OP(operational)アンプ、帰還抵抗Rfおよび利得抵抗Rgを用いた増幅器の利得は、帰還抵抗Rfと利得抵抗Rgの比によって決まる。このような増幅器においては、帰還抵抗Rfと利得抵抗Rgの組合せを切り替えることによって、利得の切替えが可能な利得切替回路とすることができる(第1の従来技術)。
また、増幅器を用いた利得の切替え技術(第2の従来技術、例えば特許文献1の図1の増幅器120参照)や、減衰器を用いた利得の切替え技術(第3の従来技術、例えば特許文献1の図1の減衰器110参照)が知られている。
さらに、帰還抵抗Rfおよび/または帰還抵抗Rgを半導体スイッチによって切り替える利得の切替え技術(第4の従来技術)が知られている。
〔第1の従来技術〕
第1の従来技術に係る利得切替回路では、帰還抵抗Rfと利得抵抗Rgの組み合わせを切り替える。第1の従来技術に係る利得切替回路の最小構成を図73(非反転増幅回路)と図74(反転増幅回路)に示す。非反転増幅回路および反転増幅回路は増幅器の一例である。
図73に示す利得切替回路502は抵抗切替部504を備え、利得の切替えが可能な非反転増幅回路を形成している。抵抗切替部504は、抵抗素子である帰還抵抗Rf1と利得抵抗Rg1の直列接続からなる第1の素子群と、抵抗素子である帰還抵抗Rf2と利得抵抗Rg2の直列接続からなる第2の素子群の2組の素子群を有している。いずれの素子群も、利得抵抗側の一端が基準電位に接続されており、帰還抵抗側の一端はOPアンプUの出力に接続されている。第1および第2の素子群中の抵抗素子同士の接続部は各々、半導体スイッチS1または半導体スイッチS2の一端に接続され、各半導体スイッチS1、S2の他端は共通に接続されて(つまり、一つにまとめられて)OPアンプUの反転入力に接続されている。OPアンプUの非反転入力には、入力電圧Vinが与えられている。
利得切替回路502の入力電圧をVin、出力電圧をVoutとすると、利得Gは、G=Vout÷Vinと表すことができる。半導体スイッチS1と半導体スイッチS2は、いずれか一つがオンとなり、他はオフとなる。(以下、半導体スイッチS1がオンし、他の半導体スイッチがオフとなることを「S1:オン」と言い、半導体スイッチS2がオンし、他の半導体スイッチがオフとなることを「S2:オン」と言う。)
利得切替回路502において、S1:オンのときは、利得GがG=1+(Rf1÷Rg1)となる。S2:オンのときは、利得GがG=1+(Rf2÷Rg2)となる。
図73の利得切替回路502は非反転増幅回路であるが、この利得切替回路502を反転増幅回路に適用することもできる。反転増幅回路の最小構成を図74に示す。図74の利得切替回路512は、利得切替回路502と同様の回路構成を備えているが、接続が異なっている。抵抗切替部504では、2組の素子群の利得抵抗側の一端に入力電圧Vinが与えられており、つまり信号の入力に用いられており、帰還抵抗側の一端はOPアンプUの出力に接続されている。素子群中の抵抗素子同士の接続部は各々、半導体スイッチS1または半導体スイッチS2の一端に接続され、各半導体スイッチS1、S2の他端は共通に接続されてOPアンプUの反転入力に接続されている。OPアンプの非反転入力は、基準電位に接続されている。
利得切替回路512において、S1:オンのときは、利得GがG=−(Rf1÷Rg1)となる。S2:オンのときは、利得GがG=−(Rf2÷Rg2)となる。
利得切替えの切替ステップには、利得Gを2倍、3倍、4倍…のように切り替える切替ステップや、dB単位の切替ステップなどがあり、これらの切替ステップは、各抵抗素子の抵抗値を適宜選定することによって選択することができる。(以下同様。)
図73の利得切替回路502において、より多段(n段)の切替えを可能とした利得切替回路を、図75に示す。また図74の利得切替回路512において、より多段の切替えを可能とした利得切替回路を、図76に示す。図75に示す利得切替回路522は抵抗切替部524を備え、利得の切替えが可能な非反転増幅回路を形成し、図76に示す利得切替回路532は抵抗切替部524を備え、利得の切替えが可能な反転増幅回路を形成している。利得切替回路522、532においても、半導体スイッチS1〜Snはいずれか一つがオンになり、他はオフとなる。
図76の利得切替回路532では、半導体スイッチS1〜Snのいずれがオンになるかによって、入力電圧Vin側から見た抵抗値が変化する場合がある。入力信号源のインピーダンスが十分に低くない場合は、このような抵抗値の変化によって、入力電圧Vinが変化してしまうという問題が生じる。
この問題を解決するために、図77のように、利得切替回路532の入力電圧Vin側にバッファアンプUbを追加することができる。
〔第2の従来技術〕
次に、第2の従来技術に係る利得切替回路の最小構成を図78に示す。図78の利得切替回路542は抵抗切替部544を備え、利得の切替えが可能な非反転増幅回路を形成している。抵抗切替部544では、抵抗素子R1、抵抗素子R2、抵抗素子である帰還抵抗Rfの直列接続からなる素子群において、抵抗素子R1側の一端が基準電位に接続されており、帰還抵抗Rf側の一端はOPアンプUの出力に接続されている。素子群中の抵抗素子同士の接続部は各々、半導体スイッチS1または半導体スイッチS2の一端に接続され、半導体スイッチS1、S2の他端は共通に接続されてOPアンプUの反転入力に接続されている。OPアンプUの非反転入力には、入力電圧Vinが与えられている。
第2の従来技術は、第1の従来技術よりも抵抗素子の数が少なくて済むというメリットがある。
半導体スイッチS1と半導体スイッチS2は、いずれか一つがオンとなり、他はオフとなる。
利得切替回路542において、S1:オンのときは、利得GがG=1+{(Rf+R2)÷R1}となる。S2:オンのときは、利得GがG=1+{Rf÷(R2+R1)}となる。この一例として、R1、R2、Rfの全てが等しい抵抗値Rのときを考えると、S1:オンのときG=3となり、S2:オンのときはG=1.5となる。
図78の利得切替回路542は非反転増幅回路であるが、この利得切替回路542を反転増幅回路に適用することもできる。反転増幅回路の最小構成を図79に示す。図79の利得切替回路552は、利得切替回路542と同様の回路構成を備えているが、接続が異なっている。抵抗切替部544では、抵抗素子R1、抵抗素子R2、抵抗素子である帰還抵抗Rfの直列接続からなる素子群において、抵抗素子R1側の一端に入力電圧Vinが与えられており、つまり信号の入力に用いられており、帰還抵抗Rf側の一端はOPアンプUの出力に接続されている。素子群中の抵抗素子同士の接続部は各々、半導体スイッチS1または半導体スイッチS2の一端に接続され、半導体スイッチの他端は共通に接続されてOPアンプUの反転入力に接続されている。OPアンプの非反転入力は、基準電位に接続されている。
利得切替回路552において、S1:オンのときは、利得GがG=−{(Rf+R2)÷R1}となる。S2:オンのときは、利得GがG=−{Rf÷(R2+R1)}となる。この一例として、各抵抗素子の抵抗値がR1=2R、R2=R、Rf=3Rのときを考えると、S1:オンのときG=−2となり、S2:オンのときはG=−1となる。
図78の利得切替回路542において、より多段(n段)の切替えを可能とした利得切替回路を図80に示す。また図79の利得切替回路552において、より多段の切替えを可能とした利得切替回路を、図81に示す。図80に示す利得切替回路562は抵抗切替部564を備え、利得の切替えが可能な非反転増幅回路を形成している。図81に示す利得切替回路572は抵抗切替部564を備え、利得の切替えが可能な反転増幅回路を形成している。利得切替回路562、572においても、半導体スイッチS1〜Snはいずれか一つがオンになり、他はオフとなる。
図81の利得切替回路572では、半導体スイッチS1〜Snのいずれがオンになるかによって、入力電圧Vin側から見た抵抗値が変化する。例えば、S1:オンのときの入力電圧Vin側から見た入力抵抗値はR1となり、S2:オンのときは(R1+R2)となる。したがって、入力信号源のインピーダンスが十分に低くない場合は、このような抵抗値の変化によって、入力電圧Vinが変化してしまうという問題が生じる。
この問題を解決するために、図82のように、利得切替回路572の入力電圧Vin側にバッファアンプUbを追加することができる。
〔第3の従来技術〕
第3の従来技術に係る利得切替回路の構成を、図83に示す。図83に示す利得切替回路582は抵抗切替部584を備える。抵抗切替部584では、抵抗素子R1〜抵抗素子Rnの直列接続からなる素子群において、抵抗素子R1側の一端が基準電位に接続されており、抵抗素子Rn側の一端には入力電圧Vinが与えられている、つまり信号の入力に用いられている。素子群中の抵抗素子同士の接続部や抵抗素子Rn側の一端には各々、半導体スイッチS1〜Snに接続され、半導体スイッチS1〜Snの他端は共通に接続されてOPアンプUの非反転入力に接続されている。抵抗素子である利得抵抗Rgと帰還抵抗Rfの一端は共通に接続され、OPアンプUの反転入力に接続されている。利得抵抗Rgの他端は基準電位に接続されており、帰還抵抗Rfの他端はOPアンプUの出力に接続されている。
利得切替回路582でも、半導体スイッチS1〜Snはいずれか一つがオンになり、他はオフとなる。半導体スイッチS1〜Snのうち半導体スイッチSi(i=1〜nのいずれか)のみがオンになる場合は、利得切替回路582の利得Gが以下のようになる。
G={(R1+R2+…+Ri)÷(R1+R2+…+Rn)}×{1+(Rf÷Rg)}
図83の利得切替回路582に、一端を接地点に接続し他端をOPアンプUの非反転入力に接続した半導体スイッチを追加すれば、G=0も選択可能となる。
〔第4の従来技術〕
次に、第4の従来技術に係る利得切替回路の構成例を図84に示す。図84の利得切替回路602は抵抗切替部604を備え、利得の切替えが可能な非反転増幅回路を形成している。
抵抗切替部604では、抵抗素子である利得抵抗Rg1と利得抵抗Rg2の並列接続からなる素子群において、利得抵抗Rg1の一端が半導体スイッチSg1を介して基準電位に接続されており、利得抵抗Rg2の一端が半導体スイッチSg2を介して基準電位に接続されている。利得抵抗Rg1と利得抵抗Rg2の他端は共通に接続されて、OPアンプUの反転入力に接続されている。
また、抵抗素子である帰還抵抗Rf1と帰還抵抗Rf2の並列接続からなる素子群において、帰還抵抗Rf1の一端が半導体スイッチSf1を介してOPアンプUの出力に接続されており、帰還抵抗Rf2の一端が半導体スイッチSf2を介してOPアンプUの出力に接続されている。帰還抵抗Rf1と帰還抵抗Rf2の他端は共通に接続されて、OPアンプUの反転入力に接続されている。
OPアンプUの非反転入力には、入力電圧Vinが与えられている。
半導体スイッチSg1と半導体スイッチSg2では、オンオフに制約はなく両方オン、一方がオン、両方オフのいずかの状態にする。(両方オフの場合は、利得Gは1となる。)半導体スイッチSf1と半導体スイッチSf2では、いずれか一つがオン、または両方オンのいずれかの状態にする。
第4の従来技術ではこのように、半導体スイッチのオンオフの選択の自由度が高いため、少ない半導体スイッチによって多種類の利得切替えが可能になるという特徴を有している。
利得切替回路602において、Sg1とSg2の両方がオンのときの等価的な利得抵抗RgはRg=1÷{(1÷Rg1)+(1÷Rg2)}となり、Sg1のみがオンのときRg=Rg1となり、Sg2のみがオンのときRg=Rg2となり、Sg1とSg2の両方がオフのときはRg=∞となる。また、Sf1とSf2の両方がオンのときの等価的な帰還抵抗RfはRf=1÷{(1÷Rf1)+(1÷Rf2)}となり、Sf1のみがオンのときRf=Rf1となり、Sf2のみがオンのときRf=Rf2となる。(ここで、Rg1の抵抗値はSg1の抵抗を含み、Rg2はSg2の抵抗を含み、Rf1はSf1の抵抗を含み、Rf2はSf2の抵抗を含むこととする。第4の従来技術において、以下同様。)利得切替回路602の利得Gは、G=1+(Rf÷Rg)となる。
このように、抵抗素子と半導体スイッチが各々直列接続されているため、抵抗素子および半導体スイッチによる抵抗値は、抵抗素子の抵抗および半導体スイッチの抵抗の和となる。ここで半導体スイッチの抵抗値が入力電圧によって変化するような場合には、波形歪の原因となる。また、半導体スイッチの抵抗値が周囲温度等によって変化すると、利得が変動することになるため、正確な利得が得られなくなるという問題が生じる。
図84の利得切替回路602は非反転増幅回路であるが、この利得切替回路602を反転増幅回路に適用することもできる。反転増幅回路の構成例を図85に示す。図85の利得切替回路612は、利得切替回路602と同様の回路構成を備えているが、接続が異なっている。
抵抗切替部604では、抵抗素子である利得抵抗Rg1と利得抵抗Rg2の並列接続からなる素子群において、利得抵抗Rg1の一端に半導体スイッチSg1を介して入力電圧Vinが与えられており、利得抵抗Rg2の一端に半導体スイッチSg2を介して入力電圧Vinが与えられている。利得抵抗Rg1と利得抵抗Rg2の他端は共通に接続されて、OPアンプUの反転入力に接続されている。
また、抵抗素子である帰還抵抗Rf1と帰還抵抗Rf2の並列接続からなる素子群において、帰還抵抗Rf1の一端が半導体スイッチSf1を介してOPアンプUの出力に接続されており、帰還抵抗Rf2の一端が半導体スイッチSf2を介してOPアンプUの出力に接続されている。帰還抵抗Rf1と帰還抵抗Rf2の他端は共通に接続されて、OPアンプUの反転入力に接続されている。
OPアンプUの非反転入力は、基準電位に接続されている。
半導体スイッチSg1と半導体スイッチSg2は、いずれか一つがオン、または両方オンのいずれかの状態にする。(両方オフのときは、利得切替回路612の利得Gは0となる。)半導体スイッチSf1と半導体スイッチSf2は、いずれか一つがオン、または両方オンのいずれかの状態にする。
第4の従来技術では、2対1や4対1のようにその出力が一括接続されている半導体スイッチではなく、各々独立した半導体スイッチが用いられる。この半導体スイッチは各々独立してオンオフを選択することができる。
利得切替回路612において、Sg1とSg2の両方がオンのとき等価的な利得抵抗RgはRg=1÷{(1÷Rg1)+(1÷Rg2)}となり、Sg1のみがオンのときRg=Rg1となり、Sg2のみがオンのときRg=Rg2となる。また、Sf1とSf2の両方がオンのとき等価的な帰還抵抗RfはRf=1÷{(1÷Rf1)+(1÷Rf2)}となり、Sf1のみがオンのときRf=Rf1となり、Sf2のみがオンのときRf=Rf2となる。利得切替回路612の利得Gは、G=−(Rf÷Rg)となる。
図84の利得切替回路602において、より多段(n段)の切替えを可能とした利得切替回路を図86に示す。また図85の利得切替回路612において、より多段の切替えを可能とした利得切替回路を図87に示す。図86に示す利得切替回路622は抵抗切替部624を備え、利得の切替えが可能な非反転増幅回路を形成している。図87に示す利得切替回路632は抵抗切替部624を備え、利得の切替えが可能な反転増幅回路を形成している。
利得切替回路622において、半導体スイッチSg1〜Sgnではオンオフに制約はないが、半導体スイッチSf1〜Sfnはいずれか一つ以上がオンである必要がある。一方、利得切替回路632においては、半導体スイッチSg1〜Sgnはいずれか一つ以上がオンである必要があり、半導体スイッチSf1〜Sfnもいずれか一つ以上がオンである必要がある。(半導体スイッチSg1〜Sgnが全てオフのとき、利得切替回路632の利得Gは0となる。)
図87の利得切替回路632では、半導体スイッチSg1〜Sgnのオンオフの選択によって、入力電圧Vin側から見た抵抗値が変化する。したがって、入力信号源のインピーダンスが十分に低くない場合は、このような抵抗値の変化によって、入力電圧Vinが変化してしまうという問題が生じる。
このような問題を解決するために、図88のように、利得切替回路632の入力電圧Vin側にバッファアンプUbを追加することができる。
ここでは、利得抵抗側、帰還抵抗側の両方に半導体スイッチを設ける例を示したが、いずれか一方のみに半導体スイッチを設けることもでき、このような回路も第4の従来技術に含まれる。
〔その他の関連技術〕
増幅手段を備えるその他の関連回路技術として、下記の回路を例示する。
図89に示す差動増幅回路、
図90に示す他の差動増幅回路、
図91に示す反転型加算回路、
図92に示す加減算回路、
図93に示す積分回路、
図94に示す微分回路、
図95に示す電流増幅回路(電流−電圧変換回路)、
図96に示す電圧−電流変換回路、
図97に示すアクティブフィルタ(2次の正帰還型ローパスフィルタを例示する。)および
図98に示す方形波発振回路
複数のビデオ信号のうちの1つを選択することを主目的とする、2対1や4対1などのビデオマルチプレクサが知られている(4対1のビデオマルチプレクサの例は、非特許文献1および非特許文献2参照)。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
〔第1の実施の形態〕
第1の実施の形態は、ビデオマルチプレクサを用いた、増幅器の利得切替回路を示している。この増幅器の利得切替回路は、本発明の増幅手段を備える電子回路の切替回路および電子回路の一例である。
図1は第1の実施の形態に係る基本的な利得切替回路(非反転増幅回路)の一例を示しており、図2は第1の実施の形態に係る基本的な利得切替回路(反転増幅回路)の一例を示している。
図3は第1の実施の形態に係る利得切替回路(非反転増幅回路)の一例を示しており、図4は第1の実施の形態に係る利得切替回路(反転増幅回路)の一例を示しており、図5は第1の実施の形態に係る利得切替回路(反転増幅回路)の変形例を示している。
図1に示す利得切替回路12は、抵抗切替部14を備え、利得の切替えが可能な非反転増幅回路を形成している。抵抗切替部14は、抵抗素子である帰還抵抗Rf1と利得抵抗Rg1の直列接続からなる第1の素子群と、抵抗素子である帰還抵抗Rf2と利得抵抗Rg2の直列接続からなる第2の素子群の2組の素子群を有している。いずれの素子群も、利得抵抗側の一端が基準電位に接続されており、帰還抵抗側の一端はOPアンプUの出力に接続されている。OPアンプUは増幅手段の一例である。
利得切替回路12の抵抗切替部14では、切替手段としてビデオマルチプレクサ16を用いている。ビデオマルチプレクサ16は、出力イネーブル機能を有する複数のバッファアンプU1、U2を備えており、いずれか1つのバッファアンプU1、U2のみが出力イネーブルとなり、他のバッファアンプU1、U2は出力ディスエーブル(出力がハイインピーダンス)となるものである(以下、ビデオマルチプレクサ16中のバッファアンプUi(i=1,2、・・・n)がイネーブルになり、他のバッファアンプがディスエーブルになることを、「Si:オン」と言う)。ビデオマルチプレクサ16には例えば、背景技術で説明した非特許文献1や非特許文献2に記載されているような4対1のビデオマルチプレクサを用いることができる。このようなビデオマルチプレクサ16には、選択入力が備えられている。この選択入力には、制御装置が出力する選択信号が入力される。ビデオマルチプレクサ16はこの選択信号に応じて、一つのバッファアンプを選択してその出力をイネーブルとし、他のバッファアンプの出力をディスエーブルに切り替える。
ビデオマルチプレクサ16は組み合わせて使用することができる。つまり、複数のビデオマルチプレクサ16を組み合わせてより多数の信号の1つを選択するようにすることができる。この場合、別途設けるデマルチプレクサで複数のビデオマルチプレクサ16のうちの一つのイネーブル入力を選択させることができる。デマルチプレクサは制御装置からの制御信号に応じていずれか一つの出力を選択するものであり、複数のビデオマルチプレクサ16のうちの一つを選択するためのセレクタの一例である。
ビデオマルチプレクサ16では上記のように、バッファアンプU1、U2の出力のイネーブル/ディスエーブルによって出力または非出力の切替えを行っているが、図1ではバッファアンプU1、U2の動作の理解を容易にするために、バッファアンプU1、U2の出力イネーブル機能をバッファアンプU1、U2とスイッチS1、S2の直列接続として表記している。第1および第2の素子群中の抵抗素子同士の接続部は各々、ビデオマルチプレクサ16のバッファアンプU1の入力、またはバッファアンプU2の入力に接続している。各バッファアンプU1、U2の出力は共通に接続されて(つまり、一つにまとめられて)OPアンプUの反転入力に接続されている。OPアンプUの非反転入力には、入力電圧Vinが与えられている。
なお、利得切替回路12では出力イネーブル機能を有する複数のバッファアンプU1、U2を例示しているが、出力イネーブル機能を有していれば、他の種類の増幅器やOPアンプを用いることもでき、利得は1以外でもよい。例えば、利得が2であってもよい。非特許文献2のビデオマルチプレクサは、外付抵抗の抵抗値を選択することによって、利得を自由に設定できるようになっている。なお、利得が1以外の場合は、OPアンプUの開ループゲインが等価的に変化したように見えることになる。
また、出力イネーブル機能を単独で有する複数のバッファアンプや複数のOPアンプ等と、別途設けるデマルチプレクサの組み合わせによって、同様の機能を実現することもできる。つまり、ビデオマルチプレクサ16は複数のバッファアンプとデマルチプレクサの組合せや、複数のOPアンプとデマルチプレクサの組み合わせであってもよい。(なお、出力イネーブル機能を有するOPアンプを使用する場合は、出力をディスエーブルするときに、帰還回路も出力から切り離す必要がある。)
利得切替回路12において、S1:オンのときは、利得GがG=1+(Rf1÷Rg1)となり、S2:オンのときは利得GがG=1+(Rf2÷Rg2)となる。
各抵抗素子および抵抗素子である帰還抵抗Rfの抵抗値を適宜選定することによって利得切替回路12の切替ステップを選択することができる。(他の実施の形態も同様。)
図1の利得切替回路12は非反転増幅回路となっているが、この利得切替回路12を反転増幅回路に適用することもできるので、これを図2に示す。
図2の利得切替回路22は利得切替回路12と同様の回路構成を備えているが、接続が異なっている。利得切替回路22において、S1:オンのときは、利得GがG=−(Rf1÷Rg1)となり、S2:オンのときは利得GがG=−(Rf2÷Rg2)となる。
利得切替回路12、22では、ビデオマルチプレクサ16を用いるので、出力がイネーブルになっているビデオマルチプレクサ16のバッファアンプU1、U2のいずれかが、OPアンプUの反転入力や、出力がディスエーブルになっている他のバッファアンプの出力容量を低インピーダンスで駆動しているため、周波数特性にはほとんどピークが生じない。つまり、増幅器の利得の周波数特性にピークが生じることがない、または周波数特性に生じるピークを小さくすることができる。また、ビデオマルチプレクサ16のどのバッファアンプU1、U2がイネーブルになるかによる周波数特性の変化がほとんどない。つまり各利得において周波数特性の変化をほとんどないようにすることができる。さらに、位相補償のための帰還容量Cfを小容量とすることができ、または、帰還容量Cfを不要にすることができる。
また、ビデオマルチプレクサ16のバッファアンプU1、U2の入力容量はオン/オフでは変化せず、かつ小容量(一例として1.5〔pF〕)であるため、利得切替えの設定による周波数特性や帯域に変化を生じないようにすることができる。
さらに、ビデオマルチプレクサ16では、半導体スイッチにおける入力電圧による抵抗値変化のような現象は生じないため、半導体スイッチによるひずみ特性の劣化のような現象が生じない。つまり、入力電圧に関わらず、ひずみ特性の劣化を抑制することができる。
図1の利得切替回路12において、より多段(n段)の切替えを可能とした利得切替回路を図3に示す。また図2の利得切替回路22において、より多段の切替えを可能とした利得切替回路を図4に示す。図3に示す利得切替回路32は抵抗切替部34を備え、利得の切替えが可能な非反転増幅回路を形成している。図4に示す利得切替回路42は抵抗切替部34を備え、利得の切替えが可能な反転増幅回路を形成している。利得切替回路32、42においても、ビデオマルチプレクサ36中のバッファアンプU1〜Unはいずれか一つがイネーブルになり、他はディスエーブルとなる。ビデオマルチプレクサ36では、バッファアンプU1〜Unの出力のイネーブル/ディスエーブルによって出力または非出力の切替えを行っているが、図3、図4ではバッファアンプU1〜Unの動作の理解を容易にするために、バッファアンプU1〜Unの出力イネーブル機能をバッファアンプU1〜UnとスイッチS1〜Snの直列接続として表記している。
図4の利得切替回路42では、ビデオマルチプレクサ36中のバッファアンプU1〜Unのいずれがイネーブルになるかによって、入力電圧Vin側から見た抵抗値が変化する場合がある。入力信号源のインピーダンスが十分に低くない場合は、このような抵抗値の変化によって、入力電圧Vinが変化することを回避するため、図5のように、入力電圧Vin側にバッファアンプUbが追加される。
図3〜図5の利得切替回路32、42においては、出力がイネーブルになっているビデオマルチプレクサ36中の1つのバッファアンプ(U1〜Unのいずれか)が、OPアンプUの反転入力や、ディスエーブルになっているビデオマルチプレクサ36の他のバッファアンプの出力容量を低インピーダンスで駆動しているため、位相補償のための帰還容量Cfは小容量で済むか、不要である。この結果、周波数特性にはピークがほとんど生じず、ビデオマルチプレクサ36のどのバッファアンプがイネーブルになるかによる周波数特性の変化がほとんどない。またビデオマルチプレクサ36の入出力容量が半導体スイッチの容量よりも小さいため、第1の従来技術よりも広帯域にすることができる。
また、図3〜図5の利得切替回路32、42において、ビデオマルチプレクサ36のバッファアンプU1〜Unの入力容量はイネーブル/ディスエーブルでは変化せず、かつ各々が小容量(一例として1.5〔pF〕)であるため、利得切替えの設定による周波数特性や帯域の変化が生じないようにすることができる。
さらに、ビデオマルチプレクサでは、半導体スイッチにおける入力電圧による抵抗値変化のような現象は生じないため、半導体スイッチによるひずみ特性の劣化のような現象が生じないようにすることができる。
〔第2の実施の形態〕
第2の実施の形態は、一つの素子群とビデオマルチプレクサを用いた増幅器の利得切替回路を示している。
図6は第2の実施の形態に係る基本的な利得切替回路(非反転増幅回路)の一例を示しており、図7は第2の実施の形態に係る基本的な利得切替回路(反転増幅回路)の一例を示している。
図8は第2の実施の形態に係る利得切替回路(非反転増幅回路)の一例を示しており、図9は第2の実施の形態に係る利得切替回路(反転増幅回路)の一例を示しており、図10は第2の実施の形態に係る利得切替回路(反転増幅回路)の変形例を示している。
図6に示す利得切替回路52は抵抗切替部54を備え、利得の切替えが可能な非反転増幅回路を形成している。抵抗切替部54は、抵抗素子R1、抵抗素子R2、抵抗素子である帰還抵抗Rfの直列接続からなる素子群を有している。抵抗素子R1側の一端が基準電位に接続されており、帰還抵抗Rf側の一端はOPアンプUの出力に接続されている。
抵抗切替部54では、切替手段としてビデオマルチプレクサ56を用いている。図6においても、ビデオマルチプレクサ56中のバッファアンプU1、U2はいずれか一つがイネーブルになり、他はディスエーブルとなる。なお、図6においても、バッファアンプU1、U2の出力イネーブル機能をバッファアンプU1、U2とスイッチS1、S2の直列接続として表記している。素子群中の抵抗素子同士の接続部は各々、ビデオマルチプレクサ56のバッファアンプU1の入力、またはバッファアンプU2の入力に接続している。各バッファアンプU1、U2の出力は共通に接続されてOPアンプUの反転入力に接続されている。OPアンプUの非反転入力には、入力電圧Vinが与えられている。
利得切替回路52において、S1:オンのときは利得GがG=1+{(Rf+R2)÷R1}となり、S2:オンのときは利得GがG=1+{Rf÷(R2+R1)}となる。利得切替回路52において、抵抗素子R1、R2、帰還抵抗Rfの全てが等しい抵抗値Rのときを考えると、S1:オンのときは利得GがG=3となり、S2:オンのときはG=1.5となる。
図6の利得切替回路52は非反転増幅回路となっているが、この利得切替回路52を反転増幅回路に適用することもできるので、これを図7に示す。
図7の利得切替回路62は利得切替回路52と同様の回路構成を備えているが、接続が異なっている。利得切替回路62において、S1:オンのときは利得GがG=−{(Rf+R2)÷R1}となり、S2:オンのときは利得GがG=−{Rf÷(R2+R1)}となる。利得切替回路62として、抵抗素子R1の抵抗値が2R、抵抗素子R2の抵抗値がR、帰還抵抗Rfの抵抗値が3Rのときを考えると、S1:オンのときは利得GがG=−2となり、S2:オンのときはG=−1となる。
利得切替回路52、62では、ビデオマルチプレクサ56を用いるので、オンになっているビデオマルチプレクサ56のバッファアンプU1、U2のいずれかが、OPアンプUの反転入力や、出力がディスエーブルになっている他のバッファアンプの出力容量を低インピーダンスで駆動しているため、周波数特性にはほとんどピークが生じない。また、ビデオマルチプレクサ56のどのバッファアンプU1、U2がイネーブルになるかによる周波数特性の変化がほとんどない。さらに、位相補償のための帰還容量Cfは小容量で済むか、不要になる。
また、ビデオマルチプレクサ56のバッファアンプU1、U2の入力容量はオン/オフでは変化せず、かつ小容量(一例として1.5〔pF〕)であるため、利得切替えの設定による周波数特性や帯域の変化が生じない。
さらに、ビデオマルチプレクサ56では、半導体スイッチにおける入力電圧による抵抗値変化のような現象は生じないため、半導体スイッチによるひずみ特性の劣化のような現象が生じない。
図6の利得切替回路52において、より多段(n段)の切替えを可能とした利得切替回路を図8に示す。また図7の利得切替回路62において、より多段の切替えを可能とした利得切替回路を図9に示す。図8に示す利得切替回路72は抵抗切替部74を備え、利得の切替えが可能な非反転増幅回路を形成している。図9に示す利得切替回路82は抵抗切替部74を備え、利得の切替えが可能な反転増幅回路を形成している。利得切替回路72、82においても、ビデオマルチプレクサ76中のバッファアンプU1〜Unはいずれか一つがイネーブルになり、他はディスエーブルとなる。
図9の利得切替回路82では、ビデオマルチプレクサ76中のバッファアンプU1〜Unのいずれがイネーブルになるかによって、入力電圧Vin側から見た抵抗値が変化する。例えば、S1:オンのときの入力抵抗値はR1となり、S2:オンのときの入力抵抗値は(R1+R2)となる。入力信号源のインピーダンスが十分に低くない場合は、このような抵抗値の変化によって、入力電圧Vinが変化することを回避するため、図10のように、入力電圧Vin側にバッファアンプUbが追加される。
図8〜図10の利得切替回路72、82においては、出力がイネーブルになっているビデオマルチプレクサ76中の1つのバッファアンプ(U1〜Unのいずれか)が、OPアンプUの反転入力や、ディスエーブルになっているビデオマルチプレクサ76の他のバッファアンプの出力容量を低インピーダンスで駆動しているため、帰還抵抗Rfに並列に追加する帰還容量Cfは小容量で済む。各抵抗素子の抵抗値の選択やOPアンプUの種類によっては、この容量が不要となる場合もある。この結果、周波数特性にはピークがほとんど生じず、ビデオマルチプレクサ76のどのバッファアンプがイネーブルになるかによる周波数特性の変化がほとんどない。またビデオマルチプレクサ76の入出力容量が半導体スイッチの容量よりも小さいため、第1の従来技術よりも広帯域にすることができる。
また、図8〜図10の利得切替回路72、82において、ビデオマルチプレクサ76のバッファアンプU1〜Unの入力容量はイネーブル/ディスエーブルでは変化せず、かつ各々が小容量(一例として1.5〔pF〕)であるため、利得切替えの設定による周波数特性や帯域の変化が生じないようにすることができる。
さらに、ビデオマルチプレクサでは、半導体スイッチにおける入力電圧による抵抗値変化のような現象は生じないため、半導体スイッチによるひずみ特性の劣化のような現象が生じないようにすることができる。
第1の実施の形態と第2の実施の形態は、適宜組み合わせて実施することができる。第1の実施の形態と第2の実施の形態を併用した非反転増幅回路による利得切替回路の例を図11に示す。図11に示す利得切替回路92は、抵抗切替部94を備え、利得の切替えが可能な非反転増幅回路を形成している。抵抗切替部94は、図1に示す利得切替部14のように第1および第2の素子群を有し、図6に示す抵抗切替部54のように、素子群に含まれる抵抗素子の数を3つにしている。なお、各素子群に含まれる抵抗素子の数は、図8に示す抵抗切替部74のように3つ以上の抵抗素子を直列に接続して素子群を形成することもできるし、素子群やビデオマルチプレクサのバッファアンプの組合せを2組よりも多くすることもできる。また、図11の利得切替回路92では非反転増幅回路を示しているが、利得切替回路12、32、52、72と同様、反転増幅回路に適用したり、さらに入力バッファUbを追加することも可能である。
〔第3の実施の形態〕
第3の実施の形態は、ビデオマルチプレクサを用いた、さらに別の種類の増幅器の利得切替回路を示している。
図12は、第3の実施の形態の利得切替回路を示している。
図12に示す利得切替回路102は、抵抗切替部104を備え、利得の切替えが可能な増幅回路を形成している。抵抗切替部104では、抵抗素子R1〜抵抗素子Rnの直列接続からなる素子群において、抵抗素子R1側の一端が基準電位に接続されており、抵抗素子Rn側の一端には入力電圧Vinが与えられている、つまり信号の入力に用いられている。
抵抗切替部104では、切替手段としてビデオマルチプレクサ106を用いている。ビデオマルチプレクサ106中のバッファアンプU1〜Unはいずれか一つがイネーブルになり、他はディスエーブルとなる。なお、図12においても、バッファアンプU1〜Unの出力イネーブル機能をバッファアンプU1〜UnとスイッチS1〜Snの直列接続として表記している。素子群中の抵抗素子同士の接続部や抵抗素子Rn側の一端は各々、バッファアンプU1〜Unの入力に接続され、バッファアンプU1〜Unの他端は共通に接続されてOPアンプUの非反転入力に接続されている。利得抵抗Rgと帰還抵抗Rfの一端は共通に接続され、OPアンプUの反転入力に接続されている。利得抵抗Rgの他端は基準電位に接続されており、帰還抵抗Rfの他端はOPアンプUの出力に接続されている。ここでは、OPアンプUは非反転増幅回路を構成しているが、反転増幅回路とすることもできる。反転増幅回路は入力インピーダンスが低いが、ビデオマルチプレクサ106中のバッファアンプがOPアンプUによる増幅回路を低インピーダンスで駆動するので、反転増幅回路とすることができる。(これに対して第3の従来技術では、オンしている半導体スイッチが抵抗として動作するため、OPアンプUを反転増幅回路とすることは適当でない場合が多い。)
利得切替回路102において、ビデオマルチプレクサ106中のバッファアンプU1〜UnのうちUi(i=1〜nのいずれか)のみがイネーブルになるとき、利得Gは、以下のようになる。
G={(R1+R2+…+Ri)÷(R1+R2+…+Rn)}×{1+(Rf÷Rg)}
図12の利得切替回路102において、ビデオマルチプレクサ106にバッファアンプU0を追加し、その入力を接地点に接続し、出力を他のバッファアンプU1〜Unの出力の共通接続点に接続すれば、利得G=0も選択可能となる。
図12の利得切替回路102においては、ビデオマルチプレクサ106のどのバッファアンプがイネーブルになるかによる周波数特性の変化がほとんどない。またビデオマルチプレクサ106の入出力容量が半導体スイッチの容量よりも小さいため、第3の従来技術よりも広帯域にすることができる。
図12の利得切替回路102において、ビデオマルチプレクサ106のバッファアンプU1〜Unの入力容量はイネーブル/ディスエーブルでは変化せず、かつ小容量であるため、利得切替えの設定による周波数特性や帯域の変化がほとんど生じないようにすることができる。
また、ビデオマルチプレクサ106では、半導体スイッチにおける入力電圧による抵抗値変化のような現象は生じないため、第3の従来技術の半導体スイッチによるひずみ特性の劣化のような現象が生じないようにすることができる。
第3の実施の形態は、第1の実施の形態、第2の実施の形態や、第1の実施の形態と第2の実施の形態の併用と、自由に組み合わせて実施することができる。
〔第4の実施の形態〕
第4の実施の形態は、ビデオマルチプレクサを用いた、さらに別の種類の増幅器の利得切替回路を示している。
図13は第4の実施の形態に係る基本的な利得切替回路(非反転増幅回路)の一例を示しており、図14は第4の実施の形態に係る基本的な利得切替回路(反転増幅回路)の一例を示している。
図15は第4の実施の形態に係る利得切替回路(非反転増幅回路)の一例を示しており、図16は第4の実施の形態に係る利得切替回路(反転増幅回路)の一例を示している。
図13に示す利得切替回路202は抵抗切替部204を備え、利得の切替えが可能な非反転増幅回路を形成している。
抵抗切替部204では、抵抗素子である利得抵抗Rg1と利得抵抗Rg2の並列接続からなる素子群において、利得抵抗Rg1の一端がビデオマルチプレクサ206のバッファアンプUg1(出力イネーブル機能を含む)を介して基準電位に接続されており、利得抵抗Rg2の一端がビデオマルチプレクサ206のバッファアンプUg2(出力イネーブル機能を含む)を介して基準電位に接続されている。バッファアンプUg1とバッファアンプUg2の入力は、共通に接続されている。利得抵抗Rg1と利得抵抗Rg2の他端は共通に接続されて、OPアンプUの反転入力に接続されている。
また、抵抗素子である帰還抵抗Rf1と帰還抵抗Rf2の並列接続からなる素子群において、帰還抵抗Rf1の一端がビデオマルチプレクサ206のバッファアンプUf1(出力イネーブル機能を含む)を介してOPアンプUの出力に接続されており、帰還抵抗Rf2の一端がビデオマルチプレクサ206のバッファアンプUf2(出力イネーブル機能を含む)を介してOPアンプUの出力に接続されている。バッファアンプUf1とバッファアンプUf2の入力は、共通に接続されている。帰還抵抗Rf1と帰還抵抗Rf2の他端は共通に接続されて、OPアンプUの反転入力に接続されている。
OPアンプUの非反転入力には、入力電圧Vinが与えられている。
抵抗切替部204では、切替手段としてビデオマルチプレクサ206を用いている。
図13において、ビデオマルチプレクサ206中のバッファアンプUg1、Ug2のイネーブル/ディスエーブルには制約はなく、両方イネーブル、一方がイネーブル、両方ディスエーブルのいずれかの状態に制御する。バッファアンプUf1、Uf2は、両方イネーブル、一方がイネーブルのいずれかの状態に制御する。
第4の実施の形態では、2対1や4対1のようにその出力が一括接続されているビデオマルチプレクサではなく、各々独立したビデオマルチプレクサ206が用いられる。ビデオマルチプレクサ206は各々独立してイネーブル/ディスエーブルを選択することができる。出力イネーブル/ディスエーブル切替機能を有するバッファアンプは、第4の実施の形態におけるビデオマルチプレクサに好適である。
第4の実施の形態ではこのように、ビデオマルチプレクサのイネーブル/ディスエーブルの選択の自由度が高いため、少ないビデオマルチプレクサによって多種類の利得切替えが可能になるという特徴を有している。
なお、図13においても、バッファアンプUg1、Ug2、Uf1、Uf2の出力イネーブル機能をバッファアンプUg1、Ug2、Uf1、Uf2とスイッチSg1、Sg2、Sf1、Sf2の直列接続として表記しており、バッファアンプUg1、Ug2、Uf1、Uf2の出力がイネーブルとなることをスイッチSg1、Sg2、Sf1、Sf2のオンと称し、ディスエーブルになることをオフと称する。
利得切替回路202において、スイッチSg1とスイッチSg2の両方がオンのときの等価的な利得抵抗RgはRg=1÷{(1÷Rg1)+(1÷Rg2)}となり、Sg1のみがオンのときRg=Rg1となり、Sg2のみがオンのときRg=Rg2となり、Sg1とSg2の両方がオフのときはRg=∞となる。また、Sf1とSf2の両方がオンのときの等価的な帰還抵抗RfはRf=1÷{(1÷Rf1)+(1÷Rf2)}となり、Sf1のみがオンのときRf=Rf1となり、Sf2のみがオンのときRf=Rf2となる。利得切替回路202の利得Gは、G=1+(Rf÷Rg)となる。(Sg1とSg2の両方がオフのとき、利得切替回路202の利得Gは1となる。)
図13の利得切替回路202は非反転増幅回路となっているが、この利得切替回路202を反転増幅回路に適用することもできるので、これを図14に示す。
図14の利得切替回路212は利得切替回路202と同様の回路構成を備えているが、接続が異なっている。
図14の抵抗切替部204では、抵抗素子である利得抵抗Rg1と利得抵抗Rg2の並列接続からなる素子群において、利得抵抗Rg1の一端にビデオマルチプレクサ206のバッファアンプUg1(出力イネーブル機能を含む)を介して入力電圧Vinが与えられており、利得抵抗Rg2の一端にビデオマルチプレクサ206のバッファアンプUg2(出力イネーブル機能を含む)を介して入力電圧Vinが与えられている。利得抵抗Rg1と利得抵抗Rg2の他端は共通に接続されて、OPアンプUの反転入力に接続されている。
また、抵抗素子である帰還抵抗Rf1と帰還抵抗Rf2の並列接続からなる素子群において、帰還抵抗Rf1の一端がビデオマルチプレクサ206のバッファアンプUf1(出力イネーブル機能を含む)を介してOPアンプUの出力に接続されており、帰還抵抗Rf2の一端がビデオマルチプレクサ206のバッファアンプUf2(出力イネーブル機能を含む)を介してOPアンプUの出力に接続されている。帰還抵抗Rf1と帰還抵抗Rf2の他端は共通に接続されて、OPアンプUの反転入力に接続されている。
OPアンプUの非反転入力は、基準電位に接続されている。
利得切替回路212において、Sg1とSg2の両方がオンのとき等価的な利得抵抗RgはRg=1÷{(1÷Rg1)+(1÷Rg2)}となり、Sg1のみがオンのときRg=Rg1となり、Sg2のみがオンのときRg=Rg2となる。また、Sf1とSf2の両方がオンのとき等価的な帰還抵抗RfはRf=1÷{(1÷Rf1)+(1÷Rf2)}となり、Sf1のみがオンのときRf=Rf1となり、Sf2のみがオンのときRf=Rf2となる。利得切替回路212の利得Gは、G=−(Rf÷Rg)となる。(Sg1とSg2の両方がオフのときは、利得切替回路212の利得Gは0となる。)
利得切替回路202、212では、ビデオマルチプレクサ206を用いるので、オンになっているビデオマルチプレクサ206のバッファアンプが抵抗素子の一端を低インピーダンスで駆動するため、周波数特性にはほとんどピークが生じない。また、ビデオマルチプレクサ206のどのバッファアンプがイネーブルになるかによる周波数特性の変化はほとんどない。
また、ビデオマルチプレクサ206では、半導体スイッチにおける入力電圧による抵抗値変化のような現象は生じないため、半導体スイッチによるひずみ特性の劣化のような現象が生じない。また、周囲温度等に起因する利得変化も小さい。
図13の利得切替回路202において、より多段(n段)の切替えを可能とした利得切替回路を、図15に示す。また図14の利得切替幅回路212において、より多段の切替えを可能とした利得切替回路を、図16に示す。図15に示す利得切替回路222は抵抗切替部224を備え、利得の切替えが可能な非反転増幅回路を形成している。図16に示す利得切替回路232は抵抗切替部224を備え、利得の切替えが可能な反転増幅回路を形成している。
利得切替回路222において、ビデオマルチプレクサ226中のバッファアンプUg1〜Ugnのイネーブル/ディスエーブルの選択は自由である。(全てディスエーブルとした場合の利得Gは1となる。)バッファアンプUf1〜Ufnの1以上をイネーブルに制御する。
利得切替回路232において、ビデオマルチプレクサ226中のバッファアンプUg1〜Ugnの1以上をイネーブルに制御する。(全てをディスエーブルに制御すると、利得切替回路232の利得Gは0となる。)同様に、バッファアンプUf1〜Ufnの1以上をイネーブルに制御する。
利得切替回路232では、ビデオマルチプレクサ226中のバッファアンプUg1〜Ugnのイネーブル/ディスエーブルの状態によらず、入力電圧Vin側から見た抵抗値は変化せず、かつ高インピーダンスである。よって、第4の従来技術等のように、入力電圧Vin側にバッファアンプUbを追加する必要がない。
図15、図16の利得切替回路222、232においても、出力がイネーブルになっているビデオマルチプレクサ226中のバッファアンプが抵抗素子の一端を低インピーダンスで駆動するので、周波数特性にはピークがほとんど生じない。また、ビデオマルチプレクサ226のどのバッファアンプがイネーブルになるかによる周波数特性の変化がほとんどない。
また、ビデオマルチプレクサ226では、半導体スイッチにおける入力電圧による抵抗値変化のような現象は生じないため、半導体スイッチによるひずみ特性の劣化のような現象が生じない。また、周囲温度等に起因する利得変化も小さい。
第4の実施の形態は、第3の実施の形態と、適宜組み合わせて実施することができる。
ここでは、利得抵抗側、帰還抵抗側の両方にビデオマルチプレクサを設ける例を示したが、いずれか一方のみにビデオマルチプレクサを設けることもでき、このようなものも第4の実施の形態に含まれる。
〔第1の従来技術を用いた利得切替回路と第1の実施の形態の対比〕
第1の従来技術を用いた利得切替回路と第1の実施の形態をシミュレーションによって対比することにより、第1の実施の形態の効果を示す。
図17には第1の従来技術を用いた利得切替回路(非反転増幅回路)のシミュレーション回路の例を示し、図18には第1の実施の形態の利得切替回路(非反転増幅回路)のシミュレーション回路の例を示す。図19には図17の回路のシミュレーション結果を示し、図20には図18の回路のシミュレーション結果を示す。
図21には第1の従来技術を用いた利得切替回路(反転増幅回路)のシミュレーション回路の例を示し、図22には第1の実施の形態の利得切替回路(反転増幅回路)のシミュレーション回路の例を示す。図23には図21の回路のシミュレーション結果を示し、図24には図22の回路のシミュレーション結果を示す。
以下、図17に示すシミュレーション回路312、図18に示すシミュレーション回路112、図21に示すシミュレーション回路322および図22に示すシミュレーション回路122における素子等の各定数を示すが、これらはいずれも、代表的な一例である。
シミュレーション回路112、122、312、322のOPアンプUは、開ループ利得120〔dB〕、ゲイン・バンド幅積100〔MHz〕の電圧帰還型OPアンプとした。シミュレーション回路112、122のビデオマルチプレクサ116のバッファアンプU1〜U4は各々、利得1、帯域幅500〔MHz〕とした。また、シミュレーション回路312、322の半導体スイッチS1〜S4各々のオン時の抵抗値は、100〔Ω〕とした。
シミュレーション回路112、122、312、322では、抵抗素子Rg1〜Rg4の抵抗値は全て500〔Ω〕とし、抵抗素子Rf1の抵抗値は2000〔Ω〕、抵抗素子Rf2は1000〔Ω〕、抵抗素子Rf3は500〔Ω〕、抵抗素子Rf4は250〔Ω〕とした。(ここで、例えば抵抗素子Rf1を抵抗素子Rg1〜Rg4と同一種類の500〔Ω〕の抵抗素子4本の直列接続、抵抗素子Rf2を2本の直列接続、抵抗素子Rf4を2本の並列接続のように、全て同一種類の抵抗素子で構成すれば、抵抗素子Rg1〜Rg4やRf1〜Rf4の抵抗温度係数が全て一致するため、増幅器の利得の温度係数を小さくすることができる。)
シミュレーション回路312、322において、容量CS1〜CS4は全て10〔pF〕、容量Cdは20〔pF〕とした。なお容量CS1〜CS4は半導体スイッチS1〜S4を構成する各FET(電界効果トランジスタ)のソース容量であり、容量Cdは4つの半導体スイッチS1〜S4のFETのドレイン容量の総和である。
シミュレーション回路112、122では、容量CS01〜CS04は全て1.5〔pF〕、容量Cd0は3〔pF〕とした。なお容量CS01〜CS04はビデオマルチプレクサ116のバッファアンプU1〜U4各々の入力容量であり、容量Cd0は4個のバッファアンプU1〜U4の出力容量の総和である。
図19、図20に示すシミュレーション結果や図23、図24に示すシミュレーション結果では、周波数100〔kHz〕における利得Gを0〔dB〕として正規化した周波数特性を示している。T1で示すトレース(記録線)はS1:オンのときの周波数特性、T2で示すトレースはS2:オンのときの周波数特性、T3で示すトレースはS3:オンのときの周波数特性、T4で示すトレースはS4:オンのときの周波数特性を示している。
図19に示すシミュレーション結果において、実線はシミュレーション回路312の帰還容量Cfが0〔pF〕のときの周波数特性を示し、点線は帰還容量Cfが50〔pF〕のときの周波数特性を示している。帰還容量Cfの容量値(50〔pF〕)は、周波数特性にピークを生じない値を選択した。
まず第1の従来技術を用いたシミュレーション回路312では、図19に示すように、帰還容量Cfが0〔pF〕のときは、どの利得に切り替えても周波数特性がピークを有しており、安定した増幅が困難であることがわかる。帰還容量Cfを50〔pF〕として周波数特性がピークを持たないようにすると、選択した利得によっては平坦な周波数特性が得られないことがわかる。
これに対して第1の実施の形態に係るシミュレーション回路112では、図20に示すように、帰還容量なしで安定した増幅を実現していることがわかる。
図23に示すシミュレーション結果において、実線はシミュレーション回路322の帰還容量Cfが0〔pF〕のときの周波数特性を示し、点線は帰還容量Cfが20〔pF〕のときの周波数特性を示している。帰還容量Cfの容量値(20〔pF〕)は、周波数特性にピークを生じない値を選択した。
まず第1の従来技術を用いたシミュレーション回路322では、図23に示すように、帰還容量Cfが0〔pF〕のときは、どの利得に切り替えても周波数特性がピークを有しており、安定した増幅が困難であることがわかる。帰還容量Cfを20〔pF〕とすれば、平坦な周波数特性が得られている。
これに対して第1の実施の形態に係るシミュレーション回路122では、図24に示すように、周波数特性がピークを有しておらず、帰還容量なしで安定した増幅を実現していることがわかる。さらに図24のシミュレーション結果によれば、シミュレーション回路122では、第1の従来技術を用いたシミュレーション回路322に対して数倍の広帯域となることがわかる。
シミュレーションによって確認された第1の従来技術を用いた利得切替回路に対する第1の実施の形態の効果は、以下の通りである。
(1) 第1の実施の形態では、帰還容量がなくても、第1の従来技術を用いた利得切替回路のような大きな周波数特性のピークを生じず、平坦な周波数特性が得られる。
(2) 第1の実施の形態に係る反転増幅回路では、第1の従来技術を用いた利得切替回路に対して数倍の広帯域となる。
〔第2の従来技術を用いた利得切替回路と第2の実施の形態の対比〕
第2の従来技術を用いた利得切替回路と第2の実施の形態をシミュレーションによって対比することにより、第2の実施の形態の効果を示す。
図25には第2の従来技術を用いた利得切替回路(非反転増幅回路)のシミュレーション回路の例を示し、図26には第2の実施の形態の利得切替回路(非反転増幅回路)のシミュレーション回路の例を示す。図27には図25の回路のシミュレーション結果を示し、図28には図26の回路のシミュレーション結果を示す。
図29には第2の従来技術を用いた利得切替回路(反転増幅回路)のシミュレーション回路の例を示し、図30には第2の実施の形態の利得切替回路(反転増幅回路)のシミュレーション回路の例を示す。図31には図29の回路のシミュレーション結果を示し、図32には図30の回路のシミュレーション結果を示す。
以下、図25に示すシミュレーション回路332、図26に示すシミュレーション回路132、図29に示すシミュレーション回路342および図30に示すシミュレーション回路142における素子等の各定数を示すが、これらはいずれも、代表的な一例である。
シミュレーション回路132、142、332、342のOPアンプUは、開ループ利得120〔dB〕、ゲイン・バンド幅積100〔MHz〕の電圧帰還型OPアンプとした。シミュレーション回路132、142のビデオマルチプレクサ136のバッファアンプU1〜U4は各々、利得1、帯域幅500〔MHz〕とした。また、シミュレーション回路332、342の半導体スイッチS1〜S4各々のオン時の抵抗値は、100〔Ω〕とした。
シミュレーション回路332、342では、抵抗素子R1〜R4とRfの抵抗値は全て500〔Ω〕、容量CS1〜CS4は全て10〔pF〕、容量Cdは20〔pF〕とした。
シミュレーション回路132、142でも、抵抗素子R1〜R4とRfの抵抗値は全て500〔Ω〕とした。また容量CS01〜CS04は全て1.5〔pF〕、容量Cd0は3〔pF〕とした。
図27、図28に示すシミュレーション結果や図31、図32に示すシミュレーション結果では、周波数100〔kHz〕における利得Gを0〔dB〕として正規化した周波数特性を示している。T1で示すトレースはS1:オンのときの周波数特性、T2で示すトレースはS2:オンのときの周波数特性、T3で示すトレースはS3:オンのときの周波数特性、T4で示すトレースはS4:オンのときの周波数特性を示している。
図27に示すシミュレーション結果において、実線はシミュレーション回路332の帰還容量Cfが0〔pF〕のときの周波数特性を示し、点線は帰還容量Cfが135〔pF〕のときの周波数特性を示している。図28に示すシミュレーション結果において、実線はシミュレーション回路132の帰還容量Cf0が0〔pF〕のときの周波数特性を示し、点線は帰還容量Cf0が12〔pF〕のときの周波数特性を示している。なお帰還容量Cfの容量値(135〔pF〕)および帰還容量Cf0の容量値(12〔pF〕)は共に、周波数特性にピークを生じない値を選択した。
まず第2の従来技術を用いたシミュレーション回路332では、図27に示すように、帰還容量Cfが0〔pF〕のときは、どの利得に切り替えても周波数特性が大きなピークを有しており、安定した増幅が困難であることがわかる。帰還容量Cfを135〔pF〕として周波数特性がピークを持たないようにすると、選択した利得によっては平坦な周波数特性が得られないことがわかる。
これに対して第2の実施の形態に係るシミュレーション回路132では、図28に示すように、帰還容量Cf0が0〔pF〕のときは、切り替えた利得によっては周波数特性にピークを有する場合もあるが、ピークは第2の従来技術を用いたシミュレーション回路332に対して格段に小さく、安定した増幅を実現していることがわかる。また、帰還容量Cf0を12〔pF〕として周波数特性がピークを持たないようにすると、より平坦な周波数特性が得られている。また、帰還容量Cf0の有無による周波数特性の変化が小さいことがわかる。
図31に示すシミュレーション結果において、実線はシミュレーション回路342の帰還容量Cfが0〔pF〕のときの周波数特性を示し、点線は帰還容量Cfが12〔pF〕のときの周波数特性を示している。図32に示すシミュレーション結果において、実線はシミュレーション回路142の帰還容量Cf0が0〔pF〕のときの周波数特性を示し、点線は帰還容量Cf0が5〔pF〕のときの周波数特性を示している。なお帰還容量Cfの容量値(12〔pF〕)、帰還容量Cf0の容量値(5〔pF〕)は共に、周波数特性にピークを生じない値を選択した。
まず第2の従来技術を用いたシミュレーション回路342では、図31に示すように、帰還容量Cfが0〔pF〕のときは、どの利得に切り替えても周波数特性が大きなピークを有しており、安定した増幅が困難であることがわかる。帰還容量Cfを12〔pF〕とすれば、平坦な周波数特性が得られている。
これに対して第2の実施の形態に係るシミュレーション回路142では、図32に示すように、帰還容量Cf0が0〔pF〕のときは、切り替えた利得によっては周波数特性にピークを有する場合もあるが、ピークは第2の従来技術を用いたシミュレーション回路342に対して格段に小さく、安定した増幅を実現していることがわかる。また、帰還容量Cf0を5〔pF〕として周波数特性がピークを持たないようにすると、より平坦な周波数特性が得られている。また、帰還容量Cf0の有無による周波数特性の変化が小さいことがわかる。さらに図32のシミュレーション結果によれば、シミュレーション回路142では、第2の従来技術を用いたシミュレーション回路342に対して数倍の広帯域となることがわかる。
シミュレーションによって確認された第2の従来技術を用いた利得切替回路に対する第2の実施の形態の効果は、以下の通りである。
(1) 第2の実施の形態では、帰還容量が小さくても、第2の従来技術を用いた利得切替回路のような大きな周波数特性のピークを生じない。
(2) 第2の実施の形態に係る反転増幅回路では、第2の従来技術を用いた利得切替回路に対して数倍の広帯域が得られる。
(3) 第2の実施の形態では、帰還容量の有無に関わらず、平坦な周波数特性が得られる。
(4) 第2の実施の形態では、帰還容量の有無による周波数特性の変化が小さい。
〔第3の従来技術を用いた利得切替回路と第3の実施の形態の対比〕
第3の従来技術を用いた利得切替回路と第3の実施の形態をシミュレーションによって対比することにより、第3の実施の形態の効果を示す。
図33には第3の従来技術の減衰器を用いた利得切替回路のシミュレーション回路の例を示し、図34には第3の実施の形態の利得切替回路のシミュレーション回路の例を示す。図35には図33の回路のシミュレーション結果を示し、図36には図34の回路のシミュレーション結果を示す。
以下、図33に示すシミュレーション回路352、図34に示すシミュレーション回路152の素子の各定数を示すが、これらはいずれも、代表的な一例である。
シミュレーション回路152、352のOPアンプUは、開ループ利得120〔dB〕、ゲイン・バンド幅積100〔MHz〕の電圧帰還型OPアンプとした。シミュレーション回路152のビデオマルチプレクサ156のバッファアンプU1〜U4は各々、利得1、帯域幅500〔MHz〕とした。また、シミュレーション回路352の半導体スイッチS1〜S4各々のオン時の抵抗値は、100〔Ω〕とした。
シミュレーション回路152、352では、抵抗素子R1〜R4、Rg、Rfの抵抗値は全て500〔Ω〕とした。
シミュレーション回路352において、容量CS1〜CS4は全て10〔pF〕、容量Cdは20〔pF〕とした。
シミュレーション回路152において、容量CS01〜CS04は全て1.5〔pF〕、容量Cd0は3〔pF〕とした。
図35と図36に示すシミュレーション結果では、周波数100〔kHz〕における利得Gを0〔dB〕として正規化した周波数特性を示している。T1で示すトレースはS1:オンのときの周波数特性、T2で示すトレースはS2:オンのときの周波数特性、T3で示すトレースはS3:オンのときの周波数特性、T4で示すトレースはS4:オンのときの周波数特性を示している。
まず第3の従来技術の減衰器を用いたシミュレーション回路352では、図35に示すように、T1〜T4で示すトレースのいずれも平坦な周波数特性は得られているものの、平坦な利得が得られる帯域幅の差が大きいことがわかる。したがって、半導体スイッチS1〜S4を切り替える際に、平坦な利得が得られる帯域の変化が大きくなる。特に、S1:オンのときに平坦な利得が得られる帯域の変化が大きくなる。
これに対して第3の実施の形態に係るシミュレーション回路152では、図36に示すように、いずれも平坦な周波数特性が得られている上、平坦な利得が得られる帯域幅の差が小さいことがわかる。したがって、半導体スイッチS1〜S4を切り替えた時に、平坦な利得が得られる帯域の変化が第3の従来技術を用いたシミュレーション回路352に対して小さくなる。また、シミュレーション回路152では、第3の従来技術を用いたシミュレーション回路352に対して数倍の広帯域となることがわかる。
シミュレーションによって確認された第3の従来技術を用いた利得切替回路に対する第3の実施の形態の効果は、以下の通りである。
(1) 第3の実施の形態では、第3の従来技術を用いた利得切替回路に対して数倍の広帯域が得られる。
(2) 第3の実施の形態では、増幅回路の利得を切り替えた時に、平坦な利得が得られる帯域の変化が小さい。
〔第4の従来技術を用いた利得切替回路と第4の実施の形態の対比〕
第4の従来技術を用いた利得切替回路と第4の実施の形態をシミュレーションによって対比することにより、第4の実施の形態の効果を示す。
図37には第4の従来技術を用いた利得切替回路(非反転増幅回路)のシミュレーション回路の例を示し、図38には第4の実施の形態の利得切替回路(非反転増幅回路)のシミュレーション回路の例を示す。図39には図37の回路のシミュレーション結果を示し、図40には図38の回路のシミュレーション結果を示す。
図41には第4の従来技術を用いた利得切替回路(反転増幅回路)のシミュレーション回路の例を示し、図42には第4の実施の形態の利得切替回路(反転増幅回路)のシミュレーション回路の例を示す。図43には図41の回路のシミュレーション結果を示し、図44には図42の回路のシミュレーション結果を示す。
以下、図37に示すシミュレーション回路372、図38に示すシミュレーション回路172、図41に示すシミュレーション回路382および図42に示すシミュレーション回路182における素子等の各定数を示すが、これらはいずれも、代表的な一例である。
シミュレーション回路172、182、372、382のOPアンプUは、開ループ利得120〔dB〕、ゲイン・バンド幅積100〔MHz〕の電圧帰還型OPアンプとした。シミュレーション回路172、182のビデオマルチプレクサ176のバッファアンプUg1、Ug2、Uf1、Uf2は各々、利得1、帯域幅500〔MHz〕とした。また、シミュレーション回路372、382の半導体スイッチSg1、Sg2、Sf1、Sf2各々のオン時の抵抗値は、100〔Ω〕とした。
シミュレーション回路372、382では、抵抗素子Rg1、Rg2の抵抗値は400〔Ω〕とし、半導体スイッチSg1、Sg2との抵抗値の和(すなわち、等価的な抵抗値)が500〔Ω〕となるようにした。また抵抗素子Rf1、Rf2の抵抗値は900〔Ω〕とし、半導体スイッチSf1、Sf2との抵抗値の和(等価的な抵抗値)が1〔kΩ〕となるようにした。半導体スイッチの容量CSg1、Cdg1、CSg2、Cdg2、CSf1、Cdf1、CSf2、Cdf2は全て10〔pF〕とした。
シミュレーション回路172、182では、抵抗素子Rg1、Rg2の抵抗値は500〔Ω〕、Rf1、Rf2の抵抗値は1〔kΩ〕とした。また容量CSg01、CSg02、CSf01、CSf02は1.5〔pF〕、容量Cdg01、Cdg02、Cdf01、Cdf02は1〔pF〕とした。
図39、図40に示すシミュレーション結果や図43、図44に示すシミュレーション結果では、周波数100〔kHz〕における利得Gを0〔dB〕として正規化した周波数特性を示している。
図39、図40に示すシミュレーション結果におけるT1〜T4で示すトレースは各々、表1に示す条件での各回路の周波数特性を示し、図43、図44に示すシミュレーション結果におけるT1〜T4で示すトレースは各々、表2に示す条件での各回路の周波数特性を示す。
表1および表2において、「○」は半導体スイッチのオンやビデオマルチプレクサのバッファアンプ出力のイネーブルを示し、「×」は半導体スイッチのオフやビデオマルチプレクサのバッファアンプ出力のディスエーブルを示す。
Rgは各条件における等価的な利得抵抗の値を示し、Rfは各条件における等価的な帰還抵抗の値を示し、Gは各条件における利得を示す。
まず第4の従来技術を用いたシミュレーション回路372では、図39に示すように、T3とT4のとき(すなわち等価的な利得抵抗が250〔Ω〕時)には周波数特性にはピークを有していないが、T1とT2とき(すなわち等価的な利得抵抗が500〔Ω〕時)には周波数特性にピークを有しており、回路の安定性が損なわれていることがわかる。等価的な利得抵抗をより大きくした場合には、より大きなピークを有することになろう。
これに対して第4の実施の形態に係るシミュレーション回路172では、図40に示すように、周波数特性にピークを有しておらず、安定した増幅を実現していることがわかる。
第4の従来技術を用いたシミュレーション回路382では、図43に示すように、T3とT4のとき(すなわち等価的な利得抵抗が250〔Ω〕時)には周波数特性にはピークを有していないが、T1とT2のとき(すなわち等価的な利得抵抗が500〔Ω〕時)には周波数特性にピークを有しており、回路の安定性が損なわれていることがわかる。等価的な利得抵抗をより大きくした場合には、より大きなピークを有することになろう。
これに対して第4の実施の形態に係るシミュレーション回路182では、図44に示すように、周波数特性にピークを有しておらず、安定した増幅を実現していることがわかる。
シミュレーションによって確認された第4の従来技術を用いた利得切替回路に対する第4の実施の形態の効果は、以下の通りである。
(1) 第4の実施の形態では、第4の従来技術を用いた利得切替回路のような周波数特性のピークを生じない。
(2) 第4の実施の形態では、利得切替えの選択に関わらず、平坦な周波数特性が得られる。
〔他の回路への応用〕
第1の実施の形態〜第4の実施の形態では、利得の切替えが可能な利得切替回路および増幅手段を備えた電子回路として非反転増幅回路または反転増幅回路による増幅器を例示したが、本発明の技術は、OPアンプなどの増幅手段を用いる電子回路において広く用いることができる。
例えば、差動増幅回路、電流増幅回路(電流−電圧変換回路)や電圧−電流変換回路などの増幅器に適用し、これらの増幅器の利得を切り替えることができる。また、反転型加算回路、加減算回路、積分回路、微分回路などの演算回路に適用し、利得や演算定数を切り替えることができる。さらに、アクティブフィルタなどのフィルタ回路に適用し、カットオフ周波数やQ(Quality factor、選択度)などを切り替えることができ、発振回路に適用し、発振周波数などを切り替えることができるなど、幅広い技術に適用することができる。
以下、第1の実施の形態〜第4の実施の形態の技術を増幅手段を用いる電子回路に適用した例を、第1の従来技術〜第4の従来技術を増幅手段を用いる電子回路に適用した場合と対比しながら説明する。
図89に示す差動増幅回路に第1の実施の形態〜第4の実施の形態のいずれかの技術を適用して、利得抵抗Rg−、Rg+および帰還抵抗Rf−、Rf+の抵抗値を切替え可能にすることができる。図89において、利得抵抗Rg−とRg+は同じ抵抗値Rgであり、帰還抵抗Rf−とRf+も同じ抵抗値Rfであるとする。この場合、出力電圧Voutは、Vout=(Rf÷Rg){(Vin+)−(Vin−)}となる。
以下、符号末尾の「−」または「+」を除いた符号が同じ抵抗(例えばRf1−とRf1+)は同じ抵抗値であることとし、符号末尾の「−」または「+」は除いた符号が同じスイッチ(例えばS2−とS2+)は連動してオンオフすることとする。
第1の従来技術を適用した差動増幅回路の利得切替回路を図45に、第1の実施の形態の技術を適用した差動増幅回路の利得切替回路を図46に、第2の従来技術を適用した差動増幅回路の利得切替回路を図47に、第2の実施の形態の技術を適用した差動増幅回路の利得切替回路を図48に、第3の従来技術を適用した差動増幅回路の利得切替回路を図49に、第3の実施の形態の技術を適用した差動増幅回路の利得切替回路を図50に、第4の従来技術を適用した差動増幅回路の利得切替回路を図51に、第4の実施の形態の技術を適用した差動増幅回路の利得切替回路を図52に示す。
なお第2の従来技術を適用した図47の回路や第2の実施の形態の技術を適用した図48の回路において、OPアンプUの非反転入力側の抵抗切替部は、第3の従来技術や第3の実施の形態の技術と考えることも可能である。第3の従来技術を適用した図49の回路では、どの半導体スイッチがオンになるかによって入力電圧(Vin−やVin+)から見た抵抗値が変化するという問題があるが、第3の実施の形態の技術を適用した図50の回路ではビデオマルチプレクサを用いるので、入力電圧から見た抵抗値が変化するという問題がない。
第3の従来技術を適用した図49に示す利得切替回路では、利得抵抗Rg−、Rg+の抵抗値は各々、半導体スイッチの抵抗値を差し引いた値とする必要がある。また第4の従来技術を適用した図51に示す利得切替回路では、抵抗素子である帰還抵抗Rf1−、Rf2−、Rf1+、Rf2+の抵抗値は各々、半導体スイッチの抵抗値を差し引いた値とする必要がある。しかし半導体スイッチの抵抗はばらつきが大きく、また入力電圧や周囲温度等によって変化する。このため、十分な同相除去比が得られなかったり、正確な利得が得られなかったりするおそれがある。なお、第3の実施の形態の技術や第4の実施の形態の技術を適用すれば、このような問題は生じない。
なお、第4の従来技術と第4の実施の形態の技術では共に、抵抗素子である帰還抵抗(あるいはそれに相当する素子)側にだけ半導体スイッチやビデオマルチプレクサを用いた例を示している。利得抵抗(あるいはそれに相当する素子)側にだけ半導体スイッチやビデオマルチプレクサを用いたり両方に用いたりすることも可能である。(以下、電流増幅回路を除き同様。)
このように、差動増幅回路においても前述の非反転増幅回路や反転増幅回路と同様に、第1の従来技術〜第4の従来技術や第1の実施の形態〜第4の実施の形態の全ての技術を適用可能である。
図46、図48、図50および図52に示す利得切替回路は、ビデオマルチプレクサを備えるので、ビデオマルチプレクサを備えない図45、図47、図49および図51に示す利得切替回路に比べて、第1の実施の形態〜第4の実施の形態で既述したいずれかの効果を得ることができる。前述の、第1の従来技術を用いた利得切替回路と第1の実施の形態の対比で示した第1の実施の形態の効果、第2の従来技術を用いた利得切替回路と第2の実施の形態の対比で示した第2の実施の形態の効果、第3の従来技術を用いた利得切替回路と第3の実施の形態の対比で示した第3の実施の形態の効果、第4の従来技術を用いた利得切替回路と第4の実施の形態の対比で示した第4の実施の形態の効果は、差動増幅回路においても同様の効果が得られる。
図90に示す他の差動増幅回路に第1の実施の形態〜第4の実施の形態のいずれかの技術を適用して、利得抵抗Rg−、Rg+、帰還抵抗Rf−、Rf+および帰還抵抗Rf、Rf’の抵抗値を切替え可能にすることができる。図90において、利得抵抗Rg−とRg+は同じ抵抗値Rgであり、帰還抵抗Rf−とRf+は同じ抵抗値Rfであり、帰還抵抗RfとRf’も同じ抵抗値Rfであるとする。この場合、出力電圧Voutは、Vout=(Rf÷Rg){1+(2Rf÷Rd)}{(Vin+)−(Vin−)}となる。この回路では、OPアンプUの利得を図45〜図52と同様の方法で切り替えることができるが、OPアンプU−とOPアンプU+の増幅段でRf+、Rf−やRdを切り替えることによって利得を切り替えることもできる。
他の回路形式による差動増幅回路は、例示を省略する。
図91に示す反転型加算回路に第1の実施の形態〜第4の実施の形態のいずれかの技術を適用して、利得抵抗Rg1とRg2、帰還抵抗Rfの抵抗値を切替え可能にすることができる。利得抵抗Rg1とRg2が同じ抵抗値Rgの場合、出力電圧Voutは、Vout=−(Rf÷Rg){(Vin1)+(Vin2)}となる。
図92に示す加減算回路に第1の実施の形態〜第4の実施の形態のいずれかの技術を適用して、利得抵抗利得抵抗Rg1、Rg2、Rg’、帰還抵抗Rf、Rf’の抵抗値を切替え可能にすることができる。利得抵抗Rg1、Rg2が同じ抵抗値Rgであり、利得抵抗Rg’の抵抗値がRg÷2であり、帰還抵抗Rf、Rf’が同じ抵抗値Rfの場合、出力電圧Voutは、Vout=(Rf÷Rg){2(Vin+)−(Vin1)−(Vin2)}となる。
図91に示す反転型加算回路や図92に示す加減算回路も増幅回路の一種であり、図89に示す差動増幅回路と同様に、第1の実施の形態〜第4の実施の形態の技術を適用でき、同様の効果が得られる。
図93に示す積分回路に第1の実施の形態や第4の実施の形態の技術を適用して、利得抵抗Rgの抵抗値および帰還容量Cfの容量値を切替え可能にすることができる。オフセット電圧等が長時間積分されて出力が飽和してしまうことを回避するために、帰還抵抗Rfを併用することができる。この場合、第4の実施の形態の技術を適用して、帰還抵抗Rfの抵抗値を切替え可能にすることもできる。
第1の従来技術を適用した積分回路の積分定数切替回路を図53に、第1の実施の形態の技術を適用した積分回路の積分定数切替回路を図54に示す。これらでは、積分定数を決定する、抵抗素子である利得抵抗Rgと容量素子である帰還容量Cfの直列接続による素子群を切り替えている。
第4の従来技術を適用した積分回路の積分定数切替回路を図55に、第4の実施の形態の技術を適用した積分回路の積分定数切替回路を図56に示す。これらでは、積分定数を決定する利得抵抗Rgと帰還容量Cfのうち、帰還容量Cfの並列接続による素子群だけを切り替えることによって積分定数を切り替えている。
第4の従来技術や第4の実施の形態の技術においては、利得抵抗Rgだけを切り替えることや、利得抵抗Rgと帰還容量Cfの両方を切り替えることも可能である。
第1の従来技術を適用した図53に示す積分定数切替回路や第4の従来技術を適用した図55に示す積分定数切替回路では、OPアンプUの反転入力に半導体スイッチS1、S2の容量が付加されるため、回路の安定性を損なう可能性がある。これに対して第1の実施の形態の技術を適用した図54に示す積分定数切替回路ではビデオマルチプレクサのバッファアンプU1、U2が低インピーダンスでOPアンプUの反転入力を駆動しており、第4の実施の形態の技術を適用した図56に示す積分定数切替回路ではOPアンプUの反転入力には余分な容量は付加されないため、より安定した回路動作が期待できる。
図94に示す微分回路に第1の実施の形態や第4の実施の形態の技術を適用して、容量素子Cgの容量値および帰還抵抗Rfの抵抗値を切替え可能にすることができる。高周波ノイズへの感度を抑制するなどのために、容量素子Cgに直列に抵抗Rgを併用して、不完全微分回路とすることもできる。
第1の従来技術を適用した微分回路の微分定数切替回路を図57に、第1の実施の形態の技術を適用した微分回路の微分定数切替回路を図58に示す。これらでは、微分定数を決定する、容量素子Cgと抵抗素子である帰還抵抗Rfの直列接続による素子群を切り替えている。
第4の従来技術を適用した微分回路の微分定数切替回路を図59に、第4の実施の形態の技術を適用した微分回路の微分定数切替回路を図60に示す。これらでは、微分定数を決定する容量素子Cgと抵抗素子である帰還抵抗Rfのうち、帰還抵抗Rfの並列接続による素子群だけを切り替えることによって微分定数を切り替えている。
第4の従来技術の適用や第4の実施の形態の技術の適用においては、容量素子Cgだけを切り替えることや、容量素子Cgと帰還抵抗Rfの両方を切り替えることも可能である。
第1の従来技術を適用した図57に示す微分定数切替回路や第4の従来技術を適用した図59に示す微分定数切替回路では、OPアンプUの反転入力に半導体スイッチS1、S2の容量が付加されるため、回路の安定性を損なう可能性がある。これに対して第1の実施の形態の技術を適用した図58に示す微分定数切替回路ではビデオマルチプレクサのバッファアンプU1、U2が低インピーダンスでOPアンプUの反転入力を駆動しており、第4の実施の形態の技術を適用した図60に示す微分定数切替回路ではOPアンプUの反転入力には余分な容量は付加されないため、より安定した回路動作が期待できる。
図95に示す電流増幅回路(電流−電圧変換回路)に第4の実施の形態の技術を適用して、帰還抵抗Rfの抵抗値を切替え可能にすることができる。第4の従来技術を適用した電流増幅回路の利得切替回路を図61に、第4の実施の形態の技術を適用した電流増幅回路の利得切替回路を図62に示す。これらでは、電流−電圧変換係数を決定する帰還抵抗Rfの並列接続による素子群を切り替えている。
第4の従来技術を適用した図61に示す利得切替回路では、半導体スイッチS1と帰還抵抗Rf1の接続点に半導体スイッチS1の容量が、半導体スイッチS2と帰還抵抗Rf2の接続点に半導体スイッチS2の容量が付加されるため、平坦な周波数特性が得られないおそれがある。これに対して第4の実施の形態の技術を適用した図62に示す利得切替回路では、ビデオマルチプレクサの出力容量は半導体スイッチS1、S2の容量よりも格段に小さいため、良好な周波数特性が期待できる。
図96に示す電圧−電流変換回路に第2の実施の形態または第4の実施の形態の技術を適用して、シャント抵抗Rsの抵抗値を切替え可能にすることができる。第2の従来技術を適用した電圧−電流変換回路の変換定数切替回路を図63に、第2の実施の形態の技術を適用した電圧−電流変換回路の変換定数切替回路を図64に示す。これらでは、電流−電圧変換係数を決定するシャント抵抗Rsを複数の抵抗素子を直列接続した素子群として、切り替えている。第4の従来技術を適用した電圧−電流変換回路の変換定数切替回路を図65に、第4の実施の形態の技術を適用した電圧−電流変換回路の変換定数切替回路を図66に示す。これらでは、電流−電圧変換係数を決定するシャント抵抗Rsを複数の抵抗素子を並列接続した素子群として、切り替えている。
第2の従来技術を適用した図63に示す変換定数切替回路では、OPアンプUの反転入力に半導体スイッチS1、S2の容量が付加されるため、周波数特性にピークを生じたりする場合がある。これに対して第2の実施の形態の技術を適用した図64に示す変換定数切替回路ではビデオマルチプレクサのバッファアンプU1、U2が低インピーダンスでOPアンプUの反転入力を駆動しているため、より安定した回路動作が期待できる。
第4の従来技術を適用した図65に示す変換定数切替回路では、シャント抵抗Rs1やRs2と半導体スイッチS1やS2が直列に接続されているため、半導体スイッチの入力電圧や周囲温度によって半導体スイッチの抵抗値が変化すると、変換定数が変化してしまうという問題がある。これに対して第4の実施の形態の技術を適用した図66に示す変換定数切替回路では、より正確な変換定数が得られる。半導体スイッチに流せる電流やビデオマルチプレクサのバッファアンプの出力電流容量は、比較的小さい(一例として数十mA程度)ので、これらの変換定数切替回路は小容量の電圧−電流変換回路に適用される。電圧−電流変換回路には他にも様々な回路形式があるが、ここでは他の回路形式の例示は省略する。
図97に示すアクティブフィルタに第1の実施の形態の技術を適用して、抵抗素子R1、R2の抵抗値および容量素子C1、C2の容量値を切替え可能にすることができる。図97では2次の正帰還型ローパスフィルタを例示しているが、他の次数、他の回路形式や他のフィルタ形式にも同様に適用可能である。
第1の従来技術を適用したアクティブフィルタの切替回路を図67に、第1の実施の形態の技術を適用したアクティブフィルタの切替回路を図68に示す。
これらの回路では、フィルタを実現するための素子群として、2つの抵抗素子R1、R2と2つの容量素子C1、C2からなる素子群と2つの抵抗素子R1’、R2’と2つの容量素子C1’、C2’からなる素子群とを備え、これらの素子群を切り替えている。これらの素子群を異なるカットオフ周波数となるように設定し、半導体スイッチS1、S2またはビデオマルチプレクサのバッファアンプU1、U2でこれらの素子群を切り替えれば、アクティブフィルタのカットオフ周波数切替回路を実現できる。また、これらの素子群を異なるQとなるように設定し、半導体スイッチS1、S2またはビデオマルチプレクサのバッファアンプU1、U2でこれらの素子群を切り替えれば、アクティブフィルタのQの切替回路を実現できる。カットオフ周波数やQ以外のフィルタ定数の切替えにも自由に応用可能である。
第1の従来技術を適用した図67に示すアクティブフィルタでは、容量素子C2やC2’に半導体スイッチS1、S2の容量が追加される。しかし半導体スイッチS1、S2の容量はばらつきが大きく、温度等による変化も大きいので、半導体スイッチS1、S2の容量を差し引いて容量素子C2やC2’の容量を決めたとしても、正確なフィルタ定数が得られないおそれがある。これに対して第1の実施の形態の技術を適用した図68に示すアクティブフィルタでは、ビデオマルチプレクサの入力容量は半導体スイッチS1、S2の容量よりも格段に小さいため、より正確なフィルタ定数が得られる。
図98に示す方形波発振回路に第1の実施の形態や第4の実施の形態の技術を適用して、容量素子Cgの容量値および帰還抵抗Rfの抵抗値を切替え可能にすることができる。この回路では、OPアンプUはコンパレータとして使用されており、抵抗素子R1、R2、R3によってヒステリシス特性をもたせている。この回路では、容量素子Cgと帰還抵抗Rfの直列接続からなる素子群を用いており、1÷(Cg×Rf)にほぼ比例した周波数の方形波が得られる。
第1の従来技術を適用した方形波発振回路の発振周波数切替回路を図69に、第1の実施の形態の技術を適用した方形波発振回路の発振周波数切替回路を図70に示す。これらの回路では、発振周波数を決める素子群として、帰還抵抗Rfと容量素子Cgによる素子群と、帰還抵抗Rf’と容量素子Cg’による素子群とを備え、これらの素子群を切り替えている。
第4の従来技術を適用した方形波発振回路の発振周波数切替回路を図71に、第4の実施の形態の技術を適用した方形波発振回路の発振周波数切替回路を図72に示す。これらの回路では、発振周波数を決める容量素子Cgと帰還抵抗Rfのうち、帰還抵抗Rfの並列接続による素子群だけを切り替えている。
第4の従来技術や第4の実施の形態の技術においては、容量素子Cgだけを切り替えることや、容量素子Cgと帰還抵抗Rfの両方を切り替えることも可能である。
第1の従来技術を適用した図69に示す発振周波数切替回路では、容量素子CgやCg’に半導体スイッチS1、S2の容量が追加される。しかし半導体スイッチS1、S2の容量はばらつきが大きく、温度等による変化も大きいので、半導体スイッチS1、S2の容量を差し引いて容量素子CgやCg’の容量を決めたとしても、正確な発振周波数が得られないおそれがある。これに対して第1の実施の形態の技術を適用した図70に示す発振周波数切替回路では、ビデオマルチプレクサの入力容量は半導体スイッチS1、S2の容量よりも格段に小さいため、より正確な発振周波数が得られる。第4の従来技術を適用した図71に示す発振周波数切替回路や第4の実施の形態の技術を適用した図72に示す発振周波数切替回路では、OPアンプUの反転入力には容量素子Cgだけが接続されるため、半導体スイッチS1、S2やビデオマルチプレクサの容量の影響は小さいので、このような目的に適している。
上記した実施の形態について、変形例を列挙する。
(1) 上記実施の形態では、利得切替回路が増幅手段を含み、増幅器として機能し、利得切替回路中の切替手段によりこの利得切替回路の利得を切り替える例を示したが、例えば増幅手段を備える増幅器に、切替手段を備える利得切替回路を接続して、利得切替回路の切替手段により利得切替回路外の増幅器の利得を切り替えるようにしてもよい。つまり、上記実施の形態の抵抗切替部14、34、54、74、94、104により利得切替回路を形成し、このような利得切替回路をOPアンプU等の増幅手段に接続し、増幅器の利得を切り替えるようにしてもよい。
(2) 上記実施の形態では、増幅手段と受動素子の組合せによる電子回路を例示したが、受動素子以外にも、ダイオード等の非線形素子や、トランジスタ、FET等の増幅素子、OPアンプなどの増幅手段に広く用いることができる。
(3) シミュレーション回路例においては、増幅手段として電圧帰還型のOPアンプを例示したが、電流帰還型のOPアンプなどであってもよい。また応用回路によっては、コンパレータを用いることができる場合がある。
以上説明したように、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載され、または明細書に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能であることは勿論であり、斯かる変形や変更が、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。