に変えたり、また、部分的に孔を設けることでも長手方向位置に応じて熱容量を変えることができる。すなわち、熱移動補助部材216の端部にのみ孔を設けたり、端部と端部温度センサ230Bの周辺の双方に穴を設けるが、その密度や大きさを、端部の方が大きくなるようにする。
また、長手方向で熱容量を大きくしたい領域、つまりここでは端部温度センサ230Bの周辺領域に、別部材を貼ってその分熱容量を大きくすることができる。この別部材を貼る方法では互いの表面の接触状態によって熱の移動速度が変わってしまう可能性があるが、同一部材で厚みや長さを変える方法は安定的に熱の移動が期待でき、加工精度、組付精度等によって定着装置毎に画質にばらつきが出る事少ない。
図6、図8のそれぞれに一例として示されるニップ部材による効果を、図9、図10、図11を用いて説明する。
図9は、加熱部材の発熱領域と温度センサの位置関係を示す模式図である。中央部加熱部材、端部加熱部材の一例としての中央部ヒータ202A、端部ヒータ202B、および中央部温度検知部材、端部温度検知部材の一例としての中央部温度センサ203A、端部温度センサ203Bの位置関係を示している。定着ベルト201の長手方向が図9紙面の左右方向であり、各ヒータ202A,202Bは、定着ベルト201の長手方向に延びる形状を有している。各ヒータ202A、202Bの発熱領域は、図中波状部により示されている。波状部は、通電により発熱するフィラメントが、他部分より密に巻かれた状態を表している。密に巻かれている部分は他部分より発熱量が大きくなっており、その部分が発熱領域として機能する。この粗密に巻かれたフィラメントを円筒状の透明ガラス管内にハロゲンガスとともに封入したハロゲンヒータを加熱部材として用いている。なお、各ヒータと各温度センサとの位置関係をわかりやすくする為、定着ベルト201は示していない。
中央部加熱部材、端部加熱部材の一例としての中央部ヒータ202A、端部ヒータ202Bについて述べる。中央部ヒータ202Aは紙サイズでA4T(A4縦)幅210mmに合わせた領域が発熱する。端部ヒータ202Bは202Aの発熱領域に加えることで、紙サイズでA3ノビ幅320mmに合わせた領域が発熱するよう設計される。中央部ヒータ202Aと端部ヒータ202Bで加熱することにより最大通紙幅であるA3ノビ幅に対応する加熱領域となっている。中央部ヒータ202Aは中央部に発熱領域を有し、定着ベルト201の長手方向中央部を加熱するように定着装置200内に設けられる。それに対し端部ヒータ202Bは、両端部に発熱領域を有し、両端部の発熱領域が定着ベルト201の中央に対し略対称になるよう、定着装置200内に設けられる。
中央部温度検知部材、端部温度検知部材の一例としての中央部温度センサ230A、端部温度センサ230Bについて述べる。中央部温度センサ230AはA4T幅の略中央に当たる定着ベルト201の表面を検知する位置に設置されている。端部温度センサ230BはA4T幅端とA3ノビ幅端との略中央を検知するように設置されている。
図10は端部ヒータ202Bから定着ベルト201を介し熱移動補助部材216へ伝わる熱の流れを、図8のニップ部材を一例として示す。説明を分かりやすくする為、定着ベルト201は示していない。またニップ形成部材206と熱移動補助部材216は長手方向に略同じ長さであるが、どちらかが長くてもよい。
端部ヒータ202Bから放射された熱は定着ベルト201を介して、熱移動補助部材216に伝わる。熱移動補助部材216は、前述した通り、最大通紙幅(中央部ヒータ202Aと端部ヒータ202Bを点灯させた発熱領域に略対応する)よりも長く作られている。この時図10中、Q1であらわされる最大通紙幅より外側まで伝わったエネルギーは定着に使われることなく散逸することとなる。よって最大通紙幅の端部は熱移動補助部材216の最端部まで散逸するエネルギーQ1分だけ、定着ベルト201の端部温度が下がることになる。
このとき、端部温度センサ230Bの検知位置に対応する定着ベルト201の領域では、目標温度を維持するように、フィードバック制御されるため十分な定着温度を維持することが可能である。その一方で端部温度センサ230Bの検知位置より外側の領域では、温度が低下したとしても端部温度センサ230Bによっては検知できないため、目標温度を維持するようにフィードバック制御はされない。その結果、端部温度センサ230Bの検知位置では十分な定着温度に達していても、そこから端部に行くにつれ紙の加熱定着に使われることなく熱移動補助部材216を伝って散逸してしまうエネルギーQ1分、最大通紙幅内の端部位置の温度も低下し、定着不良が生じる。
図6及び図8の熱移動補助部材216においては、長手方向にみて端部温度センサ230Bの検出位置周辺は、熱移動補助部材216の長手方向垂直断面の外周長さを長くし、その分熱容量を大きくしている。したがって熱移動補助部材216の延長部216c、216dにエネルギーQ2だけ熱が移動し、加熱定着に使われることなくニップ形成部材206を伝って散逸する。その結果、その位置での温度はエネルギーQ2奪われる分だけ、奪われないときに比べ低下する。ここで、端部温度センサ230Bの位置の定着ベルト201の温度を検知して端部ヒータ202Bの点灯率を調整しているので、目標温度を維持するために、エネルギーQ2が存在しない時に比べ多く点灯することになる。その結果、端部温度センサ230Bの検知位置より端部側においても、端部ヒータ202Bからの加熱をより多く受けることになる。
したがって、図10におけるエネルギーQ1とエネルギーQ2とを調整することにより、定着ベルト201から奪うエネルギーを長手方向で略同じにし、定着ベルト201の温度の均一性を高め、端部温度の低下を防ぐことができる。すなわち熱移動補助部材216の長手方向端部からを伝って散逸する分と、端部温度センサ230B位置で熱移動補助部材216の延長部へ散逸する分を調整することで、定着ベルト201の長手方向温度を調整する。これにより図11に示すように、端部温度センサ230Bの検知結果に基づく制御により所望の温度になった時点で、最大通紙幅W端部位置の温度は従来よりも高くなり、本実施形態のように最大紙の端部まで定着強度を確保することができる。
また、端部ヒータ202Bは長手方向反対側の端部にも発熱領域を有しており、端部ヒータ202Bの両端部と中央部ヒータ202Aを発熱し、記録材Sを、定着ベルト201の長手方向略中心と記録材Sの略中心とを合わせてニップ部に搬送することで定着可能である。このとき熱移動補助部材216の、端部温度センサ230Bが設けられていない側の端部も、定着ベルト201の長手方向略中心に対し対称となるように延長部を設けている。つまり端部温度センサ230Bが検知する位置を含む領域と同様に、端部温度センサ230Bが検知する位置を含む領域の定着ベルト201の長手方向に中心に対し略対称の領域も、当該略対称の領域の端部側領域よりも熱容量が大きくなるように、熱移動補助部材216の長手方向垂直断面の外周長さを長くしている。したがって、両端部において上述のエネルギーの調整が略同等に行われることとなり、最大紙の両側端部まで定着強度を確保することができる。
以上説明したように、定着ベルト201に熱移動補助部材216を接触させる構成にすると、定着ベルト201の保有する熱は接触伝熱により良熱伝導材料から成る熱移動補助部材216へ散逸し、さらに熱移動補助部材216と接触伝熱するニップ形成部材206へ散逸する。定着ベルト201の端部は、熱移動補助部材216の最端部へ熱が散逸する分だけ余計に熱を奪われてしまい温度低下する。
すなわち、熱移動補助部材216の長手方向の長さは、種々ばらつきを考慮して、その定着装置200で通紙可能な最大通紙幅よりも長く設計せざるをえない。特に定着装置200全体の温度が低く、温度が散逸しやすいウォームアップ直後は、熱源により生じたエネルギーが、熱移動補助部材216の長手方向の端部へ散逸しやすく、熱移動補助部材216と接触伝熱する定着ベルト201の端部温度も下がる。よって、長手方向端部の定着性が悪くなり、オフセット等異常画像が発生の原因となる。
それに対し、本実施の形態では、一例として定着部材の長手方向に垂直な断面の外周長さを、端部温度センサ230Bのある長手方向位置周辺で長く、定着ベルト201端部周辺で短くすることにより、熱移動補助部材216の熱容量を長手方向で異ならせ、熱移動補助部材216の最端部へ散逸するエネルギーとつりあうように構成している。
こうすることで、熱移動補助部材216の最端部へ散逸するエネルギーと、熱容量を増やした部分へ散逸するエネルギーを同じにし、結果として定着ベルト201のエネルギーを長手方向で揃えることで、ウォームアップ直後の定着ベルト201の端部まで温度を揃え、端部温度低下を防止することができる。