JP2004097211A - 新規抗体酵素生産方法および新規抗体酵素 - Google Patents

新規抗体酵素生産方法および新規抗体酵素 Download PDF

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Abstract

【課題】抗体の高い分子認識能と酵素活性とを併せ持つ抗体酵素を効率的に生産する方法、及びこの生産方法により得られる新規な抗体酵素、並びに、この生産方法に応用できる立体的に特異的な構造を有する抗体酵素を提供する。
【解決手段】本発明に係る抗体酵素生産方法は、アミノ酸配列から予測された抗体の立体構造中に、セリン残基と、アスパラギン酸残基と、ヒスチジン残基またはグルタミン酸残基とが立体構造上近接して存在する触媒三つ組残基構造の存在を確認する抗体構造解析工程を含んでいる。上記触媒三つ組残基構造は、抗体酵素に特異的な構造であるので、これにより抗体酵素を効率的にスクリーニングすることができる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、抗体の高い分子認識能と酵素活性とを併せ持つ抗体酵素を高い効率で生産する新規な抗体酵素の生産方法と、この生産方法により生産される抗体酵素と、この生産方法に応用できる立体的に特異的な構造を有する抗体酵素とに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、酵素様活性をもつ抗体、即ち、抗体酵素について、種々の報告がなされている。例えば、S.Paulらは、自己免疫疾患患者の分離精製した自己抗体がVIP(神経ペプチド:Vasoactive Intestinal Peptide)を分解する活性を有することを報告している(非特許文献1)。また、Gabibovらは、SLE(Systemic lupus erythematosus)等の自己免疫疾患や免疫細胞増殖性疾患患者から分離した自己抗体にDNAを酵素的に分解する抗体が存在することを報告している(非特許文献2および非特許文献3)。
【0003】
また、本発明者らは、AIDS(後天性免疫不全症候群)の原因となるエイズウイルス(HIV)の外膜タンパク質gp41の不変領域を抗原とするモノクローナル抗体を取得し、このモノクローナル抗体の機能を詳細に解析した。その結果、このモノクローナル抗体の軽鎖領域は、HIVの外膜タンパク質gp41を特異的に分解する、非常に高い活性を有することを報告している(非特許文献4)。
【0004】
このように抗体酵素は、抗体の高い分子認識能と酵素活性とを併せ持つため、医療、化学工業、食品工業等といった、多くの面で応用が期待されている。
【0005】
これまで、このような抗体酵素を作製・取得する方法としては、基底状態にあるペプチド、あるいはタンパク質を動物等に免疫し、得られた抗体の全てについて酵素活性を測定して、目的の酵素活性を有する抗体だけを選択して取得するという方法しか知られていなかった。
【0006】
【非特許文献1】
Paul, S., et al., Science, 244: 1158, 1989.
【0007】
【非特許文献2】
Shuster, A.M., et al., Science, 256: 665, 1992.,
【0008】
【非特許文献3】
Gabibov, A.G., et al., Appl. Biochem. Biotech., 47: 293, 1994.
【0009】
【非特許文献4】
Hifumi, E., Okamoto, Y., Uda, T., J. Biosci. Bioeng.
88(3), 323−327 (1999)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のような従来の抗体酵素の作製・取得法は、多くの手間と時間とを必要とするものであり、また、全ての抗体の酵素活性を測定しても、抗体酵素を見出せる確率は10%未満でしかなく、非常に効率が悪いという問題があった。
【0011】
このように、抗体酵素を効率よく取得または作製する方法は未だ見出されていない。このため、優れた機能をもつ抗体酵素、及び効率のよい抗体酵素取得法、作製方法を開発し、さらなる研究や産業へ利用することが大いに期待されている。
【0012】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、抗体の高い分子認識能と酵素活性とを併せ持つ抗体酵素を効率的に生産する方法、及びこの生産方法により得られる新規な抗体酵素、並びに、この生産方法に応用できる立体的に特異的な構造を有する抗体酵素を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題に鑑み鋭意検討した結果、ポリペプチドや抗原タンパク質を切断及び/又は分解する酵素活性を有する抗体について、詳細に構造、機能を解析したところ、いずれの抗体酵素の立体構造中にも触媒三つ組残基が存在し、この触媒三つ組残基とポリペプチド分解活性とは関連があることを独自に見出し、本発明を完成させるに至った。
【0014】
本発明に係る抗体酵素生産方法は、上記の課題を解決するために、アミノ酸配列から抗体の立体構造の予測を行う立体構造予測段階と、予測された抗体の立体構造中に、セリン残基と、アスパラギン酸残基と、ヒスチジン残基またはグルタミン酸残基とが立体構造上近接して存在する触媒三つ組残基構造の存在を確認する触媒三つ組残基構造確認段階とを実施する抗体構造解析工程を含むことを特徴としている。
【0015】
上記触媒三つ組残基構造確認段階では、触媒三つ組残基構造を確認するために、次のいずれかの指標を用いることが好ましい。
タイプ▲1▼または▲1▼*の指標:既知の抗体酵素に共通している触媒三つ組残基構造と同じ構造を有している(タイプ▲1▼)か、上記既知の触媒三つ組残基構造のうち、1残基だけ異なる位置のアミノ酸残基を使用することで触媒三つ組残基構造を構成できると推測される構造を有している(タイプ▲1▼*)。
タイプ▲2▼の指標:セリン残基と、アスパラギン酸残基と、ヒスチジン残基またはグルタミン酸残基とが、立体構造中に3〜20Å以内の範囲で存在する。
タイプ▲3▼の指標:抗体が、既知の抗体酵素が由来する胚細胞遺伝子型を有していることを指標として用いる。
タイプ▲4▼の指標:超可変領域1(CDR1)が16個のアミノ酸残基で構成されており、カバット(KABAT)の分類でヒスチジン残基を93番目に持つことを指標として用いる。
タイプ▲4▼*の指標:超可変領域1(CDR1)が11個のアミノ酸残基で構成されており、カバット(KABAT)の分類でヒスチジン残基を91番目あるいは55番目に持つことを指標として用いる。
【0016】
また、上記抗体酵素生産方法は、抗原で免疫したマウス脾臓リンパ球とマウスのミエローマ細胞とを融合させてなるハイブリドーマにより抗体を産生する抗体産生工程を含むことが好ましい。上記抗原としては、抗原決定基とする物質をキャリアタンパク質に結合してなるハプテン結合タンパク質(hapten−conjugated protein)を用いることができるが特に限定されるものではない。なお、タンパク質そのものも免疫源として使用できることはいうまでもない。
【0017】
さらに、上記抗体酵素生産方法は、上記抗体構造解析工程の後に得られる立体構造情報を用いて、遺伝子工学的手法で抗体に触媒三つ組残基構造を導入する触媒三つ組残基構造導入工程を含んでいてもよい。
【0018】
上記触媒三つ組残基構造は、本発明者らが、今回新たに、ポリペプチドや抗原タンパク質を切断及び/又は分解する活性を有する抗体酵素の特徴として見出したものである。それゆえ、上記方法によれば、抗体酵素に特異的な上記触媒三つ組残基構造を用いて抗体をスクリーニングするため、従来よりも効率的に抗体酵素を生産することができる。
【0019】
本発明に係る抗体酵素は、立体構造中に、セリン残基と、アスパラギン酸残基と、ヒスチジン残基またはグルタミン酸残基とが立体構造上近接して存在する触媒三つ組残基構造を有しており、例えば、上記抗体酵素の一例として、後述の実施例に示すように、i41SL1−2抗体、i41−7抗体の重鎖、軽鎖等が挙げられる。i41SL1−2抗体、i41−7抗体の重鎖、軽鎖は、基質に対する高い親和性という抗体としての性質を有しながら、酵素活性を発揮していることが実験的に確認されている。
【0020】
本発明に係る抗体酵素は、また、超可変領域1(CDR1)が16個のアミノ酸残基で構成されており、かつカバット(KABAT)の分類でヒスチジンを93番目に持つ抗体酵素であってもよいし、また、超可変領域1(CDR1)が11個のアミノ酸残基で構成されており、かつカバット(KABAT)の分類でヒスチジンを91番目あるいは55番目に持つ抗体酵素であってもよいし、さらに、マウスの胚細胞遺伝子型が、チーベ(Thiebe)らの分類で、bb1、bl1、bd2、cr1、cs1、bj2、hf24、12−41、19−14、19−17、19−23、19−25、21−12から選択される遺伝子によって生産されるものであってもよい。
【0021】
後述する実施例に示すように、ポリペプチドや抗原タンパク質を切断及び/又は分解する活性を有する、マウス由来の抗体酵素の遺伝子を解析した結果、当該抗体酵素の多くは、チーベ(Thiebe)らの分類で、bb1、bl1、bd2、cr1、cs1、bj2、hf24、12−41、19−14、19−17、19−23、19−25、21−12から選択されるマウスの胚細胞遺伝子によって、作製されていることが実験的に確認されている。従って、上記のbb1、bl1、bd2、cr1、cs1、bj2、hf24、12−41、19−14、19−17、19−23、19−25、21−12から選択されるマウスの胚細胞遺伝子によって、作製される抗体酵素は、基本的に、その立体構造中に触媒三つ組残基構造が存在している抗体酵素であり、ポリペプチドや抗原タンパク質を切断及び/又は分解する活性を有する抗体酵素である。
【0022】
本発明に係る抗体酵素は、抗体の重鎖であってもよいし軽鎖であってもよい。
【0023】
また、本発明に係る抗体酵素として、より具体的には、配列番号1、3、5、7の何れかに示すアミノ酸配列を含んでなるもの、あるいは、配列番号1、3、5、7の何れかに示されるアミノ酸配列において、1またはそれ以上のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列を含んでなるものを挙げることができる。
【0024】
なお、本発明には、上記抗体酵素をコードする遺伝子も含まれる。さらには、本発明には、上記抗体酵素生産方法における抗体構造解析工程をコンピューターに実行させるコンピュータープログラム、及び、上記抗体構造解析工程を行うプログラムをコンピューターに実行させるコンピュータープログラムを記録した機械読み取り可能な記録媒体も含まれる。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の一形態について説明すれば、以下の通りである。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
【0026】
本発明は、天然型抗体酵素の効率的な取得を可能とするだけでなく、遺伝子工学的な手法を用いて抗体酵素を生産することも可能な抗体酵素生産方法を提案するものであり、さらに、この生産方法によって得られる新規で有用な抗体酵素の一例を提供するものである。そこで以下では、本発明に係る抗体酵素生産方法について説明し、次いで得られる抗体酵素とその遺伝子の一例、当該抗体酵素の機能、その利用方法等について説明することとする。
【0027】
(1)抗体酵素および触媒三つ組残基構造
本発明者らは、ポリペプチドや抗原タンパク質を切断及び/又は分解する活性を有する抗体酵素を、数種類用いて、その性質や構造の特徴を詳細に解析した結果、ポリペプチドや抗原タンパク質を切断及び/又は分解する活性を有する抗体酵素は、何れも触媒三つ組残基構造をその立体構造中に有することを初めて明らかにした。
【0028】
具体的には、触媒三つ組残基構造をその立体構造中に有するとは、抗体又は抗体断片の立体構造中にセリン残基と、アスパラギン酸残基と、ヒスチジン残基またはグルタミン酸残基とが立体構造上近接して存在することを指し、より具体的には、セリン残基と、アスパラギン酸残基と、ヒスチジン残基またはグルタミン酸残基との距離は、少なくとも3〜20Åの範囲内であればよく、好ましくは、3〜10Åの範囲内であればよい。これは、触媒三つ組残基構造を構成する官能基間の距離が3〜20Å、なかでも特に3〜10Åの範囲内であれば、十分に触媒三つ組残基構造と基質(ポリペプチドや抗原タンパク質)とが反応できると考えられるためである。
【0029】
本発明に係る抗体酵素においては、上記触媒三つ組残基構造が存在する部位は特に限定されるものではない。抗体は、重鎖(H鎖:Heavy chain)と軽鎖(L鎖:Light chain)とから構成されている。軽鎖は、可変領域(VR:Variable Region)と定常領域(CR:Constant Region)とから構成されており、可変領域は、超可変領域(CDR:Complimentarity Determining Region)を有している。後述する実施例に示すように、上記触媒三つ組残基構造は、主に軽鎖に存在しており、重鎖にも軽鎖ほどではないが、触媒三つ組残基構造が存在することが明らかとなっている。また、実験的にも、触媒三つ組残基構造を立体構造中に有する抗体は、ポリペプチドや抗原タンパク質を切断及び/又は分解する酵素活性を有することが明らかとなっている。
【0030】
それゆえ、本発明に係る抗体酵素生産方法では、抗体中に、触媒三つ組残基構造を有しているか否かを判定するようになっていればよい。
【0031】
(2)抗体酵素生産方法の概要
本発明に係る抗体酵素生産方法は、少なくとも、アミノ酸配列から抗体の立体構造の予測を行う立体構造予測段階と、予測された抗体の立体構造中に、上記触媒三つ組残基構造が存在するか否かを判定する触媒三つ組残基構造確認段階とを実施する抗体構造解析工程を含んでいればよい。上記(1)の知見から明らかなように、抗体の立体構造中に触媒三つ組残基構造が含まれていれば、その抗体が抗体酵素である可能性は高くなる。それゆえ、これによって、抗体酵素を効率的にスクリーニングすることができる。
【0032】
本発明に係る抗体酵素生産方法の一例をより具体的に説明すれば、図1(a)に示すように、抗体産生工程、アミノ酸配列確定工程、抗体構造解析工程、抗体酵素活性確認工程を含んでいればよい。
【0033】
(2−1)抗体産生工程
上記抗体産生工程は、特に限定されるものではなく、抗原で免疫したマウス脾臓リンパ球とマウスのミエローマ細胞とを融合させてなるハイブリドーマによりモノクローナル抗体を産生するようになっていればよいし、また、ライブラリーよりファージディスプレイ法を用いて得た抗体であってもよい。
【0034】
具体的には、所望の抗原、またはその抗原決定基(エピトープ)を含む断片、あるいはその誘導体、あるいはそれらのアナログ、もしくはそれらを発現する細胞を免疫原として用いることにより抗体を産生することができる。これらは通常の免疫操作、またはハイブリドーマ法(Kohler,G. and Milstein,C., Nature 256,495−497(1975))、トリオーマ法、ヒトB−細胞ハイブリドーマ法(Kozbor,Immunology Today 4, 72(1983))およびEBV−ハイブリドーマ法(Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R Liss, Inc.,77−96(1985))などにより行なわれる。
【0035】
ここで、上記抗原としては、ポリペプチド又はタンパク質、あるいは多糖であれば特に限定されるものではない。
【0036】
具体的には、上記抗原がハプテンであれば、抗体の産生等を誘導する能力をもたないため、抗体を産生することができないが、抗原を異種由来のタンパク質などの生体高分子からなる担体と共有結合させて抗原タンパク質を得て、これで免疫すれば、抗体産生を誘導することができる。上記担体としては、特に限定されるものではなく、オボアルブミン、γグロブリン、ヘモシアニン等、この分野で従来公知の各種タンパク質を好適に用いることができる。
【0037】
なお、ここでいう「ポリペプチド」とは、アミノ酸が数個結合した短いペプチド、及びタンパク質を含むものである。また、ポリペプチドは、天然に存在するもの、化学的、生物学的方法にて合成されたものを含む。また、ここでいう「多糖」とは、ブドウ糖、麦芽糖、アセチルグルコサミン、グルクロン酸等のいわゆる単糖類が複数個結合しているものをいい、「多糖」を構成している単糖の種類は従来公知のものであればよく、特に限定されるものではない。
【0038】
(2−2)アミノ酸配列確定工程
上記アミノ酸配列確定工程は、抗体産生工程で得られた抗体からアミノ酸配列を確定できるようになっていれば特に限定されるものではない。具体的には、得られた抗体から直接アミノ酸配列を読み取ってアミノ酸配列を決定してもよいし、抗体の遺伝子の塩基配列からアミノ酸配列を推定してもよい。上記アミノ酸配列の決定はエドマン法を用いて決定すればよい。また塩基配列の決定は従来公知のシーケンサーを用いればよく、アミノ酸配列の推定は従来公知のソフトウェア等を用いればよく、特に限定されるものではない。
【0039】
(2−3)抗体構造解析工程
上記抗体構造解析工程は、上記のように立体構造予測段階と触媒三つ組残基構造確認段階とを含んでいれば特に限定されるものではない。これによって、所望の抗体中に触媒三つ組残基構造が含まれているか否かを効率的に確認することができる。
【0040】
上記立体構造予測段階は、アミノ酸配列確定工程で得られたアミノ酸配列のデータから立体構造を予測できるようになっていれば特に限定されるものではない。具体的には、タンパク質における二次構造および三次構造を予測できるようになっていればよい。すなわち、本発明では、IgGクラスの抗体の三次構造までが明らかとなっていればよい。
【0041】
抗体における四次構造は、例えばIgAやIgMクラスのように、三次構造をとったサブユニット(IgGクラスの抗体)が複数会合してオリゴマーを形成する構造が挙げられるが、このような構造は後段の触媒三つ組残基構造確認段階で特に必要ないので、本発明では予測する必要はない。ただし、四次構造の結果も含めた解析結果が抗体酵素の生産に有効に利用できる場合にはこの限りでなく、立体構造予測段階で抗体の四次構造を予測してもよい。
【0042】
上記立体構造予測段階を行う場合には、従来公知の高次構造解析用のソフトウェアを用いればよく、その具体的な手法は特に限定されるものではない。
【0043】
上記触媒三つ組残基構造確認段階では、(1)で説明した触媒三つ組残基構造が、抗体の立体構造中に存在するか否かを判定できるようになっていれば特に限定されるものではない。それゆえ、触媒三つ組残基構造の判定では、直接的に上記構造の有無を判定してもよいし、間接的に判定してもよい。
【0044】
上記触媒三つ組残基構造の判定に用いられる直接的な指標としては、次の各指標を挙げることができる。なお、以下の各指標を用いて判定する前段階として、抗体のアミノ酸配列中にヒスチジン残基が存在するか否か調べるという、より簡易的な方法で、上記触媒三つ組残基構造の存在の有無の判定を行ってもよい。これは、多くの抗体では、通常セリン残基に比べてヒスチジン残基を含有する場合が少ないためである。
【0045】
第1の指標は、既知の抗体酵素に共通している触媒三つ組残基構造と同じ構造を有しているか、上記既知の触媒三つ組残基構造のうち、1残基だけ異なる位置のアミノ酸残基を使用することで触媒三つ組残基構造を構成できると推測されるかを指標とするものであり、前者をタイプ▲1▼、後者をタイプ▲1▼*と称する。
【0046】
第2の指標は、抗体重鎖(H鎖)または抗体軽鎖(L鎖)単独において、立体構造中に、3〜20Å以内の範囲で、セリン残基とアスパラギン酸残基とヒスチジン残基またはグルタミン酸残基とのそれぞれの官能基が存在する場合を指標とするものであり、これをタイプ▲2▼の指標と称する。
【0047】
次に、上記触媒三つ組残基構造確認段階において、触媒三つ組残基構造の判定に用いられる間接的な指標としては、特に限定されるものではないが、本実施の形態では、胚細胞型遺伝子(germline gene)の解析結果を利用した指標を好適に用いることができる。
【0048】
抗体軽鎖(L鎖)はκおよびλの2種類のクラスに分類されるが、マウスの場合は約95%がκ鎖であるといわれている。また、マウスκ鎖は胚細胞型遺伝子(germline gene)に関する解析が進んでおり、これに関する情報が入手しやすいという利点がある。ここで、後述する実施例でも説明するように、germlineを解析することによって、ある特定のgermlineですでに酵素活性を持つ抗体L鎖が用意されていることを示唆する重要な知見が見出された(実施例3・表3参照)。そこで、既知の抗体酵素が由来するgermlineを事前に調べておき、このgermlineを有する抗体を選択すれば、軽鎖について、高い確率で効率的に抗体酵素を取得することが可能である。これをタイプ▲3▼の指標とする。
【0049】
上記軽鎖について用いることのできるgermlineとしては、具体的には、チーベ(Thiebe)らの分類でbb1、cr1、bl1、cs1、bd2、bj2、または19−25を挙げることができる。なお、本実施の形態及び実施例では、軽鎖の場合、germlineをThiebeらの分類で示すこととする。
【0050】
また、重鎖(H鎖)についても、軽鎖の考え方を当てはめれば、VH1、VH5、VH10のFamilyを有する抗体を選択することで、相当の高い確率で効率的に抗体酵素を取得することが可能となる。なお、抗体の成熟過程で突然変異を起こし、上記触媒三つ組残基構造を失うものが存在するが、これらを除いて、上記のgermlineあるいはFamilyに特定した場合、ほぼ完全に酵素活性を持つ抗体を取得することができる。
【0051】
加えて、既知の抗体酵素から得られる構造上特徴的な構成を指標として用いることもできる。具体的には、後述する実施例で説明するように、超可変領域1(CDR1)が16個のアミノ酸残基で構成されており、カバット(KABAT)の分類でヒスチジン残基を93番目に持つという特徴は、抗体酵素に顕著なものである。それゆえ、これをタイプ▲4▼の指標として用いることができる。さらに、超可変領域1(CDR1)が11個のアミノ酸残基で構成されており、カバット(KABAT)の分類でヒスチジン残基を91番目あるいは55番目に持つという特徴も、抗体酵素に顕著なものであり、これをタイプ▲4▼*の指標として用いることができる。なお、本実施の形態及び実施例では、抗体のアミノ酸配列をカバット(KABAT)の分類で示すこととする。
【0052】
なお、より確実な指標は上記タイプ▲1▼・▲1▼*またはタイプ▲2▼であるので、選択時の確実性を高めるためには、これら指標を用いることが好ましく、タイプ▲3▼、タイプ▲4▼、▲4▼*の指標は補助的に用いればよい。しかしながら、上記タイプ▲1▼、▲1▼*、▲2▼の指標を用いずに、タイプ▲3▼、▲4▼、▲4▼*の指標のみを単独で又は組み合わせて用いることもできる。
【0053】
上記触媒三つ組残基構造確認段階を含む抗体構造解析工程を行う手段としては、本実施の形態では、後述の(3)で説明する抗体構造解析システムを挙げることができるが、勿論本発明はこれに限定されるものではない。
【0054】
また、遺伝子の塩基配列のデータから抗体構造解析システムにより直接抗体の立体構造を予測する場合には、上記アミノ酸配列確定工程は抗体構造解析工程の一段階として含まれてもよい。つまり、アミノ酸配列確定工程で説明したように、抗体の遺伝子の塩基配列からアミノ酸配列を推定するアミノ酸配列確定段階が抗体構造解析工程の一段階として実施されるようになっていてもよい。
【0055】
(2−4)抗体酵素活性確認工程
上記抗体酵素活性確認工程は、抗体構造解析工程にて解析された結果、触媒三つ組残基構造を有し抗体酵素である可能性が高い抗体について、実際に、ポリペプチドや抗原タンパク質を切断及び/又は分解する活性を有しているか否かを確認するようになっていれば特に限定されるものではない。具体的には、抗原または抗原決定基となる構造を含むポリペプチドや抗原タンパク質を抗体と反応させて、活性を見ればよい。このときの反応条件、例えば、抗原の濃度、抗体の濃度、反応温度や反応時間、塩の濃度(使用するバッファーの種類)等については特に限定されるものではない。
【0056】
(2−5)触媒三つ組残基構造導入工程
本発明に係る抗体酵素生産方法の他の例としては、図1(b)に示すように、触媒三つ組残基構造導入工程が含まれていてもよい。すなわち、本来触媒三つ組残基構造を有していない抗体でも、遺伝子工学的に触媒三つ組残基構造を導入することにより、これも高い効率で抗体酵素を生産することが可能である。それゆえ、抗体構造解析工程の後に、触媒三つ組残基構造導入工程を実施してもよい。
【0057】
上記触媒三つ組残基構造導入工程では、上記抗体構造解析工程で得られる立体構造情報を用いて、遺伝子工学的手法で抗体に触媒三つ組残基構造を導入するようになっていればよく、その具体的な手法は特に限定されるものではない。具体的には、エキソヌクレアーゼを用いた欠失突然変異体を作成する方法や、部位特異的突然変異誘発等、従来公知の方法を好適に用いることができる。
【0058】
上記触媒三つ組残基構造導入工程は、抗体構造解析工程の後に実施すればよいが、触媒三つ組残基構造導入工程の後には、抗体酵素活性確認工程を行い、触媒三つ組残基構造の導入によってポリペプチドや抗原タンパク質を切断及び/又は分解する活性を付与できたか否かを判定することが非常に好ましい。
【0059】
(3)抗体構造解析工程を実行するシステム
(3−1)抗体構造解析システムの具体的な構成の一例
本発明で抗体構造解析工程を行う手段は、コンピューターを用いてなる抗体構造解析システムとなっていればよい。例えば、図2に示すように、入力部11、表示部12、印刷部13、記憶部14、制御部15、立体構造予測部151、及び触媒三つ組残基構造確認部152を備えている抗体構造解析システム10を挙げることができる。
【0060】
上記入力部11は、上記抗体構造解析システム10の動作に関わる情報を入力可能とするものであれば特に限定されるものではなく、キーボードやタブレット、あるいはスキャナー等従来公知の入力手段を好適に用いることができる。
【0061】
上記表示部12は、予測された抗体の立体構造や、触媒三つ組残基構造の確認結果等を含む、上記抗体構造解析システム10の動作に関わる情報や選択結果等の各種情報を表示する。具体的には、公知のCRTディスプレイや、液晶ディスプレイ等といった各種表示装置が好適に用いられるが特に限定されるものではない。
【0062】
上記印刷部13は、上記表示部12で表示可能な各種情報をPPC用紙等の記録材に記録(印刷・画像形成)する。具体的には、公知のインクジェットプリンタやレーザープリンタ等の画像形成装置が好適に用いられるが特に限定されるものではない。
【0063】
なお、上記表示部12と印刷部13とは、まとめて出力手段と表現することもできる。すなわち、表示部12は、各種情報をソフトコピーで出力する手段であり、印刷部13は、各種情報をハードコピーで出力する手段である。したがって、本発明で用いられる出力手段としては、上記表示部12や印刷部13に限定されるものではなく、その他の出力手段を備えていてもよい。
【0064】
上記記憶部14は、上記抗体構造解析システム10で利用される各種情報(制御情報、選択結果、その他情報等)を記憶する。具体的には、例えば、RAMやROM等の半導体メモリ、フロッピー(登録商標)ディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CD−ROM/MO/MD/DVD等の光ディスクのディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系等、従来公知の各種記憶手段を好適に用いることができる。
【0065】
また、上記記憶部14は、上記抗体構造解析システム10と一体化されていて一つの装置になっていてもよいが、別体となっている外部記憶装置となっていてもよく、さらには、一体化された記憶部14と外部記憶装置とが両方とも備えられている構成であってもよい。例えば、一体化した記憶部14としては、内蔵型のハードディスクや装置に組み込まれたフロッピー(登録商標)ディスクドライブ、CD−ROMドライブ、DVD−ROMドライブ等が挙げられ、外部記憶装置としては、外付けハードディスクや外付け型の上記各種ディスクドライブ等が挙げられる。
【0066】
上記制御部15は、上記抗体構造解析システム10の動作を制御する。具体的には、図2の実線の矢印で示すように、入力部11、表示部12、印刷部13、記憶部14、立体構造予測部151および触媒三つ組残基構造確認部152の各手段に対して、上記制御部15から制御情報が出力される。この制御情報に基づいて上記各手段が連携して動作することで、上記抗体構造解析システム10全体が動作する。また、制御部15に対しては、入力部11から抗体構造解析システム10を動作させるための指示情報も入力可能となっているので、図2では、制御情報のやりとりを示す実線の矢印は双方向となっている。
【0067】
上記立体構造予測部151および触媒三つ組残基構造確認部152は、合わせて解析手段として機能する。具体的には、上記立体構造予測部151に対して、入力部11から入力されたアミノ酸配列のデータが、制御部15を経由して入力される(図中破線)。そして、立体構造予測部151で生成された立体構造のデータが触媒三つ組残基構造確認部152に出力される(図中破線)。触媒三つ組残基構造確認部152では、立体構造のデータから触媒三つ組残基構造の有無を確認し、その確認結果に基づいて、最終的な解析データを生成する(図中破線)。この解析データは、表示部12及び/又は印刷部13等の出力手段で出力できるデータであれば特に限定されるものではない。
【0068】
上記立体構造予測部151で立体構造の解析に用いられるデータは、少なくともアミノ酸配列のデータであればよいが、塩基配列のデータであってもよい。この場合、立体構造予測部151は、塩基配列のデータからアミノ酸配列を予測してそのデータに基づいて立体構造を生成するようになっていればよい。
【0069】
上記制御部15、立体構造予測部151、および触媒三つ組残基構造確認部152の具体的な構成は特に限定されるものではなく、従来公知の演算手段が好適に用いられる。上記各手段は、それぞれ独立した演算手段となっていてもよいが、好ましくは、上記各手段が1つの演算手段として一体化した制御解析装置となっている。具体的には、コンピューターの中央処理装置(CPU)としてまとまっており、その動作はコンピュータープログラムにしたがって実行される構成であれば非常に好ましい。
【0070】
それゆえ、上記立体構造予測部151は、従来公知のタンパク質の立体構造を予測するコンピュータープログラムにしたがってCPUが立体構造を予測する演算を実行するようになっていればよく、上記触媒三つ組残基構造確認部152は、コンピュータープログラムにしたがってCPUが、少なくとも、触媒三つ組残基構造の有無を判定する演算を実行できるようになっていればよい。加えて、図示しないが、上記抗体構造解析システム10には、他の解析手段が含まれており、解析データとして、触媒三つ組残基構造や立体構造以外の他のデータを含んでいてもよい。
【0071】
さらに、上記抗体構造解析システム10は、図2に示すように、通信部16を備えることにより、インターネットを含む通信ネットワークを介して各種情報を入出力できるようになっていてもよい。この通信部16は、通信ネットワークと接続して各種情報の送受信が可能になっている。図2では、同一構内にある上記抗体構造解析システム10、パーソナルコンピューター(PC)61、並びにサーバー62が通信回線60に接続されてバス型のLAN(ローカルエリアネットワーク)を構成しており、さらにこのLANがインターネットを介して、他地域にあるPC61とも接続されている。
【0072】
上記通信部16の具体的な構成については、特に限定されるものではなく、公知のLANカード、LANボード、LANアダプタや、モデム等を好適に用いることができる。
【0073】
上記PC61については、モデム等の通信手段を備えた公知のパーソナルコンピューターを好適に用いることができ、デスクトップ型やノート型等に限定されるものではない。なお、PC61は、CRTディスプレイや液晶ディスプレイ等の表示部とキーボードやマウス等の入力部を備えた基本構成となっているものとする。なお、説明の便宜上、PC61に備えられている図示しない表示部や入力部をPC表示部・PC入力部と表現する。
【0074】
上記PC61には、一般的なパーソナルコンピューターに外付けできるハードウウェア(例えばスキャナー等の各種入力手段やプリンタ等の各種出力手段)が備えられていればよい。
【0075】
上記サーバー62の具体的構成も特に限定されるものではなく、LANを構成するクライアントであるPC61、抗体構造解析システム10に対してサービスを提供できるコンピューターであればよい。さらには、このサーバー62は、データベースサーバーやファイルサーバーを兼ねていてもよい。
【0076】
上記通信回線60の具体的構成も特に限定されるものではなく、従来公知の一般的な通信回線を用いることができる。また、この通信回線60を用いて構築されるLANの型式もバス型に限定されるものではなく、スター型やリング型等、従来公知の型式であればよい。
【0077】
さらに図示しないが、上記LANには、共用のプリンタ等、他の端末が含まれていてもよい。加えて図示しないが、上記LANを含む通信ネットワークには、通信可能な携帯型の各種端末等が含まれていても良い。
【0078】
上記構成のネットワークでは、例えば、抗体構造解析システム10で、抗体構造解析工程を行った後、その選択結果を単に抗体構造解析システム10内(すなわち表示部12や印刷部13等)で出力するだけでなく、LANを介してPC61に送信することもできる。PC61では、抗体構造解析システム10から得られた結果を、PC表示部で表示したりプリンタで印刷したりすることができ、さらにはPC入力部からの入力によって上記の選択結果を加工することもできる。
【0079】
つまり、上記通信部16は、通信手段としてだけでなく、上記抗体構造解析システム10の入力手段としても機能することになる。また、特に、PC61を用いて、インターネットを介して、抗体構造解析システム10の所在する場所から離れた遠隔地で、抗体構造解析工程の実施に関わる情報(アミノ酸配列等)を送信したり選択結果を受信したりする場合には、任意の顧客に対して抗体構造解析工程を提供するサービスを行うことが可能となる。
【0080】
また、上記PC61が、LANを介して抗体構造解析システム10とつながっている場合には、例えば研究施設等に一つ抗体構造解析システム10があれば、他の研究者はPC61等の情報端末を介して抗体構造解析システム10を共用することができる。それゆえ、本発明をより効率的に実施することができる。
【0081】
さらに、上記サーバー62がデータベースサーバーやファイルサーバーを兼ねている場合には、通信ネットワークを介して行われた抗体構造解析工程の選択結果を、通信ネットワークを介してサーバー62に蓄積していくことができる。その結果、選択結果をより一層有効利用することが可能となる。
【0082】
加えて、本発明には、本発明における抗体構造解析工程を、コンピューター上でプログラムにより実施することが可能となっているが、このプログラムを記録する記録媒体には、通信ネットワークからダウンロードするように流動的にプログラムを担持する媒体も含まれる。例えば、サーバー62の記録手段に抗体構造解析工程のプログラムが記録されていれば、抗体構造解析システム10は、サーバー62から適宜、抗体構造解析工程のプログラムをダウンロードして使用するようになっていてもよい。ただし、抗体構造解析システム10が通信ネットワークからプログラムをダウンロードする場合には、そのダウンロード用のプログラムは、予め抗体構造解析システム10本体に格納しておくか、別の記録媒体からインストールされるようになっている。
【0083】
さらに、PC61のように、通信ネットワークを介してサーバー62に接続されている場合には、サーバー62から抗体構造解析工程のプログラムをダウンロードすることで、PC61そのものを上記抗体構造解析システム10として用いることができる。
【0084】
(3−2)上記抗体構造解析システムにより実行される抗体構造解析工程の一例
次に、上記抗体構造解析システム10の具体的な動作、すなわち本発明における抗体構造解析工程の一例について、図3のフローチャートに基づいて説明する。
【0085】
まず、前段階として、抗体産生工程により得られたモノクローナル抗体の塩基配列を決定して最終的にアミノ酸配列を得る。次に、ステップ1(以下、ステップをSと略す)として、上記アミノ酸配列のうち、可変領域のアミノ酸配列を上記入力部11から入力する。次に、S2として、触媒三つ組残基構造確認部152で触媒三つ組残基構造を確認するための指標を設定する。この指標は、前記(2−3)で説明したタイプ▲1▼・▲1▼*、▲2▼、▲3▼、▲4▼、▲4▼*を挙げることができる。これら指標は単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0086】
次に、S3として、入力された可変領域のアミノ酸配列のデータを用いて、上記立体構造予測部151により抗体の立体構造を予測する。次に、S4として、立体構造予測部151により得られた立体構造のデータから、触媒三つ組残基構造確認部152により、上記アミノ酸配列のデータとS2で設定された指標とを用いて、上記触媒三つ組残基構造を構築していると推定されるアミノ酸残基の配置およびその変異の状況を解析する。
【0087】
解析結果から触媒三つ組残基構造またはその変異構造と推定される構造が確認された場合には、当該抗体が抗体酵素である可能性が高く、上記何れの構造も見出されなかった場合には、当該抗体は抗体酵素である可能性が低いことになる。次に、S5では、S4での解析結果から最終的な解析データを生成し、表示部12で表示する。
【0088】
さらにその後、S6にて、触媒三つ組残基構造の解析を再度行うか否かを判定する。再度行う(図中YES)場合にはS7に進み、同じアミノ酸配列のデータを用いて指標を変えて解析を行うか否かを判定する。S7にて、同じアミノ酸配列のデータを用いる(図中YES)場合にはS2に戻り、新たなアミノ酸配列のデータを入力する(図中NO)場合には、S1に戻る。
【0089】
一方、S6にて、触媒三つ組残基構造の解析を再度行わない(図中NO)場合にはS8に進み、得られた解析データを、複数ある場合にはまとめて印刷部13で印刷するか、あるいは、通信インターフェース16で他のPC61に送信する。
【0090】
なお、以上説明した本実施の形態における抗体構造解析システム10は、以上説明したS1〜S8までのステップを含む抗体構造解析方法を機能させるためのプログラムにより、コンピューターで実現されるようになっていてもよい。
【0091】
上記プログラムはコンピューターで読み取り可能な記録媒体に格納されていればよい。具体的には、図3に示す記憶部14、具体的には、例えばROMのようなものそのものがプログラムメディアであってもよいし、上記記憶部14として、プログラム読み取り装置が設けられている場合には、そこに記録媒体を挿入することで読み取り可能なプログラムメディアであってもよい。上記プログラムメディアとしては、記憶部14の具体例として挙げた公知の構成を好適に用いることができる。
【0092】
何れの場合においても、格納されているプログラムは制御部15がアクセスして実行させる構成であってもよいし、プログラムを読み出し、読み出されたプログラムを、図示しないプログラム記憶エリアにダウンロードして、そのプログラムを実行する方式であってもよい。このダウンロード用のプログラムは予め記憶部14等に格納されているものとする。また、上記記録媒体に格納されている内容はプログラムに限定されるものではなく、例えばデータであってもよい。
【0093】
このように、本発明では、上記抗体構造解析工程をコンピューターで実行させるコンピュータープログラムや、このプログラムをコンピューターに実行させるコンピュータープログラムを記録した機械読み取り可能な記録媒体が含まれる。それゆえ、プログラムにより本発明における抗体構造解析工程をコンピューターで実行させるため、コンピューターそのものを抗体構造解析システム10とすることができる。その結果、本発明の汎用性を高めることができるとともに、本発明を通信ネットワーク上で利用することも容易となる。
【0094】
(4)本発明の抗体酵素の一例
次に、本発明に係る抗体酵素には、上述した生産方法に応用できる立体的に特異的な構造を有する抗体酵素が含まれ、さらには、上述した生産方法で生産される抗体酵素も含まれる。本実施の形態では、以下、本発明に係る抗体酵素の一例を詳細に説明する。
【0095】
(4−1)本実施の形態に係る抗体酵素
本実施の形態に係る抗体酵素は、(a)配列番号1、3、5又は7に記載のアミノ酸配列からなる可変領域を有する抗体酵素、又は(b)配列番号1、3、5又は7に示されるアミノ酸配列において、1又はそれ以上のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなる可変領域を有する抗体酵素であって、かつポリペプチドや抗原タンパク質を切断及び/又は分解する活性を有する抗体酵素であればよいが、本実施の形態では、▲1▼配列番号1に示されるアミノ酸配列を有しており、117のアミノ酸残基からなる可変領域を有するi41SL1−2抗体の重鎖(i41SL1−2−H)、▲2▼配列番号3に示されるアミノ酸配列を有しており、114のアミノ酸残基からなる可変領域を有するi41SL1−2抗体の軽鎖(i41SL1−2−L)、▲3▼配列番号5に示されるアミノ酸配列を有しており、120のアミノ酸残基からなる可変領域を有するi41−7抗体の重鎖(i41−7−H)、▲4▼配列番号7に示されるアミノ酸配列を有しており、109のアミノ酸残基からなる可変領域を有するi41−7抗体の軽鎖(i41−7−L)が例示される。
【0096】
i41SL1−2抗体は、HIVウイルスの外膜タンパク質gp−41の不変領域を認識する抗体41S−2の軽鎖超可変領域1(CDR1)の合成ペプチド(配列番号9に示す)に対するモノクローナル抗体である。i41SL1−2抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域のアミノ酸配列とそれをコードする塩基配列を図4(a)(b)に示す。
【0097】
このi41SL1−2抗体の軽鎖(i41SL1−2−L)、及び重鎖(i41SL1−2−H)の立体構造を、コンピューターを用いて予測し、解析を行ったところ、図5(a)(b)に示すように、i41SL1−2抗体はi41SL1−2−H、i41SL1−2−Lの両方に触媒三つ組残基構造を有することが明らかになった。即ち、i41SL1−2−Lは、図4(b)、図5(a)に示すように、カバット(KABAT)の分類で、1番目のアスパラギン酸残基(D1)と、93番目のヒスチジン残基(H93)と、27A番目のセリン残基(S27a)とから構成される触媒三つ組残基構造、または、カバット(KABAT)の分類で、27D番目のアスパラギン酸残基(D27d)と、93番目のヒスチジン残基(H93)と、27A番目のセリン残基(S27a)とから構成される触媒三つ組残基構造を有すると予測される。
【0098】
また、i41SL1−2−Hは、図4(a)、図5(b)に示すように、カバット(KABAT)の分類で、55番目のアスパラギン酸残基(D55)と、52番目のヒスチジン残基(H52)と、54番目のセリン残基(S54)とから構成される触媒三つ組残基構造、または、カバット(KABAT)の分類で、100番目のアスパラギン酸(D100)と、35番目のヒスチジン残基(H35)と、98番目のセリン残基(S98)とから構成される触媒三つ組残基構造を有すると予測される。これら触媒三つ組残基構造の配置は軽鎖、重鎖共に超可変領域の近傍に当たる。
【0099】
また、i41−7抗体は、抗体41S−2の軽鎖に対するモノクローナル抗体である。i41−7抗体の重鎖と軽鎖との可変領域のアミノ酸配列とそれをコードする塩基配列を図8(a)(b)に示す。
【0100】
このi41−7抗体の軽鎖(i41−7−L)、及び重鎖(i41−7−H)の立体構造を、i41SL1−2抗体と同様に、コンピューターを用いて予測し、解析を行ったところ、図9(a)(b)(c)に示すように、i41−7抗体は、i41−7−L、及びi41−7−Hの両方に触媒三つ組残基構造を有することが明らかになった。即ち、i41−7−Lは、図8(b)、図9(a)に示すように、カバット(KABAT)の分類で、1番目のアスパラギン酸残基(D1)と、91番目のヒスチジン残基(H91)と、26番目のセリン残基(S26)とから構成される触媒三つ組残基構造、または、カバット(KABAT)の分類で、28番目のアスパラギン酸残基(D28)と、91番目のヒスチジン残基(H91)と、30(または26)番目のセリン残基(S30またはS26)とから構成される触媒三つ組残基構造を有すると予測される。これらの触媒三つ組残基構造の位置は、超可変領域(CDR)であるCDR1及びCDR3の近傍である。
【0101】
また、i41−7−Lは、図8(b)、図9(b)に示すように、カバット(KABAT)の分類で、60番目のアスパラギン酸残基(D60)と、55番目のヒスチジン残基(H55)と、52番目のセリン残基(S52)とから構成される触媒三つ組残基構造を有すると予測される。これは、CDR2の近傍に位置している。
【0102】
また、i41−7−Hは、図8(a)、図9(c)に示すように、カバット(KABAT)の分類で、86番目のアスパラギン酸残基(D86)と、41番目のヒスチジン残基(H41)と、40(または84、若しくは87)番目のセリン残基(S40またはS84、若しくはS87)とから構成される触媒三つ組残基構造を有すると予測される。
【0103】
また、上記抗体酵素の他の例として、ヘリコバクターピロリ菌のウレーアゼ(以下、HPウレアーゼと呼ぶ)のモノクローナル抗体HpU−20あるいはUA−15の抗体断片を挙げることができる。
【0104】
HpU−20の抗体断片とは、具体的には、HpU−20抗体のL鎖の可変領域、および、HpU−20抗体のH鎖の可変領域である。これら2つの抗体酵素も、HPウレアーゼの複数のモノクローナル抗体の中から、その可変領域のアミノ酸配列を分子モデリングすることによってその立体構造を推定した結果、セリン、ヒスチジン(又はグルタミン酸)、アスパラギン酸からなる触媒三つ組残基を構成できるアミノ酸配列(抗体断片)として探し出されたものである。
【0105】
上記HpU−20抗体のL鎖の可変領域(以下、HpU−20−Lと呼ぶ)、上記HpU−20抗体のH鎖の可変領域(以下、HpU−20−Hと呼ぶ)は、HPウレアーゼの分解酵素として作用する。これは、後述の実施例に示されるように、HPウレアーゼのβサブユニットを分解するという結果からも明らかである。なお、分解された上記ペプチドは、HPウレアーゼの酵素活性を発揮するために重要な領域の一つである。そのため、この領域を分解することによってHPウレアーゼの機能を完全に破壊し、それに伴ってHP菌が酸性の強いヒト胃内で生存することを不可能にさせることができる。即ち、上記ペプチドを分解できる本発明の抗体酵素は、HP菌を効率よく除菌することができる。
【0106】
続いて、上記HpU−20−Lの構造について以下に詳細に説明する。HpU−20−Lは、上述のようにHPウレアーゼのモノクローナル抗体の一つHpU−20のL鎖の可変領域であり、配列番号14に示すアミノ酸配列を一次構造として有している。図15には、HpU−20−Lのアミノ酸配列、及びその下段にそれをコードする遺伝子の塩基配列の一例を示す。なお、この塩基配列は、本実施例においてクローニングしたHpU−20抗体L鎖の遺伝子の塩基配列である。図15では、抗原分子(HPウレアーゼ)と相補的な立体構造を形成し、抗体の相補性を決定する相補性決定部位を、CDR−1、CDR−2、CDR−3として下線を付して示している。
【0107】
図13には、上記HpU−20−Lのアミノ酸配列を分子モデリングした結果、推定される立体構造を模式的に示す。図13に示すように、配列番号14に示すアミノ酸配列において第1番目のアスパラギン酸(図13ではカバット(KABAT)の分類によってD1と示す)、第98番目のヒスチジン(図13ではカバットの分類によってH93と示す)、第97番目のセリン(図13ではカバットの分類によってS92と示す)又は第28番目のセリン(図13ではカバットの分類によってS27aと示す)が触媒三つ組残基を構成していると推定される。なお、HpU−20−Lのgermlineは、cr1である。
【0108】
次に、上記HpU−20−Hの構造について以下に詳細に説明する。HpU−20−Hは、上述のようにHPウレアーゼのモノクローナル抗体の一つであるHpU−20のH鎖の可変領域であり、配列番号16に示すアミノ酸配列を一次構造として有している。図16には、HpU−20−Hのアミノ酸配列、及びその下段にそれをコードする遺伝子の塩基配列の一例を示す。なお、この塩基配列は、本実施例においてクローニングしたHpU−20抗体H鎖の遺伝子の塩基配列である。図16では、相補性決定部位を、CDR−1、CDR−2、CDR−3として下線を付して示している。
【0109】
図14には、上記HpU−20−Hのアミノ酸配列を分子モデリングした結果、推定される立体構造を模式的に示す。図14に示すように、配列番号16に示すアミノ酸配列において第90番目のアスパラギン酸(図14ではカバット(KABAT)の分類によってD86と示す)、第89番目のグルタミン酸(図14ではカバットの分類によってE85と示す)、第88番目のセリン(図14ではカバットの分類によってS84と示す)が触媒三つ組残基を構成していると推定される。
【0110】
また、上述のUA−15の抗体断片とは、具体的には、UA−15抗体のL鎖の可変領域である。この抗体酵素も、上述のHpU−20−Lなどと同様に、HPウレアーゼの複数のモノクローナル抗体の中から、その可変領域のアミノ酸配列を分子モデリングすることによってその立体構造を推定した結果、セリン、ヒスチジン、アスパラギン酸からなる触媒三つ組残基を構成できるアミノ酸配列(抗体断片)として探し出されたものである。
【0111】
上記UA−15抗体のL鎖の可変領域(以下、UA−15−Lと呼ぶ)は、HPウレアーゼの分解酵素として作用する。そして、HPウレアーゼを分解することによってHPウレアーゼの機能を完全に破壊し、それに伴ってHP菌が酸性の強いヒト胃内で生存することを不可能にさせることができる。即ち、上記ペプチドを分解できる本発明の抗体酵素は、HP菌を効率よく除菌することができる。
【0112】
続いて、上記UA−15−Lの構造について以下に詳細に説明する。UA−15−Lは、上述のようにHPウレアーゼのモノクローナル抗体の一つUA−15のL鎖の可変領域であり、配列番号18に示すアミノ酸配列を一次構造として有している。
【0113】
図22には、軽鎖と重鎖からなるUA−15の可変領域の立体構造モデリング(分子モデリング)を行った結果、推定された立体構造を模式的に示す。図22においては、軽鎖をLで示し、重鎖をHで示している。図22に示すように、配列番号18に示すアミノ酸配列において、第1番目のアスパラギン酸(図22では、カバット(KABAT)の分類によって、Asp1と記す)、第28番目のセリン(図22では、カバットの分類によって、Ser27aと記す)、第94番目のヒスチジン(図22では、カバットの分類によって、His90と記す)が、触媒三つ組残基を構成していると推測される。
【0114】
なお、UA−15の重鎖の可変領域は、配列番号20に示すアミノ酸配列を一次構造として有しているが、このUA−15の重鎖には、触媒三つ組残基と推測される構造は存在しないため、抗体酵素としての活性を有しない。また、このUA−15の重鎖の可変領域をコードする遺伝子の塩基配列を、配列番号21として併せて記載する。
【0115】
上記抗体酵素のさらに他の例として、ケモカインレセプターCCR−5のモノクローナル抗体ECL2B−4の抗体断片を挙げることができる。上記ECL2B−4の抗体断片とは、より具体的には、ECL2B−4の軽鎖の可変領域(すなわち、ECL2B−4−L)、および、ECL2B−4の重鎖の可変領域(すなわち、ECL2B−4−H)である。
【0116】
この2つの抗体酵素は、ケモカインレセプターCCR−5の細胞外領域を構成するペプチドを免疫原として用いて取得されるモノクローナル抗体から得られたものである。そして、この2つの抗体酵素は、上記モノクローナル抗体の可変領域のアミノ酸配列を分子モデリングすることによってその立体構造を推定した結果、セリン、ヒスチジン(又はグルタミン酸)、アスパラギン酸からなる触媒三つ組残基を構成できるアミノ酸配列(抗体断片)として探し出された。
【0117】
抗体酵素ECL2B−4−L、ECL2B−4−Hも、後述の実施例に示すように、ケモカインレセプターCCR−5の細胞外領域ペプチド(配列番号27示すアミノ酸配列からなるペプチド)を分解するため、ケモカインレセプターCCR−5の分解酵素として作用する。
【0118】
つまり、上述の2つの抗体酵素は、このCCR−5を完全に分解し、その機能を消失させることができる。それゆえ、上記抗体酵素は、HIV感染を予防したり、エイズの症状の進行を抑えたりする抗HIV薬剤として有効に活用できると考えられる。
【0119】
続いて、上記ECL2B−4−Lの構造について、以下に詳細に説明する。ECL2B−4−Lは、CCR−5の細胞外領域ペプチドを免疫原とするモノクローナル抗体ECL2B−2の軽鎖の可変領域であり、配列番号23に示すアミノ酸配列を一次構造として有している。
【0120】
図27には、ECL2B−4−Lの可変領域の立体構造モデリング(分子モデリング)を行った結果、推定された立体構造を模式的に示す。図27に示すように、配列番号23に示すアミノ酸配列において、第1番目のアスパラギン酸(図27では、カバット(KABAT)の分類によって、D1と記す)、第28番目のセリン(図27では、カバットの分類によって、S26と記す)、第31番目のヒスチジン(図27では、カバットの分類によって、H27dと記す)が触媒三つ組残基を構成していると推測される。なお、上記第31番目のヒスチジンの代わりとして、第98番目のヒスチジン(図27では、カバットの分類によって、H93と記す)でもよい。また、上記第31番目のセリンの代わりとして、第28番目(図27では、S27aと記す)、第32番目(図27では、S27eと記す)、第97番目(図27では、S92と記す)の何れかであってもよい。
【0121】
次に、上記ECL2B−4−Hの構造について、以下に詳細に説明する。ECL2B−4−Hは、CCR−5の細胞外領域ペプチドを免疫原とするモノクローナル抗体ECL2B−4の重鎖の可変領域であり、配列番号25に示すアミノ酸配列を一次構造として有している。
【0122】
図28には、ECL2B−4−Hの可変領域の立体構造モデリング(分子モデリング)を行った結果、推定された立体構造を模式的に示す。図28に示すように、配列番号25に示すアミノ酸配列において、第92番目のアスパラギン酸(図28では、カバット(KABAT)の分類によって、D86と記す)、第65番目のセリン(図28では、カバットの分類によって、S60と記す)、第48番目のグルタミン酸(図28では、カバットの分類によって、E46と記す)が触媒三つ組残基を構成していると推測される。なお、上記第92番目のアスパラギン酸の代わりとして、第64番目のアスパラギン酸(図28では、カバットの分類によって、D59と記す)であってもよい。また、上記第65番目のセリンの代わりとして、第90番目のセリン(図28では、S84と記す)であってもよい。また、上記第48番目のグルタミン酸の代わりとして、第91番目のグルタミン酸(図28では、E85と記す)であってもよい。
【0123】
(4−2)本実施の形態に係る遺伝子
本実施の形態に係る遺伝子は、(a)配列番号1、3、5又は7に示されるアミノ酸配列からなる可変領域を有する抗体酵素をコードする遺伝子か、(b)配列番号1、3、5又は7に示されるアミノ酸配列において、1又はそれ以上のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなる可変領域を有する抗体酵素であって、かつポリペプチドや抗原タンパク質を切断及び/又は分解する活性を有する抗体酵素をコードする遺伝子であればよいが、本実施の形態では、▲1▼配列番号2に示される塩基配列(cDNA)からなる可変領域を有する遺伝子(i41SL1−2−H遺伝子)、▲2▼配列番号4に示される塩基配列(cDNA)からなる可変領域を有する遺伝子(i41SL1−2−L遺伝子)、▲3▼配列番号6に示される塩基配列(cDNA)からなる可変領域を有する遺伝子(i41−7−H遺伝子)、及び、▲4▼配列番号8に示される塩基配列(cDNA)からなる可変領域を有する遺伝子(i41−7−L遺伝子)が例示される。これら遺伝子はマウス(Mus musculus)由来である。
【0124】
本実施の形態に係る他の遺伝子として、配列番号15、17に示す塩基配列からなる遺伝子を挙げることができる。この配列番号15に示す塩基配列からなる遺伝子は、HpU−20のL鎖の可変領域をコードする遺伝子(cDNA)の塩基配列の一つであり、配列番号17に示す塩基配列からなる遺伝子は、HpU−20のH鎖の可変領域をコードする遺伝子(cDNA)の塩基配列の一つである。しかしながら、本発明に係る遺伝子はこれに限定されることなく、配列番号14、16に示すアミノ酸配列有する抗体酵素をコードする種々の遺伝子、さらには、その変異体をコードする遺伝子であってもよい。
【0125】
本実施の形態に係る他の遺伝子として、配列番号19に示す塩基配列からなる遺伝子を挙げることもできる。この配列番号19に示す塩基配列からなる遺伝子は、UA−15のL鎖の可変領域をコードする遺伝子(cDNA)の塩基配列の一つである。しかしながら、本発明に係る遺伝子はこれに限定されることなく、配列番号19に示すアミノ酸配列有する抗体酵素をコードする種々の遺伝子、さらには、その変異体をコードする遺伝子であってもよい。
【0126】
本実施の形態に係る他の遺伝子として、配列番号24に示す塩基配列からなるもの、あるいは、配列番号26に示す塩基配列からなるものを挙げることができる。配列番号24に示す塩基配列からなる遺伝子は、ECL2B−4のL鎖の可変領域をコードする遺伝子の塩基配列の一つであり、配列番号26に示す塩基配列からなる遺伝子は、ECL2B−4のH鎖の可変領域をコードする遺伝子の塩基配列の一つである。
【0127】
なお、本発明の「遺伝子」には、RNA及びDNAが含まれるものとする。RNAにはmRNAが含まれ、DNAには、例えばクローニングや化学合成技術又はそれらの組み合わせで得られるようなcDNAやゲノムDNAなどが含まれる。また、DNAは二本鎖でも一本鎖でもよく、一本鎖DNAは、センス鎖となるコードDNAでもよく、アンチセンス鎖となるアンチコード鎖でもよい(アンチセンス鎖は、プローブとして又はアンチセンス薬剤として利用できる)。さらに、本発明の「遺伝子」は、上記(a)又は(b)のタンパク質をコードする配列以外に、非翻訳領域(UTR)の配列やベクター配列(発現ベクター配列を含む)などの配列を含むものであってもよい。
【0128】
(4−3)抗体酵素i41SL1−2、i41−7の機能
上記i41SL1−2抗体、i41−7抗体は、後述する実施例に示すように、重鎖(i41SL1−2−H、i41−7−H)、軽鎖(i41SL1−2−L、i41−7−L)ともにポリペプチドや抗原タンパク質を切断及び/又は分解する活性を有することが実験的に確認された(図6(a)(b)、図10(a)(b)(c)参照)。また、結果は示さないが、コントロールとしてタンパク質HSAを、上記i41SL1−2−H、i41−7−H、i41SL1−2−L、及び、i41−7−Lと反応させたところ、HSAの分解は起こらなかった。このことから、上記i41SL1−2抗体、i41−7抗体は、重鎖、軽鎖ともに高い基質特異性を有していることが示された。
【0129】
また、特に、図10(a)(b)に示すように、i41−7抗体の重鎖、軽鎖はともに、ペプチダーゼ(peptidase)活性を有し、短いペプチドであれば、特異性に関係なく、反応速度は異なるが切断又は/分解することが明らかとなった。また、長いペプチドより短いペプチドの方が、反応速度が大きくなった。これは、特異性の問題ではなく、短いペプチドは、分子量も小さく、i41−7抗体の結合部位に接近しやすいためだと考察される。
【0130】
また、図10(c)では、i41−7−Lが抗原タンパク質である41S−2−L(25kDa)を分解し、22.5kDaのバンドが出現している。また、i41−7−Lは、BSA等の関係のないタンパク質を分解しなかったことから、抗原タンパク質を特異的に分解しているといえる。
【0131】
即ち、上記i41SL1−2−H、i41−7−H、i41SL1−2−L、及び、i41−7−Lは、基質がタンパク質の場合は特異的に切断又は/分解し、基質がポリペプチド(約30mer以上のポリペプチド)の場合はある程度特異的に切断又は/分解するものであり、基質がより短いペプチド(約30mer以下)である場合は、かなり非特異的に切断又は/分解するものと考えられる。
【0132】
従って、上記i41SL1−2−H、i41−7−H、i41SL1−2−L、及び、i41−7−Lは、抗体の優れた基質認識能と、酵素の基質変換能とを併せ持つ抗体酵素であることが明らかとなった。
【0133】
なお、触媒三つ組残基構造を立体構造中にもたない抗体、MA−2(メタンフェタミンに対するモノクローナル抗体)は、抗原分解反応を全く示さない(図12参照)。また、後述するように、HpU−9およびHpU−18抗体の重鎖には、ともにHisがなく、触媒三つ組残基様構造を持つことができない。この両方の重鎖は、ともにペプチダーゼ活性を全く示さなかった。
【0134】
従って、立体構造中に触媒三つ組残基構造を有する抗体酵素は、ポリペプチドや抗原タンパク質を切断及び/又は分解する活性を有することが示された。
【0135】
また、後述する実施例に示すように、上記i41SL1−2抗体の軽鎖、重鎖の抗原ペプチドに対する分解反応の速度論的解析を行った(図7(a)(b)、表5参照)。その結果、上記i41SL1−2抗体は、軽鎖の触媒効率(kcat/Km)はトリプシン(tripsin)と同等、重鎖もトリプシンの約1/10という高い値を示した。従って、i41SL1−2抗体は、軽鎖、重鎖ともに、天然のタンパク質分解酵素に匹敵する高い酵素活性を持つといえる。さらに、i41SL1−2−L、i41SL1−2−Hは、基質に対する高い親和性を有するという抗体としての性質を残しながら、ポリペプチドや抗原タンパク質を分解するという酵素活性を発揮していることが明らかとなった。
【0136】
従って、本発明に係る抗体酵素は、天然のタンパク質分解酵素と同等の活性と抗体の特有の基質に対する高い親和性、特異性とを併せもつことが実験的に示された。
【0137】
(4−4)本実施の形態に係る抗体酵素の生産方法
本実施の形態に係る上記抗体酵素は、前述した本発明に係る抗体酵素生産方法により生産することができるが、特に本実施の形態では、germlineの解析結果や分子モデリングによる立体構造解析により、酵素活性を有する抗体を生産している。
【0138】
具体的には、マウスのgermlineのうち、チーベ(Thiebe)らの分類で、bd2、19−25、hf24由来の軽鎖においては、酵素活性を確認した(特にbd2および19−25はgermline由来のアミノ酸残基で触媒三つ組残基構造を構築している。hf24では、ヒスチジン残基は変異によって生じている)。これに加えて、cr1(HpU18)およびcs1(HpU9)由来の抗体軽鎖(いずれもgermline由来のアミノ酸残基で触媒三つ組残基構造を構築していると推定されている)についても、ペプチドに対する分解活性を認めている。なお、HpU−2−H(J558.h)は、ヒスチジン残基がなく、Asp86、Glu85、Ser84(又はSer87)で触媒三つ組残基構造を構成しており、ポリペプチドや抗原タンパク質の分解活性を示した。この事は、酵素活性を持つ抗体が天然に多数存在することを示唆すると共に、germlineがこの種の抗体を見出す際の指標になることを示す重要な知見である。なお、詳細については、後述する実施例で説明する。
【0139】
(4−5)本発明に係る抗体酵素、及びその遺伝子の利用方法
本発明に係る抗体酵素、遺伝子等は、従来知られていなかった立体構造中に触媒三つ組残基構造を有するという知見に基づいて生産され得る新規な抗体酵素である。そのため、以下の有用性を有する。
【0140】
本発明を用いることにより、例えば、従来公知の免疫学的手法により作製した抗体のアミノ酸配列(例えば、従来公知の遺伝子工学的手法を用いて、塩基配列を決定し、そこから推定されるアミノ酸配列)から、当該抗体の立体構造をコンピューターによって推定し、その立体構造の中に触媒三つ組残基構造となりえる構造があるか否かを調べることにより、ポリペプチドや抗原タンパク質を切断及び/又は分解する活性を有する抗体酵素を予測し、効率的に取得することが可能となる。
【0141】
また、本発明を用いることにより、例えば、従来公知の遺伝子工学的手法を用いて、立体構造中に触媒三つ組残基構造となりえる構造を導入することにより、ポリペプチドや抗原タンパク質を切断及び/又は分解する活性を有する抗体酵素を人為的に作製することも可能となる。
【0142】
なお、従来公知の遺伝子学的手法についても、特に限定されるものではなく、例えば、部位特異的突然変異誘発法(Hashimoto−Gotoh, Gene 152,271−275(1995)他)、PCR法等を利用して塩基配列に変異を導入する方法、あるいはトランスポゾンの挿入による突然変異株作製法などの周知の変異タンパク質作製法を用いて、上述のようにして取得された遺伝子の塩基配列において、1又はそれ以上の塩基が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されるように改変を加えることによって作製することができる。また、変異タンパク質の作製には、市販のキットを利用してもよい。
【0143】
上記のような方法により取得、作製された抗体酵素は、抗体の特異性の高い基質認識能と酵素活性とを併せ持つものである。このため、例えば、細菌やウイルスが生体内に侵入し引き起こされる感染症等に対して、これらの原因となる細菌やウイルスに特異的な抗体酵素を取得又は作製することにより、該抗体酵素を診断や治療に用いることができると考えられる。また、例えば、癌に対しても、癌細胞に特異的に発現するポリペプチドを特異的に認識する抗体酵素を取得又は作製することにより、該抗体酵素を用いて癌を診断、治療することが可能である。
【0144】
また、上述した医薬品としての利用だけでなく、これまでにない新薬に向けて、将来は難病や薬剤耐性を克服する画期的な薬の開発に繋がる可能性がある。
【0145】
また、免疫学的診断にRIA(Radioimmunoassay)やELISA(Enzyme−Linked Immunosorbent Assay:酵素結合免疫吸着定量法)が現在多用されているが、目的とする抗体酵素を取得し、該抗体酵素を利用するにより、新しい臨床診断法の開発にも繋がる。
【0146】
さらに、抗体の高い分子認識能と酵素の持つ基質変換能力とを併せ持つ抗体酵素は、新しいバイオマテリアルとして新型のバイオセンサにも応用可能であり、病気の診断、環境測定などの検査等にも利用可能である。
【0147】
また、本発明に係る抗体酵素は、天然酵素とほぼ同等の活性を有することから、その触媒活性(酵素活性)を利用して、食品工業、化学工業において用いられる触媒等の反応促進剤などにも展開できると考えられる。
【0148】
また、本発明には、上述した抗体酵素をコードする遺伝子またはその変異遺伝子も含まれる。本発明に係る遺伝子又はその変異遺伝子は、各種ホスト細胞中に導入して、本発明に係る抗体酵素又はその変異タンパク質を発現させることができる。導入された本発明に係る遺伝子又は変異遺伝子は、ホスト細胞中でベクターとして存在してもよいし、ホスト細胞のゲノムDNA中に「外部」DNA、又は「付加」DNAとして含まれてもよい。ここでいう「外部」DNAとは、ホスト細胞のゲノム中には天然に存在しないが人為的操作の結果、ホスト細胞のゲノム中に挿入されたDNAを意味する。また上記「付加」DNAとは、特定のホスト細胞のゲノム中に天然に存在するが、人為的操作の結果、さらに追加してホスト細胞のゲノム中に挿入されたDNAを意味する。
【0149】
上記ベクターの具体的な種類は特に限定されるものではなく、ホスト細胞中で発現可能なベクターを適宜選択すればよい。すなわち、ホスト細胞の種類に応じて、確実に遺伝子を発現させるために適宜プロモーター配列を選択し、これと本発明に係る遺伝子を各種プラスミド等に組み込んだものを発現ベクターとして用いればよい。さらに、上記発現ベクターには、プロモーター配列だけでなくターミネーター配列を含めてもよい。
【0150】
また、上記遺伝子又は変異遺伝子がホスト細胞に導入されたか否か、さらにはホスト細胞中で確実に発現しているか否かを確認するために、各種マーカーを用いてもよい。例えば、ホスト細胞中で欠失している遺伝子をマーカーとして用い、このマーカーを含むプラスミド等を、本発明に係る遺伝子を含む発現ベクターとともにホスト細胞に導入する。これによってマーカー遺伝子の発現から本発明に係る遺伝子の導入を確認することができる。
【0151】
上記ホスト細胞は、特に限定されるものではなく、従来公知の各種細胞を好適に用いることができる。具体的には、例えば、大腸菌(Escherichia coli)等の細菌、酵母(出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeや分裂酵母Schizosaccharomyces pombe)、アフリカツメガエル(Xenopus laevis)の卵母細胞、各種哺乳動物の培養細胞、あるいは昆虫の培養細胞等を挙げることができるが、特に限定されるものではない。
【0152】
上記発現ベクターをホスト細胞に導入する方法、すなわち形質転換方法も特に限定されるものではなく、電気穿孔法、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法等の従来公知の方法を好適に用いることができる。
【0153】
前述したように、本発明に係る抗体酵素及びその遺伝子等は、各種感染症や癌等の診断や治療だけでなく、研究用の各種試薬に応用することが可能である。
【0154】
本発明に係る遺伝子や抗体酵素等の薬剤化については、従来公知の方法を適用することができ、特に限定されるものではない。例えば研究用試薬の場合、本発明に係る遺伝子を形質転換キット化したり、本発明に係る抗体酵素を異種発現系で大量生産し精製したりすればよい。
【0155】
なお、本実施の形態において説明した図4(a)、図4(b)、図8(a)、図8(b)、図15、図16、図29、図30、に示す各抗体酵素のアミノ酸配列におけるアミノ酸番号は、カバットの分類による番号であるため、それに該当する各配列番号に示すアミノ酸の番号とは異なっている。
【0156】
【実施例】
以下の実施例では、本発明に係る抗体酵素:i41SL1−2−H、i41−7−H、i41SL1−2−L、及び、i41−7−Lの物性を調べた結果について、順番に説明する。
【0157】
〔実施例1:抗体の作製〕
i41SL1−2抗体、i41−7抗体は、以下に示す方法に従って行った。
【0158】
具体的には、まず、配列番号9に示すアミノ酸配列からなる合成ポリペプチド又は、配列番号13に示す抗体41S−2の軽鎖を、それぞれm−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシニミドエステル(MBS)あるいはグルタルアルデヒドを用いてキャリアタンパク質に結合させて、抗原タンパク質として免疫に用いた。キャリアタンパク質としては、KLH(Keyhole Limpet Hemocyanin)を用いた。次に、上記抗原タンパク質を用いて、Balb/cマウスを免疫した。
【0159】
次いで、免疫させたマウスから脾臓を取り出し、脾臓細胞を調製した。この脾臓細胞と別途調製したマウス骨髄由来のミエローマ細胞とを、ポリエチレングリコールにより、融合させた後、HAT選択を行った。そして、エライザ(ELISA)法によるスクリーニングで、抗体産生陽性細胞群を選び、それらの細胞群についてクローニングを行い、抗体産生ハイブリドーマを得た。ハイブリドーマをマウス腹腔内に移植して腹水を採取し、モノクローナル抗体とした。なお、i41−7抗体は、スクリーニング段階で、41S−2抗体軽鎖とよく反応したものを選択した。作製した抗体は、アフィニティクロマトグラフィにより精製した。
【0160】
精製した抗体の純度は、SDS−PAGEによって確認した。
【0161】
〔実施例2:モノクローナル抗体の三次元立体構造解析〕
まず、各種モノクローナル抗体の塩基配列を決定した。具体的には、各種抗体産生細胞からmRNAを抽出後、RT−PCRによってcDNAを合成した。これをTemplateとするPCRで抗体遺伝子を増幅させ、pGEM−Tベクター(pGEM−T(登録商標) and p−GEM−T(登録商標) Easy Vector System, Promega Corporation, USA)に組み込んで、E.coli JM109にサブクローニングした。液体培養後、目的遺伝子が組み込まれたプラスミドを精製し、塩基配列を決定した。
【0162】
次に、参考データとしては、塩基配列から推定したモノクローナル抗体可変領域のアミノ酸配列(35株)、およびProtein Data Bank(PDB)(Research Collaboratory for Structural Bioinformatics)に登録されている抗体のアミノ酸配列(56株)を使用した。これらについて先ず、ソフトウェアAbM(Oxford molecular Ltd., UK)で抗体の三次元構造を構築し、続いてDiscover(Molecular Simulations Inc., USA)でエネルギーを最小化した。
【0163】
〔実施例3:germline geneの解析〕
三次元立体構造解析を実施した抗体のうち、マウス由来の抗体でL鎖のクラスがk型であった抗体については、Ig BLAST(National Center for BiotechnologyInformation)を使ってVκ germlineを検索した。各抗体が由来しているgermlineを推定するとともに、触媒三つ組残基構造を構築していると推定されるアミノ酸残基について、そのアミノ酸残基の配置やgermlineからの変異の状況を詳細に解析した。具体的には、以下のように行った。
【0164】
Protein Data Bank(PDB)より無作為に抽出した56株のモノクローナル抗体、および本発明者ら所有のモノクローナル抗体から無作為に抽出した34株について、上記実施例2に記載の方法により、分子モデリングを行って可変領域の立体構造を解析した。なお、本発明では、PDBの配列データを用いて、分子モデリングを行い、可変領域の立体構造を解析した。これは、全てのデータを、同じソフトウェアを用いて立体構造解析することにより、どの抗体のデータも均等に評価できると考えたからである。即ち、ある場合にはX線結晶構造解析データを用いて評価し、また別の場合には分子モデリングデータを用いて評価するというように、不揃いのデータを用いて評価しないという考えによる。
PDBから無作為に抽出した56株の内訳は、52株がマウス由来で、残りの4株がヒト由来であった。抗体L鎖はκおよびλの2種類のクラスに分類されるが、マウスの場合は約95%がκ鎖であるといわれている。また、マウスκ鎖は胚細胞型遺伝子(germline gene)に関する解析が進んでおり、これに関する情報が入手しやすいという利点がある。そこでマウスκ鎖(47株)について、より詳細に解析した。
【0165】
この中から、触媒三つ組残基構造に関連する株を選び出し、以下のように分類した。まず、先に述べたi41SL1−2−Lと共通しているAsp1、Ser27A、His93により触媒三つ組残基構造を構成するものを、タイプ◎として分類した。そして、Asp1、Ser26、His93により触媒三つ組残基構造を構成するものを、タイプ○として分類し、「Asp1、Ser27AorSer26、His93」以外の組み合わせ(例えば、His90やHis91を使用)で触媒三つ組残基を構成するものを、タイプ●として分類し、germlineから変異したことで触媒三つ組残基構造を構築できなくなったものをタイプ×として分類し、germlineから変異したアミノ酸を含めて触媒三つ組残基構造を構築したものを、タイプ*として分類した。
【0166】
先ず、全47株のgermlineに関する分類結果を表1に示す。
【0167】
【表1】
Figure 2004097211
Figure 2004097211
【0168】
表1に示したように、◎、○、及び●に該当する株が16株(全体の34.0%)見出された。クラスがκ鎖であるマウス由来のL鎖では47株中の12株(25.5%)が、上記◎あるいは○に当てはまった。
【0169】
表1に示す全47株のgermlineに関する分類結果から、触媒三つ組残基構造を構築するものを抽出したものを表2に示す。
【0170】
【表2】
Figure 2004097211
【0171】
上記表2に示したように、タイプ▲1▼(または▲1▼*)の触媒三つ組残基構造を構成している抗体には共通性があり、19株の内の9株がbb1で、3株がcr1であった。また、先に述べたi41SL1−2−Lは、germlineがbd2であった。
【0172】
次に、germlineのbb1、cr1、bd2に共通している特徴を調べた。
【0173】
【表3】
Figure 2004097211
【0174】
上記表3に示したように、これらのgermlineはどれも超可変領域1(CDR1)が16個のアミノ酸残基で構成されていた。CDR配列は、抗体が抗原を強く認識するために大きく変異を起こす箇所である(これが超可変領域と呼ばれる由縁である)。
【0175】
そこで、Asp1、Ser27A、His93の配列とgermlineとの関係について更に解析を進めた。
【0176】
図11(a)(b)(c)にgermlineが、チーベ(Thiebe)らの分類で、bb1である1DBA株について行った分子モデリングの結果を示した。FRをワイヤーで、CDRをリボンで示した。Asp1はFR1、Ser27AはCDR1、His93はCDR3とそれぞれ一次配列の中の異なる領域に存在している。ところが図11(b)(c)に示すように、これら3つのアミノ酸残基は、ちょうどCDR3ループのHis93が存在する先端付近に位置し、His93と同じ高さ、すなわち水平方向で見た時のほぼ同一平面上に位置していることがわかる。
【0177】
これらは超可変領域のループが集中している空間の先端部分に当たるので、立体障害なしに抗原を取り込むことができると考えられる位置である。また、図11(a)に示すように、CDR1を構成するアミノ酸が16個の場合は、CDR1のループは、ちょうどこの付近で緩やかに波をうつ構造をとり、これより先端部分(27Bから31番の8アミノ酸残基)は、他のループより突出している。このため、上記抗体酵素は、立体障害なしに抗原ペプチドを取り込むことができる位置に触媒三つ組残基構造を有することとなり、抗原ペプチドをスムーズに分解することができると考えられる。そして、この立体構造上の特徴は上記表2で示した10株の抗体L鎖および上記i41SL1−2−Lと共通していた。
【0178】
次に、Thiebeらのデータ(Thiebe R, Schanble KF et al, Eur J Immunol, 29(7), 2082−2081(1999))のgermlineの中でAsp1、Ser27A、His93の出現頻度について調べてみると、1番にアスパラギン酸残基を使用するのは全93種類中で58種類あり、全体の62.3%であった(アスパラギン酸残基は1番のみならず、可変領域全体に広く分布しているアミノ酸残基である)。セリン(Ser)残基の27AはCDR1内にあるが、27A付近に存在するSerは触媒三つ組残基構造を構成することができる。
【0179】
こうしたSerを入れると有効なSerを含むgermlineが92種類あった。つまり、Asp1とCDR1部分のSerが立体構造上近い位置に配置するgermlineは多数存在することになる。これに対し、Hisは出現率が低く93番目に存在するgermlineはわずか7種類(bb1、cr1、bl1、cs1、bd2、bj2、8−16)のみであった。しかもその内の6種類(8−16以外のもの)は、全て触媒三つ組残基構造を構成でき、CDR1が16アミノ酸残基からから構成されているbb1等のgermlineである。つまり、表3で示したbb1、cr1、bl1、cs1、bd2、bj2の6種類は、抗原を分解する為に、理想的な位置にアミノ酸残基を配置しているgermlineといえる。
【0180】
次に、これらのgermlineから産生された抗体が抗原分解活性を有するか否かを実験的に調べた。本発明者らはこれまでに百数十種類のモノクローナル抗体を作製しており、その中の34株についてgermline(抗体軽鎖(マウス型κ鎖))を決定した。その中で、実験に供したもののデータをまとめて表4に示す。
【0181】
【表4】
Figure 2004097211
【0182】
なお、表1、表2、表4においては、タイプ◎:Asp1、Ser27A、His93により触媒三つ組残基構造を構成するもの、タイプ○:Asp1、Ser26、His93により触媒三つ組残基構造を構成するもの、タイプ●:「Asp1、Ser27AorSer26、His93」以外の組み合わせ(例えば、His90やHis91を使用)で触媒三つ組残基を構成するもの、タイプ*:germlineから変異したことで触媒三つ組残基構造を構築できなくなったもの、タイプ×:germlineから変異したアミノ酸を含めて触媒三つ組残基構造を構築したものとする。
【0183】
先に議論したように超可変領域の先端部分でHisを持つ触媒三つ組残基構造の構築が可能なgermline由来の株は21株見つかった。また、2株(No.16、18)でHisを持つ触媒三つ組残基構造を構築できなかった。
【0184】
即ち、触媒三つ組残基構造を持つ抗体サブユニット(軽鎖、重鎖)の多くにおいてペプチダーゼ活性、及び/又はプロテアーゼ活性を認めたことから、これらの抗体についてgermlineを調べてみると、CDR1が16個のアミノ酸残基で構成されていること、そしてカバット(KABAT)の分類でヒスチジン残基を93番目(又はその近傍)に持つという共通点があった(タイプ▲4▼)。これは、ある特定のgermlineで既に酵素活性を持つ抗体L鎖が用意されていることを示唆する重要な知見である。
【0185】
また、触媒三つ組残基構造が存在する抗体の中でこれまでに酵素作用に関する実験を進めてきた株は41S−2(germline:hf24/すでに公表済)およびi41SL1−2(bd2)であるが、これ以外の株についても更に実験を進めており、HpU−2抗体の重鎖、HpU−9抗体の軽鎖、HpU−18抗体の軽鎖、さらにi41−7抗体の軽鎖および重鎖が、ペプチダーゼ活性、プロテアーゼ活性を有することが明らかとなった。
【0186】
また、i41−7抗体は、CDR−1が11個の19−25のgermlineに属していた。そこで、CDR−1が11個のgermline全てを検索したところ、19−25以外に、19−14、19−17、19−23、12−41(これらは表3にボックスで表示)に、触媒三つ組残基構造が認められた。さらに詳細に調べてみると、CDR−1が11個のアミノ酸残基で構成されていること、そしてカバット(KABAT)の分類で、ヒスチジン残基を91番目(又は55番目)に持つという共通点があった(タイプ▲4▼*)。
【0187】
以上の知見をまとめると次のことがいえる。▲1▼天然型抗体酵素には大きく分けて2つのタイプが存在すると考えられる。1つは、既にgermlineの段階で触媒三つ組残基構造の構築に有利な配列を持つタイプで、チーベ(Thiebe)らの分類で、少なくともbb1、cr1、bl1、cs1、bd2、bj2、hf24、19−25、19−14、19−17、19−23、12−41、21−12の13通りがこれに当たる。hf24の場合には、germlineに存在するHis91の他に、突然変異によりHis53が表れ、これが触媒三つ組残基構造を構築した可能性もある。▲2▼触媒三つ組残基構造の構築に有利な配列を持つgermlineはThiebeらの分類では僅か13種類(全体で93種類であるから13.9%)である。
【0188】
しかし、PDBによる検索では約20%、本発明者らが所有しているモノクローナル抗体では約30%の抗体から触媒三つ組残基構造となり得るものが見つかっており、予想以上の高い確率で上記のgermlineがリクルートされている。
【0189】
さらに、結論として、このように、抗体の塩基配列から立体構造を予測し、表3に示すボックスで示されるgermlineを持つ抗体を選択すれば軽鎖について相当の高い確率で効率的に抗体酵素を取得する事が可能である(結論▲1▼)。
【0190】
また、重鎖については軽鎖の考え方を当てはめると,これまでに41S−2抗体、i41SL1−2抗体、i41−7抗体の重鎖についてはHis、Asp、Serの触媒三つ組残基構造を構成し、酵素活性を認めた。41S−2抗体、i41SL1−2抗体、i41−7抗体の重鎖のFamilyは、それぞれ、VH10、VH1、VH1である。一方、7C4抗体、HpU−2抗体の重鎖にはHis、Asp、Serによる触媒三つ組残基構造はなく、Glu、Asp、Serで三つ組残基を構成し、酵素活性を認めた。7C4抗体、HpU−2抗体の重鎖のFamilyはそれぞれ、VH5、VH1である。特に、この両者(7C4抗体、HpU−2抗体の重鎖)はすべて同じ組み合わせ(Ser84、Glu85、Asp86)で触媒三つ組残基構造を構成していた。つまり重鎖についてはVH1、VH5、VH10が効率的に抗体酵素として活性を発揮できるFamilyである(結論▲2▼)。
【0191】
また、本来触媒三つ組残基構造を有していない抗体でさえ、遺伝子工学的にgermline又はFamilyに相当する触媒三つ組残基構造を導入すれば、これも高い効率で抗体酵素を取得する事が可能である事が本発明からいえる(結論▲3▼)。
さらに、図37に示すように、PDBデータの抗体軽鎖(κ型)47種類のうち、18種類がHisを持つ触媒三つ組残基構造を有していた(38.3%)。また、図38に示すように、本発明者らの所有する抗体軽鎖(κ型)の37種類のデータのうち、20種類がHisを持つ触媒三つ組残基構造を有していた(54.0%)。これらを合計すると、立体構造から見出される抗体軽鎖のうちで、酵素活性を持つ抗体軽鎖の検出率は45.2%となる。これが、抗体軽鎖を検出できる一般的な確率である。
【0192】
ところが、上記のようにgermlineを特定すれば酵素活性を持つと考えられるHisを持つ触媒三つ組残基構造を有する抗体は88.1%(PDBデータ;16/19=84.2%(図37参照)、本発明者らの所有する株に関するデータ;21/23=91.3%(図38参照)、計;(16+21)/(19+23)=37/42=88.1%)とその確率は100%に近づく。なお、100%とならないのは本来触媒三つ組残基構造をもつものが、抗体の成熟過程で突然変異を起こてHisを失い、Hisを持つ触媒三つ組残基構造を失うものがあるからである。PDBデータの抗体で1種類、本発明者らが所有する抗体で2種類が変異していた。つまり、上記のgermlineに特定すれば、ほぼ完全に酵素活性を持つ抗体を取得する事ができる(結論▲4▼)。
【0193】
〔実施例4:軽鎖、重鎖の調製〕
精製抗体に対して限外濾過を繰り返すことによって、低分子のプロテアーゼインヒビターを除去した。これに続き、0.2M b−mercaptoethanolによる還元反応(15℃、3hr)と0.3M iodoacetamideによるアルキル化反応(15℃、15min)を行い、重鎖と軽鎖とに分離した。これを限外濾過濃縮後、Protein−Pak 300カラム(Millipore Corporation Waters Chromatography Division)を用いてHPLC精製した。移動相には6M guanidine 溶液(pH6.5)を使用し、流速は0.15mL/minとした。
【0194】
分取した重鎖及び軽鎖の溶液は、6M guanidine溶液で希釈調製後、PBS溶液(137mM NaCl、2.7mM KCl、1.5mM KHPO、8.0mM NaHPO、pH7.3)に対して透析してrefolding(再構成)した後に、実験条件に合わせてバッファー交換した。
【0195】
〔実施例5:抗体酵素の活性測定〕
触媒三つ組残基構造と酵素活性との関係を明らかにする目的で、この構造を持つと推定されたi41SL1−2抗体軽鎖(i41SL1−2−L、germline bd2由来)および重鎖(i41SL1−2−H)、i41−7抗体軽鎖(i41−7−L、germline 19−25由来)および重鎖(i41−7−H)についてペプチド基質に対する分解反応を実施した。
【0196】
具体的には、i41SL1−2抗体の重鎖、軽鎖のそれぞれに対して、配列番号9に示すCDR1抗原ペプチド(RSSKSLLYSNGNTYLY)を反応させた。
【0197】
反応条件は、5% DMSO、9mM HEPES、7.5mM リン酸バッファー(pH7.1)、25℃のもとで行った。i41SL1−2−Lは0.4μM、i41SL1−2−Hは0.2μM、抗原ペプチドは50μMの濃度で実験を行った。
【0198】
その結果は、図6に示す。(●)はi41SL1−2−Lと抗原ペプチドとを反応させたもの、(○)は抗原ペプチドだけを反応させたもの、(▲)はi41SL1−2−Hと抗原ペプチドとを反応させたものを示す。図6(a)(b)に示すように、重鎖、軽鎖ともに反応時間の経過と共に、抗原ペプチドの濃度が低下し、最終的には検出できなくなった。そこで、時間の経過に伴って新たにHPLCクロマトグラム上で検出したピーク部分を分取して質量分析したところ、抗原ペプチドの1番目のアルギニン残基と2番目のセリン残基との間が切断されたC末端側の断片であることがわかった。この事からi41SL12−L、及びi41SL12−Hは、抗原ペプチドを分解することが明らかとなった。
【0199】
また、i41−7抗体の軽鎖、重鎖それぞれに対して、配列番号10、11、12に示す3種類の合成ペプチドを反応させた。i41−7抗体は、タンパク質を抗原として得たもので、現在までのところエピトープを決定していない。本来はエピトープに相当するペプチドを基質として酵素活性を検討するべきところであるが、我々がこれまでに得た抗体酵素はタンパク質には高い特異性を示すけれども、短いペプチドに対する特異性は低い。そこで、本実験では分子量数百Daから2.3kDaの3種類の合成ペプチドを基質として使用した。
【0200】
反応条件は、15mM リン酸バッファー(pH6.5)、25℃のもとで行った。配列番号10、11、12に示す合成ペプチドはそれぞれ120μM、i41−7−Lは0.8μM、i41−7−Hは0.4μMの濃度で用いた。
【0201】
結果を図10(a)(b)に示す。(●)は配列番号10に示すペプチドTP41−1とi41−7−L又はi41−7−Hとを、(○)は配列番号10に示すペプチドTP41−1のみを、(▲)は配列番号11に示すペプチドとi41−7−L又はi41−7−Hとを、(△)は配列番号11に示すペプチドのみを、(■)は配列番号12に示すペプチドとi41−7−L又はi41−7−Hとを、(□)は配列番号12に示すペプチドのみを、反応させたものを示す。
【0202】
図10(a)(b)に示すように、i41−7−L、及びi41−7−Hは、これらのペプチドを全て分解した。
【0203】
また、i41−7抗体の軽鎖(i41−7−L)による抗原タンパク質の分解反応をSDS−PAGEにより解析した。基質として用いたのは、抗体41S−2の軽鎖(41S−2−L)である。なお、この基質として用いた41S−2−Lは、refoldingが不完全で抗体酵素としての活性がないものである。
【0204】
分解反応は、上記と同様の条件で行い、41S−2−Lは2μMの濃度で用い、i41−7抗体の軽鎖は0.8μMの濃度で用いた。結果を図10(c)に示す。レーンMは、タンパク質分子量マーカーを、レーン1〜5はそれぞれ、反応開始から0、2、4、6、8日目におけるi41−7−Lと41S−2−Lとの反応液を電気泳動した結果を示す。25.0kDaの位置のバンドが抗原タンパク質41S−2−Lを示しており、22.5kDaの位置のバンドが41S−2−Lの分解産物を示している。なお、コントロールとして、i41−7抗体の軽鎖のみを反応させた場合と、41S−2−Lのみを反応させた場合の結果を示す。このSDS−PAGEの結果に基づき、i41−7−Lによる41S−2−Lの分解反応をグラフ化したものも併せて示す。
【0205】
この図10(c)のSDS−PAGEの結果及びグラフから、25.0kDaの位置のバンドが分解され、22.5kDaの位置のバンドが生じているのがわかる。また、コントロールから基質の41S−2−Lのみの反応では、25.0kDaの位置のバンドは分解されていない。このことから、i41−7抗体の軽鎖は、抗原タンパク質41S−2−Lを分解することが示された。
【0206】
次に、i41−7完全抗体、軽鎖(i41−7−L)、重鎖(i41−7−H)、及びMA−2抗体のポリペプチド分解能を調べた。i41−7完全抗体とは、重鎖と軽鎖とからなる完全な抗体である。MA−2抗体(germline:aq4)は、メタンフェタミンに対するモノクローナル抗体であって、立体構造中に触媒三つ組残基構造を持たない抗体である。
【0207】
反応条件は、上記実験と同一で行い、基質として、配列番号10に示すポリペプチドTP41−1(図12中では「TP」と記載している)を120μMの濃度で用いた。i41−7完全抗体、i41−7−L、MA−2抗体は0.8μMの濃度で、i41−7−Hは0.4μMの濃度で用いた。
【0208】
結果を図12に示す。(●)はi41−7−LとTP41−1とを、(□)はi41−7−HとTP41−1とを、(△)はi41−7完全抗体とTP41−1とを、(■)はMA−2抗体とTP41−1とを、(○)はコントロールとしてTP41−1のみを反応させた。
【0209】
図12に示すように、i41−7抗体の重鎖、軽鎖はともに、反応開始後しばらくの間、ほとんどペプチドを分解しない誘導期を示し、その後、ペプチドを分解する活性期を示すことがわかった。さらに、結果は図示しないが、ペプチドが完全分解された後、再びペプチドを添加すると、i41−7抗体の重鎖、軽鎖はともに、誘導期なしにすぐにペプチドを分解した。この結果から、i41−7抗体の重鎖、軽鎖はともに、誘導期から活性期へと移る際に、コンフォメーション変化するものと考えられる。また、一度コンフォメーション変化すれば、その後も活性型として維持されると考えられる。
【0210】
また、重鎖と軽鎖とが揃った完全なi41−7抗体は、ポリペプチドを分解しなかった。これは、i41−7完全抗体は、S−S結合や非共有結合等により、軽鎖と重鎖とが強く結合しているため、ポリペプチドと接触しても活性を持つ形態にコンフォメーション変化できないためと考えられる。
【0211】
また、立体構造中に触媒三つ組残基構造を有さないMA−2抗体は、重鎖、軽鎖ともに、ポリペプチドを分解しなかった。また、結果は図示しないが、同じく触媒三つ組残基構造を有しないMA−15抗体軽鎖(germline:ba9)、7C4抗体軽鎖(germline:af4)、HpU−9抗体重鎖、及びHpU−18抗体重鎖もポリペプチド及び抗原タンパク質を分解しなかった。
【0212】
この結果から、立体構造中に触媒三つ組残基構造を有する抗体酵素は、ポリペプチドや抗原タンパク質を切断又は/分解する活性を有することが示された。
【0213】
〔実施例6:i41SL1−2−Lおよびi41SL1−2−Hの抗原ペプチドに対する分解活反応の速度論的解析〕
i41SL1−2−Lおよびi41SL1−2−HのCDR1抗原ペプチドに対する分解反応のプロファイルを詳細に追跡すると、抗原ペプチドとの反応初期においてペプチドの濃度がほとんど変化しない(ペプチドがほとんど分解されない)「誘導期」が認められた(この長さは実験条件によって異なる)。ところが、一度ペプチドを分解して活性状態にある抗体溶液に再度抗原ペプチドを添加すると、今度は誘導期が認められなくなった。そこで、抗原ペプチド再添加反応における分解初速度を測定し、Michaelis−Menten式による解析を行った。
【0214】
その結果、図7(a)(b)に示すように、軽鎖、重鎖ともにHanes−Woolfプロットにおいて高い相関を示した。従って、これらはMichaelis−Menten式に従う酵素反応であると言える。ここで得た動力学的パラメータをトリプシン(trypsin)(異なる合成ペプチドを基質として求めた値)と比較して表5に示した。
【0215】
【表5】
Figure 2004097211
【0216】
上記表5に示すように、軽鎖の触媒効率(kcat/Km)はトリプシンと同等、重鎖もトリプシンの約1/10という高い値を示した事から、本抗体酵素の重鎖、軽鎖ともに、天然の酵素に匹敵する高い酵素活性を持つといえる。ところが、各パラメータを見ると基質に対する親和性(Km)については、本抗体酵素の重鎖、軽鎖がトリプシンよりも強いのに対して、回転数(kcat)については、重鎖、軽鎖ともにトリプシンの約1/200の値を示し、両者の性質に違いが認められた。この結果は、i41SL1−2−Lやi41SL1−2−Hが基質に対する高い親和性を有するという抗体としての性質を残しながら、ポリペプチドを完全に分解するという酵素活性を発揮していることを示している。
【0217】
〔実施例7:HpU−20およびUA−15のH鎖およびL鎖の調製〕
上述の実施例1に記載の手順に従って、HpU−20、UA−15という2種の抗HPウレアーゼマウスモノクローナル抗体を作製し、上述の実施例2と同様の方法で、モノクローナル抗体のアミノ酸配列および塩基配列が決定され、三次元立体構造解析が実施された。
【0218】
その結果、推定されたHpU−20(L鎖)の可変領域の立体構造を図13に、HpU−20(H鎖)の可変領域の立体構造を図14に、UA−15(H鎖およびL鎖)の可変領域の立体構造を図22に模式的に示す。これらの立体構造予測から、HpU−20のL鎖およびH鎖、UA−15のL鎖については、触媒三つ組残基様構造が認められた。一方、UA−15(H鎖)には、触媒三つ組残基様構造は認められなかった。
【0219】
さらに、上述の実施例4と同様の方法で、HpU−20およびUA−15のH鎖およびL鎖が調製された。
【0220】
〔実施例8:抗体酵素HpU−20L鎖およびH鎖を用いた酵素活性試験1〕HpU−20−LおよびHpU−20−HのTP41−1ペプチド(配列番号31)に対する酵素活性試験を実施した。この分解反応は、以下のような材料、条件、手順で実施された。
【0221】
(材料)
▲1▼:HpU−20 mAb(in15mM PB pH6.5、精製・透析終了後、濾過滅菌されたもの。)
▲2▼:HpU−20抗体
▲2▼−1:Lot.1[HpU−20−L]( in15mM PB pH6.5、濃度94.4μg/ml)
▲2▼−2:Lot.1[HpU−20−H]( in15mM PB pH6.5、濃度70.8μg/ml)
▲2▼−3:Lot.2[HpU−20−L]( in15mM PB pH6.5、濃度96.7μg/ml)
▲2▼−4:Lot.2[HpU−20−H]( in15mM PB pH6.5、濃度103.3μg/ml)
▲3▼:精製された TP41−1 ペプチド
(反応液)
▲1▼:HpU−20−L:0.8μM(20μg/ml)
▲2▼:HpU−20−H:0.4μM(20μg/ml)
▲3▼:HpU−20 mAb:0.8μM(120μg/ml)
▲4▼:TP41−1 ペプチド:120μM(284μg/ml)
(反応条件)
反応温度:25℃
小試験管、マイクロチップ、15mM PB(pH6.5):滅菌処理
実験操作:クリーンベンチ内
(方法)
(1):TP41−1を15mM PB pH6.5で1.7mg/mlに調製し、濾過滅菌する。
(2):次に、(1)の1.7mgTP41−1を15mM PB pH6.5で568μg/mlに調製する。
(3):20抗体のH、L鎖を15mM PB pH6.5でそれぞれ40μg/mlに調製する。
(4):(2)と(3)を1:1の割合で混合する。
(5):HPLCでペプチドの経時変化を追跡する。
【0222】
この実験の結果については、Lot.1を図17に、Lot.2を図18に示す。図17、図18のグラフでは、横軸に反応時間(時間)を、縦軸に基質であるTP41ペプチドの濃度(μM)を示す。
【0223】
図17、18のグラフに示すように、調製したLot.1およびLot.2において、若干の反応性の違いはあるものの、ともに再現性よくTP41ペプチドを完全に分解した。これらの結果から、HpU−20−LおよびHpU−20−Hは、TP41−1ペプチドの分解反応において酵素活性を有することが確認された。
〔実施例9:HpU−20L鎖およびH鎖を用いた酵素活性試験2〕
続いて、活性化したHpU−20L鎖およびH鎖を用いて、タンパク質分解実験を以下のような材料、反応液の組成・種類、反応条件、方法で実施した。
【0224】
(材料)
▲1▼:活性化した(一度TP41ペプチドを完全に分解した)Lot.2[HpU−20−L](in15mM PB pH6.5、02.10.15分離、 02.10.16精製、02.10.21 PBS透析終了、02.10.21〜22 PBにbuffer交換。4.2ヶ月保存、濃度96.7μg/ml)
▲2▼:HP菌ウレアーゼ(M.W=522600)02.07.01精製、濃度1.84mg/ml
▲3▼:BSA SIGUMA A−6003 Lot51K7600
▲4▼:HSA WAKO 019−10503 LotKSH6886
(反応液組成)
▲1▼:HpU−20−L:0.4μM(20μg/ml)
▲2▼:HP菌ウレアーゼ:52nM(28μg/ml)
▲3▼:BSA:0.4μM(28μg/ml)
▲4▼:HAS:0.4μM(28μg/ml)
(反応条件)
反応温度:25℃
小試験管、マイクロチップ、15mM PB(pH6.5):滅菌処理
実験操作:クリーンベンチ内
(方法)
(1)HSA、BSAを15mM PB pH6.5で2.2mg/mlに調製し、濾過滅菌する。
(2)次に、(1)の1.7mg/ml TP41−1を15mM PB pH6.5で55μg/mlに調製する。
(3)1.84mg/ml HP菌ウレアーゼを15mM PB pH6.5で55μg/mlに調製する。
(4)活性化したHpU−20−Lと(2)、(3)を1:1の割合で混合する。
(5)SDS−PAGEで抗体及び、各タンパクの変化を追跡する
(反応液の種類)
▲1▼:0.4μM HpU−20−L+0.4μM BSA:320μl
▲2▼:0.4μM HpU−20−L+0.4μM HSA:320μl
▲3▼:0.4μM HpU−20−L+52nM HP菌ウレアーゼ:320μl
▲4▼:0.4μM HpU−20−Lのみ:320μl
▲5▼:0.4μM BSAのみ:320μl
▲6▼:0.4μM HSAのみ:320μl
▲7▼:52nM HPウレアーゼのみ:320μl
本実験の結果を図19〜図21に示す。図19〜図21は、反応開始1時間後の試料のSDS−PAGEの結果を示す図である。なお、各レーンにおける試料については、Mはマーカーであり、▲1▼〜▲7▼は、上記の各反応液である。
【0225】
図19〜図21に示す結果から、約1時間の反応でHpU−20−LはBSAを全く分解しないことがわかる。HSAに対しては28.5kDaに薄いバンドが見られるがコントロールのHSAはほとんど変化しておらず非常に弱い分解しか起こしていないことがわかる。これに対し、HP菌ウレアーゼに対しては、約1時間の反応で、50kDaに強いバンドが、26kDaに弱いバンドが観察された。また、βサブユニットのバンドはコントロールに比べ、26.7%減少していた。αサブユニットのバンドについては反応前後でほとんど変化していなかった。この結果から、HpU−20−Lは、HP菌ウレアーゼのβサブユニットを特異的に分解することが明らかとなった。
【0226】
〔実施例10:UA−15L鎖およびH鎖を用いた酵素活性試験〕
UA−15−LおよびUA−15−Hを用いて、TP41−1ペプチド(配列番号31)に対する酵素活性試験を実施した。この分解反応は、以下のような反応液を用いて、以下のような反応条件で実施された。
【0227】
(反応液)
▲1▼:Lot.1[UA−15−L]:0.8μM(20μg/ml)
▲2▼:Lot.1[UA−15−H]:0.4μM(20μg/ml)
▲3▼:Lot.2[UA−15−L]:0.8μM(20μg/ml)
▲4▼:Lot.2[HpU−20−H]:0.4μM(20μg/ml)
▲5▼:TP41−1ペプチド:120μM(284μg/ml)
(反応条件)
反応温度:25℃
小試験管、マイクロチップ、15mM PB(pH6.5):滅菌処理
実験操作:クリーンベンチ内
この実験の結果については、Lot.1を図23に、Lot.2を図24に示す。図23、図24のグラフでは、横軸に反応時間(時間)を、縦軸に基質であるTP41ペプチドの濃度(μM)を示す。図23および図24に示すグラフからも分かるように、UA−20のL鎖についてはTP41−1ペプチドを分解する酵素活性が確認されたがUA−20のH鎖については、酵素活性は確認されなかった。
【0228】
続いて、反応液にLot.2におけるUA−15−Lの反応液に、ペプチド基質(TP41−1)を再添加して、15℃、25℃、37℃の各温度でペプチドの分解実験を実施した。
【0229】
結果を図25に示す。この結果から、反応温度が25℃の場合が、UA−15−Lの酵素活性が最も高いことが明らかとなった。
【0230】
さらに、上記の反応条件で、反応液にLot.1[UA−15−L]を用いて、一度TP41−1ペプチドを完全に分解した後、この溶液にTP41−1ペプチドを、5μM、10μM、15μM、20μM、30μM、65μM、80μMの各濃度で添加して、UA−15−Lによる速度論的解析を行った。その結果を図26および表6に示す。
【0231】
【表6】
Figure 2004097211
【0232】
〔実施例11:ECL2B−4のH鎖およびL鎖の調製〕
上述の実施例1に記載の手順に従って、ECL2B−4という抗HPウレアーゼマウスモノクローナル抗体を作製し、上述の実施例2と同様の方法で、モノクローナル抗体のアミノ酸配列および塩基配列が決定され、三次元立体構造解析が実施された。
【0233】
その結果配列が決定された、ECL2B−4軽鎖のアミノ酸配列、および、それをコードするcDNAの塩基配列を図29に示し、ECL2B−4重鎖のアミノ酸配列、および、それをコードするcDNAの塩基配列を図30に示す。なお、図29、図30では、可変領域(CDR−1〜CDR−3)に下線を付して示す。
【0234】
次に、配列決定された各アミノ酸配列を基にして、分子モデリングが行われた。図27には、分子モデリングによって推定されたECL2B−4−Lの可変領域の3次元構造を示す。また、図28には、分子モデリングによって推定されたECL2B−4−Hの可変領域の3次元構造を示す。
【0235】
〔実施例12:ECL2B−4抗体の酵素活性試験〕
続いて、ECL2B−4−L、ECL2B−4−Hの酵素活性を確認するためのペプチド分解試験が以下のようにして行われた。
【0236】
先ず、ECL2Bペプチド(配列番号27)の分解反応が、25℃の15mMリン酸バッファー(pH6.5)中で実施された。反応をモニタリングするために、20μlの反応液がカラム温度40℃、定組成条件下のRP−HPLC(Jasco製)に注入された。
【0237】
この分解反応の反応液として、以下の▲1▼〜▲5▼が作製された。
▲1▼ECL2B−4(L)0.8μM+ECL2B ペプチド:50μM:800μl作製
▲2▼ECL2B−4(H)0.4μM+ ECL2B ペプチド:50μM:800μl作製
▲3▼ECL2B ペプチド:50μM:500μl作製
▲4▼ECL2B−4(L):0.8μM:300μl作製
▲5▼ECL2B−4(H):0.4μM:300μl作製
その結果を図31〜図33に示す。図31のグラフでは、横軸に反応時間(時間)を、縦軸に基質であるECL2Bペプチドの濃度(μM)を示す。また、図32(a)〜(c)には、HPLCを使用してモニタリングされた結果を示す。また、図33には、この酵素分解実験における速度論的解析結果を示す。図33(a)は、基質(ECL2Bペプチド)濃度と分解速度との関係を示すグラフであり、図33(b)は、Hanes−Woolfプロットの結果を示すグラフである。
【0238】
そして、上記Hanes−Woolfプロットを用いて算出したVmax、Km、kcat、kcat/Km値(平均プロット)を以下の表7に示す。
【0239】
【表7】
Figure 2004097211
【0240】
これらの結果から、ECL2B−4−LおよびECL2B−4−Hは、ECL2Bペプチドの分解反応における酵素活性を有することが確認された。それゆえ、ECL2B−4−LおよびECL2B−4−Hは、CCR−5の細胞外領域を構成するペプチドを狙って、完全に分解することのできる抗体酵素であることが確認された。
【0241】
続いて、ECL2B−4−LおよびECL2B−4−HのTP41−1ペプチド(配列番号31)に対する酵素活性試験を実施した。この分解反応は、25℃の15mM リン酸バッファー(pH6.5)中で実施された。反応をモニタリングするために、20μlの反応液がカラム温度40℃、定組成条件下のRP−HPLC(Jasco製)に注入された。
【0242】
この分解反応の反応液として、以下の▲1▼〜▲5▼が作製された。
▲1▼ECL2B−4(L)0.8μM+TP41−1 ペプチド:120μM:800μl作製
▲2▼ECL2B−4(H)0.4μM+TP41−1 ペプチド:120μM:800μl作製
▲3▼TP41−1 ペプチド:120μM:500μl作製
▲4▼ECL2B−4(L):0.8μM:300μl作製
▲5▼ECL2B−4(H):0.4μM:300μl作製
その結果を図34〜図36に示す。図34のグラフでは、横軸に反応時間(時間)を、縦軸に基質であるECL2Bペプチドの濃度(μM)を示す。また、図35(a)〜(c)には、HPLCを使用してモニタリングされた結果を示す。また、図36には、この酵素分解実験における速度論的解析結果を示す。図36(a)は、基質(TP41−1ペプチド)濃度と分解速度との関係を示すグラフであり、図36(b)は、Hanes−Woolfプロットの結果を示すグラフである。
【0243】
そして、上記Hanes−Woolfプロットを用いて算出したVmax、Km、kcat、kcat/Km値(平均プロット)を以下の表8に示す。
【0244】
【表8】
Figure 2004097211
【0245】
これらの結果から、ECL2B−4−LおよびECL2B−4−Hは、TP41−1ペプチドの分解反応においても低い酵素活性を有することが確認された。また、表7と表8とを比較すれば分かるように、ECL2B−4−Lは、本来の抗原であるECL2Bペプチドの方をTP41ペプチドよりも速く分解していることが実験によって示され、ECL2B−4−Lが確かにECL2Bに対する抗体酵素であることが証明された。
【0246】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係る抗体酵素又は遺伝子等を用いることにより、種々の感染症や癌等の病気の治療、診断に利用可能である。また、目的とする抗体酵素の取得により、新しい臨床診断法の開発にも繋がる。
【0247】
さらに、本発明に係る抗体酵素又は遺伝子等を用いることにより、新しいバイオマテリアルとして新型のバイオセンサにも応用可能であり、病気の診断、環境測定などの検査等にも利用可能である。
【0248】
また、本発明に係る抗体酵素又は遺伝子等を用いることにより食品工業、化学工業における効果的な合成手段などにも展開できると考えられる。
【0249】
また、本発明の抗体酵素の生産方法によれば、免疫学的に作製される抗体の中から、選択的に、ポリペプチドや抗原タンパク質を切断又は分解する酵素活性を有する抗体酵素を効率的に取得することができるという効果を奏する。
【0250】
また、本発明の抗体酵素の生産方法によれば、従来公知の遺伝子工学的な手法を用いて、容易に、ポリペプチドや抗原タンパク質を切断又は分解する酵素活性を有する抗体酵素を効率的に作製することができるという効果を奏する。
【0251】
【配列表】
Figure 2004097211
Figure 2004097211
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Figure 2004097211

【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明における実施の一形態に係る抗体酵素生産方法の一例を示す工程図であり、(b)は本発明におけるその他の実施の一形態に係る抗体酵素生産方法の一例を示す工程図である。
【図2】本発明の実施の一形態に係る抗体酵素生産方法において、抗体構造解析工程を実施するシステムの構成の一例を示すブロック図である。
【図3】図2に示す抗体構造解析工程の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】(a)は抗体i41SL1−2の重鎖の可変領域のアミノ酸配列(一次構造)とそれをコードする塩基配列を示す図であり、(b)は抗体i41SL1−2の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列(一次構造)とそれをコードする塩基配列を示す図である。
【図5】(a)は抗体i41SL1−2の軽鎖の可変領域の三次元立体構造を示す図であり、(b)は抗体i41SL1−2の重鎖の可変領域の三次元立体構造を示す図である。
【図6】(a)は抗体i41SL1−2の軽鎖のポリペプチド分解反応の結果を示す図であり、(b)は抗体i41SL1−2の重鎖のポリペプチド分解反応の結果を示す図である。
【図7】(a)は抗体i41SL1−2の軽鎖のポリペプチド分解反応の速度論的解析の結果を示す図であり、(b)は抗体i41SL1−2の重鎖のポリペプチド分解反応の速度論的解析の結果を示す図である。
【図8】(a)は抗体i41−7の重鎖の可変領域のアミノ酸配列(一次構造)とそれをコードする塩基配列を示す図であり、(b)は抗体i41−7の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列(一次構造)とそれをコードする塩基配列を示す図である。
【図9】(a)は抗体i41−7の軽鎖の可変領域の三次元立体構造を示す図であり、(b)は抗体i41−7の軽鎖の可変領域の三次元立体構造を別の角度から見た図であり、(c)は抗体i41−7の重鎖の可変領域の三次元立体構造を示す図である。
【図10】(a)は抗体i41−7の軽鎖のポリペプチド分解反応の結果を示す図であり、(b)は抗体i41−7の重鎖のポリペプチド分解反応の結果を示す図であり、(c)は、抗体i41−7の軽鎖による抗原タンパク質(活性のない41S−2−L)分解反応の結果を示す電気泳動図とグラフである。
【図11】(a)は1DBA株の重鎖と軽鎖との三次元立体構造を示す図であり、(b)(c)はその一部分を拡大した図である。
【図12】i41−7完全抗体、抗体i41−7の重鎖、軽鎖、及びMA−2抗体のポリペプチド分解反応の結果を示す図である。
【図13】HpU−20L鎖の可変領域の立体構造を示す模式図である。
【図14】HpU−20H鎖の可変領域の立体構造を示す模式図である。
【図15】HpU−20L鎖の可変領域のアミノ酸配列、及びそれをコードする遺伝子の塩基配列を示す図である。
【図16】HpU−20H鎖の可変領域のアミノ酸配列、及びそれをコードする遺伝子の塩基配列を示す図である。
【図17】HpU−20−LおよびHpU−20−Hを用いてTP41−1ペプチド(図中では、TPと記す)の分解実験を行った結果(Lot.1)を示す図である。
【図18】HpU−20−LおよびHpU−20−Hを用いてTP41−1ペプチド(図中では、TPと記す)の分解実験を行った結果(Lot.2)を示す図である。
【図19】HpU−20L鎖を用いたタンパク質分解実験において、反応開始1時間後の試料についてSDS−PAGEを行った結果を示す図である。
【図20】HpU−20L鎖を用いたタンパク質分解実験において、反応開始1時間後の試料についてSDS−PAGEを行った結果を示す図である。
【図21】HpU−20L鎖を用いたタンパク質分解実験において、反応開始1時間後の試料についてSDS−PAGEを行った結果を示す図である。
【図22】軽鎖と重鎖からなるUA−15の可変領域の立体構造モデリング(分子モデリング)を行った結果、推定された立体構造を示す図である。なお、本図では、軽鎖上にのみ触媒三つ組残基様構造が現れていることを示している。
【図23】UA−15−L(図中では、Lと示す)およびUA−15−H(図中では、Hと示す)を用いてTP41−1ペプチドの分解実験を行った結果(Lot.1)を示す図である。
【図24】UA−15−L(図中では、Lと示す)およびUA−15−H(図中では、Hと示す)を用いてTP41−1ペプチドの分解実験を行った結果(Lot.2)を示す図である。
【図25】UA−15−L(図中では、Lと示す)を用いて、15℃、25℃、37℃の各温度でTP41−1ペプチド(図中では、TPと記す)の分解実験を行った結果を示す図である。なお、この分解実験は、図23に結果を示す実験を行った後に、TP41−1ペプチドを再度加え、反応温度の違いを見たものである。
【図26】UA−15−Lを用いたTP41−1ペプチド分解反応の速度論的解析の結果を示す図である。
【図27】ECL2B−4−Lの可変領域の立体構造を示す模式図である。
【図28】ECL2B−4−Hの可変領域の立体構造を示す模式図である。
【図29】ECL2B−4−Lの可変領域のアミノ酸配列(一次構造)とそれをコードする塩基配列を示す図である。
【図30】ECL2B−4−Hの可変領域のアミノ酸配列(一次構造)とそれをコードする塩基配列を示す図である。
【図31】ECL2B−4−L(図中では、Lと示す)およびECL2B−4−H(図中では、Hと示す)を用いてECL2Bペプチドの分解実験を行った結果を示す図である。
【図32】(a)は、ECL2B−4−Lを用いたECL2Bペプチドの分解実験において、HPLCを使用してECL2Bの濃度をモニタリングした結果を示す図である。(b)は、ECL2B−4−Hを用いたECL2Bペプチドの分解実験において、HPLCを使用してECL2Bの濃度をモニタリングした結果を示す図である。(c)は、ECL2Bペプチドの分解実験のコントロールとして、HPLCを使用してECL2Bの濃度をモニタリングした結果を示す図である。
【図33】酵素分解実験における速度論的解析結果を示す図である。(a)は、基質(ECL2Bペプチド)濃度と分解速度との関係を示す図であり、(b)は、Hanes−Woolfプロットの結果を示す図である。
【図34】ECL2B−4−L(図中では、Lと示す)およびECL2B−4−H(図中では、Hと示す)を用いてTP41−1(図中では、TPと示す)ペプチドの分解実験を行った結果を示す図である。
【図35】(a)は、ECL2B−4−Lを用いたTP41−1ペプチドの分解実験において、HPLCを使用してTP41−1の濃度をモニタリングした結果を示す図である。(b)は、ECL2B−4−Hを用いたTP41−1ペプチドの分解実験において、HPLCを使用してTP41−1の濃度をモニタリングした結果を示す図である。(c)は、TP41−1ペプチドの分解実験のコントロールとして、HPLCを使用してTP41−1の濃度をモニタリングした結果を示す図である。
【図36】酵素分解実験における速度論的解析結果を示す図である。(a)は、基質(TP41−1ペプチド)濃度と分解速度との関係を示す図であり、(b)は、Hanes−Woolfプロットの結果を示す図である。
【図37】触媒三つ組残基様構造とgermline geneに関して、PDBデータを使って解析を行った結果を示す図である。
【図38】触媒三つ組残基様構造とgermline geneに関して、本発明者らが所有する株について解析を行った結果を示す図である。
【符号の説明】
10  抗体構造解析システム
11  入力部
12  表示部
13  印刷部
14  記憶部
15  制御部
16  通信部
60  通信回線
61  パーソナルコンピューター(PC)
62  サーバー
151  立体構造予測部
152  触媒三つ組残基構造確認部

Claims (21)

  1. アミノ酸配列から抗体の立体構造の予測を行う立体構造予測段階と、
    予測された抗体の立体構造中に、セリン残基と、アスパラギン酸残基と、ヒスチジン残基またはグルタミン酸残基とが立体構造上近接して存在する触媒三つ組残基構造の存在を確認する触媒三つ組残基構造確認段階とを実施する抗体構造解析工程を含むことを特徴とする抗体酵素生産方法。
  2. 上記触媒三つ組残基構造確認段階では、触媒三つ組残基構造を確認するために、セリン残基と、アスパラギン酸残基と、ヒスチジン残基またはグルタミン酸残基とが、立体構造中に3〜20Å以内の範囲で存在することを指標として用いることを特徴とする請求項1に記載の抗体酵素生産方法。
  3. 上記触媒三つ組残基構造確認段階では、触媒三つ組残基構造を確認するために、既知の抗体酵素に共通している触媒三つ組残基構造と同じ構造を有しているか、上記既知の触媒三つ組残基構造のうち、1残基だけ異なる位置のアミノ酸残基を使用することで触媒三つ組残基構造を構成できると推測される構造を有していることを指標として用いることを特徴とする請求項1または2に記載の抗体酵素生産方法。
  4. 上記触媒三つ組残基構造確認段階では、触媒三つ組残基構造を確認するために、抗体が、既知の抗体酵素が由来する胚細胞遺伝子型を有していることを指標として用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の抗体酵素生産方法。
  5. 上記触媒三つ組残基構造確認段階では、触媒三つ組残基構造を確認するために、超可変領域1(CDR1)が16個のアミノ酸残基で構成されており、カバット(KABAT)の分類でヒスチジン残基を93番目に持つことを指標として用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の抗体酵素生産方法。
  6. 上記触媒三つ組残基構造確認段階では、触媒三つ組残基構造を確認するために、超可変領域1(CDR1)が11個のアミノ酸残基で構成されており、カバット(KABAT)の分類でヒスチジン残基を91番目あるいは55番目に持つことを指標として用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の抗体酵素生産方法。
  7. 抗原で免疫したマウス脾臓リンパ球とマウスのミエローマ細胞とを融合させてなるハイブリドーマにより抗体を産生する抗体産生工程を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の抗体酵素生産方法。
  8. 上記抗原として、抗原決定基とする物質をキャリアタンパク質に結合してなる抗原タンパク質が用いられることを特徴とする請求項7に記載の抗体酵素生産方法。
  9. さらに、上記抗体構造解析工程の後に得られる立体構造情報を用いて、遺伝子工学的手法で抗体に触媒三つ組残基構造を導入する触媒三つ組残基構造導入工程を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の抗体酵素生産方法。
  10. 立体構造中に、セリン残基と、アスパラギン酸残基と、ヒスチジン残基またはグルタミン酸残基とが立体構造上近接して存在する触媒三つ組残基構造を有する抗体酵素。
  11. 超可変領域1(CDR1)が16個のアミノ酸残基で構成されており、カバット(KABAT)の分類でヒスチジン残基を93番目に持つ抗体酵素。
  12. 超可変領域1(CDR1)が11個のアミノ酸残基で構成されており、カバット(KABAT)の分類でヒスチジン残基を91番目あるいは55番目に持つ抗体酵素。
  13. 胚細胞遺伝子型が、チーベ(Thiebe)らの分類で、bb1、bl1、bd2、cr1、cs1、bj2、hf24、12−41、19−14、19−17、19−23、19−25、21−12から選択されるマウスの胚細胞遺伝子によって産生される抗体酵素。
  14. 上記抗体酵素が、抗体の重鎖または軽鎖である請求項10〜13のいずれかに記載の抗体酵素。
  15. 配列番号1に示すアミノ酸配列、又は、配列番号1に示されるアミノ酸配列において、1またはそれ以上のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列を含んでなることを特徴とする請求項14に記載の抗体酵素。
  16. 配列番号3に示すアミノ酸配列、又は、配列番号3に示されるアミノ酸配列において、1またはそれ以上のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列を含んでなることを特徴とする請求項14に記載の抗体酵素。
  17. 配列番号5に示すアミノ酸配列、又は、配列番号5に示されるアミノ酸配列において、1またはそれ以上のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列を含んでなることを特徴とする請求項14に記載の抗体酵素。
  18. 配列番号7に示すアミノ酸配列、又は、配列番号7に示されるアミノ酸配列において、1またはそれ以上のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列を含んでなることを特徴とする請求項14に記載の抗体酵素。
  19. 請求項10〜18のいずれかに記載の抗体酵素をコードする遺伝子。
  20. 請求項1〜6のいずれかに記載の抗体構造解析工程をコンピューターに実行させるコンピュータープログラム。
  21. 請求項1〜6のいずれかに記載の抗体構造解析工程を行うプログラムをコンピューターに実行させるコンピュータープログラムを記録した機械読み取り可能な記録媒体。
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