JP2017010651A - 非水系二次電池用複合粒子の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
非水系二次電池については、負極材として黒鉛等の炭素材料を使用することが知られている。そして非水系二次電池の中でもリチウムイオン二次電池用の負極材としては、リチウム吸蔵の理論容量である372mAh/gに近い容量を得ることができ、さらに、コスト・耐久性にも優れることから、黒鉛化度の大きい黒鉛が負極材として好ましいとされている。
ことによる黒鉛粒子同士の付着力は小さく、微粉発生の抑制による電池特性の改善効果は不十分である。一方でトルエン溶媒に溶解させた樹脂バインダ溶液を添加して球形化する技術も一例として開示されているが、溶媒の引火点が低いため球形化処理中の温度上昇により引火点以上の温度となり、製造時に爆発や火災の危険を伴うため、さらなる改善が必要である。さらに、例示されている樹脂バインダーは炭素質物前駆体となる有機物との親和性が考慮されていないため炭素質物を均一に被覆できず、得られた球形化黒鉛粒子と炭素質物を含有する複合粒子の原料として用いた場合にも電池特性の改善効果は不十分であった。
1)アニリン点が80℃以下もしくは存在しない造粒剤の存在下で、少なくとも衝撃、圧縮、摩擦、及びせん断力のいずれかの力学的エネルギーを付与して原料黒鉛を造粒する工程
2)1)で得られた造粒黒鉛粒子に、炭素質物前駆体となる有機化合物を混合する工程
3)2)で得られた混合物を熱処理し、黒鉛粒子と炭素質物を含有する複合粒子を得る工程
を含む製造方法により、上記課題を解決するに至った。
1)アニリン点が80℃以下もしくは存在しない造粒剤の存在下で、少なくとも衝撃、圧縮、摩擦、及びせん断力のいずれかの力学的エネルギーを付与して原料黒鉛を造粒する工程
2)1)で得られた造粒黒鉛粒子に、炭素質物前駆体となる有機化合物を混合する工程
3)2)で得られた混合物を熱処理し、黒鉛粒子と炭素質物を含有する複合粒子を得る工程
また、その他の要旨は、上記の製造方法により製造された非水系二次電池用複合粒子。
また、その他の要旨は、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極、並びに、電解質を備えると共に、該負極が集電体と該集電体上に形成された負極活物質層とを備えると共に、該負極活物質層が上記の複合粒子を含有することを特徴とする非水系二次電池に存する。
た非水系二次電池用複合粒子を得ることができ、それを非水系二次電池用の負極活物質として用いることにより、高容量で低温入出力特性や高温保存特性に優れた非水系二次電池を提供することができる。
造粒剤を添加することにより、複数の粒子の間に液体が付着して液橋(粒子間に、液体によって橋が架かったような状況をいう。)が形成されると、液橋内の毛管負圧と液の表面張力によって生じる引力が粒子間に液架橋付着力として働き、原料黒鉛間の液架橋付着力が増大し、原料黒鉛同士がより強固に付着することが可能となる。また、造粒剤が潤滑材として作用することにより原料黒鉛の微粉化が低減される。さらに、造粒工程の際に発生した微粉の多くは、上述の液架橋付着力増大の効果により、原料黒鉛と付着するため、微粉として独立した粒子が低減される。これらの結果、原料黒鉛同士がより強固に付着した、粒径が適度に増大し、球形化度が高く、微粉が少ない球形化黒鉛粒子を製造することが可能となる。
これらの結果、本発明により得られた複合粒子を非水系二次電池に用いることで、高容量で優れた入出力特性や高温保存特性を得ることが出来たと考えられる。
1)アニリン点が80℃以下もしくは存在しない造粒剤の存在下で、少なくとも衝撃、圧縮、摩擦、及びせん断力のいずれかの力学的エネルギーを付与して原料黒鉛を造粒する工程
2)1)で得られた造粒黒鉛粒子に、炭素質物前駆体となる有機化合物を混合する工程
3)2)で得られた混合物を熱処理し、黒鉛粒子と炭素質物を含有する複合粒子を得る工
程
上記工程を有すれば、必要に応じて別の工程を更に有していてもよい。別の工程は単独で実施してもよいし、複数工程を同時に実施してもよい。
以下、これら工程について説明する。
本発明で用いる造粒剤は、アニリン点が80℃以下もしくは存在しないものであれば特に制限はない。アニリン点が低いと有機化合物に対する溶解力が強くなるため、上記要件を満たす造粒剤を用いることで炭素質物前駆体となる有機化合物との親和性が良好になり、本工程で得られた造粒黒鉛粒子と炭素質物前駆体となる有機化合物を混合する際に、造粒黒鉛の表面、及び内部空隙に均一に有機化合物を添着させることが可能となる。特に、アニリン点が高い造粒剤では親和性が低く溶解が難しい芳香族化合物を含む有機化合物に対しても、本発明で用いるアニリン点が80℃以下もしくは存在しない造粒剤は親和性が高く相溶性を有するため、芳香族化合物を含む有機化合物を炭素質物前駆体として用いた場合においても、本工程で得られた造粒黒鉛粒子と炭素質物前駆体となる有機化合物を混合する際に、造粒黒鉛の表面、及び内部空隙に均一に有機化合物を添着させることが可能となる。
例えば、炭化水素系化合物におけるアニリン点、及び混合アニリン点は、パラフィン系>ナフテン系>芳香族系となる傾向があり、分子量が小さいほどアニリン点、及び混合アニリン点は低くなる傾向がある。
HOPG表面に1.2μlの造粒剤を滴下し、濡れ広がりが収束して一秒間の接触角θの変化率が3%以下となったとき(定常状態ともいう)の接触角を接触角測定装置(協和界面社製自動接触角計DM−501)にて測定する。ここで、25℃における粘度が500cP以下の造粒剤を用いる場合には25℃における値を、25℃における粘度が500cPより大きい造粒剤を用いる場合には、粘度が500cP以下となる温度まで加温した温度における接触角θの測定値とする。
また造粒剤の、25℃における粘度が1cP以上100000cP以下であることが好ましく、5cP以上10000cP以下であることがより好ましく、10cP以上8000cP以下であることが更に好ましく、50cP以上6000cP以下であることが特に好ましい。粘度が上記範囲内にあると、原料黒鉛を造粒する際に、ローターやケーシングとの衝突などの衝撃力による付着粒子の脱離を防ぐことが可能となる。
ナフタレン、及びアセナフチレン、アセナフテン、フルオレン、アントラセン、フェナントレン、ピレンなどの多環芳香族を有する有機化合物を含むことがより好ましい。
具体的には、例えば、オレフィン系オイルやナフテン系オイルや芳香族系オイルなどの合成油、植物系油脂類や動物系脂肪族類やエステル類や高級アルコール類などの天然油、コールタールの蒸留により生成する軽油やカルボル油やクレオソート油やナフタリン油やアントラセン油などの石炭系軽質油留分、及びそれらの混合物などが挙げられる。
(原料黒鉛)
本発明で用いる原料黒鉛は特に限定されず、人造黒鉛や天然黒鉛を使用することが出来る。中でも、結晶性が高く高容量であることから天然黒鉛を使用することが好ましい。
焼成温度は、2500℃以上、3200℃以下の範囲とすることができ、焼成の際、珪素含有化合物やホウ素含有化合物などを黒鉛化触媒として用いることもできる。
LERENES」(NoyesPubLications発行)参照)。黒鉛化度は、鱗状黒鉛や塊状黒鉛が100%で最も高く、これに次いで鱗片状黒鉛が99.9%で高く、黒鉛化度が高い黒鉛が本発明において好適である。なかでも不純物の少ないものが好ましく、必要に応じて、公知である種々の精製処理を施して用いることができる。
粉砕に用いる装置に特に制限はないが、例えば、粗粉砕機としてはせん断式ミル、ジョークラッシャー、衝撃式クラッシャー、コーンクラッシャー等が挙げられ、中間粉砕機としてはロールクラッシャー、ハンマーミル等が挙げられ、微粉砕機としては、機械式粉砕機、気流式粉砕機、旋回流式粉砕機等が挙げられる。具体的には、ボールミル、振動ミル、ピンミル、攪拌ミル、ジェットミル、サイクロンミル、ターボミル等が挙げられる。特に、10μm以下の黒鉛粒子を得る場合には、気流式粉砕機や旋回流式粉砕機を用いることが好ましい。
原料黒鉛に含まれる灰分は、全質量に対して、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下であり、更に好ましくは0.1質量%以下である。また、灰分の下限は1ppm以上であることが好ましい。
灰分が上記範囲内であると非水系二次電池とした場合に、充放電時の複合粒子と電解液との反応による電池性能の劣化を無視できる程度に抑えることができる。また、複合粒子の製造に多大な時間とエネルギーと汚染防止のための設備とを必要としないため、コストの上昇も抑えられる。
、六方晶結晶構造とはとは黒鉛の網面構造の積み重なりが2層おきに繰り返される結晶形態である。菱面体結晶構造3Rの比率の多い結晶形態を示す鱗片状黒鉛の場合、菱面体結晶構造3Rの比率の少ない黒鉛に比べLiイオンの受け入れ性が高い。
なお、上記酸処理は、硝酸や塩酸を含む酸を用いればよく、その他の酸、例えば、臭素酸、フッ酸、ホウ酸あるいはヨウ素酸などの無機酸、または、クエン酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、トリクロロ酢酸あるいはトリフルオロ酢酸などの有機酸を適宜混合した酸を用いることもできる。好ましくは濃フッ酸、濃硝酸、濃塩酸であり、より好ましくは濃硝酸、濃塩酸である。なお、本発明において硫酸にて黒鉛を処理してもよいが、本発明の効果や物性を損なわない程度の量と濃度にて用いることとする。
浸漬温度は、通常25℃以上、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは、60℃以上である。水系の酸を用いる場合の理論上限は水の沸点である100℃である。
である。
前記処理黒鉛と水との混合割合は、通常100:10以上、好ましくは100:30以上、より好ましくは、100:50以上、更に好ましくは、100:100以上であり、また100:1000以下、好ましくは100:700以下、より好ましくは100:500以下、更に好ましくは100:400以下である。
原料黒鉛と造粒剤を混合する方法として、例えば、原料黒鉛と造粒剤とをミキサーやニーダーを用いて混合する方法や、有機化合物を低粘度希釈溶媒(有機溶剤)に溶解させた造粒剤と原料黒鉛を混合した後に該希釈溶媒(有機溶剤)を除去する方法等が挙げられる。また、続く力学的エネルギーを付与して原料黒鉛を造粒する工程の際に、造粒装置に造粒剤と原料黒鉛とを投入して、原料黒鉛と造粒剤を混合する工程と造粒する工程とを同時に行う方法も挙げられる。
本発明は、少なくとも衝撃、圧縮、摩擦、及びせん断力のいずれかの力学的エネルギーを付与して原料黒鉛を造粒する造粒工程を有する。この工程に用いる装置としては、例えば、衝撃力を主体に、原料黒鉛の相互作用も含めた圧縮、摩擦、せん断力等の機械的作用を繰り返し与える装置を用いることができる。
が挙げられる。これらの中で、奈良機械製作所社製のハイブリダイゼーションシステムが好ましい。
また、原料黒鉛に機械的作用を与える処理は、単に原料黒鉛を通過させるだけでも可能であるが、原料黒鉛を30秒以上、装置内を循環又は滞留させて処理するのが好ましく、より好ましくは1分以上、更に好ましくは3分以上、特に好ましくは5分以上、装置内を循環又は滞留させて処理する。
(造粒黒鉛粒子と有機化合物の混合)
本発明では、得られた造粒黒鉛粒子に、炭素質物前駆体となる有機化合物を混合する工程を有する。
しくは30℃以上高い温度、特に好ましくは50℃以上高い温度、通常450℃以下、好ましくは250℃以下で行われる。加熱温度が低すぎると、炭素質物前駆体となる有機化合物の粘度が高くなって混合が困難となり被覆形態が不均一となる虞があり、加熱温度が高すぎると炭素質物前駆体となる有機化合物の揮発と重縮合によって混合系の粘度が高くなって混合が困難となり被覆形態が不均一となる虞がある。
<炭素質物前駆体となる有機化合物の種類>
炭素質物前駆体となる有機化合物としては、石炭系原料油、石油系原料油、樹脂由来の有機化合物があげられるが、本発明の条件を満たす炭素質物前駆体となる有機化合物としては、アニリン点が80℃以下の造粒剤との親和性が良く、造粒黒鉛の表面に炭素質物前駆体となる有機化合物を均一に付着させることが可能となるため石油系原料油や石炭系原料油を用いることが好ましく、石炭系原料油を用いることが特に好ましい。
合いが大きい傾向となるため、本発明で用いる炭素質物前駆体となる有機化合物としては好ましい。
炭素質物前駆体となる有機化合物は、炭素質物前駆体となる有機化合物を不活性雰囲気で1300℃で焼成粉砕して得られる炭素質粉末の、学振法によるX線広角回折法の結晶子002面の面間隔(d002)が0.3445nm以下となるものであれば特に制限はないが、好ましい物性として、特に本発明において好ましい有機化合物である石炭系原料油における物性や製造方法を一例として以下に記載するが、本発明の有機化合物がこれに限定されるものではない。
炭素質物前駆体となる有機化合物の学振法によるX線広角回折法の結晶子002面の面間隔(d002)は、0.3445nm以下、好ましくは0.3444nm以下、好ましくは0.3443nm以下である。
炭素質物前駆体となる有機化合物中のQiは、通常0質量%以上であり、通常30質量%以下、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下、最も好ましくは1質量%以下である。また、炭素質物前駆体となる有機化合物中のβレジン量は、通常1質量%以上、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上、通常80質量%以下、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下、特に好ましくは30質量%以下、最も好ましくは15質量%以下である。
なお、本発明におけるQi及びβレジン量は、後述する測定方法により求めることができる。
本発明において、Qiを除去する処理方法としては、特に限定されないが、遠心分離法、質量沈降法、濾過法など公知の方法を採用することができるが、残存Qiを少なくするため、濾過法または質量沈降法によりQiを除去することが好ましい。また、この場合、各操作を容易にするために必要に応じて適宜の溶媒を使用してもよい。濾過法によりQi
を除去する際は、圧力が通常0.05〜1.0MPa、好ましくは0.1〜0.5MPaであり、温度が20〜200℃、好ましくは50〜150℃の条件下でおこなう。また、濾過に使用するフィルターの目開きは3ミクロン以下が望ましい。
このようにして、Qiを除去処理した後のコールタールピッチに含まれるQiは通常0.1質量%以下、好ましくは0.01質量%以下である。また、Qi除去操作後のコールタールピッチに含まれるβは、通常1.0〜15.0質量%であり、好ましくは4.0〜10.0質量%である。
溶媒として、キノリン(純度95.0%以上、和光純薬工業社製)、及びトルエン(純
度99.5%以上、和光純薬工業社製)を用意し、これら、各溶媒に対する炭素質物前駆体となる有機化合物中の不溶分について、以下の(1)〜(6)の手順によって測定する。
秤する(W1)。
(2)試料の入ったフラスコに上記測定溶媒(例えばキノリン)100mlを注ぎ、冷却器を取り付け、110℃のオイルバスに入れる。(トルエンは130℃にする。)液を攪拌しながら30分間加熱し、溶解させる。
(4)濾過残渣の乗った濾紙を110℃の乾燥器に60分間入れ乾燥させる。
(5)濾過残渣の乗った濾紙を乾燥器から取り出し、デシケータ-内で30分放冷した後
、その重量を精秤する(W3)。
溶剤不溶分(質量%)=(溶解後残渣重量/試料重量)× 100
=((W3−W2)/W1 )× 100
測定溶媒を上記のアセトン、キノリン、ニトロベンゼン、モルホリン、トルエンと変更し、上記(1)〜(6)の方法で測定した各溶媒の不溶分(質量%)を、それぞれ、アセトン不溶分、キノリン不溶分、ニトロベンゼン不溶分、モルホリン不溶分、トルエン不溶分とする。
β(キノリン可溶トルエン不溶分)=(トルエン不溶分)−(キノリン不溶分)
α(トルエン可溶アセトン不溶分)=(アセトン不溶分)−(トルエン不溶分)
β1(ニトロベンゼン可溶モルホリン不溶分)=(モルホリン不溶分)−(ニトロベンゼン不溶分)
なお、本発明において、各溶媒に対する可溶分とは、100(質量%)より上記の方法で測定した不溶分(質量%)を差し引いた値とする。
炭素質物前駆体となる有機化合物の比重の下限は通常1.1以上、好ましくは1.14以上、より好ましくは1.17以上、更に好ましくは1.2以上である。上限は通常1.
5以下、好ましくは1.45以下、より好ましくは1.4以下、更に好ましくは1.35以下である。比重が小さすぎると、有機化合物中の直鎖状のパラフィン系炭化水素の量が多い傾向を示し、焼成炭化において結晶性が低くなる傾向となる。比重が大きすぎると、有機化合物の分子量が大きく、高融点物になる傾向ある。高融点すぎると、前記「非水系二次電池用炭素材の製造方法の(1)黒鉛粒子と有機化合物を混合して、黒鉛粒子に有機化合物を付着させる工程」において、黒鉛粒子と有機化合物との混合が不均質となる傾向がある。なお、比重は15℃の値を用いた。
炭素質物前駆体となる有機化合物のコンラドソン残炭率の下限は通常15%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは25%以上である。上限は通常90%以下、好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下である。残炭率が小さすぎるということは、焼成炭化の段階で蒸発や分解で揮散する量が多いということで、一定量の有機化合物由来の炭素質を黒鉛表面に残す場合、より多量の有機化合物が必要となる。また、揮散する有機化合物量が多いと、黒鉛表面に被覆されている有機物由来の残留炭素からガスとして抜ける時に、残留炭素表面や内部を荒らしてしまい、結果、比表面積の大きい水系二次電池用炭素材となってしまう傾向がある。残炭率が大きすぎると、有機化合物の分子量が大きく、高融点物であることが多い。高融点過ぎると、黒鉛粒子と有機化合物との混合が不均質となる傾向がある。
炭素質物前駆体となる有機化合物の軟化点の上限は通常400℃以下、好ましくは200℃以下、より好ましくは150℃以下、更に好ましくは100℃以下である。有機機化合物の軟化点の下限は通常0℃以上、好ましくは25℃以上、より好ましくは30℃以上、更に好ましくは40℃以上である。上限以上だと、黒鉛粒子と混合する際、均一に混合することが困難になり、且つより高温での混合が必要となり生産性に欠ける場合がある。下限以下であると、有機化合物中に含まれる平板状の芳香族性炭化水素類の量が少なく、直鎖状のパラフィン系炭化水素の量が比較的多く含んでいる傾向となり、焼成炭化で得られる被覆炭素質物の結晶性が低くなり、水系二次電池用炭素材の比表面積が高くなる傾向にある。
有機化合物を1300℃焼成炭化して得られた炭素粉末の学振法によるX線回折で求めた有機化合物の結晶子サイズ(Lc)の下限が通常36nm以上、好ましくは37nm以上、より好ましくは39nm以上であり、上限は通常90nm以下、好ましくは80nm以下、より好ましくは70nm以下である。
本発明では、得られた造粒黒鉛と炭素質物となる有機化合物混合物との混合物を熱処理し、黒鉛粒子と炭素質物を含有する複合粒子を得る工程を有する。
熱処理雰囲気は、非酸化性雰囲気下、好ましくは窒素、アルゴン、二酸化炭素などの流通下において熱処理を行い、炭素質物となる有機化合物を炭素化又は黒鉛化させる。
上述したような処理を行った後、必要に応じて解砕及び/又は粉砕処理及び/又は分級処理を施すことにより、炭素質物複合黒鉛とすることができる。
形状は任意であるが、平均粒径は、通常2〜50μmであり、5〜35μmが好ましく、特に8〜30μmである。上記粒径範囲となるよう、必要に応じて、解砕及び/又は粉砕及び/又は分級を行う。
前記炭素材とは異なる炭素材料としては、例えば天然黒鉛、人造黒鉛、炭素材を炭素質物で被覆した被覆黒鉛、非晶質炭素、金属粒子や金属化合物を含有した炭素材の中から選ばれる材料を用いることができる。これらの材料は、何れかを一種を単独で用いても良く、二種以上を任意の組み合わせ及び組成で併用しても良い。
天然黒鉛のBET比表面積は、通常1m2/g以上、好ましくは2m2/g以上、また、通常30m2/g以下、好ましくは15m2/g以下の範囲である。比表面積がこの範囲であれば、高速充放電特性、工程性が良好となるため好ましい。
また、天然黒鉛のタップ密度は、通常0.6g/cm3以上、0.7g/cm3以上が好ましく、0.8g/cm3以上がより好ましく、0.85g/cm3以上が更に好ましい。また、通常1.3g/cm3以下、1.2g/cm3以下が好ましく、1.1g/cm3以下がより好ましい。この範囲であれば高速充放電特性、工程性が良好となるため好ましい。
人造黒鉛の体積基準平均粒径は、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、また、通常60μm以下、好ましくは40μm、更に好ましくは30μm以下の範囲である。この範囲であれば、極板膨れの抑制や工程性が良好となるため好ましい。
人造黒鉛のBET比表面積は、通常0.5m2/g以上、好ましくは1.0m2/g以上、また、通常8m2/g以下、好ましくは6m2/g以下、更に好ましくは4m2/g以下の範囲である。この範囲であれば、極板膨れの抑制や工程性が良好となるため好ましい。
被覆黒鉛のBET比表面積は、通常1m2/g以上、好ましくは2m2/g以上、更に好ましくは2.5m2/g以上、また、通常20m2/g以下、好ましくは10m2/g以下、更に好ましくは8m2/g以下、特に好ましくは5m2/g以下の範囲である。比表面積がこの範囲であれば、高速充放電特性、工程性が良好となるため好ましい。
非晶質炭素の体積基準平均粒径は、通常5μm以上、好ましくは12μm以上、また、通常60μm以下、好ましくは40μm以下の範囲である。この範囲であれば、高速充放電特性、工程性が良好となるため好ましい。
非晶質炭素のBET比表面積は、通常1m2/g以上、好ましくは2m2/g以上、更に好ましくは2.5m2/g以上、また、通常8m2/g以下、好ましくは6m2/g以下、更に好ましくは4m2/g以下の範囲である。比表面積がこの範囲であれば、高速充放電特性、工程性が良好となるため好ましい。
良好となるため好ましい。
金属粒子のBET比表面積は、通常0.5m2/g以上120m2/g以下、1m2/g以上100m2/g以下であることが好ましい。比表面積が前記範囲内であると、電池の充放電効率および放電容量が高く、高速充放電においてリチウムの出し入れが速く、レート特性に優れるので好ましい。
mill型混合機、流動化型混合機等を用いることができる。
以下、本発明の製造方法により得られた複合粒子の好ましい物性について、説明する。・炭素質物の含有量
複合粒子において炭素質物の含有量は、黒鉛粒子に対して、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.3%以上、特に好ましくは0.7質量%以上であり、また前記含有量は、通常30質量%以下、好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下、特に好ましくは10質量%以下、最も好ましくは7質量%以下である。
一方、含有量が小さすぎると、被覆による効果が得られにくくなる傾向がある。
(w1を黒鉛粒子の質量(kg)、w2を複合粒子の質量(kg)とする)
・体積基準平均粒径(平均粒径d50)
複合粒子の体積基準平均粒径(「平均粒径d50」とも記載する)は好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上、更に好ましくは8μm以上、特に好ましくは10μm以上、最も好ましくは11μm以上である。また平均粒径d50は、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、更に好ましくは35μm以下、特に好ましくは31μm以下である。平均粒径d50が小さすぎると、前記複合粒子を用いて得られる非水系二次電池の不可逆容量の増加、初期電池容量の損失を招く傾向があり、一方平均粒径d50が大きすぎるとスラリー塗布における筋引きなどの工程不都合の発生、高電流密度充放電特性の低下、低温入出力特性の低下を招く場合がある。
複合粒子のタップ密度は好ましくは0.8g/cm3以上、より好ましくは0.85g/cm3以上、更に好ましくは0.88g/cm3以上、特に好ましくは0.9g/cm3以上、最も好ましくは0.93g/cm3以上、好ましくは1.3g/cm3以下であり、より好ましくは1.2g/cm3以下であり、更に好ましくは1.1g/cm3以下である。
複合粒子の円形度は、0.88以上、好ましくは0.90以上、より好ましくは0.91以上である。また、円形度は好ましくは1以下、より好ましくは0.98以下、更に好ましくは0.97以下である。円形度が上記範囲内であると、非水系二次電池の高電流密度充放電特性の低下を抑制できる傾向にある。なお、円形度は以下の式で定義され、円形度が1のときに理論的真球となる。
円形度が上記範囲内であると、Liイオン拡散の屈曲度が下がって粒子間空隙中の電解液移動がスムーズになり、且つ適度に複合粒子同士が接触することが可能なため、良好な急速充放電特性、及びサイクル特性を示す傾向がある。
円形度=(粒子投影形状と同じ面積を持つ相当円の周囲長)/(粒子投影形状の実際の周囲長)
を0.6〜400μmに指定し、粒径が1.5〜40μmの範囲の粒子について測定した値を用いる。
複合粒子の、学振法によるX線回折で求めた格子面(002面)のd値(層間距離)は、好ましくは0.335nm以上、0.340nm未満である。ここで、d値はより好ましくは0.339nm以下、更に好ましくは0.337nm以下である。d002値が上記範囲内にあると、黒鉛の結晶性が高いため、初期不可逆容量が増加を抑制する傾向にある。ここで、0.335nmは黒鉛の理論値である。
複合粒子に含まれる灰分は、複合粒子の全質量に対して、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下であり、更に好ましくは0.1質量%以下である。また、灰分の下限は1ppm以上であることが好ましい。
複合粒子のBET法により測定した比表面積(SA)は、好ましくは1m2/g以上、より好ましくは2m2/g以上、更に好ましくは3m2/g以上、特に好ましくは4m2/g以上である。また、好ましくは30m2/g以下、より好ましくは20m2/g以下、更に好ましくは17m2/g以下、特に好ましくは15m2/g以下である。
比表面積が上記範囲内であると、Liが出入りする部位を十分確保することができるため高速充放電特性出力特性に優れ、活物質の電解液に対する活性も適度抑えることができるため、初期不可逆容量が大きくならず、高容量電池を製造できる傾向にある。
また、複合粒子を使用して負極を形成した場合の、その電解液との反応性の増加を抑制でき、ガス発生を抑えることができるため、好ましい非水系二次電池を提供することができる。
複合粒子の真密度は、好ましくは1.9g/cm3以上、より好ましくは2g/cm3以上、更に好ましくは2.1g/cm3以上、特に好ましくは2.2g/cm3以上であり、上限は2.26g/cm3である。上限は黒鉛の理論値である。真密度が上記範囲内であ
ると、炭素の結晶性が低すぎず、非水系二次電池とした場合の、その初期不可逆容量の増大を抑制できる傾向にある。
複合粒子の粉末状態でのアスペクト比は、理論上1以上であり、好ましくは1.1以上、より好ましくは1.2以上である。またアスペクト比は好ましくは10以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは5以下である。
アスペクト比が上記範囲内であると、極板化時に複合粒子を含むスラリー(負極形成材料)のスジ引きが起こり難く、均一な塗布面が得られ、非水系二次電池の高電流密度充放電特性の低下を回避する傾向にある。
アスペクト比は、3次元的に観察したときの複合粒子の最長となる径Aと、それと直交する径のうち最短となる径Bとしたとき、A/Bであらわされる。前記複合粒子の観察は、拡大観察ができる走査型電子顕微鏡で行う。厚さ50ミクロン以下の金属の端面に固定した任意の50個の複合粒子を選択し、それぞれについて試料が固定されているステージを回転、傾斜させて、A、Bを測定し、A/Bの平均値を求める。
複合粒子のラマンR値は、その値は好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.15以上、特に好ましくは0.2以上である。また、ラマンR値は通常1以下、好ましくは0.6以下、より好ましくは0.5以下、更に好ましくは0.4以下である。
なお、前記ラマンR値は、ラマン分光法で求めたラマンスペクトルにおける1580cm−1付近のピークPAの強度IAと、1360cm−1付近のピークPBの強度IBとを測定し、その強度比(IB/IA)として算出されたものと定義する。
なお、本明細書において「1580cm−1付近」とは1580〜1620cm−1の範囲を、「1360cm−1付近」とは1350〜1370cm−1の範囲を指す。
前記ラマンスペクトルは、ラマン分光器で測定できる。具体的には、測定対象粒子を測定セル内へ自然落下させることで試料充填し、測定セル内にアルゴンイオンレーザー光を照射しながら、測定セルをこのレーザー光と垂直な面内で回転させながら測定を行なう。測定条件は以下の通りである。
アルゴンイオンレーザー光の波長 :514.5nm
試料上のレーザーパワー :25mW
分解能 :4cm−1
測定範囲 :1100cm−1〜1730cm−1
ピーク強度測定、ピーク半値幅測定:バックグラウンド処理、スムージング処理(単純平均によるコンボリューション5ポイント)
このような様々なタイプの粒子構造の複合粒子を安定して製造できることの一例として、全固形原料重量に対する複合粒子重量比で表される歩留まり(複合粒子重量/全固形原料重量)が通常60%以上であり、80%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。
本発明の製造方法により製造された複合粒子を用いた非水系二次電池用負極(以下適宜「電極シート」ともいう。)は、集電体と、集電体上に形成された負極活物質層とを備えると共に、活物質層は少なくとも本発明の製造方法により製造された複合粒子を含有することを特徴とする。更に好ましくはバインダを含有する。
本発明においては、オレフィン性不飽和結合を有さないバインダも、本発明の効果が失われない範囲において、上述のオレフィン性不飽和結合を有するバインダと併用することができる。オレフィン性不飽和結合を有するバインダに対する、オレフィン性不飽和結合を有さないバインダの混合比率は、好ましくは150質量%以下、より好ましくは120質量%以下の範囲である。
オレフィン性不飽和結合を有さないバインダの例としては、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、澱粉、カラギナン、プルラン、グアーガム、ザンサンガム(キサンタンガム)等の増粘多糖類、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル類、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のビニルアルコール類、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸等のポリ酸、或いはこれらポリマーの金属塩、ポリフッ化ビニリデン等の含フッ素ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのアルカン系ポリマー及びこれらの共重合体などが挙げられる。
スラリーを塗布、乾燥して得られる活物質層の厚さは、好ましくは5μm以上、より好ましくは20μm以上、更に好ましくは30μm以上、また、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下、更に好ましくは75μm以下である。活物質層の厚みが上記範囲内であると、活物質の粒径との兼ね合いから負極としての実用性に優れ、高密度の電流値に対する十分なLiの吸蔵・放出の機能を得ることができる。
非水系二次電池、特にリチウムイオン二次電池の基本的構成は、従来公知のリチウムイオン二次電池と同様であり、通常、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極、並びに電解質を備える。負極は、上述した本発明の製造方法により製造される複合粒子を用いてなる。
正極は、正極活物質及びバインダを含有する正極活物質層を、集電体上に形成したものである。
正極板は、前記したような負極の製造と同様の手法で、正極活物質やバインダを溶剤でスラリー化し、集電体上に塗布、乾燥することにより形成する。正極の集電体としては、アルミニウム、ニッケル、ステンレススチール(SUS)などが用いられるが、何ら限定されない。
非水系電解液に使用される非水系溶媒は特に制限されず、従来から非水系電解液の溶媒として提案されている公知の非水系溶媒の中から、適宜選択して用いることができる。例えば、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の鎖状カーボネート類;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等の環状カーボネート類;1,2−ジメトキシエタン等の鎖状エーテル類;テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、スルホラン、1,3−ジオキソラン等の環状エーテル類;ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル等の鎖状エステル類;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状エステル類などが挙げられる。
せが好ましく、環状カーボネートが、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートの混合溶媒であることが、低温でも高いイオン電導度を発現でき、低温充電不可特性が向上するという点で特に好ましい。中でもプロピレンカーボネートが非水系溶媒全体に対し、2質量%以上80質量%以下の範囲が好ましく、5質量%以上70質量%以下の範囲がより好ましく、10質量%以上60質量%以下の範囲がさらに好ましい。プロピレンカーボネートの割合が上記より低いと低温でのイオン電導度が低下し、プロピレンカーボネートの割合が上記より高いと、黒鉛系電極を用いた場合にはリチウムイオンに溶媒和したプロピレンカーボネートが黒鉛相間へ共挿入することにより黒鉛系負極活物質の層間剥離劣化がおこり、十分な容量が得られなくなる問題がある。
また、上述の非水系電解液に有機高分子化合物を含ませ、ゲル状、ゴム状、或いは固体シート状にして使用する場合、有機高分子化合物の具体例としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル系高分子化合物;ポリエーテル系高分子化合物の架橋体高分子;ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラールなどのビニルアルコール系高分子化合物;ビニルアルコール系高分子化合物の不溶化物;ポリエピクロルヒドリン;ポリフォスファゼン;ポリシロキサン;ポリビニルピロリドン、ポリビニリデンカーボネート、ポリアクリロニトリルなどのビニル系高分子化合物;ポリ(ω−メトキシオリゴオキシエチレンメタクリレート)、ポリ(ω−メトキシオリゴオキシエチレンメタクリレート−co−メチルメタクリレート)、ポリ(ヘキサフルオロプロピレン−フッ化ビニリデン)等のポリマー共重合体などが挙げられる。
上記添加剤を用いる場合、その含有量は通常10質量%以下、中でも8質量%以下、更には5質量%以下、特に2質量%以下の範囲が好ましい。上記添加剤の含有量が多過ぎると、初期不可逆容量の増加や低温特性、レート特性の低下等、他の電池特性に悪影響を及ぼすおそれがある。
孔性のセパレータを介在させる。この場合、非水系電解液は、多孔性のセパレータに含浸させて用いる。セパレータの材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエーテルスルホンなどが用いられ、好ましくはポリオレフィンである。
実施例において、製造した負極材の物性や特性は以下の方法により測定した。
界面活性剤であるポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(例として、ツィーン20(登録商標)が挙げられる)の0.2質量%水溶液10mLに、負極材0.01gを懸濁させ、これを測定サンプルとして市販のレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(例えばHORIBA製LA−920)に導入し、測定サンプルに28kHzの超音波を出力60Wで1分間照射した後、前記測定装置において体積基準のメジアン径として測定した。
粉体密度測定器を用い、直径1.6cm、体積容量20cm3の円筒状タップセルに、目開き300μmの篩を通して負極材を落下させて、セルに満杯に充填した後、ストローク長10mmのタップを1000回行なって、その時の体積と試料の質量から求めた密度として定義した。
比表面積SAは、表面積計(島津製作所製比表面積測定装置「ジェミニ2360」)を用い、負極材試料に対して窒素流通下100℃、3時間の予備減圧乾燥を行なった後、液体窒素温度まで冷却し、大気圧に対する窒素の相対圧の値が0.3となるように正確に調整した窒素ヘリウム混合ガスを用い、ガス流動法による窒素吸着BET6点法によって測定した値として定義した。
実施例又は比較例の負極材を用い、活物質層密度1.60±0.03g/cm3、又は1.35±0.03g/cm3の活物質層を有する極板を作製した。具体的には、負極材50.00±0.02gに、1質量%カルボキシメチルセルロースナトリウム塩水溶液を50.00±0.02g(固形分換算で0.500g)、及び重量平均分子量27万のスチレン・ブタジエンゴム水性ディスパージョン1.00±0.05g(固形分換算で0.5g)を、キーエンス製ハイブリッドミキサーで5分間撹拌し、30秒脱泡してスラリーを得た。
上記方法で作製した、負極材料が12.00±0.3mg/cm2付着し、活物質層の密度が1.60±0.03g/cm3となるように調整した電極シートを直径12.5mmの円盤状に打ち抜き、リチウム金属箔を直径14mmの円板状に打ち抜き対極とした。両極の間には、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートの混合溶媒(容積比=3:7)に、LiPF6を1mol/Lになるように溶解させた電解液を含浸させたセパレータ(多孔性ポリエチレンフィルム製)を置き、2016コイン型電池をそれぞれ作製した。
上記方法で作製した、負極材料が6.00±0.3mg/cm2付着し、活物質層の密度が1.35±0.03g/cm3となるように調整した電極シートを4cm×3cmに切り出し負極とし、NMCからなる正極を同面積で切り出し、負極と正極の間にはセパレータ(多孔性ポリエチレンフィルム製)を置き、組み合わせた。エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジメチルカーボネートの混合溶媒(容積比=3:3:4)に、LiPF6を1.2mol/Lになるように溶解させた電解液を200μl注液してラミネート型電池を作製した。
上述の方法で作製した非水系二次電池(2016コイン型電池)を用いて、下記の測定方法で電池充放電時の容量を測定した。
0.05Cの電流密度でリチウム対極に対して5mVまで充電し、さらに5mVの一定電圧で電流密度が0.005Cになるまで充電し、負極中にリチウムをドープした後、0.1Cの電流密度でリチウム対極に対して1.5Vまで放電を行った。このときの放電容量を本材料の放電容量とした。
上記非水電解液二次電池の作製法により作製したラミネート型非水電解液二次電池を用いて、下記の測定方法で低温出力特性を測定した。
充放電サイクルを経ていない非水電解液二次電池に対して、25℃で電圧範囲4.1V〜3.0V、電流値0.2C(1時間率の放電容量による定格容量を1時間で放電する電流値を1Cとする、以下同様)にて3サイクル、電圧範囲4.2V〜3.0V、電流値0.2Cにて(充電時には4.2Vにて定電圧充電をさらに2.5時間実施)2サイクル、初期充放電を行った。
さらに、SOC50%まで電流値0.2Cで充電を行った後、−30℃の低温環境下で、1/8C、1/4C、1/2C、1.5C、2Cの各電流値で2秒間定電流放電させ、各々の条件の放電における2秒後の電池電圧の降下を測定し、それらの測定値から充電上限電圧を3Vとした際に、2秒間に流すことのできる電流値Iを算出し、3×I(W)という式で計算される値をそれぞれの電池の低温出力特性とした。
上記非水電解液二次電池の作製法により作製したラミネート型非水電解液二次電池を用いて、下記の測定方法で高温保存特性を測定した。
充放電サイクルを経ていない非水電解液二次電池に対して、25℃で電圧範囲4.1V
〜3.0V、電流値0.2C(1時間率の放電容量による定格容量を1時間で放電する電流値を1Cとする、以下同様)にて3サイクル、電圧範囲4.2V〜3.0V、電流値0.2Cにて(充電時には4.2Vにて定電圧充電をさらに2.5時間実施)2サイクル、初期充放電を行った。
さらに、SOC80%まで電流値0.2Cで充電を行った後、60℃の高温環境下で2週間保存した。その後、25℃にて0.2Cで3.0Vまで放電を行った後、さらに0.2Cで4.2Vまで充電と0.2Cで3.0Vまで放電を行ったときの放電容量A(mAh)と初期充放電5サイクル目の放電容量B(mAh)の比(%)の値を高温保存特性とした。(高温保存特性(%)=A(mAh)/B(mAh)×100)
d50が100μmの鱗片状天然黒鉛を乾式旋回流式粉砕機により粉砕し、d50が8.1μm、Tapが0.39g/cm3、水分量0.08質量%の鱗片状天然黒鉛を得た。得られた鱗片状天然黒鉛100gに造粒剤として芳香族系オイル(1)(アニリン点29
℃、分子内にナフタレン環構造を含有)を12g添加して撹拌混合した後、得られたサンプルをハンマーミル(IKA社製MF10)で回転数3000rpmにて解砕混合し、造粒剤が均一に添着した鱗片状天然黒鉛を得た。得られたサンプルを、奈良機械製作所製ハイブリダイゼーションシステムNHS−1型にて、ローター周速度85m/秒で10分間の機械的作用による球形化処理を行い、造粒黒鉛粒子を得た。
造粒黒鉛粒子と原料黒鉛より結晶性が低い炭素質物との質量比率(造粒黒鉛粒子:非晶質炭素)は1:0.08とした以外は実施例1と同様の方法にて複層構造黒鉛粒子を得た。実施例1同様の測定を行った結果を表1に示す。
芳香族系オイル(2)(アニリン点無し、混合アニリン点15℃、分子内にベンゼン環構
造を含有)を造粒剤として用いた以外は実施例2と同様の方法にて複層構造黒鉛粒子を得た。実施例1同様の測定を行った結果を表1に示す。
パラフィン系オイル(アニリン点>100℃)を造粒剤として用いた以外は実施例1と同様の方法にて複層構造黒鉛粒子を得た。実施例1同様の測定を行った結果を表1に示す。
造粒黒鉛粒子と原料黒鉛より結晶性が低い炭素質物との質量比率(造粒黒鉛粒子:非晶質炭素)は1:0.08とした以外は比較例1と同様の方法にて複層構造黒鉛粒子を得た。実施例1同様の測定を行った結果を表1に示す。
造粒黒鉛粒子と原料黒鉛より結晶性が低い炭素質物との質量比率(造粒黒鉛粒子:非晶質炭素)は1:0.1とした以外は比較例1と同様の方法にて複層構造黒鉛粒子を得た。実施例1同様の測定を行った結果を表1に示す。
d50が100μmの鱗片状天然黒鉛を、そのまま奈良機械製作所製ハイブリダイゼーションシステムNHS−1型にて、ローター周速度85m/秒で10分間の機械的作用による球形化処理を行った。得られたサンプルには母材に付着、及び球形化粒子に内包されていない状態の鱗片黒鉛状微粉が多く存在していることが確認された。このサンプルを分級し、上記鱗片黒鉛状微粉を除去し、d50が10.8μm、Tap密度が0.88g/cm3の球形化黒鉛を得た。得られた球形化黒鉛と原料黒鉛より結晶性が低い炭素質物前駆体としてコールタールピッチを120℃、20分間ミキサーで混合し、不活性ガス中で1300℃、1時間の熱処理を施した後、焼成物を解砕・分級処理することにより、造粒黒鉛粒子と原料黒鉛より結晶性が低い炭素質とが複合化した複層構造黒鉛粒子を得た。焼成収率から、得られた複層構造黒鉛粒子において、造粒黒鉛粒子と原料黒鉛より結晶性が低い炭素質物との質量比率(造粒黒鉛粒子:非晶質炭素)は1:0.065であることが確認された。得られたサンプルのd50、SA、Tap、放電容量、低温出力特性、高温保存特性を測定した。結果を表1に示す。
Claims (10)
- 黒鉛粒子と炭素質物を含有する非水系二次電池用複合粒子の製造方法であって、下記1)〜3)の工程を有することを特徴とする非水系二次電池用複合粒子の製造方法。
1)アニリン点が80℃以下もしくは存在しない造粒剤の存在下で、少なくとも衝撃、圧縮、摩擦、及びせん断力のいずれかの力学的エネルギーを付与して原料黒鉛を造粒する工程
2)1)で得られた造粒黒鉛粒子に、炭素質物前駆体となる有機化合物を混合する工程
3)2)で得られた混合物を熱処理し、黒鉛粒子と炭素質物を含有する複合粒子を得る工程 - 該造粒剤が、芳香環を有する有機化合物であり、且つ25℃で液体であることを特徴とする請求項1に記載の非水系二次電池用複合粒子の製造方法
- 該炭素質物前駆体となる有機化合物が芳香環を有する有機化合物を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の非水系二次電池用複合粒子の製造方法。
- 該炭素質物前駆体となる有機化合物が石炭系原料油であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の非水系二次電池用複合粒子の製造方法
- 前記原料黒鉛粒子は、鱗片状、鱗状、及び塊状の天然黒鉛からなる群から選択される少なくとも1つを含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の非水系二次電池用複合粒子の製造方法。
- 前記原料黒鉛は、d002が0.34nm以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の非水系二次電池用複合粒子の製造方法。
- 前記造粒工程が、0℃以上250℃以下の雰囲気下で行われることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の非水系二次電池用複合粒子の製造方法。
- 前記造粒工程は、ケーシング内で高速回転する回転部材を備え、ケーシング内に複数のブレードを設置したローターを有する装置において、該ローターが高速回転することによって、内部に導入された黒鉛に対して衝撃、圧縮、摩擦、及びせん断力のいずれかを与えることで造粒することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の非水系二次電池用複合粒子の製造方法。
- 請求項1乃至8のいずれか1項に記載の製造方法により製造された非水系二次電池用複合粒子。
- リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極、並びに、電解質を備えると共に、該負極が集電体と該集電体上に形成された負極活物質層とを備えると共に、該負極活物質層が請求項9に記載の非水系二次電池用複合粒子を備える負極であることを特徴とする非水系二次電池。
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