緒言
プロテインA精製時に遭遇した一般的な問題は、不純物、たとえば、宿主細胞タンパク質(HCP)、DNA、および他の細胞培養由来の不純物が、カラム樹脂および対象のタンパク質に非特異的に結合することである。たとえば、多量の宿主細胞タンパク質、たとえば、最大で約500ng/mg、600ng/mg、700ng/mg、800ng/mg、900ng/mg、1000ng/mg、1500ng/mg、2000ng/mg、またはそれを超えるHCPを有する、プロテインAカラムからの溶出液が観測されてきた。HCPの存在が問題でありうるのは、組換え抗体産物中の汚染物質の許容レベルに関する保健規則があるからだけでなく、たとえば、プロテアーゼ活性、および目に見える微粒子、フラグメント、または凝集体の経時的形成を含めて、HCPの存在が産物の安定性および/または有効性に悪影響を及ぼしうるからである。
少なくとも1つのプロテインA洗浄緩衝液中に脂肪酸を組み込むことにより、プロテインA溶出液中の宿主細胞タンパク質のレベルを実質的に減少させうることを、出願人は見いだした。一例では、少なくとも1つのプロテインA洗浄緩衝液中に脂肪酸を組み込むことにより、溶出液中のプロテアーゼ活性を実質的に減少させうる。プロテアーゼの例としては、セリンプロテアーゼ、アスパルチルプロテアーゼたとえばカテプシンD、システインプロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、アミノペプチダーゼ、およびそれらの組合せが挙げられる。そのほかに、プロテインA洗浄緩衝液中に脂肪酸を組み込むことにより、組換え産生ポリペプチドを含有する製剤のプロテアーゼ活性を低減させうる。さらに、プロテインA洗浄緩衝液中に脂肪酸を組み込むことにより、たとえば、粒子形成および/またはフラグメント化を低減させて、組換え産生ポリペプチドの安定性を向上させうる。
本明細書に記載されているのは、組換え産生ポリペプチドの精製プロセスである。より特定的な実施形態では、組換え産生抗体の精製プロセスを記載する。
用語
とくに定義されていないかぎり、本明細書で用いられる科学技術用語は、当業者が通常理解する意味を有するものとする。さらに、とくに文脈上必要とされないかぎり、単数形の用語は、複数形を含むものとし、複数形の用語は、単数形を含むものとする。一般的には、本明細書に記載の細胞および組織培養、分子生物学、ならびにタンパク質およびオリゴまたはポリヌクレオチド化学、ならびにハイブリダイゼーションとの関連で用いられる命名法ならびにそれらの技術は、当技術分野で通常用いられる周知のものである。アミノ酸は、本明細書では、その一般に知られる三文字記号またはIUPAC−IUB生化学命名委員会(IUPAC−IUB Biochemical Nomenclature Commission)により推奨される一文字記号のいずれかにより称されうる。ヌクレオチドも同様に、その一般に受け入れられている一文字コードにより称されうる。
本開示に従って用いられる場合、以下の用語は、とくに指定がないかぎり、以下の意味を有すると理解されるものとする。
本明細書で用いられる場合、「約」という用語は、たとえば、本発明の説明に利用される組成物中の成分の量、濃度、体積、プロセス温度、プロセス時間、収率、流量、圧力、およびそれらの範囲を修飾するために使用される。「約」という用語は、たとえば、化合物、組成物、濃縮物、または製剤の製造に使用される典型的な測定および取扱いの手順により、これらの手順での偶発的エラーにより、方法を実施するために使用される出発材料または成分の製造、供給源、または純度、および他の類似の要件の差により、生じる可能性のある数値量の変動を意味する。「約」という用語はまた、特定の初期濃度または初期混合を有する製剤のエージングに起因して異なる量、および特定の初期濃度または初期混合を有する製剤の混合または処理に起因して異なる量も包含する。「約」という用語により修飾された場合、本明細書に添付された特許請求の範囲は、そのような均等物を含む。
本明細書で用いられる場合、「抗体」という用語は、抗原の抗原決定基の特徴部に相補的な内表面の形状および電荷分布の三次元結合空間を有するポリペプチド鎖のフォールディングから形成される少なくとも1つの結合ドメインを含む1つのポリペプチドまたは一群のポリペプチドを意味する。抗体は、典型的には、2対のポリペプチド鎖の四量体形を有し、各対は、1本の「軽」鎖と1本の「重」鎖とを有する。各軽鎖/重鎖対の可変領域は、抗体結合部位を形成する。各軽鎖は、1つのジスルフィド共有結合により重鎖に結合されるが、ジスルフィド結合の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で異なる。各重鎖および軽鎖はまた、規則的に離間した鎖内ジスルフィド架橋を有する。各重鎖は、一端に可変ドメイン(VH)および続いていくつかの定常ドメイン(CH)を有する。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(VL)およびその他端に定常ドメイン(CL)を有し、軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1の定常ドメインにアライメントされ、軽鎖可変ドメインは、重鎖の可変ドメインにアライメントされる。軽鎖は、軽鎖定常領域のアミノ酸配列に基づいてλ鎖またはκ鎖のいずれかとして分類される。κ軽鎖の可変ドメインはまた、本明細書ではVKとも記されうる。
本明細書で用いられる「抗体」および「免疫グロブリン」という用語は、モノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、少なくとも2つの異なるエピトープ結合フラグメントから形成される多重特異的抗体(たとえば、二重特異的抗体)、CDR移植ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダ化抗体、キメラ抗体、一本鎖Fvs(scFv)、一本鎖抗体、単一ドメイン抗体、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)2フラグメント、所望の生物学的活性を呈する抗体フラグメント(たとえば、抗原結合部分)、ジスルフィド結合Fvs(dsFv)、および抗イディオタイプ(抗Id)抗体、イントラボディー、ならびに以上のいずれかのエピトープ結合フラグメントまたは誘導体を包含する。特定的には、抗体は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的活性フラグメント、すなわち、少なくとも1つの抗原結合部位を含有する分子を含む。免疫グロブリン分子は、任意のアイソタイプ(たとえば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、およびIgY)、サブアイソタイプ(たとえば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2)、またはアロタイプ(たとえば、Gm、たとえば、G1m(f、z、a、もしくはx)、G2m(n)、G3m(g、b、もしくはc)、Am、Em、およびKm(1、2、もしくは3))でありうる。抗体は、限定されるものではないが、ヒト、サル、ブタ、ウマ、ウサギ、イヌ、ネコ、マウスなどを含めて、任意の哺乳動物種、またはトリ(たとえば、ニワトリ)などの他の動物に由来しうる。抗体は、異種ポリペプチド配列、たとえば、精製を促進するタグに融合されうる。
分子とカラム材料との相互作用を考察するときの「結合」または「結合する」という用語は、分子がカラム材料の内部または表面上に可逆的に固定化されるような条件下で分子をカラム材料に暴露することを意味する。
「細胞培養上清」という用語は、対象の組換えポリペプチドを産生する宿主細胞を培養することにより得られる溶液を意味する。組換えポリペプチドに加えて、細胞培養上清は、細胞培養培地の成分、宿主細胞により分泌された代謝副産物、さらには培養細胞の他の成分をも含みうる。本明細書で用いられる場合、「清澄化細胞培養上清」という用語は、宿主細胞が除去または採取されて、細胞培養上清に細胞デブリおよび/または無傷細胞が一般的には含まれない組成物を意味する。
本明細書で用いられる「賦形剤」という用語は、タンパク質の安定性向上、タンパク質の溶解性向上、および/または粘度の減少などの有益な物理的性質を製剤に付与する、希釈剤、媒体、保存剤、結合剤、または薬剤安定化剤として通常使用される不活性物質を意味する。賦形剤の例としては、タンパク質(たとえば、限定されるものではないが、血清アルブミン)、アミノ酸(たとえば、限定されるものではないが、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、グリシン)、界面活性剤(たとえば、限定されるものではないが、SDS、Tween 20、Tween 80、ポリソルベート、および非イオン性界面活性剤)、糖(たとえば、限定されるものではないが、グルコース、スクロース、マルトース、およびトレハロース)、ポリオール(たとえば、限定されるものではないが、マンニトールおよびソルビトール)、脂肪酸およびリン脂質(たとえば、限定されるものではないが、アルキルスルホネートおよびカプリレート)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
「宿主細胞」という語句は、組換えポリペプチドを発現する細胞を意味する。特定的には、「宿主細胞」という用語は、ベクターなどの核酸の取込みが可能であるまたは取込みが行われた、かつ核酸の複製および1種以上のコード産物の産生を支援する、細胞を意味する。「宿主細胞」という用語は、原核細胞、たとえば、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、およびバチルス属(Bacillus)種、酵母細胞、たとえば、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、ピキア・メタノリカ(Pichia methanolica)、およびサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、昆虫細胞、たとえば、バキュロウイルス、ならびに真核細胞を含めて、さまざまな細胞型を意味しうる。真核宿主細胞の例としては、哺乳動物細胞、たとえば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胎児腎臓(HEK293)細胞、ベロ細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、ヒーラ細胞、CV1サル腎臓細胞、マディン・ダービーイヌ腎臓(MDCK)細胞、3T3細胞、骨髄腫細胞系、COS細胞(たとえば、COS1およびCOS7)、PC12細胞、WI38細胞が挙げられる。宿主細胞という用語はまた、たとえば、異なる細胞型または細胞系の混合培養物を含めて、細胞の組合せまたは混合物をも包含する。
「不純物」という用語は、サンプル中に存在する組換え産生ポリペプチド以外の任意の異物、特定的には、生体高分子、たとえば、DNA、RNA、またはタンパク質を意味する。汚染物質は、対象の組換えポリペプチド以外の宿主細胞タンパク質を含みうる。
組換えポリペプチドと1種以上の汚染物質とを含む組成物または溶液から組換えポリペプチドを「精製」するという用語は、組成物または溶液から少なくとも1種の汚染物質を(完全にまたは部分的に)除去することにより、組成物中または溶液中の所望のタンパク質の純度を向上させることを意味する。
「mAb」という用語は、モノクローナル抗体を意味する。
本明細書で用いられる「薬学的に許容可能」という語句は、連邦政府もしくは州政府の監督官庁により認可されているか、または米国薬局方、欧州薬局方、もしくは動物、より特定的にはヒトに使用するための他の一般に公認された薬局方に列挙されていることを意味する。
「ポリペプチド」または「タンパク質」という用語は、ペプチド結合により互いに連結された2つ以上のアミノ酸残基を有する分子を意味すべく同義的に用いられうる。「ポリペプチド」という用語は、抗体および他の非抗体タンパク質を意味しうる。非抗体タンパク質としては、酵素、レセプター、細胞表面タンパク質のリガンド、分泌タンパク質、融合タンパク質、それらのフラグメントなどのタンパク質が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ポリペプチドは、他のポリペプチドに融合されたものまたは融合されていないものでありうる。ポリペプチドはまた、修飾、たとえば、限定されるものではないが、グリコシル化、脂質結合、硫酸化、グルタミン酸残基のγ−カルボキシル化、ヒドロキシル化、およびADPリボシル化も含みうる。ポリペプチドは、タンパク質ベースの治療剤を含めて、科学的または商業的な関心の対象となりうる。
「組換え」という用語は、ヒトが介入することにより人工的または合成的に(すなわち、非天然に)改変された生物学的物質、たとえば、核酸またはタンパク質を意味する。
宿主細胞タンパク質の除去との関連で用いられるときの「除去」という用語は、精製産物中の宿主細胞タンパク質の量の低減を意味する。除去の結果、精製産物に宿主細胞タンパク質が不在になることもならないこともある。一般的には、除去とは、精製産物中の宿主細胞タンパク質が、元の組成物中の宿主細胞タンパク質のレベルと比較して、少なくとも1/2、1/3、1/4、1/5、1/10、1/15、1/20、1/25、最大で1/30、1/35、1/40、1/45、または1/50に低減されることを意味する。
組換え産生ポリペプチドの製剤、たとえば、組換え産生抗体または抗体フラグメントを含む医薬製剤との関連で本明細書で用いられる「安定性」および「安定」という用語は、製造、調製、輸送、および貯蔵の条件下での粒子形成、凝集、分解、またはフラグメント化に対する製剤中のポリペプチドの耐性を意味する。「安定」製剤は、製造、調製、輸送、および貯蔵の条件下で生物学的活性を維持する。安定性は、参照製剤と比較して、HPSEC、静的光散乱(SLS)、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)、円二色性(CD)、尿素アンフォールディング技術、内因性トリプトファン蛍光、示差走査熱量測定、および/またはANS結合技術により測定される、粒子形成、凝集、分解、またはフラグメント化の程度により、評価可能である。
本明細書で用いられる場合、「実質的に純粋」とは、存在する主要種である(たとえば、モル基準で組成物中のいずれの他の個別種よりも多い)生物学的物質を意味する。一実施形態では、実質的に精製された画分は、生物学的物質が、存在するすべての高分子種の少なくとも約50%(モル基準)を占める、組成物である。一般的には、実質的に純粋な組成物は、組成物中に存在するすべての高分子種の約80%超、または約85%超、約90%超、約95%超、または約99%超を占めるであろう。一実施形態では、生物学的物質は、本質的に均一になるまで精製され(従来の検出方法により組成物中に汚染物質種を検出できない)、組成物は、本質的に単一の高分子種を含む。
組換えポリペプチド産生
一実施形態では、組換えポリペプチドは、1種以上の対象のポリペプチドを発現可能なベクターを用いて安定的または一過的のいずれかでトランスフェクトされた宿主細胞を用いて産生される。本明細書で用いられる場合、「ベクター」という用語は、対象の核酸を細胞内に配達するために使用可能な物質組成物を意味する。線状ポリヌクレオチド、イオン性または両親媒性の化合物に関連付けられたポリヌクレオチド、プラスミド、およびウイルスを含めて、多くのベクターが知られているが、これらに限定されるものではない。「ベクター」という用語は、自律複製するプラスミド、または自律複製しないウイルスもしくはベクターもしくはプラスミドを含みうる。「トランスフェクション」という用語は、遺伝子改変細胞を産生するように外因性遺伝物質を細胞内に導入することを意味する。ベクターは、当技術分野で公知の方法を用いて宿主細胞内に導入可能である。たとえば、ベクターは、物理的、化学的、または生物学的な手段により宿主細胞内に移入可能である。ポリヌクレオチドを宿主細胞内に導入するための物理的方法としては、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション(正荷電リポソーム媒介トランスフェクションを含む)、粒子照射、マイクロインジェクション、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、およびエレクトロポレーションが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ベクターを宿主細胞内に導入するための生物学的方法としては、たとえば、ウイルスベクターを含めて、DNAおよびRNAベクターの使用が挙げられ、ポリヌクレオチドを宿主細胞内に導入するための化学的手段としては、コロイド分散系、たとえば、高分子複合体、ナノカプセル、マイクロスフェア、ビーズ、ならびに、水中油型エマルジョン、ミセル、混合ミセル、およびリポソームを含めて、脂質ベースの系が挙げられる。宿主細胞は、組換えポリペプチド、たとえば、商業的または科学的な関心の対象となるポリペプチドを発現するように、遺伝子工学操作が可能である。
「細胞培養」という用語は、多細胞の生物や組織以外の細胞の成長および増殖を意味する。pH、温度、湿度、雰囲気、撹拌などの細胞培養条件は、細胞培養物の成長および/または生産性の特性を改善すべく変更可能である。宿主細胞は、懸濁状態または固体基材に結合された状態で培養されうる。宿主細胞は、小規模培養で、たとえば、実験室環境で、25ml程度の少量から、約50mlまで、約100mlまで、約150mlまで、または約200mlまでの量で、培養可能である。他の選択肢として、培養は、大規模、たとえば、約300ml、500ml、または1000mlから、約5000mlまで、約10,000mlまで、および約15,000mlまでの量でありうる。商業規模のバイオリアクターもまた、たとえば、約1,000Lまで、約5,000Lまで、または約10,000Lまでの培地量で使用可能である。哺乳動物細胞による組換えポリペプチドの大規模産生は、連続、バッチ、およびフェドバッチの培養系を含みうる。宿主細胞は、たとえば、マイクロ担体を用いてまたは用いずに、流動床バイオリアクター、中空繊維バイオリアクター、ローラーボトル、振盪フラスコ、または撹拌タンクバイオリアクターで培養されうるとともに、バッチ、フェドバッチ、連続、半連続、または灌流のモードで操作されうる。大規模細胞培養は、典型的には、何日間さらには何週間にもわたり維持され、その間、細胞は、所望のタンパク質産物を産生する。
組換えポリペプチドの産生に好適な宿主細胞としては、原核細胞および真核細胞の両方が挙げられる。真核細胞の例としては、哺乳動物細胞が挙げられる。組換えポリペプチドの産生に好適な哺乳動物細胞の例としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、マウス骨髄腫(NS0)、ヒト胎児腎臓(HEK293)、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、ベロ細胞、ヒーラ細胞、マディン・ダービーイヌ腎臓(MDCK)細胞、CV1サル腎臓細胞、3T3細胞、骨髄腫細胞系、たとえば、NS0およびNS1、PC12細胞、WI38細胞、COS細胞(COS−1およびCOS−7を含む)、およびC127細胞が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一般的には、哺乳動物細胞培養は、約6.5〜約7.5のpH、約36℃〜約38℃、典型的には、約37℃の温度、かつ約80%〜約95%の相対湿度に維持される。哺乳動物細胞培養培地は、典型的には、約1%〜約10%または約5%〜約6%の二酸化炭素(CO2)雰囲気を必要とする緩衝系を含有する。
宿主細胞は、さまざまな細胞培養培地中に維持可能である。「細胞培養培地」という用語は、宿主細胞を成長させる栄養溶液を意味する。細胞培養培地配合物は、当技術分野で周知である。典型的には、細胞培養培地は、緩衝剤、塩、炭水化物、アミノ酸、ビタミン、および微量必須元素を含む。細胞培養培地は、血清、ペプトン、および/またはタンパク質を含有することも含有しないこともある。細胞培養培地は、細胞培養要件および/または所望の細胞培養パラメーターに依存して、追加濃度または増加濃度の成分、たとえば、アミノ酸、塩、糖、ビタミン、ホルモン、成長因子、緩衝剤、抗生物質、脂質、微量元素などが追加されうる。無血清培養培地および規定培養培地を含めて、種々の培養培地が市販されており、限定されるものではないが、最少必須培地(MEM,Sigma,St.Louis,Mo.)、ハムF10培地(Sigma)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM,Sigma)、最少必須培地(MEM)、イーグル基本培地(BME)、RPMI−1640培地(Sigma)、HyClone細胞培養培地(HyClone,Logan,Utah)、および特定の細胞型に合わせて配合された化学的規定(CD)培地、たとえば、CD−CHO培地(Invitrogen,Carlsbad,Calif.)が挙げられる。所望により、市販の培地にサプリメント成分を添加することが可能である。
本明細書で用いられる「組換えポリペプチド」という用語は、培養宿主細胞により産生される遺伝子工学操作されたポリペプチドまたはタンパク質を意味する。本明細書で用いられる場合、「異種」という用語は、宿主細胞により産生される通常は発現されない組換えポリペプチドを意味する。しかしながら、異種ポリペプチドは、生物に固有のポリペプチドであるが、なんらかの方法で意図的に改変されたものを含む。たとえば、異種ポリペプチドは、このポリペプチドを発現するベクターでトランスフェクトされた宿主細胞により発現されるポリペプチドを含みうる。細胞培養により発現される組換えポリペプチドは、細胞内で産生されうるか、または回収および/もしくは捕集が可能な培養培地中に分泌されうる。
一実施形態では、組換えポリペプチドは、抗体またはその結合フラグメントである。抗体は、単独または他のアミノ酸配列との組合せのいずれかで、オリゴクローナル抗体、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ラクダ化抗体、CDR移植抗体、多重特異的抗体、二重特異的抗体、触媒抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、抗イディオタイプ抗体、および可溶形または結合形の標識可能な抗体、さらにはエピトープ結合フラグメントを含めてそれらのフラグメント、変異体、または誘導体でありうる。抗体は、任意の種に由来しうる。抗体という用語はまた、限定されるものではないが、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、一本鎖抗体(svFC)、二量体可変領域(ダイアボディー)、およびジスルフィド結合可変領域(dsFv)をはじめとする結合フラグメントをも含む。免疫グロブリン分子は、任意のタイプ(たとえば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、およびIgY)、クラス(たとえば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2)、またはサブクラスでありうる。一実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、精製を容易にするために、親和性タグなどの異種ポリペプチド配列に融合されうる。親和性タグの例としては、ポリヒスチジンタグ、GFPタグ、FLAGタグ、GSTタグ、V5タグ、およびMycタグが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
一実施形態では、抗体は、抗IL−18抗体または抗IL6抗体またはそれらのフラグメントである。他の実施形態では、抗体は、宿主細胞タンパク質と共精製される任意の抗体でありうる。
他の実施形態では、組換え産生ポリペプチドは、抗体1の軽鎖酸可変配列(配列番号8)を有する抗体を含む。他の実施形態では、組換え産生ポリペプチドは、抗体1の重鎖可変配列(配列番号7)を有する抗体を含む。他の実施形態では、組換え産生ポリペプチドは、抗体1の軽鎖可変配列(配列番号8)と抗体1の重鎖可変配列(配列番号7)とを有する抗体を含む。
他の実施形態では、組換え産生ポリペプチドは、抗体2の軽鎖酸可変配列(配列番号18)を有する抗体を含む。他の実施形態では、組換え産生ポリペプチドは、抗体2の重鎖可変配列(配列番号16)を有する抗体を含む。他の実施形態では、組換え産生ポリペプチドは、抗体2の軽鎖可変配列(配列番号18)と抗体2の重鎖可変配列(配列番号:16)とを有する抗体を含む。
一実施形態では、抗体は、抗体1または抗体2の1つ以上の相補性決定領域(CDR)を有する重鎖アミノ酸配列を含む。CDR領域またはCDRという用語は、Kabatら(Kabat,E.A.et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,第5版.米国食品医薬品局(US Department of Health and Human Services),公共サービス(Public Service),NIH,Washingtonまたは後版)またはChothiおよびLesk(J.Mol.Biol.,196:901−917(1987))により定義された免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の超可変領域を意味する。抗体は、典型的には、3つの重鎖CDRと3つの軽鎖CDRとを含有する。CDRという用語は、場合にもよるが、ここでは、抗原または認識されるエピトープに対する抗体の親和性による結合に関与するアミノ酸残基の大部分を含有するこれらの領域の1つまたはこれらの領域のいくつかさらには全部を表すために使用される。6つの短いCDR配列のうち、重鎖の第3のCDR(HCDR3)は、より大きいサイズ可変性(それを生成する遺伝子の構成の機序に本質的に起因するより大きい多様性)を有する。それは、2アミノ酸程度に短いこともあるが、既知の最長サイズは、26である。CDRの長さはまた、特定の基礎的フレームワークにより収容可能な長さによっても異なりうる。機能的には、HCDR3は、抗体の特異性の決定に部分的な役割を果たす。当業者であれば、抗体のCDR領域を決定することが可能である。一般的には、HCDR1は、約5アミノ酸長であり、カバット残基31〜35からなり、HCDR2は、約17アミノ酸長であり、カバット残基50〜65からなり、HCDR3は、約11または12アミノ酸長であり、カバット残基100Dを任意選択で含むカバット残基95〜102からなり、LCDR1は、約11アミノ酸長であり、カバット残基24〜34からなり、LCDR2は、約7アミノ酸長であり、カバット残基50〜56からなり、かつLCDR3は、約8または9アミノ酸長であり、カバット残基95を任意選択で含むカバット残基89〜97からなる。
一実施形態では、組換え産生ポリペプチドは、LCDR1(配列番号4)、LCDR2(配列番号5)、LCDR3(配列番号6)、およびそれらの組合せから選択される抗体1の1つ以上の軽鎖CDR配列を含む軽鎖アミノ酸配列を含む抗体またはその結合フラグメントである。一実施形態では、組換え産生ポリペプチドは、HCDR1(配列番号1)、HCDR2(配列番号2)、HCDR3(配列番号3)、およびそれらの組合せから選択される抗体1の1つ以上の重鎖CDR配列を含む重鎖アミノ酸配列を含む抗体である。一実施形態では、組換え産生ポリペプチドは、抗体1のLCDR1(配列番号4)、LCDR2(配列番号5)、およびLCDR3(配列番号6)を含む軽鎖アミノ酸配列と、抗体1のHCDR1(配列番号1)、HCDR2(配列番号2)、およびHCDR3(配列番号3)を含む重鎖アミノ酸配列と、を含む抗体またはその結合フラグメントである。
一実施形態では、組換え産生ポリペプチドは、LCDR1(配列番号12)、LCDR2(配列番号13)、LCDR3(配列番号14)、およびそれらの組合せから選択される抗体2の1つ以上の軽鎖CDR配列を含む軽鎖アミノ酸配列を含む抗体またはその結合フラグメントである。一実施形態では、組換え産生ポリペプチドは、HCDR1(配列番号9)、HCDR2(配列番号10)、HCDR3(配列番号11)、およびそれらの組合せから選択される抗体2の1つ以上の重鎖CDR配列を有する重鎖アミノ酸配列を含む抗体である。一実施形態では、組換え産生ポリペプチドは、抗体2のLCDR1(配列番号12)、LCDR2(配列番号13)、およびLCDR3(配列番号14)を含む軽鎖アミノ酸配列と、抗体2のHCDR1(配列番号9)、HCDR2(配列番号10)、およびHCDR3(配列番号11)を含む重鎖アミノ酸配列と、を含む抗体またはその結合フラグメントである。
精製
細胞培養物から組換え産生ポリペプチド(本明細書では「標的ポリペプチド」または「標的」とも呼ばれる)を回収する際の第1の工程は、他の残留不純物と共に組換え産生ポリペプチドを含有する清澄化細胞培養上清を得るために、培養培地から無傷宿主細胞および宿主細胞デブリを除去することである(「採取」と呼ばれる)。採取は、一般的には、遠心分離、凝集/沈殿、深層濾過、および無菌濾過により達成されるが、他の方法を使用することも可能である。
組換え産生抗体は、細胞内、ペリプラズム空間内に産生可能であるか、または培地中に直接分泌可能である。抗体が細胞内に産生される場合、第1の工程として、たとえば、遠心分離または限外濾過により、宿主細胞または溶解フラグメントのいずれかである微粒子状デブリが除去される。抗体が培地中に分泌される場合、たとえば、AmiconやMillipore Pellicon限外濾過ユニットなどの市販のタンパク質濃縮フィルターを用いて、発現系からの上清が濃縮されうる。タンパク質分解を阻害するために、ベスタチン、アプロチニン、ペプスタチン、ロイペプチン、4−(2−アミノエチル)ベンゼンスルホニルフルオリド塩酸塩(AEBSF)、フェニルメタンスルホニルフルオリド(PMSF)などのプロテアーゼ阻害剤または1種以上のプロテアーゼ阻害剤を含むプロテアーゼ阻害剤カクテルが含まれうる。他の実施形態では、外来汚染物質の成長を防止するために、1種以上の抗生物質が含まれうる。抗生物質の例としては、アクチノマイシンD、アンピシリン、カルベニシリン、セフォタキシム、ホスミドマイシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ペニシリン、ポリミキシンB、およびストレプトマイシンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
清澄化細胞培養上清を取得した後、限定されるものではないが、宿主細胞タンパク質(HCP)、DNA、外来性および内在性ウイルス、内毒素、凝集体、ならびに他の種を含めて、細胞培養上清内に含まれうる他の不純物を除去することにより、標的ポリペプチドをさらに精製することが可能である。ほとんどの精製方法は、静止材料(固相)との化学的または物理的な相互作用の差に基づいて溶液(移動相)中の標的分子を分離するなんらかの形態のクロマトグラフィーを含む。一般的なクロマトグラフィー法およびその使用は、当業者に公知である。たとえば、Sambrook,J.,et al.(編),Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989を参照されたい。組換えポリペプチド精製のための多種多様な方法が公知であり、限定されるものではないが、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水相互作用クロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、およびそれらの組合せが挙げられる。タンパク質精製のための他の技術、たとえば、イオン交換カラム分画、エタノール沈殿、等電点電気泳動、逆相HPLC、シリカクロマトグラフィー、ヘパリンクロマトグラフィー、陰イオンまたは陽イオン交換樹脂セファロースクロマトグラフィー(たとえば、ポリアスパラギン酸カラム)、クロマトフォーカシング、SDS−PAGE、および硫安沈殿もまた、精製プロセスに含まれうる。多くの場合、親和性、電荷、疎水性度、および/またはサイズなどの異なる原理に基づいて異なるプロセスによりポリペプチドを分離するように、異なる精製プロセスの組合せが使用される。特定の組換えポリペプチドに合わせて精製スキームを調整できるように、各技術に対して多種多様なクロマトグラフィー樹脂が入手可能である。カラムクロマトグラフィーは、ポンプを用いて設定流量で充填カラム上に溶媒を押し出すGE Healthcare AKTA AVANTシステムなどの自動システムより実施可能であるか、または重力フローにより実施可能である。自動フローシステムおよび重力フローシステムは両方とも、自動画分捕集システムに結合可能である。
一実施形態では、精製スキームとして、精製プロセスの組合せが利用される。精製スキーム100の一例が、図1にフロー図として示されている。サンプル精製スキーム100は、組換えポリペプチドが、たとえば、宿主細胞内発現により、産生され、そして採取される第1の工程101を含む。組換えポリペプチドの産生および採取の方法は、以上に考察されている。次いで、たとえば、アフィニティークロマトグラフィーを用いて、組換えポリペプチドをキャプチャーする102。一実施形態では、組換えポリペプチドは、抗体であり、かつプロテインAアフィニティークロマトグラフィーがキャプチャー102に使用される。精製プロセスはまた、1つ以上のポリッシングクロマトグラフィー工程104、105を含みうる。ウイルスクリアランスを改善するために、精製スキーム100にウイルス不活性化工程103および/またはウイルス濾過工程106もまた、含まれうる。最後に、精製産物を濃縮し、最終製剤緩衝液107中に透析濾過することが可能である。図1に提供されたスキームは、単なる例にすぎず、たとえば、工程の順序、工程の数、および各工程に使用される精製方法の変更は、十分に当業者の能力の範囲内にあることは、注目に値する。
一実施形態では、キャプチャー102は、アフィニティークロマトグラフィーにより達成される。アフィニティークロマトグラフィーとは、ポリペプチドと固相に共有結合された結合パートナーとの特異的可逆的相互作用に基づいて組換え産生ポリペプチドなどの生体分子を分離するクロマトグラフィー法を意味する。親和性相互作用の例としては、抗原と抗体、酵素と基質、またはレセプターとリガンドの可逆的相互作用が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一実施形態では、アフィニティークロマトグラフィーは、プロテインAやプロテインGなどの微生物タンパク質の使用を含む。プロテインAは、主にFc領域を介して哺乳動物IgGに結合する細菌細胞壁タンパク質である。プロテインA樹脂は、さまざまな抗体アイソタイプ、とくに、IgG1、IgG2、およびIgG4のアフィニティー精製および単離に有用である。本明細書に記載の精製プロセスに使用するのに好適である入手可能な多くのプロテインA樹脂が存在する。樹脂は、一般的には、その骨格組成に基づいて分類され、たとえば、ガラス系またはシリカ系の樹脂、アガロース系樹脂、および有機ポリマー系樹脂が挙げられる。
一実施形態では、組換え産生抗体をキャプチャーするために、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーが使用される。アフィニティークロマトグラフィー担体を通る流量は、分離を最適化するための重要なパラメーターである。分離時間の低減が望ましいこともあるが、流れが速すぎる流量では、内部ビーズ体積に達するのに必要な拡散時間よりも速く移動相が固相を通って移動するおそれがある。一般的には、少なくとも約50cm/時、100cm/時、150cm/時、200cm/時、または250cm/時から、約300cm/時、350cm/時、400cm/時、450cm/時、または500cm/時までの流量が使用される。カラム寸法もまた、変更可能である。実験台規模のカラムは、一般的には、1cm未満または5cm未満のカラム直径を有し、一方、大規模または商業生産規模では、1メートルまで、さらには2メートルまでの直径を有するカラムを使用可能である。大規模生産または商業生産では、カラム床の高さは、一般的には、少なくとも約10cm、15cm、または20cm、かつ最大で約25cmまたは30cmである。
プロテインA精製との関連で用いられる緩衝溶液の組成および緩衝溶液の体積は、変更可能である。「緩衝液」または「緩衝溶液」という用語は、pH変化に対して耐性でありうる溶液を意味する。多くの場合、緩衝液は、弱共役酸塩基対、たとえば、弱酸とその共役塩基、または弱塩基とその共役酸)で作製される。いくつかの緩衝液では、緩衝剤は、結晶の酸または塩基として供給され、たとえば、トリスは、結晶の塩基として供給され、緩衝溶液を形成するために水中に溶解される。緩衝溶液のpHは、適切な酸または塩基を用いて調整可能である。たとえば、塩酸(HCl)を用いてトリス緩衝溶液のpHを調整可能である。他の緩衝液は、2つの成分、たとえば、遊離酸または遊離塩基と対応する塩とを所望のpHが達成される比で混合することにより、調製される。たとえば、クエン酸ナトリウム緩衝溶液は、所望のpHの溶液が形成されるようにクエン酸とクエン酸三ナトリウムとを組み合わせることにより、所望のpHに調整可能である。他の緩衝液は、緩衝液成分とその共役酸または共役塩基とを混合することにより作製される。たとえば、リン酸緩衝液は、第一リン酸ナトリウム溶液と第二リン酸ナトリウム溶液とを所望のpHが達成される比で混合することにより作製される。他の実施形態では、重炭酸ナトリウム緩衝液系は、所望のpHを有する緩衝溶液が形成されるように炭酸ナトリウムの溶液と重炭酸ナトリウムの溶液とを組み合わせることにより調製可能である。
一実施形態では、カラムは、充填前に「平衡化緩衝液」で平衡化される。「平衡化緩衝液」という用語は、たとえば、カラムのpHを調整することにより、カラムマトリックスから望ましくない残留物を除去したり、標的タンパク質を充填するためのカラムマトリックスの固相を調製したりするために使用可能な緩衝液を意味する。抗体精製に使用する場合、平衡化緩衝液のpHは、少なくとも約6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、または7.9、かつ最大で約8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、または9.0である。一実施形態では、平衡化緩衝液は、緩衝剤、たとえば、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(「トリス」と呼ばれることが多い)(pH範囲5.8〜8.0)、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)(pH範囲6.8〜8.2)、3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)(pH範囲6.5〜7.9)、または他のリン酸塩緩衝剤(pH5.8〜8.0)を、少なくとも約10mM、25mM、50mM、または75mM、かつ最大で約100mM、125mM、または150mMの濃度で含む。一実施形態では、緩衝溶液のpHは、塩酸(HCl)や水酸化ナトリウム/水酸化カリウム(NaOH/KOH)などの適切な酸または塩基を用いて調整可能である。一実施形態では、平衡化緩衝液は、少なくとも約10mM、15mM、または20mM、かつ最大で約25mM、30mM、50mM、または100mMのリン酸ナトリウムを、少なくとも約6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、または7.9、かつ最大で約8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、または9.0のpHで、含む。そのほかに、緩衝液は、限定されるものではないが、酸化的損傷から保護するために、2−メルカプトエタノール(BME)、ジチオトレイトール(DDT)、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)などの還元剤、内因性プロテアーゼによる標的ポリペプチドの分解を阻害するために、限定されるものではないが、ロイペプチン、ペプスタチンA、およびフェニルメタンスルホニルフルオリド(PMSF)をはじめとするプロテアーゼ阻害剤、メタロプロテアーゼを不活性化するために、限定されるものではないが、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびエチレングリコール四酢酸(EGTA)をはじめとする金属キレート化剤、タンパク質構造を安定化するために、限定されるものではないが、グリセロール、界面活性剤、および糖をはじめとするオスモライト、または溶解性を向上させるために、限定されるものではないが、NaCl、KCl、(NH4)2SO4などの塩をはじめとするイオン性安定化剤を含めて、タンパク質の純度、安定性、および機能を向上させるために、1種以上の添加剤を含みうる。一実施形態では、カラムは、組換え産生ポリペプチドをカラムに充填する前に、少なくとも約5かつ最大で約10または20カラム体積の平衡化緩衝液を用いて、平衡化される。
一実施形態では、清澄化細胞培養上清は、カラム上に充填される。一実施形態では、清澄化細胞培養上清は、平衡化緩衝液でカラムを平衡化した後、カラム上に充填される。さらなる実施形態では、清澄化細胞培養上清は、充填緩衝液と組み合わせてカラム上に充填される。「充填緩衝液」とは、標的をカラムに充填する前に標的ポリペプチドを含む組成物と組み合わされる緩衝液を意味する。一般的には、標的ポリペプチドは、少なくとも約1mg/ml、5mg/ml、10mg/ml、15mg/ml、20mg/ml、または25mg/ml、かつ最大で約30mg/ml、35mg/ml、40mg/ml、45mg/ml、50mg/ml、75mg/ml、または100mg/mlの濃度で充填される。一実施形態では、清澄化細胞培養上清は、標的ポリペプチドの所望の濃度を達成するためにおよび/または溶液のpHを調整するために、充填緩衝液で約1:1、1:2、または1:3の比に希釈される。他の実施形態では、清澄化細胞培養上清は、カラム上に直接充填される(すなわち、上清は、充填緩衝液で希釈されない)。一実施形態では、カラムは、清澄化細胞培養上清を充填した後、平衡化緩衝液で再平衡化される。より特定的な実施形態では、カラムは、標的ポリペプチドがカラム上に充填された後、少なくとも約5かつ最大で約10または20カラム体積の平衡化緩衝液または充填緩衝液で再平衡化される。一般的には、標的ポリペプチドは、少なくとも約6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、または7.9、かつ最大で約8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、または9.0のpHでプロテインAカラム上に充填される。いくつかの実施形態では、充填緩衝液は、平衡化緩衝液と同一である。他の実施形態では、充填緩衝液および平衡化緩衝液は、同一ではない。他の実施形態では、充填緩衝液はまた、充填後にカラムを洗浄するための洗浄緩衝液としても使用される。
一実施形態では、充填緩衝液は、緩衝剤、たとえば、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(「トリス」と呼ばれることが多い)(pH範囲5.8〜8.0)、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)(pH範囲6.8〜8.2)、3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)(pH範囲6.5〜7.9)、または他のリン酸塩緩衝剤、たとえば、リン酸ナトリウムまたはリン酸塩−クエン酸塩緩衝剤(pH5.8〜8.0)を、少なくとも約10mM、20mM、30mM、40mM、または50mM、かつ最大で約60mM、70mM、80mM、90mM、または100mMの濃度で、含む。一実施形態では、緩衝溶液のpHは、塩酸(HCl)や水酸化ナトリウム/水酸化カリウム(NaOH/KOH)などの適切な酸または塩基を用いて調整可能である。抗体精製に使用する場合、充填緩衝液のpHは、一般的には、少なくとも約6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、または7.9、かつ最大で約8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、または9.0に調整される。より特定的な実施形態では、充填緩衝液は、少なくとも約10mM、15mM、または20mM、かつ最大で約25mM、30mM、50mM、または100mMのリン酸ナトリウムを含み、かつ少なくとも約6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、または7.9、かつ最大で約8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、または9.0のpHを有する。一実施形態では、カラムは、少なくとも約5かつ最大で約10または20カラム体積の平衡化緩衝液または充填緩衝液を用いて充填した後、再平衡化される。そのほかに、平衡化緩衝液は、限定されるものではないが、酸化的損傷から保護するために、2−メルカプトエタノール(BME)、ジチオトレイトール(DDT)、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)などの還元剤、内因性プロテアーゼによる標的ポリペプチドの分解を阻害するために、限定されるものではないが、ロイペプチン、ペプスタチンA、およびフェニルメタンスルホニルフルオリド(PMSF)をはじめとするプロテアーゼ阻害剤、メタロプロテアーゼを不活性化するために、限定されるものではないが、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびエチレングリコール四酢酸(EGTA)をはじめとする金属キレート化剤、タンパク質構造を安定化するために、限定されるものではないが、グリセロール、界面活性剤、および糖をはじめとするオスモライト、または溶解性を向上させるために、限定されるものではないが、NaCl、KCl、(NH4)2SO4などの塩をはじめとするイオン性安定化剤を含めて、タンパク質の純度、安定性、および機能を向上させるために、1種以上の添加剤を含みうる。
「洗浄緩衝液」という用語は、標的組成物をカラムに充填した後、かつ組換え産生標的ポリペプチドの溶出前、カラム材料を通り抜ける緩衝液を意味する。洗浄緩衝液は、標的の実質的溶出を伴うことなく、1種以上の汚染物質、たとえば、宿主細胞タンパク質をカラム材料から除去するように機能しうる。一般的には、洗浄緩衝液は、少なくとも約6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、または7.9、かつ最大で約8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、または9.0のpHを有する。一実施形態では、プロセスは、1種の洗浄緩衝液を含み、カラムは、少なくとも約5または最大で約10もしくは20カラム体積の単一洗浄緩衝液を用いて洗浄される。他の実施形態では、プロセスは、2種以上の洗浄緩衝液を含みうる。たとえば、プロセスは、2つの異なる洗浄緩衝液を含みうる。たとえば、プロセスは、少なくとも約5または最大で約10もしくは20カラム体積の第1の洗浄緩衝液を用いてカラムを洗浄する第1の洗浄工程と、少なくとも約5または最大で約10もしくは20カラム体積の第2の洗浄緩衝液カラムを洗浄する第2の洗浄工程と、を含みうる。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、平衡化緩衝液と同一である。他の実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、平衡化緩衝液とは異なる。
さらなる実施形態では、プロテインA精製からの溶出液中の宿主細胞タンパク質(HCP)の残留レベルが低減される精製プロセスを記載する。より特定的な実施形態では、残留HCPレベルは、プロテインAカラムで使用される洗浄緩衝液中に脂肪酸を組み込むことにより低減される。一実施形態では、宿主細胞タンパク質から組換え産生ポリペプチドを分離する方法を記載する。他の実施形態では、組換え産生ポリペプチドの安定性を向上させる方法を記載する。他の実施形態では、組換え産生ポリペプチドを含有する製剤のプロテアーゼ汚染を低減する方法を提供する。
一般的には、短鎖脂肪酸、たとえば、約6炭素原子未満の鎖長を有する脂肪酸は、溶出液中のHCPのレベルを有意に改変しない。しかしながら、脂肪酸の鎖長を増加させると、HCPの低減が観測される。特定的には、中鎖長(すなわち、約6炭素原子〜約12炭素原子)の脂肪酸を洗浄緩衝液中に組み込むと、溶出液中に観測されるHCPの量は、有意に低減される。プロテインA洗浄緩衝液中に組み込むのに好適な脂肪酸または脂肪酸塩の例としては、限定されるものではないが、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、またはそれらの組合せおよび塩を含めて、少なくとも約6、7、8、または9炭素原子、かつ最大で約10、11、または12炭素原子の鎖長を有する脂肪酸またはその脂肪酸塩が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一実施形態では、脂肪酸は、少なくとも約25mMまたは50mM、かつ最大で約75mM、100mM、125mM、150mM、または200mMの濃度で洗浄緩衝液中に含まれる。一実施形態では、洗浄緩衝液は、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(「トリス」と呼ばれることが多い)(pH範囲5.8〜8.0)、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)(pH範囲6.8〜8.2)、3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)(pH範囲6.5〜7.9)などの緩衝剤を用いて調製された脂肪酸溶液を含み、脂肪酸は、少なくとも約25mMまたは50mM、かつ最大で約75mM、100mM、125mM、150mM、または200mMの濃度を有し、かつ緩衝剤は、少なくとも約10mM、25mM、50mM、または75mM、かつ最大で約100mM、125mM、または150mMの濃度を有し、かつ溶液は、少なくとも約6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、または7.9、かつ最大で約8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、または9.0のpHを有する。一実施形態では、緩衝溶液のpHは、塩酸(HCl)や水酸化ナトリウム/水酸化カリウム(NaOH/KOH)などの適切な酸または塩基を用いて調整可能である。
理論により拘束されることを望むものではないが、脂肪酸は、抗体上の結合部位に対してHCPとの競合に打ち勝ってHCPを除去すると考えられる。たとえば、宿主細胞タンパク質のレベルは、脂肪酸を含まない対照緩衝液で洗浄されたカラムから得られる溶出液中の宿主細胞タンパク質のレベルの75%、50%、25%、10%、さらには5%程度の低さに低減することが可能である。他の実施形態では、宿主細胞タンパク質のレベルは、脂肪酸を含まない洗浄液を用いて得られる宿主細胞タンパク質のレベルと比較して、少なくとも1/2、1/3、1/4、1/5、1/10、1/15、1/20、1/25、かつ最大で1/30、1/35、1/40、1/45、または1/50に低減することが可能である。
他の実施形態では、プロテインA洗浄液中に脂肪酸を組み込むことにより、プロテインA精製から得られる組換え産生ポリペプチドたとえば抗体の安定性を向上させることが可能である。一実施形態では、プロテインA洗浄液中に脂肪酸を組み込むことにより、プロテアーゼ活性が低減され、これにより、組換え産生ポリペプチドたとえば組換え産生抗体の安定性を向上させることが可能である。一実施形態では、プロテインA洗浄液中に脂肪酸を組み込むことにより、溶出液中またはプロテインA精製工程から得られる組換え産生ポリペプチドを含有する下流の製剤中のプロテアーゼ、たとえば、セリンプロテアーゼ、アスパルチルプロテアーゼたとえばカテプシンD、システインプロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、およびアミノペプチダーゼの活性が低減される。プロテアーゼ活性の低減は、限定されるものではないが、Molecular Probes(Eugene,OR)製のEnzChek(登録商標)プロテアーゼアッセイキットE6638を含めて、任意の好適な感度のアッセイを用いて測定可能である。また、アスパルチルプロテアーゼのカテプシンDやセリンプロテアーゼのトリプシンなどのプロテアーゼの対照調製物に対して、>10ng/mLのレベルを確実に検出または定量できる任意のアッセイを使用しうる。
他の実施形態では、プロテインA洗浄液中に脂肪酸を組み込むことにより、溶出液中またはプロテインA精製工程から得られる組換え産生ポリペプチドを含有する下流の製剤中の、産物の安定性に関連付けられる粒子形成が低減される。他の実施形態では、プロテインA洗浄液中に脂肪酸を組み込むことにより、溶出液中またはプロテインA精製工程から得られる組換え産生ポリペプチドを含有する下流の製剤中の、産物の安定性に関連付けられる遅延発生粒子形成が低減される。粒子形成は、目視検査により決定可能である。たとえば、粒子、透明性/乳光、および色の目視検査は、それぞれ、欧州薬局方(PhEur)セクション2.9.20、2.2.1、および2.2.2に適合する手順に基づいて行うことが可能である。サンプル中の粒子レベルは、一連の硫酸バリウム目視粒子標準と比較可能である。一例として、使用可能な標準は、「目に見える粒子がない」(0)、「目に見える粒子が実際上ない」4つの段階(1〜4)、および「目に見える粒子を含有する」3つの段階(5、6、および7)を含む。一実施形態では、「目に見える粒子を含有する」と称されるサンプルはいずれも、「不合格」として処理される。一実施形態では、乳光は、Hache−Lange(Loveland,CO)から入手される安定化ホルマジン標準(2660642)の希釈液との比較により評価可能である。色は、Sigma−Fluke(St.Louis,MO)製の標準(83952)との比較により評価可能である。本明細書で用いられる場合、「遅延発生」という用語は、初期の製剤では観測されないが、一定期間後、たとえば、1ヶ月後、2ヶ月後、3ヶ月後、6ヶ月後、または最大で12ヶ月後、18ヶ月後、もしくは24ヶ月後に生じる粒子形成を意味する。一実施形態では、組換え産生ポリペプチドを含有する製剤を、約0℃、5℃、もしくは10℃または約0℃、5℃、もしくは10℃以上かつ約25℃もしくは40℃または約25℃もしくは40℃以下の温度で、貯蔵した場合、粒子形成が低減される。
他の実施形態では、プロテインA洗浄液中に脂肪酸を組み込むことにより、溶出液中または下流の製剤中の、産物の安定性にも関連付けられるポリペプチドのフラグメント化が低減される。一実施形態では、少なくとも1つのプロテインA洗浄液中に脂肪酸が組み込まれた精製プロセスの下流の製剤中の組換え産生ポリペプチドは、40℃で貯蔵した場合、1ヶ月間あたり5%、4.5%、4%、3.5%、3%、2.5%、2%、1.5%、1%、0.95%、0.90%、0.80%、または0.75%よりも少ないフラグメント化率を有する。ポリペプチドのフラグメント化を検出する方法は公知であり、たとえば、逆相高性能液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)が挙げられる。
脂肪酸に加えて、洗浄緩衝液の他の要素が、溶出液中に検出されるHCPのレベルに影響を及ぼしうる。特定的には、洗浄緩衝液のpHを増加させると、HCPレベルが減少しうる。そのほかに、洗浄緩衝液中の塩化ナトリウムなどの塩の濃度もまた、溶出液中に検出されるHCPレベルに影響を及ぼしうる。一般的には、塩または塩化ナトリウムの濃度が増加すると、溶出液中のHCPレベルは減少する。一実施形態では、洗浄緩衝液は、少なくとも約6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、または7.9、かつ最大で約8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、または9.0のpHを有し、かつ少なくとも約0.25M、0.5M、1M、1.25M、1.5M、1.75M、または2Mの塩たとえば塩化ナトリウム、かつ最大で約2.0M、2.25M、2.5M、2.75M、または3.0Mの塩たとえば塩化ナトリウムと、少なくとも約25mMまたは50mM、かつ最大で75mM、100mM、125mM、150mM、または200mMの濃度で脂肪酸と、を含む。一実施形態では、洗浄緩衝液は、約8〜約9のpHで約50mM〜約100mMのカプリル酸ナトリウムを含む。他の実施形態では、洗浄緩衝液は、約8〜約9のpHで約50mM〜約100mMのカプリル酸ナトリウムと約2.0M〜約2.5Mの塩化ナトリウムとを含む。より特定的な実施形態では、洗浄緩衝液は、約8.0〜約9.0のpHで100mMトリス中に約50mM〜約100mMのカプリル酸ナトリウムを含む。より特定的な実施形態では、洗浄緩衝液は、約8.0〜約9.0のpHで100mMトリス中に約50mM〜約100mMのカプリル酸ナトリウムと、約2.0M〜約2.5Mの塩化ナトリウムと、を含む。
そのほかに、洗浄緩衝液は、限定されるものではないが、酸化的損傷から保護するために、2−メルカプトエタノール(BME)、ジチオトレイトール(DDT)、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)などの還元剤、内因性プロテアーゼによる標的ポリペプチドの分解を阻害するために、限定されるものではないが、ロイペプチン、ペプスタチンA、およびフェニルメタンスルホニルフルオリド(PMSF)をはじめとするプロテアーゼ阻害剤、メタロプロテアーゼを不活性化するために、限定されるものではないが、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびエチレングリコール四酢酸(EGTA)をはじめとする金属キレート化剤、タンパク質構造を安定化するために、限定されるものではないが、グリセロール、界面活性剤、および糖をはじめとするオスモライト、または溶解性を向上させるために、限定されるものではないが、NaCl、KCl、(NH4)2SO4などの塩をはじめとするイオン性安定化剤を含めて、タンパク質の純度、安定性、および機能を向上させるために、1種以上の添加剤を含みうる。
「溶出緩衝液」という用語は、標的ポリペプチドをカラムから溶出させるために(すなわち、除去するために)使用される緩衝液を意味する。溶出pHは、カラムに対するポリペプチドの結合親和性に依存して変化しうる。いくつかの抗体は、より高い結合親和性を呈し、かつより低い溶出pHを必要としうる。一般的には、溶出緩衝液のpHは、充填緩衝液のpH未満である。典型的には、溶出緩衝液は、少なくとも約2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、または3.5、かつ最大で、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.5、4.7、4.8、4.9、または5.0のpHを有する。溶出緩衝液の例としては、少なくとも約25mMまたは50mMかつ最大で約100mM、150mM、または200mMの濃度でクエン酸ナトリウム、クエン酸、または酢酸を含む緩衝液が挙げられる。一実施形態では、溶出緩衝液は、少なくとも約25mMまたは50mMかつ最大で約100mM、150mM、または200mMのクエン酸ナトリウムを含み、かつ少なくとも約2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、または3.5、かつ最大で約3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.5、4.7、4.8、4.9、または5.0のpHを有する。そのほかに、溶出緩衝液は、限定されるものではないが、酸化的損傷から保護するために、2−メルカプトエタノール(BME)、ジチオトレイトール(DDT)、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)などの還元剤、内因性プロテアーゼによる標的ポリペプチドの分解を阻害するために、限定されるものではないが、ロイペプチン、ペプスタチンA、およびフェニルメタンスルホニルフルオリド(PMSF)をはじめとするプロテアーゼ阻害剤、メタロプロテアーゼを不活性化するために、限定されるものではないが、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびエチレングリコール四酢酸(EGTA)をはじめとする金属キレート化剤、タンパク質構造を安定化するために、限定されるものではないが、グリセロール、界面活性剤、および糖をはじめとするオスモライト、または溶解性を向上させるために、限定されるものではないが、NaCl、KCl、(NH4)2SO4などの塩をはじめとするイオン性安定化剤を含めて、タンパク質の純度、安定性、および機能を向上させるために、1種以上の添加剤を含みうる。一実施形態では、標的分子は、少なくとも5かつ最大で10または20カラム体積の溶出緩衝液を用いて溶出される。溶出液は、当業者に周知の技術を用いて、たとえば、OD280nmに設定された分光光度計を用いて吸光度をモニターすることにより、モニター可能である。一実施形態では、プロテインA精製工程は、少なくとも約70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、または85%、かつ最大で約86%、87%、88%、89%、90%、または95%の回収率を有する。回収率は、たとえば、カラム上に充填された量を基準にして溶出液中のタンパク質のパーセントを計算することにより、決定可能である。
ポリッシングクロマトグラフィー工程104、105は、ウイルス、宿主細胞タンパク質(HCP)、内毒素、およびDNAのさらなるクリアランスを提供するとともに、凝集体、望ましくない産物変異体、および他の副次的汚染物質の除去を支援する。ポリッシング工程104、105は、一般的には、1つ以上のクロマトグラフィー工程、たとえば、イオン交換クロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー、疎水相互作用クロマトグラフィー、およびそれらの組合せを含む。
一実施形態では、精製プロセスは、少なくとも1つのイオン交換クロマトグラフィー工程を含む。「イオン交換クロマトグラフィー」という用語は、共有結合荷電置換基を保有する固定マトリックスを用いたクロマトグラフィープロセスを意味する。「イオン交換材料」は、共有結合されていないその対イオンを周囲溶液中の類似荷電の結合パートナーまたはイオンと交換する能力を有する。ポリペプチドは、正電荷または負電荷のいずれかを有しうる多数の官能基を有する。イオン交換クロマトグラフィーは、移動相のpHおよび/またはイオン濃度に依存する正味電荷に基づいてポリペプチドを分離する。したがって、ポリペプチドは、移動相のpHおよび/またはイオン濃度を調整することにより分離可能である。いくつかの実施形態では、標的ポリペプチドは、カラムによりキャプチャーされ、次いで、溶出される(「結合・溶出」モードとも呼ばれる)。他の実施形態では、標的ポリペプチドは、カラムを貫流し、汚染物質は、結合される(「フロースルーモード」とも呼ばれる)。イオン交換材料からの溶出は、一般的には、イオン交換マトリックスの荷電部位に対して組換えポリペプチドと競合するように緩衝液のイオン強度を増加させることにより、達成される。溶出プロセスは、漸進的(グラジエント溶出)または段階的(ステップ溶出)であり、溶出液は、OD280nmに設定されたUV分光光度計を用いてモニター可能である。
対イオンの電荷に依存して、「イオン交換クロマトグラフィー」は、「陽イオン交換」、「陰イオン交換」、または「混合モードイオン交換」と呼ぶこともできる。「陽イオン交換」という用語は、カラムを通過または貫流する水性溶液中の陽イオンとの交換に利用可能な遊離陽イオンを有して負に荷電した固相を有するクロマトグラフィー法を意味する。陽イオン交換クロマトグラフィーは、標的ポリペプチドを正に荷電する条件下に標的が維持される場合、組換えポリペプチドを精製するために使用可能である。たとえば、溶液pHがポリペプチドの等電点未満になるように、溶液を調整することが可能である。標的ポリペプチドに加えて、他の正荷電不純物もまた、陽イオンカラム樹脂に結合されうる。このように、標的ポリペプチドは、樹脂への不純物の結合を維持した状態で標的ポリペプチドを溶出させる条件下(たとえば、pHおよび塩濃度)でカラムから溶出させることにより、回収可能である。陽イオン交換樹脂は、スルホプロピル基、スルホエチル基、スルホイソブチル基などの強酸性リガンドまたはカルボキシル基などの弱酸性リガンドを含みうる。一般に使用される陽イオン交換樹脂の例としては、カルボキシメチル(CM)樹脂、スルホエチル(SE)樹脂、スルホプロピル(SP)樹脂、リン酸塩(P)樹脂、およびスルホン酸塩(S)樹脂が挙げられる。
「陰イオン交換」という用語は、固相を通過または貫流する水性溶液中の陰イオンとの交換に利用可能な遊離陰イオンを有して正に荷電した固相を有するクロマトグラフィー法を意味する。陰イオン交換カラムは、典型的には、負荷電不純物が樹脂に結合されると同時に正荷電標的ポリペプチドがフロースルーストリーム中に回収されるように、フロースルーモードで操作される。しかしながら、陰イオン交換カラムはまた、標的ポリペプチドおよび除去される不純物のpIに依存して、結合・溶出モードで使用されうる。陰イオン交換に使用される正荷電基の例としては、ジエチルアミノエチル(DEAE)やジメチルアミノエチル(DMAE)などの弱塩基性基、および第4級アミン(Q)基、トリメチルアンモニウムエチル(TMAE)基、第4級アミノエチル(QAE)基などの強塩基性基が挙げられる。
一実施形態では、プロテインAキャプチャー工程102から得られる溶出液は、1つ、2つ以上、または3つ以上のイオン交換分離に付され、第2のイオン交換分離工程は、第1のイオン交換分離と反対の電荷に基づく分離を含む。たとえば、キャプチャー102の後、陰イオン交換工程104が利用される場合、第2のイオン交換クロマトグラフィー工程105は、陽イオン交換工程でありうる。反対に、陽イオン交換工程104がキャプチャー102に続く場合、その工程に陰イオン交換工程105が続くであろう。他の選択肢として、他の実施形態では、精製スキーム100は、陽イオン交換工程のみまたは陰イオン交換工程のみを含みうる。
一実施形態では、精製スキーム100は、ポリッシング工程104または105として少なくとも1つの疎水相互作用分離を含む。「疎水相互作用クロマトグラフィー」(HIC)とは、ポリペプチドとクロマトグラフィー樹脂の固相に結合された疎水リガンドとの可逆的相互作用に基づくクロマトグラフィー分離を意味する。疎水相互作用クロマトグラフィーは、多くの場合、抗体凝集体などのタンパク質凝集体およびプロセス関連不純物を除去するために使用される。HIC時、標的ポリペプチドは、高い塩濃度でカラムに結合し、塩濃度の減少により溶出される。標的ポリペプチドと疎水リガンドとの相互作用は、高いイオン強度の緩衝液を用いることにより増強されるので、HICは、イオン交換クロマトグラフィーの後で使用するのに好適な精製工程でありうる。種々のイオンは、それらが疎水相互作用(塩析効果)を促進するか、または水の構造の撹乱(カオトロピック効果)により疎水相互作用を弱めるかに依存して、いわゆる疎溶媒性系列(soluphobic series)で並べることが可能である。
他の実施形態では、精製スキームは、ポリッシング工程104または105として「疎水電荷誘導クロマトグラフィー」(HCIC)を含む。HCICは、低pHでイオン化するリガンドのpH依存性挙動に基づく。HCICは、高い塩濃度を必要とすることなく標的ポリペプチドとカラム材料との疎水相互作用が可能になるように、高密度でヘテロ環式リガンドを利用する。HCICでの溶出は、イオン化性リガンドと結合タンパク質との電荷反発を生じるようにpHを低下させることにより達成可能である。
一実施形態では、精製スキーム100は、たとえば、内在性レトロウイルスおよび外来性ウイルスを除去するために、1つ以上のウイルス不活性化工程103および/またはウイルスクリアランス工程106を含む。一実施形態では、ウイルス不活性化工程103は、標的分子のキャプチャー102の後、組み込まれうる。ウイルス不活性化技術は、公知であり、たとえば、熱不活性化(パスツール殺菌)、pH不活性化、溶媒/界面活性剤を用いた脂質エンベロープの撹乱、UVおよびγ線照射、ならびに化学的不活性化剤の使用が挙げられる。一実施形態では、ウイルス不活性化は、混合物を低pHで一定時間インキュベートすることと、pHを中和することと、濾過により微粒子を除去することと、を含む、低pHウイルス不活性化工程を含む。一実施形態では、低pHウイルス不活性化は、組換えポリペプチドを約2〜約5または約3〜約4または約3.3〜約3.8のpHに調整することを含む。サンプル混合物のpHは、クエン酸、酢酸、カプリル酸、または他の好適な酸を含めて、任意の好適な酸により低下させうるが、これらに限定されるものではない。pHレベルの選択は、組換え産生ポリペプチドおよび他の緩衝液成分の安定性プロファイルに依存する。典型的には、調整された溶液は、少なくとも約30または45分間かつ最大で約1、1.5、または2時間にわたり、典型的には室温でインキュベートされる。ウイルス不活性化後、組換えポリペプチド溶液のpHは、精製プロセスを継続する前に、より中性のpH、たとえば、約4.5〜約8.5または約4.5〜約5.5に調整可能である。
他の実施形態では、ウイルス濾過などのウイルスクリアランス工程105が精製スキームに含まれうる。ウイルス保持フィルターは、市販されており、親水ポリエーテルスルホン(PES)フィルター、親水ポリビニリデン(PVDF)フィルター、再生セルロースフィルターなどの限外濾過器または精密濾過器が挙げられる。除去されるウイルスのサイズに基づいて、ウイルスフィルターをレトロウイルスフィルターおよびパルボウイルスフィルターに分類することが可能である。
一実施形態では、精製スキームは、抗体サンプルのさらなる精製および濃縮を行うために、限外濾過(UF)および/または透析濾過(DF)工程107を含む。UF/DFにより、標的ポリペプチドの濃度を増加させたり、さらには緩衝塩を特定の製剤緩衝剤に置き換えたりすることが可能である。限外濾過(UF)とは、静水圧により液体が半透膜に押圧されるタイプの膜濾過を意味する。懸濁固体および高分子量溶質たとえば標的ポリペプチドは、保持物中に保持され、一方、水および低分子量溶質は、膜を通過して濾液中に保持される。このようにして、液体および塩が除去されるので、標的抗体が濃縮される。一般的には、濃縮物中の低分子量組成物は、一定に維持されるので、濃縮溶液のイオン強度は、比較的一定した状態を維持する。「透析濾過」とは、抗体などのタンパク質、ペプチド、核酸、および他の生体分子を含有する溶液から、塩または緩衝成分の濃度を除去、置換、または低減するために、限外濾過膜を使用する方法を意味する。連続透析濾過(定体積透析濾過とも呼ばれる)は、組換え産生ポリペプチドを含有する製剤を形成するために、水または新しい緩衝液たとえば製剤緩衝液を保持物に添加することにより、保持物中に最初からあった緩衝塩(または他の低分子量種)を洗浄除去することを含む。典型的には、新しい緩衝液は、保持物の体積および産物の濃度が透析濾過時にあまり変化しないように、濾液を生成するのと同一の速度で添加される。
製剤
一実施形態では、精製組換え産生ポリペプチドは、液状製剤で調製される。より特定的な実施形態では、液状製剤中の組換え産生ポリペプチドは、抗体または抗体フラグメントである。一実施形態では、液状製剤は水などの水性担体を含む。一実施形態では、液状製剤は無菌である。他の実施形態では、液状製剤は、均一である。他の実施形態では、製剤は等張性である。一実施形態では、液状製剤は、少なくとも約1mg/ml、5mg/ml、10mg/ml、20mg/ml、25mg/ml、50mg/ml、75mg/ml、100mg/ml、125mg/ml、150mg/ml、175mg/ml、200mg/ml、250mg/ml、または300mg/mlの精製組換え産生ポリペプチドを含む。一実施形態では、製剤は、少なくとも約3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、または6.5、かつ最大で約6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.5、8.0、8.5、または9.0のpHを有する。製剤はまた、緩衝剤、糖、塩、界面活性剤、可溶化剤、希釈剤、結合剤、安定化剤、親油性溶媒、アミノ酸、キレート化剤、保存剤、またはそれらの組合せをはじめとする通常の賦形剤および/または添加剤を含みうるが、これらに限定されるものではない。
他の実施形態では、精製組換え産生ポリペプチドは、凍結乾燥製剤として調製される。より特定的な実施形態では、凍結乾燥製剤中の組換え産生ポリペプチドは、抗体または抗体フラグメントである。本明細書で用いられる場合、「凍結乾燥」という用語は、少なくとも50%の湿分が除去される凍結乾燥などの乾燥手順に付された製剤を意味する。一実施形態では、凍結乾燥製剤は、凍結乾燥保護剤を含む。「凍結乾燥保護剤」という用語は、凍結乾燥時および後続の貯蔵時、ポリペプチドの化学的および/または物理的不安定性を有意に防止または低減する、対象の組換え産生ポリペプチドと組み合わされる分子を意味する。凍結乾燥保護剤としては、糖およびその対応する糖アルコール、アミノ酸、たとえば、グルタミン酸一ナトリウム、アルギニン、またはヒスチジン、メチルアミン、たとえば、ベタイン、リオトロピック塩、たとえば、硫酸マグネシウム、ポリオール、たとえば、三価以上の高分子量糖アルコール、たとえば、グリセリン、デキストラン、エリトリトール、グリセロール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、およびマンニトール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、プルロニック(登録商標)、ならびにそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されるものではない。凍結乾燥保護剤の追加の実施例としては、グリセリンおよびゼラチン、ならびに糖類のメリビオース、メレジトース、ラフィノース、マンノトリオース、およびスタキオースが挙げられるが、これらに限定されるものではない。還元糖の例としては、グルコース、マルトース、ラクトース、マルツロース、iso−マルツロース、およびラクツロースが挙げられるが、これらに限定されるものではない。非還元糖の例としては、糖アルコールおよび他の直鎖状ポリアルコールから選択されるポリヒドロキシ化合物の非還元グリコシドが挙げられるが、これらに限定されるものではない。糖アルコールの例としては、モノグリコシド、二糖、たとえば、ラクトース、マルトース、ラクツロース、およびマルツロースの還元により得られる化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。グリコシド側基は、グルコシドまたはガラクトシドでありうる。糖アルコールの追加の例としては、グルシトール、マルチトール、ラクチトール、およびiso−マルツロースが挙げられるが、これらに限定されるものではない。特定の実施形態では、トレハロースまたはスクロースが凍結乾燥保護剤として使用される。一実施形態では、凍結乾燥保護剤は、「凍結乾燥保護量」で製剤に添加される。つまり、凍結乾燥保護量の凍結乾燥保護剤の存在下でのタンパク質の凍結乾燥の結果、タンパク質は、凍結乾燥時および貯蔵時、その物理的および化学的な安定性および完全性を本質的に維持する。「再構成」製剤とは、組換え産生ポリペプチドが再構成製剤中に分散されるように凍結乾燥製剤を希釈液中に溶解させることにより調製された製剤のことである。再構成製剤は、患者に投与するのに好適である。「希釈液」としては、無菌水、注入用静菌水(BWFI)、pH緩衝溶液(たとえば、リン酸緩衝生理食塩水)、無菌生理食塩水溶液、リンゲル液、またはデキストロース溶液をはじめとする薬学的に許容可能な希釈液が挙げられるが、これらに限定されるものではない。代替実施形態では、希釈液は、塩および/または緩衝剤の水性溶液を含みうる。一実施形態では、組換えポリペプチドは、少なくとも約10mg/ml、20mg/ml、30mg/ml、40mg/ml、または50mg/ml、かつ最大で約60mg/ml、70mg/ml、80mg/ml、90mg/ml、または100mg/mlの濃度で凍結乾燥製剤に含まれる。より特定的な実施形態では、凍結乾燥製剤は、少なくとも約10mM、15mM、20mM、または25mM、かつ最大で約30mM、40mM、または50mMの濃度で、緩衝剤としてヒスチジン、アルギニン、グルタミン酸などのアミノ酸を含む。一実施形態では、凍結乾燥製剤は、少なくとも約50mM、100mM、150mM、175mM、200mM、または225mM、かつ最大で約250mMまたは300mMの濃度でトレハロースやスクロースなどの糖を含む。一実施形態では、凍結乾燥製剤は、少なくとも約0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、または0.05%(w/v)、かつ最大で約0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、または0.1%(w/v)のポリソルベート80などの界面活性剤を含む。一実施形態では、凍結乾燥製剤は少なくとも約6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8または7.9、かつ最大で約8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、または9.0のpHを有する。
一実施形態では、組換え産生ポリペプチドは、非経口投与に供すべく製剤化される。一実施形態では、製剤は、注射可能である。一実施形態では、組換え産生ポリペプチドは、静脈内投与、皮下投与、または筋肉内投与に供すべく製剤化される。
本明細書に記載されるように精製された組換え産生ポリペプチドを用いて調製された製剤は、製造時、調製時、輸送時、および貯蔵時、安定性、低レベル〜検出不能レベルの抗体フラグメント化、低レベル〜検出不能レベルの粒子形成(すなわち、目に見える粒子を含まないまたは実際上含まないかつ透明〜わずかに乳白色の状態を維持する)、低レベル〜検出不能レベルのプロテアーゼ活性、および組換え産生ポリペプチドの生物学的活性のごくわずか〜ゼロの損失を呈する。
本明細書で用いられる「低レベル〜検出不能レベルのフラグメント化」という用語は、高性能サイズ排除クロマトグラフィー(HPSEC)により決定したときに、単一ピークが、たとえば、約80%、約85%、90%、95%、98%、または99%未満の全長ポリペプチドを含有して非分解ポリペプチドを示し、かつそれぞれ約5%、4%、3%、2%、1%、または0.5%超のポリペプチドを有する他の単一ピークを含有していない、サンプルを意味する。他の実施形態では、製剤は、組換え産生ポリペプチドのフラグメント化の低減を呈する。一実施形態では、脂肪酸がプロテインA洗浄緩衝液中に組み込まれた組換え産生ポリペプチドを含む製剤は、少なくとも約1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、もしくは7日間、または少なくとも約1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、もしくは6週間、約40℃で貯蔵した後、RP−HPLCにより決定したときに、5%未満のフラグメント化ポリペプチドを含む。他の実施形態では、脂肪酸がプロテインA洗浄緩衝液中に組み込まれた組換え産生ポリペプチドを含む製剤は、少なくとも約1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、もしくは12週間、または少なくとも約1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、10ヶ月間、11ヶ月間、もしくは12ヶ月月間、約4℃または約5℃で貯蔵した後、RP−HPLAにより決定したときに、5%未満のフラグメント化ポリペプチドを含む。
本明細書で用いられる「低レベル〜検出不能レベルの粒子形成」という語句は、欧州薬局方(PhEur)セクション2.9.20、2.2.1、2.2.2などの好適な公定書に記載の方法に適合する手順に従って粒子および透明性/乳光を目視検査したときに、「目に見える粒子を含まないまたは実際上含まないかつ透明〜わずかに乳白色の状態を維持する」サンプル、または目視検査したときに、粒子が検出されない(すなわち、製剤が無色透明な状態を維持する)サンプルを意味する。一実施形態では、本明細書に記載されるように精製された組換え産生ポリペプチドを含む製剤は、少なくとも約1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、もしくは7日間、または少なくとも約1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、もしくは6週間、約40℃で貯蔵した後、目視検査により決定したときに、無色透明である。他の実施形態では、製剤は、少なくとも約1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、もしくは12週間、または少なくとも約1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、10ヶ月間、11ヶ月間、もしくは12ヶ月月間、約4℃または約5℃で貯蔵した後、目視検査により決定したときに、無色透明である。
本明細書で用いられる「低い〜検出不能なプロテアーゼ活性」という用語は、たとえば、EnzChek(登録商標)プロテアーゼアッセイキット(E6638、Molecular Probes,Eugene,OR)などの蛍光プロテアーゼアッセイを用いて、プロテアーゼ活性が検出限界未満(たとえば、約10ng/mL未満)であるサンプルを意味する。一実施形態では、本明細書に記載されるように精製された組換え産生ポリペプチドを含む製剤は、少なくとも約1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、もしくは7日間、または少なくとも約1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、もしくは6週間、約40℃で貯蔵した後、低い〜検出不能なプロテアーゼ活性を示す。他の実施形態では、製剤は、少なくとも約1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、もしくは12週間、または少なくとも約1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、10ヶ月間、11ヶ月間、もしくは12ヶ月月間、約4℃または約5℃で貯蔵した後、低い〜検出不能なプロテアーゼ活性を示す。
一実施形態では、製剤は、組換え産生ポリペプチドの安定性の向上を呈する。特定的には、プロテインA洗浄緩衝液中に脂肪酸を組み込むことにより、脂肪酸を含まないプロテインA洗浄緩衝液を用いて調製された製剤と比較して向上した安定性を有する抗体製剤が得られる。一実施形態では、本明細書に記載されるように精製された組換え産生ポリペプチドを含む製剤は、少なくとも約1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、もしくは7日間、または少なくとも約1週間2週間、3週間、4週間、5週間、もしくは6週間、または少なくとも約1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、もしくは6ヶ月間、約40℃で貯蔵した後、安定である。他の実施形態では、本明細書に記載されるように精製された組換え産生ポリペプチドを用いて調製された製剤は、少なくとも約1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、もしくは12週間、または少なくとも約1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、10ヶ月間、11ヶ月間、もしくは12ヶ月間、または少なくとも約1年間、2年間、3年間、4年間、5年間、6年間、7年間、8年間、9年間、10年間、11年間、もしくは12年間、約4℃または約5℃で貯蔵した後、安定である。
宿主細胞タンパク質の検出
宿主細胞タンパク質(HCP)濃度の残留レベルを決定する方法は、公知であり、たとえば、一次抗体が、組換えポリペプチドを生成するために使用された特定の宿主細胞、たとえば、CHO細胞およびE.コリ(E.coli)細胞から産生されるHCPに特異的である、免疫アッセイ、たとえば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)などを用いて、残留HCPレベルを検出することを含む。一次抗体は、当業者に公知の従来の方法に従って産生されうる。たとえば、一次抗体は、抗体産生に使用された宿主細胞の細胞溶解物に対して生成されうる。HCP免疫アッセイプラットフォームの1つは、Gyros(Warren,NJ)から市販されている。
プロテアーゼの検出
EnzChek(登録商標)プロテアーゼアッセイキット(E6638、Molecular Probes,Eugene,OR)を用いて、サンプルのプロテアーゼ活性を評価することが可能である。単一のpHまたは複数のpHでサンプルを読み取って、プロテアーゼ活性対pHのプロファイルを作成することが可能である。異なるプロテアーゼは、異なる活性対pHプロファイルを有するので、異なるpHレベルで測定すれば、サンプル中の多種多様なタイプのプロテアーゼを検出する能力が向上する。
他の実施形態では、約10%未満の誤差で、pH範囲4〜9にわたり、BODIPY蛍光アッセイを使用することが可能である。キット中の検出基質は、BODIPY(登録商標)−カゼインコンジュゲートである。消化カゼイン基質の色素標識フラグメントがサンプルの活性プロテアーゼにより放出される場合、色素の自己クエンチングの減少に起因して蛍光強度の増加が起こりうる。タンパク質サンプルは、典型的には4〜8の範囲内のpHで、20mMクエン酸リン酸緩衝液中に10倍希釈可能である。対応するプラセボを調製することが可能である。所望のpHが達成されるように20mMクエン酸と20mM第二リン酸ナトリウムとを混合することにより、クエン酸リン酸緩衝液を調製することが可能である。BODIPY(登録商標)−カゼインコンジュゲート検出基質を適切な緩衝液中に希釈して、4〜8の各pHで約10μg/mLの作用試薬を作製することが可能である。等体積(典型的には100μL)のサンプルおよび作用試薬を白色マイクロプレートのウェルに添加して、pH範囲4〜8にわたるアッセイサンプルおよび対応するプラセボをトリプリケート方式で作製することが可能である。サンプルをシールし、3〜5時間の典型的な持続時間にわたり40℃でインキュベートすることが可能である。485nmで色素蛍光を励起し、Molecular Devices SpectraMax(登録商標)蛍光プレートリーダー(Sunnyvale,CA)で495nmカットオフフィルターを用いて530nmの発光強度を記録することが可能である。次いで、サンプルの強度対pHを記録することが可能である。この方法の変動に基づく製造業者のガイドラインに従って、ブランクと比較して約20%未満のサンプル強度の増加は、プロテアーゼ活性に関して陰性であるとして処理可能である。サンプルの結果から緩衝液の分を引き算して、pHに対してプロットすることが可能であり、これを用いて、サンプルのプロテアーゼ活性の存在を決定することが可能である。多重反復試験を行って、低い読み値の変動を評価することが可能である。相対定量のために、カテプシンDやトリプシンなどの既知のプロテアーゼの対照調製物をコンパレーターとして使用することが可能である。プロテアーゼの存在を確認するために、プロテアーゼ阻害剤をサンプルに添加して、検出プロテアーゼ活性の相対的減少または排除を結果の確認に用いることが可能である。サンプル中のプロテアーゼの存在の診断に使用されるプロテアーゼ阻害剤の例としては、AEBSF、アプロチニン、ベスタチンHCl、E−64、EDTA、ロイペプチンを含有する広範なプロテアーゼ阻害剤カクテル(カタログNo.P2714、Sigma−Aldrich,St.Loius,MO)を1×提案濃度で使用することが挙げられうる。プロテアーゼ活性のさらなる確認のために、各個別の阻害剤を使用することも可能である。プロテアーゼ阻害剤は、市販されており、ThermoScientific(Rockford,IL)などの好適な供給業者から調達可能である。たとえば、AEBSF−HCl(セリンプロテアーゼを阻害する)、カタログNo.78431、アプロチニン(セリンプロテアーゼを阻害する)、カタログNo.78432、ベスタチン(Bestatin)(アミノペプチダーゼを阻害する)、カタログNo.78433、E−64(システインプロテアーゼを阻害する)、カタログNo.78434、ロイペプチン(セリンプロテアーゼおよびシステインプロテアーゼを阻害する)、カタログNo.78435、ペプスタチンA(アスパルチルプロテアーゼを阻害する)、カタログNo.78436、EDTA(エチレンジアミン四酢酸、メタロプロテアーゼを阻害する)。
以下の実施例は、本発明の実施を例示するために与えられている。それらは、本発明の全範囲を限定したり規定したりすることを意図したものではない。
実施例で利用される試薬は、市販されているか、または当技術分野で公知の商業的に利用可能な機器、方法、もしくは試薬を用いて調製可能である。実施例は、本発明の種々の態様および本発明に係る方法の実施を例示したものである。実施例は、本発明の多種多様な実施形態の網羅的説明を提供することを意図したものではない。したがって、明確に理解することを目的に、例示および実例により、本発明をやや詳細に説明してきたが、当業者であれば、添付の特許請求の趣旨または範囲から逸脱することなく多くの変更および修正を加えうることは、容易に分かるであろう。
本明細書に挙げた出版物、特許、および特許出願はすべて、あたかも個々の出版物、特許、または特許出願が具体的かつ個別的に明示されて参照により組み込まれたのと同程度まで、参照により本明細書に組み込まれる。
実施例1:HCPレベルに及ぼすpH、塩化ナトリウム、およびカプリル酸ナトリウムの影響
ヒトIL−18に特異的に結合するヒトIgG1モノクローナル抗体(NCIMB受託番号41786)の標準的精製プロセスでは、多量のHCP(すなわち、630ng/mg)が観測され、プロテインA精製でも他のプロセス工程でも排除されなかった。HCPレベルを低減する能力に関して、追加の洗浄液工程を評価した。特定的には、HCPクリアランス、回収率、および産物に及ぼす洗浄pH、洗浄塩化ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、およびそれらの組合せの影響を調べた。実験は、16の実験ランと標準的洗浄緩衝液を用いた追加のラン(実験17)とを含んでいた。実験洗浄液の組成は、表1に示される。表1の実験洗浄緩衝液はすべて、100mMトリス中に作製され、pHは、濃HClを用いて調整された。プロテインAクロマトグラフィー緩衝液は、表2に示されるように調製された。ランはすべて、20cmの床高さおよび3.93mLのカラム体積を有するMabSelect SuReカラム(C11−032 TRICORN、GE Healthcare)を用いて行われ、かつ表3に概説されるプロセスに従ってAKTA AVANTシステム(GE Healthcare)を用いて350cm/時(1.17mL/分)で一晩行われた。
プロテインAカラムから溶出させた後、溶出液を0.1MトリスでpH5.0に中和し、HCP分析のために1mLのサンプルを採取した。Millipore Steriflip(製品No.SCGP00525)を用いて溶出液を濾過し、高HCPレベルに関連付けられる沈殿物を除去した。濾過によるこの沈殿物の除去は、HCPレベルの低減に役立ちうる。濾過後、濃度決定、HCPアッセイ(濾過後)、およびHPSECのために、中和溶出液のさらなるサンプル採取を行った。280nmの吸着により、各サンプルの濃度を決定した。すべてのサンプルを1:20希釈したので、値に20を掛け算し(希釈を補正するため)、そして1.55の吸光係数(実験的に決定された)で割り算した。TSK−Gel G3000を備えAgilent HPLCシステムでサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)分析を行った。製剤をPBS中に約10mg/mLに希釈して25μLを注入することにより、250μgを注入した。CHO細胞由来のHCPを検出するために、アフィニティー精製ヒツジ抗血清を有するオープン免疫アッセイプラットフォーム(Gyros)を用いて、宿主細胞タンパク質に関してサンプルを解析した。蛍光プロテアーゼ検出キット(Pierce Biotechnology製23266)を使用し、基質としてFTC−カゼインを用いて、サンプルのタンパク質分解活性を測定した。キットの説明書に含まれる手順に従い、トリプシン標準曲線に対して等価なng/mL値として計算される単位で結果を報告した。結果は表4に示される。
表4に見られるように、純度は、各因子(pH、塩化ナトリウム、およびカプリル酸ナトリウム)により個別に有意な影響を受けた。そのほかに、カプリル酸ナトリウムと塩化ナトリウムとの相互作用が、結果から示唆される。
表5は、影響の有意性を示している(Prob>F値が0.05超のものは、有意でないと判定されるであろう)。
溶出液純度に及ぼす3つの因子(洗浄pH、塩化ナトリウム洗浄液、およびカプリル酸ナトリウム)の影響を図2に示す。洗浄塩化ナトリウムおよびカプリル酸ナトリウムの両方が中点値である場合、pHの増加が溶出液純度に影響を及ぼし、pHを7.0から9.0まで増加させると、0.6%の減少を示す(左上隅に表示)。図3は、カプリル酸ナトリウムの不在下で洗浄塩化ナトリウムを増加させたときの溶出液純度の減少を示している(灰色の線)。しかしながら、カプリル酸ナトリウムの存在下では、この作用が逆になり、洗浄塩化ナトリウムを増加させると純度が増加した(黒色の線)。そのほかに、個々の因子(洗浄塩化ナトリウムおよびカプリル酸ナトリウム)が回収率に有意な影響を及ぼしたことが、結果から示唆され、この場合も、カプリル酸ナトリウムと洗浄塩化ナトリウムとの相互作用として現れ、同様に、洗浄塩化ナトリウムと洗浄塩化ナトリウムとの二次相互作用にも現れうる。表6の最後の列は、影響の有意性を示している。
回収率に及ぼす洗浄塩化ナトリウムおよびカプリル酸ナトリウムの影響を図4に示す。洗浄塩化ナトリウムは、曲線により表される。すなわち、洗浄塩化ナトリウムとカプリル酸ナトリウムとの二次相互作用が現れる。図4の結果は、洗浄塩化ナトリウムおよびカプリル酸ナトリウムを増加させると、全回収率がそれぞれ2〜4%低減することを示している。図5は、カプリル酸ナトリウムの不在下で洗浄塩化ナトリウムを増加させると(左下)、回収率がわずかに増加したことを示している(灰色の線)。しかしながら、カプリル酸ナトリウムの存在下では、回収率の低減が見られた(黒色の線)。カプリル酸ナトリウムおよび洗浄塩化ナトリウムの影響は、右上隅に示されている。すなわち、洗浄塩化ナトリウムが存在しないと、カプリル酸ナトリウムの増加に伴って回収率が増加した(灰色の線)。しかしながら、多量の洗浄塩化ナトリウムの存在下では、回収率の減少が見られた(黒色の線)。
濾過前のHCPの分析により、すべての個々の因子(洗浄pH、洗浄塩化ナトリウム、およびカプリル酸ナトリウム)で有意な影響が同定され、さらにはカプリル酸ナトリウムと洗浄pHとの相互作用および洗浄pHと洗浄塩化ナトリウムとの相互作用が同定された。表7の最後の列は、影響の有意性を示している。
3つすべての因子を低値から高値に増加させると、溶出液中のHCPレベルが減少したことから、pH9.0の洗浄緩衝液と2.5M塩化ナトリウムおよび100mMカプリル酸ナトリウムとにより、HCPクリアランスが改善されたことが示唆される。これは、実験的に確認された。実験時に達成された最低HCPレベルは、ラン7の時であった(105.7mg/mg)。これとは対照的に、3つの因子を低値にしたラン8では、最高HCPレベルが観測された(1618ng/mg)。
そのほかに、2つの相互作用が同定された。これらは、図6に見られる。洗浄pHと洗浄塩化ナトリウムとの相互作用は、左のボックスに見られる。これから、pH9で洗浄塩化ナトリウムを増加させた場合、濾過前のHCPレベルに及ぼす影響はごくわずかであったことが示されるが(黒色の線)、pHを7に低減した場合、より大きい影響を示す(灰色の線)。カプリル酸ナトリウムでも、影響は同一であった。すなわち、pH9では、カプリル酸ナトリウムを用いても用いないでも、濾過前のHCPレベルは、より低かったが(黒色の線)、pH7では、カプリル酸ナトリウムレベルの増加に伴って、低減レベルはより大きくなった(灰色の線)。
分析により、すべての個々の因子(洗浄pH、洗浄塩化ナトリウム、およびカプリル酸ナトリウム)で濾過後のHCPレベルに対して有意な影響が同定され、さらにはカプリル酸ナトリウムと洗浄pHとの相互作用、カプリル酸ナトリウムと洗浄塩化ナトリウムとの相互作用、および2つの二次相互作用、すなわち、一方は洗浄pH、他方は洗浄塩化ナトリウムの二次相互作用が同定された。表8の最後の列は、影響の有意性を示している。
図7は、洗浄pHおよび洗浄塩化ナトリウムに対して曲線により表される2つの二次相互作用を有する濾過後のHCPレベルを示している。高いおよび低い洗浄塩化ナトリウムレベルで最低HCPレベルが達成されたので、洗浄塩化ナトリウムの結果は興味深い。この原因は、少ない洗浄塩化ナトリウムを用いた高HCPレベルを有するサンプルが、より高い濁度およびより多くの沈殿を生じた可能性があるので、0.2μm濾過により除去されて、濾過後のHCPレベルが低減されたことにあると考えられる。
図8は、洗浄塩化ナトリウムとカプリル酸ナトリウムとの相互作用を示している。洗浄塩化ナトリウムの不在下(灰色の線)では、2.5M塩化ナトリウムの存在下(黒色の線)よりも、濾過後のHCPのより少ない低減が観測された。
各レスポンス(純度、回収率、濾過前HCP、および濾過後HCP)に及ぼす各因子(洗浄pH、洗浄塩化ナトリウム、およびカプリル酸ナトリウム)の組み合わせた影響を図9に示す。右側の列から分かるように、洗浄pHの増加に伴ってHCPレベルが減少したことから、HCPクリアランスに関してはより高いpHのほうが良いことが示唆される。しかしながら、純度は、pHの増加に伴って減少した。この性質は、一般的には、望ましくない。図9は、pHが回収率に影響を及ぼさないことを示しているが、これは、pHが回収率のモデルに含まれていなかったためである。左側の列は、洗浄塩化ナトリウムの増加によりHCPが低減したことを示している。しかしながら、それはまた、洗浄塩化ナトリウムの増加により回収率が低減し、純度はわずかに影響を受けたかまたはまったく影響を受けなかったことを示している。中央の列は、カプリル酸ナトリウムの増加によりHCPが低減し、純度が増加したことを示している。しかしながら、カプリル酸ナトリウムの増加により回収率も低減した。これらの条件を用いて予測された値は、左側の軸に見られる。
図10A〜Cは、濾過前のHCPレベルに及ぼす3つの因子の組み合わせた影響を示している。3つのグラフはすべて、等高線グリッドにより示されるように、因子がその最高値のときに最低HCPレベルが達成されたことを示している。このことから、HCP除去に関しては、レベルの増加により、HCPの追加のクリアランスがさらにもたらされることが示唆される。しかしながら、50%の産物回収率の犠牲を払ってすべてのHCPを除去することは、望ましくないこともある。すべてのレスポンスに対して条件を最適化するために、望ましさ関数をモデルに追加し、各レスポンスに対して範囲を設定し、そして重要性を割り当てた。HCP除去の重要性に最高の重要性を与えた。なぜなら、これは、洗浄工程の目的であったからである。回収率に純度よりも高い重要性を割り当てた。なぜなら、これは、これがキャプチャー工程であり、凝集体がプロセスの追加の工程により除去されうるからである。
図11には、X軸上に最適条件が示されている。ここでは、洗浄塩化ナトリウムおよびカプリル酸ナトリウムは両方とも、依然として最大値(すなわち、それぞれ2.5Mおよび100mM)であり、洗浄pHは、pH8.45に設定される。pHをそれ以上増加させても、回収率もHCPクリアランスも増加しなかったが、純度は悪影響を受けた。また、これらの条件下で合理的な低回収率(81%)が観測されたことに注意することも重要である。プロテインAに対しては、>90%の回収率が期待されよう。しかしながら、洗浄塩化ナトリウムを増加させると回収率が減少し、ひいては、HCPレベルが増加した。このことから、洗浄液中に高レベルの塩化ナトリウムがあると、産物が洗浄除去されるおそれがあることが示唆される。
カプリル酸ナトリウムおよびpHは、溶出液純度に影響を及ぼしうることが、実験から実証された。pHを増加させるとより低純度になったが(これらは望ましくない)、これは、キャプチャーカラムによる洗浄工程であり、プロセスには凝集体を除去するための追加のクロマトグラフィー工程が存在する。そのほかに、カプリル酸ナトリウムを洗浄緩衝液に添加すると、純度が増加することが、結果から示唆される。理論により拘束されることを望むものではないが、カプリル酸ナトリウムは、抗体上の結合部位に対する競合に打ち勝つことによりHCPを除去したと考えられる。この場合には、なぜ純度が増加したかの説明にもなろう。回収率に及ぼすカプリル酸ナトリウムおよび洗浄塩化ナトリウムの影響は、完全に望ましいものではなかったが、このことよりもHCPレベルの低減のほうが重要であろう。
濾過前のHCPの結果から、3つの因子はすべて、プロテインA洗浄緩衝液で使用した場合、HCPレベルを低減する能力を有していたことが示される。そのほかに、洗浄pHとカプリル酸ナトリウムとの相乗的相互作用により、HCPクリアランスが増加したことが、結果から示された。濾過後のHCPレベルは、濾過前のHCPの結論とやや食い違っていたが、たとえ濾過によりHCPを除去できたとしても、沈殿物によりフィルターが目詰まりするおそれがあり、これは、製造上それほど望ましいものにはならないため、濾過後のレベルよりも濾過前のHCPの結果に重点を置いた。
実施例2:HCP除去に及ぼすpH、塩化ナトリウム、およびカプリル酸ナトリウムの影響
この実験の目的は、ヒトインターロイキン−6(IL−6)に特異的に結合する第2のモノクローナル抗体を対象として、HCP除去に及ぼす3つの因子(pH、塩化ナトリウム、およびカプリル酸ナトリウム)およびそれらの組合せの有効性を、プロテインA洗浄緩衝液に組み込まれる場合について、評価することであった。手順は、実施例1に対して以上に記載したものと同一であった。結果は表9に示される。
表10の結果は、純度が、各因子(pH、塩化ナトリウム、およびカプリル酸ナトリウム)により個別に有意な影響を受けたことを示している。そのほかに、カプリル酸ナトリウムと洗浄塩化ナトリウムとの相互作用および洗浄塩化ナトリウムと洗浄pHとの相互作用が、結果から示唆される。また、溶出液純度に及ぼす洗浄pH、塩化ナトリウム、およびカプリル酸ナトリウムの影響を図12に示す。このことから、3つすべての成分のレベルを増加させることにより、溶出液純度が低減したことが分かる。
図13は、塩化ナトリウムの不在下では、pHまたはカプリル酸ナトリウムレベルのいずれのレベルを変化させても(左側および右側の黒色の線)、純度にほとんど影響を及ぼさなかったことを示している。しかしながら、塩化ナトリウムの存在下では、カプリル酸ナトリウムまたはpHのいずれかを増加した場合(左側および右側の灰色の線)、溶出液純度に悪影響を及ぼした。回収率分析でのみ、洗浄pHおよびその二次相互作用が回収率に対して有意であると同定された(表11)。図14に示される結果から、pHを増加させるとより高い回収率値が得られることが示唆される。興味深いことに、溶出液中のHCP分析でのみ、有意な因子としてカプリル酸ナトリウムが同定された(表12)。溶出液中のHCPレベルに及ぼすカプリル酸ナトリウムの影響を図15に示す。
モデルに高レベルのノイズがあったため、代替分析を行った。代替分析は、溶出液中HCP値でのlogHCPの標準的最小二乗解析であった。代替分析の結果から、洗浄塩化ナトリウムが有意な影響を有することと、かつカプリル酸ナトリウムと洗浄塩化ナトリウムとの相互作用、さらにはカプリル酸ナトリウムの個別の影響が存在することが示される(表13)。
図16のデータは、HCPレベルに及ぼす3つの因子の影響を示している。カプリル酸ナトリウムレベルの増加は、HCPレベルに及ぼす最大の影響を示した。図17には、洗浄塩化ナトリウムとカプリル酸ナトリウムとの相互作用が見られる。塩化ナトリウムの不在下では、カプリル酸ナトリウムを増加させると、HCPレベルが少し減少した(灰色の線)。しかしながら、塩化ナトリウムの存在下では、カプリル酸ナトリウムを増加させると、クリアランスがさらに低減された(黒色の線)。
プロテアーゼ活性のバックワード分析により、すべての個々の因子(洗浄pH、洗浄塩化ナトリウム、およびカプリル酸ナトリウム)で有意な影響が同定され、さらにはカプリル酸ナトリウムと洗浄pHとの相互作用、カプリル酸ナトリウムと洗浄塩化ナトリウムとの相互作用、および洗浄pHと洗浄塩化ナトリウムとの相互作用が同定された。表14の最後の列は、影響の有意性を示している。
図18は、各因子(洗浄pH、塩化ナトリウム、およびカプリル酸ナトリウム)を増加させたときの濾過後のHCPレベルに起因するプロテアーゼ活性の明確な減少を示している。図19は、洗浄pHとカプリル酸ナトリウムとの相互作用を示している。特定的には、カプリル酸ナトリウムの存在下では、活性の差はほとんどなかった。しかしながら、カプリル酸ナトリウムの不在下では、洗浄pHの増加によりプロテアーゼ活性が低減した。
図20AおよびBは、洗浄液中にカプリル酸ナトリウムを組み込む利点を示している。図20Aは、カプリル酸ナトリウムの不在下でのプロテアーゼ活性を示している。図20Bは、カプリル酸ナトリウムの存在下でのプロテアーゼ活性を示している。カプリル酸ナトリウム(A)の不在下では、高いpHおよび塩化ナトリウム濃度で最小の活性が観測された。これとは対照的に、低いpHおよび塩化ナトリウムレベルでは、最大の活性が観測された。しかしながら、カプリル酸ナトリウムの存在下では、等高線が変化した(B)。高pHおよび無塩化ナトリウムでは、最大の値が観測された。洗浄塩化ナトリウムを増加させると、pH7および9の両方で活気を示さなかったので、等高線は平坦化されてpHの影響が除去された。図21は、単一のグラフですべての影響を示している。
HCP除去を改善するために、洗浄液カプリル酸ナトリウムを最大値(すなわち100mM)に設定した。(図22)洗浄pHをpH8.1に設定した。なぜなら、pHをそれ以上増加させると回収率が減少したからである。また、洗浄塩化ナトリウムを1.9Mに設定した。なぜなら、塩化ナトリウムレベルをそれ以上増加させると純度が低減したからである。カプリル酸ナトリウムおよびpHは、溶出液純度に影響を及ぼすことが、結果から確認される。しかしながら、この実施例では、3つすべての因子を増加させると純度が減少したが、実施例1のIL−18抗体では、カプリル酸ナトリウムの存在下で純度の増加が見られた。洗浄pHを減少したときに回収率の低減が観測された以外は、3つの因子は、回収率にほとんど影響を及ぼさなかった。しかしながら、これは、他の因子からのノイズに帰属可能であった。カプリル酸ナトリウムのみは、溶出液中のHCPに有意な影響を及ぼした。log転換を行ってデータを線形モデルに転換した場合、洗浄塩化ナトリウムおよびカプリル酸ナトリウムを増加させるとHPC値が低減することが、結果ことから示唆された。pHについても同じことが言えたが、影響はそれほど有意ではなかった。実施例1のIL−18抗体で見られたように、最適条件は、3つすべての因子をそれらの高値で含む。プロテアーゼ活性に及ぼす影響は、HCPに及ぼす全影響に現れた。それは予想されたことであった。結果の組合せから、3つすべての因子を組み合わせることにより、HCP除去に関して改善された洗浄液が提供されることが示唆される。
実施例3:HCP低減に関する他の脂肪酸の評価
この実験の目的は、実施例1で使用したモノクローナル抗体[抗IL−18抗体]を対象として、HCP除去に及ぼすプロテインA洗浄緩衝液の成分としてのカプリル酸ナトリウム以外の脂肪酸の有効性を評価することであった。実施例1で抗IL−18抗体に対して決定された最適条件である9.0の洗浄pHおよび2.5Mの塩化ナトリウムを用いて、実験を行った。すべての実験洗浄緩衝液を100mMトリス中に作製し、9.0の最終pHが達成されるようにHClまたはトリスを用いてpH調整した。溶解性に基づいて、緩衝液のいくつかは、2.5M塩化ナトリウムを含んでいたが、他のものは、2.5M塩化ナトリウムを用いずに作製された(表16参照)。実施例1に記載されるように、プロテインAクロマトグラフィー緩衝液を調製し、手順は、実施例1に記載のものと同一であった。表15は、不飽和脂肪酸のリストを提供し、表16は、実験洗浄緩衝液に関する詳細を提供する。
結果を表17に示す。純度は、すべてのランで予想よりも低かった。しかしながら、純度の低減は、抗IL−18抗体清澄化採取物の老化に起因しうるものであった。したがって、HCPクリアランスおよび回収率のみを評価し、前の実施例の対照ランと比較した。
ラン1〜6の回収率は、2つの対照洗浄緩衝液のものに匹敵した。ラン7および8では、回収率の有意な低減が観測された(他のランのほぼ半分)。これらのランでは、クロマトグラフィーラン時、洗浄液で大きなピークが観測された。したがって、ドデカン酸ナトリウムおよびラウリン酸は、プロテインA洗浄緩衝液に添加した場合、回収率の損失をもたらすと思われる。
図23は、ラン1(短鎖脂肪酸酪酸ナトリウムを使用)の850ng/mg程度に高いものから85ng/mg(ドデカン酸ナトリウムを使用)まで、濾過前のHCPレベルの広範なレベル範囲を示している。これらの値が溶出液中HCPの減少を呈するものであるかを決定するために、それらを対照緩衝液と比較した。100mMトリス、2.5M塩化ナトリウム、pH9.0(+100mMの脂肪酸)でラン1〜4を行って、同様に2.5M塩化ナトリウムを含有する第2の対照ラン(表18)と比較した。この対照は、599ng/mgの濾過前プロテインA溶出液中HCP濃度を達成した。したがって、酪酸ナトリウムおよび酪酸(ラン1および2)は両方とも、試験したレベルでHCPのクリアランスの増加を示さなかったことが分かる。ヘキサン酸ナトリウム(ラン3)での値は、対照よりもわずかに小さかったことから(599ng/mgと比較して500mg/mg)、対照を上回った小さな低減が実証された。
デカン酸ナトリウムおよびデカン酸(denoic acid)は、2.5M塩化ナトリウムを含有する緩衝液に溶解しなかった。したがって、それらは、塩化ナトリウムを含まない緩衝液(すなわち、100mMトリス、pH9.0)と比較するべきである。デカン酸ナトリウムおよびデカン酸(deoic acid)で、それぞれ、600ng/mgから85ng/mlおよび97ng/mgに低減されたことは、HCPレベルの有意な低減を表している。これは、同一の条件下で得られたカプリル酸ナトリウムで得られた結果(206ng/mg)よりも少なかった。
ドデカン酸ナトリウムおよびラウリン酸では、結果は、それぞれ、88および99ng/mgであった。しかしながら、回収率は低かった(約45%)。産物およびHCPの両方がカラムから洗浄された可能性があるので、低い回収率が低いHCPレベルを生じた可能性がある。しかしながら、さらなる最適化により、HCP除去および回収率の両方に関して許容可能な条件を提供することが可能であった。
ラン1〜4の濾過後の結果は、濾過前のものに匹敵する。HCPレベルが濾過後に低減されたのは、おそらく、濾過時に沈殿物が除去されたためであろう。
デカン酸ナトリウムおよびデカン酸(denoic acid)のラン(ラン5および6)は、対照洗浄状態と比較して、改善されたHCP除去を呈した。興味深いことに、HCPレベルは、それぞれ、140ng/mgおよび139ng/mgであった。これらは、濾過前の値よりも高かった。これは、HCPアッセイの誤差による起因しうる。この変動にもかかわらず、平均および最高の結果は両方とも、対照緩衝液およびカプリル酸ナトリウムを含有する緩衝液の両方と比較して、HCPレベルの有意な低減を示す(表19)。異なる脂肪酸洗浄緩衝液での溶出液中のHCPレベルのまとめを図23に提供する。
評価された脂肪酸でHCPの除去に広範な変動があったことは明らかである。酪酸ナトリウム、酪酸を含めて、短鎖脂肪酸およびそのナトリウム塩は、緩衝液対照よりも低いHCPレベルをもたらさなかった。しかしながら、脂肪酸の鎖長を4から6に増加させたヘキサン酸ナトリウムおよびヘキサン酸の場合、ナトリウム塩では844ng/mgから502ng/mgに、脂肪酸では844ng/mgから599ng/mgに、HCPの低減が観測された。
カプリル酸ナトリウムは、8個の炭素原子を含有し、中鎖脂肪酸(7〜12個の炭素原子)として分類される。前の実施例で得られた結果から、カプリル酸ナトリウムは、100mMトリス、pH9中に100mMカプリル酸ナトリウムを含有する緩衝液で、HCPレベルを206mg/mgに低減可能であることが実証された。同様に、デカン酸ナトリウム、デカン酸、ドデカン酸ナトリウム、およびラウリン酸の結果から、これらの脂肪酸もまた、HCPレベルを(150ng/mgに)低減可能であることから、中鎖脂肪酸は、プロテインA洗浄緩衝液に組み込まれた場合、HCPを低減する能力を有することが示唆される。抗体精製時、たとえば、商品のコストを低減するために、高い回収率を維持することが重要であるので、ドデカン酸ナトリウムおよびラウリン酸で観測された回収率の低減は、完全に望ましいものではなかった。しかしながら、HCPレベルの低減とのバランスをとった場合、回収率の低減は、許容可能なこともある。
多くの脂肪酸は、HCPレベルを低減するためにプロテインA洗浄緩衝液に組込み可能であることが、結果から実証される。一般的には、HCPレベルは、鎖長の増加に伴って減少した。特定的には、12の鎖長を有する脂肪酸では、回収率に及ぼす潜在的に望ましくない影響が観測され、6の鎖長を有する脂肪酸では、HCP除去の低減が観測されたので、中鎖長脂肪酸が最も望ましい候補でありうることが、結果から示唆される。しかしながら、プロテインA洗浄緩衝液でこれらの追加の脂肪酸が実用可能な成分となるように、条件を最適化することが可能でありうる。
実施例4:プロテインAクロマトグラフィー時のHCP除去に及ぼすカプリル酸塩洗浄緩衝液の影響
この実験の目的は、抗IL−18抗体(NCIMB受託番号41786)を対象としてプロテインAクロマトグラフィー時に宿主細胞タンパク質(HCP)を除去するためのカプリル酸塩洗浄緩衝液の有効性を試験することであった。2.5M塩化ナトリウムを含有する100mMトリス緩衝液、pH9.0中、50mMの濃度で、カプリル酸の2つの形態、すなわち、カプリル酸ナトリウムおよびカプリル酸を試験した。MabSelect SurReマトリックス(GE Healthcare)を用いて、20cmの床高さおよび3.98mLのカラム体積を有するTricorn 0.5mmカラムにより、350cm/時の線流速で、4つのクロマトグラフィーランを行った。使用前、カラムを2カラム体積の0.5M水酸化ナトリウムで殺菌し、続いて、15分間保持した。プロセス緩衝液およびカラム体積は、表20に示される。使用後、カラムを2カラム体積の0.5M水酸化ナトリウムで殺菌し、続いて、15分間保持した。溶出液ピーク捕集では、ODは、100mAUで開始し、100mAUで終了した(0.5OD)。すべての画分をタンパク質濃度に関してA280でアッセイし、実施例1に記載のGyros HCPアッセイを用いてHCPを定量した。
ラン2は、1つのカプリル酸ナトリウム洗浄液を使用し、第2の洗浄液を使用しない対照ランであった。しかしながら、第2の洗浄液が不在のため、溶出ピークの前縁で高い塩化ナトリウム濃度を生じた。この実験で使用した抗IL−18抗体(NCIMB受託番号41786)は、高い塩濃度で相分離することが知られており、この溶出液でも相分離した。したがって、ラン2は、廃棄され、分析されなかった。ラン1、3、および4の結果はまた、表21にも示される。
カプリル酸は、HCPを排除可能であったが、試験したレベルではカプリル酸ナトリウムと同程度ではなかったことが、結果から示唆される。いずれの場合も、HCPレベルは、対照と比較して有意に低減された。対照溶出液では、HCPのレベルは、680ng/mLであり、カプリル酸実験では、これが1/4に低減されて152ng/mgとなり、カプリル酸ナトリウム実験では、1/35に低減された。カプリル酸洗浄液の濃度を増加させることにより、溶出液中のHCPをさらに低減することが可能である。カプリル酸およびカプリル酸ナトリウムは両方とも、プロテインA溶出液中のHCPレベルを低減可能であることが、結果から実証される。
実施例5:宿主細胞プロテアーゼ誘導粒子形成の低減
この実験の目的は、抗IL6抗体を対象として遅延発生粒子形成を研究することであった。遅延発生粒子形成は、5℃で6ヶ月後、50mg/mLの抗IL6抗体を含有する製剤で観測された。生物汚染度は、0cfu/mLであったことから、細菌汚染は示唆されない。粒子の質量スペクトル分析から、粒子は、抗IL6抗体および上昇レベルのフラグメントを含有することが判明した。重元素は、SEMにより検出されなかった。HCPは、2D SDS PAGEにより検出されなかった(図24)。
プロテインA精製からの溶出液中のHCPレベルは、pH7.5で20mMトリス、1M NaClを含む洗浄緩衝液(「標準的洗浄緩衝液」)を使用した場合、100ng/mg超であった。プロテインA精製時、100mMトリス、50mMカプリル酸ナトリウム、2.5M NaCl、pH9.0を含有するカプリル酸塩洗浄液を組み込むことにより、HCPレベルは、100ng/ml超から10ng/ml未満に低減された。280nmでのUV検出を備えたTSK−GEL G3000SWXLカラム(Tosoh Bioscience LLC,Mongomeryville,PA,USA)を用いて、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により、抗IL6抗体の純度を測定した。約250μgのタンパク質をアッセイカラム上に注入した。可溶性凝集体、単量体、およびフラグメントの溶出を、それぞれ、約6〜8分、8.5分、および9〜11.5分で行った。0.1Mリン酸ナトリウム、0.1M硫酸ナトリウム、および0.05%(w/v)アジ化ナトリウムを含有するpH6.8の移動相を用いて、1.0mL/分の流量で、サンプルを20分間アッセイした。
最高HCPレベル(すなわち、約100ng/mg超)を有する抗IL6抗体ロットで、SECにより、40℃でより高いフラグメント化率を検出した(図25および26)。1mM pH7.0リン酸緩衝液中に抗IL6抗体サンプルを約1mg/mLに希釈し、フラグメント化に関して逆相クロマトグラフィー(RP−HPLC)により10μLの注入量を分析した。分析を行うために、水中0.1%TFA(移動相A、mpA)およびアセトニトリル中0.1%TFA(mpB)を用いて、75℃でグラジエント溶出により、Michrom Bioresources(Auburn,CA,USA)PLRP−S CM810092/00カラムを使用した。mpBのグラジエント(5%で3分、5〜34%で3分、34〜44%で16分、44〜75%で2.5分保持し、続いて、95%で8分間のカラム状態調節を行った)を用いて、種を溶出させた。
40℃でRP−HPLCを用いて分析した場合、フラグメント化率は、最高HCPレベル(すなわち、約100ng/mg超)を有するロットでは約3%/月であったが、カプリル酸塩洗浄工程を用いて精製された、かなり低いHCPレベルを有するかつ検出可能なプロテアーゼ活性のないロットは、かなり低い約2〜2.5%/月のフラグメント化率を有していた。
100ng/mg超のHCPレベルを有するロットはすべて、目視検査に基づいて、遅延発生する目に見える粒子を形成した(表24)。
蛍光プロテアーゼアッセイ(Invitrogen EnzChek(登録商標)プロテアーゼアッセイキット)を実施して、HCPプロテアーゼに関連付けられる安定性を診断した。プロテアーゼ活性を有するロットはすべて、遅延発生粒子を形成した。これとは対照的に、カプリル酸塩洗浄液(白記号)を用いて精製されたロットは、プロテアーゼ活性を示さず(図27参照)、遅延発生粒子を形成しなかった(表25)。
表25に示される結果から、最も安定なロット(ロットE、F、およびG)は、プロテインA精製時にカプリル酸塩洗浄液を用いたロットであったことが明確に実証される。表26に示されるように、プロテインA精製時に標準的洗浄が行われた、かつ高いHCPレベルおよび検出可能なプロテアーゼ活性を示した、ロットDは、3〜12ヶ月で有意な粒子形成を呈した。これとは対照的に、ロットDと同一の細胞培養培地から精製された、かつ有意により低いHCPレベルを有していた、かつプロテアーゼ活性を有していなかった、ロットEは、経時的にごくわずかな粒子形成を示した。したがって、プロテインA精製時にカプリル酸塩洗浄を用いてHCP/プロテアーゼレベルを低減すると、HCPプロテアーゼ誘導遅延発生粒子形成が軽減されると思われる。遅延発生粒子形成の最良予測因子は、高いHCPレベルおよびプロテアーゼ活性であると考えられる。
マイクロプレートHTSフォーマットでInvitrogen EnzChek(登録商標)プロテアーゼアッセイキットを用いて、粒子形成ロットBのアスパルチルプロテアーゼ活性およびセリンプロテアーゼ活性を調べた。結果を図28に示す。ペプスタチン(アスパルチルプロテアーゼ阻害剤)は、劇的にプロテアーゼ活性を低減した。AEBSF(セリンプロテアーゼ阻害剤)は、より高いpHでより小さい影響を及ぼした(他のセリン阻害剤もまた、影響を及ぼした)。他のクラスの阻害剤は、プロテアーゼ活性を低減しなかった(図示せず)。
実施例6:精製プロセスの種々の時点での宿主細胞タンパク質の同定
この実施例では、抗IL6精製プロセスのいくつかの工程で、宿主細胞タンパク質(HCP)およびプロテアーゼ活性の高スループット診断の検査および同定を行った。細胞培養培地からのサンプル、次いで、標準的プロセスおよびカプリル酸塩プロセスの両方でプロテインAインプロセス生成物のサンプル、ならびに標準的洗浄およびカプリル酸塩洗浄の両方でプロテインA工程からの洗浄画分のサンプル、を分析した。
最終薬剤物質および任意の中間精製サンプルに存在するプロテアーゼの存在およびクラス/タイプの検出および診断を行うために、蛍光プロテアーゼアッセイ(Invitrogen EnzChek(登録商標)プロテアーゼアッセイキット)を種々の市販のプロテアーゼ阻害剤と共に使用した。EnzChek(登録商標)プロテアーゼアッセイキット(E6638、Molecular Probes,Eugene,OR)を用いて、サンプルのプロテアーゼ活性を評価した。キット中の検出基質は、BODIPY(登録商標)−カゼインコンジュゲートである。典型的には4〜8の範囲内のpHで、20mMクエン酸リン酸緩衝液中にサンプルを10倍希釈可能した。対応するプラセボを調製した。所望のpHが達成されるように20mMクエン酸と20mM第二リン酸ナトリウムとを混合することにより、クエン酸リン酸緩衝液を調製した。試薬の調製を提供された手順に適合させた。BODIPY(登録商標)−カゼインコンジュゲート検出基質を適切な緩衝液中に希釈して、4〜8の各pHで約10μg/mLの作用試薬を作製した。等体積(典型的には100μL)のサンプルおよび作用試薬を白色マイクロプレートのウェルに添加して、pH範囲4〜8にわたるアッセイサンプルおよび対応するプラセボをトリプリケート方式で作製した。サンプルをシールし、3〜5時間の典型的な持続時間にわたり40℃でインキュベートした。485nmで色素蛍光を励起し、Molecular Devices SpectraMax(登録商標)蛍光プレートリーダー(Sunnyvale,CA)で495nmカットオフフィルターを用いて530nmの発光強度を記録した。次いで、サンプルの強度対pHを記録した。この方法の変動に基づく製造業者のガイドラインに従って、ブランクと比較して約20%未満のサンプル強度の増加は、プロテアーゼ活性に関して陰性であるとして処理した。サンプルの結果から緩衝液の分を引き算して、pHに対してプロットし、これを用いて、サンプルのプロテアーゼ活性の存在を決定した。多重反復試験を行って、低い読み値の変動を評価した。相対定量のために、カテプシンDやトリプシンなどの既知のプロテアーゼの対照調製物をコンパレーターとして使用した。プロテアーゼの存在を確認するために、プロテアーゼ阻害剤をサンプルに添加して、検出プロテアーゼ活性の相対的減少または排除を結果の確認に用いた。
二次元質量分析(2D−MS)を用いて、細胞培養培地中および種々のプロテインA産物中および洗浄工程中のセリンプロテアーゼおよびアスパルチルプロテアーゼ(カテプシンD)を同定した。プロテアーゼを含めて、264種のHCPを細胞培養培地中で同定した。標準的洗浄液を用いて、24種のHCPがプロテインA産物中に観測された。これとは対照的に、カプリル酸塩洗浄液を用いて、8種のHCPのみがプロテインA産物中に認められた。カプリル酸塩処理によりHCP低減が達成されたことが、結果から明確に実証される。
最終薬剤物質中のプロテアーゼレベルは非常に低いので、質量分析を用いたカテプシンDの存在の陽性同定を可能にするのに十分な高プロテアーゼレベルを有するサンプルを作製するために、アスパルチルプロテアーゼのアフィニティー精製および富化および濃縮が必要であった(固定化ペプスタチン786−789、G−Biosciences,St.Louis,MOを用いて)。アフィニティー精製を用いて、最終薬剤物質中のプロテアーゼを同定した。固定化ペプスタチン(786−789、G−Biosciences,St.Louis,MO)を用いて、薬剤物質からのアスパルチルプロテアーゼのキャプチャー、富化、および溶出を行った。2D質量分析により富化サンプルを分析して、プロテアーゼを同定した。この親和性樹脂材料は、アスパルチルプロテアーゼに結合するリガンドを含有する。製造業者の手順に従って、アスパルチルプロテアーゼを親和性樹脂に結合し、抗IL6抗体を洗浄除去し、最後に、さらなる分析および同定のために、富化/濃縮されたキャプチャーされたアスパルチルプロテアーゼをカラムから溶出させた。検出能力を向上させるために、大量の薬剤物質を用いて、これらのサンプルの濃縮/富化を行った。