JP4858775B2 - リポソームを鋳型とする中空ナノ粒子の作製方法 - Google Patents

リポソームを鋳型とする中空ナノ粒子の作製方法 Download PDF

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Description

本発明は、リポソーム等の脂質膜の表面に少なくとも1つのポリマーを含む化合物を積層させることによりナノサイズの中空粒子を作製する方法および該方法により作製された少なくとも1つのポリマーを含む化合物が表面に積層されたリポソームからなるナノサイズの中空粒子に関する。
近年、新時代の科学技術のドライビングフォースとしてナノテクノロジーが注目されている。
ナノテクノロジーとは、ナノメートルオーダーでの極微細な場において、原子や分子などの構造制御によって超微細・高機能・低エネルギー消費の新材料、デバイス、およびシステムを創造することである。一般的にナノメートルオーダー以下の領域では約100種類の原子があるだけであり、個性に乏しい世界であるといえる。それに対してナノメートルオーダーの領域では、原子が配列され分子を形成し様々な特性を持つことが可能となる。例として炭素からなる多種の物質があげられる。タイヤモンドやグラファイト・カーボンナノチューブ・フラーレンはすべて炭素が構成要素であるにもかかわらず、それぞれの特性は大きく異なる。炭素原子単体ではない特性が、炭素原子同士の空間的な組み合わさり方により、ナノメートル領域では様々は特性を示していると言うことがわかる。また生体内における例としてDNAが挙げられる。DNAも数種の原子が配列したものであるのにも関わらず、生体内で遺伝情報をつかさどる大きな役割を担っている。DNAにおける塩基配列が少し異なるだけで生体の個性が大きく異なってくる。つまりナノメートルオーダーでのDNAの小さな変化が、巨視的な領域では大きな変化をもたらすということになる。このように、様々な個体を形成する上での根本的情報がナノメートル領域に蓄積されているといえる。ナノテクノロジーとはこのナノメートル領域での分子の制御を試み、様々な個体における現象の解明・新規物質の開発などに広く用いられる技術である。
現在多岐にわたりナノテクノロジーの考え方が利用されているが、その中の一つとして、生命科学におけるナノテクノロジーがある。生体内は非常に小さなものから大きなサイズのものへ組み上げていく「ボトムアップ」と呼ばれる方式をとり創造されている場合が多い。例えば生体内においてタンパク質がDNAの塩基配列によって制御されて、個体を形成していることはまさにボトムアップ方式による構築といってよいであろう。現在このようなナノテクノロジーにおけるボトムアップの考え方を利用しナノサイズの微粒子などを組織化することで、生体内の自己組織化挙動の解明や新規バイオマテリアルの開発等の研究が行われている。
このような研究の材料としてナノサイズの粒子を適当な高分子材料で被覆した粒子の開発が試みられている。
例えば、非荷電中空ポリマーカプセルを荷電を有する界面活性剤で被覆し、さらにその上に荷電を有する高分子物質を積層させることが報告されている(特許文献1参照)。また、金属粒子上にポリマーを積層させ、積層させたポリマーのみを製造する技術も報告されている(非特許文献1参照)。また、荷電を有するシリカ粒子等の表面に適当な界面活性剤やポリマーを結合させたという報告がある(非特許文献2参照)。
しかしながら、これらの従来の検討においては、ナノサイズ粒子は金属粒子やシリカ粒子等の硬い粒子であったり、また粒子に結合させるポリマー等も1層のみであり、その用途もイムノアッセイへの使用等に限られており、多くの用途に適するものではなかった。
ナノサイズの粒子として、薬物の輸送担体や放出担体として、リポソームが使用されている。しかしながら、リポソームをこのような用途に用いようとして、リポソーム中に薬剤を封入する場合、リポソーム自体の強度が低いため破裂してしまうという問題があった。
静電的相互作用によりポリマーを一層だけ吸着させた例がある(非特許文献3参照)。これはリポソームに部分的にポリマーが吸着していることにより、分散安定性が向上するために行われたものであり、中空粒子を作製することを意図して行ったものではない。さらに、一層のポリマーではそもそも安定な中空層を形成させることはできない。
特表2003−519565号公報 Antipov.A.A.et al.,Colloids and Surfaces A:Physicochem.Eng.Aspects 224(2003)175−183 Caruso F./Adv.Mater,2001,13,No.1,January 5 Ge L.et al.,Colloids and Surfaces A,Physicochem.Eng.Aspects 221(2003)49−53
本発明は、表面に少なくとも1つのポリマーを含む化合物が2層以上積層したリポソーム、その製造方法およびその利用の提供を目的とする。
本発明者らは、ボトムアップ方式による、微粒子の新規作製方法の開発、およびそれら微粒子から構造体を組み上げることによる新規機能性マテリアルの構築を試みた。まず、ナノサイズの微粒子に着目し、リポソームをテンプレートとしてサイズの均一な生体由来成分からなる中空ナノ粒子作製を行った。リポソームは、脂質組成やナノメートルサイズの制御が容易であり、表面修飾なども可能であることから、生体膜モデルとして脂質の物性研究や透過性の研究・膜の構造と機能の研究材料・輸送系タンパク質や膜を介して情報伝達するタンパク質の構造と機能の研究材料・糖脂質やコレステロールと結合して作用を発揮する毒素や薬物の作用機序の解明などに用いられてきた。また、近年ではリポソームの内部に封入できる物質が、酵素やプラスミドなどの高分子、また疎水性や両親媒性物質なども安定に脂質二重膜中で保持されることが明らかとなった。このことからリポソームのキャリアとしての有効性が注目を浴びている。このような特性を活かしリポソームは医学分野において、基礎医学・診断・治療・予防などの医学分野で研究がなされている。本発明者らは、Dimyristoyl phosphatidylcholine(DMPC)とDilauroyl phosphatidylacid(DLPA)を構成脂質としてリポソームを作製した。DMPCは中性条件で負電荷と正電荷を同時に一箇所ずつ有し、全体として中性である。一方DLPAは正電荷を持たないために中性条件下で負電荷を示す。これら二つの脂質からなるリポソームは全体として負電荷を示す。リポソームに電荷を付与することは、静電的反発によりリポソーム同士の凝集を防ぐことができるとともに、リポソーム表面上に静電相互作用を利用した吸着に利用できる吸着サイトを作り出すことを可能とする。
さらに、本発明者らはこのような負に荷電しているリポソーム表面に異なる電荷を持つ物質をLayer−by−Layer吸着させることを試みた。Layer−by−Layer(交互吸着法)とは水溶性高分子鎖が有する多くの電荷に着目し、それらと反対の電荷を有する高分子と静電的な相互作用を利用することで、層を逐次的に積層させる技術である。電荷を持ったテンプレートと高分子電解質とが系内に存在した場合、高分子電解質はそれぞれ固有の臨界濃度を越えたとき、協奏的にテンプレートへ吸着する。この際テンプレートの電荷量以上に高分子電解質が過剩に吸着するために表面電荷の逆転が起こる。
このように、リポソーム表面に物質を吸着させることにより、リポソーム自体の強度を高めることができた。
また、もう一つの特徴として、吸着質として合成高分子だけでなくタンパク質や核酸などの生体高分子にも適用できるという点にある。生体高分子を用いることで、生体適合性を持った薄膜や粒子などを作製することが可能となる。特にリポソーム表面の積層膜中に刺激応答性を付与することにより、放出制御等種々の用途に用いることができる。生体適合性のあるマテリアルを作製するために本発明者らは、吸着質としてポリペプチドを選択し、リポソームとポリペプチドからなるナノ粒子の作製を行った。
本発明の粒子は、テンプレートがリポソームであるために作製段階でのサイズの制御が容易である。また、種々の物質を内封することが可能であるため、キャリアとしての応用も期待できる。表層を形作る物質間の相互作用は静電相互作用以外にも他の分子間力・バイオアフィニティ・共有結合などによっても構築可能である。吸着質のポリマーとしてポリペプチドだけでなく多糖やDNAなどを用いることもできる。本研究のように天然由来成分からなる中空ナノ粒子を作製し、これらを組織化して構造体を構築していくことで、生体適合性に優れたバイオマテリアルの創製にもつながる。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1] 表面に少なくとも1つのポリマーを含む化合物が2層以上積層されたリポソーム、
[2] 化合物が生体適合性ポリマーである[1]のリポソーム、
[3] 化合物が生体分解性ポリマーである[1]のリポソーム、
[4] 化合物がタンパク質、ポリアミノ酸、多糖類および核酸からなる群から選択される少なくとも一つである[1]から[3]のいずれかのリポソーム、
[5] 正または負に荷電したリポソームに、負または正に荷電した化合物を交互に静電相互作用により積層させたことを特徴とする[1]から[4]のいずれかのリポソーム、
[6] リポソームが負に荷電したリポソームであって、リポソームの構成脂質として、フォスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール類、ホスファチジルセリン類およびホスファチジルイノシトール類からなる群から選択される脂質の少なくとも1種類を含む、[5]のリポソーム、
[7] リポソームの構成脂質が、ジラウロイルフォスファチジン酸(DLPE)である[6]のリポソーム、
[8] 負に荷電した化合物がポリ−L−リシン、ヒアルロン酸および核酸からなる群から選択され、正に荷電した化合物がポリ−L−アルギニン酸、キトサンからなる群から選択される[5]から[7]のいずれかのリポソーム、
[9] 反応性の官能基を有するリポソームに、化学結合を介して少なくとも1つのポリマーを含む化合物を交互に積層させたことを特徴とする[1]から[4]のいずれかのリポソーム、
[10] 分子間力がリポソームと化合物間または化合物と化合物間に働くことを利用して化合物を交互に積層させたことを特徴とする[1]から[4]のいずれかのリポソーム、
[11] 分子間力が核酸の相補的な水素結合によるものである[10]のリポソーム、
[12] リポソーム中に薬剤、蛍光物質、生理活性物質、および色素からなる群から選択される物質が封入された、[1]から[11]のいずれかのリポソーム、
[13] 生理活性物質がタンパク質またはDNAである、[12]のリポソーム、
[14] リポソーム表面に積層された少なくとも1つのポリマーを含む化合物中に半導体ナノ粒子が含まれている[1]から[13]のいずれかのリポソーム、
[15] 正または負に荷電したリポソームを調製し、該リポソーム表面に負または正に荷電した化合物を静電相互作用により交互に結合させることを含む、表面にポリマーが2層以上積層されたリポソームを製造する方法、
[16] 化合物が生体適合性ポリマーである[15]の表面に化合物が2層以上積層されたリポソームを製造する方法、
[17] 化合物がタンパク質、ポリアミノ酸、多糖類および核酸からなる群から選択される少なくとも一つである[15]または[16]の表面に少なくとも1つのポリマーを含む化合物が2層以上積層されたリポソームを製造する方法、
[18] リポソームが負に荷電したリポソームであって、リポソームの構成脂質として、フォスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール類、ホスファチジルセリン類およびホスファチジルイノシトール類からなる群から選択される脂質の少なくとも1種類を含む、[15]から[17]のいずれかの表面に少なくとも1つのポリマーを含む化合物が2層以上積層されたリポソームを製造する方法、
[19] リポソームの構成脂質が、ジラウロイルフォスファチジン酸(DLPE)である[15]から[18]のいずれかの表面に少なくとも1つのポリマーを含む化合物が2層以上積層されたリポソームを製造する方法、
[20] 負に荷電した化合物がポリ−L−リシン、ヒアルロン酸および核酸からなる群から選択され、正に荷電した化合物がポリ−L−アルギニン酸、キトサンからなる群から選択される[15]から[19]のいずれかの表面に少なくとも1つのポリマーを含む化合物が2層以上積層されたリポソームを製造する方法、
[21] 架橋性物質を用いて化合物からなる積層を化学的に架橋したリポソーム、
[22] [1]から[14]のいずれかのリポソームを表面の化合物の架橋により集合させた固体の架橋型リポソーム、ならびに
[23] シート状またはチューブ状の形状を有する[22]の固体の架橋型リポソーム。
本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2004−1136350号の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
図1は、リポソームの調製方法を示す図である。
図2は、脂質の流動性を示す図である。右はT>Tcの脂質結晶相を、左はT<Tc(ゲル相)を、中央はT=Tcを示す。
図3は、T以上におけるリポソーム中の脂質分子の運動性を示す図である。図中、(a)は側方拡散を、(b)は異方性軸回転運動を、(c)はフリップフロップを示す。
図4は、リン脂質の濃度の検量線を示す図である。
図5は、リポソームの相転移温度を示す図である。(a)はDLPAリポソームを、(b)はDMPC/DLPA(=1/1 by mol)リポソームを、(c)はDMPCリポソームを示す。
図6は、リポソームのFE−TEM観察像を示す写真である。
図7は、リポソームへのポリペプチドの吸着の様子を示す図である。
図8は、CBQACとアミンの反応様式を示す図である。
図9は、リポソームとポリペプチドの複合体とポリペプチドの超遠心による分離を示す図である。
図10は、円二色測定の原理を示す図である。
図11は、CBQACタンパク質アッセイによるPlysの検量線を示す図である。
図12は、DLPA(上)およびDMPC(下)の構造を示す図である。
図13は、リポソーム上のPlysの吸着等温線を示す図である。
図14は、遠心後のリポソームとポリ−L−リシン複合体のSEMを示す写真である。
図15は、ポリ−L−リシン量が異なる場合のリポソームとポリ−L−リシン複合体同士の相互作用を示す図である。(a)は5〜20ppm、(b)は50〜100ppm、(c)は200ppm〜2000ppmである。
図16は、遠心後のリポソームとポリ−L−リシン複合体を示す写真である。(a)は、HPTSを含むDLPA/DMPC=0.5/0.5リポソームを使用した場合であり、(b)は、DLPA/DMPC=0.5/0.5リポソームを使用した場合である。
図17は、各温度およびpHでのポリ−L−リシンの構造を示す図である。
図18は、ポリ−L−リシンのCDスペクトルを示す図である。▲1▼は、ランダムコイル(pH7.4,20℃)、▲2▼はα−ヘリックス(pH11.4,20℃)、▲3▼は、β−構造(pH11.4,65℃→20℃)である。
図19は、リポソーム存在下でのポリ−L−リシンのCDスペクトルを示す図である(ポリ−L−リシン濃度は50ppm)。
図20は、195〜200nm範囲での平均モル楕円率を示す図である。
図21は、リポソーム存在下でのポリ−L−リシンのCDスペクトルを示す図である(ポリ−L−リシン濃度は400ppm)。
図22は、195〜200nm範囲での平均モル楕円率を示す図である。
図23は、DLPA/DMPCリポソーム表面で誘導されるβ構造を示す図である。
図24は、リポソームとポリ−L−リシンの複合体のFE−TEM観察像を示す写真である。
図25は、リポソームとポリ−L−リシンとポリ−アスパラギン酸の複合体のFE−TEM観察像を示す写真である。
図26は、それぞれのポリペプチドを積層させたときのリポソームのζポテンシャルを示す図である。pH7.4.25℃およびDLPA/DMPC=0.5/0.5の場合である。
図27は、リポソームとポリ−L−リシンの複合体およびリポソームとポリ−L−リシンとポリ−アスパラギン酸の複合体の混合物のFE−TEM観察像を示す写真である。図中のスケールバーは、(a)が0.2μm、(b)が100nmである。
図28は、リポソームおよびリポソームとポリ−L−リシンの複合体の混合物のFE−TEM観察像を示す図である。図中のスケールバーは、0.1μmである。
図29は、リポソームにポリ−L−リシン、ポリ−アスパラギン酸およびポリ−L−リシンの順で積層させたもののFE−TEM観察像を示す写真である。図中のスケールバーは、(a)が100nmであり、(b)が20nmである。
図30は、リポソームにポリ−L−リシン、ポリ−アスパラギン酸、ポリ−L−リシンおよびポリ−アスパラギン酸の順で積層させたもののFE−TEM観察像を示す写真である。図中のスケールバーは、(a)が100nmであり、(b)が20nmである。
図31は、それぞれのポリペプチドを積層させたときのリポソームのζポテンシャルを示す図である。
図32は、半導体ナノ粒子(ナノ粒子蛍光体)を含む表面にポリマーが2層以上積層されたリポソームを示す図である。
図33は、リポソーム上のポリアリルアミンの吸着等温線を示す図である。
本発明の少なくとも1つのポリマーを含む化合物が表面に積層されたリポソームは、リポソームの表面に少なくとも1つのポリマーを含む化合物が2層以上積層されたリポソームである。
本発明において、「リポソーム」とは、膜状に集合した脂質層および内部の水層から構成される膜状の構造物が構成する閉鎖小胞を意味し、ベシクル(vesicle)ともいう。また、本発明において、正に荷電した粒子または正に荷電したポリマーとは、生理的pH、すなわちpH6.5から7.5付近の水性媒体中において負荷電よりも多くの正荷電を有する粒子またはポリマーをいい、負に荷電した粒子または負に荷電したポリマーとは、生理的pH、すなわちpH6.5から7.5付近の水性媒体中において正荷電よりも多くの負荷電を有する粒子またはポリマーをいう。また、ポリマーとは、分子内の主鎖が共有結合で結合しており、分子量が比較的大きい化合物、例えば分子量1万程度以上の化合物をいい、1種または数種の構造単位が繰り返し結合、すなわち重合した重合体を含む。本発明の少なくとも1つのポリマーを含む化合物が2層以上積層されたリポソームにおいて、リポソームに積層される化合物に少なくとも1つのポリマーが含まれ、他に低分子化合物、有機または無機結晶体、チタン化合物、磁性体粒子、蛍光性ナノ粒子等の無機微粒子が積層されていてもよい。また、積層される化合物の総てがポリマーであってもよい。例えば、n層(nは2以上の自然数)からなる少なくとも1つのポリマーを含む化合物が積層されたリポソームにおいて、n層のうちのポリマーの層の数は1〜nであり、他はポリマー以外の化合物の層であってもよい。また、n層のポリマーの層が、内側から数えて何番目の層に存在していてもよい。以下、積層される化合物が総てポリマーの場合について説明するが、積層される化合物の総てがポリマーである必要はなく、低分子化合物等を含んでいてもよい。すなわち、以下の説明において、「ポリマー」という語を「少なくとも1つのポリマーを含む化合物」と置き換えることもできるし、「ポリマー以外の化合物」と置き換えることもできる。
本発明のポリマーが表面に積層されたリポソームにおいて、第1層目のポリマーはリポソーム表面と相互作用し結合し、第2層目のポリマーは第1層目のポリマーと相互作用し結合する。さらに、ポリマーを最外層のポリマーと相互作用させることによりポリマーは次々に層状に積層する。リポソームとポリマーとの相互作用は静電相互作用やファンデルワールス引力等の分子間相互作用でも、バイオアフィニティーでも共有結合でもよい。例えば、DNA二重螺旋にみられる相補的な水素結合等が挙げられる。好適には、静電相互作用によりポリマーが積層する。静電相互作用により積層する場合、リポソーム表面が負または正に荷電している必要がある。リポソーム表面が負に荷電している場合には、第1層のポリマーは正に荷電しているものを用い、第2層のポリマーは負に荷電しているものを用いる。逆にリポソーム表面が正に荷電している場合には、第1層のポリマーは負に荷電しているものを用い、第2層のポリマーは正に荷電しているものを用いる。このように、正に荷電しているポリマーおよび負に荷電しているポリマーを交互に積層していけばよい。共有結合により積層する場合は、リポソームとポリマーおよびポリマーとポリマーを適当な官能基等を利用して共有結合させればよい。このような官能基として、例えばSH基、NH基、リン酸基、カルボキシル基、チオ基、チオカルボン酸基、ジスルフィド基、スルホ基、カルボニル基、アシル基、ヒドロキシル基、エーテル基、アミド基、アミノ基、ニトロ基、イミノ基、シアノ基、ビニル基、フェニル基、ハロゲン基、アミジノ基、イミダゾール基、グアニジノ基等が挙げられる。また、適当な架橋性物質を用いてポリマー鎖からなる積層を化学的に架橋してもよい。例えば、リンカー試薬等を介して共有結合させてもよい。共有結合による結合は公知の方法で行うことができる。
本発明のリポソームを構成する脂質としては、例えば、フォスファチジルコリン類、フォスファチジルエタノールアミン類、フォスファチジン酸類、ホスファチジルセリン類、ホスファチジルイノシトール類、長鎖アルキルリン酸塩類、ガングリオシド類、糖脂質類、フォスファチジルグリセロール類、コレステロール類等が挙げられ、フォスファチジルコリン類としては、ジミリストイルフォスファチジルコリン(DMPC)、ジパルミトイルフォスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルフォスファチジルコリン等が、また、フォスファチジルエタノールアミン類としては、ジオレイルフォスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジミリストイルフォスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルフォスファチジルエタノールアミン、ジステアロイルフォスファチジルエタノールアミン(DSPE)等が、フォスファチジン酸類もしくは長鎖アルキルリン酸塩類としては、ジラウロイルフォスファチジン酸(DLPE)、ジミリストイルフォスファチジン酸、ジパルミトイルフォスファチジン酸、ジステアロイルフォスファチジン酸、ジセチルリン酸等が、ホスファチジルセリン類としては、ジパルミトイルホスファチジルセリン等が、ホスファチジルイノシトール類としては、ジパルミトイルホスファチジルイノシトール等が、ガングリオシド類としては、ガングリオシドGM1、ガングリオシドGD1a、ガングリオシドGT1b等が、糖脂質類としては、ガラクトシルセラミド、グルコシルセラミド、ラクトシルセラミド、フォスファチド、グロボシド等が、フォスファチジルグリセロール類としては、ジミリストイルフォスファチジルグリセロール、ジパルミトイルフォスファチジルグリセロール、ジステアロイルフォスファチジルグリセロール等が好ましい。このうち、フォスファチジン酸類もしくは長鎖アルキルリン酸塩類、ガングリオシド類もしくは糖脂質類、コレステロール類はリポソームの安定性を上昇させる効果を有するので、構成脂質として添加するのが望ましい。また、一本鎖の脂肪酸、アルコール等を混ぜてもよい。さらに、上記の脂質ばかりではなく、親水部と疎水部からなる両親媒性化合物を含んでいてもよい。この場合、親水部としてはカチオン性、アニオン性、非イオン性、双性イオン性のものいずれも用いることができ、疎水部としては2本鎖アルキル等を用いることができる。これらの脂質や両親媒性化合物の複数を含んでもよいが、脂質の脂肪酸の長さ(脂肪酸の炭素骨格の炭素の数)または両親媒性化合物の疎水部の長さを同程度にすることが望ましい。
第1層のポリマーをリポソームに静電相互作用に結合させる場合は、リポソーム表面は負に荷電している必要がある。リポソーム表面が全体として正または負に荷電していればよく、上述のリポソームを構成する脂質等を適当な比率で混合し、全体として表面が正または負に荷電するようにすればよい。
リポソーム表面を負に荷電させるためには、リポソームの構成脂質として負に荷電した脂質を多く用いればよい。負に荷電した脂質として、ジラウロイルフォスファチジン酸等のフォスファチジン酸、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール等のホスファチジルグリセロール類、ジパルミトイルホスファチジルセリン等のホスファチジルセリン類、ジパルミトイルホスファチジルイノシトール等のホスファチジルイノシトール類などが挙げられる。また、リポソーム表面を正に荷電させるためには、リポソームを構成する脂質として、正に荷電した脂質を多く用いればよい。正に荷電した脂質として、ステアリルアミンのようなアルキルアミン類、3−β−[N−(N′、N′−ジメチルアミノエタン)カルバモイル]コレステロールのようなコレステロールのアミン誘導体、N−α−トリメチルアンモニオアセチルジドデシル−D−グルタメートクロライドのようなN−α−トリメチルアンモニオアセチルジ(炭素数10〜20のアルキルまたはアルケニル)−D−グルタメートクロライド類、N−[1−(2、3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N、N、N−トリメチルアンモニウムクロライドのようなN−[1−(2、3−ジ(炭素数10〜20のアルキルまたはアルケニル)オキシ)プロピル]−N、N、N−トリメチルアンモニウムクロライド類などが挙げられる。
また、リポソームの構成脂質として用いるコレステロールまたはその誘導体に荷電を有する基を結合させたものを用いることもできる。例えば、カルボキシル基を導入したCHMES(Cholesteryl hemisuccinate)を用いることができる。
また、本発明でリポソームは種々の用途に用いるため、ある程度の強度を有している必要がある。従って、リポソームが必要な強度を有するようにリポソームを構成する脂質を選択する必要がある。例えば、コレステロールまたはその誘導体の量を変えることにより強度を変えることができる。
リポソームの荷電状態および相転移温度は、リポソームを構成する脂質の組成を変えることにより適宜選択することができる。
リポソームまたはポリマーが結合した粒子の荷電は、例えばコンパクトゼータ電位測定装置ZEECOM(マイクロテック・ニチオン)を用いてζポテンシャルおよび/またはEPM(電気泳動移動度)を測定すればよい。粒子のζポテンシャルおよび/またはEPMが負または正ならば、その表面に正または負に荷電したポリマーが相互作用により結合し得る。
相転移温度は、例えば示差走査超高感度カロリーメーターを用いて測定することができる。
リポソームは、周知の方法に従い製造することができるが、これには、薄膜法、逆層蒸発法、エタノール注入法、脱水−再水和法等を挙げることができる。また、超音波照射法、エクストルージョン法、フレンチプレス法、ホモジナイゼーション法等を用いて、リポソームの粒子径を調節することも可能である。本発明のリポソーム自体の製法について、概要を述べると、例えば、まずリポソームを構成する脂質等を含む混合液を蒸留し、容器内面に脂質膜を形成させ適当なバッファーに溶解させる。次いで、凍結融解を数回繰り返したのち、エクストクルージョン法により所望の粒径のリポソームを得ることができる。
本発明のリポソームの粒径は、限定されないが、数十nmから数μmのリポソームを用いることができる。好ましくは、30〜500nm、さらに好ましくは50〜300nm、特に好ましくは70〜150nmである。
積層させるポリマーは、限定されずタンパク質、ポリペプチド、ポリアミノ酸、多糖類、核酸等を用いることができる。また、天然高分子も合成高分子も用いることができる。具体的には、限定はされないが、タンパク質として抗体、アルブミン等の生体由来タンパク質がある。ポリアミノ酸としてポリ−L−リシン、ポリアルギニン酸、ポリアルギニン等がある。また、多糖類としては、キトサン、ヒアルロン酸、アルギン酸、ヘパラン硫酸、デキストリン、ペクチン、グリコーゲン、アミロース、コンドロイチン等がある。核酸としてはDNA、RNAがある。また、ポリマーとして、ポリシラン、ポリシラノール、ポリホスファゼン、ポリスルファゼン、ポリスルフィド、ポリホスフェート、ポリグルコール酸、ポリ乳酸、ポリアミド、ポリ−2−ヒドロキシブチレート、ポリカプロラクトン、ポリアリルアミンやこれらの共重合体を用いることもできる。
さらに、上記のように、本発明のリポソームにおいて、積層される化合物の総てがポリマーである必要はなく、低分子化合物、有機または無機結晶体、チタン化合物、磁性体粒子、蛍光性ナノ粒子等の無機微粒子を含んでいてもよい。低分子化合物は限定されず、例えばメルカプト酢酸等が挙げられる。
本発明のリポソームは、ドラッグデリバリーシステム等生体に直接適用することも可能である。生体に適用するような用途で用いる場合、用いるポリマーは生体由来ポリマー等の長期間にわたって生体に悪影響も強い刺激も与えず、本来の機能を果たしながら生体と共存できる生体適合性(生体親和性)ポリマーが好ましい。
ポリマーの積層が静電相互作用による結合による場合は、正または負に荷電しているポリマーを用いれば良い。例えば、ポリ−L−リシンは負荷電ポリマーとして、ポリアルギニン酸は正荷電ポリマーとして用いることができる。また、任意のアミノ酸からなるポリアミノ酸であって、リシン等の負荷電アミノ酸を多く含み全体として負に荷電しているポリアミノ酸や、アルギニン酸等の正荷電アミノ酸を多く含む全体として正に荷電しているポリアミノ酸を用いることができる。さらに、正に荷電している多糖類として、キトサン等を、負に荷電している多糖類としてヒアルロン酸等を用いることができる。また、核酸は負に荷電しており、正に荷電しているリポソームまたはリポソームに積層されている化合物であって、正に荷電している化合物に結合させることができる。
積層させるポリマーの分子量は、ある程度大きい方がよく、例えば、分子量30,000以上のポリマーが好適に用いられる。
積層させるポリマーの層の数は限定されず、好ましくは少なくとも2層である。また、用いるリポソームの粒子サイズ、用いるポリマーの種類、ポリマー層の数を調節することで、得られたポリマーを積層させたリポソームの最終的なサイズを調節することができる。層の厚さは用いるポリマーの種類により異なるが、一般的には、1層で数nm、3層積層した場合でも約5nm以下である。ポリマーを積層させたリポソームの粒子サイズは、50nm〜500nmでリポソーム粒子間で差はなく均一なサイズのリポソームが得られる。
また、複数のポリマーを積層する場合、ポリマーの種類も限定されず、同種類のポリマーを積層させても、異なる種類のポリマーを積層させてもよい。また、1層に複数のポリマーを混合させて積層させてもよい。
積層が静電相互作用に基づいて行われる場合は、第1層に正に荷電したポリマー、第2層に負に荷電したポリマーというように、荷電状態が異なるポリマーを交互に積層すればよい。
ポリマーの積層は、以下のようにして行うことができる。
上述の方法で作製したリポソームに、精製した上記ポリマーを混合し攪拌する。この際の温度は、限定されずリポソームの相転移温度に応じて、適宜相転移温度付近、相転移温度以上、相転移温度以下の温度のいずれかで行うことができる。また、反応時間も限定されず、数分から数時間攪拌して反応させればよい。また、用いる水性媒体も限定されない。次いで、リポソームに結合していない遊離のポリマーを遠心分離等により除去する。次いで、第1層を形成するポリマーが結合したリポソームに第2層を形成するポリマーを混合し攪拌する。結合が静電相互作用に基づく場合、このときに混合するポリマーは、第1層のポリマーとは反対の電荷を有するポリマーである。この場合は、反応温度、反応時間も限定されず適宜決定することができる。反応後、遠心分離により結合しなかったポリマーを除去する。以下、この操作を繰り返すことにより、複数層のポリマーが積層されたリポソームを製造することができる。
本発明のポリマーが積層されたリポソームは、表面にポリマーが積層されているため、一定の強度を有し、物理的な力が加わるような環境下でも壊れずその形態が維持される。また、表面に均一な荷電を有するため、懸濁された状態でも、凝集することなく分散状態を保つことができる。また、リポソームの構成脂質として用いる脂質の種類、積層させるポリマーの種類および層数を調節することにより、本発明のポリマーが積層されたリポソーム全体としての強度をコントロールすることもできる。例えば、ドラッグデリバリー担体として用いるときドラッグの放出ができるように、強度が弱いリポソームを用いればよい。
さらに、リポソームにポリマーを積層する際に、積層されたポリマー中に他の化合物を含ませることもできる。他の化合物としては、例えば、薬剤、ナノ蛍光体粒子(半導体ナノ粒子)等のナノサイズ粒子、生理活性物質、色素、蛍光物質、顔料等が挙げられる。ここで、「ナノサイズ蛍光体」とは、発光イオンがドープされた硫化物または酸化物または窒化物で、そのサイズが50nm以下である発光材料をいい、ナノサイズ蛍光体を含む複合粒子を含む。ナノサイズ蛍光体としてドープ型、コアシェル型があるが、本発明においてはいずれのナノサイズ蛍光体も用いることができる。硫化物、酸化物または窒化物として、硫化亜鉛(ZnS)、硫化カドミウム(CdS)、セレン化亜鉛(ZnSe)、酸化亜鉛(ZnO)等の半導体材料が挙げられ、ドープするイオンとして、マンガン(Mn)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)または塩素(Cl)が挙げられる。ドープするイオンは複数であってもよい。ドープするイオンによりそれぞれ固有の発光性をもたせることが可能である。本明細書において、例えば、MnがドープされたZnSを「ZnS:Mn」と、Cu及びAlがドープされたZnSを「ZnS:Cu,Al」と表記する。また、テルビウム(Tb)、ツリウム(Tm)、ユーロピウム(Eu)、フッ素(F)を単体或いは化合物としてドープしてもそれぞれ固有の発光性をもたせることが可能である。ナノサイズ蛍光体はナノクリスタル、ナノクラスター、量子ドット等とも呼ばれることがあり、本発明において、このように呼ばれているものも含む。本発明において用い得るナノサイズ蛍光体は、これらに限定されず、特開平10−310770号公報、A.P.Alivisatos et al.MRS Bull.,No.2,18(1998)、T.Trindade et al.,Chem.Mater.13 3843(2001)、磯部徹彦,未来材料3,26(2003)、磯部徹彦,照明学会誌 87,256(2003)、T.Isobe,Recent Res.Dev.Mater.Sci.3,441(2002)、磯部徹彦,応用物理70,1087(2001)、磯部徹彦,表面科学22,315(2001、磯部徹彦,機能材料19,17(1999)、仙名保 他,ディスプレイアンドイメージング7,3(1998)等に記載の公知の全てのナノサイズ蛍光体を用いることができる。また、市販のナノサイズ蛍光体を用いることもできる。市販のナノサイズ蛍光体として、例えば、Q dot(商標)(住商バイオサイエンス株式会社)等がある。これらの化合物は、ポリマーを積層させるときに混合すれば、ポリマーが積層するときにポリマーと一緒になって積層し得る。この際、これらの積層に含ませる化合物もポリマーと相互作用するように荷電を有している必要がある。元来荷電を有していないナノ粒子等は、例えば、荷電を有するカチオン性界面活性剤やアニオン性界面活性剤を表面に結合させて混合すればよい。この場合に用いる界面活性剤は限定されないが、例えば、カチオン性界面活性剤として第4級アンモニウム塩等が挙げられ、アニオン性界面活性剤として、アルキルスルホネート等が挙げられる。また、ポリマーを積層する際にナノサイズ蛍光体などの他の化合物を合成してもよい。この場合、合成された化合物がポリマーが積層されたリポソームに含まれる。他の化合物は、リポソーム上に積層されたポリマー中に含まれる場合もあれば、積層されたポリマーの最外層のポリマー上に結合する場合もある。いずれの場合も、本発明において、「ポリマー中に他の化合物を含む」という。このように、他の化合物を積層に含ませることにより、本発明のポリマーが積層されたリポソームに含ませる化合物が有する特性を持たせることが可能である。例えば、薬剤を含ませた場合、本発明のリポソームを薬物運搬用担体として用いることができ、ナノ蛍光体を含ませた場合、本発明のリポソームに蛍光特性を持たせることができ、物質の検出のためのマーカーとして用いることができる。
本発明のポリマーが積層されたリポソームは、表面に積層させるポリマーを選択することにより、種々の用途に用いることができる。
また、リポソーム内に種々の物質を封入させることにより種々の用途に用いることができる。リポソーム内に含ませる物質として、薬剤、磁性粒子、色素、蛍光物質、顔量、生理活性物質等が挙げられる。生理活性物質としては、生体由来タンパク質等のタンパク質やDNA、RNA等が挙げられる。
また、表面荷電の異なるリポソームを混合したり、あるいはリポソームに遠心操作等で圧力を加えることにより、表面のポリマーの静電相互作用やブリッジングにより凝集させることもでき、本発明のリポソームからなる固体を作製することができる。この場合、架橋型のリポソームということができる。この際、架橋性物質を用いてポリマー鎖からなる積層を化学的に架橋してもよい。このときに用いる架橋性物質としては、公知のものを用いればよい。この際、固体を型に入れて作製することにより、シート状やチューブ状の任意の形の、ポリマーが積層されたリポソームの固体集合体を作製することができる。また、一旦固体となった架橋型のリポソームを粉体化することにより、粉体としても利用することができる。
例えば、本発明のポリマーを積層させたリポソームの用途として以下のものが挙げられる。
(1)ドラッグデリバリー用担体
例えば、リポソーム内に薬剤を封入し、ドラッグデリバリーシステムの担体として用いることができる。この際、表面のポリマーを選択することにより適当な組織や器官をターゲットとする標的指向的なリポソームとすることができる。この際の最外層のポリマーとして、例えば、特定の組織や器官に特異的に発現するタンパク質に特異的に結合する物質例えば、抗体が挙げられる。本発明のポリマーを積層したリポソームをドラッグデリバリー用担体として用いる場合、体内で封入した薬剤が放出される必要がある。このためには、ポリマーが積層されたリポソーム全体の強度をコントロールすればよい。また、積層するポリマーとして、体液中に溶解するものを用いてもよく、生分解性のポリマーを用いてもよい。このような、ポリマーが積層されたリポソームは除放性の薬剤担体としても用いることができる。
(2)ベクター
また、リポソーム内にDNA等の遺伝子を封入し、ベクターとして用いることもできる。この場合も、最外層のポリマーとして特定の細胞に特異的に発現するタンパク質に特異的に結合する物質を用いることにより、特定の細胞に封入した遺伝子を導入することが可能である。
(3)物質検出用マーカー
さらに、本発明のポリマーを積層したリポソームを物質の検出に用いることも可能である。前記のようなナノ粒子を含ませたリポソームを物質検出のためのマーカーとして用いることができる。この際、リポソームの最外層に積層させるポリマーとして、検出しようとする物質に特異的に結合する抗体等のタンパク質を用いればよい。また、検出しようとする物質がDNA等の核酸の場合は、該核酸に相補的な核酸を用いればよい。
(4)化粧品
さらに、本発明のポリマーが積層されたリポソームを化粧品として用いることも可能である。該リポソームは、表面に均一な荷電を持たせることができ、分散性がよく、化粧品として好適に用いることができる。この際、リポソーム内部に化粧用色素、化粧用顔料や適当な薬剤を封入すればよい。
(5)光沢剤
本発明のポリマーが積層されたリポソームを光沢剤としても用いることができる。該リポソームは、中空なので、屈折率が高く、光沢剤として好適に用いることができる。
(6)塗料顔料
通常、塗料の白色顔料として酸化チタンが使用されるが、本発明のポリマーが積層されたリポソームを酸化チタンの代替物として用いることが可能である。本発明のリポソームは、白色化性能や隠蔽能力を低下させずに用いることができる。また、リポソーム内部に色素や顔料を封入することにより特定の色を呈する塗料顔料として用いることもできる。塗料顔料として用いる場合、分散した状態において水系塗料として用いることができ、上記のように架橋型リポソームの状態においては粉体塗料、溶剤系塗料として用いることも可能である。
(7)紙コーティング剤
本発明のポリマーが積層されたリポソームを塗工紙塗料に添加することも可能であり、この場合塗工紙の光沢や印刷性の改善、軽量紙の不透明度を改善することができる。
(8)樹脂軽量化剤
本発明のポリマーが積層されたリポソームは中空で軽量のため、例えば樹脂に混合すれば、樹脂性能を低下させずに軽量化を達成することができる。
(9)感熱プリンター紙
感熱紙作製の際に、感熱剤層と紙層の間に本発明のポリマーが積層されたリポソームの層を断熱層として設けることができる。その結果、感熱紙の感度を向上させることができる。
(10)止血材・癒着防止材
手術中に血液を凝固する必要性、あるいは癒着を防止する必要性が生じたときにお互いに結合して凝集塊を形成する2組以上のリポソームを術野で混合することにより血液凝固作用および癒着防止作用を達成することができる。
(11)代替器官等
前記のように、本発明のポリマーが積層されたリポソームを架橋型リポソームとし、フィルム状、チューブ状等の適当な形状に成形することができる。このようにして、本発明のリポソームを人工皮膚、人工血管、人工神経誘導管等として、手術の際に用いることができる。この際、リポソームに積層させるポリマーとしては生体適合性高分子を用いることが望ましい。
(12)細胞培養基材
フィルム状に成形した本発明のポリマーが積層されたリポソームは、細胞培養の基材としても用いることができる。この場合、ポリマーの最外層に、細胞の成長の足場となるタンパク質や多糖類を結合させればよい。
以下、本発明の実施例に基づき具体的に説明する。もっとも本発明は下記実施例に限定されるものではない。
リポソームの作製とそのキャラクタリゼーション
1. リポソームの作製およびそのキャラクタリゼーションの方法
リポソームの作製およびそのキャラクタリゼーションは以下の方法で行った。
(1)リポソームの作製
リポソームの構成脂質として、1,2−Dilauroyl−sn−Glycero−3−Phosphate Monosodium Salt(DLPA)およびL−α−Phosphatidylcholine,Dimyristoyl(DMPC)を用いた。
脂質膜の構成成分となるリン脂質、計10−5molを50mlスリ付きナス型フラスコに量り取り、少量のメタノールに溶解した。ロータリーエバポレーターで減圧して溶媒を留去し、フラスコの壁に脂質フィルムを得た。さらにデシケーターへ移し、真空ポンプを用いて6時間減圧乾燥を行い溶媒を完全に除去した。次にBuffer(本実施例では主に10mM HEPES、pH7.4を用いた)1mlを加えて水和させ、多重膜リポソーム(multilamellar vesicle:MLV)を形成させた。その際、浴槽型ソニケーターで機械的振動を加えることで脂質フィルムの壁面からのはがれや水和を促進させた。飽和脂質よりなる脂質フィルムを水和し閉鎖小胞の脂質二重膜を得るためには脂質が液晶状態である必要があるため、浴槽の温度を用いる脂質の相転移温度+10℃程度にして用いた。次に凍結融解法にてリポソームを融合させ、大きなリポソームを形成させた。液体窒素を用いて懸濁液を凍結、室温での融解、リン脂質の相転移温度+10℃に加温の操作を三回繰り返した。最後にエクストルージョン法により均一サイズの小さな一枚膜リポソーム(small unilamellar vesicle:SUV)を作製した。リポソームのサイズはエクストルーダー(Avestin)内にセットするポリカーボネートフィルターのポアサイズをかえることで制御が可能である(図1)。
凍結融解法とは以下のような方法である。
リポソームを構成するリン脂質は両親媒性分子であり、水溶液に懸濁するとその親水性基が水和する。一方、疎水性基は水の環境から押し出され、疎水性基同士で集合する。そのため二分子膜構造の脂質二重膜が形成される。こうして形成されたリポソーム懸濁液を凍結すると、水和していた水分子は氷を形成するために脱水和が起こる。次の融解過程では水分子は再び親水基に結合するが、この過程で二分子膜の再配列が起こると考えられ、二分子膜が再配列するときに、リポソームの融合が起こる。
エクストルージョン法とは、以下のような方法である。
押し出し法の一種であり、MLVを一定の大きさの孔を通すことで、サイズの均一なSUVやLUVを調製したり、リポソームのサイズを整えたりするのに用いられる方法である。他の方法と比較すると、操作が容易で迅速に処理でき、脂質の分解もほとんどなく、再現性も良い。また、比較的高濃度の脂質溶液を用いることが可能であり、収率が高いなどの利点がある。
(2)動的光散乱法(DLS)による粒径の測定
動的光散乱法(Dynamic light scattering:DLS)は粒子のミクロブラウン運動による光散乱のゆらぎによって粒径、粒度分布を求める方法であり、1nm〜5μmの測定範囲を持つ。溶媒中の粒子で懸濁している系にレーザー光を照射すると、その散乱強度は粒子のブラウン運動によって時間的に変化する。溶媒中の不均一によって散乱された光はその不均一さ自体がゆらいでおり、運動しているために振動数変化を受けてスペクトルに広がりを持つようになる。ここで振動数変化は主に散乱光の中心振動数が入射光振動数と等しいレイリー散乱であり、固有に振動数を持たない熱的なゆらぎを反映したものである。この振動数のシフトは入射光の振動数に比べて極めて小さく、ピンボールを用いた光学系によりホモダイン光混合し、ビート(干渉)を起こす手法を用いて、このビート信号を光電子倍増管にて光電交換する。光電子倍増管の出力信号は互いに拡散したパルスとなる(このパルスは光量と比例関係)。このパルス数を計算することによって粒子のブラウン運動に関する情報が得られる。このような光子計算を行い、光電子パルス列について相関をとる手法を光子相関法(Photon correlation spectroscopy:PCS)という。
測定によって得られた光子パルス列から、二次の散乱強度−時間相関関数g(2)(τ)を求めると大きな粒子では相関時間の長い相関関数が、小さな粒子では相関時間の短い相関関数が得られる。この相関関数は浮遊粒子の並進運動に関する情報が含まれており、計算式により粒径や粒度分布を求めることができる。規格化された二次相関関数g(2)(τ)は次のように表すことができる。
Figure 0004858775
ここで、一次相関関数は、球形粒子では次のように表される。
Figure 0004858775
Figure 0004858775
この並進拡散定数Dは上式より容易に求められると共に、Einstein−Stokesの式から粒子径が求められる。
Figure 0004858775
測定によって得られたg(2)(τ)と上式から並進拡散係数Dを求めるため、二次相関関数を対数化し、ヒストグラム解析においては、解析粒子範囲を分割してヒストグラムを表示する。結果としては散乱強度分布が得られるが、重量分布換算係数によって補正されて粒径に関する重量分布を得ることができる。この重量分布から数平均分布を得ることもできる。
本研究では作製したリポソーム懸濁液をBufferで適度な濃度に希釈し、PAR−III(大塚電子)を用いて積算回数50回の条件で測定を行った。
(3)電気泳動移動度(EPM)・ζポテンシャルの測定
粒子表面に酸または塩基サイトがあれば、粒子表面は正または負に荷電し、これらはイオンの吸着・交換サイトになりうる。電解質水溶液では、その電解質イオンが粒子の表面電荷に引かれ、電気二重層を形成する。この状態の粒子が電場中に置かれると、粒子は反対電荷の電極の方向に移動する。この現象を電気泳動(electrophoresis)という。
電気泳動移動度(electrophoretic mobility:EPM)測定は、粒子を電場に置き、その移動の速さを測定することで粒子表面の電荷状態を知る方法である。粒子を電解質中に分散させ外部から電場をかけると粒子は電気泳動を起こす。このとき、液体の粘性が抵抗力となり、粘性力と電場から受ける力が均衡し、粒子は等速運動する。この移動の速さを測定し、電場の強さで割ることで粒子のEPMが求められる。
Figure 0004858775
また、ζポテンシャルは以下のようにあらわされる。
Figure 0004858775
本研究では作製したリポソームのEPMおよびζポテンシャルの測定をコンパクトゼータ電位測定装置ZEECOM(マイクロテック・ニチオン)を用いて、溶液温度25℃・泳動電圧20mVの条件で行った。
(4)示差走査超高感度カロリーメーター(Nano−DSC)による転移温度Tの測定
本研究ではリポソームの相転移温度(phase transition temperature:T)を示差走査超高感度カロリーメーター(Nano−DSCII)(CSC社)を用いて測定した。
走査熱測定とは温度を変化させたときの物質の状態変化に伴う熱の出入りを測定する方法である。熱分析法の一つであるが、各温度で平衡状態にあるときに観測されるシグナルは熱容量に対応する。タンパク質や生体高分子の温度転移(熱変性)などが対象となる。熱変性温度などが容易に測定できることに加え、エンタルピー変化や熱容量変化など熱力学量を直接決定することが可能である。また、ドメイン構造に関する情報などを得ることも可能である。
本研究で用いたNano−DSCでは、ノイズをおさえ、さらに降温を容易にさせるために、セルの断熱制御は行なわれず、セルを囲むジャケットに設置された熱電素子によってジャケットが昇温され、それに温度が追随していく仕組みになっている。試料セルと比較セルがあり、比較セルには溶媒(本研究に用いたBuffer)を入れる。昇温中に熱の出入りがあれば、それを打ち消すようにセルに取り付けられた補償用ヒータで熱補償し、両セルとも同一温度に保たれるよう制御されている。このときの補償熱流を記録している。
リポソームの相転移温度とは、以下の通りである。
飽和の炭化水素鎖からなる脂質でリポソームを形成すると、低温で膜の運動性が抑えられたゲル相(gel phase)をとることが知られている。ゲル相では脂質分子の側鎖が秩序正しく配列している。ゲル相にある脂質二重層の温度を上げていくと、一定温度以上で液晶相(liquid crystalline phase)となる。ゲル相から液晶相へ変化する温度をゲル−液晶転移温度、あるいは相転移温度(T)という(図2)。
以上であるときリポソーム表面の脂質分子は運動性に富み、膜の流動性(fluidity)が高くなっている。図3にあるように、液晶相において脂質分子は膜中で二次元方向の移動である側方拡散(lateral diffusion)、膜内での異方性軸回転運動(anisotropic axial rotation)、二重層の片面からもう一方の面へ動くフリップフロップ(flip flop)というような運動を繰り返している。
このようなことからリポソームの膜流動性は温度に依存するものであると考えられる。
(5)リン脂質濃度の測定
本実施例ではリン脂質−テストワコー(和光純薬株式会社)を用いて、リン脂質濃度を測定することで作製したリポソーム濃度の検討を行っている。このキットでは過マンガン酸塩灰化法によってリン脂質濃度の測定を行っている。
一般的にリン脂質の定量は科学的な方法で行われているが、加熱条件が高温であり、また操作が煩雑で危険性の伴う薬品を使うというような欠点があった。それに対しこの過マンガン酸塩灰化法は沸騰水浴中で容易にかつ完全にリン脂質を分解できるという安全性での利点がある。
リン脂質から構成されるリポソーム懸濁液を試料とし、そこへトリクロロ酢酸液を加えると、リン脂質はタンパクとともに沈殿する。遠心分離し、無機リンが溶存している上清をすてリン脂質をタンパクとともに分離する。分離した沈殿に硫酸及び過マンガン酸塩を加え、沸騰した水浴中で過熱すると、有機物の大部分は酸化分解され、構成成分でもあるリン酸が生成する。ここに生じた無機リンにモリブデン酸アンモニウム及び還元剤を加えると、モリブデンブルーが生成し、青色を呈する。この青色の吸光度を測定することで試料中のリン脂質濃度を算出する。
実際には試験管中にリポソーム懸濁液0.1mlを量り取り、硫酸を0.4ml加え沸騰した水浴中で10分間加熱する。そこへ混合しながら酸化剤である過マンガン酸カリウムを2.0ml加え、さらに30分間加熱する。その後室温で10分間放置した後、脱色剤であるモリブデン酸アンモニウムを2.0ml加え、ミキサーを用いて混和させる。さらに発色剤である亜硫酸ナトリウムを加え37℃の水槽中で20分間加熱する。最後に流水で5分間試験管の外から溶液を冷却して、660nmフィルターを用いて吸光度を測定し、リン脂質濃度を算出する。
(6)異なるサイズのリポソームの作製
本研究ではエクストルージョン法によりリポソーム作製を行なっている。この方法ではポリカーボネートフィルターのポアサイズにより作製するリポソームのサイズを制御することが可能である。そこでDLPA/DMPC=0.5/0.5の組成のリポソームをポアサイズ50nm、100nm、400nmのポリカーボネートフィルター用いて異なるサイズのリポソームを作製し、動的光散乱法により粒径測定することでリポソームサイズの制御について検討した。
(7)電界放出型透過電子顕微鏡(FE−TEM)による観察
透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)は試料に電子線を照射し、その内部構造を主に観察する装置であり、試料の形状並びに表面構造に加え試料の凝集度合い、結晶パターン、格子欠陥の存在及び結晶の配向方位などの観察が可能である。
試料に電子線を照射すると、そのまま試料を透過する電子(透過電子)と相互作用によって散乱する電子(散乱電子)が生じる。通常は対物可動絞りにより散乱電子をカットし、透過電子のみを結像させる明視野像を観察する。一方、散乱電子を結像させた場合、暗視野像が得られる。
TEMの原理は光学顕微鏡と同様であるが、観察を高真空中で行う。光源に電子線を用いており、レンズは電磁レンズが用いられる。電子線は可視光線より波長が短いため、光学顕微鏡より高倍率の観察が可能である。電磁レンズとはコイルに電流を流した時に凸状に分布する磁界が発生し、電子に対して凸レンズとして作用するものである。TEMは、試料を電子線透過可能な0.1μm以下に薄片化する必要がある。そこで薄片化にあたり、超薄切片法やイオンミリング法といった試料調製を用いる。電子線源にはいくつか種類があり、一般的なものではタングステンフィラメントに電流を流して電子を発生させるタングステンヘアピン型が、高分解能型のものではSiチップに電界をかけて電子を発生させる電界放出型透過電子顕微鏡(Field Emission Transmission Electron Microscope:FE−TEM)が用いられる。FE−TEMは材料をミクロなレベルで評価する上で極めて有力であり、セラミックス、金属、半導体、高分子材料、生体試料などの分野において用いられる。
本実施例では、作製したリポソームにネガティブ染色を施すことで、FE−TEMによる形状観察を行った。
ネガティブ染色とは以下の通りである。
ネガティブ染色法は、一般的な染色法と異なり試料と染色剤が反応せず、無構造でかつ高密度な低分子化合物を用いて試料の周りを囲むことで試料と指示膜の間の濃淡を増し、試料の大きさや表面の微細構造を観察するための方法である。すなわち、電子線を透過しない染色剤が脂質会合部位から排除された状態で電子線を照射すると、会合部位がより強く露光する。よって二分子膜構造が白い帯状に写し出される。
本実施例ではリポソームにネガティブ染色を施し観察を行っている。
コロジオン膜でコートした銅製グリッドにカーボン蒸着を施し、そのグリッド上へ約1.0mMに希釈したリポソーム懸濁液を滴下した。1〜2分後にろ紙を用いて余剰の液体を吸い取り、さらに染色剤として1w%モリブデン酸アンモニウム溶液を滴下して同様に余剰の液体を取り除いた。このサンプル作製直後にFE−TEMを用いた観察を行った。
2. リポソームの作製およびそのキャラクタリゼーションの結果
作製したキャラクタリゼーションの結果は以下の通りであった。
(1)リポソームサイズの均一性の確認
DLPA/DMPC=0/1.0、0.1/0.9、0.5/0.5、1.0/0の組成(それぞれモル比)でリポソームを作製し、リポソームのサイズを動的光散乱法により測定したところ、どの組成のリポソームも約100nmで単分散が得られた(D/D≒1.10であることを確認した)。
(2)リン脂質濃度の測定
・検量線の作成
本実施例ではリン脂質濃度の測定をリン脂質−テストワコーを用いて算出している。
検量線作成のためにリン脂質−テストワコーに同封されているリン脂質基準液を5%のトリクロロ酢酸液を用いて、150・300・450・600mg/dlとなるように希釈し、これらを用いて検量線を作成した(図4)。R値などから近似曲線に直線性が得られたので、図4を検量線とし以後の実験でも用いる。
・リポソーム懸濁液中のリン脂質濃度の測定
DLPA/DMPC=0/1.0、0.1/0.9、0.5/0.5、1.0/0の組成で作製したリポソーム懸濁液のリン脂質濃度について考える。作製したリポソーム懸濁液を2倍に希釈し100μl量り取ったものをサンプルとしてリン脂質濃度の測定を行った。
DMPCのみで作製したリポソームの場合、吸光度は0.170であり、検量線より濃度は340mg/dlとなり、二倍希釈していることから実際の濃度は680mg/dl(6.8g/l)であった。よって、
Figure 0004858775
となる。同様にして他の組成でのリポソーム懸濁液中のリン脂質濃度を測定すると、DLPA/DMPC=0.1/0.9では9.24mM、0.5/0.5では10.46mM、DLPAリポソームでは10.11mMとなった(混合した場合はDLPAとDMPCの分子量の平均値を用いて算出した)。どのリポソームもリン脂質濃度が10mMとなるように脂質の仕込み量を決定し秤量しているので、多少の誤差はあるがどの組成のリポソームも約10mMと算出できることから、ほぼ100%の収率でリポソーム懸濁液が得られていると言える。
このような方法を用いて以後の実験においてもリン脂質濃度を決定している。
(3)リポソームの電気泳動移動度の測定
DLPA/DMPC=0/1.0、0.1/0.9、0.5/0.5、1.0/0の組成でリポソームを作製し、ZEECOMを用いて電気泳動移動度(EPM)およびζポテンシャルを測定した。その結果、PAが含まれているリポソームは負電荷を示しており、またPA分率が高くなるにつれてEPMやζポテンシャルの絶対値が大きくなっていることが分かる(表1)。このことから負電荷脂質であるPAの仕込み量に伴いリポソーム表面の負電荷は強くなっていくということが言える。また、PAがリポソーム表面上で負電荷を持つ吸着サイトとなりうることから、PAの仕込み量に伴い吸着サイトが多くなっていくということが考えられる。
Figure 0004858775
(4)リポソームの相転移温度の測定
DLPA/DMPC=(a)1.0/0、(b)0.5/0.5、(c)0/1.0の組成でリポソームを作製し、Nano−DSCを用いた相転移温度の測定結果を図5に示す。相転移温度は(a)30.6℃、(b)29.2℃、(c)24.5℃となった。PAやPCの単一脂質で構成されているリポソームのピーク(a)、(c)は鋭いピークを示すのに対して、PAとPCの二種類の脂質からなるリポソームのピーク(b)はなだらかなピークを示している。また、ひとつのピークしか現れないことから、PAとPCの二成分からなるリポソームはドメインを形成しておらず、緩慢転移をしていると考えられる。
(5)異なるサイズのリポソームの作製
本実施例ではエクストルージョン法によりリポソームの作製を行なっている。用いるポリカーボネートフィルターのポアサイズを50nm、100nm、および400nmのものを使うことで異なるサイズのリポソームの作製を試みた。DLPA/DMPC=0.5/0.5の組成で作製を行なった。
作製されたリポソームのサイズについて表2にまとめる。
Figure 0004858775
100nmのサイズの場合、フィルターのポアサイズとほぼ同サイズのリポソームが単分散で作製されていると言える。50nmの場合は多少粒径が大きくなってしまっているが、単分散でリポソームが作製されていると言える。エクストルージョンによる押し出し操作の回数を増やすなどの工夫によりさらにフィルターのポアサイズに近いサイズのリポソームが作製できると考えられる。400nmの場合は前者に比べ多分散度も高く、ポアサイズよりも小さいサイズでリポソームが作製されている。これはリポソーム作製において、凍結融解操作の際に十分にサイズのあるMLVが形成されていないことが原因の一つとして考えられる。このことから凍結融解操作の回数を増やし同様の作製を行なったが、この結果と多少サイズは大きくなったものの差ほど大きな変化はなかった。
このようなことからDLPAとDMPCを構成脂質とする系では、50nm〜150nmくらいの範囲でのリポソーム作製が可能であると言える。加えて100nmサイズのリポソーム作製が最も容易に行えると言うことがいえる。また、構成脂質や作製時の操作条件を変えることでサイズの制御できる幅は異なってくるものと考えられる。
(6)リポソームの形状観察
作製したDLPA/DMPC=0.5/0.5の組成のリポソームにネガティブ染色を施しFE−TEMで観察した結果を図6に示す。ネガティブ染色を行ったことで、脂質膜自体は染まらず白く映っている様子が分かる。また、形状が崩れてしまっているのは乾燥過程による影響であると考えられる。全体的にはリポソームの球形を保ったまま存在していると言える。
以上のように、エクストルージョン法を用いてリポソームを作製することにより、約100nm均一サイズで濃度が約10mMのリポソームを作製することができた。また、DLPAとDMPCの組成を変えることで表面電荷の違いを確認した。DLPAの割合が多いほど、表面はより負電荷を帯びているということがわかった。このことからDLPAを構成脂質として含んでいるリポソームには静電相互作用を利用した吸着サイトを有しているということが言える。
リポソーム表面へのポリペプチドの吸着
本実施例では鋳型となるリポソーム表面へのポリペプチドの吸着について検討する。実施例1に記載の通り、DLPAを構成脂質に含むリポソームは負に荷電していることがわかっている。そこでリポソーム表面へポリカチオンであるpoly−L−lysine(PLys)やポリアニオンであるpoly−L−aspartic acid(PAsp)をLayer−by−Layerさせることで表面電荷の異なる粒子の作製を試みた。図7にLayer−by−Layerの概念図を示す。
また、異なる表面電荷を持つリポソーム−ポリペプチド複合体を用いて静電相互作用を利用した構造体作製について報告をする。
1. リポソーム表面へのポリペプチドの吸着
リポソーム表面へのポリペプチドの吸着および得られたリポソームの検討は以下の方法で行った。
(1) リポソーム表面へのpoly−L−lysine(PLys)の吸着
構成脂質として酸性脂質であるDLPAを含むことでリポソームは負電荷を帯び、吸着サイトを有する(実施例1参照)。このようなリポソーム表面へポリカチオンであるpoly−L−lysine(PLys)を作用させ、静電相互作用により吸着させることでその挙動についての検討を行った。一般的にPAのみからなるリポソームはPCのみからなるリポソームに比べて安定性に乏しいということが言われている。よって本研究では主にDLPA/DMPC=0.5/0.5のリポソームを用いてPLysの吸着について検討を行った。
(i)吸着量測定
リポソーム溶液500μL(終リン脂質濃度0.5mM)と所定の濃度のPLys溶液500μLを25℃、700rpm、30min、pH7.4の攪拌条件下で反応させた。反応後、分利用小型超遠心機CS100GX(日立工機)を用いて4℃、70、000rpm、45minの超遠心分離を行い、混合液からliposome−PLys複合体を沈降させた。上清のPLys濃度をCBQCAを用いて測定することで吸着したPLys濃度を算出した。
ここで、CBQCA法はタンパク質の定量法の一つである。この方法はアミンのクロマトグラフィー誘導体化試薬として用いられていた3−(4−carboxybenzoyl)quinoine−2−carboxaldehyde(CBQCA)を用いる。CBQCAは水溶液中で非蛍光性であるが、シアン化物の存在下でCBQCAはタンパク質中の第一級アミンと反応し、非常に強い蛍光を発する誘導体を形成する(図8)。タンパク質を含んだサンプルを適したバッファーで希釈し、KCNを加え、さらにCBQCAを加えることで反応を開始させる。1時間(必要に応じて5時間まで)インキュベートさせた後、サンプルの蛍光強度を465/550nmの吸光/発光の波長で計測する。
(ii)反応時間の検討
DLPA/DMPC=1.0/0、0.5/0.5、0/1.0の組成のリポソームとPLysを用いて反応時間の検討を行った。リポソーム懸濁液500μL(終リン脂質濃度0.5mM)とPLys溶液500μL(終PLys濃度50ppm)として25℃、700rpmの攪拌条件下で反応させた。この際、反応時間を20min、80minとし比較を行った。
(iii)吸着等温線の作成
10mM HEPES pH7.4を用いてDLPA/DMPC=0.5/0.5の組成のリポソームを作製し、添加するPLysの濃度を変化させることで吸着等温線を作成した。
リポソーム溶液500μL(終リン脂質濃度0.5mM)とPLys溶液500μLを25℃、700rpm、30min、pH7.4の攪拌条件下で反応させた。反応後、4℃、70、000rpm、45minの条件で超遠心分離を行い、上清のPLys濃度をCBQCAを用いて測定することで吸着したPLys濃度を算出した。各濃度でこの操作を行い吸着等温線を得た。
(iv)精製方法の検討
作製したliposome−PLys複合体を単分散の状態で得るために限外ろ過による精製を試みた。
限外ろ過フィルター(Amicon Ultra−4、分画分子量30、000)を用いて、25℃、3000rpm、2minの条件で遠心操作を行いliposome−PLys複合体と吸着していないPLysを分離した(図9)。濃縮されたliposome−PLysをHEPESを用いて希釈し、同様の濃縮を行なう。この操作を七回繰り返すことでliposome−PLysとPLysを完全に分離した。
このようにして精製したliposome−PLysを動的光散乱を用いて粒径測定を行った。
(v)円二色性スペクトロメトリー(CD)を用いたPLysの二次構造の観察
円二色性スペクトロメトリー(circular dichroism spectrometry)は、タンパク質や核酸の立体構造研究において用いられる測定方法のひとつである。また、小分子生体物質のキラリティーを決定する手段としても用いられる。
平面偏光(直線偏光)は入射光に向かって左および右回りに回転する振幅、振動数の等しい左偏光および右偏光が合成されたものであり、複素数を用いて以下のように表される。
Figure 0004858775
この平面偏光が光学活性な物質を透過するとき、左・右円偏光の吸光係数が異なるために、それぞれの物質を通過する速度や吸光度が異なる。この通過速度が異なる現象を円二色性(circular dichroism:CD)という。図10に平面偏光の入射光が光学活性物質を通過して楕円偏光となる様子を示した。平面偏光は進行方向に垂直な向きから見ると、左右の円偏光(A、A)を重ね合わせた結果、直線上を振動するこことなる。そのため、平面偏光は直線偏光とも呼ばれる。旋光性の物質を通過する場合、左・右円偏光の吸光係数が異なるために偏光面が旋回する。その角度をαとよぶ(図10の場合は右円偏光に比べて左円偏光の吸光係数が大きく、右円偏光がより早く透過する。その結果、偏光面が右に旋回する(右1旋性物質の透過))。また、円二色性の物質を透過する場合は左・右円偏光の吸光度が異なるために、透過後の左・右偏光の振幅に差が生じ、偏光面の軌跡は楕円になる。(図10の場合は左円偏光の吸光度がより大きいため、試料透過後には右円偏光の振幅に比べて左円偏光の振幅が小さくなっている。結果としてそれらの重ね合わせは楕円偏光となる)CDは左・右円偏光に対する分子吸光係数(ε、ε)を用いてΔε=ε−εで表す。また、左・右円偏光に対する吸光度が異なるため、円偏光の振幅にも差が生じ、透過光は楕円偏光になる。CDの大きさは、楕円の短軸・長軸の比で定義される角度θ(楕円率:ellipticity)でも表す。モル楕円率〔θ〕(molar ellipticity)は次式で表す。
Figure 0004858775
〔θ〕やΔεの値は正または負の符号を付けて表し、それぞれ正のコットン効果、負のコットン効果とも言う。
本研究では円二色性測定装置(J−720W1 JASCO)を用いて遠紫外領域の円二色測定を行うことでPLysの二次構造の検討を行った。光路長1mmのセルに300〜400μLのサンプルを注入し、遠紫外領域(190nm〜250nm)における分子楕円率〔θ〕を測定した。測定速度は20nm/min、スキャン回数は10〜30回の条件で測定を行った。
Lys の二次構造の観察
Lysは温度やpHに応じて、αヘリックス・βシート・ランダムコイルという三つの二次構造をとり、生理的pHにおいてはランダム構造をとることが知られている。そこでそれぞれの構造を以下の方法で作製し190〜250nmにおけるCDスペクトル測定を行なった。
ランダムコイル:pH7.4の緩衝液に溶解
αヘリックス:pH11.4の緩衝液に溶解
βシート:pH11.4の緩衝液に溶解させ65℃で10分加熱後、20℃に冷却。
各溶液を用いて測定速度20nm/min・スキャン回数10回の条件で測定を行なった。
・リポソームへの吸着に伴うP Lys の二次構造変化
リポソームへのPLysの吸着に伴う二次構造の変化について検討するためにCDスペクトル測定を行なった。
DLPA/DMPC=1.0/0、0.5/0.5、0/1.0の組成のリポソームを作製し(なおCD測定に用いるリポソームはHEPESで作製するとCDスペクトルのバックグラウンドのノイズが大きくなってしまうことから、10mMリン酸バッファー、pH7.4を用いて作製した)、このリポソーム懸濁液200μL(終リン脂質濃度0.5mM)と所定の濃度のPLys溶液200μLを25℃、700rpm、30min、pH7.4の攪拌条件下で反応させた。この溶液を用いて、セルの温度25℃、測定速度20nm/min、スキャン回数30回でCDスペクトル測定を行なった。
(2) liposome−PLys表面へのpoly−aspartic acid(PAsp)の吸着
作製したliposome−PLys複合体表面へのpoly−aspartic acid(PAsp)の吸着について検討する。
これまでに作製したliposome−PLys複合体についての検討を行った。PAを構成脂質にもつリポソーム表面にポリカチオンであるPLysを吸着させることで、表面電位が反転し、複合体は正電荷を帯びていることがわかった。そこで二層目の吸着としてポリアニオンであるPAspをliposome−PLys表面へ吸着させることを試みた。
liposome−PLys−PAspの作製
DLPA:DMPC=1:1(by mol)の組成のリポソーム500μl(終リン脂質濃度0.5mM)とPLys溶液500μl(終PLys濃度400ppm)を30min、25℃、700rpm、pH7.4の条件下で反応させた。反応溶液を限外ろ過フィルター(分画分子量100、000)を用いて2min、25℃、3000rpmの条件下で7回濃縮と再分散を行い精製を行なった。作製されたliposome−PLys溶液500μlとPAsp溶液500μl(終PAsp濃度400ppm)を同様の反応条件で反応させた。ポリイオンコンプレックス除去のために15min、25℃、15、000rpmの条件で遠心をした後、限外ろ過フィルターを用いて同様の精製を行なった。
(3) 異なる電荷を持つリポソーム−ポリペプチド複合体からなる構造体の作製
これまで負に荷電したリポソームをテンプレートとしてPLysやPAspで被覆することでカチオン性を持つliposome−PLys複合体、アニオン性を持つliposome−PLys−PAspを作製してきた。そこでこれらの電荷を利用した構造体の作製を試みた。
liposome−PLys溶液200μlとliposome−PLys−PAsp溶液200μl(どちらも終リン脂質濃度を0.5mM)を30min、25℃、700rpmの条件下で反応させた。また負電荷を持つDLPA/DMPC=0.5/0.5の組成のリポソームとliposome−PLysも同様の条件で反応させた。このようにして得られたサンプルにネガティブ染色を施し、FE−TEMによる観察を行なった。
2. ポリペプチドを吸着したリポソーム
ポリペプチドを吸着したリポソームの作製および検討の結果は以下の通りであった。
(1)リポソーム表面へのpoly−L−lysine(PLys)の吸着
(i)吸着量について
・検量線の作成
本研究ではリポソーム表面へ吸着したPLys濃度をCBQCA法を用いて算出した。
検量線作成のためにpH7.4のHEPESを用いて終PLys濃度5、10、20、50、100、200、500、1000ppmのPLys溶液を調製した。これらを用いて検量線を作成した(図11)。
検量線よりCBQCAを用いてPLysを定量することは可能であると言える。測定範囲に関しては、500ppm、1000ppmで多少検量線から外れているがR値から誤差範囲であると考えられる。また文献によるとCBQCAを用いたタンパク質の定量の測定範囲は0.01ppm〜1500ppmくらいまで検出をすることが可能であるという報告がなされていることから、この範囲においてPLysの定量を行なうことが可能である。
・吸着量の算出
DLPAと界面での断面積a=0.6nm・全てのC−C結合がトランスのときの長さl=1.43nm、またDMPCはa=0.65nm・l=1.80nmである(図12)。このとき直径100nmのリポソーム1個に含まれる脂質分子数は、リポソーム外表面積と内表面積の和を脂質分子1分子が占める面積で割って、
Figure 0004858775
と表される。
ここでDLPAとDMPCとの二成分系からなる場合を考える。DLPA/DMPC=0.5:0.5(by mol)の組成のリポソームの場合、リポソーム1個に含まれるDLPAとDMPCの総数は、
Figure 0004858775
と表される。これより脂質1molあたりのリポソームの個数は以下のように表される。
Figure 0004858775
DLPA/DMPC=0.5:0.5(by mol)の組成のリポソームを作る際、それぞれの脂質を5.0×10−6molずつはかり取り混合しているので、この系で形成されるリポソームの個数は、
Figure 0004858775
Figure 0004858775
実際には終リン脂質濃度は作製時の1/20の濃度で用いているので6.43×1012(個)である。よって系内にあるリポソームの全表面積は、
Figure 0004858775
と表される。
50ppmのPLysがDLPA/DMPC=0.5/0.5の組成のリポソーム表面に吸着したと仮定すると吸着量は、
Figure 0004858775
と表される。
本実施例ではCBQCA法により定量したPLys濃度をもとに、以上のような計算により吸着量を算出している。
(ii)反応時間の検討
DLPA/DMPC=1.0/0、0.5/0.5、0/1.0の組成のリポソームとPLysを用いて反応時間を20min、80minとし反応させた。吸着量について表3にまとめる。
Figure 0004858775
Figure 0004858775
この結果からPAのモル分率が1.0、0.5の場合は仕込んだPLysのほぼすべてが吸着したと考えられる。また、20minと80minで大きな差がないことから、これらの系での反応時間は20minで十分であると考えられる。
このようなことから、以後のリポソームとPLysを反応させる場合の攪拌条件は25℃、700rpm、30min、pH7.4として行った。
(iii)吸着等温線の作成
10mM HEPES pH7.4を用いてDLPA/DMPC=0.5/0.5の組成のリポソームを作製し、添加するPLysの濃度を変化させた時(終PLys濃度5、10、20、50、100、200、400、600、800、1000、2000ppm)の仕込みのPLys濃度と吸着量の関係を表4に示し、それをもとに作成した吸着等温線を図13に示す(吸着量の数値は同じ実験を四回行なった平均値を用いている。)。
Figure 0004858775
Figure 0004858775
図13より吸着量がほぼ一定になっていることがわかる。この吸着等温線はLangmuir型をとっており、130〜140ng/cmでリポソーム表面のほぼ全ての吸着サイトが埋った状態であると考えられる。多少吸着量が上下している部分があるが、これは用いているリポソームによって吸着サイトとなるPA分子がバルクの方を向いている数やリポソーム内での配列などが厳密には一定ではないことから、PLysの吸着場の数に多少の差があるものと考えられる。
また、超遠心による分離前後でのliposome−PLys複合体の状態の変化について以下の表5にまとめる。
Figure 0004858775
Figure 0004858775
この結果よりPLysの仕込み量が5〜10ppmの場合は超遠心による分離を行った後も再分散し約100nmの単分散であったのに対し、20〜100ppmでは凝集してしまっていた。さらに200ppm以上の場合は膜状の沈降物が生じていた(図14)。
このような違いはリポソームに吸着したPLysの量が異なることで生じるものであると考えられる。図15に示したように、5〜10ppmの仕込み量の場合はリポソームの表面に対してPLysの占有面積が小さいために、正電荷の影響が小さく、リポソーム全体としては負電荷を持っているような状態になっていると考えられる。よって負電荷同士の反発によって超遠心による分離操作後も単分散のまま存在していると考えられる。これに対して20〜100ppmの場合はPLysが吸着した部分とそうでない部分が存在するため、リポソーム表面には正電荷を示す部分と負電荷を示す部分があると考えられる。そのため静電相互作用より超遠心操作後により凝集体が形成されやすくなっているものと考えられる。さらに200ppm以上になると系内には過剰なPLysが存在するようになる。そのような系での超遠心操作後の状態は膜状の沈降物が形成している。これに関する考察は後にも述べるが、過剰なPLysとともにリポソーム間を架橋していくためにこのような膜状の沈降物が生じているものと考えられる。
(iv)膜状沈降物の検討
上記のように、過剰なPLys存在下でliposome−PLys複合体を形成させ、超遠心による精製を試みると図14のような膜状の沈降物が形成されることがわかった。その沈降物内でのリポソームの状態を検討するために、蛍光物質である1−Hydroxy Pyrene−3、6、8−Trisulfonic acid(HPTS)を内封したリポソームを作製し同様の実験を行うことで、膜内のリポソームの状態について検討した。
リポソームを水和させる際に、10mM HPTS溶液(pH7.4)を用いて水和させ、ゲルろ過・超遠心を用いて精製を行いHPTS内封リポソームを得た。HPTS内封リポソーム500μl(終リン脂質濃度0.5mM)とPLys溶液500μl(終PLys濃度1000ppm)を30min、25℃、700rpm、pH7.4の条件下で反応させた。反応溶液を45min、4℃、70、000rpmの条件で超遠心を行なった。このとき生じた膜状沈降物を図16に示す(図16において(a)はHPTSを内封したリポソームで実験を行なった場合、(b)はHPTSを内封させていないリポソームで行なった場合に形成した膜状沈降物である。)。
図16(a)より膜は緑色になっているが、超遠心した際の上清も緑色になっていた。このことから膜を形成する際リポソームは崩壊しているのではないかと考えられる。(a)で生成している緑色の膜はリポソームの崩壊により漏れ出したHPTSとPLysが静電的な相互作用により結合したために緑色になっているのではないかと考えられる。
このようなことからリポソームと過剰なPLysの存在した系を超遠心にかけることによってリポソームは崩壊しながら周囲のPLysを架橋することで図16のような膜状の沈降物を作っていると考えられる。また、これら膜状沈降物は比較的安定であり、pH7.4のHEPES中で形状を保っていられることがわかった。さらにこの膜状沈降物はpH3.6のMES中では形状が崩壊していくことを確認した。
(v)精製方法の検討
上記のように超遠心を用いた精製では、リポソーム表面のほぼ全てを被覆したliposome−PLys複合体を単分散で得ることができなかった。よって限外ろ過を用いた精製を試みた。liposome−PLys溶液を限外ろ過フィルター(分画分子量300、000)を用いて25℃、3、000rpm、2minの条件下で7回濃縮と再分散を行うことでliposome−PLysの精製した。
動的光散乱を用いてliposome−PLysの粒径測定を行ったところ約100nmで単分散が得られた。また、精製前後でリン脂質濃度を測定したところ、多少低下したものの損失が少なかったことから、限外ろ過を用いた精製によって吸着しなかったPLysとliposome−PLys複合体を単分散の状態でかつ損失量を少なく抑えて分離することが可能であると言える。
以後の実験ではliposome−PLys複合体の精製を限外ろ過フィルターを用いて行っている。
(vi)CDを用いたPLysの二次構造の検討
・P Lys の二次構造の観察
Lysはαヘリックス・βシート・ランダムコイルという三つの二次構造をとることが知られている(図17)。それぞれの構造を作製し190〜250nmにおけるCDスペクトル測定結果を図18に示す。
各二次構造の楕円率として、ランダムコイルは195nmに極大を、αヘリックスは222nmと208nmに極小、200nmにcross over、191nmに極大を、βシートは206〜207nmのcross overをはさんで極小・極大を持つことということがわかっている。この値と図18を比較すると、ほぼ同じようなCDスペクトルが得られている。よってPLysの各二次構造が形成されていることが確認できる。以後、図18をPLys二次構造の基準スペクトルとして検討を行なった。
・リポソームへの吸着に伴うP Lys の二次構造変化
DLPA/DMPC=1.0/0、0.5/0.5、0/1.0の組成のリポソーム溶液(終リン脂質濃度0.5mM)とPLys溶液(終PLys濃度50ppm)を反応させCDスペクトル測定した結果を図19に示す。また、ランダム構造・β構造で特徴的な195−200nmの領域のモル楕円率の平均を取り図20にまとめる。この領域ではランダム構造は負のモル楕円率、β構造では正のモル楕円率を持つことが知られている。
これまでにPLysを構成脂質にもつリポソーム表面に吸着し、PCのみで作製したリポソームには吸着しないことを確認してきた。図19、図20よりPLysが吸着しているPA分率が1.0、0.5のものはβ構造を示し、PCのみのものはランダム構造を示していることがわかる。
次にDLPA/DMPC=0.5/0.5の組成のリポソーム溶液(終リン脂質濃度0.5mM)とPLys溶液(終PLys濃度400ppm)を反応させ、限外ろ過による精製操作の前後においてCDスペクトル測定した結果を図21に示し、モル楕円率の平均を図22にまとめる。
この結果より精製前はランダム構造であったの対して、精製後はβ構造を示していることがわかる。これは、精製前は吸着しなかったPLysがランダム構造をとり多く存在しているのに対し、限外ろ過を用いて精製することでそれらが取り除かれリポソーム表面にβ構造をとり吸着しているPLysが残っていることを示している。これらの結果よりPLysはリポソームに吸着することで二次構造がランダム構造からβ構造へと変化することが確認できた。
・リポソームとP Lys の相互作用について
図19〜図22の結果より、PLysはリポソーム表面への吸着とともに二次構造がランダム構造からβ構造へ変化していることがわかった。PLysは図17に示したように高pH領域においてβ構造を示すことが知られているが、リポソーム表面へ吸着した場合pHが中性付近にもかかわらずβ構造をとっている。PLysの吸着はPLysの側鎖のlysine残基のアミノ基とリポソームの構成脂質であるDLPAのリン酸部分との静電引力によって生じる。DLPAのみでリポソームを作製した場合、PLysのlysine残基に対して吸着サイトが多いためにPLysは多点で相互作用をしてβ構造へと変化する。一方、DMPCの場合はコリン基が存在するために、リン酸部分の電荷が打ち消さることで電化的に中性を示す。このことから静電引力が働くと言うことはない。さらにコリン基が構造的に嵩高いということからもPLysが近づけないということも考えられる。
DLPAとDMPCとの二成分系でのリポソームとPLysとの場合を考えると、DLPAがある程度存在しないとβ構造への変化は現われないと考えられる。また、リポソーム表面でDLPAが連続している部分があればPLysは静電引力から相互作用しβ構造を誘導するが、DMPCがあればその部分はランダムのままで存在してしまうと考えられる(図23)。このことから図19で示されているとおりDLPAの含有率が多くなるとβ構造に富んでくるのは、DLPAの連続した配列の割合がリポソーム表面に多いためにβ構造をとりやすくなっているためであるといえる。
さらに、本研究ではPLysの吸着実験を室温(25℃)に設定し行なった。この温度はリポソームの相転移温度よりも少しだけ低い温度であり、部分的にゲル相から液晶相へ変化し始める温度である。この温度を相転移温度に対して明確な差をつけることで吸着挙動に差が出るものと言える。T>Tとした場合、脂質膜内で脂質分子は動きやすくなるため、DLPAの連続した配列を取りやすくなるのに対し、T<Tであれば脂質分子は動けないために連続した配列は取りにくくなる。
このような点から、PLysの吸着における温度条件や脂質の組成は吸着挙動に大きな影響を与える因子であると言える。
(vii)FE−TEMを用いた形状観察とζポテンシャルの測定
作製したliposome−PLys複合体にネガティブ染色を施しFE−TEMを用いた観察結果を図24に示す。図24よりliposome−PLys複合体は比較的球形を保ったまま存在していることがわかる。
また、liposome−PLys複合体のζポテンシャルは70.865mVで正電荷を示した。テンプレートとして用いたDLPA/DMPC=0.5/0.5の組成のリポソームのζポテンシャルは−73.585mVで負電荷を示していたので、PLysが吸着したことで表面電荷量の逆転が起こっていることが確認できる。
(3)liposome−PLys表面へのpoly−aspartic acid(PAsp)の吸着
(i)liposome−PLys−PAspの作製
作製したliposome−PLys表面にポリアニオンであるPoly−L−aspartic acid(PAsp)を吸着質として用い吸着実験を行った。
DLPA:DMPC=1:1(by mol)の組成のリポソーム500μl(終リン脂質濃度0.5mM)とPLys溶液500μl(終PLys濃度400ppm)を30min、25℃、700rpm、pH7.4の条件下で反応させ、限外ろ過フィルター(分画分子量100、000)を用いて2min、25℃、3000rpmの条件下で7回濃縮と再分散を行い精製を行なった。
このようにして作製されたliposome−PLys溶液500μlとPAsp溶液500μl(終PAsp濃度400ppm)を同様の反応条件で反応させた。このとき、PAspはliposome−PLys複合体表面の他、完全に除去し切れなかったPLysとポリイオンコンプレックスを形成する可能性が考えられる。そこでポリイオンコンプレックス除去のために15min、25℃、15、000rpmの条件で遠心分離を行った。さらに遠心操作後の上清を限外ろ過フィルターを用いて同様の精製を行なった。
このようにして得られたlipsosme−PLys−PAsp複合体の粒径を動的光散乱法により測定したところ、約100nmで単分散であった。
(ii)FE−TEMによる形状観察とζポテンシャルの測定
作製したliposome−PLys−PAsp複合体にネガティブ染色を施しFE−TEMを用いた観察結果を図25に示す。図25よりliposome−PLys−PAsp複合体は球形を保ったまま存在していることがわかる。
また、liposome−PLys−PAsp複合体のζポテンシャルは−61.525mVで負電荷を示した。liposome−PLys複合体のζポテンシャルと比較すると、PLspが吸着したことで表面電荷の反転が起こっていることが確認できる。
(4)ζポテンシャルによる各リポソームの評価
これまでに作製したliposome,liposome−PLys,liposome−PLys−PAspのζポテンシャルとEPMの変化について表6および図26にまとめる。
ζポテンシャルの変化からテンプレートとなるリポソームにPLysやPAspを吸着させることで表面電荷量が逆転していることがわかる。
このようにリポソーム表面とPLysやPAspを反応させ,限外ろ過を用いて精製をする方法により単分散なリポソーム−ポリペプチド複合体を得ることが可能である。本研究では現在二層目まで吸着を行ったが,同様の方法からさらに層を重ねていくことも可能であると考えられる。層を重ねていくことで,より強度の高い粒子が得られるのではないかと思われる。
Figure 0004858775
(5)異なる電荷を持つリポソーム−ポリペプチド複合体からなる構造体の作製
・liposome−P Lys とliposome−P Lys −P Asp からなる構造体について
カチオン性を持つliposome−PLysとアニオン性を持つliposome−PLys−PAspを作製した。そこで、これらを混合することで構造体を形成させ、FE−TEMにより観察を行なった。
反応後の溶液には細かい粒状の凝集物が目視で確認できた。このようにして得られたサンプルにネガティブ染色を施し、FE−TEMによる観察を行なった結果を図27に示す。
図27より約100nmのリポソームが並んでいる様子が確認できる。形状が多少崩れているものもあるが、これは乾燥過程が影響しているのではないかと考えられる。全体的にはリポソームは球状をほぼ保ったまま存在しているといえる。また、このサンプルを室温条件下で静置しておくと、時間の経過とともに細かな粒状のものがより大きな凝集体を形成し沈降していた。
・liposomeとliposome−P Lys からなる構造体について
アニオン性を持つDLPA/DMPC=0.5/0.5の組成のリポソームとカチオン性を持つlipsome−PLysを混合することで構造体の作製を試み、FE−TEMでの観察を行なった。
この場合も反応後の溶液には細かい粒状の凝集物が目視で確認できた。FE−TEMの観察結果を図28に示す。
図28より約100nmのリポソームが連なっている様子が確認できた。また、このサンプルの場合も室温条件下で静置しておくと、時間の経過とともに細かな粒状のものがより大きな凝集体を形成し沈降していく挙動が観察された。これらの凝集体はDLPAを構成脂質に持つリポソーム、liposome−PLys、およびliposome−PLys−PAspの表面電荷の違いにより、静電相互作用が働いて凝集体を形成しているものと考えられる。
DLPAを構成脂質に持つリポソーム、liposome−PLys、およびliposome−PLys−PAspというような異なる表面電位を持った粒子を作製することで、静電相互作用を利用し構造体を作製していくことが可能であると言うことが示唆された。
本実施例ではLayer−by−Layerを用いてリポソーム表面上にポリペプチドを吸着させることについて検討した。
負電荷を持つリポソームをテンプレートとしてポリカチオンであるPoly−L−lysine(PLys)を1層目の吸着質として吸着させた。CBQCAを用いた吸着量測定から作成したLangmuir型の吸着等温線より、130〜140ng/cmでリポソーム表面のほぼ全ての吸着サイトが埋っていると考えられる。また、吸着の際にPLysは二次構造をランダムからβシートへ変化させて吸着していることがわかった。さらに、限外ろ過を用いた精製により単分散の状態でliposome−PLys複合体を得ることができた。
2層目の吸着質としてポリアニオンであるPoly−L−asparticacid(PAsp)を用いて、liposome−PLys表面へ吸着させた。これらリポソーム−ポリペプチド複合体粒子は吸着ごとに表面電荷が変化していることがζポテンシャルの測定から確認できた。このことからも表面にポリペプチドが吸着していることが言える。このようにして作製したリポソーム−ポリペプチド複合体にネガティブ染色を施して、FE−TEMによる形状観察を行ったところ球状を保った状態で観察された。
また、異なる電荷を持ったリポソーム−ポリペプチド複合体を用いて、静電相互作用を利用した構造体を作製することができた。構造体内でリポソームは形態を保持したまま連なっていることが観測された。この実験系に形や配列を制御する因子を導入することで、より秩序化された構造体を作製することが可能であるといえる。
リポソーム−ポリペプチド複合体の作製
テンプレートとしてDLPA/DMPC=0.5/0.5の組成を有するリポソームを用いて、多層構造を有するリポソームを作製した。
(1)第一層目(liposome−PLysの作製)
liposome 500μl(終リン脂質濃度0.5mM)とPoly−L−lysine(PLys)500μl(終PLys濃度400ppm)を25℃,700rpm,30min,pH7.4の条件下で反応させ、次いで25℃,3000rpm,2minの条件下で限外ろ過による精製を行った。この際、濃縮と再分散を七回行なった。
(2)第二層目(liposome−PLys−PAspの作製)
(1)で得られたliposome−PLys500μl(終リン脂質濃度0.5mM)とPoly−L−aspartic acid(PLys)500μl(終PLys濃度400ppm)を25℃,700rpm,30min,pH7.4の条件下で反応させ、次いで25℃,15000rpm,15minの条件下で遠心分離し、ポリイオンコンプレックスを除去した。さらに、25℃,3000rpm,2minの条件下で限外ろ過による精製を行った。この際、濃縮と再分散を七回行なった。この結果、表面に2層のポリマーが積層されたリポソームが得られた。
(3)第三層目(liposome−PLys−PAsp−PLysの作製)
(2)で得られたliposome−PLys−PAsp500μl(終リン脂質濃度0.5mM)とPoly−L−lysine(PLys)500μl(終PLys濃度400ppm)を25℃,700rpm,30min,pH7.4の条件下で反応させ、次いで25℃,15000rpm,15minの条件下で遠心分離し、ポリイオンコンプレックスを除去した。さらに、25℃,3000rpm,2minの条件下で限外ろ過による精製を行った。この際、濃縮と再分散を七回行なった。この結果、表面に3層のポリマーが積層されたリポソームが得られた。図29にFE−TEM観察像を示す。
(4)第四層目(liposome−PLys−PAsp−PLys−PAspの作製)
(3)で得られたliposome−PLys−PAsp−PLys500μl(終リン脂質濃度0.5mM)とPoly−L−aspartic acid(PLys)500μl(終PLys濃度400ppm)を25℃,700rpm,30min,pH7.4の条件下で反応させ、次いで25℃,15000rpm,15minの条件下で遠心分離し、ポリイオンコンプレックスを除去した。さらに、25℃,3000rpm,2minの条件下で限外ろ過による精製を行った。この際、濃縮と再分散を七回行なった。この結果、表面に4層のポリマーが積層されたリポソームが得られた。図30にFE−TEM観察像を示す。
このようにして得られた多層構造を有するリポソームのζポテンシャルの測定の結果は以下の通りであった。図31にグラフを示す。
Figure 0004858775
リポソーム表面へのポリアリルアミンおよびメルカプト酢酸の吸着と蛍光性半導体ナノ粒子の積層化
本実施例では鋳型となるリポソーム表面へのポリアリルアミンとメルカプト酢酸の吸着を行い、つづいて半導体ナノ粒子(ナノ蛍光体粒子)の積層化について検討する。実施例1に記載の通り、DLPAを構成脂質に含むリポソームは負に荷電していることがわかっている。そこでリポソーム表面へポリカチオンであるポリアリルアミン(PAA)とメルカプト酢酸をLayer−by−Layerさせることで表面電荷の異なる粒子の作製を試みた。図32にこのときのLayer−by−Layerの概念図を示す。
(1) リポソーム表面へのポリアリルアミンの吸着
構成脂質として酸性脂質であるDLPAを含むことでリポソーム(liposome)は負電荷を帯び、吸着サイトを有する(実施例1参照)。このようなリポソーム表面へポリカチオンであるポリアリルアミンを作用させ、静電相互作用により吸着させることでその挙動についての検討を行った。
(i)吸着量測定
リポソーム溶液500μL(終リン脂質濃度0.5mM)と所定の濃度のポリアリルアミン液500μLを25℃、700rpm、30min.、所定濃度および所定pHにおいて攪拌条件下で反応させた。反応後、限外ろ過フィルター(Amicon Ultra−4、分画分子量30、000)を用いて、25℃、3000rpm、2minの条件で遠心操作を行い、混合液からliposome−ポリアリルアミン複合体を沈降させた。分離されたポリアリルアミン濃度をCBQCAを用いて測定することで吸着したポリアリルアミン濃度を算出した。
(ii)吸着等温線の作成
10mM HEPES pH7.4を用いてDLPA/DMPC=0.5/0.5およびDLPA/DMPC=0.75/0.25の組成のリポソームを作製し、添加するポリアリルアミンの濃度を変化させることでpH6.48(プロトンがついて正電荷を帯びているためPAAと区別するためにPAHと表す)とpH8.50(この場合はPAA)における吸着等温線を作成した。
リポソーム溶液500μL(終リン脂質濃度0.5mM)とPAA溶液あるいはPAH溶液500μLを25℃、700rpm、30min.の攪拌条件下で反応させた。反応後、限外ろ過フィルター(Amicon Ultra−4、分画分子量30、000)を用いて、25℃、3000rpm、2min.の条件で遠心操作を行い、混合液からliposome−ポリアリルアミン複合体を沈降させた。分離したPAAあるいはPAHの濃度をCBQCAを用いて測定することで、吸着したPAAあるいはPAH濃度を算出した。各濃度でこの操作を行って吸着等温線を得た。結果を図33に示す。リポソームの負電荷が増すほどポリアリルアミンの吸着量が増加し、PAAとPAHではより正電荷に富むPAHの方が吸着し易いことがわかった。
(iii)リポソーム−ポリアリルアミン複合体へのメルカプト酢酸の吸着
10mM HEPES pH7.4を用いてDLPA/DMPC=0.5/0.5の組成のリポソーム(終濃度1.5mM)を作製し、ポリアリルアミンを終濃度500ppmになるように添加して、25℃で700rpmの撹拌下で30分間吸着させた。25℃で限外濾過によりリポソーム−ポリアリルアミン複合体を得た。1.5mMの複合体0.8mLに4000ppmのメルカプト酢酸を200μL添加して4℃で500rpmの撹拌下で20分間吸着させた。
(2)半導体ナノ粒子作製のための試料の調製
カチオン溶液(0.09M Zn(CHCOO)0.01M Mn(CHCOO)
酢酸亜鉛二水和物396.68mgを超純水18mlに加え、マグネティクスターラーを用いて溶解させた(0.1M Zn(CHCOO))。一方で、酢酸マンガン四水和物49.20mgを超純水20mlに加え、マグネティクスターラーを用いて溶解させた(0.1M Mn(CHCOO))。
それぞれを十分に溶解した後、二つの水溶液を混合しカチオン溶液を調製した。
アニオン溶液(0.1M NaS)
硫化ナトリウム九水和物488.28mgを超純水20mlに溶解させた。
分散安定剤(0.1M CNa
クエン酸ナトリウム二水和物295.0mgを超純水10mlに溶解させた。
(3)リポソーム−ポリアリルアミン−メルカプト酢酸複合体へのZnS:Mn2+ナノ粒子の複合化
4ツ口フラスコに超純水9ml(30℃)を加え、90分間窒素置換した後、0.1Mクエン酸ナトリウム二水和物0.2ml、0.1M硫化ナトリウム九水和物0.32ml、酢酸亜鉛二水和物と酢酸マンガン(II)四水和物の混合溶液(9:1 0.1M 0.4ml)を順に加え、窒素置換中で反応させた。反応時間は45分とし、その後、リポソームおよび各種リポソーム複合体(脂質量3.0μmol)をそれぞれ加えて2時間反応させた。
(4) 特性評価方法
Xeランプを用いて得られた複合体試料を励起し、試料から出た蛍光強度を、分光蛍光光度計を用いて測定した。そのときの励起波長は、各試料について分光蛍光光度計を用いて蛍光波長580mで励起スペクトルを測定し、その励起スペクトルのピークの波長を用いた。
リポソーム、リポソーム−ポリアリルアミン複合体、及びリポソーム−ポリアリルアミン−メルカプト酢酸複合体はいずれも半導体ナノ粒子を吸着させることがわかった。リポソーム−PAH複合体への複合化によって得られた試料が最も高い蛍光強度を示したが、凝集性も高い結果となった。リポソーム−PAH−メルカプト酢酸複合体が凝集しにくく蛍光強度が高い試料を与えることがわかった(表8)。
Figure 0004858775
本発明のポリマーが積層されたリポソームは、任意のサイズ、任意の強度で作製することができ、またポリマーとして荷電を有するポリマーを用いた場合、均一に分散し得るリポソーム粒子を得ることができる。さらに、リポソーム内部に特定の物質を封入したり、積層させるポリマー中に特定の物質を含ませることも可能である。このような、リポソームにポリマーを積層させた中空粒子は従来存在しなかった粒子であり、本発明のポリマーを積層させたリポソームは、従来の技術では達成することができなかった、新たな用途を有する。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。

Claims (17)

  1. ジミリストイルフォスファチジルコリン(DMPC)およびジラウロイルフォスファチジン酸(DLPA)を構成脂質として含む負に荷電し、相転移温度(Tc)が24.5℃より高く30.6℃より低い、二成分系のリポソームに、静電相互作用により正または負に荷電した化合物を交互に2層以上積層させたリポソーム。
  2. 正または負に荷電した化合物がタンパク質、ポリアミノ酸、多糖類および核酸からなる群から選択される少なくとも一つである請求項1記載のリポソーム。
  3. 正に荷電した化合物がポリ-L-リシン、キトサンおよびポリアリルアミン複合体からなる群から選択され、負に荷電した化合物がポリ-L-アスパラギン酸、ヒアルロン酸、核酸およびメルカプト酢酸からなる群から選択される請求項1記載のリポソーム。
  4. リポソーム中に薬剤、蛍光物質、生理活性物質、および色素からなる群から選択される物質が封入された、請求項1〜3のいずれか1項に記載のリポソーム。
  5. リポソーム表面に積層された少なくとも1つの化合物中に半導体ナノ粒子が含まれている請求項1〜4のいずれか1項に記載のリポソーム。
  6. ジミリストイルフォスファチジルコリン(DMPC)およびジラウロイルフォスファチジン酸(DLPA)を構成脂質として含む、負に荷電し、相転移温度(Tc)が24.5℃より高く30.6℃より低い、二成分系のリポソームを調製し、該リポソーム表面に正または負に荷電した化合物を静電相互作用により交互に結合させることを含む、表面に化合物が2層以上積層されたリポソームを製造する方法。
  7. 正または負に荷電した化合物がタンパク質、ポリアミノ酸、多糖類および核酸からなる群から選択される少なくとも一つである請求項6記載の表面に化合物が2層以上積層されたリポソームを製造する方法。
  8. 正に荷電した化合物がポリ-L-リシン、キトサンおよびポリアリルアミン複合体からなる群から選択され、負に荷電した化合物がポリ-L-アスパラギン酸、ヒアルロン酸、核酸およびメルカプト酢酸からなる群から選択される請求項6記載の表面に化合物が2層以上積層されたリポソームを製造する方法。
  9. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のリポソームを表面の化合物の架橋により集合させた固体の架橋型リポソーム。
  10. ジミリストイルフォスファチジルコリン(DMPC)およびジラウロイルフォスファチジン酸(DLPA)を構成脂質として含む負に荷電したリポソームに、静電相互作用により正または負に荷電した化合物を交互に2層以上積層させたリポソームであって、リポソーム表面に積層された少なくとも1つの化合物中に半導体ナノ粒子が含まれているリポソーム。
  11. 正または負に荷電した化合物がタンパク質、ポリアミノ酸、多糖類および核酸からなる群から選択される少なくとも一つである請求項10記載のリポソーム。
  12. 正に荷電した化合物がポリ-L-リシン、キトサンおよびポリアリルアミン複合体からなる群から選択され、負に荷電した化合物がポリ-L-アスパラギン酸、ヒアルロン酸、核酸およびメルカプト酢酸からなる群から選択される請求項10記載のリポソーム。
  13. リポソーム中に薬剤、蛍光物質、生理活性物質、および色素からなる群から選択される物質が封入された、請求項10〜12のいずれか1項に記載のリポソーム。
  14. ジミリストイルフォスファチジルコリン(DMPC)およびジラウロイルフォスファチジン酸(DLPA)を構成脂質として含む、負に荷電したリポソームを調製し、該リポソーム表面に正または負に荷電した化合物を静電相互作用により交互に結合させることを含む、表面に化合物が2層以上積層されたリポソームを製造する方法において、さらに積層される少なくとも1つの化合物中に半導体ナノ粒子を含ませる方法。
  15. 正または負に荷電した化合物がタンパク質、ポリアミノ酸、多糖類および核酸からなる群から選択される少なくとも一つである請求項14記載の表面に化合物が2層以上積層されたリポソームを製造する方法。
  16. 正に荷電した化合物がポリ-L-リシン、キトサンおよびポリアリルアミン複合体からなる群から選択され、負に荷電した化合物がポリ-L-アスパラギン酸、ヒアルロン酸、核酸およびメルカプト酢酸からなる群から選択される請求項14記載の表面に化合物が2層以上積層されたリポソームを製造する方法。
  17. 請求項10〜13のいずれか1項に記載のリポソームを表面の化合物の架橋により集合させた固体の架橋型リポソーム。
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