以下、図面を用いて、本発明を実施するための形態(以下、実施形態と称する)を説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の機器封じ込め装置の第1実施形態の全体構成を示す正面図である。図2は、図1に示す機器封じ込め装置1を示す左側面図である。図3は、図1に示す機器封じ込め装置1を示す右側面図である。図4は、図1に示す機器封じ込め装置1を示す平面図である。
図1から図4に示す機器封じ込め装置1は、好ましくは対象の機器Mを作業空間Gに収容して、この機器Mを用いて作業や実験を行う際に、空気を低風量ドラフトで通過させる低風量ドラフトチャンバである。この機器封じ込め装置1は、その庫内の作業空間Gにおいて、作業者により対象の機器Mを用いて、求められる作業や実験を行うのに用いられる。
機器封じ込め装置1の作業空間G内に封じ込めようとする対象の機器Mとしては、各種の実験装置や、分析対象物を分析する分析装置、あるいは製造装置等である。この機器封じ込め装置1は、機器Mを用いて、例えば試料を微粉末化する噴霧乾燥機や、薬品の製造業務や、研究者や実験者等の作業者が例えば微生物等の試料の無菌操作作業や化学実験作業等を行うために用いられる。
この機器封じ込め装置1は、近年省エネルギーの観点から、従来の風量より少ない排気風量で稼働できるものが求められている。このような機器封じ込め装置1としては、一般的に「低風量ドラフトチャンバ」あるいは「低風量フュームフード」と呼称されている。この機器封じ込め装置1における風量は、通常のドラフトチャンバにおける風量と比較して、例えば50%から60%の風量で、庫内の有害ガスや粉体等を封じ込めておくことが可能である。
機器封じ込め装置1としては、好ましくは例えば排気風量が常に一定(CAV:定風量制御)である定風量型のものが採用できる。しかし、機器封じ込め装置1は、これに限らず、更なる省エネルギー化の観点から、この定風量型のものに対して、VAV(可変風量制御)方式を組み合わせる可変風量型の物であっても良い。
機器封じ込め装置1は、作業や実験における被処理物を内部の作業空間において処理する際に、作業者が被処理物や有害物質の影響を受けないように、内部の作業空間Gの雰囲気を外部から隔離する構造を有している。機器封じ込め装置1は、作業者を保護することを目的とした局所排気装置であり、危険物質や有害物質の封じ込め機能と、排気機能を有した囲われた作業空間Gを持っている。
特に、機器封じ込め装置1は、エネルギーコスト低減を目的として、少ないランニングコストで局所排気装置(ドラフトチャンバ)の運転ができることが望まれているが、この様な市場のニーズにより、排気風量を少なくして、一般的な機器封じ込め装置よりも低い前面風速で有害な雰囲気の漏洩防止が可能である。そのためには、低い前面風速においても作業空間Gから有害な雰囲気が外部に漏洩しない様にしながら、40〜60%排気風量を減らすことができる。
これにより、機器封じ込め装置1は、好ましくは例えば排気風量が常に定風量であって、少ない風量ドラフトで運転して安全性を確保でき、風量ドラフト運転エネルギーの低減を図っており、空気の低い風量ドラフトにより空気の低排気量となることから、低ランニングコストが得られる。
次に、図1から図4を参照して、機器封じ込め装置1の好ましい構造例を、詳しく説明する。
機器封じ込め装置1は、例えばナノエンクロージャともいい、本体10と、本体10に付属させた図2に示すファン・フィルターユニット80を有している。この本体10は、内部の作業空間Gが、本体10の外部に対して閉じたクローズドチャンバ構造を有する。
図1から図3に示すように、本体10は、正面側から見ると縦長の長方形になっている。本体10は、ケース部11と、架台部12を有する。ケース部11は、その内部に作業空間Gを有している。
<ケース部11>
図1から図3に示すように、ケース部11は、架台部12と一体化された構造になっており、ケース部11は、架台部12の上に固定されている。ケース部11の枠部材の材質としては、軽量化のために、例えば陽極酸化塗装複合被膜により被覆されたアルミニウム等の軽量な金属により作られているが、特に限定されない。架台部12の材質としては、ケース部11の重量を支えるために、例えばSUS等の丈夫な金属により作られているが、特に限定されない。
まず、図1から図3に示すケース部11と架台部12の構造例について、説明する。
図1と図4に示すように、ケース部11は、垂直に形成された前面部20と、上面部21と、背面部22と、左右の側面部23,24を有している。
図1と図2と図4に示すように、ケース部11は、ケース部11の内部に対象となる機器Mを収納するために、作業空間Gが形成されている。この作業空間Gは、縦長のほぼ直方体形状を有する空間である。ケース部11の前面には、縦長の長方形状の前面開口30を有している。
前面開口30は、作業者が例えば対象の機器Mを作業空間G内に搬入したり、搬出するのに用いる。
図1と図2に示すように、ケース部11の前面開口30は、左側の第1前面扉31と右側の第2前面扉32を、左右方向(水平方向、X方向)にそれぞれスライド操作することにより、開閉可能になっている。
図1に示すように、縦長の長方形の第1前面扉31は、左右の縦枠材31Aと複数の横枠材31Bを有し、縦枠材31Aと横枠材31Bは例えばアルミニウム製である。第1前面扉31には、例えば強化ガラス製の透明板31Cがはめ込まれている。
同様にして、第2前面扉32は、左右の縦枠材32Aと複数の横枠材32Bを有し、縦枠材32Aと横枠材32Bは例えばアルミニウム製である。第2前面扉32には、例えば強化ガラス製の透明板32Cがはめ込まれている。これにより、作業者は、透明板31C、32Cを通して、作業空間G内の機器Mを直接観察することができる。
第1前面扉31と第2前面扉32は、本体10のケース部11の前面開口30に対応して、この前面開口30を開閉できるように、ケース部11の前面側において吊り下げた状態で、X方向にスライドして移動可能に取り付けられているスライドサッシである。
次に、ケース部11の前面開口30に対応して、第1前面扉31と第2前面扉32を吊り下げて保持するとともに、X方向にスライドして移動可能な構造について、図5と図6を参照して説明する。
図5は、図1と図2に示す第1前面扉31と第2前面扉32と、扉の吊り構造部100の構造例を示す図である。図6は、粉体が扉の吊り構造部100に侵入するのを防ぐ防塵用のブラシ151の例を示す平面図である。
図1と図2に示す第1前面扉31は、第2前面扉32に比べて、より前面開口30側に近い位置において、X方向にスライド操作可能である。このため、第2前面扉32は、第1前面扉31に比べて、前面開口30からはやや遠い位置において、X方向にスライド操作可能である。すなわち、第1前面扉31は後側にあり、第2前面扉32は第1前面扉31に重なることができるように前側にある。
図5に例示するように、扉の吊り構造部100は、第1前面扉31と第2前面扉32をX方向にスライド操作可能に保持するためにケース部11の前面側の上部11Tに設けられている。
図5に示すこの扉の吊り構造部100は、第1吊り案内部101と、第2吊り案内部102を有する。第1吊り案内部101は、第1前面扉31を吊った状態で、X方向に手動でスライド操作できるように支持している。第2吊り案内部102は、第2前面扉32を吊った状態で、X方向に手動でスライド操作できるように支持している。第1吊り案内部101と第2吊り案内部102は、同様な構造を有している。
第1吊り案内部101は、第1レール111と、第1支持ローラ112と、第1支持アーム113を有する。第1レール111は、ケース部11の前面側の上部11Tに対して、X方向に沿って、水平に固定されている。第1レール111は、ほぼU字型の断面を有しており、取付け部分111Aと、ガイドレール部111Bを有する。取付け部分111Aは、ケース部11の前面側の上部11Tの前面部分11Sに固定されている。
第1支持アーム113は、ほぼ断面L字型の部材であり、第1支持アーム113は、第1支持ローラ112と第1前面扉31を連結している。第1支持アーム113の上部113Aは、第1支持ローラ112を回転可能に支持している。第1支持アーム113の下部113Bは、第1前面扉31の上部に固定されている。ガイドレール部111Bは、第1支持ローラ112を載せた状態で、X方向に移動可能に支持している。
これにより、第1吊り案内部101は、第1前面扉31を吊った状態で、X方向に手動でスライド操作できる。
一方、第2吊り案内部102は、第2レール121と、第2支持ローラ122と、第2支持アーム123を有する。第2レール121は、ケース部11の前面側の上部11Tに対して、X方向に沿って、水平に固定されている。第2レール121は、ほぼU字型の断面を有しており、取付け部分121Aと、ガイドレール部121Bを有する。取付け部分121Aは、ケース部11の前面側の上部11Tの前面部分11Sに固定されている。
第2支持アーム123は、ほぼ断面L字型の部材であり、第2支持アーム123は、第2支持ローラ122と第2前面扉32を連結している。第2支持アーム123の上部123Aは、第2支持ローラ122を回転可能に支持している。第2支持アーム123の下部123Bは、第2前面扉32の上部に固定されている。ガイドレール部121Bは、第2支持ローラ122を載せた状態で、X方向に移動可能に支持している。
これにより、第2吊り案内部102は、第2前面扉32を吊った状態で、X方向に手動でスライド操作できる。
次に、図5と図6を参照して、粉体等が扉の吊り構造部100に侵入するのを防ぐ防塵部150の例を説明する。
図5と図6に示すように、この防塵部150は、好ましくは扉の吊り構造部100の第1吊り案内部101と第2吊り案内部102に対して、粉体等の塵埃が入り込んで付着するのを防止する機能を有する。防塵部150は、防塵用のブラシ151と、防塵カバー170を有する。
例えば金属製の防塵カバー170は、図5に示すように前面側の上部11Tの前面部分11Sに固定されていることで、第1吊り案内部101と第2吊り案内部102を覆っている。防塵カバー170の下部の開放部分171には、第1支持アーム113と第2支持アーム123が通っている。
しかも、防塵用のブラシ151は、防塵カバー170の下部の開放部分171を塞ぐようにして設けられている。防塵用のブラシ151は、第1起毛部分161と、第2起毛部分162を有する。第1起毛部分161は、前面側の上部11Tの前面部分11Sに固定されており、Y方向に沿っている。第2起毛部分162は、防塵カバー170の内面170Nに固定されており、Y方向に沿っている。第1起毛部分161の先端部165と、第2起毛部分162の先端部166は、接近している。
第1支持アーム113の下部113Bは、第1起毛部分161の先端部165に突き当たっており、第2支持アーム123の下部123Bは、第2起毛部分162の先端部166に突き当たっている。これにより、第1支持アーム113の下部113Bと第2支持アーム123の下部123Bが、それぞれX方向に移動する際には、防塵用のブラシ151の第1起毛部分161と第2起毛部分162は、防塵カバー170の下部の開放部分171を塞いでいるので、防振カバー170の開放部分171から粉体等が侵入するのを防ぐことができる。
このように、防塵部150の防塵用のブラシ151と防塵カバー170は、好ましくは扉の吊り構造部100の第1吊り案内部101と第2吊り案内部102に対して、粉体等の塵埃が入り込んで付着するのを防止することができる。このため、粉体等が、第1レール111と第1支持ローラ112と第1支持アーム113と、第2レール121と第2支持ローラ122と第2支持アーム123の上に堆積するのを防げる。
従って、機器Mを用いることで粉体が発生する環境下であっても、第1吊り案内部101は、第1前面扉31を吊った状態で、X方向に手動でスムーズにスライド操作できる。第2吊り案内部102は、第2前面扉32を吊った状態で、X方向に手動でスムーズにスライド操作できる。
また、図5に示すように、第1前面扉31の下端部31Dと、第2前面扉32の下端部32Dの付近には、ケース部11の前面開口30を形成する部分30Pに対して、隙間Wが形成されている。この隙間Wは、例えば3mmから5mm程度である。前面開口30が第1前面扉31と第2前面扉32により閉鎖されている状態であっても、この隙間Wを通じて外部の空気を、ケース部11の作業空間G内に吸い込むことで、作業空間G内を定風量でしかも定風量であっても、作業空間G内を負圧に維持する。
また、図5に例示するように、第1前面扉31の下端部31Dの角部分と、第2前面扉32の下端部32Dの角部分は、好ましくはそれぞれ面取りが施されている。そして、前面開口30を形成する部分30Pの上面側には、緩やかな山形形状を有する隆起部分30Fが形成されている。
これにより、ケース部11の外側の室内の空気ARが、隙間Wを通じて作業空間G内に吸引されて、作業空間G内は負圧に維持されるが、作業空間Gの負圧状態により、第1前面扉31の下端部31Dが緩やかな形状の隆起部分30Fに当たるようにすることで、第1前面扉31の大きな揺れ動作を防ぐことができる。
しかも、第1前面扉31の下端部31Dと第2前面扉32の下端部32Dは、それぞれ面取りされているので、第1前面扉31の下端部31Dと第2前面扉32の下端部32Dの角部分が互いに擦れるのを防げる。
図1と図2に戻ると、ケース部11の左側面部23は、アルミニウムの枠材に透明板、例えばアクリル板23Aをはめ込むことで構成されている。この左側面部23のアクリル板23Aには、4つのグローブポート40,41が設けられている。グローブポート40,41は、作業者の手を挿入して作業空間G内で作業を行うための挿肢口である。グローブポート40,41には、袖の長いゴム手袋42がそれぞれ取り付けられている。
このため、作業者は、手をグローブポート40,41のゴム手袋42に入れることにより、作業者の手は、アクリル板23A側から図1に示すケース部11内の作業空間G内で、ゴム手袋42に覆われたままで入れて、作業空間G内での必要な機器Mを用いた作業を、安全に行うことができる。なお、左側面部23は、図4において2点鎖線で示すように、ヒンジを介して開くことができる。
また、図1と図3に示すように、ケース部11の右側面部24は、アルミニウムの枠材に透明板、例えばアクリル板24Aと強化ガラス板24Bをはめ込むことで構成されている。この右側面部24のアクリル板24Aには、2つのグローブポート43,44が設けられている。グローブポート43,44は、作業者の手を挿入して作業空間G内で作業を行うための挿肢口である。グローブポート43,44には、袖の長いゴム手袋45がそれぞれ取り付けられている。
このため、作業者は、手をグローブポート43,44のゴム手袋45に入れることにより、作業者の手は、アクリル板24A側から図1に示すケース部11内の作業空間G内で、ゴム手袋45に覆われたままで入れて、作業空間G内での必要な機器Mを用いた作業を、安全に行うことができる。
図2に示す上側の2つのグローブポート40,40と、図3に示す上側の1つのグローブポート43は、作業者がZ方向の上側の位置で手を差し入れて作業を行うことができる。図2に示す下側の2つのグローブポート41,41と、図3に示す下側の1つのグローブポート44は、作業者が下側の位置で手を差し入れて作業を行うことができる。
図1と図4に示すように、ケース部11の底板には、円形の開口部60が設けられている。この開口部60には、図1に示す廃棄物回収バッグ61が着脱可能に取り付けられている。これにより、作業者は、例えば手をゴム手袋42に入れて、作業空間G内で生じた廃棄物を、作業空間Gの外部とは隔離された状態で、廃棄物回収バッグ61内に収容することで廃棄できる。
<架台部12>
図1と図2に示すように、架台部12は、底部の四隅部に、キャスタ12Aを備える。各キャスタ12Aは、高さ調整が可能になるように、アジャストボルトを有する。各キャスタ12Aは、各アジャスタボルトを回転させることで、床面FW上において架台部12を水平に保持することができる。ケース部11の作業空間G内に配置する対象の機器Mは、精密な機器であるので、水平度を保つことも重要である。
架台部12は、縦方向(Z方向)の4本の支柱13と、2本の左右方向(X方向)の横部材14と、2本の是前後方向(Y方向)の横部材15を有している。各支柱13は、四隅位置に配置されており、図1に示すように、前側の支柱13,13には、前面のカバー板16が配置されている。このカバー板16には、操作盤17が配置されており、操作盤17は、例えば照明スイッチ17Aや、排風機運転スイッチ17B等を有している。また、架台部12は、配電盤18を有する。
図2と図3に示すように、ファン・フィルターユニット80は、ホース81を介して、連結部82に接続されている。対象の機器Mが作業空間G内に排出する有害ガス等は、連結部82とホース81を介して、ファン・フィルターユニット80に吸引される。ファン・フィルターユニット80は、例えば高性能なHEPAフィルタを内蔵しており、有害ガスから必要な物質を除去する。
<機器封じ込め装置1の使用例>
次に、上述した構造を有する機器封じ込め装置1の使用例を、図1から図6を参照して説明する。
図1と図2に示すように、ケース部11の作業空間G内には、対象の機器Mが収容される。この対象の機器Mとしては、例えば噴霧乾燥機である。機器Mは、図1と図2に示すように、縦長の外形形状を有する装置である。
この噴霧乾燥機は、スプレードライ(噴霧乾燥)方式で、手軽に試料を微粉末化することができる装置である。噴霧乾燥機は、微粒子試料に瞬間的に熱をかけるので、乾燥された微粉末試料そのものに高い温度がかかることがないために、熱に不安定な試料でも安心して均質な微粉末を得ることができる。作業者がこの対象の機器Mを扱う場合には、対象の機器Mの構造上、作業者が作業を行う際の手の作業移動は、上下方向(Z方向)に沿ったハンドリング操作であることが多い。
作業者が、対象の機器Mを、ケース部11の作業空間G内に入れて設置する場合には、引違式の第2前面扉32をX方向にスライド操作することで、前面開口30の右側領域を開放することができる。このように、前面開口30の右側領域を開放した状態で、縦長の外形形状を有する機器Mを、この前面開口30の開放された右側領域を通じて、作業空間G内に、容易に収めることができる。その後、第2前面扉32は逆にスライド操作することで、前面開口30は、第1前面扉31と第2前面扉32により閉鎖することで、機器Mは、作業空間G内に封じ込められる。
ただし、図5に示すように、第1前面扉31の下端部31Dと、第2前面扉32の下端部32Dの付近にある隙間Wは、外部の空気を、ケース部11の作業空間G内に吸い込むことで、定風量でしかも定風量であっても、作業空間G内を負圧状態に維持することができる。
そして、作業者が、ケース部11の作業空間G内の機器Mを用いて、スプレードライ(噴霧乾燥)方式で、試料を微粉末化する際には、作業者の手の作業移動は、Z方向に沿って行う必要がある。このため、図2に示す上側の2つのグローブポート40,40と、図3に示す上側の1つのグローブポート43には、作業者がZ方向の上側の位置で手を差し入れことができ、図2に示す下側の2つのグローブポート41,41と、図3に示す下側の1つのグローブポート44には、作業者が下側の位置で手を差し入れて作業を行うことができるようになっている。
すなわち、図2に示すように、ケース部11は、作業空間G内に配置されている機器Mに対して、好ましくは作業者が手で、Z方向の上側の位置で作業したり、あるいは作業者がZ方向の下側の位置で作業を行えるようになっている。
このように作業者が、対象の機器Mを用いて、試料を微粉末化すると、有害微粒子である粉体が、発塵あるいは排出される。しかし、図5に示すように、本発明の実施形態のケース部11では、第1前面扉31の下端部31Dと、第2前面扉32の下端部32Dは、下側のレールにより支持されている構造ではなく、下側のレールはケース部11には設けられていない。このことから、本発明の実施形態のケース部11では、従来のように下側のレールが粉体溜まりの原因になってしまうことがないので、ケース部11の下部において、粉体が溜まるのを防ぐことができる。
また、図5に示すように、防塵部150は、好ましくは扉の吊り構造部100の第1吊り案内部101と第2吊り案内部102に対して、粉体等の塵埃が入り込んで付着するのを防止している。
防塵部150の防塵用のブラシ151と防塵カバー170は、好ましくは扉の吊り構造部100の第1吊り案内部101と第2吊り案内部102に対して、粉体等の塵埃が入り込んで付着するのを防止することができる。このため、粉体等が、第1レール111と第1支持ローラ112と第1支持アーム113と、第2レール121と第2支持ローラ122と第2支持アーム123の上に堆積するのを防げる。
また、防塵用のブラシ151は、防塵カバー170の下部の開放部分171を塞ぐようにして設けられている。これにより、第1支持アーム113の下部113Bと第2支持アーム123の下部123Bが、それぞれX方向に移動する際には、防塵用のブラシ151の第1起毛部分161と第2起毛部分162は、防塵カバー170の下部の開放部分171を塞いでいる。これにより、防塵用のブラシ151は、防振カバー170の開放部分171から粉体等が侵入するのを防ぐことができる。
このように、機器Mを使用することにより粉体が発生する環境下であっても、第1吊り案内部101は、第1前面扉31を吊った状態で、X方向に手動でスムーズにスライド操作できる。第2吊り案内部102は、第2前面扉32を吊った状態で、X方向に手動でスムーズにスライド操作できる。
前面開口30は、第1前面扉31または第2前面扉32を水平方向にスライド操作するだけで、閉じて、機器Mを作業空間Gの雰囲気内に封じ込めることができる。
第1前面扉31、第2前面扉32は、ケース部11に対して吊り下げるようにして、水平方向(X方向)にスライド操作可能に保持されている。このため、第1前面扉31、第2前面扉32の下部を支持して案内するためのレールを、ケース部11に設けることが不要である。従って、粉体が、第1前面扉31、第2前面扉32の下部に対応するケース部11の部分に溜まってしまうことを防ぐことができる。
また、第1前面扉31、第2前面扉32は、水平方向にスライド操作できるので、従来の上下方向にスライドする扉を採用するのに比べて、第1前面扉31、第2前面扉32を水平方向にスライド操作して開口を開けることで、開口30は、上下方向に沿って縦長に開放できる。このため、機器Mに対する上下方向(Z方向)の作業移動、例えば機器のメンテナンス時等の作業移動は、開放された縦長の開口30において容易に行うことができる。
図1から図6に示す本発明の第1実施形態の機器封じ込め装置1では、対象の機器Mを作業空間Gの雰囲気内に封じ込めた状態で、対象の機器Mを用いた上下方向(Z方向)の作業に対応することができるので、機器封じ込め装置1の操作性の向上が図れる。前面開口30の下部付近において粉体が溜まるのを防ぐことができるので、粉体が飛散したり防露することが抑制できることから、作業者が操作する際の安全性を向上できる。作業者が、対象の機器Mを、作業空間Gの雰囲気内に封じ込めた状態で、機器Mを用いて、安全にかつ容易に必要な作業を行うことができる。
<第2実施形態>
図7は、本発明の第2実施形態の機器封じ込め装置を示している。
図7に示す本発明の第2実施形態扉の吊り構造部100Aと防塵部150Aは、図5に示す本発明の第1実施形態における扉の吊り構造部100と防塵部150とは異なる別の実施形態である。図7に示す第2の実施形態の箇所が、図5に示す第1実施形態の同様の箇所と実質的に同じである場合には、同じ符号を記してその説明を用いる。
図7に示すように、扉の吊り構造部100Aは、第1前面扉31と第2前面扉32を、吊った状態でX方向にスライド操作可能である。扉の吊り構造部100Aは、第1吊り案内部101Aと、第2吊り案内部102Aを有する。第1吊り案内部101Aは、第1前面扉31を吊った状態で、X方向に手動でスライド操作できるように支持している。第2吊り案内部102Aは、第2前面扉32を吊った状態で、X方向に手動でスライド操作できるように支持している。第1吊り案内部101Aと第2吊り案内部102Aは、同様な構造を有している。
第1吊り案内部101Aは、第1レール111Aと、第1支持ローラ112Aと、第1支持アーム113Aを有する。第1レール111Aは、ケース部11の前面側の上面11Rに、X方向に沿って、水平に設けられている。
第1支持アーム113Aは、ほぼ断面U字型の部材であり、第1支持アーム113Aは、第1支持ローラ112Aと第1前面扉31を連結している。第1支持アーム113Aの上部は、第1支持ローラ112Aを回転可能に支持している。第1支持アーム113Aの下部は、第1前面扉31の上部に固定されている。第1レール111Aは、第1支持ローラ112Aを載せた状態で、X方向に案内しながら移動可能に支持している。
これにより、第1吊り案内部101Aは、第1前面扉31を吊った状態で、X方向に手動でスライド操作できる。
一方、第2吊り案内部102Aは、第2レール121Aと、第2支持ローラ122Aと、第2支持アーム123Aを有する。第2レール121Aは、ケース部11の前面側の上面11Rに対して、X方向に沿って、水平に固定されている。
第2支持アーム123Aは、ほぼ断面U字型の部材であり、第2支持アーム123Aは、第2支持ローラ122Aと第2前面扉32を連結している。第2支持アーム123Aの上部は、第2支持ローラ122Aを回転可能に支持している。第2支持アーム123の下部は、第2前面扉32の上部に固定されている。第2レール121Aは、第2支持ローラ122を載せた状態で、X方向に案内しながら移動可能に支持している。
これにより、第2吊り案内部102Aは、第2前面扉32を吊った状態で、X方向に手動でスライド操作できる。
図7に示す粉体等が扉の吊り構造部100に侵入するのを防ぐ防塵部150Aは、例えば金属製の防塵用のブラシ191と、防塵カバー180を有する。
例えば金属製の防塵カバー180は、前面側の上面11Rに固定されていることで、第1吊り案内部101Aと第2吊り案内部102Aを覆っている。防塵カバー180の下部の開放部分181には、第1支持アーム113Aと第2支持アーム123Aが通っている。
しかも、防塵用のブラシ191は、防塵カバー180の下部の開放部分181を塞ぐようにして設けられている。防塵用のブラシ191は、第1起毛部分201と、第2起毛部分202を有する。第1起毛部分201は、ケース部11の上部11Tに固定されており、Y方向に沿っている。第2起毛部分202は、防塵カバー180の内面180Nに固定されており、Y方向に沿っている。第1起毛部分201の先端部と、第2起毛部分202の先端部は、接近している。
第1支持アーム113Aの下部は、第1起毛部分201の先端部に突き当たっており、第2支持アーム123Aの下部は、第2起毛部分202の先端部に突き当たっている。これにより、第1支持アーム113Aの下部と第2支持アーム123Aの下部が、それぞれX方向に移動する際には、防塵用のブラシ191の第1起毛部分201と第2起毛部分202は、防塵カバー180の下部の開放部分181を塞いでいるので、防振カバー180の開放部分181から粉体等が侵入するのを防ぐことができる。
このように、防塵部150Aの防塵用のブラシ191と防塵カバー180は、好ましくは扉の吊り構造部100Aの第1吊り案内部101Aと第2吊り案内部102Aに対して、粉体等の塵埃が入り込んで付着するのを防止することができる。
従って、機器を用いることで粉体が発生する環境下であっても、第1吊り案内部101Aは、第1前面扉31を吊った状態で、X方向に手動でスムーズにスライド操作できる。第2吊り案内部102Aは、第2前面扉32を吊った状態で、X方向に手動でスムーズにスライド操作できる。
以上説明したように、本発明の実施形態の機器封じ込め装置1は、閉鎖された本体10の作業空間G内に機器Mを収容して、機器Mを外気に対して封じ込める。本体10は、作業空間Gを形成し、機器Mを作業空間G内に搬入する前面開口30を有するケース部11と、ケース部11の前面開口30を開閉可能な扉(第1前面扉31、第2前面扉32)と、を備える。この扉は、ケース部11に対して吊り下げてスライド操作可能に保持されている。
これにより、開口(前面開口30)は、扉(第1前面扉31、第2前面扉32)を水平方向にスライド操作するだけで、閉じて、機器Mを作業空間Gの雰囲気内に封じ込めることができる。
扉(第1前面扉31、第2前面扉32)は、ケース部11に対して吊り下げるようにして、水平方向(X方向)にスライド操作可能に保持されている。このため、扉(第1前面扉31、第2前面扉32)の下部を支持して案内するためのレールを、ケース部11に設けることが不要である。従って、粉体が、扉(第1前面扉31、第2前面扉32)の下部に対応するケース部11の部分に溜まってしまうことを防ぐことができる。
また、扉(第1前面扉31、第2前面扉32)は、水平方向にスライド操作できるので、従来の上下方向にスライドする扉を採用するのに比べて、扉(第1前面扉31、第2前面扉32)を水平方向にスライド操作して開口を開けることで、開口30は、上下方向に沿って縦長に開放できる。このため、機器Mに対する上下方向(Z方向)の作業移動、例えば機器のメンテナンス時等の作業移動は、開放された縦長の開口30において容易に行うことができる。
開口は、ケース部11の前面に設けられた前面開口30であり、扉は、前面開口30を開閉可能である引違いの第1前面扉31と第2前面扉32であり、ケース部11に設けられ、第1前面扉31と第2前面扉32を吊り下げて水平方向にスライド操作可能に保持する扉の吊り構造部100を有する。これにより、扉の吊り構造部100をケース部11に設けるだけで、扉の吊り構造部100は、引違いの第1前面扉31と第2前面扉32を吊り下げて保持しており、ケース部11の前面開口30を容易に開閉できる。
扉の吊り構造部100は、扉の吊り構造部を覆う防塵カバー170と、防塵カバー170の隙間から扉の吊り構造部100に粉体が侵入するのを防ぐための防塵用のブラシ151を有する。これにより、防塵カバー170は、扉の吊り構造部100を覆っていることで、粉体が扉の吊り構造部100に入ることを防ぐことができる。しかも、防塵用のブラシ151は、防塵カバー170の隙間から扉の吊り構造部100に粉体が侵入するのを防ぐことができる。従って、扉の吊り構造部100の機能が粉体により悪影響を受けないので、扉の吊り構造部100を用いて扉(第1前面扉31、第2前面扉32)を水平方向にスムーズにスライド移動できる。
作業空間G内は、低風量で排気される。これにより、低風量で、作業空間内に有害ガス等を封じ込めておくことができるので、省エネルギー化が図れる。
第1前面扉31の下端部31Dと第2前面扉32の下端部32Dと、ケース部11との間には、隙間Wが形成されている。これにより、作業空間G内へ隙間Wから空気を取り入れることで、作業空間G内は、負圧の状態に維持することができる。このため、機器Mから発生する粉体がケース部11の外部に漏れるのを防ぐことができる。
以上、実施形態を挙げて本発明を説明したが、各実施形態は一例であり、特許請求の範囲に記載される発明の範囲は、発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更できるものである。本発明の各実施形態は、任意に組み合わせることができる。
対象の機器Mとしては、スプレードライ(噴霧乾燥)方式で試料を微粉末化するための噴霧乾燥機に限らず、他の種類の機器、例えば薬物の粉体を、カプセルに充填して封入する装置や、分析機器や制御機器等であっても良い。
図示例では、ケース部11の開口としては、ケース部11の前面側に設けられた前面開口30である。しかし、これに限らず、ケース部の開口は、ケース部の側面側に側面開口部として設けるようにしても良い。