JP2004043332A - 経口用リポソーム製剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】IgE抗体の産生を抑制してIgG抗体の産生を増大させることを特徴とする免疫応答の調整機能を有し、アレルギー治療あるいはアレルギー反応を起こし難いワクチンに用いることができる経口用リポソーム製剤を提供する。
【解決手段】ワクチンまたはアレルギー治療に用いる経口投与用リポソーム製剤であって、該リポソーム製剤は抗原またはアレルゲンがリポソームの表面に結合されていることを特徴とするリポソーム製剤。
前記のリポソーム製剤を経口摂取すると、IgG抗体の産生を増強し、IgE抗体の産生を抑制する効果を有することを特徴とする、ワクチンまたはアレルギー治療に用いられる経口用リポソーム製剤、また、該リポソーム製剤を経口経路で投与し、ヒト以外の動物において免疫応答を調節する方法。
【選択図】 なし
【解決手段】ワクチンまたはアレルギー治療に用いる経口投与用リポソーム製剤であって、該リポソーム製剤は抗原またはアレルゲンがリポソームの表面に結合されていることを特徴とするリポソーム製剤。
前記のリポソーム製剤を経口摂取すると、IgG抗体の産生を増強し、IgE抗体の産生を抑制する効果を有することを特徴とする、ワクチンまたはアレルギー治療に用いられる経口用リポソーム製剤、また、該リポソーム製剤を経口経路で投与し、ヒト以外の動物において免疫応答を調節する方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、リポソームの表面に抗原あるいはアレルゲンを結合したリポソーム製剤をアレルギー治療、あるいはワクチンとして用いることができる経口用リポソーム製剤及び免疫応答の調節方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ヒト、家畜及びペットなどの動物で問題となっているいわゆるアレルギー症状を引起こす物質としては、ダニ抗原、ブタクサ抗原、カモガヤ抗原、スギ花粉抗原等の主に環境因子として存在するもの、また、卵、牛乳、ソバ、ピーナッツ、魚あるいは甲殻類等の食品中に存在するアレルゲンが知られている。
これらの患者・患畜は、アレルゲンへの暴露を意図的に回避することは非常に難しく、有効な治療・予防的な医療行為が切望されている。
【0003】
アレルギーの発症は、抗体の1種であるIgE抗体の産生が原因していると考えられており、IgE抗体の産生抑制あるいはIgE抗体の産生抑制とIgG抗体の産生増強によって、アレルギー症状を治療・改善することができると考えられている。このような技術の研究例としては、例えば、アレルギー患者・患畜に対してアレルゲンの水溶液を少量ずつ投与する減感作療法が行われている。この手法は、アレルギー症状が許容され得る小さい範囲で、少量のアレルゲン水溶液を繰り返し投与し、免疫応答(IgE抗体産生)の緩解を誘導することを目的とする。免疫応答の個体差、患者・患畜のアレルギー症状の程度、長期間の治療を要するなど、一定の有効な効果を得るには非常に課題が多い。また、免疫応答の緩解誘導を目的とする受動的な技術でり、有効な治療法として広く普及するには不適切な治療方法である。
【0004】
また他の対決策として、アレルゲンタンパク質をポリエチレングリコールで修飾する方法(Int. Arch. Allergy Appl. Immunol., 56. p159−170, 1978)、アレルゲンをグルタールアルデヒドで重合する方法(Int. Arch. Allergy Appl. Immunol., 74, p332−340, 1984)、アレルゲンと多糖類のプルランとを反応させる方法(Int. Arch. Allergy Appl. Immunol., 102, p276−278, 1993)などが研究開発されているが、いずれもアレルゲンに対する十分なIgE抗体産生抑制とIgG抗体産生が達成されず、有効な実用化手段となっていない。
【0005】
一方、アレルギーを治療・改善するのにリポソームを用いる方法として、リポソーム中にアレルゲンを内包する方法(Clinical and Experimental Allergy, Vol. 22 p35−42, 1992、ドイツ特許 412793号明細書)、アレルゲンをリポソームに結合させた免疫治療剤(米国特許5049390号明細書)などが開示されているが、これらも十分なIgE抗体の産生抑制とIgG抗体の産生増強効果を示さず実用化には至っていない。
これらのアレルギー症状の治療改善手段は、いずれも、IgE抗体の産生抑制とIgG抗体の産生増強効果が不十分であって有効な実用化手段とはなっていない上に、殆どの技術が生体内への投与を注射で行うために、患者・患畜に対して侵しゅう的で負担が大きい。更に、十分な治療効果を達成するためには、断続的に頻繁に注射することが必要であり、治療行為自身を難しくする大きな原因となっている。在宅の生活状態で、安全性・有効性が高く、経口投与可能なアレルギー治療・改善用の製剤開発が切望されている。
【0006】
他方、ヒト、家畜及びペットなどの動物、更には魚類に関して、ウイルスまたは細菌等がその病原体となっている様々な感染症が疾病として知られており、このような感染症の予防のためワクチンが広く利用されている。この様なワクチンとしては、抗原溶液に水酸化アルミニウムを加えて抗原を不溶性とした水酸化アルミニウム混合ワクチン、いわゆる沈降ワクチンが多く使用され、沈降ジフテリアトキソイド、沈降ジフテリア破傷風混合トキソイド、沈降破傷風トキソイド、沈降はぶトキソイド、沈降B型肝炎ワクチン、沈降精製百日せきワクチン、沈降精製百日せきジフテリア破傷風混合ワクチン等などが実用化されている。
【0007】
通常、ワクチンを接種すると、生体は免疫能を獲得し、IgG抗体の産生あるいは細胞性免疫によって抵抗力を発揮する。しかしながらワクチン接種の際、好ましくない生体の免疫応答も起きる場合があり、その最も大きなものがワクチン接種時のアレルギー反応(接種反応)である。このアレルギー反応は、過剰なIgE抗体産生によるものが殆どで、ワクチン接種箇所の赤斑・腫脹、全身系のショック症状などが起き、症状が著しい場合は生命の危機に繋がる場合もある。このように、感染症予防に繋がるIgG抗体等の主たる免疫応答の他に、目的としない免疫応答としてアレルギー反応が起きることが、ワクチン接種時の大きな問題点となっている。
従来から、アレルギー反応の主たる原因物質は、ワクチンに用いられている抗原自身、抗原中に含まれる成分(例えば、ウイルス培養液中の蛋白質など)あるいは前記沈降ワクチンに用いられる水酸化アルミゲルなどのアジュバント成分と考えられているが、未だ十分に原因物質は特定されていない。このため、アレルギー反応を引き起こすIgE抗体産生を抑制する技術も種々精力的に検討されているものの、十分な効果を有する技術は未だ確立されていない。
【0008】
IgE抗体の産生を制抑するための試みとしては、例えば、抗原タンパク質をポリエチレングリコールで修飾する方法(Int. Arch. Allergy Appl. Immunol.,56. p159−170, 1978)、抗原をグルタールアルデヒドで重合する方法(Int. Arch. Allergy Appl. Immunol., 74, p332−340, 1984)、抗原と多糖類のプルランとを反応させる方法(Int. Arch. Allergy Appl. Immunol., 102, p276−278, 1993)などが研究されている。しかしながら、前記の研究では、IgE抗体の抑制は十分であるがワクチンとしての本来の目的である感染予防に必要なIgG抗体産生が不十分であったり、IgE抗体産生の抑制が不十分である等、未だ有効な実用化手段とはなっていない。
【0009】
一方、リポソームをIgE抗体の産生制抑に用いる方法として、リポソーム中に抗原を内包する方法(Clinical and Experimental Allergy, Vol. 22 p35−42,1992、ドイツ特許412793号明細書)、抗原をリポソームに結合させた免疫治療剤(米国特許5049390号明細書)などが開示されているが、これらも十分なIgE抗体の産生抑制とIgG抗体の産生増強効果とを示さず実用化には至っていない。
また、血液から採取した赤血球とアルブミンとをグルタルアルデヒドにより反応させて、赤血球表面にアルブミンを結合させることにより、IgE抗体の産生を抑制し、充分なIgG抗体を産生させる技術が報告されている(Int. Arch. Allergy Immunol., 104, p405−408, 1994)。しかしながら、赤血球表面の糖脂質による血液型の不適合、生物材料をワクチンの原料とすることによる2次感染の危険性、生物材料を用いることによる工業的大量生産性の欠如など実用化には不適切な課題が多い。
【0010】
前記したアレルギー反応を起こさないワクチン処方は、いずれも、IgG抗体の産生増強とIgE抗体の産生抑制効果が不十分であって有効な実用化手段とはなっていない上に、殆どの技術が生体内への投与を注射で行うために、患者・患畜に対して侵しゅう的で負担が大きい。更に、十分な感染予防効果を達成するためには、断続的に頻繁に注射することが必要であり、医療行為自身を難しくする大きな原因となっている。在宅の生活状態で、安全性・有効性が高く、経口投与可能なアレルギー反応を起こさないワクチン製剤の開発が切望されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の第1の目的は、IgE抗体の産生を抑制してIgG抗体の産生を増大させることを特徴とする免疫応答の調整機能を有し、アレルギー治療あるいはアレルギー反応を起こし難いワクチンに用いることができる経口用リポソーム製剤を提供することである。
本発明の第2の目的は、従来多く実施されている注射行為によることなく、患畜に対して非侵しゅう的に経口経路でリポソーム製剤を投与し、アレルギー治療あるいはアレルギー反応を起こしにくいワクチンとして機能する免疫応答の調節方法を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成する為に鋭意検討した結果、免疫応答調節機能を有する抗原あるいはアレルゲンを表面に結合したリポソームを経口投与すると前記の問題点を著しく改善することの知見を得て、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、次の(1)〜(5)である。
(1)ワクチンまたはアレルギー治療に用いる経口投与用リポソーム製剤であって、該リポソームは抗原またはアレルゲンがリポソームの表面に結合されていることを特徴とするリポソーム製剤。
(2)前記(1)記載のリポソーム製剤を、更に腸溶性材料を用いて、腸溶性製剤化してなる腸溶性リポソーム製剤。
(3)アレルゲンが卵蛋白アルブミン(OVA)であり、OVA結合リポソーム製剤を卵蛋白アルブミンアレルギーの治療に用いる前記(1)または(2)に記載のリポソーム製剤。
(4)IgG抗体の産生を増強し、IgE抗体の産生を抑制する前記(1)〜(3)のいずれかに記載のリポソーム製剤。
(5)前記(1)〜(4)のいずれかに記載のリポソーム製剤を、ヒト以外の動物に経口投与し、免疫応答を調節する方法。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の経口投与用リポソーム製剤は、ワクチンまたはアレルギー治療に用いるリポソーム製剤であって、該リポソームは抗原またはアレルゲンをリポソームの表面に結合されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の経口用リポソーム製剤に用いられるワクチン用の抗原としては、ワクチンの抗原として使用できるものであればよく、具体的には、ヒト;犬、猫、小鳥などのペット;鶏、アヒル、豚、牛、羊などの家畜を対象として、抗原となる物質が挙げられる。これらの抗原としては、例えば、破傷風、ジフテリア、はぶなどの各種トキソイド;インフルエンザ、ポリオ、日本脳炎、麻疹、おたふくかぜ、風疹、狂犬病、黄熱、水痘、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、腎症候性出血熱、テング出血熱、ロタウイルス感染症、パルボウイルス、コロナウイルス、ジステンバーウイルス、レプトスピラー、感染性気管支炎ウイルス、伝染性白血病ウイルス、エイズなどのウイルス;コレラ;ウイルス病秋やみ;BCG;マラリアなどが挙げられる。これらの抗原のうち、好ましくは、ワクチン接種時のアレルギー反応が問題となっている、ヒトの抗原あるいはペットの抗原が好ましく挙げられ、具体的には、ヒトにおける破傷風、ジフテリア、日本脳炎、ポリオ、風疹、おたふくかぜ;ペットにおけるパルボウイルス、コロナウイルス、ジステンバーウイルス、レプトスピラー、感染性気管支炎ウイルス、伝染性白血病ウイルスなどの抗原がより好ましく挙げられる。上記抗原は、1種単独で使用することもできるし、2種以上を組合せて使用することもできる。
【0015】
本発明の経口用リポソーム製剤に用いられるアレルゲンとしては、アレルギーの原因となっているアレルゲン(アレルギー抗原)であればよい。アレルギー症状を発症する対象としては、具体的には例えば、ヒト;犬、猫、小鳥などのペット;鶏、アヒル、豚、牛、羊などの家畜が挙げられる。アレルゲンとしては、前記のヒトおよびそれ以外の動物のアレルゲンが挙げられ、これらのアレルゲンの具体例として、ハウスダスト;ダニ抗原;ブタクサ抗原、カモガヤ抗原、スギ花粉抗原、ヨモギ、カナムグラ、ヒメガマ等の花粉類;米、小麦粉、ソバ粉等の穀類;牛乳、卵黄、卵白等の食品類;犬毛、猫毛、羽毛等の表皮類;カンジダ、アスペルギルス等の真菌類などのアレルゲンが挙げられる。これらの中でも、アレルギーの症例数や、食品からの摂取の頻繁性などの点から、ダニ抗原、ブタクサ抗原、カモガヤ抗原、スギ花粉抗原や、卵白(OVA)の抗原が、好ましく使用できる。上記アレルゲンは、1種単独で使用することもできるし、2種以上を組合せて使用することもできる。
【0016】
本発明の経口用リポソーム製剤に用いられる原料のリポソームとしては、一般的にリポソームとして知られているものであればよく、特に経口摂取して問題がないリポソームが挙げられる。それらのリポソームを適宜用してもよいし、新に公知の材料を用いてリポソームを設計して、形成してもば良い。具体的には例えば、リポソーム膜の主構成成分としてリン脂質やエーテルグリセロリン脂質、スフィンゴリン脂質、グリセロ糖脂質、スフィンゴ糖脂質を含み、更にリポソーム膜を安定化する脂質成分としてステロール類やトコフェロール類などを含むリポソームなどが好ましく用いられる。
【0017】
前記のリン脂質としては、天然リン脂質、合成リン脂質など、一般にリン脂質として知られるものが使用できる。リン脂質としては、例えば、(1)ホスファチジルコリン、(2)ホスファチジルエタノールアミン、(3)ホスファチジルグリセロール、(4)ホスファチジルセリン、(5)ホスファチジン酸、および(6)ホスファチジルイノシトールなどのリン脂質が好ましく用いられる。
【0018】
前記(1)のホスファチジルコリンとしては、例えば、卵黄レシチン、大豆レシチン、水添卵黄レシチン、水添大豆レシチン、大豆由来ホスファチジルコリン、大豆由来水添ホスファチジルコリン等の天然系ホスファチジルコリン;炭素数7〜22の飽和あるいは不飽和カルボン酸を構成成分として含むホスファチジルコリン等の合成系が挙げられる。具体例としては、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリンなどが挙げられる。
前記の脂肪酸残基としては、オクタノイル、ノナノイル、デカノイル、ウンデカノイル、ラウロイル、ミリストイル、パルミトイル、オレイル、ステアリル、パリミトレイル、オレイル、リノレイル、リノレニル、アラキドニル等の基が挙げられる。また、グリセリンの1−位、および2−位に結合する脂肪酸残基部分は、同一でも異なっていてもよい。
【0019】
前記(2)のホスファチジルエタノールアミンとしては、例えば、大豆由来ホスファチジルエタノールアミン、大豆由来水添ホスファチジルエタノールアミン等の天然系ホスファチジルエタノールアミン;炭素数7〜22の飽和あるいは不飽和カルボン酸を含むホスファチジルエタノールアミン等の合成系が挙げられる。具体例としては、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミンなどが挙げられる。脂肪酸残基としては、前記の(1)と同様な基が挙げられる。
【0020】
前記(3)のホスファチジルグリセロールとしては、例えば、炭素数7〜22の飽和あるいは不飽和カルボン酸を含むホスファチジルグリセロール等の合成系が挙げられる。具体例としては、ジミリストイルホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、ジオレオイルホスファチジルグリセロールなどが挙げられる。構成脂肪酸残基としては、前記(1)と同様な基が挙げられる。
【0021】
前記(4)のホスファチジルセリンとしては、例えば、大豆由来ホスファチジルセリン、大豆由来水添ホスファチジルセリンなどの天然系;炭素数7〜22の飽和あるいは不飽和カルボン酸を含むホスファチジルセリン等の合成系が挙げられる。具体例としては、ジミリストイルホスファチジルセリン、ジパルミトイルホスファチジルセリン、ジオレオイルホスファチジルセリンなどが挙げられる。構成脂肪酸残基としては、前記(1)と同様な基が挙げられる。
【0022】
前記(5)のホスファチジン酸としては、例えば、炭素数7〜22の飽和あるいは不飽和カルボン酸を含むホスファチジン酸等の合成系が挙げられる。具体例としては、ジミリストイルホスファチジン酸、ジパルミトイルホスファチジン酸、ジオレオイルホスファチジン酸などが挙げられる。構成脂肪酸残基としては、前記(1)と同様な基が挙げられる。
【0023】
前記(6)のホスファチジルイノシトールとしては、例えば、大豆由来ホスファチジルイノシトール、大豆由来水添ホスファチジルイノシトール等の天然系ホスファチジルイノシトールが挙げられ、合成系のホスファチジルイノシトールも使用することができる。
構成脂肪酸残基としては、前記(1)と同様な基が挙げられる。
【0024】
また、本発明に用いるリポソームの膜の構成成分として、グリセロリン脂質、スフィンゴリン脂質、グリセロ糖脂質、スフィンゴ糖脂質などを用いることもできる。
【0025】
本発明において、リポソーム膜を安定化する脂質成分として、ステロール類やトコフェロール類を用いることができる。
前記のステロール類としては、一般にステロール類として知られるものであればよく、例えば、コレステロール、シトステロール、カンペステロール、スチグマステロール、ブラシカステロールなどが挙げられ、入手性などの点から、特に好ましくは、コレステロールが挙げられる。
【0026】
前記のトコフェロール類としては、一般にトコフェロールとして知られるものであればよく、例えば、入手性などの点から、市販のα−トコフェロールが好ましく挙げられる。
さらに、本発明の効果を損なわない範囲において、(例えば免疫応答調節効果やリポソームの安定性の効果)リポソーム膜を構成することのできる、公知のリポソーム膜構成成分を含んでいてもよい。
【0027】
本発明に用いられる原料のリポソーム(抗原あるいはアレルゲンを表面に結合する前のリポソーム)の製造方法は、前記したリポソーム膜の主構成成分及びリポソーム膜を安定化する脂質成分等を用い、適宜配合や加工を行い、これを適当な溶媒中に添加するなど公知の方法が挙げられる。
前記の公知の方法としては、例えば、エクスツルージョン法、ボルテックスミキサー法、超音波法、界面活性剤除去法、逆相蒸発法、エタノール注入法、プレベシクル法、フレンチプレス法、W/O/Wエマルジョン法、アニーリング法、凍結融解法などのリポソーム製造方法が挙げられる。また、本発明においてリポソームの形態は、特に限定されないが、前記のリポソーム製造方法を適宜選択することにより、多重層リポソーム、小さな一枚膜リポソーム、大きな一枚膜リポソームなど、種々の大きさや形態を有するリポソームを製造することができる。本発明においてリポソームの粒径は特に限定されるものではないが、保存安定性などの点から、粒径は20〜600nmが挙げられ、好ましくは50〜300nmである。
【0028】
尚、本発明においては、リポソームの物理化学的安定性を向上させるために、リポソームを形成したとき、リポソームの内水相あるいは外水相に、糖類あるいは多価アルコール類を添加しておいても良い。
リポソームの内水相あるいは外水相に含ませる糖類としては、例えばグルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、イノシトール、リボース、キシロース等の単糖類;サッカロース、ラクトース、セロビオース、トレハロース、マルトース等の二糖類;ラフィノース、メレジトース等の三糖類;シクロデキストリン等のオリゴ糖;デキストリン等の多糖類;キシリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール等の糖アルコールなどが挙げられる。これらの糖類の中では単糖類または二糖類が好ましく、中でもグルコースまたはサッカロースが入手性などの点からより好ましく挙げられる。
【0029】
前記多価アルコール類としては、一般に知られているものであれば特に限定されないが、例えば、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン、ヘプタグリセリン、オクタグリセリン、ノナグリセリン、デカグリセリン、ポリグリセリンなどのグリセリン系化合物;ソルビトール、マンニトールなどの糖アルコール系化合物;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、ヘプタエチレングリコール、オクタエチレングリコール、ノナエチレングリコなどが挙げられる。このうち、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ソルビトール、マンニトール、分子量400〜10,000のポリエチレングリコールが入手性の点から好ましく挙げられる。
リポソームの内水相または外水相に含ませる、糖類あるいは多価アルコール類の濃度は例えば、0.05〜0.5Mが挙げられ、好ましくは、0.15〜0.35Mである。
【0030】
糖類あるいは多価アルコール類をリポソームの水相に含ませる方法は特に限定されず、公知の方法が採用できる。例えば、リポソーム調整時の水性溶媒中に添加する方法、リポソーム調整後に添加する方法が採用できる。
例えば、糖類を内水相あるいは外水相に含ませる方法については、リポソーム調製時に予め糖類を溶解させた溶液を用いる方法、あるいはリポソームに抗原またはアレルゲンを固定化して抗原結合リポソームまたはアレルゲン結合リポソームを調製した後、浸透圧勾配法などを用いて外水相に添加した糖類を内水相にも内包させる方法などを採用することができ、簡便さの点からは、リポソーム調製時に予め糖類を溶解させた溶液を用いる方法が好ましい。多価アルコール類をリポソームの水相に含ませる方法もこれに準じて行うことができ、公知の方法を利用できる。
【0031】
本発明のリポソーム製剤は、抗原またはアレルゲンをリポソームの表面に結合していることが特徴であり、その結合させる方法としては、次の(1)〜(2−2)の方法が挙げられる。
(1)物理的な結合;例えば、イオン結合、疎水性結合によるもの;例えば、片末端に抗原またはアレルゲンを有し、他端にイオン性基または疎水性基を有するものを使用する方法。
(2)化学結合によるもの;例えば
(2−1)原料リポソームと抗原あるいはアレルゲンを2個以上の反応性基を有するスぺーサで化学結合させる方法、
(2−2)原料リポソームの膜成分に、反応性基を有する材料を導入して反応性の表面を有するリポソームを調製し、ついで表面の反応基に抗原あるいはアレルゲンを化学反応させる方法等が挙げられる。
前記の(1)の方法では、原料リポソームと抗原あるいはアレルゲンを混合するだけでよいが、保存条件・保存状態等によりリポソーム表面から、抗原あるいはアレルゲンが外れる可能性があり好ましくない。
前記の(2)の化学結合させる手段としては、例えば、シッフベース結合、アミド結合、チオエーテル結合、エステル結合などの化学結合が挙げられる。
前記の(2−1)原料リポソームと抗原あるいはアレルゲンを2個以上の反応性基を有するスぺーサで化学結合させる方法としては、例えば、シッフベース結合を利用することで可能である。シッフベース結合でリポソームと抗体あるいはアレルゲンを結合する方法としては、アミノ基を表面に有するリポソームを調整し、抗体あるいはアレルゲン蛋白質をリポソームの外水相に添加し、後に、2価の反応性基を有するスペーサーとしてジアルデヒドを加えて、リポソーム表面のアミノ基と抗原あるいはアレルゲン蛋白質のアミノ基をシッフベース基で結合することが出きる。
この結合手順の具体例としては、例えば、次方法が挙げられる。
(2−1−1)アミノ基を表面に有するリポソームを得るために、ホスファチジルエタノールアミンをリポソーム原料脂質中に混合して、アミノ基がリポソーム表面に所定量存在するリポソームを作成する。
(2−1−2)前記リポソームの外水相に、抗原あるいはアレルゲンを添加する。
(2−1−3)次に、2価の反応性基を有するスペーサーとしてグルタルアルデヒドを加えて、所定の時間反応させてリポソームと抗原またはアレルゲンとの間にシッフベース結合を形成する。
(2−1−4)その後、余剰のグルタルアルデヒドの反応性を失活させるため、アミノ基含有水溶性化合物としてグリシンをリポソーム外水相に加えて反応させる。
(2−1−5)ゲルろ過、透析、限外ろ過、遠心分離などの方法により、リポソームに未結合の抗原あるいはアレルゲン、グルタルアルデヒドとグリシン反応物、余剰のグリシンを除去して、抗原あるいはアレルゲン結合リポソームを得る(リポソーム懸濁液)。
【0032】
前記の(2−2)の方法としては、アミド結合、チオエーテル結合、シッフベース結合、エステル結合などを形成することのできる反応性基を有する材料をリポソームに導入するものである。このような反応性基の具体例としては、サクシンイミド基、マレイミド基、アミノ基、イミノ基、カルボン酸基、水酸基、チオール基などの反応性基が挙げられる。
リポソームに導入する反応性基を有する材料の例としては、ホスファチジルエタノールアミンのアミノ基に2価反応性化合物を結合させた2価反応性化合物結合ホスファチジルエタノールアミンが挙げられる。2価反応性化合物はホスファチジルエタノールアミンのアミノ基と反応することができるコハク酸イミド基を片末端に有する化合物が利用できる。
具体的には、2価反応性化合物として、ジチオビス(サクシンイミジルプロピオネート)、エチレングリコ−ル−ビス(サクシンイミジルサクシネート)、ジサクシンイミジルサクシネート、ジサクシンイミジルスベレート、あるいはジサクシンイミジルグルタレートを用いると、反応性基としてサクシンイミド基を有する2価反応性化合物結合ホスファチジルエタノールアミンが得られる。
2価反応性化合物として、N−サクシンイミジル4−(p−マレイミドフェニル)ブチレート、スルホサクシンイミジル−4−(p−マレイミドフェニル)ブチレート、N−サクシンイミジル−4−(p−マレイミドフェニル)アセテート、N−サクシンイミジル−4−(p−マレイミドフェニル)プロピオネート、サクシンイミジル−4−(N−マレイミドエチル)−シクロヘキサン−1−カルボキシレート、スルホサクシンイミジル−4−(N−マレイミドエチル)−シクロヘキサン−1−カルボキシレート、N−(γ−マレイミドブチリルオキシ)サクシンイミド、あるいはN−(ε−マレイミドカプロイルオキシ)サクシンイミドを用いると、反応性基としてマレイミド基を有する2価反応性化合物結合ホスファチジルエタノールアミンが得られる。
【0033】
この結合手順の具体例としては、例えば、次の方法が挙げられる。
(2−2−1)ホスファチジルエタノールアミンとジサクシンイミジルスベレートを公知の方法で片末端のみ反応させて、反応性基としてマレイミド基を末端に有するジサクシンイミジルスベレート結合ホスファチジルエタノールアミンを得る。
(2−2−2)前記ジサクシンイミジルスベレート結合ホスファチジルエタノールアミンと他のリポソーム構成成分と公知の方法で混合して表面に反応性基としてサクシンイミド基を有するリポソームを作成する。
(2−2−3)前記リポソームの外水相に、抗原あるいはアレルゲン蛋白質を加え、抗原あるいはアレルゲン蛋白質のアミノ基と、リポソーム表面のサクシンイミド基を反応させる。
(2−2−4)未反応の抗原あるいはアレルゲン等を、ゲルろ過、透析、限外ろ過、遠心分離などの方法により除去して、抗原あるいはアレルゲン結合リポソームを得る(リポソーム懸濁液)。
【0034】
前記、(2−1)あるいは(2−2)の方法において、原料リポソームと抗原あるいはアレルゲンを化学結合させるための成分のリポソーム原料中の割合は、リポソームの安定性を低下させない範囲、あるいは抗原あるいはアレルゲンの好ましい結合量に応じて割合を選択できる。好ましくは、リポソーム原料脂質全量を100重量部としたとき、0.01〜80重量部の範囲で含有させるのが良い。更に、1〜40重量部の範囲が好ましい。
原料リポソームと抗原あるいはアレルゲンを化学結合する場合、抗原あるいはアレルゲンは蛋白質であり、反応性基として含有されることが多いアミノ基あるいはチオール基を対照とすることが実用上好ましい。アミノ基を対照とする場合は、サクシンイミド基を反応させてシッフベース結合を、チオール基を対照とする場合は、マレイミド基を反応させてチオエーテル結合を得ることができる。
【0035】
本発明の経口用リポソーム製剤は、抗原またはアレルゲンを表面に結合したリポソーム製剤を含んでいて、経口投与して用いることを特徴とする。
該リポソーム製剤を経口投与し、アレルギー治療あるいはアレルギー反応を起こしにくいワクチンとして機能する。
従来、アレルギー治療に用いられる免疫応答を調節する医療行為としては、抗原水溶液を注射する減感作療法が主な手段である。また、感染症を予防するためのワクチンも注射による投与経路が殆どである。
これらの従来の実用化技術に対して、本発明のポソーム製剤は経口投与においてアレルギー治療あるいはワクチンの目的を達成する。
【0036】
次に本発明のリポソーム製剤をアレルギー治療に用いる際の処方や用法について詳しく説明する。
前記のようにゲルろ過、透析、限外ろ過、遠心分離などの方法によって得られた本発明のリポソーム製剤は、前記の抗原あるいはアレルゲンが表面に結合しているリポソーム製剤の懸濁状態であって、そのような液体の場合は、製剤単一あるいは他の食品・飲料と同時に摂取することが可能であるが、より高い効果を得るためには、該製剤を単一でそのまま摂取することが好ましい。
また、前記のリポソーム製剤をさらに分散する溶媒としては、水系溶媒、例えば、蒸留水;生理的食塩水;リン酸緩衝液、炭酸緩衝液、トリス緩衝液、酢酸緩衝液等の緩衝液などが使用できる。このような水系溶媒のpHは5〜10が挙げられ、好ましくは6〜8である。
また、前記のリポソーム懸濁液は、その後、真空乾燥、凍結乾燥等の処理により粉末化することができる。この粉末タイプのリポソーム剤をそのまま経口用と使用することもできる。
【0037】
本発明のリポソーム製剤を投与する時期は、アレルギー症状を呈している時点あるいはアレルギー症状を呈する以前の時点、いずれの時点でも投与を開始することができる。アレルゲンに対する患者・患畜の免疫応答の程度は、生来、接触してきた生活環境(環境因子)あるいは家系(遺伝因子)などによって大きな相違があり、本発明のリポソーム製剤の投与量・投与期間・投与回数は、患者・患畜の各個体に応じて決定することが好ましい。
具体的には、経口経路で本リポソーム製剤を投与し、暫時、血液中のアレルゲンに対するIgE抗体価を追跡測定することで、アレルギー治療の進行程度を把握し、投与量・投与期間を決定することができる。
また、投与頻度は、1、2、3、4、5、6あるいは7日毎に実施することができ、1日当たりの経口投与回数は、医療行為の実施容易性から1〜3回/日とするのが好ましい。非常に過敏なアレルギー因子を有する患者や患畜の場合は、本発明の経口リポソームを継続的に摂取し、アレルギー体質を改善することが好ましい。
【0038】
本発明のリポソーム製剤をワクチンに用いる際に前記のように液体の場合は、製剤単一あるいは他の食品・飲料と同時に経口摂取することが可能であるが、より高い効果を得るためには、該製剤を単一でそのまま経口摂取することが好ましい。
【0039】
本発明のリポソーム製剤を投与する時期は、感染症に罹患する前の時点であって、患畜が母体由来の移行免疫が低下する時期以降が好ましい時期として挙げられる。具体的には、2歳児以降、犬・猫においては3週齢以降、豚・牛においては5週齢以降が好ましい時期として挙げられる。新規な毒性の強い感染病原体が発生した等の際には、必要な時期に、本発明のリポソーム製剤を摂取して、ワクチンの機能を発揮させることができる。
該リポソーム製剤の投与量・投与期間・投与回数は、前記同様の環境因子あるいは遺伝因子が影響し、患者・患畜の各個体に応じて免疫応答の程度が大きく相違するので、各個体に応じて決定することが好ましい。具体的には、本リポソーム製剤を経口投与し、暫時、血液中の抗原に対する対するIgG抗体価を追跡測定することで、感染症予防のためのワクチン療法の進行程度を把握することができる。
また、投与頻度は、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、14日、21日、1ケ月、3ケ月、6ケ月、1年あるいは2年に一度等に実施することができる。一日当たりの経口投与回数は、医療行為の実施容易性から1〜3回/日とするのが好ましい。
抗体価の追跡には非常に労力を要する場合があるので、例えば、本発明のリポソーム製剤を定期的に経口投与し、感染症を予防することも可能である。
【0040】
本発明の抗原またはアレルゲンを表面に結合したリポソームを含むことを特徴とする経口用リポソーム製剤は、アレルギー治療薬あるいは感染症予防のためのワクチンとして用いる場合に、IgE抗体産生の抑制と十分なIgG抗体の産生を増強する特徴を有する。
このような本発明の特徴をより具体化すると、従来該分野の医療行為に用いるられている医薬製剤のいずれに比べても、IgE抗体(2次免疫後の抗体価)/IgG抗体(2次免疫後の抗体価)の比(以下、IgE/IgG比と略す)が著しく低く、更に、IgGの抗体価が充分に高いことである。
即ち、このIgE/IgG比が、例えば抗原単独の水溶液で2次免疫した場合と比べて、タイター(titer)比で0.04倍以下となることが特徴として挙げられ、好ましくは0.025倍以下であり、更に、IgG抗体価は抗原単独の水溶液で2次免疫した場合と同等以上に高いことが好ましい。IgE/IgG比が十分に低く、IgG抗体が充分に高い医薬用製剤を用いることで、アレルギー患者に減感作療法的に用いられるアレルギー治療薬あるいは感染症予防のためのアレルギー反応を起こしにくいワクチンとして好適に使用することができる。
更に、本発明の経口用リポソーム製剤は、従来用いられてきた減感作療法的アレルギー治療薬あるいは感染症予防のためのワクチンが注射行為による投与であるのに対して、経口投与が可能であり、しかも十分な好ましい効果を得ることができる。
【0041】
更に、本発明のリポソーム製剤は、小腸粘膜の免疫細胞に働きかけるものであり、胃での酸性環境下での消化行為の影響を低減するために腸溶性製剤化されることが好ましい。通常、経口投与製剤として経口投与される抗原あるいはアレルゲンは、生体の免疫応答を誘導する強さにおいて、一定でなく、生体の免疫応答を誘導する強さに様々なレベルが認められる。生体の異なる免疫応答誘導能を示す様々な抗原あるいはアレルゲンを有する本発明の経口投与製剤を用いる場合、腸溶性製剤化することによって、より安定的な医療効果を得られるようにでき、より効率的な免疫応答調節機能を有する実用性の点からより好ましい。前記の腸溶化した剤型の形態としては、カプセル化、錠剤化、顆粒化、粉末化が挙げられる。
【0042】
本発明に用いる腸溶性製剤化する方法としては、特に限定されないが、具体的な手段としては、例えば、
(1)表面に抗原あるいはアレルゲンを結合したリポソーム懸濁液を腸溶性カプセルに封入する方法、
(2)リポソーム懸濁液を凍結乾燥あるいは噴霧乾燥して粉末化し錠剤化した後に腸溶性化する方法、
(3)リポソーム懸濁液に腸溶性化剤を加えて凍結乾燥あるいは噴霧乾燥して粉末化したのちに錠剤化する方法、
(4)リポソーム粉末に腸溶性化剤を加えて錠剤化する方法、
などが挙げられる。
【0043】
前記のカプセル化、錠剤化、顆粒化、粉末化して腸溶性製剤化する場合には、製薬領域でカプセルまたは錠剤の腸溶性化剤として知られる材料が使用でき、例えば、シリコン皮膜カプセル、アクリル樹脂を基剤とした密封材(例えば、アクリル酸エステルとのアクリル酸共重合体、メタクリル酸エステルの共重合体、(例えば、BASF武田ビタミン(株)社、商品名:コリコートMAE30DPなど)等の合成高分子;あるいはまたアセトフタル酸セルロースなどのセルロース誘導体等の半合成高分子;トウモロコシ由来のツェインタンパク質等の天然高分子などを用いて、抗原またはアレルゲンを表面に結合したリポソームを、カプセル化、錠剤化、顆粒化、粉末化することができる。
【0044】
前記、粉末化して腸溶性製剤化する場合には、あらかじめ抗原またはアレルゲンを表面に結合したリポソームに糖類を添加するなどして、安定化手段を講じることが好ましく、その上で、リポソーム懸濁液を、凍結乾燥、噴霧乾燥あるいは蒸発乾燥して粉末化を行うのが良い。このようにして粉末化した抗原またはアレルゲンを表面に結合したリポソームを用いて、更にカプセル化、錠剤化、顆粒化することは、自由に行われて良い。
このようにして、腸溶性製剤化した抗原またはアレルゲンを表面に結合したリポソームを得ることができ、このリポソーム製剤は、経口用リポソーム製剤として前記と同様にして用いられる。
【0045】
また、本発明のリポソームが、腸溶性製剤化した錠剤、カプセルあるいは粉末の場合は、製剤単一あるいは他の食品・飲料と同時に摂取することが可能であるが、該製剤を単一でそのまま摂取することが好ましい。更に、小腸での酸性環境化での消化を回避するために、製剤を水あるいはお茶等の飲料とともに摂取することが好ましい。
【0046】
次に、本発明の前記リポソーム製剤を経口経路でヒト以外の動物に投与し、アレルギー治療あるいはアレルギー症状を起こしにくいワクチンとして機能する免疫応答の調節方法について詳しく説明する。
従来、アレルギー治療に用いられる免疫応答を調節する医療行為としては、抗原水溶液を注射する減感作療法が主な手段である。また、感染症を予防するためのワクチンも注射による投与経路が殆どである。
これらの従来の実用化技術に対して、本発明の免疫応答の調整方法は、経口投与においてアレルギー治療あるいはワクチンの目的を達成する。
本発明のリポソーム製剤は、犬、猫、鶏、豚、牛、馬、魚などの対照動物に投与することが可能であり、前記同様の投与方法、投与頻度、投与回数で実施することができる。
具体的な投与方法として、実施容易性から、飲水あるいは飼料に混合して投与することも好ましい方法として挙げられる。
【0047】
なお上記タイター比の値は、血中IgG抗体及びIgE抗体を下記ELISA法で測定した場合の産生比である。参考の為、以下にELISA法について示す。
[ELISA法(IgG抗体検出)]
1)抗原によるプレートのコーティング;
抗原を、1mg/mlの濃度で0.05M炭酸緩衝液(pH9.0)に溶解し、96穴のアッセイプレートに50μl/ウェルずつ分注し、室温に1時間放置する。
2)プレートのブロッキング;
ウシ血清アルブミン(以下、BSAという)を0.2Mリン酸緩衝液(pH7.2:PBS)に1mg/mlの濃度で溶解し、上記1)のプレートに100μl/ウェルずつ分注し、室温に1時間放置する。
3)血清サンプル(1次抗体)の希釈、添加;
1mg/mlの濃度でBSAを含むPBS(以下、PBSAという)中で水酸化アルミニウム−抗原、または本発明の経口用リポソーム製剤で免疫したマウス血清を10倍希釈から始めて2倍段階で11回希釈を行い、上記2)のプレートに50μl/ウェルずつ分注し、室温に1時間放置する。
【0048】
4)ペルオキシダーゼ標識ウサギ抗マウスIgG抗体溶液(2次抗体)の添加;上記3)のプレートをPBSにて3回洗った後、ペルオキシダーゼ標識ウサギ抗マウスIgG抗体のPBSA溶液を50μl/ウェルずつ分注し、室温に1時間放置する。
5)酵素基質溶液の添加;
上記4)のプレートをPBSにて3回洗った後、クエン酸緩衝液に溶解したo−フェニレンジアミンジヒドロクロリド(0.5mg/ml)を100μl/ウェルずつ分注し、室温に15分間放置し、発色させる。発色後、2M硫酸を50μl/ウェルずつ分注して反応を停止する。
6)吸光度計を用いた測定;
ELISA用プレートリーダーを用いて490nmの吸光で測定を行い、発色のエンドポイントを求めて、そのポイントでのサンプル血清の平均希釈倍率をもってELISAタイターとする(ELISAタイターをIgG抗体の定量値として用いる。)。
【0049】
[ELISA法(IgE抗体検出)]
1)ラットモノクローナル抗体マウスIgE抗体によるプレートのコーティング;
マウスIgE抗体に対するラットのモノクローナル抗体を0.05M炭酸緩衝液(pH9.0)で4μg/mlの濃度に調整したものを96穴のアッセイプレートに100μl/ウェルずつ分注し、37℃で3時間放置する。
2)プレートのブロッキング;
ウシ血清アルブミン(BSA)を0.2Mリン酸緩衝液(pH7.2:PBS)に1mg/mlの濃度で溶解し、上記1)のプレートに100μl/ウェルずつ分注し、室温に1時間放置する。
3)血清サンプル(1次抗体)の希釈、添加;
1mg/mlの濃度でBSAを含むPBS(PBSA)中で、水酸化アルミニウム−抗原または本発明の経口用リポソーム製剤で免疫したマウス血清を10倍希釈から始めて2倍段階で11回希釈を行い、上記2)のプレートに50μl/ウェルずつ分注し、室温に1時間放置する。
4)ビオチン化抗原の添加;
上記3)のプレートをPBSにて3回洗った後、ビオチン化した抗原溶液のPBSA溶液(1μg/ml)を100μl/ウェルずつ分注し、室温に1時間放置する。
5)ペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジン溶液の添加;
上記4)のプレートをPBSにて3回洗った後、ペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジン溶液を100μl/ウェルずつ分注し、室温に1時間放置する。
6)酵素基質溶液の添加;
上記5)のプレートをPBSにて3回洗った後、クエン酸緩衝液に溶解したo−フェニレンジアミンジヒドロクロリド(0.5mg/ml)を100μl/ウェルずつ分注し、室温に15分間放置し、発色させる。発色後、2M硫酸を50μl/ウェルずつ分注して反応を停止する。
7)吸光度計を用いた測定;
ELISA用プレートリーダーを用いて490nmの吸光で測定を行い、発色のエンドポイントを求めて、そのポイントでのサンプル血清の平均希釈倍率をもってELISAタイターとする(ELISAタイターをIgEの定量値として用いる。)。
【0050】
【発明の効果】
本発明のリポソーム製剤は、リポソーム表面に抗原またはアレルゲンを結合した経口用リポソーム製剤であり、経口投与した場合には、小腸粘膜の免疫担当細胞に作用して、IgE抗体の産生を抑制してIgG抗体の産生を増大させる免疫応答調節機能を有する。このためアレルギー症状を治療・改善、感染症予防の際に、アレルギー症状の起きにくい優れた効果を有する。
【0051】
【実施例】
次に本発明を実施例に基づいて詳しく説明する。
参考例1(リポソームの作製)
ジパルミトイルホスファチジルコリン0.9175g(1.25mmol)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン0.6490g(0.938mmol)、コレステロール0.8445g(2.19mmol)及びジミリストイルホスファチジルグリセロールNa塩0.4305g(0.625mmol)をナス型フラスコに取り、クロロホルム/メタノール/水(65/25/4、容量比)混合溶剤50mlを入れ、40℃にて溶解した。次にロータリーエバポレーターを使用して減圧下に溶剤を留去し、脂質の薄膜を作った。更に注射用蒸留水を30ml添加し、攪拌して均一のスラリーを得た。このスラリーを液体窒素にて凍結させ、凍結乾燥機にて24時間乾燥させた。
【0052】
次に、別途作製した緩衝液(0.12mM Na2HPO4、0.88mM KH2PO4、0.25M サッカロース、pH6.5)60mlを上記ナス型フラスコ内に入れ、40℃にて攪拌しながら脂質を水和させ、リポソームを得た。次にエクストルーダーを用いてリポソームの粒径を調整した。まず8μmのポリカーボネートフィルターを通過させ、続いて5μm、3μm、1μm、0.65μm、0.4μm及び0.2μmの順にフィルターを通過させた。リポソーム粒子の平均粒径224nm/標準偏差32.5%(動的光散乱法による測定)が得られた。
【0053】
実施例1:(OVA結合リポソームの懸濁液による経口投与免疫試験)
1)経口用リポソーム製剤の調製;
参考例1のリポソーム2mlを試験管に採取し、0.5mlのオボアルブミン(シグマ社製、試薬、以下、OVAという場合がある)溶液(12mg/ml)を加えた。次に2.4%のグルタルアルデヒド溶液0.5mlを滴下したのち、37℃の温浴上で1時間緩やかに混合し、リポソームの外水相側にオボアルブミンを固定化した。次に2Mのグリシン−NaOH緩衝液(pH7.2)を0.5ml加え、溶液を4℃で一晩放置し、未反応のグルタルアルデヒドを失活させた。更にSepharose CL−4B(Pharmacia Biotech社、商標)を充填したカラムにこの溶液を通して、目的物を分画し、表面に抗原を結合したリポソーム懸濁液を得た。前記のリポソーム懸濁液中のリン濃度を測定し(リン脂質テストWako)、リン脂質由来のリン濃度を10mMになるように濃度を緩衝液で希釈調整した。
【0054】
放射化ラベルしたOVAを用いて別途上記と同様の操作を行い、リポソームの脂質濃度10mMの時のOVAの結合量を測定した結果、0.52mg/mlであった。
【0055】
2)抗体産生試験;
BALB/cマウス(メス、8週令、6匹/群)を使用し、ゾンデで胃内にリポソーム懸濁液1ml/日経口投与した。経口投与のスケジュールは、前記の条件で5日間連続投与による一時免疫後、2日間無投与とし、更に5日間の前記と同様な条件で連続投与を行った。
経口投与開始日から2週間後に、OVA溶液(12mg/ml)を0.1ml腹腔投与により2次免疫し、試験開始時から6週後まで、各週に血清を採取し、抗体価(IgG及びIgE)の推移をELISA法で測定した。
【0056】
3)IgG抗体のELISA法による測定;
免疫試験開始から6週目までに採取したマウス血清を用い以下のようにIgG抗体価を測定した。
a)抗原によるプレートのコーティング;
オボアルブミンを、1mg/mlの濃度で0.05M炭酸緩衝液(pH9.0)に溶解し、96穴のアッセイプレートに50μl/ウェルずつ分注し、室温に一時間放置した。
b)プレートのブロッキングウシ血清アルブミン(以下、BSAと略す)を0.2Mリン酸緩衝液(pH7.2:PBSと略す)に1mg/mlの濃度で溶解し、上記a)のプレートに100μl/ウェルずつ分注し、室温に一時間放置した。
c)血清サンプル(1次抗体)の希釈、添加;
1mg/ml濃度でBSAを含むPBS(以下、PBSAという)中で、抗原結合経口用リポソーム製剤で免疫したマウス血清を10倍希釈から始めて2倍段階で11回希釈を行い、上記b)のプレートに50μl/ウェルずつ分注し、室温に一時間放置した。
d)ペルオキシダーゼ標識ウサギ抗マウスIgG抗体溶液(2次抗体)の添加上記c)のプレートをPBSにて3回洗った後、ペルオキシダーゼ標識ウサギ抗マウスIgG抗体のPBSA溶液を50μl/ウェルずつ分注し、室温に一時間放置した。
e)酵素基質溶液の添加;
上記d)のプレートをPBSにて3回洗った後、クエン酸緩衝液に溶解して行い、o−フェニレンジアミンジヒドロクロリド(0.5mg/ml)を100μl/ウェルずつ分注し、室温に15分間放置し、発色させた。発色後、2M硫酸を50μl/ウェルずつ分注して反応を停止した。
f)吸光度計を用いた測定;
ELISA用プレートリーダーを用いて490nmの吸光で測定を行い、発色のエンドポイントを求めて、そのポイントでのサンプル血清の希釈倍率をもってELISAタイターとした(ELISAタイターをIgG抗体の定量値として用いる)。
【0057】
4)IgE抗体のELISA法による測定;
免疫試験開始から6週目までに採取したマウス血清を用い以下のようにIgE抗体価を測定した。
a)ラットモノクローナル抗体マウスIgE抗体によるプレートのコーティング;
マウスIgE抗体に対するラットのモノクローナル抗体を0.05M炭酸緩衝液(pH9.0)で4μg/mlの濃度に調整したものを96穴のアッセイプレートに100μl/ウェルずつ分注し、37℃で3時間放置する。
b)プレートのブロッキング;
ウシ血清アルブミン(BSA)を0.2Mリン酸緩衝液(pH7.2:PBS)に1mg/mlの濃度で溶解し、上記a)のプレートに100μl/ウェルずつ分注し、室温に1時間放置する。
c)血清サンプル(1次抗体)の希釈、添加;
1mg/mlの濃度でBSAを含むPBS(PBSA)中で、水酸化アルミニウム−抗原または本発明の経口用リポソーム製剤で免疫したマウス血清を10倍希釈から始めて2倍段階で11回希釈を行い、上記b)のプレートに50μl/ウェルずつ分注し、室温に1時間放置する。
【0058】
d)ビオチン化抗原の添加;
上記c)のプレートをPBSにて3回洗った後、ビオチン化した抗原溶液のPBSA溶液(1μg/ml)を100μl/ウェルずつ分注し、室温に1時間放置する。
e)ペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジン溶液の添加;
上記d)のプレートをPBSにて3回洗った後、ペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジン溶液を100μl/ウェルずつ分注し、室温に1時間放置する。
f)酵素基質溶液の添加上記5)のプレートをPBSにて3回洗った後、クエン酸緩衝液に溶解したo−フェニレンジアミンジヒドロクロリド(0.5mg/ml)を100μl/ウェルずつ分注し、室温に15分間放置し、発色させる。発色後、2M硫酸を50μl/ウェルずつ分注して反応を停止する。
g)吸光度計を用いた測定;
ELISA用プレートリーダーを用いて490nmの吸光で測定を行い、発色のエンドポイントを求めて、そのポイントでのサンプル血清の平均希釈倍率をもってELISAタイターとする(ELISAタイターをIgE抗体の定量値として用いる)。
【0059】
5)抗体価の結果;
IgG及びIgEの抗体価の推移、及び抗体価から算出した。IgE/IgG比を、表1及び図1〜3に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
実施例2:(OVA結合リポソーム含有腸溶性製剤による経口投与免疫試験)
1)経口用リポソーム製剤の調製;
実施例1−1)と同様に表面に抗原を結合したリポソーム懸濁液し、同様に緩衝液でリン濃度を10mMに調整した。
【0062】
2)経口用リポソーム錠剤の調整;
前項で得たOVA結合リポソーム懸濁液100mlを、500ml容ナスフラスコに移して表面積が大きくなるように穏やかに振とうしながら液体窒素で急速凍結した。このナスフラスコを凍結乾燥機(バーティス社製)に取り付け、36時間凍結乾燥し、OVA結合リポソーム粉末を得た。
次に、このOVA結合リポソーム粉末を、単発型打錠機(菊水製作所社製、NO−2B)を用い、錠剤サイズ:3mmφ、打錠圧:200kg/cm2の条件で錠剤型に打錠した。
この錠剤は、一錠剤当たりリン脂質由来のリン原子を10μmol含有し、リン濃度を10mMに調整したOVA結合リポソーム懸濁液1mlに相当する。
【0063】
3)腸溶性経口用リポソーム製剤の調整;
前項で得た錠剤に、トウモロコシ由来のツェイン蛋白質(昭和産業社製)の1%エタノール溶液を市販の噴霧器を用いて一回粉霧し、直ちに室温の真空乾燥機内においてエタノールを乾燥した。
ツェイン噴霧・乾燥を5回繰り返し、錠剤の全面をツェインでコーティングし、腸溶性経口用リポソーム製剤を得た。
【0064】
4)抗体産生試験;
実施例1の経口用リポソーム製剤に代えて前項で調整した腸溶性経口用リポソーム錠剤を用い、各経口投与日に錠剤一個をマウスの口腔内に入れ、ゾンデの先端で胃内まで挿入した。その他の手順は実施例1と同様に抗体産生試験を実施し、開始時から6週後まで、各週に血清を採取し、抗体価(IgG及びIgE)の推移をELISA法で測定した。
【0065】
5)IgG抗体のELISA法による測定;
前項で得られた免疫試験開始から6週目までに採取したマウス血清を用い、実施例1−5)と同様な手順でIgG抗体価を測定した。
6)IgE抗体のELISA法による測定;
前項で得られた免疫試験開始から6週目までに採取したマウス血清を用い、実施例1−7)と同様な手順でIgE抗体価を測定した。
7)抗体価の結果;
IgG及びIgEの抗体価の推移、及び抗体価から算出したIgE/IgG比を、表1及び図1〜3に示す。
【0066】
比較例1:(OVA蛋白溶液の経口投与免疫試験)
1)経口用OVA溶液の調整
別途作製した緩衝液(0.12mM Na2HPO4、0.88mM KH2PO4、0.25M サッカロース、pH6.5)に、0.52mg/mlとなるようにOVAを溶解し、経口用OVA溶液を調整した。
2)抗体産生試験;
実施例1の経口用リポソーム製剤に代えて前項で調整した経口用OVA溶液を用い、実施例1と同様に抗体産生試験を実施し、開始時から6週後まで、各週に血清を採取し、抗体価(IgG及びIgE)の推移をELISA法で測定した。
【0067】
3)IgG抗体のELISA法による測定;
前項で得られた免疫試験開始から6週目までに採取したマウス血清を用い、実施例1−3)と同様な手順でIgG抗体価を測定した。
4)IgE抗体のELISA法による測定;
前項で得られた免疫試験開始から6週目までに採取したマウス血清を用い、実施例1−4)と同様な手順でIgE抗体価を測定した。
5)抗体価の結果;
IgG及びIgEの抗体価の推移、及び抗体価から算出したIgE/IgG比を、表1〜及び図1〜3に示す。
【0068】
比較例2:(緩衝液による経口投与免疫試験)
1)経口用緩衝液の調整;
別途作製した緩衝液(0.12mM Na2HPO4、0.88mM KH2PO4、0.25M サッカロース、pH6.5)を経口用緩衝液とした。
【0069】
2)抗体産生試験;
実施例1の経口用リポソーム製剤に代えて前項で調整した緩衝液を用い、実施例1と同様に抗体産生試験を実施し、開始時から6週後まで、各週に血清を採取し、抗体価(IgG及びIgE)の推移をELISA法で測定した。
3)IgG抗体のELISA法による測定;
前項で得られた免疫試験開始から6週目までに採取したマウス血清を用い、実施例1−3)と同様な手順でIgG抗体価を測定した。
4)IgE抗体のELISA法による測定;
前項で得られた免疫試験開始から6週目までに採取したマウス血清を用い、実施例1−4)と同様な手順でIgE抗体価を測定した。
5)抗体価の結果;
IgG及びIgEの抗体価の推移、及び抗体価から算出したIgE/IgG比を、表1及び図1〜3に示す。
【0070】
実施例1、実施例2、比較例1及び比較例2の免疫試験結果、表1及び図1〜3に示した。表1中、アレルギー治療あるいはワクチンに用いる際の免疫応答の効果として、疫以降(3週目以降)のIgG抗体価、IgE抗体価及びIgE/IgGの平均を記した。
なお評価は次のとおりである。
1)IgG抗体については、20以上を○、100以上を◎、それ以外を×として、
評価記号;評価基準
◎;100以上〜、
○;20〜100未満、
×;〜20未満、
2)IgE/IgGついては、
評価記号;評価基準
◎; 〜0.025以下、
○;0.025を越える〜0.040以下、
×;0.040を越える〜、
本発明の実施例は、IgG抗体の産生を十分に増強し、IgE/IgG比からIgE抗体の産生を抑制しており、これらの性能を両方同時に満足していることが判った。
この結果から、経口投与により、このような免疫応答調節機能を有する経口用リポソーム製剤は、アレルギー症状の起きにくいワクチンまたはアレルギー治療に用いられる経口用リポソーム製剤として好適であることが判る。
【図面の簡単な説明】
【図1】IgG抗体価の推移を示す図である。
【図2】IgE抗体価の推移を示す図である。
【図3】IgE/IgG比の推移を示す図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、リポソームの表面に抗原あるいはアレルゲンを結合したリポソーム製剤をアレルギー治療、あるいはワクチンとして用いることができる経口用リポソーム製剤及び免疫応答の調節方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ヒト、家畜及びペットなどの動物で問題となっているいわゆるアレルギー症状を引起こす物質としては、ダニ抗原、ブタクサ抗原、カモガヤ抗原、スギ花粉抗原等の主に環境因子として存在するもの、また、卵、牛乳、ソバ、ピーナッツ、魚あるいは甲殻類等の食品中に存在するアレルゲンが知られている。
これらの患者・患畜は、アレルゲンへの暴露を意図的に回避することは非常に難しく、有効な治療・予防的な医療行為が切望されている。
【0003】
アレルギーの発症は、抗体の1種であるIgE抗体の産生が原因していると考えられており、IgE抗体の産生抑制あるいはIgE抗体の産生抑制とIgG抗体の産生増強によって、アレルギー症状を治療・改善することができると考えられている。このような技術の研究例としては、例えば、アレルギー患者・患畜に対してアレルゲンの水溶液を少量ずつ投与する減感作療法が行われている。この手法は、アレルギー症状が許容され得る小さい範囲で、少量のアレルゲン水溶液を繰り返し投与し、免疫応答(IgE抗体産生)の緩解を誘導することを目的とする。免疫応答の個体差、患者・患畜のアレルギー症状の程度、長期間の治療を要するなど、一定の有効な効果を得るには非常に課題が多い。また、免疫応答の緩解誘導を目的とする受動的な技術でり、有効な治療法として広く普及するには不適切な治療方法である。
【0004】
また他の対決策として、アレルゲンタンパク質をポリエチレングリコールで修飾する方法(Int. Arch. Allergy Appl. Immunol., 56. p159−170, 1978)、アレルゲンをグルタールアルデヒドで重合する方法(Int. Arch. Allergy Appl. Immunol., 74, p332−340, 1984)、アレルゲンと多糖類のプルランとを反応させる方法(Int. Arch. Allergy Appl. Immunol., 102, p276−278, 1993)などが研究開発されているが、いずれもアレルゲンに対する十分なIgE抗体産生抑制とIgG抗体産生が達成されず、有効な実用化手段となっていない。
【0005】
一方、アレルギーを治療・改善するのにリポソームを用いる方法として、リポソーム中にアレルゲンを内包する方法(Clinical and Experimental Allergy, Vol. 22 p35−42, 1992、ドイツ特許 412793号明細書)、アレルゲンをリポソームに結合させた免疫治療剤(米国特許5049390号明細書)などが開示されているが、これらも十分なIgE抗体の産生抑制とIgG抗体の産生増強効果を示さず実用化には至っていない。
これらのアレルギー症状の治療改善手段は、いずれも、IgE抗体の産生抑制とIgG抗体の産生増強効果が不十分であって有効な実用化手段とはなっていない上に、殆どの技術が生体内への投与を注射で行うために、患者・患畜に対して侵しゅう的で負担が大きい。更に、十分な治療効果を達成するためには、断続的に頻繁に注射することが必要であり、治療行為自身を難しくする大きな原因となっている。在宅の生活状態で、安全性・有効性が高く、経口投与可能なアレルギー治療・改善用の製剤開発が切望されている。
【0006】
他方、ヒト、家畜及びペットなどの動物、更には魚類に関して、ウイルスまたは細菌等がその病原体となっている様々な感染症が疾病として知られており、このような感染症の予防のためワクチンが広く利用されている。この様なワクチンとしては、抗原溶液に水酸化アルミニウムを加えて抗原を不溶性とした水酸化アルミニウム混合ワクチン、いわゆる沈降ワクチンが多く使用され、沈降ジフテリアトキソイド、沈降ジフテリア破傷風混合トキソイド、沈降破傷風トキソイド、沈降はぶトキソイド、沈降B型肝炎ワクチン、沈降精製百日せきワクチン、沈降精製百日せきジフテリア破傷風混合ワクチン等などが実用化されている。
【0007】
通常、ワクチンを接種すると、生体は免疫能を獲得し、IgG抗体の産生あるいは細胞性免疫によって抵抗力を発揮する。しかしながらワクチン接種の際、好ましくない生体の免疫応答も起きる場合があり、その最も大きなものがワクチン接種時のアレルギー反応(接種反応)である。このアレルギー反応は、過剰なIgE抗体産生によるものが殆どで、ワクチン接種箇所の赤斑・腫脹、全身系のショック症状などが起き、症状が著しい場合は生命の危機に繋がる場合もある。このように、感染症予防に繋がるIgG抗体等の主たる免疫応答の他に、目的としない免疫応答としてアレルギー反応が起きることが、ワクチン接種時の大きな問題点となっている。
従来から、アレルギー反応の主たる原因物質は、ワクチンに用いられている抗原自身、抗原中に含まれる成分(例えば、ウイルス培養液中の蛋白質など)あるいは前記沈降ワクチンに用いられる水酸化アルミゲルなどのアジュバント成分と考えられているが、未だ十分に原因物質は特定されていない。このため、アレルギー反応を引き起こすIgE抗体産生を抑制する技術も種々精力的に検討されているものの、十分な効果を有する技術は未だ確立されていない。
【0008】
IgE抗体の産生を制抑するための試みとしては、例えば、抗原タンパク質をポリエチレングリコールで修飾する方法(Int. Arch. Allergy Appl. Immunol.,56. p159−170, 1978)、抗原をグルタールアルデヒドで重合する方法(Int. Arch. Allergy Appl. Immunol., 74, p332−340, 1984)、抗原と多糖類のプルランとを反応させる方法(Int. Arch. Allergy Appl. Immunol., 102, p276−278, 1993)などが研究されている。しかしながら、前記の研究では、IgE抗体の抑制は十分であるがワクチンとしての本来の目的である感染予防に必要なIgG抗体産生が不十分であったり、IgE抗体産生の抑制が不十分である等、未だ有効な実用化手段とはなっていない。
【0009】
一方、リポソームをIgE抗体の産生制抑に用いる方法として、リポソーム中に抗原を内包する方法(Clinical and Experimental Allergy, Vol. 22 p35−42,1992、ドイツ特許412793号明細書)、抗原をリポソームに結合させた免疫治療剤(米国特許5049390号明細書)などが開示されているが、これらも十分なIgE抗体の産生抑制とIgG抗体の産生増強効果とを示さず実用化には至っていない。
また、血液から採取した赤血球とアルブミンとをグルタルアルデヒドにより反応させて、赤血球表面にアルブミンを結合させることにより、IgE抗体の産生を抑制し、充分なIgG抗体を産生させる技術が報告されている(Int. Arch. Allergy Immunol., 104, p405−408, 1994)。しかしながら、赤血球表面の糖脂質による血液型の不適合、生物材料をワクチンの原料とすることによる2次感染の危険性、生物材料を用いることによる工業的大量生産性の欠如など実用化には不適切な課題が多い。
【0010】
前記したアレルギー反応を起こさないワクチン処方は、いずれも、IgG抗体の産生増強とIgE抗体の産生抑制効果が不十分であって有効な実用化手段とはなっていない上に、殆どの技術が生体内への投与を注射で行うために、患者・患畜に対して侵しゅう的で負担が大きい。更に、十分な感染予防効果を達成するためには、断続的に頻繁に注射することが必要であり、医療行為自身を難しくする大きな原因となっている。在宅の生活状態で、安全性・有効性が高く、経口投与可能なアレルギー反応を起こさないワクチン製剤の開発が切望されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の第1の目的は、IgE抗体の産生を抑制してIgG抗体の産生を増大させることを特徴とする免疫応答の調整機能を有し、アレルギー治療あるいはアレルギー反応を起こし難いワクチンに用いることができる経口用リポソーム製剤を提供することである。
本発明の第2の目的は、従来多く実施されている注射行為によることなく、患畜に対して非侵しゅう的に経口経路でリポソーム製剤を投与し、アレルギー治療あるいはアレルギー反応を起こしにくいワクチンとして機能する免疫応答の調節方法を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成する為に鋭意検討した結果、免疫応答調節機能を有する抗原あるいはアレルゲンを表面に結合したリポソームを経口投与すると前記の問題点を著しく改善することの知見を得て、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、次の(1)〜(5)である。
(1)ワクチンまたはアレルギー治療に用いる経口投与用リポソーム製剤であって、該リポソームは抗原またはアレルゲンがリポソームの表面に結合されていることを特徴とするリポソーム製剤。
(2)前記(1)記載のリポソーム製剤を、更に腸溶性材料を用いて、腸溶性製剤化してなる腸溶性リポソーム製剤。
(3)アレルゲンが卵蛋白アルブミン(OVA)であり、OVA結合リポソーム製剤を卵蛋白アルブミンアレルギーの治療に用いる前記(1)または(2)に記載のリポソーム製剤。
(4)IgG抗体の産生を増強し、IgE抗体の産生を抑制する前記(1)〜(3)のいずれかに記載のリポソーム製剤。
(5)前記(1)〜(4)のいずれかに記載のリポソーム製剤を、ヒト以外の動物に経口投与し、免疫応答を調節する方法。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の経口投与用リポソーム製剤は、ワクチンまたはアレルギー治療に用いるリポソーム製剤であって、該リポソームは抗原またはアレルゲンをリポソームの表面に結合されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の経口用リポソーム製剤に用いられるワクチン用の抗原としては、ワクチンの抗原として使用できるものであればよく、具体的には、ヒト;犬、猫、小鳥などのペット;鶏、アヒル、豚、牛、羊などの家畜を対象として、抗原となる物質が挙げられる。これらの抗原としては、例えば、破傷風、ジフテリア、はぶなどの各種トキソイド;インフルエンザ、ポリオ、日本脳炎、麻疹、おたふくかぜ、風疹、狂犬病、黄熱、水痘、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、腎症候性出血熱、テング出血熱、ロタウイルス感染症、パルボウイルス、コロナウイルス、ジステンバーウイルス、レプトスピラー、感染性気管支炎ウイルス、伝染性白血病ウイルス、エイズなどのウイルス;コレラ;ウイルス病秋やみ;BCG;マラリアなどが挙げられる。これらの抗原のうち、好ましくは、ワクチン接種時のアレルギー反応が問題となっている、ヒトの抗原あるいはペットの抗原が好ましく挙げられ、具体的には、ヒトにおける破傷風、ジフテリア、日本脳炎、ポリオ、風疹、おたふくかぜ;ペットにおけるパルボウイルス、コロナウイルス、ジステンバーウイルス、レプトスピラー、感染性気管支炎ウイルス、伝染性白血病ウイルスなどの抗原がより好ましく挙げられる。上記抗原は、1種単独で使用することもできるし、2種以上を組合せて使用することもできる。
【0015】
本発明の経口用リポソーム製剤に用いられるアレルゲンとしては、アレルギーの原因となっているアレルゲン(アレルギー抗原)であればよい。アレルギー症状を発症する対象としては、具体的には例えば、ヒト;犬、猫、小鳥などのペット;鶏、アヒル、豚、牛、羊などの家畜が挙げられる。アレルゲンとしては、前記のヒトおよびそれ以外の動物のアレルゲンが挙げられ、これらのアレルゲンの具体例として、ハウスダスト;ダニ抗原;ブタクサ抗原、カモガヤ抗原、スギ花粉抗原、ヨモギ、カナムグラ、ヒメガマ等の花粉類;米、小麦粉、ソバ粉等の穀類;牛乳、卵黄、卵白等の食品類;犬毛、猫毛、羽毛等の表皮類;カンジダ、アスペルギルス等の真菌類などのアレルゲンが挙げられる。これらの中でも、アレルギーの症例数や、食品からの摂取の頻繁性などの点から、ダニ抗原、ブタクサ抗原、カモガヤ抗原、スギ花粉抗原や、卵白(OVA)の抗原が、好ましく使用できる。上記アレルゲンは、1種単独で使用することもできるし、2種以上を組合せて使用することもできる。
【0016】
本発明の経口用リポソーム製剤に用いられる原料のリポソームとしては、一般的にリポソームとして知られているものであればよく、特に経口摂取して問題がないリポソームが挙げられる。それらのリポソームを適宜用してもよいし、新に公知の材料を用いてリポソームを設計して、形成してもば良い。具体的には例えば、リポソーム膜の主構成成分としてリン脂質やエーテルグリセロリン脂質、スフィンゴリン脂質、グリセロ糖脂質、スフィンゴ糖脂質を含み、更にリポソーム膜を安定化する脂質成分としてステロール類やトコフェロール類などを含むリポソームなどが好ましく用いられる。
【0017】
前記のリン脂質としては、天然リン脂質、合成リン脂質など、一般にリン脂質として知られるものが使用できる。リン脂質としては、例えば、(1)ホスファチジルコリン、(2)ホスファチジルエタノールアミン、(3)ホスファチジルグリセロール、(4)ホスファチジルセリン、(5)ホスファチジン酸、および(6)ホスファチジルイノシトールなどのリン脂質が好ましく用いられる。
【0018】
前記(1)のホスファチジルコリンとしては、例えば、卵黄レシチン、大豆レシチン、水添卵黄レシチン、水添大豆レシチン、大豆由来ホスファチジルコリン、大豆由来水添ホスファチジルコリン等の天然系ホスファチジルコリン;炭素数7〜22の飽和あるいは不飽和カルボン酸を構成成分として含むホスファチジルコリン等の合成系が挙げられる。具体例としては、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリンなどが挙げられる。
前記の脂肪酸残基としては、オクタノイル、ノナノイル、デカノイル、ウンデカノイル、ラウロイル、ミリストイル、パルミトイル、オレイル、ステアリル、パリミトレイル、オレイル、リノレイル、リノレニル、アラキドニル等の基が挙げられる。また、グリセリンの1−位、および2−位に結合する脂肪酸残基部分は、同一でも異なっていてもよい。
【0019】
前記(2)のホスファチジルエタノールアミンとしては、例えば、大豆由来ホスファチジルエタノールアミン、大豆由来水添ホスファチジルエタノールアミン等の天然系ホスファチジルエタノールアミン;炭素数7〜22の飽和あるいは不飽和カルボン酸を含むホスファチジルエタノールアミン等の合成系が挙げられる。具体例としては、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミンなどが挙げられる。脂肪酸残基としては、前記の(1)と同様な基が挙げられる。
【0020】
前記(3)のホスファチジルグリセロールとしては、例えば、炭素数7〜22の飽和あるいは不飽和カルボン酸を含むホスファチジルグリセロール等の合成系が挙げられる。具体例としては、ジミリストイルホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、ジオレオイルホスファチジルグリセロールなどが挙げられる。構成脂肪酸残基としては、前記(1)と同様な基が挙げられる。
【0021】
前記(4)のホスファチジルセリンとしては、例えば、大豆由来ホスファチジルセリン、大豆由来水添ホスファチジルセリンなどの天然系;炭素数7〜22の飽和あるいは不飽和カルボン酸を含むホスファチジルセリン等の合成系が挙げられる。具体例としては、ジミリストイルホスファチジルセリン、ジパルミトイルホスファチジルセリン、ジオレオイルホスファチジルセリンなどが挙げられる。構成脂肪酸残基としては、前記(1)と同様な基が挙げられる。
【0022】
前記(5)のホスファチジン酸としては、例えば、炭素数7〜22の飽和あるいは不飽和カルボン酸を含むホスファチジン酸等の合成系が挙げられる。具体例としては、ジミリストイルホスファチジン酸、ジパルミトイルホスファチジン酸、ジオレオイルホスファチジン酸などが挙げられる。構成脂肪酸残基としては、前記(1)と同様な基が挙げられる。
【0023】
前記(6)のホスファチジルイノシトールとしては、例えば、大豆由来ホスファチジルイノシトール、大豆由来水添ホスファチジルイノシトール等の天然系ホスファチジルイノシトールが挙げられ、合成系のホスファチジルイノシトールも使用することができる。
構成脂肪酸残基としては、前記(1)と同様な基が挙げられる。
【0024】
また、本発明に用いるリポソームの膜の構成成分として、グリセロリン脂質、スフィンゴリン脂質、グリセロ糖脂質、スフィンゴ糖脂質などを用いることもできる。
【0025】
本発明において、リポソーム膜を安定化する脂質成分として、ステロール類やトコフェロール類を用いることができる。
前記のステロール類としては、一般にステロール類として知られるものであればよく、例えば、コレステロール、シトステロール、カンペステロール、スチグマステロール、ブラシカステロールなどが挙げられ、入手性などの点から、特に好ましくは、コレステロールが挙げられる。
【0026】
前記のトコフェロール類としては、一般にトコフェロールとして知られるものであればよく、例えば、入手性などの点から、市販のα−トコフェロールが好ましく挙げられる。
さらに、本発明の効果を損なわない範囲において、(例えば免疫応答調節効果やリポソームの安定性の効果)リポソーム膜を構成することのできる、公知のリポソーム膜構成成分を含んでいてもよい。
【0027】
本発明に用いられる原料のリポソーム(抗原あるいはアレルゲンを表面に結合する前のリポソーム)の製造方法は、前記したリポソーム膜の主構成成分及びリポソーム膜を安定化する脂質成分等を用い、適宜配合や加工を行い、これを適当な溶媒中に添加するなど公知の方法が挙げられる。
前記の公知の方法としては、例えば、エクスツルージョン法、ボルテックスミキサー法、超音波法、界面活性剤除去法、逆相蒸発法、エタノール注入法、プレベシクル法、フレンチプレス法、W/O/Wエマルジョン法、アニーリング法、凍結融解法などのリポソーム製造方法が挙げられる。また、本発明においてリポソームの形態は、特に限定されないが、前記のリポソーム製造方法を適宜選択することにより、多重層リポソーム、小さな一枚膜リポソーム、大きな一枚膜リポソームなど、種々の大きさや形態を有するリポソームを製造することができる。本発明においてリポソームの粒径は特に限定されるものではないが、保存安定性などの点から、粒径は20〜600nmが挙げられ、好ましくは50〜300nmである。
【0028】
尚、本発明においては、リポソームの物理化学的安定性を向上させるために、リポソームを形成したとき、リポソームの内水相あるいは外水相に、糖類あるいは多価アルコール類を添加しておいても良い。
リポソームの内水相あるいは外水相に含ませる糖類としては、例えばグルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、イノシトール、リボース、キシロース等の単糖類;サッカロース、ラクトース、セロビオース、トレハロース、マルトース等の二糖類;ラフィノース、メレジトース等の三糖類;シクロデキストリン等のオリゴ糖;デキストリン等の多糖類;キシリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール等の糖アルコールなどが挙げられる。これらの糖類の中では単糖類または二糖類が好ましく、中でもグルコースまたはサッカロースが入手性などの点からより好ましく挙げられる。
【0029】
前記多価アルコール類としては、一般に知られているものであれば特に限定されないが、例えば、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン、ヘプタグリセリン、オクタグリセリン、ノナグリセリン、デカグリセリン、ポリグリセリンなどのグリセリン系化合物;ソルビトール、マンニトールなどの糖アルコール系化合物;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、ヘプタエチレングリコール、オクタエチレングリコール、ノナエチレングリコなどが挙げられる。このうち、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ソルビトール、マンニトール、分子量400〜10,000のポリエチレングリコールが入手性の点から好ましく挙げられる。
リポソームの内水相または外水相に含ませる、糖類あるいは多価アルコール類の濃度は例えば、0.05〜0.5Mが挙げられ、好ましくは、0.15〜0.35Mである。
【0030】
糖類あるいは多価アルコール類をリポソームの水相に含ませる方法は特に限定されず、公知の方法が採用できる。例えば、リポソーム調整時の水性溶媒中に添加する方法、リポソーム調整後に添加する方法が採用できる。
例えば、糖類を内水相あるいは外水相に含ませる方法については、リポソーム調製時に予め糖類を溶解させた溶液を用いる方法、あるいはリポソームに抗原またはアレルゲンを固定化して抗原結合リポソームまたはアレルゲン結合リポソームを調製した後、浸透圧勾配法などを用いて外水相に添加した糖類を内水相にも内包させる方法などを採用することができ、簡便さの点からは、リポソーム調製時に予め糖類を溶解させた溶液を用いる方法が好ましい。多価アルコール類をリポソームの水相に含ませる方法もこれに準じて行うことができ、公知の方法を利用できる。
【0031】
本発明のリポソーム製剤は、抗原またはアレルゲンをリポソームの表面に結合していることが特徴であり、その結合させる方法としては、次の(1)〜(2−2)の方法が挙げられる。
(1)物理的な結合;例えば、イオン結合、疎水性結合によるもの;例えば、片末端に抗原またはアレルゲンを有し、他端にイオン性基または疎水性基を有するものを使用する方法。
(2)化学結合によるもの;例えば
(2−1)原料リポソームと抗原あるいはアレルゲンを2個以上の反応性基を有するスぺーサで化学結合させる方法、
(2−2)原料リポソームの膜成分に、反応性基を有する材料を導入して反応性の表面を有するリポソームを調製し、ついで表面の反応基に抗原あるいはアレルゲンを化学反応させる方法等が挙げられる。
前記の(1)の方法では、原料リポソームと抗原あるいはアレルゲンを混合するだけでよいが、保存条件・保存状態等によりリポソーム表面から、抗原あるいはアレルゲンが外れる可能性があり好ましくない。
前記の(2)の化学結合させる手段としては、例えば、シッフベース結合、アミド結合、チオエーテル結合、エステル結合などの化学結合が挙げられる。
前記の(2−1)原料リポソームと抗原あるいはアレルゲンを2個以上の反応性基を有するスぺーサで化学結合させる方法としては、例えば、シッフベース結合を利用することで可能である。シッフベース結合でリポソームと抗体あるいはアレルゲンを結合する方法としては、アミノ基を表面に有するリポソームを調整し、抗体あるいはアレルゲン蛋白質をリポソームの外水相に添加し、後に、2価の反応性基を有するスペーサーとしてジアルデヒドを加えて、リポソーム表面のアミノ基と抗原あるいはアレルゲン蛋白質のアミノ基をシッフベース基で結合することが出きる。
この結合手順の具体例としては、例えば、次方法が挙げられる。
(2−1−1)アミノ基を表面に有するリポソームを得るために、ホスファチジルエタノールアミンをリポソーム原料脂質中に混合して、アミノ基がリポソーム表面に所定量存在するリポソームを作成する。
(2−1−2)前記リポソームの外水相に、抗原あるいはアレルゲンを添加する。
(2−1−3)次に、2価の反応性基を有するスペーサーとしてグルタルアルデヒドを加えて、所定の時間反応させてリポソームと抗原またはアレルゲンとの間にシッフベース結合を形成する。
(2−1−4)その後、余剰のグルタルアルデヒドの反応性を失活させるため、アミノ基含有水溶性化合物としてグリシンをリポソーム外水相に加えて反応させる。
(2−1−5)ゲルろ過、透析、限外ろ過、遠心分離などの方法により、リポソームに未結合の抗原あるいはアレルゲン、グルタルアルデヒドとグリシン反応物、余剰のグリシンを除去して、抗原あるいはアレルゲン結合リポソームを得る(リポソーム懸濁液)。
【0032】
前記の(2−2)の方法としては、アミド結合、チオエーテル結合、シッフベース結合、エステル結合などを形成することのできる反応性基を有する材料をリポソームに導入するものである。このような反応性基の具体例としては、サクシンイミド基、マレイミド基、アミノ基、イミノ基、カルボン酸基、水酸基、チオール基などの反応性基が挙げられる。
リポソームに導入する反応性基を有する材料の例としては、ホスファチジルエタノールアミンのアミノ基に2価反応性化合物を結合させた2価反応性化合物結合ホスファチジルエタノールアミンが挙げられる。2価反応性化合物はホスファチジルエタノールアミンのアミノ基と反応することができるコハク酸イミド基を片末端に有する化合物が利用できる。
具体的には、2価反応性化合物として、ジチオビス(サクシンイミジルプロピオネート)、エチレングリコ−ル−ビス(サクシンイミジルサクシネート)、ジサクシンイミジルサクシネート、ジサクシンイミジルスベレート、あるいはジサクシンイミジルグルタレートを用いると、反応性基としてサクシンイミド基を有する2価反応性化合物結合ホスファチジルエタノールアミンが得られる。
2価反応性化合物として、N−サクシンイミジル4−(p−マレイミドフェニル)ブチレート、スルホサクシンイミジル−4−(p−マレイミドフェニル)ブチレート、N−サクシンイミジル−4−(p−マレイミドフェニル)アセテート、N−サクシンイミジル−4−(p−マレイミドフェニル)プロピオネート、サクシンイミジル−4−(N−マレイミドエチル)−シクロヘキサン−1−カルボキシレート、スルホサクシンイミジル−4−(N−マレイミドエチル)−シクロヘキサン−1−カルボキシレート、N−(γ−マレイミドブチリルオキシ)サクシンイミド、あるいはN−(ε−マレイミドカプロイルオキシ)サクシンイミドを用いると、反応性基としてマレイミド基を有する2価反応性化合物結合ホスファチジルエタノールアミンが得られる。
【0033】
この結合手順の具体例としては、例えば、次の方法が挙げられる。
(2−2−1)ホスファチジルエタノールアミンとジサクシンイミジルスベレートを公知の方法で片末端のみ反応させて、反応性基としてマレイミド基を末端に有するジサクシンイミジルスベレート結合ホスファチジルエタノールアミンを得る。
(2−2−2)前記ジサクシンイミジルスベレート結合ホスファチジルエタノールアミンと他のリポソーム構成成分と公知の方法で混合して表面に反応性基としてサクシンイミド基を有するリポソームを作成する。
(2−2−3)前記リポソームの外水相に、抗原あるいはアレルゲン蛋白質を加え、抗原あるいはアレルゲン蛋白質のアミノ基と、リポソーム表面のサクシンイミド基を反応させる。
(2−2−4)未反応の抗原あるいはアレルゲン等を、ゲルろ過、透析、限外ろ過、遠心分離などの方法により除去して、抗原あるいはアレルゲン結合リポソームを得る(リポソーム懸濁液)。
【0034】
前記、(2−1)あるいは(2−2)の方法において、原料リポソームと抗原あるいはアレルゲンを化学結合させるための成分のリポソーム原料中の割合は、リポソームの安定性を低下させない範囲、あるいは抗原あるいはアレルゲンの好ましい結合量に応じて割合を選択できる。好ましくは、リポソーム原料脂質全量を100重量部としたとき、0.01〜80重量部の範囲で含有させるのが良い。更に、1〜40重量部の範囲が好ましい。
原料リポソームと抗原あるいはアレルゲンを化学結合する場合、抗原あるいはアレルゲンは蛋白質であり、反応性基として含有されることが多いアミノ基あるいはチオール基を対照とすることが実用上好ましい。アミノ基を対照とする場合は、サクシンイミド基を反応させてシッフベース結合を、チオール基を対照とする場合は、マレイミド基を反応させてチオエーテル結合を得ることができる。
【0035】
本発明の経口用リポソーム製剤は、抗原またはアレルゲンを表面に結合したリポソーム製剤を含んでいて、経口投与して用いることを特徴とする。
該リポソーム製剤を経口投与し、アレルギー治療あるいはアレルギー反応を起こしにくいワクチンとして機能する。
従来、アレルギー治療に用いられる免疫応答を調節する医療行為としては、抗原水溶液を注射する減感作療法が主な手段である。また、感染症を予防するためのワクチンも注射による投与経路が殆どである。
これらの従来の実用化技術に対して、本発明のポソーム製剤は経口投与においてアレルギー治療あるいはワクチンの目的を達成する。
【0036】
次に本発明のリポソーム製剤をアレルギー治療に用いる際の処方や用法について詳しく説明する。
前記のようにゲルろ過、透析、限外ろ過、遠心分離などの方法によって得られた本発明のリポソーム製剤は、前記の抗原あるいはアレルゲンが表面に結合しているリポソーム製剤の懸濁状態であって、そのような液体の場合は、製剤単一あるいは他の食品・飲料と同時に摂取することが可能であるが、より高い効果を得るためには、該製剤を単一でそのまま摂取することが好ましい。
また、前記のリポソーム製剤をさらに分散する溶媒としては、水系溶媒、例えば、蒸留水;生理的食塩水;リン酸緩衝液、炭酸緩衝液、トリス緩衝液、酢酸緩衝液等の緩衝液などが使用できる。このような水系溶媒のpHは5〜10が挙げられ、好ましくは6〜8である。
また、前記のリポソーム懸濁液は、その後、真空乾燥、凍結乾燥等の処理により粉末化することができる。この粉末タイプのリポソーム剤をそのまま経口用と使用することもできる。
【0037】
本発明のリポソーム製剤を投与する時期は、アレルギー症状を呈している時点あるいはアレルギー症状を呈する以前の時点、いずれの時点でも投与を開始することができる。アレルゲンに対する患者・患畜の免疫応答の程度は、生来、接触してきた生活環境(環境因子)あるいは家系(遺伝因子)などによって大きな相違があり、本発明のリポソーム製剤の投与量・投与期間・投与回数は、患者・患畜の各個体に応じて決定することが好ましい。
具体的には、経口経路で本リポソーム製剤を投与し、暫時、血液中のアレルゲンに対するIgE抗体価を追跡測定することで、アレルギー治療の進行程度を把握し、投与量・投与期間を決定することができる。
また、投与頻度は、1、2、3、4、5、6あるいは7日毎に実施することができ、1日当たりの経口投与回数は、医療行為の実施容易性から1〜3回/日とするのが好ましい。非常に過敏なアレルギー因子を有する患者や患畜の場合は、本発明の経口リポソームを継続的に摂取し、アレルギー体質を改善することが好ましい。
【0038】
本発明のリポソーム製剤をワクチンに用いる際に前記のように液体の場合は、製剤単一あるいは他の食品・飲料と同時に経口摂取することが可能であるが、より高い効果を得るためには、該製剤を単一でそのまま経口摂取することが好ましい。
【0039】
本発明のリポソーム製剤を投与する時期は、感染症に罹患する前の時点であって、患畜が母体由来の移行免疫が低下する時期以降が好ましい時期として挙げられる。具体的には、2歳児以降、犬・猫においては3週齢以降、豚・牛においては5週齢以降が好ましい時期として挙げられる。新規な毒性の強い感染病原体が発生した等の際には、必要な時期に、本発明のリポソーム製剤を摂取して、ワクチンの機能を発揮させることができる。
該リポソーム製剤の投与量・投与期間・投与回数は、前記同様の環境因子あるいは遺伝因子が影響し、患者・患畜の各個体に応じて免疫応答の程度が大きく相違するので、各個体に応じて決定することが好ましい。具体的には、本リポソーム製剤を経口投与し、暫時、血液中の抗原に対する対するIgG抗体価を追跡測定することで、感染症予防のためのワクチン療法の進行程度を把握することができる。
また、投与頻度は、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、14日、21日、1ケ月、3ケ月、6ケ月、1年あるいは2年に一度等に実施することができる。一日当たりの経口投与回数は、医療行為の実施容易性から1〜3回/日とするのが好ましい。
抗体価の追跡には非常に労力を要する場合があるので、例えば、本発明のリポソーム製剤を定期的に経口投与し、感染症を予防することも可能である。
【0040】
本発明の抗原またはアレルゲンを表面に結合したリポソームを含むことを特徴とする経口用リポソーム製剤は、アレルギー治療薬あるいは感染症予防のためのワクチンとして用いる場合に、IgE抗体産生の抑制と十分なIgG抗体の産生を増強する特徴を有する。
このような本発明の特徴をより具体化すると、従来該分野の医療行為に用いるられている医薬製剤のいずれに比べても、IgE抗体(2次免疫後の抗体価)/IgG抗体(2次免疫後の抗体価)の比(以下、IgE/IgG比と略す)が著しく低く、更に、IgGの抗体価が充分に高いことである。
即ち、このIgE/IgG比が、例えば抗原単独の水溶液で2次免疫した場合と比べて、タイター(titer)比で0.04倍以下となることが特徴として挙げられ、好ましくは0.025倍以下であり、更に、IgG抗体価は抗原単独の水溶液で2次免疫した場合と同等以上に高いことが好ましい。IgE/IgG比が十分に低く、IgG抗体が充分に高い医薬用製剤を用いることで、アレルギー患者に減感作療法的に用いられるアレルギー治療薬あるいは感染症予防のためのアレルギー反応を起こしにくいワクチンとして好適に使用することができる。
更に、本発明の経口用リポソーム製剤は、従来用いられてきた減感作療法的アレルギー治療薬あるいは感染症予防のためのワクチンが注射行為による投与であるのに対して、経口投与が可能であり、しかも十分な好ましい効果を得ることができる。
【0041】
更に、本発明のリポソーム製剤は、小腸粘膜の免疫細胞に働きかけるものであり、胃での酸性環境下での消化行為の影響を低減するために腸溶性製剤化されることが好ましい。通常、経口投与製剤として経口投与される抗原あるいはアレルゲンは、生体の免疫応答を誘導する強さにおいて、一定でなく、生体の免疫応答を誘導する強さに様々なレベルが認められる。生体の異なる免疫応答誘導能を示す様々な抗原あるいはアレルゲンを有する本発明の経口投与製剤を用いる場合、腸溶性製剤化することによって、より安定的な医療効果を得られるようにでき、より効率的な免疫応答調節機能を有する実用性の点からより好ましい。前記の腸溶化した剤型の形態としては、カプセル化、錠剤化、顆粒化、粉末化が挙げられる。
【0042】
本発明に用いる腸溶性製剤化する方法としては、特に限定されないが、具体的な手段としては、例えば、
(1)表面に抗原あるいはアレルゲンを結合したリポソーム懸濁液を腸溶性カプセルに封入する方法、
(2)リポソーム懸濁液を凍結乾燥あるいは噴霧乾燥して粉末化し錠剤化した後に腸溶性化する方法、
(3)リポソーム懸濁液に腸溶性化剤を加えて凍結乾燥あるいは噴霧乾燥して粉末化したのちに錠剤化する方法、
(4)リポソーム粉末に腸溶性化剤を加えて錠剤化する方法、
などが挙げられる。
【0043】
前記のカプセル化、錠剤化、顆粒化、粉末化して腸溶性製剤化する場合には、製薬領域でカプセルまたは錠剤の腸溶性化剤として知られる材料が使用でき、例えば、シリコン皮膜カプセル、アクリル樹脂を基剤とした密封材(例えば、アクリル酸エステルとのアクリル酸共重合体、メタクリル酸エステルの共重合体、(例えば、BASF武田ビタミン(株)社、商品名:コリコートMAE30DPなど)等の合成高分子;あるいはまたアセトフタル酸セルロースなどのセルロース誘導体等の半合成高分子;トウモロコシ由来のツェインタンパク質等の天然高分子などを用いて、抗原またはアレルゲンを表面に結合したリポソームを、カプセル化、錠剤化、顆粒化、粉末化することができる。
【0044】
前記、粉末化して腸溶性製剤化する場合には、あらかじめ抗原またはアレルゲンを表面に結合したリポソームに糖類を添加するなどして、安定化手段を講じることが好ましく、その上で、リポソーム懸濁液を、凍結乾燥、噴霧乾燥あるいは蒸発乾燥して粉末化を行うのが良い。このようにして粉末化した抗原またはアレルゲンを表面に結合したリポソームを用いて、更にカプセル化、錠剤化、顆粒化することは、自由に行われて良い。
このようにして、腸溶性製剤化した抗原またはアレルゲンを表面に結合したリポソームを得ることができ、このリポソーム製剤は、経口用リポソーム製剤として前記と同様にして用いられる。
【0045】
また、本発明のリポソームが、腸溶性製剤化した錠剤、カプセルあるいは粉末の場合は、製剤単一あるいは他の食品・飲料と同時に摂取することが可能であるが、該製剤を単一でそのまま摂取することが好ましい。更に、小腸での酸性環境化での消化を回避するために、製剤を水あるいはお茶等の飲料とともに摂取することが好ましい。
【0046】
次に、本発明の前記リポソーム製剤を経口経路でヒト以外の動物に投与し、アレルギー治療あるいはアレルギー症状を起こしにくいワクチンとして機能する免疫応答の調節方法について詳しく説明する。
従来、アレルギー治療に用いられる免疫応答を調節する医療行為としては、抗原水溶液を注射する減感作療法が主な手段である。また、感染症を予防するためのワクチンも注射による投与経路が殆どである。
これらの従来の実用化技術に対して、本発明の免疫応答の調整方法は、経口投与においてアレルギー治療あるいはワクチンの目的を達成する。
本発明のリポソーム製剤は、犬、猫、鶏、豚、牛、馬、魚などの対照動物に投与することが可能であり、前記同様の投与方法、投与頻度、投与回数で実施することができる。
具体的な投与方法として、実施容易性から、飲水あるいは飼料に混合して投与することも好ましい方法として挙げられる。
【0047】
なお上記タイター比の値は、血中IgG抗体及びIgE抗体を下記ELISA法で測定した場合の産生比である。参考の為、以下にELISA法について示す。
[ELISA法(IgG抗体検出)]
1)抗原によるプレートのコーティング;
抗原を、1mg/mlの濃度で0.05M炭酸緩衝液(pH9.0)に溶解し、96穴のアッセイプレートに50μl/ウェルずつ分注し、室温に1時間放置する。
2)プレートのブロッキング;
ウシ血清アルブミン(以下、BSAという)を0.2Mリン酸緩衝液(pH7.2:PBS)に1mg/mlの濃度で溶解し、上記1)のプレートに100μl/ウェルずつ分注し、室温に1時間放置する。
3)血清サンプル(1次抗体)の希釈、添加;
1mg/mlの濃度でBSAを含むPBS(以下、PBSAという)中で水酸化アルミニウム−抗原、または本発明の経口用リポソーム製剤で免疫したマウス血清を10倍希釈から始めて2倍段階で11回希釈を行い、上記2)のプレートに50μl/ウェルずつ分注し、室温に1時間放置する。
【0048】
4)ペルオキシダーゼ標識ウサギ抗マウスIgG抗体溶液(2次抗体)の添加;上記3)のプレートをPBSにて3回洗った後、ペルオキシダーゼ標識ウサギ抗マウスIgG抗体のPBSA溶液を50μl/ウェルずつ分注し、室温に1時間放置する。
5)酵素基質溶液の添加;
上記4)のプレートをPBSにて3回洗った後、クエン酸緩衝液に溶解したo−フェニレンジアミンジヒドロクロリド(0.5mg/ml)を100μl/ウェルずつ分注し、室温に15分間放置し、発色させる。発色後、2M硫酸を50μl/ウェルずつ分注して反応を停止する。
6)吸光度計を用いた測定;
ELISA用プレートリーダーを用いて490nmの吸光で測定を行い、発色のエンドポイントを求めて、そのポイントでのサンプル血清の平均希釈倍率をもってELISAタイターとする(ELISAタイターをIgG抗体の定量値として用いる。)。
【0049】
[ELISA法(IgE抗体検出)]
1)ラットモノクローナル抗体マウスIgE抗体によるプレートのコーティング;
マウスIgE抗体に対するラットのモノクローナル抗体を0.05M炭酸緩衝液(pH9.0)で4μg/mlの濃度に調整したものを96穴のアッセイプレートに100μl/ウェルずつ分注し、37℃で3時間放置する。
2)プレートのブロッキング;
ウシ血清アルブミン(BSA)を0.2Mリン酸緩衝液(pH7.2:PBS)に1mg/mlの濃度で溶解し、上記1)のプレートに100μl/ウェルずつ分注し、室温に1時間放置する。
3)血清サンプル(1次抗体)の希釈、添加;
1mg/mlの濃度でBSAを含むPBS(PBSA)中で、水酸化アルミニウム−抗原または本発明の経口用リポソーム製剤で免疫したマウス血清を10倍希釈から始めて2倍段階で11回希釈を行い、上記2)のプレートに50μl/ウェルずつ分注し、室温に1時間放置する。
4)ビオチン化抗原の添加;
上記3)のプレートをPBSにて3回洗った後、ビオチン化した抗原溶液のPBSA溶液(1μg/ml)を100μl/ウェルずつ分注し、室温に1時間放置する。
5)ペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジン溶液の添加;
上記4)のプレートをPBSにて3回洗った後、ペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジン溶液を100μl/ウェルずつ分注し、室温に1時間放置する。
6)酵素基質溶液の添加;
上記5)のプレートをPBSにて3回洗った後、クエン酸緩衝液に溶解したo−フェニレンジアミンジヒドロクロリド(0.5mg/ml)を100μl/ウェルずつ分注し、室温に15分間放置し、発色させる。発色後、2M硫酸を50μl/ウェルずつ分注して反応を停止する。
7)吸光度計を用いた測定;
ELISA用プレートリーダーを用いて490nmの吸光で測定を行い、発色のエンドポイントを求めて、そのポイントでのサンプル血清の平均希釈倍率をもってELISAタイターとする(ELISAタイターをIgEの定量値として用いる。)。
【0050】
【発明の効果】
本発明のリポソーム製剤は、リポソーム表面に抗原またはアレルゲンを結合した経口用リポソーム製剤であり、経口投与した場合には、小腸粘膜の免疫担当細胞に作用して、IgE抗体の産生を抑制してIgG抗体の産生を増大させる免疫応答調節機能を有する。このためアレルギー症状を治療・改善、感染症予防の際に、アレルギー症状の起きにくい優れた効果を有する。
【0051】
【実施例】
次に本発明を実施例に基づいて詳しく説明する。
参考例1(リポソームの作製)
ジパルミトイルホスファチジルコリン0.9175g(1.25mmol)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン0.6490g(0.938mmol)、コレステロール0.8445g(2.19mmol)及びジミリストイルホスファチジルグリセロールNa塩0.4305g(0.625mmol)をナス型フラスコに取り、クロロホルム/メタノール/水(65/25/4、容量比)混合溶剤50mlを入れ、40℃にて溶解した。次にロータリーエバポレーターを使用して減圧下に溶剤を留去し、脂質の薄膜を作った。更に注射用蒸留水を30ml添加し、攪拌して均一のスラリーを得た。このスラリーを液体窒素にて凍結させ、凍結乾燥機にて24時間乾燥させた。
【0052】
次に、別途作製した緩衝液(0.12mM Na2HPO4、0.88mM KH2PO4、0.25M サッカロース、pH6.5)60mlを上記ナス型フラスコ内に入れ、40℃にて攪拌しながら脂質を水和させ、リポソームを得た。次にエクストルーダーを用いてリポソームの粒径を調整した。まず8μmのポリカーボネートフィルターを通過させ、続いて5μm、3μm、1μm、0.65μm、0.4μm及び0.2μmの順にフィルターを通過させた。リポソーム粒子の平均粒径224nm/標準偏差32.5%(動的光散乱法による測定)が得られた。
【0053】
実施例1:(OVA結合リポソームの懸濁液による経口投与免疫試験)
1)経口用リポソーム製剤の調製;
参考例1のリポソーム2mlを試験管に採取し、0.5mlのオボアルブミン(シグマ社製、試薬、以下、OVAという場合がある)溶液(12mg/ml)を加えた。次に2.4%のグルタルアルデヒド溶液0.5mlを滴下したのち、37℃の温浴上で1時間緩やかに混合し、リポソームの外水相側にオボアルブミンを固定化した。次に2Mのグリシン−NaOH緩衝液(pH7.2)を0.5ml加え、溶液を4℃で一晩放置し、未反応のグルタルアルデヒドを失活させた。更にSepharose CL−4B(Pharmacia Biotech社、商標)を充填したカラムにこの溶液を通して、目的物を分画し、表面に抗原を結合したリポソーム懸濁液を得た。前記のリポソーム懸濁液中のリン濃度を測定し(リン脂質テストWako)、リン脂質由来のリン濃度を10mMになるように濃度を緩衝液で希釈調整した。
【0054】
放射化ラベルしたOVAを用いて別途上記と同様の操作を行い、リポソームの脂質濃度10mMの時のOVAの結合量を測定した結果、0.52mg/mlであった。
【0055】
2)抗体産生試験;
BALB/cマウス(メス、8週令、6匹/群)を使用し、ゾンデで胃内にリポソーム懸濁液1ml/日経口投与した。経口投与のスケジュールは、前記の条件で5日間連続投与による一時免疫後、2日間無投与とし、更に5日間の前記と同様な条件で連続投与を行った。
経口投与開始日から2週間後に、OVA溶液(12mg/ml)を0.1ml腹腔投与により2次免疫し、試験開始時から6週後まで、各週に血清を採取し、抗体価(IgG及びIgE)の推移をELISA法で測定した。
【0056】
3)IgG抗体のELISA法による測定;
免疫試験開始から6週目までに採取したマウス血清を用い以下のようにIgG抗体価を測定した。
a)抗原によるプレートのコーティング;
オボアルブミンを、1mg/mlの濃度で0.05M炭酸緩衝液(pH9.0)に溶解し、96穴のアッセイプレートに50μl/ウェルずつ分注し、室温に一時間放置した。
b)プレートのブロッキングウシ血清アルブミン(以下、BSAと略す)を0.2Mリン酸緩衝液(pH7.2:PBSと略す)に1mg/mlの濃度で溶解し、上記a)のプレートに100μl/ウェルずつ分注し、室温に一時間放置した。
c)血清サンプル(1次抗体)の希釈、添加;
1mg/ml濃度でBSAを含むPBS(以下、PBSAという)中で、抗原結合経口用リポソーム製剤で免疫したマウス血清を10倍希釈から始めて2倍段階で11回希釈を行い、上記b)のプレートに50μl/ウェルずつ分注し、室温に一時間放置した。
d)ペルオキシダーゼ標識ウサギ抗マウスIgG抗体溶液(2次抗体)の添加上記c)のプレートをPBSにて3回洗った後、ペルオキシダーゼ標識ウサギ抗マウスIgG抗体のPBSA溶液を50μl/ウェルずつ分注し、室温に一時間放置した。
e)酵素基質溶液の添加;
上記d)のプレートをPBSにて3回洗った後、クエン酸緩衝液に溶解して行い、o−フェニレンジアミンジヒドロクロリド(0.5mg/ml)を100μl/ウェルずつ分注し、室温に15分間放置し、発色させた。発色後、2M硫酸を50μl/ウェルずつ分注して反応を停止した。
f)吸光度計を用いた測定;
ELISA用プレートリーダーを用いて490nmの吸光で測定を行い、発色のエンドポイントを求めて、そのポイントでのサンプル血清の希釈倍率をもってELISAタイターとした(ELISAタイターをIgG抗体の定量値として用いる)。
【0057】
4)IgE抗体のELISA法による測定;
免疫試験開始から6週目までに採取したマウス血清を用い以下のようにIgE抗体価を測定した。
a)ラットモノクローナル抗体マウスIgE抗体によるプレートのコーティング;
マウスIgE抗体に対するラットのモノクローナル抗体を0.05M炭酸緩衝液(pH9.0)で4μg/mlの濃度に調整したものを96穴のアッセイプレートに100μl/ウェルずつ分注し、37℃で3時間放置する。
b)プレートのブロッキング;
ウシ血清アルブミン(BSA)を0.2Mリン酸緩衝液(pH7.2:PBS)に1mg/mlの濃度で溶解し、上記a)のプレートに100μl/ウェルずつ分注し、室温に1時間放置する。
c)血清サンプル(1次抗体)の希釈、添加;
1mg/mlの濃度でBSAを含むPBS(PBSA)中で、水酸化アルミニウム−抗原または本発明の経口用リポソーム製剤で免疫したマウス血清を10倍希釈から始めて2倍段階で11回希釈を行い、上記b)のプレートに50μl/ウェルずつ分注し、室温に1時間放置する。
【0058】
d)ビオチン化抗原の添加;
上記c)のプレートをPBSにて3回洗った後、ビオチン化した抗原溶液のPBSA溶液(1μg/ml)を100μl/ウェルずつ分注し、室温に1時間放置する。
e)ペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジン溶液の添加;
上記d)のプレートをPBSにて3回洗った後、ペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジン溶液を100μl/ウェルずつ分注し、室温に1時間放置する。
f)酵素基質溶液の添加上記5)のプレートをPBSにて3回洗った後、クエン酸緩衝液に溶解したo−フェニレンジアミンジヒドロクロリド(0.5mg/ml)を100μl/ウェルずつ分注し、室温に15分間放置し、発色させる。発色後、2M硫酸を50μl/ウェルずつ分注して反応を停止する。
g)吸光度計を用いた測定;
ELISA用プレートリーダーを用いて490nmの吸光で測定を行い、発色のエンドポイントを求めて、そのポイントでのサンプル血清の平均希釈倍率をもってELISAタイターとする(ELISAタイターをIgE抗体の定量値として用いる)。
【0059】
5)抗体価の結果;
IgG及びIgEの抗体価の推移、及び抗体価から算出した。IgE/IgG比を、表1及び図1〜3に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
実施例2:(OVA結合リポソーム含有腸溶性製剤による経口投与免疫試験)
1)経口用リポソーム製剤の調製;
実施例1−1)と同様に表面に抗原を結合したリポソーム懸濁液し、同様に緩衝液でリン濃度を10mMに調整した。
【0062】
2)経口用リポソーム錠剤の調整;
前項で得たOVA結合リポソーム懸濁液100mlを、500ml容ナスフラスコに移して表面積が大きくなるように穏やかに振とうしながら液体窒素で急速凍結した。このナスフラスコを凍結乾燥機(バーティス社製)に取り付け、36時間凍結乾燥し、OVA結合リポソーム粉末を得た。
次に、このOVA結合リポソーム粉末を、単発型打錠機(菊水製作所社製、NO−2B)を用い、錠剤サイズ:3mmφ、打錠圧:200kg/cm2の条件で錠剤型に打錠した。
この錠剤は、一錠剤当たりリン脂質由来のリン原子を10μmol含有し、リン濃度を10mMに調整したOVA結合リポソーム懸濁液1mlに相当する。
【0063】
3)腸溶性経口用リポソーム製剤の調整;
前項で得た錠剤に、トウモロコシ由来のツェイン蛋白質(昭和産業社製)の1%エタノール溶液を市販の噴霧器を用いて一回粉霧し、直ちに室温の真空乾燥機内においてエタノールを乾燥した。
ツェイン噴霧・乾燥を5回繰り返し、錠剤の全面をツェインでコーティングし、腸溶性経口用リポソーム製剤を得た。
【0064】
4)抗体産生試験;
実施例1の経口用リポソーム製剤に代えて前項で調整した腸溶性経口用リポソーム錠剤を用い、各経口投与日に錠剤一個をマウスの口腔内に入れ、ゾンデの先端で胃内まで挿入した。その他の手順は実施例1と同様に抗体産生試験を実施し、開始時から6週後まで、各週に血清を採取し、抗体価(IgG及びIgE)の推移をELISA法で測定した。
【0065】
5)IgG抗体のELISA法による測定;
前項で得られた免疫試験開始から6週目までに採取したマウス血清を用い、実施例1−5)と同様な手順でIgG抗体価を測定した。
6)IgE抗体のELISA法による測定;
前項で得られた免疫試験開始から6週目までに採取したマウス血清を用い、実施例1−7)と同様な手順でIgE抗体価を測定した。
7)抗体価の結果;
IgG及びIgEの抗体価の推移、及び抗体価から算出したIgE/IgG比を、表1及び図1〜3に示す。
【0066】
比較例1:(OVA蛋白溶液の経口投与免疫試験)
1)経口用OVA溶液の調整
別途作製した緩衝液(0.12mM Na2HPO4、0.88mM KH2PO4、0.25M サッカロース、pH6.5)に、0.52mg/mlとなるようにOVAを溶解し、経口用OVA溶液を調整した。
2)抗体産生試験;
実施例1の経口用リポソーム製剤に代えて前項で調整した経口用OVA溶液を用い、実施例1と同様に抗体産生試験を実施し、開始時から6週後まで、各週に血清を採取し、抗体価(IgG及びIgE)の推移をELISA法で測定した。
【0067】
3)IgG抗体のELISA法による測定;
前項で得られた免疫試験開始から6週目までに採取したマウス血清を用い、実施例1−3)と同様な手順でIgG抗体価を測定した。
4)IgE抗体のELISA法による測定;
前項で得られた免疫試験開始から6週目までに採取したマウス血清を用い、実施例1−4)と同様な手順でIgE抗体価を測定した。
5)抗体価の結果;
IgG及びIgEの抗体価の推移、及び抗体価から算出したIgE/IgG比を、表1〜及び図1〜3に示す。
【0068】
比較例2:(緩衝液による経口投与免疫試験)
1)経口用緩衝液の調整;
別途作製した緩衝液(0.12mM Na2HPO4、0.88mM KH2PO4、0.25M サッカロース、pH6.5)を経口用緩衝液とした。
【0069】
2)抗体産生試験;
実施例1の経口用リポソーム製剤に代えて前項で調整した緩衝液を用い、実施例1と同様に抗体産生試験を実施し、開始時から6週後まで、各週に血清を採取し、抗体価(IgG及びIgE)の推移をELISA法で測定した。
3)IgG抗体のELISA法による測定;
前項で得られた免疫試験開始から6週目までに採取したマウス血清を用い、実施例1−3)と同様な手順でIgG抗体価を測定した。
4)IgE抗体のELISA法による測定;
前項で得られた免疫試験開始から6週目までに採取したマウス血清を用い、実施例1−4)と同様な手順でIgE抗体価を測定した。
5)抗体価の結果;
IgG及びIgEの抗体価の推移、及び抗体価から算出したIgE/IgG比を、表1及び図1〜3に示す。
【0070】
実施例1、実施例2、比較例1及び比較例2の免疫試験結果、表1及び図1〜3に示した。表1中、アレルギー治療あるいはワクチンに用いる際の免疫応答の効果として、疫以降(3週目以降)のIgG抗体価、IgE抗体価及びIgE/IgGの平均を記した。
なお評価は次のとおりである。
1)IgG抗体については、20以上を○、100以上を◎、それ以外を×として、
評価記号;評価基準
◎;100以上〜、
○;20〜100未満、
×;〜20未満、
2)IgE/IgGついては、
評価記号;評価基準
◎; 〜0.025以下、
○;0.025を越える〜0.040以下、
×;0.040を越える〜、
本発明の実施例は、IgG抗体の産生を十分に増強し、IgE/IgG比からIgE抗体の産生を抑制しており、これらの性能を両方同時に満足していることが判った。
この結果から、経口投与により、このような免疫応答調節機能を有する経口用リポソーム製剤は、アレルギー症状の起きにくいワクチンまたはアレルギー治療に用いられる経口用リポソーム製剤として好適であることが判る。
【図面の簡単な説明】
【図1】IgG抗体価の推移を示す図である。
【図2】IgE抗体価の推移を示す図である。
【図3】IgE/IgG比の推移を示す図である。
Claims (5)
- ワクチンまたはアレルギー治療に用いる経口投与用リポソーム製剤であって、該リポソーム製剤は抗原またはアレルゲンがリポソームの表面に結合されていることを特徴とするリポソーム製剤。
- 請求項1に記載のリポソーム製剤を、更に腸溶性材料を用いて、腸溶性製剤化してなる腸溶性リポソーム製剤。
- アレルゲンが卵蛋白アルブミン(OVA)であり、OVA結合リポソーム製剤を卵蛋白アルブミンアレルギーの治療に用いる請求項1または2に記載のリポソーム製剤。
- IgG抗体の産生を増強し、IgE抗体の産生を抑制する請求項1〜3のいずれか1項に記載のリポソーム製剤。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載のリポソーム製剤を、ヒト以外の動物に経口投与し、免疫応答を調節する方法。
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