JP2017010651A - 非水系二次電池用複合粒子の製造方法 - Google Patents

非水系二次電池用複合粒子の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高容量且つ、優れた入出力特性及び高温保存特性を備えた非水系二次電池を得ることが可能な複合粒子を提供し、その結果として、高性能な非水系二次電池を提供する。【解決手段】黒鉛粒子と炭素質物を含有する非水系二次電池用複合粒子の製造方法であって、下記1)〜3)の工程を有することを特徴とする非水系二次電池用複合粒子の製造方法。1)アニリン点が80℃以下もしくは存在しない造粒剤の存在下で、少なくとも衝撃、圧縮、摩擦、及びせん断力のいずれかの力学的エネルギーを付与して原料黒鉛を造粒する工程2)1)で得られた造粒黒鉛粒子に、炭素質物前駆体となる有機化合物を混合する工程3)2)で得られた混合物を熱処理し、黒鉛粒子と炭素質物を含有する複合粒子を得る工程【選択図】 なし

Description

本発明は、非水系二次電池用複合粒子の製造方法に関するものである。
近年、エネルギー密度が高く、大電流充放電特性に優れた非水系二次電池に対する更なる高性能化の要求が高まってきており、更なる高容量化、高入出力化、高寿命化を達成することが求められている。
非水系二次電池については、負極材として黒鉛等の炭素材料を使用することが知られている。そして非水系二次電池の中でもリチウムイオン二次電池用の負極材としては、リチウム吸蔵の理論容量である372mAh/gに近い容量を得ることができ、さらに、コスト・耐久性にも優れることから、黒鉛化度の大きい黒鉛が負極材として好ましいとされている。
上記負極材としては、例えば、特許文献1には、鱗片状天然黒鉛に力学的エネルギーを付与して球形化し、更に得られた球形化天然黒鉛を核としてその表面に非晶質炭素を被覆することにより、充填性や高速充放電特性を向上させる技術が開示されている。
また特許文献2では、鱗片状天然黒鉛と溶融性有機物と軟化点70℃のピッチを加熱混練し、その後ハイブリダイザー装置にて機械的衝撃を与えた後、カーボンブラックを添加してさらに機械的衝撃を与えることにより球形化粉体を得、それを焼成することで負極材粉体を得る方法が開示されている。また、特許文献3では、原料黒鉛粒子に樹脂バインダを投入して球形化処理することにより、粒子表面が滑らかな球状化黒鉛粒子を得る方法が開示されている。また特許文献4では、石炭系仮焼コークスとパラフィンワックスとを加熱しながら高速撹拌して球形に造粒する方法が知られている。
特許第3534391号公報 特開2008−305722号公報 特開2014−114197号公報 国際公開第2014/141372号
しかしながら、本発明者らの検討によると、特許文献1で開示されている球形化天然黒鉛では、原料として用いた鱗片状黒鉛に比べると、高容量で、良好な急速充放電特性は得られるものの、粒子同士の付着力が乏しいため、鱗片状黒鉛の残存、球形化中の微粉発生により、電池特性や工程性が低下するといった課題があった。
また、特許文献2に開示されている負極材粉体は、黒鉛の球形化時に含有される溶融性有機物やピッチは軟化した固体を含んだ状態であるため原料黒鉛同士の付着力は不十分であり、鱗片状黒鉛残存や球形化中の微粉発生の抑制による電池特性の改善効果は不十分であった。さらに、黒鉛の球形化時に含有される溶融性有機物はピッチとの親和性が考慮されていないため炭素質物を均一に被覆できず、得られた球形化黒鉛粒子と炭素質物を含有する複合粒子の原料として用いた場合にも電池特性の改善効果は不十分であった。
特許文献3に開示されている球形化黒鉛の製造方法も同様に、樹脂バインダを添加する
ことによる黒鉛粒子同士の付着力は小さく、微粉発生の抑制による電池特性の改善効果は不十分である。一方でトルエン溶媒に溶解させた樹脂バインダ溶液を添加して球形化する技術も一例として開示されているが、溶媒の引火点が低いため球形化処理中の温度上昇により引火点以上の温度となり、製造時に爆発や火災の危険を伴うため、さらなる改善が必要である。さらに、例示されている樹脂バインダーは炭素質物前駆体となる有機物との親和性が考慮されていないため炭素質物を均一に被覆できず、得られた球形化黒鉛粒子と炭素質物を含有する複合粒子の原料として用いた場合にも電池特性の改善効果は不十分であった。
また、特許文献4では黒鉛を球形に造粒する方法は開示されていない上、パラフィンワックスは固体であるため球形化中の微粉発生の抑制効果や電池特性の改善効果は不十分であった。さらに、パラフィンワックスは炭素質物前駆体となる有機物との親和性が考慮されていないため炭素質物を均一に被覆できず、得られた造粒粒子と炭素質物を含有する複合粒子の原料として用いた場合にも電池特性の改善効果は不十分であった。
本発明はかかる背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は粒子表面及び内部にLiイオンの挿入脱離サイトを多く有する微粉が存在する構造を有する球状に造粒された黒鉛粒子に炭素質物が均一に被覆された非水系二次電池用複合粒子の製造方法を提供することにある。さらに、上記製造法により、高容量且つ、優れた入出力特性及び高温保存特性を備えた非水系二次電池を得ることが可能な複合粒子を提供し、その結果として、高性能な非水系二次電池を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、
1)アニリン点が80℃以下もしくは存在しない造粒剤の存在下で、少なくとも衝撃、圧縮、摩擦、及びせん断力のいずれかの力学的エネルギーを付与して原料黒鉛を造粒する工程
2)1)で得られた造粒黒鉛粒子に、炭素質物前駆体となる有機化合物を混合する工程
3)2)で得られた混合物を熱処理し、黒鉛粒子と炭素質物を含有する複合粒子を得る工程
を含む製造方法により、上記課題を解決するに至った。
すなわち本発明の要旨は、黒鉛粒子と炭素質物を含有する非水系二次電池用複合粒子の製造方法であって、下記1)〜3)の工程を有することを特徴とする非水系二次電池用複合粒子の製造方法に存する。
1)アニリン点が80℃以下もしくは存在しない造粒剤の存在下で、少なくとも衝撃、圧縮、摩擦、及びせん断力のいずれかの力学的エネルギーを付与して原料黒鉛を造粒する工程
2)1)で得られた造粒黒鉛粒子に、炭素質物前駆体となる有機化合物を混合する工程
3)2)で得られた混合物を熱処理し、黒鉛粒子と炭素質物を含有する複合粒子を得る工程
また、その他の要旨は、上記の製造方法により製造された非水系二次電池用複合粒子。
また、その他の要旨は、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極、並びに、電解質を備えると共に、該負極が集電体と該集電体上に形成された負極活物質層とを備えると共に、該負極活物質層が上記の複合粒子を含有することを特徴とする非水系二次電池に存する。
本発明の製造方法によると、粒子表面及び内部にLiイオンの挿入脱離サイトを多く有する微粉が存在する構造を有する球状に造粒された黒鉛粒子に炭素質物が均一に被覆され
た非水系二次電池用複合粒子を得ることができ、それを非水系二次電池用の負極活物質として用いることにより、高容量で低温入出力特性や高温保存特性に優れた非水系二次電池を提供することができる。
上記効果を奏する理由については、本発明者らは次の様に考えている。
造粒剤を添加することにより、複数の粒子の間に液体が付着して液橋(粒子間に、液体によって橋が架かったような状況をいう。)が形成されると、液橋内の毛管負圧と液の表面張力によって生じる引力が粒子間に液架橋付着力として働き、原料黒鉛間の液架橋付着力が増大し、原料黒鉛同士がより強固に付着することが可能となる。また、造粒剤が潤滑材として作用することにより原料黒鉛の微粉化が低減される。さらに、造粒工程の際に発生した微粉の多くは、上述の液架橋付着力増大の効果により、原料黒鉛と付着するため、微粉として独立した粒子が低減される。これらの結果、原料黒鉛同士がより強固に付着した、粒径が適度に増大し、球形化度が高く、微粉が少ない球形化黒鉛粒子を製造することが可能となる。
本発明の製造方法により製造した複合粒子は、粒子表面及び内部にLiイオンの挿入脱離サイトを多く有する微粉が存在する構造を取る。さらに、複数の原料黒鉛により造粒された構造を有することにより、粒子外周部だけでなく粒子内部に存在するLiイオン挿入脱離サイトをも有効且つ効率的に利用することが可能になる。
さらに、得られた造粒黒鉛粒子に炭素質物前駆体となる有機化合物を混合し、得られた混合物を熱処理して黒鉛粒子と炭素質物を含有する複合粒子を得る際に、親和性の良い造粒剤と炭素質物前駆体となる有機化合物を選択することにより造粒黒鉛の表面に炭素質物前駆体となる有機化合物を均一に付着させることが可能となる。このため、複合粒子表面にLiイオン挿入脱離に適した炭素質物を均一に被覆し、造粒黒鉛表面の露出を抑制することが可能となる。
これらの結果、本発明により得られた複合粒子を非水系二次電池に用いることで、高容量で優れた入出力特性や高温保存特性を得ることが出来たと考えられる。
高温保存特性と低温出力特性の関係を示す図である。実施例1は(高温保存特性,低温出力特性)が(98.9,109.9)の点であり、実施例2は(100.4,104.8)の点であり、実施例3は(101.1,103.1)の点であり、比較例1は(98.6,94.4)の点であり、比較例2は(100.0,100.0)の点であり、比較例3は(100.4,91.2)の点であり、比較例4は(104.4,68.1)の点である。
以下、本発明の内容を詳細に述べる。なお、以下に記載する発明構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの形態に特定されるものではない。
本発明は、黒鉛粒子と炭素質物を含有する非水系二次電池用複合粒子の製造方法であって、下記1)〜3)の工程を有することを特徴とする非水系二次電池用複合粒子の製造方法である。
1)アニリン点が80℃以下もしくは存在しない造粒剤の存在下で、少なくとも衝撃、圧縮、摩擦、及びせん断力のいずれかの力学的エネルギーを付与して原料黒鉛を造粒する工程
2)1)で得られた造粒黒鉛粒子に、炭素質物前駆体となる有機化合物を混合する工程
3)2)で得られた混合物を熱処理し、黒鉛粒子と炭素質物を含有する複合粒子を得る工

上記工程を有すれば、必要に応じて別の工程を更に有していてもよい。別の工程は単独で実施してもよいし、複数工程を同時に実施してもよい。
以下、これら工程について説明する。
1)アニリン点が80℃以下もしくは存在しない造粒剤の存在下で、少なくとも衝撃、圧縮、摩擦、及びせん断力のいずれかの力学的エネルギーを付与して原料黒鉛を造粒する工程
(アニリン点が80℃以下もしくは存在しない造粒剤)
本発明で用いる造粒剤は、アニリン点が80℃以下もしくは存在しないものであれば特に制限はない。アニリン点が低いと有機化合物に対する溶解力が強くなるため、上記要件を満たす造粒剤を用いることで炭素質物前駆体となる有機化合物との親和性が良好になり、本工程で得られた造粒黒鉛粒子と炭素質物前駆体となる有機化合物を混合する際に、造粒黒鉛の表面、及び内部空隙に均一に有機化合物を添着させることが可能となる。特に、アニリン点が高い造粒剤では親和性が低く溶解が難しい芳香族化合物を含む有機化合物に対しても、本発明で用いるアニリン点が80℃以下もしくは存在しない造粒剤は親和性が高く相溶性を有するため、芳香族化合物を含む有機化合物を炭素質物前駆体として用いた場合においても、本工程で得られた造粒黒鉛粒子と炭素質物前駆体となる有機化合物を混合する際に、造粒黒鉛の表面、及び内部空隙に均一に有機化合物を添着させることが可能となる。
例えば、炭化水素系化合物におけるアニリン点、及び混合アニリン点は、パラフィン系>ナフテン系>芳香族系となる傾向があり、分子量が小さいほどアニリン点、及び混合アニリン点は低くなる傾向がある。
本発明で用いる造粒剤のアニリン点は、通常80℃以下、好ましくは50℃以下、より好ましくは30℃以下、更に好ましくは10℃以下、特に好ましくは0℃以下である。下限値としてはアニリン点が造粒剤の凝固点より低くアニリン点が存在しない場合がある。アニリン点が存在しない造粒剤においては混合アニリン点でその性質を評価することができ、混合アニリン点は、好ましくは50℃以下、より好ましくは30℃以下、更に好ましくは20℃以下、特に好ましくは0℃以下である。
アニリン点、及び混合アニリン点は、JIS K2256に準拠して測定した。アニリン点はアニリンと測定試料(造粒剤)との混合液(体積比1:1)が均一な溶液として存在する最低温度(アニリン及び測定試料(造粒剤)が完全に溶け合っている状態から温度を下げて両者が分離して濁りを生じる温度)として、混合アニリン点はアニリン、測定試料(造粒剤)及びヘプタンの混合液(体積比2:1:1)が均一な溶液として存在する最低温度(アニリン、測定試料(造粒剤)及びヘプタンが完全に溶け合っている状態から温度を下げて両者が分離して濁りを生じる温度)と定義される。
本発明においては、原料黒鉛を造粒する工程の際に、原料黒鉛間を造粒剤が液架橋することにより、原料黒鉛間に液橋内の毛管負圧と液の表面張力によって生じる引力が粒子間に液架橋付着力として働くため、原料黒鉛間の液架橋付着力が増大し、原料黒鉛がより強固に付着することが可能となる。原料黒鉛間を造粒剤が液架橋することによる原料黒鉛間の液架橋付着力の強さはγcosθ値に比例する(ここで、γ:液の表面張力、θ:液と粒子の接触角)。すなわち、原料黒鉛を造粒する際に、造粒剤は原料黒鉛との濡れ性が高いことが好ましく、具体的にはγcosθ値>0となるようにcosθ>0となる造粒剤を選択するのが好ましく、造粒剤の下記測定方法で測定した黒鉛との接触角θが90°未満であることが好ましい。
<黒鉛との接触角θの測定方法>
HOPG表面に1.2μlの造粒剤を滴下し、濡れ広がりが収束して一秒間の接触角θの変化率が3%以下となったとき(定常状態ともいう)の接触角を接触角測定装置(協和界面社製自動接触角計DM−501)にて測定する。ここで、25℃における粘度が500cP以下の造粒剤を用いる場合には25℃における値を、25℃における粘度が500cPより大きい造粒剤を用いる場合には、粘度が500cP以下となる温度まで加温した温度における接触角θの測定値とする。
さらに、原料黒鉛と造粒剤の接触角θが0°に近いほど、γcosθ値が大きくなるため、黒鉛粒子間の液架橋付着力が増大し、黒鉛粒子同士がより強固に付着することが可能となる。従って、前記造粒剤の黒鉛との接触角θは85°以下であることがより好ましく、80°以下であることが更に好ましく、50°以下であることがこと更に好ましく、30°以下であることが特に好ましく、20°以下であることが最も好ましい。
表面張力γが大きい造粒剤を使用することによっても、γcosθ値が大きくなり黒鉛粒子の付着力は向上するため、γは好ましくは0以上、より好ましくは15以上、更に好ましくは30以上である。
また、粒子の移動に伴う液橋の伸びに対する抵抗成分として粘性力が働き、その大きさは粘度に比例する。このため、原料黒鉛を造粒する造粒工程時において液体であれば造粒剤の粘度は特段限定されないが、造粒工程時において1cP以上であることが好ましい。
また造粒剤の、25℃における粘度が1cP以上100000cP以下であることが好ましく、5cP以上10000cP以下であることがより好ましく、10cP以上8000cP以下であることが更に好ましく、50cP以上6000cP以下であることが特に好ましい。粘度が上記範囲内にあると、原料黒鉛を造粒する際に、ローターやケーシングとの衝突などの衝撃力による付着粒子の脱離を防ぐことが可能となる。
さらに、本発明で用いる造粒剤は、有機溶剤を含まないか、有機溶剤を含む場合、有機溶剤の内、少なくとも1種は引火点を有さない、あるいは引火点を有する場合は引火点が5℃以上のものが好ましい。これにより、続く力学的エネルギーを付与して原料黒鉛を造粒する工程の際に、衝撃や発熱に誘発される有機化合物の引火、火災、及び爆発の危険を防止することができるため、安定的に効率良く製造を実施することが出来る。
本発明で用いる造粒剤としては、アニリン点が80℃以下もしくは存在しないものであれば特に制限はないが、アニリン点が低くなる傾向があるため、芳香族を有する有機化合物を含むことが好ましく、平均分子量は好ましくは5000以下、より好ましくは1000以下、更に好ましくは700以下、特に好ましくは500以下であることが好ましい。酸素や窒素などのヘテロ元素を有する官能基を導入することによってもアニリン点を調整することが出来る。
また、黒鉛のベーサル面との相互作用が高く、本工程で得られた造粒黒鉛粒子と炭素質物前駆体となる有機化合物を混合する際に、造粒黒鉛の表面、及び内部空隙により均一に有機化合物を添着させることが可能となることから、
ナフタレン、及びアセナフチレン、アセナフテン、フルオレン、アントラセン、フェナントレン、ピレンなどの多環芳香族を有する有機化合物を含むことがより好ましい。
具体的には、例えば、オレフィン系オイルやナフテン系オイルや芳香族系オイルなどの合成油、植物系油脂類や動物系脂肪族類やエステル類や高級アルコール類などの天然油、コールタールの蒸留により生成する軽油やカルボル油やクレオソート油やナフタリン油やアントラセン油などの石炭系軽質油留分、及びそれらの混合物などが挙げられる。
また、コールタールやピッチなどの石炭系原料油や石油系重質油を引火点5℃以上、好ましくは21℃以上の有機溶媒で希釈することによりアニリン点を80℃以下に調整した溶液を用いることも出来る。引火点5℃以上の有機溶剤としては、キシレン、イソプロピルベンゼン、エチルベンゼン、プロピルベンゼンなどのアルキルベンゼン、メチルナフタレン、エチルナフタレン、プロピルナフタレンなどのアルキルナフタレン、スチレンなどのアリルベンゼン、アリルナフタレンなどの芳香族炭化水素類や、オクタン、ノナン、デカンなどの脂肪族炭化水素類や、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類や、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミルなどのエステル類や、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、グリセリンなどのアルコール類や、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、メトキシプロパノール、メトキシプロピル−2−アセテート、メトキシメチルブタノール、メトキシブチルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、などのグリコール類誘導体類や、1,4−ジオキサンなどのエーテル類や、ジメチルホルムアミド、ピリジン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドンなどの含窒素化合物、ジメチルスルホキシドなどの含硫黄化合物、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼンなどの含ハロゲン化合物、及びそれらの混合物などがあげられ、例えばトルエンのような引火点が低い物は含まれない。これら有機溶剤のうち、アニリン点が80℃以下であるものについては単体で造粒剤としても用いることが出来る。
以上の中でも、芳香族系オイルが球形化度が高く微粉が少ない造粒黒鉛粒子を製造でき、且つ炭素質物前駆体となる有機化合物との親和性が良好で、本工程で得られた造粒黒鉛粒子と炭素質物前駆体となる有機化合物を混合する際に、造粒黒鉛の表面、及び内部空隙に均一に有機化合物を添着させることが可能となるためより好ましい。
造粒剤としては、後述する造粒剤を除去する工程において、効率よく除去が可能であり、容量や入出力特性や保存・サイクル特性などの電池特性への悪影響を与えることが無い性状のものが好ましい。具体的には、不活性雰囲気下700℃に加熱した時に通常50%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは95%以上、更に好ましくは99%以上、特に好ましくは99.9%以上重量減少するものを適宜選択することが出来る。
(原料黒鉛)
本発明で用いる原料黒鉛は特に限定されず、人造黒鉛や天然黒鉛を使用することが出来る。中でも、結晶性が高く高容量であることから天然黒鉛を使用することが好ましい。
人造黒鉛としては、例えば、コールタールピッチ、石炭系重質油、常圧残油、石油系重質油、芳香族炭化水素、窒素含有環状化合物、硫黄含有環状化合物、ポリフェニレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリビニルブチラール、天然高分子、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキシド、フルフリルアルコール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、イミド樹脂などの有機物を焼成し、黒鉛化したものが挙げられる。
焼成温度は、2500℃以上、3200℃以下の範囲とすることができ、焼成の際、珪素含有化合物やホウ素含有化合物などを黒鉛化触媒として用いることもできる。
天然黒鉛は、その性状によって、鱗片状黒(FlakeGraphite)、鱗状(Crystal LineGraphite)、塊状黒鉛(Vein Graphite)、土壌黒鉛(Amorphousu Graphite)に分類される(「粉粒体プロセス技術集成」((株)産業技術センター、昭和49年発行)の黒鉛の項、および「HANDBOOK OF CARBON,GRAPHITE,DIAMOND AND FUL
LERENES」(NoyesPubLications発行)参照)。黒鉛化度は、鱗状黒鉛や塊状黒鉛が100%で最も高く、これに次いで鱗片状黒鉛が99.9%で高く、黒鉛化度が高い黒鉛が本発明において好適である。なかでも不純物の少ないものが好ましく、必要に応じて、公知である種々の精製処理を施して用いることができる。
天然黒鉛の産地は、マダガスカル、中国、ブラジル、ウクライナ、カナダ等である。天然黒鉛のうち、鱗状黒鉛の産地は、主にスリランカであり、土壌黒鉛の主な産地は、朝鮮半島、中国、メキシコ等である。天然黒鉛としては、例えば、鱗状、鱗片状、塊状又は板状の天然黒鉛が挙げられ、中でも、鱗片状黒鉛が好ましい。
これら原料黒鉛の平均粒径(d50)は、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上、更に好ましくは3μm以上、好ましくは80μm以下、より好ましくは50μm以下、更に好ましくは35μm以下、非常に好ましくは20μm以下、特に好ましくは10μm以下、最も好ましくは8μm以下である。平均粒径は後述の方法により測定することが出来る。
平均粒径が上記範囲にある場合、造粒工程中に生成する微粉を、造粒された黒鉛(以降、造粒黒鉛と称す。)となる母材に付着或いは母材の内部に包む込みながら造粒することが可能になり、球形化度が高く微粉が少ない造粒黒鉛を得ることが出来る。
原料黒鉛の平均粒径(d50)を上記範囲に調整する方法として、例えば黒鉛粒子を粉砕、及び/または分級する方法が挙げられる。
粉砕に用いる装置に特に制限はないが、例えば、粗粉砕機としてはせん断式ミル、ジョークラッシャー、衝撃式クラッシャー、コーンクラッシャー等が挙げられ、中間粉砕機としてはロールクラッシャー、ハンマーミル等が挙げられ、微粉砕機としては、機械式粉砕機、気流式粉砕機、旋回流式粉砕機等が挙げられる。具体的には、ボールミル、振動ミル、ピンミル、攪拌ミル、ジェットミル、サイクロンミル、ターボミル等が挙げられる。特に、10μm以下の黒鉛粒子を得る場合には、気流式粉砕機や旋回流式粉砕機を用いることが好ましい。
分級処理に用いる装置としては特に制限はないが、例えば、乾式篩い分けの場合は、回転式篩い、動揺式篩い、旋動式篩い、振動式篩い等を用いることができ、乾式気流式分級の場合は、重力式分級機、慣性力式分級機、遠心力式分級機(クラシファイア、サイクロン等)を用いることができ、また、湿式篩い分け、機械的湿式分級機、水力分級機、沈降分級機、遠心式湿式分級機等を用いることができる。
また、原料黒鉛としては以下のような物性を満足することが好ましい。
原料黒鉛に含まれる灰分は、全質量に対して、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下であり、更に好ましくは0.1質量%以下である。また、灰分の下限は1ppm以上であることが好ましい。
灰分が上記範囲内であると非水系二次電池とした場合に、充放電時の複合粒子と電解液との反応による電池性能の劣化を無視できる程度に抑えることができる。また、複合粒子の製造に多大な時間とエネルギーと汚染防止のための設備とを必要としないため、コストの上昇も抑えられる。
原料黒鉛のアスペクト比は、好ましくは3以上、より好ましくは5以上、更に好ましくは10以上、特に好ましくは15以上である。また、好ましくは1000以下、より好ましくは500以下、更に好ましくは100以下、特に好ましくは50以下である。アスペクト比は、後述する実施例の方法により測定する。アスペクト比が上記範囲内にあると、粒径が100μm程度の大きな粒子が出来難く、一方で強固な造粒黒鉛を得易くなる。
原料黒鉛のX線広角回折法による002面の面間隔(d002)及び結晶子の大きさ(Lc)は、通常(d002)が3.37Å以下で(Lc)が900Å以上であり、(d002)が3.36Å以下で(Lc)が950Å以上であることが好ましい。面間隔(d002)及び結晶子の大きさ(Lc)は、黒鉛バルクの結晶性を示す値であり、002面の面間隔(d002)の値が小さいほど、また結晶子の大きさ(Lc)が大きいほど、結晶性が高い黒鉛であることを示し、黒鉛層間に入るリチウムの量が理論値に近づくので容量が増加する。結晶性が低いと高結晶性黒鉛を電極に用いた場合の優れた電池特性(高容量で、且つ不可逆容量が低い)が発現されない。面間隔(d002)と結晶子サイズ(Lc)は、上記範囲が組み合わされていることが特に好ましい。
X線回折は以下の手法により測定する。炭素粉末に総量の約15質量%のX線標準高純度シリコン粉末を加えて混合したものを材料とし、グラファイトモノクロメーターで単色化したCuKα線を線源とし、反射式ディフラクトメーター法で広角X線回折曲線を測定する。その後、学振法を用いて面間隔(d002)及び結晶子の大きさ(Lc)を求める。
原料黒鉛の充填構造は、粒子の大きさ、形状、粒子間相互作用力の程度等によって左右されるが、本明細書では充填構造を定量的に議論する指標の一つとしてタップ密度を適用することも可能である。本発明者らの検討では、真密度と平均粒径がほぼ等しい鉛質粒子では、形状が球状で粒子表面が平滑であるほど、タップ密度が高い値を示すことが確認されている。すなわち、タップ密度を上げるためには、粒子の形状に丸みを帯びさせて球状に近づけ、粒子表面のささくれや欠損を除き平滑さを保つことが重要である。粒子形状が球状に近づき粒子表面が平滑であると、粉体の充填性も大きく向上する。原料黒鉛のタップ密度は、好ましくは0.1g/cm以上であり、より好ましくは0.2g/cm以上であり、更に好ましくは0.3g/cm以上である。タップ密度は実施例で後述する方法により測定する。
原料黒鉛のアルゴンイオンレーザーラマンスペクトルは粒子の表面の性状を現す指標として利用されている。原料黒鉛のアルゴンイオンレーザーラマンスペクトルにおける1580cm−1付近のピーク強度に対する1360cm−1付近のピーク強度比であるラマンR値は、好ましくは0.05以上0.9以下であり、より好ましくは0.05以上0.7以下であり、更に好ましくは0.05以上0.5以下である。R値は炭素粒子の表面近傍(粒子表面から100Å位まで)の結晶性を表す指標であり、R値が小さいほど結晶性が高い、あるいは結晶状態が乱れていないことを示す。ラマンスペクトルは以下に示す方法により測定する。具体的には、測定対象粒子をラマン分光器測定セル内へ自然落下させることで試料充填し、測定セル内にアルゴンイオンレーザー光を照射しながら、測定セルをこのレーザー光と垂直な面内で回転させながら測定を行なう。なお、アルゴンイオンレーザー光の波長は514.5nmとする。
原料黒鉛のX線広角回折法は、粒子全体の結晶性を表す指標として用いられる。鱗片状黒鉛は、X線広角回折法による菱面体結晶構造に基づく101面の強度3R(101)と六方晶結晶構造に基づく101面の強度2H(101)との比3R/2Hが好ましくは0.1以上、より好ましくは0.15以上、更に好ましくは0.2以上である。菱面体結晶構造とは、黒鉛の網面構造の積み重なりが3層おきに繰り返される結晶形態である。また
、六方晶結晶構造とはとは黒鉛の網面構造の積み重なりが2層おきに繰り返される結晶形態である。菱面体結晶構造3Rの比率の多い結晶形態を示す鱗片状黒鉛の場合、菱面体結晶構造3Rの比率の少ない黒鉛に比べLiイオンの受け入れ性が高い。
原料黒鉛のBET法による比表面積は、好ましくは1m/g以上30m/g以下、より好ましくは2m/g以上20m/g以下、更に好ましくは5m/g以上15m/g以下である。BET法による比表面積は後述する実施例の方法により測定する。原料黒鉛の比表面積が上記範囲内にあると、Liイオンの受け入れ性が良好となり、不可逆容量の増加による電池容量の減少を防ぐことができる。
本発明においては、原料黒鉛を高純度化する工程を有していてもよい。原料黒鉛を高純度化する方法としては、硝酸や塩酸を含む酸処理を行う方法が挙げられ、活性の高い硫黄元となりうる硫酸塩を系内に導入することなく黒鉛中の金属、金属化合物、無機化合物などの不純物を除去できるため好ましい。
なお、上記酸処理は、硝酸や塩酸を含む酸を用いればよく、その他の酸、例えば、臭素酸、フッ酸、ホウ酸あるいはヨウ素酸などの無機酸、または、クエン酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、トリクロロ酢酸あるいはトリフルオロ酢酸などの有機酸を適宜混合した酸を用いることもできる。好ましくは濃フッ酸、濃硝酸、濃塩酸であり、より好ましくは濃硝酸、濃塩酸である。なお、本発明において硫酸にて黒鉛を処理してもよいが、本発明の効果や物性を損なわない程度の量と濃度にて用いることとする。
酸を複数用いる場合、例えば、フッ酸、硝酸、塩酸の組み合わせが、上記不純物を効率良く除去できるため好ましい。上記のように酸の種類を組み合わせた場合の混合酸の混合比率は、最も少ないものが通常10質量%以上、好ましくは20質量%以上、より好ましくは、25質量%以上である。上限は、全て等量混合した値である(100質量%/酸の種類で表される)。
酸処理における黒鉛と酸の混合比率(質量比率)は、通常100:10以上、好ましくは100:20以上、より好ましくは、100:30以上、更に好ましくは、100:40以上であり、また100:1000以下、好ましくは100:500以下、より好ましくは100:300以下である。
酸処理は、黒鉛を前記のような酸性溶液に浸漬することにより行われる。浸漬時間は、通常0.5〜48時間、好ましくは1〜40時間、より好ましくは2〜30、更に好ましくは、3〜24時間である。
浸漬温度は、通常25℃以上、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは、60℃以上である。水系の酸を用いる場合の理論上限は水の沸点である100℃である。
酸洗浄により残った酸分を除去し、pHを弱酸性から中性域にまで上昇させる目的で、更に水洗浄を実施することが好ましい。例えば、前記処理黒鉛のpHが、通常3以上、好ましくは3.5以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは4.5以上であれば、水で洗浄することは省略できるし、もし上記範囲でなければ、必要に応じて水で洗浄することが好ましい。洗浄する水は、イオン交換水や蒸留水を用いることが、洗浄効率の向上、不純物混入防止の観点から好ましい。水中のイオン量の指標となる比抵抗が、通常0.1MΩ・cm以上、好ましくは1MΩ・cm以上、より好ましくは、更に好ましくは10MΩ・cm以上、である。25℃での理論上限は18.24MΩ・cmである。
水で洗浄する、つまり前記処理黒鉛と水とを撹拌する時間は、通常0.5〜48時間、好ましくは1〜40時間、より好ましくは2〜30時間、更に好ましくは、3〜24時間
である。
前記処理黒鉛と水との混合割合は、通常100:10以上、好ましくは100:30以上、より好ましくは、100:50以上、更に好ましくは、100:100以上であり、また100:1000以下、好ましくは100:700以下、より好ましくは100:500以下、更に好ましくは100:400以下である。
撹拌温度は、通常25℃以上、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは、60℃以上である。上限は水の沸点である100℃である。また、水洗浄処理をバッチ式にて行う場合は、純水中での攪拌−ろ過の処理工程を複数回繰り返して洗浄行うことが不純物・酸分除去の観点から好ましい。上記処理は、上述した処理黒鉛のpHが上記範囲になるように繰り返し行ってもよい。通常、1回以上、好ましくは2回以上、より好ましくは、3回以上である。
上述したように処理を施すことにより、得られた黒鉛の廃水イオン濃度が、通常200ppm以下、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下、更に好ましくは30ppm以下、また通常1ppm以上、好ましくは2ppm以上、より好ましくは3ppm以上、更に好ましくは4ppm以上となる。
(原料黒鉛と造粒剤の混合)
原料黒鉛と造粒剤を混合する方法として、例えば、原料黒鉛と造粒剤とをミキサーやニーダーを用いて混合する方法や、有機化合物を低粘度希釈溶媒(有機溶剤)に溶解させた造粒剤と原料黒鉛を混合した後に該希釈溶媒(有機溶剤)を除去する方法等が挙げられる。また、続く力学的エネルギーを付与して原料黒鉛を造粒する工程の際に、造粒装置に造粒剤と原料黒鉛とを投入して、原料黒鉛と造粒剤を混合する工程と造粒する工程とを同時に行う方法も挙げられる。
造粒剤の添加量は、原料黒鉛100重量部に対して好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは1重量部以上、更に好ましくは3重量部以上、より更に好ましくは6重量部以上、こと更に好ましくは10重量部以上、特に好ましくは12重量部以上、最も好ましくは15重量部以上であり、好ましくは1000重量部以下、より好ましくは100重量部以下、更に好ましくは80重量部以下、特に好ましくは50重量部以下、最も好ましくは20重量部以下である。上記範囲内にあると、粒子間付着力の低下による球形化度の低下や、装置への原料黒鉛の付着による生産性の低下といった問題が生じ難くなる。
(力学的エネルギーによる造粒)
本発明は、少なくとも衝撃、圧縮、摩擦、及びせん断力のいずれかの力学的エネルギーを付与して原料黒鉛を造粒する造粒工程を有する。この工程に用いる装置としては、例えば、衝撃力を主体に、原料黒鉛の相互作用も含めた圧縮、摩擦、せん断力等の機械的作用を繰り返し与える装置を用いることができる。
具体的には、ケーシング内部に多数のブレードを設置したローターを有し、そのローターが高速回転することによって、内部に導入された原料黒鉛に対して衝撃、圧縮、摩擦、せん断力等の機械的作用を与え、表面処理を行なう装置が好ましい。また、原料黒鉛を循環させることによって機械的作用を繰り返し与える機構を有するものであるのが好ましい。
このような装置としては、例えば、ハイブリダイゼーションシステム(奈良機械製作所社製)、クリプトロン、クリプトロンオーブ(アーステクニカ社製)、CFミル(宇部興産社製)、メカノフュージョンシステム、ノビルタ、ファカルティ(ホソカワミクロン社製)、シータコンポーザ(徳寿工作所社製)、COMPOSI(日本コークス工業製)等
が挙げられる。これらの中で、奈良機械製作所社製のハイブリダイゼーションシステムが好ましい。
前記装置を用いて処理する場合、例えば、回転するローターの周速度は好ましくは30m/秒以上、より好ましくは50m/秒以上、更に好ましくは60m/秒以上、特に好ましくは70m/秒以上、最も好ましくは80m/秒以上であり、好ましくは100m/秒以下である。上記範囲内であると、より効率的に球形化と同時に微粉の母材への付着や母材による内包を行うことができるため好ましい。
また、原料黒鉛に機械的作用を与える処理は、単に原料黒鉛を通過させるだけでも可能であるが、原料黒鉛を30秒以上、装置内を循環又は滞留させて処理するのが好ましく、より好ましくは1分以上、更に好ましくは3分以上、特に好ましくは5分以上、装置内を循環又は滞留させて処理する。
また原料黒鉛を造粒する工程においては、原料黒鉛を、その他の物質存在下で造粒してもよく、その他の物質としては、例えばリチウムと合金化可能な金属或いはその酸化物、非晶質炭素、及び生コークスなどが挙げられる。原料黒鉛以外の物質と併せて造粒することで様々なタイプの粒子構造の非水系二次電池用複合粒子を製造できる。
また、原料黒鉛や造粒剤や上記その他の物質は上記装置内に全量投入してもよく、分けて逐次投入してもよく、連続投入してもよい。また、原料黒鉛や造粒剤や上記その他の物質は上記装置内に同時に投入してもよく、混合して投入してもよく、別々に投入してもよい。原料黒鉛と造粒剤と上記その他の物質を同時に混合してもよいし、原料黒鉛と造粒剤を混合したものに上記その他の物質を添加してもよいし、その他の物質と造粒剤を混合したものに原料黒鉛を添加してもよい。粒子設計に併せて、別途適切なタイミングで添加・混合することができる。
2)1)で得られた造粒黒鉛粒子に、炭素質物前駆体となる有機化合物を混合する工程
(造粒黒鉛粒子と有機化合物の混合)
本発明では、得られた造粒黒鉛粒子に、炭素質物前駆体となる有機化合物を混合する工程を有する。
造粒黒鉛粒子に炭素質物前駆体となる有機化合物を混合する方法に特に制限はないが、例えば、造粒黒鉛粒子と炭素質物前駆体となる有機化合物とを、種々の市販の混合機やニーダー等を用いて混合し、黒鉛粒子に有機化合物が付着した混合物を得る方法が挙げられる。
造粒黒鉛粒子、炭素質物前駆体となる有機化合物、及び必要に応じて溶媒等の原料は、必要に応じて加熱下で混合される。これにより、造粒黒鉛粒子に液状の炭素質物前駆体となる有機化合物が添着された状態となる。この場合、混合機に全原料を仕込んで混合と昇温を同時に行っても良いし、混合機に炭素質物前駆体となる有機化合物以外の成分を仕込んで攪拌状態で予熱し、混合温度まで温度が上がった後に常温又は予熱により溶融状態となった炭素質物前駆体となる有機化合物を添加しても良い。造粒黒鉛粒子と炭素質物前駆体となる有機化合物とが接触する際に、炭素質物前駆体となる有機化合物が冷えて高粘度化することにより被覆形態が不均一となることを防ぐために、混合機に炭素質物前駆体となる有機化合物以外の成分を仕込んで攪拌状態で予熱し、混合温度まで温度が上がった後に、混合温度まで予熱して溶融状態となった炭素質物前駆体となる有機化合物を添加することがより好ましい。
加熱温度は、通常炭素質物前駆体となる有機化合物の軟化点以上であり、好ましくは軟化点より10℃以上高い温度、より好ましくは軟化点より20℃以上高い温度、更に好ま
しくは30℃以上高い温度、特に好ましくは50℃以上高い温度、通常450℃以下、好ましくは250℃以下で行われる。加熱温度が低すぎると、炭素質物前駆体となる有機化合物の粘度が高くなって混合が困難となり被覆形態が不均一となる虞があり、加熱温度が高すぎると炭素質物前駆体となる有機化合物の揮発と重縮合によって混合系の粘度が高くなって混合が困難となり被覆形態が不均一となる虞がある。
混合機は撹拌翼を持つ機種が好ましく、例えば、リボンミキサー、MCプロセッサー、プロシェアミキサー、KRCニーダーなど市販されているものを使用することができる。混合時間は通常1分以上、好ましくは2分以上、より好ましくは5分以上、通常300分以下、好ましくは120分以下、より好ましくは80分以下である。混合時間が短すぎると、被覆形態が不均一となる虞があり、長すぎると生産性の低下やコストの増加をきたす傾向がある。
(炭素質物前駆体となる有機化合物)
<炭素質物前駆体となる有機化合物の種類>
炭素質物前駆体となる有機化合物としては、石炭系原料油、石油系原料油、樹脂由来の有機化合物があげられるが、本発明の条件を満たす炭素質物前駆体となる有機化合物としては、アニリン点が80℃以下の造粒剤との親和性が良く、造粒黒鉛の表面に炭素質物前駆体となる有機化合物を均一に付着させることが可能となるため石油系原料油や石炭系原料油を用いることが好ましく、石炭系原料油を用いることが特に好ましい。
樹脂由来の有機化合物としては、フェノール樹脂、ポリアクリルニトリル、ポリイミドなどの熱硬化性樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコールなどの熱可塑性樹脂、また、セルロース類、澱粉、多糖類などの天然高分子を挙げることができる。
石炭系原料油としては、石炭を原料として製造されるコールタールピッチ、含浸ピッチ、成形ピッチ、石炭液化油等の石炭系重質油、コールタールピッチ中の不溶成分を取り除いた精製コールタールピッチ等を用いることができる。石炭系原料油は、ベンゼン環が多数結合したジベンゾコロネンやペンタセンなどの平板状の芳香族性炭化水素類を多く含んでいる。平板構造の香族性炭化水素は、焼成工程で温度が高まり流動性が増した時に、該平板構造の芳香族炭化水素の面同士が重なり易く、熱による重縮合反応により該平板構造が重なった状態で進行するため、重縮合により高分子化した炭化水素同士の面間に働くファンデルワールス力が強くなり、該高分子化した炭化水素同士の面間距離が小さくなり易く、結果、結晶化の進行度合いが高くなる。
石油系原料油としては、重油の蒸留残渣油、ナフサ分解残渣油、接触分解重質油などが挙げられる。また、分解系重質油を熱処理することで得られるエチレンタールピッチ、FCCデカントオイル、アシュランドピッチなどの熱処理ピッチ等を挙げることができる。石油系原料油は、ベンゼン環が多数結合した平板状の芳香族性炭化水素類も含んではいるが、直鎖状のパラフィン系炭化水素を多数含んでおり、更には、ベンゼン環が多数結合した平板状の芳香族性炭化水素類であっても、メチル基などの側鎖がついているものが多いことや、ベンゼン環の一部がシクロヘキサン環に置換された物も多く含んでいることが知られている。そのため焼成工程で温度が高まり流動性が増し平板構造の芳香族炭化水素の面同士が重なろうとするときに、その面に前記直鎖状のパラフィンが多くあることで、その重なりが阻害される傾向にある。また、平板状の芳香族性炭化水素類にメチル基などの側鎖がついているものは、平板状の芳香族性炭化水素の重なりの邪魔になる傾向にある。また、シクロキサン環も芳香族性炭化水素の重なりを阻害する傾向があるが、シクロキサン環は熱により分解されメチル基などの側鎖になり、更にその重なりを阻害する傾向を示す。これらのことから、前記石炭系原料油は、石油系原料油に比較して、結晶化の進行度
合いが大きい傾向となるため、本発明で用いる炭素質物前駆体となる有機化合物としては好ましい。
具体的には、石油精製の際に発生する、石油系重質油と、製鉄用コークスを製造する際に発生するコールタールを出発原料とする石炭系原料油が好ましく、コールタールを蒸留する際に塔底から抜き出される軟化点0℃以上、好ましくは30〜100℃の軟ピッチ又は中ピッチと称されるピッチがより好ましい。また、本発明の炭素質物前駆体となる有機化合物としては、これらの石炭系原料油に石油系原料油、樹脂由来の有機化合物、その他の溶媒を添加したものでもよい。
また通常、これらの石炭系原料油には軽質のオイル成分が含まれているため、有用成分を取り出すとともに生産性を上げるため蒸留操作を行い、精製して用いることが好ましい。
<炭素質物前駆体となる有機化合物の物性>
炭素質物前駆体となる有機化合物は、炭素質物前駆体となる有機化合物を不活性雰囲気で1300℃で焼成粉砕して得られる炭素質粉末の、学振法によるX線広角回折法の結晶子002面の面間隔(d002)が0.3445nm以下となるものであれば特に制限はないが、好ましい物性として、特に本発明において好ましい有機化合物である石炭系原料油における物性や製造方法を一例として以下に記載するが、本発明の有機化合物がこれに限定されるものではない。
・X線広角回折法の結晶子002面の面間隔(d002)
炭素質物前駆体となる有機化合物の学振法によるX線広角回折法の結晶子002面の面間隔(d002)は、0.3445nm以下、好ましくは0.3444nm以下、好ましくは0.3443nm以下である。
・キノリン不溶分(Qi)、βレジン量
炭素質物前駆体となる有機化合物中のQiは、通常0質量%以上であり、通常30質量%以下、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下、最も好ましくは1質量%以下である。また、炭素質物前駆体となる有機化合物中のβレジン量は、通常1質量%以上、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上、通常80質量%以下、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下、特に好ましくは30質量%以下、最も好ましくは15質量%以下である。
上記範囲内であると、焼成炭素化の際の結晶成長が良好で品質の良い炭素構造を有し、また、前記造粒剤との親和性が高く黒鉛粒子に炭素質物が均一に被覆された非水系二次電複合粒子を得ることができるため、優れた低温入出力特性及び高温保存特性を示す傾向がある。
なお、本発明におけるQi及びβレジン量は、後述する測定方法により求めることができる。
炭素質物前駆体となる有機化合物中に多量のQiが含まれていると、焼成炭素化の過程で結晶成長が不十分となり、品質の良くない炭素となるため、炭素化する前に予めコールタールピッチからQiを除去することが好ましい。
本発明において、Qiを除去する処理方法としては、特に限定されないが、遠心分離法、質量沈降法、濾過法など公知の方法を採用することができるが、残存Qiを少なくするため、濾過法または質量沈降法によりQiを除去することが好ましい。また、この場合、各操作を容易にするために必要に応じて適宜の溶媒を使用してもよい。濾過法によりQi
を除去する際は、圧力が通常0.05〜1.0MPa、好ましくは0.1〜0.5MPaであり、温度が20〜200℃、好ましくは50〜150℃の条件下でおこなう。また、濾過に使用するフィルターの目開きは3ミクロン以下が望ましい。
質量沈降法によりQiを除去する場合は、温度が通常20〜350℃、静置時間が通常10分から10時間の条件下で行う。
このようにして、Qiを除去処理した後のコールタールピッチに含まれるQiは通常0.1質量%以下、好ましくは0.01質量%以下である。また、Qi除去操作後のコールタールピッチに含まれるβは、通常1.0〜15.0質量%であり、好ましくは4.0〜10.0質量%である。
<Qi、βレジン量、測定方法>
溶媒として、キノリン(純度95.0%以上、和光純薬工業社製)、及びトルエン(純
度99.5%以上、和光純薬工業社製)を用意し、これら、各溶媒に対する炭素質物前駆体となる有機化合物中の不溶分について、以下の(1)〜(6)の手順によって測定する。
(1)試料(コールタール、またはコールタールピッチ)2.0gをフラスコにとり、精
秤する(W1)。
(2)試料の入ったフラスコに上記測定溶媒(例えばキノリン)100mlを注ぎ、冷却器を取り付け、110℃のオイルバスに入れる。(トルエンは130℃にする。)液を攪拌しながら30分間加熱し、溶解させる。
(3)あらかじめ精秤しておいた濾紙(W2)を濾過器に取り付ける。(2)の溶液を濾過器に注ぎ、吸引濾過をする。濾過残渣に60℃で加温しておいた測定溶媒100mlを注ぎ溶解・洗浄する。この操作を4回繰り返す
(4)濾過残渣の乗った濾紙を110℃の乾燥器に60分間入れ乾燥させる。
(5)濾過残渣の乗った濾紙を乾燥器から取り出し、デシケータ-内で30分放冷した後
、その重量を精秤する(W3)。
(6)溶媒不溶分を以下の式により計算する。
溶剤不溶分(質量%)=(溶解後残渣重量/試料重量)× 100
=((W3−W2)/W1 )× 100
測定溶媒を上記のアセトン、キノリン、ニトロベンゼン、モルホリン、トルエンと変更し、上記(1)〜(6)の方法で測定した各溶媒の不溶分(質量%)を、それぞれ、アセトン不溶分、キノリン不溶分、ニトロベンゼン不溶分、モルホリン不溶分、トルエン不溶分とする。
各溶媒に対して測定された不溶分をもとに、β、α、及びβ1は以下のように、求めることができる。
β(キノリン可溶トルエン不溶分)=(トルエン不溶分)−(キノリン不溶分)
α(トルエン可溶アセトン不溶分)=(アセトン不溶分)−(トルエン不溶分)
β1(ニトロベンゼン可溶モルホリン不溶分)=(モルホリン不溶分)−(ニトロベンゼン不溶分)
なお、本発明において、各溶媒に対する可溶分とは、100(質量%)より上記の方法で測定した不溶分(質量%)を差し引いた値とする。
・比重
炭素質物前駆体となる有機化合物の比重の下限は通常1.1以上、好ましくは1.14以上、より好ましくは1.17以上、更に好ましくは1.2以上である。上限は通常1.
5以下、好ましくは1.45以下、より好ましくは1.4以下、更に好ましくは1.35以下である。比重が小さすぎると、有機化合物中の直鎖状のパラフィン系炭化水素の量が多い傾向を示し、焼成炭化において結晶性が低くなる傾向となる。比重が大きすぎると、有機化合物の分子量が大きく、高融点物になる傾向ある。高融点すぎると、前記「非水系二次電池用炭素材の製造方法の(1)黒鉛粒子と有機化合物を混合して、黒鉛粒子に有機化合物を付着させる工程」において、黒鉛粒子と有機化合物との混合が不均質となる傾向がある。なお、比重は15℃の値を用いた。
・コンラドソン残炭率
炭素質物前駆体となる有機化合物のコンラドソン残炭率の下限は通常15%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは25%以上である。上限は通常90%以下、好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下である。残炭率が小さすぎるということは、焼成炭化の段階で蒸発や分解で揮散する量が多いということで、一定量の有機化合物由来の炭素質を黒鉛表面に残す場合、より多量の有機化合物が必要となる。また、揮散する有機化合物量が多いと、黒鉛表面に被覆されている有機物由来の残留炭素からガスとして抜ける時に、残留炭素表面や内部を荒らしてしまい、結果、比表面積の大きい水系二次電池用炭素材となってしまう傾向がある。残炭率が大きすぎると、有機化合物の分子量が大きく、高融点物であることが多い。高融点過ぎると、黒鉛粒子と有機化合物との混合が不均質となる傾向がある。
コンラドソン残炭率は、JIS K2270における石油製品残留炭素分試験方法「コンラドソン法」により実施した。有機化合物5gるつぼ採取し、30分加熱し有機化合物中の揮発成分を留去した後、るつぼ中に残った残炭物の質量を、加熱前の有機化合物の質量で除して%で表した。
・軟化点
炭素質物前駆体となる有機化合物の軟化点の上限は通常400℃以下、好ましくは200℃以下、より好ましくは150℃以下、更に好ましくは100℃以下である。有機機化合物の軟化点の下限は通常0℃以上、好ましくは25℃以上、より好ましくは30℃以上、更に好ましくは40℃以上である。上限以上だと、黒鉛粒子と混合する際、均一に混合することが困難になり、且つより高温での混合が必要となり生産性に欠ける場合がある。下限以下であると、有機化合物中に含まれる平板状の芳香族性炭化水素類の量が少なく、直鎖状のパラフィン系炭化水素の量が比較的多く含んでいる傾向となり、焼成炭化で得られる被覆炭素質物の結晶性が低くなり、水系二次電池用炭素材の比表面積が高くなる傾向にある。
・結晶子サイズ(Lc)
有機化合物を1300℃焼成炭化して得られた炭素粉末の学振法によるX線回折で求めた有機化合物の結晶子サイズ(Lc)の下限が通常36nm以上、好ましくは37nm以上、より好ましくは39nm以上であり、上限は通常90nm以下、好ましくは80nm以下、より好ましくは70nm以下である。
結晶子サイズ(Lc)が低すぎるといことは、結晶性の低い炭素で被覆された非水系二次電池用炭素材あるということで、比表面積が高くなってしまう傾向にある。結晶子サイズ(Lc)が高すぎる場合は、黒鉛粒子表面を被覆している炭素質の結晶性が高くなり、黒鉛の結晶性に近いことを表し、被覆炭素質の持つリチウムの入出力速度が低下してしまう傾向にある。
3)2)で得られた混合物を熱処理し、黒鉛粒子と炭素質物を含有する複合粒子を得る工程
本発明では、得られた造粒黒鉛と炭素質物となる有機化合物混合物との混合物を熱処理し、黒鉛粒子と炭素質物を含有する複合粒子を得る工程を有する。
熱処理雰囲気は、非酸化性雰囲気下、好ましくは窒素、アルゴン、二酸化炭素などの流通下において熱処理を行い、炭素質物となる有機化合物を炭素化又は黒鉛化させる。
加熱温度(焼成温度)は混合物の調製に用いた有機化合物により異なるが、通常は800℃以上、好ましくは900℃以上、より好ましくは950℃以上に加熱して十分に炭素化又は黒鉛化させる。加熱温度の上限は有機化合物の炭化物が、混合物中の鱗片状黒鉛の結晶構造と同等の結晶構造に達しない温度であり、通常は高くても3500℃である。加熱温度の上限は3000℃、好ましくは2000℃、より好ましくは1500℃に止めるのが好ましい。
4)その他の工程
上述したような処理を行った後、必要に応じて解砕及び/又は粉砕処理及び/又は分級処理を施すことにより、炭素質物複合黒鉛とすることができる。
形状は任意であるが、平均粒径は、通常2〜50μmであり、5〜35μmが好ましく、特に8〜30μmである。上記粒径範囲となるよう、必要に応じて、解砕及び/又は粉砕及び/又は分級を行う。
また、本発明では、極板の配向性、電解液の浸透性、導電パス等を向上させ、サイクル特性、極版膨れ等の改善を目的とし、前記造粒黒鉛とは異なる炭素材料を混合することができる(以下、前記造粒黒鉛に、前記造粒黒鉛とは異なる炭素材料を混合して得られた炭素材を「混合炭素材」と呼ぶことがある)。
前記炭素材とは異なる炭素材料としては、例えば天然黒鉛、人造黒鉛、炭素材を炭素質物で被覆した被覆黒鉛、非晶質炭素、金属粒子や金属化合物を含有した炭素材の中から選ばれる材料を用いることができる。これらの材料は、何れかを一種を単独で用いても良く、二種以上を任意の組み合わせ及び組成で併用しても良い。
天然黒鉛としては、例えば、高純度化した炭素材や球形化した天然黒鉛を用いることができる。本発明でいう高純度化とは、通常、塩酸、硫酸、硝酸、弗酸などの酸中で処理する、若しくは複数の酸処理工程を組み合わせて行なうことにより、低純度天然黒鉛中に含まれる灰分や金属等を溶解除去する操作のことを意味し、通常、酸処理工程の後に水洗処理等を行ない高純度化処理工程で用いた酸分の除去をする。また、酸処理工程の代わりに2000℃以上の高温で処理することにより、灰分や金属等を蒸発、除去しても構わない。また、高温熱処理時に塩素ガス等ハロゲンガス雰囲気で処理することにより灰分や金属等を除去しても構わない。更にまた、これらの手法を任意に組み合わせて用いても良い。
天然黒鉛の体積基準平均粒径は、通常5μm以上、好ましくは8μm以上、より好ましくは10μm以上、特に好ましくは12μm以上また、通常60μm以下、好ましくは40μm以下、特に好ましくは30μm以下の範囲である。平均粒径がこの範囲であれば、高速充放電特性、工程性が良好となるため好ましい。
天然黒鉛のBET比表面積は、通常1m/g以上、好ましくは2m/g以上、また、通常30m/g以下、好ましくは15m/g以下の範囲である。比表面積がこの範囲であれば、高速充放電特性、工程性が良好となるため好ましい。
また、天然黒鉛のタップ密度は、通常0.6g/cm以上、0.7g/cm以上が好ましく、0.8g/cm以上がより好ましく、0.85g/cm以上が更に好ましい。また、通常1.3g/cm以下、1.2g/cm以下が好ましく、1.1g/cm以下がより好ましい。この範囲であれば高速充放電特性、工程性が良好となるため好ましい。
人造黒鉛としては、炭素材を黒鉛化した粒子等が挙げられ、例えば、単一の黒鉛前駆体粒子を粉状のまま焼成、黒鉛化した粒子や、複数の黒鉛前駆体粒子を成形し焼成、黒鉛化し解砕した造粒粒子などを用いることができる。
人造黒鉛の体積基準平均粒径は、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、また、通常60μm以下、好ましくは40μm、更に好ましくは30μm以下の範囲である。この範囲であれば、極板膨れの抑制や工程性が良好となるため好ましい。
人造黒鉛のBET比表面積は、通常0.5m/g以上、好ましくは1.0m/g以上、また、通常8m/g以下、好ましくは6m/g以下、更に好ましくは4m/g以下の範囲である。この範囲であれば、極板膨れの抑制や工程性が良好となるため好ましい。
また、人造黒鉛のタップ密度は、通常0.6g/cm以上、0.7g/cm以上が好ましく、0.8g/cm以上がより好ましく、0.85g/cm以上が更に好ましい。また、通常1.5g/cm以下、1.4g/cm以下が好ましく、1.3g/cm以下がより好ましい。この範囲であれば、極板膨れの抑制や工程性が良好となるため好ましい。
炭素材を炭素質物で被覆した被覆黒鉛としては、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛に上述した炭素質物の前駆体である有機化合物を被覆、焼成及び/又は黒鉛化した粒子や、天然黒鉛や人造黒鉛に炭素質物をCVDにより被覆した粒子を用いることができる。
被覆黒鉛の体積基準平均粒径は、通常5μm以上、好ましくは8μm以上、より好ましくは10μm以上、特に好ましくは12μm以上また、通常60μm以下、好ましくは40μm以下、特に好ましくは30μm以下の範囲である。平均粒径がこの範囲であれば、高速充放電特性、工程性が良好となるため好ましい。
被覆黒鉛のBET比表面積は、通常1m/g以上、好ましくは2m/g以上、更に好ましくは2.5m/g以上、また、通常20m/g以下、好ましくは10m/g以下、更に好ましくは8m/g以下、特に好ましくは5m/g以下の範囲である。比表面積がこの範囲であれば、高速充放電特性、工程性が良好となるため好ましい。
また、被覆黒鉛のタップ密度は、通常0.6g/cm以上、0.7g/cm以上が好ましく、0.8g/cm以上がより好ましく、0.85g/cm以上が更に好ましい。また、通常1.3g/cm以下、1.2g/cm以下が好ましく、1.1g/cm以下がより好ましい。タップ密度がこの範囲であれば、高速充放電特性、工程性が良好となるため好ましい。
非晶質炭素としては、例えば、バルクメソフェーズを焼成した粒子や、易黒鉛化性有機化合物を不融化処理し、焼成した粒子を用いることができる。
非晶質炭素の体積基準平均粒径は、通常5μm以上、好ましくは12μm以上、また、通常60μm以下、好ましくは40μm以下の範囲である。この範囲であれば、高速充放電特性、工程性が良好となるため好ましい。
非晶質炭素のBET比表面積は、通常1m/g以上、好ましくは2m/g以上、更に好ましくは2.5m/g以上、また、通常8m/g以下、好ましくは6m/g以下、更に好ましくは4m/g以下の範囲である。比表面積がこの範囲であれば、高速充放電特性、工程性が良好となるため好ましい。
また、非晶質炭素のタップ密度は、通常0.6g/cm以上、0.7g/cm以上が好ましく、0.8g/cm以上がより好ましく、0.85g/cm以上が更に好ましい。また、通常1.3g/cm以下、1.2g/cm以下が好ましく、1.1g/cm以下がより好ましい。タップ密度がこの範囲であれば、高速充放電特性、工程性が
良好となるため好ましい。
金属粒子や金属化合物を含有した炭素材としては、例えば、Fe、Co、Sb、Bi、Pb、Ni、Ag、Si、Sn、Al、Zr、Cr、P、S、V、Mn、Nb、Mo、Cu、Zn、Ge、In、Ti等からなる群から選ばれる金属又はその化合物を黒鉛と複合化した材料が挙げられる。用いることができる金属又はその化合物としては、2種以上の金属からなる合金を使用してもよく、金属粒子が、2種以上の金属元素により形成された合金粒子であってもよい。これらの中でも、Si、Sn、As、Sb、Al、Zn及びWからなる群から選ばれる金属又はその化合物が好ましく、中でも好ましくはSi及びSiOxである。この一般式SiOxは、二酸化Si(SiO)と金属Si(Si)とを原料として得られるが、そのxの値は通常0<x<2であり、好ましくは0.2以上、1.8以下、より好ましくは0.4以上、1.6以下、更に好ましくは0.6以上、1.4以下である。この範囲であれば、高容量であると同時に、Liと酸素との結合による不可逆容量を低減させることが可能となる。
金属粒子の体積基準平均粒径は、サイクル寿命の観点から、通常0.005μm以上、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.02μm以上、更に好ましくは0.03μm以上であり、通常10μm以下、好ましくは9μm以下、より好ましくは8μm以下である。平均粒径がこの範囲であると充放電に伴う体積膨張が低減され、充放電容量を維持しつつ、良好なサイクル特性を得ることができる。
金属粒子のBET比表面積は、通常0.5m/g以上120m/g以下、1m/g以上100m/g以下であることが好ましい。比表面積が前記範囲内であると、電池の充放電効率および放電容量が高く、高速充放電においてリチウムの出し入れが速く、レート特性に優れるので好ましい。
造粒黒鉛と造粒黒鉛より結晶性が低い炭素質物を混合するために用いる装置としては、特に制限はないが、例えば、回転型混合機の場合:円筒型混合機、双子円筒型混合機、二重円錐型混合機、正立方型混合機、鍬形混合機、固定型混合機の場合:螺旋型混合機、リボン型混合機、Muller型混合機、Helical Flight型混合機、Pug
mill型混合機、流動化型混合機等を用いることができる。
<非水系二次電池用複合粒子の物性>
以下、本発明の製造方法により得られた複合粒子の好ましい物性について、説明する。・炭素質物の含有量
複合粒子において炭素質物の含有量は、黒鉛粒子に対して、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.3%以上、特に好ましくは0.7質量%以上であり、また前記含有量は、通常30質量%以下、好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下、特に好ましくは10質量%以下、最も好ましくは7質量%以下である。
複合粒子中の炭素質物の含有量が多すぎると、非水系二次電池において高容量を達成する為に十分な圧力で圧延を行った場合に、複合粒子にダメージが与えられて材料破壊が起こり、初期サイクル時充放電不可逆容量の増大、初期効率の低下を招く傾向がある。
一方、含有量が小さすぎると、被覆による効果が得られにくくなる傾向がある。
また、複合粒子中の炭素質物の含有量は、下記式のように材料焼成前後のサンプル質量より算出できる。なおこのとき、黒鉛粒子の焼成前後質量変化はないものとして計算する。
炭素質物の含有量(質量%)=[(w2−w1)/w1]×100
(w1を黒鉛粒子の質量(kg)、w2を複合粒子の質量(kg)とする)
・体積基準平均粒径(平均粒径d50)
複合粒子の体積基準平均粒径(「平均粒径d50」とも記載する)は好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上、更に好ましくは8μm以上、特に好ましくは10μm以上、最も好ましくは11μm以上である。また平均粒径d50は、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、更に好ましくは35μm以下、特に好ましくは31μm以下である。平均粒径d50が小さすぎると、前記複合粒子を用いて得られる非水系二次電池の不可逆容量の増加、初期電池容量の損失を招く傾向があり、一方平均粒径d50が大きすぎるとスラリー塗布における筋引きなどの工程不都合の発生、高電流密度充放電特性の低下、低温入出力特性の低下を招く場合がある。
平均粒径d50は、界面活性剤であるポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(例として、ツィーン20(登録商標)が挙げられる)の0.2質量%水溶液10mLに、複合粒子0.01gを懸濁させ、これを測定サンプルとして市販のレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(例えばHORIBA製LA−920)に導入し、測定サンプルに28kHzの超音波を出力60Wで1分間照射した後、前記測定装置において体積基準のメジアン径として測定したものであると定義する。
・タップ密度
複合粒子のタップ密度は好ましくは0.8g/cm以上、より好ましくは0.85g/cm以上、更に好ましくは0.88g/cm以上、特に好ましくは0.9g/cm以上、最も好ましくは0.93g/cm以上、好ましくは1.3g/cm以下であり、より好ましくは1.2g/cm以下であり、更に好ましくは1.1g/cm以下である。
タップ密度が上記範囲内であると、極板化作製時のスジ引きなどの工程性が良好になり高速充放電特性に優れる。また、粒子内炭素密度が上昇し難いため圧延性も良好で、高密度の負極シートを形成する易くなる傾向にある。
前記タップ密度は、粉体密度測定器を用い、直径1.6cm、体積容量20cmの円筒状タップセルに、目開き300μmの篩を通して本発明の複合粒子を落下させて、セルに満杯に充填した後、ストローク長10mmのタップを1000回行なって、その時の体積と試料の質量から求めた密度として定義する。
・円形度
複合粒子の円形度は、0.88以上、好ましくは0.90以上、より好ましくは0.91以上である。また、円形度は好ましくは1以下、より好ましくは0.98以下、更に好ましくは0.97以下である。円形度が上記範囲内であると、非水系二次電池の高電流密度充放電特性の低下を抑制できる傾向にある。なお、円形度は以下の式で定義され、円形度が1のときに理論的真球となる。
円形度が上記範囲内であると、Liイオン拡散の屈曲度が下がって粒子間空隙中の電解液移動がスムーズになり、且つ適度に複合粒子同士が接触することが可能なため、良好な急速充放電特性、及びサイクル特性を示す傾向がある。
円形度=(粒子投影形状と同じ面積を持つ相当円の周囲長)/(粒子投影形状の実際の周囲長)
円形度の値としては、例えば、フロー式粒子像分析装置(例えば、シスメックスインダストリアル社製FPIA)を用い、試料(複合粒子)約0.2gを、界面活性剤であるポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートの0.2質量%水溶液(約50mL)に分散させ、分散液に28kHzの超音波を出力60Wで1分間照射した後、検出範囲
を0.6〜400μmに指定し、粒径が1.5〜40μmの範囲の粒子について測定した値を用いる。
・X線パラメータ
複合粒子の、学振法によるX線回折で求めた格子面(002面)のd値(層間距離)は、好ましくは0.335nm以上、0.340nm未満である。ここで、d値はより好ましくは0.339nm以下、更に好ましくは0.337nm以下である。d002値が上記範囲内にあると、黒鉛の結晶性が高いため、初期不可逆容量が増加を抑制する傾向にある。ここで、0.335nmは黒鉛の理論値である。
また、学振法によるX線回折で求めた前記複合粒子の結晶子サイズ(Lc)は、好ましくは1.5nm以上、より好ましくは3.0nm以上の範囲である。上記範囲内であると、結晶性が低過ぎない粒子となり、非水系二次電池とした場合に可逆容量が減少し難くなる。なお、Lcの下限は黒鉛の理論値である。
・灰分
複合粒子に含まれる灰分は、複合粒子の全質量に対して、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下であり、更に好ましくは0.1質量%以下である。また、灰分の下限は1ppm以上であることが好ましい。
灰分が上記範囲内であると非水系二次電池とした場合に、充放電時の複合粒子と電解液との反応による電池性能の劣化を無視できる程度に抑えることができる。また、炭素材の製造に多大な時間とエネルギーと汚染防止のための設備とを必要としないため、コストの上昇も抑えられる。
・BET比表面積(SA)
複合粒子のBET法により測定した比表面積(SA)は、好ましくは1m/g以上、より好ましくは2m/g以上、更に好ましくは3m/g以上、特に好ましくは4m/g以上である。また、好ましくは30m/g以下、より好ましくは20m/g以下、更に好ましくは17m/g以下、特に好ましくは15m/g以下である。
比表面積が上記範囲内であると、Liが出入りする部位を十分確保することができるため高速充放電特性出力特性に優れ、活物質の電解液に対する活性も適度抑えることができるため、初期不可逆容量が大きくならず、高容量電池を製造できる傾向にある。
また、複合粒子を使用して負極を形成した場合の、その電解液との反応性の増加を抑制でき、ガス発生を抑えることができるため、好ましい非水系二次電池を提供することができる。
BET比表面積は、表面積計(例えば、島津製作所製比表面積測定装置「ジェミニ2360」)を用い、複合粒子試料に対して窒素流通下100℃、3時間の予備減圧乾燥を行なった後、液体窒素温度まで冷却し、大気圧に対する窒素の相対圧の値が0.3となるように正確に調整した窒素ヘリウム混合ガスを用い、ガス流動法による窒素吸着BET6点法によって測定した値として定義する。
・真密度
複合粒子の真密度は、好ましくは1.9g/cm3以上、より好ましくは2g/cm3以上、更に好ましくは2.1g/cm3以上、特に好ましくは2.2g/cm3以上であり、上限は2.26g/cm3である。上限は黒鉛の理論値である。真密度が上記範囲内であ
ると、炭素の結晶性が低すぎず、非水系二次電池とした場合の、その初期不可逆容量の増大を抑制できる傾向にある。
・アスペクト比
複合粒子の粉末状態でのアスペクト比は、理論上1以上であり、好ましくは1.1以上、より好ましくは1.2以上である。またアスペクト比は好ましくは10以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは5以下である。
アスペクト比が上記範囲内であると、極板化時に複合粒子を含むスラリー(負極形成材料)のスジ引きが起こり難く、均一な塗布面が得られ、非水系二次電池の高電流密度充放電特性の低下を回避する傾向にある。
アスペクト比は、3次元的に観察したときの複合粒子の最長となる径Aと、それと直交する径のうち最短となる径Bとしたとき、A/Bであらわされる。前記複合粒子の観察は、拡大観察ができる走査型電子顕微鏡で行う。厚さ50ミクロン以下の金属の端面に固定した任意の50個の複合粒子を選択し、それぞれについて試料が固定されているステージを回転、傾斜させて、A、Bを測定し、A/Bの平均値を求める。
・ラマンR値
複合粒子のラマンR値は、その値は好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.15以上、特に好ましくは0.2以上である。また、ラマンR値は通常1以下、好ましくは0.6以下、より好ましくは0.5以下、更に好ましくは0.4以下である。
なお、前記ラマンR値は、ラマン分光法で求めたラマンスペクトルにおける1580cm−1付近のピークPの強度Iと、1360cm−1付近のピークPの強度Iとを測定し、その強度比(I/I)として算出されたものと定義する。
なお、本明細書において「1580cm−1付近」とは1580〜1620cm−1の範囲を、「1360cm−1付近」とは1350〜1370cm−1の範囲を指す。
ラマンR値が上記範囲内にあると、複合粒子表面の結晶性は高くなり難く、高密度化した場合に負極板と平行方向に結晶が配向し難くなり、負荷特性の低下を回避する傾向にある。さらに、粒子表面の結晶も乱れ難く、負極の電解液との反応性の増大を抑制し、非水系二次電池の充放電効率の低下やガス発生の増加を回避できる傾向にある。
前記ラマンスペクトルは、ラマン分光器で測定できる。具体的には、測定対象粒子を測定セル内へ自然落下させることで試料充填し、測定セル内にアルゴンイオンレーザー光を照射しながら、測定セルをこのレーザー光と垂直な面内で回転させながら測定を行なう。測定条件は以下の通りである。
アルゴンイオンレーザー光の波長 :514.5nm
試料上のレーザーパワー :25mW
分解能 :4cm−1
測定範囲 :1100cm−1〜1730cm−1
ピーク強度測定、ピーク半値幅測定:バックグラウンド処理、スムージング処理(単純平均によるコンボリューション5ポイント)
本発明に係る製造方法により製造された複合粒子は、様々なタイプの粒子構造の複合粒子を安定して製造できる。代表的な粒子構造としては、原料黒鉛の平均粒径が大きい又は中程度である鱗片黒鉛を折り畳んで製造する複合粒子、平均粒径が小さい鱗片黒鉛を折り畳んで製造する複合粒子、天然黒鉛に人造黒鉛を添着させた複合粒子、黒鉛粒子とSiなどの他の金属粒子とのコンポジットからなる複合粒子、などがあげられる。
このような様々なタイプの粒子構造の複合粒子を安定して製造できることの一例として、全固形原料重量に対する複合粒子重量比で表される歩留まり(複合粒子重量/全固形原料重量)が通常60%以上であり、80%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。
<非水系二次電池用負極>
本発明の製造方法により製造された複合粒子を用いた非水系二次電池用負極(以下適宜「電極シート」ともいう。)は、集電体と、集電体上に形成された負極活物質層とを備えると共に、活物質層は少なくとも本発明の製造方法により製造された複合粒子を含有することを特徴とする。更に好ましくはバインダを含有する。
バインダとしては、分子内にオレフィン性不飽和結合を有するものを用いる。その種類は特に制限されないが、具体例としては、スチレン−ブタジエンゴム、スチレン・イソプレン・スチレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体などが挙げられる。このようなオレフィン性不飽和結合を有するバインダを用いることにより、活物質層の電解液に対する膨潤性を低減することができる。中でも入手の容易性から、スチレン−ブタジエンゴムが好ましい。
このようなオレフィン性不飽和結合を有するバインダと、前述の活物質とを組み合わせて用いることにより、負極板の強度を高くすることができる。負極の強度が高いと、充放電による負極の劣化が抑制され、サイクル寿命を長くすることができる。また、本発明に係る負極では、活物質層と集電体との接着強度が高いので、活物質層中のバインダの含有量を低減させても、負極を捲回して電池を製造する際に、集電体から活物質層が剥離するという課題も起こらないと推察される。
分子内にオレフィン性不飽和結合を有するバインダとしては、その分子量が大きいものか、或いは、不飽和結合の割合が大きいものが望ましい。具体的に、分子量が大きいバインダの場合には、その重量平均分子量が好ましくは1万以上、より好ましくは5万以上、また、好ましくは100万以下、より好ましくは30万以下の範囲にあるものが望ましい。また、不飽和結合の割合が大きいバインダの場合には、全バインダの1g当たりのオレフィン性不飽和結合のモル数が、好ましくは2.5×10−7モル以上、より好ましくは8×10−7モル以上、また、好ましくは1×10−6モル以下、より好ましくは5×10−6モル以下の範囲にあるものが望ましい。バインダとしては、これらの分子量に関する規定と不飽和結合の割合に関する規定のうち、少なくとも何れか一方を満たしていればよいが、両方の規定を同時に満たすものがより好ましい。オレフィン性不飽和結合を有するバインダの分子量が上記範囲内であると機械的強度と可撓性に優れる。
また、オレフィン性不飽和結合を有するバインダは、その不飽和度が、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上、更に好ましくは40%以上、また、好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下である。なお、不飽和度とは、ポリマーの繰り返し単位に対する二重結合の割合(%)を表す。
本発明においては、オレフィン性不飽和結合を有さないバインダも、本発明の効果が失われない範囲において、上述のオレフィン性不飽和結合を有するバインダと併用することができる。オレフィン性不飽和結合を有するバインダに対する、オレフィン性不飽和結合を有さないバインダの混合比率は、好ましくは150質量%以下、より好ましくは120質量%以下の範囲である。
オレフィン性不飽和結合を有さないバインダを併用することにより、塗布性を向上することができるが、併用量が多すぎると活物質層の強度が低下する。
オレフィン性不飽和結合を有さないバインダの例としては、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、澱粉、カラギナン、プルラン、グアーガム、ザンサンガム(キサンタンガム)等の増粘多糖類、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル類、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のビニルアルコール類、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸等のポリ酸、或いはこれらポリマーの金属塩、ポリフッ化ビニリデン等の含フッ素ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのアルカン系ポリマー及びこれらの共重合体などが挙げられる。
本発明に係る複合粒子は、上述のオレフィン性不飽和結合を有するバインダとを組み合わせて用いた場合、活物質層に用いるバインダの比率を従来に比べて低減することができる。具体的に、本発明に係る複合粒子と、バインダ(これは場合によっては、上述のように不飽和結合を有するバインダと、不飽和結合を有さないバインダとの混合物であってもよい。)との質量比率は、それぞれの乾燥質量比で、好ましくは90/10以上、より好ましくは95/5以上であり、好ましくは99.9/0.1以下、より好ましくは99.5/0.5以下の範囲である。バインダの割合が上記範囲内であると容量の減少や抵抗増大を抑制でき、さらに極板強度にも優れる。
負極は、上述の複合粒子とバインダとを分散媒に分散させてスラリーとし、これを集電体に塗布することにより形成される。分散媒としては、アルコールなどの有機溶媒や、水を用いることができる。このスラリーには更に、所望により導電剤を加えてもよい。導電剤としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラックなどのカーボンブラック、平均粒径1μm以下のCu、Ni又はこれらの合金からなる微粉末などが挙げられる。導電剤の添加量は、本発明の炭素材に対して好ましくは10質量%以下程度である。
スラリーを塗布する集電体としては、従来公知のものを用いることができる。具体的には、圧延銅箔、電解銅箔、ステンレス箔等の金属薄膜が挙げられる。集電体の厚さは、好ましくは4μm以上、より好ましくは6μm以上であり、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下である。
スラリーを集電体上に塗布した後、好ましくは60℃以上、より好ましくは80℃以上、また、好ましくは200℃以下、より好ましくは195℃以下の温度で、乾燥空気又は不活性雰囲気下で乾燥し、活物性層を形成する。
スラリーを塗布、乾燥して得られる活物質層の厚さは、好ましくは5μm以上、より好ましくは20μm以上、更に好ましくは30μm以上、また、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下、更に好ましくは75μm以下である。活物質層の厚みが上記範囲内であると、活物質の粒径との兼ね合いから負極としての実用性に優れ、高密度の電流値に対する十分なLiの吸蔵・放出の機能を得ることができる。
活物質層における複合粒子の密度は、用途により異なるが、容量を重視する用途では、好ましくは1.55g/cm3以上、より好ましくは1.6g/cm3以上、更に好ましくは1.65g/cm3以上、特に好ましくは1.7g/cm3以上である。また、好ましくは1.9g/cm以下である。密度が上記範囲内であると、単位体積あたりの電池の容量は充分確保でき、レート特性も低下し難くなる。
以上説明した複合粒子を用いて非水系二次電池用負極を作製する場合、その手法や他の材料の選択については、特に制限されない。また、この負極を用いてリチウムイオン二次電池を作製する場合も、リチウムイオン二次電池を構成する正極、電解液等の電池構成上必要な部材の選択については特に制限されない。以下、本発明の複合粒子を用いたリチウムイオン二次電池用負極及びリチウムイオン二次電池の詳細を例示するが、使用し得る材料や作製の方法等は以下の具体例に限定されるものではない。
<非水系二次電池>
非水系二次電池、特にリチウムイオン二次電池の基本的構成は、従来公知のリチウムイオン二次電池と同様であり、通常、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極、並びに電解質を備える。負極は、上述した本発明の製造方法により製造される複合粒子を用いてなる。
正極は、正極活物質及びバインダを含有する正極活物質層を、集電体上に形成したものである。
正極活物質としては、リチウムイオンなどのアルカリ金属カチオンを充放電時に吸蔵、放出できる金属カルコゲン化合物などが挙げられる。金属カルコゲン化合物としては、バナジウムの酸化物、モリブデンの酸化物、マンガンの酸化物、クロムの酸化物、チタンの酸化物、タングステンの酸化物などの遷移金属酸化物、バナジウムの硫化物、モリブデンの硫化物、チタンの硫化物、CuSなどの遷移金属硫化物、NiPS、FePS等の遷移金属のリン−硫黄化合物、VSe、NbSeなどの遷移金属のセレン化合物、Fe0.250.75、Na0.1CrSなどの遷移金属の複合酸化物、LiCoS、LiNiSなどの遷移金属の複合硫化物等が挙げられる。
これらの中でも、V、V13、VO、Cr、MnO、TiO、MoV、LiCoO、LiNiO、LiMn、TiS、V、Cr0.250.75、Cr0.50.5などが好ましく、特に好ましいのはLiCoO、LiNiO、LiMnや、これらの遷移金属の一部を他の金属で置換したリチウム遷移金属複合酸化物である。これらの正極活物質は、単独で用いても複数を混合して用いてもよい。
正極活物質を結着するバインダとしては、公知のものを任意に選択して用いることができる。例としては、シリケート、水ガラス等の無機化合物や、テフロン(登録商標)、ポリフッ化ビニリデン等の不飽和結合を有さない樹脂などが挙げられる。これらの中でも好ましいのは、不飽和結合を有さない樹脂である。正極活物質を結着する樹脂として不飽和結合を有する樹脂を用いると酸化反応時に分解される恐れがある。これらの樹脂の重量平均分子量は通常1万以上、好ましくは10万以上、また、通常300万以下、好ましくは100万以下の範囲である。
正極活物質層中には、電極の導電性を向上させるために、導電材を含有させてもよい。導電剤としては、活物質に適量混合して導電性を付与できるものであれば特に制限はないが、通常、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛などの炭素粉末、各種の金属の繊維、粉末、箔などが挙げられる。
正極板は、前記したような負極の製造と同様の手法で、正極活物質やバインダを溶剤でスラリー化し、集電体上に塗布、乾燥することにより形成する。正極の集電体としては、アルミニウム、ニッケル、ステンレススチール(SUS)などが用いられるが、何ら限定されない。
電解質としては、非水系溶媒にリチウム塩を溶解させた非水系電解液や、この非水系電解液を有機高分子化合物等によりゲル状、ゴム状、固体シート状にしたものなどが用いられる。
非水系電解液に使用される非水系溶媒は特に制限されず、従来から非水系電解液の溶媒として提案されている公知の非水系溶媒の中から、適宜選択して用いることができる。例えば、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の鎖状カーボネート類;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等の環状カーボネート類;1,2−ジメトキシエタン等の鎖状エーテル類;テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、スルホラン、1,3−ジオキソラン等の環状エーテル類;ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル等の鎖状エステル類;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状エステル類などが挙げられる。
これらの非水系溶媒は、何れか一種を単独で用いても良く、二種以上を混合して用いてもよい。混合溶媒の場合は、環状カーボネートと鎖状カーボネートを含む混合溶媒の組合
せが好ましく、環状カーボネートが、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートの混合溶媒であることが、低温でも高いイオン電導度を発現でき、低温充電不可特性が向上するという点で特に好ましい。中でもプロピレンカーボネートが非水系溶媒全体に対し、2質量%以上80質量%以下の範囲が好ましく、5質量%以上70質量%以下の範囲がより好ましく、10質量%以上60質量%以下の範囲がさらに好ましい。プロピレンカーボネートの割合が上記より低いと低温でのイオン電導度が低下し、プロピレンカーボネートの割合が上記より高いと、黒鉛系電極を用いた場合にはリチウムイオンに溶媒和したプロピレンカーボネートが黒鉛相間へ共挿入することにより黒鉛系負極活物質の層間剥離劣化がおこり、十分な容量が得られなくなる問題がある。
非水系電解液に使用されるリチウム塩も特に制限されず、この用途に用い得ることが知られている公知のリチウム塩の中から、適宜選択して用いることができる。例えば、LiCl、LiBrなどのハロゲン化物、LiClO、LiBrO、LiClOなどの過ハロゲン酸塩、LiPF、LiBF、LiAsFなどの無機フッ化物塩などの無機リチウム塩、LiCFSO、LiCSOなどのパーフルオロアルカンスルホン酸塩、Liトリフルオロスルフォンイミド((CFSONLi)などのパーフルオロアルカンスルホン酸イミド塩などの含フッ素有機リチウム塩などが挙げられ、この中でもLiClO、LiPF、LiBFが好ましい。
リチウム塩は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。非水系電解液中におけるリチウム塩の濃度は、通常0.5mol/L以上、2.0mol/L以下の範囲である。
また、上述の非水系電解液に有機高分子化合物を含ませ、ゲル状、ゴム状、或いは固体シート状にして使用する場合、有機高分子化合物の具体例としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル系高分子化合物;ポリエーテル系高分子化合物の架橋体高分子;ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラールなどのビニルアルコール系高分子化合物;ビニルアルコール系高分子化合物の不溶化物;ポリエピクロルヒドリン;ポリフォスファゼン;ポリシロキサン;ポリビニルピロリドン、ポリビニリデンカーボネート、ポリアクリロニトリルなどのビニル系高分子化合物;ポリ(ω−メトキシオリゴオキシエチレンメタクリレート)、ポリ(ω−メトキシオリゴオキシエチレンメタクリレート−co−メチルメタクリレート)、ポリ(ヘキサフルオロプロピレン−フッ化ビニリデン)等のポリマー共重合体などが挙げられる。
上述の非水系電解液は、更に被膜形成剤を含んでいてもよい。被膜形成剤の具体例としては、ビニレンカーボネート、ビニルエチルカーボネート、メチルフェニルカーボネートなどのカーボネート化合物、エチレンサルファイド、プロピレンサルファイドなどのアルケンサルファイド;1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトンなどのスルトン化合物;マレイン酸無水物、コハク酸無水物などの酸無水物などが挙げられる。更に、ジフェニルエーテル、シクロヘキシルベンゼン等の過充電防止剤が添加されていてもよい。
上記添加剤を用いる場合、その含有量は通常10質量%以下、中でも8質量%以下、更には5質量%以下、特に2質量%以下の範囲が好ましい。上記添加剤の含有量が多過ぎると、初期不可逆容量の増加や低温特性、レート特性の低下等、他の電池特性に悪影響を及ぼすおそれがある。
また、電解質として、リチウムイオン等のアルカリ金属カチオンの導電体である高分子固体電解質を用いることもできる。高分子固体電解質としては、前述のポリエーテル系高分子化合物にリチウムの塩を溶解させたものや、ポリエーテルの末端水酸基がアルコキシドに置換されているポリマーなどが挙げられる。
正極と負極との間には通常、電極間の短絡を防止するために、多孔膜や不織布などの多
孔性のセパレータを介在させる。この場合、非水系電解液は、多孔性のセパレータに含浸させて用いる。セパレータの材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエーテルスルホンなどが用いられ、好ましくはポリオレフィンである。
非水系二次電池の形態は特に制限されない。例としては、シート電極及びセパレータをスパイラル状にしたシリンダータイプ、ペレット電極及びセパレータを組み合わせたインサイドアウト構造のシリンダータイプ、ペレット電極及びセパレータを積層したコインタイプ等が挙げられる。また、これらの形態の電池を任意の外装ケースに収めることにより、コイン型、円筒型、角型等の任意の形状にして用いることができる。
非水系二次電池を組み立てる手順も特に制限されず、電池の構造に応じて適切な手順で組み立てればよいが、例を挙げると、外装ケース上に負極を乗せ、その上に電解液とセパレータを設け、更に負極と対向するように正極を乗せて、ガスケット、封口板と共にかしめて電池にすることができる。
次に実施例により本発明の具体的態様を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
実施例において、製造した負極材の物性や特性は以下の方法により測定した。
<d50>
界面活性剤であるポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(例として、ツィーン20(登録商標)が挙げられる)の0.2質量%水溶液10mLに、負極材0.01gを懸濁させ、これを測定サンプルとして市販のレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(例えばHORIBA製LA−920)に導入し、測定サンプルに28kHzの超音波を出力60Wで1分間照射した後、前記測定装置において体積基準のメジアン径として測定した。
<タップ密度>
粉体密度測定器を用い、直径1.6cm、体積容量20cmの円筒状タップセルに、目開き300μmの篩を通して負極材を落下させて、セルに満杯に充填した後、ストローク長10mmのタップを1000回行なって、その時の体積と試料の質量から求めた密度として定義した。
<比表面積SA>
比表面積SAは、表面積計(島津製作所製比表面積測定装置「ジェミニ2360」)を用い、負極材試料に対して窒素流通下100℃、3時間の予備減圧乾燥を行なった後、液体窒素温度まで冷却し、大気圧に対する窒素の相対圧の値が0.3となるように正確に調整した窒素ヘリウム混合ガスを用い、ガス流動法による窒素吸着BET6点法によって測定した値として定義した。
<電極シートの作製>
実施例又は比較例の負極材を用い、活物質層密度1.60±0.03g/cm、又は1.35±0.03g/cmの活物質層を有する極板を作製した。具体的には、負極材50.00±0.02gに、1質量%カルボキシメチルセルロースナトリウム塩水溶液を50.00±0.02g(固形分換算で0.500g)、及び重量平均分子量27万のスチレン・ブタジエンゴム水性ディスパージョン1.00±0.05g(固形分換算で0.5g)を、キーエンス製ハイブリッドミキサーで5分間撹拌し、30秒脱泡してスラリーを得た。
このスラリーを、集電体である厚さ10μmの銅箔上に、負極材料が12.00±0.3mg/cm、又は6.00±0.3mg/cm付着するように、伊藤忠マシニング製小型ダイコーターを用いて幅10cmに塗布し、直径20cmのローラを用いてロールプレスして、活物質層の密度が1.60±0.03g/cm、又は1.35±0.03g/cmになるよう調整し電極シートを得た。
<非水系二次電池(2016コイン型電池)の作製>
上記方法で作製した、負極材料が12.00±0.3mg/cm付着し、活物質層の密度が1.60±0.03g/cmとなるように調整した電極シートを直径12.5mmの円盤状に打ち抜き、リチウム金属箔を直径14mmの円板状に打ち抜き対極とした。両極の間には、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートの混合溶媒(容積比=3:7)に、LiPFを1mol/Lになるように溶解させた電解液を含浸させたセパレータ(多孔性ポリエチレンフィルム製)を置き、2016コイン型電池をそれぞれ作製した。
<非水系二次電池(ラミネート型電池)の作製方法>
上記方法で作製した、負極材料が6.00±0.3mg/cm付着し、活物質層の密度が1.35±0.03g/cmとなるように調整した電極シートを4cm×3cmに切り出し負極とし、NMCからなる正極を同面積で切り出し、負極と正極の間にはセパレータ(多孔性ポリエチレンフィルム製)を置き、組み合わせた。エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジメチルカーボネートの混合溶媒(容積比=3:3:4)に、LiPFを1.2mol/Lになるように溶解させた電解液を200μl注液してラミネート型電池を作製した。
<放電容量の測定方法>
上述の方法で作製した非水系二次電池(2016コイン型電池)を用いて、下記の測定方法で電池充放電時の容量を測定した。
0.05Cの電流密度でリチウム対極に対して5mVまで充電し、さらに5mVの一定電圧で電流密度が0.005Cになるまで充電し、負極中にリチウムをドープした後、0.1Cの電流密度でリチウム対極に対して1.5Vまで放電を行った。このときの放電容量を本材料の放電容量とした。
<低温出力特性>
上記非水電解液二次電池の作製法により作製したラミネート型非水電解液二次電池を用いて、下記の測定方法で低温出力特性を測定した。
充放電サイクルを経ていない非水電解液二次電池に対して、25℃で電圧範囲4.1V〜3.0V、電流値0.2C(1時間率の放電容量による定格容量を1時間で放電する電流値を1Cとする、以下同様)にて3サイクル、電圧範囲4.2V〜3.0V、電流値0.2Cにて(充電時には4.2Vにて定電圧充電をさらに2.5時間実施)2サイクル、初期充放電を行った。
さらに、SOC50%まで電流値0.2Cで充電を行った後、−30℃の低温環境下で、1/8C、1/4C、1/2C、1.5C、2Cの各電流値で2秒間定電流放電させ、各々の条件の放電における2秒後の電池電圧の降下を測定し、それらの測定値から充電上限電圧を3Vとした際に、2秒間に流すことのできる電流値Iを算出し、3×I(W)という式で計算される値をそれぞれの電池の低温出力特性とした。
<高温保存特性>
上記非水電解液二次電池の作製法により作製したラミネート型非水電解液二次電池を用いて、下記の測定方法で高温保存特性を測定した。
充放電サイクルを経ていない非水電解液二次電池に対して、25℃で電圧範囲4.1V
〜3.0V、電流値0.2C(1時間率の放電容量による定格容量を1時間で放電する電流値を1Cとする、以下同様)にて3サイクル、電圧範囲4.2V〜3.0V、電流値0.2Cにて(充電時には4.2Vにて定電圧充電をさらに2.5時間実施)2サイクル、初期充放電を行った。
さらに、SOC80%まで電流値0.2Cで充電を行った後、60℃の高温環境下で2週間保存した。その後、25℃にて0.2Cで3.0Vまで放電を行った後、さらに0.2Cで4.2Vまで充電と0.2Cで3.0Vまで放電を行ったときの放電容量A(mAh)と初期充放電5サイクル目の放電容量B(mAh)の比(%)の値を高温保存特性とした。(高温保存特性(%)=A(mAh)/B(mAh)×100)
(実施例1)
d50が100μmの鱗片状天然黒鉛を乾式旋回流式粉砕機により粉砕し、d50が8.1μm、Tapが0.39g/cm、水分量0.08質量%の鱗片状天然黒鉛を得た。得られた鱗片状天然黒鉛100gに造粒剤として芳香族系オイル(1)(アニリン点29
℃、分子内にナフタレン環構造を含有)を12g添加して撹拌混合した後、得られたサンプルをハンマーミル(IKA社製MF10)で回転数3000rpmにて解砕混合し、造粒剤が均一に添着した鱗片状天然黒鉛を得た。得られたサンプルを、奈良機械製作所製ハイブリダイゼーションシステムNHS−1型にて、ローター周速度85m/秒で10分間の機械的作用による球形化処理を行い、造粒黒鉛粒子を得た。
得られた造粒黒鉛粒子と原料黒鉛より結晶性が低い炭素質物前駆体としてコールタールピッチを120℃、20分間ミキサーで混合し、不活性ガス中で1300℃、1時間の熱処理を施した後、焼成物を解砕・分級処理することにより、造粒黒鉛粒子と原料黒鉛より結晶性が低い炭素質とが複合化した複層構造黒鉛粒子を得た。焼成収率から、得られた複層構造黒鉛粒子において、造粒黒鉛粒子と原料黒鉛より結晶性が低い炭素質物との質量比率(造粒黒鉛粒子:非晶質炭素)は1:0.065であることが確認された。得られたサンプルのd50、SA、Tap、放電容量、低温出力特性、高温保存特性を測定した。結果を表1に示す。
(実施例2)
造粒黒鉛粒子と原料黒鉛より結晶性が低い炭素質物との質量比率(造粒黒鉛粒子:非晶質炭素)は1:0.08とした以外は実施例1と同様の方法にて複層構造黒鉛粒子を得た。実施例1同様の測定を行った結果を表1に示す。
(実施例3)
芳香族系オイル(2)(アニリン点無し、混合アニリン点15℃、分子内にベンゼン環構
造を含有)を造粒剤として用いた以外は実施例2と同様の方法にて複層構造黒鉛粒子を得た。実施例1同様の測定を行った結果を表1に示す。
(比較例1)
パラフィン系オイル(アニリン点>100℃)を造粒剤として用いた以外は実施例1と同様の方法にて複層構造黒鉛粒子を得た。実施例1同様の測定を行った結果を表1に示す。
(比較例2)
造粒黒鉛粒子と原料黒鉛より結晶性が低い炭素質物との質量比率(造粒黒鉛粒子:非晶質炭素)は1:0.08とした以外は比較例1と同様の方法にて複層構造黒鉛粒子を得た。実施例1同様の測定を行った結果を表1に示す。
(比較例3)
造粒黒鉛粒子と原料黒鉛より結晶性が低い炭素質物との質量比率(造粒黒鉛粒子:非晶質炭素)は1:0.1とした以外は比較例1と同様の方法にて複層構造黒鉛粒子を得た。実施例1同様の測定を行った結果を表1に示す。
(比較例4)
d50が100μmの鱗片状天然黒鉛を、そのまま奈良機械製作所製ハイブリダイゼーションシステムNHS−1型にて、ローター周速度85m/秒で10分間の機械的作用による球形化処理を行った。得られたサンプルには母材に付着、及び球形化粒子に内包されていない状態の鱗片黒鉛状微粉が多く存在していることが確認された。このサンプルを分級し、上記鱗片黒鉛状微粉を除去し、d50が10.8μm、Tap密度が0.88g/cmの球形化黒鉛を得た。得られた球形化黒鉛と原料黒鉛より結晶性が低い炭素質物前駆体としてコールタールピッチを120℃、20分間ミキサーで混合し、不活性ガス中で1300℃、1時間の熱処理を施した後、焼成物を解砕・分級処理することにより、造粒黒鉛粒子と原料黒鉛より結晶性が低い炭素質とが複合化した複層構造黒鉛粒子を得た。焼成収率から、得られた複層構造黒鉛粒子において、造粒黒鉛粒子と原料黒鉛より結晶性が低い炭素質物との質量比率(造粒黒鉛粒子:非晶質炭素)は1:0.065であることが確認された。得られたサンプルのd50、SA、Tap、放電容量、低温出力特性、高温保存特性を測定した。結果を表1に示す。
Figure 2017010651
実施例1〜3は比較例1〜4と比較して低温出力特性及び高温保存特性が十分優れることが確認できた。
本発明の製造方法によれば、その工程数が少ない故、安定して効率的且つ安価に黒鉛粒子を製造することができる。また、様々なタイプの粒子構造の非水系二次電池用黒鉛粒子を、安定して製造できる。

Claims (10)

  1. 黒鉛粒子と炭素質物を含有する非水系二次電池用複合粒子の製造方法であって、下記1)〜3)の工程を有することを特徴とする非水系二次電池用複合粒子の製造方法。
    1)アニリン点が80℃以下もしくは存在しない造粒剤の存在下で、少なくとも衝撃、圧縮、摩擦、及びせん断力のいずれかの力学的エネルギーを付与して原料黒鉛を造粒する工程
    2)1)で得られた造粒黒鉛粒子に、炭素質物前駆体となる有機化合物を混合する工程
    3)2)で得られた混合物を熱処理し、黒鉛粒子と炭素質物を含有する複合粒子を得る工程
  2. 該造粒剤が、芳香環を有する有機化合物であり、且つ25℃で液体であることを特徴とする請求項1に記載の非水系二次電池用複合粒子の製造方法
  3. 該炭素質物前駆体となる有機化合物が芳香環を有する有機化合物を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の非水系二次電池用複合粒子の製造方法。
  4. 該炭素質物前駆体となる有機化合物が石炭系原料油であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の非水系二次電池用複合粒子の製造方法
  5. 前記原料黒鉛粒子は、鱗片状、鱗状、及び塊状の天然黒鉛からなる群から選択される少なくとも1つを含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の非水系二次電池用複合粒子の製造方法。
  6. 前記原料黒鉛は、d002が0.34nm以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の非水系二次電池用複合粒子の製造方法。
  7. 前記造粒工程が、0℃以上250℃以下の雰囲気下で行われることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の非水系二次電池用複合粒子の製造方法。
  8. 前記造粒工程は、ケーシング内で高速回転する回転部材を備え、ケーシング内に複数のブレードを設置したローターを有する装置において、該ローターが高速回転することによって、内部に導入された黒鉛に対して衝撃、圧縮、摩擦、及びせん断力のいずれかを与えることで造粒することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の非水系二次電池用複合粒子の製造方法。
  9. 請求項1乃至8のいずれか1項に記載の製造方法により製造された非水系二次電池用複合粒子。
  10. リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極、並びに、電解質を備えると共に、該負極が集電体と該集電体上に形成された負極活物質層とを備えると共に、該負極活物質層が請求項9に記載の非水系二次電池用複合粒子を備える負極であることを特徴とする非水系二次電池。
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