JP2016515603A - ワクチン接種における使用のための免疫原性複合体およびこれを得る方法 - Google Patents

ワクチン接種における使用のための免疫原性複合体およびこれを得る方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、重合抗原、マンナンおよびジアルデヒドを含む免疫原性複合体、それを含む組成物、ならびに感染性疾患、新生物およびアレルギーの治療に有用な免疫応答刺激剤およびワクチンとしてのこれらの使用に関する。同様に、本発明は、ジアルデヒドの使用によって抗原およびマンナンを同時に重合およびコンジュゲーションすることに基づく、前記免疫原性複合体を得る方法に関する。

Description

本発明は、重合抗原、マンナンおよびジアルデヒドを含む免疫原性複合体、これを含む組成物ならびに免疫応答刺激剤およびワクチンとしてのこの使用に関する。同様に、本発明は、ジアルデヒドの使用によって抗原およびマンナンを同時に重合およびコンジュゲーションすることに基づく、前記免疫原性複合体を得る方法に関する。したがって、本発明は、免疫学およびワクチン製造の分野に属し、ならびにアレルギーの治療および予防の分野に属する。
樹状細胞(DC)は、T細胞の効率的な刺激に特化した抗原提示細胞であり、そのため樹状細胞は特異的免疫応答を誘導するための基盤である。未熟なDCは、組織および器官に戦略的に分布して、歩哨として作用し、これらの微小環境において抗原試料を連続的に取り込む。DCは、抗原それ自体、微生物産物および組織の危険シグナルを含むさまざまな刺激に対する応答として成熟過程を開始し、成熟は二次リンパ器官のT領域への遊走を導き、末梢においてこれらにより負荷された抗原を運ぶ。ここで、HLA−IIおよび共刺激分子の発現の増加を示す成熟DCは、T細胞と相互作用し、抗原ペプチドをプロセシングした後でこれらをT細胞に提示して、T細胞を刺激して特異的応答を開始する。
未熟なDCは、受容体媒介性エンドサイトーシス、微飲作用および食作用により抗原を捕捉する。エンドサイトーシス的取込みに関与するさまざまな受容体が存在し、その中に、マンノース受容体(MR)(CD206およびCD209)が見出される。これらは、炭水化物認識ドメインを介して末端マンノース残基、フコースおよび/またはN−アセチルグルコサミンを認識する。天然のリガンドとしては、細菌起源の産物(糖タンパク質および糖脂質)ならびにマンノース含有量の高い哺乳動物糖タンパク質が挙げられる。MRは、マクロファージおよび未熟DCにおいて発現され、プロセシングおよびこれらのT細胞提示のためにマンノシル化抗原のエンドサイトーシスに関与する。
IgE抗体媒介性アレルギー状態における免疫療法は、アレルゲンが、アレルギー患者が感作されるアレルゲンと同じアレルゲンである治療用ワクチンの投与に基づく。アレルゲンは、花粉、イエダニ、上皮などに由来するタンパク質であり、これらは、患者の呼吸する空気中に運ばれる超構造である(環境的吸入)。これらのワクチンの臨床的有効性が、送達されるアレルゲンの用量に関係することは広く認められており、したがって、WHOおよび学会によるコンセンサスガイドラインは、ワクチンは十分なアレルゲン濃度で調製すべきことを推奨した。この必要条件は、ワクチン用量に対するアレルギー患者の応答は、制限が意図されるべき有害作用の危険性を伴うことを暗示する。これを回避するための方法は、IgE抗体に対して低い反応能力を示す(低アレルゲン性)改変アレルゲン(アレルゴイド)に基づくワクチンの調製である。
ホルムアルデヒドおよび/またはグルタルアルデヒドによるアレルゲンの処理に基づく化学的改変は、ワクチン製造者の間で最も広く使用されている。アルデヒド基(R−CHO)とアレルゲンアミノ酸、例えばリジン中に存在するアミノ基(R−NH2)との反応は、このような改変の基盤である。モノアルデヒドであるホルムアルデヒドとは対照的に、グルタルアルデヒドは、さまざまな分子中に存在するリジンのR−NH2と反応可能な2つのR−CHO基を有するジアルデヒドである。グルタルアルデヒドは、アレルゲンの重合および特異的IgE抗体との反応性の喪失を引き起こす(ホルムアルデヒドを用いて形成されるアレルゴイドは、タンパク質の構造改変に基づくが、これらの重合には基づかない)。IgE抗体が、これらのエピトープ(アレルゲン結合部位)と反応するためのこれらの接近可能性を喪失し、IgEより活性化され得る、IgEにより感作される肥満細胞の数を低減させるので、この重合が、アレルゴイドの低アレルゲン性を決定するとみなされる。重合アレルゲンのアレルゲン性の喪失は、免疫原性の喪失を暗示すると思われ、免疫原性の喪失は、これらの調製物の臨床的有効性を低減する。重合は、DCにおいてアレルゲンマンノース残基へのMRの接近を低減させ、重合アレルゲンの免疫原性喪失には決定的であることが示唆されている。このことは、マンノース残基が、アレルゲンの取込みのためにDCにより使用される主要なリガンドの1つであるという事実およびこれらの細胞が、応答性T細胞へのアレルゲン提示において重要な役割を果たすという事実により支援される。
糖とタンパク質とをコンジュゲーションする方法は、酸化過程による糖の活性化、シス−グリコール基の変換による反応性アルデヒド基(R−CHO)の発生に主に基づく。例えば、メタ過ヨウ素酸塩で処理後、酸化糖に生じたR−CHOは、リジンのε−アミノ基と反応して、シッフ塩基の形成をもたらし得る。糖タンパク質(例えば、酵素、抗体)の炭水化物残基がコンジュゲーションのために使用され、これらの生物活性に関係するタンパク質部分を避けるので、この方法論は、糖タンパク質のコンジュゲーションに非常に適切である。
過ヨウ素酸塩による糖の酸化は、アレルゲンを含む(Weinberger et al.2013.J Control Release,165:101−109)、タンパク質をマンノシル化する方法として報告されているが(Masarova et al.2002.Int.J.Polymer.Anal.Charact.,7:106−116)、重合抗原のマンノシル化へのその使用は、以下の2つの主要な欠点を有する:
a)糖の酸化は、ヒドロキシル基(OH)を含有し、反応性アルデヒドの発生にとって基本である、隣接炭素原子との間の結合の破壊を生じる。前記破壊は、マンノース構造に影響を与え(Shibuya,N.,et al.1988.J.Biol.Chem.,263:728−734)、マンノース認識レクチンとのその結合能力を変化させ(Masarova et al.2001,Chem.Pap.55:130−135)そのDC活性化能力を変化させる(Sheng et al,2006.Immunology,118:372−383)。マンノースの構造的完全性の喪失は、酸化の程度を低減することにより最小化することができ(Masarova et al.2001,Chem.Pap.55:130−135)、穏やかな条件下でのコンジュゲーションに対するその効率は、マンノシル化されるタンパク質の特性に支配される(Weinberger et al.2013,J.Control Release,165:101−109)。マンノースをこれらの天然形態で保持するために、高温におけるグリコシル化反応を用いてタンパク質のマンノシル化を実行することが試みられているが、酸化の不在下で結果は好ましくない(Kanska et al.2008.Biotechnol. Appl.Biochem.49:57−64)。
b)その酸化後に活性化されたマンノースは、マンノシル化されるタンパク質の遊離のアミノ基と相互作用するべき反応性アルデヒドを発生させる。しかし、アミノ基は、グルタルアルデヒドそれ自体とのこれらの反応においてすでに使用されているので、タンパク質とグルタルアルデヒドとの重合は、これらのアミノ基の劇的な減少をもたらす。これらの状態下で、グルタルアルデヒドにより既に処置されたタンパク質をマンノシル化する、活性化マンノースの効率は非常に低いと思われ、グルタルアルデヒドが結合できるアミノ基を欠いた場合、グルタルアルデヒドの重合能力もまた非常に低いと思われる。(Silva et al.2004.Food Technol.Biotechnol.42:51−56)。この不都合さは、重合アレルゲンのマンノシル化に影響を与えるだけでなく、最終的にマンノシル化されることが意図され得る、グルタルアルデヒド(gutaraldehyde)と重合される任意のタンパク質のマンノシル化にも影響を与える。
Patterson et al.1977(J Allergy Clinical Immunology 59:314−319)は、グルタルアルデヒドによるアレルゲンの重合(イネ科の花粉)を記載している。重合されたアレルゲンは、IgE抗体により感作された肥満細胞の活性化能力の低減を示すので、重合されたアレルゲンは低アレルギー性である。
Subiza et al.2008(Clinical and Experimental Allergy,39:987−994)は、グルタルアルデヒド(glutaralehyde)により改変されたアレルゲン(イネ科の花粉、トリセツム・パニセウム(Trisetum paniceum)およびオーチャードグラス(Dactylis glomerata))(アレルゴイドとも称される)のアレルギーの免疫療法のための使用を記載している。研究者らは、グルタルアルデヒドによる重合により得られたイネ科由来のアレルゴイドのワクチン接種が有効であることを報告している。
Heydenreich et al.2012(Immunology,136:208−217)は、チモシー(Phleum pratense)およびシラカンバ(Betula verrucosa)種由来の無傷の花粉からのアレルゲン抽出物と、グルタルアルデヒドまたはホルムアルデヒドにより改変された、これらの対応するアレルゴイドとの間の免疫原性およびアレルゲン性の違いの比較研究を記載している。この文献は、グルタルアルデヒドによる改変が、ホルムアルデヒドによる改変よりアレルゴイドのアレルゲン性および免疫原性を低減させること、およびDCがこのタイプの改変アレルゲンを効率的に捕捉しないことを報告している。
Weinberger et al.2013(Journal of Control Release,165:101−109)は、過ヨウ素酸塩を用いた穏やかな酸化による糖を活性化する、アレルゲンタンパク質(オボアルビミンおよびパパイン)とマンノースとのコンジュゲーションを記載している。さまざまな程度の効率が、マンノシル化されるタンパク質に依存して得られる。マンノシル化コンジュゲートが、DCによりin vivoで捕捉されること、およびマウスにおいて免疫応答が生じ、したがってこれらが免疫療法に有用であり得ることを報告している。
したがって、最新の技術において現在使用されている方法の代替となり、高度に有効な方法で抗原の重合およびそのマンノースとのコンジュゲーションを可能にし、該糖がその構造完全性を失うことがなく、ポリマー特性(低アレルゲン性)が影響を受けることがなく、重合およびマンノシル化されたタンパク質に基づくワクチンが、DCによるこれらの取込みを改善することにより、これらの免疫原性を上昇させるような、最新の技術において、重合およびマンノシル化された抗原に基づくワクチンを得る方法を提供する必要性が存在する。
Masarova et al.2002.Int.J.Polymer.Anal.Charact.,7:106−116 Weinberger et al.2013.J Control Release,165:101−109 Shibuya,N.,et al.1988.J.Biol.Chem.,263:728−734 Masarova et al.2001,Chem.Pap.55:130−135 Sheng et al,2006.Immunology,118:372−383 Kanska et al.2008.Biotechnol. Appl.Biochem.49:57−64 Silva et al.2004.Food Technol.Biotechnol.42:51−56 Patterson et al.1977(J Allergy Clinical Immunology 59:314−319 Subiza et al.2008(Clinical and Experimental Allergy,39:987−994 Heydenreich et al.2012(Immunology,136:208−217
本発明の著者らは、ジアルデヒドをタンパク質性の抗原およびマンナンの混合物に付加することにより、抗原の重合と同時に抗原のマンナンへのコンジュゲーションを可能にし、このことが、その複合体に対するアレルギー応答を誘発せずに、樹状細胞(DC)により認識および捕捉され得る、個体において免疫応答の刺激および誘導が可能な免疫原性複合体またはワクチンの獲得を可能にすることを見出した。
この発見に基づいて、一連の発明的態様を開発し、これを以下に詳細に記載する。
本発明の免疫学的複合体
すでに述べたように、ジアルデヒド、特にグルタルアルデヒドを、タンパク質(抗原)およびマンナンの混合物に付加することにより、抗原重合と同時に、抗原のマンナンへのコンジュゲーションを可能にし、このことにより免疫原性複合体またはワクチンを得ることを可能にする。
したがって、一態様において、本発明は、重合抗原、マンナンおよびジアルデヒドを含む、免疫原性複合体、これ以降「本発明の免疫原性複合体」に関する。
本発明において、「免疫原性複合体」は、化学結合(化学的コンジュゲーション)により、または物理的封入(物理的コンジュゲーション)により相互にコンジュゲートされたままである1つまたは2つの単位の会合であり、前記単位が重合抗原、マンナンおよびジアルデヒドであると理解される。
「重合抗原」は、相互に結合された抗原モノマーにより形成されるポリマーを意味し、抗原モノマーは異なっていても、または同じであってもよい。したがって、特定の実施形態において、重合抗原は、相互に同じまたは異なる少なくとも2つの抗原を含む。「抗原」は、対象の生物(ヒトまたは動物)において、液性および細胞性両方の免疫応答を誘導し得る任意の物質、または免疫細胞と接触した場合、細胞性免疫応答(免疫細胞の拡大、活性化および/または成熟、サイトカインまたは抗体の産生)を誘導し得る任意の物質を意味する。特に、抗原は、アレルゲンであり得るタンパク質、感染因子もしくは新生物細胞由来のタンパク質、前記タンパク質のペプチドもしくは断片、前記タンパク質の組換えタンパク質またはさらに示された応答を誘導し得る合成ペプチドである。特定の実施形態において、抗原はアレルゲンである。
「アレルゲン」は、個体においてアレルギーを引き起こし得る物質、すなわち、個体の免疫系により異質として認識され、免疫反応、おもに免疫グロブリンE(IgE)産生を引き起こす物質を意味する。アレルゲンの例としては、限定するものではないが、花粉アレルゲン抽出物、節足動物由来のアレルゲン抽出、食品または加工食品由来のアレルゲン抽出物、対象において過敏反応を誘導する昆虫由来の唾液、爪または針に存在する成分などが挙げられる。したがって、例えば花粉タンパク質抽出物、例えば、イネ科花粉(ベレニアルライグラス(Lolium perenne)、ケンタッキーブルーグラス(Poa pratense)、チモシー(Phleum pratense)、ギョウギシバ(Cynodon dactylon)、メドウフェスク(Festuca pratensis)、オーチャードグラス(Dactylis glomerata)、ライムギ(Secale cereale)、オオムギ(Hordeum vulgare)、エンバク(Avena sativa)、Triticum sativa)、他の草の花粉(例えば、ヨモギ(Artemisia vulgaris)、シロアカザ(Chenopodium album)、ヘラオオバコ(Plantago lanceolata)、セイヨウタンポポ(Taraxacum vulgare)、カベイラクサ(Parietaria judaica)、ノオハラヒジキ(Salsola kali)、セイヨウイラクサ(Urtica dioica))または木の花粉(例えば、オリーブ(Olea europaea)、プラタナス属(Platanus spp.)、イトスギ属(Cuppresus spp))などが使用可能である。節足動物、例えばイエダニ(例えば、ヤケヒョウダニ(Dermatophagoides pteronyssinus)、コナヒョウダニ(Dermatophagoides farinae)、アシブトコナダニ(Acaro siro)、ネッタイタマクマダニ(Blomia tropicalis)、シワダニ(Euroglyphus maynei)、イエニクダニ(Glyciphagus domesticus)、サヤアシニクダニ(Lepidoglyphus destructor)、ケナガコナダニ(Tyrophagus putrescentiae))由来のタンパク質抽出物などが使用可能である。他のアレルゲン抽出物は、真菌の胞子(アルテルナリア・アルテルナータ(Alternaria alternata)、クラドスポリウム・ヘルバルム(Cladosporium herbarum)、ペニシリウム・ノタツム(Penicilium notatum))および動物の上皮(イヌ上皮、ネコ上皮、ウマ上皮、羽毛混合物)ならびに食品成分などから得ることができる。当業者には理解されるように、皮膚および皮膚付加物、例えば、毛髪が、「上皮」という用語の範囲内に含まれる。実際には、任意のアレルゲンが免疫原性複合体に使用可能であるが、にもかかわらず、特定の実施形態において、アレルゲンは、花粉、ダニ、上皮、真菌の胞子およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
別の特定の実施形態において、花粉は、チモシー(Phleum pratense)、オーチャードグラス(Dactylis glomerata)、ギョウギシバ(Cynodon dactylon)、ベレニアルライグラス(Lolium perenne)、カニツリグサ類(Trisetum spp.)、オリーブ(Olea europaea)、イトスギ属(Cuppresus spp.)、ブタクサ属(Ambrosia spp.)、カンバ属(Betula spp.)、プラタナス属(Platanus spp)、セイヨウハシバミ(Corylus avellana)またはセイヨウヤマハンノキ(Alnus glutinosa)の種に由来する。
別の特定の実施形態において、ダニは、ヤケヒョウダニ(Dermatophagoides pteronyssinus)、コナヒョウダニ(Dermatophagoides farinae)またはネッタイタマクマダニ(Blomia tropicalis)の種に属する。
別の特定の実施形態において、上皮は、イエネコ(Felis domesticus)またはイエイヌ(Canis familiaris)の種に属する。
別の特定の実施形態において、真菌の胞子は、アルテルナリア・アルテルナータ(Alternaria alternata)またはアルテルナリア・テラヌイス(Alternaria tenuis)の種に属する。
本発明において、「マンナン」は、マンノースおよび下記のタイプのグリコシド結合:アルファ−1,6−グリコシド、アルファ−1,2−グリコシド、アルファ−1,3−グリコシドまたはベータ−1,3−グリコシドからなる炭水化物ポリマーを意味する。マンノースは、6つの炭素原子から形成され、官能性化学基が、1位炭素またはアノマー炭素のアルデヒドである単純な糖または単糖である。マンナンは、自然に結合しているマンノプロテイン由来のペプチド残基を含有してもよい。本発明の文脈において任意のマンナンが使用可能である。マンナンの例としては、限定するものではないが、ポリマンノース、ガラクトマンナン、グルコマンナン、アセマンナンおよびアロエライドが挙げられる。
ポリマンノースは、α−D−(1→6)結合により結合されるマンノースにより形成され、α−D−(1→2)結合によるが、α−D−(1→3)もまた有する異なる単位のおもに高い頻度で短い分枝鎖を有する線形構造であると理解される。
「ガラクトマンナン」は、β(1→4)結合により相互に結合されるマンノース鎖により形成され、大部分の場合、α(1→6)結合によりマンノースに結合されるガラクトース単位により形成される分枝鎖を有する化合物であると考えられる。抽出される植物に依存して、ガラクトマンナンは異なる分枝度を有する。
「グルコマンナン」は、それぞれ8:5の割合でD−マンノースおよびD−グルコースを含み、β(1→4)結合により連結される化学構造の化合物として理解すべきである。例えば、グルコマンナンは、植物のコンニャク(Amorphophallus konjac)の塊茎に見出される。
「アセマンナン」は、ベータ(1−4)−マンナンタイプのO−アセチル化複合多糖類の混合物として理解すべきである。アセマンナンは、例えば、植物のアロエベラ(Aloe vera)に見出される。
「アロエライド」は、グルコース、ガラクトース、マンノースおよびアラビノースにより構成される、高分子量を有する多糖類であると理解すべきである。アロエライドは、例えば、植物のアロエベラ(Aloe vera)に見出される。
マンナン(ポリマンノース、ガラクトマンナン、グルコマンナンなど)は、天然起源から、例えば、真菌、酵母および植物から得ることができ、または当業者に広く知られる技術を使用して化学合成により得ることができる。特定の実施形態において、本発明の免疫原性複合体の一部であるマンナンは、酵母、植物または真菌から得られる。別の特定の実施形態において、酵母は、サッカロミセス属(Saccharomyces ssp.)、ピキア属(Pichia ssp.)およびカンジダ属(Candida ssp.)からなる群から選択される。
サッカロミセス属の酵母の例としては、限定するものではないが、S.バヤナス(S.bayanus)、S.ブラウディ(S.boulardii)、S.ブルデリ(S.bulderi)、S.カリオカヌス(S.cariocanus)、S.カリオカス(S.cariocus)、S.セレビシエ(S.cerevisiae)、S.シュバリエ(S.chevalieri)、S.ダイレネンシス(S.dairenensis)、S.エリプソイデス(S.ellipsoideus)、S.ユーバヤヌス(S.eubayanus)、S.エキシグス(S.exiguus)、S.フロレンティヌス(S.florentinus)、S.クルイベリ(S.kluyveri)、S.マーティニエ(S.martiniae)、S.モンセンシス(S.monacensis)、S.ノルベンシス(S.norbensis)、S.パラドキサス(S.paradoxus)、S.パストリアヌス(S.pastorianus)、S.スペンセロラム(S.spencerorum)、S.ツリセンシス(S.turicensis)、S.ユニスポラス(S.unisporus)、S.ウバルム(S.uvarum)およびS.ソナタス(S.zonatus)が挙げられる。より特定の実施形態において、酵母はS.セレビシエ(S.cerevisiae)である。
ピキア属(Pichia ssp.)の酵母の例としては、限定するものではないが、P.パストリス(P.pastoris)、P.アノマーラ(P.anomola)、P.ヒーディ(P.heedii)、P.ギリエルモンディ(P.guilliermondii)、P.クルイベリ(P.kluyveri)、P.メンブラニファシエンス(P.membranifaciens)、P.ノルヴェゲンシス(P.norvegensis)P.オーメリ(P.ohmeri)、P.パストリス(P.pastoris)およびP.サブペリキュローサ(P.subpelliculosa)が挙げられる。
カンジダ属(Candida ssp.)の酵母の例としては、限定するものではないが、C.アルビカンス(C.albicans)、C.アスカラフィダルム(C.ascalaphidarum)、C.アンフィキシアエ(C.amphixiae)、C.アンタークティカ(C.Antarctica)、C.アルゲンテア(C.argentea)、C.アトランティカ(C.atlantica)、C.アトモスフェリカ(C.atmosphaerica)、C.ブラタエ(C.blattae)、C.カルポフィラ(C.carpophila)、C.セラムバイセラダム(C.cerambycidarum)、C.チャウリオデス(C.chauliodes)、C.コリダリ(C.corydali)、C.ドッセイ(C.dosseyi)、C.ドゥブリニエンシス(C.dubliniensis)、C.エルガテンシス(C.ergatensis)、C.フルクタス(C.fructus)、C.グラブラタ(C.glabrata)、C.フェルメンタティ(C.fermentati)、C.ギリエルモンディ(C.guilliermondii)、C.ハエムロニイ(C.haemulonii)、C.インセクタメンス(C.insectamens)、C.インセクトラム(C.insectorum)、C.インターメディア(C.intermedia)、C.(C.jeffresii)、C.ケフィール(C.kefyr)、C.クルーセイ(C.krusei)、C.ルイシタニアエ(C.lusitaniae)、C.リクソソフィア(C.lyxosophila)、C.マルトーサ(C.maltosa)、C.マリーナ(C.marina)、C.メンブラニファシエンス(C.membranifaciens)、C.ミレリ(C.milleri)、C.オレオフィラ(C.oleophila)、C.オレゴネンシス(C.oregonensis)、C.パラプシローシス(C.parapsilosis)、C.クエルシルトーサ(C.quercitrusa)、C.(C.rugosa)、C.サケ(C.sake)、C.シャハテア(C.shehatea)、C.テムノキラエ(C.temnochilae)、C.テヌイス(C.tenuis)、C.トロピカーリス(C.tropicalis)、C.ツチヤエ(C.tsuchiyae)、C.シノラボランティウム(C.sinolaborantium)、ソエ(C.sojae)、C.サブハシ(C.subhashii)、C.ビスワナチ(C.viswanathii)、C.ユチリス(C.utilis)が挙げられる。
マンナンが抽出できる植物の例としては、限定するものではないが、マメ類(例えば、イナゴマメ(Ceratonia siliqua)、グアー豆(Cyanaposis tetragonolobus)など)、塊茎(例えば、コンニャク(Amorphophallus konjac)など)、マンナンがエネルギー貯蔵として使用される、ユリ科(Liliaceae)、アヤメ科(Iridaceae)由来の植物の種子、緑藻類、例えば、カサノリ属(Acetabularia)、ミル属(Codium)、イソスギナ属(Halicoryne)および紅藻類(マルバチシマクロノリ(Porphyra umbilicalis))などの植物細胞壁が挙げられる。
マンナンが抽出できる真菌の例としては、限定するものではないが、ペシロマイセス属(Paecilomyces ssp.)およびガノデルマ・ルキドゥム(Ganoderma Iucidum)(レイシ)が挙げられる。
当業者により理解されるように、マンナンが真菌または酵母から得られる場合、マンナンは真菌および酵母の細胞壁の一部であり、その結果、細胞壁を合成するために生物により使用されるタンパク質の残基を含有し得る。したがって、マンナンは、存在するアミノ酸残基由来のアミノ基をその構造中に含むことができる。したがって、別のより特定の実施形態において、前記アミノ基は、リジンのアミノ酸からもたらされる。
本発明において、「ジアルデヒド」は、2つのアルデヒド基を含む化合物を指すと理解される。ジアルデヒドの例としては、限定するものではないが、グルタルアルデヒド、グリオキサル、マロンアルデヒド、スクシンアルデヒドおよびアジポアルデヒドが挙げられる。好ましい実施形態において、ジアルデヒドはグルタルアルデヒドである。
上記のように、本発明の免疫原性複合体は、重合抗原、マンナンおよびジアルデヒドを含む。したがって、本発明の免疫原性複合体の成分の結合は、化学的コンジュゲーション、物理的コンジュゲーションまたは両方により同時に発生させることができる。
本発明において「化学的コンジュゲーション」は、化学結合を用いた本発明の免疫原性複合体の成分の結合として理解される。上で説明したように、マンナンは、これらの構造中のアミノ酸、例えばリジンの存在に起因するアミノ基を含み得る。理論に縛られることを望むものではないが、免疫原性複合体の成分間の結合は、マンナン中に存在するアミノ酸と、反応液中に存在するジアルデヒドとの間の結合により発生し得ると考えられる。したがって、特定の実施形態において、重合抗原はジアルデヒドによりマンナンと結合される。水性媒体中のジアルデヒドは、特定の割合で重合形態中に存在し、したがって、マンナン中および抗原性タンパク質中に存在するアミノ基との反応が、反応混合物中に存在するいくつかの成分の中に共有結合性架橋をもたらす、2以上のアルデヒド官能基を有するいくつかの種が存在する。アルデヒド基およびアミノ基の間の一次反応は、pH条件に依存して、可逆的であり得る、いわゆるシッフ塩基の形成をもたらす。しかし、ジアルデヒドまたはポリアルデヒド化合物、例えばグルタルアルデヒドおよび水溶液中に存在するこれらの重合形態に属するアルデヒド基の場合、多官能性重合体的性質のアルファ−ベータ不飽和カルボニル系を作製する、アルドール縮合および脱水タイプの他の反応が起こる。さらに、シッフ塩基はまた、元々のシッフ塩基より安定なアルファ−ベータ不飽和イミンを作製するような、反応媒体中に存在するアルデヒドとのアルドール様縮合を生じやすいことが示されている。他方で、カルボニルおよびアルドール縮合に由来するアルファ−ベータ不飽和イミンの両方が、新たな安定共有結合を形成するように、アミノ基によるコンジュゲート付加反応に供されやすい。元々のジアルデヒドおよび反応媒体中に存在するこれらの重合形態の多官能性と一緒に記載された化学反応性は、最終的な重合化学的コンジュゲートを形成するための、マンナンと抗原との間の化学的共有結合および安定な架橋の基盤である。
本発明において、「物理的コンジュゲーション」は、物理的捕捉による本発明の免疫原性複合体の成分の結合と理解される。理論に縛られることを望むものではないが、抗原が重合される場合、マンナンは、その構造の剛性および高レベルの分枝に支持されたポリマーの折り目に捕捉されたまま留まると考えられる。したがって、特定の実施形態において、アレルゲンは、ポリマーによる物理的捕捉によりマンナンに結合される。
ひとたび免疫原性複合体が形成されると、成分の割合は、媒体中のマンナンの濃度に依存して変動し得る。したがって、特定の実施形態において、抗原:マンナンの比は、1:10と1:0.1との間、好ましくは、1:4と1:0.15との間、より好ましくは、1:3と1:0.3との間、より好ましくは、1:4と1:0.5との間の範囲である。特定の実施形態において、抗原:マンナンの比は、1:0.3または1:0.5である。
本発明の方法
本発明の著者らは、ジアルデヒドを、抗原およびマンナンの混合物に付加することにより、抗原重合と同時に、抗原とマンナンとのコンジュゲーションを可能にし、このことが、前記複合体に対するアレルギー応答を誘発せずに、樹状細胞(DC)により認識および捕捉され得る、個体において免疫応答の刺激および/または誘導が可能な免疫原性複合体またはワクチンの獲得を可能にすることを見出した。
したがって、別の態様において、本発明は、本発明の免疫原性複合体を得る方法、これ以降「本発明の方法」に関し、該方法は、(i)抗原およびマンナンを含む溶解液を調製するステップ、ならびに(ii)ジアルデヒドを前記溶解液に加えるステップを含む。
第1のステップ[ステップ(i)]において、本発明の方法は、抗原およびマンナンを含む溶解液を調製するステップからなる。
抗原という用語は、すでに定義されている。特定の実施形態において、抗原はアレルゲンである。アレルゲンの例としては、限定するものではないが、花粉アレルゲン性抽出物、節足動物由来のアレルゲン性抽出物、食品または加工食品由来のアレルゲン性抽出物、対象において過敏反応を誘導する昆虫由来の唾液、爪または針に存在する成分などが挙げられる。特定の実施形態において、アレルゲンは、花粉、好ましくは、チモシー(Phleum pratense)、オーチャードグラス(Dactylis glomerata)、ギョウギシバ(Cynodon dactylon)、ベレニアルライグラス(Lolium perenne)、カニツリグサ類(Trisetum spp.)、オリーブ(Olea europaea)、イトスギ属(Cuppresus spp)、ブタクサ属(Ambrosia spp.)、カンバ属(Betula spp.)、プラタナス属(Platanus spp)、セイヨウハシバミ(Corylus avellana)またはセイヨウヤマハンノキ(Alnus glutinosa);ダニ、好ましくは、ヤケヒョウダニ(Dermatophagoides pteronyssinus)、コナヒョウダニ(Dermatophagoides farinae)またはネッタイタマクマダニ(Blomia tropicalis)の種に属するダニ;上皮、好ましくは、イエネコ(Felis domesticus)またはイエイヌ(Canis familiaris)の種に属する上皮;真菌の胞子、好ましくは、アルテルナリア・アルテルナータ(Alternaria alternata)またはアルテルナリア・テラヌイス(Alternaria tenuis)の種に属する真菌の胞子、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択される。
当業者には理解されるように、ステップ(i)の溶解液は、相互に異なっていても、または同じであってもよい複数の抗原を含有してよい。したがって、特定の実施形態において、溶解液は、相互に異なっていても、または同じであってもよい少なくとも2種の抗原を含む。
抗原およびアレルゲン性抽出物を得るために使用される技術および方法論は、当業者には広く知られているが、これらは市販品として利用されても、または組換えタンパク質の形態で見出されてもよい。抗原またはアレルゲン性抽出物が凍結乾燥される場合、該抗原またはアレルゲン性抽出物は、本発明の方法に使用可能なように、例えばリン酸緩衝液で再構成される必要がある。
他方で、ステップ(i)の溶解液はマンナンも有する。マンナンという用語は既に定義してあり、本発明の態様に適用可能である。マンナンの例としては、限定するものではないが、ポリマンノース、ガラクトマンナンおよびグルコマンナンが挙げられる。本発明の方法の特定の実施形態において、本発明の方法に使用されるマンナンは、酵母、植物または真菌に由来する。別のより特定な実施形態において、酵母は、サッカロミセス属(Saccharomyces ssp.)、特にサッカロミセス・セレビシイ(S.cerevisiae);ピキア属(Pichia ssp.)、およびカンジダ属(Candida ssp)からなる群から選択される。マンナンを得ることができる酵母、真菌および植物の例は、本開示においてすでに記載してある。さらに、上記のように、マンナンは、マンノプロテイン中に存在するアミノ酸残基由来のその構造アミノ基を含み得る。したがって、別のさらにより特定の実施形態において、マンナンはアミノ基を含み、別のより詳細な実施形態において、前記アミノ基は、リジンアミノ酸に由来する。
溶解液に加えるマンナンの量は、本発明の免疫原性複合体において取得が意図される抗原:マンナン比に依存して変動し得る。したがって、特定の実施形態において抗原:マンナン比は、1:10から1:0.1、好ましくは、1:4と1:0.15との間、より好ましくは、1:3と1:0.3との間、より好ましくは、1:4と1:0.5との間の範囲である。特定の実施形態において、抗原:マンナン比は1:0.3または1:0.5である。
ひとたび抗原およびマンナンの溶解液が調製されると、ジアルデヒドが添加され、その後、重合剤として作用する[本発明の方法のステップ(ii)]。ジアルデヒドは、抗原重合およびマンナンと抗原とのコンジュゲーションを達成するために十分な濃度に到達するまで、徐々に溶解液に添加される。ジアルデヒドを使用して重合体を調製するために使用される技術および方法論は、最先端において周知であり、当業者にとって常識である(Silva et al.2004.Chemical Modifications on Proteins Using Glutaraldehyde.Food Technol.Biotechnol.42:51−56)。
ジアルデヒドを、抗原およびマンナンの溶解液へ添加後、この混合物を、重合反応を起こすために適切な条件下および十分な時間、例えば約15時間、4℃において撹拌しながら放置する。
特定の実施形態において、ジアルデヒドは、グルタルアルデヒド、グリオキサル、マロンアルデヒド、スクシンアルデヒドおよびアジポアルデヒドからなる群から選択される。好ましくは、ジアルデヒドはグルタルアルデヒドである。
重合反応が起こるために必要な時間が完了したら、反応を、遊離のアルデヒド基を中和する薬剤(中和剤)、例えば、アミノ基を含有する薬剤(例えば、アミノ酸、ε−アミノ−n−カプロン酸など)または酸化剤(例えば、過酸化水素、過ヨウ素酸ナトリウムなど)は、これらのマンノースに対する効果のために除き、他のアルデヒドとの反応性薬剤(例えば、メタ重亜硫酸ナトリウム、アンモニウムなど)を混合物に添加することによって停止させる。本発明の方法の特定の実施形態において、方法は、重合反応を停止するための中和剤、例えばアミノ酸、特にグリシンの添加を含むさらなるステップ(iii)を含む。重合を停止するために反応混合物に添加するグリシンの量は、反応条件に依存して変動してよいが、重合を停止するために必要なグリシンの添加量の計算は、当業者には常識である。概して、グリシンは、加えられたアルデヒド量に対して過剰、例えば、ジアルデヒド:グリシン比が1:50でなければならない。
重合反応の停止後、免疫原性複合体は単離可能であり、このことは当業者には常識である。したがって、特定の実施形態において、本発明の方法は、ステップ(iv)免疫原性複合体を単離するステップを含む。実際に、タンパク質複合体を単離する任意の方法が、本発明の文脈において使用可能である。前記方法の例としては、限定するものではないが、低圧または高圧の液体クロマトグラフィーカラム、マンノース結合レクチン系のアフィニティークロマトグラフィー(例えば、Concanavalin A)、沈殿技術(例えば、硫酸アンモニウム)、密度勾配分離およびさまざまな遠心分離が挙げられる。例としては、すでに形成された本発明の免疫原性複合体を含有する混合物を、塩および非重合残基の可能性のあるものを除くために透析し、その後、重合混合物のろ過、例えば、100KDaの細孔径を有する膜によるタンジェンシャル限外ろ過を実施する。
本発明の免疫原性複合体の使用
本発明の免疫原性複合体は、アレルゲンである場合、前記複合体に対するアレルギー応答が低い個体において、免疫応答を刺激および/または誘導可能にする特定の技術的特徴を有する。この特性は、対象に投与した場合、前記対象の免疫応答を刺激および/または誘導する医薬組成物を作り上げるための本発明の免疫原性複合体の使用を可能にし、および、例えば、アレルギー、感染性疾患または新生物の治療においてワクチンとしての使用を適切にする。
したがって、一態様において、本発明は、医薬組成物を入念に作り上げることにおける本発明の免疫原性複合体の使用に関する。
したがって、別の態様において、本発明は、本発明の免疫原性複合体および医薬として許容される担体を含む医薬組成物(これ以降「本発明の医薬組成物」)に関する。医薬として許容される担体の例は、技術水準において公知であり、リン酸緩衝生理食塩水、水、乳剤、例えば油/水、さまざまなタイプの湿潤剤、滅菌溶解液などが挙げられる。前記担体を含む組成物は、最新技術において公知の従来の手順により製剤化することができる。本発明の免疫原性複合体に関して説明したすべての特定の実施形態は、本発明の態様に適用可能である。さらに、本発明の医薬組成物は、医薬として許容される賦形剤、希釈剤、アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム、リン酸カルシウム、モノホスホリルリピドA、キトサンなど)および/または安定剤(例えば、グリセロール)も有してよい。当業者に理解されるであろうように、本発明の免疫原性複合体は、治療有効量、すなわち、対象において免疫応答を刺激および/または誘導する効果を発揮するために十分な量で、本発明の組成物中に存在するものである。
医薬組成物という用語は、ヒトに使用する組成物または動物の健康管理のために使用する組成物(獣医学的組成物)を含む。
特定の実施形態において、本発明の医薬組成物は、さらに追加の物質を含む。実際に、疾患またはアレルギーの対症療法に有用であると思われる任意の物質が、追加の活性物質として組み込み可能である。前記追加の活性物質の例示的な、限定されない例としては、抗ヒスタミン剤、ステロイドホルモン、クロモグリク酸二ナトリウム、フルチカゾン、ルパタジン、エバスチン、ロラタジン、デスロラタジンおよびヒスタミン受容体の他のアンタゴニスト、ロイコトリエンなど、ならびにこれらの混合物が挙げられる。
本発明の医薬組成物は、任意の適切な経路(例えば、経口、舌下、口周囲、鼻腔内、非経口、経皮、局所投与経路など)で投与可能であり、そのために、選択された投与方法の製剤に必要な医薬として許容される賦形剤および担体が使用される。薬物の投与および調製のさまざまな薬学的方法が、当業者に周知である。例示的な、限定されない方法において、本発明の医薬組成物は、マクロ粒子、ナノ粒子またはリポソームの形態で製剤の一部であり得、固体の薬学的投与形態、液体の薬学的投与形態または分散系を含む薬学的投与形態で投与可能である。より詳細には、本発明の医薬組成物は、注射用溶液、舌下送達に適切な薬学的形態、散剤、ペレット、ビーズ、錠剤、カプセル、シロップ、乳剤、坐薬、点眼薬、噴霧剤、エアロゾル、クリーム、ゲルなどの形態であってよい。本発明の組成物の投薬量計画は、医師および臨床的因子によって決定されるものである。医学において周知であるように、投薬量は患者の身体的特徴(年齢、身長、性別)、使用する送達手順、疾患の重症度、使用する特定の化合物および個体の薬物動態特性を含む数多くの因子に依存する。
特定の実施形態において、前記医薬組成物は、免疫応答の刺激および/または誘導に有用である。別の特定の実施形態において、前記医薬組成物はワクチンとして有用である。別の特定の実施形態において、前記医薬組成物は、対象において、アレルギー、感染性疾患および新生物の治療に有用である。
本発明において、「アレルギー」は、吸引、消化または触れた場合、対象において特徴的な臨床像を生じ、免疫応答、主にIgE応答を誘発する、粒子または物質(「アレルゲン」と呼ばれる)に対する過敏性反応であると理解される。「アレルゲン」という用語は、本開示において上ですでに記載してある。
本発明において、「感染性疾患」は、微生物、例えば細菌、真菌、ウイルス、原虫などにより引き起こされる感染症と一致する臨床症状を指す。感染性疾患の例としては、限定するものではないが、ブルセラ症(ブルセラ属(Brucella spp.))、炭疽病(バチルス・アンシラシス(Bacillus anthracis))、コレラ(ビブリオ・コレラ(Vibrio cholerae))、ジフテリア(コリネバクテリウム・ジフテリア(Corynebacterium diphtheriae))、丹毒(ストレプトコッカス属(Streptococcus spp.))、Q熱(コクシエラ・ブルネッティ(Coxiella burneti))、腸チフス(サルモネラ・ティフィ(Salmonella typhi)、S.パラティフィ(S.paratyphi))、レジオネラ病(レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila))、肺炎(ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)、スタフィロコッカス・オーレウス(Staphylococcus aureus)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、マイコプラズマ属(Mycoplasma spp.)、クラミジア属(Chlamydia spp.))、結核(マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis))および破傷風(クロストリジウム・テタニ(Clostridium tetani))が挙げられる。ウイルス感染性疾患の例としては、限定するものではないが、デング熱(フラビウイルス(Flavivirus))、黄熱病(フラビウイルス(Flavivirus))、エボラ出血熱(フィロウイルス(Filovirus))、インフルエンザ(インフルエンザウイルス(Influenzavirus))、A型肝炎(エンテロウイルス(Enterovirus)(VHA))、B型肝炎(オルトヘパドナウイルス(Orthohepadnavirus)(VHB))、C型肝炎(Hepacivirus(VHC))、ヘルペス、(ヘルペスウイルス(Herpesvirus))、単核球症(エプスタイン−バーウイルス(Epstein−Barr virus))、耳下腺炎(パラミクソウイルス(Paramixovirus))、ブタ熱(ペスチウイルス(Pestivirus))、灰白脊髄炎(エンテロウイルス(Enterovirus))、感冒(ライノウイルス(Rinovirus)、コロナウイルス(Coronavirus)、エコーウイルス(Ecovirus)、コクサッキーウイルス(Coxsackievirus))、狂犬病(ラブドウイルス(Rhabdovirus))、風疹(ルビウイルス(Rubivirus))、はしか(モルビリウイルス(Morbillivirus))、水痘(水痘−帯状疱疹ウイルス(Varicela−zoster))および天然痘(オルソポックスウイルス(Orthopoxvirus))が挙げられる。真菌感染症の例としては、限定するものではないが、アスペルギルス症、カンジダ症、クロモミコーシス、クリプトコッカス症、皮膚糸状菌症、スポロトリクム症、ヒストプラスマ症、連環状ヘルペス(herpes circinatus)、耳真菌症、でん風、角膜真菌症および接合真菌症が挙げられる。原虫により引き起こされる疾患の例としては、限定するものではないが、リーシュマニア症、マラリア、クリプトスポリジウム症、トキソプラズマ症、アメーバ症、ジアルジア症およびシャーガス病が挙げられる。プリオンにより引き起こされる感染性疾患の例としては、限定するものではないが、クロイツフェルト−ヤコブ病、ウシ海綿状脳症(「狂牛病」)、スクラピー(または震え病)、致死性家族性不眠症(FFI)およびクールー病が挙げられる。
本発明において、「新生物」は、悪性の場合、がんと称される塊または腫瘍の形成からなる、細胞増殖、および多くの場合細胞分化の変化により引き起こされる疾患であると理解される。良性新生物の例としては、限定するものではないが、線維腫(線維性結合組織)、粘液腫(組成結合組織)、脂肪腫(脂肪組織)、軟骨種(軟骨組織)、骨腫(骨組織)、血管腫(血管)、リンパ管腫(リンパ管)、髄膜腫(髄膜)、グロームス腫瘍(支持神経組織(supporting neural tissue))、平滑筋腫(平滑筋組織)、横紋筋腫(横紋筋組織)、乳頭腫(乳頭突起を形成する上皮組織)、腺腫(腺組織)および奇形腫(全能細胞)が挙げられる。悪性新生物の例としては、限定するものではないが、肉腫(例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、血管肉腫、リンパ肉腫、滑膜肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫など)、がん腫(例えば、類表皮がんまたは扁平上皮がん、基底細胞がん、腺がん、嚢胞腺がん、絨毛がん、陰茎がん、肺がん、乳がん、結腸癌など)、グリア腫、リンパ腫、白血病、黒色腫、肝細胞がん、精上皮腫、脊索腫および中皮腫が挙げられる。他方で、がんの例としては、限定するものではないが、肺がん、乳がん、結腸および直腸がん、膵臓がん、卵巣がん、白血病、前立腺がんおよび肝臓および膀胱がんが挙げられる。
本発明において、個体または対象は、動物種、好ましくは、限定するものではないが、ペット霊長類およびヒトを含む哺乳動物のメンバーを指し、本明細書の文脈において、個体は、好ましくは、任意の人種または年齢の男性または女性のヒトである。
「ワクチン」は、ひとたび生物内に入ると、特定のリンパ球の活性化および抗原産生を引き起こし、それによって異質な物質または病原性微生物に対する防御応答を引き起こす抗原調製物を指す。この応答は、免疫学的記憶を発生し、対応する病原菌の攻撃に対する一時的または長期免疫を起こし得る。
したがって、本発明は、対象のためのワクチンのカスタマイズを可能にする、すなわち、ワクチンとして使用可能な、本発明の免疫原性複合体を作製するために、対象の必要条件に従って抗原を選択できる。治療/予防される疾患は、本発明の免疫原性複合体を製造するために選択される抗原に依存するものである。したがって、どのようなアレルギー、感染性疾患または抗腫瘍性疾患も、本発明の免疫原性複合体により治療可能である。例えば、対象がアレルギーであるアレルゲンを知ることにより、選択されたアレルゲン(複数可)を含む免疫原性複合体を、本発明に従って調製することができ、これを対象に投与して、免疫応答を発生させる、したがって、アレルギーを治療することができる。
したがって、別の態様において、本発明は、本発明の免疫原性複合体を含むワクチンに関する。
本発明の治療方法
別の態様において、本発明は、対象においてアレルゲンにより引き起こされる感染性疾患、新生物またはアレルギー反応を予防および/または治療する方法に関し、前記方法は、本発明の免疫原性複合体または本発明の医薬組成物を対象に投与するステップを含む。
説明および特許請求の範囲を通して、「含む」という用語およびその変化形は、他の技術的特徴、添加物、成分またはステップを排除するものではない。当業者には、本発明の他の目的、有利性および特徴は、一部は本発明の説明に、一部は本発明の実践からから解明されるであろう。以下の実施例および図面は例示目的で提供するものであり、本発明を限定する意図のものではない。
図1は、過ヨウ素酸塩によるマンナンの酸化反応のグラフィック表現である。このスキームは、酵母由来のマンナン中の2つのタイプのグリコシド結合、アルファ(1−2)およびアルファ(1−6)を示す。過ヨウ素酸塩による酸化は、どちらの場合もピラノース環を変質させる。 図2は、過ヨウ素酸塩により予備処理されたマンナンおよび処理されていないマンナンの1次元スペクトルのグラフィック表現である。予備処理されたマンナン中にアルデヒド基が出現している。 図3は、いくつかの重合アレルゲン(黒い棒)中の遊離のアミノ基の百分率を、その天然の非重合形態中のアレルゲン値(白い棒)の中から抜き出して表す4つのチャートを示す図である。示した図は、少なくとも4つの異なるバッチの平均である。 図4は、ウシ血清アルブミン(BSA)をあらかじめ酸化したマンナンで処理下後の、変性条件下の電気泳動(PAGE)の結果を示す画像である。これらのレーンは、コンジュゲーション後の粗混合物(コンジュゲートされたBSA)およびAMICON YM100でのろ過による2種の試料に対応である(100kDa未満のBSAおよび100kDaを超えるBSA)。 図5は、チモシー(Phleum pratense)の天然抽出物由来のアミノ酸およびチモシー(Phleum pratense)のポリマー由来のアミノ酸の、ガスクロマトグラフィーによる分析を示すチャートである。遊離のリジンの有意な減少が、重合試料において観察される。 図6は、S.セレビシエ(S.cerevisiae.)由来のマンナンストック試料由来のアミノ酸の分析を示すチャートである。 図7は、さまざまな比(タンパク質:炭水化物)でマンナンと重合された試料の1次元スペクトルを示すチャートである。マンナンなしで重合された試料を対照として使用した。 図8は、さまざまな比(タンパク質:炭水化物)でマンナンと重合された試料の2次元スペクトル(DOSY)「Diffusion Ordered SpectroscopY」を示すチャートである。マンナンなしで重合された試料を対照として使用した。 図9は、ガスクロマトグラフィーにより分析された、チモシー(Phleum pratense)のさまざまな試料の単糖類の百分率のグラフィック表現を示す図である。 図10は、チモシー(Phleum pratense)の試料:天然抽出物(非重合)、重合(マンナン非含有)および比(1:0.5)の接合重合を比較する1次元スペクトルを示すチャートである。 図11はチモシー(Phleum pratense)の試料、非重合ならびにマンナンとの重合およびマンナンなしの重合の2次元スペクトル(DOSY)「Diffusion Ordered SpectroscopY」を示すチャートである。 図12は、チモシー(Phleum pratense)のさまざまな試料を比較する、2次元スペクトルHSQC(H−C)を示すチャートである。非単量体範囲の領域を拡大した。 図13は、さまざまな比(タンパク質:炭水化物)でマンナンと重合された(コナヒョウダニ(D.farinae))のダニ抽出物試料の2次元スペクトル(DOSY)「Diffusion Ordered SpectroscopY」を示すチャートである。マンナンなしで重合された試料を、対照として使用した。 図14は、コナヒョウダニ(D.farinae)の試料:天然抽出物、重合(マンナン非含有)および比(1:0.3)の接合重合の1次元スペクトルを重ねたチャートである。 図15は、ガスクロマトグラフィーにより分析された、コナヒョウダニ(D.farinae)のさまざまな試料の単糖類の百分率のグラフィック表現を示す図である。 図16は、コナヒョウダニ(D.farinae)の試料、非重合ならびにマンナンとの重合またはマンナンなしの重合の2次元スペクトル(DOSY)「Diffusion Ordered SpectroscopY」を示すチャートである。 図17は、コナヒョウダニ(D.farinae)の、a)天然抽出物、b)重合およびc)マンナンとの重合マンナン(1:0.3)の試料の電子顕微鏡画像である。 図18は、さまざまな時間におけるチモシー(Phleum pratense)の1次元プロトンスペクトルを示す、一群のチャートである。 図19Aは、天然アレルゲン(非重合)、重合された、非マンノシル化アレルゲンおよびグルタルアルデヒドでマンノシル化されたアレルゲンを用いた、チモシー(Phleum pratense)の天然抽出物に対するIgE−結合阻害に関するELISAアッセイの結果を示すチャートである。図19Bは、チモシー(Phleum pratense)の抽出物の、SDSの存在下のポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)およびアレルギー患者の血清を用いた免疫検出(イムノブロッティング)に対応する画像である:PAGEにより分離されたタンパク質とのIgE反応性。Pm=分子量パターン;1=天然アレルゲン;2=重合された非マンノシル化アレルゲン;3=グルタルアルデヒドでマンノシル化されたアレルゲン。 図20Aは、天然アレルゲン(非重合)、重合された非マンノシル化アレルゲンおよびグルタルアルデヒドでマンノシル化されたアレルゲンを用いた、それぞれ、ヤケヒョウダニ(D.pteronyssinus)およびコナヒョウダニ(D.farinae)の天然抽出物に対するIgE−結合阻害に関するELISAアッセイの結果を示すチャートである。図20Bは、ヤケヒョウダニ(D.pteronyssinus)およびコナヒョウダニ(D.farinae)の抽出物の、SDSの存在下のポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)およびアレルギー患者の血清による免疫検出(イムノブロッティング)に対応する画像である:PAGEにより分離されたタンパク質とのIgE反応性。Pm=分子量パターン;1=天然アレルゲン;2=重合された非マンノシル化アレルゲン;3=グルタルアルデヒドでマンノシル化されたアレルゲン。 図21は、同じタンパク質濃度の非重合抽出物(天然)、重合抽出物(Pol)またはマンナンと重合された抽出物(Polマンナン)を用いた、チモシー(Phleum pratense)またはコナヒョウダニ(D.farinae)に対してアレルギーの患者におけるex vivoの好塩基球活性化試験の結果を示す一群のチャートである。好塩基球活性化の分析を、BASOTEST(登録商標)キットを使用して、フローサイトメトリーにより実施した。 図22は、同じタンパク質濃度の非重合抽出物(天然)、重合抽出物(Pol)またはマンナンと重合された抽出物(Polマンナン)による、チモシー(Phleum pratense)に対してアレルギーの患者におけるin vivo応答についてのアッセイ(プリック試験)の結果を示すチャートである。 図23は、同じタンパク質濃度の非重合抽出物(天然)、重合抽出物(Pol)またはマンナンと重合された抽出物(Polマンナン)を用いた、コナヒョウダニ(D.farinae)に対してアレルギーの患者におけるin vivo応答についてのアッセイ(プリック試験)の結果を示す値の箱ひげ図である。 図24Aは、ヒト単球由来樹状細胞(DC)の、重合(Pol)チモシー(Phleum pratense)(Pol)または重合およびマンノシル化(Polマンナン)チモシー(Phleum pratense)由来のアレルゲンの取込みに関するアッセイにおいて得られた結果を示すグラフィック表現である。このアッセイを、このイネ科抽出物に付随する色素の自己蛍光を利用するフローサイトメトリーにより実施した。図24Bは、ヒト単球由来樹状細胞(DC)の、システインにおいてAlexa488で標識された、非重合(天然)チモシー(Phleum pratense)、重合(ポリマー)またはマンナンと重合(Polマンナン)されたチモシー(Phleum pratense)由来アレルゲンの取込みについて得られた結果を示すグラフィック表現である。このアッセイを、2つのインキュベーション時間(1および5分)で実施し、フローサイトメトリーにより分析した。上部は、二重陽性細胞(右上の象限)を示し、Alexa488を捕捉するDC(HLADR+)が濃縮されている。下部は、一緒にインキュべートされた調製物によるDCの平均蛍光強度を示す。図24Cは、30分のインキュベーション後の、さまざまな蛍光化調製物(Alexa488)の中のDCによる取込みの差を理解するための、微小領域の共焦点顕微鏡の試料表現である。さまざまな複合体に付随する蛍光は、細胞内の小さい白い点の形態で、図内に見ることができる(上のパネルでポジティブである同じものが、下のパネルではネガティブな黒い点となっており、捕捉された蛍光色素が同定しやすくなっている)。 図25は、天然(N)チモシー(Phleum pratense)、重合(P)チモシー(Phleum pratense)およびマンナンと重合(PM)されたチモシー(Phleum pratense)由来の抽出物を用いて24時間の間刺激された樹状細胞(DC)の上清におけるサイトカインの産生を示す1群のチャートである。 図26は、非重合(天然)チモシー(Phleum pratense)、重合および非マンノシル化(Pol)チモシー(Phleum pratense)または重合されたマンノシル化(Pol−Man)チモシー(Phleum pratense)由来のアレルゲンを用いて刺激された樹状細胞中の成熟マーカーの発現を示すチャートである。 図27は、非重合(天然)コナヒョウダニ(D.farinae)、重合および非マンノシル化(Pol)または重合およびマンノシル化(Pol−Man)されたコナヒョウダニ(D.farinae)由来のアレルゲンを用いて刺激された樹状細胞中の成熟マーカーの発現を示すチャートである。 図28は、チモシー(Phleum pratense)由来の、重合された(Pol)、または重合およびマンノシル化された(Pol Man)アレルゲンを用いた、ex vivo免疫化アッセイ後の特異的IFNγ、IL−10およびIL−4産生細胞の誘導を示すチャートである。産生細胞の量は、ELISPOTにより決定した。 図29は、コナヒョウダニ(D.farinae)由来の、重合化された(Pol)または重合およびマンノシル化された(Pol Man)アレルゲンを用いた、ex vivo免疫化アッセイ後の特異的IFNγ、IL−10およびIL−4産生細胞の誘導を示すチャートである。産生細胞の量は、ELISPOTにより決定した。 図30は、Balb/cマウスの免疫化プロトコルのスキームである。 図31は、リンパ球増殖アッセイに従ったプロトコルのスキームである。 図32は、5μgの、重合され、マンノシル化されていない(ポリマー)チモシー(Phleum pratense)由来アレルゲンまたは重合され、マンノシル化された(ポリマーマンナン)チモシー(Phleum pratense)由来アレルゲンで免疫化されたマウスにおける増殖応答を示すチャートである。増殖アッセイはCSFEを用いた。 図33は、20μgの、重合され、マンノシル化されていない(ポリマー)コナヒョウダニ(D.farinae)由来アレルゲンまたは重合され、マンノシル化された(ポリマーマンナン)コナヒョウダニ(D.farinae)由来アレルゲンで免疫化されたマウスにおける増殖応答を示すチャートである。増殖アッセイはCSFEを用いた。 図34は、チモシー(Phleum pratense)由来の天然(非重合)アレルゲンに対する応答としての、チモシー(Phleum pratense)由来のポリマーで免疫化されたマウスの脾臓細胞によるサイトカインの産生を示す一群のチャートである(図34Aおよび34B)。バーは、同じ群のマウスの平均を表す。灰色のバー:非マンノシル化ポリマー;黒いバー:マンノシル化ポリマー。 図35は、コナヒョウダニ(D.farinae)由来の天然(非重合)アレルゲンに対する応答としての、コナヒョウダニ(D.farinae)由来のポリマーで免疫化されたマウスの脾臓細胞によるサイトカインの産生を示す一群のチャートである(図35Aおよび35B)。バーは、同じ群のマウスの平均を表す。灰色のバー:非マンノシル化ポリマー;黒いバー:マンノシル化ポリマー。 図36は、重合され、マンノシル化されないアレルゲン(ポリマー)、または重合され、マンノシル化されたアレルゲン(ポリマーマンナン)で免疫化されたマウスの血清中に検出された、その天然(非重合)形態のチモシー(Phleum pratense)由来のアレルゲンに対する特異的抗体のレベルを示す一群のチャートである(図36Aおよび36B)。下のチャートは、IgG2aおよびIgEクラスの各免疫原により誘導された特異的抗体のレベルの間の比を表す。 図37は、重合され、マンノシル化されないアレルゲン(ポリマー)、または重合され、マンノシル化されたアレルゲン(ポリマーマンナン)で免疫化されたマウスの血清中に検出された、その天然(非重合)形態のコナヒョウダニ(D.farinae)由来のアレルゲンに対する特異的抗体のレベルを示す一群のチャートである(図37Aおよび37B)。下のチャートは、IgG2aおよびIgEクラスの各免疫原により誘導された特異的抗体のレベルの間の比を表す。
アレルゲン(重合または非重合)と酸化マンナンとのコンジュゲーションによるワクチン作製
1.マンナンの酸化
サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)由来のマンナンを、100KDaカットオフ膜を使用する限外ろ過によりあらかじめ分取した。低分子量ろ過分画を回収し、過ヨウ素酸塩による酸化に供した。図1は、マンノースの完全性およびアルデヒド基の発生にわたった、過ヨウ素酸塩の理論上の作用を示す。図2において、マンナンの酸化後のこれらの基の発生は、実験的に実証されている。
2.アレルゲンの重合
さまざまな起源(チモシー(Phleum pratense)、オリーブ(Olea europea)、ヤケヒョウダニ(Dermatophagoides pteronyssinus)およびセイヨウヤマハンノキ(Alnus glutinosa))由来のアレルゲンを、グルタルアルデヒドを使用して重合した。図3は、その天然非重合形態中のアレルゲンの値にわたった重合されたアレルゲン中のアミノ基の減少を示す。アミノ基の存在は、ヨーロッパ薬局方(2.2.56項、アミノ酸の分析)に従ってニンヒドリンを用いた反応により決定した。
3.酸化マンナンと、BSA(ウシ血清アルブミン)とのコンジュゲーション
得られた結果は、ポリアクリルアミド電気泳動により実証されるように、BSAと酸化マンナンとの間にコンジュゲーションが存在したことを示した。[図4、(コンジュゲートされたBSA)]。同じ図は、限外ろ過による最も大きな100kDaの分画の中に保持されるコンジュゲートBSAの分画が、BSA単量体としてどれほど大きく現れたかを示す。これは、大きな百分率で形成されたと思われるコンジュゲートが変性状況下で、初期状態に戻ったことを暗示しており、予備酸化マンナンとのコンジュゲーション反応が十分な安定性を有する生成物を生じないことを示す。これらのコンジュゲートの安定化は、対応するより安定な二次アミンを得るために、コンジュゲーション反応において形成される、シアノ水素化ホウ素ナトリウムによるシッフ塩基の化学的還元を伴う、還元的アミノ化と称される化学過程により実施することができる。しかし、この反応は、出発試薬(マンナンおよびタンパク質)中のいずれにも存在しない、したがって、定義および特徴付けを必要とする、官能基および化学的実体(二次アミン)を生じる、初期物質の新しい化学的変換を暗示する。
4.酸化マンナンと、グルタルアルデヒドを用いてあらかじめ重合されたチモシー(Phleum pratense)アレルゲン由来のタンパク質抽出物とのマンナンのコンジュゲーション。
ポリマー中の遊離アミノ基の有意な減少(図3)により、コンジュゲーションの成功が達成可能であったかは明確ではないが、予備酸化マンナンとチモシー(Phleum pratense)由来のアレルゲン重合体とのコンジュゲーションを、アルブミンに関して記載されたプロトコル(Masarova,J. and Mislovicova,D.2002.Int.J.Polymer.Anal.Charact.,7:106−116)に従って試験した。予想したように、グルタルアルデヒドを用いた重合後、遊離のリジンの量は、天然非重合抽出物に対する全アミノ酸の%で1/4.5である(図5)。
酸化マンナンを、重合チモシー(Phleum pratense)由来の抽出物(100KDaを超える分子サイズを有する材料)とコンジュゲートさせた。その後、反応生成物を、100KDa膜を介して再度分取した。このステップにおいて、元の重合抽出物およびコンジュゲートされたマンナンが見出される、100KDaより大きい物を保持する分画を回収した。
保持された試料の全炭水化物含有量を、アントロンを用いた比色分析により分析し、マンナンで処理されなかった重合抽出物の初期含有量と比較して、試料中に炭水化物量の有意な増加は観察されなかった。他方、核磁気共鳴研究(1次元および2次元研究)は、両方の化合物の間に共有結合も分子レベルの構造的違いも示さず、このコンジュゲーションプロトコルにより、両方の成分の間に分子相互作用は得られず、したがって、両方の生成物の間に結合またはコンジュゲーションが得られなかったことを示した。理論に縛られることを望むものではないが、このことは、(主にリジンにより提供される)遊離アミノ基の減少によるもの、ならびにタンパク質材料がポリマーであり、およびそれによって、柔軟性のほとんどない剛性構造であることによる、遊離の残存リジンの接近可能性の低さによると思われる。この可能性は、同じ負の結果がグルタルアルデヒドを用いてあらかじめ事前に重合された、したがって、図3に示すように遊離アミノ酸が減少した他のアレルゲンを用いても得られたという事実により裏付けられた。
5.結論
これらの結果は、チモシー(Phleum pratense)の重合試料(および他の重合アレルゲン)と酸化マンナンとの間のコンジュゲーションの欠落を明らかにした。この事実は、酸化後のマンノースの変形に関係する不利益(図1)(Shibuya,N.,et al.1988.Journal of Biological Chemistry,263:728−734)およびBSAのようなリジンに富んだタンパク質と形成されたコンジュゲートであっても安定性が欠落することと共に(図4)、重合アレルゲンワクチンの作製におけるその使用に関するこの方法論の却下を可能にする。
グルタルアルデヒドを使用してマンノースと重合されたアレルゲンのコンジュゲーションによるワクチンの作製
材料および方法
タンパク質抽出物の重合およびコンジュゲーションの方法は、下記のステップからなる:
1.手順は、チモシー(Phleum pratense)由来の凍結乾燥抽出物から開始し、この凍結乾燥抽出物を、必要体積のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で、最終タンパク質濃度が2mg/mLに到達するように再構成する。その後、pHを、リン酸カリウム緩衝液またはリン酸ナトリウム緩衝液を使用して、必要に応じて抽出物のpHを低下または上昇させて7.2に調整し、タンパク質濃度を、pH調整に使用した緩衝液の体積を考慮に入れて計算する。
Ex.:出発タンパク質の量:チモシー(P.pratense)由来のタンパク質300mg
PBSの必要体積:150mL
pHを7.2に調整するために必要な体積:1mLの緩衝液
試料の最終濃度:1.986mg/mL
2.抽出物の重合およびコンジュゲーション反応:
重合化剤、この場合グルタルアルデヒドを、撹拌しながら、最終濃度が0.025Mに到達するまで抽出物に滴加する。
試料のコンジュゲーションのためのマンナンを、この時点で1:0.5(タンパク質質量:マンナン質量)の比でさらに加える。反応液は、15時間、4℃において撹拌しながら維持する。
Ex.:グルタルアルデヒドの初期濃度:2.5M。
抽出物に加える体積:1.5mL
マンナン(タンパク質:炭水化物の比1:0.5):90mg。
3.反応の停止:
抽出物を室温(25℃)に温め、粉末化グリシンを加えて、重合反応を停止させる。グリシンは過剰、例えば、グルタルアルデヒドに対して1:50の比でなければならない。グリシンを試料に溶解して、4℃において撹拌しながら2時間放置する。
Ex.:初期グリシン濃度(分子量:75.07):1.25M
グルタルアルデヒド濃度:0.025M
抽出物体積:152.5mL(初期151mL+1.5mLのグルタルアルデヒド)
加えるグリシンの量:14.31g

4.抽出物を、塩および非重合残基の可能性を除去するために、次いで7体積の蒸留水に対して透析する。100kDa細孔膜を用いたクロスフローろ過系(Pellicon、Merck Millipore)を使用する。
Ex.:抽出物体積:152.5mL
水の体積:1.525mL
5.最後に、マンナンと重合およびコンジュゲートされた抽出物を、0.22μmを介してろ過し、アリコートを取り、−60℃において凍結させ、保存のために凍結乾燥させる。
結果
前記方法を適用する結果として、元々のアレルゲンに対して免疫学的に改善されたマンノシル化ポリマーが得られた。グルタルアルデヒドによる処置は、両方の構造(アレルゲンおよびマンナン)の結合を可能にし、重合およびコンジュゲーションを同時に引き起こし、このことは、下記の実施例(実施例3)において示される結果により実証される。
前記マンノシル化ポリマーは、天然または重合された非マンノシル化アレルゲンより優れた構造的および免疫学的特性を有し、このことは、実施例4および実施例5−10においてそれぞれ示される。
したがって、グルタルアルデヒドを使用して、単一ステップでマンナンと重合された抗原とをコンジュゲーションし、マンノース構造の完全性が維持される方法が確立される。このように実行するために、一方で、天然起源、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)由来のマンナンが、酵母において合成されるマンナンで、リジンを含有する元々のマンノプロテインのペプチド残基を有するという事実を上手に利用し、(図6)化学コンジュゲーションをもたらす。他方で、溶液中の、重合性の分枝した剛性構造のマンナンとタンパク質由来のポリマーとを十分使用して、前者が、グルタルアルデヒドにより重合されたタンパクにより捕捉され、物理的コンジュゲーションをもたらす。両方の場合のいずれにおいても、相互排他的ではなく、その天然形態(非重合)のタンパク質およびマンナの混合物のグルタルアルデヒド処理が、両方の構造の結合を可能にし、コンジュゲーションおよび重合を同時に発生させる。
グルタルアルデヒドとの反応による、アレルゲン(イネ科およびダニ)の重合およびマンナンとのコンジュゲーションに関する証拠
材料および方法
実施例2で得られた凍結乾燥試料の2mgのアリコートを、0.5mLの重水に溶解し、核磁気共鳴(nucleas magnetic resonance)(NRM)により、クライオプローブを装備した500MHz Bruker Advance分光計または600MHz Bruker Advanceで分析した。1次元プロトン共鳴スペクトル、2次元プロトン−炭素13ヘテロ核(hetronuclear)相関スペクトル(HSQC;Zwahlen et al.,1997.J.Am.Chem.Soc.119:6711−6721)および並進拡散により順序づけられた2次元スペクトル(DOSY,Wu et al.1995.J. Magn.Reson.A.115:260−264)を、製造業者のBruker Biospin Corporation(Billerica、Massachusetts、USA)により規格化および実行されたプロトコルに従って、スペクトル獲得およびプロセシングソフトウェアTOPSPINで、さまざまな試料から得た。
試料の炭水化物およびタンパク質含有量を、全炭水化物の分析のために、アントロン法(Shields,R. and W.Burnett.1960.Analytical Chemistry 32:885−886)を使用し、タンパク質の分析のためにBradford法(Bradford,M.M.1976.Analytical Biochemistry 72:248−254)を使用して、比色分析技術により分析した。
さまざまな単糖類率の分析を、試料の糖質部から、これらのアルジトール酢酸の形態で放出された単糖類の全酸加水分解およびガスクロマトグラフィー分析を用いて実施した(M.F.Chaplin & J.F.Kennedy editors,Carbonhydrate Analysis:a practical approach.(1986)Oxford IRL PRESS)。
試料のタンパク質部中のさまざまなアミノ酸の分析を、試料の全酸加水分解により実施し、放出されたアミノ酸の液体クロマトグラフィーによる分析を、Biochrom Aminoacid Anlyzer機器において実施した。
結果
3.1.マンナンと重合された抽出物の適切なコンジュゲーションを可能にするより適切な割合を確立するための、チモシー(Phleum pratense)とさまざまな割合のマンナンとの接合重合の研究。
タンパク質:マンナンのさまざまな比を用いてこの過程において得られた試料の構造を、核磁気共鳴(NMR)により、マンナンを含まない重合体試料を使用して分析した。そのままで重合したタンパク質抽出物は、試料それ自体が属するオリゴ糖残基を有し(12−20%)、このことはガスクロマトグラフィーにより確認された(単糖類分析)。媒体中の糖の量を増加すると、予想されたように、スペクトル中の多糖類シグナルもまた増加した(図7)。並進拡散研究を実施し、この研究は、その拡散係数に従って化合物を順序付けし、順に分子サイズに依存する研究である(NMRによる2次元スペクトル;2次元スペクトル(DOSY)「Diffusion Ordered SpectroscopY」)。この研究において、マンナンと重合された試料において、非重合試料中より大きい粒子が存在したことが観察でき、これは、すべての場合においてタンパク質抽出物とマンナンとの間の会合を示す(図8)。特に、比1:4の場合、大量のオリゴ糖部が観察され、反応媒体中の過剰の炭水化物によると思われる。
他方、タンパク質および糖の量を、おおまかに言うと、重合過程に供された試料のタンパク質:糖の比を確立すべく定量し、それを、初期割合と比較する(表1)。
Figure 2016515603
比が1:4の重合試料の場合、反応媒体中に見出される初期量が非常に過剰であり、未反応部が洗浄ステップで除去されるので、この過程後の糖の量が低い割合で得られたのは正常であった。残りの試料中に、初期割合と比較して多糖類割合の増加が見出され、これは、共有結合された多糖類残基を有する抽出物それ自体によるものである。
ひとたびデータがすべて得られたら、炭水化物の試料への組み込みを確実にし、マンナンの使用を最小にする比(1:0.5)を選択した。
3.2.このタンパク質−炭水化物比におけるチモシー(Phleum pratense)の接合重合分析
3.2.1 ガスクロマトグラフィーによる炭水化物分析
凍結乾燥材料の溶解液から出発して、全試料に関する乾燥重量中の炭水化物百分率を、ガスクロマトグラフィーを使用して、酸加水分解(アルジトール分析)により定量した(Fukuda,M. & Kobata,A.1993.Glycobiology.A Practical Approach. The practical Approach Series. Oxford University Press Inc.,New York.)。
三種の試料を分析した(図9):
−チモシー(Phleum pratense)の天然抽出物
−重合されたチモシー(Phleum pratense)
−マンナン(1:0.5)と重合されたチモシー(Phleum pratense)
結果は、重合試料(マンナン非含有)および天然抽出物に対して、接合重合に供された試料中でマンノースの有意な増加が示された。
3.2.2 NMR(核磁気共鳴)研究
NMRによる構造研究は、重合試料においてシグナルの広幅化を示し、サイズの増大を示し、これは、並進拡散DOSY(Diffusion Ordered SpectroscopY)による2次元スペクトルで裏付けられる(図10および11)。この2次元実験において、非重合タンパク質抽出物の場合、さまざまなサイズの材料が存在し、したがって、重合した場合にその平均分子サイズが増加する非常に異質な試料であることが観察できる。他方、抽出物をマンナンの存在下で重合した場合、重合体よりさらに低い拡散係数(より大きいサイズの指標となるデータ)を有する材料もまた得られ(多糖類が高分子量であるため)、多糖類およびタンパク質抽出物の間の結合または相互作用を示し、スペクトルの両方の部、炭水化物領域およびタンパク質領域が、同じ拡散係数を有するので、両方成分の間の相互作用を示している。これらの核磁気共鳴実験は、マンナンの存在下でグルタルアルデヒドを使用してタンパク質抽出物を重合後、タンパク質:マンナンのコンジュゲーションを裏付けている。
他方で、NMRによる別の2次元研究を、炭素13およびプロトン(13C−1H)の間のヘテロ核相関に基づき実施した(HSQC、「ヘテロ核単一量子コヒーレンス(Heteronuclear Single Quantum Coeherence)」)。これらの研究は、原子レベルで水素と炭素の間の結合を示し、各結合は、スペクトルおよび位置(座標:横軸、Hの化学シフト;縦軸:13Cの化学シフト)からの具体的な相関シグナル(ピーク)に対応し、これは化合物のタイプに依存して異なる。シグナルの群(H−C結合)は、「フィンガープリント」と同様の方法で、各化合物に特異的および排他的な2次元パターンを引き起こす(Claridge,T.D.W.1999.High−resolution NMR techniques in Organic Chemistry.Tetrahedron Organic Chemistry Series.Elsevier)。
3種のHSQC実験を実施して、試料の各タイプの特徴的パターンを識別した:
−マンナン非含有
−チモシー(Phleum pratense)由来の重合体
−マンナン(1:0.5)の存在下のチモシー(Phleum pratense)由来の重合体
マンナンの存在下で重合された試料は、マンナンの特徴的シグナルおよび試料それ自体の内在性炭水化物の特徴的シグナルを提示し、タンパク質抽出物と多糖類との間の相互作用を示す(図12)。
3.3.さまざまなマンナン割合を用いたコナヒョウダニ(D.farinae)の接合重合過程の研究
チモシー(Phleum pratense)により得られた結果から出発して、予備実験を、タンパク質:炭水化物の比(1:0.5)で実施したが、それにもかかわらず、得られた結果は、タンパク質材料と会合しなかった過剰のマンナン残基(図13、黒い円で区切られたシグナル)が観察されたので、チモシー(Phleum pratense)抽出物のそれぞれの場合ほど満足ではなかった。新たな重合を、媒体中のより低い炭水化物比で実施した(1:0.3および1:0.15)。遊離の形態(図13ボックスc 黒い円)ではなく、主にタンパク質と会合した形態で試料中にマンナンの組み込みが観察され(図13、ボックスb)ので比(1:0.3)を選択し、マンナンのこの組み込みは、比(1:0.15)による組み込みより高く、比1:0.3は最も大きな攪乱においても、タンパク質部に対応するスペクトル領域においても観察された(図13)。
3.3.1タンパク質:炭水化物の比が(1:0.3)におけるコナヒョウダニ(D.farinae)の接合重合の分析
図14は、比1:0.3のマンナンの存在下で重合されたコナヒョウダニ(D.farinae)抽出物由来の試料の1次元プロトンスペクトルの定性比較を、マンナンの不在下で重合された試料および非重合抽出物試料と関連して示す。スペクトルは、マンナンと重合された試料中のマンナンに特異的なシグナルおよびタンパク質に特異的なスペクトル領域における、重合により起こる分光パターンの変化を示す。
3.3.1.1 ガスクロマトグラフィーによる炭水化物分析
凍結乾燥材料溶解液から出発して、全試料に関する乾燥重量中の炭水化物百分率を、ガスクロマトグラフィーにより定量した(Fukuda,M. & Kobata,A.1993.Glycobiology.Oxford University Press Inc.,New York)。
3種の試料を分析した(図15):
−コナヒョウダニ(D.farinae)天然抽出物
−重合されたコナヒョウダニ(D.farinae)
−マンナン(1:0.3)と重合されたコナヒョウダニ(D.farinae)
コナヒョウダニ(D.farinae)の抽出物および重合体は、内在性オリゴ糖残基を試料それ自体に含有する(ガスクロマトグラフィーによる決定でおよそ17−20%、グルコース、マンノースおよびガラクトースが多く存在する)。マンナンとの接合重合産物に関する結果は、マンナンを含まずに重合された試料および天然抽出物の両方に対して、マンノースの有意な増加を示した。
3.3.1.2 NMR(核磁気共鳴)研究
比(1:0.3)(タンパク質:マンナン)における同時の重合およびコンジュゲーションにおいて得られた試料を、NMRにより分析した。これらの結果は、重合試料におけるシグナルの広がりを示し、2次元スペクトルDOSY(図16)において裏付けられる分子サイズの増加を示した。チモシー(Phleum pratense)の場合と同様に、マンナンと重合された試料は均質であり、マンナンを含まずに重合された試料より大きなサイズであり、多糖類と、コナヒョウダニ(D.farinae)のタンパク質抽出物との間の会合、したがって、両方の成分のコンジュゲーションの確認を示す。
3.3.1.3 透過電子顕微鏡法
コナヒョウダニ(D.farinae)のさまざまな試料の透過電子顕微鏡法による画像により、本発明者らは、天然抽出物および重合抽出物の間の構造レベルの違いを観察できた。重合が、より高密度の粒子をもたらし、マンナンとのコンジュゲーションがさらに、ポリマー中に明らかにみられる形態学的および構造レベルの変化を生み出す場合、多糖類とタンパク質抽出物との間の会合のさらなる証拠である(図17)。
グルタルアルデヒドとの反応による重合およびマンノシル化は、非マンノシル化ポリマーより安定なポリマーを作製する。
チモシー(Phleum pratense)の3種の試料の安定性を、水性媒体中の長期保存に対して比較し、3種の試料うちの1種はマンナン(タンパク質/マンナン比は1:0.5)の存在下で重合され、もう1種はマンナンの不在下で重合され、および非重合アレルゲンそれ自体であった。実施例3で分析したアリコートと等価のアリコート試料を、重水に溶解し、NMRにより分析して、その後4℃において保存した。試料はNMR管から取り出さず、他の操作もしなかった。保存4ヶ月後、NMR実験を、これらの溶解液条件下(4℃の重水)における試料の安定性をチェックするように、同じ取得パラメーターに従って反復した。初回と4か月後のスペクトルの差(分光器のそのままのTOPSPINソフトウェアにより実施されたスペクトルの減算)として表された結果は、重合試料が、天然抽出物(40%のシグナル喪失)より安定であることを示し、マンナンとのコンジュゲーションは、試料シグナルのわずか4%が喪失しただけで、試料の分解/沈殿の低指数を示したので、さらにより安定性を増加させることを示した(図18)。
グルタルアルデヒドによりマンノシル化されたポリマーは、これらのアレルゲン性の喪失に関して非マンノシル化ポリマーと同等である。
5.1.−特異的IgE抗体による反応性アッセイ
材料および方法
IgE反応性アッセイを、阻害ELISA技術により実施した。96ウェルプレート(Microlon、高結合能、Greiner bio−one、Germany)を、0.05M炭素/重炭酸塩緩衝液、pH=9.6で希釈された1μgの天然抽出物/ウェルを播種した。このプレートを、4℃において一晩放置した。翌日、プレートを、PBS−t緩衝液(0.25%Tween−20含有リン酸緩衝液)で洗浄し、プレートに、各事例において対応する(イネまたはダニにアレルギーの)アレルギー患者由来の血清プールおよび阻害剤(天然抽出物、重合抽出物およびマンノシル化重合抽出物)を100μg/mLから0.01μg/mLの1/2連続希釈液で加えた。このプレートを混合物と一緒に、一晩インキュベートし、翌日PBS−tで洗浄後、ペルオキシダーゼ(Southern Biotech、USA)の1:2000希釈液により標識された抗ヒトIgEモノクローナル抗体と一緒にインキュベートした。プレートを、OPD系(Sigma Aldrich、USA)により30分間発色させた。反応を、水で1/10に希釈した塩酸で停止させ、プレートを492nmにおいて読み取った。
天然抽出物、重合抽出物ならびに重合およびマンノシル化された抽出物のIgE反応性を、電気泳動および免疫検出によりさらに分析した。抽出物のタンパク質分離を、ポリアクリルアミドゲルにおいて、変性条件下で実施した(SDS−PAGE)。免疫検出を、電気泳動により分離されたタンパク質をニトロセルロース膜(Bio Rad、Germany)に転写して、実施した。この膜を、5%BSA(ウシ血清アルブミン)を含むPBS−tでブロックし、アレルギー患者由来の血清と一緒にインキュベートした。その後、これらを、ペルオキシダーゼ(Southern Biotech、USA)の1:2.000希釈液により標識された抗ヒトIgEモノクローナル抗体と一緒にインキュベートした。ECL化学発光系(GE−Healthcare、USA)を、発色のために使用した。
結果
5.1.1 グルタルアルデヒドを用いてマンノシル化されたチモシー(Phleum pratense)のポリマーとのIgE反応性の喪失は、非マンノシル化ポリマーの反応性喪失と同等である。
図19Aは、マンノシル化された、またはされていないチモシー(P.pratense)の重合アレルゲンが、天然アレルゲンより低いIgE反応性を示すことが理解できる阻害ELISAを示す。図19Bは、アレルギー患者由来の血清を用いて実施されたゲル電気泳動および免疫検出の両方におけるチモシー(P.pratense)のアレルゲン性タンパク質に対応するバンドを示し、一方、重合アレルゲンならびに重合およびマンノシル化アレルゲンに対応するレーンには、バンドが観察されない(PAGE−SDS)か、またはIgE結合が観察されない(免疫検出)。
5.1.2 グルタルアルデヒドを用いてマンノシル化されたヤケヒョウダニ(D.pteronyssinus)およびコナヒョウダニ(D.farinae)のポリマーとのIgE反応性の喪失は、非マンノシル化ポリマーと同等である。
図20Aは、マンナンとコンジュゲートされた、またはされていないヤケヒョウダニ(D.pteronyssinus)およびコナヒョウダニ(D.farinae)の重合アレルゲンが、同様のIgE反応性を有し、この反応性が天然アレルゲンにおいて観察される反応性より低いことが理解できる阻害ELISAを示す。図20Bは、アレルギー患者由来の血清を用いて実施されたゲル電気泳動および免疫検出の両方における、両方のダニ種のアレルゲン性タンパク質に対応するバンドを示し、一方、重合アレルゲンならびに重合およびマンノシル化アレルゲンに対応するレーンには、バンドが観察されない(PAGE−SDS)か、またはIgE結合が観察されない(免疫検出)。
5.2.ex vivoのヒト好塩基球活性化試験
チモシー(Phleum pratense)およびコナヒョウダニ(D.farinae)のさまざまな調製物の、これらのアレルゲンに対してアレルギーである患者の好塩基球を活性化する能力に対する評価を実施した。
材料および方法
好塩基球の活性化に対する評価を、市販のキットであるBASOTEST(登録商標)(ORPEGEN Pharma、Heidelberg、Germany)を使用して実施し、このキットは、フローサイトメトリーによる末梢血中の好塩基球活性化の百分率の測定を可能にした。手順:
1−末梢静脈血を、ヘパリンナトリウムを含むチューブに抽出する。
2−この血液を刺激緩衝液(IL−3含有)と一緒にインキュベートする
3−チモシー(P.pratense)およびコナヒョウダニ(D.farinae)由来のアレルゲン(天然、ポリマーおよびポリマー−マンナン)で刺激する。陰性対照(洗浄緩衝液だけ)および陽性対照(走化性ペプチドのN−ホルミル−メチオニン−ロイシン−フェニルアラニン(fMLP))も含まれる。
4−蛍光色素コンジュゲートモノクローナル抗体(抗CD203cおよび抗−CD63.FITC)で細胞を標識する。二重陽性細胞(CD203c/CD63)は、活性化好塩基球を反映している。
5−低張性緩衝液による赤血球の溶解
6−分析を、FC500血球計算器(Beckman Coulter)において実施した。活性化好塩基球を決定するための特異的標識は、CD203c+およびCD63+であった。
結果
非重合アレルゲン(天然)の1つ1つと一緒にインキュベーション後の活性化好塩基球(CD203c+CD63+)の百分率は、予想されたように、高く、アッセイの陽性対照により得られた百分率と同様であった。他方で、インキュベーションを、チモシー(Phleum pratense)およびコナヒョウダニ(D.farinae)の両方の重合アレルゲンを用いて実施した場合、活性化の程度は減少した。ポリマーの好塩基球を活性化する能力のこの喪失は、これらのアレルゲン性の喪失を反映しており、図21に示すように、非マンノシル化およびマンノシル化ポリマーの両方と同等であった。これはすべて、マンノシル化ポリマーが、これら両方のアレルゲンに対して低下させたアレルゲン性を、従来の重合アレルゲン(非マンノシル化)により示されるアレルゲン性と同じ程度に維持していることを示している。
5.3.−アレルギー患者での皮膚試験(プリック試験)
チモシー(Phleum pratense)およびコナヒョウダニ(D.farinae)のさまざまな調製物の、これらのアレルゲンに対してアレルギーである患者における皮膚試験陽性を生み出す能力に対する評価を実施した。
材料および方法
プリック試験
プリック試験は、それぞれ、チモシー(P.pratense)およびコナヒョウダニ(D.farinae)にアレルギーである患者の前腕の皮膚上に、チモシー(P.pratense)およびコナヒョウダニ(D.farinae)の各アレルゲン(天然、ポリマーまたはポリマー−マンナン)の液滴を、二連に置くことから成った。前記のように調製されたこれらのアレルゲンを、50%緩衝グリセロール生理食塩水溶液中同じタンパク質濃度に調製した。アレルゲンを、1mmのランセットで皮膚を穿刺することによって、液滴を介して真皮に導入した。アレルゲンは、患者の感作された肥満細胞と、これらの特異的IgEを介して反応し、脂肪細胞は活性化後ヒスタミンを放出する。放出されたヒスタミンは毛細管透過性を増し、液体滲出を生じ、これにより、穿刺の20分後に皮膚丘疹をもたらす。
丘疹サイズ(mm)は、調製物のアレルゲン性指数と考えられ、この指数が高いほど、得られた丘疹の表面が大きいと考えられる。
統計:
記述統計学のために、平均およびそのそれぞれの95%信頼限界、標準偏差、中央値および対応する第1および第3四分位、変動係数ならびに値の範囲(最大値および最小値)を使用した。
比較統計学のために、ダニ(コナヒョウダニ(D.farinae))を用いた皮膚試験からのデータに、これらが正規分布に従ったので、分散分析(ANOVA)および(ペアの値の間の比較のための)ボンフェローニ補正を使用した。チモシー(Phleum pratense)を用いた皮膚被験のデータの場合、これらが正規分布に従わなかったので、ノンパラメトリック検定を使用した。3つの調製物を比較するためにフリードマン検定を使用し、ペアの間を比較するためにウィルコクソン検定を使用した。
グラフィック表現のために箱ひげ図を使用した。箱ひげ図は、中央値およびそのそれぞれの25および75%四分位を表す。
結果
5.3.1グルタルアルデヒドを用いてマンノシル化されたチモシー(Phleum pratense)のポリマーを用いたプリック試験におけるアレルゲン性の喪失は、非マンノシル化ポリマーのアレルゲン性の喪失より高い。
イネ科由来の花粉に対して臨床的にアレルギーである12人の患者、男性5人および女性7人を研究した。平均年齢は41歳であり、11から78歳の範囲であった。チモシー(Phleum pratense)の天然抽出物(改変されていない)により誘導された丘疹の面積サイズの中央値は28.4mmであり、25および75%四分位の値は、それぞれ、23.0および43.1mmであった。重合抽出物に対応する値は、中央値が8.0mmであり、四分位はそれぞれ8.0および19.7であった。重合およびマンノシル化抽出物に関しては、中央値が0.0であり、四分位はそれぞれ0.0および5.4であった(表3)。
3つのタイプの調製物により得られた丘疹サイズの間の差は、非常に有意であり(フリードマン検定、P<0.0001)、調製物のペア:天然−重合体、天然−マンノシル化重合体および重合体−マンノシル化重合体の間でも非常に有意であった(ウィルコクソン検定、P<0.0001)。in vivoでアレルゲン性の低下を示す調製物は、マンノシル化重合体である。
表2および3は、各調製物により得られた丘疹のそれぞれの面積の個別の値ならびにこれらの値の記述統計および患者の疫学的データ(年齢および性別)を示す。
Figure 2016515603
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図22は、チモシー(Phleum pratense)の調製物の1つ1つにより得られた丘疹の面積値を、箱ひげ図により示す。観察できるように、マンノシル化ポリマーを用いて実施された皮膚試験は、実質的に陰性であり、非マンノシル化ポリマーに対して低く、順に天然抗原(非重合)より非常に低い。これは全て、チモシー(Phleum pratense)のマンノシル化ポリマーのアレルゲン性喪失が、従来のポリマー(非マンノシル化)の喪失の程度と同じか、またはより大きいことを示す。
5.3.2 グルタルアルデヒドを用いてマンノシル化されたコナヒョウダニ(D.farinae)のポリマーを用いたプリック試験における反応性の喪失は、非マンノシル化ポリマーと同等である。
コナヒョウダニ(Dermatophagoides farinae)に対して臨床的にアレルギーである、22人の患者、14人の男性および8人の女性を研究した。平均年齢は32歳であり、範囲は12から82歳であった。コナヒョウダニ(Dermatophagoides farinae)の天然抽出物(修飾されていない)により誘導された丘疹の面積サイズの中央値は64.2mmであり、25および75%四分位の値は、それぞれ、54.2および72.3mmであった。重合抽出物に対応する値は、中央値が32.5mmであり、四分位はそれぞれ、1.0および45.7であった。重合およびマンノシル化抽出物に関しては、中央値が24.1であり、四分位はそれぞれ16.3および33.8であった。
3つのタイプの調製物により得られた丘疹サイズの間の差は、非常に有意であり(ANOVA検定、P<0.0001)、調製物のペア:天然−重合体および天然−マンノシル化重合体の間でも非常に有意であった(ボンフェローニ補正、P<0.0001)。2つの調製物は、in vivoで、非重合アレルゲンと比較して非常に重要なアレルゲン性の低下を示している。
表4および5は、各調製物により得られた丘疹のそれぞれの面積の個別の値ならびにこれらの値の記述統計および患者の疫学的データ(年齢および性別)を示す。
Figure 2016515603
Figure 2016515603
図23は、コナヒョウダニ(D.farinae)の調製物の1つ1つにより得られた丘疹の面積値を、箱ひげ図により示す。観察できるように、マンノシル化ポリマーを用いて実施された皮膚試験は、非マンノシル化ポリマーを用いた皮膚試験と同様であり、同時に、天然抗原(非重合)の皮膚試験より非常に低い。これはすべて、コナヒョウダニ(D.farinae)由来のマンノシル化ポリマーのアレルゲン性喪失が、従来のポリマー(非マンノシル化)の喪失の程度と同じか、またはより大きいことを示す。
グルタルアルデヒドを使用してマンノシル化されたポリマーは、非マンノシル化ポリマーより樹状細胞による捕捉が優れている。
材料および方法
樹状細胞(DC)を、健康なドナーの末梢血単球から誘導し、GM−CSFおよびIL−4と一緒に5日間培養した。このようにして得られたDC(未熟)を、先に記載したように調製されたチモシー(Phleum pratense)のポリマー(コンジュゲートされたマンナン含有または非含有)に曝露し、これらの細胞による取り込みを評価した。取込みアッセイは、DCと調製物との接触の2時間後、フローサイトメトリーを用い、チモシー(Phleum pratense)由来の抽出物のこれらの色素による自己蛍光を使用して実行した。2つのパラメーター:a)DCにより捕捉されるアレルゲンの量(取込み率);b)内部移行能力を示す細胞の百分率を評価した。さらに、取込みアッセイを、システインを介して蛍光色素(Alexa M488)であらかじめ標識されたチモシー(Phleum pratense)のアレルゲンを用いて実施した。結果を、フローサイトメトリーおよび共焦点顕微鏡法により分析した。
結果
図24Aにおいて観察できるように、DCにより捕捉されたチモシー(Phleum pratense)自己蛍光のマンノシル化ポリマーの量は、取込み率を反映するMFI(平均蛍光指数)によって、従来のポリマー(非マンノシル化)により捕捉された量より7倍を超えて高い。同じ図の左上部において、両方の調製物(チモシー(Phleum pratense)のマンノシル化ポリマーおよび非マンノシル化のポリマー)を捕捉する能力を有する細胞の量が表される。観察できるように、より高い蛍光を示す陽性細胞の百分率は、マンノシル化ポリマーと一緒にインキュベートされた細胞に対応する。これらの結果は、システインを介した蛍光色素(Alexa M488)による標識で確認された。図24Bにおいて観察できるように、二重陽性細胞(HLA−DRおよびAlexa488が同定される)の数は、細胞を、マンナンを含むポリマーと一緒にインキュベートした場合に非常により高く、このことは、この調製物の取込みがより多いことを暗示した。同じ図の下側において、平均蛍光値が表される。観察できるように、蛍光強度もまた、マンノシルポリマーと一緒にインキュベートされたDCにおいてより高かった。図24Cは、共焦点蛍光顕微鏡画像を示し、非マンノシル化ポリマーまたは天然アレルゲンと一緒にインキュベートされたDCと比較して、マンナンを含むポリマーと一緒にインキュベート(30分)されたDCのより高い取込みを見ることができる。これらの実験の結論は、マンノシル化ポリマーが、より多数のDCにより捕捉されること、およびこれらの捕捉もまたより大量であることである。
グルタルアルデヒドを用いてマンノシル化されたポリマーは、非マンノシル化ポリマーと比較して、ヒト樹状細胞によるIL−10およびIL−6のより大量の産生を誘導する。
7.1樹状細胞によるサイトカイン産生のアッセイ
材料および方法
健康なドナーから単離された末梢血単球を、IL−4およびGM−CSFを用いて樹状細胞(DC)に分化させた。これらのDC(未熟)を、重合マンノシル化(PM)および非マンノシル化(P)のアレルゲン(チモシー(Phleum pratense))、50μg/mLと一緒にインキュベートした。サイトカイン濃度を、さまざまな調製物で樹状細胞を刺激した24時間後、これらの細胞の培養液上清において決定した。サイトカインの定量に使用した技術は、フローサイトメトリーマルチプレックスであった。
結果
図25は、3つの独立した実験の平均を示す。
観察できるように、チモシー(Phleum pratense)のマンノシル化ポリマーと一緒にインキュベートした樹状細胞(DC)は、重合された非マンノシル化アレルゲンまたは天然アレルゲン(非重合)より大量のIL−6およびIL−10を産生する。対照的に、3種の調製物は、同様のIL−8産生を誘導する。これらの結果は、ヒト骨髄DCが、マンノシル化ポリマーに差次的に応答することを示す。IL−10の増加がマンノシル化ポリマーにより観察されるという事実は、このタイプの調製物に求められる免疫調節特性にとって非常に肯定的である。
グルタルアルデヒドを用いてマンノシル化されたポリマーは、ヒト樹状細胞の成熟を誘導するこれらの能力に関して非マンノシル化ポリマーと同等である。
8.1.樹状細胞成熟アッセイ
材料および方法
樹状細胞(DC)を、健康なドナー由来の末梢血(バフィーコート)の単球から誘導し、GM−CSFおよびIL−4と一緒に5日間培養した。このようにして得られたDC(未熟)を、さまざまなアレルゲン性調製物(天然、ポリマーおよびポリマー−マンナン)に曝露して、これに応答したDCの成熟を評価した。成熟アッセイを、培養48時間後にフローサイトメトリーによりアッセイし、DCの成熟に関与する分子(HLA−II(DR)、CD80、CD83およびCD86)の発現を評価した。
細胞標識手順:5×10細胞を標識ごとに使用した。細胞をPBSに再懸濁し、1μgの直接抗体(1:100)(蛍光色素とコンジュゲート)または間接抗体(非コンジュゲート)を加えた。これらを20分間、4℃において暗所でインキュベートし、次いで、PBSで洗浄した。間接抗体の場合、対象となる蛍光色素とコンジュゲートされた1μg(1:100希釈)のマウス抗IgG二次抗体を加えた。これらをPBSで2回洗浄後、細胞を、300−400μLのPBS体積に再懸濁し、最後にフローサイトメトリー(FC 500 Beckman Coultek)により分析した。
結果
8.1.1 これらの重合および/マンノシル化に従ったチモシー(Phleum pratense)アレルゲンによる、ヒト由来の樹状細胞(DC)の成熟。
図26において観察できるように、重合アレルゲンは、骨髄未熟DCを前記アレルゲンと一緒にインキュベートした後で、これらの成熟を誘導する。成熟の程度を、図に反映されたマーカーのDC表面発現に従って評価する。成熟に関与するすべてのマーカーは、非重合アレルゲンに対して、重合アレルゲンと一緒にインキュベートされたDCにおいて増大され、マンノシル化されるか、またはされないかに依存して有意差は存在しない。これらの結果は、DCの成熟の観点からすれば、チモシー(Phleum pratense)のマンノシル化ポリマーが、従来のポリマー(非重合)と同様の挙動を取り、したがって、従来のアレルゲン(非重合)より高い成熟指数を示すことを示している。
8.1.2 重合および/これらのマンノシル化に従ったコナヒョウダニ(D.farinae)アレルゲンによる、ヒト単球由来の樹状細胞の成熟。
図27において観察されるように、重合アレルゲンは、骨髄未熟DCを前記アレルゲンと一緒にインキュベートした後で、これらの成熟を誘導する。成熟の程度を、図に反映されたマーカーのDC表面発現に従って評価する。成熟に関与するすべてのマーカーは、非重合アレルゲンに対して、重合アレルゲンと一緒にインキュベートされたDCにおいて増大され、マンノシル化されるか、またはされないかに依存して有意差は存在しない。これらの結果は、DCの成熟の観点からすれば、コナヒョウダニ(D.farinae)のマンノシル化ポリマーが、従来のポリマー(非重合)と同様の挙動を取り、したがって、従来のアレルゲン(非重合)より高い成熟指数を示すことを示している。
グルタルアルデヒドを用いてマンノシル化されたポリマーは、ex vivo免疫化アッセイにおいてIFNガンマおよびIL−10産生T細胞の誘導を、非マンノシル化ポリマーと比較して改善する。
材料および方法
末梢血ヒト細胞を用いたex vivo免疫化アッセイ
免疫化プロトコル
アレルゲン特異的エフェクターT細胞を、健康な個体のPBMCから、対応するアレルゲン性抽出物を負荷された自己成熟DCによる刺激の3ラウンド後に得た。簡潔に言うと、iDC(10/mL)を、完全DMEM培地において対応する抽出物(100μg/mL)と一緒に8時間インキュベートし、その後、ペプチドグリカン(1μl/mL)と一緒のインキュベーションにより成熟させた。あらかじめ洗浄した成熟樹状細胞(mDC)を、対応する抽出物と一緒に完全DMEM培地において再度6時間インキュベートし(1mL中10細胞)、その後すぐに放射線を照射した(3000rad)。放射線照射され、アレルゲンを負荷されたmDCを、その後、48ウェルプレートに分注し(10/mL)、IL−7(1μl/mL)の存在下でPBMC(10細胞/mL)と一緒に共培養した。最初の刺激の5日後、培養液にIL−2(10U/mL)を添加した。アレルゲン抽出物を負荷されたDCによるPBMCの同じ刺激および拡大過程を3回反復した。細胞のアレルゲン特異的IFNγ、IL−10およびIL−4の産生を、ELISPOTアッセイにより測定した。
結果
9.1.1 グルタルアルデヒドを用いてマンノシル化されたチモシー(Phleum pratense)ポリマーは、非マンノシル化ポリマーのIFN−γおよびIL−10応答を、IL−4応答を増加することなく改善する。
図28において観察されるように、IFN−γおよびIL−10産生細胞の数は、従来のポリマー(非マンノシル化)で免疫化された培養液と比較して、重合およびマンノシル化アレルゲンで免疫化された培養液において、特異的応答で増加される。この増加は多数のIL−4産生細胞によりもたらされるものではなく、これは、TH2表現型への分極が存在していないことを示す。IL−4の増加のないIFN−γおよびIL−10の増加がマンノシル化ポリマーにより観察されるという事実は、このタイプの調製物に求められる免疫調節特性にとって非常に肯定的である。
9.1.2 グルタルアルデヒドを用いてマンノシル化されたコナヒョウダニ(D.farinae)アレルゲンは、非マンノシル化ポリマーのIFN−γおよびIL−10応答を、IL−4応答を増加することなく改善する。
図29において観察されるように、IFN−γおよびIL−10産生細胞の数は、従来のポリマー(非マンノシル化)で免疫化された培養液と比較して、重合およびマンノシル化アレルゲンで免疫化された培養液において、特異的応答で増加される。この増加は多数のIL−4産生細胞によりもたらされるものではなく、これは、TH2表現型への分極が存在していないことを示す。IL−4の増加のないIFN−γおよびIL−10の増加がマンノシル化ポリマーにより観察されるという事実は、このタイプの調製物に求められる免疫調節特性にとって非常に肯定的である。
グルタルアルデヒドを用いてマンノシル化されたポリマーは、非マンノシル化ポリマーと比較してin vivo免疫応答を改善する。
マウスにおけるin vivo免疫化アッセイ
材料および方法
免疫化を、マンノシル化および非マンノシル化ポリマーを有するチモシー(Phleum pratense)およびコナヒョウダニ(D.farinae)アレルゲンを用いて、これらのin vivoの免疫原性能力を評価するように、実施した。免疫化を、図30に示されるプロトコルを用いてBalb/cマウスにおいて実行した。
免疫化に対する応答を、その天然形態アレルゲンに応答する、CFSEを用いた標識による特異的リンパ球増殖アッセイを実施して、脾臓において評価した。フィトヘマグルチニン(PHA)を、陽性対照として使用した。増殖は、6日目および7日目の培養液において決定した。サイトカインの定量もまた、刺激48時間後の培養上清において、マルチプレックスフローサイトメトリー技術を使用して実施した(図31)。フィトヘマグルチニン(PHA)を陽性対照として使用した。特異的IgEのレベル(チモシー(P.pratense)またはコナヒョウダニ(D.farinae))ならびにIgG1(TH2応答マーカーとして)およびIgG2a(TH1応答マーカー)のレベルもまたELISAにより評価した。
結果
10.1 チモシー(Phleum pratense)のマンノシル化ポリマーによる免疫化は、非マンノシル化ポリマーによる免疫化より、抗原性刺激に対して高い増殖応答を生じる。
図32において観察できるように、応答細胞が、重合およびマンノシル化アレルゲンにより免疫化されたマウスの脾臓から採取された場合、従来の重合アレルゲン(非重合)で免疫化されたマウスの脾臓から採取された細胞と比較して、抗原に応答するT細胞の数を反映する増殖百分率が有意に高い。これは、重合およびマンノシル化チモシー(Phleum pratense)アレルゲンの免疫原性は、非マンノシル化ポリマーの免疫原性より有意に高いことを示している。
10.2 コナヒョウダニ(D.farinae)のマンノシル化ポリマーによる免疫化は、非マンノシル化ポリマーによる免疫化より、抗原性刺激に対して高い増殖応答を生じる。
図33において観察できるように、応答細胞が、重合およびマンノシル化アレルゲンにより免疫化されたマウスの脾臓から採取された場合、従来の重合アレルゲン(非重合)で免疫化されたマウスの脾臓から採取された細胞と比較して、抗原に応答するT細胞の数を反映する増殖百分率が有意に高い。これは、重合およびマンノシル化コナヒョウダニ(D.farinae)アレルゲンの免疫原性は、非マンノシル化ポリマーの免疫原性より有意に高いことを示している。
10.3 マンノシル化チモシー(Phleum pratense)ポリマーで免疫化されたマウスの脾臓細胞は、非マンノシル化ポリマーに対して、サイトカインパターンを改変する。
図34(図34Aおよび34B)は、マンノシル化および非マンノシル化重合アレルゲンで免疫化されたマウス由来の、チモシー(P.pratense)アレルゲンで刺激された脾臓細胞の培養液上清において得られたさまざまなサイトカインの産生を表す。観察できるように、産生されたサイトカインのパターンは、脾臓細胞の由来に依存して、これらの多くに関して異なる。リンパ系細胞により産生されるこれらの変動を、表6に定量的方法で示す。
10.4 チモシー(Phleum)のマンノシル化ポリマーで免疫化されたマウス由来のリンパ球は、非マンノシル化ポリマーにより産生されるものと比較して、IL−10の産生を増加させる。
Figure 2016515603
**非マンノシル化ポリマーで免疫化されたマウスにおいて得られる値より100倍高い相対的増加
表6において観察できるように、図34(図34Aおよび34B)において示されるリンパ系起源のサイトカイン産生に対して得ることができる最も大きな変動はIL−10に対応し、これは、重合およびマンノシル化アレルゲンで免疫化されたマウスにおいて、非マンノシル化ポリマーで免疫化されたマウスにおいて得られる産生に対して300倍を超えて増加する。IL−10のこの増加は、このタイプの調製物に求められる免疫調節特性にとって非常に肯定的である。
10.5 マンノシル化コナヒョウダニ(D.farinae)ポリマーで免疫化されたマウスの脾臓細胞は、非マンノシル化ポリマーに対してサイトカインパターンを改変する。
図35(図35Aおよび35B)は、マンノシル化および非マンノシル化重合アレルゲンで免疫化されたマウス由来の、コナヒョウダニ(D.farinae)アレルゲンで刺激された脾臓細胞の培養液上清において得られたさまざまなサイトカインの産生を表す。観察できるように、産生されたサイトカインのパターンは、脾臓細胞の由来に依存して、これらの多くに関して異なる。リンパ系細胞により産生されるこれらの変動を、表7に定量的方法で示す。
10.6 コナヒョウダニ(D.farinae)のマンノシル化ポリマーで免疫化されたマウス由来のリンパ球は、非マンノシル化ポリマーにより産生されるものと比較して、IL−10、IFNγおよびIL−2の産生を増加する。
Figure 2016515603
**マンナンを含まないポリマーで免疫化されたマウスにおいて得られる値より100倍高い相対的増加
表7において観察できるように、図35(図35Aおよび35B)において示されるリンパ系起源のサイトカイン産生に対して得ることができる最も大きな変動はIL−2、IL−10およびIFN−γに対応し、これは、重合およびマンノシル化アレルゲンで免疫化されたマウスにおいて、非マンノシル化ポリマーで免疫化されたマウスにおいて得られる産生に対して300、145および125倍を超えて増加する。この増加、特にIL−10およびIFN−γのこの増加は、このタイプの調製物に求められる免疫調節特性にとって非常に肯定的である。
10.7 高用量の重合およびマンノシル化チモシー(Phleum pratense)ポリマーで免疫化されたマウスにおける特異的抗体の応答は、非マンノシル化ポリマーに対してIgG/IgE比を支持する。
図36(図36Aおよび36B)において観察できるように、特異的IgG抗体のチモシー(Phleum pratense)アレルゲンに対する応答は、重合およびマンノシル化アレルゲンで免疫化されたマウス由来の血清において、従来の重合アレルゲン(非マンノシル化)によるものより高い。対照的に、特異的IgE抗体の応答は、従来のポリマーに対する応答より低い。図を見て分かるように、免疫化が、重合およびマンノシル化チモシー(Phleum pratense)アレルゲンを用いて実行された場合、IgG2a/IgE比はより高い。この比の増加は、得られた応答の抗アレルギー性分極を示すので、このタイプの調製物に求められる免疫調節特性にとって非常に肯定的である。
10.8 高用量の重合およびマンノシル化コナヒョウダニ(D.farinae)ポリマーで免疫化されたマウスにおける特異的抗体の応答は、非マンノシル化ポリマーに対してIgG/IgE比を支持する。
図37(図37Aおよび37B)において観察できるように、特異的IgG抗体のコナヒョウダニ(D.farinae)アレルゲンに対する応答は、重合およびマンノシル化アレルゲンで免疫化されたマウス由来の血清において、従来の重合アレルゲン(非マンノシル化)によるものより高い。対照的に、特異的IgE抗体の応答は、従来のポリマーに対する応答より低い。図を見て分かるように、免疫化が、重合およびマンノシル化コナヒョウダニ(D.farinae)アレルゲンを用いて実行された場合、IgG2a/IgE比はより高い。この比の増加は、得られた応答の抗アレルギー性分極を示すので、このタイプの調製物に求められる免疫調節特性にとって非常に肯定的である。
本発明は、重合抗原、マンナンおよびジアルデヒドを含む免疫原性複合体、これを含む組成物ならびに免疫応答刺激剤およびワクチンとしてのこの使用に関する。同様に、本発明は、ジアルデヒドの使用によって抗原およびマンナンを同時に重合およびコンジュゲーションすることに基づく、前記免疫原性複合体を得る方法に関する。したがって、本発明は、免疫学およびワクチン製造の分野に属し、ならびにアレルギーの治療および予防の分野に属する。
樹状細胞(DC)は、T細胞の効率的な刺激に特化した抗原提示細胞であり、そのため樹状細胞は特異的免疫応答を誘導するための基盤である。未熟なDCは、組織および器官に戦略的に分布して、歩哨として作用し、これらの微小環境において抗原試料を連続的に取り込む。DCは、抗原それ自体、微生物産物および組織の危険シグナルを含むさまざまな刺激に対する応答として成熟過程を開始し、成熟は二次リンパ器官のT領域への遊走を導き、末梢においてこれらにより負荷された抗原を運ぶ。ここで、HLA−IIおよび共刺激分子の発現の増加を示す成熟DCは、T細胞と相互作用し、抗原ペプチドをプロセシングした後でこれらをT細胞に提示して、T細胞を刺激して特異的応答を開始する。
未熟なDCは、受容体媒介性エンドサイトーシス、微飲作用および食作用により抗原を捕捉する。エンドサイトーシス的取込みに関与するさまざまな受容体が存在し、その中に、マンノース受容体(MR)(CD206およびCD209)が見出される。これらは、炭水化物認識ドメインを介して末端マンノース残基、フコースおよび/またはN−アセチルグルコサミンを認識する。天然のリガンドとしては、細菌起源の産物(糖タンパク質および糖脂質)ならびにマンノース含有量の高い哺乳動物糖タンパク質が挙げられる。MRは、マクロファージおよび未熟DCにおいて発現され、プロセシングおよびこれらのT細胞提示のためにマンノシル化抗原のエンドサイトーシスに関与する。
IgE抗体媒介性アレルギー状態における免疫療法は、アレルゲンが、アレルギー患者が感作されるアレルゲンと同じアレルゲンである治療用ワクチンの投与に基づく。アレルゲンは、花粉、イエダニ、上皮などに由来するタンパク質であり、これらは、患者の呼吸する空気中に運ばれる超構造である(環境的吸入)。これらのワクチンの臨床的有効性が、送達されるアレルゲンの用量に関係することは広く認められており、したがって、WHOおよび学会によるコンセンサスガイドラインは、ワクチンは十分なアレルゲン濃度で調製すべきことを推奨した。この必要条件は、ワクチン用量に対するアレルギー患者の応答は、制限が意図されるべき有害作用の危険性を伴うことを暗示する。これを回避するための方法は、IgE抗体に対して低い反応能力を示す(低アレルゲン性)改変アレルゲン(アレルゴイド)に基づくワクチンの調製である。
ホルムアルデヒドおよび/またはグルタルアルデヒドによるアレルゲンの処理に基づく化学的改変は、ワクチン製造者の間で最も広く使用されている。アルデヒド基(R−CHO)とアレルゲンアミノ酸、例えばリジン中に存在するアミノ基(R−NH2)との反応は、このような改変の基盤である。モノアルデヒドであるホルムアルデヒドとは対照的に、グルタルアルデヒドは、さまざまな分子中に存在するリジンのR−NH2と反応可能な2つのR−CHO基を有するジアルデヒドである。グルタルアルデヒドは、アレルゲンの重合および特異的IgE抗体との反応性の喪失を引き起こす(ホルムアルデヒドを用いて形成されるアレルゴイドは、タンパク質の構造改変に基づくが、これらの重合には基づかない)。IgE抗体が、これらのエピトープ(アレルゲン結合部位)と反応するためのこれらの接近可能性を喪失し、IgEより活性化され得る、IgEにより感作される肥満細胞の数を低減させるので、この重合が、アレルゴイドの低アレルゲン性を決定するとみなされる。重合アレルゲンのアレルゲン性の喪失は、免疫原性の喪失を暗示すると思われ、免疫原性の喪失は、これらの調製物の臨床的有効性を低減する。重合は、DCにおいてアレルゲンマンノース残基へのMRの接近を低減させ、重合アレルゲンの免疫原性喪失には決定的であることが示唆されている。このことは、マンノース残基が、アレルゲンの取込みのためにDCにより使用される主要なリガンドの1つであるという事実およびこれらの細胞が、応答性T細胞へのアレルゲン提示において重要な役割を果たすという事実により支援される。
糖とタンパク質とをコンジュゲーションする方法は、酸化過程による糖の活性化、シス−グリコール基の変換による反応性アルデヒド基(R−CHO)の発生に主に基づく。例えば、メタ過ヨウ素酸塩で処理後、酸化糖に生じたR−CHOは、リジンのε−アミノ基と反応して、シッフ塩基の形成をもたらし得る。糖タンパク質(例えば、酵素、抗体)の炭水化物残基がコンジュゲーションのために使用され、これらの生物活性に関係するタンパク質部分を避けるので、この方法論は、糖タンパク質のコンジュゲーションに非常に適切である。
過ヨウ素酸塩による糖の酸化は、アレルゲンを含む(Weinberger et al.2013.J Control Release,165:101−109)、タンパク質をマンノシル化する方法として報告されているが(Masarova et al.2002.Int.J.Polymer.Anal.Charact.,7:106−116;W02011/140595A2;US2007/092531A1)、重合抗原のマンノシル化へのその使用は、以下の2つの主要な欠点を有する:
a)糖の酸化は、ヒドロキシル基(OH)を含有し、反応性アルデヒドの発生にとって基本である、隣接炭素原子との間の結合の破壊を生じる。前記破壊は、マンノース構造に影響を与え(Shibuya,N.,et al.1988.J.Biol.Chem.,263:728−734)、マンノース認識レクチンとのその結合能力を変化させ(Masarova et al.2001,Chem.Pap.55:130−135)そのDC活性化能力を変化させる(Sheng et al,2006.Immunology,118:372−383)。マンノースの構造的完全性の喪失は、酸化の程度を低減することにより最小化することができ(Masarova et al.2001,Chem.Pap.55:130−135)、穏やかな条件下でのコンジュゲーションに対するその効率は、マンノシル化されるタンパク質の特性に支配される(Weinberger et al.2013,J.Control Release,165:101−109)。マンノースをこれらの天然形態で保持するために、高温におけるグリコシル化反応を用いてタンパク質のマンノシル化を実行することが試みられているが、酸化の不在下で結果は好ましくない(Kanska et al.2008.Biotechnol. Appl.Biochem.49:57−64)。
b)その酸化後に活性化されたマンノースは、マンノシル化されるタンパク質の遊離のアミノ基と相互作用するべき反応性アルデヒドを発生させる。しかし、アミノ基は、グルタルアルデヒドそれ自体とのこれらの反応においてすでに使用されているので、タンパク質とグルタルアルデヒドとの重合は、これらのアミノ基の劇的な減少をもたらす。これらの状態下で、グルタルアルデヒドにより既に処置されたタンパク質をマンノシル化する、活性化マンノースの効率は非常に低いと思われ、グルタルアルデヒドが結合できるアミノ基を欠いた場合、グルタルアルデヒドの重合能力もまた非常に低いと思われる。(Silva et al.2004.Food Technol.Biotechnol.42:51−56)。この不都合さは、重合アレルゲンのマンノシル化に影響を与えるだけでなく、最終的にマンノシル化されることが意図され得る、グルタルアルデヒド(gutaraldehyde)と重合される任意のタンパク質のマンノシル化にも影響を与える。
Patterson et al.1977(J Allergy Clinical Immunology 59:314−319)は、グルタルアルデヒドによるアレルゲンの重合(イネ科の花粉)を記載している。重合されたアレルゲンは、IgE抗体により感作された肥満細胞の活性化能力の低減を示すので、重合されたアレルゲンは低アレルギー性である。
Subiza et al.2008(Clinical and Experimental Allergy,39:987−994)は、グルタルアルデヒド(glutaralehyde)により改変されたアレルゲン(イネ科の花粉、トリセツム・パニセウム(Trisetum paniceum)およびオーチャードグラス(Dactylis glomerata))(アレルゴイドとも称される)のアレルギーの免疫療法のための使用を記載している。研究者らは、グルタルアルデヒドによる重合により得られたイネ科由来のアレルゴイドのワクチン接種が有効であることを報告している。
Heydenreich et al.2012(Immunology,136:208−217)は、チモシー(Phleum pratense)およびシラカンバ(Betula verrucosa)種由来の無傷の花粉からのアレルゲン抽出物と、グルタルアルデヒドまたはホルムアルデヒドにより改変された、これらの対応するアレルゴイドとの間の免疫原性およびアレルゲン性の違いの比較研究を記載している。この文献は、グルタルアルデヒドによる改変が、ホルムアルデヒドによる改変よりアレルゴイドのアレルゲン性および免疫原性を低減させること、およびDCがこのタイプの改変アレルゲンを効率的に捕捉しないことを報告している。
Weinberger et al.2013(Journal of Control Release,165:101−109)は、過ヨウ素酸塩を用いた穏やかな酸化による糖を活性化する、アレルゲンタンパク質(オボアルビミンおよびパパイン)とマンノースとのコンジュゲーションを記載している。さまざまな程度の効率が、マンノシル化されるタンパク質に依存して得られる。マンノシル化コンジュゲートが、DCによりin vivoで捕捉されること、およびマウスにおいて免疫応答が生じ、したがってこれらが免疫療法に有用であり得ることを報告している。
Pietersz G.(WO 2011/140595 A2)は、高分子量(>1.000Kda)のマンナン分画が、より小さいサイズ分画と比較して、免疫刺激のためのタンパク質抗原へのコンジュゲーションのためにより適していることを記載している。コンジュゲーションは、過ヨウ素酸で少なくとも150の反応性アルデヒド基を産生する高分子量の炭水化物分子を酸化した後、行われる。
McKenzie et al.(US 2007/0092531 A1)は、さらに低下されている、酸化されたマンナンとコンジュゲートされた抗原(ペプチド)の免疫調節組成物を記載している。この組成物はコンジュゲートされていない抗原よりも、樹状細胞によってではなく、マクロファージによってより良く取り込まれ、より良いTh1および細胞傷害Tリンパ球応答を誘導する。
したがって、最新の技術において現在使用されている方法の代替となり、高度に有効な方法で抗原の重合およびそのマンノースとのコンジュゲーションを可能にし、該糖がその構造完全性を失うことがなく、ポリマー特性(低アレルゲン性)が影響を受けることがなく、重合およびマンノシル化されたタンパク質に基づくワクチンが、DCによるこれらの取込みを改善することにより、これらの免疫原性を上昇させるような、最新の技術において、重合およびマンノシル化された抗原に基づくワクチンを得る方法を提供する必要性が存在する。
Masarova et al.2002.Int.J.Polymer.Anal.Charact.,7:106−116 Weinberger et al.2013.J Control Release,165:101−109 Shibuya,N.,et al.1988.J.Biol.Chem.,263:728−734 Masarova et al.2001,Chem.Pap.55:130−135 Sheng et al,2006.Immunology,118:372−383 Kanska et al.2008.Biotechnol. Appl.Biochem.49:57−64 Silva et al.2004.Food Technol.Biotechnol.42:51−56 Patterson et al.1977(J Allergy Clinical Immunology 59:314−319 Subiza et al.2008(Clinical and Experimental Allergy,39:987−994 Heydenreich et al.2012(Immunology,136:208−217
本発明の著者らは、ジアルデヒドをタンパク質性の抗原およびマンナンの混合物に付加することにより、抗原の重合と同時に抗原のマンナンへのコンジュゲーションを可能にし、このことが、その複合体に対するアレルギー応答を誘発せずに、樹状細胞(DC)により認識および捕捉され得る、個体において免疫応答の刺激および誘導が可能な免疫原性複合体またはワクチンの獲得を可能にすることを見出した。
この発見に基づいて、一連の発明的態様を開発し、これを以下に詳細に記載する。
本発明の免疫学的複合体
すでに述べたように、ジアルデヒド、特にグルタルアルデヒドを、タンパク質(抗原)およびマンナンの混合物に付加することにより、抗原重合と同時に、抗原のマンナンへのコンジュゲーションを可能にし、このことにより免疫原性複合体またはワクチンを得ることを可能にする。
したがって、一態様において、本発明は、重合抗原、マンナンおよびジアルデヒドを含む、免疫原性複合体、これ以降「本発明の免疫原性複合体」に関する。
本発明において、「免疫原性複合体」は、化学結合(化学的コンジュゲーション)により、または物理的封入(物理的コンジュゲーション)により相互にコンジュゲートされたままである1つまたは2つの単位の会合であり、前記単位が重合抗原、マンナンおよびジアルデヒドであると理解される。
「重合抗原」は、相互に結合された抗原モノマーにより形成されるポリマーを意味し、抗原モノマーは異なっていても、または同じであってもよい。したがって、特定の実施形態において、重合抗原は、相互に同じまたは異なる少なくとも2つの抗原を含む。「抗原」は、対象の生物(ヒトまたは動物)において、液性および細胞性両方の免疫応答を誘導し得る任意の物質、または免疫細胞と接触した場合、細胞性免疫応答(免疫細胞の拡大、活性化および/または成熟、サイトカインまたは抗体の産生)を誘導し得る任意の物質を意味する。特に、抗原は、アレルゲンであり得るタンパク質、感染因子もしくは新生物細胞由来のタンパク質、前記タンパク質のペプチドもしくは断片、前記タンパク質の組換えタンパク質またはさらに示された応答を誘導し得る合成ペプチドである。特定の実施形態において、抗原はアレルゲンである。
「アレルゲン」は、個体においてアレルギーを引き起こし得る物質、すなわち、個体の免疫系により異質として認識され、免疫反応、おもに免疫グロブリンE(IgE)産生を引き起こす物質を意味する。アレルゲンの例としては、限定するものではないが、花粉アレルゲン抽出物、節足動物由来のアレルゲン抽出、食品または加工食品由来のアレルゲン抽出物、対象において過敏反応を誘導する昆虫由来の唾液、爪または針に存在する成分などが挙げられる。したがって、例えば花粉タンパク質抽出物、例えば、イネ科花粉(ベレニアルライグラス(Lolium perenne)、ケンタッキーブルーグラス(Poa pratense)、チモシー(Phleum pratense)、ギョウギシバ(Cynodon dactylon)、メドウフェスク(Festuca pratensis)、オーチャードグラス(Dactylis glomerata)、ライムギ(Secale cereale)、オオムギ(Hordeum vulgare)、エンバク(Avena sativa)、Triticum sativa)、他の草の花粉(例えば、ヨモギ(Artemisia vulgaris)、シロアカザ(Chenopodium album)、ヘラオオバコ(Plantago lanceolata)、セイヨウタンポポ(Taraxacum vulgare)、カベイラクサ(Parietaria judaica)、ノオハラヒジキ(Salsola kali)、セイヨウイラクサ(Urtica dioica))または木の花粉(例えば、オリーブ(Olea europaea)、プラタナス属(Platanus spp.)、イトスギ属(Cuppresus spp))などが使用可能である。節足動物、例えばイエダニ(例えば、ヤケヒョウダニ(Dermatophagoides pteronyssinus)、コナヒョウダニ(Dermatophagoides farinae)、アシブトコナダニ(Acaro siro)、ネッタイタマクマダニ(Blomia tropicalis)、シワダニ(Euroglyphus maynei)、イエニクダニ(Glyciphagus domesticus)、サヤアシニクダニ(Lepidoglyphus destructor)、ケナガコナダニ(Tyrophagus putrescentiae))由来のタンパク質抽出物などが使用可能である。他のアレルゲン抽出物は、真菌の胞子(アルテルナリア・アルテルナータ(Alternaria alternata)、クラドスポリウム・ヘルバルム(Cladosporium herbarum)、ペニシリウム・ノタツム(Penicilium notatum))および動物の上皮(イヌ上皮、ネコ上皮、ウマ上皮、羽毛混合物)ならびに食品成分などから得ることができる。当業者には理解されるように、皮膚および皮膚付加物、例えば、毛髪が、「上皮」という用語の範囲内に含まれる。実際には、任意のアレルゲンが免疫原性複合体に使用可能であるが、にもかかわらず、特定の実施形態において、アレルゲンは、花粉、ダニ、上皮、真菌の胞子およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
別の特定の実施形態において、花粉は、チモシー(Phleum pratense)、オーチャードグラス(Dactylis glomerata)、ギョウギシバ(Cynodon dactylon)、ベレニアルライグラス(Lolium perenne)、カニツリグサ類(Trisetum spp.)、オリーブ(Olea europaea)、イトスギ属(Cuppresus spp.)、ブタクサ属(Ambrosia spp.)、カンバ属(Betula spp.)、プラタナス属(Platanus spp)、セイヨウハシバミ(Corylus avellana)またはセイヨウヤマハンノキ(Alnus glutinosa)の種に由来する。
別の特定の実施形態において、ダニは、ヤケヒョウダニ(Dermatophagoides pteronyssinus)、コナヒョウダニ(Dermatophagoides farinae)またはネッタイタマクマダニ(Blomia tropicalis)の種に属する。
別の特定の実施形態において、上皮は、イエネコ(Felis domesticus)またはイエイヌ(Canis familiaris)の種に属する。
別の特定の実施形態において、真菌の胞子は、アルテルナリア・アルテルナータ(Alternaria alternata)またはアルテルナリア・テラヌイス(Alternaria tenuis)の種に属する。
本発明において、「マンナン」は、マンノースおよび下記のタイプのグリコシド結合:アルファ−1,6−グリコシド、アルファ−1,2−グリコシド、アルファ−1,3−グリコシドまたはベータ−1,3−グリコシドからなる炭水化物ポリマーを意味する。マンノースは、6つの炭素原子から形成され、官能性化学基が、1位炭素またはアノマー炭素のアルデヒドである単純な糖または単糖である。マンナンは、自然に結合しているマンノプロテイン由来のペプチド残基を含有してもよい。本発明の文脈において任意のマンナンが使用可能である。マンナンの例としては、限定するものではないが、ポリマンノース、ガラクトマンナン、グルコマンナン、アセマンナンおよびアロエライドが挙げられる。
ポリマンノースは、α−D−(1→6)結合により結合されるマンノースにより形成され、α−D−(1→2)結合によるが、α−D−(1→3)もまた有する異なる単位のおもに高い頻度で短い分枝鎖を有する線形構造であると理解される。
「ガラクトマンナン」は、β(1→4)結合により相互に結合されるマンノース鎖により形成され、大部分の場合、α(1→6)結合によりマンノースに結合されるガラクトース単位により形成される分枝鎖を有する化合物であると考えられる。抽出される植物に依存して、ガラクトマンナンは異なる分枝度を有する。
「グルコマンナン」は、それぞれ8:5の割合でD−マンノースおよびD−グルコースを含み、β(1→4)結合により連結される化学構造の化合物として理解すべきである。例えば、グルコマンナンは、植物のコンニャク(Amorphophallus konjac)の塊茎に見出される。
「アセマンナン」は、ベータ(1−4)−マンナンタイプのO−アセチル化複合多糖類の混合物として理解すべきである。アセマンナンは、例えば、植物のアロエベラ(Aloe vera)に見出される。
「アロエライド」は、グルコース、ガラクトース、マンノースおよびアラビノースにより構成される、高分子量を有する多糖類であると理解すべきである。アロエライドは、例えば、植物のアロエベラ(Aloe vera)に見出される。
マンナン(ポリマンノース、ガラクトマンナン、グルコマンナンなど)は、天然起源から、例えば、真菌、酵母および植物から得ることができ、または当業者に広く知られる技術を使用して化学合成により得ることができる。特定の実施形態において、本発明の免疫原性複合体の一部であるマンナンは、酵母、植物または真菌から得られる。別の特定の実施形態において、酵母は、サッカロミセス属(Saccharomyces ssp.)、ピキア属(Pichia ssp.)およびカンジダ属(Candida ssp.)からなる群から選択される。
サッカロミセス属の酵母の例としては、限定するものではないが、S.バヤナス(S.bayanus)、S.ブラウディ(S.boulardii)、S.ブルデリ(S.bulderi)、S.カリオカヌス(S.cariocanus)、S.カリオカス(S.cariocus)、S.セレビシエ(S.cerevisiae)、S.シュバリエ(S.chevalieri)、S.ダイレネンシス(S.dairenensis)、S.エリプソイデス(S.ellipsoideus)、S.ユーバヤヌス(S.eubayanus)、S.エキシグス(S.exiguus)、S.フロレンティヌス(S.florentinus)、S.クルイベリ(S.kluyveri)、S.マーティニエ(S.martiniae)、S.モンセンシス(S.monacensis)、S.ノルベンシス(S.norbensis)、S.パラドキサス(S.paradoxus)、S.パストリアヌス(S.pastorianus)、S.スペンセロラム(S.spencerorum)、S.ツリセンシス(S.turicensis)、S.ユニスポラス(S.unisporus)、S.ウバルム(S.uvarum)およびS.ソナタス(S.zonatus)が挙げられる。より特定の実施形態において、酵母はS.セレビシエ(S.cerevisiae)である。
ピキア属(Pichia ssp.)の酵母の例としては、限定するものではないが、P.パストリス(P.pastoris)、P.アノマーラ(P.anomola)、P.ヒーディ(P.heedii)、P.ギリエルモンディ(P.guilliermondii)、P.クルイベリ(P.kluyveri)、P.メンブラニファシエンス(P.membranifaciens)、P.ノルヴェゲンシス(P.norvegensis)P.オーメリ(P.ohmeri)、P.パストリス(P.pastoris)およびP.サブペリキュローサ(P.subpelliculosa)が挙げられる。
カンジダ属(Candida ssp.)の酵母の例としては、限定するものではないが、C.アルビカンス(C.albicans)、C.アスカラフィダルム(C.ascalaphidarum)、C.アンフィキシアエ(C.amphixiae)、C.アンタークティカ(C.Antarctica)、C.アルゲンテア(C.argentea)、C.アトランティカ(C.atlantica)、C.アトモスフェリカ(C.atmosphaerica)、C.ブラタエ(C.blattae)、C.カルポフィラ(C.carpophila)、C.セラムバイセラダム(C.cerambycidarum)、C.チャウリオデス(C.chauliodes)、C.コリダリ(C.corydali)、C.ドッセイ(C.dosseyi)、C.ドゥブリニエンシス(C.dubliniensis)、C.エルガテンシス(C.ergatensis)、C.フルクタス(C.fructus)、C.グラブラタ(C.glabrata)、C.フェルメンタティ(C.fermentati)、C.ギリエルモンディ(C.guilliermondii)、C.ハエムロニイ(C.haemulonii)、C.インセクタメンス(C.insectamens)、C.インセクトラム(C.insectorum)、C.インターメディア(C.intermedia)、C.(C.jeffresii)、C.ケフィール(C.kefyr)、C.クルーセイ(C.krusei)、C.ルイシタニアエ(C.lusitaniae)、C.リクソソフィア(C.lyxosophila)、C.マルトーサ(C.maltosa)、C.マリーナ(C.marina)、C.メンブラニファシエンス(C.membranifaciens)、C.ミレリ(C.milleri)、C.オレオフィラ(C.oleophila)、C.オレゴネンシス(C.oregonensis)、C.パラプシローシス(C.parapsilosis)、C.クエルシルトーサ(C.quercitrusa)、C.(C.rugosa)、C.サケ(C.sake)、C.シャハテア(C.shehatea)、C.テムノキラエ(C.temnochilae)、C.テヌイス(C.tenuis)、C.トロピカーリス(C.tropicalis)、C.ツチヤエ(C.tsuchiyae)、C.シノラボランティウム(C.sinolaborantium)、ソエ(C.sojae)、C.サブハシ(C.subhashii)、C.ビスワナチ(C.viswanathii)、C.ユチリス(C.utilis)が挙げられる。
マンナンが抽出できる植物の例としては、限定するものではないが、マメ類(例えば、イナゴマメ(Ceratonia siliqua)、グアー豆(Cyanaposis tetragonolobus)など)、塊茎(例えば、コンニャク(Amorphophallus konjac)など)、マンナンがエネルギー貯蔵として使用される、ユリ科(Liliaceae)、アヤメ科(Iridaceae)由来の植物の種子、緑藻類、例えば、カサノリ属(Acetabularia)、ミル属(Codium)、イソスギナ属(Halicoryne)および紅藻類(マルバチシマクロノリ(Porphyra umbilicalis))などの植物細胞壁が挙げられる。
マンナンが抽出できる真菌の例としては、限定するものではないが、ペシロマイセス属(Paecilomyces ssp.)およびガノデルマ・ルキドゥム(Ganoderma Iucidum)(レイシ)が挙げられる。
当業者により理解されるように、マンナンが真菌または酵母から得られる場合、マンナンは真菌および酵母の細胞壁の一部であり、その結果、細胞壁を合成するために生物により使用されるタンパク質の残基を含有し得る。したがって、マンナンは、存在するアミノ酸残基由来のアミノ基をその構造中に含むことができる。したがって、別のより特定の実施形態において、前記アミノ基は、リジンのアミノ酸からもたらされる。
本発明において、「ジアルデヒド」は、2つのアルデヒド基を含む化合物を指すと理解される。ジアルデヒドの例としては、限定するものではないが、グルタルアルデヒド、グリオキサル、マロンアルデヒド、スクシンアルデヒドおよびアジポアルデヒドが挙げられる。好ましい実施形態において、ジアルデヒドはグルタルアルデヒドである。
上記のように、本発明の免疫原性複合体は、重合抗原、マンナンおよびジアルデヒドを含む。したがって、本発明の免疫原性複合体の成分の結合は、化学的コンジュゲーション、物理的コンジュゲーションまたは両方により同時に発生させることができる。
本発明において「化学的コンジュゲーション」は、化学結合を用いた本発明の免疫原性複合体の成分の結合として理解される。上で説明したように、マンナンは、これらの構造中のアミノ酸、例えばリジンの存在に起因するアミノ基を含み得る。理論に縛られることを望むものではないが、免疫原性複合体の成分間の結合は、マンナン中に存在するアミノ酸と、反応液中に存在するジアルデヒドとの間の結合により発生し得ると考えられる。したがって、特定の実施形態において、重合抗原はジアルデヒドによりマンナンと結合される。水性媒体中のジアルデヒドは、特定の割合で重合形態中に存在し、したがって、マンナン中および抗原性タンパク質中に存在するアミノ基との反応が、反応混合物中に存在するいくつかの成分の中に共有結合性架橋をもたらす、2以上のアルデヒド官能基を有するいくつかの種が存在する。アルデヒド基およびアミノ基の間の一次反応は、pH条件に依存して、可逆的であり得る、いわゆるシッフ塩基の形成をもたらす。しかし、ジアルデヒドまたはポリアルデヒド化合物、例えばグルタルアルデヒドおよび水溶液中に存在するこれらの重合形態に属するアルデヒド基の場合、多官能性重合体的性質のアルファ−ベータ不飽和カルボニル系を作製する、アルドール縮合および脱水タイプの他の反応が起こる。さらに、シッフ塩基はまた、元々のシッフ塩基より安定なアルファ−ベータ不飽和イミンを作製するような、反応媒体中に存在するアルデヒドとのアルドール様縮合を生じやすいことが示されている。他方で、カルボニルおよびアルドール縮合に由来するアルファ−ベータ不飽和イミンの両方が、新たな安定共有結合を形成するように、アミノ基によるコンジュゲート付加反応に供されやすい。元々のジアルデヒドおよび反応媒体中に存在するこれらの重合形態の多官能性と一緒に記載された化学反応性は、最終的な重合化学的コンジュゲートを形成するための、マンナンと抗原との間の化学的共有結合および安定な架橋の基盤である。
本発明において、「物理的コンジュゲーション」は、物理的捕捉による本発明の免疫原性複合体の成分の結合と理解される。理論に縛られることを望むものではないが、抗原が重合される場合、マンナンは、その構造の剛性および高レベルの分枝に支持されたポリマーの折り目に捕捉されたまま留まると考えられる。したがって、特定の実施形態において、アレルゲンは、ポリマーによる物理的捕捉によりマンナンに結合される。
ひとたび免疫原性複合体が形成されると、成分の割合は、媒体中のマンナンの濃度に依存して変動し得る。したがって、特定の実施形態において、抗原:マンナンの比は、1:10と1:0.1との間、好ましくは、1:4と1:0.15との間、より好ましくは、1:3と1:0.3との間、より好ましくは、1:4と1:0.5との間の範囲である。特定の実施形態において、抗原:マンナンの比は、1:0.3または1:0.5である。
本発明の方法
本発明の著者らは、ジアルデヒドを、抗原およびマンナンの混合物に付加することにより、抗原重合と同時に、抗原とマンナンとのコンジュゲーションを可能にし、このことが、前記複合体に対するアレルギー応答を誘発せずに、樹状細胞(DC)により認識および捕捉され得る、個体において免疫応答の刺激および/または誘導が可能な免疫原性複合体またはワクチンの獲得を可能にすることを見出した。
したがって、別の態様において、本発明は、本発明の免疫原性複合体を得る方法、これ以降「本発明の方法」に関し、該方法は、(i)抗原およびマンナンを含む溶解液を調製するステップ、ならびに(ii)ジアルデヒドを前記溶解液に加えるステップを含む。
第1のステップ[ステップ(i)]において、本発明の方法は、抗原およびマンナンを含む溶解液を調製するステップからなる。
抗原という用語は、すでに定義されている。特定の実施形態において、抗原はアレルゲンである。アレルゲンの例としては、限定するものではないが、花粉アレルゲン性抽出物、節足動物由来のアレルゲン性抽出物、食品または加工食品由来のアレルゲン性抽出物、対象において過敏反応を誘導する昆虫由来の唾液、爪または針に存在する成分などが挙げられる。特定の実施形態において、アレルゲンは、花粉、好ましくは、チモシー(Phleum pratense)、オーチャードグラス(Dactylis glomerata)、ギョウギシバ(Cynodon dactylon)、ベレニアルライグラス(Lolium perenne)、カニツリグサ類(Trisetum spp.)、オリーブ(Olea europaea)、イトスギ属(Cuppresus spp)、ブタクサ属(Ambrosia spp.)、カンバ属(Betula spp.)、プラタナス属(Platanus spp)、セイヨウハシバミ(Corylus avellana)またはセイヨウヤマハンノキ(Alnus glutinosa);ダニ、好ましくは、ヤケヒョウダニ(Dermatophagoides pteronyssinus)、コナヒョウダニ(Dermatophagoides farinae)またはネッタイタマクマダニ(Blomia tropicalis)の種に属するダニ;上皮、好ましくは、イエネコ(Felis domesticus)またはイエイヌ(Canis familiaris)の種に属する上皮;真菌の胞子、好ましくは、アルテルナリア・アルテルナータ(Alternaria alternata)またはアルテルナリア・テラヌイス(Alternaria tenuis)の種に属する真菌の胞子、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択される。
当業者には理解されるように、ステップ(i)の溶解液は、相互に異なっていても、または同じであってもよい複数の抗原を含有してよい。したがって、特定の実施形態において、溶解液は、相互に異なっていても、または同じであってもよい少なくとも2種の抗原を含む。
抗原およびアレルゲン性抽出物を得るために使用される技術および方法論は、当業者には広く知られているが、これらは市販品として利用されても、または組換えタンパク質の形態で見出されてもよい。抗原またはアレルゲン性抽出物が凍結乾燥される場合、該抗原またはアレルゲン性抽出物は、本発明の方法に使用可能なように、例えばリン酸緩衝液で再構成される必要がある。
他方で、ステップ(i)の溶解液はマンナンも有する。マンナンという用語は既に定義してあり、本発明の態様に適用可能である。マンナンの例としては、限定するものではないが、ポリマンノース、ガラクトマンナンおよびグルコマンナンが挙げられる。本発明の方法の特定の実施形態において、本発明の方法に使用されるマンナンは、酵母、植物または真菌に由来する。別のより特定な実施形態において、酵母は、サッカロミセス属(Saccharomyces ssp.)、特にサッカロミセス・セレビシイ(S.cerevisiae);ピキア属(Pichia ssp.)、およびカンジダ属(Candida ssp)からなる群から選択される。マンナンを得ることができる酵母、真菌および植物の例は、本開示においてすでに記載してある。さらに、上記のように、マンナンは、マンノプロテイン中に存在するアミノ酸残基由来のその構造アミノ基を含み得る。したがって、別のさらにより特定の実施形態において、マンナンはアミノ基を含み、別のより詳細な実施形態において、前記アミノ基は、リジンアミノ酸に由来する。
溶解液に加えるマンナンの量は、本発明の免疫原性複合体において取得が意図される抗原:マンナン比に依存して変動し得る。したがって、特定の実施形態において抗原:マンナン比は、1:10から1:0.1、好ましくは、1:4と1:0.15との間、より好ましくは、1:3と1:0.3との間、より好ましくは、1:4と1:0.5との間の範囲である。特定の実施形態において、抗原:マンナン比は1:0.3または1:0.5である。
ひとたび抗原およびマンナンの溶解液が調製されると、ジアルデヒドが添加され、その後、重合剤として作用する[本発明の方法のステップ(ii)]。ジアルデヒドは、抗原重合およびマンナンと抗原とのコンジュゲーションを達成するために十分な濃度に到達するまで、徐々に溶解液に添加される。ジアルデヒドを使用して重合体を調製するために使用される技術および方法論は、最先端において周知であり、当業者にとって常識である(Silva et al.2004.Chemical Modifications on Proteins Using Glutaraldehyde.Food Technol.Biotechnol.42:51−56)。
ジアルデヒドを、抗原およびマンナンの溶解液へ添加後、この混合物を、重合反応を起こすために適切な条件下および十分な時間、例えば約15時間、4℃において撹拌しながら放置する。
特定の実施形態において、ジアルデヒドは、グルタルアルデヒド、グリオキサル、マロンアルデヒド、スクシンアルデヒドおよびアジポアルデヒドからなる群から選択される。好ましくは、ジアルデヒドはグルタルアルデヒドである。
重合反応が起こるために必要な時間が完了したら、反応を、遊離のアルデヒド基を中和する薬剤(中和剤)、例えば、アミノ基を含有する薬剤(例えば、アミノ酸、ε−アミノ−n−カプロン酸など)または酸化剤(例えば、過酸化水素、過ヨウ素酸ナトリウムなど)は、これらのマンノースに対する効果のために除き、他のアルデヒドとの反応性薬剤(例えば、メタ重亜硫酸ナトリウム、アンモニウムなど)を混合物に添加することによって停止させる。本発明の方法の特定の実施形態において、方法は、重合反応を停止するための中和剤、例えばアミノ酸、特にグリシンの添加を含むさらなるステップ(iii)を含む。重合を停止するために反応混合物に添加するグリシンの量は、反応条件に依存して変動してよいが、重合を停止するために必要なグリシンの添加量の計算は、当業者には常識である。概して、グリシンは、加えられたアルデヒド量に対して過剰、例えば、ジアルデヒド:グリシン比が1:50でなければならない。
重合反応の停止後、免疫原性複合体は単離可能であり、このことは当業者には常識である。したがって、特定の実施形態において、本発明の方法は、ステップ(iv)免疫原性複合体を単離するステップを含む。実際に、タンパク質複合体を単離する任意の方法が、本発明の文脈において使用可能である。前記方法の例としては、限定するものではないが、低圧または高圧の液体クロマトグラフィーカラム、マンノース結合レクチン系のアフィニティークロマトグラフィー(例えば、Concanavalin A)、沈殿技術(例えば、硫酸アンモニウム)、密度勾配分離およびさまざまな遠心分離が挙げられる。例としては、すでに形成された本発明の免疫原性複合体を含有する混合物を、塩および非重合残基の可能性のあるものを除くために透析し、その後、重合混合物のろ過、例えば、100KDaの細孔径を有する膜によるタンジェンシャル限外ろ過を実施する。
本発明の免疫原性複合体の使用
本発明の免疫原性複合体は、アレルゲンである場合、前記複合体に対するアレルギー応答が低い個体において、免疫応答を刺激および/または誘導可能にする特定の技術的特徴を有する。この特性は、対象に投与した場合、前記対象の免疫応答を刺激および/または誘導する医薬組成物を作り上げるための本発明の免疫原性複合体の使用を可能にし、および、例えば、アレルギー、感染性疾患または新生物の治療においてワクチンとしての使用を適切にする。
したがって、一態様において、本発明は、医薬組成物を入念に作り上げることにおける本発明の免疫原性複合体の使用に関する。
したがって、別の態様において、本発明は、本発明の免疫原性複合体および医薬として許容される担体を含む医薬組成物(これ以降「本発明の医薬組成物」)に関する。医薬として許容される担体の例は、技術水準において公知であり、リン酸緩衝生理食塩水、水、乳剤、例えば油/水、さまざまなタイプの湿潤剤、滅菌溶解液などが挙げられる。前記担体を含む組成物は、最新技術において公知の従来の手順により製剤化することができる。本発明の免疫原性複合体に関して説明したすべての特定の実施形態は、本発明の態様に適用可能である。さらに、本発明の医薬組成物は、医薬として許容される賦形剤、希釈剤、アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム、リン酸カルシウム、モノホスホリルリピドA、キトサンなど)および/または安定剤(例えば、グリセロール)も有してよい。当業者に理解されるであろうように、本発明の免疫原性複合体は、治療有効量、すなわち、対象において免疫応答を刺激および/または誘導する効果を発揮するために十分な量で、本発明の組成物中に存在するものである。
医薬組成物という用語は、ヒトに使用する組成物または動物の健康管理のために使用する組成物(獣医学的組成物)を含む。
特定の実施形態において、本発明の医薬組成物は、さらに追加の物質を含む。実際に、疾患またはアレルギーの対症療法に有用であると思われる任意の物質が、追加の活性物質として組み込み可能である。前記追加の活性物質の例示的な、限定されない例としては、抗ヒスタミン剤、ステロイドホルモン、クロモグリク酸二ナトリウム、フルチカゾン、ルパタジン、エバスチン、ロラタジン、デスロラタジンおよびヒスタミン受容体の他のアンタゴニスト、ロイコトリエンなど、ならびにこれらの混合物が挙げられる。
本発明の医薬組成物は、任意の適切な経路(例えば、経口、舌下、口周囲、鼻腔内、非経口、経皮、局所投与経路など)で投与可能であり、そのために、選択された投与方法の製剤に必要な医薬として許容される賦形剤および担体が使用される。薬物の投与および調製のさまざまな薬学的方法が、当業者に周知である。例示的な、限定されない方法において、本発明の医薬組成物は、マクロ粒子、ナノ粒子またはリポソームの形態で製剤の一部であり得、固体の薬学的投与形態、液体の薬学的投与形態または分散系を含む薬学的投与形態で投与可能である。より詳細には、本発明の医薬組成物は、注射用溶液、舌下送達に適切な薬学的形態、散剤、ペレット、ビーズ、錠剤、カプセル、シロップ、乳剤、坐薬、点眼薬、噴霧剤、エアロゾル、クリーム、ゲルなどの形態であってよい。本発明の組成物の投薬量計画は、医師および臨床的因子によって決定されるものである。医学において周知であるように、投薬量は患者の身体的特徴(年齢、身長、性別)、使用する送達手順、疾患の重症度、使用する特定の化合物および個体の薬物動態特性を含む数多くの因子に依存する。
特定の実施形態において、前記医薬組成物は、免疫応答の刺激および/または誘導に有用である。別の特定の実施形態において、前記医薬組成物はワクチンとして有用である。別の特定の実施形態において、前記医薬組成物は、対象において、アレルギー、感染性疾患および新生物の治療に有用である。
本発明において、「アレルギー」は、吸引、消化または触れた場合、対象において特徴的な臨床像を生じ、免疫応答、主にIgE応答を誘発する、粒子または物質(「アレルゲン」と呼ばれる)に対する過敏性反応であると理解される。「アレルゲン」という用語は、本開示において上ですでに記載してある。
本発明において、「感染性疾患」は、微生物、例えば細菌、真菌、ウイルス、原虫などにより引き起こされる感染症と一致する臨床症状を指す。感染性疾患の例としては、限定するものではないが、ブルセラ症(ブルセラ属(Brucella spp.))、炭疽病(バチルス・アンシラシス(Bacillus anthracis))、コレラ(ビブリオ・コレラ(Vibrio cholerae))、ジフテリア(コリネバクテリウム・ジフテリア(Corynebacterium diphtheriae))、丹毒(ストレプトコッカス属(Streptococcus spp.))、Q熱(コクシエラ・ブルネッティ(Coxiella burneti))、腸チフス(サルモネラ・ティフィ(Salmonella typhi)、S.パラティフィ(S.paratyphi))、レジオネラ病(レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila))、肺炎(ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)、スタフィロコッカス・オーレウス(Staphylococcus aureus)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、マイコプラズマ属(Mycoplasma spp.)、クラミジア属(Chlamydia spp.))、結核(マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis))および破傷風(クロストリジウム・テタニ(Clostridium tetani))が挙げられる。ウイルス感染性疾患の例としては、限定するものではないが、デング熱(フラビウイルス(Flavivirus))、黄熱病(フラビウイルス(Flavivirus))、エボラ出血熱(フィロウイルス(Filovirus))、インフルエンザ(インフルエンザウイルス(Influenzavirus))、A型肝炎(エンテロウイルス(Enterovirus)(VHA))、B型肝炎(オルトヘパドナウイルス(Orthohepadnavirus)(VHB))、C型肝炎(Hepacivirus(VHC))、ヘルペス、(ヘルペスウイルス(Herpesvirus))、単核球症(エプスタイン−バーウイルス(Epstein−Barr virus))、耳下腺炎(パラミクソウイルス(Paramixovirus))、ブタ熱(ペスチウイルス(Pestivirus))、灰白脊髄炎(エンテロウイルス(Enterovirus))、感冒(ライノウイルス(Rinovirus)、コロナウイルス(Coronavirus)、エコーウイルス(Ecovirus)、コクサッキーウイルス(Coxsackievirus))、狂犬病(ラブドウイルス(Rhabdovirus))、風疹(ルビウイルス(Rubivirus))、はしか(モルビリウイルス(Morbillivirus))、水痘(水痘−帯状疱疹ウイルス(Varicela−zoster))および天然痘(オルソポックスウイルス(Orthopoxvirus))が挙げられる。真菌感染症の例としては、限定するものではないが、アスペルギルス症、カンジダ症、クロモミコーシス、クリプトコッカス症、皮膚糸状菌症、スポロトリクム症、ヒストプラスマ症、連環状ヘルペス(herpes circinatus)、耳真菌症、でん風、角膜真菌症および接合真菌症が挙げられる。原虫により引き起こされる疾患の例としては、限定するものではないが、リーシュマニア症、マラリア、クリプトスポリジウム症、トキソプラズマ症、アメーバ症、ジアルジア症およびシャーガス病が挙げられる。プリオンにより引き起こされる感染性疾患の例としては、限定するものではないが、クロイツフェルト−ヤコブ病、ウシ海綿状脳症(「狂牛病」)、スクラピー(または震え病)、致死性家族性不眠症(FFI)およびクールー病が挙げられる。
本発明において、「新生物」は、悪性の場合、がんと称される塊または腫瘍の形成からなる、細胞増殖、および多くの場合細胞分化の変化により引き起こされる疾患であると理解される。良性新生物の例としては、限定するものではないが、線維腫(線維性結合組織)、粘液腫(組成結合組織)、脂肪腫(脂肪組織)、軟骨種(軟骨組織)、骨腫(骨組織)、血管腫(血管)、リンパ管腫(リンパ管)、髄膜腫(髄膜)、グロームス腫瘍(支持神経組織(supporting neural tissue))、平滑筋腫(平滑筋組織)、横紋筋腫(横紋筋組織)、乳頭腫(乳頭突起を形成する上皮組織)、腺腫(腺組織)および奇形腫(全能細胞)が挙げられる。悪性新生物の例としては、限定するものではないが、肉腫(例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、血管肉腫、リンパ肉腫、滑膜肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫など)、がん腫(例えば、類表皮がんまたは扁平上皮がん、基底細胞がん、腺がん、嚢胞腺がん、絨毛がん、陰茎がん、肺がん、乳がん、結腸癌など)、グリア腫、リンパ腫、白血病、黒色腫、肝細胞がん、精上皮腫、脊索腫および中皮腫が挙げられる。他方で、がんの例としては、限定するものではないが、肺がん、乳がん、結腸および直腸がん、膵臓がん、卵巣がん、白血病、前立腺がんおよび肝臓および膀胱がんが挙げられる。
本発明において、個体または対象は、動物種、好ましくは、限定するものではないが、ペット霊長類およびヒトを含む哺乳動物のメンバーを指し、本明細書の文脈において、個体は、好ましくは、任意の人種または年齢の男性または女性のヒトである。
「ワクチン」は、ひとたび生物内に入ると、特定のリンパ球の活性化および抗原産生を引き起こし、それによって異質な物質または病原性微生物に対する防御応答を引き起こす抗原調製物を指す。この応答は、免疫学的記憶を発生し、対応する病原菌の攻撃に対する一時的または長期免疫を起こし得る。
したがって、本発明は、対象のためのワクチンのカスタマイズを可能にする、すなわち、ワクチンとして使用可能な、本発明の免疫原性複合体を作製するために、対象の必要条件に従って抗原を選択できる。治療/予防される疾患は、本発明の免疫原性複合体を製造するために選択される抗原に依存するものである。したがって、どのようなアレルギー、感染性疾患または抗腫瘍性疾患も、本発明の免疫原性複合体により治療可能である。例えば、対象がアレルギーであるアレルゲンを知ることにより、選択されたアレルゲン(複数可)を含む免疫原性複合体を、本発明に従って調製することができ、これを対象に投与して、免疫応答を発生させる、したがって、アレルギーを治療することができる。
したがって、別の態様において、本発明は、本発明の免疫原性複合体を含むワクチンに関する。
本発明の治療方法
別の態様において、本発明は、対象においてアレルゲンにより引き起こされる感染性疾患、新生物またはアレルギー反応を予防および/または治療する方法に関し、前記方法は、本発明の免疫原性複合体または本発明の医薬組成物を対象に投与するステップを含む。
説明および特許請求の範囲を通して、「含む」という用語およびその変化形は、他の技術的特徴、添加物、成分またはステップを排除するものではない。当業者には、本発明の他の目的、有利性および特徴は、一部は本発明の説明に、一部は本発明の実践からから解明されるであろう。以下の実施例および図面は例示目的で提供するものであり、本発明を限定する意図のものではない。
図1は、過ヨウ素酸塩によるマンナンの酸化反応のグラフィック表現である。このスキームは、酵母由来のマンナン中の2つのタイプのグリコシド結合、アルファ(1−2)およびアルファ(1−6)を示す。過ヨウ素酸塩による酸化は、どちらの場合もピラノース環を変質させる。 図2は、過ヨウ素酸塩により予備処理されたマンナンおよび処理されていないマンナンの1次元スペクトルのグラフィック表現である。予備処理されたマンナン中にアルデヒド基が出現している。 図3は、いくつかの重合アレルゲン(黒い棒)中の遊離のアミノ基の百分率を、その天然の非重合形態中のアレルゲン値(白い棒)の中から抜き出して表す4つのチャートを示す図である。示した図は、少なくとも4つの異なるバッチの平均である。 図4は、ウシ血清アルブミン(BSA)をあらかじめ酸化したマンナンで処理下後の、変性条件下の電気泳動(PAGE)の結果を示す画像である。これらのレーンは、コンジュゲーション後の粗混合物(コンジュゲートされたBSA)およびAMICON YM100でのろ過による2種の試料に対応である(100kDa未満のBSAおよび100kDaを超えるBSA)。 図5は、チモシー(Phleum pratense)の天然抽出物由来のアミノ酸およびチモシー(Phleum pratense)のポリマー由来のアミノ酸の、ガスクロマトグラフィーによる分析を示すチャートである。遊離のリジンの有意な減少が、重合試料において観察される。 図6は、S.セレビシエ(S.cerevisiae.)由来のマンナンストック試料由来のアミノ酸の分析を示すチャートである。 図7は、さまざまな比(タンパク質:炭水化物)でマンナンと重合された試料の1次元スペクトルを示すチャートである。マンナンなしで重合された試料を対照として使用した。 図8は、さまざまな比(タンパク質:炭水化物)でマンナンと重合された試料の2次元スペクトル(DOSY)「Diffusion Ordered SpectroscopY」を示すチャートである。マンナンなしで重合された試料を対照として使用した。 図9は、ガスクロマトグラフィーにより分析された、チモシー(Phleum pratense)のさまざまな試料の単糖類の百分率のグラフィック表現を示す図である。 図10は、チモシー(Phleum pratense)の試料:天然抽出物(非重合)、重合(マンナン非含有)および比(1:0.5)の接合重合を比較する1次元スペクトルを示すチャートである。 図11はチモシー(Phleum pratense)の試料、非重合ならびにマンナンとの重合およびマンナンなしの重合の2次元スペクトル(DOSY)「Diffusion Ordered SpectroscopY」を示すチャートである。 図12は、チモシー(Phleum pratense)のさまざまな試料を比較する、2次元スペクトルHSQC(H−C)を示すチャートである。非単量体範囲の領域を拡大した。 図13は、さまざまな比(タンパク質:炭水化物)でマンナンと重合された(コナヒョウダニ(D.farinae))のダニ抽出物試料の2次元スペクトル(DOSY)「Diffusion Ordered SpectroscopY」を示すチャートである。マンナンなしで重合された試料を、対照として使用した。 図14は、コナヒョウダニ(D.farinae)の試料:天然抽出物、重合(マンナン非含有)および比(1:0.3)の接合重合の1次元スペクトルを重ねたチャートである。 図15は、ガスクロマトグラフィーにより分析された、コナヒョウダニ(D.farinae)のさまざまな試料の単糖類の百分率のグラフィック表現を示す図である。 図16は、コナヒョウダニ(D.farinae)の試料、非重合ならびにマンナンとの重合またはマンナンなしの重合の2次元スペクトル(DOSY)「Diffusion Ordered SpectroscopY」を示すチャートである。 図17は、コナヒョウダニ(D.farinae)の、a)天然抽出物、b)重合およびc)マンナンとの重合マンナン(1:0.3)の試料の電子顕微鏡画像である。 図18は、さまざまな時間におけるチモシー(Phleum pratense)の1次元プロトンスペクトルを示す、一群のチャートである。 図19Aは、天然アレルゲン(非重合)、重合された、非マンノシル化アレルゲンおよびグルタルアルデヒドでマンノシル化されたアレルゲンを用いた、チモシー(Phleum pratense)の天然抽出物に対するIgE−結合阻害に関するELISAアッセイの結果を示すチャートである。図19Bは、チモシー(Phleum pratense)の抽出物の、SDSの存在下のポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)およびアレルギー患者の血清を用いた免疫検出(イムノブロッティング)に対応する画像である:PAGEにより分離されたタンパク質とのIgE反応性。Pm=分子量パターン;1=天然アレルゲン;2=重合された非マンノシル化アレルゲン;3=グルタルアルデヒドでマンノシル化されたアレルゲン。 図20Aは、天然アレルゲン(非重合)、重合された非マンノシル化アレルゲンおよびグルタルアルデヒドでマンノシル化されたアレルゲンを用いた、それぞれ、ヤケヒョウダニ(D.pteronyssinus)およびコナヒョウダニ(D.farinae)の天然抽出物に対するIgE−結合阻害に関するELISAアッセイの結果を示すチャートである。図20Bは、ヤケヒョウダニ(D.pteronyssinus)およびコナヒョウダニ(D.farinae)の抽出物の、SDSの存在下のポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)およびアレルギー患者の血清による免疫検出(イムノブロッティング)に対応する画像である:PAGEにより分離されたタンパク質とのIgE反応性。Pm=分子量パターン;1=天然アレルゲン;2=重合された非マンノシル化アレルゲン;3=グルタルアルデヒドでマンノシル化されたアレルゲン。 図21は、同じタンパク質濃度の非重合抽出物(天然)、重合抽出物(Pol)またはマンナンと重合された抽出物(Polマンナン)を用いた、チモシー(Phleum pratense)またはコナヒョウダニ(D.farinae)に対してアレルギーの患者におけるex vivoの好塩基球活性化試験の結果を示す一群のチャートである。好塩基球活性化の分析を、BASOTEST(登録商標)キットを使用して、フローサイトメトリーにより実施した。 図22は、同じタンパク質濃度の非重合抽出物(天然)、重合抽出物(Pol)またはマンナンと重合された抽出物(Polマンナン)による、チモシー(Phleum pratense)に対してアレルギーの患者におけるin vivo応答についてのアッセイ(プリック試験)の結果を示すチャートである。 図23は、同じタンパク質濃度の非重合抽出物(天然)、重合抽出物(Pol)またはマンナンと重合された抽出物(Polマンナン)を用いた、コナヒョウダニ(D.farinae)に対してアレルギーの患者におけるin vivo応答についてのアッセイ(プリック試験)の結果を示す値の箱ひげ図である。 図24Aは、ヒト単球由来樹状細胞(DC)の、重合(Pol)チモシー(Phleum pratense)(Pol)または重合およびマンノシル化(Polマンナン)チモシー(Phleum pratense)由来のアレルゲンの取込みに関するアッセイにおいて得られた結果を示すグラフィック表現である。このアッセイを、このイネ科抽出物に付随する色素の自己蛍光を利用するフローサイトメトリーにより実施した。図24Bは、ヒト単球由来樹状細胞(DC)の、システインにおいてAlexa488で標識された、非重合(天然)チモシー(Phleum pratense)、重合(ポリマー)またはマンナンと重合(Polマンナン)されたチモシー(Phleum pratense)由来アレルゲンの取込みについて得られた結果を示すグラフィック表現である。このアッセイを、2つのインキュベーション時間(1および5分)で実施し、フローサイトメトリーにより分析した。上部は、二重陽性細胞(右上の象限)を示し、Alexa488を捕捉するDC(HLADR+)が濃縮されている。下部は、一緒にインキュべートされた調製物によるDCの平均蛍光強度を示す。図24Cは、30分のインキュベーション後の、さまざまな蛍光化調製物(Alexa488)の中のDCによる取込みの差を理解するための、微小領域の共焦点顕微鏡の試料表現である。さまざまな複合体に付随する蛍光は、細胞内の小さい白い点の形態で、図内に見ることができる(上のパネルでポジティブである同じものが、下のパネルではネガティブな黒い点となっており、捕捉された蛍光色素が同定しやすくなっている)。 図25は、天然(N)チモシー(Phleum pratense)、重合(P)チモシー(Phleum pratense)およびマンナンと重合(PM)されたチモシー(Phleum pratense)由来の抽出物を用いて24時間の間刺激された樹状細胞(DC)の上清におけるサイトカインの産生を示す1群のチャートである。 図26は、非重合(天然)チモシー(Phleum pratense)、重合および非マンノシル化(Pol)チモシー(Phleum pratense)または重合されたマンノシル化(Pol−Man)チモシー(Phleum pratense)由来のアレルゲンを用いて刺激された樹状細胞中の成熟マーカーの発現を示すチャートである。 図27は、非重合(天然)コナヒョウダニ(D.farinae)、重合および非マンノシル化(Pol)または重合およびマンノシル化(Pol−Man)されたコナヒョウダニ(D.farinae)由来のアレルゲンを用いて刺激された樹状細胞中の成熟マーカーの発現を示すチャートである。 図28は、チモシー(Phleum pratense)由来の、重合された(Pol)、または重合およびマンノシル化された(Pol Man)アレルゲンを用いた、ex vivo免疫化アッセイ後の特異的IFNγ、IL−10およびIL−4産生細胞の誘導を示すチャートである。産生細胞の量は、ELISPOTにより決定した。 図29は、コナヒョウダニ(D.farinae)由来の、重合化された(Pol)または重合およびマンノシル化された(Pol Man)アレルゲンを用いた、ex vivo免疫化アッセイ後の特異的IFNγ、IL−10およびIL−4産生細胞の誘導を示すチャートである。産生細胞の量は、ELISPOTにより決定した。 図30は、Balb/cマウスの免疫化プロトコルのスキームである。 図31は、リンパ球増殖アッセイに従ったプロトコルのスキームである。 図32は、5μgの、重合され、マンノシル化されていない(ポリマー)チモシー(Phleum pratense)由来アレルゲンまたは重合され、マンノシル化された(ポリマーマンナン)チモシー(Phleum pratense)由来アレルゲンで免疫化されたマウスにおける増殖応答を示すチャートである。増殖アッセイはCSFEを用いた。 図33は、20μgの、重合され、マンノシル化されていない(ポリマー)コナヒョウダニ(D.farinae)由来アレルゲンまたは重合され、マンノシル化された(ポリマーマンナン)コナヒョウダニ(D.farinae)由来アレルゲンで免疫化されたマウスにおける増殖応答を示すチャートである。増殖アッセイはCSFEを用いた。 図34は、チモシー(Phleum pratense)由来の天然(非重合)アレルゲンに対する応答としての、チモシー(Phleum pratense)由来のポリマーで免疫化されたマウスの脾臓細胞によるサイトカインの産生を示す一群のチャートである(図34Aおよび34B)。バーは、同じ群のマウスの平均を表す。灰色のバー:非マンノシル化ポリマー;黒いバー:マンノシル化ポリマー。 図35は、コナヒョウダニ(D.farinae)由来の天然(非重合)アレルゲンに対する応答としての、コナヒョウダニ(D.farinae)由来のポリマーで免疫化されたマウスの脾臓細胞によるサイトカインの産生を示す一群のチャートである(図35Aおよび35B)。バーは、同じ群のマウスの平均を表す。灰色のバー:非マンノシル化ポリマー;黒いバー:マンノシル化ポリマー。 図36は、重合され、マンノシル化されないアレルゲン(ポリマー)、または重合され、マンノシル化されたアレルゲン(ポリマーマンナン)で免疫化されたマウスの血清中に検出された、その天然(非重合)形態のチモシー(Phleum pratense)由来のアレルゲンに対する特異的抗体のレベルを示す一群のチャートである(図36Aおよび36B)。下のチャートは、IgG2aおよびIgEクラスの各免疫原により誘導された特異的抗体のレベルの間の比を表す。 図37は、重合され、マンノシル化されないアレルゲン(ポリマー)、または重合され、マンノシル化されたアレルゲン(ポリマーマンナン)で免疫化されたマウスの血清中に検出された、その天然(非重合)形態のコナヒョウダニ(D.farinae)由来のアレルゲンに対する特異的抗体のレベルを示す一群のチャートである(図37Aおよび37B)。下のチャートは、IgG2aおよびIgEクラスの各免疫原により誘導された特異的抗体のレベルの間の比を表す。
アレルゲン(重合または非重合)と酸化マンナンとのコンジュゲーションによるワクチン作製
1.マンナンの酸化
サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)由来のマンナンを、100KDaカットオフ膜を使用する限外ろ過によりあらかじめ分取した。低分子量ろ過分画を回収し、過ヨウ素酸塩による酸化に供した。図1は、マンノースの完全性およびアルデヒド基の発生にわたった、過ヨウ素酸塩の理論上の作用を示す。図2において、マンナンの酸化後のこれらの基の発生は、実験的に実証されている。
2.アレルゲンの重合
さまざまな起源(チモシー(Phleum pratense)、オリーブ(Olea europea)、ヤケヒョウダニ(Dermatophagoides pteronyssinus)およびセイヨウヤマハンノキ(Alnus glutinosa))由来のアレルゲンを、グルタルアルデヒドを使用して重合した。図3は、その天然非重合形態中のアレルゲンの値にわたった重合されたアレルゲン中のアミノ基の減少を示す。アミノ基の存在は、ヨーロッパ薬局方(2.2.56項、アミノ酸の分析)に従ってニンヒドリンを用いた反応により決定した。
3.酸化マンナンと、BSA(ウシ血清アルブミン)とのコンジュゲーション
得られた結果は、ポリアクリルアミド電気泳動により実証されるように、BSAと酸化マンナンとの間にコンジュゲーションが存在したことを示した。[図4、(コンジュゲートされたBSA)]。同じ図は、限外ろ過による最も大きな100kDaの分画の中に保持されるコンジュゲートBSAの分画が、BSA単量体としてどれほど大きく現れたかを示す。これは、大きな百分率で形成されたと思われるコンジュゲートが変性状況下で、初期状態に戻ったことを暗示しており、予備酸化マンナンとのコンジュゲーション反応が十分な安定性を有する生成物を生じないことを示す。これらのコンジュゲートの安定化は、対応するより安定な二次アミンを得るために、コンジュゲーション反応において形成される、シアノ水素化ホウ素ナトリウムによるシッフ塩基の化学的還元を伴う、還元的アミノ化と称される化学過程により実施することができる。しかし、この反応は、出発試薬(マンナンおよびタンパク質)中のいずれにも存在しない、したがって、定義および特徴付けを必要とする、官能基および化学的実体(二次アミン)を生じる、初期物質の新しい化学的変換を暗示する。
4.酸化マンナンと、グルタルアルデヒドを用いてあらかじめ重合されたチモシー(Phleum pratense)アレルゲン由来のタンパク質抽出物とのマンナンのコンジュゲーション。
ポリマー中の遊離アミノ基の有意な減少(図3)により、コンジュゲーションの成功が達成可能であったかは明確ではないが、予備酸化マンナンとチモシー(Phleum pratense)由来のアレルゲン重合体とのコンジュゲーションを、アルブミンに関して記載されたプロトコル(Masarova,J. and Mislovicova,D.2002.Int.J.Polymer.Anal.Charact.,7:106−116)に従って試験した。予想したように、グルタルアルデヒドを用いた重合後、遊離のリジンの量は、天然非重合抽出物に対する全アミノ酸の%で1/4.5である(図5)。
酸化マンナンを、重合チモシー(Phleum pratense)由来の抽出物(100KDaを超える分子サイズを有する材料)とコンジュゲートさせた。その後、反応生成物を、100KDa膜を介して再度分取した。このステップにおいて、元の重合抽出物およびコンジュゲートされたマンナンが見出される、100KDaより大きい物を保持する分画を回収した。
保持された試料の全炭水化物含有量を、アントロンを用いた比色分析により分析し、マンナンで処理されなかった重合抽出物の初期含有量と比較して、試料中に炭水化物量の有意な増加は観察されなかった。他方、核磁気共鳴研究(1次元および2次元研究)は、両方の化合物の間に共有結合も分子レベルの構造的違いも示さず、このコンジュゲーションプロトコルにより、両方の成分の間に分子相互作用は得られず、したがって、両方の生成物の間に結合またはコンジュゲーションが得られなかったことを示した。理論に縛られることを望むものではないが、このことは、(主にリジンにより提供される)遊離アミノ基の減少によるもの、ならびにタンパク質材料がポリマーであり、およびそれによって、柔軟性のほとんどない剛性構造であることによる、遊離の残存リジンの接近可能性の低さによると思われる。この可能性は、同じ負の結果がグルタルアルデヒドを用いてあらかじめ事前に重合された、したがって、図3に示すように遊離アミノ酸が減少した他のアレルゲンを用いても得られたという事実により裏付けられた。
5.結論
これらの結果は、チモシー(Phleum pratense)の重合試料(および他の重合アレルゲン)と酸化マンナンとの間のコンジュゲーションの欠落を明らかにした。この事実は、酸化後のマンノースの変形に関係する不利益(図1)(Shibuya,N.,et al.1988.Journal of Biological Chemistry,263:728−734)およびBSAのようなリジンに富んだタンパク質と形成されたコンジュゲートであっても安定性が欠落することと共に(図4)、重合アレルゲンワクチンの作製におけるその使用に関するこの方法論の却下を可能にする。
グルタルアルデヒドを使用してマンノースと重合されたアレルゲンのコンジュゲーションによるワクチンの作製
材料および方法
タンパク質抽出物の重合およびコンジュゲーションの方法は、下記のステップからなる:
1.手順は、チモシー(Phleum pratense)由来の凍結乾燥抽出物から開始し、この凍結乾燥抽出物を、必要体積のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で、最終タンパク質濃度が2mg/mLに到達するように再構成する。その後、pHを、リン酸カリウム緩衝液またはリン酸ナトリウム緩衝液を使用して、必要に応じて抽出物のpHを低下または上昇させて7.2に調整し、タンパク質濃度を、pH調整に使用した緩衝液の体積を考慮に入れて計算する。
Ex.:出発タンパク質の量:チモシー(P.pratense)由来のタンパク質300mg
PBSの必要体積:150mL
pHを7.2に調整するために必要な体積:1mLの緩衝液
試料の最終濃度:1.986mg/mL
2.抽出物の重合およびコンジュゲーション反応:
重合化剤、この場合グルタルアルデヒドを、撹拌しながら、最終濃度が0.025Mに到達するまで抽出物に滴加する。
試料のコンジュゲーションのためのマンナンを、この時点で1:0.5(タンパク質質量:マンナン質量)の比でさらに加える。反応液は、15時間、4℃において撹拌しながら維持する。
Ex.:グルタルアルデヒドの初期濃度:2.5M。
抽出物に加える体積:1.5mL
マンナン(タンパク質:炭水化物の比1:0.5):90mg。
3.反応の停止:
抽出物を室温(25℃)に温め、粉末化グリシンを加えて、重合反応を停止させる。グリシンは過剰、例えば、グルタルアルデヒドに対して1:50の比でなければならない。グリシンを試料に溶解して、4℃において撹拌しながら2時間放置する。
Ex.:初期グリシン濃度(分子量:75.07):1.25M
グルタルアルデヒド濃度:0.025M
抽出物体積:152.5mL(初期151mL+1.5mLのグルタルアルデヒド)
加えるグリシンの量:14.31g

4.抽出物を、塩および非重合残基の可能性を除去するために、次いで7体積の蒸留水に対して透析する。100kDa細孔膜を用いたクロスフローろ過系(Pellicon、Merck Millipore)を使用する。
Ex.:抽出物体積:152.5mL
水の体積:1.525mL
5.最後に、マンナンと重合およびコンジュゲートされた抽出物を、0.22μmを介してろ過し、アリコートを取り、−60℃において凍結させ、保存のために凍結乾燥させる。
結果
前記方法を適用する結果として、元々のアレルゲンに対して免疫学的に改善されたマンノシル化ポリマーが得られた。グルタルアルデヒドによる処置は、両方の構造(アレルゲンおよびマンナン)の結合を可能にし、重合およびコンジュゲーションを同時に引き起こし、このことは、下記の実施例(実施例3)において示される結果により実証される。
前記マンノシル化ポリマーは、天然または重合された非マンノシル化アレルゲンより優れた構造的および免疫学的特性を有し、このことは、実施例4および実施例5−10においてそれぞれ示される。
したがって、グルタルアルデヒドを使用して、単一ステップでマンナンと重合された抗原とをコンジュゲーションし、マンノース構造の完全性が維持される方法が確立される。このように実行するために、一方で、天然起源、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)由来のマンナンが、酵母において合成されるマンナンで、リジンを含有する元々のマンノプロテインのペプチド残基を有するという事実を上手に利用し、(図6)化学コンジュゲーションをもたらす。他方で、溶液中の、重合性の分枝した剛性構造のマンナンとタンパク質由来のポリマーとを十分使用して、前者が、グルタルアルデヒドにより重合されたタンパクにより捕捉され、物理的コンジュゲーションをもたらす。両方の場合のいずれにおいても、相互排他的ではなく、その天然形態(非重合)のタンパク質およびマンナの混合物のグルタルアルデヒド処理が、両方の構造の結合を可能にし、コンジュゲーションおよび重合を同時に発生させる。
グルタルアルデヒドとの反応による、アレルゲン(イネ科およびダニ)の重合およびマンナンとのコンジュゲーションに関する証拠
材料および方法
実施例2で得られた凍結乾燥試料の2mgのアリコートを、0.5mLの重水に溶解し、核磁気共鳴(nucleas magnetic resonance)(NRM)により、クライオプローブを装備した500MHz Bruker Advance分光計または600MHz Bruker Advanceで分析した。1次元プロトン共鳴スペクトル、2次元プロトン−炭素13ヘテロ核(hetronuclear)相関スペクトル(HSQC;Zwahlen et al.,1997.J.Am.Chem.Soc.119:6711−6721)および並進拡散により順序づけられた2次元スペクトル(DOSY,Wu et al.1995.J. Magn.Reson.A.115:260−264)を、製造業者のBruker Biospin Corporation(Billerica、Massachusetts、USA)により規格化および実行されたプロトコルに従って、スペクトル獲得およびプロセシングソフトウェアTOPSPINで、さまざまな試料から得た。
試料の炭水化物およびタンパク質含有量を、全炭水化物の分析のために、アントロン法(Shields,R. and W.Burnett.1960.Analytical Chemistry 32:885−886)を使用し、タンパク質の分析のためにBradford法(Bradford,M.M.1976.Analytical Biochemistry 72:248−254)を使用して、比色分析技術により分析した。
さまざまな単糖類率の分析を、試料の糖質部から、これらのアルジトール酢酸の形態で放出された単糖類の全酸加水分解およびガスクロマトグラフィー分析を用いて実施した(M.F.Chaplin & J.F.Kennedy editors,Carbonhydrate Analysis:a practical approach.(1986)Oxford IRL PRESS)。
試料のタンパク質部中のさまざまなアミノ酸の分析を、試料の全酸加水分解により実施し、放出されたアミノ酸の液体クロマトグラフィーによる分析を、Biochrom Aminoacid Anlyzer機器において実施した。
結果
3.1.マンナンと重合された抽出物の適切なコンジュゲーションを可能にするより適切な割合を確立するための、チモシー(Phleum pratense)とさまざまな割合のマンナンとの接合重合の研究。
タンパク質:マンナンのさまざまな比を用いてこの過程において得られた試料の構造を、核磁気共鳴(NMR)により、マンナンを含まない重合体試料を使用して分析した。そのままで重合したタンパク質抽出物は、試料それ自体が属するオリゴ糖残基を有し(12−20%)、このことはガスクロマトグラフィーにより確認された(単糖類分析)。媒体中の糖の量を増加すると、予想されたように、スペクトル中の多糖類シグナルもまた増加した(図7)。並進拡散研究を実施し、この研究は、その拡散係数に従って化合物を順序付けし、順に分子サイズに依存する研究である(NMRによる2次元スペクトル;2次元スペクトル(DOSY)「Diffusion Ordered SpectroscopY」)。この研究において、マンナンと重合された試料において、非重合試料中より大きい粒子が存在したことが観察でき、これは、すべての場合においてタンパク質抽出物とマンナンとの間の会合を示す(図8)。特に、比1:4の場合、大量のオリゴ糖部が観察され、反応媒体中の過剰の炭水化物によると思われる。
他方、タンパク質および糖の量を、おおまかに言うと、重合過程に供された試料のタンパク質:糖の比を確立すべく定量し、それを、初期割合と比較する(表1)。
Figure 2016515603
比が1:4の重合試料の場合、反応媒体中に見出される初期量が非常に過剰であり、未反応部が洗浄ステップで除去されるので、この過程後の糖の量が低い割合で得られたのは正常であった。残りの試料中に、初期割合と比較して多糖類割合の増加が見出され、これは、共有結合された多糖類残基を有する抽出物それ自体によるものである。
ひとたびデータがすべて得られたら、炭水化物の試料への組み込みを確実にし、マンナンの使用を最小にする比(1:0.5)を選択した。
3.2.このタンパク質−炭水化物比におけるチモシー(Phleum pratense)の接合重合分析
3.2.1 ガスクロマトグラフィーによる炭水化物分析
凍結乾燥材料の溶解液から出発して、全試料に関する乾燥重量中の炭水化物百分率を、ガスクロマトグラフィーを使用して、酸加水分解(アルジトール分析)により定量した(Fukuda,M. & Kobata,A.1993.Glycobiology.A Practical Approach. The practical Approach Series. Oxford University Press Inc.,New York.)。
三種の試料を分析した(図9):
−チモシー(Phleum pratense)の天然抽出物
−重合されたチモシー(Phleum pratense)
−マンナン(1:0.5)と重合されたチモシー(Phleum pratense)
結果は、重合試料(マンナン非含有)および天然抽出物に対して、接合重合に供された試料中でマンノースの有意な増加が示された。
3.2.2 NMR(核磁気共鳴)研究
NMRによる構造研究は、重合試料においてシグナルの広幅化を示し、サイズの増大を示し、これは、並進拡散DOSY(Diffusion Ordered SpectroscopY)による2次元スペクトルで裏付けられる(図10および11)。この2次元実験において、非重合タンパク質抽出物の場合、さまざまなサイズの材料が存在し、したがって、重合した場合にその平均分子サイズが増加する非常に異質な試料であることが観察できる。他方、抽出物をマンナンの存在下で重合した場合、重合体よりさらに低い拡散係数(より大きいサイズの指標となるデータ)を有する材料もまた得られ(多糖類が高分子量であるため)、多糖類およびタンパク質抽出物の間の結合または相互作用を示し、スペクトルの両方の部、炭水化物領域およびタンパク質領域が、同じ拡散係数を有するので、両方成分の間の相互作用を示している。これらの核磁気共鳴実験は、マンナンの存在下でグルタルアルデヒドを使用してタンパク質抽出物を重合後、タンパク質:マンナンのコンジュゲーションを裏付けている。
他方で、NMRによる別の2次元研究を、炭素13およびプロトン(13C−1H)の間のヘテロ核相関に基づき実施した(HSQC、「ヘテロ核単一量子コヒーレンス(Heteronuclear Single Quantum Coeherence)」)。これらの研究は、原子レベルで水素と炭素の間の結合を示し、各結合は、スペクトルおよび位置(座標:横軸、Hの化学シフト;縦軸:13Cの化学シフト)からの具体的な相関シグナル(ピーク)に対応し、これは化合物のタイプに依存して異なる。シグナルの群(H−C結合)は、「フィンガープリント」と同様の方法で、各化合物に特異的および排他的な2次元パターンを引き起こす(Claridge,T.D.W.1999.High−resolution NMR techniques in Organic Chemistry.Tetrahedron Organic Chemistry Series.Elsevier)。
3種のHSQC実験を実施して、試料の各タイプの特徴的パターンを識別した:
−マンナン非含有
−チモシー(Phleum pratense)由来の重合体
−マンナン(1:0.5)の存在下のチモシー(Phleum pratense)由来の重合体
マンナンの存在下で重合された試料は、マンナンの特徴的シグナルおよび試料それ自体の内在性炭水化物の特徴的シグナルを提示し、タンパク質抽出物と多糖類との間の相互作用を示す(図12)。
3.3.さまざまなマンナン割合を用いたコナヒョウダニ(D.farinae)の接合重合過程の研究
チモシー(Phleum pratense)により得られた結果から出発して、予備実験を、タンパク質:炭水化物の比(1:0.5)で実施したが、それにもかかわらず、得られた結果は、タンパク質材料と会合しなかった過剰のマンナン残基(図13、黒い円で区切られたシグナル)が観察されたので、チモシー(Phleum pratense)抽出物のそれぞれの場合ほど満足ではなかった。新たな重合を、媒体中のより低い炭水化物比で実施した(1:0.3および1:0.15)。遊離の形態(図13ボックスc 黒い円)ではなく、主にタンパク質と会合した形態で試料中にマンナンの組み込みが観察され(図13、ボックスb)ので比(1:0.3)を選択し、マンナンのこの組み込みは、比(1:0.15)による組み込みより高く、比1:0.3は最も大きな攪乱においても、タンパク質部に対応するスペクトル領域においても観察された(図13)。
3.3.1タンパク質:炭水化物の比が(1:0.3)におけるコナヒョウダニ(D.farinae)の接合重合の分析
図14は、比1:0.3のマンナンの存在下で重合されたコナヒョウダニ(D.farinae)抽出物由来の試料の1次元プロトンスペクトルの定性比較を、マンナンの不在下で重合された試料および非重合抽出物試料と関連して示す。スペクトルは、マンナンと重合された試料中のマンナンに特異的なシグナルおよびタンパク質に特異的なスペクトル領域における、重合により起こる分光パターンの変化を示す。
3.3.1.1 ガスクロマトグラフィーによる炭水化物分析
凍結乾燥材料溶解液から出発して、全試料に関する乾燥重量中の炭水化物百分率を、ガスクロマトグラフィーにより定量した(Fukuda,M. & Kobata,A.1993.Glycobiology.Oxford University Press Inc.,New York)。
3種の試料を分析した(図15):
−コナヒョウダニ(D.farinae)天然抽出物
−重合されたコナヒョウダニ(D.farinae)
−マンナン(1:0.3)と重合されたコナヒョウダニ(D.farinae)
コナヒョウダニ(D.farinae)の抽出物および重合体は、内在性オリゴ糖残基を試料それ自体に含有する(ガスクロマトグラフィーによる決定でおよそ17−20%、グルコース、マンノースおよびガラクトースが多く存在する)。マンナンとの接合重合産物に関する結果は、マンナンを含まずに重合された試料および天然抽出物の両方に対して、マンノースの有意な増加を示した。
3.3.1.2 NMR(核磁気共鳴)研究
比(1:0.3)(タンパク質:マンナン)における同時の重合およびコンジュゲーションにおいて得られた試料を、NMRにより分析した。これらの結果は、重合試料におけるシグナルの広がりを示し、2次元スペクトルDOSY(図16)において裏付けられる分子サイズの増加を示した。チモシー(Phleum pratense)の場合と同様に、マンナンと重合された試料は均質であり、マンナンを含まずに重合された試料より大きなサイズであり、多糖類と、コナヒョウダニ(D.farinae)のタンパク質抽出物との間の会合、したがって、両方の成分のコンジュゲーションの確認を示す。
3.3.1.3 透過電子顕微鏡法
コナヒョウダニ(D.farinae)のさまざまな試料の透過電子顕微鏡法による画像により、本発明者らは、天然抽出物および重合抽出物の間の構造レベルの違いを観察できた。重合が、より高密度の粒子をもたらし、マンナンとのコンジュゲーションがさらに、ポリマー中に明らかにみられる形態学的および構造レベルの変化を生み出す場合、多糖類とタンパク質抽出物との間の会合のさらなる証拠である(図17)。
グルタルアルデヒドとの反応による重合およびマンノシル化は、非マンノシル化ポリマーより安定なポリマーを作製する。
チモシー(Phleum pratense)の3種の試料の安定性を、水性媒体中の長期保存に対して比較し、3種の試料うちの1種はマンナン(タンパク質/マンナン比は1:0.5)の存在下で重合され、もう1種はマンナンの不在下で重合され、および非重合アレルゲンそれ自体であった。実施例3で分析したアリコートと等価のアリコート試料を、重水に溶解し、NMRにより分析して、その後4℃において保存した。試料はNMR管から取り出さず、他の操作もしなかった。保存4ヶ月後、NMR実験を、これらの溶解液条件下(4℃の重水)における試料の安定性をチェックするように、同じ取得パラメーターに従って反復した。初回と4か月後のスペクトルの差(分光器のそのままのTOPSPINソフトウェアにより実施されたスペクトルの減算)として表された結果は、重合試料が、天然抽出物(40%のシグナル喪失)より安定であることを示し、マンナンとのコンジュゲーションは、試料シグナルのわずか4%が喪失しただけで、試料の分解/沈殿の低指数を示したので、さらにより安定性を増加させることを示した(図18)。
グルタルアルデヒドによりマンノシル化されたポリマーは、これらのアレルゲン性の喪失に関して非マンノシル化ポリマーと同等である。
5.1.−特異的IgE抗体による反応性アッセイ
材料および方法
IgE反応性アッセイを、阻害ELISA技術により実施した。96ウェルプレート(Microlon、高結合能、Greiner bio−one、Germany)を、0.05M炭素/重炭酸塩緩衝液、pH=9.6で希釈された1μgの天然抽出物/ウェルを播種した。このプレートを、4℃において一晩放置した。翌日、プレートを、PBS−t緩衝液(0.25%Tween−20含有リン酸緩衝液)で洗浄し、プレートに、各事例において対応する(イネまたはダニにアレルギーの)アレルギー患者由来の血清プールおよび阻害剤(天然抽出物、重合抽出物およびマンノシル化重合抽出物)を100μg/mLから0.01μg/mLの1/2連続希釈液で加えた。このプレートを混合物と一緒に、一晩インキュベートし、翌日PBS−tで洗浄後、ペルオキシダーゼ(Southern Biotech、USA)の1:2000希釈液により標識された抗ヒトIgEモノクローナル抗体と一緒にインキュベートした。プレートを、OPD系(Sigma Aldrich、USA)により30分間発色させた。反応を、水で1/10に希釈した塩酸で停止させ、プレートを492nmにおいて読み取った。
天然抽出物、重合抽出物ならびに重合およびマンノシル化された抽出物のIgE反応性を、電気泳動および免疫検出によりさらに分析した。抽出物のタンパク質分離を、ポリアクリルアミドゲルにおいて、変性条件下で実施した(SDS−PAGE)。免疫検出を、電気泳動により分離されたタンパク質をニトロセルロース膜(Bio Rad、Germany)に転写して、実施した。この膜を、5%BSA(ウシ血清アルブミン)を含むPBS−tでブロックし、アレルギー患者由来の血清と一緒にインキュベートした。その後、これらを、ペルオキシダーゼ(Southern Biotech、USA)の1:2.000希釈液により標識された抗ヒトIgEモノクローナル抗体と一緒にインキュベートした。ECL化学発光系(GE−Healthcare、USA)を、発色のために使用した。
結果
5.1.1 グルタルアルデヒドを用いてマンノシル化されたチモシー(Phleum pratense)のポリマーとのIgE反応性の喪失は、非マンノシル化ポリマーの反応性喪失と同等である。
図19Aは、マンノシル化された、またはされていないチモシー(P.pratense)の重合アレルゲンが、天然アレルゲンより低いIgE反応性を示すことが理解できる阻害ELISAを示す。図19Bは、アレルギー患者由来の血清を用いて実施されたゲル電気泳動および免疫検出の両方におけるチモシー(P.pratense)のアレルゲン性タンパク質に対応するバンドを示し、一方、重合アレルゲンならびに重合およびマンノシル化アレルゲンに対応するレーンには、バンドが観察されない(PAGE−SDS)か、またはIgE結合が観察されない(免疫検出)。
5.1.2 グルタルアルデヒドを用いてマンノシル化されたヤケヒョウダニ(D.pteronyssinus)およびコナヒョウダニ(D.farinae)のポリマーとのIgE反応性の喪失は、非マンノシル化ポリマーと同等である。
図20Aは、マンナンとコンジュゲートされた、またはされていないヤケヒョウダニ(D.pteronyssinus)およびコナヒョウダニ(D.farinae)の重合アレルゲンが、同様のIgE反応性を有し、この反応性が天然アレルゲンにおいて観察される反応性より低いことが理解できる阻害ELISAを示す。図20Bは、アレルギー患者由来の血清を用いて実施されたゲル電気泳動および免疫検出の両方における、両方のダニ種のアレルゲン性タンパク質に対応するバンドを示し、一方、重合アレルゲンならびに重合およびマンノシル化アレルゲンに対応するレーンには、バンドが観察されない(PAGE−SDS)か、またはIgE結合が観察されない(免疫検出)。
5.2.ex vivoのヒト好塩基球活性化試験
チモシー(Phleum pratense)およびコナヒョウダニ(D.farinae)のさまざまな調製物の、これらのアレルゲンに対してアレルギーである患者の好塩基球を活性化する能力に対する評価を実施した。
材料および方法
好塩基球の活性化に対する評価を、市販のキットであるBASOTEST(登録商標)(ORPEGEN Pharma、Heidelberg、Germany)を使用して実施し、このキットは、フローサイトメトリーによる末梢血中の好塩基球活性化の百分率の測定を可能にした。手順:
1−末梢静脈血を、ヘパリンナトリウムを含むチューブに抽出する。
2−この血液を刺激緩衝液(IL−3含有)と一緒にインキュベートする
3−チモシー(P.pratense)およびコナヒョウダニ(D.farinae)由来のアレルゲン(天然、ポリマーおよびポリマー−マンナン)で刺激する。陰性対照(洗浄緩衝液だけ)および陽性対照(走化性ペプチドのN−ホルミル−メチオニン−ロイシン−フェニルアラニン(fMLP))も含まれる。
4−蛍光色素コンジュゲートモノクローナル抗体(抗CD203cおよび抗−CD63.FITC)で細胞を標識する。二重陽性細胞(CD203c/CD63)は、活性化好塩基球を反映している。
5−低張性緩衝液による赤血球の溶解
6−分析を、FC500血球計算器(Beckman Coulter)において実施した。活性化好塩基球を決定するための特異的標識は、CD203c+およびCD63+であった。
結果
非重合アレルゲン(天然)の1つ1つと一緒にインキュベーション後の活性化好塩基球(CD203c+CD63+)の百分率は、予想されたように、高く、アッセイの陽性対照により得られた百分率と同様であった。他方で、インキュベーションを、チモシー(Phleum pratense)およびコナヒョウダニ(D.farinae)の両方の重合アレルゲンを用いて実施した場合、活性化の程度は減少した。ポリマーの好塩基球を活性化する能力のこの喪失は、これらのアレルゲン性の喪失を反映しており、図21に示すように、非マンノシル化およびマンノシル化ポリマーの両方と同等であった。これはすべて、マンノシル化ポリマーが、これら両方のアレルゲンに対して低下させたアレルゲン性を、従来の重合アレルゲン(非マンノシル化)により示されるアレルゲン性と同じ程度に維持していることを示している。
5.3.−アレルギー患者での皮膚試験(プリック試験)
チモシー(Phleum pratense)およびコナヒョウダニ(D.farinae)のさまざまな調製物の、これらのアレルゲンに対してアレルギーである患者における皮膚試験陽性を生み出す能力に対する評価を実施した。
材料および方法
プリック試験
プリック試験は、それぞれ、チモシー(P.pratense)およびコナヒョウダニ(D.farinae)にアレルギーである患者の前腕の皮膚上に、チモシー(P.pratense)およびコナヒョウダニ(D.farinae)の各アレルゲン(天然、ポリマーまたはポリマー−マンナン)の液滴を、二連に置くことから成った。前記のように調製されたこれらのアレルゲンを、50%緩衝グリセロール生理食塩水溶液中同じタンパク質濃度に調製した。アレルゲンを、1mmのランセットで皮膚を穿刺することによって、液滴を介して真皮に導入した。アレルゲンは、患者の感作された肥満細胞と、これらの特異的IgEを介して反応し、脂肪細胞は活性化後ヒスタミンを放出する。放出されたヒスタミンは毛細管透過性を増し、液体滲出を生じ、これにより、穿刺の20分後に皮膚丘疹をもたらす。
丘疹サイズ(mm)は、調製物のアレルゲン性指数と考えられ、この指数が高いほど、得られた丘疹の表面が大きいと考えられる。
統計:
記述統計学のために、平均およびそのそれぞれの95%信頼限界、標準偏差、中央値および対応する第1および第3四分位、変動係数ならびに値の範囲(最大値および最小値)を使用した。
比較統計学のために、ダニ(コナヒョウダニ(D.farinae))を用いた皮膚試験からのデータに、これらが正規分布に従ったので、分散分析(ANOVA)および(ペアの値の間の比較のための)ボンフェローニ補正を使用した。チモシー(Phleum pratense)を用いた皮膚被験のデータの場合、これらが正規分布に従わなかったので、ノンパラメトリック検定を使用した。3つの調製物を比較するためにフリードマン検定を使用し、ペアの間を比較するためにウィルコクソン検定を使用した。
グラフィック表現のために箱ひげ図を使用した。箱ひげ図は、中央値およびそのそれぞれの25および75%四分位を表す。
結果
5.3.1グルタルアルデヒドを用いてマンノシル化されたチモシー(Phleum pratense)のポリマーを用いたプリック試験におけるアレルゲン性の喪失は、非マンノシル化ポリマーのアレルゲン性の喪失より高い。
イネ科由来の花粉に対して臨床的にアレルギーである12人の患者、男性5人および女性7人を研究した。平均年齢は41歳であり、11から78歳の範囲であった。チモシー(Phleum pratense)の天然抽出物(改変されていない)により誘導された丘疹の面積サイズの中央値は28.4mmであり、25および75%四分位の値は、それぞれ、23.0および43.1mmであった。重合抽出物に対応する値は、中央値が8.0mmであり、四分位はそれぞれ8.0および19.7であった。重合およびマンノシル化抽出物に関しては、中央値が0.0であり、四分位はそれぞれ0.0および5.4であった(表3)。
3つのタイプの調製物により得られた丘疹サイズの間の差は、非常に有意であり(フリードマン検定、P<0.0001)、調製物のペア:天然−重合体、天然−マンノシル化重合体および重合体−マンノシル化重合体の間でも非常に有意であった(ウィルコクソン検定、P<0.0001)。in vivoでアレルゲン性の低下を示す調製物は、マンノシル化重合体である。
表2および3は、各調製物により得られた丘疹のそれぞれの面積の個別の値ならびにこれらの値の記述統計および患者の疫学的データ(年齢および性別)を示す。
Figure 2016515603
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図22は、チモシー(Phleum pratense)の調製物の1つ1つにより得られた丘疹の面積値を、箱ひげ図により示す。観察できるように、マンノシル化ポリマーを用いて実施された皮膚試験は、実質的に陰性であり、非マンノシル化ポリマーに対して低く、順に天然抗原(非重合)より非常に低い。これは全て、チモシー(Phleum pratense)のマンノシル化ポリマーのアレルゲン性喪失が、従来のポリマー(非マンノシル化)の喪失の程度と同じか、またはより大きいことを示す。
5.3.2 グルタルアルデヒドを用いてマンノシル化されたコナヒョウダニ(D.farinae)のポリマーを用いたプリック試験における反応性の喪失は、非マンノシル化ポリマーと同等である。
コナヒョウダニ(Dermatophagoides farinae)に対して臨床的にアレルギーである、22人の患者、14人の男性および8人の女性を研究した。平均年齢は32歳であり、範囲は12から82歳であった。コナヒョウダニ(Dermatophagoides farinae)の天然抽出物(修飾されていない)により誘導された丘疹の面積サイズの中央値は64.2mmであり、25および75%四分位の値は、それぞれ、54.2および72.3mmであった。重合抽出物に対応する値は、中央値が32.5mmであり、四分位はそれぞれ、1.0および45.7であった。重合およびマンノシル化抽出物に関しては、中央値が24.1であり、四分位はそれぞれ16.3および33.8であった。
3つのタイプの調製物により得られた丘疹サイズの間の差は、非常に有意であり(ANOVA検定、P<0.0001)、調製物のペア:天然−重合体および天然−マンノシル化重合体の間でも非常に有意であった(ボンフェローニ補正、P<0.0001)。2つの調製物は、in vivoで、非重合アレルゲンと比較して非常に重要なアレルゲン性の低下を示している。
表4および5は、各調製物により得られた丘疹のそれぞれの面積の個別の値ならびにこれらの値の記述統計および患者の疫学的データ(年齢および性別)を示す。
Figure 2016515603
Figure 2016515603
図23は、コナヒョウダニ(D.farinae)の調製物の1つ1つにより得られた丘疹の面積値を、箱ひげ図により示す。観察できるように、マンノシル化ポリマーを用いて実施された皮膚試験は、非マンノシル化ポリマーを用いた皮膚試験と同様であり、同時に、天然抗原(非重合)の皮膚試験より非常に低い。これはすべて、コナヒョウダニ(D.farinae)由来のマンノシル化ポリマーのアレルゲン性喪失が、従来のポリマー(非マンノシル化)の喪失の程度と同じか、またはより大きいことを示す。
グルタルアルデヒドを使用してマンノシル化されたポリマーは、非マンノシル化ポリマーより樹状細胞による捕捉が優れている。
材料および方法
樹状細胞(DC)を、健康なドナーの末梢血単球から誘導し、GM−CSFおよびIL−4と一緒に5日間培養した。このようにして得られたDC(未熟)を、先に記載したように調製されたチモシー(Phleum pratense)のポリマー(コンジュゲートされたマンナン含有または非含有)に曝露し、これらの細胞による取り込みを評価した。取込みアッセイは、DCと調製物との接触の2時間後、フローサイトメトリーを用い、チモシー(Phleum pratense)由来の抽出物のこれらの色素による自己蛍光を使用して実行した。2つのパラメーター:a)DCにより捕捉されるアレルゲンの量(取込み率);b)内部移行能力を示す細胞の百分率を評価した。さらに、取込みアッセイを、システインを介して蛍光色素(Alexa M488)であらかじめ標識されたチモシー(Phleum pratense)のアレルゲンを用いて実施した。結果を、フローサイトメトリーおよび共焦点顕微鏡法により分析した。
結果
図24Aにおいて観察できるように、DCにより捕捉されたチモシー(Phleum pratense)自己蛍光のマンノシル化ポリマーの量は、取込み率を反映するMFI(平均蛍光指数)によって、従来のポリマー(非マンノシル化)により捕捉された量より7倍を超えて高い。同じ図の左上部において、両方の調製物(チモシー(Phleum pratense)のマンノシル化ポリマーおよび非マンノシル化のポリマー)を捕捉する能力を有する細胞の量が表される。観察できるように、より高い蛍光を示す陽性細胞の百分率は、マンノシル化ポリマーと一緒にインキュベートされた細胞に対応する。これらの結果は、システインを介した蛍光色素(Alexa M488)による標識で確認された。図24Bにおいて観察できるように、二重陽性細胞(HLA−DRおよびAlexa488が同定される)の数は、細胞を、マンナンを含むポリマーと一緒にインキュベートした場合に非常により高く、このことは、この調製物の取込みがより多いことを暗示した。同じ図の下側において、平均蛍光値が表される。観察できるように、蛍光強度もまた、マンノシルポリマーと一緒にインキュベートされたDCにおいてより高かった。図24Cは、共焦点蛍光顕微鏡画像を示し、非マンノシル化ポリマーまたは天然アレルゲンと一緒にインキュベートされたDCと比較して、マンナンを含むポリマーと一緒にインキュベート(30分)されたDCのより高い取込みを見ることができる。これらの実験の結論は、マンノシル化ポリマーが、より多数のDCにより捕捉されること、およびこれらの捕捉もまたより大量であることである。
グルタルアルデヒドを用いてマンノシル化されたポリマーは、非マンノシル化ポリマーと比較して、ヒト樹状細胞によるIL−10およびIL−6のより大量の産生を誘導する。
7.1樹状細胞によるサイトカイン産生のアッセイ
材料および方法
健康なドナーから単離された末梢血単球を、IL−4およびGM−CSFを用いて樹状細胞(DC)に分化させた。これらのDC(未熟)を、重合マンノシル化(PM)および非マンノシル化(P)のアレルゲン(チモシー(Phleum pratense))、50μg/mLと一緒にインキュベートした。サイトカイン濃度を、さまざまな調製物で樹状細胞を刺激した24時間後、これらの細胞の培養液上清において決定した。サイトカインの定量に使用した技術は、フローサイトメトリーマルチプレックスであった。
結果
図25は、3つの独立した実験の平均を示す。
観察できるように、チモシー(Phleum pratense)のマンノシル化ポリマーと一緒にインキュベートした樹状細胞(DC)は、重合された非マンノシル化アレルゲンまたは天然アレルゲン(非重合)より大量のIL−6およびIL−10を産生する。対照的に、3種の調製物は、同様のIL−8産生を誘導する。これらの結果は、ヒト骨髄DCが、マンノシル化ポリマーに差次的に応答することを示す。IL−10の増加がマンノシル化ポリマーにより観察されるという事実は、このタイプの調製物に求められる免疫調節特性にとって非常に肯定的である。
グルタルアルデヒドを用いてマンノシル化されたポリマーは、ヒト樹状細胞の成熟を誘導するこれらの能力に関して非マンノシル化ポリマーと同等である。
8.1.樹状細胞成熟アッセイ
材料および方法
樹状細胞(DC)を、健康なドナー由来の末梢血(バフィーコート)の単球から誘導し、GM−CSFおよびIL−4と一緒に5日間培養した。このようにして得られたDC(未熟)を、さまざまなアレルゲン性調製物(天然、ポリマーおよびポリマー−マンナン)に曝露して、これに応答したDCの成熟を評価した。成熟アッセイを、培養48時間後にフローサイトメトリーによりアッセイし、DCの成熟に関与する分子(HLA−II(DR)、CD80、CD83およびCD86)の発現を評価した。
細胞標識手順:5×10細胞を標識ごとに使用した。細胞をPBSに再懸濁し、1μgの直接抗体(1:100)(蛍光色素とコンジュゲート)または間接抗体(非コンジュゲート)を加えた。これらを20分間、4℃において暗所でインキュベートし、次いで、PBSで洗浄した。間接抗体の場合、対象となる蛍光色素とコンジュゲートされた1μg(1:100希釈)のマウス抗IgG二次抗体を加えた。これらをPBSで2回洗浄後、細胞を、300−400μLのPBS体積に再懸濁し、最後にフローサイトメトリー(FC 500 Beckman Coultek)により分析した。
結果
8.1.1 これらの重合および/マンノシル化に従ったチモシー(Phleum pratense)アレルゲンによる、ヒト由来の樹状細胞(DC)の成熟。
図26において観察できるように、重合アレルゲンは、骨髄未熟DCを前記アレルゲンと一緒にインキュベートした後で、これらの成熟を誘導する。成熟の程度を、図に反映されたマーカーのDC表面発現に従って評価する。成熟に関与するすべてのマーカーは、非重合アレルゲンに対して、重合アレルゲンと一緒にインキュベートされたDCにおいて増大され、マンノシル化されるか、またはされないかに依存して有意差は存在しない。これらの結果は、DCの成熟の観点からすれば、チモシー(Phleum pratense)のマンノシル化ポリマーが、従来のポリマー(非重合)と同様の挙動を取り、したがって、従来のアレルゲン(非重合)より高い成熟指数を示すことを示している。
8.1.2 重合および/これらのマンノシル化に従ったコナヒョウダニ(D.farinae)アレルゲンによる、ヒト単球由来の樹状細胞の成熟。
図27において観察されるように、重合アレルゲンは、骨髄未熟DCを前記アレルゲンと一緒にインキュベートした後で、これらの成熟を誘導する。成熟の程度を、図に反映されたマーカーのDC表面発現に従って評価する。成熟に関与するすべてのマーカーは、非重合アレルゲンに対して、重合アレルゲンと一緒にインキュベートされたDCにおいて増大され、マンノシル化されるか、またはされないかに依存して有意差は存在しない。これらの結果は、DCの成熟の観点からすれば、コナヒョウダニ(D.farinae)のマンノシル化ポリマーが、従来のポリマー(非重合)と同様の挙動を取り、したがって、従来のアレルゲン(非重合)より高い成熟指数を示すことを示している。
グルタルアルデヒドを用いてマンノシル化されたポリマーは、ex vivo免疫化アッセイにおいてIFNガンマおよびIL−10産生T細胞の誘導を、非マンノシル化ポリマーと比較して改善する。
材料および方法
末梢血ヒト細胞を用いたex vivo免疫化アッセイ
免疫化プロトコル
アレルゲン特異的エフェクターT細胞を、健康な個体のPBMCから、対応するアレルゲン性抽出物を負荷された自己成熟DCによる刺激の3ラウンド後に得た。簡潔に言うと、iDC(10/mL)を、完全DMEM培地において対応する抽出物(100μg/mL)と一緒に8時間インキュベートし、その後、ペプチドグリカン(1μl/mL)と一緒のインキュベーションにより成熟させた。あらかじめ洗浄した成熟樹状細胞(mDC)を、対応する抽出物と一緒に完全DMEM培地において再度6時間インキュベートし(1mL中10細胞)、その後すぐに放射線を照射した(3000rad)。放射線照射され、アレルゲンを負荷されたmDCを、その後、48ウェルプレートに分注し(10/mL)、IL−7(1μl/mL)の存在下でPBMC(10細胞/mL)と一緒に共培養した。最初の刺激の5日後、培養液にIL−2(10U/mL)を添加した。アレルゲン抽出物を負荷されたDCによるPBMCの同じ刺激および拡大過程を3回反復した。細胞のアレルゲン特異的IFNγ、IL−10およびIL−4の産生を、ELISPOTアッセイにより測定した。
結果
9.1.1 グルタルアルデヒドを用いてマンノシル化されたチモシー(Phleum pratense)ポリマーは、非マンノシル化ポリマーのIFN−γおよびIL−10応答を、IL−4応答を増加することなく改善する。
図28において観察されるように、IFN−γおよびIL−10産生細胞の数は、従来のポリマー(非マンノシル化)で免疫化された培養液と比較して、重合およびマンノシル化アレルゲンで免疫化された培養液において、特異的応答で増加される。この増加は多数のIL−4産生細胞によりもたらされるものではなく、これは、TH2表現型への分極が存在していないことを示す。IL−4の増加のないIFN−γおよびIL−10の増加がマンノシル化ポリマーにより観察されるという事実は、このタイプの調製物に求められる免疫調節特性にとって非常に肯定的である。
9.1.2 グルタルアルデヒドを用いてマンノシル化されたコナヒョウダニ(D.farinae)アレルゲンは、非マンノシル化ポリマーのIFN−γおよびIL−10応答を、IL−4応答を増加することなく改善する。
図29において観察されるように、IFN−γおよびIL−10産生細胞の数は、従来のポリマー(非マンノシル化)で免疫化された培養液と比較して、重合およびマンノシル化アレルゲンで免疫化された培養液において、特異的応答で増加される。この増加は多数のIL−4産生細胞によりもたらされるものではなく、これは、TH2表現型への分極が存在していないことを示す。IL−4の増加のないIFN−γおよびIL−10の増加がマンノシル化ポリマーにより観察されるという事実は、このタイプの調製物に求められる免疫調節特性にとって非常に肯定的である。
グルタルアルデヒドを用いてマンノシル化されたポリマーは、非マンノシル化ポリマーと比較してin vivo免疫応答を改善する。
マウスにおけるin vivo免疫化アッセイ
材料および方法
免疫化を、マンノシル化および非マンノシル化ポリマーを有するチモシー(Phleum pratense)およびコナヒョウダニ(D.farinae)アレルゲンを用いて、これらのin vivoの免疫原性能力を評価するように、実施した。免疫化を、図30に示されるプロトコルを用いてBalb/cマウスにおいて実行した。
免疫化に対する応答を、その天然形態アレルゲンに応答する、CFSEを用いた標識による特異的リンパ球増殖アッセイを実施して、脾臓において評価した。フィトヘマグルチニン(PHA)を、陽性対照として使用した。増殖は、6日目および7日目の培養液において決定した。サイトカインの定量もまた、刺激48時間後の培養上清において、マルチプレックスフローサイトメトリー技術を使用して実施した(図31)。フィトヘマグルチニン(PHA)を陽性対照として使用した。特異的IgEのレベル(チモシー(P.pratense)またはコナヒョウダニ(D.farinae))ならびにIgG1(TH2応答マーカーとして)およびIgG2a(TH1応答マーカー)のレベルもまたELISAにより評価した。
結果
10.1 チモシー(Phleum pratense)のマンノシル化ポリマーによる免疫化は、非マンノシル化ポリマーによる免疫化より、抗原性刺激に対して高い増殖応答を生じる。
図32において観察できるように、応答細胞が、重合およびマンノシル化アレルゲンにより免疫化されたマウスの脾臓から採取された場合、従来の重合アレルゲン(非重合)で免疫化されたマウスの脾臓から採取された細胞と比較して、抗原に応答するT細胞の数を反映する増殖百分率が有意に高い。これは、重合およびマンノシル化チモシー(Phleum pratense)アレルゲンの免疫原性は、非マンノシル化ポリマーの免疫原性より有意に高いことを示している。
10.2 コナヒョウダニ(D.farinae)のマンノシル化ポリマーによる免疫化は、非マンノシル化ポリマーによる免疫化より、抗原性刺激に対して高い増殖応答を生じる。
図33において観察できるように、応答細胞が、重合およびマンノシル化アレルゲンにより免疫化されたマウスの脾臓から採取された場合、従来の重合アレルゲン(非重合)で免疫化されたマウスの脾臓から採取された細胞と比較して、抗原に応答するT細胞の数を反映する増殖百分率が有意に高い。これは、重合およびマンノシル化コナヒョウダニ(D.farinae)アレルゲンの免疫原性は、非マンノシル化ポリマーの免疫原性より有意に高いことを示している。
10.3 マンノシル化チモシー(Phleum pratense)ポリマーで免疫化されたマウスの脾臓細胞は、非マンノシル化ポリマーに対して、サイトカインパターンを改変する。
図34(図34Aおよび34B)は、マンノシル化および非マンノシル化重合アレルゲンで免疫化されたマウス由来の、チモシー(P.pratense)アレルゲンで刺激された脾臓細胞の培養液上清において得られたさまざまなサイトカインの産生を表す。観察できるように、産生されたサイトカインのパターンは、脾臓細胞の由来に依存して、これらの多くに関して異なる。リンパ系細胞により産生されるこれらの変動を、表6に定量的方法で示す。
10.4 チモシー(Phleum)のマンノシル化ポリマーで免疫化されたマウス由来のリンパ球は、非マンノシル化ポリマーにより産生されるものと比較して、IL−10の産生を増加させる。
Figure 2016515603
**非マンノシル化ポリマーで免疫化されたマウスにおいて得られる値より100倍高い相対的増加
表6において観察できるように、図34(図34Aおよび34B)において示されるリンパ系起源のサイトカイン産生に対して得ることができる最も大きな変動はIL−10に対応し、これは、重合およびマンノシル化アレルゲンで免疫化されたマウスにおいて、非マンノシル化ポリマーで免疫化されたマウスにおいて得られる産生に対して300倍を超えて増加する。IL−10のこの増加は、このタイプの調製物に求められる免疫調節特性にとって非常に肯定的である。
10.5 マンノシル化コナヒョウダニ(D.farinae)ポリマーで免疫化されたマウスの脾臓細胞は、非マンノシル化ポリマーに対してサイトカインパターンを改変する。
図35(図35Aおよび35B)は、マンノシル化および非マンノシル化重合アレルゲンで免疫化されたマウス由来の、コナヒョウダニ(D.farinae)アレルゲンで刺激された脾臓細胞の培養液上清において得られたさまざまなサイトカインの産生を表す。観察できるように、産生されたサイトカインのパターンは、脾臓細胞の由来に依存して、これらの多くに関して異なる。リンパ系細胞により産生されるこれらの変動を、表7に定量的方法で示す。
10.6 コナヒョウダニ(D.farinae)のマンノシル化ポリマーで免疫化されたマウス由来のリンパ球は、非マンノシル化ポリマーにより産生されるものと比較して、IL−10、IFNγおよびIL−2の産生を増加する。
Figure 2016515603

**マンナンを含まないポリマーで免疫化されたマウスにおいて得られる値より100倍高い相対的増加
表7において観察できるように、図35(図35Aおよび35B)において示されるリンパ系起源のサイトカイン産生に対して得ることができる最も大きな変動はIL−2、IL−10およびIFN−γに対応し、これは、重合およびマンノシル化アレルゲンで免疫化されたマウスにおいて、非マンノシル化ポリマーで免疫化されたマウスにおいて得られる産生に対して300、145および125倍を超えて増加する。この増加、特にIL−10およびIFN−γのこの増加は、このタイプの調製物に求められる免疫調節特性にとって非常に肯定的である。
10.7 高用量の重合およびマンノシル化チモシー(Phleum pratense)ポリマーで免疫化されたマウスにおける特異的抗体の応答は、非マンノシル化ポリマーに対してIgG/IgE比を支持する。
図36(図36Aおよび36B)において観察できるように、特異的IgG抗体のチモシー(Phleum pratense)アレルゲンに対する応答は、重合およびマンノシル化アレルゲンで免疫化されたマウス由来の血清において、従来の重合アレルゲン(非マンノシル化)によるものより高い。対照的に、特異的IgE抗体の応答は、従来のポリマーに対する応答より低い。図を見て分かるように、免疫化が、重合およびマンノシル化チモシー(Phleum pratense)アレルゲンを用いて実行された場合、IgG2a/IgE比はより高い。この比の増加は、得られた応答の抗アレルギー性分極を示すので、このタイプの調製物に求められる免疫調節特性にとって非常に肯定的である。
10.8 高用量の重合およびマンノシル化コナヒョウダニ(D.farinae)ポリマーで免疫化されたマウスにおける特異的抗体の応答は、非マンノシル化ポリマーに対してIgG/IgE比を支持する。
図37(図37Aおよび37B)において観察できるように、特異的IgG抗体のコナヒョウダニ(D.farinae)アレルゲンに対する応答は、重合およびマンノシル化アレルゲンで免疫化されたマウス由来の血清において、従来の重合アレルゲン(非マンノシル化)によるものより高い。対照的に、特異的IgE抗体の応答は、従来のポリマーに対する応答より低い。図を見て分かるように、免疫化が、重合およびマンノシル化コナヒョウダニ(D.farinae)アレルゲンを用いて実行された場合、IgG2a/IgE比はより高い。この比の増加は、得られた応答の抗アレルギー性分極を示すので、このタイプの調製物に求められる免疫調節特性にとって非常に肯定的である。

Claims (48)

  1. 重合抗原、マンナンおよびジアルデヒドを含む免疫原性複合体。
  2. マンナンが、植物、真菌または酵母からもたらされる、請求項1に記載の免疫原性複合体。
  3. 酵母が、サッカロミセス属(Saccharomyces ssp.)、ピキア属(Pichia ssp.)およびカンジダ属(Candida ssp.)からなる群から選択される、請求項2に記載の免疫原性複合体。
  4. サッカロミセス属(Saccharomyces ssp.)が、S.セレビシエ(S.cerevisiae)である、請求項3に記載の免疫原性複合体。
  5. マンナンがアミノ基を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の免疫原性複合体。
  6. アミノ基がリジンアミノ酸中に存在する、請求項5に記載の免疫原性複合体。
  7. 重合抗原が、相互に同じであるか、または異なっている少なくとも2つの抗原を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の免疫原性複合体。
  8. ジアルデヒドが、グルタルアルデヒド、グリオキサル、マロンアルデヒド、スクシンアルデヒドおよびアジポアルデヒドからなる群から選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の免疫原性複合体。
  9. ジアルデヒドがグルタルアルデヒドである、請求項8に記載の免疫原性複合体。
  10. 重合抗原が、ジアルデヒドを介してマンナンに結合される、請求項1から9のいずれか一項に記載の免疫原性複合体。
  11. 抗原が、重合抗原により物理的封入を用いてマンナンに結合される、請求項1から9のいずれか一項に記載の免疫原性複合体。
  12. 抗原がアレルゲンである、請求項1から11のいずれか一項に記載の免疫原性複合体。
  13. アレルゲンが、花粉、ダニ、上皮、真菌の胞子およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項12に記載の免疫原性複合体。
  14. 花粉が、チモシー(Phleum pratense)、オーチャードグラス(Dactylis glomerata)、ギョウギシバ(Cynodon dactylon)、ベレニアルライグラス(Lolium perenne)、カニツリグサ類(Trisetum spp.)、オリーブ(Olea europaea)、イトスギ属(Cuppresus spp.)、ブタクサ属(Ambrosia spp.)、カンバ属(Betula spp.)、プラタナス属(Platanus spp)、セイヨウハシバミ(Corylus avellana)またはセイヨウヤマハンノキ(Alnus glutinosa)の種に由来する、請求項13に記載の免疫原性複合体。
  15. ダニが、ヤケヒョウダニ(Dermatophagoides pteronyssinus)、コナヒョウダニ(Dermatophagoides farinae)またはネッタイタマクマダニ(Blomia tropicalis)の種に属する、請求項13または14に記載の免疫原性複合体。
  16. 上皮が、イエネコ(Felis domesticus)またはイエイヌ(Canis familiaris)の種に属する、請求項13から15のいずれか一項に記載の免疫原性複合体。
  17. 真菌の胞子が、アルテルナリア・アルテルナータ(Alternaria alternata)またはアルテルナリア・テラヌイス(Alternaria tenuis)の種に属する、請求項13から16のいずれか一項に記載の免疫原性複合体。
  18. 抗原:マンナンの比が、1:10と1:0.1との間の範囲、好ましくは、1:0.3または1:0.5である、請求項1から17のいずれか一項に記載の免疫原性複合体。
  19. (i)抗原およびマンナンを含む溶解液を調製するステップ、ならびに(ii)ジアルデヒドを前記溶解液に加えるステップを含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の免疫原性複合体を得る方法。
  20. 重合反応を停止するための中和剤、好ましくは、グリシンの添加を含むステップ(iii)をさらに含む、請求項19に記載の方法。
  21. 免疫原性複合体を単離するステップのステップ(iv)をさらに含む、請求項19または20に記載の方法。
  22. マンナンが、植物、真菌または酵母からもたらされる、請求項19から21のいずれか一項に記載の方法。
  23. 酵母が、サッカロミセス属(Saccharomyces ssp.)、ピキア属(Pichia ssp.)およびカンジダ属(Candida ssp.)からなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
  24. サッカロミセス属(Saccharomyces ssp.)が、S.セレビシエ(S.cerevisiae)である、請求項23に記載の方法。
  25. マンナンがアミノ基を含む、請求項19から24のいずれか一項に記載の方法。
  26. アミノ基がリジンアミノ酸中に存在する、請求項25に記載の方法。
  27. 重合抗原が、相互に同じであるか、または異なっている少なくとも2つの抗原を含む、請求項19から26のいずれか一項に記載の方法。
  28. ジアルデヒドが、グルタルアルデヒド、グリオキサル、マロンアルデヒド、スクシンアルデヒドおよびアジポアルデヒドからなる群から選択される、請求項19から27のいずれか一項に記載の方法。
  29. ジアルデヒドがグルタルアルデヒドである、請求項28に記載の方法。
  30. 抗原がアレルゲンである、請求項19から29のいずれか一項に記載の方法。
  31. アレルゲンが、花粉、ダニ、上皮、真菌の胞子およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項30に記載の方法。
  32. 花粉が、チモシー(Phleum pratense)、オーチャードグラス(Dactylis glomerata)、ギョウギシバ(Cynodon dactylon)、ベレニアルライグラス(Lolium perenne)、カニツリグサ類(Trisetum spp.)、オリーブ(Olea europaea)、イトスギ属(Cuppresus spp.)、ブタクサ属(Ambrosia spp.)、カンバ属(Betula spp.)、プラタナス属(Platanus spp)、セイヨウハシバミ(Corylus avellana)またはセイヨウヤマハンノキ(Alnus glutinosa)の種に由来する、請求項31に記載の方法。
  33. ダニが、ヤケヒョウダニ(Dermatophagoides pteronyssinus)、コナヒョウダニ(Dermatophagoides farinae)またはネッタイタマクマダニ(Blomia tropicalis)の種に属する、請求項31または32に記載の方法。
  34. 上皮が、イエネコ(Felis domesticus)またはイエイヌ(Canis familiaris)の種に属する、請求項31から33のいずれか一項に記載の方法。
  35. 真菌の胞子が、アルテルナリア・アルテルナータ(Alternaria alternata)またはアルテルナリア・テラヌイス(Alternaria tenuis)の種に属する、請求項31から34のいずれか一項に記載の方法。
  36. 抗原:マンナンの比が、1:10と1:0.15との間の範囲、好ましくは、1:0.3または1:0.5である、請求項19から35のいずれか一項に記載の方法。
  37. 請求項1から18のいずれか一項に記載の免疫原性複合体および医薬として許容される担体を含む医薬組成物。
  38. アジュバントをさらに含む、請求項37に記載の医薬組成物。
  39. アジュバントが、水酸化アルミニウム、リン酸カルシウム、チロシン、モノホスホリルリピドAおよびキトサンからなる群から選択される、請求項38に記載の医薬組成物。
  40. 追加の活性物質をさらに含む、請求項37から39のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  41. 前記追加の活性物質が、抗ヒスタミン剤、ステロイドホルモン、ヒスタミン受容体のアンタゴニスト、ロイコトリエンまたはこれらの混合物を含む、請求項40に記載の組成物。
  42. 組成物が、マクロ粒子、ナノ粒子またはリポソームで製剤化される、請求項37から41のいずれか一項に記載の組成物。
  43. 組成物が、固体の薬学的投与形態、液体の薬学的投与形態または分散系を含む薬学的投与形態である、請求項37から42のいずれか一項に記載の組成物。
  44. 医薬組成物が、非経口、鼻腔内、口周囲、舌下、経口、経皮または局所投与に適切な薬学的形態である、請求項37から43のいずれか一項に記載の組成物。
  45. 医薬組成物の製造のための、請求項1から18のいずれか一項に記載の免疫原性複合体の使用。
  46. 対象において、免疫応答を刺激および/または誘導するための、請求項45に記載の使用。
  47. ワクチンとしての、請求項45に記載の使用。
  48. 対象における、感染性疾患、新生物またはアレルギー治療のための、請求項45から47のいずれか一項に記載の使用。
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