JP2017002208A - 粉体塗料 - Google Patents
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Abstract
Description
剛直骨格を有するナフタレン型エポキシ樹脂は、高いガラス転移温度(Tg)を有することが知られている。しかし、特許文献1の組成物では、近年特に自動車分野において求められている長期高温耐熱性を実現することは困難である。本発明者らは、ナフタレン型エポキシ樹脂を基に各種検討を行い、250℃程度の高温環境下で長期にわたり優れた性能を維持できる塗膜を製造するための粉体塗料を開発した。
しかしながら、ナフタレン型エポキシ樹脂を主剤とする樹脂組成物をより厳しい環境下で使用するためには、短期耐熱性をさらに改善することが求められる。
そこで、本発明は、成膜性に優れ、かつ250℃以上の高温環境下において、長期にわたり優れた性能を維持できる塗膜を製造するための粉体塗料を提供することを目的とする。
また、本発明の粉体塗料は、110℃〜330℃の範囲に複数のガラス転移温度を有することが好ましい。
さらに、上記アラルキル樹脂は、フェノールアラルキル樹脂であることが好ましい。
本発明の成形品は、上記粉体塗料を塗装した塗膜を備えることを特徴とする。
以下に、本発明の粉体塗料の詳細について説明する。
なお、以下の説明では、便宜上、ナフタレン型エポキシ樹脂及びアラルキル樹脂をマトリックス1とし、ビスマレイミド及びPd型ベンゾオキサジンの少なくとも1つを含む組成物をマトリックス2とする。
本発明の粉体塗料では、主剤の1つとして、ナフタレン型エポキシ樹脂を用いる。剛直骨格を有するナフタレン型エポキシ樹脂は、高いガラス転移温度(Tg)を示す。また、ナフタレン型エポキシ樹脂は、縮合環構造を有するため、長期耐熱性を有する。さらに、平面構造のナフタレン骨格を有するナフタレン型エポキシ樹脂は、立体障害が小さいため、硬化剤の求核攻撃が阻害されにくい。このため、比較的短時間で硬化反応が進行する。
本発明に用いられるナフタレン型エポキシ樹脂は、特に限定されず、構造式(化1)、構造式(化2)、構造式(化3)等で表されるナフタレン型エポキシ樹脂及びそれらの混合物を用いることができる。市販品としては、EPICLON HP−4700、HP−4710、HP−4770、HP−6000(以上、DIC株式会社製)等が挙げられる。得られる塗膜の脆性を改善するためには、ナフタレン型エポキシ樹脂の官能基数は2〜4が好ましく、2とするのが特に好ましい。
また、本発明の効果が損なわれない範囲で、所望により、ナフタレン型エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂を添加してもよい。その配合量は全エポキシ樹脂の40質量%以下であることが好ましい。
本発明の粉体塗料では、硬化剤として、アラルキル樹脂を用いる。ナフタレン型エポキシ樹脂とともに硬化剤として、アラルキル樹脂を用いることにより、硬化物である塗膜の長期安定性が向上し、高温環境で長時間保持後も塗膜の性能が保持される。これは、硬化物中に熱分解の原因となる構造が少ないためである。
アラルキル樹脂とは、下記一般式(化4)で表される。これらの中でも、入手が容易で、酸素バリア性に優れていることからAr2がフェノールであるフェノールアラルキル樹脂が好ましい。
各式中、Rはそれぞれ水素原子、炭素数1〜15の炭化水素基、トリフルオロメチル基、アリル基又はアリール基を表し、互いに同一でも異なっていてもよい。
mは0〜3の整数を表し、互いに同一でも異なっていてもよい。異なっている場合は任意の順で配列していてもよい。
nは1〜10の繰り返し数の平均値を表す。
また、アラルキル樹脂の使用割合はナフタレン型エポキシ樹脂のエポキシ当量あたり、官能基の当量で、0.6〜1.2当量であることが好ましく、0.7〜1.0当量であることがより好ましい。ナフタレン型エポキシ樹脂とアラルキル樹脂の当量比を上記範囲とすることにより、粉体塗料の成膜性や接着性が向上し、得られる塗膜の長期耐熱性がさらに向上する。
本発明の粉体塗料は、ビスマレイミド及び後述するPd型ベンゾオキサジンの少なくとも1つを含有する樹脂組成物から得られる。ビスマレイミドは、熱硬化性のポリイミドであり、高密度に架橋して、高い耐熱性を示す。
本発明に用いられるビスマレイミドは、特に限定されず、以下の一般式(化5)で表されるビスマレイミド、ビス−(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、フェニレンビスマレイミド等及びそれらの混合物等を用いることができる。市販品としては、BMI−1000、BMI−1000H、BMI−1100、BMI−1100H(いずれも4、4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、大和化成工業株式会社製)、BMI(4、4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、ケイ・アイ化成株式会社製)、BMI−70(ビス−(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ケイ・アイ化成株式会社製)、サンフェル BM(N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、三新化学工業株式会社製)等が挙げられる。
上記ビスマレイミドの中でも、以下の一般式(化5)で表されるビスマレイミドが好ましい。以下にこのビスマレイミドの詳細について説明する。
X1:炭素数1〜10のアルキレン基、以下の化学式(化6)で表される基、−SO2−、−CO−、酸素原子、又は単結合
直鎖状のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デカニレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられる。
分岐鎖状のアルキレン基としては、−C(CH3)2−(イソプロピレン基)、−CH(CH3)−、−CH(CH2CH3)−、−C(CH3)(CH2CH3)−、−C(CH3)(CH2CH2CH3)−、−C(CH2CH3)2−等のアルキルメチレン基;−CH(CH3)CH2−、−CH(CH3)CH(CH3)−、−C(CH3)2CH2−、−CH(CH2CH3)CH2−、−C(CH2CH3)2−CH2−等のアルキルエチレン基等が挙げられる。
上記アルキレン基の炭素数は、1〜10であることが好ましく、1〜7であることがより好ましく、1〜3であることがさらに好ましい。
具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基が挙げられる。
芳香族環を有する炭素数6〜30の炭化水素基は、芳香族環のみからなるものでもよいし、芳香族環以外の炭化水素基を有していてもよい。また、芳香族環は、1つでもよいし、2つ以上であってもよい。芳香族環が2つ以上の場合、同一の芳香族環のみを有していてもよいし、異なる芳香族環を有していてもよい。また、芳香族環は、単環構造及び多環構造のいずれでもよい。
芳香族環を有する炭素数6〜30の炭化水素基としては、ベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、フェナントレイン、インダセン、ターフェニル、アセナフチレン、フェナレン等の芳香族性を有する化合物の核から水素原子を2つ除いた2価の基が挙げられる。
また、これら芳香族炭化水素基は、置換基を有していてもよい。ここで芳香族炭化水素基が置換基を有するとは、芳香族炭化水素基を構成する水素原子の一部又は全部が置換基により置換されたことをいう。置換基としては、アルキル基が挙げられる。
置換基としてのアルキル基としては、鎖状のアルキル基であることが好ましい。その炭素数は1〜10であることが好ましく、1〜6であることがより好ましく、1〜4であることがさらに好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基等が挙げられる。
Y:芳香族環を有する炭素数6〜30の炭化水素基
n:0以上の整数
本発明の粉体塗料は、上記ビスマレイミド及びPd型ベンゾオキサジンの少なくとも1つを含有する樹脂組成物から得られる。ベンゾオキサジンは、優れた難燃性、電気特性、寸法安定性を有し、硬化時に副生成物を生じない。Pd型ベンゾオキサジンの硬化物は、フェノール樹脂と同等の機械的特性を有することが知られている。Pd型ベンゾオキサジンの硬化反応は、以下のように進行すると考えられている。Pd型ベンゾオキサジンは熱により、開環重合し、主鎖にN、O−アセタール構造を有するポリマーが得られる。さらに加熱することにより、N、O−アセタール構造がマンニッヒ型の主鎖へと転位し、200℃を超えると、全てがマンニッヒ型の主鎖のポリマーに変換する。上記ポリマーとビスマレイミドを部分的に反応させることにより、高耐熱性のネットワークポリマーが形成される。
本発明に用いられるPd型ベンゾオキサジンは、特に限定されず、以下の一般式(化12)で表されるPd型ベンゾオキサジン及びそれらの混合物を用いることができる。市販品としては、Pd型ベンゾオキサジン(四国化成工業株式会社製)等が挙げられる。
X2:炭素数1〜10のアルキレン基、上記化学式(化6)で表される基、−SO2−、−CO−、酸素原子、又は単結合
上記化学式(化12)中のX2は、炭素数1〜3の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基、又は上記化学式(化7)、(化8)、(化9)のいずれかの基であることが好ましい。
また、本発明におけるマトリックス1成分とマトリックス2成分の総質量に対するマトリックス2成分の割合、すなわち、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビスマレイミド、アラルキル樹脂、Pd型ベンゾオキサジンの総質量に対するビスマレイミドとPd型ベンゾオキサジンの合計質量の割合は、80%以下であることが好ましい。マトリックス1成分とマトリックス2成分の総質量に対するマトリックス2成分の割合を上記範囲とすることにより、粉体塗料の成膜性が向上する。
本発明の粉体塗料には、発明の効果が損なわれない範囲で、必要に応じて各種添加剤を添加することができる。上記添加剤としては、充填剤、レベリング剤、着色剤、硬化促進剤、消泡剤、密着向上剤、衝撃緩和剤等が挙げられる。
充填剤としては、例えばシリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、クレー、セルロース等を用いることができる。これらの充填剤を添加することにより、粉体塗料の流れをより好適に制御することができる。なお、これらの充填剤は1種単独で用いても、2種以上を混合して用いても良い。
本発明の粉体塗料の製造方法は特に限定されないが、例えば以下の方法により製造することができる。粉体塗料に充填剤を添加する場合には、Pd型ベンゾオキサジン及びビスマレイミドの少なくとも1つ、ナフタレン型エポキシ樹脂及びアラルキル樹脂並びに充填剤を混合する。混合法としては、ヘンシェルミキサー、Vブレンダーを用いた乾式混合等が挙げられる。上記混合物に必要によりその他の添加剤を加えて、溶融混合した後、冷却固化する。その後、固化した混合物を微粉砕して、分級することにより粉体塗料が得られる。
本発明の粉体塗料の粒子径は、特に限定されないが、レーザー回折・散乱法(JIS 8825−1)による体積平均粒子径が30μm〜70μmの範囲であることが好ましい。なお、上記体積平均粒子径は、レーザー回折式粒子径分布測定装置(SYMPATEC社製、HELOS and PODOS 解析ソフト:WINDOX5)を用いて測定することができる。
体積平均粒子径が上記範囲の粉体塗料を用いることにより、より優れた成膜性が得られる。
なお、水平流れ率は以下の方法により算出される。粉体塗料1gを内径16mmφの錠剤成形用金型に入れ、荷重90MPaで60秒加圧して得られる錠剤の直径(a)をノギスで測定する。上記錠剤をスライドガラスに載せ、熱風乾燥機中にて140℃で10分間加熱後、同様に錠剤の直径(b)を測定する。加熱による直径の増加値(b−a)を加熱前の直径(a)で除した値に100をかけて水平流れ率(%)とする。
また、本発明の粉体塗料は、250℃において残存重量が初期重量の95%となるまでの所要時間が、10時間以上であることが好ましい。この値は、後述するように、示差熱熱重量同時分析(TG/DTA)装置を用いて測定した粉体塗料の熱重量変化の結果を用いて、Flynn−Wall−Ozawa法により算出できる。上記値が、10時間以上であれば、250℃以上の使用においても長期にわたり十分な耐熱性を維持できる。
本発明の粉体塗料の塗装方法は、特に限定されず、公知の塗装方法が適用できる。具体的には、静電塗装、摩擦帯電塗装、無荷電塗装、流動浸漬等が挙げられる。上記方法により、被塗装体表面に粉体塗料を塗装した後、硬化することにより塗膜を得ることができる。必要に応じて被塗装体に予め表面処理を施すことにより、塗膜の密着性等を向上させることもできる。
本発明の粉体塗料から得られる塗膜の膜厚は特に限定されないが、50μm以上500μm以下が好ましい。
(1)マトリックス1成分
(A)主剤
(A1)ナフタレン型エポキシ樹脂:EPICLON HP−4770 DIC株式会社製
(A2)ビスフェノールA型エポキシ樹脂:jER1004 三菱化学株式会社製
(A3)ビスフェノールF型エポキシ樹脂:YDF−2004 新日鉄住金化学株式会社製
(B)硬化剤
(B1)ビフェニルアラルキルフェノール:KAYAHARD GPH−65 日本化薬株式会社製(軟化点:65℃)
(B2)ビフェニルアラルキルフェノール:KAYAHARD GPH−103 日本化薬株式会社製(軟化点:102℃)
(B3)酸無水物:3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
(2)マトリックス2成分
(C)主剤
(C1)Pd型ベンゾオキサジン:四国化成工業株式会社製
(D)硬化剤
(D1)ビスマレイミド:BMI(4、4’−ジフェニルメタンビスマレイミド)ケイ・アイ化成株式会社製
初めにエポキシ樹脂の最適な組成を決定するため、以下の予備実験を行った。
表1に示す配合比(質量)で上記主剤及び硬化剤をレベリング剤、硬化促進剤とともにミキサーで混合後、エクストルーダにより溶融混合した。混合物を冷却固化した後、微粉砕することにより、予備実験の粉体塗料を得た。なお、ここでは、充填剤は添加していない。また、硬化促進剤として、イミダゾールを主剤100質量部に対して、1質量部添加した。得られた粉体塗料の250℃で残存重量95%となるまでの推定時間を後述する方法で測定及び算出した結果を表1に示す。
表1に示すように、主剤として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びビスフェノールF型エポキシ樹脂をそれぞれ用い、硬化剤として、ビフェニルアラルキルフェノールを用いた参考例3及び参考例4では、250℃で残存重量が95%となるまでの推定時間がそれぞれ、2.5時間及び2.0時間と短いことがわかる。
また、主剤として、ナフタレン型エポキシ樹脂を用い、硬化剤として、酸無水物を用いた参考例5でも、250℃で残存重量が95%となるまでの推定時間は、3時間と短いことが確認された。
これに対して、主剤として、ナフタレン型エポキシ樹脂を用い、硬化剤としてビフェニルアラルキルフェノールを用いた参考例1及び参考例2では、250℃で残存重量が95%となるまでの推定時間がそれぞれ55時間及び73時間となり、参考例3〜5に比べて、耐熱性が大幅に向上することが確認された。そこで、以下の実施例においては、ナフタレン型エポキシ樹脂及びビフェニルアラルキルフェノールをマトリックス1成分として用いることとした。
以下の実施例では、参考例1及び参考例2の樹脂混合物に充填剤を添加した組成物をそれぞれ比較例1及び比較例2とした。そして、これらの組成物から得られる粉体塗料の耐熱性をベースに検討を行った。
表2に示す配合比(質量)でマトリックス1成分及びマトリックス2成分の主剤及び硬化剤を、充填剤、レベリング剤、硬化促進剤とともにミキサーで混合後、エクストルーダにより溶融混合した。混合物を冷却固化した後、微粉砕することにより、実施例1及び実施例2の粉体塗料を得た。なお、ここでは、充填剤としてシリカを用いた。また、硬化促進剤として、イミダゾールを用いた。得られた粉体塗料を用いて、以下に示す方法で、ガラス転移温度(Tg)、線膨張係数及び曲げ強さを測定した結果を表2に示す。
また、マトリックス2成分を添加しない他は、実施例1及び実施例2と同様の方法で粉体塗料を調製して、それぞれ比較例1及び比較例2とした。さらに、マトリックス1成分を添加しない他は、実施例1と同様の方法で粉体塗料を調製して比較例3とした。比較例1〜3についても実施例1と同様に、ガラス転移温度、線膨張係数及び曲げ強さを測定した。結果を表2に示す。なお、比較例3の粉体塗料から得られる塗膜は脆く、250℃で1000時間保持後には、試料にそりが生じ、長期耐熱性に問題があることが確認されたため、曲げ強さの測定は行わなかった。
表3に示すように、マトリックス2成分中のPd型ベンゾオキサジンとビスマレイミドの比を変えた他は、実施例2と同様の方法で粉体塗料を調製した(実施例3〜8)。得られた試料のガラス転移温度、線膨張係数及び曲げ強さを測定した結果を表3に示す。
なお、実施例3及び実施例8では、マトリックス2成分として、ビスマレイミド及びPd型ベンゾオキサジンをそれぞれ単独で添加した。
なお、比較のため比較例2及び実施例2の結果も表3に示す。
表4に示すように、マトリックス1成分とマトリックス2成分の比を変えた他は、実施例4と同様の方法で粉体塗料を調製した(実施例9〜11)。得られた試料のガラス転移温度及び線膨張係数を測定し、成膜性を評価した結果を表4に示す。
なお、比較のため、比較例2、実施例4及び比較例3の結果も表4に示す。
得られた粉体塗料を用いて、5mm×5mm×20mmの角柱に成形して試験片を作製し、200℃で1時間硬化することによりTg測定用の試料とした。JIS C2161に基づいて、熱機械分析装置(TMA)を用いて測定を行い、Tgを算出した。具体的には、荷重10.0g、昇温速度5℃/minで、30℃〜320℃の温度範囲で測定を行った。
得られた粉体塗料を用いて、5mm×5mm×20mmの角柱に成形して試験片を作製し、200℃で1時間硬化することにより線膨張係数測定用の試料とした。JIS C2161に基づいて、熱機械分析装置(TMA)を用いて測定を行い、線膨張係数を算出した。具体的には、荷重10g、昇温速度5℃/minで、30℃〜320℃の温度範囲で測定を行い、試料の寸法変位から線膨張係数を算出した。
得られた粉体塗料を金型に充填し、200℃で1時間硬化させた後、25mm×40mm×0.5mmの短冊状に切り出すことにより曲げ強さ測定用の試料を作製した。それぞれの試料の加熱前の曲げ強さ及び250℃の電気炉中で、1000時間保持後の曲げ強さを測定した。曲げ強さは、精密万能試験機(インストロン5982)を用いて、支点間距離28mm、試験速度1mm/minで測定した。
実施例、比較例及び参考例の粉体塗料を金型に充填し、200℃で1時間硬化させた後、3mm×3mm×0.5mmに切り出すことにより評価用試料を作製した。示差熱熱重量同時分析(TG/DTA)装置を用いて、それぞれの試料の熱重量変化を測定した。ここで、昇温速度は、5K/min、10K/min、20K/min及び30K/minでそれぞれ測定を行った。それぞれの結果から残存量が初期重量の95重量%となったときの温度を読み取り、等変化率法の1種であるFlynn−Wall−Ozawa法により250℃で残存量が初期重量の95%となるまでの推定時間を算出した。
実施例及び比較例の粉体塗料を流動させ、予め200℃に加熱した60mm×60mm×3mmの鋼板を浸漬した後、電気炉中で、200℃で1時間保持することにより、塗料を硬化させた。
硬化後の状態を目視で観察し、以下の判断基準で成膜性を評価した。
○:塗料が流れず、平滑に塗装されている
△:一部塗料が流れるが、おおむね平滑に塗装されている
×:塗料が流れている
また、200℃〜209℃の温度範囲での線膨張係数は、比較例1では、119×10−6/Kであるのに対し、実施例1では、98×10−6/Kに低下し、比較例2では、105×10−6/Kであるのに対し、実施例2では、88×10−6/Kに低下することが確認された。
さらに、初期曲げ強さは、比較例1及び比較例2では、それぞれ、124MPa及び131MPaであるのに対して、実施例1及び実施例2では、それぞれ、139MPa及び175MPaと向上することがわかった。また、250℃で1000時間保持後の曲げ強さも比較例1及び比較例2に比べて実施例1及び実施例2では増加した。
なお、上記測定では、250℃で保持後の曲げ強さを評価したが、上記のとおり、実施例1及び実施例2では、線膨張係数が比較例1及び比較例2に比べて減少していることから、ヒートサイクル試験においても優れた機械特性を示すことが予想される。このため、本発明の粉体塗料は、低温から200℃以上の間の激しい温度変化の下で使用される自動車用途等にも好適に用いられると考えられる。
一方、マトリックス2成分のみを含有する比較例3では、ガラス転移温度は、331℃と高く、200℃〜209℃の温度範囲での線膨張係数は、48×10−6/Kと低かった。しかし、比較例3の試料は脆く、250℃で1000時間保持後には、試料にそりが生じ、成膜性及び長期耐熱性に問題があることが確認されたため、曲げ強さは測定しなかった。
以上の結果より、実施例1及び実施例2の粉体塗料では、比較例1及び比較例2より短期耐熱性及び機械的特性が向上し、比較例3の課題である成膜性及び長期耐熱性が改善されることが確認された。このことから、マトリックス1成分及びマトリックス2成分を含む樹脂組成物から得られる本発明の粉体塗料では、良好な成膜性を有し、機械特性並びに短期及び長期耐熱性の優れた塗膜が得られることがわかった。
Pd型ベンゾオキサジンは、ナフタレン型エポキシ樹脂、アラルキル樹脂と反応し、ビスマレイミドは、アラルキル樹脂と反応する。そのため、本発明の実施例1及び実施例2では、複数の硬化反応が進行し、各硬化反応により複数の相が生成すると考えられる。具体的には、異なるガラス転移温度を有し、親和性を有する2つの相が共存していると推測される。このような構造により、本発明の粉体塗料では、優れた成膜性、機械特性及び耐熱性が実現されると考えられる。
また、実施例2〜8のいずれの実施例でも比較例2より、線膨張係数が低下し、初期曲げ強さが向上することがわかった。なお、表には示していないが、いずれの実施例とも250℃で1000時間保持後も、十分な曲げ強さを維持することが確認されている。上記結果より、Pd型ベンゾオキサジンとビスマレイミドの比率に関わらす、Pd型ベンゾオキサジン及びビスマレイミドの少なくとも1つを添加することが、塗膜の機械特性及び短期耐熱性の向上に有効であることが確認された。特に、マトリックス2成分中のPd型ベンゾオキサジンの含有率、すなわち、{Pd型ベンゾオキサジンのモル数/(Pd型ベンゾオキサジンのモル数+ビスマレイミドのモル数)}×100が20%以上の実施例2及び実施例4〜8で優れた短期耐熱性が得られることがわかった。
なお、実施例2〜8のいずれの粉体塗料でも良好な成膜性が得られた。
ただし、マトリックス2成分の比率を80質量%とした実施例11では、成膜性の評価試験において、一部の塗料が流れることが確認された。そのため、成膜性を考慮すると、本発明の樹脂組成物中マトリックス1とマトリックス2の総量に対するマトリックス2の割合(質量)は、80%以下が好ましく、60%以下がより好ましいといえる。
Claims (4)
- Pd型ベンゾオキサジン及びビスマレイミドの少なくとも1つ、ナフタレン型エポキシ樹脂及びアラルキル樹脂を含有する組成物から得られることを特徴とする粉体塗料。
- 110℃〜330℃の範囲に複数のガラス転移温度を有することを特徴とする請求項1に記載の粉体塗料。
- 前記アラルキル樹脂がフェノールアラルキル樹脂であることを特徴とする請求項1又は2に記載の粉体塗料。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の粉体塗料を塗装した塗膜を備えることを特徴とする成形品。
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