JP2017014403A - 変形回復性構造体用ポリオレフィン系樹脂組成物及び変形回復性構造体 - Google Patents

変形回復性構造体用ポリオレフィン系樹脂組成物及び変形回復性構造体 Download PDF

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Abstract

【課題】成形時のヤケ等の不具合を生じず、優れた難燃性を発現し、さらには優れた変形回復性を発現する構造体を提供する。【解決手段】下記(y1)および(y2)の特徴を有するポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、ハロゲン系難燃剤(D)を1〜15重量部含有する変形回復性構造体用ポリオレフィン系樹脂組成物。(y1)メルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)が1.0〜100g/10分であること。(y2)融解ピーク温度(Tm)が60〜170℃であること。【選択図】なし

Description

本発明は、難燃性を有する変形回復性構造体用ポリオレフィン系樹脂組成物及び変形回復性構造体に関し、詳しくは、優れた難燃性を有し、且つ成形加工時に不具合を生じず、更には継続した負荷により継続して変形せしめられた後、負荷を除去した際に優れた変形回復性を有する構造体を構成するポリオレフィン系樹脂組成物及びこれよりなる変形回復性構造体に関する。
従来、変形回復性構造体、例えば、ベッド等の寝具、家庭用や車両・船舶・航空機用座席等のクッション材には、発泡ウレタン、非弾性捲縮繊維詰綿、及び非弾性捲縮繊維を接着した樹脂綿や硬綿などが用いられてきた。
近年、熱可塑性樹脂を押出成形によりループ状に押出し、このストランドを熱接着後、冷却固化して得られる三次元網目状構造体を当該クッション材として使用する試みがなされている。当該熱可塑性樹脂として、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマーを用いることが知られている(例えば、特許文献1:特開平07−068061号公報参照)。また、特許文献2(特開2004−218116号公報)や特許文献3(特開2006−200117号公報)には、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)やエチレン・α−オレフィン共重合体であるポリエチレン系樹脂が開示され、また、特許文献4(特開2002−061059号公報)には、ポリプロピレンに、SBSを5〜30重量%配合してなる三次元構造体が開示されている。
前述のベッド等の寝具、家庭用や車両・船舶・航空機用座席等のクッション材には、難燃性が求められるケースがある。
この課題に対しては、例えば特許文献5(特開平08−098748号公報)には、補強層を構成する熱可塑性樹脂繊維及びクッション体を構成する熱可塑性弾性樹脂連続線条中にリンが1000〜20000ppmの範囲で含有されているベットマットが開示されている。しかし、難燃剤が成形時に分解し、白煙や異臭を発生したり、また、成形後においても異臭が残る問題を有していた。
この課題に対しては、例えば特許文献6(特開2001−072798号公報)には、特定のリン酸エステル系難燃剤(A)とトリアジン系化合物とシアヌール酸またはイソシアヌール酸からなる塩である難燃剤(B)とを含む難燃性熱可塑性樹脂組成物が開示されている。しかしながら、当該難燃剤の組み合わせは、ポリエステル系エラストマーに対しては効果があるものの、その比較例14に記載されている通り、ポリプロピレンなどのポリオレフィンに対しては効果が不十分なものであった。
更に、リン系の難燃剤は、成形時にヤケ物質を形成しやすく、成形品の外観を損なうだけでなく、ヤケ物質が成形機に付着し、成形性が悪化しやすい問題も有している。
特開平07−068061号公報 特開2004−218116号公報 特開2006−200117号公報 特開2002−061059号公報 特開平08−098748号公報 特開2001−072798号公報
本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、優れた難燃性を有し、且つ成形加工時に不具合を生じず、更には継続した負荷により継続して変形せしめられた後、負荷を除去した際に優れた変形回復性を有する構造体を構成するポリオレフィン系樹脂組成物及びこれよりなる変形回復性構造体を提供するものである。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定のポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、ハロゲン系難燃剤を1〜15重量部含有した樹脂組成物を用いることにより、成形時のヤケ等の不具合を生じず、得られた構造体が優れた難燃性を発現し、さらには優れた変形回復性を示すという従来にない特性を発現することを見出し、本発明を完成させた。
本発明は、以下の変形回復性構造体用ポリオレフィン系樹脂組成物およびそれよりなる変形回復性構造体を提供する。
[1]下記(y1)および(y2)の特徴を有するポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、ハロゲン系難燃剤(D)を1〜15重量部含有する変形回復性構造体用ポリオレフィン系樹脂組成物。
(y1)メルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)が1.0〜100g/10分であること。
(y2)融解ピーク温度(Tm)が60〜170℃であること。
[2]ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、難燃助剤(E)0.1〜10重量部を、さらに含有することを特徴とする[1]に記載の変形回復性構造体用ポリオレフィン系樹脂組成物。
[3]前記ハロゲン系難燃剤(D)が臭素系難燃剤である[1]または[2]に記載の変形回復性構造体用ポリオレフィン系樹脂組成物。
[4]前記ポリオレフィン系樹脂が、下記成分(A)1〜99重量部と下記成分(B)1〜99重量部(但し、成分(A)と成分(B)の合計を100重量部とする)からなるポリプロピレン系樹脂組成物(X)を含有することを特徴とする[1]〜[3]のいずれか1項に記載の変形回復性構造体用ポリオレフィン系樹脂組成物。
成分(A):下記(a1)〜(a2)を満足する1種類もしくは2種類以上のプロピレン単独重合体及び/又はプロピレン−α−オレフィン共重合体。
(a1)融解ピーク温度(Tm)が121〜170℃であること。
(a2)メルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)が0.1〜500g/10分であること。
成分(B):下記(b1)を満足する少なくとも1種類のプロピレン−α−オレフィン共重合体。
(b1)プロピレン51〜90重量%、エチレン及び/又は炭素数4〜10のα−オレフィン10〜49重量%からなること。
[5]前記ポリプロピレン系樹脂組成物(X)の一部または全部は、(a1)および(a2)を満足する成分(A’)1〜99重量部と、(b1)を満足する成分(B’)1〜99重量部(但し、(A’)と(B’)の合計量を100重量部とする)を、逐次重合して得られるポリプロピレン系樹脂組成物(X’)であることを特徴とする[4]に記載の変形回復性構造体用ポリオレフィン系樹脂組成物。
[6]前記ポリプロピレン系樹脂組成物(X’)がメタロセン系触媒を用いて逐次重合して得られることを特徴とする[5]に記載の変形回復性構造体用ポリオレフィン系樹脂組成物。
[7]前記成分(B’)は、83〜90重量%のプロピレンと10〜17重量%のエチレンからなる少なくとも1種類のプロピレン−α−オレフィン共重合体であることを特徴とする[5]又は[6]に記載の変形回復性構造体用ポリオレフィン系樹脂組成物。
[8][1]〜[7]のいずれかに記載の変形回復性構造体用ポリオレフィン系樹脂組成物からなる変形回復性構造体。
[9]変形回復性構造体は、押出成形により得られる複数のストランドからなる連続線状体を三次元ランダムループ状に曲がりくねらせて、複数のループの接触部の少なくとも一部が融着してなる立体網目状構造を有する網状構造体であることを特徴とする[8]に記載の変形回復性構造体。
本発明の変形回復性構造体用ポリオレフィン系樹脂組成物は、成形時のヤケ等の不具合を生じず、優れた難燃性を発現し、さらには優れた変形回復性を発現する構造体を与える。
本発明の変形回復性構造体用ポリオレフィン系樹脂組成物(以下「変形回復性構造体用ポリオレフィン系樹脂組成物(Y)」とも言う。)は、下記(y1)および(y2)の特徴を有するポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、ハロゲン系難燃剤(D)を1〜15重量部含有する。
(y1)メルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)が1.0〜100g/10分であること。
(y2)融解ピーク温度(Tm)が60〜170℃であること
以下、項目ごとに詳細に説明する。
[ハロゲン系難燃剤(D)]
本発明で使用する難燃剤は、ハロゲン系難燃剤である必要がある。ハロゲン系難燃剤以外の難燃剤、例えばリン系難燃剤を使用する場合、十分な難燃効果を発現させるだけの量を含有すると変形回復性構造体用ポリオレフィン系樹脂組成物(Y)からなる変形回復性構造体の変形回復性が劣るものになる。
ハロゲン系難燃剤としては、例えば、ハロゲン化ジフェニル化合物、ハロゲン化ビスフェノール系化合物、ハロゲン化ビスフェノール−ビス(アルキルエーテル)系化合物、ハロゲン化フタルイミド系化合物などの有機ハロゲン化芳香族化合物が好ましく、とりわけハロゲン化ビスフェノール−ビス(アルキルエーテル)系化合物がより好ましい。
上記ハロゲン化ビスフェノールビス(アルキルエーテル)系化合物としては、例えば、(3,5−ジブロモ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)−(3−ブロモ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)メタン、1−(3,5−ジブロモ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)−2−(3−ブロモ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)エタン、1−(3,5−ジブロモ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)−3−(3−ブロモ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)プロパン、(3,5−ジクロロ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)−(3−クロロ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)メタン、1−(3,5−ジクロロ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)−2−(3−クロロ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)エタン、1−(3,5−ジクロロ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)−3−(3−クロロ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジブロモ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)メタン、1,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)エタン、1,3−ビス(3,5−ジブロモ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジクロロ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)メタン、1,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)エタン、1,3−ビス(3,5−ジクロロ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)プロパン、2−ビス(3,5−ジクロロ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)プロパン、(3,5−ジブロモ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)−(3−ブロモ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)ケトン、(3,5−ジクロロ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)−(3−クロロ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)ケトン、ビス(3,5−ジブロモ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)ケトン、ビス(3,5−ジクロロ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)ケトン、(3,5−ジブロモ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)−(3−ブロモ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)エーテル、(3,5−ジクロロ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)−(3−クロロ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)エーテル、ビス(3,5−ジブロモ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)エーテル、ビス(3,5−ジクロロ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)エーテル、(3,5−ジブロモ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)−(3−ブロモ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)チオエーテル、(3,5−ジクロロ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)−(3−クロロ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)チオエーテル、ビス(3,5−ジブロモ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)チオエーテル、ビス(3,5−ジクロロ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)チオエーテル、(3,5−ジブロモ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)−(3−ブロモ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)スルフォン、(3,5−ジクロロ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)−(3−クロロ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)スルフォン、ビス(3,5−ジブロモ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)スルフォン、ビス(3,5−ジクロロ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)スルフォンが挙げられ、なかでも臭素化ビスフェノールA(臭素化脂肪族エーテル)、臭素化ビスフェノールS(臭素化脂肪族エーテル)、塩素化ビスフェノールA(塩素化脂肪族エーテル)、塩素化ビスフェノールS(塩素化脂肪族エーテル)、とりわけエーテル化テトラブロモビスフェノールA、エーテル化テトラブロモビスフェノールSが好ましい。
エーテル化テトラブロモビスフェノールAとして、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)プロパンが例示される。エーテル化テトラブロモビスフェノールSとして、ビス(3,5−ジブロモ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)スルフォンが例示される。
これらのハロゲン系難燃剤の中でも、臭素系難燃剤は、難燃効果が高く、本発明の変形回復性構造体用ポリオレフィン系樹脂組成物の製造や成形に際して、熱履歴を受けても分解することが少ないので、好ましい。
これらのハロゲン系難燃剤は、単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。例えば、ハロゲン化ジフェニル化合物とハロゲン化ビスフェノール系化合物を併用してもよい。
また、ハロゲン系難燃剤と共に、リン系、窒素系などのハロゲン系難燃剤に該当しない他の有機系難燃剤を使用することもできる。
本発明の変形回復性構造体用ポリオレフィン系樹脂組成物(Y)において、ハロゲン系難燃剤(D)の含有量は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、1〜15重量部、好ましくは2〜10重量部、更に好ましくは2〜5重量部である。ハロゲン系難燃剤(D)の含有量が上記の範囲にあると、難燃性改良の効果が高く、変形回復特性や成形時の焼け発生等々の成形性及び経済性において望ましい結果が得られる。
尚、これらのハロゲン系難燃剤(D)は、種々の製品が多くの会社から市販されており、所望の製品を入手することが可能であるので、それらを購入して使用することができる
[難燃助剤(E)]
本発明の変形回復性構造体用ポリオレフィン系樹脂組成物(Y)は、更に難燃助剤(E)を含有することができる。本発明において、所望により、用いられる難燃助剤(E)は、特に制限されず、種々の化合物を使用することができるが、中でも、アンチモン化合物が好ましい。アンチモン化合物に代表される難燃助剤(E)は、ハロゲン系難燃剤(D)と共に、ポリオレフィン系樹脂に含有することにより、難燃効果を増すために用いられる。
具体的なアンチモン化合物としては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、三塩化アンチモン、五塩化アンチモンなどのハロゲン化アンチモン、三硫化アンチモン、五硫化アンチモン、アンチモン酸ソーダ、酒石酸アンチモン等が代表的に挙げられる。
なお、本発明において、アンチモン化合物には、金属アンチモンが含まれるものとする。本発明で用いるアンチモン化合物としては、三酸化アンチモンが好ましい。
また、これらの難燃助剤(E)は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の変形回復性構造体用ポリオレフィン系樹脂組成物(Y)において、所望により用いられる難燃助剤(E)の含有量は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましく、より好ましくは0.5〜10重量部、更に好ましくは0.5〜6重量部、特に好ましくは1〜3重量部である。難燃助剤(E)の含有量が上記の範囲にあると、難燃性改良の効果が高く、変形回復特性や成形時の焼け発生等々の成形性及び経済性において望ましい結果が得られる。
なお、難燃助剤(E)は、ハロゲン系難燃剤(D)との組み合わせにおいて難燃効果を奏するものであり、ハロゲン系難燃剤(D)と難燃助剤(E)の合計重量に対して、好ましくは30〜60重量%の範囲で使用される。
尚、これらの難燃助剤(E)は、種々の製品が多くの会社から市販されており、所望の製品を入手することが可能であるので、それらを購入して使用することができる。
[ポリオレフィン系樹脂]
本発明の変形回復性構造体用ポリオレフィン系樹脂組成物(Y)を構成するポリオレフィン系樹脂は、下記特性(y1)及び(y2)を満足するものである。
特性(y1):メルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物(Y)を構成するポリオレフィン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、1.0〜100g/10分である。
ここで、MFRは、JIS K7210:1999のA法、条件M(230℃、2.16kg荷重)に準拠して測定されるものである。
ポリオレフィン系樹脂のMFRが上記の範囲にあると、ポリオレフィン系樹脂組成物(Y)の成形時の負荷が小さく、成形体の成形自体が容易であり、成形の安定性、特に押出成形に用いた場合の成形安定性が良好である。ポリオレフィン系樹脂のメルトフローレート(MFR)の好ましい範囲は、2.0〜50g/10分、更に好ましくは5.0〜30g/10分、特に好ましくは5.0〜20g/10分である。
特性(y2):融解ピーク温度(Tm)
本発明のポリオレフィン系樹脂の融解ピーク温度は、60〜170℃である。
融解ピーク温度が上記の範囲にあると、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物(Y)から得られる構造体が、日常の使用環境下、例えば自動車の室内等の高温環境下で形状が保持できるだけの耐熱性を発現することができる。
融解ピーク温度の好ましい範囲は121℃〜170℃である。融解ピーク温度が121℃以上であれば、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物(Y)から得られる構造体が高温下、好ましくは121℃以上の環境下で形状が保持できるだけの耐熱性を発現しやすくなるので、使用環境の制約が小さくなる。
融解ピーク温度のより好ましい範囲は、125〜170℃、更に好ましくは130〜170℃、特に好ましくは135〜170℃である。
本発明の変形回復性構造体用ポリオレフィン系樹脂組成物(Y)を構成するポリオレフィン系樹脂の種類に特に制限は無いが、後述するポリプロピレン系樹脂組成物(X)および/又は(X‘)が好ましい。
ポリプロピレン系樹脂組成物(X)および/又は(X‘)以外のポリオレフィン系樹脂としては、エチレン−α−オレフィン共重合体、例えば、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン系エラストマーやエチレン−酢酸ビニル共重合体などで代表されるポリエチレン系樹脂や、1−ブテン単独重合体、1−ブテン−プロピレン共重合体、1−ブテン−エチレン共重合体等のポリオレフィンを挙げることができ、特に線状低密度ポリエチレン、エチレン系エラストマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体が好ましく用いることができる。
ポリオレフィン系樹脂がポリプロピレン系樹脂組成物(X)および/又は(X‘)を含有する場合には、ポリオレフィン系樹脂組成物(Y)のメルトフローレート(MFR)は、成分(A)および/又は(A’)のMFRを考慮し、成分(B)および/又は(B’)のMFRや、ポリプロピレン系樹脂組成物(X)および/又は(X’)以外の第三成分のMFRを、適宜選択することにより調整できる。
その他の特性:
本発明の変形回復性構造体用ポリオレフィン系樹脂組成物(Y)は、曲げ弾性率が20〜500MPaであることが好ましく、より好ましくは40〜400MPa、更に好ましくは50〜300MPa、特に好ましくは50〜250MPaである。
ポリオレフィン系樹脂がポリプロピレン系樹脂組成物(X)および/又は(X‘)を含有する場合には、曲げ弾性率は、成分(A)および/又は(A’)と成分(B)または(B’)の組成、含有比率や下記その他の成分の含有量などを適宜選択することにより、所望の値に調整することができる。
曲げ弾性率が前記範囲にあれば、柔軟性、変形のしやすさ、変形回復性のバランスを取りやすいので、好ましい。
また、本発明の変形回復性構造体用ポリオレフィン系樹脂組成物(Y)は、引張降伏応力が、20MPa以下が好ましく、より好ましくは15MPa以下、更に好ましくは12MPa以下であり、特に好ましくは10MPa以下であり、最も好ましくは観測されないことである。引張降伏応力が前記範囲にあれば、変形回復性を発現させやすく、好ましい。
本発明の変形回復性構造体用ポリオレフィン系樹脂組成物(Y)の好ましい側面は、ポリオレフィン系樹脂が、下記成分(A)1〜99重量部と下記成分(B)1〜99重量部(但し、成分(A)と成分(B)の合計を100重量部とする)からなるポリプロピレン系樹脂組成物(X)を含有する。
成分(A):下記(a1)〜(a2)を満足する1種類もしくは2種類以上のプロピレン単独重合体及び/又はプロピレン−α−オレフィン共重合体。
(a1)融解ピーク温度(Tm)が121〜170℃であること。
(a2)メルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)が0.1〜500g/10分であること。
成分(B):下記(b1)を満足する少なくとも1種類のプロピレン−α−オレフィン共重合体。
(b1)プロピレン51〜90重量%、エチレン及び/又は炭素数4〜10のα−オレフィン10〜49重量%からなること。
本発明の変形回復性構造体用ポリオレフィン系樹脂組成物(Y)のもう1つの好ましい側面は、上記ポリプロピレン系樹脂組成物(X)の一部または全部は、前記(a1)および(a2)を満足する成分(A’)1〜99重量部と、前記(b1)を満足する成分(B’)1〜99重量部(但し、(A’)と(B’)の合計量を100重量部とする)を、逐次重合して得られるポリプロピレン系樹脂組成物(X’)である。
[成分(A)または(A’)]
本発明で使用する成分(A)または(A’)は、上記特性(a1)、(a2)を満足することが好ましい。
上記各特性などについて、以下、具体的に説明する。なお、成分(A’)は、下記に説明するポリプロピレン系樹脂組成物(X’)に由来する。
特性(a1):融解ピーク温度(Tm)
本発明に使用する成分(A)または(A’)の融解ピーク温度(Tm)は、121〜170℃であることが好ましい。
成分(A)または(A’)は、1種類もしくは2種類以上のプロピレン単独重合体および/又はプロピレン−α−オレフィン共重合体からなり、2種類以上の成分からなる場合、2種類以上の成分のブレンド物として、融解ピーク温度が121℃〜170℃であればよい。
成分(A)または(A’)が2種類以上の組み合わせの例としては、2種類以上のプロピレン単独重合体からなる場合や、2種類以上のプロピレン−α−オレフィン共重合体からなる場合、各々1種類以上のプロピレン単独重合体とプロピレン−α−オレフィン共重合体からなる場合が挙げられる。
融解ピーク温度が上記の範囲にあると、本発明の変形回復性構造体用ポリオレフィン系樹脂組成物(Y)から得られる構造体は高温下、好ましくは121℃以上の環境下で形状が保持できるだけの耐熱性を発現することができ、使用環境の制約が小さくなる。
融解ピーク温度のより好ましい範囲は、125℃〜170℃、更に好ましくは130℃〜170℃、特に好ましくは135℃〜170℃である。
特性(a2):メルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)
本発明に使用する成分(A)または(A’)のメルトフローレート(MFR)は、0.1〜500g/10分であることが好ましい。
成分(A)または(A’)は、1種類もしくは2種類以上のプロピレン単独重合体および/又はプロピレン−α−オレフィン共重合体からなり、2種類以上の成分からなる場合、2種類以上の成分のブレンド物として、MFRが0.1〜500g/10分であればよい。
ここで、MFRは、JIS K7210:1999のA法、条件M(230℃、2.16kg荷重)に準拠して測定されるものである。
MFRが上記の範囲にあると、本発明の変形回復性構造体用ポリオレフィン系樹脂組成物(Y)の成形時の負荷が減少し、成形体の成形自体が容易になり、更に、成形の安定性、特に、押出成形に用いた場合の成形安定性が良好になる。
MFRのより好ましい範囲は、1.0〜500g/10分であり、更に好ましくは5.0〜200g/10分、特に好ましくは5.0〜100g/10分である。
その他の特性:
本発明に用いられる成分(A)または(A’)は、上記特性(a1)および(a2)を満足することが好ましいが、成分(A)または(A’)として、プロピレン−α−オレフィン共重合体を用いる場合、成分(A)または(A’)は、プロピレン含有量が90重量%より多く、100重量%未満、α−オレフィン含有量が0重量%より多く、10重量%未満であることが更に好ましい。
成分(A)または(A’)としてプロピレン−α−オレフィン共重合体を用いる場合、α−オレフィンとしては、エチレンおよび/又はブテンであることが好ましい。
成分(A)の製造方法は、特に限定されず、市販のプロピレン単独重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体から、適宜選択することができる。具体的には、日本ポリプロ(株)製商標名「ノバテックPP」や、商標名「ウィンテック」が挙げられる。
[成分(B)または(B’)]
本発明で使用する成分(B)または(B’)は、上記特性(b1)を満足する少なくとも1種類のプロピレン−α−オレフィン共重合体からなる。
上記特性などについて、以下、具体的に説明する。なお、成分(B’)は、下記に説明するポリプロピレン系樹脂組成物(X’)に由来する。
特性(b1):プロピレンとα−オレフィンの含有量
本発明に用いられる成分(B)または(B’)は、プロピレン51〜90重量%、エチレン及び/又は炭素数4〜10のα−オレフィン10〜49重量%からなることが好ましい。
プロピレン含有量が上記の範囲にあると、成分(A)または(A’)との相溶性が高く、変形時に界面が破壊されにくいため、本発明の変形回復性構造体用ポリオレフィン系樹脂組成物(Y)から得られる構造体の変形回復性が低下しにくくなり、また、成分(B)または(B’)が変形時に塑性変形を起こしにくくなるため、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物(Y)から得られる構造体の変形回復性が低下しにくくなる。
プロピレン含有量の好ましい範囲は、60重量%以上90重量%以下であり、より好ましくは70重量%以上90重量%以下であり、更に好ましくは80重量%以上90重量%以下、特に好ましくは83重量%以上90重量%以下である。
その他の特性:
本発明に用いられる成分(B)または(B’)は、上記特性(b1)を満足することが好ましいが、α−オレフィンとしては、エチレンおよび/又はブテンであることが更に好ましい。
成分(B)の製造方法は、特に限定されず、市販のプロピレン−α−オレフィン共重合体から、適宜選択することができる。具体的には、エクソンモービル社製商標名「Vistamaxx」や、ダウケミカル社製商標名「Versify」や、三井化学社製商標名「タフマーPN」や「ノティオSN」や「タフマーXM」、住友化学社製商標名「タフセレン」等が挙げられる。
[ポリプロピレン系樹脂組成物(X)]
本発明で使用されるポリプロピレン系樹脂組成物(X)は、上記成分(A)および/又は(A’)1〜99重量部と下記成分(B)および/又は(B’)1〜99重量部からなる。但し、成分(A)および/又は(A’)と、成分(B)および/又は(B’)の合計を100重量部とする。また、成分(A’)および(B’)は、下記に説明するポリプロピレン系樹脂組成物(X’)に由来する。
成分(A)および/又は(A’)の含有量が上記の範囲にあると、本発明の変形回復性構造体用ポリオレフィン系樹脂組成物(Y)から得られる構造体が高温下、好ましくは121℃以上の環境下で形状が保持できるだけの耐熱性を発現することができるため、使用環境の制約が少なくなり、また、変形時に塑性変形を起こしにくくなるため、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物(Y)から得られる構造体の変形回復性が低下しにくくなる。
ポリプロピレン系樹脂組成物(X)および/又は(X’)に占める成分(A)および/又は(A’)の好ましい範囲は、1〜70重量部であり、より好ましくは10〜60重量部、更に好ましくは20〜50重量部である。
[ポリプロピレン系樹脂組成物(X’)]
ポリプロピレン系樹脂組成物(X)の一部もしくは全部に、前記(a1)および(a2)を満足する成分(A’)1〜99重量部と、前記(b1)を満足する成分(B’)1〜99重量部(但し、(A’)と(B’)の合計量を100重量部とする)を逐次重合して得られるポリプロピレン系樹脂組成物(X’)を用いることができる。
ポリプロピレン系樹脂組成物(X’)の製造方法は、特に限定されないが、例えば、特開2005−132979号公報に記載の方法を用いることができ、ここで言及したことにより、同公報の全内容が本明細書に取り込まれたものとする。
ポリプロピレン系樹脂組成物(X’)を製造する触媒は、特に限定されないが、ポリプロピレン系樹脂組成物(X’)やポリオレフィン系樹脂組成物(Y)、更にはポリオレフィン系樹脂組成物(Y)から製造される変形回復性構造体のベタツキを抑制しやすくなるため、メタロセン触媒を用いることが好ましい。
ポリプロピレン系樹脂組成物(X’)は、市販品より適宜選択してもよく、市販品の例としては、日本ポリプロ(株)製商標名「ニューコン」、商標名「ウェルネクス」等が挙げられる。
[その他の成分]
本発明の変形回復性構造体用ポリオレフィン系樹脂組成物(Y)には、本発明の目的を阻害しない範囲で、その他の樹脂または添加剤等、各種の他の成分を、添加して用いることができる。
(1)添加剤
本発明の変形回復性構造体用ポリオレフィン系樹脂組成物(Y)には、本発明の効果を妨げない限り、ポリオレフィン系樹脂に添加できる酸化防止剤などの添加剤を、適宜含有することができる。
具体的には、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(BASFジャパン社製商品名「IRGANOX 1010」)やn−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート(BASFジャパン社製商品名「IRGANOX 1076」)で代表されるフェノール系安定剤、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトやトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトなどで代表されるホスファイト系安定剤、オレイン酸アミドやエルカ酸アミド等の高級脂肪酸アミドや高級脂肪酸エステルやシリコーンオイルで代表される滑剤、炭素原子数8〜22の脂肪酸のグリセリンエステルやソルビタン酸エステル、ポリエチレングリコールエステルなどで代表される帯電防止剤、ソルビトール系造核剤(例えば、新日本理化社製商品名「ゲルオールMD」)、芳香族燐酸エステル類(例えば、ADEKA社製商品名「NA−21」や「NA−11」)、ミリケン社製商標名「Millad」シリーズ、ミリケン社製商標名「Hyperform」シリーズ、タルク、高密度ポリエチレンなどで代表される造核剤、シリカ、炭酸カルシウム、タルクなどで代表されるブロッキング防止剤や有機過酸化物などで代表される分子量調整剤や架橋助剤、ステアリン酸カルシウムなどの高級脂肪酸金属塩やハイドロタルサイト類に代表される中和剤、光安定剤、紫外線吸収剤、金属不活性剤、過酸化物、充填剤、抗菌防黴剤、蛍光増白剤、防曇剤、着色剤、顔料、天然油、合成油、ワックスなどを、添加してもよく、それらの含有量は、適宜量である。
抗菌剤、制菌剤としては、東亞合成社製商標名「ノバロン」やシナネンゼオミック社製商標名「ゼオミック」や富士ケミカル社製商標名「バクテキラー」や石塚硝子社製商標名「イオンピュア」で例示される銀系抗菌剤、ADEKA社製商標名「ロイヤルガード」や三菱化学フーズ社製商標名「ワサオーロ」で例示される有機系抗菌剤が挙げられるが、効果の持続性の観点から、銀系抗菌剤の使用が好ましい。抗菌剤、制菌剤の含有量は、所望の抗菌、制菌性能に応じて、適宜調整すればよいが、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物(Y)中に0.1〜10重量%程度含有することを例示できる。
(2)その他のポリマー
また、本発明の変形回復性構造体用ポリオレフィン系樹脂組成物(Y)には、本発明の効果を妨げない限り、ポリオレフィン系樹脂に添加できるエラストマー、脂環式炭化水素樹脂などの改質剤を、適宜含有することができる。
その他のポリマーは、本発明の効果を妨げない限り、含有量に特に制限は無いが、通常、ポリオレフィン系樹脂組成物(Y)100重量部に対して、100重量部以下である。
具体的には、石油樹脂、テルペン樹脂、ロジン系樹脂、クマロンインデン樹脂、並びにそれらの水素添加誘導体等に代表される脂環式炭化水素樹脂や、例えば三井化学社製商品名「アペル」やポリプラスチックス社製商品名「TOPAS」や日本ゼオン社製商品名「ゼオノア」、「ゼオネックス」に代表される環状オレフィン(共)重合体などを添加してもよい。
さらに、スチレン系エラストマーを加えることができ、スチレン系エラストマーとしては、市販されているものの中から、適宜選択して使用することもでき、例えば、スチレン−ブタジエンブロック共重合体の水素添加物としてクレイトンポリマージャパン(株)より「クレイトンG」として、また、旭化成ケミカルズ社より「タフテック」の商品名で、スチレン−イソプレンブロック共重合体の水素添加物として(株)クラレより「セプトン」の商品名で、スチレン−ビニル化ポリイソプレンブロック共重合体の水素添加物として(株)クラレより「ハイブラー」の商品名で、スチレン−ブタジエンランダム共重合体の水素添加物としてJSR(株)より「ダイナロン」の商品名で販売されており、これらの商品群より、適宜、選択して用いてもよい。
[ポリオレフィン系樹脂組成物(Y)の製造方法]
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物(Y)は、任意のポリオレフィン、好ましくは上述のポリプロピレン系樹脂組成物(X)を構成する成分(A)と成分(B)、および/または上述のポリプロピレン系樹脂組成物(X’)と、ハロゲン系難燃剤(D)と必要に応じて、難燃助剤(E)および他の添加剤、ポリマー成分をヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー等で混合し、得ることができる。更に必要に応じて、前記混合工程の後、単軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリミキサー等の混練機により溶融混練する方法により得ることもできる。
また、各成分は同時に混合および/又は溶融混練してもよいし、一部をマスターバッチとした上で、混合および/又は溶融混練してもよい。
[変形回復性構造体]
本発明の変形回復性構造体用ポリオレフィン系樹脂組成物(Y)からなる変形回復性構造体は、優れた難燃性を有し、且つ成形加工時に不具合を生じず、更には継続した負荷により継続して変形せしめられた後、負荷を除去した際に優れた変形回復性を有する。
構造体の形状、成形方法、用途は、特に制限は無いが、継続した負荷により継続して変形せしめられた後、負荷を除去した際に、変形回復性が求められる用途に用いられる。
例えば、射出成形や、押出成形により、平板や棒状、らせん状、さらには異形断面や中空断面を有する成形体を緩衝用のバネに類する用途に適用する場合や、クッション等の支持体に適用する場合等が挙げられる。
また、芯鞘構造を有したり、サイドバイサイド構造を有する構造体の一構成要素として使用することもできる。
好適な適用形態の例としては、押出成形により得られる複数のストランドからなる連続線状体を三次元ランダムループ状に曲がりくねらせて、複数のループの接触部の少なくとも一部が融着してなる立体網目状構造を有する網状構造体や、特開2012−112072号公報や、特開平5−163657号公報に例示される繊維集合体からなる構造体などが挙げられる。
特に好適な適用形態としては、押出成形により得られる複数のストランドからなる連続線状体を三次元ランダムループ状に曲がりくねらせて、複数のループの接触部の少なくとも一部が融着してなる立体網目状構造を有する網状構造体が挙げられる。
前記網状構造体は、例えば、ベッド等の寝具、家庭用や車両・船舶・航空機用座席等のクッション材として用いられる場合があり、これらの用途では、火災などのリスク低減のため、優れた難燃性が求められる。また、長時間にわたり、人が横たわったり、座ったりするため、継続した負荷により継続して変形せしめられる。しかも、負荷を除去した後に、再びクッション材として使用するには、変形が実用上問題ない程度まで回復する必要がある。
更には、自動車のクッションや緩衝部品、暖房機能付与のベッド用クッションなどでは、高温下(例えば70℃)で負荷がかかるケースがあるため、高温下での変形回復性も求められる。
また、近年、病院などではクッション自体の洗浄、場合によっては滅菌処理を行うニーズがあり、高温下、好ましくは121℃以上の蒸気滅菌処理への耐性が求められており、本発明の変形回復性構造体用ポリオレフィン系樹脂組成物(Y)にポリプロピレン系樹脂組成物(X)および/又は(X‘)を適用する変形回復性熱構造体としては、特に好適な適用形態であるといえる。
上記以外にも、例えば、排水性向上、通気性向上や土砂等の保持を目的に地面に埋設したり、敷設する土木資材用途、建築資材用途や、産業資材用途などにも、本発明の変形回復性構造体用ポリオレフィン系樹脂組成物(Y)を用いた変形回復性構造体は、好適に用いることができる。これらの用途においては、例えば、日中屋外で高温環境下になり、尚且つ人、車両、動物などの荷重により変形が付与されることが想定されるので、特にポリオレフィン系樹脂組成物(Y)にポリプロピレン系樹脂組成物(X)および/又は(X‘)を適用した変形回復性構造体を用いることにより、元の形状に容易に復元することが期待される。更には、高温下、好ましくは121℃以上での形状保持性に優れるため、スチーム洗浄機での洗浄にも、適応できる。また、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物(Y)を用いた構造体は、柔軟であるため、様々な形状への追随性も有しており、適用範囲の広がりも、期待できる。
前記網状構造体の製造方法としては、公知の方法を適宜採用すればよく、例えば、特開2013−040437号公報や、特開平7−173753号公報、特許第5459438号公報、特許第5459436号公報、特許第5454733号公報に記載の方法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、高温下での負荷がかかる用途に適用する場合には、構造体の形状を保持できる温度以下、好ましくは想定される使用条件温度以上、構造体の形状を保持できる温度以下で、成形された構造体を10秒乃至1日程度状態調整を行うと、高温下での変形回復性がより向上しやすいので好ましい。
本発明の構造体の場合は、例えば40℃、50℃、60℃、70℃、80℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、160℃といった温度条件が例示できる。
また、前記成形体を緩衝用のバネに類する用途に適用する場合や、クッション等の支持体に適用する場合、更には、前記網状構造体をクッション材用途に適用する場合の何れのケースでも、継続した負荷により、継続して変形せしめられる変形形態は、曲げ変形になる。
例えば、前記網状構造体の場合、一見変形形態は、圧縮変形とみられがちだが、網状構造体を構成する各々の線条に着目すれば、変形形態は、曲げ変形である。
したがって、継続した負荷により継続して曲げ変形を行い、その後、負荷を除去した際の変形回復性を評価することにより、前述の例に挙げた各種構造体の変形回復性を十分類推することができる。
[難燃性]
本発明の変形回復性構造体用ポリオレフィン系樹脂組成物(Y)から得られる変形回復性構造体は、優れた難燃性を有する。
難燃性の評価方法については各種知られているが、参考文献1(プラスチック Vol52、No.3、P102、2001年参照)によれば、代表的な手法としては、UL−94試験法、酸素指数法(JIS K7201)が挙げられる。
これらの試験法の中でも、酸素指数法は材料間の比較を数値で表すことができ、様々な形状が想定される本発明の変形回復性構造体における難燃性の評価手法として適切と考えられるため、本発明においては難燃性を酸素指数法にて評価する。
前記参考文献1によれば、酸素指数が21を超えるものは、空気中の酸素濃度(21%)で燃えにくいとされており、また、27以上のものは一般に自消性があるとされている。そこで、本発明の変形回復性構造体用ポリオレフィン系樹脂組成物(Y)の酸素指数は21を超え、好ましくは25以上、より好ましくは27以上、特に好ましくは30以上である。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
なお、実施例および比較例において使用したポリオレフィン系樹脂組成物とその構成成分、変形回復性構造体の諸物性は、下記の評価方法に従って、測定、評価した。
[各樹脂の物性]
(1)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分):
JIS K7210:1999のA法、条件M(230℃、2.16kg荷重)に準拠して測定した。
尚、実施例にて使用した(A−1)については、(A−1)100重量部に対して、酸化防止剤としてテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネ−ト]メタン(商品名「IRGANOX1010」、BASFジャパン株式会社製)0.05重量部、ホスファイト系酸化防止剤であるトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(商品名「IRGAFOS 168」、BASFジャパン株式会社製)0.05重量部を、ヘンシェルミキサーに投入し、750rpmで1分間室温で高速混合した後、スクリュー口径30mmの単軸押出機にて、吐出量6kg/hr、押出機温度200℃で溶融混練し、ストランドダイから押し出された溶融樹脂を、冷却水槽で冷却固化させながら引き取り、ストランドカッターを用いてストランドを直径約2mm、長さ約3mmに切断して得られたペレットを用いて測定した。
(2)融解ピーク温度(融点)(Tm、単位:℃):
示差走査熱量計(DSC)を用い、一旦200℃まで温度を上げて、熱履歴を消去した後、10℃/分の降温速度で40℃まで温度を降下させ、再び昇温速度10℃/分にて測定した際の、吸熱ピークトップの温度を融解ピーク温度(融点)(Tm)とした。
尚、実施例にて使用した(A−1)については、前記(1)と同様な方法にて得られたペレットを用いて測定した。
(3)α−オレフィン含有量(単位:重量%)
市販のプロピレン−α−オレフィン共重合体成分(B)については、メーカーより公表されているカタログ記載の値を用いた。
ポリプロピレン系樹脂組成物(X’)中の成分(A’)および(B’)については、前述した特開2005−132979号公報に記載の方法にて、測定した。
尚、成分(A’)および(B’)は、特開2005−132979号公報に記載の成分(A)および(B)に各々対応する。
(4)ポリプロピレン系樹脂組成物(X’)中の成分(A’)および(B’)の含有量(単位:重量%)
前述した特開2005−132979号公報に記載の方法にて測定した。
尚、成分(A’)および(B’)は、特開2005−132979号公報に記載の成分(A)および(B)に各々対応する。
(5)残留歪(単位:%)
(i)試料の調製
ポリオレフィン系樹脂組成物(Y)を、圧縮成形法により、シート状に成形した。
使用したスペーサー:長さ200mm、幅200mm、厚さ1mm。
圧縮成形条件:
(ア)予熱工程:予熱時間7分、予熱温度200℃、予熱時圧力0.1MPa
(イ)加圧工程:加圧時間3分、加圧時温度200℃、加圧時圧力8MPa
(ウ)冷却工程:冷却時間3分、冷却時温度30℃、冷却時圧力12MPa
上述の条件で成形して得られたシートを、ギヤオーブンにて100℃、1時間の条件で状態調整を行い、更に23℃、50%相対湿度の条件下48時間以上状態調整を行った後、カッターナイフにて切り出し、長さ140mm、幅10mm、厚さ1mmの構造体を作製し、下記試験に供した。
(ii)定変位曲げ試験
長さ220mm、幅150mm、厚さ3mmのガラス板を2枚、100mmの間隔をあけて作業台上に平行に配置した。
前述の方法で作製した構造体の長さ方向の両端から各々20mmの位置に標線を付し(即ち、標線間距離100mm)、前述のガラス板の向かい合う各々の端部と構造体に付された標線が一致するように構造体を設置し、構造体とガラス板が重なる部分をセロハンテープにて厳重に固定した。厚さ50mmのスペーサーを介し、構造体が固定されたガラス板を、セロハンテープにて固定された面同士が向かい合い、尚且つガラス板の四隅が重なり合うように重ね合わせた。
この状態で、構造体は、標線間が空間を介して50mmになるように曲げられた状態となり、元の標線間長さ100mmに対して50%の変形量を与えられたことになる。尚、一組のガラス板には1試料につき3枚、1乃至5種類の試料を固定した。
引き続き上記状態のまま、23℃、50%相対湿度条件下または40℃に調整されたギヤオーブン中、もしくは70℃に調整されたギヤオーブン中で、22時間状態調整を行い、その後に同条件下でガラス板に張り付けられた構造体の標線近傍を鋭利なハサミまたはカッターナイフで切断、負荷を除去した。
切断された構造体は、直ちに23℃、50%相対湿度の恒温恒湿室に運び込み、30分間状態調整を行った。切断された構造体は、ある程度曲げ変形を残しており、曲げ変形したままの状態で切断された両端の距離を、定規を用いて測定した。この距離をL1とした。
また、作業台上で切断された構造体の曲げ変形を作業台と平行になるように延ばし、切断された両端の長さを、定規を用いて測定した。この長さをL0とした。
以下の計算式を用いて、残留歪を求めた。残留歪は、変形回復性の指標であり、値が小さいほど変形回復性に優れると言える。
残留歪=(L0−L1)/L0×100(%)
(6)曲げ弾性率(単位:MPa)
射出成形品の曲げ弾性率を、JIS K7171に準拠して、測定した。
(7)引張降伏応力(単位:MPa)
射出成形品の引張降伏応力を、JIS K7162に準拠して、測定した。
(8)耐熱性
前述の試料の調製の項で得られた長さ140mm、幅10mm、厚さ1mmの構造体(状態調整条件は23℃、50%相対湿度)に、長さ方向の両端から、各々20mmの位置に標線を付した(即ち標線間距離100mm)。
前記構造体の端部をクリップで挟み、ぶら下げた状態で100℃もしくは121℃に調整されたギヤオーブン中に投入し、15分間状態調整を行った。
前記状態調整終了後、ギヤオーブンから取り出し、直ちに23℃、50%相対湿度の恒温恒湿室に運び込み、溶融していない構造体について、直ちに標線間の長さ(L2)を測定した。
前記状態調整中に収縮したものは、L2が100mm未満となり、膨張もしくは自重で垂れたものは、L2が100mmより大きくなる。前記状態調整で溶融したものについては、耐熱性なしとし、溶融しなかったものについては、元の標線間距離100mmからの変化量(%)の絶対値を耐熱性の指標とし、その値が小さいものほど、耐熱性が良好であるとした。
(9)難燃性
前述の試料の調製の項で得られた長さ140mm、幅10mm、厚さ1mmの構造体(状態調整条件は23℃、50%相対湿度)を用い、JIS K7201−2 2007の表3、試験片の形状III、点火方法A法に準拠した手順で試験を実施した。酸素濃度は0.5%(体積分率)間隔で変化させ、3回連続JIS K7201−2 2007の表3に示される規定を超えない酸素濃度を本発明における酸素指数とした。酸素指数21を超えるものは空気中で燃えにくい。
(10)成形時の不具合
前述の試料調製の項で、圧縮成形法にてポリオレフィン系樹脂組成物(Y)をシート状に成形する際の変色(いわゆるヤケ)の有無を観察した。変色無しを○、変色有り(ヤケ有り)を×とした。
(11)臭気
前述の試料の調製の項で得られた長さ140mm、幅10mm、厚さ1mmの構造体(状態調整条件は23℃、50%相対湿度)を用い、官能試験により臭気を以下の通り判断した。難燃剤を含まないものと同等○、やや臭気を感じる△、臭気を感じる×。
[ポリプロピレン系樹脂組成物(X’)の構成成分]
下記製造例(X’−1)で得られた樹脂を用いた。
(製造例X’−1)
(i)予備重合触媒の調製
(珪酸塩の化学処理)
10リットルの撹拌翼の付いたガラス製セパラブルフラスコに、蒸留水3.75リットル、続いて濃硫酸(96%)2.5kgをゆっくりと添加した。50℃で、さらにモンモリロナイト(水澤化学社製ベンクレイSL;平均粒径=25μm、粒度分布=10〜60μm)を1kg分散させ、90℃に昇温し、6.5時間その温度を維持した。50℃まで冷却後、このスラリーを減圧濾過し、ケーキを回収した。
このケーキに蒸留水を7リットル加え再スラリー化後、濾過した。この洗浄操作を、洗浄液(濾液)のpHが、3.5を超えるまで実施した。回収したケーキを窒素雰囲気下110℃で終夜乾燥した。乾燥後の重量は、707gであった。
(珪酸塩の乾燥)
先に化学処理した珪酸塩は、キルン乾燥機により乾燥を実施した。
仕様及び乾燥条件は以下の通りである。
回転筒:円筒状、内径50mm、加温帯550mm(電気炉)
かき上げ翼付き回転数:2rpm
傾斜角:20/520
珪酸塩の供給速度:2.5g/分
ガス流速:窒素 96リットル/時間
向流乾燥温度:200℃(粉体温度)
(触媒の調製)
撹拌および温度制御装置を有する内容積16リットルのオートクレーブを窒素で充分置換した。乾燥珪酸塩200gを導入し、混合ヘプタン1160ml、さらにトリエチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.60M)840mlを加え、室温で攪拌した。1時間後、混合ヘプタンにて洗浄し、珪酸塩スラリーを2,000mlに調製した。
次に、先に調製した珪酸塩スラリーに、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M/L)9.6mlを添加し、25℃で1時間反応させた。並行して、(r)−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウム2,180mg(0.3mM)と混合ヘプタン870mlに、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M)33.1mlを加えて、室温にて1時間反応させた混合物を、珪酸塩スラリーに加え、1時間攪拌後、混合ヘプタンを追加して5,000mlに調製した。
(予備重合/洗浄)
続いて、槽内温度を40℃に昇温し、温度が安定したところで、プロピレンを100g/時間の速度で供給し、温度を維持した。4時間後プロピレンの供給を停止し、さらに2時間維持した。
予備重合終了後、残モノマーをパージし、撹拌を停止させ約10分間静置後、上澄みを2,400mlデカントした。続いて、トリイソブチルアルミニウム(0.71M/L)のヘプタン溶液9.5ml、さらに混合ヘプタンを5,600ml添加し、40℃で30分間撹拌し、10分間静置した後に、上澄みを5,600ml除いた。さらにこの操作を3回繰り返した。
最後の上澄み液の成分分析を実施したところ、有機アルミニウム成分の濃度は、1.23mmоl/L、Zr濃度は8.6×10−6g/Lであり、仕込み量に対する上澄み液中の存在量は、0.016%であった。続いて、トリイソブチルアルミニウム(0.71M/L)のヘプタン溶液を170ml添加した後に、45℃で減圧乾燥を実施した。触媒1g当たりポリプロピレンを2.0g含む予備重合触媒が得られた。
この予備重合触媒を用いて、以下の手順に従ってプロピレン−エチレンブロック共重合体の製造を行った。
(ii)第一重合工程
攪拌羽根を有する横型反応器(L/D=6、内容積100リットル)を十分に乾燥し、内部を窒素ガスで十分に置換した。ポリプロピレン粉体床の存在下、回転数30rpmで攪拌しながら、反応器の上流部に上記の方法で調製した予備重合触媒を(予備重合パウダーを除いた固体触媒量として)0.568g/hr、トリイソブチルアルミニウムを15.0mmol/hrで連続的に供給した。反応器の温度を65℃、圧力を2.1MPaGに保ち、且つ反応器内気相部のエチレン/プロピレンモル比が0.07、水素濃度が100ppmになるように、モノマー混合ガスを連続的に反応器内に流通させ、気相重合を行った。
反応によって生じた重合体パウダーは、反応器内の粉体床量が一定になるように、反応器下流部より連続的に抜き出した。この時、定常状態になった際の重合体抜き出し量は10.0kg/hrであった。
第一重合工程で得られたプロピレン−エチレンランダム共重合体を分析したところ、MFRは6.0g/10分、エチレン含有量は2.2wt%であった。
(iii)第二重合工程
攪拌羽根を有する横型反応器(L/D=6、内容積100リットル)に、第一工程より抜き出したプロピレン−エチレンランダム共重合体を連続的に供給した。回転数25rpmで攪拌しながら、反応器の温度を70℃、圧力を2.0MPaGに保ち、且つ反応器内気相部のエチレン/プロピレンモル比が0.453、水素濃度が330ppmになるように、モノマー混合ガスを連続的に反応器内に流通させ、気相重合を行った。
反応によって生じた重合体パウダーは、反応器内の粉体床量が一定になるように、反応器下流部より連続的に抜き出した。この時、重合体抜き出し量が17.9kg/hrになるように活性抑制剤として酸素を供給し、第二重合工程での重合反応量を制御した。活性は31.4kg/g−触媒であった。
こうして得られたポリプロピレン系樹脂(X’−1)の各種分析結果を表1に示す。
得られたポリプロピレン系樹脂(X’−1)100重量部に、添加剤(酸化防止剤)として、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネ−ト]メタン(商品名「IRGANOX1010」、BASFジャパン株式会社製)0.05重量部、ホスファイト系酸化防止剤であるトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(商品名「IRGAFOS 168」、BASFジャパン株式会社製)0.05重量部を、ヘンシェルミキサーに投入し、750rpmで1分間室温で高速混合した後、スクリュー口径25mmのテクノベル社製KZW−25押出機にて、スクリュー回転数250rpm、吐出量15kg/hr、押出機温度200℃で溶融混練し、ストランドダイから押し出された溶融樹脂を、冷却水槽で冷却固化させながら引き取り、ストランドカッターを用いてストランドを直径約2mm、長さ約3mmに切断することでポリプロピレン系樹脂組成物(X’−1)を得た。
Figure 2017014403
[プロピレン単独重合体(A)]
(A−1)公知の方法で得られたプロピレン単独重合体パウダー(プロピレン単独重合体、MFR12g/10分、Tm=161℃)
[プロピレン−α−オレフィン共重合体(B)]
(B−1)エクソンモービル社製、商標名「Vistamaxx 6202」(プロピレン−エチレン共重合体、MFR20g/10分、エチレン含有量15重量%)
[難燃剤(D)]
(D−1)ハロゲン系難燃剤 鈴裕化学社製、商標名「ファイヤーカット P−680」(2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)プロパン)
(D−2)ハロゲン系難燃剤以外の難燃剤 (株)ADEKA製、商標名「アデカスタブ FP−2200」(リン酸塩系難燃剤)
[難燃助剤(E)]
(E−1)難燃助剤 鈴裕化学社製、商標名「ファイヤーカット AT−3」(三酸化アンチモン)
[実施例1]
製造例X’−1で得られたポリプロピレン系樹脂組成物(X’−1)40重量%と、プロピレン単独重合体(A−1)10重量%と、プロピレン−α−オレフィン共重合体(B−1)50重量%をヘンシェルミキサーにてブレンドし、ポリプロピレン系樹脂組成物(X−1)とした。ポリプロピレン系樹脂組成物(X−1)100重量部に対して更に、ハロゲン系難燃剤として(D−1)を2重量部、難燃助剤(E−1)を1重量部添加し、ヘンシェルミキサーにてブレンドし、二軸押出機にて溶融混練し、ストランドダイから押し出された溶融樹脂を冷却水槽で冷却固化させながら引き取り、ストランドカッターを用いてストランドを直径約3mm、長さ約2mmに切断することでポリオレフィン系樹脂組成物(Y−1)ペレットを得た。
なお、二軸押出機には、テクノベル社製KZW−25を用い、スクリュー回転数は400RPM、吐出量20kg/h、混練温度は、ホッパ下から80、160、190(以降、ダイス出口まで同温度)℃設定とした。
得られたペレットを、前述の方法で圧縮成形法によりシート状に成形し、前述の方法で構造体を得た。
得られた構造体の評価結果を表2にまとめた。
[実施例2]
実施例1において、ハロゲン系難燃剤として(D−1)を3重量部、難燃助剤(E−1)を1.5重量部に変更した以外は、実施例1と同様な操作を行った。(得られたポリオレフィン系樹脂組成物を(Y−2)とした。)
評価結果を表2にまとめた。実施例1に比べて難燃性が更に改善された。
[比較例1]
実施例1において、ハロゲン系難燃剤および難燃助剤を添加しなかった以外は、実施例1と同様な操作を行った。(得られたポリオレフィン系樹脂組成物を(Y−3)とした。)
評価結果を表2にまとめた。実施例1に比べて難燃性悪化し、酸素指数が21未満であった。
[比較例2]
製造例X’−1で得られたポリプロピレン系樹脂組成物(X’−1)40重量%と、プロピレン単独重合体(A−1)10重量%と、プロピレン−α−オレフィン共重合体(B−1)50重量%をヘンシェルミキサーにてブレンドし、ポリプロピレン系樹脂組成物(X−1)とした。ポリプロピレン系樹脂組成物(X−1)100重量部に対して更に、ハロゲン系難燃剤以外の難燃剤として(D−2)を11.1重量部添加し、ヘンシェルミキサーにてブレンドし、二軸押出機にて溶融混練し、ストランドダイから押し出された溶融樹脂を冷却水槽で冷却固化させながら引き取り、ストランドカッターを用いてストランドを直径約3mm、長さ約2mmに切断することでポリオレフィン系樹脂組成物(Y−4)ペレットを得た。
なお、二軸押出機には、テクノベル社製KZW−25を用い、スクリュー回転数は400RPM、吐出量20kg/h、混練温度は、ホッパ下から80、160、190(以降、ダイス出口まで同温度)℃設定とした。
得られたペレットを、前述の方法で圧縮成形法によりシート状に成形し、前述の方法で構造体を得た。
得られた構造体の評価結果を表2にまとめた。酸素指数は21を超えていたが、圧縮成形法による成形時にスペーサーの周縁部の樹脂が変色し、ヤケ物質が生成していた。実施例に比べ、変形回復性が僅かに劣るものであった。
[比較例3]
比較例2において、ハロゲン系難燃剤以外の難燃剤として(D−2)を25重量部に変更した以外は、比較例2と同様な操作を行った。(得られたポリオレフィン系樹脂組成物を(Y−5)とした。)
得られた構造体の評価結果を表2にまとめた。酸素指数は21を超えていたが、圧縮成形法による成形時にスペーサーの周縁部の樹脂が変色し、ヤケ物質が生成していた。また、実施例に比べ、変形回復性がやや劣るものであった。
Figure 2017014403
本発明の変形回復性構造体用ポリオレフィン系樹脂組成物は、成形時のヤケ等の不具合を生じず、優れた難燃性を発現し、さらには優れた変形回復性を発現する構造体を提供できるため、産業上の利用可能性が高い。

Claims (9)

  1. 下記(y1)および(y2)の特徴を有するポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、ハロゲン系難燃剤(D)を1〜15重量部含有する変形回復性構造体用ポリオレフィン系樹脂組成物。
    (y1)メルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)が1.0〜100g/10分であること。
    (y2)融解ピーク温度(Tm)が60〜170℃であること。
  2. ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、難燃助剤(E)0.1〜10重量部を、さらに含有することを特徴とする請求項1に記載の変形回復性構造体用ポリオレフィン系樹脂組成物。
  3. 前記ハロゲン系難燃剤が臭素系難燃剤である請求項1または2に記載の変形回復性構造体用ポリオレフィン系樹脂組成物。
  4. 前記ポリオレフィン系樹脂が、下記成分(A)1〜99重量部と下記成分(B)1〜99重量部(但し、成分(A)と成分(B)の合計を100重量部とする)からなるポリプロピレン系樹脂組成物(X)を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の変形回復性構造体用ポリオレフィン系樹脂組成物。
    成分(A):下記(a1)〜(a2)を満足する1種類もしくは2種類以上のプロピレン単独重合体及び/又はプロピレン−α−オレフィン共重合体。
    (a1)融解ピーク温度(Tm)が121〜170℃であること。
    (a2)メルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)が0.1〜500g/10分であること。
    成分(B):下記(b1)を満足する少なくとも1種類のプロピレン−α−オレフィン共重合体。
    (b1)プロピレン51〜90重量%、エチレン及び/又は炭素数4〜10のα−オレフィン10〜49重量%からなること。
  5. 前記ポリプロピレン系樹脂組成物(X)の一部または全部は、前記(a1)および(a2)を満足する成分(A’)1〜99重量部と、前記(b1)を満足する成分(B’)1〜99重量部(但し、(A’)と(B’)の合計量を100重量部とする)を、逐次重合して得られるポリプロピレン系樹脂組成物(X’)であることを特徴とする請求項4に記載の変形回復性構造体用ポリオレフィン系樹脂組成物。
  6. 前記ポリプロピレン系樹脂組成物(X’)がメタロセン系触媒を用いて逐次重合して得られることを特徴とする請求項5に記載の変形回復性構造体用ポリオレフィン系樹脂組成物。
  7. 前記成分(B’)は、83〜90重量%のプロピレンと10〜17重量%のエチレンからなる少なくとも1種類のプロピレン−α−オレフィン共重合体であることを特徴とする請求項5又は6に記載の変形回復性構造体用ポリオレフィン系樹脂組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の変形回復性構造体用ポリオレフィン系樹脂組成物からなる変形回復性構造体。
  9. 前記変形回復性構造体は、押出成形により得られる複数のストランドからなる連続線状体を三次元ランダムループ状に曲がりくねらせて、複数のループの接触部の少なくとも一部が融着してなる立体網目状構造を有する網状構造体であることを特徴とする請求項8に記載の変形回復性構造体。
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