JP2017012127A - みりん類の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 50%kg/l以上75%kg/l以下のエキス分を含有する調理効果の高い純米本みりんを提供する。
【解決手段】
本発明は、粉砕・液化工程を複数回に分けて実施するが、粉砕・液化に使用する液は、一回目は仕込み水を二回目以降は仕込み水の代替に液化液を使用することにより、最終的には、総原料米重量の27%以上100%以下の水と総原料米とα−アミラーゼから高濃度の液化液の製造することが出来る。
この高濃度の液化液に米麹と95%アルコールを加えてみりん醪を仕込み、糖化、熟成ののち、圧搾することによりエキス分が50%kg/l以上75%kg/l以下の純米本みりんの製造することが出来る。
【選択図】 図1

Description

本発明は、原料米の液化処理に使用する水量を押えることと原料米の資化率を高めることによって、エキス分が50%kg/l以上75%kg/以下のみりん類およびその製造方法に関する。
蒸米法では、(a)原料米を洗米、浸漬、蒸し、放冷の一連の原料処理を施した蒸米と、(b)米麹用白米を洗米、浸漬、蒸し、放冷、製麹の一連の原料処理を施した米麹と、(c)40%エチルアルコール(以後、アルコールと称す)でみりん醪を仕込む方法であり、丸粒の蒸米を仕込むことが特徴である。
みりん醪は、40日〜60日間かけて糖化、熟成の後、圧搾、滓下げ、濾過、火入れの工程を経てみりんとなる。
この仕込み配合が、製造上も品質上も最もバランスの取れた比率であり、安定的にみりん類が得られることは衆知の事実である。この比率は昭和初期から現在に至るまでほとんど変わっていない。この仕込み配合で得られる平均的なエキス分は46%kg/前後、平均的なアルコール分は14%/前後である。
(a)米麹用白米200kgは、洗米、浸漬、蒸し、放冷、製麹の一連の工程で60kgの水を吸収して醪仕込み時には260kgとなる。(b)原料米用白米800kgは、洗米、浸漬、蒸し、放冷の一連の操作で300kgの水を吸収して醪仕込み時には1,100kgとなる。これに(c)40%アルコール571kgを加えた1,931kgが仕込み時の重量である。
このみりん醪が糖化・熟成のした後の圧搾前の容量は、米麹が200、原料米は860、40%アルコール600を合わせた1,660である。
蒸米法の原料米は、洗米、浸漬、蒸し、放冷の工程で37.5%程度の水分を吸収するが、吸収する水分は仕込み配合には計上されないのが醸造業界の慣例である。
本発明の水歩合は、原料米の重量比率として表すので、従来、醸造業界で使用されていた比率とは異なり、吸収する水分37.5%は水歩合として表される。
みりん類は、含有するアルコールとグルコースの浸透圧で防腐効果を維持しているので、一般的なみりん類は腐敗しない。
浸透圧は、グルコースにくらべてアルコールの方が約4倍高いので、エキス分を増やすためにアルコール分を減らせば、みりんの防腐効果は低下するので得策ではない。
具体的には、アルコール分が50%に減少すれば、みりんとしての浸透圧は約30%低下する。極端なアルコール分の低下は防腐効果の維持に影響を与える。
原料米の比率を増やしてエキス分を上げることも可能ではあるが、原料米の量を増やせば、蒸米と40%アルコールのバランスが崩れ、仕込み操作と衛生面で支障をきたす。
具体的には、醪初期にアルコールを吸っていない蒸米とアルコールを吸った蒸米を入れ替える踏込みという操作を実施するが、アルコールの使用量が少ないとこの操作を確実に実施することができず、アルコールを吸収していない蒸米が醪の表面に露出し、その部分に雑菌が繁殖して品質面でも支障をきたす。
液化法では、原料米を蒸さずに原料米と水を酵素剤の存在下で加熱することによって、液化して液化液を得る。原料米の澱粉は酵素剤でデキストリンに分解されて、形状も固体から液体へと変化する。
液化仕込みは、融米仕込みに代表される連続式と姫飯仕込みに代表される炊き上げ式の二通りに大別される。
連続式液化法では、原料米と水を連続液化が可能な800ミクロン以下に湿式粉砕して得られた粉砕液にα−アミラーゼを加えた酵素入り粉砕液(以下、スラリーと称す)を製造する。このスラリーを75℃以上110℃未満の温度を維持した液化タンクで連続的に瞬間液化を行い、連続的に冷却の工程を経て液化液が製造される。
粉砕機で原料米を湿式粉砕し、良好な粉砕液を得るには水歩合150%以上を必要とする。水歩合が150%を下回ると、粉砕部において粉砕液の流動性が低下し、粉砕の摩擦熱によって粉砕液の温度が上昇して粉砕液が糊化する。
粉砕部で粉砕液の糊化が始まると粉砕液は排出されず、糊化がさらに進んで大きな抵抗が発生して粉砕機の駆動モーターの破損等設備面での支障が発生する。
特許文献1では、水歩合は原料米重量の150%に増やすことを特徴としているが、140%以下の水歩合では、原料米の粉砕に支障をきたし良好な粉砕液が製造出来ない。
炊き上げ式液化法では、原料米と水とα−アミラーゼを液化タンク投入後、昇温して液化するが、原料米の澱粉は、70℃を超えると一斉に糊化が始まり急激に粘度が上昇する。糊化された澱粉は、α−アミラーゼで液化されて液化液となる。
発生した糊は、α−アミラーゼによってデキストリンに分解されて液の粘度を低下させるが、水歩合が140%以下では、一斉に起こる糊化の状態を解消出来ない。
非特許文献1では、原料米重量の170%程度の水歩合が一般的とされる。それ以下の水歩合では、一斉に起こる糊化の粘度上昇に液化のスピードが追い付かず、攪拌機に大きな負荷を与えてモーターが焼けついたり変速機が破損したり、回転翼の変形等の機械設備上支障が発生するので、140%以下の水歩合では液化液は製造出来ない。
清酒の液化仕込みでは、蒸米法では、原料米1t当りの100%アルコールの収得量は約350があるが、液化法では約420程度に上昇する。
原酒のアルコール分は18度から20度が多いので原料米重量の150%から170%の水歩合で目標のアルコール度数の清酒が製造できる。また、水歩合が高ければ、設備に与える物理的な抵抗も少なく、比較的簡単に粉砕や糊化の工程を乗り越えることが出来た。
蒸米法で生産される酒粕の約30%は炭水化物である。液化法では、この炭水化物が資化されることにより、粕歩合が減少することが特徴であり、清酒の液化仕込みでは、酒粕の発生量は蒸米仕込みに比べて30%から50%減少する。
原料米重量の140%の水歩合で液化した液化液に米麹と95%アルコールを加えた純米本みりんの醪のエキス分は30%後半なので、酒税法のみりんの範疇から外れる。
酒税法では、みりんのエキス分は40%kg/以上と定義されているので、不足するエキス分は酒税法で認められた糖類等を添加することによって本みりんを製造する。
特許文献2は、蒸米法で得たみりんのアルコールおよび水分を蒸発させた濃縮みりんと蒸米法で得た別のみりんを混合することによって、エキス分が47%(w/v)以上の濃厚みりんを得る製造方法であるが、みりんのアルコールおよび水分を蒸発させてエキス分を高めても47%(w/v)のエキス分も持つみりんしか得ることが出来ない。
特公昭63−51673 特開2003−304859
姫野国夫、姫飯造りの開発と現状、醸造協会誌、1993年、p756-p762
本発明は、原料米を液化した液化液に米麹、焼酎又はアルコールを加えて仕込んだ純米本みりんのエキス分が50%kg/以上75%kg/以下のみりん類を提供することを課題とする。
エキス分が50%kg/以上75%kg/以下のみりん類を得るためには、水の代替として液化液を使用することを考案し、それにより、総原料米に対する水の使用量を減らして前記のエキス分を得ることが出来る本発明を完成させた。
本発明は、以下に関する。
第一の発明は、エキス分が50%kg/以上75%kg/以下であることを特徴とする純米本みりん。
第二の発明は、(a)純米本みりんの製造に使用する原料米の一部と原料米総重量の27%以上100%以下の水とα−アミラーゼを混和しながら、粉砕して粉砕液を得る第一粉砕工程と、(b)第一粉砕工程で得た粉砕液を液化して液化液を得る第一液化工程と、(c)純米本みりんの製造に使用する原料米の一部と第一液化工程で得た液化液と新たにα−アミラーゼを混和ながら、粉砕して粉砕液を得る第二粉砕工程と、(d)第二粉砕工程で得た粉砕液を液化して液化液を得る第二液化工程と、(e)前記の第二粉砕工程と前記の第二液化工程を繰り返すことにより、総原料米すべてを液化して液化液を得る最終液化工程と、(f)前記の最終液化工程で得た液化液と米麹とアルコールを混和してみりん醪を仕込む仕込み工程と、(g)みりん醪を熟成ののち、圧搾、滓下げ、濾過、火入れの処理を行う精製工程と、を含むことを特徴とする純米本みりんの製造方法。
第三の発明は、第一の発明に記載の純米本みりんと水飴を混和して得られる本みりん。
本発明では、液化液を水の代替として使用することによって原料米に対して27%以上100%以下の水歩合でも良好な高濃度液化液を提供することが出来る。
前記の最終液化工程で得た液化液と米麹と95%アルコールとでみりん醪を仕込み、熟成ののち圧搾することより、エキス分が50%kg/以上75%kg/以下の純米本みりんを提供することが出来る。
本発明を採用することにより副産物のみりん粕は確実に減少する。みりん粕の大半は飼料として流通しているので、コスト的には、減少したみりん粕が与えるデメリットよりみりんが増産されるメリットの方が大きく、コスト面での改善ができる。
エキス分50%純米本みりんのフロー図
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明のみりん類とは、純米本みりん及び本みりんをいう。
純米本みりんとは、糖分のすべてが原料米、米こうじに由来するみりん類をいう。
本みりんとは、原料米、米こうじに由来する糖分に加え、酒税法で定める水飴等の糖分が加えられたみりん類をいう。
エキス分算出方法は国税庁所定分析法で下記の様に定められおり、みりんを2倍に希釈したものを試料として用いる。
算出式は、{(浮ひょう法または振動式密度計法で測定した比重−蒸留密度法で得た蒸留液を浮ひょう法で測定したアルコール分を換算した比重)×260+0.21}×2
エキス分の内訳は、原料米の澱粉が分解された糖分が95%以上を占め、残りの5%は、蛋白質が分解したアミノ酸やペプチド、脂肪が分解した脂肪酸や米麹に由来する有機酸が占める。エキス分を増やすには、炭水化物の分解率を高めてより多くの糖分を生成することが望ましい。
清酒の液化仕込みでは、液化法の違いによって資化率も異なる。具体的には、蒸米法<炊き上げ式液化法<連続式液化法の順で資化率が向上する。
連続式では、瞬間液化を行うために原料米を粉砕するが、この物理的効果が資化率を高めるので、丸米を使用する炊き上げ式液化法よりも資化率が向上する。
エキス分をより高めるためには、連続式液化法が望ましい。
蒸米法で原料米800kgを処理する場合、原料米は洗米、浸漬、蒸きょう、放冷の工程を経て、原料米重量の37.5%に当たる300水分を吸収する。また、40%アルコールを製造するには、95%アルコール253に365の水を混和する。
蒸米法で原料米800kgと95%アルコール253を加工する際に使用する水量は665となり、原料米重量の約83%に相当する。
エキス分を向上させるための水歩合は、原料米重量の80%以下が望ましい。
醪のエキス分を向上させるには、澱粉価の高い高精白米の使用や麹歩合の増加及びアルコール使用量の減少等の方法が考えられる。
これらの条件を考慮しても、原料米重量の27%以上100%以下の水歩合で液化処理を行えば、エキス分が50%kg/以上75%kg/以下の純米本みりんを得ることが出来る。
原料米の粉砕粒度は、1ミクロン以上800ミクロン以下、好ましくは1ミクロン以上400ミクロン以下、より好ましくは1ミクロン以上200ミクロン以下であることが望ましい。
粉砕粒度が800ミクロンより大きくなると液化工程で粉砕米の内部までα化されないので、みりん醪中でも分解されずにそのままにみりん粕に移行する。
特許文献1と非特許文献1では液化に使用するのは水とされているが、本発明では、一回目は水を二回目以降は水の代替に液化液を使用することを特徴とする。
表現としては、使用する総原料米に対して使用する水の比率を水歩合、原料米の一部を粉砕・液化する際に使用する水又は、水の代替として使用する液化液の比率を液歩合としてとして表す。
粉砕・液化の回数は、2回以上6回以下、好ましくは2回以上3回以下で、より好ましくは2回で行うことが望ましい。
本発明は、粉砕・液化工程を繰り返すことにより、総原料米重量の27%以上100%以下の水歩合であっても、最終液化工程では高濃度の液化液が安定的に製造出来ることを特徴とする。
原料米80kgを複数回に分けて粉砕・液化する場合の原料米等の数値と米麹26kg、95%アルコール21kgで仕込んだみりん醪エキス分を表3に示す。
粉砕・液化工程を2回から6回に分けて行うが、1回の粉砕工程での液歩合は、原料米の一部重量の120%以上660%以下、好ましくは160%以上360%以下で、より好ましくは160%以上260%で液化するのが望ましい。
大きい粒度の粉砕米は、液化時にデキストリンまで分解されずα米になるが、このα米は、みりん醪中で米麹の酵素によって、澱粉はデキストリンやグルコースに、蛋白質はアミノ酸等に分解されてエキス分となり、みりん醪のエキス分をさらに向上させる。
本発明は、前記記載の第二の発明(e)の最終液化工程で得た液化液と米麹と95%アルコールでみりん醪を仕込む。
みりん醪を糖化・熟成ののち、圧搾、滓下げ、濾過、火入れの工程を経て、エキス分が50kg/以上75kg/以下の純米本みりんが得られる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
操作手順に従って本発明を説明する。
1. 米麹は、白米200gを洗米、浸漬、蒸きょう、放冷の工程を経て蒸米に加工ののち、種麹を散布し48時間かけて米麹に製造する。白米200gは、原料処理中に60gの水分を吸収して、仕込み時には260gになる。
2. 第一粉砕工程に使用する水は、(a)原料米800gが蒸米法で吸水する300gの水の内の270gと(b)95%アルコールから40%アルコールを加工時に使用する水365gを合わせた635gであり、総原料米重量の約79%の水歩合になる。
3. 第一粉砕工程は、原料米の一部400gと前項2記載の水635gとα−アミラーゼ(長瀬製スピターゼCP−40)0.2gを混和しながら、粉砕機で湿式粉砕を行い、スラリー1,035gを製造する。
4. 第一液化工程は、このスラリー1,035gを95℃で連続的に液化して液化液を製造する。この液化液は、冷却して第二粉砕工程の液として使用する。
5. 第二粉砕工程は、残りの原料米の一部400gと前項で得た液化液1,035gとα−アミラーゼ(長瀬製スピターゼCP−40)0.2gを混和しながら、粉砕機で湿式粉砕を行い、粉砕液1,435gを製造する。
6. 第二液化工程は、前記の混和液1,435gを98℃で連続的に液化して、総原料米すべてを使用した液化液1,435gを製造する。
7. 前項6で得た液化液1,435gと米麹260gとの95%アルコール206gでみりん醪1.901gを仕込み、30日間熟成させる。
8. 醪期間中、醪表面の乾燥を防止するために間欠的に撹拌を加えながら、みりん醪を糖化・熟成させて、圧搾前のみりん醪1,630mを得る。
9. エキス分が50%g/m以上に上昇したことを確認ののち、みりん醪を圧搾して純米本みりんを得る。
実施例1で圧搾した純米本みりんを一般財団法人食品分析センターに分析依頼した結果、本発明の純米本みりんのエキス分は、54.8度であった。これにより、本発明の成分の範囲を満たす純米本みりんを得ることが検証できた。
本発明では、みりん類のエキス分を向上させることにより、大半が飼料にしか転用出来なかったみりん粕を減少させ、原料米の有効利用を図る。
蒸米法より収得量が向上するので製造の効率化が図れる。
みりんの主成分であるグルコースの甘味特性として糖濃度が高くなればなるほどその甘味度は濃度以上に高く感じるので、甘味効果の高いみりん類を提供出来る。
本発明は、原料米の液化処理に使用する水量を押えることと原料米の資化率を高めること
によって、エキス分が50%kg/l以上75%kg/l以下のみりん類およびその製造
方法に関する。
蒸米法では、(a)原料米を洗米、浸漬、蒸し、放冷の一連の原料処理を施した蒸米と、
(b)米麹用白米を洗米、浸漬、蒸し、放冷、製麹の一連の原料処理を施した米麹と、(
c)40%エチルアルコール(以後、アルコールと称す)でみりん醪を仕込む方法であり
、丸粒の蒸米を仕込むことが特徴である。
みりん醪は、40日〜60日間かけて糖化、熟成の後、圧搾、滓下げ、濾過、火入れの工
程を経てみりんとなる。
この仕込み配合が、製造上も品質上も最もバランスの取れた比率であり、安定的にみりん
類が得られることは衆知の事実である。この比率は昭和初期から現在に至るまでほとんど
変わっていない。この仕込み配合で得られる平均的なエキス分は46%kg/l前後、平
均的なアルコール分は14%l/l前後である。
(a)米麹用白米200kgは、洗米、浸漬、蒸し、放冷、製麹の一連の工程で60kg
の水を吸収して醪仕込み時には260kgとなる。(b)原料米用白米800kgは、洗
米、浸漬、蒸し、放冷の一連の操作で300kgの水を吸収して醪仕込み時には1,10
0kgとなる。これに(c)40%アルコール571kgを加えた1,931kgが仕込
み時の重量である。
このみりん醪が糖化・熟成のした後の圧搾前の容量は、米麹が200l、原料米は860
l、40%アルコール600lを合わせた1,660lである。
蒸米法の原料米は、洗米、浸漬、蒸し、放冷の工程で37.5%程度の水分を吸収するが
、吸収する水分は仕込み配合には計上されないのが醸造業界の慣例である。
本発明の水歩合は、原料米の重量比率として表すので、従来、醸造業界で使用されていた
比率とは異なり、吸収する水分37.5%は水歩合として表される。
みりん類は、含有するアルコールとグルコースの浸透圧で防腐効果を維持しているので、
一般的なみりん類は腐敗しない。
浸透圧は、グルコースにくらべてアルコールの方が約4倍高いので、エキス分を増やすた
めにアルコール分を減らせば、みりんの防腐効果は低下するので得策ではない。
具体的には、アルコール分が50%に減少すれば、みりんとしての浸透圧は約30%低下
する。極端なアルコール分の低下は防腐効果の維持に影響を与える。
原料米の比率を増やしてエキス分を上げることも可能ではあるが、原料米の量を増やせば
、蒸米と40%アルコールのバランスが崩れ、仕込み操作と衛生面で支障をきたす。
具体的には、醪初期にアルコールを吸っていない蒸米とアルコールを吸った蒸米を入れ替
える踏込みという操作を実施するが、アルコールの使用量が少ないとこの操作を確実に実
施することができず、アルコールを吸収していない蒸米が醪の表面に露出し、その部分に
雑菌が繁殖して品質面でも支障をきたす。
液化法では、原料米を蒸さずに原料米と水を酵素剤の存在下で加熱することによって、液
化して液化液を得る。原料米の澱粉は酵素剤でデキストリンに分解されて、形状も固体か
ら液体へと変化する。
液化仕込みは、融米仕込みに代表される連続式と姫飯仕込みに代表される炊き上げ式の二
通りに大別される。
連続式液化法では、原料米と水を連続液化が可能な800ミクロン以下に湿式粉砕して得
られた粉砕液にα−アミラーゼを加えた酵素入り粉砕液(以下、スラリーと称す)を製造
する。このスラリーを75℃以上110℃未満の温度を維持した液化タンクで連続的に瞬
間液化を行い、連続的に冷却の工程を経て液化液が製造される。
粉砕機で原料米を湿式粉砕し、良好な粉砕液を得るには水歩合150%以上を必要とする
。水歩合が150%を下回ると、粉砕部において粉砕液の流動性が低下し、粉砕の摩擦熱
によって粉砕液の温度が上昇して粉砕液が糊化する。
粉砕部で粉砕液の糊化が始まると粉砕液は排出されず、糊化がさらに進んで大きな抵抗が
発生して粉砕機の駆動モーターの破損等設備面での支障が発生する。
特許文献1では、水歩合は原料米重量の150%に増やすことを特徴としているが、14
0%以下の水歩合では、原料米の粉砕に支障をきたし良好な粉砕液が製造出来ない。
炊き上げ式液化法では、原料米と水とα−アミラーゼを液化タンク投入後、昇温して液化
するが、原料米の澱粉は、70℃を超えると一斉に糊化が始まり急激に粘度が上昇する。
糊化された澱粉は、α−アミラーゼで液化されて液化液となる。
発生した糊は、α−アミラーゼによってデキストリンに分解されて液の粘度を低下させる
が、水歩合が140%以下では、一斉に起こる糊化の状態を解消出来ない。
非特許文献1では、原料米重量の170%程度の水歩合が一般的とされる。それ以下の水
歩合では、一斉に起こる糊化の粘度上昇に液化のスピードが追い付かず、攪拌機に大きな
負荷を与えてモーターが焼けついたり変速機が破損したり、回転翼の変形等の機械設備上
支障が発生するので、140%以下の水歩合では液化液は製造出来ない。
清酒の液化仕込みでは、蒸米法では、原料米1t当りの100%アルコールの収得量は約
350lがあるが、液化法では約420l程度に上昇する。
原酒のアルコール分は18度から20度が多いので原料米重量の150%から170%の
水歩合で目標のアルコール度数の清酒が製造できる。また、水歩合が高ければ、設備に与
える物理的な抵抗も少なく、比較的簡単に粉砕や糊化の工程を乗り越えることが出来た。
蒸米法で生産される酒粕の約30%は炭水化物である。液化法では、この炭水化物が資化
されることにより、粕歩合が減少することが特徴であり、清酒の液化仕込みでは、酒粕の
発生量は蒸米仕込みに比べて30%から50%減少する。
原料米重量の140%の水歩合で液化した液化液に米麹と95%アルコールを加えた純米
本みりんの醪のエキス分は30%後半なので、酒税法のみりんの範疇から外れる。
酒税法では、みりんのエキス分は40%kg/l以上と定義されているので、不足するエ
キス分は酒税法で認められた糖類等を添加することによって本みりんを製造する。
特許文献2は、蒸米法で得たみりんのアルコールおよび水分を蒸発させた濃縮みりんと蒸
米法で得た別のみりんを混合することによって、エキス分が47%(w/v)以上の濃厚
みりんを得る製造方法であるが、みりんのアルコールおよび水分を蒸発させてエキス分を
高めても47%(w/v)のエキス分も持つみりんしか得ることが出来ない。
特公昭63−51673 特開2003−304859
姫野国夫、姫飯造りの開発と現状、醸造協会誌、1993年、p756-p762
本発明は、原料米を液化した液化液に米麹、焼酎又はアルコールを加えて仕込んだ純米本
みりんのエキス分が50%kg/l以上75%kg/l以下のみりん類を提供することを
課題とする。
エキス分が50%kg/l以上75%kg/l以下のみりん類を得るためには、水の代替
として液化液を使用することを考案し、それにより、総原料米に対する水の使用量を減ら
して前記のエキス分を得ることが出来る本発明を完成させた。
本発明は、以下に関する。
第一の発明は、エキス分が50%kg/l以上75%kg/l以下であることを特徴とす
る純米本みりん。
第二の発明は、(a)純米本みりんの製造に使用する原料米の一部と原料米総重量の27
%以上100%以下の水とα−アミラーゼを混和しながら、粉砕して粉砕液を得る第一粉
砕工程と、(b)第一粉砕工程で得た粉砕液を液化して液化液を得る第一液化工程と、(
c)純米本みりんの製造に使用する原料米の一部と第一液化工程で得た液化液と新たにα
−アミラーゼを混和ながら、粉砕して粉砕液を得る第二粉砕工程と、(d)第二粉砕工程
で得た粉砕液を液化して液化液を得る第二液化工程と、(e)前記の第二粉砕工程と前記
の第二液化工程を繰り返すことにより、総原料米すべてを液化して液化液を得る最終液化
工程と、(f)前記の最終液化工程で得た液化液と米麹とアルコールを混和してみりん醪
を仕込む仕込み工程と、(g)みりん醪を熟成ののち、圧搾、滓下げ、濾過、火入れの処
理を行う精製工程と、を含むことを特徴とする純米本みりんの製造方法。
第三の発明は、第一の発明に記載の純米本みりんと水飴を混和して得られる本みりん。
本発明では、液化液を水の代替として使用することによって原料米に対して27%以上1
00%以下の水歩合でも良好な高濃度液化液を提供することが出来る。
前記の最終液化工程で得た液化液と米麹と95%アルコールとでみりん醪を仕込み、熟成
ののち圧搾することより、エキス分が50%kg/l以上75%kg/l以下の純米本み
りんを提供することが出来る。
本発明を採用することにより副産物のみりん粕は確実に減少する。みりん粕の大半は飼料
として流通しているので、コスト的には、減少したみりん粕が与えるデメリットよりみり
んが増産されるメリットの方が大きく、コスト面での改善ができる。
エキス分50%純米本みりんのフロー図
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明のみりん類とは、純米本みりん及び本みりんをいう。
純米本みりんとは、糖分のすべてが原料米、米こうじに由来するみりん類をいう。
本みりんとは、原料米、米こうじに由来する糖分に加え、酒税法で定める水飴等の糖分が
加えられたみりん類をいう。
エキス分算出方法は国税庁所定分析法で下記の様に定められおり、みりんを2倍に希釈し
たものを試料として用いる。
算出式は、{(浮ひょう法または振動式密度計法で測定した比重−蒸留密度法で得た蒸留
液を浮ひょう法で測定したアルコール分を換算した比重)×260+0.21}×2
エキス分の内訳は、原料米の澱粉が分解された糖分が95%以上を占め、残りの5%は、
蛋白質が分解したアミノ酸やペプチド、脂肪が分解した脂肪酸や米麹に由来する有機酸が
占める。エキス分を増やすには、炭水化物の分解率を高めてより多くの糖分を生成するこ
とが望ましい。
清酒の液化仕込みでは、液化法の違いによって資化率も異なる。具体的には、蒸米法<炊
き上げ式液化法<連続式液化法の順で資化率が向上する。
連続式では、瞬間液化を行うために原料米を粉砕するが、この物理的効果が資化率を高め
るので、丸米を使用する炊き上げ式液化法よりも資化率が向上する。
エキス分をより高めるためには、連続式液化法が望ましい。
蒸米法で原料米800kgを処理する場合、原料米は洗米、浸漬、蒸きょう、放冷の工程
を経て、原料米重量の37.5%に当たる300l水分を吸収する。また、40%アルコ
ールを製造するには、95%アルコール253lに365lの水を混和する。
蒸米法で原料米800kgと95%アルコール253lを加工する際に使用する水量は6
65lとなり、原料米重量の約83%に相当する。
エキス分を向上させるための水歩合は、原料米重量の80%以下が望ましい。
醪のエキス分を向上させるには、澱粉価の高い高精白米の使用や麹歩合の増加及びアルコ
ール使用量の減少等の方法が考えられる。
これらの条件を考慮しても、原料米重量の27%以上100%以下の水歩合で液化処理を
行えば、エキス分が50%kg/l以上75%kg/l以下の純米本みりんを得ることが
出来る。
原料米の粉砕粒度は、1ミクロン以上800ミクロン以下、好ましくは1ミクロン以上4
00ミクロン以下、より好ましくは1ミクロン以上200ミクロン以下であることが望ま
しい。
粉砕粒度が800ミクロンより大きくなると液化工程で粉砕米の内部までα化されないの
で、みりん醪中でも分解されずにそのままにみりん粕に移行する。
特許文献1と非特許文献1では液化に使用するのは水とされているが、本発明では、一回
目は水を二回目以降は水の代替に液化液を使用することを特徴とする。
表現としては、使用する総原料米に対して使用する水の比率を水歩合、原料米の一部を粉
砕・液化する際に使用する水又は、水の代替として使用する液化液の比率を液歩合として
として表す。
粉砕・液化の回数は、2回以上6回以下、好ましくは2回以上3回以下で、より好ましく
は2回で行うことが望ましい。
本発明は、粉砕・液化工程を繰り返すことにより、総原料米重量の27%以上100%以
下の水歩合であっても、最終液化工程では高濃度の液化液が安定的に製造出来ることを特
徴とする。
原料米80kgを複数回に分けて粉砕・液化する場合の原料米等の数値と米麹26kg、
95%アルコール21kgで仕込んだみりん醪エキス分を表3に示す。
粉砕・液化工程を2回から6回に分けて行うが、1回の粉砕工程での液歩合は、原料米の
一部重量の120%以上660%以下、好ましくは160%以上360%以下で、より好
ましくは160%以上260%で液化するのが望ましい。
大きい粒度の粉砕米は、液化時にデキストリンまで分解されずα米になるが、このα米は
、みりん醪中で米麹の酵素によって、澱粉はデキストリンやグルコースに、蛋白質はアミ
ノ酸等に分解されてエキス分となり、みりん醪のエキス分をさらに向上させる。
本発明は、前記記載の第二の発明(e)の最終液化工程で得た液化液と米麹と95%アル
コールでみりん醪を仕込む。
みりん醪を糖化・熟成ののち、圧搾、滓下げ、濾過、火入れの工程を経て、エキス分が5
0kg/l以上75kg/l以下の純米本みりんが得られる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるもので
はない。
操作手順に従って本発明を説明する。
1. 米麹は、白米200gを洗米、浸漬、蒸きょう、放冷の工程を経て蒸米に加工の
のち、種麹を散布し48時間かけて米麹に製造する。白米200gは、原料処理中に60
gの水分を吸収して、仕込み時には260gになる。
2. 第一粉砕工程に使用する水は、(a)原料米800gが蒸米法で吸水する300
gの水の内の270gと(b)95%アルコールから40%アルコールを加工時に使用す
る水365gを合わせた635gであり、総原料米重量の約79%の水歩合になる。
3. 第一粉砕工程は、原料米の一部400gと前項2記載の水635gとα−アミラ
ーゼ(長瀬製スピターゼCP−40)0.2gを混和しながら、粉砕機で湿式粉砕を行い、
スラリー1,035gを製造する。
4. 第一液化工程は、このスラリー1,035gを95℃で連続的に液化して液化液を
製造する。この液化液は、冷却して第二粉砕工程の液として使用する。
5. 第二粉砕工程は、残りの原料米の一部400gと前項で得た液化液1,035g
とα−アミラーゼ(長瀬製スピターゼCP−40)0.2gを混和しながら、粉砕機で湿式
粉砕を行い、粉砕液1,435gを製造する。
6. 第二液化工程は、前記の混和液1,435gを98℃で連続的に液化して、総原
料米すべてを使用した液化液1,435gを製造する。
7. 前項6で得た液化液1,435gと米麹260gとの95%アルコール206g
でみりん醪1.901gを仕込み、30日間熟成させる。
8. 醪期間中、醪表面の乾燥を防止するために間欠的に撹拌を加えながら、みりん醪
を糖化・熟成させて、圧搾前のみりん醪1,630mlを得る。
9. エキス分が50%g/ml以上に上昇したことを確認ののち、みりん醪を圧搾し
て純米本みりんを得る。
実施例1で圧搾した純米本みりんを一般財団法人食品分析センターに分析依頼した結果、
本発明の純米本みりんのエキス分は、54.8度であった。これにより、本発明の成分の
範囲を満たす純米本みりんを得ることが検証できた。
本発明では、みりん類のエキス分を向上させることにより、大半が飼料にしか転用出来な
かったみりん粕を減少させ、原料米の有効利用を図る。
蒸米法より収得量が向上するので製造の効率化が図れる。
みりんの主成分であるグルコースの甘味特性として糖濃度が高くなればなるほどその甘味
度は濃度以上に高く感じるので、甘味効果の高いみりん類を提供出来る。
本発明は、原料米の液化処理に使用する水量を押えることと原料米の資化率を高めることによって、エキス分が50%kg/l以上75%kg/l以下のみりん類およびその製造方法に関する。
蒸米法では、(a)原料米を洗米、浸漬、蒸し、放冷の一連の原料処理を施した蒸米と、(b)米麹用白米を洗米、浸漬、蒸し、放冷、製麹の一連の原料処理を施した米麹と、(c)40%エチルアルコール(以後、アルコールと称す)でみりん醪を仕込む方法であり、丸粒の蒸米を仕込むことが特徴である。
みりん醪は、40日〜60日間かけて糖化、熟成の後、圧搾、滓下げ、濾過、火入れの工程を経てみりんとなる。
この仕込み配合が、製造上も品質上も最もバランスの取れた比率であり、安定的にみりん類が得られることは衆知の事実である。この比率は昭和初期から現在に至るまでほとんど変わっていない。この仕込み配合で得られる平均的なエキス分は46%kg/l前後、平均的なアルコール分は14%l/l前後である。
(a)米麹用白米200kgは、洗米、浸漬、蒸し、放冷、製麹の一連の工程で60kgの水を吸収して醪仕込み時には260kgとなる。(b)原料米用白米800kgは、洗米、浸漬、蒸し、放冷の一連の操作で300kgの水を吸収して醪仕込み時には1,100kgとなる。これに(c)40%アルコール571kgを加えた1,931kgが仕込み時の重量である。
このみりん醪が糖化・熟成のした後の圧搾前の容量は、米麹が200l、原料米は860l、40%アルコール600lを合わせた1,660lである。
蒸米法の原料米は、洗米、浸漬、蒸し、放冷の工程で37.5%程度の水分を吸収するが、吸収する水分は仕込み配合には計上されないのが醸造業界の慣例である。
本発明の水歩合は、原料米の重量比率として表すので、従来、醸造業界で使用されていた比率とは異なり、吸収する水分37.5%は水歩合として表される。
みりん類は、含有するアルコールとグルコースの浸透圧で防腐効果を維持しているので、一般的なみりん類は腐敗しない。
浸透圧は、グルコースにくらべてアルコールの方が約4倍高いので、エキス分を増やすためにアルコール分を減らせば、みりんの防腐効果は低下するので得策ではない。
具体的には、アルコール分が50%に減少すれば、みりんとしての浸透圧は約30%低下する。極端なアルコール分の低下は防腐効果の維持に影響を与える。
原料米の比率を増やしてエキス分を上げることも可能ではあるが、原料米の量を増やせば、蒸米と40%アルコールのバランスが崩れ、仕込み操作と衛生面で支障をきたす。
具体的には、醪初期にアルコールを吸っていない蒸米とアルコールを吸った蒸米を入れ替える踏込みという操作を実施するが、アルコールの使用量が少ないとこの操作を確実に実施することができず、アルコールを吸収していない蒸米が醪の表面に露出し、その部分に雑菌が繁殖して品質面でも支障をきたす。
液化法では、原料米を蒸さずに原料米と水を酵素剤の存在下で加熱することによって、液化して液化液を得る。原料米の澱粉は酵素剤でデキストリンに分解されて、形状も固体から液体へと変化する。
液化仕込みは、融米仕込みに代表される連続式と姫飯仕込みに代表される炊き上げ式の二通りに大別される。
連続式液化法では、原料米と水を連続液化が可能な800ミクロン以下に湿式粉砕して得られた粉砕液にα−アミラーゼを加えた酵素入り粉砕液(以下、スラリーと称す)を製造する。このスラリーを75℃以上110℃未満の温度を維持した液化タンクで連続的に瞬間液化を行い、連続的に冷却の工程を経て液化液が製造される。
粉砕機で原料米を湿式粉砕し、良好な粉砕液を得るには水歩合150%以上を必要とする。水歩合が150%を下回ると、粉砕部において粉砕液の流動性が低下し、粉砕の摩擦熱によって粉砕液の温度が上昇して粉砕液が糊化する。
粉砕部で粉砕液の糊化が始まると粉砕液は排出されず、糊化がさらに進んで大きな抵抗が発生して粉砕機の駆動モーターの破損等設備面での支障が発生する。
特許文献1では、水歩合は原料米重量の150%に増やすことを特徴としているが、140%以下の水歩合では、原料米の粉砕に支障をきたし良好な粉砕液が製造出来ない。
炊き上げ式液化法では、原料米と水とα−アミラーゼを液化タンク投入後、昇温して液化するが、原料米の澱粉は、70℃を超えると一斉に糊化が始まり急激に粘度が上昇する。
糊化された澱粉は、α−アミラーゼで液化されて液化液となる。
発生した糊は、α−アミラーゼによってデキストリンに分解されて液の粘度を低下させるが、水歩合が140%以下では、一斉に起こる糊化の状態を解消出来ない。
非特許文献1では、原料米重量の170%程度の水歩合が一般的とされる。それ以下の水歩合では、一斉に起こる糊化の粘度上昇に液化のスピードが追い付かず、攪拌機に大きな負荷を与えてモーターが焼けついたり変速機が破損したり、回転翼の変形等の機械設備上支障が発生するので、140%以下の水歩合では液化液は製造出来ない。
清酒の液化仕込みでは、蒸米法では、原料米1t当りの100%アルコールの収得量は約350lがあるが、液化法では約420l程度に上昇する。
原酒のアルコール分は18度から20度が多いので原料米重量の150%から170%の水歩合で目標のアルコール度数の清酒が製造できる。また、水歩合が高ければ、設備に与える物理的な抵抗も少なく、比較的簡単に粉砕や糊化の工程を乗り越えることが出来た。
蒸米法で生産される酒粕の約30%は炭水化物である。液化法では、この炭水化物が資化されることにより、粕歩合が減少することが特徴であり、清酒の液化仕込みでは、酒粕の発生量は蒸米仕込みに比べて30%から50%減少する。
原料米重量の140%の水歩合で液化した液化液に米麹と95%アルコールを加えた純米本みりんの醪のエキス分は30%後半なので、酒税法のみりんの範疇から外れる。
酒税法では、みりんのエキス分は40%kg/l以上と定義されているので、不足するエキス分は酒税法で認められた糖類等を添加することによって本みりんを製造する。
特許文献2は、蒸米法で得たみりんのアルコールおよび水分を蒸発させた濃縮みりんと蒸米法で得た別のみりんを混合することによって、エキス分が47%(w/v)以上の濃厚みりんを得る製造方法であるが、みりんのアルコールおよび水分を蒸発させてエキス分を高めても47%(w/v)のエキス分も持つみりんしか得ることが出来ない。
特公昭63−51673 特開2003−304859
姫野国夫、姫飯造りの開発と現状、醸造協会誌、1993年、p756-p762
本発明は、原料米を液化した液化液に米麹、焼酎又はアルコールを加えて仕込んだ純米本みりんのエキス分が50%kg/l以上75%kg/l以下のみりん類を提供することを課題とする。
エキス分が50%kg/l以上75%kg/l以下のみりん類を得るためには、水の代替として液化液を使用することを考案し、それにより、総原料米に対する水の使用量を減らして前記のエキス分を得ることが出来る本発明を完成させた。
本発明は、以下に関する。
第一の発明は、エキス分が50%kg/l以上75%kg/l以下であることを特徴とする純米本みりん。
第二の発明は、(a)純米本みりんの製造に使用する原料米の一部と原料米総重量の27%以上100%以下の水とα−アミラーゼを混和しながら、粉砕して粉砕液を得る第一粉砕工程と、(b)第一粉砕工程で得た粉砕液を液化して液化液を得る第一液化工程と、(c)純米本みりんの製造に使用する原料米の一部と第一液化工程で得た液化液とα−アミラーゼを混和しながら、粉砕して粉砕液を得る第二粉砕工程と、(d)第二粉砕工程で得た粉砕液を液化して液化液を得る第二液化工程と、(e)前記の第二粉砕工程と前記の第二液化工程を繰り返すことにより、総原料米すべてを粉砕し、液化して液化液を得る最終液化工程と、(f)前記の最終液化工程で得た液化液と米麹とアルコールを混和してみりん醪を仕込む仕込み工程と、(g)みりん醪を熟成ののち、圧搾、滓下げ、濾過、火入れの処理を行う精製工程と、を含むことを特徴とする純米本みりんの製造方法。
第三の発明は、第一の発明に記載の純米本みりんと水飴を混和して得られる本みりん。
本発明では、液化液を水の代替として使用することによって原料米に対して27%以上100%以下の水歩合でも良好な高濃度液化液を提供することが出来る。
前記の最終液化工程で得た液化液と米麹と95%アルコールとでみりん醪を仕込み、熟成ののち圧搾することより、エキス分が50%kg/l以上75%kg/l以下の純米本みりんを提供することが出来る。
本発明を採用することにより副産物のみりん粕は確実に減少する。みりん粕の大半は飼料として流通しているので、コスト的には、減少したみりん粕が与えるデメリットよりみりんが増産されるメリットの方が大きく、コスト面での改善ができる。
エキス分50%純米本みりんのフロー図
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明のみりん類とは、純米本みりん及び本みりんをいう。
純米本みりんとは、糖分のすべてが原料米、米こうじに由来するみりん類をいう。
本みりんとは、原料米、米こうじに由来する糖分に加え、酒税法で定める水 .等の糖分が加えられたみりん類をいう。
エキス分算出方法は国税庁所定分析法で下記の様に定められおり、みりんを2倍に希釈したものを試料として用いる。
算出式は、{(浮ひょう法または振動式密度計法で測定した比重−蒸留密度法で得た蒸留液を浮ひょう法で測定したアルコール分を換算した比重)×260+0.21}×2
エキス分の内訳は、原料米の澱粉が分解された糖分が95%以上を占め、残りの5%は、蛋白質が分解したアミノ酸やペプチド、脂肪が分解した脂肪酸や米麹に由来する有機酸が占める。エキス分を増やすには、炭水化物の分解率を高めてより多くの糖分を生成することが望ましい。
清酒の液化仕込みでは、液化法の違いによって資化率も異なる。具体的には、蒸米法<炊き上げ式液化法<連続式液化法の順で資化率が向上する。
連続式では、瞬間液化を行うために原料米を粉砕するが、この物理的効果が資化率を高めるので、丸米を使用する炊き上げ式液化法よりも資化率が向上する。
エキス分をより高めるためには、連続式液化法が望ましい。
蒸米法で原料米800kgを処理する場合、原料米は洗米、浸漬、蒸きょう、放冷の工程を経て、原料米重量の37.5%に当たる300l水分を吸収する。また、40%アルコールを製造するには、95%アルコール253lに365lの水を混和する。
蒸米法で原料米800kgと95%アルコール253lを加工する際に使用する水量は665lとなり、原料米重量の約83%に相当する。
エキス分を向上させるための水歩合は、原料米重量の80%以下が望ましい。
醪のエキス分を向上させるには、澱粉価の高い高精白米の使用や麹歩合の増加及びアルコール使用量の減少等の方法が考えられる。
これらの条件を考慮しても、原料米重量の27%以上100%以下の水歩合で液化処理を行えば、エキス分が50%kg/l以上75%kg/l以下の純米本みりんを得ることが出来る。
原料米の粉砕粒度は、1ミクロン以上800ミクロン以下、好ましくは1ミクロン以上400ミクロン以下、より好ましくは1ミクロン以上200ミクロン以下であることが望ましい。
粉砕粒度が800ミクロンより大きくなると液化工程で粉砕米の内部までα化されないので、みりん醪中でも分解されずにそのままにみりん粕に移行する。
特許文献1と非特許文献1では液化に使用するのは水とされているが、本発明では、一回目は水を二回目以降は水の代替に液化液を使用することを特徴とする。
表現としては、使用する総原料米に対して使用する水の比率を水歩合、原料米の一部を粉砕・液化する際に使用する水又は、水の代替として使用する液化液の比率を液歩合としてとして表す。
粉砕・液化の回数は、2回以上6回以下、好ましくは2回以上3回以下で、より好ましくは2回で行うことが望ましい。
本発明は、粉砕・液化工程を繰り返すことにより、総原料米重量の27%以上100%以下の水歩合であっても、最終液化工程では高濃度の液化液が安定的に製造出来ることを特徴とする。
原料米80kgを複数回に分けて粉砕・液化する場合の原料米等の数値と米麹26kg、95%アルコール21kgで仕込んだみりん醪エキス分を表3に示す。
粉砕・液化工程を2回から6回に分けて行うが、1回の粉砕工程での液歩合は、原料米の一部重量の120%以上660%以下、好ましくは160%以上360%以下で、より好ましくは160%以上260%で液化するのが望ましい。
大きい粒度の粉砕米は、液化時にデキストリンまで分解されずα米になるが、このα米は、みりん醪中で米麹の酵素によって、澱粉はデキストリンやグルコースに、蛋白質はアミノ酸等に分解されてエキス分となり、みりん醪のエキス分をさらに向上させる。
本発明は、前記記載の第二の発明(e)の最終液化工程で得た液化液と米麹と95%アルコールでみりん醪を仕込む。
みりん醪を糖化・熟成ののち、圧搾、滓下げ、濾過、火入れの工程を経て、エキス分が50kg/l以上75kg/l以下の純米本みりんが得られる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
操作手順に従って本発明を説明する。
整理番号: 特願2015-134905 (Proof) 提出日:平成27年 9月 1日 7
1. 米麹は、白米200gを洗米、浸漬、蒸きょう、放冷の工程を経て蒸米に加工ののち、種麹を散布し48時間かけて米麹に製造する。白米200gは、原料処理中に60gの水分を吸収して、仕込み時には260gになる。
2. 第一粉砕工程に使用する水は、(a)原料米800gが蒸米法で吸水する300gの水の内の270gと(b)95%アルコールから40%アルコールを加工時に使用する水365gを合わせた635gであり、総原料米重量の約79%の水歩合になる。
3. 第一粉砕工程は、原料米の一部400gと前項2記載の水635gとα−アミラーゼ(長瀬製スピターゼCP−40)0.2gを混和しながら、粉砕機で湿式粉砕を行い、スラリー1,035gを製造する。
4. 第一液化工程は、このスラリー1,035gを95℃で連続的に液化して液化液を製造する。この液化液は、冷却して第二粉砕工程の液として使用する。
5. 第二粉砕工程は、残りの原料米の一部400gと前項で得た液化液1,035gとα−アミラーゼ(長瀬製スピターゼCP−40)0.2gを混和しながら、粉砕機で湿式粉砕を行い、粉砕液1,435gを製造する。
6. 第二液化工程は、前記の混和液1,435gを98℃で連続的に液化して、総原料米すべてを使用した液化液1,435gを製造する。
7. 前項6で得た液化液1,435gと米麹260gとの95%アルコール206gでみりん醪1.901gを仕込み、30日間熟成させる。
8. 醪期間中、醪表面の乾燥を防止するために間欠的に撹拌を加えながら、みりん醪を糖化・熟成させて、圧搾前のみりん醪1,630mlを得る。
9. エキス分が50%g/ml以上に上昇したことを確認ののち、みりん醪を圧搾して純米本みりんを得る。
実施例1で圧搾した純米本みりんを一般財団法人食品分析センターに分析依頼した結果、本発明の純米本みりんのエキス分は、54.8度であった。これにより、本発明の成分の範囲を満たす純米本みりんを得ることが検証できた。
本発明では、みりん類のエキス分を向上させることにより、大半が飼料にしか転用出来なかったみりん粕を減少させ、原料米の有効利用を図る。
蒸米法より収得量が向上するので製造の効率化が図れる。
みりんの主成分であるグルコースの甘味特性として糖濃度が高くなればなるほどその甘味度は濃度以上に高く感じるので、甘味効果の高いみりん類を提供出来る。
本発明は、原料米の液化処理に使用する水量を押えることと原料米の資化率を高めることによって、エキス分が50%kg/l以上75%kg/l以下のみりん類の製造方法に関する。
蒸米法では、(a)原料米を洗米、浸漬、蒸し、放冷の一連の原料処理を施した蒸米と、(b)米麹用白米を洗米、浸漬、蒸し、放冷、製麹の一連の原料処理を施した米麹と、(c)40%エチルアルコール(以後、アルコールと称す)でみりん醪を仕込む方法であり、丸粒の蒸米を仕込むことが特徴である。
みりん醪は、40日〜60日間かけて糖化、熟成の後、圧搾、滓下げ、濾過、火入れの工程を経てみりんとなる。

この仕込み配合が、製造上も品質上も最もバランスの取れた比率であり、安定的にみりん類が得られることは衆知の事実である。この比率は昭和初期から現在に至るまでほとんど変わっていない。この仕込み配合で得られる平均的なエキス分は46%kg/l前後、平均的なアルコール分は14%l/l前後である。

(a)米麹用白米200kgは、洗米、浸漬、蒸し、放冷、製麹の一連の工程で60kgの水を吸収して醪仕込み時には260kgとなる。(b)原料米用白米800kgは、洗米、浸漬、蒸し、放冷の一連の操作で300kgの水を吸収して醪仕込み時には1,100kgとなる。これに(c)40%アルコール571kgを加えた1,931kgが仕込み時の重量である。
このみりん醪が糖化・熟成のした後の圧搾前の容量は、米麹が200l、原料米は860l、40%アルコール600lを合わせた1,660lである。
蒸米法の原料米は、洗米、浸漬、蒸し、放冷の工程で37.5%程度の水分を吸収するが、吸収する水分は仕込み配合には計上されないのが醸造業界の慣例である。
本発明の水歩合は、原料米の重量比率として表すので、従来、醸造業界で使用されていた比率とは異なり、吸収する水分37.5%は水歩合として表される。
みりん類は、含有するアルコールとグルコースの浸透圧で防腐効果を維持しているので、一般的なみりん類は腐敗しない。
浸透圧は、グルコースにくらべてアルコールの方が約4倍高いので、エキス分を増やすためにアルコール分を減らせば、みりんの防腐効果は低下するので得策ではない。
具体的には、アルコール分が50%に減少すれば、みりんとしての浸透圧は約30%低下する。極端なアルコール分の低下は防腐効果の維持に影響を与える。
原料米の比率を増やしてエキス分を上げることも可能ではあるが、原料米の量を増やせば、蒸米と40%アルコールのバランスが崩れ、仕込み操作と衛生面で支障をきたす。
具体的には、醪初期にアルコールを吸っていない蒸米とアルコールを吸った蒸米を入れ替える踏込みという操作を実施するが、アルコールの使用量が少ないとこの操作を確実に実施することができず、アルコールを吸収していない蒸米が醪の表面に露出し、その部分に雑菌が繁殖して品質面でも支障をきたす。
液化法では、原料米を蒸さずに原料米と水を酵素剤の存在下で加熱することによって、液化して液化液を得る。原料米の澱粉は酵素剤でデキストリンに分解されて、形状も固体から液体へと変化する。
液化仕込みは、融米仕込みに代表される連続式と姫飯仕込みに代表される炊き上げ式の二通りに大別される。
連続式液化法では、原料米と水を連続液化が可能な800ミクロン以下に湿式粉砕して得られた粉砕液にα−アミラーゼを加えた酵素入り粉砕液(以下、スラリーと称す)を製造する。このスラリーを75℃以上110℃未満の温度を維持した液化タンクで連続的に瞬間液化を行い、連続的に冷却の工程を経て液化液が製造される。
粉砕機で原料米を湿式粉砕し、良好な粉砕液を得るには水歩合150%以上を必要とする。水歩合が150%を下回ると、粉砕部において粉砕液の流動性が低下し、粉砕の摩擦熱によって粉砕液の温度が上昇して粉砕液が糊化する。
粉砕部で粉砕液の糊化が始まると粉砕液は排出されず、糊化がさらに進んで大きな抵抗が発生して粉砕機の駆動モーターの破損等設備面での支障が発生する。
特許文献1では、水歩合は原料米重量の150%に増やすことを特徴としているが、140%以下の水歩合では、原料米の粉砕に支障をきたし良好な粉砕液が製造出来ない。
炊き上げ式液化法では、原料米と水とα−アミラーゼを液化タンク投入後、昇温して液化するが、原料米の澱粉は、70℃を超えると一斉に糊化が始まり急激に粘度が上昇する。
糊化された澱粉は、α−アミラーゼで液化されて液化液となる。
発生した糊は、α−アミラーゼによってデキストリンに分解されて液の粘度を低下させるが、水歩合が140%以下では、一斉に起こる糊化の状態を解消出来ない。
非特許文献1では、原料米重量の170%程度の水歩合が一般的とされる。それ以下の水歩合では、一斉に起こる糊化の粘度上昇に液化のスピードが追い付かず、攪拌機に大きな負荷を与えてモーターが焼けついたり変速機が破損したり、回転翼の変形等の機械設備上支障が発生するので、140%以下の水歩合では液化液は製造出来ない。
清酒の液化仕込みでは、蒸米法では、原料米1t当りの100%アルコールの収得量は約350lがあるが、液化法では約420l程度に上昇する。
原酒のアルコール分は18度から20度が多いので原料米重量の150%から170%の水歩合で目標のアルコール度数の清酒が製造できる。また、水歩合が高ければ、設備に与える物理的な抵抗も少なく、比較的簡単に粉砕や糊化の工程を乗り越えることが出来た。
蒸米法で生産される酒粕の約30%は炭水化物である。液化法では、この炭水化物が資化されることにより、粕歩合が減少することが特徴であり、清酒の液化仕込みでは、酒粕の発生量は蒸米仕込みに比べて30%から50%減少する。
原料米重量の140%の水歩合で液化した液化液に米麹と95%アルコールを加えた純米本みりんの醪のエキス分は30%後半なので、酒税法のみりんの範疇から外れる。
酒税法では、みりんのエキス分は40%kg/l以上と定義されているので、不足するエキス分は酒税法で認められた糖類等を添加することによって本みりんを製造する。
特許文献2は、蒸米法で得たみりんのアルコールおよび水分を蒸発させた濃縮みりんと蒸米法で得た別のみりんを混合することによって、エキス分が47%(w/v)以上の濃厚みりんを得る製造方法であるが、みりんのアルコールおよび水分を蒸発させてエキス分を高めても47%(w/v)のエキス分も持つみりんしか得ることが出来ない。
特公昭63−51673 特開2003−304859
姫野国夫、姫飯造りの開発と現状、醸造協会誌、1993年、p756-p762
本発明は、原料米を液化した液化液に米麹、焼酎又はアルコールを加えて仕込んだ純米本みりんのエキス分が50%kg/l以上75%kg/l以下のみりん類を提供することを課題とする。
エキス分が50%kg/l以上75%kg/l以下のみりん類を得るためには、水の代替として液化液を使用することを考案し、それにより、総原料米に対する水の使用量を減らして前記のエキス分を得ることが出来る本発明を完成させた。
本発明は、以下に関する。
第一の発明は、(a)純米本みりんの製造に使用する原料米の一部と原料米総重量の27%以上100%以下の水とα−アミラーゼを混和しながら、粉砕して粉砕液を得る第一粉砕工程と、(b)第一粉砕工程で得た粉砕液を液化して液化液を得る第一液化工程と、(c)純米本みりんの製造に使用する原料米の一部と第一液化工程で得た液化液と新たにα−アミラーゼを混和ながら、粉砕して粉砕液を得る第二粉砕工程と、(d)第二粉砕工程で得た粉砕液を液化して液化液を得る第二液化工程と、(e)前記の第二粉砕工程と前記の第二液化工程を繰り返すことにより、総原料米すべてを液化して液化液を得る最終液化工程と、(f)前記の最終液化工程で得た液化液と米麹とアルコールを混和してみりん醪を仕込む仕込み工程と、(g)みりん醪を熟成ののち、圧搾、滓下げ、濾過、火入れの処理を行う精製工程と、を含むことを特徴とする純米本みりんの製造方法。
第二の発明は、請求項1記載の純米本みりんの製造方法であって、エキス分が50%kg/l以上75%kg/l以下である純米本みりんの製造方法
第三の発明は、本みりんの製造方法であって、請求項1記載の純米本みりんの製造方法によって、純米本みりんを得る工程及び純米本みりんと水飴とを混和する工程を含むエキス分が50%kg/l以上75%kg/l以下である本みりんの製造方法
本発明では、液化液を水の代替として使用することによって原料米に対して27%以上100%以下の水歩合でも良好な高濃度液化液を提供することが出来る。
前記の最終液化工程で得た液化液と米麹と95%アルコールとでみりん醪を仕込み、熟成ののち圧搾することより、エキス分が50%kg/l以上75%kg/l以下の純米本みりんを提供することが出来る。
本発明を採用することにより副産物のみりん粕は確実に減少する。みりん粕の大半は飼料として流通しているので、コスト的には、減少したみりん粕が与えるデメリットよりみりんが増産されるメリットの方が大きく、コスト面での改善ができる。
エキス分50%純米本みりんのフロー図
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明のみりん類とは、純米本みりん及び本みりんをいう。
純米本みりんとは、糖分のすべてが原料米、米こうじに由来するみりん類をいう。
本みりんとは、原料米、米こうじに由来する糖分に加え、酒税法で定める水飴等の糖分が加えられたみりん類をいう。
エキス分算出方法は国税庁所定分析法で下記の様に定められおり、みりんを2倍に希釈したものを試料として用いる。
算出式は、{(浮ひょう法または振動式密度計法で測定した比重−蒸留密度法で得た蒸留液を浮ひょう法で測定したアルコール分を換算した比重)×260+0.21}×2
エキス分の内訳は、原料米の澱粉が分解された糖分が95%以上を占め、残りの5%は、蛋白質が分解したアミノ酸やペプチド、脂肪が分解した脂肪酸や米麹に由来する有機酸が占める。エキス分を増やすには、炭水化物の分解率を高めてより多くの糖分を生成することが望ましい。
清酒の液化仕込みでは、液化法の違いによって資化率も異なる。具体的には、蒸米法<炊き上げ式液化法<連続式液化法の順で資化率が向上する。
連続式では、瞬間液化を行うために原料米を粉砕するが、この物理的効果が資化率を高めるので、丸米を使用する炊き上げ式液化法よりも資化率が向上する。
エキス分をより高めるためには、連続式液化法が望ましい。
蒸米法で原料米800kgを処理する場合、原料米は洗米、浸漬、蒸きょう、放冷の工程を経て、原料米重量の37.5%に当たる300l水分を吸収する。また、40%アルコールを製造するには、95%アルコール253lに365lの水を混和する。
蒸米法で原料米800kgと95%アルコール253lを加工する際に使用する水量は665lとなり、原料米重量の約83%に相当する。
エキス分を向上させるための水歩合は、原料米重量の80%以下が望ましい。
醪のエキス分を向上させるには、澱粉価の高い高精白米の使用や麹歩合の増加及びアルコール使用量の減少等の方法が考えられる。
これらの条件を考慮しても、原料米重量の27%以上100%以下の水歩合で液化処理を行えば、エキス分が50%kg/l以上75%kg/l以下の純米本みりんを得ることが出来る。
原料米の粉砕粒度は、1ミクロン以上800ミクロン以下、好ましくは1ミクロン以上400ミクロン以下、より好ましくは1ミクロン以上200ミクロン以下であることが望ましい。
粉砕粒度が800ミクロンより大きくなると液化工程で粉砕米の内部までα化されないので、みりん醪中でも分解されずにそのままにみりん粕に移行する。
特許文献1と非特許文献1では液化に使用するのは水とされているが、本発明では、一回目は水を二回目以降は水の代替に液化液を使用することを特徴とする。
表現としては、使用する総原料米に対して使用する水の比率を水歩合、原料米の一部を粉砕・液化する際に使用する水又は、水の代替として使用する液化液の比率を液歩合としてとして表す。
粉砕・液化の回数は、2回以上6回以下、好ましくは2回以上3回以下で、より好ましくは2回で行うことが望ましい。
本発明は、粉砕・液化工程を繰り返すことにより、総原料米重量の27%以上100%以下の水歩合であっても、最終液化工程では高濃度の液化液が安定的に製造出来ることを特徴とする。
原料米80kgを複数回に分けて粉砕・液化する場合の原料米等の数値と米麹26kg、95%アルコール21kgで仕込んだみりん醪エキス分を表3に示す。
粉砕・液化工程を2回から6回に分けて行うが、1回の粉砕工程での液歩合は、原料米の一部重量の120%以上660%以下、好ましくは160%以上360%以下で、より好ましくは160%以上260%で液化するのが望ましい。
大きい粒度の粉砕米は、液化時にデキストリンまで分解されずα米になるが、このα米は、みりん醪中で米麹の酵素によって、澱粉はデキストリンやグルコースに、蛋白質はアミノ酸等に分解されてエキス分となり、みりん醪のエキス分をさらに向上させる。
本発明は、前記記載の第二の発明(e)の最終液化工程で得た液化液と米麹と95%アルコールでみりん醪を仕込む。
みりん醪を糖化・熟成ののち、圧搾、滓下げ、濾過、火入れの工程を経て、エキス分が50kg/l以上75kg/l以下の純米本みりんが得られる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。

操作手順に従って本発明を説明する。
1. 米麹は、白米200gを洗米、浸漬、蒸きょう、放冷の工程を経て蒸米に加工ののち、種麹を散布し48時間かけて米麹に製造する。白米200gは、原料処理中に60gの水分を吸収して、仕込み時には260gになる。
2. 第一粉砕工程に使用する水は、(a)原料米800gが蒸米法で吸水する300gの水の内の270gと(b)95%アルコールから40%アルコールを加工時に使用する水365gを合わせた635gであり、総原料米重量の約79%の水歩合になる。
3. 第一粉砕工程は、原料米の一部400gと前項2記載の水635gとα−アミラーゼ(長瀬製スピターゼCP−40)0.2gを混和しながら、粉砕機で湿式粉砕を行い、スラリー1,035gを製造する。
4. 第一液化工程は、このスラリー1,035gを95℃で連続的に液化して液化液を製造する。この液化液は、冷却して第二粉砕工程の液として使用する。
5. 第二粉砕工程は、残りの原料米の一部400gと前項で得た液化液1,035gとα−アミラーゼ(長瀬製スピターゼCP−40)0.2gを混和しながら、粉砕機で湿式粉砕を行い、粉砕液1,435gを製造する。
6. 第二液化工程は、前記の混和液1,435gを98℃で連続的に液化して、総原料米すべてを使用した液化液1,435gを製造する。
7. 前項6で得た液化液1,435gと米麹260gとの95%アルコール206gでみりん醪1.901gを仕込み、30日間熟成させる。
8. 醪期間中、醪表面の乾燥を防止するために間欠的に撹拌を加えながら、みりん醪を糖化・熟成させて、圧搾前のみりん醪1,630mlを得る。
9. エキス分が50%g/ml以上に上昇したことを確認ののち、みりん醪を圧搾して純米本みりんを得る。
実施例1で圧搾した純米本みりんを一般財団法人食品分析センターに分析依頼した結果、本発明の純米本みりんのエキス分は、54.8度であった。これにより、本発明の成分の範囲を満たす純米本みりんを得ることが検証できた。
本発明では、みりん類のエキス分を向上させることにより、大半が飼料にしか転用出来なかったみりん粕を減少させ、原料米の有効利用を図る。
蒸米法より収得量が向上するので製造の効率化が図れる。
みりんの主成分であるグルコースの甘味特性として糖濃度が高くなればなるほどその甘味度は濃度以上に高く感じるので、甘味効果の高いみりん類を提供出来る。

Claims (3)

  1. エキス分が50%kg/l以上75%kg/l以下であることを特徴とする純米本みりん。
  2. (a)純米本みりんの製造に使用する原料米の一部と原料米総重量の27%以上100%以下の水とα−アミラーゼを混和しながら、粉砕して粉砕液を得る第一粉砕工程と、
    (b)第一粉砕工程で得た粉砕液を液化して液化液を得る第一液化工程と、
    (c)純米本みりんの製造に使用する原料米の一部と第一液化工程で得た液化液と新たにα−アミラーゼを混和ながら、粉砕して粉砕液を得る第二粉砕工程と、
    (d)第二粉砕工程で得た粉砕液を液化して液化液を得る第二液化工程と、
    (e)前記の第二粉砕工程と前記の第二液化工程を繰り返すことにより、総原料米すべてを液化して液化液を得る最終液化工程と、
    (f)前記の最終液化工程で得た液化液と米麹とアルコールを混和してみりん醪を仕込む仕込み工程と、
    (g)みりん醪を熟成ののち、圧搾、滓下げ、濾過、火入れの処理を行う精製工程と、を含むことを特徴とする純米本みりんの製造方法。
  3. 請求項1に記載の純米本みりんと水飴を混和して得られる本みりん。
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