JP5199516B2 - 抗ウイルス剤、抗体酵素、プライマーセット、ポリヌクレオチドの製造方法、および、ポリペプチドの製造方法 - Google Patents

抗ウイルス剤、抗体酵素、プライマーセット、ポリヌクレオチドの製造方法、および、ポリペプチドの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、抗ウイルス剤、ヒト型の抗体酵素、プライマーセット、ポリヌクレオチドの製造方法、および、ポリペプチドの製造方法に関するものである。
本発明者らは、これまで、抗体酵素に関して種々の独創的な研究を行ってきている(例えば、特許文献1を参照のこと)。従来、完全ヒト型配列を有する抗体酵素は、多発性骨髄腫患者から得られるベンスジョーンズタンパク(BJP)以外には得ることができなかった。多発性骨髄腫患者の患者数は少なく、また酵素活性を有するBJPも少ないため、ヒト型の抗体酵素を取得することは困難であった。しかし、ヒト型の抗体酵素は、人体に投与した際の副作用が少ないと予想されるために、国内外の製薬会社などは、有用なヒト型の抗体酵素が開発されることを待ち望んでいる。
ところで、狂犬病は、発展途上国で今なお大きな疾病負荷を有する感染症であり、発症すれば死亡率が100%である致死的な疾患である。狂犬病に対しては、現時点では、狂犬病ウイルス(rabies virus)曝露後における発症予防ワクチンの投与以外に、有効な治療法が無い。そのため、新たな視点からの治療法の開発が求められている。
また、インフルエンザウイルスは、その抗原性が多様であることから、しばしば広範囲に亘って大流行し、甚大な被害をもたらす。そのため、これもまた同様に新たな視点からの治療法の開発が求められている。
日本国公開特許公報「特開2006−197930号公報(2006年8月3日公開)」 日本国公開特許公報「特開2004−97211号公報(2004年4月2日公開)」
本発明は、新規で有用なヒト型抗体軽鎖を提供することを主たる目的とする。
まず、本発明者らは、BJP以外のヒト型の抗体酵素を得る手法を確立することを目的として、鋭意検討を行い、1段階目のプライマーとしてサブグループIIに属するVκ遺伝子に特徴的なリーダー配列に基づいて設計したプライマーを用いた2段階のPCR反応により、ヒトcDNAから、サブグループIIに属するVκ遺伝子を含むヒト抗体のκ型軽鎖のcDNAまたは少なくとも可変領域をコードするそのフラグメントをより選択的かつ効率的に増幅できることを見出し、発明を完成させた。なお、本発明者らは、特許文献1において、配列番号5の塩基配列に示されるポリヌクレオチドを含むプライマーを用いたPCR反応を用いた方法について言及している。本発明は、この特許文献1に記載の方法に対して、本発明者らの独自の発想に基づき、配列番号5の塩基配列を配列番号1または配列番号2の塩基配列に改変し、加えて2段階目のPCR反応を適用することによって、飛躍的な改良を図ったものである。
次に、本発明者らは、この技術を用いて取得した新規なヒト型抗体軽鎖について検討したところ、驚くべきことに、得られたヒト抗体κ型軽鎖のいくつかが、高い抗ウイルス活性を有していることを見出し、発明を完成させた。
すなわち、本発明に係る抗ウイルス剤は、可変領域が配列番号26、14、22、30、50、54または35のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなるヒト抗体κ型軽鎖を含有することを特徴としている。
本発明はまた、狂犬病ウイルスに対するヒト抗体の軽鎖であって、酵素活性を有するヒト型の抗体酵素を提供する。
すなわち、本発明に係るヒト型の抗体酵素は、狂犬病ウイルスに対するヒト抗体のκ型軽鎖であって、アミダーゼ活性を有しており、その可変領域が、配列番号26、14、16、18、30、35または40のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなることを特徴としている。本発明に係るヒト型の抗体酵素は、また、狂犬病ウイルスに対するヒト抗体κ型軽鎖であって、核酸分解活性を有しており、その可変領域が、配列番号26、14、30、50または54のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなるものであってもよい。本発明に係るヒト型の抗体酵素は、また、狂犬病ウイルスに対するヒト抗体κ型軽鎖であって、がん細胞に対する細胞障害性を有しており、その可変領域が、配列番号14または30のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなるものであってもよい。本発明に係るヒト型の抗体酵素は、また、狂犬病ウイルスに対するヒト抗体κ型軽鎖であって、抗ウイルス活性を有しており、その可変領域が、配列番号14、26、22、30、50、54または35のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなるものであってもよい。これらの抗体酵素は、ヒト型の抗体酵素であり、ヒトに投与しても副作用が極めて少ないと考えられる。
本発明はまた、本発明に係るヒト型の抗体酵素をコードするポリヌクレオチドを提供する。本発明はまた、本発明に係るポリヌクレオチドを含むベクター、本発明に係るポリヌクレオチドが導入されている形質転換体を提供する。
また、本発明に係るプライマーセットは、ヒトcDNAを鋳型とする2段階のPCR反応によって、ヒト抗体κ型軽鎖の可変領域を少なくともコードするポリヌクレオチドを増幅するためのプライマーセットであって、1段階目のPCR反応のためのプライマーとして、該1段階目のPCR反応において該鋳型とハイブリダイズする領域が、配列番号43または44の塩基配列によって示されるポリヌクレオチドである第1のプライマーを備えていることを特徴としている。
本発明に係るプライマーセットを用いることにより、ヒトcDNAから、サブグループIIに属するVκ遺伝子を有する抗体軽鎖cDNAまたは少なくとも可変領域をコードするそのフラグメントをより選択的かつ効率的に増幅することができる。これにより、抗体酵素であるヒト型抗体κ型軽鎖を効率よく取得することができる。
本発明は、また、本発明に係るプライマーセットを用いた2段階のPCR反応により、ヒトcDNAからヒト抗体κ型軽鎖の可変領域を少なくともコードするポリヌクレオチドを増幅する工程を包含している、ポリヌクレオチドの製造方法、および、当該ポリヌクレオチドの製造方法により製造したポリヌクレオチドを、宿主細胞内で発現させる工程を包含している、ポリペプチドの製造方法を包含する。
本発明によれば、非常に有用な、新規なヒト抗体κ型軽鎖を含有する抗ウイルス剤、新規なヒト抗体κ型軽鎖であるヒト型の抗体酵素、これらのヒト抗体κ型軽鎖に関連するポリヌクレオチド、ベクター、および形質転換体、抗ウイルス剤または抗体酵素としての機能を有するヒト抗体κ型軽鎖を効率よく取得するためのプライマーセット、ならびに、当該プライマーセットを利用するポリヌクレオチドおよびポリペプチドの製造方法を提供することができる。
本発明の一実施形態に係るプライマーセットの概略構成を示す模式図である。 1段階目のPCR反応後のSDS−PAGEの結果を示す図である。 2段階目のPCR反応後のSDS−PAGEの結果を示す図である。 2段階のPCR反応の反応産物を確認するためのSDS−PAGEの結果を示す図である。 各クローンのシーケンス結果の一部を示す図である。 ヒートショックによって形質転換された大腸菌のコロニー形成を示す図である。 形質転換した大腸菌において、発現誘導を受けた状態の発現タンパク質を示す図である。 形質転換した大腸菌において、発現誘導を受けていない状態の発現タンパク質を示す図である。 形質転換した大腸菌において、菌体の可溶性画分に含まれる発現タンパク質を示す図である。 形質転換した大腸菌において、菌体の不溶性画分に含まれる発現タンパク質を示す図である。 形質転換した大腸菌における発現タンパク質をウエスタンブロッティングによって同定した図である。 大腸菌において発現させた目的タンパク質の一次精製時におけるクロマトグラムを示す図である。 目的タンパク質を一次精製した後の精製状態を示す図である。 大腸菌において発現させた目的タンパク質の二次精製時におけるクロマトグラムを示す図である。 目的タンパク質を二次精製した後の精製状態を示す図である。 様々な基質に対するクローン#11のポリペプチドの酵素活性を示す図である。 様々な基質に対するクローン#16のポリペプチドの酵素活性を示す図である。 様々な基質に対するクローン#1のポリペプチドの酵素活性を示す図である。 様々な基質に対するクローン#7のポリペプチドの酵素活性を示す図である。 クローン#1のポリペプチドを精製した結果を示す図であり、(a)は、クローン#1のポリペプチドを新たに一次精製した結果を示し、(b)は、クローン#1のポリペプチドを新たに二次精製した結果を示す。 クローン#1のポリペプチドをウイルスと反応させる際の条件について調べた結果を示す図であり、(a)は、クローン#1のポリペプチドをウイルスと反応させる際の温度および時間について調べた結果を示し、(b)は、クローン#1のポリペプチドをウイルスと反応させる際の濃度および時間について調べた結果を示す。 クローン#1のポリペプチドの種々のウイルスに対する抗ウイルス活性を調べた結果を示す図である。 クローン#1のポリペプチドの狂犬病ウイルスCVS株に対する抗ウイルス活性を調べたプラークアッセイの結果を示す図である。 クローン#1のポリペプチドの膜融合活性を調べた赤血球凝集反応の結果を示す図である。 本発明の一実施形態におけるcDNAの設計を説明するための図であり、(a)は、単量体のヒト型抗体軽鎖を得るためのcDNAの設計の概略を示し、(b)は、変異導入前のヒト型抗体軽鎖と変異導入後のヒト型抗体軽鎖との組成の概略を示す。 クローン#1のポリペプチドの水疱性口内炎ウイルスに対する抗ウイルス活性について温度を変化させて調べた結果を示す図である。 クローン#7のポリペプチドの狂犬病ウイルスCVS株に対する抗ウイルス活性を調べた結果を示す図である。 本発明の一実施形態に係るプライマーセットの概略構成を示す模式図である。 本発明の一実施形態におけるPCR反応後のSDS−PAGEの結果を示す図である。 本発明の一実施形態におけるPCR反応後のSDS−PAGEの結果を示す図である。 本発明の一実施形態における粗精製後の各サンプルのSDS−PAGEの結果を示す図である。 クローン23D4およびクローン22F6の酵素活性を示す図である。 クローン23D4の種々のウイルスに対する抗ウイルス活性を調べた結果を示す図である。 クローン23D4の膜融合活性を調べた赤血球凝集反応の結果を示す図である。 クローン23D4の抗ウイルス活性を調べた結果を示す図である。 ジスルフィド結合を形成するシステインを置換したヒト抗体κ型軽鎖のSDS−PAGEの結果を示す図である。 ジスルフィド結合を形成するシステインを置換したヒト抗体κ型軽鎖の抗ウイルス活性を調べた結果を示す図である。 ジスルフィド結合を形成するシステインを置換したヒト抗体κ型軽鎖の抗ウイルス活性を調べた結果を示す図である。 ジスルフィド結合を形成するシステインを置換したヒト抗体κ型軽鎖のアミノ酸配列を示す図である。 ジスルフィド結合を形成するシステインを置換したヒト抗体κ型軽鎖のアミノ酸配列を示す図である。 各クローンのインフルエンザウイルスに対する抗ウイルス活性を調べた結果を示すグラフである。 各クローンによる核酸分解試験の結果を示す図である。 サブグループIに属しているVκ遺伝子を有するκ型抗体軽鎖遺伝子のリーダー配列を示す図である。 サブグループIIおよびIIIに属しているVκ遺伝子を有するκ型抗体軽鎖遺伝子のリーダー配列を示す図である。 サブグループIV〜VIに属しているVκ遺伝子を有するκ型抗体軽鎖遺伝子のリーダー配列を示す図である。 各リーダー配列の本発明の一実施形態に係る第1のプライマーに対応する部分を示す図である。 サブグループIに属しているVκ遺伝子を有するκ型抗体軽鎖遺伝子の5’末端側約60塩基を示す図である。 サブグループIIに属しているVκ遺伝子を有するκ型抗体軽鎖遺伝子の5’末端側約60塩基を示す図である。 サブグループIII〜VIに属しているVκ遺伝子を有するκ型抗体軽鎖遺伝子の5’末端側約60塩基を示す図である。 各5’末端側の配列の本発明の一実施形態に係る第2のプライマーに対応する部分を示す図である。 各クローンのがん細胞に対する細胞障害性を調べた結果を示すグラフである。
本発明の実施形態について以下に説明する。以下の記載は、本発明を説明するものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
〔1.ヒト抗体κ型軽鎖〕
本発明は、新規かつ有用なヒト抗体κ型軽鎖を提供する。本明細書において、「ヒト抗体κ型軽鎖」は、ヒト由来の免疫グロブリンのκ型の軽鎖(Light chain)を指す。
本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖は、単量体であることが好ましい。後述するように、いくつかのヒト抗体κ型軽鎖において、単量体の方が、二量よりもはるかに抗ウイルス活性が高い。
本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖は、その可変領域が、配列番号14、16、18、22、26、30、35、40、50または54のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなり、狂犬病ウイルスに反応する。
なお、配列番号14のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなる可変領域を有するヒト抗体κ型軽鎖は、ヒト抗体κ型軽鎖(#1)と称することもある。ヒト抗体κ型軽鎖(#1)は、上述した可変領域に、公知のヒト抗体定常領域が付加されたものであり得、一実施形態において、全長のアミノ酸配列は、配列番号1に示される。ヒト抗体κ型軽鎖(#1)におけるCDR1は、配列番号1および14のアミノ酸配列における第24〜39番目であり、CDR2は、配列番号1および14のアミノ酸配列における第55〜60番目であり、CDR3は、配列番号1および14のアミノ酸配列における第94〜103番目である。
また、配列番号16のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなる可変領域を有するヒト抗体κ型軽鎖は、ヒト抗体κ型軽鎖(#16)と称することもある。ヒト抗体κ型軽鎖(#16)は、上述した可変領域に、公知のヒト抗体定常領域が付加されたものであり得、一実施形態において、全長のアミノ酸配列は、配列番号3に示される。ヒト抗体κ型軽鎖(#16)におけるCDR1は、配列番号3および16のアミノ酸配列における第24〜39番目であり、CDR2は、配列番号3および16のアミノ酸配列における第55〜60番目であり、CDR3は、配列番号3および16のアミノ酸配列における第94〜103番目である。
また、配列番号18のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなる可変領域を有するヒト抗体κ型軽鎖は、ヒト抗体κ型軽鎖(#7)と称することもある。ヒト抗体κ型軽鎖(#7)は、上述した可変領域に、公知のヒト抗体定常領域が付加されたものであり得、一実施形態において、全長のアミノ酸配列は、配列番号5に示される。ヒト抗体κ型軽鎖(#7)におけるCDR1は、配列番号5および18のアミノ酸配列における第24〜39番目であり、CDR2は、配列番号5および18のアミノ酸配列における第55〜60番目であり、CDR3は、配列番号5および18のアミノ酸配列における第94〜102番目である。
また、配列番号22のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなる可変領域を有するヒト抗体κ型軽鎖は、ヒト抗体κ型軽鎖(#6)と称することもある。ヒト抗体κ型軽鎖(#6)は、上述した可変領域に、公知のヒト抗体定常領域が付加されたものであり得、一実施形態において、全長のアミノ酸配列は、配列番号20に示される。ヒト抗体κ型軽鎖(#6)におけるCDR1は、配列番号20および22のアミノ酸配列における第24〜39番目であり、CDR2は、配列番号20および22のアミノ酸配列における第55〜60番目であり、CDR3は、配列番号20および22のアミノ酸配列における第94〜102番目である。
また、配列番号26のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなる可変領域を有するヒト抗体κ型軽鎖は、ヒト抗体κ型軽鎖(#18)と称することもある。ヒト抗体κ型軽鎖(#18)は、上述した可変領域に、公知のヒト抗体定常領域が付加されたものであり得、一実施形態において、全長のアミノ酸配列は、配列番号24に示される。ヒト抗体κ型軽鎖(#18)におけるCDR1は、配列番号24および26のアミノ酸配列における第24〜39番目であり、CDR2は、配列番号24および26のアミノ酸配列における第55〜60番目であり、CDR3は、配列番号24および26のアミノ酸配列における第94〜102番目である。
また、配列番号30のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなる可変領域を有するヒト抗体κ型軽鎖は、ヒト抗体κ型軽鎖(23D4)と称することもある。ヒト抗体κ型軽鎖(23D4)は、上述した可変領域に、公知のヒト抗体定常領域が付加されたものであり得、一実施形態において、全長のアミノ酸配列は、配列番号28に示される。ヒト抗体κ型軽鎖(23D4)におけるCDR1は、配列番号28および30のアミノ酸配列における第24〜39番目であり、CDR2は、配列番号28および30のアミノ酸配列における第55〜60番目であり、CDR3は、配列番号28および30のアミノ酸配列における第94〜102番目である。
また、配列番号35のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなる可変領域を有するヒト抗体κ型軽鎖は、ヒト抗体κ型軽鎖(22F6)と称することもある。ヒト抗体κ型軽鎖(22F6)は、上述した可変領域に、公知のヒト抗体定常領域が付加されたものであり得、一実施形態において、全長のアミノ酸配列は、配列番号33に示される。ヒト抗体κ型軽鎖(22F6)におけるCDR1は、配列番号33および35のアミノ酸配列における第24〜39番目であり、CDR2は、配列番号33および35のアミノ酸配列における第55〜60番目であり、CDR3は、配列番号33および35のアミノ酸配列における第94〜102番目である。
また、配列番号40のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなる可変領域を有するヒト抗体κ型軽鎖は、ヒト抗体κ型軽鎖(23F1)と称することもある。ヒト抗体κ型軽鎖(23F1)は、上述した可変領域に、公知のヒト抗体定常領域が付加されたものであり得、一実施形態において、全長のアミノ酸配列は、配列番号38に示される。ヒト抗体κ型軽鎖(23F1)におけるCDR1は、配列番号38および40のアミノ酸配列における第24〜39番目であり、CDR2は、配列番号38および40のアミノ酸配列における第55〜60番目であり、CDR3は、配列番号38および40のアミノ酸配列における第94〜102番目である。
また、配列番号50のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなる可変領域を有するヒト抗体κ型軽鎖は、ヒト抗体κ型軽鎖(#4)と称することもある。ヒト抗体κ型軽鎖(#4)は、上述した可変領域に、公知のヒト抗体定常領域が付加されたものであり得、一実施形態において、全長のアミノ酸配列は、配列番号48に示される。ヒト抗体κ型軽鎖(#4)におけるCDR1は、配列番号48および50のアミノ酸配列における第24〜40番目であり、CDR2は、配列番号48および50のアミノ酸配列における第56〜61番目であり、CDR3は、配列番号48および50のアミノ酸配列における第95〜103番目である。
また、配列番号54のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなる可変領域を有するヒト抗体κ型軽鎖は、ヒト抗体κ型軽鎖(#11)と称することもある。ヒト抗体κ型軽鎖(#11)は、上述した可変領域に、公知のヒト抗体定常領域が付加されたものであり得、一実施形態において、全長のアミノ酸配列は、配列番号52に示される。ヒト抗体κ型軽鎖(#11)におけるCDR1は、配列番号52および54のアミノ酸配列における第24〜39番目であり、CDR2は、配列番号52および54のアミノ酸配列における第55〜60番目であり、CDR3は、配列番号52および54のアミノ酸配列における第94〜102番目である。
また、一実施形態において、本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖は、上述したヒト抗体κ型軽鎖の変異体であってもよい。好ましい変異体は、そのアミノ酸配列において、他の軽鎖とジスルフィド結合を形成するためのシステインが、削除またはシステイン以外のアミノ酸に置換されている。これにより、本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖同士がジスルフィド結合により二量体化することを避け、単量体を容易に得ることができる。この場合、本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖は、例えば、配列番号15、17、19、23、27、31、36、41、51または55のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなるものである。なお、これらの末尾における「ALEHHHHHH(配列番号12)」は、ヒト抗体κ型軽鎖の精製のための配列であり、適宜変更することができる。
なお、上記変異体のアミノ酸配列において上記システイン以外の変異が存在する場合、その変異は、上記アミダーゼ活性、核酸分解活性、がん細胞に対する細胞障害性、または抗ウイルス活性を変化させないものであり、上述したCDR配列の外に存在するものであることが好ましく、可変領域の外において存在するものであることがより好ましい。
ヒト抗体κ型軽鎖(#6)、ヒト抗体κ型軽鎖(#18)、ヒト抗体κ型軽鎖(#1)、ヒト抗体κ型軽鎖(23D4)、ヒト抗体κ型軽鎖(#4)、ヒト抗体κ型軽鎖(#11)およびヒト抗体κ型軽鎖(22F6)は、後述する実施例に示すように、抗ウイルス活性を有している。また、ヒト抗体κ型軽鎖(#18)、ヒト抗体κ型軽鎖(#1)、ヒト抗体κ型軽鎖(23D4)、ヒト抗体κ型軽鎖(#7)、ヒト抗体κ型軽鎖(#16)、ヒト抗体κ型軽鎖(22F6)およびヒト抗体κ型軽鎖(23F1)は、後述する実施例に示すように、アミダーゼ活性を有しており、本発明に係る抗体酵素とも称される。また、ヒト抗体κ型軽鎖(#18)、ヒト抗体κ型軽鎖(#1)、ヒト抗体κ型軽鎖(23D4)、ヒト抗体κ型軽鎖(#4)、および、ヒト抗体κ型軽鎖(#11)は、後述する実施例に示すように、核酸分解活性を有しており、同様に、本発明に係る抗体酵素とも称される。また、ヒト抗体κ型軽鎖(#1)、および、ヒト抗体κ型軽鎖(23D4)は、後述するように、がん細胞に対する細胞障害性を有しており、同様に、本発明に係る抗体酵素とも称される。また、ヒト抗体κ型軽鎖(#1)、ヒト抗体κ型軽鎖(#18)、ヒト抗体κ型軽鎖(#6)、ヒト抗体κ型軽鎖(23D4)、ヒト抗体κ型軽鎖(#4)、ヒト抗体κ型軽鎖(#11)、および、ヒト抗体κ型軽鎖(22F6)は、後述するように、抗ウイルス活性を有しており、同様に、本発明に係る抗体酵素とも称される。
また、別の観点から言えば、本発明は、ヒト抗体のκ型の軽鎖またはそのフラグメントであり、アミダーゼ活性を有するポリペプチドを提供する。本発明に係るポリペプチドは、アミダーゼ活性を示すヒト由来の免疫グロブリンである。
本発明に係るポリペプチドは、単量体または二量体の形態として提供され得、特に、単量体の形態であることが好ましい。
本発明に係るポリペプチドは、アミダーゼ活性を有するヒト抗体のκ型の軽鎖またはそのフラグメントであることが好ましく、例えば、配列番号1、3または5のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドあるいはその変異体である。なお、配列番号1のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドまたはその変異体を第1のポリペプチド、配列番号3のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドまたはその変異体を第2のポリペプチド、なお、配列番号5のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドまたはその変異体を第3のポリペプチドと称することもある。
本明細書中においてタンパク質またはポリペプチドに関して用いられる場合、用語「変異体」は、目的のポリペプチドが有する特定の活性を保持したポリペプチドが意図され、「配列番号1、3、または5のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドの変異体」は、アミダーゼ活性を有するヒト抗体のκ型の軽鎖またはそのフラグメントであるポリペプチドが意図され、好ましくは、抗ウイルス活性を有するヒト抗体のκ型の軽鎖またはそのフラグメントであるポリペプチドが意図される。
ポリペプチドを構成するアミノ酸残基のうちのいくつかのアミノ酸が、このポリペプチドの構造または機能に有意に影響することなく容易に改変され得ることは、当該分野において周知である。さらに、人為的に改変させるだけではく、天然のタンパク質において、当該タンパク質の構造または機能を有意に変化させない変異体が存在することもまた周知である。上述したように、本発明に係るポリペプチドは、アミダーゼ活性を有するヒト抗体のκ型の軽鎖またはそのフラグメントであり、その活性中心は可変領域にある。したがって、本発明に係る第1のポリペプチドは、配列番号1(または配列番号7)のアミノ酸配列における、可変領域に対応する第1〜113番目、特にCDR1、CDR2およびCDR3にそれぞれ対応する第24〜39番目、第55〜60番目、および第94〜103番目については変異がないものである。本発明に係る第2のポリペプチドは、配列番号3のアミノ酸配列における、可変領域に対応する第1〜113番目、特にCDR1、CDR2およびCDR3にそれぞれ対応する第24〜39番目、第55〜60番目、および第94〜103番目については変異がないものである。本発明に係る第3のポリペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列における、可変領域に対応する第1〜112番目、特にCDR1、CDR2およびCDR3にそれぞれ対応する第24〜39番目、第55〜60番目、および第94〜102番目については変異がないものである。
当業者は、周知技術を使用してポリペプチドを構成するアミノ酸残基のうちの1または数個のアミノ酸を容易に変異させることができる。例えば、公知の点変異導入法に従えば、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの任意の塩基を変異させることができる。また、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの任意の部位に対応するプライマーを設計して欠失変異体または付加変異体を作製することができる。
好ましい変異体は、保存性または非保存性アミノ酸置換、欠失、または付加を有する。これらは、本発明に係るポリペプチドのアミダーゼ活性または抗ウイルス活性を変化させない。
第1のポリペプチドの特に好ましい変異体は、配列番号7のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドである。すなわち、配列番号1のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドは、220番目のシステインが他のアミノ酸に置換されていることが好ましい。例えば、220番目のシステインはアラニンに置換され得る。このようなアミノ酸置換によって、本発明に係る第1のポリペプチドを単量体の形態で容易に取得することができる。これは、220番目のシステイン同士によるS−S結合が形成されないためである。後述の実施例に示すように、本発明に係る第1のポリペプチドは、単量体の形態において特に高い抗ウイルス活性を示す。このようなアミノ酸置換は、例えば、ヒト型抗体酵素の全長をコードする鋳型DNAをPCRによって増幅する場合に、3’末端側のプライマーとして制限酵素認識部位の隣にAGCを有し、その隣から鋳型DNAに対する特異的な配列を有するプライマーを用いればよい。これ以外にも当該分野に公知の方法(例えば、部位特異的変異生成法)によって、このような変異を導入し得る。また、鋳型DNAのうち219番目のアミノ酸をコードする領域までに対して特異的なプライマーを設計してPCR増幅しても、単量体のみを形成するヒト型抗体酵素を作製し得る。
また、配列番号7のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドに対して、さらなる変異を加えてもよい。また、同様に、第2のポリペプチドについて219番目のシステインを、第3のポリペプチドについて220番目のシステインを、それぞれ他のアミノ酸に置換することにより、単量体を容易に得ることができる。
このように、本実施形態に係るポリペプチドは、アミダーゼ活性を有するヒト抗体のκ型の軽鎖またはそのフラグメントであって、(1)配列番号1、3、5もしくは7のアミノ酸配列によって示されるポリペプチド、または(2)配列番号1、3、5もしくは7のアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失もしくは付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチド、であることが好ましい。
これら、1個もしくは数個のアミノ酸の変異は、定常領域においてなされることが好ましい。すなわち、本発明に係る第1のポリペプチドにおける変異は、配列番号1のアミノ酸配列の第114〜220番目に導入されるか、または配列番号7のアミノ酸配列の第114〜219番目に導入されることが好ましい。本発明に係る第2のポリペプチドにおける変異は、配列番号3のアミノ酸配列の第114〜220番目に導入されることが好ましい。本発明に係る第3のポリペプチドにおける変異は、配列番号5のアミノ酸配列の第113〜219番目に導入されることが好ましい。
本発明に係るポリペプチドは、ヒト抗体のκ型の軽鎖またはそのフラグメントであり、アミダーゼ活性を有する抗体酵素でもあり得る。一実施形態において、本発明に係る抗体酵素は、狂犬病ウイルスに対する抗体であり得る。また、好ましくは、本発明に係る抗体酵素は、抗ウイルス活性を有する。
本発明に係る第1の抗体酵素は、可変領域が、配列番号1に示されるアミノ酸配列の第1〜113番目からなり、第24〜39番目、第55〜60番目、および第94〜103番目がそれぞれCDR1、CDR2およびCDR3に相当する。本発明に係る第2の抗体酵素は、可変領域が、配列番号3に示されるアミノ酸配列の第1〜113番目からなり、第24〜39番目、第55〜60番目、および第94〜103番目がそれぞれCDR1、CDR2およびCDR3に相当する。本発明に係る第3の抗体酵素は、可変領域が、配列番号5に示されるアミノ酸配列の第1〜112番目からなり、第24〜39番目、第55〜60番目、および第94〜102番目がそれぞれCDR1、CDR2およびCDR3に相当する。
本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖およびポリペプチドは、天然の精製産物、化学合成手順の産物、および原核生物宿主または真核生物宿主(例えば、細菌細胞、酵母細胞、高等植物細胞、昆虫細胞、および哺乳動物細胞を含む)から組換え技術によって産生された産物を含む。組換え産生手順において用いられる宿主に依存して、本発明に係るポリペプチドは、グリコシル化され得るか、または非グリコシル化され得る。さらに、本発明に係るポリペプチドはまた、いくつかの場合、宿主媒介プロセスの結果として、開始の改変メチオニン残基を含み得る。
本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖およびポリペプチドは、アミノ酸がペプチド結合しているポリペプチドであればよいが、これに限定されるものではなく、ポリペプチド以外の構造を含む複合ポリペプチドであってもよい。本明細書中で使用される場合、「ポリペプチド以外の構造」としては、糖鎖およびイソプレノイド基等を挙げることができるが、特に限定されない。
また、本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖およびポリペプチドは、付加的なポリペプチドを含むものであってもよい。付加的なポリペプチドとしては、例えば、His、Myc、Flag等のエピトープ標識ポリペプチドが挙げられる。
他の局面において、本発明は、アミダーゼ活性を有するヒト抗体のκ型の軽鎖またはそのフラグメントであるポリペプチド、または、抗ウイルス活性を有するヒト抗体のκ型の軽鎖またはそのフラグメントであるポリペプチドの生産方法を提供する。本発明に係るポリペプチドの生産方法は、ヒト抗体κ型軽鎖または抗体酵素の生産方法でもあり得る。
一実施形態において、本発明に係るポリペプチドの生産方法は、当該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むベクターを用いることを特徴とする。
本実施形態の1つの局面において、本実施形態に係るポリペプチドの生産方法は、上記ベクターが組換え発現系において用いられることが好ましい。組換え発現系を用いる場合、本発明に係るポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを組換え発現ベクターに組み込んだ後、公知の方法により発現可能な宿主に導入し、宿主(形質転換体)内で翻訳されて得られるポリペプチドを精製するという方法などを採用することができる。組換え発現ベクターは、プラスミドであってもなくてもよく、宿主に目的ポリヌクレオチドを導入することができればよい。好ましくは、本実施形態に係るポリペプチドの生産方法は、上記ベクターを宿主に導入する工程を包含する。
このように宿主に外来ポリヌクレオチドを導入する場合、発現ベクターは、外来ポリヌクレオチドを発現するように宿主内で機能するプロモーターを組み込んであることが好ましい。組換え的に産生されたポリペプチドを精製する方法は、用いた宿主、ポリペプチドの性質によって異なるが、タグの利用等によって比較的容易に目的のポリペプチドを精製することが可能である。
本実施形態に係るポリペプチドの生産方法は、当該ポリペプチドを含む細胞または組織の抽出液から当該ポリペプチドを精製する工程をさらに包含することが好ましい。ポリペプチドを精製する工程は、周知の方法(例えば、細胞または組織を破壊した後に遠心分離して可溶性画分を回収する方法)で細胞や組織から細胞抽出液を調製した後、この細胞抽出液から周知の方法(例えば、硫安沈殿またはエタノール沈殿、酸抽出、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、およびレクチンクロマトグラフィー)によって精製する工程が好ましいが、これらに限定されない。最も好ましくは、高速液体クロマトグラフィー(「HPLC」)が精製のために用いられる。
本実施形態の他の局面において、本実施形態に係るポリペプチドの生産方法は、上記ベクターが無細胞タンパク質合成系において用いられることが好ましい。無細胞タンパク質合成系を用いる場合、種々の市販のキットが用いられ得る。好ましくは、本実施形態に係るポリペプチドの生産方法は、上記ベクターと無細胞タンパク質合成液とをインキュベートする工程を包含する。
無細胞タンパク質合成系は細胞内mRNAやクローニングされたcDNAにコードされているさまざまなタンパク質の同定等に広く用いられる手法であり、無細胞タンパク質合成系(無細胞タンパク質合成法、無細胞タンパク質翻訳系とも呼ぶ)に用いられるのが無細胞タンパク質合成液である。
無細胞タンパク質合成系としては、コムギ胚芽抽出液を用いる系、ウサギ網状赤血球抽出液を用いる系、大腸菌S30抽出液を用いる系、および植物の脱液胞化プロトプラストから得られる細胞成分抽出液が挙げられる。一般的には、真核生物由来遺伝子の翻訳には真核細胞の系、すなわち、コムギ胚芽抽出液を用いる系またはウサギ網状赤血球抽出液を用いる系のいずれかが選択されるが、翻訳される遺伝子の由来(原核生物/真核生物)や、合成後のタンパク質の使用目的を考慮して、上記合成系から選択されればよい。
なお、種々のウイルス由来遺伝子産物は、その翻訳後に、小胞体、ゴルジ体等の細胞内膜が関与する複雑な生化学反応を経て活性を発現するものが多いので、各種生化学反応を試験管内で再現するためには細胞内膜成分(例えば、ミクロソーム膜)が添加される必要がある。植物の脱液胞化プロトプラストから得られる細胞成分抽出液は、細胞内膜成分を保持した無細胞タンパク質合成液として利用し得るのでミクロソーム膜の添加が必要とされないので、好ましい。
本明細書中で使用される場合、「細胞内膜成分」は、細胞質内に存在する脂質膜よりなる細胞小器官(すなわち、小胞体、ゴルジ体、ミトコンドリア、葉緑体、液胞などの細胞内顆粒全般)が意図される。特に、小胞体およびゴルジ体はタンパク質の翻訳後修飾に重要な役割を果たしており、膜タンパク質および分泌タンパク質の成熟に必須な細胞成分である。
別の実施形態において、本発明に係るポリペプチドの生産方法は、当該ポリペプチドを天然に発現する細胞または組織から当該ポリペプチドを精製することが好ましい。本実施形態に係るポリペプチドの生産方法は、抗体またはオリゴヌクレオチドを用いて本発明に係るポリペプチドを天然に発現する細胞または組織を同定する工程を包含することが好ましい。また、本実施形態に係るポリペプチドの生産方法は、当該ポリペプチドを精製する工程をさらに包含することが好ましい。
さらに他の実施形態において、本発明に係るポリペプチドの生産方法は、本発明に係るポリペプチドを化学合成することを特徴とする。当業者は、本明細書中に記載される本発明に係るポリペプチドのアミノ酸配列に基づいて周知の化学合成技術を適用すれば、本発明に係るポリペプチドを化学合成できることを、容易に理解する。
以上のように、本発明に係るポリペプチドを生産する方法によって取得されるポリペプチドは、天然に存在する変異ポリペプチドであっても、人為的に作製された変異ポリペプチドであってもよい。
このように、本発明に係るポリペプチドの生産方法は、少なくとも、当該ポリペプチドのアミノ酸配列、または当該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの塩基配列に基づいて公知慣用技術を用いればよいといえる。つまり、上述した種々の工程以外の工程を包含する生産方法も本発明の技術的範囲に属することに留意しなければならない。
〔2:ポリヌクレオチド〕
1つの局面において、本発明は、本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖または本発明に係るポリペプチドをコードする遺伝子を提供する。本明細書中で使用される場合、「ヒト抗体κ型軽鎖をコードする遺伝子」は、ヒト抗体κ型軽鎖またはそのフラグメントであるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが意図される。
本明細書中で使用される場合、用語「ポリヌクレオチド」は、「遺伝子」、「核酸」または「核酸分子」と交換可能に使用され、ヌクレオチドの重合体が意図される。本明細書中で使用される場合、用語「塩基配列」は、「核酸配列」または「ヌクレオチド配列」と交換可能に使用され、デオキシリボヌクレオチド(A、G、CおよびTと省略される)の配列として示される。
本発明に係るポリヌクレオチドは、本発明に係るポリペプチドをコードするものであることが好ましい。特定のポリペプチドのアミノ酸配列が得られた場合、当該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの塩基配列を容易に設計することができる。
本発明に係るポリヌクレオチドは、アミダーゼ活性を有するヒト抗体のκ型の軽鎖をコードする遺伝子であるか、核酸分解活性を有するヒト抗体のκ型の軽鎖をコードする遺伝子であるか、がん細胞に対する細胞障害性を有するヒト抗体のκ型の軽鎖をコードする遺伝子であるか、抗ウイルス活性を有するヒト抗体のκ型の軽鎖をコードする遺伝子であることが好ましく、配列番号2、4、6、8、21、25、29、34、39、49または53の塩基配列によって示されるポリヌクレオチドまたはその変異体であることがより好ましい。なお、配列番号2の塩基配列によって示されるポリヌクレオチドまたはその変異体は、第1のポリペプチドをコードするものであり、第1のポリヌクレオチドと称することもある。配列番号4の塩基配列によって示されるポリヌクレオチドまたはその変異体は、第2のポリペプチドをコードするものであり、第2のポリヌクレオチドと称することもある。配列番号6の塩基配列によって示されるポリヌクレオチドまたはその変異体は、第3のポリペプチドをコードするものであり、第3のポリヌクレオチドと称することもある。なお、配列番号8の塩基配列によって示されるポリヌクレオチドは、配列番号7のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドをコードするものであり、第3のポリヌクレオチドに相当する。
本明細書中においてポリヌクレオチドに関して用いられる場合、用語「変異体」は、特定のポリペプチドの活性と同じ活性を保持しているポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが意図され、「配列番号2、4、6、8、21、25、29、34、39、49または53の何れかの塩基配列によって示されるポリヌクレオチドの変異体」は、アミダーゼ活性、核酸分解活性、がん細胞に対する細胞障害性、または抗ウイルス活性を有するヒト抗体のκ型の軽鎖をコードするポリヌクレオチドが意図される。すなわち、本明細書中で使用される場合、ポリヌクレオチドの観点における変異体は、アミダーゼ活性、核酸分解活性、がん細胞に対する細胞障害性、または抗ウイルス活性を有するヒト抗体のκ型の軽鎖をコードするポリヌクレオチドであって、
・配列番号配列番号2、4、6、8、21、25、29、34、39、49もしくは53の何れかの塩基配列において、1または数個の塩基が置換、欠失または付加されている塩基配列によって示されるポリヌクレオチド;
・配列番号2、4、6、8、21、25、29、34、39、49もしくは53の何れかの塩基配列によって示される相補鎖と、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るポリヌクレオチド;または
・配列番号2、4、6、8、21、25、29、34、39、49もしくは53の何れかの塩基配列において、システインをコードする末尾のTGTが、他のアミノ酸をコードする塩基配列に置換されたポリヌクレオチド
であり得る。
上述したように、本発明に係るポリペプチドは、アミダーゼ活性、核酸分解活性、がん細胞に対する細胞障害性、または抗ウイルス活性を有するヒト抗体のκ型の軽鎖またはそのフラグメントであり、その活性中心は可変領域にある。したがって、本発明に係るポリヌクレオチドがコードするヒト抗体κ型軽鎖は、本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖のアミノ酸配列においてCDRに対応するアミノ酸については変異がなく、好ましくは、可変領域に対応するアミノ酸については変異がないものである。例えば、本発明に係る第1のポリヌクレオチドがコードするポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列において可変領域に対応する第1〜113番目、特にCDR1、CDR2およびCDR3にそれぞれ対応する第24〜39番目、第55〜60番目、および第94〜103番目については変異がないものである。本発明に係る第2のポリヌクレオチドがコードするポリペプチドは、配列番号3のアミノ酸配列において可変領域に対応する第1〜113番目、特にCDR1、CDR2およびCDR3にそれぞれ対応する第24〜39番目、第55〜60番目、および第94〜103番目については変異がないものである。本発明に係る第3のポリヌクレオチドがコードするポリペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列において可変領域に対応する第1〜112番目、特にCDR1、CDR2およびCDR3にそれぞれ対応する第24〜39番目、第55〜60番目、および第94〜102番目目については変異がないものである。
また、抗体軽鎖のC末端のジスルフィド結合を形成するシステインを置換することにより、上述したように本発明に係るヒト抗体軽鎖の単量体を容易に得ることができる。配列番号2、4、6、8、21、25、29、34、39、49もしくは53の何れかの塩基配列において、システインをコードする末尾のTGTが、他のアミノ酸をコードする塩基配列に置換されたポリヌクレオチドは、そのために好適に用いることができる。他のアミノ酸をコードする塩基配列としては、例えば、ALEHHHHHH(配列番号12)(+終止コドン)をコードするGCTCTCGAGCACCACCACCACCACCACTGA(配列番号13)を用いることができる。
本発明に係るポリヌクレオチドは、RNA(例えば、mRNA)の形態、またはDNAの形態(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)で存在し得る。DNAは、二本鎖または一本鎖であり得る。一本鎖DNAまたはRNAは、コード鎖(センス鎖としても知られる)であり得るか、または非コード鎖(アンチセンス鎖としても知られる)であり得る。
本明細書中で使用される場合、用語「オリゴヌクレオチド」は、ヌクレオチドが数個ないし数十個結合したものが意図され、「ポリヌクレオチド」と交換可能に使用される。オリゴヌクレオチドは、短いものはジヌクレオチド(二量体)、トリヌクレオチド(三量体)といわれ、長いものは30マーまたは100マーというように重合しているヌクレオチドの数で表される。オリゴヌクレオチドは、より長いポリヌクレオチドのフラグメントとして生成されても、化学合成されてもよい。
本発明に係るポリヌクレオチドはまた、その5’側または3’側で上述のタグ標識(タグ配列またはマーカー配列)をコードするポリヌクレオチドに融合され得る。
ハイブリダイゼーションは、Sambrookら、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,2d Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory(1989)に記載されている方法のような周知の方法で行うことができる。通常、温度が高いほど、塩濃度が低いほどストリンジェンシーは高くなり(ハイブリダイズし難くなる)、より相同なポリヌクレオチドを取得することができる。適切なハイブリダイゼーション温度は、塩基配列やその塩基配列の長さによって異なり、例えば、アミノ酸6個をコードする18塩基からなるDNAフラグメントをプローブとして用いる場合、50℃以下の温度が好ましい。
本明細書中で使用される場合、用語「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は、ハイブリダイゼーション溶液(50%ホルムアミド、5×SSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハート液、10%硫酸デキストラン、および20μg/mlの変性剪断サケ精子DNAを含む)中にて42℃で一晩インキュベーションした後、約65℃にて0.1×SSC中でフィルターを洗浄することが意図される。ポリヌクレオチドの「一部」にハイブリダイズするポリヌクレオチドによって、参照のポリヌクレオチドの少なくとも約15ヌクレオチド(nt)、そしてより好ましくは少なくとも約20nt、さらにより好ましくは少なくとも約30nt、そしてさらにより好ましくは約30ntより長いポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチド(DNAまたはRNAのいずれか)が意図される。このようなポリヌクレオチドの「一部」にハイブリダイズするポリヌクレオチド(オリゴヌクレオチド)は、本明細書中においてより詳細に考察されるような検出用プローブとしても有用である。
以上のように、本発明に係るポリヌクレオチドは、アミダーゼ活性を有するヒト抗体のκ型の軽鎖、核酸分解活性を有するヒト抗体のκ型の軽鎖、がん細胞に対する細胞障害性を有するヒト抗体のκ型の軽鎖、または、抗ウイルス活性を有するヒト抗体のκ型の軽鎖をコードするポリヌクレオチドであって、以下のいずれかであることが好ましい:(1)配列番号2、4、6、8、21、25、29、34、39、49もしくは53の塩基配列によって示されるポリヌクレオチド;(2)配列番号2、4、6、8、21、25、29、34、39、49もしくは53の塩基配列において、1個もしくは数個の塩基が置換、欠失もしくは付加された塩基配列によって示されるポリヌクレオチド;(3)配列番号2、4、6、8、21、25、29、34、39、49もしくは53に示される塩基配列において、1個もしくは数個の塩基が置換、欠失もしくは付加された塩基配列によって示される相補鎖からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド;または(4)配列番号配列番号2、4、6、8、21、25、29、34、39、49もしくは53の何れかの塩基配列において、システインをコードする末尾のTGTが、他のアミノ酸をコードする塩基配列に置換されたポリヌクレオチド。
本発明に係るポリヌクレオチドは、非翻訳領域(UTR)の配列またはベクター配列(発現ベクター配列を含む)などの配列を含むものであってもよい。
なお、本発明に係るベクターは、周知の遺伝子組換え技術により、本発明に係るポリヌクレオチドを所定のベクターに挿入することにより作製することができる。上記ベクターとしては、これに限定されるものではないが、後述する組換え発現ベクターの他に、クローニングベクターを用いることができる。
本発明に係るポリヌクレオチドを取得するための供給源としては、特に限定されないが、生物材料であることが好ましい。本明細書中で使用される場合、用語「生物材料」は、生物学的サンプル(生物体から得られた組織サンプルまたは細胞サンプル)が意図される。例えば、実施例に後述する様に、ヒトリンパ球を好適に用いることができるが、これに限定されない。
〔3:抗ウイルス剤〕
本発明はまた、抗ウイルス剤を提供する。本明細書において、抗ウイルス活性とは、ウイルスの感染性、増殖能または免疫回避能を低下させる活性を意味する。ウイルスの感染性とは、ウイルスが宿主細胞に吸着または侵入する性質を意味する。このときの抗ウイルス活性は、例えば、ヒト型抗体酵素の活性によってウイルス粒子の表面タンパク質を、少なくとも部分的に切断または分解して、宿主細胞に対するウイルスの吸着または侵入を抑制する活性を示す。つまり、当該抗ウイルス活性は、ウイルスの中和活性と言い換えることができる。
ウイルスの増殖能は、宿主細胞におけるウイルス粒子の構成タンパク質の合成能、ウイルス粒子の形成能またはウイルス遺伝子の複製能を意味する。このときの抗ウイルス活性は、例えば、宿主細胞において、あるウイルスタンパク質を分解して成熟したウイルス粒子の形成を抑制する活性を意味する。当該ウイルスタンパク質としては、ウイルスタンパク質の合成を促進するか、もしくは合成に必須なウイルスタンパク質、ウイルス粒子の形成を促進するか、もしくは形成に必須なウイルスタンパク質、またはウイルス遺伝子の複製を促進するか、もしくは複製に必須なウイルスタンパク質が挙げられる。
ウイルスの免疫回避能は、宿主の免疫機構を回避する能力を意味する。このときの抗ウイルス活性は、例えば、ウイルス粒子の表面タンパク質の一部を切断して、抗原として認識可能な形態に変化させる活性、または宿主の免疫機構の一部を妨害するウイルスタンパク質を分解する活性である。
本発明に係る第1の抗ウイルス剤が標的とするウイルスは、エンベロープウイルスであり得、マイナス一本鎖RNAウイルスであり得、ラブドウイルス科(Rhabdoviridae)に属するウイルス(例えば、狂犬病ウイルス(rabies virus)および水疱性口内炎ウイルス(vesicular stomatitis virus))であり得、特に、狂犬病ウイルスを標的としている。
本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖(#1)(第1のポリペプチド)、ヒト抗体κ型軽鎖(#6)、ヒト抗体κ型軽鎖(#18)およびヒト抗体κ型軽鎖(23D4)は、後述の実施例に示すように、狂犬病ウイルスの感染性を著しく低下させる作用を有している。狂犬病ウイルスの感染症は、ワクチン接種によって容易に予防し得る。しかし、狂犬病ウイルスの感染症を発症した場合、現在のところ確実な治療法が存在しない上に、免疫応答が誘導されたとしても、当該感染症を発症した患者のほぼ100%が死亡する。よって、本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖(#1)(第1のポリペプチド)、ヒト抗体κ型軽鎖(#6)、ヒト抗体κ型軽鎖(#18)およびヒト抗体κ型軽鎖(23D4)は、発症した狂犬病ウイルスの感染症を処置するために特に有用であり得る。
したがって、一実施形態において、本発明に係る第1の抗ウイルス剤は、本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖(#1)(第1のポリペプチド)、ヒト抗体κ型軽鎖(#6)、ヒト抗体κ型軽鎖(#18)およびヒト抗体κ型軽鎖(23D4)の何れかを含んでいるものである。また、当該抗ウイルス剤は、ラブドウイルス科に属するウイルスに対して抗ウイルス活性を示し得る。当該抗ウイルス剤が抗ウイルス活性を示す上記ウイルスは、例えば、狂犬病ウイルスまたは水疱口内炎ウイルスである。
本発明に係る第2の抗ウイルス剤が標的とするウイルスは、エンベロープウイルスであり得、マイナス一本鎖RNAウイルスであり得、オルトミクソウイルス科に属するウイルスであり得、特に、インフルエンザウイルスを標的としている。標的とするインフルエンザウイルスの型は特に限定されないが、A型のインフルエンザウイルスを好適に標的とし得る。
本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖(#1)(第1のポリペプチド)、ヒト抗体κ型軽鎖(#4)、ヒト抗体κ型軽鎖(#11)、ヒト抗体κ型軽鎖(#18)およびヒト抗体κ型軽鎖(22F6)は、後述の実施例に示すように、インフルエンザウイルスの感染性を著しく低下させる作用を有している。インフルエンザウイルスは、変異の起こり易さ、被害の大きさなどの理由により、医学的に注視されているウイルスの一つである。本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖(#1)(第1のポリペプチド)、ヒト抗体κ型軽鎖(#4)、ヒト抗体κ型軽鎖(#11)、ヒト抗体κ型軽鎖(#18)およびヒト抗体κ型軽鎖(22F6)は、インフルエンザウイルスの流行を阻止するために特に有用であり得る。
したがって、一実施形態において、本発明に係る第2の抗ウイルス剤は、本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖(#1)(第1のポリペプチド)、ヒト抗体κ型軽鎖(#4)、ヒト抗体κ型軽鎖(#11)、ヒト抗体κ型軽鎖(#18)およびヒト抗体κ型軽鎖(22F6)の何れかを含んでいるものである。また、当該抗ウイルス剤は、インフルエンザウイルスに対して抗ウイルス活性を示し得る。当該抗ウイルス剤が抗ウイルス活性を示す上記ウイルスは、例えば、A型インフルエンザウイルスである。
また、本発明の抗ウイルス剤は、脂質二重膜の融合活性を示さないことが好ましい。これは、本発明の抗ウイルス剤がエンベロープに作用して抗ウイルス活性を示す場合、宿主細胞を障害する可能性があるためである。なお、実施例において後述するように、本発明に係るヒト型抗体酵素は、脂質二重膜の融合活性を示さない。
一実施形態において、本発明に係る抗ウイルス剤は、ヒトまたは動物についての使用のために、直接注入により投与され得る。本発明に係る抗ウイルス剤はまた、非経口投与、粘膜投与、筋肉内投与、静脈内投与、皮下投与、眼内投与または経皮的投与のために処方され得る。代表的には、組成物中に含まれるタンパク質は、0.01〜30mg/kg体重の用量、好ましくは、0.1〜10mg/kg体重、より好ましくは、0.1〜1mg/kg体重の用量で投与され得る。
本実施形態に係る抗ウイルス剤は、本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖(#1)(第1のポリペプチド)、ヒト抗体κ型軽鎖(#6)、ヒト抗体κ型軽鎖(#18)またはヒト抗体κ型軽鎖(23D4)以外に、薬学的に受容可能なキャリア、希釈剤または賦形剤(それらの組み合わせを含む)を含み得る。
本実施形態に係る抗ウイルス剤は、ヒトまたは動物についての使用のためのものであり、そして代表的には、薬学的に受容可能な希釈剤、キャリア、または賦形剤の任意の1つ以上を含む。治療的使用のための薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤は、薬学分野で周知であり、そして例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.(A.R.Gennaro編、1985)に記載される。薬学的に需要可能なキャリア、賦形剤または希釈剤の選択は、意図された投与経路および標準的薬学的慣行に従って、当業者によって容易に選択され得る。また、本実施形態に係る抗ウイルス剤は、任意の適切な結合剤、滑沢剤、懸濁剤、被覆剤または可溶化剤をさらに含み得る。
異なる送達系に依存して、組成/処方の必要条件は、異なり得る。例示として、本発明に係る抗ウイルス剤は、ミニポンプを使用してまたは粘膜経路により、例えば、吸入のための鼻スプレーまたはエアロゾルとして、あるいは非経口的に送達するために処方され得る(ここで本発明に係る抗ウイルス剤は、例えば、静脈内経路、筋肉内経路もしくは皮下経路による送達のために注射可能形態として処方される)。あるいは、この処方物は、両方の経路により送達されるように設計され得る。
また、本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖または抗ウイルス剤を生体内に投与する用途で用いる場合、ヒト抗体κ型軽鎖の生体内における安定性(血中半減期)を向上させるための様々な技術が用いられ得る。例えば、neonatal Fc receptor(FcRn)がFcに結合すると、IgGなどの抗体の血中半減期が延長することが知られており(例えば、Roopenian,D.C.et.al.,Nat Rev Immunol vol.7 715−725(2007)参照)、本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖のC末端を、FcRnとの結合活性を有するように改変することができる。また、本発明に係るヒト抗体κ型軽鎖をダイマー化すること、PEG(ポリエチレングリコール)を付加することもできる。
本明細書中の記載に基づけば、当業者は、本実施形態に係る抗ウイルス剤の別の形態(例えば、キット)、および本発明に係る抗ウイルス剤を用いて疾患を処理(予防および/または治療)する方法もまた本発明の範囲内であることを、容易に理解する。本発明に係る抗ウイルス剤を用いて疾患を処置する方法において、処置対象となる疾患は、ウイルス感染症であり得、例えば、狂犬病ウイルス感染症、水疱口内炎ウイルス感染症、インフルエンザウイルス感染症であり得る。また、本発明に係る抗ウイルス剤を用いて疾患を処置する方法において、被処置対象は、ヒトまたは非ヒト動物であり得る。
また、他の実施形態において、本発明に係る抗ウイルス剤は、ウイルスを除去すべき被処理物からウイルスを除去するために用いられ得る。例えば、本発明に係る抗ウイルス剤は、噴霧剤、塗布剤、浸漬剤等の形態であり得、それぞれ、被処理物に対して噴霧、塗布または被処理物を浸漬するために用いられ得る。本実施形態に係る抗ウイルス剤は、用途に応じて、公知の抗ウイルス剤、界面活性剤、安定剤、pH調整剤、緩衝剤、等張化剤、キレート剤、保存料、粘張剤、溶媒等をさらに含んでいてもよい。
〔4.プライマーセット〕
本発明者らは、酵素活性を有するマウスのモノクローナル抗体(抗体酵素)の配列および立体構造を解析することによって、抗体酵素はκ型の軽鎖を有し、当該軽鎖に触媒三つ組残基様構造を有している場合が多いことを見出した。なお、触媒三つ組残基様構造とは、例えば、セリン残基、ヒスチジン残基およびアスパラギン残基によって形成された、触媒活性を有していると考えられる構造である。
κ型の抗体軽鎖の遺伝子は、生殖細胞遺伝子(germline gene)に存在するVκ遺伝子群、Jκ遺伝子群および定常領域の遺伝子群から各遺伝子が選択されて再編成されることにより構築される。
そこで、本発明者らは、マウスのκ型の抗体軽鎖について、Vκ遺伝子の生殖細胞遺伝子型と立体構造との関係について解析を進めた。その結果、Vκ遺伝子における93種類の生殖細胞遺伝子型のうち、触媒三つ組残基様構造を有する抗体軽鎖を構築するものは、わずか10種類ほどであることを見出した。そして、Vκ遺伝子の生殖細胞遺伝子型がこれら10種類ほどに含まれる場合には、抗体軽鎖は高い確率で抗体酵素となることを見出した(特許文献2)。
本発明者らは、医療などへの応用を考慮し、マウスの抗体だけでなくヒトの抗体についても同様のことが生じているか否かについてさらに解析を進めた。本発明者らは、これまでに報告されている抗体に関する世界中の情報を検討した。その結果、ヒトの場合では、Vκ遺伝子が、サブグループII(subgroup II)に属する場合に、抗体軽鎖が触媒三つ組残基様構造を高頻度に有することを見出した(特許文献1)。
したがって、ヒトcDNAライブラリーから、サブグループIIに属するVκ遺伝子を有する抗体軽鎖cDNAまたは少なくとも可変領域をコードするそのフラグメントを取得することができれば、有用である。
しかし、Vκ遺伝子の塩基配列は、各サブグループ間において類似しているため、例えば、PCR反応を用いて、ヒトリンパ球のcDNAから、サブグループIIに属するVκ遺伝子を有する抗体軽鎖cDNAまたはそのフラグメントのみを確実に選択して増幅することは容易ではない。
また、Vκ遺伝子が同じサブグループIIに属していたとしても、ヒトのリンパ球から実際に得られたcDNAには、上述した再編成に起因する多様性が存在する。それゆえ、選択したcDNAから得られる抗体酵素の活性の高さ、標的とする基質等が異なる可能性がある。また、三つ組残基様構造を有している抗体のすべてが酵素活性を有するわけではない。抗体が酵素活性を有するか否かは、抗体の立体構造における三つ組残基様構造以外のコンフォメーションのわずかな差異によって決まると考えられる。
したがって、サブグループIIに属するVκ遺伝子を有する抗体軽鎖cDNAまたはそのフラグメントを非常に多種類にわたって取得することによって、用途の異なる抗体酵素および特定の用途に有用性の高い抗体酵素を製造し得る。このため、有用な抗体酵素の開発を目的として、ヒトcDNAライブラリーから、サブグループIIに属するVκ遺伝子を有する抗体軽鎖cDNAまたはそのフラグメントを選択的かつ効率的に増幅するための技術が求められている。
そこで、本発明は、2段階のPCR反応により、ヒトcDNAを鋳型に、サブグループIIに属するヒト抗体のκ型軽鎖の可変領域を少なくともコードするポリヌクレオチドを増幅するためのプライマーセットを提供する。本発明に係るプライマーセットを使用し、ヒトcDNAを鋳型として、2段階のPCR反応を実施することにより、上述したような抗ウイルス剤または抗体酵素として機能するヒト抗体κ型軽鎖を、効率よく取得することができる。
一回のPCR反応のためのプライマーとして、5’末端側プライマーおよび3’末端側プライマーが設計される。5’末端側プライマーは、典型的には、増幅したいポリヌクレオチドの5’末端からその下流側の領域の相補鎖と特異的にハイブリダイズする、典型的には15〜30塩基のポリヌクレオチドを含んでおり、好ましくは、増幅したいポリヌクレオチドの5’末端からその下流側の領域と同じ塩基配列を有する。また、3’末端側プライマーは、典型的には、増幅したいポリヌクレオチドの3’末端からその上流側の領域と特異的にハイブリダイズする典型的には15〜30塩基のポリヌクレオチドを含んでおり、好ましくは、増幅したいポリヌクレオチドの3’末端からその上流側の領域の相補鎖と同じ塩基配列を有する。
本発明に係るプライマーセットは、5’末端側プライマーとして、1段階目のPCR反応のための5’末端側プライマー(第1のプライマー)および2段階目のPCR反応のための5’末端側プライマー(第2のプライマー)を備えており、3’末端側プライマーとして、1段階目のPCR反応のための3’末端側プライマー(第3のプライマー)および2段階目のPCR反応のための3’末端側プライマー(第4のプライマー)を備えている。第1〜第4のプライマーは、図1に示すように、入れ子の関係になっている。
本明細書において、特異的にハイブリダイズするとは、鋳型となるポリヌクレオチドの標的となる領域以外とはポリヌクレオチド二本鎖を形成しないことを指し、Tm値が50℃以上であることが好ましく、55℃以上であることがより好ましく、60℃以上であることがさらに好ましく、65℃以上であってもよい。
各5’末端プライマーは、PCR反応において鋳型とハイブリダイズするための領域を少なくとも有していればよいが、例えば、当該領域の5’末端側に任意の制限酵素認識部位を含んでいてもよい。この制限酵素認識部位は、例えば、市販の制限酵素によって切断される部位である。制限酵素認識部位の配列は、制限酵素を提供している種々の製造者によって配布されているカタログなどに記載されている公知の配列である。よって、制限酵素認識部位は、(サブ)クローニングまたは発現に使用するベクターに合わせて、適宜選択すればよい。制限酵素認識部位には、例えば、制限酵素に切断されて平滑末端(blunt end)を生じる制限酵素部位または制限酵素に切断されて粘着末端(sticky end)を生じる制限酵素部位がある。例えば、サブクローニング用のベクターとして、トポイソメラーゼを利用して、平滑末端を有するDNA断片をライゲーション可能なベクターを使用する場合、ベクターの制限酵素消化および制限酵素処理後のベクターの精製が不要になるので、操作が簡略化される。
また、各5’末端プライマーは、上記制限酵素認識部位の5’末端側にさらなる塩基を含んでいてもよい。当該さらなる塩基は、プライマーダイマー形成の回避、ヘアピン形成の回避およびPCR反応条件の緩和など、適切にPCR産物を増幅させるために、当業者であれば、その数および種類を適宜設計することができる。
各3’末端プライマーは、PCR反応において標的配列とハイブリダイズするための領域を少なくとも有していればよいが、当該領域の3’末端側に、上述したような制限酵素認識部位を含んでいてもよい。また、3’末端プライマーは、上記制限酵素認識部位の3’末端側にさらなる塩基を含んでいてもよい。3’末端プライマーにおける制限酵素認識部位およびさらなる塩基は、5’末端プライマーの設計と同様の基準において任意に選択することができる。
PCR反応は、市販のサーマルサイクラーを用いて行うことができる。また、PCR用の試薬も市販されたものを用いることができる。上記サーマルサイクラーの操作は、添付された指示書に従えばよいが、例えば、DNAを変性させる温度として94℃、DNAをアニーリングさせる温度として50〜60℃、DNAの伸張反応をさせる温度として68℃を用いることができる。
ヒトcDNAは、抗体軽鎖のcDNAを含んでいるものであれば特に限定されず、ヒトの体液、組織、好ましくは、血液、リンパ液、脾臓組織等から採取され得るが、ヒトリンパ球から調製されたヒトリンパ球由来のcDNAであることが特に好ましい。ヒトリンパ球由来のcDNAは、例えば、末梢血等のヒトリンパ球を含む体液から、Ficoll−paque等を用いてリンパ球を分離し、市販のRNA抽出キットを用いることにより、トータルRNAを抽出した上、公知のRT−PCR法を適用することにより取得することができるが、その方法は特に限定されない。
続いて、第1〜第4のプライマーの塩基配列、特に、PCR反応において鋳型とハイブリダイズするための領域の塩基配列について詳細に説明する。
図1に、第1〜第4のプライマーの設計の一例を示す。図1に示すように、κ型の抗体軽鎖遺伝子は、5’末端側からV遺伝子、J遺伝子およびC遺伝子の順に並んでおり、全長が約660塩基である。また、抗体軽鎖遺伝子の5’末端側にはリーダー配列がつながっている。一実施形態において、1段階目のPCR反応のためのフォワードプライマー(第1のプライマー)は、リーダー配列の途中に設けられている。2段階目のPCR反応のためのフォワードプライマー(第2のプライマー)は、抗体軽鎖遺伝子(V遺伝子)の5’末端領域に設けられている。1段階目および2段階目のリバースプライマー(第3および第4のプライマー)は、抗体軽鎖遺伝子(C遺伝子)の3’末端領域に設けられている。
一実施形態において、1段階目のPCR反応のための5’末端側プライマー(第1のプライマー)の1段階目のPCR反応において鋳型とハイブリダイズする領域の塩基配列は、AGCTTCTGGGGCTGCTAATG(配列番号43)またはAGCTCCTGGGGCTGCTAATG(配列番号44)である。第1のプライマーをこのように設計することにより、2段階のPCR反応によって、サブグループIIに属しているVκ遺伝子を有するκ型抗体軽鎖遺伝子をより選択的かつ効率的に増幅することができる。以下、その理由を述べる。
図43は、サブグループIに属しているVκ遺伝子を有するκ型抗体軽鎖遺伝子のリーダー配列を示す図であり、図44は、サブグループIIおよびIIIに属しているVκ遺伝子を有するκ型抗体軽鎖遺伝子のリーダー配列を示す図であり、図45は、サブグループIV〜VIに属しているVκ遺伝子を有するκ型抗体軽鎖遺伝子のリーダー配列を示す図である。図43〜45では、合わせて、第1のプライマーとの相同性を示している。図中、上部に記載したAGCTTCTGGGGCTGCTAATG(配列番号43)と同一の配列の部分には、下線を付して示している。各リーダー配列の第1のプライマーに対応する部分について、図46にまとめた。
図44に示すように、サブグループIIに属しているVκ遺伝子を有するκ型抗体軽鎖遺伝子のリーダー配列は、AGCTTCTGGGGCTGCTAATG(配列番号43)またはAGCTCCTGGGGCTGCTAATG(配列番号44)とほぼ同一の塩基配列を有する。したがって、第1のプライマーを用いたPCR反応により、サブグループIIに属しているVκ遺伝子を有するκ型抗体軽鎖遺伝子を好適に増幅することができる。
図43〜46に示すように、各サブグループに属しているVκ遺伝子を有するκ型抗体軽鎖遺伝子のリーダー配列と第1のプライマー(20塩基)とは、2〜3塩基(サブグループI)、9塩基以上(サブグループIII)、14塩基(サブグループIV)、12塩基(サブグループV)、または8塩基以上(サブグループVI)が異なっている。このように、サブグループIに属しているVκ遺伝子を有するκ型抗体軽鎖遺伝子のリーダー配列が近い配列を有するだけであり、他のサブグループに属しているVκ遺伝子を有するκ型抗体軽鎖遺伝子のリーダー配列は大きく異なる配列を有し、1段階目のPCR反応のための5’末端側プライマーとして、上記のような配列を有する第1のプライマーを用いて、2段階のPCR反応を行うことにより、サブグループIIに属するVκ遺伝子を有する抗体軽鎖遺伝子またはそのフラグメントを選択的に増幅可能である。
なお、第1のプライマーの塩基配列は、若干の変更があってもよい。例えば、サブグループIIに属するVκ遺伝子を有する抗体軽鎖遺伝子のリーダー配列の第1のプライマーに対応する部分には、図44に示すように、5’末端から5塩基目がTであるものもあるため、第1のプライマーの、配列番号43に示される部分の左から5塩基目をTに変更してもよい。このように、サブグループIIに属しているVκ遺伝子を有するκ型抗体軽鎖遺伝子をより選択的かつ効率的に増幅することができる範囲で、例えば、配列番号43または配列番号44の塩基配列に対する相補配列によって示されるポリヌクレオチドと特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドを第1のプライマーとして用いてもよい。ただし、特許文献1に記載の配列番号47の塩基配列のように、配列番号43または配列番号44の塩基配列の5’末端側にTCを加えるか、または3’末端側にCTを加えることは好ましくない。なぜなら、図43に示すように、サブグループIIに属するVκ遺伝子を有する抗体軽鎖遺伝子のリーダー配列との親和性が増し、非特異的増幅が生じやすくなるためである。また、図44に示すように、サブグループIIに属するVκ遺伝子を有する抗体軽鎖遺伝子の特異的増幅も生じやすくなると予測される。以上のことから、1段階目のPCR反応のための5’末端側プライマー(第1のプライマー)の1段階目のPCR反応において鋳型とハイブリダイズする領域(鋳型に特異的な配列)は、AGCTCCTGGGGCTGCTAATG(配列番号43)またはAGCTTCTGGGGCTGCTAATG(配列番号44)であることが特に好ましい。
このように、本実施形態に係るプライマーセットでは、特許文献1に記載のプライマーとは異なるプライマーを用いることによって、サブグループIIに属するVκ遺伝子を有する抗体軽鎖遺伝子またはそのフラグメントをより選択的かつ効率的に増幅可能である。さらに、本実施形態に係るプライマーセットは、特許文献1に記載のプライマーセットとは異なり、2段階目のプライマーを備えている。これにより、サブグループIIに属するVκ遺伝子を有する抗体軽鎖遺伝子またはそのフラグメントをさらに選択的かつ効率的に増幅可能である。
一実施形態において、2段階目のPCR反応のための5’末端側プライマー(第2のプライマー)は、サブグループIIに属するVκ遺伝子を有する抗体軽鎖遺伝子またはそのリーダー配列の一部の相補鎖と特異的にハイブリダイズするものであればよいが、当該抗体軽鎖遺伝子の5’末端領域に相当するGATRTTGTGATGACYCAG(配列番号45:RはAまたはGであり、YはCまたはTである)に対する相補鎖に特異的にハイブリダイズするものが好ましく、例えば、2段階目のPCR反応において当該鋳型とハイブリダイズする領域の塩基配列が、GATRTTGTGATGACYCAG(配列番号45)であるものであり得る。これにより、サブグループIIに属するVκ遺伝子を有する抗体軽鎖遺伝子またはそのフラグメントをさらに選択的かつ効率的に増幅可能である。以下、その理由を述べる。
図47は、サブグループIに属しているVκ遺伝子を有するκ型抗体軽鎖遺伝子の5’末端側約60塩基を示す図であり、図48は、サブグループIIに属しているVκ遺伝子を有するκ型抗体軽鎖遺伝子の5’末端側約60塩基を示す図であり、図49は、サブグループIII〜VIに属しているVκ遺伝子を有するκ型抗体軽鎖遺伝子の5’末端側約60塩基を示す図である。図47〜49では、合わせて、第2のプライマーとの相同性を示している。図中、上部に記載したGATRTTGTGATGACYCAG(配列番号45)と同一の配列の部分には下線を付して示し、選択可能な塩基の一方と同じである場合にはさらに網掛けを付している。各リーダー配列の第2のプライマーに対応する部分について、図50にまとめた。
図48に示すように、サブグループIIに属しているVκ遺伝子を有するκ型抗体軽鎖遺伝子の5’末端は、GATRTTGTGATGACYCAG(配列番号45)とほぼ同一の塩基配列を有する。なお、5’末端から4塩基目がAまたはGであり、20塩基目がCまたはTである。したがって、第2のプライマーを用いたPCR反応により、サブグループIIに属しているVκ遺伝子を有するκ型抗体軽鎖遺伝子またはそのフラグメントを好適に増幅することができる。
図47および図50に示すように、サブグループIに属しているVκ遺伝子を有するκ型抗体軽鎖遺伝子の5’末端と、第2のプライマーとは、最小でも4塩基が異なる。そして、RをGにしてYをTにした場合には最小でも6塩基が異なる。したがって、第2のプライマーを用いて2段階目のPCR反応を行った場合、サブグループIに属しているVκ遺伝子を有するκ型抗体軽鎖遺伝子の非特異的な増幅を抑えることができる。ここで、上述したように、第1のプライマーは、サブグループIに属しているVκ遺伝子を有するκ型抗体軽鎖遺伝子のリーダー配列に近いものであるが、第1のプライマーおよび第2のプライマーを併用して2段階のPCR反応を行うことにより、さらに選択的かつ効率的に、サブグループIIに属するVκ遺伝子を有する抗体軽鎖遺伝子またはそのフラグメントを増幅可能である。
また、図48〜50に示すように、サブグループIII、IV、VIに属しているVκ遺伝子を有するκ型抗体軽鎖遺伝子の5’末端は、第2のプライマーとほぼ同一の塩基配列を有し、サブグループVに属しているVκ遺伝子を有するκ型抗体軽鎖遺伝子の5’末端は、第2のプライマーと大きく異なる塩基配列を有している。このように、第2のプライマーを用いた1段階のPCR反応では、サブグループIIに属するVκ遺伝子を有する抗体軽鎖遺伝子を首尾よく選択的に増幅することは困難である。
以上のように、本発明に係る5’末端プライマー(第1のプライマー)を2段階のPCR反応の1段階目のPCR反応のためのプライマーとして用いて、任意の好適なプライマーを用いて2段階目のPCRをさらに行えば、サブグループIIに属するVκ遺伝子を有する抗体軽鎖遺伝子またはそのフラグメントを選択的かつ効率的に増幅することができる。また、本発明に係る5’末端プライマー(第2のプライマー)を2段階のPCR反応の2段階目のPCR反応のためのプライマーとして用いれば、さらに好適に、サブグループIIに属するVκ遺伝子を有する抗体軽鎖遺伝子またはそのフラグメントを選択的かつ効率的に増幅することができる。
なお、上述したように、各5’末端側プライマー(第1および第2のプライマー)は、その5’末端側に、制限酵素認識部位およびさらなる塩基がつながっていてもよい。そのような第1のプライマーの一例は、AGTTCCATGGAGCTTCTGGGGCTGCTAATG(配列番号9)の塩基配列からなるポリヌクレオチドであり、そのような第2のプライマーの一例は、AGTTCCATGGATRTTGTGATGACYCAG(配列番号11)の塩基配列からなるポリヌクレオチドである。
1段階目および2段階目のPCR用の3’末端プライマー(第3および第4のプライマー)は、上述の5’末端プライマーと組み合わせて、サブグループIIに属するVκ遺伝子を有する抗体軽鎖遺伝子またはその可変領域をコードするフラグメントを増幅し得るものであればよい。
このようなプライマーとしては、例えば、サブグループIIに属するVκ遺伝子を有する抗体軽鎖遺伝子の可変領域の3’末端の約15〜20塩基と特異的にハイブリダイズするプライマー、当該κ型抗体軽鎖遺伝子の定常領域の一部と特異的にハイブリダイズするプライマーが挙げられる。これらのプライマーのうち、当該抗体軽鎖遺伝子(定常領域)の3’末端領域の一部(例えば、CTCGAGACACTCTCCCCTGTTGAAG(配列番号46)に対する相補鎖)に特異的にハイブリダイズするものが好ましく、例えば、PCR反応において鋳型とハイブリダイズする領域の塩基配列が、CTCGAGACACTCTCCCCTGTTGAAG(配列番号46)に示されるプライマーであり得る。第3および第4のプライマーが、抗体軽鎖遺伝子(定常領域)の3’末端領域に特異的にハイブリダイズする場合、抗体軽鎖遺伝子の全体を増幅することができる。しかし、抗体軽鎖からなる抗体酵素は、その可変領域に触媒三つ組残基様構造を有し、可変領域において活性を有していると考えられるため、抗体軽鎖遺伝子における、可変領域を少なくともコードするフラグメントを増幅できれば本発明の目的を達成することができる。
上述したように、各3’末端側プライマー(第3および第4のプライマー)は、その3’末端側に、制限酵素認識部位およびさらなる塩基がつながっていてもよい。そのような第3および第4のプライマーの一例は、ccgtCTCGAGACACTCTCCCCTGTTGAAG(配列番号10)の塩基配列によって示されるポリヌクレオチドである。
〔5.ポリヌクレオチドの製造方法〕
本発明は、ポリヌクレオチドの製造方法を提供する。一実施形態において、本発明に係るポリヌクレオチドの製造方法は、上述したプライマーセットを用いた2段階のPCR反応により、ヒトcDNAからヒト抗体のκ型軽鎖の可変領域を少なくともコードするポリヌクレオチドを増幅する工程を包含している。用いるプライマーの設計、PCR反応の条件、鋳型cDNA等は、上述したとおりである。
当該工程の後に、2段階のPCR反応の反応産物は、例えば、所望の長さを有するポリヌクレオチドであるか否かについて、公知の方法(例えばアガロースゲル電気泳動など)によって確認され得る。所望の長さを有することが確認された上記反応産物は、例えば、精製されてシーケンス用のサブクローニングベクターに導入され得る。サブクローニングベクターに導入された上記反応産物は、シーケンス解析および相同性検索によってどの生殖細胞遺伝子型(ジャームラインジーン)に由来するのかが確認され得る。
本実施形態に係る方法によれば、100%に近い割合でサブグループIIに属するVκ遺伝子を有する抗体軽鎖遺伝子またはそのフラグメントであるポリヌクレオチドを増幅することができる。多種類のサブグループIIに属するVκ遺伝子を有する抗体軽鎖遺伝子またはそのフラグメントを増幅することによって、これらの抗体軽鎖遺伝子またはそのフラグメントから、高い活性を有するか、または異なる基質に作用する抗体酵素を発現させることができる。ここで、抗体酵素が有する酵素活性は、特に限定はないが、プロテアーゼ活性またはペプチダーゼ活性であることが好ましい。
〔6.ポリペプチドの製造方法〕
本発明にかかるポリヌクレオチドの製造方法によって製造したポリヌクレオチドは、サブグループIIに属するVκ遺伝子を有する抗体軽鎖遺伝子または可変領域を少なくともコードするそのフラグメントであるので、適当な宿主(例えば細菌、酵母)に導入して、サブグループIIに属するVκ遺伝子を有する抗体軽鎖または可変領域を少なくとも含むそのフラグメントを発現させることができる。
上記ポリヌクレオチドの導入には、例えば、上記ポリヌクレオチドを含む組換え発現ベクターを作製し、宿主細胞に導入する手法が用いられる。組換え発現ベクターの作製には、プラスミド、ファージ、又はコスミドなどを用いることができるが特に限定されるものではない。ベクターの具体的な種類は特に限定されるものではなく、宿主細胞中で発現可能なベクターを適宜選択すればよい。すなわち、宿主細胞の種類に応じて、確実に遺伝子を発現させるためにプロモーター配列を適宜選択し、これと上記ポリヌクレオチドを各種プラスミド等に組み込んだものを発現ベクターとして用いればよい。
上記ポリヌクレオチドが宿主細胞に導入されたか否か、さらには宿主細胞中で確実に発現しているか否かを確認するために、各種マーカーを用いてもよい。例えば、宿主細胞中で欠失している遺伝子をマーカーとして用い、このマーカーと本発明の遺伝子とを含むプラスミド等を発現ベクターとして宿主細胞に導入する。これによってマーカー遺伝子の発現から本発明の遺伝子の導入を確認することができる。
上記宿主細胞は、特に限定されるものではなく、従来公知の各種細胞を好適に用いることができる。具体的には、上記〔2:本発明にかかる遺伝子〕に記載の遺伝子が全長DNAの場合の宿主細胞としては、ヒト又はマウス由来の細胞をはじめとして、線虫、アフリカツメガエルの卵母細胞、各種哺乳動物(ラット、ウサギ、ブタ、サル等)の培養細胞、あるいは、キイロショウジョウバエ、カイコガ等の昆虫の培養細胞等などの動物細胞が挙げられ、DNAフラグメントの場合の宿主細胞としては、例えば、大腸菌等の細菌、酵母(出芽酵母や分裂酵母)などを挙げることができるが、特に限定されるものではない。
上記発現ベクターを宿主細胞に導入する方法、すなわち形質転換方法も特に限定されるものではなく、電気穿孔法、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法等の従来公知の方法を好適に用いることができる。
宿主細胞に導入された上記ポリヌクレオチドは、例えば、IPTG誘導法等を用いて発現させることができる。
〔6.まとめ〕
すなわち、本発明に係る抗ウイルス剤は、可変領域が配列番号26、14、22、30、50、54または35のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなるヒト抗体κ型軽鎖を含有することを特徴としている。
本発明に係る抗ウイルス剤では、上記κ型軽鎖が、単量体であることが好ましい。
従来、狂犬病ウイルスに対する中和抗体は、天然の抗体と同様、軽鎖2本および重鎖2本からなる四量体であり、狂犬病ウイルスに結合することにより、その中和活性を示す。中和抗体としてκ型軽鎖の単量体を用いる技術は従来全く知られておらず、また、κ型軽鎖の単量体を単独で用いることにより、高い抗ウイルス活性が得られることは、当業者が予測し得たものではなかった。
本発明に係る抗ウイルス剤では、上記κ型軽鎖のアミノ酸配列において、他の軽鎖とジスルフィド結合を形成するためのシステインが、削除またはシステイン以外のアミノ酸に置換されていることが好ましく、上記κ型軽鎖が、配列番号27、15、23、31、51、55または36のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなるものであってよい。これにより、高い抗ウイルス活性を有するκ型軽鎖の単量体を容易に提供することができる。
本発明に係る抗ウイルス剤は、上記ウイルスがマイナス一本鎖RNAウイルスであることが好ましい。後述する実施例に示すように、本発明に係るウイルス剤は、マイナス一本鎖RNAウイルス((-)ssRNA virus)に対して高い効果を有している。
本発明に係る抗ウイルス剤は、上記可変領域が、配列番号26、14、22または30のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなり、上記ウイルスが、ラブドウイルス科に属するウイルスであってもよい。可変領域が上記のようなポリペプチドからなる場合、本発明に係る抗ウイルス剤は、後述する実施例に示すように、狂犬病ウイルスおよび水疱口内炎ウイルスといったラブドウイルスに対して高い効果を有している。
本発明に係る抗ウイルス剤は、また、上記可変領域が、配列番号26、14、50、54または35のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなり、上記ウイルスが、インフルエンザウイルスであってもよい。可変領域が上記のようなポリペプチドからなる場合、本発明に係る抗ウイルス剤は、後述する実施例に示すように、インフルエンザウイルスに対して高い効果を有している。
本発明はまた、狂犬病ウイルスに対するヒト抗体の軽鎖であって、酵素活性を有するヒト型の抗体酵素を提供する。
すなわち、本発明に係るヒト型の抗体酵素は、狂犬病ウイルスに対するヒト抗体のκ型軽鎖であって、アミダーゼ活性を有しており、その可変領域が、配列番号26、14、16、18、30、35または40のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなることを特徴としている。本発明に係るヒト型の抗体酵素は、また、狂犬病ウイルスに対するヒト抗体κ型軽鎖であって、核酸分解活性を有しており、その可変領域が、配列番号26、14、30、50または54のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなるものであってもよい。本発明に係るヒト型の抗体酵素は、また、狂犬病ウイルスに対するヒト抗体κ型軽鎖であって、がん細胞に対する細胞障害性を有しており、その可変領域が、配列番号14または30のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなるものであってもよい。本発明に係るヒト型の抗体酵素は、また、狂犬病ウイルスに対するヒト抗体κ型軽鎖であって、抗ウイルス活性を有しており、その可変領域が、配列番号14、26、22、30、50、54または35のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなるものであってもよい。これらの抗体酵素は、ヒト型の抗体酵素であり、ヒトに投与しても副作用が極めて少ないと考えられる。
本発明に係るヒト型の抗体酵素は、上記κ型軽鎖のアミノ酸配列において、他の軽鎖とジスルフィド結合を形成するためのシステインが、削除またはシステイン以外のアミノ酸に置換されていることが好ましく、配列番号27、15、17、19、23、31、36、41、51または55のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなるものであってよい。これにより、活性の強い、κ型軽鎖の単量体であるヒト型の抗体酵素を容易に提供することができる。
本発明はまた、本発明に係るヒト型の抗体酵素をコードするポリヌクレオチドを提供する。本発明はまた、本発明に係るポリヌクレオチドを含むベクター、本発明に係るポリヌクレオチドが導入されている形質転換体を提供する。
なお、本発明は当然に以下の発明を含む。
本発明に係るポリペプチドは、下記(A)または(B)のポリペプチドであることを特徴としている:(A)配列番号1、3、5もしくは7のアミノ酸配列によって示される、ポリペプチド;(B)配列番号1、3、5もしくは7のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失もしくは付加されているアミノ酸配列によって示されるポリペプチドであって、アミダーゼ活性を有する、ポリペプチド。
上記ポリペプチドは、ヒト抗体のκ型の軽鎖であることが好ましい。
本発明に係るポリヌクレオチドは、本発明に係るポリペプチドをコードすることを特徴としている。
本発明に係るポリヌクレオチドは、下記(A)、(B)または(C)のポリヌクレオチドであってもよい:(A)配列番号2、4、6もしくは8の塩基配列によって示される、ポリヌクレオチド;(B)配列番号2、4、6もしくは8の塩基配列において、1もしくは数個の塩基が置換、欠失もしくは付加されている塩基配列によって示されるポリヌクレオチドであって、アミダーゼ活性を有するヒト抗体のκ型の軽鎖をコードする、ポリヌクレオチド;(C)配列番号2、4、6もしくは8の塩基配列によって示される相補鎖と、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、アミダーゼ活性を有するヒト抗体のκ型の軽鎖をコードする、ポリヌクレオチド。
本発明に係るベクターは、本発明に係るポリヌクレオチドを含むことを特徴としている。
本発明に係る形質転換体は、本発明に係るポリヌクレオチドが導入されていることを特徴としている。
本発明に係る抗体酵素は、ヒト抗体のκ型の軽鎖またはそのフラグメントであり、配列番号1のアミノ酸配列の第1〜113番目、配列番号3のアミノ酸配列の第1〜113番目、または配列番号5のアミノ酸配列の第1〜112番目によって示される可変領域を備え、アミダーゼ活性を有することを特徴としている。
本発明に係る抗ウイルス剤は、本発明に係るポリペプチドまたは本発明に係る抗体酵素を含有していることを特徴としている。
上記抗ウイルス剤は、ラブドウイルス科に属するウイルスに対する抗ウイルス剤であることが好ましく、上記ウイルスが、狂犬病ウイルスまたは水疱口内炎ウイルスであることがより好ましい。
また、本発明に係るプライマーセットは、ヒトcDNAを鋳型とする2段階のPCR反応によって、ヒト抗体κ型軽鎖の可変領域を少なくともコードするポリヌクレオチドを増幅するためのプライマーセットであって、1段階目のPCR反応のためのプライマーとして、該1段階目のPCR反応において該鋳型とハイブリダイズする領域が、配列番号43または44の塩基配列によって示されるポリヌクレオチドである第1のプライマーを備えていることを特徴としている。
本発明に係るプライマーセットを用いることにより、ヒトcDNAから、サブグループIIに属するVκ遺伝子を有する抗体軽鎖cDNAまたは少なくとも可変領域をコードするそのフラグメントをより選択的かつ効率的に増幅することができる。これにより、抗体酵素であるヒト型抗体κ型軽鎖を効率よく取得することができる。
なお、本発明に係るプライマーセットは、2段階目のPCR反応のためのプライマーとして、配列番号45の塩基配列に対する相補配列によって示されるポリヌクレオチドと特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドである第2のプライマーを備えていることが好ましい。
あるいは、本発明に係るプライマーセットは、2段階のPCR反応により、ヒトcDNAを鋳型に、ヒト抗体κ型軽鎖の可変領域を少なくともコードするポリヌクレオチドを増幅するためのプライマーセットであって、1段階目のPCR反応のためのプライマーとして、配列番号43または44の塩基配列に対する相補配列によって示されるポリヌクレオチドと特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドである第1のプライマーを備え、2段階目のPCR反応のためのプライマーとして、配列番号45の塩基配列に対する相補配列によって示されるポリヌクレオチドと特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドである第2のプライマーを備えているものであってもよい。
また、本発明に係るプライマーセットは、1段階目のPCR反応のためのプライマーとして、ヒト抗体κ型軽鎖の定常領域の遺伝子の一部と特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドである第3のプライマーをさらに備え、2段階目のPCR反応のためのプライマーとして、ヒト抗体κ型軽鎖の定常領域の遺伝子の一部と特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドである第4のプライマーをさらに備えていることが好ましい。第3のプライマーは、配列番号46の塩基配列に対する相補配列によって示されるポリヌクレオチドと特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドであり、第4のプライマーは、配列番号46の塩基配列に対する相補配列によって示されるポリヌクレオチドと特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドであることが好ましい。
また、本発明に係るプライマーセットにおいて、上記ヒトcDNAは、リンパ球由来のcDNAであってもよい。
本発明は、また、本発明に係るプライマーセットを用いた2段階のPCR反応により、ヒトcDNAからヒト抗体κ型軽鎖の可変領域を少なくともコードするポリヌクレオチドを増幅する工程を包含している、ポリヌクレオチドの製造方法、および、当該ポリヌクレオチドの製造方法により製造したポリヌクレオチドを、宿主細胞内で発現させる工程を包含している、ポリペプチドの製造方法を包含する。
本発明は、ここまでに説明した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される範囲内で種々の変更、改変および組合せが可能であり、種々の変更、改変および組合せによって得られる実施形態は、本発明に包含される。
〔1:独自に開発した2段階のPCR反応によるクローンの取得〕
(1−1.プライマーの設計)
図1に示すように、1段階目のPCR反応のためのフォワードプライマーおよびリバースプライマー、2段階目のPCR反応のためのフォワードプライマーおよびリバースプライマーを設計した。
発明者らは、ペプチドまたは抗原タンパク質を切断または分解する活性を有するヒト由来の抗体酵素を用いて、その性質や構造の特徴を詳細に解析した。その結果、ペプチドまたは抗原タンパク質を切断または分解する活性を有する抗体酵素は、いずれもその立体構造中に、セリン残基、アスパラギン酸残基およびヒスチジン残基が立体構造において近接して存在することを明らかにした。ここで、「立体構造において近接して存在する」とは、セリン残基と、アスパラギン酸残基と、ヒスチジン残基との距離が、少なくとも3〜20Åの範囲内、好ましくは3〜10Åの範囲内にあることを意味する。以下において上記3つのアミノ酸残基が立体構造において近接している構造を「触媒三つ組残基様構造」と称する。上記3つのアミノ酸残基間の距離が3〜20Å、特に3〜10Åの範囲内であれば、三つ組み残基様構造と基質(ペプチドや抗原タンパク質)とが十分に反応できると考えられる。
抗体は、重鎖(H鎖:Heavy chain)および軽鎖(L鎖:Light chain)から構成されている。重鎖および軽鎖は、可変領域(VR:Variable Region)および定常領域(CR:Constant Region)から構成されており、可変領域は、超可変領域(CDR:Complimentarity Determining Region)を有している。さらに、抗体の軽鎖は、κ型およびλ型に分類される。
抗体遺伝子は、可変領域および定常領域をコードしている。軽鎖の可変領域の構造遺伝子は、V遺伝子およびJ遺伝子から構成されている。生殖細胞系列(germline)遺伝子は、それぞれコードするアミノ酸配列が異なるため、抗体遺伝子を構成する可変領域の構造遺伝子によってそれぞれの遺伝子産物である抗体も配列が異なる。これによって、抗体の多様性が生じる。そして、この生殖細胞系列遺伝子は、その塩基配列に基づいて、サブグループに分類される。
発明者らは、ヒト抗体において、サブグループIIに属するκ型軽鎖のV遺伝子(サブグループIIのVκ遺伝子)にコードされるポリペプチドが上記三つ組様残基構造を高頻度に有していることを明らかにした(例えば、特許文献1を参照のこと)。このことから、抗原との結合部位を構成する可変領域において上記三つ組様残基構造が形成されて、この構造に基づいて酵素活性を獲得した場合に、特に有用なヒト型抗体酵素が得られると考えられる。
しかし、Vκ遺伝子の各サブグループ間の配列が非常に類似しているため、PCR反応を利用して、サブグループIIに属するVκ遺伝子を有する抗体軽鎖遺伝子を増幅するためのプライマーの設計は非常に困難であった。本発明者らは、試行錯誤の結果、後述するような塩基配列のプライマーを用いた2段階のPCR反応によれば、効率的にサブグループIIに属するVκ遺伝子を有する抗体軽鎖遺伝子を増幅することを見出した。
(1−2.ヒト末梢血cDNAの調製)
狂犬病ウイルスのワクチンを用いて、複数回にわたって過剰免疫されたボランティアから得られた末梢血から、Ficoll−paqueを用いてリンパ球を分離した。RNA extraction kit(Stratagene)を用いて、分離した約3.0×10個のリンパ球からトータルRNAを得た。TheromoScript RT−PCR System(Invitrogen)を用い、oligo(dT)をプライマーとして、トータルRNAを逆転写することにより、目的とするcDNA(cDNAライブラリ−)を調製した。
(1−3.1段階目のPCR反応)
1段階目のPCR反応では、1−2.で調製したヒト末梢血cDNAを鋳型として使用した。フォワードプライマーとしては、塩基配列が、agttCCATGGAGCTTCTGGGGCTGCTAATG(配列番号9)であるオリゴヌクレオチドを用いた。なお、5〜10番目(CCATGG)は、制限酵素サイトである。リバースプライマーとしては、塩基配列が、ccgtCTCGAGACACTCTCCCCTGTTGAAG(配列番号10)であるオリゴヌクレオチドを用いた。なお、5〜10番目(CTCGAG)は、制限酵素サイトである。プライマーの詳細を表1にまとめた。
PCR反応は、PCRチューブの中で、総量20.0μlの反応液により行った。反応液は、上記ヒト末梢血cDNA:0.5μl、5×Phusion HFバッファー:4.0μl、10mM dNTPs:0.4μl、10μMリバースプライマー:0.8μl、10μMフォワードプライマー:0.8μl、滅菌ミリQ水:13.3μlを混合したものに、Phusion DNAポリメラーゼ:0.2μlを加えることにより調製した。
サーマルサイクルの反応時間は、98℃:30秒→(1)98℃:10秒→(2)60℃:30秒→(3)72℃:30秒→(1)〜(3)の繰り返し(29サイクル)→72℃:5分→4℃で維持、とした。
PCR反応後の反応液を、2%アガロースゲル(NuSieve GTGアガロース)で電気泳動した。電気泳動後のゲルをEtBr染色し、UV照射したところ、約750bp付近に、目的遺伝子の増幅を示すバンドが観察された(図2)。
上記ゲルから、フェノールクロロホルム法を用いてPCR産物を精製した。
(1−4.2段階目のPCR反応)
2段階目のPCR反応では、1−3.で得た一段階目のPCR産物を鋳型として使用した。フォワードプライマーとしては、塩基配列が、agttCCATGGATRTTGTGATGACYCAG(配列番号11)であるオリゴヌクレオチドを用いた。なお、5〜10番目(CCATGG)は、制限酵素サイトである。リバースプライマーとしては、塩基配列が、ccgtCTCGAGACACTCTCCCCTGTTGAAG(配列番号10)であるオリゴヌクレオチドを用いた。なお、5〜10番目(CTCGAG)は、制限酵素サイトである。プライマーの詳細を表2にまとめた。
PCR反応は、PCRチューブの中で、総量20.0μlの反応液により行った。反応液は、1−3.で得た一段階目のPCR産物(1/10または1/100に希釈):0.5μl、5×Phusion HFバッファー:4.0μl、10mM dNTPs:0.4μl、10μMリバースプライマー:0.8μl、10μMフォワードプライマー:0.8μl、滅菌ミリQ水:13.3μlを混合したものに、Phusion DNAポリメラーゼ:0.2μlを加えることにより調製した。
サーマルサイクルの反応時間は、98℃:30秒→(1)98℃:10秒→(2)60℃:30秒→(3)72℃:30秒→(1)〜(3)の繰り返し(29サイクル)→72℃:5分→4℃で維持、とした。
増幅後のPCR産物は、1−3.と同様に、2%アガロースゲル(NuSieve GTG Agarose)電気泳動により検出した。図3に示す様に、750bp付近に目的遺伝子の増幅を示すバンドが観察された。なお、図に示すように、2段階目のPCR産物(1/10希釈の鋳型を使用)および2段階目のPCR産物(1/100希釈の鋳型を使用)は、1段階目のPCR産物よりもやや短くなっていることが判る。
上記ゲルから、フェノールクロロホルム法を用いて2段階目のPCR産物を精製した。
(1−5.ベクターへの組み込み)
1−4.における二段階のPCR反応により得られた約750bpのPCR産物(サブグループIIに属するκ型軽鎖遺伝子)をpCR Blunt II−TOPOベクターへ組み込んだ。上記PCR産物(約750bp):0.5μl、食塩水:0.5μl、ミリQ水:1.5μl、およびTOPOベクター:0.5μlから、総量2.5μlの反応液を調製し、23℃で5分間反応させた。
(1−6.大腸菌の形質転換)
33.3μlのコンピテントセル(大腸菌DH5α)に、サブグループIIに属するκ型軽鎖遺伝子をクローニングしたTOPOベクターを2μl加え、氷中に10分間静置した。次に、42℃のウォーターバスで45秒間ヒートショックを行い、直ちに氷中に戻して2分間静置した。その後、クリーンベンチ内において、300mlのSOC培地を加え、37℃で1時間、震とう培養した(復活培養)。
復活培養の終了した培養液を、暖めておいた2×YT(Km+)固形培地に塗布し、37℃で一晩培養した。
(1−7.インサートの確認)
20個のコロニー(コロニー#1〜#20)について、インサートを確認した。まず、定法を用いて菌体からプラスミドを回収した。回収したプラスミド:1.0μl、10×Hバッファー:1.5μl、Eco RI:0.3μl、および滅菌ミリQ水:12.2μlからなる総量15.0μlの反応液を調製して、37℃で一晩制限酵素反応を行った。その後、2%アガロースゲル(NuSieve GTGアガロース)を用いて電気泳動を行った。図4に示すように、コロニー#1〜#16、#18、#19について、目的遺伝子の挿入を確認した。以降、これらをクローン#1〜#16、#18、#19と称する。
(1−8.シーケンス解析および生殖細胞系列遺伝子(germline gene)の特定)
クローン#1〜16、#18および#19についてシーケンス解析を行い、相同性検索により、それぞれの生殖細胞系列遺伝子におけるVκ遺伝子を判定した。結果を表3に示す。得られた18クローンすべてがサブグループIIに属していた。
また、クローン#1(生殖細胞系列遺伝子型:A18b)、クローン#16(生殖細胞系列遺伝子型:A17)、クローン#7(生殖細胞系列遺伝子型:A3/A19)、およびクローン#11(生殖細胞系列遺伝子型:A18b)について、シーケンスの結果から推定されるアミノ酸配列の一部を図5の(a)〜(d)に示す。他のクローンについてのシーケンスの結果から推定されるアミノ酸配列は図39および図40を参照のこと。なお、図39および図40に示すアミノ酸配列は、先頭にメチオニンが存在し、末尾のシステインがアラニンに置換され、さらにロイシンおよびヒスチジンが付加されている。しかし、当業者であれば、図39および図40の先頭からメチオニンを取り、末尾のALEHHHHHH(配列番号12)をCに置換することにより、抗体軽鎖のアミノ酸配列を取得し得ることを容易に理解する。なお、図39および図40には、可変領域、定常領域およびCDR1〜3の位置が示されている。
さらに詳細に述べれば、クローン#1の全長の塩基配列は、配列番号2に示される塩基配列であり、配列番号1に示されるアミノ酸配列をコードすることが推定される。なお、配列番号1に示されるアミノ酸配列において第1〜113番目が可変領域であり、そのうち、第24〜39番目がCDR1であり、第55〜60番目がCDR2であり、第94〜103番目がCDR3である。なお、可変領域のみのアミノ酸配列を配列番号14に示した。
クローン#16の全長の塩基配列は、配列番号4に示される塩基配列であり、配列番号3に示されるアミノ酸配列をコードすることが推定される。なお、配列番号3に示されるアミノ酸配列において第1〜113番目が可変領域であり、そのうち、第24〜39番目がCDR1であり、第55〜60番目がCDR2であり、第94〜103番目がCDR3である。なお、可変領域のみのアミノ酸配列を配列番号16に示した。
クローン#7の全長の塩基配列は、配列番号6に示される塩基配列であり、配列番号5に示されるアミノ酸配列をコードすることが推定される。なお、配列番号5に示されるアミノ酸配列において第1〜112番目が可変領域であり、そのうち、第24〜39番目がCDR1であり、第55〜60番目がCDR2であり、第94〜102番目がCDR3である。なお、可変領域のみのアミノ酸配列を配列番号18に示した。
クローン#6の全長の塩基配列は、配列番号21に示される塩基配列であり、配列番号20に示されるアミノ酸配列をコードすることが推定される。なお、配列番号20に示されるアミノ酸配列において第1〜112番目が可変領域であり、そのうち、第24〜39番目がCDR1であり、第55〜60番目がCDR2であり、第94〜102番目がCDR3である。なお、可変領域のみのアミノ酸配列を配列番号22に示した。
クローン#18の全長の塩基配列は、配列番号25に示される塩基配列であり、配列番号24に示されるアミノ酸配列をコードすることが推定される。なお、配列番号24に示されるアミノ酸配列において第1〜112番目が可変領域であり、そのうち、第24〜39番目がCDR1であり、第55〜60番目がCDR2であり、第94〜102番目がCDR3である。なお、可変領域のみのアミノ酸配列を配列番号26に示した。
(1−9.ヒートショックによる形質転換)
クローン#1、クローン#16、クローン#7、およびクローン#11をそれぞれ、Hisタグ配列サイトを有するプラスミドに導入した。濃度5ng/μLに調製した上記プラスミドDNA1μlを、氷上にて融解させた50μLのBL21(DE3)pLysSに加え、5分間にわたって氷上に静置した。その後、42℃のウォーターバスにて30秒間インキュベーションした後、2分以上氷上に静置した。クリーンベンチ内において、さらに、37℃に温めておいた250μLのSOC培地を加え、ラウンドチューブに移し替えて、37℃、200rpmにて1時間振とう培養(復活培養)した。復活培養の後、プレートに50μLまたは10μLの培養液を播いて、37℃で一晩インキュベーションした後、プレート上に形成されたコロニーの個数をカウントした。
図6の(a)は、50μLの培養液を播いたプレートを示す図であり、図6の(b)は、50μLの培養液を播いたプレートを示す図である。示すように、50μLの培養液を播いたプレートには5個のコロニーが形成され、形質転換効率は7.2×10pfu/gDNAであった。100μLの培養液を播いたプレートには35個のコロニーが形成され、形質転換効率は2.1×10pfu/gDNAであった。
(1−10.エレクトロポレーションによる形質転換)
1−9.におけるヒートショックによる形質転換とは別に、エレクトロポレーションによる形質転換についても実施した。50μLのコンピテントセルに5μLの上記プラスミドを加えた後に、これをキュベットに素早く移して、1分間氷上に放置した。エレクトロポレーターを2.5kVに設定し、キュベットをエレクトロポレーターに配置してパルスを印加した。直後に450μLのSOC培地を加え、転倒混和し、2mLのチューブに移して、37℃で1時間振とう培養した。
(1−11.タンパク質発現誘導(前培養および本培養)およびSDS−PAGE分析)
3mLのLB培地および6μLのアンピシリン(最終濃度100μg/mL)を試験管に入れ、形質転換した菌のグリセロールストックから竹串を用いて菌の一部を試験管に移し、37℃にて一晩前培養した。前培養の後、5mLのLB培地および5μLのアンピシリン(最終濃度5ng/mL)を試験管に入れ、前培養した培養液をLB培地の1/100量(50μL)だけ当該試験管に移し、25℃にて本培養を開始した。本培養は、O.D.660が約0.6〜0.8になるまで続けた。O.D.660が約0.6〜0.8に達した後、0.1MのIPTG50μLを試験管内に加え、37℃にて6時間培養した。6時間後に5mLチューブに培養液を入れ、4℃、18000×gにて10分間遠心した。培地(上清)をデカンテーションによってファルコンチューブに移した。また、菌体(ペレット)に1×PBSを加え、菌体をピペットによって懸濁し、別のファルコンチューブに移した。培地および菌体の各々を凍結して保存した。
IPTGによる誘導あり(+)および誘導なし(−)の条件下において上記培地をサンプルとして、SDS−PAGEおよびクーマシー染色によって目的のタンパク質の発現を確認した。その結果を図7および図8に示す。図7は、IPTG添加あり(+)の菌体懸濁液のSDS−PAGE分析の結果を示す図である。図8は、IPTG添加なし(−)の菌体懸濁液のSDS−PAGE分析の結果を示す図である。なお、抗体のκ型軽鎖の理論分子量は約24kDaであるが、還元条件においてS−S結合が切断されるので、約31kDaの位置にバンドが現れる。図では、抗体のκ型軽鎖のバンドが現れる位置を矢印によって示している。
図7に示すように、IPTGによる誘導あり(+)の場合に、所望のタンパク質の発現を確認した。各サンプルにおける目的のタンパク質のバンドの濃度は、9レーンのBSA(濃度100μg/ml、10μl)のバンドの濃度と同程度であるので、サンプルの濃度は1μg/1mlと推定される。なお、図8に示すように、IPTGによる誘導なしの場合は、所望のタンパク質の発現は確認されなかった。
(1−12.菌体の可溶性画分および不溶性画分の回収ならびにSDS−PAGE分析)
また、1−11.において得られた菌体(ペレット)の懸濁液を、粘性がなくなるまで液体窒素を用いて繰り返し凍結融解させた後、14000rpm、4℃にて25分間遠心した。得られたペレットを不溶性画分とし、上清を可溶性画分としてそれぞれ回収した。不溶性画分には、サンプバッファーを加えてペレットを溶解させた。
IPTGによる誘導あり(+)およびIPTGによる誘導なし(−)の可溶性画分および不溶性画分をサンプルとして用いて、SDS−PAGEおよびクーマシー染色によって、目的のタンパク質の発現を確認した。その結果を図9および図10に示す。図9は、菌体可溶性画分におけるタンパク質のSDS−PAGE分析の結果を示す図である。示すように、目的のタンパク質(矢印によって示した約31kDaのバンド)は、IPTGによる誘導あり(+)のレーン2においてわずかに検出された。図10は、菌体不溶性画分におけるタンパク質のSDS−PAGE分析の結果を示す図である。示すように、IPTGによる誘導あり(+)のレーン1〜6において目的のタンパク質が若干検出された。
(1−13.ウエスタンブロッティングによる発現タンパク質の同定)
タンパク質の発現を確認することができたため、続いて、発現されたタンパク質が抗体軽鎖であるか否かを同定するために、抗ヒト型(Fab’)抗体を用いてウエスタンブロッティングを行った。まず、2−4.において得られたIPTGによる誘導あり(+)およびIPTGによる誘導なし(−)の各々の培地を、トリクロロ酢酸(TCA)沈殿により濃縮し、電気泳動用ゲルの各レーンに流して、SDS−PAGEを行った。続いて、電極を用いてメンブレンへの転写を行い、当該メンブレンをブロッキングした後、抗ヒト型(Fab’)抗体と免疫反応させた。その後、発色基質液を加え、メンブレンを観察した。結果を図11に示す。図11は、目的タンパク質のバンドを可視化したメンブレンを示す写真である。示すように、図7、図9および図10においてバンドが確認された31kDa付近に、強いバンドが検出された。これにより、大腸菌において発現したタンパク質がヒト型抗体軽鎖であることを同定することができた。
(1−14.発現タンパク質の精製)
発現タンパク質(ヒト型抗体軽鎖)を、一次精製および二次精製した。
一次精製としては、抗体カラムを用いたアフィニティー精製を行った。アフィニティー精製におけるクロマトグラムを図12に示す。また、得られた各フラクションをSDS−PAGE(銀染色)で分析した結果を図13に示す。図13の(a)は、サンプルとして、還元していない発現タンパク質をアプライしたときの結果を示し、図13の(b)は、サンプルとして、還元していない発現タンパク質をアプライしたときの結果を示す。示すように、フラクション2(Fr.2)以降においてかなり綺麗に精製されていた。非還元下(図13(a))では、約26kDa付近、還元下(図13の(b))では、約31kDa付近に目的のヒト型抗体軽鎖の単量体が検出された。また、非還元下(図13の(a))では、約50kDa付近に、2量体が検出された。なお、約40kDa付近の薄いバンドは不純物である。フラクション1〜3(Fr.1、Fr.2、およびFr.3)をまとめて二次精製を行った。
二次精製としては、Hisタグを用いた精製を行った。Hisタグ精製におけるクロマトグラムを図14に示す。また、得られた各フラクションをSDS−PAGE(銀染色)で分析した結果を図15に示す。図15の(a)は、サンプルとして、還元していない発現タンパク質をアプライしたときの結果を示し、図15の(b)は、サンプルとして、還元していない発現タンパク質をアプライしたときの結果を示す。示すように、二次精製後では、全フラクションにおいて綺麗に精製されていた。非還元下(図15の(a))では、約26kDa付近、還元下(図15の(b))では、約31kDa付近に目的のヒト型抗体軽鎖の単量体が検出された。また、非還元下(図15の(a))では、約50kDa付近に、2量体が検出された。このように、銀染色の結果、ヒト抗体軽鎖以外のバンドが検出されたいことから、二次精製により高純度に精製されたと考えられる。二次精製されたサンプルを用いて以下の酵素活性試験を実施した。
(1−15.酵素活性試験)
1−14.において精製したクローン#1、#7、#11および#16由来のヒト型抗体軽鎖のそれぞれについて、酵素活性を測定した。酵素活性の測定には、市販されている配列の異なるペプチドにMCA(Methyl−Coumaryl−Amide)を結合させた基質(MCA標識ペプチド)を使用した。MCA標識ペプチドを使用するプロテアーゼ活性試験では、標識ペプチドが切断されて遊離する部分が、切断前の標識ペプチドと異なる波長の蛍光を発することを利用してプロテアーゼ活性を測定する。より詳細には、MCA標識ペプチドでは、蛍光物質であるMCAに隣接するリジン残基のεアミノ基がアセチル化されている。MCA標識ペプチドが、上記リジン残基のカルボキシル末端側において切断されると、ペプチド部分とAMC(Amino−Methyl−Coumarin)とに分かれる。AMCは、切断前のMCAに由来する。遊離したAMCが発する蛍光の波長は、ペプチジル−MCAとは異なるので、AMCによって発せられる蛍光の強度の変化を利用して、どれだけの基質が切断を受けたのかを測定することができる。
(1−16.材料および器具)
サンプルとして、1−14.においてクローン#1、#7、#11および#16から生産し、精製したヒト型抗体軽鎖を用いた。ネガティブコントロールとして、ヒト型抗体軽鎖遺伝子が挿入されていないpET20b(+)からの発現生成物を使用した。試薬などの調製に際しては、滅菌したミリQ水を使用し、使用するマイクロチューブおよびチップは、オートクレーブ処理によって滅菌されたものを用いた。無菌操作は、全てクリーンベンチ内で行った。測定時の励起波長は360nmとし、測定する蛍光波長は465nmとした。
(1−17.MCA分解試験)
精製した各ヒト型抗体軽鎖の濃縮サンプル(10μM、5μMおよび1μM)を各MCA標識ペプチドに加えた反応液を調製して、25℃の気相インキュベータおよび37℃の気相インキュベータの中で反応させた。
MCA標識ペプチドとしては、トロンビン(Thrombin)およびトリプシン(Trypsin)の基質としてVPR−MCA、QAR−MCA、D(OBzl)PR−MCAおよびBz−R−MCAの単体を混合したもの(R1グループ)、Factor Xaおよびt−PAの基質としてIEGR−MCAおよびPyr−GR−MCAを混合したもの(R2グループ)、プラスミン(Plasmin)の基質としてEKK−MCAおよびVLK−MCAを混合したもの(Kグループ)、ならびに、エラスターゼ(Elastase)およびキモトリプシン(Chymotrypsin)の基質としてAPA−MCA、AAF−MCAおよびAAA−MCAを混合したもの(AFグループ)、Q(OBzl)AR−MCA、IEGR−MCA、PyrGR−MCA、VPR−MCA、QAR−MCA、EKK−MCA、EAR−MCA、R−MCA、DPR−MCA、PFR−MCA、ならびにFSR−MCAを用いた。なお、反応液における各MCAペプチドの合計の濃度は200μMに調整した。
すなわち、試験用の反応液として、濃縮サンプル溶液:50μl、10mMのMCA標識ペプチド(混合物):4μl、および50mMのTris−HCl(pH7.4):146μlを混合し(総量200μl)、ヒト型抗体軽鎖をMCA基質と反応させた。ネガティブコントロール用の反応液として、pET20b(+)発現生成物の溶液:50μl、10mMのMCA標識ペプチド(混合物):4μlおよび50mMのTris−HCl(pH7.4):146μlを混合し(総量200μl)、pET20b(+)の発現生成物をMCA基質と反応させた。未反応液として、10mMのMCA標識ペプチド(混合物):4μlおよび50mMのTris−HCl(pH7.4):196μlを混合した(総量200μL)。比較対照用の反応液として、200pMのトリプシン:100μl、10mMのMCA標識ペプチド(混合物):4μlおよび50mMのTris−HCl(pH7.4):96μlを混合し(総量200μL)、トリプシンをMCA基質と反応させた。なお、クローン#1、#7、#16由来のヒト型抗体軽鎖に係る試験では、反応液におけるヒト型抗体軽鎖の濃度は2μMに、トリプシンの濃度は50pMに調整した。
(1−18.試験結果)
クローン#1、#7、#11および#16由来のヒト型抗体軽鎖のMCA分解試験の結果を図16〜19に示す。
図16は、クローン#11由来のヒト型抗体軽鎖のMCA分解試験の結果を示す図である。pET20b(+)は、ネガティブコントロールを示し、A18#11/pET20b(+)が、クローン#11由来のヒト型抗体軽鎖を用いた結果を示し、Trypsinは、トリプシンを用いた結果を示す。示すように、クローン#11のヒト型抗体軽鎖は、37℃において反応させた場合、R1、R2、KおよびAFのいずれグループに対しても、分解活性を示さないか、またはわずかな分解活性しか示さなかった(図16の(a)〜(d))。反応温度を27℃とした場合も結果は同様であった(データ示さず)。
さらに、クローン#11のヒト型抗体軽鎖について、D(OBzl)PR−MCA、IEGR−MCAおよびPyr−GR−MCAに対する分解活性を個別に試験したが、IEGR−MCAに対してわずかに分解活性を示したのみであった(図16の(e)〜(g))。
図17は、クローン#16由来のヒト型抗体軽鎖のMCA分解試験の結果を示す図である。「−×−」は、ネガティブコントロールを示し、「−●−」が、クローン#11由来のヒト型抗体軽鎖を用いた結果を示す。示すように、クローン#16のヒト型抗体軽鎖は、QAR−MCAおよびVPR−MCAに対して分解活性を示した(図17の(a)および(b))。しかし、KグループおよびEKK−MCAに対して分解活性をほとんど示さず(図17の(c)および(d))、AFグループに対しては分解活性をまったく示さなかった(図17の(e))。
図18は、クローン#1由来のヒト型抗体軽鎖のMCA分解試験の結果を示す図である。「−×−」は、ネガティブコントロールを示し、「−●−」が、クローン#1由来のヒト型抗体軽鎖を用いた結果を示し、「−○−」は、トリプシンを用いた結果を示す。示すように、クローン#1由来のヒト型抗体軽鎖は、EAR−MCA、QAR−MCAおよびEKK−MCAに対して強い分解活性を示し(図18の(a)〜(c)および(e))、Kに対しても弱いながら分解活性を示した(図18の(d))。一方、AFグループに対しては分解活性をまったく示さなかった(データ示さず)。
図19は、クローン#7由来のヒト型抗体軽鎖のMCA分解試験の結果を示す図である。PBSは、ネガティブコントロールを示し、rec#7−Lが、クローン#7由来のヒト型抗体軽鎖を用いた結果を示し、Trypsinは、トリプシンを用いた結果を示す。示すように、クローン#7由来のヒト型抗体軽鎖は、QAR−MCAおよびBz−R−MCAに対して分解活性を示した(図19の(c)および(d))。EKK−MCAに対して分解活性をわずかに示した(図19の(g))。KグループおよびAFグループに対してが分解活性をまったく示さなかった(図19の(f))。
以上のように、ペプチドの分解活性を有するヒト型抗体軽鎖を得ることができた。特に、クローン#1のヒト型抗体軽鎖は、強い活性を有するので有用性が高いと考えられる。また、クローン#1およびクローン#11のヒト型抗体軽鎖は、同じ生殖細胞系列遺伝子(germline gene)に由来するにもかかわらず、一方は高活性であり、他方はほとんど活性を示さなかった。
(1−19.クローン#6およびクローン#18について)
クローン#6およびクローン#18についても、1−9.から1−18.までと同様に、形質転換、発現タンパク質の精製および酵素活性の測定を行った。結果、クローン#6は酵素活性を有しておらず、クローン#18は酵素活性を有していた。
〔2:LCAライブラリおよびLC2ライブラリからのクローンの取得〕
以下のような手順により、LCAライブラリおよびLC2ライブラリの二つのライブラリを構築した。
(2−1.ヒト末梢血cDNAの調製)
狂犬病ウイルスのワクチンを用いて、複数回にわたって被験者を過剰免疫し、血清の中和活性を測定した。血清の中和活性が最も高かった(7.2IU)被験者をドナーとして末梢血を採取し、Ficoll−paqueを用いて当該末梢血からリンパ球を分離した。RNA extraction kit(Stratagene)を用いて、分離した約3.0×10個のリンパ球からトータルRNAを得た。TheromoScript RT−PCR System(Invitrogen)を用い、oligo(dT)をプライマーとして、トータルRNAを逆転写することにより、後述するPCR反応において鋳型とするcDNAを調製した。
(2−2.LCAライブラリの構築)
まず、図28に示すようなプライマーを設計した。詳しくは、NCBIのIgBLAST(http:/www.ncbi.nlm.nih.gov/igblast/)に登録されているヒト抗体軽鎖遺伝子の配列情報に基づき、これらのヒト抗体軽鎖遺伝子を網羅的に増幅するためのプライマーセットとして、5’(フォワード)プライマー20種類と、3’(リバース)プライマー1種類とからなる計20ペアのプライマーセットを設計した。5’プライマーは、ヒト抗体軽鎖のV領域のN末端領域に対応する塩基配列を有するオリゴヌクレオチドとし、3’プライマーは、ヒト抗体軽鎖の定常(C)領域のC末端領域に対応する塩基配列に対する相補配列を有するオリゴヌクレオチドとした。なお、5’プライマーには、大腸菌発現ベクターpET101/D−TOPOベクター(登録商標、Invitrogen)に挿入するための4塩基(CACC)を付加した。
表1に各プライマーの塩基配列を示す。表1には、各5’プライマーを用いて増幅されるヒト抗体軽鎖遺伝子のVκ遺伝子のサブグループを併せて示した。
次に、上述したcDNAおよび20ペアのプライマーセットを用い、各ペア毎にPCR反応を実施した。PCR反応では、初めに95℃で5分間インキュベートした後、95℃で15秒間、54℃で50秒間、および72℃で90秒間のサイクルを35サイクル繰り返し、さらに72℃で10分間保持した後、4℃で保存した。ポリメラーゼとしてはAccuPrime Pfx DNA Polymerase(Invitrogen)を製造者の指示に従い使用した。PCR産物をアガロースゲル電気泳動した後、ゲルから目的の660bp付近のバンドを切り出し、精製した。
図29に、PCR産物の電気泳動結果の一部を示す。MMは、マーカー(1kb Plus DNA Ladder、Invitrogen)を示し、(1)は、5’プライマーとしてVk3bTOPOを用いたPCR反応の産物を示し、(2)は、5’プライマーとしてVk4aTOPOを用いたPCR反応の産物を示す。図29に示すように、目的の660bp付近に主要なバンドが観察され、ヒト抗体軽鎖遺伝子が効率よく増幅されたことが示された。なお、他の5’プライマーを用いたPCR反応の産物についても同様の結果が得られた。
続いて、精製した各PCR産物を、製造者の指示に従い、大腸菌発現ベクターpET101/D−TOPOベクター(登録商標、Invitrogen)に挿入し、LCAライブラリを構築した。LCAライブラリのサイズは、1.35×105CFUであり、十分な多様性を有していた。
(2−3.LC2ライブラリの構築)
サブグループIIに属するVκ遺伝子を有するヒト抗体軽鎖遺伝子のみを増幅するために、5’プライマーとして、サブグループIIに対応するプライマー(表4に示すVk2aTOPO、Vk2bATOPO、Vk2bGTOPOおよびVk2cTOPOの4種類)を用い、3’プライマーとして、VCR2862を用いて、2−2.と同様の手順でPCR反応を実施した。
図30に、PCR産物の電気泳動結果の一部を示す。MMは、マーカー(1kb Plus DNA Ladder、Invitrogen)を示し、(1)は、5’プライマーとしてVk2aTOPOを用いたPCR反応の産物を示し、(2)は、5’プライマーとしてVk2bATOPOを用いたPCR反応の産物を示し、(3)は、5’プライマーとしてVk2bGTOPOを用いたPCR反応の産物を示し、(4)は、5’プライマーとしてVk2cTOPOを用いたPCR反応の産物を示す。図30に示すように、目的の660bp付近に主要なバンドが観察され、ヒト抗体軽鎖遺伝子が効率よく増幅されたことが示された。
続いて、2−2.と同様に、精製した各PCR産物を、製造者の指示に従い、大腸菌発現ベクターpET101/D−TOPOベクター(登録商標、Invitrogen)に挿入し、LC2ライブラリを構築した。LC2ライブラリのサイズは、2.58×104CFUであり、十分な多様性を有していた。
なお、本発明者らは、ヒト抗体において、サブグループIIに属するκ型軽鎖のV遺伝子(サブグループIIのVκ遺伝子)にコードされるポリペプチドが上記三つ組様残基構造を高頻度に有していることを明らかにしている(特許文献1を参照のこと)。そのため、LC2ライブラリに含まれるクローンがコードするヒト抗体軽鎖は、触媒三つ組様アミノ酸残基を有し、酵素活性を有する可能性が高いと考えられる。
(2−4.大腸菌の形質転換)
構築した2つのライブラリ(LCAライブラリ、LC2ライブラリ)のそれぞれについて、大腸菌TOP10を形質転換した。TOP10内で、プラスミドを十分に増幅させた後、菌体を破壊してプラスミドを回収した。回収したプラスミドを精製した後、抗体軽鎖の効率のよい発現系である大腸菌BL21の形質転換に供した。得られた形質転換体から、ライブラリ毎に384クローンをランダムに選び(計768クローン)、以下のスクリーニングに供した。
(2−5.第1および第2スクリーニング)
以下のように第1スクリーニングを実施した。具体的には、各大腸菌クローンを150μlのLB培地において培養し、その上清について、ELISA法により、抗体軽鎖の発現および狂犬病ウイルス抗原2種類に対する結合活性を測定した。測定結果に基づき、LCAライブラリから20クローン、LCライブラリから23クローン、計43クローンを、狂犬病ウイルス抗原2種類に対する結合活性がみられるクローンとして選択した。
さらに、第1スクリーニングにおいて選択されたクローンについて、LB培地による培養のスケールを10mlとし、第1スクリーニングと同様の手順で、第2スクリーニングを実施した。第2スクリーニングの際、各大腸菌クローンからプラスミドを回収し、回収効率のよいものを選択した。
また、得られたプラスミドについて、シーケンスを実施した。得られたシーケンスに基づき、Vκ領域のN末端の塩基配列を決定し、対応する抗体軽鎖のサブグループおよび由来する生殖細胞系列遺伝子(ジャームライン遺伝子)を推定するとともに、セリン、ヒスチジン、およびアスパラギン酸からなる触媒三つ組様残基を有すクローンを4つ、LC2ライブラリから見出した(LC22F6、LC22G2、LC23D4およびLC23F1)。
以上の結果を表5に示す。この結果に基づき、LC2ライブラリから上記4クローンを選択し、LCAライブラリから3クローン(LCA1B8、LCA2C2およびLCA2H9)を選択し、第3スクリーニングに供した。
(2−6.粗精製)
上記7クローンについて、100mlの培養系で培養を行った。抗体軽鎖を発現させた菌体を、凍結融解を繰り返して破砕し、遠心分離して上清を回収した。回収した上清を、抗体軽鎖を含むサンプルとして、発現ベクター由来のHisタグを利用して抗体軽鎖を粗精製した。精製は、オープンカラムに担体(Ni Sepharose TM6 fast Flow)を充填し、緩衝液を自然落下させることにより実施した。カラムの平衡化、バインディング、およびサンプルアプライ後のウォッシュのための緩衝液の組成としては、20mMリン酸ナトリウム、0.5M塩化ナトリウム、および20mMイミダゾール(pH7.4)を用いた。溶出のための緩衝液の組成としては、20mMリン酸ナトリウム、0.5M演歌ナトリウム、および500mMイミダゾール(pH7.4)を用いた。溶出後、タンパク質溶出画分を、PBS(−)によって一晩透析した後、分画分子量10000の限外ろ過膜(MILLIPORE)を用いて遠心操作により濃縮して粗精製品とした。粗製製品について、SDS電気泳動およびクーマシーブリリアントブルー染色によって確認した(図31)。図31中、四角枠で示したバンドは、低分子量側が抗体軽鎖のモノマーを、高分子量側が抗体軽鎖のダイマーを示すと考えられる。なお、抗体軽鎖モノマーの分子量は、タグ等が付加されているため、約27kDaとなった。
(2−7.第3スクリーニング)
得られた粗精製品のうち、精製の際に沈殿を形成しなかったものについて、ELISAプレートに固定した狂犬病ウイルス抗原(狂犬病ウイルス標品(αCVS)および精製ニワトリ胚細胞狂犬病ワクチン(αPECE))との親和性(kd)を測定した。
また、22D4および22F6について、酵素活性試験を行った。抗体軽鎖精製は全ての過程を低温下(4℃)、1mMジチオスレイトール(DTT)存在下で行った。抗体軽鎖発現細胞の培養上清を濃縮した後、3倍量の移動層(PBS+20%グリセロール+1mMDTT)で希釈してサンプルとした。公知の方法に基づき、アフィニティー精製およびゲルろ過を行った。ウェスタンブロットおよび銀染色によって精製純度を確認した。
酵素活性の測定に用いる基質(MCA標識ペプチド)としては、Bz−Arg−MCA、Boc−Glu−Lys−Lys−MCA、Glu−Ala−Ala−MCA、Suc−Ala−Ala−Ala−MCA(いずれもペプチド研究所、DMSOにより10mMに調整)を用いた。バッファーとしては、50mMTris−HCl(pH7.7)、100mMグリシン、0.025%Tween20および0.02%NaN3からなるバッファー2を用いた。
60μlずつ各基質のおよび1260μlのバッファー2を混合して、1500μlの反応液を調製した。反応液100μlに、各サンプル100μlを加えて37℃においてインキュベートし、各時間における蛍光を測定した。結果を図32に示す。なお、ネガティブコントロールとしては、50mMTris−HCl(pH7.7)100mMグリシンおよび0.02%NaN3からなるバッファー1を用いた。ポジティブコントロールとしては、1mg/ml(42μM)トリプシン1.6mgおよび1mM HCl1.6mlを、バッファー1により40pMに希釈したものを用いた。また、10mM AMCをバッファー1を用いて400mMとなるように希釈したものについても、反応液に加え、蛍光を測定した。示すように、22D4および22F6ともに、酵素活性を有していた。また、同様に23F1についても酵素活性を測定した。
以上の結果を表6にまとめた。この結果に基づき、L22F6、LC23D4およびLC23F1を、抗ウイルス活性を有する抗体酵素の候補とした。なお、表6には、L22F6およびLC23D4の分子量を併せて示す。
L22F6、LC23D4およびLC23F1の3つのクローンについて、全塩基配列を決定し、決定した塩基配列に基づき、解析ソフトウェア(GENETIX Ver.8)を用いて、アミノ酸配列ならびに軽鎖の可変領域および定常領域を推定した。LC23D4のVκ部位(生殖細胞系列遺伝子におけるVκ遺伝子)は、生殖細胞系列遺伝子A19/A3と、100%の相同性を有し、LC22F6のVκ部位(生殖細胞系列遺伝子におけるVκ遺伝子)は、生殖細胞系列遺伝子A19/A3と、97.7%の相同性を有していた。
クローンLC23D4の全長の塩基配列は、配列番号29に示される塩基配列であり、配列番号28に示されるアミノ酸配列をコードすることが推定される。なお、配列番号28に示されるアミノ酸配列において第1〜112番目が可変領域であり、そのうち、第24〜39番目がCDR1であり、第55〜60番目がCDR2であり、第94〜102番目がCDR3である。なお、可変領域のみのアミノ酸配列を配列番号30に示した。
クローンL22F6の全長の塩基配列は、配列番号34に示される塩基配列であり、配列番号33に示されるアミノ酸配列をコードすることが推定される。なお、配列番号33に示されるアミノ酸配列において第1〜112番目が可変領域であり、そのうち、第24〜39番目がCDR1であり、第55〜60番目がCDR2であり、第94〜102番目がCDR3である。なお、可変領域のみのアミノ酸配列を配列番号35に示した。
クローンLC23F1の全長の塩基配列は、配列番号39に示される塩基配列であり、配列番号38に示されるアミノ酸配列をコードすることが推定される。なお、配列番号38に示されるアミノ酸配列において第1〜112番目が可変領域であり、そのうち、第24〜39番目がCDR1であり、第55〜60番目がCDR2であり、第94〜102番目がCDR3である。なお、可変領域のみのアミノ酸配列を配列番号40に示した。
〔3:抗ウイルス活性の評価〕
(3−1.クローン#1由来のヒト型抗体軽鎖の精製)
評価に用いるクローン#1由来のヒト型抗体軽鎖を以下の様に一次精製および二次精製した。図20の(a)は、一次精製におけるNi−NTAカラムクロマトグラムおよびSDS−PAGE分析の結果を示す図である。図20の(b)は、二次精製における陽イオン交換クロマトグラムおよびSDS−PAGE分析の結果を示す図である。
図20の(a)左段に示すように、サンプルのアプライ後に素通り画分が流れ切るまで、緩衝液A(25mMのTris−HCl(pH8.0)、0.25MのNaCl、40mMのイミダゾール、0.005%のTween20)を流した。そして、左段のグラフにおける破線に示されるように、イミダゾールの濃度を40mMから300mMまで漸次的に上昇させて、ゲルと結合した成分を溶出させた。カラムとしてNi−NTAアガロースカラム(直径1cm、2ml)を用い、精製を通して流速を0.1mL/分に維持した。図20の(a)の右段に示すように、目的とする約31kDaのバンドが、フラクション番号30〜37に検出された。このサンプルを1つにまとめて、次の二次精製を行った。
図20の(b)の左段に示すように、サンプルのアプライ後に素通り画分が流れ切るまで、緩衝液A(50mMの酢酸ナトリウム(pH5.4)、0.2MのNaCl、0.005%のTween20)を流した。そして、左段のグラフにおける破線に示されるように、NaClの濃度を0.2Mから0.4Mまで漸次的に上昇させて、ゲルと結合した成分を溶出させた。カラムとしてSP5PW(TOSHO)を用い、精製を通して流速を0.1ml/分に維持した。精製前のサンプル、グラフ中の破線に囲まれた「a」の領域(フラクション番号10〜15)、およびグラフ中の破線に囲まれた「c」の領域(フラクション番号25〜30)に含まれる成分について、SDS−PAGEによって分析した。図20の(b)の右段に示すように、還元サンプルにおいて目的とする約31kDaのバンドが、aおよびcにおいて検出された。また、非還元サンプルにおいて約31kDaのバンドがaのみにおいて検出され、約51kDaのバンドがcのみにおいて検出された。上述のように、抗体軽鎖の単量体は約31kDaであり、二量体は約51kDaである。したがって、サンプルaは抗体軽鎖の単量体の画分であり、サンプルcは抗体軽鎖の二量体の画分である。
(3−2.抗ウイルス活性を示す反応温度および反応時間、ならびに使用濃度の検討)
続いて、ヒト型抗体酵素およびウイルスを用いたウイルスの中和試験によって、ヒト型抗体軽鎖の抗ウイルス活性を調べた。試験に用いたウイルスは、狂犬病ウイルス(以下、RABVと記載)のCVS−11株(以下、CVSと記載)、ERA株(以下、ERAと記載)およびHEP−Flury株(以下、HEPと記載)、水疱口内炎ウイルス(以下、VSVと記載)ならびにレオウイルス(以下、ReoVと記載)である。ウイルスを感染させる細胞として、RABV用にNA細胞、他のウイルス用にL929細胞を用いた。
6ウェルプレートの各ウェルに、NA細胞を適当数播き、37℃で一晩インキュベートすることにより、各ウェルに細胞を単層に吸着させた。感染価100〜200PFU(plaque formaion unit)のRABV(CVS)と、ヒト型抗体酵素(最終濃度0.5mg/mL)またはPBSとを混合し、24時間または48時間インキュベートした。インキュベート時の温度は、各サンプルごとに15℃、25℃または30℃の3系列にした。各ウェルの培地を捨てて、ヒト型抗体酵素と反応させたウイルス液およびPBSを加えたウイルス液を、各ウェルに入れた。37℃にてインキュベートして、ウイルスを細胞に吸着させた。吸着後にウイルス液を捨てて適宜培地を加え、プラークが十分に形成されるまで(1〜2日間)37℃にてインキュベートした。インキュベート後に、培地を捨ててから、細胞を固定した。
(3−3.感染フォーカスのプラークアッセイによる計測)
固定した細胞を洗浄し、クリスタルバイオレットを各ウェルにいれて細胞を染色した。細胞の染色後にクリスタルバイオレットを捨て、ウェルを水洗した。各ウェルを肉眼または実態顕微鏡によって観察し、ウイルス感染によって細胞がウェルから剥離して、染色されていない「抜け」をプラークとして計測した。PBSおよびウイルスの混合液をかけたウェルに形成されたプラーク数を100%として、ヒト型抗体酵素およびウイルスの混合液をかけたウェルに形成されたプラーク数のパーセンテージを算出した。結果を図21に示す。図21の(a)は、ヒト型抗体酵素が高活性を示す温度について評価した図である。図21の(b)は、ヒト型抗体酵素が高活性を示す濃度について評価した図である。
図21の(a)に示すように、本発明に係るヒト型抗体酵素は、25℃にて48時間ウイルスとインキュベートすることによって、ほとんどのウイルスの感染を抑制した。また、30℃にて24時間CVSとインキュベートした場合にもほとんどのウイルスの感染を抑制した。そして、図21の(b)に示すように、本発明に係るヒト型抗体酵素は、25℃にて、濃度を種々の値に振ったとき、30℃におけるウイルスの抑制能と比べて同様か、または多少、優れて活性を示した。よって、以降の実験において、ヒト型抗体酵素とウイルスとのインキュベーションは、1.5mg/mlのヒト型抗体酵素を用いて、25℃にて48時間実施することとした。
(3−4.種々のウイルスに対する抗ウイルス活性の試験)
ヒト型抗体酵素とウイルスとのインキュベーションの手順は、3−2.において確認した通りであり、ウイルス感染の手順は、3−3.に記載の通りである。ヒト型抗体酵素は、単量体のみを含むもの、および二量体のみを含むものに分けて、その抗ウイルス活性を調べた。ここでは、3種の株の狂犬病ウイルス株、VSVおよびReoVに対するヒト型抗体酵素の抗ウイルス活性について試験した。3−3.と同様に、プラークアッセイを用いて、PBSおよび各ウイルスの混合液をかけたウェルに形成されたプラーク数を100%として、ヒト型抗体酵素および各ウイルスの混合液をかけたウェルに形成されたプラーク数のパーセンテージを算出した。この結果をまとめたものをグラフ化して図22に示す。
図22に示すように、germlineA18bの#1クローンのヒト型抗体酵素の単量体(Monomer)の形態は、ReoV以外に対して非常に高い抗ウイルス活性を示した。RABVのERAはわずかに感染プラークが観察された(約10%)。また、二量体(Dimer)の形態は、ReoVには抗ウイルス活性を示さずに、RABVの3つの株の感染を約半数にまで抑制し、VSVの感染をほぼ100%抑制した。RABVの各株に対して多少の差はあるものの、本発明に係るヒト型抗体酵素は、RABVの感染を顕著に抑制することが分かった。また、VSVの感染を非常に良好に抑制することから、本発明に係るヒト型抗体酵素は、ラブドウイルス科に属するウイルスに対して有効であると考えられる。特にヒト型抗体酵素の単量体は、抗ウイルス活性が非常に高く、種々の条件において高い抗ウイルス活性を示すことが予想される。
本試験の一例として、ヒト型抗体酵素の単量体をCVSと反応させた後のプラークアッセイの結果を図23に示す。図23に示すように、左から2列の6つのウェルは、PBSとウイルスを混合して感染させたものであり、多数のプラークが形成された。一方において、右から2列の6つのウェルは、ト型抗体酵素の単量体とウイルスを混合して感染させたものであり、ウイルスの感染および増殖によって形成されるプラークがまったく見られなかった。
(3−5.膜融合活性についての検討)
図22において確認したように、本発明に係るヒト型抗体酵素は、ラブドウイルス科のウイルスに高い抗ウイルス活性を示し、ReoVにはほぼ活性を示さなかった。ここで、ラブドウイルス科のウイルスは、宿主細胞の膜に由来するエンベロープを有している。エンベロープウイルスは、エンベロープが壊されると感染性を失ってしまう。もし、本発明に係るヒト型抗体酵素がエンベロープを破壊する活性を有する場合、宿主細胞にも傷害性であり得る。そこで、本発明に係るヒト型抗体酵素の安全性を確認するために、トリ赤血球の凝集作用の有無について調べた。本発明に係るヒト型抗体酵素またはPBSと1%のトリ赤血球浮遊液とを混合して、25℃にて48時間反応させた。その結果を図24に示す。図24に示すように、本発明に係るヒト型抗体酵素によって、赤血球の凝集は起こっていない。よって、本発明に係るヒト型抗体酵素は、膜融合活性を有していないため、宿主細胞を傷害する活性を有していないと考えられる。つまり、本発明に係るヒト型抗体酵素は、ウイルスに特異的なタンパク質に作用して抗ウイルス活性を示す、安全性の高い抗ウイルス剤として使用可能と考えら得る。
(3−6.改良された単量体のヒト型抗体軽鎖の作製)
上述のように、#1クローン(germline:A18b)のヒト型抗体酵素は、単量体の形態において特に高い抗ウイルス活性を示した。このため、S−S結合を介して二量体の形成に必須と考えられる220番目のシステインに変異を導入して、単量体のヒト型抗体酵素のみが形成されるように、cDNAを設計した。この設計の詳細を図25に示す。図25の(a)に示すように、全長のヒト型抗体酵素の遺伝子における220番目のシステインをコードするTGTを、GCTに置換した。これによって、図25の(b)に示すように、元のアミノ酸配列では220番目がシステインであるために、単量体および二量体が混在していたが、置換後のアミノ酸では220番目がアラニンであるために、S−S結合が形成されず、単量体のみが得られた。アミノ酸置換によるコンフォメーションの変化などの影響を受けて、抗ウイルス活性が変化するおそれがあったが、3−4.において確認された抗ウイルス活性と同様に、この220番目をアラニン置換したヒト型抗体酵素は、ラブドウイルス科に属するウイルスに対する抗ウイルス活性を示した。以下、その試験手順および結果を説明する。
ヒト型抗体酵素とウイルスとのインキュベーションの手順は、3−2.において確認した通りであり、ウイルス感染の手順は、3−3.に記載の通りである。ヒト型抗体酵素としては、220番目をアラニン置換した単量体の抗ウイルス活性を調べた。ウイルスとしては、VSVウイルスに対するヒト型抗体酵素の抗ウイルス活性について試験した。3−3.と同様に、プラークアッセイを用いて、PBSおよび各ウイルスの混合液をかけたウェルに形成されたプラーク数を100%として、ヒト型抗体酵素および各ウイルスの混合液をかけたウェルに形成されたプラーク数のパーセンテージを算出した。この結果をまとめたものをグラフ化して図26に示す。
図26に示すように、220番目をアラニン置換した単量体は、VSVウイルスに対するウイルス抑制効果を、特に、37℃において顕著に示した。
(3−8.クローン#7由来のヒト型抗体酵素の抗ウイルス活性についての試験)
クローン#7由来のヒト型抗体酵素についても、クローン#1由来のヒト型抗体酵素と同様にウイルス抑制効果を試験した。ヒト型抗体酵素とウイルスとのインキュベーションの手順は、3−2.において確認した通りであり、ウイルス感染の手順は、3−3.に記載の通りである。ヒト型抗体酵素としては、単量体の抗ウイルス活性を調べた。ウイルスとしては、CVSウイルスに対するヒト型抗体酵素の抗ウイルス活性について試験した。3−3.と同様に、プラークアッセイを用いて、PBSおよび各ウイルスの混合液をかけたウェルに形成されたプラーク数を100%として、ヒト型抗体酵素および各ウイルスの混合液をかけたウェルに形成されたプラーク数のパーセンテージを算出した。この結果をまとめたものをグラフ化して図27に示す。
図27に示すように、クローン#7由来のヒト型抗体酵素は、クローン#1由来のヒト型抗体酵素程ではないが、抗ウイルス活性を示した。
(3−9.クローン23D4の抗ウイルス活性についての試験)
クローン23D4由来のヒト型抗体酵素についても、クローン#1由来のヒト型抗体酵素と同様にウイルス抑制効果を試験した。ヒト型抗体酵素とウイルスとのインキュベーションの手順は、3−2.において確認した通りであり、ウイルス感染の手順は、3−3.に記載の通りである。ヒト型抗体酵素は、単量体のみを含むもの、および二量体のみを含むものに分けて、その抗ウイルス活性を調べた。ここでは、3種の株の狂犬病ウイルス株、VSVおよびReoVに対するヒト型抗体酵素の抗ウイルス活性について試験した。3−3.と同様に、プラークアッセイを用いて、PBSおよび各ウイルスの混合液をかけたウェルに形成されたプラーク数を100%として、ヒト型抗体酵素および各ウイルスの混合液をかけたウェルに形成されたプラーク数のパーセンテージを算出した。この結果をまとめたものをグラフ化して図33に示す。
図33に示すように、23D4クローンのヒト型抗体酵素の単量体(Monomer)の形態は、ReoV以外に対して非常に高い抗ウイルス活性を示した。RABVのERAはわずかに感染プラークが観察された(約20%)。また、二量体(Dimer)の形態は、ReoVには抗ウイルス活性を示さずに、RABVの3つの株の感染を約半数にまで抑制し、VSVの感染をほぼ100%抑制した。RABVの各株に対して多少の差はあるものの、本発明に係るヒト型抗体酵素は、RABVの感染を顕著に抑制することが分かった。また、VSVの感染を非常に良好に抑制することから、本発明に係るヒト型抗体酵素は、ラブドウイルス科に属するウイルスに対して有効であると考えられる。特にヒト型抗体酵素の単量体は、抗ウイルス活性が非常に高く、種々の条件において高い抗ウイルス活性を示すことが予想される。
(3−10.クローン23D4についての膜融合活性についての検討)
3−5.と同様に、クローン23D4についても膜融合活性を検討した。その結果、図34に示すように、クローン23D4に係るヒト型抗体酵素によって、赤血球の凝集は起こっていない。よって、本発明に係るヒト型抗体酵素は、膜融合活性を有していないため、宿主細胞を傷害する活性を有していないと考えられる。つまり、本発明に係るヒト型抗体酵素は、ウイルスに特異的なタンパク質に作用して抗ウイルス活性を示す、安全性の高い抗ウイルス剤として使用可能と考えら得る。
(3−11.改良された単量体のヒト型抗体軽鎖の作製)
上述のように、本発明に係るヒト型抗体軽鎖は、単量体の形態において特に高い抗ウイルス活性を示した。このため、各クローンに係るヒト型抗体軽鎖について、3−6.と同様に、S−S結合を介して二量体の形成に必須と考えられるC末端のシステインに変異を導入して、単量体のヒト型抗体軽鎖のみが形成されるように、cDNAを設計した。すなわち、全長のヒト型抗体酵素の遺伝子における上記システインをコードするTGTを、ALEHHHHHH(配列番号12)(+終止コドン)をコードするGCTCTCGAGCACCACCACCACCACCACTGA(配列番号13)に置換した。例えば、クローン23D4については、配列番号32の塩基配列とし、クローン22F6については、配列番号37の塩基配列とし、クローン23F1については、配列番号42の塩基配列とした。
結果、図39および図40に示すように、上記システインが置換されているヒト型抗体軽鎖が得られた。改良されたクローン#1に係るヒト型抗体軽鎖のアミノ酸配列を配列番号15に示し、改良されたクローン#16に係るヒト型抗体軽鎖のアミノ酸配列を配列番号17に示し、改良されたクローン#7に係るヒト型抗体軽鎖のアミノ酸配列を配列番号19に示し、改良されたクローン#6に係るヒト型抗体軽鎖のアミノ酸配列を配列番号23に示し、改良されたクローン#18に係るヒト型抗体軽鎖のアミノ酸配列を配列番号27に示し、改良されたクローン23D4に係るヒト型抗体軽鎖のアミノ酸配列を配列番号31に示し、改良されたクローン22F6に係るヒト型抗体軽鎖のアミノ酸配列を配列番号36に示し、改良されたクローン23D4に係るヒト型抗体軽鎖のアミノ酸配列を配列番号41に示す。
図36に、これらの改良されたヒト型抗体軽鎖の電気泳動結果を示す。示すように、元のアミノ酸配列ではシステインであるために、単量体および二量体が混在していたが、置換後のアミノ酸では220番目がアラニンであるために、S−S結合が形成されず、単量体のみが得られた。
この改良されたヒト型抗体軽鎖について、抗ウイルス活性を調べた。ヒト型抗体酵素とウイルスとのインキュベーションの手順は、3−2.において確認した通りであり、ウイルス感染の手順は、3−3.に記載の通りである。ヒト型抗体酵素としては、220番目をアラニン置換した単量体の抗ウイルス活性を調べた。ウイルスとしては、VSVウイルスに対するヒト型抗体酵素の抗ウイルス活性について試験した。3−3.と同様に、プラークアッセイを用いて、PBSおよび各ウイルスの混合液をかけたウェルに形成されたプラーク数を100%として、ヒト型抗体酵素および各ウイルスの混合液をかけたウェルに形成されたプラーク数のパーセンテージを算出した。この結果をまとめたものをグラフ化して図35、図37および図38に示す。
図35に示すように、改良されたクローン#18に係るヒト型抗体軽鎖および改良されたクローン23D4に係るヒト型抗体軽鎖は、高い抗ウイルス活性を示した。また、図37に示すように、改良されたクローン#1に係るヒト型抗体軽鎖および改良されたクローン#6に係るヒト型抗体軽鎖もまた、高い抗ウイルス活性を示した。また、図38に示すように、改良されたクローン#18に係るヒト型抗体軽鎖は、抗ウイルス活性を特に、37℃において顕著に示した。
(3−12.インフルエンザウイルス感染試験)
続いて、本発明に係るヒト抗体軽鎖クローンが、インフルエンザウイルスに対して感染抑制能を有するか否かを試験した。インフルエンザウイルスとしては、A/広島/71/2001(H3N2)株を用いた。ウイルスは、孵化後11日目のニワトリ卵の尿膜腔において培養され、感染性の尿膜腔液として、使用時まで−80℃にて保管した。感染させる細胞としては、10%の牛血清が加えられたEagle’s最小培地(MEM)中で培養されたMDCK細胞を用いた。
各クローンのサンプルは、PBSによって20μg/mlの濃度に希釈して使用した。インフルエンザウイルスは、Eagle’s最小培地によって、約5×10または5×10PFU/0.2mlに希釈した。サンプルと、ウイルスとを等量(各0.25ml)混合し、20℃で48時間インキュベートした。インキュベート後、ウイルスの感染価をプラーク法により算定した。具体的には、サンプル−ウイルス混合物は、組織培養トレイ上の単層のMDCK細胞に予備接種し、37℃において60分間吸着させた。その後、接種材料を除去し、PBSで洗浄した。そして、MDCK細胞を、1.0%のアガロースMEおよび20mg/mlのトリプシンを含むMEM培地(第1被覆培地)によって被覆し、37℃において加湿された5%CO2インキュベータ内で、4日間インキュベートした。その後、細胞を、第1被覆培地に0.005%ニュートラルレッドを加えた第2被覆培地で被覆した。プラーク数は次の日に計測した。
結果を図41の(a)および(b)に示す。なお、図41では、感染価をコントロールに対するパーセンテージで示している。また、「dimer」は、サンプルが、ダイマーであることを示し、「C220A」は、サンプルが、ジスルフィド結合がされないようにアミノ酸配列を改変して得られたモノマーであることを示す。
図41に示すように、#1クローン、#4クローン、#11クローン、#18クローン、および22F6クローンが、インフルエンザウイルスの感染を抑制する効果を有していた。特に、#18クローンおよび#1クローンは、狂犬病ウイルスおよびインフルエンザウイルスの両者について好適に感染抑制することができた。
(3−13.インビボにおける中和試験)
本発明に係るヒト抗体軽鎖クローンの抗ウイルス活性について、国際標準法を用いてインビボにおける中和試験を行った。すなわち、狂犬病ウイルスCVS(Challenge Virus Strain)と、抗体とをインビトロにて一定時間反応させた後、マウス脳内に反応液を接種し、マウスの生存率から、抗体のウイルス中和能を評価した。
まず、CVSウイルスを10%FCS−EMEM培地によって所定の濃度に希釈した。次いで、ウイルス希釈液を等量のサンプルと混合し、25℃で24時間インキュベートした。インキュベート後、反応液をddyマウス(生後7週間、メス)に、1匹当たり0.03ml接種した。接種後、14日間マウスを観察し、生存率を評価した。
CVSウイルスの濃度を1320〜26400FFU(Focus Forming Unit:ウイルスの数)/mlとし、サンプル(抗体軽鎖:LC)として0.5mg/mlの#18クローンを用い、ポジティブコントロールとして1IU/mlのERIG(Equine Rabies ImmunoGlobulin、ポリクローナル抗体)を用い、ネガティブコントロールとしてPBSを用いたときの結果を表7に示す。表中の各列は、接種時(0日目)からの14日目までの各時点において生存していたマウスの数を示す。なお、CVSのウイルス感染価は、マウス1匹当たり1.5FFUの接種で1LD50に相当する。
表7に示すように、ウイルスの濃度が低い時(1320〜6600FFU/ml)は、マウスが死亡しないため、評価が不可能であった。一方、ウイルスの濃度が13200FFU/ml以上であれば、評価が可能であった。表7中、太枠で囲んだ部分に示すように、#18クローンをウイルスと反応させた場合、PBSをウイルスと反応させた場合に比べて、明らかに死亡率が減少していた。
続いて、抗体酵素(#18クローン)の効果をよりはっきりと確認するために、抗体酵素の濃度を増大させて試験を行った。ウイルス希釈液としては、26400FFU/mlのものを用いた。サンプルとして、5mg/mlの#18クローン、4.9mg/mlの#2クローン、5.9mg/mlの#4クローン、および0.94mg/mlの#18クローンを用いた。結果を表8に示す。
表8に示すように、#18クローンが濃度依存的なウイルスの感染抑制能を有していることが明確に示された(p value(Log−rank test)=0.0073 CVS+PBS vs. CVS+LC5mg/ml)。
(3−14.核酸分解活性試験)
本発明に係るヒト抗体軽鎖クローンの核酸分解活性を試験した。各サンプルは、His−Tag精製の後、陽イオンカラムクロマトグラフィーにより精製したものを用いた。各サンプルの濃度は、後述の表9に示す。基質となる核酸としては、プラスミドDNA(pBR322)を用いた。ネガティブコントロールとしては、反応させていない基質(MasterMix)を用いた。ポジティブコントロールとしては、DNase1を反応させたものを用いた。各サンプルについては、37℃のサーマルサイクラーにおいて、24時間または48時間反応させた。ポジティブコントロールについては、DNase1を30分間反応させた。ネガティブコントロールについては、サーマルサイクラーにおいて、0時間、24時間または48時間インキュベートした。そして、反応後のサンプルに、10×ローディングバッファおよびミリQ水を加え、−30℃で凍結した。その後、アガロースゲル電気泳動を行った。結果の一部を図42(a)に示す。
図42(a)において、3000bp近くの濃いバンドは、スーパーコイル形態のDNAを示し、4000〜6000bpのバンドは、ほどけた形態のDNAを示す。図42(b)は、核酸分解活性の強さの段階と、バンドの状態との対応を示す図であり、最も右(1)は、全く活性が無い状態を示し、左に進むにつれ活性が高まり(2〜4)、最も左(5)が最も高い活性を示す。例えば、図42(a)に示すように、#4クローンでは、DNAのバンドが消失しており、#4クローンが高いDNA分解活性(図42(b)における「5」)を有していることがわかった。これを各クローンの結果について当てはめたものを、表9にまとめた。
表9に示すように、#4クローンの他、#18クローン、#1クローン、23D4クローンおよび#11クローンが確かな核酸分解活性を有していることがわかった。
核酸分解活性を有する抗体酵素は、自己免疫疾患患者の血清中の抗体酵素によく見られることから、#4クローンなどのクローンは、自己免疫疾患に関連する働きを有しているのかもしれない。また、#4クローンなどのクローンは、ウイルスのDNAを破壊する能力を有している可能性がある。
(3−15.がん細胞に対する細胞障害性についての試験)
本発明に係るヒト抗体軽鎖クローンのがん細胞に対する細胞障害性について試験した。まず、前述したような手法を用いて以下のヒト型抗体型鎖を作製した:#1_C220A(#1クローンのモノマー)、#1_dimer(#1クローンのダイマー)、23D4_C220A(23D4クローンのモノマー)、23D4_dimer(23D4クローンのダイマー)、#4_C220A(#4クローンのモノマー)、#9a_C220A(#9クローンのモノマー)、および、#13_C220A(#13クローンのモノマー)。なお、本明細書において、「C220A」は、ジスルフィド結合がされないように220番目のシステインをアラニンに改変して得たモノマーを示し、「dimer」は、ワイルタイプから調製したダイマーを示す。
また、ATCCより購入したSNU−1(ヒト胃がん細胞株)の細胞培養液は3×104細胞/ウェルおよびA549(ヒト肺がん細胞株)の細胞培養液は5×104細胞/ウェルとなるように96ウェルプレートに播種した。培地としては、SNU−1では10%のウシ退治血清を加えたRPMI−164培地を用い、細胞播種と同時に後述のヒト抗体軽鎖を加えた。A549細胞では、10%ウシ胎児血清を加えたF−12K培地で24時間培養して細胞を定着させた後、培養液を廃棄して後述の抗体軽鎖を添加したF−12K培地(血清無添加)を加えた。
SNU−1およびA549に加えた各ヒト型抗体軽鎖は、次の通りである。:#1_C220A(1.0mg/ml)、#1_dimer(1.05mg/ml)、23D4_C220A(1.05mg/ml)、23D4_dimer(0.7mg/ml)、#4_C220A(1.2mg/ml)、#9a_C220A(1.3mg/ml)、および、#13_C220A(1.4mg/ml)。その後、24時間インキュベートし、WSTアッセイ(WST−1(Roche)、λ1=450nm、λ2=620nm)を行った。結果を図51に示す。
図51の(a)は、SNU−1に対する各ヒト型抗体軽鎖の細胞障害性を示すグラフであり、図51の(b)は、A549に対する各ヒト型抗体軽鎖の細胞障害性を示すグラフである。図51に示すように、#1_C220Aおよび#1_dimerについて、強い抗がん活性が認められた。また、23D4_dimerおよび#4_C220Aについては、A549に対して弱い抗がん活性が認められた。また、23D4_dimerについて、SNU−1に対する強い細胞障害性が認められた。一方、#9a_C220Aおよび#13_C220Aについては、がん細胞障害性は殆ど認められなかった。
また、ATCCより購入したSNU−1(ヒト胃がん細胞株)およびA549(ヒト肺がん細胞株)の細胞培養液を、それぞれ、細胞播種濃度が1.6×104細胞/ウェル(1〜5×105細胞/ml)となるように96ウェルプレート上に播種した。培地としては、1.5g/lの重炭酸ナトリウムを添加したDulbecco’s改変Eagle’s培地(高グルコース)を用いた。なお、SNU−1の細胞培養液には10%のウシ胎児血清を加えた。A549の細胞培養液は、無血清とした。
続いて、上記の各ヒト型抗体軽鎖を、以下の終濃度になるようにプレート上の各がん細胞株の細胞培養液に添加した:#1_C220A(1.0mg/ml)、#1_dimer(1.05mg/ml)、23D4_C220A(1.05mg/ml)、23D4_dimer(0.7mg/ml)、#4_C220A(1.2mg/ml)、#9a_C220A(1.3mg/ml)、および、#13_C220A(1.0mg/ml)。その後、24時間インキュベートし、WSTアッセイ(WST−1(Roche)、λ1=450nm、λ2=620nm)を行った。結果を図51に示す。
図51の(a)は、SNU−1に対する各ヒト型抗体軽鎖の細胞障害性を示すグラフであり、図51の(b)は、A549に対する各ヒト型抗体軽鎖の細胞障害性を示すグラフである。図51に示すように、#1_C220Aおよび#1_dimerについて、強い抗がん活性が認められた。また、23D4_C220Aおよび#4_C220Aについては、A549に対して弱い抗がん活性が認められた。また、23D4_dimerについて、SNU−1に対する強い細胞障害性が認められた。一方、#9a_C220Aおよび#13_C220Aについては、がん細胞障害性は殆ど認められなかった。
本発明は、医療、製薬、試薬の開発、医療機器の開発および食品の開発に利用可能である。

Claims (7)

  1. 狂犬病ウイルスに対するヒト抗体κ型軽鎖であって、抗ラブドウイルス活性、および抗インフルエンザウイルス活性を有しており、その可変領域が、配列番号26のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなることを特徴とするヒト型の抗体酵素。
  2. 狂犬病ウイルスに対するヒト抗体κ型軽鎖であって、抗ラブドウイルス活性、抗インフルエンザウイルス活性、およびがん細胞傷害性を有しており、その可変領域が、配列番号14のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなることを特徴とするヒト型の抗体酵素。
  3. 狂犬病ウイルスに対するヒト抗体κ型軽鎖であって、抗ラブドウイルス活性およびがん細胞傷害性を有しており、その可変領域が、配列番号30のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなるヒト型の抗体酵素を含有していることを特徴とする抗ラブドウイルス剤。
  4. 狂犬病ウイルスに対するヒト抗体κ型軽鎖であって、抗インフルエンザウイルス活性、および核酸分解活性を有しており、その可変領域が、配列番号50のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなることを特徴とするヒト型の抗体酵素。
  5. 狂犬病ウイルスに対するヒト抗体κ型軽鎖であって、抗インフルエンザウイルス活性を有しており、その可変領域が、配列番号35のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなることを特徴とするヒト型の抗体酵素。
  6. 狂犬病ウイルスに対するヒト抗体κ型軽鎖であって、抗インフルエンザウイルス活性を有しており、その可変領域が、配列番号54のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなることを特徴とするヒト型の抗体酵素。
  7. 狂犬病ウイルスに対するヒト抗体κ型軽鎖であって、抗ラブドウイルス活性を有しており、その可変領域が、配列番号22のアミノ酸配列によって示されるポリペプチドからなることを特徴とするヒト型の抗体酵素。
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