免疫グロブリン配列、例えば抗体およびそれに由来する抗原結合断片(例えば、免疫グロブリン単一可変ドメインまたはISV)は、研究および治療応用においてそれらのそれぞれの抗原を特異的に標的化するために用いられている。免疫グロブリン単一可変ドメイン(例えばVHHまたはナノボディなど)の作出には、ラマなどの実験動物の免疫化、免疫組織からのファージライブラリーの構築、抗原に結合する免疫グロブリン単一可変ドメインを提示するファージの選択、ならびに望まれる特異性についてのそのドメインおよびその操作された構築物のスクリーニングが関わり得る(WO94/04678)。代替的に、類似の免疫グロブリン単一可変ドメイン(例えばdAbなど)は、ナイーブまたは合成ライブラリーから直接的に抗原に結合する免疫グロブリン単一可変ドメインを提示するファージを選択することと、望まれる特異性についてのそのドメインおよびその操作された構築物の爾後のスクリーニングとによって作出され得る(Ward et al., Nature, 1989, 341: 544-6; Holt et al., Trends Biotechnol., 2003, 21(11):484-490; さらには例えばWO06/030220、WO06/003388、およびDomantis Ltd.の他の公開特許出願)。残念ながら、モノクローナルおよび/または激しく操作された抗体の使用は、高い製造コストをもまた負っており、他の戦略と比較して最適とは言えない腫瘍浸潤をもたらし得る。
定義:
a)別様に指示または定義されない限り、用いられる全ての用語は当分野におけるそれらの通常の意味を有し、それらは当業者には明白であろう。例えばWO08/020079の46ページのパラグラフa)に挙げられている標準的なハンドブックが参照される。
b)別様に指示されない限り、用語「免疫グロブリン単一可変ドメイン」または「ISV」は、抗原結合ドメインまたは断片(例えば、それぞれVHHドメインまたはVHもしくはVLドメイン)を包含するが、これに限定されない一般的な用語として用いられる。用語抗原結合分子または抗原結合蛋白質は交換可能に用いられ、用語ナノボディをもまた包含する。免疫グロブリン単一可変ドメインは軽鎖可変ドメイン配列(例えばVL配列)または重鎖可変ドメイン配列(例えばVH配列)であり得る。より具体的には、それらは、重鎖抗体に由来する重鎖可変ドメイン配列または従来の4鎖抗体に由来する重鎖可変ドメイン配列であり得る。従って、免疫グロブリン単一可変ドメインは、ドメイン抗体、もしくはドメイン抗体としての使用にとって好適な免疫グロブリン配列、単一ドメイン抗体、もしくは単一ドメイン抗体としての使用にとって好適な免疫グロブリン配列、「dAb」、もしくはdAbとしての使用にとって好適な免疫グロブリン配列、またはナノボディ(VHH配列を包含するが、これに限定されない)であり得る。本発明は異なる起源の免疫グロブリン配列を包含し、マウス、ラット、ウサギ、ロバ、ヒト、およびラクダ類免疫グロブリン配列を含む。免疫グロブリン単一可変ドメインは、完全にヒト、ヒト化、別様の配列最適化またはキメラ免疫グロブリン配列を包含する。免疫グロブリン単一可変ドメインの免疫グロブリン単一可変ドメインおよび構造は、4つのフレームワーク領域または「FR」からなると考えられ(しかしながらこれに限定されない)、それらは当分野および本明細書においてそれぞれ「フレームワーク領域1」または「FR1」、「フレームワーク領域2」または「FR2」、「フレームワーク領域3」または「FR3」、「フレームワーク領域4」または「FR4」と言われる。フレームワーク領域は3つの相補性決定(complementary determining)領域または「CDR」によって分断されており、それらは当分野においてそれぞれ「相補性決定領域1」または「CDR1」、「相補性決定領域2」または「CDR2」、「相補性決定領域3」または「CDR3」と言われる。用語ナノボディ(Nanobody)またはナノボディ(Nanobodies)はAblynx N.V.の登録商標であり、それゆえに、それぞれナノボディ(登録商標)(Nanobody)またはナノボディ(登録商標)(Nanobodies)ともまた言われ得るということが注意される。
c)別様に指示されない限り、用語「免疫グロブリン配列」、「配列」、「ヌクレオチド配列」、および「核酸」は、WO08/020079の46ページのパラグラフb)に記載されている通りである。
d)別様に指示されない限り、詳細に具体的に記載されない全ての方法、ステップ、テクニック、およびマニピュレーションは、自体公知のやり方で実施され得、且つ実施された。これは当業者には明白であろう。例えば、標準的なハンドブックおよび本明細書において挙げられる一般的な背景技術、ならびにそこに引用された参照、さらには例えば以下の総説が再び参照される。Presta, Adv. Drug Deliv. Rev. 2006, 58 (5-6): 640-56; Levin and Weiss, Mol. Biosyst. 2006, 2(1): 49-57; Irving et al., J. Immunol. Methods, 2001, 248(1-2), 31-45; Schmitz et al., Placenta, 2000, 21 Suppl. A, S106-12, Gonzales et al., Tumour Biol., 2005, 26(1), 31-43。これは蛋白質操作のためのテクニック(例えば、免疫グロブリンなどの蛋白質の特異性および他の望まれる特性を改善するための親和性成熟および他のテクニック)を記載している。
e)アミノ酸残基は、標準的な3文字または1文字アミノ酸コードに従って指示される。「Immunoglobulin single variable domains directed against IL-6R and polypeptides comprising the same for the treatment of diseases and disorders associated with Il-6-mediated signalling」と題するAblynx N.V.の国際出願WO08/020079の48ページの表A−2が参照される。
f)2つまたは3つ以上のヌクレオチド配列を比較する目的のために、第1のヌクレオチド配列と第2のヌクレオチド配列との間の「配列同一性」のパーセンテージが、WO08/020079の49ページのパラグラフe)に記載されている通り計算および決定され得る(参照によって本明細書に組み込まれる)。これは例えば、[第2のヌクレオチド配列中の対応する位置のヌクレオチドと同一である第1のヌクレオチド配列中のヌクレオチドの数]を[第1のヌクレオチド配列中のヌクレオチドの合計数]によって除算し、[100%]によって乗算することにより、第1のヌクレオチド配列と比較して第2のヌクレオチド配列中のヌクレオチドの各欠失、挿入、置換、または追加は単一のヌクレオチド(位置)における違いと考えられる。または、再びWO08/020079の49ページのパラグラフe)に記載されている通り(参照によって本明細書に組み込まれる)、好適なコンピューターアルゴリズムまたはテクニックを用いることによる。
g)2つまたは3つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインまたは他のアミノ酸配列(例えば本発明のポリペプチドなど)を比較する目的のためには、第1のアミノ酸配列と第2のアミノ酸配列との間の「配列同一性」のパーセンテージ(本明細書においては「アミノ酸同一性」ともまた言われる)が、WO08/020079の49および50ページのパラグラフf)に記載されている通り計算または決定され得る(参照によって本明細書に組み込まれる)。これは例えば、[第2のアミノ酸配列中の対応する位置のアミノ酸残基と同一である第1のアミノ酸配列中のアミノ酸残基の数]を[第1のアミノ酸配列のアミノ酸残基の合計数]によって除算して、[100%]によって乗算することにより、第1のアミノ酸配列と比較して第2のアミノ酸配列中のアミノ酸残基の各欠失、挿入、置換、または追加は、単一のアミノ酸残基(位置)における違い、すなわち本明細書において定義される「アミノ酸の違い」と考えられる。または、再びWO08/020079の49および50ページのパラグラフf)に記載されている通り(参照によって本明細書に組み込まれる)、好適なコンピューターアルゴリズムまたはテクニックを用いることによる。
2つの免疫グロブリン単一可変ドメイン間の配列同一性の程度を決定することにおいて、当業者は、WO08/020079の50ページに記載されている通りいわゆる「保存的な」アミノ酸置換をもまた考慮に入れ得る。
本明細書に記載されるポリペプチドに応用されるいずれかのアミノ酸置換は、異なる種の相同蛋白質間のアミノ酸バリエーションの頻度の分析(Schulz et al., Principles of Protein Structure, Springer-Verlag, 1978によって開発された)、構造形成能の分析(Chou and Fasman, Biochemistry 13: 211, 1974 および Adv. Enzymol., 47: 45-149, 1978によって開発された)、および蛋白質の疎水性パターンの分析(Eisenberg et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81: 140-144, 1984; Kyte & Doolittle; J Molec. Biol. 157: 105-132, 198 1, および Goldman et al., Ann. Rev. Biophys. Chem. 15: 321-353, 1986によって開発された)にもまた基づき得る(全て、参照によってそれらの全体が本明細書に組み込まれる)。ナノボディの一次、二次、および三次構造の情報は、本明細書の説明および上で引用された一般的な背景技術において与えられる。この目的のためには、ラマからのVHHドメインの結晶構造もまた、例えばDesmyter et al., Nature Structural Biology, Vol. 3, 9, 803 (1996); Spinelli et al., Natural Structural Biology (1996); 3, 752-757; および Decanniere et al., Structure, Vol. 7, 4, 361 (1999)によって与えられる。従来のVHドメインにおいて、VH/VL境界面とそれらの位置におけるあり得るラクダ化置換とを形成するアミノ酸残基のいくつかのさらなる情報は、上で引用された従来技術に見いだされ得る。
h)免疫グロブリン単一可変ドメインおよび核酸配列は、それらが100%の配列同一性(本明細書において定義される通り)をそれらの全長に渡って有する場合に、「正確に同じ」と言われる。
i)2つの免疫グロブリン単一可変ドメインを比較するときに、用語「アミノ酸の違い」は、第2の配列と比較して第1の配列のある位置の単一のアミノ酸残基の挿入、欠失、または置換を言う。2つの免疫グロブリン単一可変ドメインが1つ、2つ、または3つ以上のかかるアミノ酸の違いを含有し得るということは理解される。
j)ヌクレオチド配列またはアミノ酸配列が、それぞれ別のヌクレオチド配列もしくはアミノ酸配列「を含む」または別のヌクレオチド配列もしくはアミノ酸配列「から本質的になる」と言われるときには、これはWO08/020079の51〜52ページのパラグラフi)において与えられる意味を有する。
k)用語「本質的に単離された形態で」はWO08/020079の52および53ページのパラグラフj)においてそれに与えられる意味を有する。
l)用語「ドメイン」および「結合ドメイン」は、WO08/020079の53ページのパラグラフk)においてそれに与えられる意味を有する。
m)用語「抗原決定基」および「エピトープ」は、本明細書において交換可能にもまた用いられ得、WO08/020079の53ページのパラグラフl)においてそれに与えられる意味を有する。
n)WO08/020079の53ページのパラグラフm)にさらに記載されている通り、具体的な抗原決定基、エピトープ、抗原、または蛋白質(または、その少なくとも1つのパーツ、断片、もしくはエピトープ)に対して(特異的に)結合し得る、親和性を有する、および/または特異性を有するアミノ酸配列(例えば、抗体、本発明のポリペプチド、または一般的に抗原結合蛋白質もしくはポリペプチド、あるいはその断片)は、その抗原決定基、エピトープ、抗原、または蛋白質「に対する(against)」または「に対する(directed against)」と言われる。
o)用語「特異性」は、特定の抗原結合分子または抗原結合蛋白質(例えば、本発明のISV、ナノボディ、またはポリペプチド)分子が結合し得る抗原または抗原決定基の異なる型の数を言う。抗原結合蛋白質の特異性は親和性および/またはアビディティに基づいて決定され得る。
親和性は、抗原結合蛋白質との抗原の解離の平衡定数によってあらわされ(KDまたはKD)、抗原決定基(すなわち標的)と抗原結合蛋白質(すなわちISVまたはナノボディ)上の抗原結合部位との間の結合の強さの尺度である。KDの値が小さいほど、抗原決定基と抗原結合分子との間の結合の強さは強くなる(代替的に、親和性は親和性定数(KA)としてもまた表され得、これは1/KDである)。当業者には明白であろう通り(例えば、本明細書のさらなる開示に基づいて)、親和性は、興味ある具体的な抗原に依存して自体公知のやり方で決定され得る。
アビディティはポリペプチドの親和性である。すなわち、リガンドは2つの(または3つ以上の)ファーマコフォア(ISV)によって結合する能力があり、その複数の相互作用が相乗作用して「見かけ上の」親和性を向上させる。アビディティは、本発明のポリペプチドと適合する抗原との間の結合の強さの尺度である。本発明のポリペプチドは、その2つの(または3つ以上の)ビルディングブロック(例えば、ISVまたはナノボディ)を介して少なくとも2つの標的に結合する能力があり、複数の相互作用(例えば、第1の標的に対する第1のビルディングブロック、ISV、またはナノボディ結合、および第2の標的に対する第2のビルディングブロック、ISV、またはナノボディ結合)が相乗作用して「見かけ上の」親和性を向上させる。アビディティは、抗原決定基と抗原結合分子上のその抗原結合部位との間の親和性、および抗原結合分子上に存在する適合する結合部位の数両方に関係する。例えば、限定無しに、2つまたは3つ以上のビルディングブロック(例えば、細胞上の異なる標的に対する(特に、ヒトCXCR4およびヒトCD123に対する)ISVまたはナノボディ)を含有するポリペプチドは、本発明のポリペプチド中に含まれる個体の単量体または個体のビルディングブロック(例えば、一価ISVまたはナノボディなど)のそれぞれよりも高いアビディティで結合し得る(且つ、通常は結合するであろう)。
本発明において、一価の抗原結合蛋白質(例えば、ビルディングブロックである、本発明のISV、アミノ酸配列、ナノボディ、および/またはポリペプチド)は、解離定数(KD)が10−9〜10−12モル/リットルまたはそれより小さい、好ましくは10−10〜10−12モル/リットルまたはそれより小さい、より好ましくは10−11〜10−12モル/リットルである(すなわち、109〜1012リットル/モルまたはそれより大きい、好ましくは1010〜1012リットル/モルまたはそれより大きい、より好ましくは1011〜1012リットル/モルの会合定数(KA)を有する)ときに、高親和性でそれらの抗原に結合すると言われる。
本発明において、一価抗原結合蛋白質(例えば、ビルディングブロックである、本発明のISV、アミノ酸配列、ナノボディおよび/またはポリペプチド)は、解離定数(KD)が10−6〜10−9モル/リットルまたはそれより大きい、好ましくは10−6〜10−8モル/リットルまたはそれより大きい、より好ましくは10−6〜10−7モル/リットルである(すなわち、106〜109リットル/モルまたはそれより大きい、好ましくは106〜108リットル/モルまたはそれより大きい、より好ましくは106〜107リットル/モルの会合定数(KA)を有する)ときに、低親和性でそれらの抗原に結合すると言われる。
中度の親和性は、高〜低、例えば10−8〜10−10モル/リットルに渡る値として定義され得る。
10−4モル/リットルよりも大きいいずれかのKD値(または、104M−1リットル/モルよりも低いいずれかのKA値)は、非特異的結合を指示すると一般的に考えられる。
本発明のポリペプチドは、第1および第2のビルディングブロック、例えば第1および第2のISVまたは第1および第2のナノボディを含む。好ましくは、各ビルディングブロック(例えばISVまたはナノボディ)の親和性は個体的に決定される。換言すると、親和性は、一価ビルディングブロック、ISV、またはナノボディについて、もう一方のビルディングブロック、ISV、またはナノボディ(これは存在し得るか、または存在せずにあり得る)を原因とするアビディティ効果とは独立して決定される。一価ビルディングブロック、ISV、またはナノボディの親和性は、一価ビルディングブロック、ISV、またはナノボディそのものによって(すなわち、その一価ビルディングブロック、ISV、またはナノボディが本発明のポリペプチド中に含まれていないときに)決定され得る。代替的にまたは加えて、一価ビルディングブロック、ISV、またはナノボディについての親和性は、もう一方の標的が不在である間に1つの標的に対して決定され得る。
抗原または抗原決定基への抗原結合蛋白質の結合は、自体公知のいずれかの好適なやり方で決定され得、例えばスキャッチャード分析および/または競合結合アッセイ、例えば放射性免疫アッセイ(RIA)、酵素免疫アッセイ(EIA)、およびサンドイッチ競合アッセイ、および当分野において自体公知のその異なるバリアント、さらには本明細書において挙げられる他のテクニックを包含する。
解離定数は実際のまたは見かけ上の解離定数であり得、これは当業者には明白であろう。解離定数を決定するための方法は当業者には明白であろう。例えば、本明細書において挙げられるテクニックを包含する。これに関して、10−4モル/リットルまたは10−3モル/リットルより大きい(例えば、10−2モル/リットル)の解離定数を測定することが可能でなくあり得るということもまた明白であろう。任意で、これもまた当業者には明白であろう通り、(実際のまたは見かけ上の)解離定数は関係[KD=1/KA]によって(実際のまたは見かけ上の)会合定数(KA)に基づいて計算され得る。
親和性は、分子間相互作用の強さまたは安定性を表す。親和性は普通にはKD(または解離定数)として与えられ、これはモル/リットル(またはM)の単位を有する。親和性は会合定数KAとしてもまた表され得、これは1/KDに等しく、(モル/リットル)−1(またはM−1)の単位を有する。本明細書において、2つの分子(例えば、本発明のアミノ酸配列、ナノボディ、またはポリペプチドおよびその意図される標的)間の相互作用の安定性は、主にそれらの相互作用のKD値によって表される。関係KA=1/KDから判断して、そのKD値によって分子間相互作用の強さを規定することは、対応するKA値を計算するためにもまた用いられ得るということは当業者には明白である。KD値は、分子間相互作用の強さを熱力学的意味でもまたキャラクタリゼーションする。なぜなら、それは周知の関係DG=RT.ln(KD)(同等に、DG=−RT.ln(KA))による結合の自由エネルギー(DG)に関係しているからである。式中、Rは気体定数に等しく、Tは絶対温度に等しく、lnは自然対数を表す。
意味がある(例えば特異的)と考えられる生物学的相互作用についてのKDは、典型的には10−10M(0.1nM)〜10−5M(10000nM)の範囲である。相互作用が強いほど、そのKDは低くなる。
KDは、複合体の解離速度定数(koffと表される)対その結合の速度(konと表される)の比としてもまた表され得る(その結果、KD=koff/kon且つKA=kon/koff)。off速度koffは単位s−1を有する(sは秒のSI単位表記である)。on速度konは単位M−1s−1を有する。on速度は102M−1s−1〜約107M−1s−1の間で変わり得、二分子間相互作用の拡散律速結合速度定数に近づく。off速度は関係t1/2=ln(2)/koffによって所与の分子間相互作用の半減期に関係付けられる。off速度は10−6s−1(複数日のt1/2を有する不可逆的に近い複合体)〜1s−1(t1/2=0.69s)の間で変わり得る。
2分子間の分子間相互作用の親和性は、自体公知の異なるテクニック、例えば周知の表面プラズモン共鳴(SPR)バイオセンサーテクニックによって測定され得る(例えばOber et al., Intern. Immunology, 13, 1551-1559, 2001参照)。用語「表面プラズモン共鳴」は、本明細書において用いられる場合、バイオセンサーマトリックス中の蛋白質濃度の変化の検出によってリアルタイムの生物特異的相互作用の分析を許す光学現象を言う。そこでは、1つの分子がバイオセンサーチップ上に固定化され、もう一方の分子は流動条件下で固定化された分子上を通過させられて、kon、koff測定、ゆえにKD(またはKA)値を産する。これは、例えば周知のBIAcore(登録商標)システムを用いて実施され得る(BIAcore International AB, a GE Healthcare company, Uppsala, Sweden and Piscataway, NJ)。さらなる説明については、Jonsson, U., et al. (1993) Ann. Biol. Clin. 51:19-26; Jonsson, U., et al. (1991) Biotechniques 11:620-627; Johnsson, B., et al. (1995) J Mol. Recognit. 8:125-131; および Johnnson, B., et al. (1991) Anal. Biochem. 198:268-277参照。
測定プロセスが、例えば1つの分子のバイオセンサー上のコーティングに関係するアーティファクトによって、対象分子の本来の結合親和性に何か影響する場合に、測定されるKDが見かけ上のKDに対応し得るということもまた当業者には明白であろう。見かけ上のKDは、1つの分子がもう一方の分子に対する1より多い認識部位を含有する場合にもまた測定され得る。かかる状況では、測定される親和性は、2分子による相互作用のアビディティによって影響され得る。
親和性を評価するために用いられ得る別の手法は、Friguet et al.の2ステップELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)法である(J. Immunol. Methods, 77, 305-19, 1985)。この方法は溶液相結合平衡測定を確立し、プラスチックなどの支持体上の分子の1つの吸着に関係する可能なアーティファクトを回避する。
しかしながら、KDの精密な測定は極めて労働集約型であり得、帰結として、多くの場合には見かけ上のKD値が決定されて、2つの分子の結合の強さを評価する。全ての測定が一貫した仕方で行われる(例えば、アッセイ条件を不変に保つ)限り、見かけ上のKD測定は真のKDの近似として用いられ得、ゆえに本文書においては、KDおよび見かけ上のKDは等しい重要性または妥当性で扱われるということが注意されるべきである。
最後に、多くの状況において、熟練した科学者は、何らかの参照分子と相対的に結合親和性を決定することを便利だと判断し得るということが注意される。例えば、分子AおよびB間の結合の強さを評価するために、例えば、Bに結合することが公知であり、且つELISAもしくはFACS(蛍光活性化セルソーティング)または他のフォーマット(蛍光検出のためのフルオロフォア、吸光検出のためのクロモフォア、ストレプトアビジンによって媒介されるELISA検出のためのビオチン)における容易な検出のためのフルオロフォアもしくはクロモフォア基または他の化学部分(例えばビオチン)によって好適に標識される参照分子Cを用い得る。典型的には、参照分子Cは固定濃度に保たれ、Aの濃度がBの所与の濃度または量に対して変えられる。結果として、IC50値が得られ、Aの不在下でCについて測定されたシグナルが半減するAの濃度に対応する。KDref(参照分子のKD)、さらには参照分子の合計濃度Crefが既知である場合には、相互作用A−Bについての見かけ上のKDは以下の式から得られる。KD=IC50/(1+Cref/KDref)。Cref<<KDrefである場合には、KD≒IC50であるということに注意。IC50の測定が、比較される結合因子について一貫した方法で(例えばCrefを固定したままにして)実施される場合には、分子間相互作用の強さまたは安定性はIC50によって評価され得、この測定は本書においてKDまたは見かけ上のKDと同等だと判断される。
p)本発明のアミノ酸配列、化合物、またはポリペプチドの半減期は、WO08/020079の57ページのパラグラフo)に記載されている通りに一般的には定義され得、そこに挙げられている通り、アミノ酸配列、化合物、またはポリペプチドの血清中濃度がインビボで50%低減するためにかかる時間を言う(これは例えば、配列もしくは化合物の分解および/または天然のメカニズムによる配列もしくは化合物のクリアランスもしくは隔離(sequestration)を原因とする)。本発明のアミノ酸配列、化合物、またはポリペプチドのインビボ半減期は、自体公知のいずれかのやり方、例えば薬物動態分析によって決定され得る。好適なテクニックは当業者には明白であろう。例えば一般的に、WO08/020079の57ページのパラグラフo)に記載されている通りであり得る。これもまたWO08/020079の57ページのパラグラフo)に挙げられている通り、半減期はt1/2アルファ、t1/2ベータ、および曲線下面積(AUC)などのパラメータを用いて表され得る。下の実験の部、さらには標準的なハンドブック、例えばKenneth, A et al.: Chemical Stability of Pharmaceuticals: A Handbook for Pharmacists および Peters et al.: Pharmacokinetc analysis: A Practical Approach (1996)が参照される。「Pharmacokinetics」, M Gibaldi & D Perron, published by Marcel Dekker, 2nd Rev. edition (1982)もまた参照される。用語「半減期の増大」または「増大した半減期」もまた、WO08/020079の57ページのパラグラフo)において定義される通りであり、特にt1/2ベータの増大を言い、t1/2アルファおよび/もしくはAUCまたは両方の増大有りまたは無しのいずれかである。
q)標的または抗原に関して、標的または抗原上の用語「相互作用部位」は、リガンド、受容体、もしくは他の結合パートナーとの結合の部位である標的もしくは抗原上の部位、エピトープ、抗原決定基、パーツ、ドメイン、もしくはアミノ酸残基のストレッチ、標的もしくは抗原の触媒部位、切断部位、アロステリック相互作用のための部位、多量体化に関わる部位(例えば、ホモマー化またはへテロ二量体化)、または、標的もしくは抗原の生物学的作用もしくはメカニズムに関わる標的もしくは抗原上のいずれかの他の部位、エピトープ、抗原決定基、パーツ、ドメイン、もしくはアミノ酸残基のストレッチを意味する。より一般的に、「相互作用部位」は、本発明のアミノ酸配列またはポリペプチドが結合し得る標的または抗原上のいずれかの部位、エピトープ、抗原決定基、パーツ、ドメイン、またはアミノ酸残基のストレッチであり得、その結果、標的または抗原(および/または、標的または抗原が関わるいずれかの経路、相互作用、シグナル伝達、生物学的メカニズムまたは生物学的効果)が調節される(本明細書において定義される通り)。
r)免疫グロブリン単一可変ドメインまたはポリペプチドは、そのアミノ酸配列またはポリペプチドが第2の標的またはポリペプチドに結合する親和性よりも少なくとも10倍、例えば少なくとも100倍、好ましくは少なくとも1000倍、10.000倍以上まで良好である親和性/アビディティ(上に記載された通り、KD値、KA値、Koff速度および/またはKon速度として好適に表される)で第1の抗原に結合するときに、第2の標的または抗原と比較して第1の標的または抗原「に特異的」であると言われる。例えば、第1の抗原は、そのアミノ酸配列またはポリペプチドが第2の標的またはポリペプチドに結合するKDよりも少なくとも10倍小さい、例えば少なくとも100倍小さい、好ましくは少なくとも1000倍小さい、例えば10.000倍小さい、またはさらにそれよりも小さいKD値で標的または抗原に結合し得る。好ましくは、免疫グロブリン単一可変ドメインまたはポリペプチドが第2の標的または抗原と比較して第1の標的または抗原「に特異的」であるときには、それは(本明細書において定義される通り)その第1の標的または抗原に対するものであるが、その第2の標的または抗原に対するものではない。
s)用語「クロスブロックする(cross-block)」、「クロスブロックされる」、および「クロスブロック」は、本明細書において交換可能に用いられて、免疫グロブリン単一可変ドメインまたはポリペプチドが、その受容体(単数または複数)への天然のリガンドの結合と干渉する能力を意味する。本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインまたはポリペプチドが、その標的(例えばCXCR4)への別の化合物(例えば天然のリガンド)の結合と干渉する能力がある度合と、そのため本発明に従ってクロスブロックすると言われ得るかどうかとは、競合結合アッセイを用いて決定され得る。1つの特に好適な定量的なクロスブロックアッセイは、FACSもしくはELISAに基づく手法またはAlphascreenを用いて、本発明に従う標識された(例えば、Hisタグ付けまたはビオチン化された)免疫グロブリン単一可変ドメインまたはポリペプチドともう一方の結合薬剤との間の競合を、標的へのそれらの結合に関して測定する。実験の部は、結合分子が、本発明に従う免疫グロブリン単一可変ドメインまたはポリペプチドをクロスブロックするかまたはクロスブロックできるかどうかを決定するための、好適なFACS、ELISA、またはAlphascreenの置換に基づくアッセイを一般的に記載している。アッセイが、免疫グロブリン単一可変ドメインまたは本明細書に記載される他の結合薬剤のいずれかに用いられ得るということは認められるであろう。それゆえに、一般的に、本発明に従うクロスブロックアミノ酸配列または他の結合薬剤は、例えば、上のクロスブロックアッセイにおいて標的に結合し、その結果、アッセイ中に本発明の第2のアミノ酸配列または他の結合薬剤の存在下で、本発明に従う免疫グロブリン単一可変ドメインまたはポリペプチドの記録される置換が、0.01mMまたはそれより小さい量で存在する試験されるべき可能性としてのクロスブロック薬剤による最大の理論上の置換(例えば、クロスブロックされる必要があるコールドな(例えば未標識の)免疫グロブリン単一可変ドメインまたはポリペプチドによる置換)の60%〜100%(例えば、ELISA/Alphascreenに基づく競合アッセイにおいて)または80%〜100%(例えば、FACSに基づく競合アッセイにおいて)であるものである(クロスブロック薬剤は、別の従来のモノクローナル抗体、例えばIgG、古典的な一価抗体断片(Fab、scFv))、および操作されたバリアント(例えば、ダイアボディ、トライアボディ(triabody)、ミニボディ、VHH、dAb、VH、VL)であり得る。
t)アミノ酸配列(例えば、本発明に従う免疫グロブリン単一可変ドメインまたはポリペプチドなど)は、そのVHH1型免疫グロブリン単一可変ドメインまたはVHH1型配列が85%の同一性(VHH1コンセンサス配列をクエリ配列として用い、blastアルゴリズムを標準的な設定、すなわちblosom62スコアマトリックスで用いる)をVHH1コンセンサス配列(QVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTLDYYAIGWFRQAPGKEREGVSCISSSDGSTYYADSVKGRFTISRDNAKNTVYLQMNSLKPEDTAVYYCAA)に対して有し、且つ位置50のシステイン、すなわちC50を必ず有する場合には(Kabatの番号付けを用いる)、「VHH1型免疫グロブリン単一可変ドメイン」または「VHH1型配列」と言われる。
u)アミノ酸配列(例えば、本発明に従う免疫グロブリン単一可変ドメインまたはポリペプチドなど)は、それらの異なる抗原または抗原決定基両方に(本明細書において定義される通り)特異的である場合には、2つの異なる抗原または抗原決定基(例えば、哺乳動物の2つの異なる種からの血清アルブミン、例えばヒト血清アルブミンおよびカニクイザル血清アルブミン)にとって「交叉反応性」であると言われる。
v)WO08/020079の58および59ページのパラグラフq)にさらに記載されている通り(参照によって本明細書に組み込まれる)、免疫グロブリン単一可変ドメインのアミノ酸残基は、Kabat et al.(「Sequence of proteins of immunological interest」US Public Health Services, NIH Bethesda, MD, Publication No. 91)によって与えられるVHドメインのための一般的な番号付けに従って番号付けされる。これは、Riechmann and Muyldermans, J. Immunol. Methods 2000 Jun 23; 240 (1-2): 185-195の論文においてラクダ類からのVHHドメインに応用されている(例えば、この発表の図2参照)。従って、免疫グロブリン単一可変ドメインのFR1は位置1〜30のアミノ酸残基を含み、免疫グロブリン単一可変ドメインのCDR1は位置31〜35のアミノ酸残基を含み、免疫グロブリン単一可変ドメインのFR2は位置36〜49のアミノ酸残基を含み、免疫グロブリン単一可変ドメインのCDR2は位置50〜65のアミノ酸残基を含み、免疫グロブリン単一可変ドメインのFR3は位置66〜94のアミノ酸残基を含み、免疫グロブリン単一可変ドメインのCDR3は位置95〜102のアミノ酸残基を含み、免疫グロブリン単一可変ドメインのFR4は位置103〜113のアミノ酸残基を含む。
w)図面、配列リスト、および実験の部/実施例は、本発明をさらに例示するためにのみ与えられており、本明細書において別様にはっきりと指示されない限り、本発明および/または添付の請求項の範囲を限定するものとは決して言い換えまたは解釈されるべきではない。
x)半数阻害濃度(IC50)は、生物学的または生化学的機能(例えば薬理効果)を阻害することにおける化合物の有効度の尺度である。この定量的尺度は、どれくらいのISVまたはナノボディ(阻害剤)が所与の生物学的プロセス(または、プロセスの構成要素、すなわち酵素、細胞、細胞受容体、走化性、退形成、転移、侵襲性など)を半分阻害するために必要とされるのかを指示する。換言すると、物質の半数(50%)阻害濃度(IC)である(50%ICまたはIC50)。薬物のIC50は、用量反応曲線を構築し、アゴニスト活性を逆転させることに及ぼすアンタゴニスト(例えば、本発明のISVまたはナノボディ)の異なる濃度の効果を調べることによって決定され得る。IC50値は、アゴニストの最大の生物学的応答の半分を阻害するために必要とされる濃度を決定することによって、所与のアンタゴニスト(例えば、本発明のISVまたはナノボディ)について計算され得る。
用語半数効果濃度(EC50)は、規定の暴露時間後にベースラインと最大との間の中間の応答を誘導する化合物の濃度を言う。本文脈では、ポリペプチドの、ISVの、またはナノボディの力価の尺度として用いられる。段階的用量反応曲線のEC50は、その最大効果の50%が観察される化合物の濃度をあらわす。濃度は好ましくはモル単位で表される。
生体システムにおいて、リガンド濃度の小さい変化は、シグモイド関数に従って応答の急速な変化を典型的にはもたらす。増大するリガンド濃度による応答の増大がゆっくりになり始める変曲点がEC50である。これはベストフィット直線の導分によって数学的に決定され得る。推定のためにグラフに頼ることはたいていの場合に便利である。EC50が実施例の項において提供される場合には、実験は、可能な限り精密なKDを反映するように設計された。そこで、換言すると、EC50値はKD値として考えられ得る。用語「平均KD」は、少なくとも1であるが、好ましくは1より大きい、例えば少なくとも2つの実験において得られた平均KD値に関する。用語「平均」は数学用語「平均」を言う(データ中の項目数によって除算されたデータの合計)。
これは、化合物の阻害(50%阻害)の尺度であるIC50にもまた関係する。競合結合アッセイおよび機能アンタゴニストアッセイについては、IC50は用量反応曲線の最も普通の要約尺度である。アゴニスト/刺激因子アッセイについて、最も普通の要約尺度はEC50である。
二重特異性ポリペプチド
本発明は、「本発明のポリペプチド」ともまた言われる特定のポリペプチドに関し、これは(i)第1の免疫グロブリン単一可変ドメインから本質的になる第1のビルディングブロック(その第1の免疫グロブリン単一可変ドメインは低親和性で細胞の表面上の第1の標的に結合するが、結合したときには、その第1の標的の機能を損するかまたは阻害する(機能ISV))と(ii)第2の免疫グロブリン単一可変ドメインから本質的になる第2のビルディングブロック(その第2の免疫グロブリン単一可変ドメインは高親和性で細胞の表面上の第2の標的に結合するが、結合したときには、好ましくは最小限にのみその第2の標的の機能を損するかまたは阻害する(係留ISV))とを含むか、またはそれから本質的になる。加えてまたは代替的に、その第2の標的の機能は好ましくは細胞にとって不可欠でなく、例えば冗長的である。結果的に、その第2の標的(「係留部」)の機能を阻害することは、限定されたまたは無視できる副作用および/または毒性をもたらすであろう。それにもかかわらず、正常細胞上のその第2の標的(係留部)のみの機能を阻害すること(すなわち、その第1の標的の機能を阻害すること無し)は、1つまたは両方の標的いずれかに対する高親和性抗体を用いる処置と比較したときに、既に毒性および副作用の有意な低減である。本発明のポリペプチドは、従来技術の抗体よりも特異的な腫瘍増殖の阻害および腫瘍細胞の停止または死を提供する。好ましくは、本発明の二重特異性ポリペプチドは少なくとも2つの結合部分(例えば、2つのビルディングブロック、ISV、またはナノボディなど)を含み、少なくとも第1の結合部分(機能ISV)は腫瘍関連抗原(例えば、腫瘍細胞上に発現される抗原。「腫瘍マーカー」ともまた呼ばれる)に特異的である。用語二重特異性ポリペプチド、二重特異性体、および二重特異性抗体は本明細書において交換可能に用いられる。
従って、本発明は、第1の(機能)および第2の(係留)免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISV)を含むポリペプチドに関し、
− その第1のISV(機能ISV)は低親和性で第1の標的に結合し、
− その第2のISV(係留ISV)は高親和性で第2の標的に結合し、
その第1の標的およびその第2の標的は細胞の表面上に存在し、その第1の標的はその第2の標的とは異なり、任意でその第1のビルディングブロック(機能ビルディングブロックまたは係留ISV)とその第2のビルディングブロック(係留ビルディングブロックまたは係留ISV)とはリンカーを介して連結される。
本発明のポリペプチドは、障害(例えば悪性のプロセス)への第1の標的の寄与を低減または損するように設計される。用語「悪性のプロセス」および「悪性」は本明細書において交換可能に用いられる。本文脈では、悪性は、医学的状態(とりわけ腫瘍)が徐々に悪化して可能性として死をもたらす傾向である。悪性は、退形成、侵襲性、および/または転移によってキャラクタリゼーションされる。そのため、本発明のポリペプチドの薬理学的効果は、最終的には、その細胞の退形成、侵襲性、転移、増殖、分化、遊走、および/または生存の少なくとも1つ、好ましくは1つよりも多くを阻害または損することに在るであろう。そのため、本発明のポリペプチドの薬理学的効果は、その細胞のアポトーシス、殺細胞、および/または増殖停止の少なくとも1つ、好ましくは1より多くを増大させるかまたは支持することに在るであろう。これらの用語によってキャラクタリゼーションされる現象は当分野において周知である。
本発明の二重特異性または多重特異性ポリペプチドは、少なくとも2つのビルディングブロック(例えばISV)を含むかまたはそれから本質的になり、その第1のビルディングブロック(例えば第1のISV)は、その抗原(すなわち第2の標的)への第2のビルディングブロック(例えば第2のISV)の結合によって、その抗原(すなわち第1の標的)に対する増大した親和性を有する。かかる増大した親和性(見かけ上の親和性)はアビディティ効果を原因とし、「コンディショナルな二重特異性または多重特異性結合」ともまた呼ばれる。かかる二重特異性または多重特異性ポリペプチドは、「本発明のコンディショナル結合型二重特異性または多重特異性ポリペプチド」ともまた呼ばれる。
ポリペプチド上における第1のビルディングブロックおよび第2のビルディングブロックの順序(オリエンテーション)が、当業者の必要、さらには相対的な親和性(これは、ポリペプチド中におけるそれらのビルディングブロックの場所に依存し得る)に従って選ばれ得るということは認められるであろう。ポリペプチドがリンカーを含むかどうかは、設計の選び方の問題である。しかしながら、リンカー有りまたは無しのいくつかのオリエンテーションが、他のオリエンテーションと比較して好ましい結合特徴を提供し得る。例えば、本発明のポリペプチド中の第1および第2のビルディングブロックの順序は、(N末端からC末端に)(i)第1のビルディングブロック(例えば、第1のISV、例えば第1のナノボディ)−[リンカー]−第2のビルディングブロック(例えば、第2のISV、例えば第2のナノボディ)、または(ii)第2のビルディングブロック(例えば、第2のISV、例えば第2のナノボディ)−[リンカー]−第1のビルディングブロック(例えば、第1のISV、例えば第1のナノボディ)であり得る(ここで、リンカーは任意である)。全てのオリエンテーションは本発明によって包摂され、望まれる結合特徴を提供するオリエンテーションを含有するポリペプチドはルーチン的なスクリーニングによって容易に同定され得る。これは、例えば実施例の項において例証されている。
第2の係留ISVによる第2の抗原の結合は、その少なくとも2つのISVの第1の機能ISVによる第1の抗原の結合を向上させ、結果として、二重特異性ポリペプチド中に含まれる第1の機能ISV(例えばナノボディ)の力価は、対応する一価ISV(例えばナノボディ)と比較して増大する。
本明細書において用いられる場合、用語「力価」は、薬剤(例えば、ポリペプチド、ISV、またはナノボディ)、その生物活性の尺度である。薬剤の力価は、例えば実施例の項に記載されているものなどの当分野において公知のいずれかの好適な方法によって決定され得る。細胞培養に基づく力価アッセイは、多くの場合に、生物活性を決定するための好ましいフォーマットである。なぜなら、それらは薬剤によって惹起される生理的な応答を測定し、比較的短期間で結果を出し得るからである。細胞に基づくアッセイの種々の型が、産物の作用機序に基づいて用いられ得、増殖アッセイ、細胞傷害性アッセイ、レポーター遺伝子アッセイ、細胞表面受容体結合アッセイ、および機能的に必須の蛋白質または他のシグナル分子(例えば、リン酸化蛋白質、酵素、サイトカイン、cAMP、および同類)の誘導/阻害を測定するためのアッセイ(全て当分野において公知である)を包含するが、これに限定されない。細胞に基づく力価アッセイからの結果は、対応する参照の一価ISV(例えば、1つのISVまたは1つのナノボディのみを含むポリペプチド、Cablysなどの無関係なナノボディを任意でさらに含む)について得られた応答に対する本発明の二重特異性ポリペプチドの比較によって決定される「相対的な力価」として表され得る(実施例の項参照)。
化合物(例えば二重特異性ポリペプチド)は、化合物(例えば二重特異性ポリペプチド)について得られた応答が、所与のアッセイにおいて参照化合物(例えば、対応する一価ISVまたはナノボディ)による応答よりも少なくとも2倍、ただし好ましくは少なくとも3倍、例えば少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、少なくとも75倍、少なくとも100倍、さらにより好ましくはさらに少なくとも200倍、またはさらに少なくとも500倍、またはさらに1000倍良好(例えば機能的に良好)であるときに、参照化合物(例えば、対応する一価もしくは単一特異性ISVもしくはナノボディ、または対応する一価もしくは単一特異性(monospeciic)ISVもしくはナノボディを含むポリペプチド)よりも強力であると言われる。
本発明の細胞は、特に哺乳動物細胞、好ましくは霊長類細胞、さらにより好ましくはヒト細胞に関する。細胞は好ましくは癌細胞であり、その癌は、本明細書において定義される通り、好ましくは白血病、さらにより好ましくはAMLである。
膜(原形質膜またはリン脂質二重層ともまた呼ばれる)は細胞の細胞質を取り囲んでおり、細胞の外側の境界であり、すなわち膜は細胞の表面である。この膜は、その周辺環境から細胞を分離および保護するために働き、主としてリン脂質の二重層から作られている。この膜には、さまざまな蛋白質分子、例えばチャンネル、ポンプ、および細胞の受容体が埋め込まれている。膜は流体であるので、蛋白質分子は膜中を移動し得る。
第1のビルディングブロック(機能ビルディングブロック)
本明細書に記載される通り、本発明のポリペプチドは少なくとも2つのビルディングブロック(例えば本発明のISVまたはナノボディ)を含有し、その第1のビルディングブロック、ISV、またはナノボディは、疾患または障害(例えば悪性)に関わる(特にAMLなどの白血病に関わる)第1の標的に対するものであり、さらにより特にはヒトCXCR4に対するものである。好ましくは、その第1の標的は有疾患細胞(例えば癌細胞)にユニークであり、例えばその第1の標的は正常細胞上に発現されない。しかしながら、これは一般的には当てはまらないであろう。たいていの場合、その第1の標的は正常および有疾患細胞(例えば癌細胞)両方に存在するであろう。ゆえに、有疾患細胞(例えば癌細胞)に対する特異性を増大ならびに/または副作用および毒性(例えば、正常細胞への結合を原因とする)を減少させるために、かかるポリペプチド中の第1のビルディングブロック、ISV、またはナノボディは、第1および第2の標的両方が細胞(好ましくは癌細胞)上に存在するときに、本発明の対応する単量体または一価ビルディングブロック、ISV、またはナノボディと比較して増大したアビディティでその第1の標的(特にヒトCXCR4)に結合するであろう(シスフォーマット)。第1の標的に結合したときには、その第1の機能ビルディングブロック、ISV、またはナノボディはその第1の標的の機能を阻害する。
標的の機能は、その標的によって惹起される測定可能な生物学的または生化学的特性のいずれかの変化に関係し、細胞の生理的変化、例えば増殖、分化、退形成、侵襲性、転移、遊走、生存、アポトーシス、輸送プロセス、代謝、運動性、サイトカイン放出、サイトカイン組成、セカンドメッセンジャー、酵素、受容体などの変化を包含する。好ましくは、標的の機能は、上で記載された通り細胞培養に基づく力価アッセイによって決定される。
その低親和性を原因として、その第1のビルディングブロックであるISV、またはナノボディの機能は、全ての場合に直接的に試験されるかまたは確かめられ得るわけではないということは認められるであろう。本発明者は、それにもかかわらず、それらのコグネートな標的の機能を損するかまたは阻害する低親和性結合因子を試験することが可能であるということを明証した(実施例の項参照)。例えば、本発明者は、以前に同定された高親和性メンバーのファミリーメンバーを用いて、親和性を減少させるためにこれを変異させた。ファミリーメンバーを用いることによって、標的上の同じエピトープが結合されているということが確かめられた。用語「ファミリー」は、本明細書において用いられる場合、同一の長さを有し(すなわち、それらの配列中にアミノ酸の同数を有する)、且つ位置8〜位置106のアミノ酸配列(Kabatの番号付けに従う)が89%またはそれより大きいアミノ酸配列の同一性を有する、ISV、ナノボディ、および/またはVHH配列の群を言う。ファミリーメンバーはB細胞成熟プロセス中の共通の祖先に由来する。
本発明のポリペプチドを設計するときには、第1のビルディングブロック(例えば第1のISV)はその低親和性そのものによって選ばれ、いずれかのアビディティ効果の影響は無視する。
従って、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、その第1のISVは、1nM〜200nMの平均KD値、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190nM、または200nMの平均KD値で第1の標的に結合する。好ましくは、KDはSPRによって決定される。
さらなる側面において、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、その第1のISVが、一価体として測定されたときに低親和性を有する。
本発明は、その第1のISVが、1nM〜200nMのEC50値、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、または200nMの平均EC50値で細胞の表面上の第1の標的に結合する、本明細書に記載されるポリペプチドにもまた関する。
従って、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、その平均EC50が、その標的1を含むがその標的2を実質的に欠く細胞において測定される。
本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、その平均KDが、一価の第1のISVにおいて、例えばSPR、FACS、またはELISAなどの当分野において公知のいずれかのテクニックによって(間接的に)決定される。
本発明の第1のISVは、例えば、その第1の標的(例えば、悪性に関与する受容体チロシンキナーゼ(RTK)またはG蛋白質共役受容体(GPCR)、特にヒトCXCR4(OMIM162643)など)の第1の抗原決定基、エピトープ、パーツ、ドメイン、サブユニット、または立体配座(confirmation)(応用可能である場合)に対するものであり得る。第1のビルディングブロック(例えばISVまたはナノボディ)がその第1の標的に結合する場合には、その第1の標的の機能が損または阻害される。
本発明の第1の標的は、悪性に関与することが公知である細胞の表面上のいずれかの標的(例えば細胞の受容体)であり得る。
例えば、受容体チロシンキナーゼ(RTK)およびRTKによって媒介されるシグナル変換経路は、腫瘍のイニシエーション、維持、血管新生、および血管増殖に関わっている。約20個の異なるRTKクラスが同定されており、そのうち最も鋭意に研究されているものは、1.RTKクラスI(EGF受容体ファミリー)(ErbBファミリー)、2.RTKクラスII(インスリン受容体ファミリー)、3.RTKクラスIII(PDGF受容体ファミリー)、4.RTKクラスIV(FGF受容体ファミリー)、5.RTKクラスV(VEGF受容体ファミリー)、6.RTKクラスVI(HGF受容体ファミリー)、7.RTKクラスVII(Trk受容体ファミリー)、8.RTKクラスVIII(Eph受容体ファミリー)、9.RTKクラスIX(AXL受容体ファミリー)、10.RTKクラスX(LTK受容体ファミリー)、11.RTKクラスXI(TIE受容体ファミリー)、12.RTKクラスXII(ROR受容体ファミリー)、13.RTKクラスXIII(DDR受容体ファミリー)、14.RTKクラスXIV(RET受容体ファミリー)、15.RTKクラスXV(KLG受容体ファミリー)、16.RTKクラスXVI(RYK受容体ファミリー)、17.RTKクラスXVII(MuSK受容体ファミリー)である。特に、上皮成長因子受容体(EGFR)、血小板由来成長因子受容体(PDGFR)、血管内皮成長因子受容体(VEGFR)、c−Met、HER3、プレキシン、インテグリン、CD44、RON、およびRas/Raf/分裂促進因子活性化蛋白質(MAP)キナーゼおよびホスファチジルイノシトール−3キナーゼ(PI3K)/Akt/哺乳動物ラパマイシン標的(mTOR)経路などの経路に関わる受容体などの標的である。
なおその上に、密接な作動上の関係がGPCRと成長因子に応答する他の受容体との間において起こる。GPCRシグナル伝達は、ステロイド、上皮成長因子(EGF)、血小板由来成長因子(PDGF)などの受容体のシグナル伝達に先立つか、続くか、それと並行して起こるか、または相乗作用し得る。肺、胃、大腸、膵臓、および前立腺癌においては、持続的なGPCR刺激が活性化自己分泌およびパラ分泌ループによって促進される。
G蛋白質共役受容体に関わる2つの最も重要なシグナル変換経路がある。cAMPシグナル経路およびホスファチジルイノシトールシグナル経路であり、それらの両方とも悪性に関与し得る。リガンドがGPCRに結合したときには、立体配座の変化をGPCRに引き起こし、これがGPCRをグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)として作用させる。そこで、GPCRは、その結合したGDPをGTPと交換することによって、結合したG蛋白質を活性化し得る。G蛋白質のαサブユニットは、結合したGTPと一緒に、そこでβおよびγサブユニットから解離して、細胞内シグナル伝達蛋白質にさらに影響するかまたは直接的に機能蛋白質を標的化し得る。これはαサブユニット型(Gαs、Gαi/o、Gαq/11、Gα12/13)に依存する。ゆえに、その第1の標的の最終的な機能はシグナル変換(例えば、外部環境から細胞の内部へのキューの伝達および処理)であり、これによって細胞が反応する。癌細胞においては、正常なプロセスが変改されている。
好ましくは、第1の標的は、ディスコイディンドメイン受容体(DDR)(レクチンディスコイディンI(CD167a抗原)に相同なユニークな細胞外ドメインによって見分けられるされる受容体チロシンキナーゼ)、DDR2、ErbB−1、C−erbB−2、FGFR−1、FGFR−3、CD135抗原、CD117抗原、蛋白質チロシンキナーゼ−1、c−Met、CD148抗原、C−ret、ROR1、ROR2、Tie−1、Tie−2、CD202b抗原、Trk−A、Trk−B、Trk−C、VEGFR−1、VEGFR−2、VEGFR−3、Notch受容体1〜4、FAS受容体、DR5、DR4、CD47、CX3CR1、CXCR−3、CXCR−4、CXCR−7、ケモカイン結合蛋白質2、ならびにCCR1、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9、CCR10、およびCCR11から選ばれる。
従って、本発明は、第1のビルディングブロック、ISV、またはナノボディが、その第1の標的の少なくとも1つの機能、好ましくは1つより多い、最も好ましくは全ての機能を阻害または損する、本発明のポリペプチドに関する。
好ましくは、第1のISVはその第1の標的の相互作用部位に対し、それによってその第1の標的の機能を損する。本発明の第1のISVによる結合のための好ましい相互作用部位は、第1の標的上のリガンド結合部位である。例えば、本発明の抗CXCR4ISVの結合は、CXCR4へのコグネートなリガンドすなわちSDF−1(CXCL12としてもまた公知)の結合を阻害または置換し得る。第1の標的が結合ペア(例えば、受容体−リガンド結合ペア)の一部であるときにもまた、免疫グロブリン単一可変ドメインおよびポリペプチドは、それらがコグネートな結合パートナー(例えば、CXCR4との結合ではSDF−1、またはc−Metとの結合ではHGF)と競合するようなもの、および/またはそれらが(完全にまたは部分的に)標的へのコグネートな結合パートナーの結合を中和するようなものであり得る。リガンド(例えばSDF−1)が、例えば(例えばCXCR4との)蛋白質複合体を形成するために他の蛋白質またはポリペプチドと会合するときにもまた、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインおよびポリペプチドが、そのリガンドと会合した受容体(例えばCXCR4と会合したSDF−1)に結合するということは本発明の範囲内である。ただし、受容体の機能が損されるものとする。全てのそれらの場合に、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインおよびポリペプチドは、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインおよびポリペプチドがその非会合状態において細胞標的(例えば受容体、特にヒトCXCR4)に結合する親和性および/または特異性と同じかまたは異なる(すなわち、それよりも高いかまたは低い)親和性および/または特異性で、かかる会合した蛋白質の複合体に結合し得る。ただし、再び、第1の標的の機能が阻害されるものとする。
種々の細胞表面受容体は活性化のための二量体化を要求するので、かかる場合には、本発明の第1のISVがそれらの二量体化部位(例えば、ホモ二量体化またはヘテロ二量体化部位)に結合し、それによって二量体化(それゆえに受容体ペアによるシグナル)を阻害または防止するということが好ましい。
なおその上に、たいていの受容体は種々の立体配座で存在し、例えば弛緩した立体配座がすぐに基質に結合し、一方で基質の結合によって立体配座が変化して、これがシグナル伝達を許す。従って、本発明の第1のISVはアロステリック効果によってもまた第1の標的の機能を損し得る。例えば、第1のISVの結合は第1の標的の立体配座変化を防止し、それによってシグナル伝達を阻害する。
有利には、本発明の二重特異性構築物は2つの異なる標的に対するので、意図せぬ二量体化(それゆえにシグナル伝達)は妨害される。
本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインおよびポリペプチドは、一般的に、その標的の全ての天然に存在するもしくは合成アナログ、バリアント、変異体、アレル、パーツ、および断片(または、少なくとも、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインおよびポリペプチドがCXCR4(特にヒトCXCR4)において結合する抗原決定基(単数または複数)もしくはエピトープ(単数または複数)と本質的に同じ1つもしくは2つ以上の抗原決定基もしくはエピトープを含有するCXCR4(特にヒトCXCR4)のアナログ、バリアント、変異体、アレル、パーツ、および断片)に結合するであろうということもまた予想される。再び、かかる場合には、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインおよびポリペプチドは、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインが(野生型)CXCR4に結合する親和性および特異性と同じかまたは異なる(すなわち、それよりも高いかまたは低い)親和性および/または特異性で、かかるアナログ、バリアント、変異体、アレル、パーツ、および断片に結合し得る。ただし、CXCR4の機能が阻害されるものとする。
第1の標的の機能(単数または複数)の阻害は、当業者に公知のいずれかの好適なアッセイ(例えば、ELISA、FACS、スキャッチャード分析、Alphascreen、SPR、機能アッセイなど)によって決定され得る。
本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインおよびポリペプチドならびにそれを含む組成物の有効性または力価は、自体公知のいずれかの好適なインビトロアッセイ、細胞に基づくアッセイ、インビボアッセイ、および/もしくは動物モデル、またはそのいずれかの組み合わせによって試験され得、これは関わる具体的な疾患または障害に依存する。好適なアッセイおよび動物モデルは当業者には明白であろう。例えば、リガンド置換アッセイ(Burgess et al., Cancer Res 2006 66:1721-9)、二量体化アッセイ(WO2009/007427A2, Goetsch, 2009)、シグナル伝達アッセイ(Burgess et al., Mol Cancer Ther 9:400-9)、増殖/生存アッセイ(Pacchiana et al., J Biol Chem 2010 Sep M110.134031)、細胞接着アッセイ(Holt et al., Haematologica 2005 90:479-88)、および遊走アッセイ(Kong-Beltran et al., Cancer Cell 6:75-84)、内皮細胞出芽アッセイ(Wang et al., J Immunol. 2009; 183:3204-11)、およびインビボの異種移植モデル(Jin et al., Cancer Res. 2008 68:4360-8)、さらには、下の実験の部および本明細書に引用される従来技術において用いられるアッセイおよび動物モデルを包含する。その第1の標的の阻害を表す手段は、IC50による。
従って、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、その第1のISVが、200nM〜1nM、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、または200nMのIC50を有し、これは例えばリガンド競合アッセイ、機能細胞アッセイ(例えば、リガンドによって誘導される走化性の阻害)、Alphascreenアッセイなどにおいて決定される。
従って、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、その第1のISVは、、その第1の標的への天然のリガンド(例えば、CXCR4へのSDF−1など)の結合を、例えばその第1のISVの不在下における阻害と相対的に約10%、20%、30%、40%、50%、60%、80%、90%、好ましくは95%、またはさらには100%阻害する。
従って、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、その第1のISVは、その第1の標的が関わる薬理学的効果(例えば退形成、侵襲性、転移、増殖、分化、遊走、および/または生存)を、例えばその第1のISVの不在下における薬理学的効果と相対的に約20%、30%、40%、50%、60%、80%、90%、好ましくは95%、またはさらには100%阻害する。
従って、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、その第1のISVは、その第1の標的が関わるその細胞のアポトーシス、殺細胞、および/または増殖停止を、例えばその第1のISVの不在下における増大と相対的に約20%、30%、40%、50、60%、80%、90%、好ましくは95%、またはさらには100%増大させる。
従って、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、その第1のISVは、例えばその第1のISVの不在下における置換と相対的に、その第1の標的に対する天然のリガンドの約20%、30%、40%、50%、60%、80%、90%、および好ましくは95%もしくはそれ以上を置換する。
従って、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、その第1のISVは、その第1の標的によるシグナル伝達(例えば、その第1の標的のキナーゼ活性)を、例えばその第1のISVの不在下における阻害と相対的に約20%、30%、40%、50%、60%、80%、90%、好ましくは95%、または100%阻害する。
従って、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、その第1のISVは、その第1の標的による二量体化を、例えばその第1のISVの不在下における阻害と相対的に約20%、30%、40%、50%、60%、80%、90%、好ましくは95%、またはさらには100%阻害する。
従って、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、その第1のISVは走化性を、例えばその第1のISVの不在下における阻害と相対的に、走化性アッセイにおいて約20%、30%、40%、50%、60%、80%、90%、好ましくは95%、またはさらには100%阻害する
第2のビルディングブロック(係留ビルディングブロック)
本発明の第2のビルディングブロック、ISV、ナノボディ、またはVHHは、その第2の標的に対する高親和性を有する。本発明の第2のビルディングブロック、ISV、またはナノボディは、例えば、その第2の標的の抗原決定基、エピトープ、パーツ、ドメイン、サブユニット、または立体配座(confirmation)(応用可能な場合)に対してであり得る。第2のビルディングブロック(例えば第2のISV、ナノボディ、またはVHH)は、その標的そのものに対するその高親和性について選ばれ、いずれかのアビディティ効果の影響は無視する。
従って、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、その第2のISVは、10nM〜0.1pMの平均KD値で、例えば10nMまたはそれより小さい平均KD値で、さらにより好ましくは9nMまたはそれより小さい、例えば8、7、6、5、4、3、2、1、0.5nM未満またはそれよりもなお小さい、例えば400、300、200、100、50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.5pM未満またはそれよりもなお小さい、例えば0.4pM未満の平均KD値で第2の標的に結合する。好ましくは、KDはSPRによって決定される。
従って、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、その第2のISVは一価体として測定されたときに高親和性を有する。
従って、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、その平均KDは組み換え蛋白質の表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定される。
本発明は、その第2のISVが、10nM〜0.1pMのEC50値で、例えば10nMまたはそれより小さい平均KD値で、さらにより好ましくは9nMまたはそれより小さい、例えば8、7、6、5、4、3、2、1、0.5nM未満またはそれよりもなお小さい、例えば400、300、200、100、50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.5pM未満またはそれよりもなお小さい、例えば0.4pM未満の平均KD値で、細胞の表面上の第2の標的に結合する、本明細書に記載されるポリペプチドにもまた関する。
従って、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、その平均EC50は、その標的2を含むがその標的1を実質的に欠く細胞において測定される。
従って、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、その平均KDは、一価の第2のISV(例えばナノボディ)または一価の第2のISV(例えばナノボディ)を含むポリペプチドのFACS、Biacore、ELISAによって決定される。
KDがEC50と良く相関するということが例において示されている。
その第2の標的は細胞上のいずれかの標的、例えばCD123(OMIM:308385)であり得るが、ただしその第1の標的とは異なるものとする。好ましくは、その第2の標的はその有疾患細胞(例えば癌細胞)にユニークである。例えば、その第2の標的は正常な健康な細胞上には発現されない。しかしながら、これは一般的には当てはまらないであろう。たいていの場合には、その第2の標的は正常および有疾患細胞(例えば癌細胞)上両方に存在するであろう。その第2の標的の機能はその細胞に不可欠ではなくあり得るが、正常細胞においてその機能を阻害することは何らかの毒性および副作用を生じ得る。本発明は、本発明のポリペプチド中に含まれる高親和性結合因子にさらに関し、これが正常細胞の機能を損することもしくは阻害することをしないか、または最小限にのみする。
従って、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、その第2のISVはその第2の標的のアロステリック部位に結合する。
従って、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、その第2のISVは、例えば一価体として、その第2の標的の機能を実質的に阻害しないかまたはほんのわずかしか阻害しない,。
従って、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、その第2のISVは、細胞のAlphascreenアッセイ、競合ELISA、またはFACSにおいて100nM〜10μM、例えば200nM、500nM、1μM、または5μMのIC50を有する。これは例えば実験の部に記載されている。
従って、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、その第2のISVはその第2の標的への天然のリガンドの結合を、例えばその第2のISVの不在下における阻害と相対的に約50%未満、例えば40%、30%、もしくは20%、またはさらには10%未満阻害する。
従って、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、その第2のISVは、その第2の標的の薬理学的効果を、例えばその第2のISVの不在下における阻害と相対的に約50%未満、例えば40%、30%、もしくは20%、またはさらには10%未満阻害する。
従って、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、その第2のISVは、その第2の標的に対する天然のリガンドを、例えばその第2のISVの不在下における置換と相対的に約50%未満、例えば40%、30%、もしくは20%、またはさらには10%未満置換する。
従って、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、その第2のISVは、その第2の標的によるシグナル伝達を、例えばその第2のISVの不在下における阻害と相対的に約50%未満、例えば40%、30%、もしくは20%、またはさらには10%未満阻害する。
従って、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、その第2のISVは、その第1の標的の二量体化を、例えばその第2のISVの不在下における阻害と相対的に約50%未満、例えば40%、30%、もしくは20%、またはさらには10%阻害する。
従って、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、その第2のISVは走化性を、例えばその第2のISVの不在下における阻害と相対的に、約50%未満、例えば40%、30%、もしくは20%、またはさらには10%阻害する。
組み合わせ
特異性を増大させ、それゆえに副作用および/または毒性を最小化するために、第2の係留標的は好ましくは腫瘍関連抗原(TAA)である。TAAは、典型的には、特定の腫瘍の細胞上に発現されるが、典型的には正常細胞において発現されない抗原である。多くの場合に、TAAは、正常には生物の発生の特定のポイントの(例えば胎児発生中の)細胞において発現され、且つ発生の現時点の生物において不適切に発現されている抗原であるか、または、今では抗原を発現する臓器の正常な組織もしくは細胞においては発現されない抗原である。第2の係留標的としての好ましいTAAは、MART−1、癌胎児性抗原(「CEA」)、gp100、MAGE−1、HER−2、およびルイスY抗原を包含する。
正常な造血幹細胞と比較してAML−LSC上に選好的に発現され、それゆえに第2の標的として好ましい細胞表面抗原は、CD123、CD44、CLL−1、CD96、CD47、CD32、CXCR4、Tim−3、およびCD25を包含する。
本発明のポリペプチドにとって第2の標的として好適な他の腫瘍関連抗原は、TAG−72、Ep−CAM、PSMA、PSA、糖脂質、例えばGD2およびGD3を包含する。
本発明の第2の係留標的は、造血系分化抗原、すなわちクラスター分化(CD)グループ(例えばCD4、CD5、CD19、CD20、CD22、CD33、CD36、CD45、CD52、およびCD147)、成長因子受容体(ErbB3およびErbB4を包含する)、およびサイトカイン受容体(インターロイキン−2受容体ガンマ鎖(CD132抗原)、インターロイキン−10受容体アルファ鎖(IL−10R−A)、インターロイキン−10受容体ベータ鎖(IL−10R−B)、インターロイキン−12受容体ベータ−1鎖(IL−12R−ベータ1)、インターロイキン−12受容体ベータ−2鎖(IL−12受容体ベータ−2)、インターロイキン−13受容体アルファ−1鎖(IL−13R−アルファ−1)(CD213a1抗原)、インターロイキン−13受容体アルファ−2鎖(インターロイキン−13結合蛋白質)、インターロイキン−17受容体(IL−17受容体)、インターロイキン−17B受容体(IL−17B受容体)、インターロイキン21受容体前駆体(IL−21R)、インターロイキン−1受容体I型(IL−1R−1)(CD121a)、インターロイキン−1受容体II型(IL−1R−ベータ)(CDwl21b)、インターロイキン−1受容体アンタゴニスト蛋白質(IL−1ra)、インターロイキン−2受容体アルファ鎖(CD25抗原)、インターロイキン−2受容体ベータ鎖(CD122抗原)、インターロイキン−3受容体アルファ鎖(IL−3R−アルファ)(CD123抗原)を包含する)と通常は関連する糖蛋白質をもまた包含する。
従って、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、その第2の係留標的が、MART−1、癌胎児性抗原(「CEA」)、gp100、MAGE−1、HER−2、およびルイスY抗原、CD123、CD44、CLL−1、CD96、CD47、CD32、CXCR4、Tim−3、CD25、TAG−72、Ep−CAM、PSMA、PSA、GD2、GD3、CD4、CD5、CD19、CD20、CD22、CD33、CD36、CD45、CD52、およびCD147、成長因子受容体(ErbB3およびErbB4を包含する)、およびサイトカイン受容体(インターロイキン−2受容体ガンマ鎖(CD132抗原)、インターロイキン−10受容体アルファ鎖(IL−10R−A)、インターロイキン−10受容体ベータ鎖(IL−10R−B)、インターロイキン−12受容体ベータ−1鎖(IL−12R−ベータl)、インターロイキン−12受容体ベータ−2鎖(IL−12受容体ベータ−2)、インターロイキン−13受容体アルファ−1鎖(IL−13R−アルファ−l)(CD213a1抗原)、インターロイキン−13受容体アルファ−2鎖(インターロイキン−13結合蛋白質)、インターロイキン−17受容体(IL−17受容体)、インターロイキン−17B受容体(IL−17B受容体)、インターロイキン21受容体前駆体(IL−21R)、インターロイキン−1受容体I型(IL−1R−1)(CD121a)、インターロイキン−1受容体II型(IL−1R−ベータ)(CDw121b)、インターロイキン−1受容体アンタゴニスト蛋白質(IL−1ra)、インターロイキン−2受容体アルファ鎖(CD25抗原)、インターロイキン−2受容体ベータ鎖(CD122抗原)、インターロイキン−3受容体アルファ鎖(IL−3R−アルファ)(CD123抗原)を包含する)からなる群から選ばれる。
従って、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、その第1の機能標的が、GPCR、受容体チロシンキナーゼ、DDR1、ディスコイディンI(CD167a抗原)、DDR2、ErbB−1、C−erbB−2、FGFR−1、FGFR−3、CD135抗原、CD117抗原、蛋白質チロシンキナーゼ−1、c−Met、CD148抗原、C−ret、ROR1、ROR2、Tie−1、Tie−2、CD202b抗原、Trk−A、Trk−B、Trk−C、VEGFR−1、VEGFR−2、VEGFR−3、Notch受容体1〜4、FAS受容体、DR5、DR4、CD47、CX3CR1、CXCR−3、CXCR−4、CXCR−7、ケモカイン結合蛋白質2、ならびにCCR1、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9、CCR10、およびCCR11からなる群から選ばれ、その第2の標的が、MART−1、癌胎児性抗原(「CEA」)、gp100、MAGE−1、HER−2、ならびにルイスY抗原、CD123、CD44、CLL−1、CD96、CD47、CD32、CXCR4、Tim−3、CD25、TAG−72、Ep−CAM、PSMA、PSA、GD2、GD3、CD4、CD5、CD19、CD20、CD22、CD33、CD36、CD45、CD52、およびCD147、成長因子受容体(ErbB3およびErbB4を包含する)、ならびにサイトカイン受容体(インターロイキン−2受容体ガンマ鎖(CD132抗原)、インターロイキン−10受容体アルファ鎖(IL−10R−A)、インターロイキン−10受容体ベータ鎖(IL−10R−B)、インターロイキン−12受容体ベータ−1鎖(IL−12R−ベータ1)、インターロイキン−12受容体ベータ−2鎖(IL−12受容体ベータ−2)、インターロイキン−13受容体アルファ−1鎖(IL−13R−アルファ−1)(CD213a1抗原)、インターロイキン−13受容体アルファ−2鎖(インターロイキン−13結合蛋白質)、インターロイキン−17受容体(IL−17受容体)、インターロイキン−17B受容体(IL−17B受容体)、インターロイキン21受容体前駆体(IL−21R)、インターロイキン−1受容体I型(IL−1R−1)(CD121a)、インターロイキン−1受容体II型(IL−1R−ベータ)(CDw121b)、インターロイキン−1受容体アンタゴニスト蛋白質(IL−1ra)、インターロイキン−2受容体アルファ鎖(CD25抗原)、インターロイキン−2受容体ベータ鎖(CD122抗原)、インターロイキン−3受容体アルファ鎖(IL−3R−アルファ)(CD123抗原)を包含する)からなる群から選ばれる。
本明細書において用いられる場合、「上皮成長因子受容体」(EGFR、ErbB1、HER1)は、天然に存在するまたは内在性の哺乳動物EGFR蛋白質と、天然に存在するかまたは内在性の対応する哺乳動物EGFR蛋白質(例えば、組み換え蛋白質、合成蛋白質(すなわち、合成有機化学の方法によって産生される))のものと同じであるアミノ酸配列を有する蛋白質とを言う。従って、本明細書において定義される場合には、用語は、成熟EGFR蛋白質、多型またはアレルバリアント、およびEGFRの他のアイソフォーム(例えば、選択的スプライシングまたは他の細胞プロセスによって産生される)、ならびに前述のものの改変または未改変形態(例えば、脂質修飾された、グリコシル化された)を包含する。天然に存在するまたは内在性のEGFRは、野生型蛋白質、例えば成熟EGFR、多型またはアレルバリアント、および哺乳動物(例えばヒト、非ヒト霊長類)中に天然に存在する他のアイソフォームを包含する。かかる蛋白質は、例えばEGFRを天然に産生するソースから回収または単離され得る。それらの蛋白質、および天然に存在するまたは内在性の対応するEGFRと同じアミノ酸配列を有する蛋白質は、対応する哺乳動物の名称によって言われる。例えば対応する哺乳動物がヒトである場合、蛋白質はヒトEGFRと呼称される。EGFRへのEGFおよび/またはTGFアルファの結合を阻害するISV(例えばナノボディ)は、約1[mu]Mもしくはそれより小さい、約500nMもしくはそれより小さい、約100nMもしくはそれより小さい、約75nMもしくはそれより小さい、約50nMもしくはそれより小さい、約10nMもしくはそれより小さい、または約1nMもしくはそれより小さいIC50で、本明細書に記載されるEGFR結合アッセイまたはEGFRキナーゼアッセイにおいて結合を阻害する。
従って、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、その第1の標的(機能標的)およびその第2の標的(係留標的)は、
からなる群から選ばれる。
特に、本発明は本発明に従うポリペプチドに関し、その第1の標的およびその第2の標的が、
− 第1の標的としての受容体チロシンキナーゼおよび第2の標的としての腫瘍関連抗原(TAA)、
− 第1の標的としてのG蛋白質共役受容体(GPCR)および第2の標的としての造血系分化抗原、
− 第1の標的としての受容体チロシンキナーゼおよび第2の標的としての造血系分化抗原、
− 第1の標的としてのG蛋白質共役受容体(GPCR)および第2の標的としての腫瘍関連抗原(TAA)、
− 第1の標的としてのCXCR4および第2の標的としてのCD123、
− 第1の標的としてのDR5および第2の標的としてのEpCam、
− 第1の標的としてのDR4および第2の標的としてのEpCam、
− 第1の標的としてのCD95および第2の標的としてのEpCam、
− 第1の標的としてのCD47および第2の標的としてのCD123、
− 第1の標的としてのCD47および第2の標的としてのEpCam、
− 第1の標的としてのEGFRおよび第2の標的としてのCEA、
− 第1の標的としてのCD4および第2の標的としてのCXCR4、
− 第1の標的としてのIL12Rβ1および第2の標的としてのCD4、
− 第1の標的としてのIL12Rβ2および第2の標的としてのCD4、ならびに
− 第1の標的としてのIL23Rおよび第2の標的としてのCD4、
からなる群から選ばれる。
本発明者は、第1の標的が第2の標的になり得、逆もまた真であり、これはそれぞれのISVの親和性および機能特性に依存するということを明証した(例えば、CXCR4に結合するISV参照)。
本発明者は、細胞表面上の第1のおよび第2の標的の絶対コピー数、第1の標的および第2の標的の比もまた、最終的な結合の特異性の(それゆえに毒性および/または副作用の)決定因子であり得るということをさらに明証した。好ましくは、その第1の機能標的の低コピー数が存在する。好ましくは、その第2の係留標的の高コピー数が存在する。さらにより好ましくは、第1の機能標的および第2の係留標的の低い比が細胞表面数上に存在する。
従って、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、その細胞が、その細胞の表面上にその第1の標的の1,000〜40,000コピー、例えば10,000〜20,000コピーを含む。
従って、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、その細胞が、その細胞の表面上にその第2の標的の40,000〜100,000コピー、例えば60,000〜80,000コピーを含む。
従って、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、その細胞は、その第1の機能標的および第2の係留標的の0.01〜0.9(さらにより好ましくは0.2〜0.8、0.3〜0.7、0.4〜0.6)の比、例えば0.02、0.05、0.08、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9の比、好ましくは0.5の比を含む。
このようにして、本発明のポリペプチドおよび組成物は、癌を包含するが、これに限定されない本発明の疾患および障害(本明細書においては、また「本発明の疾患および障害」とも)の診断、防止、および処置のために用いられ得る。用語「癌」は、哺乳動物における病理的状態を言い、脱制御した細胞増殖または生存によって典型的にはキャラクタリゼーションされる。癌の例は、癌腫、グリオーマ、中皮腫、メラノーマ、リンパ腫、白血病、腺癌、乳癌、卵巣癌、子宮頸癌、グリオブラストーマ、多発性骨髄腫(意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症、無症候性および症候性骨髄腫を包含する)、前立腺癌、およびバーキットリンパ腫、頭頸部癌、結腸癌、大腸癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、食道癌、胃癌、膵臓癌、肝胆道癌、胆嚢癌、小腸癌、直腸癌、腎臓癌、膀胱癌、前立腺癌、陰茎癌、尿道癌、精巣癌、膣癌、子宮癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、膵内分泌癌、カルチノイド癌、骨癌、皮膚癌、網膜芽細胞腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、カポジ肉腫、多中心性キャッスルマン病、またはAIDS関連原発性滲出性リンパ腫、神経外胚葉腫瘍、横紋筋肉腫(追加の癌については、例えばCancer, Principles and Practice (DeVita, V.T. et al. eds 1997)参照)、さらには上の癌のいずれかのいずれかの転移、さらには非癌適応、例えば鼻ポリポーシス、さらには本明細書に記載される他の障害および疾患を包含するが、これに限定されない。特に、本発明のポリペプチドおよび組成物は、EGFRによって媒介される転移、走化性、細胞接着、経内皮遊走、細胞増殖、および/または生存が関わる疾患の診断、防止、および処置のために用いられ得る。癌細胞の表面上のEGFRの発現によってキャラクタリゼーションされる癌(EGFRを発現する癌)は、例えば膀胱癌、卵巣癌、大腸癌、乳癌、肺癌(例えば、非小細胞肺癌腫)、胃癌、膵臓癌、前立腺癌、頭頸部癌、腎臓癌、および胆嚢癌を包含する。
免疫グロブリン単一可変ドメインの一般的な説明については、下のさらなる説明、さらには本明細書に引用される従来技術が参照される。しかしながら、これに関して、本明細書および従来技術が、本発明の好ましい側面を形成するいわゆる「VH3クラス」の免疫グロブリン単一可変ドメイン(すなわち、DP−47、DP−51、またはDP−29などの、VH3クラスのヒト生殖系列配列に対する配列相同性の高い程度を有する免疫グロブリン単一可変ドメイン)を主に記載しているということは注意されるべきである。しかしながら、本発明が、その最も幅広い意味において免疫グロブリン単一可変ドメインのいずれかの型を一般的にカバーし、例えば、例えばWO07/118670に記載されている通り、いわゆる「VH4クラス」に属する免疫グロブリン単一可変ドメイン(すなわち、DP−78などのVH4クラスのヒト生殖系列配列に対する配列相同性の高い程度を有する免疫グロブリン単一可変ドメイン)をもカバーするということは注意されるべきである。
一般的に、免疫グロブリン単一可変ドメイン(特に、VHH配列および配列最適化された免疫グロブリン単一可変ドメイン)は、1つまたは2つ以上の「ホールマーク残基」(本明細書に記載される通り)の、フレームワーク配列(再び、本明細書に記載される通り)の1つまたは2つ以上における存在によって特にキャラクタリゼーションされ得る。
それゆえに、一般的に、免疫グロブリン単一可変ドメインは、(一般的な)構造(下の式1参照)
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
のアミノ酸配列として定義され得、FR1〜FR4はそれぞれフレームワーク領域1〜4を言い、CDR1〜CDR3はそれぞれ相補性決定領域1〜3を言う。
好ましい側面において、本発明は、(一般的な)構造
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
のアミノ酸配列である少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドを提供し、FR1〜FR4はそれぞれフレームワーク領域1〜4を言い、CDR1〜CDR3はそれぞれ相補性決定領域1〜3を言い、
i)Kabatの番号付けに従う位置11、37、44、45、47、83、84、103、104、および108のアミノ酸残基の少なくとも1つが、下の表A−1に挙げられたホールマーク残基から選ばれ、
ii)そのアミノ酸配列は、WO2009/138519に示されている免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つ(WO2009/138519中の配列番号1〜125参照)と少なくとも80%、より好ましくは90%、さらにより好ましくは95%のアミノ酸同一性を有し、アミノ酸同一性の程度を決定する目的のためには、CDR配列を形成するアミノ酸残基(配列中のXによって指示される)は無視され、
iii)CDR配列は、一般的に、本明細書においてさらに定義される通りである(例えば、本明細書において提供される情報によって決定され得る組み合わせでのCDR1、CDR2、およびCDR3。CDRの定義はKabatの番号付けシステムに従って計算されるということに注意する)。
再び、かかる免疫グロブリン単一可変ドメインは、いずれかの好適なやり方でいずれかの好適なソースに由来し得、例えば、天然に存在するVHH配列(すなわち、ラクダ類の好適な種、例えばラマから)または合成もしくは半合成VHもしくはVL(例えばヒトから)であり得る。かかる免疫グロブリン単一可変ドメインは、「ヒト化」または別様に「配列最適化」されたVHH、「ラクダ化」免疫グロブリン配列(特に、ラクダ化された重鎖可変ドメイン配列、すなわちラクダ化VH)、さらには、親和性成熟(例えば、合成、ランダム、または天然に存在する免疫グロブリン配列から出発する)、CDR移植、ベニアリング、異なる免疫グロブリン配列に由来する断片を組み合わせること、オーバーラッププライマーを用いるPCRアセンブリ、当業者に周知の免疫グロブリン配列を操作するための類似のテクニックなどのテクニック、または前述のもののいずれかのいずれかの好適な組み合わせによって、本明細書にさらに記載される通り変改されたヒトVH、ヒトVL、ラクダ類VHHを包含し得る。本明細書において挙げられる通り、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインの特に好ましいクラスは、天然に存在するVHHドメインのアミノ酸配列に対応するが、「ヒト化」されたアミノ酸配列を有する免疫グロブリン単一可変ドメインを含む(すなわち、(例えば、上で指示された)ヒトからの従来の4鎖抗体からのVHドメイン中の対応する位置(単数または複数)において起こるアミノ酸残基の1つまたは2つ以上によって、(特に、フレームワーク配列中の)その天然に存在するVHH配列のアミノ酸配列中の1つまたは2つ以上のアミノ酸残基を置き換えることによる)。これは、自体公知のやり方(これは当業者には明白であろう)で、例えば、本明細書のさらなる説明と本明細書において参照されるヒト化の従来技術とに基づいて実施され得る。再び、本発明のかかるヒト化免疫グロブリン単一可変ドメインは自体公知のいずれかの好適なやり方で得られ、それゆえに、出発材料として天然に存在するVHHドメインを含むポリペプチドを用いて得られたポリペプチドに厳密には限定されないということが注意される。
本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインの別の特に好ましいクラスは、天然に存在するVHドメインのアミノ酸配列に対応するが、「ラクダ化」されたアミノ酸配列を有する免疫グロブリン単一可変ドメインを含む(すなわち、重鎖抗体のVHHドメイン中の対応する位置(単数または複数)において起こるアミノ酸残基の1つまたは2つ以上によって、従来の4鎖抗体からの天然に存在するVHドメインのアミノ酸配列中の1つまたは2つ以上のアミノ酸残基を置き換えることによる)。これは、自体公知のやり方(これは当業者には明白であろう)で、例えば本明細書の説明に基づいて実施され得る。かかる「ラクダ化」置換は、VH−VL境界面および/またはいわゆるラクダ科ホールマーク残基(本明細書において定義される通り)を形成し、および/またはそこに存在するアミノ酸位置に好ましくは挿入される(例えば、WO94/04678およびDavies and Riechmann (1994および1996)をもまた参照)。好ましくは、ラクダ化免疫グロブリン単一可変ドメインを作出または設計するための出発材料または出発点として用いられるVH配列は、好ましくは哺乳動物からのVH配列、より好ましくはヒトのVH配列、例えばVH3配列である。しかしながら、本発明のかかるラクダ化免疫グロブリン単一可変ドメインは自体公知のいずれかの好適なやり方で得られ、それゆえに、出発材料として天然に存在するVHドメインを含むポリペプチドを用いて得られたポリペプチドに厳密に限定はされないということが注意される。
例えば、再び本明細書にさらに記載される通り、「ヒト化」および「ラクダ化」は両方とも、それぞれ天然に存在するVHHドメインまたはVHドメインをコードするヌクレオチド配列を提供することと、そこで、新たなヌクレオチド配列がそれぞれ本発明の「ヒト化」または「ラクダ化」免疫グロブリン単一可変ドメインをコードするような方法で、そのヌクレオチド配列中の1つまたは2つ以上のコドンを自体公知のやり方で変化させることとによって実施され得る。そこで、この核酸は、本発明の望まれる免疫グロブリン単一可変ドメインを提供するように、自体公知のやり方で発現され得る。代替的に、それぞれ天然に存在するVHHドメインまたはVHドメインのアミノ酸配列に基づいて、それぞれ本発明の望まれるヒト化またはラクダ化免疫グロブリン単一可変ドメインのアミノ酸配列が設計され、そこで自体公知のペプチド合成のためのテクニックを用いてデノボ合成され得る。それぞれ天然に存在するVHHドメインまたはVHドメインのアミノ酸配列またはヌクレオチド配列に基づいて、それぞれ本発明の望まれるヒト化またはラクダ化免疫グロブリン単一可変ドメインをコードするヌクレオチド配列もまた設計され、そこで自体公知の核酸合成のためのテクニックを用いてデノボ合成され得る。その後に、それゆえに得られた核酸が、本発明の望まれる免疫グロブリン単一可変ドメインを提供するように自体公知のやり方で発現され得る。
一般的に、単一のビルディングブロック、単一の免疫グロブリン単一可変ドメイン、もしくは単一のナノボディを含むかもしくはそれから本質的になる蛋白質もしくはポリペプチドは、本明細書において「一価」蛋白質もしくはポリペプチドまたは「一価構築物」、またはそれぞれ一価ビルディングブロック、一価免疫グロブリン単一可変ドメイン、もしくは一価ナノボディと言われる。2つまたは3つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメイン(例えば、本発明の少なくとも2つの免疫グロブリン単一可変ドメイン)を含むかもしくはそれから本質的になる蛋白質およびポリペプチドは、本明細書において「多価」蛋白質もしくはポリペプチドまたは「多価構築物」と言われる。それらは、本発明の対応する一価免疫グロブリン単一可変ドメインと比較してある種の利点を提供する。かかる多価構築物のいくつかの限定しない例は、本明細書のさらなる説明から明白になるであろう。本発明のポリペプチドは「多価」であり、すなわち2つまたは3つ以上のビルディングブロックまたはISVを含み、その少なくとも第1のビルディングブロック、ISV、またはナノボディと第2のビルディングブロック、ISV、またはナノボディとは異なり、異なる標的(例えば抗原または抗原決定基)に対するものである。少なくとも2つのビルディングブロック、ISV、またはナノボディを含有し、少なくとも1つのビルディングブロック、ISV、またはナノボディが第1の抗原に対する(すなわち、第1の標的、例えばCXCR4などに対する)ものであり、少なくとも1つのビルディングブロック、ISV、またはナノボディが第2の抗原に対する(すなわち、第1の標的とは異なる第2の標的、例えば例えばCD123に対する)ものである本発明のポリペプチドは、本発明の「多重特異性」ポリペプチドともまた言われるであろう。かかるポリペプチド中に存在するビルディングブロック、ISV、またはナノボディは、本明細書においては「多価フォーマット」にあるともまた言われるであろう。それゆえに、例えば、本発明の「二重特異性」ポリペプチドは、第1の標的(例えばCXCR4)に対する少なくとも1つのビルディングブロック、ISV、またはナノボディと第2の標的に対する(すなわち、その第1の標的とは異なる第2の標的、例えばCD123に対する)少なくとも1つのさらなるビルディングブロック、ISV、またはナノボディとを含むポリペプチドであり、本発明の「三重特異性」ポリペプチドは、第1の標的(例えばCXCR4)に対する少なくとも1つのビルディングブロック、ISV、またはナノボディと、その第1の標的とは異なる第2の標的(例えばCD123)に対する第2のビルディングブロック、ISV、またはナノボディと、例えば血清アルブミンなどの第3の抗原(すなわち、第1および第2の標的両方とは異なる)に対する少なくとも1つのさらなるビルディングブロック、ISV、またはナノボディとを含むポリペプチドなどである。説明から明白であろう通り、本発明の多重特異性ポリペプチドが第1の標的に対する少なくとも第1のビルディングブロック、ISV、またはナノボディと、第2の標的に対する第2のビルディングブロック、ISV、またはナノボディと、それぞれ第1のおよび/または第2の標的と同じかまたは異なり得る1つまたは2つ以上の標的に対するビルディングブロック、ISV、またはナノボディのいずれかの数とを含み得るという意味において、本発明は二重特異性ポリペプチドに限定されない。ビルディングブロック、ISV、またはナノボディは任意でリンカー配列を介して連結され得る。
従って、本発明は、少なくとも3つの結合部分(例えば3つのISV)を含むかまたはそれから本質的になる三重特異性または多重特異性ポリペプチドにもまた関し、その少なくとも3つの結合部分の少なくとも1つは低親和性で第1の標的に対するものであり、その少なくとも3つの結合部分の少なくとも1つは高親和性で第2の標的に対するものであり、少なくとも第3の結合部分は半減期を増大させる(例えば、アルブミン結合因子など)。
上および本明細書のさらなる説明から明白であろう通り、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインが「ビルディングブロック」として用いられて、本発明のポリペプチドを形成し得る。これは、例えば、1つまたは2つ以上の望まれる特性または生物学的機能を1つの分子内に組み合わせている本明細書に記載される化合物または構築物(例えば、限定無しに、本明細書に記載される本発明の二/三/四/多価および二/三/四/多重特異性ポリペプチド)を形成するために、他の基、残基、部分、または結合単位とそれらを好適に組み合わせることによる。
本発明の化合物またはポリペプチドは、一般的に、本発明の化合物またはポリペプチドを提供するように、任意で1つまたは2つ以上の好適なリンカーを介して、1つまたは2つ以上のさらなる基、残基、部分、または結合単位に本発明の1つまたは2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインを好適に連結する少なくとも1つのステップを含む方法によって調製され得る。本発明のポリペプチドは、少なくとも、本発明のポリペプチドをコードする核酸を提供するステップと、好適なやり方でその核酸を発現するステップと、本発明の発現されたポリペプチドを回収するステップとを一般的に含む方法によってもまた調製され得る。かかる方法は、自体公知のやり方(これは当業者には明白であろう)で、例えば本明細書にさらに記載される方法およびテクニックに基づいて実施され得る。
本発明のアミノ酸配列から出発して本発明の化合物またはポリペプチドを設計/選択および/または調製するプロセスは、本発明のそのアミノ酸配列を「フォーマット化」することともまた言われる。本発明の化合物またはポリペプチドの一部となった本発明のアミノ酸は、「フォーマット化された」または「本発明のその化合物またはポリペプチドのフォーマットにある」と言われる。本発明のアミノ酸配列がフォーマット化され得る方法の例、およびかかるフォーマットの例は、本明細書の開示に基づいて当業者には明白であろう。かかるフォーマット化された免疫グロブリン単一可変ドメインは本発明のさらなる側面を形成する。
例えば、かかるさらなる基、残基、部分、または結合単位は1つまたは2つ以上の追加の免疫グロブリン単一可変ドメインであり得、その結果、化合物または構築物は(融合)蛋白質または(融合)ポリペプチドである。好ましい限定しない側面において、その1つまたは2つ以上の他の基、残基、部分、または結合単位は免疫グロブリン配列である。さらにより好ましくは、その1つまたは2つ以上の他の基、残基、部分、または結合単位は、ドメイン抗体、ドメイン抗体としての使用にとって好適である免疫グロブリン単一可変ドメイン、単一ドメイン抗体、単一ドメイン抗体としての使用にとって好適である免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISV)、「dAb」、dAbとしての使用にとって好適である免疫グロブリン単一可変ドメイン、またはナノボディからなる群から選ばれる。代替的に、かかる基、残基、部分、または結合単位は、例えば、それら自体で生物学的におよび/または薬理学的に活性であり得るかまたはなくあり得る化学基、残基、部分であり得る。例えば、限定無しに、かかる基は、本明細書にさらに記載される通り本発明のアミノ酸配列またはポリペプチドの「誘導体」を提供するために、本発明の1つまたは2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインに連結され得る。
本発明の範囲内には、本明細書に記載される1つまたは2つ以上の誘導体を含むかまたはそれから本質的になる化合物または構築物もまたあり、任意で、1つまたは2つ以上の他の基、残基、部分、または結合単位(任意で、1つまたは2つ以上のリンカーを介して連結される)をさらに含む。好ましくは、その1つまたは2つ以上の他の基、残基、部分、または結合単位は免疫グロブリン単一可変ドメインである。上に記載された化合物または構築物において、本発明の1つまたは2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインと1つまたは2つ以上の基、残基、部分、または結合単位とは、互いに直接的におよび/または1つもしくは2つ以上の好適なリンカーもしくはスペーサーを介して連結され得る。例えば、1つまたは2つ以上の基、残基、部分、または結合単位が免疫グロブリン単一可変ドメインであるときには、リンカーもまた免疫グロブリン単一可変ドメインであり得、その結果、もたらされる化合物または構築物は融合蛋白質または融合ポリペプチドである。
本明細書にさらに記載される本発明の具体的な限定しない側面において、本発明のポリペプチドは、それらが由来する免疫グロブリン単一可変ドメインと比較して、(本明細書にさらに記載される通り)増大した血清中半減期を有する。例えば、増大した半減期を有する本発明のアミノ酸配列の誘導体を提供するために、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインは、半減期を延長させる1つまたは2つ以上の基または部分(例えばPEG)に(化学的にまたは別様に)連結され得る。
本発明の具体的な側面において、本発明の化合物または本発明のポリペプチドは、本発明の対応するアミノ酸配列と比較して増大した半減期を有し得る。かかる化合物およびポリペプチドのいくつかの好ましい限定しない例は、本明細書のさらなる開示に基づいて当業者には明白になるであろう。例えば、(例えばPEG化によって)その半減期を増大させるように化学的に改変された本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインまたはポリペプチド、血清蛋白質(例えば血清アルブミン)への結合のための少なくとも1つの追加の結合部位を含む本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン、または、本発明のアミノ酸配列の半減期を増大させる少なくとも1つの部分(特に、少なくとも1つのアミノ酸配列)に連結された本発明の少なくとも1つのアミノ酸配列を含む本発明のポリペプチドを含む。かかる半減期延長部分または免疫グロブリン単一可変ドメインを含む本発明のポリペプチドの例は、本明細書のさらなる開示に基づいて当業者には明白であろう。例えば、限定無しに、本発明の1つまたは2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインが、1つもしくは2つ以上の血清蛋白質またはその断片(例えば、(ヒト)血清アルブミンまたはその好適な断片)あるいは血清蛋白質に結合し得る1つまたは2つ以上の結合単位(例えば、血清アルブミン(例えばヒト血清アルブミン)、血清免疫グロブリン(例えばIgG)、もしくはトランスフェリンなどの血清蛋白質に結合し得るドメイン抗体、ドメイン抗体としての使用にとって好適である免疫グロブリン単一可変ドメイン、単一ドメイン抗体、単一ドメイン抗体としての使用にとって好適である免疫グロブリン単一可変ドメイン、「dAb」、dAbとしての使用にとって好適である免疫グロブリン単一可変ドメイン、またはナノボディなど。本明細書において挙げられるさらなる説明および参照が参照される)に好適に連結されたポリペプチド、本発明のアミノ酸配列がFc部分(例えばヒトFc)またはその好適なパーツもしくは断片に連結されたポリペプチド、あるいは、本発明の1つまたは2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインが、血清蛋白質に結合し得る1つまたは2つ以上の小さい蛋白質またはペプチド(例えば、限定無しに、WO91/01743、WO01/45746、WO02/076489、WO2008/068280、WO2009/127691、およびPCT/EP2011/051559に記載されている蛋白質およびペプチド)に好適に連結され得るポリペプチドを包含する。
一般的に、増大した半減期を有する本発明の化合物またはポリペプチドは、本発明の対応するアミノ酸配列そのものの半減期よりも少なくとも1.5倍、好ましくは少なくとも2倍、例えば少なくとも5倍、例えば少なくとも10倍または20倍より長い半減期を好ましくは有する。例えば、増大した半減期を有する本発明の化合物またはポリペプチドは、本発明の対応するアミノ酸配列そのものと比較して1時間より長く、好ましくは2時間より長く、より好ましくは6時間より長く、例えば12時間より長く、またはさらには24、48、または72時間より長く増大した例えばヒトにおける半減期を有し得る。
本発明の好ましい限定しない側面において、本発明のかかる化合物またはポリペプチドは、本発明の対応するアミノ酸配列そのものと比較して1時間より長く、好ましくは2時間より長く、より好ましくは6時間より長く、例えば12時間より長く、またはさらには24、48、または72時間より長く増大した例えばヒトにおける血清半減期を有する。
本発明の別の好ましい限定しない側面において、本発明のかかる化合物またはポリペプチドは、少なくとも約12時間、好ましくは少なくとも24時間、より好ましくは少なくとも48時間、さらにより好ましくは少なくとも72時間または73時間以上のヒトにおける血清中半減期を見せる。例えば、本発明の化合物またはポリペプチドは、少なくとも5日(例えば約5〜10日)、好ましくは少なくとも9日(例えば約9〜14日)、より好ましくは少なくとも約10日(例えば約10〜15日)、または少なくとも約11日(例えば約11〜16日)、より好ましくは少なくとも約12日(例えば約12〜18日またはそれより長い)、または14日より長い(例えば約14〜19日)の半減期を有し得る。
本発明の特に好ましい限定しない側面において、本発明は、第1および第2の免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISV)を含む本発明のポリペプチドを提供し、その第1のISVは低親和性で細胞の表面上の第1の標的に結合し、結合したときにはその第1の標的の機能を阻害し、その第2のISVは高親和性でその細胞の表面上の第2の標的に結合し、好ましくは最小限にその第2の標的の機能を阻害し、その第1の標的はその第2の標的とは異なり、これは、本明細書に記載される1つまたは2つ以上の(好ましくは1つの)血清アルブミンに結合する免疫グロブリン単一可変ドメイン、例えば、配列番号114または115の血清アルブミンに結合する免疫グロブリン単一可変ドメインをさらに含む(表B−4)。
ポリペプチド−薬物コンジュゲート(PDC)
いくつかの態様において、本発明のポリペプチドは薬物とコンジュゲーションされて、ポリペプチド−薬物コンジュゲート(PDC)を形成する。当代の抗体−薬物コンジュゲート(ADC)は腫瘍学応用に用いられており、薬物(例えば、細胞傷害性または細胞増殖抑制薬、毒素または毒素部分)の局所送達のための抗体−薬物コンジュゲートの使用は、腫瘍への薬物部分標的化送達を許し、これがより高い有効性、より低い毒性などを許し得る。それらのADCは3つの構成要素を有し、(1)モノクローナル抗体が(2)リンカーを介して(3)毒素部分または毒素にコンジュゲーションされる。このテクノロジーの概略はDucry et al., Bioconjugate Chem., 21:5-13 (2010), Carter et al., Cancer J. 14(3):154 (2008) および Senter, Current Opin. Chem. Biol. 13:235-244 (2009)において提供されている(それらの全ては、参照によってそれらの全体が本明細書に組み込まれる)。PDCもまた3つの構成要素を有し、(1)ポリペプチドが(2)リンカーを介して(3)毒素部分または毒素などの薬物にコンジュゲーションされる。当業者は、ADCのテクノロジー、方法、手段などがPDCに等しく応用可能であるということを認めるであろう。
本発明は、毒素または毒素部分などの薬物を含む本発明のポリペプチドを提供する。
薬物(例えば毒素部分または毒素)は、いずれかの好適な方法を用いてポリペプチドに連結またはコンジュゲーションされ得る。一般的に、コンジュゲーションは、当分野において公知の通りポリペプチドへの共有結合的な取り付けによって行われ、一般的にリンカー(多くの場合にペプチド結合)に頼る。例えば、薬物(例えば毒素部分または毒素)は、直接的にかまたは好適なリンカーを介してポリペプチドに共有結合され得る。好適なリンカーは、非切断可能または切断可能なリンカー(例えば、細胞内酵素(例えば、細胞内エステラーゼ、細胞内プロテアーゼ、例えばカテプシンB)の切断部位を含むpHによって切断可能なリンカー)を包含し得る。かかる切断可能なリンカーは、ポリペプチドが内在化された後に薬物(例えば毒素部分または毒素)を放出し得るリガンドを調製するために用いられ得る。当業者によって認められるであろう通り、ポリペプチドあたりの薬物部分の数は反応の条件に依存して変化し得、1:1から10:1の薬物:ポリペプチドまで変わり得る。これもまた当業者によって認められるであろう通り、実際の数は平均である。ポリペプチドに薬物(例えば毒素部分または毒素)を連結またはコンジュゲーションするためのさまざまな方法が用いられ得る。選択される特定の方法は、連結またはコンジュゲーションされるべき薬物(例えば毒素部分または毒素)およびポリペプチドに依存するであろう。望まれる場合には、末端官能基を含有するリンカーが、ポリペプチドおよび薬物(例えば毒素部分または毒素)を連結するために用いられ得る。一般的に、コンジュゲーションは、反応性官能基を含有する(または、反応性官能基を含有するように改変された)薬物(例えば毒素部分または毒素)を、リンカーによってかまたは直接的にポリペプチドと反応させることによって達成される。共有結合は、適切な条件下で第2の化学基と反応し、それによって共有結合を形成し得る化学部分または官能基を含有する(または、含有するように改変された)薬物(例えば毒素部分または毒素)を反応させることによって形成された。望まれる場合には、好適な反応性化学基が、いずれかの好適な方法を用いてポリペプチドまたはリンカーに追加され得る(例えばHermanson, G. T., Bioconjugate Techniques, Academic Press: San Diego, CA (1996)参照)。多くの好適な反応性化学基の組み合わせが当分野において公知であり、例えばアミン基は、求電子性基、例えばトシラート、メシラート、ハロ(クロロ、ブロモ、フルオロ、ヨード)、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル(NHS)、および同類と反応し得る。チオールは、マレイミド、ヨードアセチル、アクリロリル(acrylolyl)、ピリジルジスルフィド、5−チオール−2−ニトロ安息香酸チオール(TNB−チオール)、および同類と反応し得る。アルデヒド官能基はアミンまたはヒドラジド含有分子にカップリングされ得、アジド基は三価のリン基と反応してホスホロアミダートまたはホスホロイミド(phosphorimide)結合を形成し得る。分子中に活性化基を導入するための好適な方法は当分野において公知である(例えばHermanson, G. T., Bioconjugate Techniques, Academic Press: San Diego, CA (1996)参照)。
下で記載される通り、PDCの薬物は薬剤のいずれかの数であり得、細胞増殖抑制薬、細胞傷害性薬剤、例えば化学療法剤、成長阻害剤、毒素(例えば、細菌、真菌、植物、もしくは動物起源の酵素活性な毒素、またはその断片)、毒素部分を包含するが、これに限定されず、または放射性同位体(すなわち、放射性コンジュゲート)が提供される。他の態様において、本発明は、PDCを用いる方法をさらに提供する。
本発明への使用のための薬物は、細胞傷害性薬物、特に癌治療のために用いられるものを包含する。かかる薬物は、一般的に、DNA損傷剤、代謝拮抗剤、天然産物、およびそれらのアナログを包含する。細胞傷害性薬剤の例示的なクラスは、酵素阻害剤、例えばジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤およびチミジル酸シンターゼ阻害剤、DNAインターカレーター、DNA切断剤、トポイソメラーゼ阻害剤、薬物のアントラサイクリンファミリー、ビンカ薬物、マイトマイシン、ブレオマイシン、細胞傷害性ヌクレオシド、薬物のプテリジンファミリー、ジイネン(diynene)、ポドフィロトキシン、ドラスタチン、メイタンシノイド、分化誘導因子、およびタキソールを包含する。
これらのクラスのメンバーは、例えばメトトレキサート、メトプテリン(methopterin)、ジクロロメトトレキサート、5−フルオロウラシル、6−メルカプトプリン、シトシンアラビノシド、メルファラン、ロイロシン(leurosine)、ロイロシデイン(leurosideine)、アクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソビシン、マイトマイシンC、マイトマイシンA、カルミノマイシン(caminomycin)、アミノプテリン、タリソマイシン(tallysomycin)、ポドフィロトキシンおよびポドフィロトキシン誘導体、例えばエトポシドまたはリン酸エトポシド、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、タキソールを包含するタキサン、タキソテール、レチノイン酸、酪酸、N8−アセチルスペルミジン、カンプトテシン、カリケアミシン、エスペラミシン、エンジイン、デュオカルマイシンA、デュオカルマイシンSA、カリケアミシン、カンプトテシン、メイタンシノイド(DM1を包含する)、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)、モノメチルアウリスタチンF(MMAF)、およびメイタンシノイド(DM4)、ならびにそれらのアナログを包含する。
毒素などの薬物がポリペプチド−毒素コンジュゲートとして用いられ得、細菌毒素、例えばジフテリア毒素、植物毒素、例えばリシン、低分子毒素、例えばゲルダナマイシン(Mandler et al (2000) J. Nat. Cancer Inst. 92(19):1573-1581; Mandler et al (2000) Bioorganic & Med. Chem. Letters 10:1025-1028; Mandler et al (2002) Bioconjugate Chem. 13:786-791)、メイタンシノイド(EP1391213; Liu et al., (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:8618-8623)、およびカリケアミシン(Lode et al (1998) Cancer Res. 58:2928; Hinman et al (1993) Cancer Res. 53:3336-3342)を包含する。毒素は、チューブリン結合、DNA結合、またはトポイソメラーゼ阻害を包含するメカニズムによってそれらの細胞傷害性および細胞増殖抑制効果を発揮し得る。
本発明のポリペプチドと1つまたは2つ以上の低分子毒素(例えば、メイタンシノイド、ドラスタチン、アウリスタチン、トリコテセン、カリケアミシン、およびCC1065、ならびに毒素活性を有するそれらの毒素の誘導体)とのコンジュゲートが企図される。
本発明のポリペプチドにコンジュゲーションされ得る他の薬物(例えば抗腫瘍薬)は、BCNU、ストレプトゾイシン(streptozoicin)、ビンクリスチン、および5−フルオロウラシル、LL−E33288複合体として集合的に公知の薬剤のファミリー(U.S.Pat.No.5,053,394、5,770,710に記載されている)、さらにはエスペラマイシン(U.S.Pat.No.5,877,296)を包含する。
用いられ得る酵素活性な毒素およびその断片などの薬物は、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、エキソトキシンA鎖(緑膿菌から)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ−サルシン、シナアブラギリ蛋白質、ジアンチン(dianthin)蛋白質、ヨウシュウヤマゴボウ(Phytolaca americana)蛋白質(PAPI、PAPII、およびPAP−S)、ツルレイシ阻害剤、クルシン(curcin)、クロチン(crotin)、サボンソウ(sapaonaria officinalis)阻害剤、ゲロニン(gelonin)、マイトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン(enomycin)、およびトリコテセンを包含する。例えばWO93/21232(Oct.28,1993公開)参照。
本発明は、本発明のポリペプチドと核酸分解活性を有する化合物(例えば、リボヌクレアーゼまたはDNAエンドヌクレアーゼ、例えばデオキシリボヌクレアーゼ(DNase))との間で形成されるPDCをさらに企図する。
腫瘍の選択的な破壊のためには、本発明のポリペプチドは、高度に放射性の原子を含み得る。さまざまな放射性同位体が、放射性コンジュゲーション抗体の産生のために利用可能である。例は、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、およびLuの放射性同位体を包含する。
放射性および他の標識は、公知の方法でコンジュゲート中に組み込まれる得る。例えば、ペプチドは、例えば水素の代わりにフッ素19が関わる好適なアミノ酸前駆体を用いて、生合成され得るかまたは化学的なアミノ酸合成によって合成され得る。Tc99mまたはI123、Re186、Re188、およびIn111などの標識は、ペプチド中のシステイン残基を介して取り付けられ得る。イットリウム90はリシン残基を介して取り付けられ得る。ヨードゲン法(Fraker et al (1978) Biochem. Biophys. Res. Commun. 80: 49-57)はヨウ素123を組み込むために用いられ得る。「Monoclonal Antibodies in Immunoscintigraphy」(Chatal, CRC Press 1989)は、他の方法を詳細に記載している。
ポリペプチド−薬物コンジュゲート化合物の作出は、ADCの分野の業者に公知のいずれかのテクニックによって達成され得る。簡潔には、ポリペプチド−薬物コンジュゲート化合物は、抗体単位としての本発明のポリペプチド、薬物、および任意で薬物と結合薬剤とをつなぎ合わせるリンカーを包含し得る。
薬物または抗体−薬物コンジュゲートが効果(例えば、細胞に対する細胞増殖抑制および/または細胞傷害性効果)を発揮するかどうかを決定するための方法は公知である。一般的に、効果(例えば、抗体薬物コンジュゲートの細胞傷害性または細胞増殖抑制活性)は、細胞培養培地中で抗体−薬物コンジュゲートの標的蛋白質を発現する哺乳動物細胞を暴露することと、約6時間〜約5日の時間細胞を培養することと、細胞生存を測定することとによって測定され得る。細胞に基づくインビトロアッセイが、抗体薬物コンジュゲートの生存(増殖)、細胞傷害性、およびアポトーシスの誘導(カスパーゼ活性化)を測定するために用いられ得る。これらの方法はPDCに等しく応用可能である。
従って、本発明は、毒素または毒素部分などの薬物をさらに含む本発明のポリペプチドに関する。
従って、本発明は、毒素または毒素部分などの薬物にコンジュゲーションされた本発明に従うポリペプチドに関する。
特異性から判断して、本発明のポリペプチドはイメージング剤へのコンジュゲーションにとってもまた非常に好適である。抗体へのコンジュゲーションのための好適なイメージング剤は当分野において周知であり、本発明のポリペプチドへのコンジュゲーションにとって類似に有用である。好適なイメージング剤は、有機分子、酵素標識、放射性標識、有色標識、蛍光標識、クロモゲン標識、発光標識、ハプテン、ジゴキシゲニン、ビオチン、金属錯体、金属、金コロイド、蛍光標識、金属標識、ビオチン、化学発光、生物発光、クロモフォア、およびその混合物からなる群から好ましくは選択される分子を包含するが、これに限定されない。
従って、本発明は本発明に従うポリペプチドに関し、有機分子、酵素標識、放射性標識、有色標識、蛍光標識、クロモゲン標識、発光標識、ハプテン、ジゴキシゲニン、ビオチン、金属錯体、金属、金コロイド、蛍光標識、金属標識、ビオチン、化学発光、生物発光、クロモフォア、およびその混合物からなる群から好ましくは選択される分子を包含するが、これに限定されないイメージング剤をさらに含む。
リンカー
本発明のポリペプチドにおいて、2つまたは3つ以上のビルディングブロック(ISVまたはナノボディ)と任意で1つまたは2つ以上のポリペプチド、1つまたは2つ以上の他の基、薬物、薬剤、残基、部分、または結合単位とは、互いに直接的に連結され得るか(例えばWO99/23221に記載されている通り)、および/あるいは1つもしくは2つ以上の好適なスペーサーもしくはリンカーまたはそのいずれかの組み合わせを介して互いに連結され得る。
多価および多重特異性ポリペプチドへの使用のための好適なスペーサーまたはリンカーは、当業者には明白であろう。一般的に、アミノ酸配列を連結するために当分野において用いられるいずれかのリンカーまたはスペーサーであり得る。好ましくは、そのリンカーまたはスペーサーは、医薬使用を意図される蛋白質またはポリペプチドを構築することへの使用にとって好適である。
いくつかの特に好ましいスペーサーは、抗体断片または抗体ドメインを連結するために当分野において用いられるスペーサーおよびリンカーを包含する。それらは、上で引用された一般的な背景技術において挙げられているリンカー、さらには、例えば、ダイアボディまたはScFv断片を構築するために当分野において用いられるリンカーを包含する(しかしながら、これに関して、ダイアボディおよびScFv断片においては、用いられるリンカー配列は、適合するVHおよびVLドメインが一緒になって完全な抗原−結合部位を形成することを許す長さ、フレキシビリティの程度、および他の特性を有するべきであるが、一方で、本発明のポリペプチドに用いられるリンカーの長さまたはフレキシビリティに特定の限定がないということが注意されるべきである。なぜなら、各ナノボディはそれ自体で完全な抗原−結合部位を形成するからである)。
例えば、リンカーは、好適なアミノ酸配列、特に、1〜50、好ましくは1〜30、例えば1〜10アミノ酸残基のアミノ酸配列であり得る。かかるアミノ酸配列のいくつかの好ましい例は、例えば(glyxsery)z型のgly−serリンカー、(例えばWO99/42077に記載されている(gly4ser)3または(gly3ser2)3、および本明細書において挙げられるAblynxによる出願に記載されているGS30、GS15、GS9、およびGS7リンカー(例えばWO06/040153およびWO06/122825参照)、さらにはヒンジ様領域、例えば天然に存在する重鎖抗体または類似の配列のヒンジ領域(例えば、WO94/04678に記載されている)を包含する。好ましいリンカーは表B−5に表現されている。
いくつかの他の特に好ましいリンカーは、ポリアラニン(例えばAAA)、さらにはリンカーGS30(WO06/122825の配列番号85)およびGS9(WO06/122825の配列番号84)である。
他の好適なリンカーは、有機化合物またはポリマー、特に、医薬使用のための蛋白質への使用にとって好適なものを一般的に含む。例えば、ポリ(エチレングリコール)部分は抗体ドメインを連結するために用いられている。例えばWO04/08102参照。
用いられるリンカー(単数または複数)の長さ、フレキシビリティの程度、および/または他の特性は、(通常はScFv断片に用いられるリンカーのためであるので、決定的に重要ではないが)本発明の最終的なポリペプチドの特性(ケモカインまたは他の抗原の1つもしくは2つ以上に対する親和性、特異性、またはアビディティを包含するが、これに限定されない)に何らかの影響を及ぼし得るということは本発明の範囲内に包摂される。本明細書の開示に基づいて、当業者は、任意で何らかの限定されたルーチン的な実験後に、本発明の具体的なポリペプチドへの使用のための最適なリンカー(単数または複数)を決定する能力があるであろう。
例えば、第1および第2の標的に対するビルディングブロック、ISV、またはナノボディを含む本発明の多価ポリペプチドにおいて、リンカーの長さおよびフレキシビリティは、好ましくは、ポリペプチド中に存在する本発明の各ビルディングブロック、ISV、またはナノボディがそのコグネートな標的(例えば、標的のそれぞれの上の抗原決定基)に結合することを許すようなものである。再び、本明細書の開示に基づいて、当業者は、任意で何らかの限定されたルーチン的な実験後に、本発明の具体的なポリペプチドへの使用のための最適なリンカー(単数または複数)を決定する能力があるであろう。
用いられるリンカー(単数または複数)が、1つまたは2つ以上の他の有利な特性または機能性を本発明のポリペプチドに授け、ならびに/または誘導体の形成および/もしくは官能基の取り付けのための1つもしくは2つ以上の部位を提供するということもまた本発明の範囲内である(例えば、本発明のナノボディの誘導体について本明細書に記載される通り)。例えば、1つまたは2つ以上の荷電アミノ酸残基を含有するリンカーは改善された親水性特性を提供し得、一方、小さいエピトープまたはタグを形成または含有するリンカーは検出、同定、および/または精製の目的のために用いられ得る。再び、本明細書の開示に基づいて、当業者は、任意で何らかの限定されたルーチン的な実験後に、本発明の具体的なポリペプチドへの使用のための最適なリンカーを決定する能力があるであろう。
最後に、2つまたは3つ以上のリンカーが本発明のポリペプチドに用いられるときには、それらのリンカーは同じかまたは異なり得る。再び、本明細書の開示に基づいて、当業者は、任意で何らかの限定されたルーチン的な実験後に、本発明の具体的なポリペプチドへの使用のための最適なリンカーを決定する能力があるであろう。
通常は、発現および産生の容易さ(easy)のために、本発明のポリペプチドは直鎖ポリペプチドであろう。しかしながら、本発明はその最も幅広い意味においてこれに限定されない。例えば、本発明のポリペプチドが3つまたは4つ以上のビルディングブロック、ISV、またはナノボディを含むときには、3つまたは4つ以上の「アーム」を有するリンカーの使用によってそれらを連結することが可能である。それらの各「アーム」は、「星形」構築物を提供するためにビルディングブロック、ISV、またはナノボディに連結される。通常はより好ましくないが、環状構築物を用いることもまた可能である。
治療および診断組成物および使用
本発明は、本発明のポリペプチド(PDCを包含する)と医薬上受け入れられる担体、希釈剤、または賦形剤とを含む組成物、ならびに本発明のポリペプチドまたは組成物を使用する治療および診断方法を提供する。本発明の方法に従うポリペプチド(PDCを包含する)は、インビボ治療および予防応用、インビボ診断応用、ならびに同類に使用され得る。本発明のポリペプチド(PDCを包含する)の治療および予防の使用には、ヒトなどのレシピエント哺乳動物への本発明に従うポリペプチド(PDCを包含する)の投与が関わる。
少なくとも90〜95%均一の実質的に純粋なポリペプチドおよびPDCが哺乳動物への投与にとって好ましく、98〜99%またはそれより大きい均一が医薬使用にとって(とりわけ、哺乳動物がヒトであるときに)最も好ましい。一度望まれる通り部分的にまたは均一にまで精製されたら、ポリペプチドおよびPDCは、診断上もしくは治療上(体外的にを包含する)、またはアッセイ法、免疫蛍光染色、および同類を開発および実施することに用いられ得る(Lefkovite and Pernis, (1979 and 1981) Immunological Methods, Volumes I and II, Academic Press, NY)。
例えば、本発明のポリペプチドおよびPDCは、典型的には、疾患状態を防止、抑制、または処置することに用いられるであろう。例えば、ポリペプチドまたはPDCは、慢性炎症疾患、アレルギー性過敏症、癌、細菌またはウイルス感染、自己免疫障害(これは、I型糖尿病、喘息、多発性硬化症、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、乾癬性関節炎、脊椎関節症(spondylarthropathy)(例えば強直性脊椎炎)、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾患(例えば、クローン病、潰瘍性大腸炎)、重症筋無力症およびベーチェット病、乾癬、子宮内膜症、および腹部癒着(例えば、腹部術後)を包含するが、これに限定されない)を処置、抑制、または防止するために投与され得る。ポリペプチドおよびPDCは、感染因子に感染した細胞が、未感染細胞よりも細胞表面EGFRの高いレベルを含有するか、または非感染細胞上に存在しない1つもしくは2つ以上の細胞表面標的(例えば、感染性因子(例えば、細菌、ウイルス)によってコードされる蛋白質)を含有する感染症を処置することにおいて有用である。本発明のポリペプチドおよびPDCは、典型的には、癌を防止、抑制、または処置することに用いられるであろう。例えば、ポリペプチドおよびPDCは癌を処置、抑制、または防止するために投与され得、それらは癌腫、グリオーマ、中皮腫、メラノーマ、リンパ腫、白血病、腺癌、乳癌、卵巣癌、子宮頸癌、グリオブラストーマ、多発性骨髄腫(意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症、無症候性および症候性骨髄腫を包含する)、前立腺癌、およびバーキットリンパ腫、頭頸部癌、結腸癌、大腸癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、食道癌、胃癌、膵臓癌、肝胆道癌、胆嚢癌,小腸癌、直腸癌、腎臓癌、膀胱癌、前立腺癌、陰茎癌、尿道癌、精巣癌、膣癌、子宮癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、膵内分泌癌、カルチノイド癌、骨癌、皮膚癌、網膜芽細胞腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、カポジ肉腫、多中心性キャッスルマン病、またはAIDS関連原発性滲出性リンパ腫、神経外胚葉腫瘍、横紋筋肉腫(追加の癌については、例えばCancer, Principles and practice (DeVita, V.T. et al. eds 1997)参照)、さらには上の癌のいずれかのいずれかの転移、さらには非癌適応、例えば鼻ポリポーシス、さらには本明細書に記載される他の障害および疾患を包含するが、これに限定されない。
本願において、用語「防止」は、疾患の誘導に先立っての保護組成物の投与が関わる。「抑制」は、誘導イベント後だが疾患の臨床像に先立つ組成物の投与を言う。「処置」には、疾患の症状が現れた後の保護組成物の投与が関わる。処置は、疾患に関連する症状を回復させること、疾患の始まりを防止するかまたは遅延させることをもまた、疾患の症状の重度または頻度を減ずることもまた包含する。
疾患(例えば癌)を防止、処置、または抑制することにおける本発明のポリペプチドおよびPDCの有効性を評価するために用いられ得る動物モデルシステムが利用可能である。癌の好適なモデルは、例えば動物モデルにおけるヒト癌の異種移植およびオーソトピックモデル、例えばSCID−hu骨髄腫モデル(Epstein J, and Yaccoby, S., Methods Mol Med. 773:183-90 (2005), Tassone P, et al, Clin Cancer Res. 11:4251-8 (2005))、ヒト肺癌のマウスモデル(例えば、Meuwissen R and Berns A, Genes Dev. CHECK:643-64 (2005))、および転移癌のマウスモデル(例えば、Kubota J Cell Biochem. 56:4-8 (1994))を包含する。
一般的に、本ポリペプチドおよびPDCは、薬理学的に適切な担体と一緒に精製された形態で利用されるであろう。典型的には、それらの担体は水性もしくはアルコール性/水性溶液、エマルション、または懸濁液を包含し、食塩水および/または緩衝媒を包含する。非経口基剤は、塩化ナトリウム溶液、デキストロースリンゲル液、デキストロースおよび塩化ナトリウム、ならびに乳酸リンゲル液を包含する。好適な生理的に受け入れられるアジュバントは、ポリペプチドまたはPDC複合体を懸濁液に保つために必要な場合には、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、およびアルギン酸塩などの増粘剤から選ばれ得る。
静脈内用基剤は、流体ならびに栄養補充薬および電解質補充薬、例えばデキストロースリンゲル液に基づくものを包含する。保存料および他の添加剤、例えば抗微生物剤、抗酸化剤、キレート剤、および不活性ガスもまた存在し得る(Mack (1982) Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th Edition)。さまざまな好適な製剤が用いられ得、持続放出製剤を包含する。
本発明のポリペプチドおよびPDCは、別々に投与される組成物としてまたは他の薬剤と併せて用いられ得る。ポリペプチドおよびPDCは、1つまたは2つ以上の追加の治療または活性薬剤と一緒に投与および/または製剤され得る。ポリペプチドまたはPDCが追加の治療薬剤と一緒に投与されるときには、ポリペプチドまたはPDCは、追加の薬剤の投与の前に、同時に、または爾後に投与され得る。一般的に、ポリペプチドまたはPDCおよび追加の薬剤は、治療効果のオーバーラップを提供するやり方で投与される。
本発明のポリペプチドおよびPDCはさまざまな好適な併用治療薬と(例えば、癌、炎症性疾患、または他の疾患を処置するために)併用投与され得、それらはサイトカイン、鎮痛薬/解熱薬、駆虫薬、および化学療法薬を包含する。
それゆえに、本発明は癌を処置する方法を提供し、これが本発明のポリペプチドまたはPDCの治療有効量と化学療法薬とをその必要がある患者に投与することを含み、ここで、化学療法薬は低用量で投与される。一般的に、本発明のポリペプチドと併用投与される化学療法薬の量は、患者に正常に投与される化学療法薬単独の用量の約80%、または約70%、または約60%、または約50%、または約40%、または約30%、または約20%、または約10%もしくはそれより小さいものである。それゆえに、併用治療は、化学療法薬が、より低い用量においては低減されるかまたは除かれ得る有害なまたは望ましくない副作用を引き起こすときに特に有利である。
医薬組成物は、種々の細胞傷害性もしくは他の薬剤の「カクテル」を、本発明のポリペプチドもしくはPDC、またはさらには異なる特異性を有する本発明に従うポリペプチドおよびPDCの組み合わせ(例えば、異なる標的抗原もしくはエピトープを用いて選択されたポリペプチドまたはPDC)と併せて、それらが投与に先立ってプールされているか否かに関わらず包含し得る。
本発明に従う医薬組成物の投与経路は、いずれかの好適な経路、例えば当業者に普通に周知のもののいずれかであり得る。治療(限定無しに免疫療法を包含する)のためには、本発明のポリペプチドおよびPDCは、標準的なテクニックに従っていずれかの患者に投与され得る。投与はいずれかの適切なモードによってであり得、非経口的に、静脈内に、筋内に、腹膜内に、経皮で、髄腔内に、関節内に、経肺経路によって、または適切には直接輸液にもまたよって(例えばカテーテルによる)を包含する。投与の用量および頻度は、患者の年齢、性別、および状態、他の薬物の並行投与、禁忌、および医師によって考慮に入れられるべき他のパラメータに依存するであろう。投与は局所的(例えば、経肺投与(例えば鼻腔内投与)による肺への局所送達または直接的に腫瘍内への局所注入)または全身的であり得、指示される。
本発明のポリペプチドおよびPDCは保管のために凍結乾燥されて、使用に先立って好適な担体中で戻され得る。このテクニックは従来の免疫グロブリンでは有効であることが示されており、当分野において公知の凍結乾燥および戻しのテクニックが使用され得る。凍結乾燥および戻しが、抗体活性の損失のいろいろな程度につながり得る(例えば従来の免疫グロブリンでは、IgM抗体はIgG抗体よりも大きい活性の損失を有する傾向がある)ということと、使用レベルが、埋め合わせるために上方に調整されなければならなくあり得るということとは、当業者によって認められるであろう。
ポリペプチドまたはPDCを含有する組成物は、予防および/または治療処置のために投与され得る。ある種の治療応用において、選択された細胞の集団の少なくとも部分的な阻害、抑制、調節、死、またはいくつかの他の測定可能なパラメータを達成するための適当な量は、「治療有効用量」として定義される。この用量を達成するために必要とされる量は、疾患の重度と患者の健康の一般的な状態とに依存するであろうが、一般的には体重のキログラムあたりリガンドの0.005〜5.0mgに渡り、0.05〜2.0mg/kg/回の用量がより普通には用いられるであろう。予防応用のためには、本ポリペプチドおよびPDCまたはそのカクテルを含有する組成物は、類似のまたは僅かにより低い用量でもまた投与されて、疾患の始まりを防止、阻害、または遅延し得る(例えば、寛解または休止を持続させるかまたは急性相を防止し得る)。当業者は、疾患を処置、抑制、または防止するための適切な投薬間隔を決定する能力があるであろう。ポリペプチドおよびPDCが疾患を処置、抑制、または防止するために投与されるときには、1日4回、1週間に2回、1週間に1回、2週間に1回、1ヶ月に1回、または2ヶ月毎に1回まで、例えば約10[mu]g/kg〜約80mg/kg、約100[mu]g/kg〜約80mg/kg、約1mg/kg〜約80mg/kg、約1mg/kg〜約70mg/kg、約1mg/kg〜約60mg/kg、約1mg/kg〜約50mg/kg、約1mg/kg〜約40mg/kg、約1mg/kg〜約30mg/kg、約1mg/kg〜約20mg/kg、約1mg/kg〜約10mg/kg、約10[mu]g/kg〜約10mg/kg、約10[mu]g/kg〜約5mg/kg、約10[mu]g/kg〜約2.5mg/kg、約1mg/kg、約2mg/kg、約3mg/kg、約4mg/kg、約5mg/kg、約6mg/kg、約7mg/kg、約8mg/kg、約9mg/kg、または約10mg/kgの用量で投与され得る。
特定の態様において、本発明のポリペプチドおよびPDCは、係留標的の飽和または望まれる血清中濃度をインビボで提供する用量で投与される。医者は、例えばポリペプチドをタイトレーションし、その係留標的発現細胞のフリーな結合部位の量またはポリペプチドの血清中濃度をモニタリングすることによって、飽和を達成するための適切な用量を決定し得る。薬剤の目標飽和または望まれる血清中濃度を達成するための治療薬剤の投与が関わる治療レジメン(regiment)は、当分野、特に腫瘍学の分野において普通である。
1つまたは2つ以上の症状が、処置前に存在するかかる症状と相対的に、またはかかる組成物もしくは他の好適なコントロールによって処置されていない個体(ヒトまたはモデル動物)のかかる症状と相対的に低減される(例えば、少なくとも10%または臨床評価スケールの少なくとも1ポイントだけ)場合には、本明細書に記載される組成物を用いて実施される処置または治療は「有効」だと考えられる。症状は、標的化される疾患または障害に依存して当然ながら変わり得るであろうが、医師または技師業者によって測定され得る。かかる症状は、例えば、疾患もしくは障害の1つもしくは2つ以上の生化学的指標のレベル(例えば、疾患、冒された細胞数などと相関する酵素または代謝物のレベル)をモニタリングすることによって、肉体症状(例えば、炎症、腫瘍サイズなど)をモニタリングすることによって、または公認の臨床評価スケールによって測定され得る。少なくとも10%のまたは所与の臨床スケールにおける1または2ポイント以上の疾患または障害の症状の持続的な(例えば、1日または2日以上、好ましくは3日以上)低減は、「有効な」処置の指標である。類似に、本明細書に記載される組成物を用いて実施される予防は、1つまたは2つ以上の症状の始まりまたは重度が、組成物によって処置されていない類似の個体(ヒトまたは動物モデル)におけるかかる症状と相対的に、遅延する、低減する、または無くなる場合には「有効」である。
本発明に従うポリペプチドおよび/またはPDCを含有する組成物は、予防および治療の設定において利用されて、哺乳動物中の選択標的細胞集団の変改、不活性化、死、または除去を補助し得る。加えて、本明細書に記載されるポリペプチドのリガンドおよび選択されたレパートリーは、体外またはインビトロで用いられて、細胞の不均一な集まりから標的細胞集団を選択的に殺すか、ディプリーションするか、または別様に有効に除去し得る。哺乳動物からの血液が体外でリガンド、例えば抗体、細胞表面受容体、またはその結合蛋白質と組み合わされ得、それによって、標準的なテクニックに従って哺乳動物への返血のために望ましくない細胞は死ぬかまたは血液から別様に除去される。
従って、本発明は、本発明に従うポリペプチドまたはPDCを含む医薬組成物に関する。
従って、本発明は、体内の特異的な場所、組織、または細胞型、に予防もしくは治療ポリペプチド、PDC、またはイメージング剤を送達するための方法に関し、その方法は、本発明に従うポリペプチドを対象に投与するステップを含む。
従って、本発明は、その必要がある対象を処置するための方法に関し、本発明に従うポリペプチドまたはPDCを投与することを含む。
従って、本発明は、その必要がある対象を処置することへの使用のための本発明に従うポリペプチドまたはPDCに関する。
本明細書において例示され論じられる態様は、本発明をなして用いるための本発明者に既知の最良の方法を当業者に教示することのみを意図されている。本発明の上で記載された態様の改変およびバリエーションは、本発明から逸脱すること無しに可能であり、これは上の教示に照らして当業者によって認められる。そのため、請求項およびそれらの均等物の範囲において、本発明は、具体的に記載されている通りとは別様に実施され得るということは理解される。
本発明は、以下の限定しない好ましい側面、例、および図面によって今やさらに記載される。
本願に引用される参照の全ての全体的な内容(文献の参照、交付済み特許、公開特許出願、および同時係属中の特許出願を包含する)は、特に本明細書において上で参照された教示のために、ここで明示的に参照によって組み込まれる。
実験の項
例1.CXCR4−CD123二重特異性ポリペプチドによる白血病細胞の選好的な標的化
例1.1.二重特異性CXCR4およびCD123ポリペプチドを設計するための実験のセットアップ
二重特異性抗CXCR4−CD123ナノボディの作出によって、本発明者は、全て副作用または毒性を最小化するために、主にCXCR4を発現する細胞(これは正常細胞をあらわす)ではなくCXCR4およびCD123受容体両方を発現する細胞(癌細胞のモデルシステムとして)上のCXCR4に対する高親和性の高力価アンタゴニストを作出することを目指した。
この選択性に届くために、1つのアーム側の抗CXCR4ナノボディ(機能ISV)が完全なアンタゴニストであるが、低〜中程度の親和性のみを有する必要があるという仮説を立てた。もう一方のアーム側の抗CD123ナノボディは、アビディティによって、両方の受容体を共発現する細胞上の抗CXCR4ナノボディの親和性および力価を増大させるように働く(係留ISV)。2つの膜受容体への同時の結合は、一価ナノボディと比べて二重特異性体の親和性を増大させるであろう。CD123アームについては、ナノボディは、再び副作用または毒性を最小化するために、選好的に、その機能に影響しない結合因子である。ゆえに、CD123受容体の機能遮断は要求されない。図1.1に示したモデルシステムを用いて、二重特異性CD123−CXCR4構築物の選択的な機能を研究した。これは、両方の受容体を発現する細胞(すなわち白血病幹細胞)に高いアビディティで結合するが、CXCR4+/CD123−細胞(すなわち正常な造血幹細胞)については低い親和性および力価のみを有する。
増大したアビディティを得るために必要とされるナノボディのそれぞれの親和性は、先験的には不明である。親和性が高すぎるときには、二重特異性体は、1つの受容体のみを発現する細胞にもまた結合するであろう。これは望まれない。そこへ、本発明者は、低〜中程度の力価のCXCR4ナノボディと組み合わせられるべき、IL3Rαに対する異なる親和性を有するナノボディの選択法を設計することに取りかかった。
例1.2:一価ナノボディの産生
一価のCXCR4およびCD123特異的ナノボディをE.coli内で産生し、発現ベクターpAX129によってC末端連結FLAG3−His6タグ蛋白質として発現した。アミノ酸配列は、それぞれ一価CXCR4ビルディングブロックおよび一価CD123ビルディングブロックについて表1および2に表現されている。発現はIPTGによって誘導し、37℃で4h継続することを許した。細胞培養物を遠心した後に、ペリプラズム抽出物を、ペレットを凍結−融解することによって調製した。固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)およびD−PBSへの緩衝液交換を用いて、ナノボディをそれらの抽出物から精製した。純度およびインテグリティはSDS−PAGEによって確認した。
例1.3:抗CD123特異的ナノボディの特徴
あり得る副作用および/または毒性を最小化するために、抗CD123ナノボディは、好ましくは、正常細胞上にもまた発現されるIL3Rαの機能に影響しない。なおその上に、エピトープ多様性のあり得る導入によるいずれかの複雑化を回避するために、且つ概念実証(PoC)研究における機能/選択性のいずれかの上昇が相対的な親和性(すなわち一価ビルディングブロックの親和性)によってのみ定義されることを保証するために、本発明者は、同じエピトープに結合するが相対的な親和性のみが異なるナノボディを同定することに取りかかった。
例1.3.1.IL−3Rαを発現する細胞への抗CD123ナノボディの結合
膜に会合したヒトIL−3Rαへのナノボディ結合を、pcDNA3.1−IL3Rα(NM_002183.2)によってトランスフェクションしたHEK293T細胞および非トランスフェクション細胞において分析した。表面発現を、ヤギ抗マウスPE(Jackson Immuno Research 115-115-164)が続くIL−3Rα特異的抗体(R&D MAB301およびBD Pharminogen 554528)を用いるFACSによって確認した。簡潔には、ナノボディの段階希釈物がFACS緩衝液(PBS1X+10%FBS+0.05%アジ化物)中において4℃で30分間会合することを許した。これに続いて、細胞を遠心分離によって洗浄し、4℃で30分間、6.7nMの抗FLAGによってプローブ処理して、結合したナノボディを検出した。検出は抗M13によって30分間4℃で行った。細胞を洗浄し、TOPRO3と一緒にインキュベーションして死細胞を染色した(これらは、そこでゲーティング手続き中に除去される)。そこで、細胞をBD FACSArrayによって分析した。結果は図1.2に表現されている。
Hek−IL−3Rα細胞とのCD123ナノボディ55A01および57A07の明白な相互作用が明証され、一方で、HEK293T−wt細胞への結合の欠如からはIL−3Rαに対するナノボディの特異性が確認された(データは示さない)。
CD123ナノボディの結合を、IL−3RαおよびIL−3Rβ鎖両方を内在的に発現する白血病細胞(すなわちMolm−13およびTHP−1細胞)に対してもまた評価した。これらの細胞はトランスフェクションされたHEK−IL−3Ra細胞よりもかなり低いIL−3Rα発現レベルを有しており、受容体のより代表的な発現レベルを有する可能性が高い。本プロジェクトのために選択されたクローンのより低い力価を原因として、結合曲線は結合の飽和に関して不完全であった。結合曲線およびEC50値をそれぞれ図1.2および表3に示す。
結合研究から、ナノボディはIL3Rαに結合する能力があるが、IL3RβパートナーとのIL3Rαのへテロ二量体受容体複合体を崩壊させないということが確認された。これは、CD123受容体シグナル伝達の機能遮断を避けるという必要条件を満たしている。
例1.3.2.CD123ナノボディの親和性決定
CD123特異的ナノボディの親和性を、ProteOnにおいて表面プラズモン共鳴(SPR)によってさらに研究した。組み換えIL−3Rαエクトドメイン(Sino Biologicals)の固定化は761RUまで行った。ナノボディを、3倍のタイトレーション(1μM〜4.1nMに渡る5つのさらなる濃度をカバーする)が続く1μMの最高濃度で加えた。これらを、そこで単一の注入サイクルで加え、キネティクス分析のためのProteOnの特異的なワンショットキネティクス手法を利用した。会合/解離データの評価は、1:1相互作用モデル(ラングミュア結合モデル)をフィッティングすることによって実施した。いくつものクローンが、ナノボディの低親和性を原因として1μM濃度において飽和を示し損なった。CD123ナノボディについて、得られたKD値は、細胞結合のEC50値によってリトリーブされた見かけ上の親和性と良く相関した(表3参照)。
例1.3.3.抗CD123抗体7G3との抗CD123ナノボディの競合
機能的な高親和性ヒトIL−3受容体は、リガンド結合αサブユニットおよびβサブユニットからなるへテロ二量体である。βサブユニットはそれ自体ではリガンドIL−3に結合しないが、へテロ二量体受容体複合体へのIL−3の高親和性結合には要求される。
Molm−13細胞におけるリガンド置換は、ビオチン化リガンドが低すぎる結合を発揮したため、評価し得なかった。IL−3はIL−3Rβの不在下ではIL−3Rαに対して低い親和性のみを有するので、トランスフェクションされたHek−IL−3Rα細胞も用いられ得なかった。エピトープ情報を評価するために、CD123ナノボディを、ELISAにおけるIL−3Rαエクトドメインへの結合について、IL−3Rα特異的なmAb7G3との競合によって分析した。抗IL−3Rα特異的モノクローナル抗体7G3のヒト化版CSL−360は、第I相治験において機能的な有効性を欠くことが以前に示された。
簡潔には、抗体7G3(BD,554527)を1ug/mlでコーティングし、溶液中のカゼイン(1%)中でブロッキングした。ナノボディおよびビオチン化IL−3Rαエクトドメイン(R&D systems,301-R3/CF)を追加し、4時間かけて平衡に届くことを許した。そこでプレートを洗浄し、7G3と会合したIL−3Rαを、現像とOD450nmでの吸収の爾後の分析とに先立って、エクストラアビジンペルオキシダーゼによって検出した。IC50値を表3に示す。
CD123ナノボディを、7G3抗体と競合するそれらの力能について試験した。2つの抗CD123ナノボディ(すなわち、55A01および57A07)は7G3と同じエピトープに結合したが、異なる相対的な親和性および力価を有していた(表5をもまた参照)。爾後に、これらのナノボディをフォーマット化に用いて、抗CXCR4ナノボディとの二重特異性ポリペプチドにした(例1.5参照)。
例1.4:抗CXCR4特異的ナノボディの特徴
本例において、本発明者は、一方では低親和性を有し、他方では機能アンタゴニストとして作用する能力が尚ある抗CXCR4ナノボディを同定およびキャラクタリゼーションすることに取りかかった。低〜中程度の親和性を有するナノボディを機能的に試験することは骨であり、特に、いずれかの観察される機能の不在は低親和性を原因とし、例えば無関係なエピトープへの結合を原因とするのではないに違いないので、本発明者は非従来の手法を用いた。これを下で詳述する。
最初に、利用可能な抗CXCR4ナノボディの大きなシリーズを、CXCR4シグナル伝達をアンタゴナイズするそれらのキャパシティーについて評価した。以前の研究において、CXCR4に特異的な機能アンタゴニストナノボディが既に同定された。そこで、本発明者は、より低い親和性を有する機能アンタゴニストのファミリーメンバーに目を向けた。
なおその上に、本発明者は、いくつかの場合に、二重特異性ポリペプチド中におけるナノボディの位置が親和性を減少させ得るということを観察した。いずれかの理論に束縛されること無く、これが立体障害を原因としてあり得るという仮説を立てた。ゆえに、中程度の親和性を有することが公知であり且つアンタゴニスト活性を有するナノボディを、二重特異性ポリペプチド中の「有利でない」場所に置くことによって、親和性および機能的な効果が両方とも減少し得る。このようにして、低親和性抗CXCR4ナノボディの機能に及ぼす第2のナノボディのアビディティ効果が識別され得る。
例1.4.1.低親和性CXCR4ナノボディの同定
CXCR4−IL−3Ra二重特異性体の作出のために、機能遮断のための正しいエピトープを認識する低〜中程度の親和性を有するナノボディが必要とされる。以前の研究において、CXCR4に特異的な機能的なアンタゴニストナノボディが同定された。しかしながら、それらの以前の研究におけるリード選択および同定手順中の第1の狙いは、低親和性クローンではなく高力価候補を同定することであった。以前の研究のスクリーニングカスケードはリガンド結合の遮断にフォーカスしていたので、これは、正しいエピトープを有するが本研究において要求される低親和性を原因とする低力価を有するクローンの同定を妨げた。正しい立体配座のためには細胞膜中に埋め込まれるべきであるCXCR4の場合には、IL−3Raナノボディについて行ったSPRにおけるoff速度分析によって低親和性ナノボディを特異的に探索するための組み換え蛋白質のソースが利用可能でなかった。
この問題を克服するために、本発明者は、CXCR4シグナル伝達の証明されたリガンド機能遮断を有するCXCR4ナノボディのファミリーメンバーにズームインした。ナノボディ14A02、14E02、および14D09は同じファミリーのメンバーであり、保存されたCDR3領域によって定義される。高親和性(high affine)ファミリーメンバーCXCR4ナノボディ14A02は、異なる細胞アッセイ(CXCR4発現細胞における、リガンドによって誘導される走化性およびcAMP誘導の阻害を包含する)においてCXCR4機能性の強力なアンタゴニストであることを示した(表4)。
例1.4.2.CXCR4ナノボディの結合分析
CXCR4発現細胞へのCXCR4ナノボディの結合を異なる細胞株において評価して、EC50値を評価した。CXCR4については、膜挿入が受容体のまともな立体配座および機能性にとって必要とされる。そのため、CXCR4ナノボディを、ELISAにおいて、CXCR4を発現するウイルス脂質粒子(VLP;Molecular Integral)対対照脂質粒子への結合についてキャラクタリゼーションした。この目標のために、VLPを0.5U/ウェルで一晩4℃でコーティングし、検出のための抗myc抗体を用いた。全ての異なる結合アッセイにおいて、ナノボディ14D09は、EC50値のシフトによって指示される通り14A02よりも低い結合親和性を常に発揮した。結果は図1.3に表現されている。
例1.4.3.CXCR4ナノボディのリガンド置換
CXCR4ナノボディを、フローサイトメトリーにおけるCaki−CXCR4細胞上のビオチン化SDF−1の置換によって、受容体結合についてリガンドCXCL12(またはSDF−1a)と競合するそれらの能力について分析した。この目標のために、ナノボディの段階希釈物を細胞上でビオチン化SDF−1(R&D Systems Fluorokineキット)の30nMと一緒にインキュベーションし、その後にエクストラアビジン−PEを用いてリガンド結合を可視化した。このアッセイに用いたビオチン−SDF−1競合剤濃度は、用量タイトレーションにおいて得られたEC50値よりも下だった。ここで、IC50値はKiを反映するはずである。
このアッセイから、ファミリーメンバー14A09と14A02との間の見かけ上の親和性の違いが、リガンド競合においてキャパシティーの類似の違いとなって現れるということが確認された(図3パネルC)。このやり方で、本発明者は、14D09(14D9ともまた呼称される)ナノボディがリガンド競合剤であるということと、その親和性の改善が(より低い力価が効率的なSDF−1競合を示し損なうときに)より良好な力価につながり得るということとを確信している。
CXCR4ナノボディを、Hek−CXCR4細胞の膜抽出物における放射性リガンド置換アッセイによって分析した。放射性標識リガンドを用いることの利点は増大した感度であり、低い競合剤濃度は、IC50値を測定する代わりにKi値(すなわち本物の親和性定数)の決定を保証する。これは、それらが完全な置換に届き得なくても、低親和性(low affine)ナノボディの力価を精密に決定することを可能にする。
この目標のために、CXCR4によってトランスフェクションしたHek293細胞の膜抽出物を、精製されたナノボディの段階希釈物および[125I]CXCL12の75pMと一緒にインキュベーションした。非特異的結合は、100nMのコールドなSDF−1の存在下で決定した。対照として、完全なブロックCXCR4ナノボディ238D4および281A6を包含した。アッセイは3回実施し、SDF−1阻害の平均パーセンテージを計算した。
図1.3において、ナノボディ281F12は27nMのKiの中程度の力価のみ、および部分的な有効性のみを有した一方で、対照CXCR4ナノボディ238D4は完全な有効性を示したというパネルDが示されている。これは、281F12を、IL−3Raナノボディとの二重特異性構築物へのフォーマット化における使用にとって好適な他の候補にしている。
表4は、低〜中程度の親和性のCXCR4ナノボディの、さらにはそれらのそれぞれのファミリーメンバーの特徴を列記している。
例1.5:二重特異性ポリペプチド
本例において、本発明者は、以前の実験で同定およびキャラクタリゼーションされた、その特徴が表5に要約されている異なる抗CXCR4および抗CD123ナノボディを組み合わせた。もたらされた二重特異性ポリペプチドを特異性について爾後に試験した。特に、表6に要約されている8つの構築物を作った。
例1.5.1.クローニング、産生、および物理的キャラクタリゼーション
IL3RαおよびCXCR4ナノボディを産生ベクターpAX138中にクローニングし、Myc−His6タグ蛋白質として発現して、二重特異性ポリペプチドを構築した。CXCR4ナノボディ14D09(CXCR4#1と呼称される)および281F12(CXCR4#2と呼称される)とIL−3Raナノボディ57A07(CD123#1と呼称される)および55A01(CD123#2と呼称される)との全ての8つの組み合わせを構築した(表6参照)。ナノボディを、反復した(GGGGS)7のフレキシブルな長いリンカーと繋げた。個体のナノボディを別々のPCR反応によって増幅し、適切な制限部位を含有するプライマーを用いてN末端断片およびC末端断片を作出した。断片を、E.coli産生のためのpAX138発現ベクター中に順に挿入した。全ての構築物の正しいヌクレオチド配列が、配列分析によって確認された(表7、二重特異性構築物参照)。爾後に、正しい構築物を、Flag3−His6タグ蛋白質としてのPichia pastoris中での産生のためにpAX205ベクター中に再クローニングした。二重特異性構築物をコードするプラスミドを、P.pastoris株X−33への形質転換に先立って制限酵素による消化によって直鎖状化した。P.pastoris形質転換体の小スケール試験発現を行って、良好な発現レベルを有するクローンを選択した。ここに、24ウェルディープウェルプレート中の各構築物の4クローンの4mlスケール発現を実施した。培地中のナノボディの発現をSDS−PAGEによって評価した。培地画分を集め、ニッケルセファロース(商標)6FFを用いて固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)のための出発材料として用いた。ナノボディを250mMイミダゾールによってカラムから溶出し、爾後に、dPBSに対してAtoll(ATO002)によってSephadex G-25 Superfine上で脱塩した。ナノボディの純度およびインテグリティは、SDS−PAGEおよびウエスタンブロットによって抗VHHおよび抗タグ検出を用いて検証した。
一価CXCR4およびIL−3Ra特異的ナノボディをE.coli中で産生し、例1.2に示した通り発現ベクターpAX129中でC末端連結FLAG3−His6タグ蛋白質として発現した。
例1.5.2.CXCR4−IL−3Ra二重特異性体のキャラクタリゼーション
二重特異性構築物へのフォーマット化が個体のナノボディの標的結合キャパシティーに影響するかどうかを評価するために、二重特異性ナノボディを、ELISAにおける組み換えIL−3Ra(R&D Systems)およびCXCR4ウイルス脂質粒子(Integral Molecular)への結合について分析した。図1.4は、CD123#1(57A07)およびCD123#2ナノボディのIL−3Ra結合能力が全ての二重特異性体において保持されているということを示している。しかしながら、CXCR4#1またはCXCR4#2いずれかとの構築物のCXCR4結合は、1つのオリエンテーションにおいてのみ(CXCR4ナノボディがN末端位置にあるときに)保持されている。CXCR4ナノボディがC末端に位置する二重特異性構築物は、CXCR4−VLPへの結合の50〜100倍の損失を示す。
例1.5.3.CXCR4およびIl−3Raを発現する白血病細胞株
CXCR4およびCD123の異なる発現レベルを有する白血病細胞株、さらにはJurkat細胞を用いて、二重特異性CXCR4−IL−3Raポリペプチドおよびそれらの一価カウンターパートの結合特徴を評価した。標的発現は、二次抗体のヤギ抗マウスPE(Jackson Immuno Research)が続く抗hCXCR4抗体12G5(R&D Systems MAB170)および抗hIL−3Ra抗体7G3(BD Pharmingen,554527)によるFACS分析によって確認した。
結果は図1.5に表現されている。
MOLM−13細胞およびTHP−1細胞は、CXCR4およびIL3Raの異なる相対的な発現レベルを有し、hIL3Ra発現は、THP−1細胞よりもMolm−13においてCXCR4と比較して高い。U937細胞はCXCR4の最高レベルを発現し、IL−3Raを事実上発現しない。
例1.5.4.CXCR4−CD123の結合分析
両方のオリエンテーションの二重特異性ポリペプチドの結合を、CXCR4のみを発現するU937細胞と、異なる比で両方の標的を発現するMOLM−13およびTHP−1細胞とに対して分析した。代表的なグラフを図1.6に示す。CXCR4−IL−3Raオリエンテーションでは、二重特異性ナノボディの親和性は、一価CXCR4ナノボディと比較してMolm−13細胞において改善している。ここで、EC50は、構築物中に存在するそれぞれの一価IL−3Raナノボディのものを反映している。EC50値のシフトとは別に、トータルな結合もまた、CXCR4に対する親和性が維持されている二重特異性体(CXCR4−IL−3Raオリエンテーション)については増大しているように見える。Molm−13細胞において、CXCR4結合が強く低減された構築物(IL−3Ra−CXCR4オリエンテーション)の結合曲線は、それぞれのIL−3Raナノボディとオーバーラップしている。これは、Molm−13細胞におけるCXCR4と比べてCD123のより高い発現レベルと辻褄が合っている。
THP−1およびMOLM−13細胞間のトータルな蛍光レベルの違いは、細胞上の2つの抗原の相対的な発現レベルもまたCXCR4−IL−3Ra二重特異性ポリペプチドの結合挙動に寄与するように見えるということをもまた指示している(図1.6)。
例1.5.5.細胞株JurkatE6−1およびMOLM−13の混合
CXCR4単独を発現する細胞よりもむしろCXCR4およびCD123両方を発現する細胞に選好的に結合する二重特異性ポリペプチドの能力を評価した。この目標のために、二重陽性(MOLM−13)およびCXCR4のみ(JurkatE6−1)細胞の混合集団によるFACS実験を行って、不均一な細胞集団を有する現実の状況を模倣した。両方の細胞集団を見分けるために、ナノボディと一緒のインキュベーションに先立って、MOLM−13細胞を0.5μMのCFSE(Molecular Probes, Life Technologies)によって、JurkatE6−1を0.5μMのPKH26(Sigma-Aldrich)によって、製造者の使用説明書に従って標識した。1:1比で同じウェル中において両方の細胞株を混合した後に、それらを、異なる二重特異性ポリペプチドの6倍の段階希釈物および対応する一価ビルディングブロックと一緒にインキュベーションした。ナノボディの用量依存的な結合を、抗マウスIgG−APC(Jackson Immununoresearch)が続くマウス抗FLAG(Sigma-Aldrich)を用いてC末端FLAGタグによって検出し、FACSCanto II(Becton, Dickinson and Company)によって測定した。対照として、ナノボディ結合をいずれの細胞株単独においてもまた評価した。
IL3Ra−CXCR4オリエンテーションの二重特異性ポリペプチドの低親和性の帰結として、EC50値はそれらの構築物については得られなかった。そのため、MOLM−13(CXCR4+/CD123+)対JurkatE6−1(CXCR4+/CD123−)細胞への結合間の直接的な比較を1つのナノボディ濃度(4.6nM)でした。図1.7は、MOLM−13細胞への選好的な結合がIL3Ra−CXCR4(I−X)オリエンテーションの二重特異性構築物について観察されたということを指示し、ここでCXCR4に対する親和性は落ちていた。逆のオリエンテーションの構築物(CXCR4一価体がN末端にあり且つその親和性が維持されている)はJurkatE6−1およびMOLM−13細胞両方におおよその同じレベルで結合し、それゆえにこの濃度においてはMOLM−13への結合の改善を示した。
これは、現行で用いられているCXCR4ナノボディの親和性(すなわち、だいたい10nMのEC50)が、二重特異性結合による選択性の上昇を得るためには尚高すぎであり得るということを指示していると思われる。この選好的な結合を達成するために、結果からは、CXCR4に対する親和性が(例えば、IL3Ra−CXCR4構築物の残余的な結合のレベルまで)さらにより低くあり得るということが示唆される。
例1.5.6.CXCR4によって媒介される走化性の阻害
二重特異性CXCR4−IL3Raポリペプチドが、両方の受容体を発現する細胞に対する増大した親和性および力価を示すかどうかを検証するために、CXCR4依存的な機能アッセイを実行した。この目標のために、JurkatE6−1(CXCR4+/IL3Ra−)およびMOLM−13細胞(CXCR4+/IL3Ra+)におけるSDF−1a依存的な走化性を、両方または1つの受容体のみを発現する細胞の直接的な比較のために実施した。機能遮断はCXCR4のみによって媒介されるので、抗IL3Raナノボディ(登録商標)の同時の結合によるアビディティは、走化性の阻害において増大した力価となって現れると予想される。
二重特異性ポリペプチドを、CXCR4を内在的に発現する細胞において、CXCL12によって誘導される走化性の阻害について分析した。化学誘引物質としては、750pMのSDF−1aの濃度を、Jurkat細胞株の100,000細胞/ウェルおよびMOLM−13細胞株の500,000細胞/ウェルに用いた。各プレート上には対応する一価CXCR4ナノボディを参照として包含し、各プレート中の二重特異性体の〜倍の増大を計算することを許した。追加の対照として、一価ナノボディの1:1混合物を包含した。異なる構築物の代表的なグラフを図1.8に示す。表9にはそれぞれのIC50値が示されている(n=3実験の平均)。
これらのデータは、CXCR4−IL−3Raオリエンテーションの二重特異性体について、CXCR4機能の阻害の力価の明白な上昇を、両方の抗原を発現する細胞において示しているが、CXCR4のみを発現する細胞においては示していない。この増大は、2つの一価ナノボディの混合物が用いられたときには観察されておらず、ゆえに標的の同時の連繋のためのナノボディの連結に依存している。Molm−13細胞に対するナノボディCXCR4#2の二重特異性構築物の力価向上は12〜15倍であった。明らかな違いは2つのIL−3Raナノボディ間で見られておらず、より低いビルディングブロックの8nMの親和性は、係留部として働くためには既に十分であるということを示唆する。力価の上昇はCXCR4#1ビルディングブロックの二重特異性構築物ではより顕著でなく、一価ナノボディと比較して少なめの増大のみがある。CXCR4#1の力価はCXCR4#2よりも高く(10nM対84nMのIC50)、これは、二重特異性へのフォーマット化後の改善を見るには高すぎるということを指示していると思われる。代替的に、このナノボディが、フォーマット化のポテンシャルを限定するCXCR4上の異なる(より有利でない)エピトープに結合するということもまた可能である。
異なる構築物の代表的なグラフを図1.8に示す。表8にはIC50値を示す(n=2〜3つの実験)。
これらのデータは、二重特異性体が力価の上昇を示し、CXCR4ナノボディがMOLM−13細胞のSDF−1によって誘導される走化性を阻害する力価を12〜15倍まで改善するということを示している。
例2:CD4−CXCR4二重特異性ポリペプチドによるT細胞の選好的な標的化
例2.1:フォーマット化のための一価ナノボディの特徴
CD4ナノボディのパネルが、ヒト末梢血リンパ球による免疫ライブラリーから以前に同定されていた。T細胞上におけるその役割とは別に、CD4はHIV1侵入のための第1の受容体としてもまた働く。そのため、CD4ナノボディのパネルを、ウイルスgp120蛋白質との相互作用をブロックするキャパシティーについて分析した。簡潔には、CD4ナノボディを、ELISAにおいて、組み換えCD4へのgp120蛋白質結合と競合する能力について分析した。簡潔には、プレートを20ug/mLのヒツジ抗gp120抗体によってコーティングした。HIV1のgp120蛋白質の1ug/mLを室温で1hr捕捉した。0.5μg/mLのビオチン化組み換えヒトCD4(Invitrogen)を、500nMの抗CD4ナノボディまたは対照抗体マウス抗CD4mAbのB−A1およびF5(Diaclone)ならびにウサギ抗CD4pAb(ImmunoDiagnostic Inc)と一緒に1hrプレインキュベーションし、その後に、混合物をコーティングプレートに移して、1hrインキュベーションした。結合したCD4の検出はエクストラアビジン−ペルオキシダーゼコンジュゲートによって行った。図2.1は、唯一のクローン、すなわちナノボディ3F11がgp120との相互作用を阻害することが見いだされたということを示している。3F11の細胞によって発現されたCD4への結合は、抗flagタグの検出を用いてMOLM−13細胞およびヒトT細胞におけるフローサイトメトリーによって明証され、0.76nMの見かけ上の親和性であった。ナノボディCD4の特徴は表2.1に見いだされる。
例2.2.二重特異性CXCR4−CD4ポリペプチドの構築
抗CD4ナノボディ3F11(CD4#8と呼称される)および抗CXCR4ナノボディ282F12(CXCR4#2と呼称される)の構築物を、産生ベクターpAX100中にクローニングした。このベクターはpUC119に由来し、LacZプロモーター、カナマイシン耐性遺伝子、マルチクローニング部位、OmpAリーダー配列、C末端c−mycタグ、および(His)6タグを含有する。両方の標的はHIV−1侵入のためのコレセプターとして作用するので、それらは細胞表面上でごく近くにあると予想される。この理由で、2つのナノボディビルディングブロックを連結するための異なる長さのフレキシブルなスペーサー(それぞれ、(Gly4SerGly4)(9GS)、(Gly4Ser)5(25GS)および(Gly4Ser)7(35GS))を有する二重特異性ポリペプチドを作出した。二重特異性構築物は、両方のオリエンテーションで作出し、8つの異なる二重特異性構築物を産した(表2.2)。全ての構築物の正しいヌクレオチド配列は配列分析によって確認された(全ての配列の概略については表10参照)。爾後に、正しいナノボディ構築物を、FLAG3−His6タグ蛋白質としての酵母Pichia pastorisによる産生のためにpAX205ベクター中に再クローニングした。これは例1.2に記載する通りである。
例2.3.二重特異性CXCR4−CD4ポリペプチドの結合分析
二重特異性構築物へのフォーマット化がCXCR4へのCXCR4#2ナノボディの結合に影響するかどうかを評価するために、二重特異性ポリペプチドのセット全体を、ウイルス脂質粒子(Integral Molecular)上のCXCR4への結合について分析した。簡潔には、ヌルVLPおよびhCXCR4−VLPの2単位をmaxisorpプレート上に一晩4℃でコーティングした。翌日に、フリーな結合部位を、室温で2h、PBS中の4%のmarvelスキムミルクを用いてブロッキングした。そこで、PBSによって3×プレートを洗浄した後に、精製されたポリペプチドの100nM、10nM、1nM、および0nMを、コーティングされたウェルに追加し、室温で1hインキュベーションした。PBSによる3×洗浄後に、結合したポリペプチドをマウス抗c−myc(Roche, cat#11667149001)およびウサギ抗マウス−HRP(DAKO, cat#P0260)抗体によって、両方とも1h室温で検出した。結合はO.D.値に基づいて決定し、対照(無関係なナノボディ、コーティングしていないウェル、R&Dからの両方の親の一価ビルディングブロックおよびモノクローナル抗CXCR4抗体(クローン:12G5,cat# MAB170))と比較した。図2.1は結合ELISAの結果を示している。CD4#8ナノボディを有する二重特異性構築物のオリエンテーション効果を観察し、CXCR4結合は、N末端位置に置かれたCXCR4ナノボディでのみ保持されていた。リンカー長の変化は、CXCR4#2ナノボディの標的結合のこの損失を克服し得なかったが、恐らくCD4#8−25GS−CXCR4#2構築物は別であり、C末端位置にCXCR4部分を有する2つの他の二重特異性体よりも損されていないように見えた。
CXCR4−CD4二重特異性ポリペプチドのパネルを、フローサイトメトリーにおいて、2つの標的の異なる相対的な発現レベルを有する細胞株への用量依存的な結合について分析した。モノクローナル抗CXCR4抗体12G5(R&D #MAB170)およびモノクローナル抗CD4抗体BA1(Diaclone #854030000)による染色前に、細胞をFcブロッキング溶液(Miltenyi Biotec cat#130-059-901)と一緒に30分間インキュベーションした。結合したポリペプチドを、マウス抗c−myc(AbD Serotec, cat#MCA2200)およびヤギ抗マウス−PE(Jackson Immunoreseach, cat#115-115-171)抗体によって、両方とも4℃で振盪しながら30min検出した。結合はMCF値に基づいて決定し、対照と比較した。
Jurkat細胞、THP−1細胞、およびMolm−13細胞上のCD4およびCXCR4の発現レベル、さらにはJurkatおよびMolm−13細胞に対する二重特異性ポリペプチドの結合曲線が図2.3に表現されている。JurkatE6.1細胞は、CD4を発現しないかまたはその低いレベルを発現する細胞の不均一な集団を示す。一価ナノボディCD4#8は、それらの細胞への結合の非常に低いレベルのみを示すが、EC50値はTHP−1およびMOLM−13細胞におけるものに類似であった(それぞれ1.1nM対1.0nM対0.7nM)。
Jurkat細胞において、CXCR4−CD4ナノボディは一価CXCR4#2と類似のEC50値を有し、高いCXCR4発現レベルと辻褄が合っている。ナノボディは、一価CXCR4ナノボディよりも僅かに高い蛍光レベルを有する。二重陽性THP1細胞においては、CXCR4−CD4二重特異性ナノボディの曲線の明白なシフトが両方の一価体と比較して観察され、二重特異性体はかなりより高いプラトーレベルに届く。しかしながら、二重特異性体と一価体との間のEC50値の違いは中程度のみである(0.67nM対1.0nM)。MOLM−13細胞においては、二重特異性体のEC50値はCD4#8のものに類似であり、ここでもまた増大したプラトーレベルが観察される。逆のオリエンテーションのCD4−CXCR4二重特異性体の結合曲線は一価CD4#8ナノボディとオーバーラップしている。
フローサイトメトリーにおけるトータルな蛍光のこの増大は、細胞表面上の両方の標的への相加的な結合(各標的単独への結合)、さらには同時の結合をあらわし得るが、細胞結合アッセイはそれらの結合モードを区別することを許さない。
例2.4:CXCR4−CD4二重特異性体によるCXCR4によって媒介される走化性の阻害
二重特異性CXCR4−IL−3Raポリペプチドが、両方の受容体を発現する細胞に対して増大した親和性および力価を示すかどうかを検証するために、CXCR4依存的な機能アッセイを行った。MOLM−13細胞はCXCR4およびCD123と併せてCD4を発現するので、CXCR4−CD123二重特異性ナノボディについて記載した同じ実験のセットアップを用いた(例1.5.5参照)。
二重特異性CD4−CXCR4ナノボディのパネルによる、CXCL12によって誘導される走化性の用量依存的な阻害を、Jurkat(CXCR4+/CD4low)およびMolm−13細胞(CXCR4++/CD4++)において決定した。参照として、抗CXCR4抗体12G5を各プレート中に包含した。代表的な例の結果を図2.4に示し、IC50値を表2.3に提出する。二重特異性CXCR4#2−CD4#8構築物は、一価CXCR4#2ナノボディと比較して二重陽性細胞に対する強い力価向上(約150倍)を示し、一方、CD4ナノボディはそれ自体ではいずれかの影響(affect)を有さなかった。注目すべきことに、逆のオリエンテーションの二重特異性構築物は、有利でない位置を原因とするCXCR4に対するそれらの低減された親和性にもかかわらず、CXCR4機能をブロックする能力があった(ただし、遮断は部分的であった)。CD4およびCXCR4の組み合わせを標的化するナノボディで観察されたかなりより大きい力価増大は、Molm−13細胞上のCD123と比較してCD4のより高い相対的な発現レベルに関係している可能性が最も高い。
例2.5:HIV1感染アッセイにおけるCXCR4特異性
恒常性ケモカイン受容体としてのその生理的な役割とは別に、CXCR4はTリンパ球指向性HIV株にとってのコレセプターとしてもまた用いられる。ホスト細胞の侵入のために、ウイルスgp120蛋白質はCD4およびコレセプター(これはCCR5またはCXCR4いずれかであり得る)と相互作用する。HIV1株は、CCR5の利用(R5)、CXCR4の利用(X4)いずれかに依存的であり得るか、または二重指向性であり得、侵入のためにいずれの受容体をも用いる能力がある。
CD4またはケモカインコレセプターいずれかの調節は、臨床において試験されつつある有効な戦略である。X4−HIV−1株はこの疾患において遅く出現するので、CXCR4の阻害によるAIDSの進行期の処置におけるCXCR4アンタゴニスト(例えばAMD3100)のあり得る役割が期待される。CXCR4#2ナノボディがCXCR4利用型HIV1株の侵入をもまたブロックできるのかどうかを決定するために、HIV−1感染アッセイを、CXCR4およびCCR5特異的HIVクローンによって実施した。一価および二重特異性CXC4−CD4ナノボディの阻害効果の特異性を、MT−4細胞または新しく単離されたPBMC(CD4+/CXCR4+/CCR5+)に感染するCXCR4利用型(X4)HIV−1クローンNL4.3、および新しく単離されたPBMC(CD4+/CXCR4+/CCR5+)に感染するCCR利用型(R5)HIV−1株BaLに対して試験した。
例2.5.1.HIV−1感染アッセイ
二重特異性CD4−CXCR4ポリペプチドならびに一価CXCR4#2およびCD4#8ナノボディのパネル全体の抗HIV−1力価を、MT−4およびU87細胞株における別個のHIV−1株の細胞変性効果を測定することによって、またはPBMCの培養上清中へのウイルスp24抗原産生を定量することによって決定した。
用いたウイルス株はX4−HIV−1クローンNL4.3、R5−HIV−1株BaL、またはR5/X4−HIV−1−HE株であった。感染は、MT−4細胞または異なる健康なドナーからのフィトヘマグルチニンによって刺激されたPBMCにおいて行った。CXCR4利用型(X4)HIV−1クローンNL4.3は国立衛生研究所NIAID AIDS Reagentプログラム(Bethesda,MD)から得、CCR5利用型(R5)HIV−1株BaLはMedical Research Council AIDS reagentプロジェクト(Herts,UK)から得た。二重指向性(R5/X4)HIV−1HE株は、University Hospital in Leuvenで患者から当初単離された。MT−4細胞を96ウェルプレートに、U87細胞を24ウェルプレートに播種した。ナノボディをHIV−1と一緒に異なる濃度で追加し、プレートを10%CO2中37℃に維持した。ウイルスによって誘導される細胞変性効果を、ウイルス感染細胞培養物の毎日の顕微鏡法評価によってモニタリングした。感染後4〜5日に、強い細胞変性効果が正の対照(すなわち、未処置のHIV感染細胞)において観察され、細胞生存を、テトラゾリウム化合物MTSのインサイチュ還元によって、CellTiter 96(登録商標)AQueous One Solution細胞増殖アッセイ(Promega,Madison,WI)を用いて評価した。吸光度を分光測色法的に490nmで96ウェルプレートリーダー(Molecular Devices, Sunnyvale, CA)によって測定し、4つの細胞対照レプリケート(ウイルスおよび薬物無しの細胞)および4つのウイルス対照ウェル(薬物無しのウイルス感染細胞)と比較した。IC50(すなわち、HIVによって誘導される細胞死を50%阻害する薬物濃度)を用量反応曲線から各ポリペプチドについて計算した。ポリペプチドのそれぞれのCC50または50%細胞傷害性濃度を、薬剤に暴露された未感染細胞の生存の低減(上で記載したMTS法によって測定した)から決定した。
健康なドナーからの末梢血単核細胞(PBMC)を密度遠心分離によって単離し(Lymphoprep; Nycomed Pharma,AS Diagnostics,Oslo,Norway)、3日間フィトヘマグルチニンによって刺激した。活性化された細胞をPBSによって洗浄し、ウイルス感染を以前に記載された通り実施した(Schols et al. J Exp Med 1997; 186:1383-1388)。感染の開始後8〜10日に、ウイルスp24Agを酵素結合免疫吸着アッセイ(Perkin Elmer,Brussels,Belgium)によって培養上清中に検出した。
HIV1中和結果は表2.4にIC50値として表現された。NL4.3株に感染したMT−4細胞において、CXCR4#2ナノボディは、CXCR4を介する抗X4−HIV1侵入を特異的に阻害したが、CCR5への結合は阻害しなかった。CD4#8ナノボディは、CXCR4一価体と類似のIC50値で両方のX4−HIV1感染を有効にブロックした。この例において、CD4ナノボディは専ら係留部として働くのではなく、機能遮断にもまた寄与する。二重特異性CXCR4#2−CD4#8ポリペプチドは、HIV−1−X4ウイルス複製を阻害することにおいて極めて強力であり、とりわけ、PHAによって刺激されたPBMCにおいて評価したときにはそうであった。最短のリンカーを有する最良の二重特異性CXCR4−CD4構築物の力価増大は、一価CXCR4#2ナノボディと比較して250〜320倍であった。CXCR4に対して低減した親和性を有する逆のオリエンテーションの二重特異性ナノボディは、この機能アッセイにおいてはより活性でなかった。それゆえに、二重特異性CXCR4−CD4ナノボディのCXCR4およびCD4両方への同時の結合は、CXCR4利用型HIV1の中和の強く向上した力価をもたらす。
例2.5.2.特異性
CXCR4ナノボディの力価は、侵入のためにCXCR4の利用に依存するHIV1株に特異的である。1つのHIV1コレセプターのみの遮断の1つのあり得る不都合は、元々標的化されていないHIV亜型の再出現を誘発し得るということである。CCR5依存的なHIV−BaLウイルスの場合には、二重特異性構築物中のCD4ナノボディのみがPBMCにおけるウイルス中和に寄与する。CXCR4はPBMC上に発現されているので、それらの細胞においては、二重特異性体中のCXCR4ナノボディが係留部として働いて、CD4ナノボディの阻害力価を向上させ得る。実に、最長のリンカーを有する二重特異性CXCR4−CD4はBaLに対して2.5nMのIC50値(一価CD4#8と相対的にだいたい200倍の向上)を有し、逆のオリエンテーションの構築物(CXCR4結合親和性が損する)よりも感染の強力な阻害剤である。CD4−CXCR4二重特異性については、より長いリンカーはより良好な阻害を与えるように見え、これが係留部としてのCXCR4への結合を好むということが示唆される。
例2.5.3.侵入阻害剤耐性HIV−1NL4.3
二重特異性ポリペプチド中の係留部としてのCXCR4ナノボディの寄与を実証するために、HIV感染の遮断を、CXCR4低分子阻害剤AMD3100、CXCR−4リガンド、または対照抗体12G2に対して、耐性になったHIV1変異体のパネルについて評価した。加えて、ウイルスのエスケープ変異体を、複数代かけたIC90濃度のポリペプチドの存在下におけるNL4.3の培養によって、一価ナノボディのそれぞれの遮断のために作出した。それゆえに同定された耐性ウイルスクローンを、一価ポリペプチドと比較して二重特異性ポリペプチドの力価を試験するために用いた。IC50値は表2.5に提出されている。
AMD3100耐性ウイルスに対する二重特異性CXCR4−CD4ナノボディのIC50値が図2.5に表現されている。一価CXCR4#2は力価の100倍の損失を示し、これはAMD3100と類似であったが、一方でCD4力価は影響されなかった。CXCR4−CD4二重特異性ナノボディのそれぞれはAMD3100耐性ウイルスの感染をブロックすることについて1nM未満の力価を保持しており、これは一価CD4ビルディングブロックよりも20倍良好であった。耐性ウイルスの完全なパネルに対して、CXC4#2−CD4#2ポリペプチドは強い中和力価を保持し、0.3〜1.1nMのIC50値を有した。それゆえに、CXCR4−CD4二重特異性ポリペプチドは、標的の1つにもはや結合しない変異体に対して比較的非感受性に見える。一緒にすると、これらの結果は、二重特異性ポリペプチドが、異なるHIV株の幅広い適用範囲(表2.6参照)およびウイルス感染をブロックすることにおいて一貫した高い力価を有するということと、二重特異性CXCR4−CD4ポリペプチドのアームの1つのみの側の機能が、HIV侵入におけるそれらの化合物の強力な阻害にとって既に十分であるということとを指示している。
例3:CD4−IL12Rβ2およびCD4−IL23R二重特異性ポリペプチドによるT細胞亜群の選好的な標的化
例3.1:フォーマット化に用いた一価ナノボディの特徴
特異的なT細胞亜群を選好的にブロックするキャパシティーを有する二重特異性ポリペプチドを作出するために、異なる亜群特異的インターロイキン受容体に対するナノボディをCD4糖蛋白質に対するナノボディを組み合わせた。機能アーム側では、IL−12β2をTH1細胞亜群のマーカーとして、IL−23RをTH17細胞のマーカーとして用いた。両方の受容体は同じインターロイキン12受容体ファミリーに属し、同じコレセプターIL−12Rβ1を用いて機能的なへテロ二量体を形成する。この理由で、IL−12Rβ1およびCD4の二重特異性構築物もまた作出した。なぜなら、これらは両方のT細胞亜群を標的化すると予想され、ゆえに正の対照として働き得るからである。CD4糖蛋白質に対する係留ナノボディを用いてアビディティを提供し、他の免疫細胞(例えば、CD8+T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、およびある種の骨髄細胞)上の受容体の遮断を防止する。
この例について、CD4糖蛋白質に対するナノボディ3F11を共通の係留部として用いた。このナノボディは、細胞によって発現されたヒトCD4に特異的であり、組み換えCD4蛋白質に対しては低い結合のみを示し、CXCR4−CD4二重特異性体の作出に用いた(例2参照)。IL−23R、IL−12Rβ1、およびIL−12Rβ2に特異的なナノボディは、リガンド競合ナノボディとして以前に同定されている。フォーマット化のための十分な低親和性を有するリガンド競合ナノボディを同定するために、複数のファミリーメンバーを有するファミリーからの一価ナノボディを、結合キネティクス、リガンドと競合する能力、および初代細胞上の細胞によって発現された受容体への結合に関してキャラクタリゼーションした。
例3.1.1.SPR
精製されたナノボディの細かい結合親和性を、ヒトIL12Rβ1、IL12Rβ2、およびIL−23R細胞外ドメインのFc融合体(R&D Systems,#839-B1、#1959-B2、#1400-IR)に対する表面プラズモン共鳴分析(Biacore T100)を用いて、マルチサイクルキネティクス分析によって決定した。センサーチップCM5を抗hIgG抗体(GE Healthcare,BR-1008-39)によって固定化し、その後、受容体を、5μg/mlの蛋白質且つ120秒の接触時間で捕捉した。用いたラン用緩衝液は、5ml/minの流速の25℃のHBS−EP+(GE Healthcare,BR-1006-69)であった。アミンカップリングによる固定化のためには、EDC/NHSを活性化に、エタノールアミンHClを脱活性化に用いた(Biacore,アミンカップリングキット)。ナノボディを1.37nM〜3μMの濃度範囲で評価した。ナノボディが2min会合して15min解離することを45ml/minの流速で許した。注入間には、3MのMgCl2の3minパルスおよび2min安定化時間によって表面を再生した。会合/解離データの評価は、Biacore T100ソフトウェアv2.0.3によって1:1相互作用モデル(ラングミュア結合モデル)をフィッティングすることによって実施した。off速度および親和性定数を表3.1に示す。
例3.1.2.ELISAにおけるIL−12およびIL−23結合に対する競合
一価ナノボディがIL−12へのIL12受容体−Fc蛋白質の結合と競合する能力を、384ウェルSpectraPlate HBマイクロタイタープレート(Perkin Elmer)中のコーティングされたヒトIL−12(10nM,Peprotech #200-12B)上で競合ELISAによって評価した。フリーな結合部位をPBS中の1%カゼインによってブロッキングした。ナノボディの段階希釈物を、2nMのIL12Rβ1−Fcまたは3nMのIL12Rβ2−Fcいずれかの固定濃度で1hrインキュベーションした。競合剤の濃度は用量タイトレーション実験に基づき、用いた最終濃度は<EC50値であった。IL12Rβ1−FcまたはIL12Rβ2−Fcの残存的な結合を、HRPコンジュゲーションヤギ抗hIgG抗体(1/3000,Jackson ImmunoResearch,Cat# 109-035-088)と基質esTMB(SDT reagents)の存在下における爾後の酵素反応とを用いて検出した。
類似のアッセイセットアップを、IL−23への結合についてIL−23RおよびIL12Rβ1ナノボディの競合を測定するために用いた。20nMのヒトIL−23(eBioscience 34-8239-82)のコーティングを5nMのIL−23R−Fcによる競合に用い、3nMのコーティングを2nMのIL12Rβ1−Fcによる競合に用いた。IC50値は表3.1に示されている。IL12受容体サブユニットのそれぞれについてのファミリーメンバー間のリガンド競合能力の違いは、測定されたKD値の違いと良く相関する。
例3.1.3.フローサイトメトリー
へテロ二量体複合体の文脈での、それらの細胞によって発現された受容体への一価ナノボディの用量依存的な結合を、別個の健康なドナーからの活性化ヒトT細胞においてフローサイトメトリーによって決定した。
ヒトT細胞を、ヒトT細胞濃縮カクテル(RosetteSep #15061)を用いて単離し、4日間はDynabeads(登録商標)ヒトT活性化因子CD3/CD28(Gibco-Life Technologies #11131D)によって、1日間は組み換えヒトIL−2(Life Technologies-Gibco #PHC0027)によってプレ活性化して、TH1分化を誘導した。ルーチン的に、T細胞マーカーの表面発現および活性化状態は、抗CD3PE(eBioscience #12-0037-73)、抗CD8−PE(BD Bioscience #555367)、抗CD45RO−PE(BD Bioscience #555493)、抗CD45RA−APC(BD Bioscience #550855)、抗CD25−PE(BD Bioscience #557138)、および抗CD69−PE(BD Bioscience #557050)を用いてFACSによってチェックした。IL12Rの表面発現は、ヤギ抗マウスPE(Jackson Immuno Research 115-115-164)が続くIL12Rβ1抗体(R&D MAB839)を用いてFACSによって確認した。IL23Rの発現はポリクローナルヤギ抗IL−23R(R&D AF1400)によってチェックした。CD4の表面発現を、APC標識抗CD4(BD Bioscience #345771)を用いてFACSによって確認した。図3.1において、このプロトコールによって活性化された1人のドナーのT細胞上のIL12Rβ1、IL23R、およびCD4の発現レベルが、対照抗体と一緒に示されている。IL12Rβ2については、市販のツールのいずれも実質的な結合を示さなかった。
IL23Rの発現はT細胞プール中において非常に低かったので、一価IL23Rナノボディの結合は、Th17表現型に向かって分化させた細胞(サイトカインカクテルおよびIL−23、組み換えIL−6(eBioscience #34-8069-82)、組み換えTGF−b1(R&D #240-B)、抗ヒトIL−4抗体(BD#554481)、組み換えIL−1b(BD#554602)、および組み換えヒトIL−23(R&D Systems #219-IL-005)の存在下で、プレートにコーティングされたOKT−3(eBioscience #16-0037-85)、PeliCluster CD28(Sanquin #M1650)の共刺激と一緒のPBMCのインキュベーションによる)において評価した。この手順に続いて、低いが検出可能なIL23R発現レベルが得られた。Th17分化プロトコールの最適化はそれらの発現レベルをさらに増大させ得る。
一価ナノボディの用量依存的な結合を、それぞれのTh1またはTh17が濃縮されたT細胞集団においてフローサイトメトリーによって評価した。抗体またはナノボディの段階希釈物が、FACS緩衝液(10%FBSおよび0.05%アジ化物を補ったPBS)中において4℃で30分間会合することを許した。細胞を遠心分離によって洗浄し、抗FLAG抗体(Sigma F1804)によって30分間4℃でプローブ処理し、結合したナノボディを検出した。検出はヤギ抗マウスIgG−PE(Jackson ImmunoResearch #115-116-071)によって30分間4℃で行った。細胞を洗浄し、TOPR03と一緒にインキュベーションして死細胞を染色した(これらは、そこでゲーティング手順中に除去される)。そこで、細胞をBD FACSArrayによって分析した。
具体的なナノボディ結合曲線を図3.2および3.3に示す。一価ナノボディは、へテロ二量体受容体複合体の存在下で、細胞によって発現されたIL12Rβ1(それぞれIL12Rβ2)に特異的に結合する能力がある(図3.2)。IL12Rβ1ファミリーメンバーの結合親和性の違いは、明白に、異なる見かけ上の細胞結合親和性となって現れ、一方、それらの細胞における2つのIL12Rβ2ファミリーメンバーのEC50値は非常に類似である。各場合に、より速いoff速度を有するナノボディは、より低いプラトーレベルに典型的には届く。その速いoff速度を原因として、結合曲線は結合の飽和に関してIL12Rβ1#31については不完全であった。
最高の親和性でのIL−23RおよびIL12Rβ1ナノボディの特異的結合は、TH17が濃縮された集団において観察されたが、蛍光シグナルは非常に低かった(図3.3)。これは、T細胞プール中のIL23Rを発現するTH17細胞の%が、低親和性一価ナノボディによる用量反応曲線を得るためには尚比較的低いということを指示していると思われる。
二重特異性ナノボディへのフォーマット化のために選択されたIL−23R、IL12Rβ1、およびIL12Rβ2ナノボディの特徴を表3.1において提出している。本発明者は、同じファミリーに属する(すなわち、それらのCDR3領域において配列保存を有する)別個のoff速度を有するナノボディを選択することを目指した。その結果、標的上のエピトープは保存され、親和性の効果が追究され得る。理想的には、off速度>10−4s−1を有するナノボディが、係留ナノボディによって提供されるアビディティ効果を最大化するために選ばれた。2つの選択されたIL12Rβ2ナノボディの配列は、CDR1およびCDR2領域中の3アミノ酸が異なり、off速度の違いを原因として、KDおよびリガンド競合能力の3.5倍の違いを示す。2つの選択されたIL12Rβ1ナノボディは、CDR1およびCDR3領域中の6アミノ酸が異なり、KDおよびリガンド競合の6〜7倍の違いを有する。IL23Rナノボディについては、off速度の実質的な違いを有する2つのファミリーメンバーを同定することが実現可能ではないということが判明した。そのため、この受容体については、別個のファミリーからの異なる速いoff速度を有する(ゆえに、可能性として異なるエピトープを有する)2つのリガンド競合ナノボディが選択された。細胞結合は、速いoff速度(>1.E−02)を有するナノボディについて常に精密に測定され得るわけではないが、リガンド競合アッセイは、全ての選択された一価ナノボディについて、10〜16nMに渡るIC50を有する機能ブロックを明証した。
例3.2:二重特異性ナノボディの作出
二重特異性CD4−IL−12Rβ2、CD4−IL−12Rβ1、およびCD−IL−23Rポリペプチドのフォーマット化を、長いフレキシブルな(GGGGS)7リンカーによって連結されたナノボディの遺伝子融合によって行った。ビルディングブロックは両方のオリエンテーションとした。各組み合わせについて、2つの機能ブロック受容体特異的ナノボディを1つの抗CD4ナノボディCD4#83F11と組み合わせた(図3.4)。全ての構築物の正しいヌクレオチド配列は、配列分析によって確認した(全ての配列の概略については表12参照)。ナノボディを、酵母Pichia pastorisのX−33中での発現のためにflag3−His6タグ蛋白質として作出し、サイズ排除クロマトグラフィーが続く標準的なアフィニティークロマトグラフィーを用いて培養培地から精製した。全ての蛋白質は、初代細胞でのアッセイへの使用のためにエンドトキシン不含を確認した。
例3.3:二重特異性ナノボディの結合分析
例3.3.1.フォーマット化の効果
フォーマット化後のナノボディのオリエンテーションが、それぞれのインターロイキン受容体に対する結合および機能性に影響するかどうかを評価するために、精製された一価および二重特異性ナノボディを、リガンド結合についてのhIL−12Rβ1−Fc、hIL−12Rβ2−Fc、またはIL−23R−Fc融合体いずれかとの競合について分析した(上を参照)。一価ナノボディおよび二重特異性体両方の用量依存的な阻害を実行して、ヒトIL−12によってコーティングしたプレート上での競合についてIC50値を決定した。類似に、ヒトIL−23によってコーティングしたプレート上での競合ELISAを実施して、IL−23RおよびIL−12Rβ1ナノボディの二重特異性体の機能性を評価した。IC50値は表3.2および3.3に示されている。
CD4の場合には、オリエンテーション効果をフローサイトメトリーによって評価し、CD4を発現するがIL12RおよびIL23Rを欠くMOLM−13細胞への一価ナノボディおよび二重特異性ポリペプチドの結合を比較した。CD4発現は、抗ヒトCD4−APC(BD Bioscience, #53384)を用いてFACSによって確認した。図3.5は、二重特異性ポリペプチドへのフォーマット化が、細胞によって発現されたCD4へのCD4ビルディングブロックの結合に実質的に影響しなかったということを示している。二重特異性ポリペプチドは一価CD4#8ナノボディに匹敵する結合を示したが、IL23R#19−CD4#8(B1#42)は例外であり、結合親和性の小さい落ち込みを示した。一価IL12Rβ2、IL12Rβ1、およびIL23RナノボディのいずれもMOLM−13細胞に結合せず、IL12およびIL23受容体発現の不在を確認した。
例3.3.2.特異性
二重特異性ポリペプチドの用量依存的な結合を、IL12Rの発現レベルを増大させるために活性化されたヒトT細胞において評価した。活性化T細胞は、IL12R抗原の相対的な中程度の発現レベルを、しかし非常に高いCD4発現を示した。これは、抗CD4ナノボディの高い見かけ上の親和性および高い蛍光シグナルを反映している。2つの標的受容体への同時の結合は明らかではない。なぜなら、全ての二重特異性ナノボディの結合曲線が一価CD4ナノボディのものとオーバーラップし、類似のEC50値を与えるからである(図3.6)。
活性化T細胞のプールはCD4+T細胞およびCD8+T細胞両方を含む。抗CD4ナノボディの特異性を確認するため、且つCD4陰性細胞への結合を排除するために、CD8+細胞の94%の純度をもたらすCD8+T細胞単離キット(Miltenyi Biotech, 130-096-495)を用いてヒトPBMCから単離された細胞傷害性CD8+T細胞への結合を評価した。結合特異性実験は、250nMのナノボディを用いて実行した。結合は抗CD4ナノボディでは観察されず、一方、一価IL12Rb1#30は単離されたCD8+T細胞に結合した(図3.7)。加えて、二重特異性ポリペプチドIL12Rβ1#30−CD4#8は、CD4係留部の追加の効果が無い一価ナノボディIL12Rβ1#30と類似のレベルまでそれらの細胞に結合した。類似のデータがIL12Rβ2およびIL23Rナノボディについても得られた。これらの結果は、亜群特異的な受容体を有するCD4の二重特異性体が、細胞傷害性CD8+T細胞には結合しないが、CD4+T細胞とは特異的に相互作用するということを指示している。
CD4−IL12R二重特異性ポリペプチドが、T細胞のプール中のCD4+/IL12R+TH1細胞亜群に選好的に結合するかどうかを解明するために、多色FACS実験においてCD8(抗huCD8−PE−Cy7コンジュゲーションモノクローナル抗体(BD557746)によって検出される)またはCD4(抗huCD4−alexaFluor488コンジュゲーションポリクローナル抗体(R&D FAB8165G)によって検出される)いずれかについてゲーティングされた活性化T細胞のプールへのナノボディ結合を分析した。CD8+/CD4−ゲーティングされた細胞およびCD4+ゲーティングされた細胞へのナノボディ結合を、抗flag−APC(Prozyme PJ255)検出を用いて決定した。この実験においては、図3.6に示されている同じドナー(D838)からのTH1活性化T細胞を用いた。CD4#8ナノボディは、高い蛍光レベルによって指示される通り、CD4+ゲーティングされた集団への強い結合を示し(図3.8パネルE、明灰色のピーク)、一方、低いシグナルのみがCD8+集団では観察された(暗灰色のピーク)。CD4ナノボディは、ゲーティングに用いられた抗CD4ポリクローナルAbと小さい度合まで競合するということがわかった。これは、CD4+およびCD4−細胞の不完全な分離からもたらされたものであり得る。一価IL12Rβ1#30およびIL12Rβ2#1ナノボディについては、両方のCD4+およびCD8+細胞への低い蛍光シグナルが観察された。これは、ナノボディが両方のT細胞亜群に弱く結合したということを指示している。二重特異性ポリペプチドIL12Rβ1#30−CD4#8およびIL12Rβ2#1−CD4#8は、CD8+亜群よりもCD4+集団への選好的な結合を示した。これは、それらのナノボディがCD4ナノボディの特異性を授けたということを指示している。
例3.4:二重特異性ポリペプチドの機能キャラクタリゼーション
例3.4.1:ヒトT細胞におけるIL−12機能の細胞特異的な遮断
二重特異性ポリペプチドが同じ細胞上の両方の標的を同時に連繋させる能力を、IL−12依存的な機能アッセイ(活性化ヒトT細胞における、IL−12によって媒介されるIFN−γ放出の阻害)において分析した。機能遮断はIL12Rによってのみ媒介されるので、CD4ナノボディの同時の結合によるアビディティは、サイトカイン放出の阻害において二重特異性の増大した力価となって現れると予想される。
バフィーコートからの単離されたヒトT細胞を、4日間はDynabeads(登録商標)ヒトT活性化因子CD3/CD28(Gibco-Life Technologies #11131D)によって、1日間はIL−2によって活性化した。Th1亜型に分化させるために、T細胞を、溶液中で、0.5μg/mlのプレートにコーティングされたCD3(eBioscience #16-0037-85)および抗CD28(1μg/ml,PeliCluster, Sanquin #M1650)によって提供される共刺激とともに、IL-12の存在下で培養した。用いられたリガンドの濃度0.2pMは用量タイトレーション実験に基づき、濃度<EC50を用いた。IL-12依存的なシグナル伝達の尺度として、典型的なTh1サイトカインIFN−γの放出を、ELISAによって、それぞれのナノボディの存在または不在下における72h後に測定した。
IL−12によって媒介されるIFNγ放出の用量依存的な遮断を、両方のオリエンテーションの二重特異性IL−12Rβ2−CD4およびIL−12Rβ1−CD4ポリペプチド、ならびに対応する一価ナノボディについて評価した。IL−23R−CD4二重特異性ポリペプチドは負の対照として働いた。二重特異性IL12Rβ1−CD4、IL12Rβ2−CD4、およびIL23R−CD4ポリペプチドの代表的なグラフを図3.9に示し、IC50値を表3.2に示す。全ての4つのIL12Rβ2−CD4二重特異性ポリペプチドは、それらのそれぞれの一価IL12Rβ2ナノボディと比較して74〜1100のIC50値のシフトを示し(表3.3)、一方で、二重特異性CD4−IL23Rポリペプチドはブロックしなかった。約500倍の力価の違いが、IL12Rβ1−CD4二重特異性体についてもまた観察された。両方のオリエンテーションの二重特異性構築物が力価向上を示すが、CD4からN末端位置のIL12Rβ2ナノボディではより強い向上が得られた。一緒にすると、これらのデータは、IL12Rβ1−CD4およびIL12Rβ2−CD4二重特異性体は両方とも、両方の抗原を発現するTH1細胞において力価の400〜1000の上昇を示すということと、CD4結合それ自体は干渉しなかったということとを示している。
TH1細胞に対する二重特異性ポリペプチドのこの選択的な機能性がPBMC中で保存されるかどうか(ここでは他の免疫細胞もまた存在した)を検証するために、同じアッセイを、活性化した健康なヒトPBMCを用いて実施した。PBMCプール中のT細胞を、0.1pMのIL−12を用いてTH1亜型に向けて分化させた。それぞれのナノボディの存在または不在下におけるIFN−γ放出を、6日間のインキュベーション時間後にELISAによって決定した。PBMC中における二重特異性ポリペプチドのIL12遮断の代表的な例は図3.10に示されている。PBMCに基づくアッセイにおいてもまた、IL12Rb1−CD4およびIL12Rb2−CD4二重特異性体のそれぞれについての力価の明白な上昇が観察され、それぞれの一価ナノボディと相対的に10〜50倍のIC50値のシフトがあった。2つの別個のドナーからのPBMCを試験し、類似の結果であった。一価CD4ナノボディおよびCD4−IL23R二重特異性ポリペプチドは効果を有さず、PBMCの文脈でもまた、選択的な機能遮断がT細胞亜群特異的なやり方で二重特異性ポリペプチドによって得られるということを指示している。
例3.4.2:IL−23機能の細胞特異的な遮断
機能的なIL23受容体を標的化する二重特異性ポリペプチドが、CD4およびIL23Rを共発現する細胞に対して増大した親和性および力価を示すかどうかを検証するために、ナノボディがTh17型サイトカインIL17のIL23依存的な放出を阻害する能力を測定した。このアッセイセットアップにおいて、ヒトPBMCは可溶性のIL23の存在下で培養して、Th17表現型に向けてT細胞の分化を許した。細胞を、OKT−3(eBioscience #16-0037-85)コーティングプレートに、溶液中の組み換えヒトIL−23(eBioscience #14-8239)およびPeliCluster CD28(Sanquin #M1650)の存在下で播種した。それぞれナノボディの存在または不在下でのサイトカイン(IL17)放出を、9日のインキュベーション時間後にELISAによって決定した。
二重特異性IL23R−CD4およびIL12Rβ1−CD4ポリペプチドのパネルの用量依存的な阻害を、それぞれの一価ナノボディと比較して評価し、この場合にはIL12Rβ1−CD4特異的ポリペプチドが負の対照として働いた。図3.11は、二重特異性IL12Rβ1−CD4ポリペプチドが、用量依存的なやり方でIL23によって媒介されるIL17放出を強く阻害するということを示しており、一価IL12Rβ1ナノボディと相対的に500〜1700倍向上した力価がある(表3.3)。このアッセイにおいては、CD4からC末端位置のIL12Rβ1ビルディングブロックの選好性がある。2つのIL12Rβ1ファミリーメンバー間には力価の明白な違いがあり、これは異なる結合キネティクスおよび親和性に対応している。この違いは二重特異性構築物の力価でも保存されている。IL12Rβ2−CD4二重特異性ポリペプチドについては阻害は観察されす、抗CD4ナノボディもそうであり、遮断が亜群特異的であったということを指示している。
IL23RおよびCD4の二重特異性構築物については、一価ナノボディと二重特異性ポリペプチドとの間で力価の違いもまた観察されるが(図3.11パネルC)、IC50値は全てのナノボディについては決定し得ない。一価ナノボディの親和性の違いは、IL23機能アッセイにおいて一価ナノボディの力価に反映されるが、この違いは二重特異性構築物についてはそれほど明白でない。IL23Rナノボディはファミリーメンバーではなく、ナノボディIL23R#19のエピトープは、細胞膜上のCD4への同時の結合についてIL23R#20よりもより最適でなくあり得る。PBMCプールにおいて得られたTh17T細胞の%はむしろ低く、Th17分化プロトコールのさらなる最適化は、観察された違いをさらに実証し得る。加えて、典型的なTH17炎症性疾患(例えば乾癬)に罹患する患者に由来するPBMCは、より良好なIL23応答を提供し得る。それらのPBMCはT細胞亜群の生理的な混合物をあらわし、関係するTh17疾患の設定において予想されるIL23RおよびIL12Rの発現レベルを有する。
一緒にすると、これらの結果は、TH1亜群特異的なCD4−IL12Rβ2およびTH17亜群特異的なCD4−IL23Rポリペプチドが、不均一なT細胞、さらにはPBMCによるアッセイにおいて、T細胞亜群特異的なやり方で選択的な機能遮断を示すということを指示している。なおその上に、CD4+T細胞亜群への二重特異性ポリペプチドの選択的な結合が示され、一方、一価IL12Rβ2ナノボディはCD4およびCD8T細胞への不良な結合のみを示した。
親和性に関しては、機能アーム側の低親和性ナノボディでさえも、高親和性係留CD4ナノボディによるフォーマット化によって2〜3logの力価向上を与えた。
例4:EGFR−CEA二重特異性ポリペプチド
例4.1:フォーマット化に用いられた一価ナノボディの特徴
以前の例は、二重特異性ポリペプチドの細胞特異的なアビディティが、機能アッセイにおける力価増大によって測定され得るということを指示していた。ここで、二重特異性ポリペプチドは、それらが両方の標的をシスに同時に連繋させ得るときに、細胞上の受容体機能を特異的にブロックするであろう。治療ウィンドウを明証するために、機能細胞アッセイを、2つの標的を共発現する細胞(「二重陽性細胞」)、および正常な細胞をあらわす機能標的(「単一陽性細胞」)のみを発現する細胞に対して行った。
本発明者の以前の例では、細胞特異的な遮断のためには、単一特異性ナノボディが正常細胞に対して十分に強力ではないことを保証するために、低い親和性および力価を有する一価機能ナノボディが必要とされるということもまた指示された。選択性を得るためには、非常に低い親和性が必要とされ(そこでは、二重特異性体は単に係留部に似ている)、選択性と十分な機能的な力価との間にデリケートなトレードオフがあるということが指示される。本例において、本発明者は、機能アーム側のナノボディについて親和性の効果をさらに追究し、選択的な遮断にとっての閾親和性があるかどうかを決定した。チロシンキナーゼ受容体EGFRを機能アーム側のモデル抗原として用いる。これについては組み換え蛋白質が利用可能であり、SPRによる親和性およびキネティクスパラメータの細かい決定を許す。
第2の標的の癌胎児性抗原(CEA。CEACAM5としてもまた公知)は、多くの腫瘍型において発現される周知の腫瘍特異的抗原である。CEAはグリコシルホスファチジルイノシトール(glycosylphosphatidylinisotol)(GPI)によって係留される細胞表面糖蛋白質であり、細胞接着に役割を果たす。消化管癌の確立された腫瘍関連マーカーであり、乳および肺癌においてもまた見いだされる。EGFRおよびCEAの共発現は原発性腫瘍および腹膜転移の胃および大腸癌について報告されており、たいていの場合に、EGFRよりもCEAの高い発現を有する(Ito et al. 2013, Tiernan et al. 2013)。これは、CEAを、腫瘍選択的なやり方での機能遮断のためのEGFRとの組み合わせにとって、係留部として働くべき有用な標的にしている。
EGFRに対するリガンドブロックナノボディは以前に自前で作出しており、Roovers et al. (2011)によって良く記載されている。ナノボディ7D12はEGFRの細胞外ドメインのドメインIII上のリガンド結合部位に結合し、これはセツキシマブのエピトープとオーバーラップする。[125I]放射性標識7D12の報告された親和性は、それぞれHER14およびA431細胞について10.4および25.7nMであった。そのファミリーメンバー7C12は5アミノ酸残基が異なる。
EGFR上のエピトープが保存されているということを保証しながら親和性の効果を評価するために、低減された親和性を有するEGFR7D12および7C12バリアントのパネルを、フォーマット化への使用のために作出した。EGFRエクトドメインとのナノボディ7D12の共結晶構造に基づいて(Schmitz et al., 2013)、7D12の受容体境界面のアミノ酸を、off速度を低減すると予想された残基によって段階的なやり方で置換した(表4.1)。
係留アーム側では、Cortez-Ramiras et al. (2004)によるKD0.3nMの報告された高親和性を有する、NbCEA5と呼称されるCEACAM5特異的ナノボディを用いた。このナノボディのバリアントは、ヒト骨格中へのCDR領域の導入を原因とするその親和性の30倍の低減とともに記載されている(Vaneycken et al., 2011)。両方のナノボディ、さらには追加のCEAバリアントを、いくつものアミノ酸置換によって作出し、親和性を低減しながら、十分に高いナノボディ発現を保全した(表4.2)。
減少した親和性を有する一価EGFR−7D12バリアントおよびNbCEA5バリアントのパネルを、結合キネティクス、および細胞によって発現された受容体への結合に関してキャラクタリゼーションした。
例4.1.1.SPR
精製されたEGFRバリアントの細かい結合親和性を決定するために、直接的に固定化されたhEGFR細胞外ドメイン(Sino Biological, #10001-H08H)に対する表面プラズモン共鳴分析(Biacore T100)を用いて、マルチサイクルキネティクス分析を実施した。hEGFRのだいたい1000RUをCM5センサーチップ上に固定化した。用いたラン用緩衝液は、5μl/minの流速の25℃のHBS−EP+(GE Healthcare,BR-1006-69)であった。アミンカップリングによる固定化のためには、EDC/NHSを活性化に、エタノールアミンHClを脱活性化に用いた(Biacore,アミンカップリングキット)。ナノボディを1.37nM〜3μMの濃度範囲で評価した。ナノボディが2min会合することおよび15min解離することを45μl/minの流速で許した。注入間には、表面を50mMのNaOHの5secパルスおよび1minの安定化時間によって再生した。会合/解離データの評価は、Biacore T100ソフトウェアv2.0.3によって1:1相互作用モデル(ラングミュア結合モデル)をフィッティングすることによって実施した。1:1相互作用モデルの受け入れ基準を満たさなかった相互作用は、不均一なリガンドフィットモデルを用いてフィッティングした。親和性定数KDは、もたらされた会合および解離速度定数kaおよびkdから計算し、表4.1に示している。定義されたアミノ酸置換の導入は、EGFRナノボディのoff速度を明白に低減させ、一方、on速度は類似であった。
精製されたCEAナノボディの結合親和性を、CM5センサーチップ上に1000RUまで直接的に固定化されたhCEACAM−5(R&D Systems, #4128-CM)において、類似の実験条件を用いて得た。注入間には、表面を10mMグリシン−HCl(pH1.5)の5secパルスおよび1minの安定化時間によって再生した。会合/解離データの評価は、Biacore T100ソフトウェアv2.0.3によって1:1相互作用モデル(ラングミュア結合モデル)をフィッティングすることによって実施した。親和性定数KDを、もたらされた会合および解離速度定数kaおよびkdから計算し、表4.2に示している。NbCEA5ナノボディ(CEA#1と呼称される)およびヒト化バリアント(CEA#2)の観察された親和性は、報告された値と辻褄が合っていた。
例4.1.2.ELISAにおける組み換えEGFRおよびCEACAM5蛋白質への結合
全ての精製されたナノボディは、結合ELISAにおいて用量依存的なやり方で、組み換えEGFRエクトドメインおよび組み換えCEACAM5蛋白質に結合することが示された。手短かには、ヒトEGFR−ECDの0.25μg/ml(Sino Biological,Cat#10001-H08H)または0.125μg/mlの組み換えヒトCEACAM5(R&D Systems,Cat#4128-CM)を、384ウェルSpectraPlate-HBマイクロタイタープレート上で直接的にコーティングした(Perkin Elmer)。フリーな結合部位をPBS中の1%カゼインによってブロッキングした。精製されたナノボディの段階希釈物が抗原に1時間結合することを許した。ナノボディ結合を、HRPコンジュゲーションマウス抗FLAGM2抗体(Sigma,Cat#A8592)と基質esTMBの存在下での爾後の酵素反応とを用いて検出した(SDT reagents,Cat#esTMB)。結合特異性を、無関係なナノボディの対照と比較してOD値に基づいて決定した。EC50値を表4.1および4.2に示す。
例4.1.3.FACS結合
結腸癌腫細胞株LoVoおよびHT−29は、異なる相対的な発現レベルでEGFRおよびCEAを共発現する(図4.1)。LoVo細胞はHT−29と比較してより高いCEAレベルを有したので、LoVo細胞を、細胞によって発現された受容体に対する一価EGFRおよびCEAバリアントのパネルの結合分析に用いた。細胞によって発現されたEGFRおよびCEAへの結合は、EGFR+/CEA+LoVo細胞およびHER14細胞(ヒトEGFRを安定に発現するマウスNIH−3T3細胞)に対してフローサイトメトリーによって確認した。結合したナノボディは、記載される通りflagタグ特異的抗体によって検出した。結果は図4.1に示す。EGFRバリアントについては、飽和には届かず、ゆえに精密なEC50は決定され得ないが、off速度の違いはシフトした曲線によってはっきりしている。CEAナノボディの特異性は、HER14細胞への結合の欠如によって確認された(データは示さない)。
一価のEGFR−7D12バリアントおよびCEAバリアントの結合特徴は、それぞれ表4.1および4.2に提出されている。EGFR−CEA二重特異性ナノボディの作出のために、4つのEGFRバリアントを選択し、off速度の違いが漸進的な減少したKD値をもたらした(120〜860nMに渡る)。最高および最低親和性のEGFRバリアント間のoff速度の差は8倍であった。ELISAによって測定したときには、違いは約80倍まで拡大した。これは、洗浄中の速いoff速度を有するナノボディの解離を原因とする。最高親和性バリアントEGFR#1と比較して、バリアントEGFR#11は2つのアミノ酸置換を有し、一方、EGFR#33およびEGFR#32は3つのアミノ酸の違いを有する。係留アームについては、元々のCEAナノボディ(CEA#1)とは別に、4つのアミノ酸置換を有するCEAバリアント#5もまたフォーマット化への使用のために選択された。なぜなら、このナノボディは元々のナノボディと比較してoff速度の最大の違いを有したからである。
例4.2:二重特異性ポリペプチドの作出
二重特異性EGFR−CEAポリペプチドのフォーマット化は、フレキシブルな35GSリンカーによって連結されたナノボディの遺伝子融合によって達成し、両方のビルディングブロックを両方のオリエンテーションとした。別個のoff速度を有する4つの異なるEGFRバリアントを、それぞれ0.5および3nMのKD値を有する2つの別個のCEAナノボディと組み合わせた(図4.2)。加えて、各ナノボディを無関係な対照ナノボディ(リゾチームに対するcAblys3)と一緒に構築し、単一特異性の参照分子中の価数を保存した。全ての構築物の正しいヌクレオチド配列は配列分析によって確認された(全ての配列の概略については表11参照)。全てのポリペプチドは、酵母Pichia pastoris中でflag3−His6タグ蛋白質として作出された。精製は標準的なアフィニティークロマトグラフィーを用いて行った。
例4.3:二重特異性EGFR−CEAナノボディの結合分析
例4.3.1.フォーマット化の効果
フォーマット化が、ビルディングブロックのそれぞれがそれらのそれぞれの標的に結合する能力に影響するかどうかを検証するために、精製された二重特異性ナノボディの結合を、上で記載した組み換えEGFRエクトドメインまたはCEACAM5に対する結合ELISAによって評価した。EGFR−CEAを含む全ての単一特異性ナノボディおよび二重特異性ポリペプチドのEC50値が、表4.3に示されている。
全てのEGFR−CEA二重特異性体について、CEAナノボディはそれぞれの一価ナノボディと類似の結合を保持していた。対照的に、EGFRナノボディは二重特異性構築物中の位置に感受性であった。N末端位置においてのみ、EGFRとの相互作用は保存される(図4.3)。それらの構築物について、測定された見かけ上の親和性は、一価ナノボディについて観察された親和性の違いに従う。EGFRがCEAナノボディからC末端に位置したときには、約30倍低い結合親和性が測定された。オリエンテーションに対する類似の感度は、異なるエピトープに対する別個のEGFRナノボディによってフォーマット化された野生型7D12について以前に報告されている(Roovers et al. 2011)。
例4.3.2.結合特異性
単一特異性および二重特異性EGFR−CEAナノボディ構築物の結合特異性を、それぞれEGFR+/CEA−HER14およびHeLa細胞ならびに二重陽性LoVoおよびHT−29細胞においてフローサイトメトリーによって分析した。EC50値は表4.3に提出されている。LoVo細胞についての結果は図4.4に示されている。
二重特異性ポリペプチドは、用量依存的なやり方で細胞に効率的に結合した。ELISAデータと辻褄が合って、C末端位置にEGFR#1ナノボディを有する二重特異性ポリペプチドは、両方HER14およびLoVo細胞に対する実質的な結合親和性を失った。単一特異性EGFRナノボディを比較するときには、別個のEGFRバリアント間のoff速度の違いは、細胞によって発現されたEGFRにおいてはより目立たず、とりわけEGFR発現レベルがあまり高くないとき、例えばLoVoおよびHeLa細胞においてはそうである(図4.5)。それらの細胞に対しては、最高の親和性を有する3つのEGFRバリアントの構築物は全て、2.5〜5.5nMの非常に類似のEC50値を有した(表4.3)。
LoVo細胞に対して、EGFR−CEAオリエンテーションの二重特異性ポリペプチドは、それぞれのEGFR対照ナノボディと比較して増大した蛍光レベルとEC50値の僅かなシフトとを示した(図4.4パネルA、B、C)が、EGFRに対する最低の親和性を有するEGFR#32の二重特異性体は例外である。ここで、二重特異性構築物はそれぞれの係留部CEA#1またはCEA#5対照ナノボディと事実上同一の結合を示し、これはEGFRアームの寄与が無いということを指示していた(図4.4パネルD)。これは、CXCR4−CD4およびCXCR4−IL3Ra二重特異性ポリペプチドによって得られた早くの結果を確認している(ここでは、蛍光シグナルの増大は、標的のそれぞれへの十分な結合があるときにのみ観察される)。
例4.4:二重特異性EGFR−CEAポリペプチドによるEGFR機能の阻害
二重特異性ポリペプチドが、細胞表面上のEGFRおよびCEAの同時の連繋によってEGFRナノボディの力価を向上させ得るかどうかを検証するために、二重特異性EGFR−CEAポリペプチドおよび対応する単一特異性ナノボディのパネルを、機能的なEGFRアッセイにおいて分析した。
EGFRリン酸化の用量依存的な阻害を、EGFRのみを発現するHER14細胞およびEGFR+/CEA+LoVo細胞において評価した。機能的なリン酸化はEGFRによってのみ媒介されるので、CEAナノボディの同時の結合によるアビディティは、細胞特異的なやり方でEGFRリン酸化の増大した阻害となって現れると予想される。
簡潔には、LoVo細胞を、10%FCSを補ったF12−K培地中、ウェルあたり2×104細胞で96ウェル培養プレートに二重で播種した。HER14細胞は0.1%ゼラチンコーティング96ウェル培養プレートに二重で播種し、24h、10%FBS/BSを含有するDMEM培養培地中で育てた。翌日に、細胞を、24hr、0.1%FCSを補った培地中で血清飢餓させ、そこでナノボディと一緒にインキュベーションし、HER14では組み換えヒトEGFの0.5nM(R&D Systems,cat#236-EG)、LoVo細胞では1nMによる10分間の刺激が続いた。EGF濃度は、LoVo(EC50=5.9ng/ml)およびHER14細胞(EC50=3.5ng/ml)において得られたEC50に基づいた。各プレート中には、抗EGFRmAbセツキシマブ(Erbitux,Merck-Serono)および無関係な対照ナノボディを参照として包含した。単層を氷冷dPBSによって2回リンスし、爾後に、1mMのPMSFによって置換した氷冷RIPA緩衝液中でリシスした。細胞ライセート中のEGF依存的な受容体活性化を、Phospho(Tyr1173)/Total EGFR Whole Cell Lysateキット(Meso Scale Discovery -K15104D)を用いて測定した。プレートにライセートの30μlをローディングし、振盪しながらRTで1hインキュベーションし、製造者のプロトコールに従って処理した。プレートはSector Imager 2400(Meso Scale Discovery)上で読んだ。トータル蛋白質に対するリン酸蛋白質のパーセンテージは式(2×p−蛋白質)/(p−蛋白質+トータル蛋白質)×100を用いて計算した。
代表的なグラフが図4.6に示されており、2つおよび3つの独立したアッセイの平均IC50値が表4.4に列記されている。ナノボディは、両方の細胞においてEGFRリン酸化の用量依存的な阻害を示す。HER14細胞においては、全てのEGFR−CEA二重特異性ポリペプチドは、対応する単一特異性対照とEGFRリン酸化の等しい阻害を示した。単一特異性EGFR対照間の測定された力価の違いは、一価EGFRビルディングブロックのoff速度に従い、それぞれ65−52−150−690nM(HER14)および75−150−467−2333nM(LoVo)のIC50値を有する。
EGFR+/CEA+LoVo細胞において、単一特異性および二重特異性EGFR−CEAポリペプチド間の力価の約5倍の違いが、係留部としてのCEA#1ナノボディと組み合わされたEGFR#1およびEGFR#33による構築物について観察された。最低親和性のEGFR#32バリアントによる構築物はEGFR機能をブロックし得ず、CEAナノボディの追加の存在はその力価を向上させ得なかった。
一緒にすると、これらの結果は、力価向上が、専ら両方の受容体を共発現する細胞において、EGFRおよびCEACAM5の標的組み合わせについて、二重特異性ポリペプチドによって得られたということを示している。リン酸化アッセイにおいてLoVo細胞で観察されたEGFR−CEA二重特異性ポリペプチドの比較的小さい力価増大は、この細胞上のCEAおよびEGFR発現間の最適とは言えない比に関係していると思われるが、力価効果がEGFの機能的な応答(例えば増殖および生存)を測定するアッセイにおいてはより大きいであろうということもまた可能である。本アッセイにおいて評価された通り、1つのタイムポイントにおける受容体リン酸化に及ぼす効果以外に、ナノボディは受容体不活性化および分解キネティクスに差別的な効果を及ぼし得、これはシグナル変換アッセイでは評価されない。この例のための選択されたナノボディが、標的上のエピトープに関して立体的な制約を有するということもまた可能である。これは、細胞表面上における両方の標的の同時の連繋を制限し得る。
力価の上昇が、試験した現行の組み合わせについては観察されたが、他のエピトープに対する二重特異性EGFR−CEAポリペプチドは、より大きい細胞特異的な力価向上を示し得る。