JP2016215643A - 積層二軸延伸ポリエステルフィルム - Google Patents
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Description
熱可塑性樹脂フィルム、中でも二軸延伸ポリエステルフィルムは、機械的性質、電気的性質、寸法安定性、透明性、耐薬品性などに優れた性質を有することから磁気記録材料、包装材料などの多くの用途において基材フィルムとして広く使用されている。特に近年、フラットパネルディスプレイやタッチパネル分野、車載パネルディスプレイ用途において、偏光子保護フィルムや透明導電フィルムなど、各種光学フィルムの需要が高まっている。その中でも、偏光子保護フィルム用途では、低コスト化やディスプレイの薄型化・小型化を目的として、従来のTAC(トリアセチルセルロース)フィルムから二軸延伸ポリエステルフィルムへの置換が盛んに検討されている。
結晶性ポリエステルAからなる層(A層)と前記と異なる熱可塑性樹脂Bからなる層(B層)を交互に50層以上積層し、最表層の層厚みが50nm以下あるいは5μm以上、かつ50nm以下の層厚みを有する層数が第2層から数えて連続して10層以上あり、A層またはB層、あるいはA層とB層の両層に紫外線吸収剤を含有した積層二軸延伸ポリエステルフィルムであって、波長400nmにおける光線透過率T400が80%以上であることを特徴とする積層二軸延伸ポリエステルフィルムである。
紫外線吸収剤の多くは低分子量であり、高分子量の紫外線吸収剤でない場合、シート状として溶融吐出した際に空気中に揮散する、熱処理工程や信頼性試験においてフィルムの表面に析出するなどの問題が生じる。そのため、樹脂に共重合させることで、紫外線吸収剤を層内に確実に留めることができ、最表層に位置する結晶性ポリエステルAからなる層(A層)に含有させた場合でも、紫外線吸収剤の揮散や析出の課題をクリアすることが可能となる。紫外線吸収剤を樹脂と共重合させる場合には、たとえば、ポリエステル系の樹脂と共重合する場合には、紫外線吸収剤の多くに含まれるヒドロキシ基を、エステル交換反応などを用いてポリエステル樹脂内のカルボキシル末端と反応させることなどで達成できる。
紫外線吸収剤を含有する層としては、積層二軸延伸ポリエステルフィルムの内層に位置するB層、あるいは、B層が添加濃度リッチとなるようにA層とB層の両層に添加することが好ましい。特に、B層にのみ紫外線吸収剤を含有することが最も好ましい。最表層を含むA層に紫外線吸収剤を含有する場合、添加剤として紫外線吸収剤を用いると、先述のとおりフィルム表面に析出する現象(ブリードアウト現象)、およびそれが口金付近で昇華・揮散する現象が発生しやすくなり、これによってフィルム製膜機が汚染され、析出物が加工工程において欠点発生などの悪影響を及ぼすため好ましくないものである。B層にのみ紫外線吸収剤を含有させる場合、最表層および層内に交互に位置する結晶性ポリエステルAからなるA層が、紫外線吸収剤の析出を防ぐフタとしての役割を果たすため、ブリードアウト現象が起こりにくくなり好ましいものとなる。
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、5,5’−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)等の2−ヒドロキシベンゾフェノン類が挙げられる。
ベンゾエート系紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えば、フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジ第三ブチルフェニル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2,4−ジ第三アミルフェニル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等が挙げられる。
画像表示装置に利用されている偏光子とは、特定の振動方向のみを有する光を透過させる機能を有するものであり、ヨウ素や二色性染料などで染色したポリビニルアルコール(PVA)系フィルムが最も多く使用されている。この偏光子は、有機材料により構成されており、特に、波長280〜380nmの紫外線を照射することで劣化が起こるため、この領域における紫外線を偏光子に届く手前でカットすることにより、偏光子の劣化、あるいは液晶分子の劣化を防止することが可能となる。
逐次二軸延伸の場合についてまず説明する。ここで、長手方向への延伸とは、フィルムに長手方向の分子配向を与えるための延伸を言い、通常は、ロールの周速差により施され、この延伸は1段階で行ってもよく、また、複数本のロール対を使用して多段階に行っても良い。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、通常、2〜15倍が好ましく、積層ポリエステルフィルムを構成する樹脂のいずれかにポリエチレンテレフタレートを用いた場合には、2〜7倍が特に好ましく用いられる。また、延伸温度としては積層一軸延伸ポリエステルフィルムを構成する樹脂のガラス転移温度〜ガラス転移温度+100℃が好ましい。
つづいて幅方向の延伸とは、フィルムに幅方向の配向を与えるための延伸をいい、通常は、テンターを用いて、フィルムの両端をクリップで把持しながら搬送して、幅方向に延伸する。延伸の倍率はフィルムを構成する樹脂の種類により異なるが、通常、2〜15倍が好ましく、積層ポリエステルフィルムを構成する樹脂のいずれかにポリエチレンテレフタレートを用いた場合には、2〜7倍が特に好ましく用いられる。また、延伸温度としては積層二軸延伸ポリエステルフィルムを構成する樹脂のガラス転移温度〜ガラス転移温度+120℃が好ましい。
本発明の積層二軸延伸ポリエステルフィルムは、最表面に耐擦傷性や寸法安定性などの機能を付加できる樹脂層であるハードコート層を設けてなることがより好ましい。特に、ディスプレイ向けの光学フィルムの場合、前述の85℃85%RHの条件で処理を行うことをはじめとする各種信頼性試験において積層二軸延伸ポリエステルフィルムの性状が変化しないことが要求される。延伸により配向結晶化した積層二軸延伸ポリエステルフィルムの場合、信頼性試験の条件がより過酷な場合、熱収縮によりフィルムの寸法が変化することが考えられる。熱収縮が起こることでフィルムの厚みが増加するため、紫外線吸収剤の吸収性能が向上する、反射波長帯域が長波長側にシフトして望まない可視光線の波長カットが発生するなどの問題点が生じる。ハードコート層は積層二軸延伸ポリエステルフィルムの上に直接コーティングされてもよく、前述の製造方法に記載の通り、易滑性や易接着性などの機能を付与できるインライン水系コーティング層を設けた上にコーティングされてもよい。
さらに、ハードコート層を最表面に設けることで、架橋による密度の高い層が最表面に位置することとなり、積層二軸延伸ポリエステルフィルムの積層構造で十分にカットできなかったオリゴマーや添加剤の析出を、さらに強くブロックすることが出来る。ハードコートはオフコートにより積層二軸延伸ポリエステルフィルムに後から積層されることから、該効果は、特に信頼性試験において強く発揮される。
硬化性樹脂Cを主成分とするハードコート層(C層)は片面に設けてもよいが、オリゴマーなどの析出は一般にフィルムの両面より発生し、さらに片面のみに積層する場合は積層面側に硬化による収縮応力が強く働き、ハードコート層の積層厚みによって積層シート自身が著しくカールする恐れがある。そのため、オリゴマー等のブロック層としてのハードコート層は、積層二軸延伸ポリエステルフィルムの両面に塗布されていてもよい。
ハードコート層を積層する際に、予め積層二軸延伸ポリエステルフィルムに塗布する易接着層は、易滑性や易接着性などの機能を付与するだけでなく、硬化性樹脂Cを主成分とするハードコート層を積層する際に、積層二軸延伸ポリエステルフィルムとの密着性を向上させる効果を奏する。最表層に位置するA層を構成する結晶性ポリエステルとしてポリエチレンテレフタレートを、硬化性樹脂Cとしてアクリル樹脂を用いる場合、前者は屈折率が1.64〜1.68程度、後者は屈折率が1.50程度と屈折率差が大きくなることから、層間密着性の悪化を引き起こすことが懸念される。そのため、易接着層の屈折率は1.53〜1.60の値に調整されることが好ましく、より好ましくは1.55〜1.58の屈折率である。
熱硬化性ウレタン樹脂からなるハードコート層は、任意の温度で樹脂や化合物同士を連結反応させ、層内の溶媒を揮発させると同時に熱架橋することで形成される。熱硬化性ウレタン樹脂の熱架橋反応を促進させるため、加熱工程における温度は150℃以上であることが好ましく、より好ましくは160℃以上である。加熱温度は高温であることが好ましいが、基材の熱収縮による収縮シワの発生などを考慮すると170℃以下で熱処理することが好ましい。加熱時間は、1分間以上、好ましくは2分間以上であり、上限は特に定められるものではないが、積層二軸延伸ポリエステルフィルムの寸法安定性や透明性の観点から5分間以内とすることが好ましい。このようにして、高温で短時間熱処理された積層シートは、20℃〜80℃の温度で3日以上、より好ましくは7日以上エージング処理を行うことが、ウレタン結合を増やして積層シートの伸度を向上させる点で好ましい。
硬化性樹脂Cを主成分とするハードコート層には、前述した種々の紫外線吸収剤をはじめとする各種添加剤が含有されてもよい。積層二軸延伸ポリエステルフィルムとハードコート層とに分けて含有することで、積層二軸延伸ポリエステルフィルムの各層に分布する各種添加剤の含有濃度が減少するため、樹脂押出時に発生するブリードアウト現象を抑制することが出来るため好ましい。
ハードコート層に含有する紫外線吸収剤含む添加剤の含有濃度は、ハードコート層を構成する硬化性樹脂組成物全体に対して5wt%以下であることが好ましく、より好ましくは3wt%以下である。含有濃度については、各種添加剤の性能およびハードコート層の厚みを鑑みて、目的とするカット性能を達成するために適宜調節されるべきであるが、5wt%を超える場合、ハードコート層の厚みに関わらず、ハードコート層積層時の熱処理工程や、信頼性試験おいてヘイズが上昇するため好ましくない。
本発明における特性の測定方法、および効果の評価方法は次のとおりである。
フィルムの層構成は、ミクロトームを用いて断面を切り出したサンプルについて、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により求めた。すなわち、透過型電子顕微鏡H−7100FA型((株)日立製作所製)を用い、加速電圧75kVの条件でフィルムの断面を観察し、断面写真を撮影、層構成および各層厚みを測定した。尚、場合によっては、コントラストを高く得るために、RuO4やOsO4などを使用した染色技術を用いた。また、1枚の画像に取り込められるすべての層の中で最も厚みの薄い層(薄膜層)の厚みにあわせて、薄膜層厚みが50nm未満の場合は10万倍、薄膜層厚みが50nm以上500nm未満である場合は4万倍、500nm以上である場合は1万倍の拡大倍率にて観察を実施した。
(1)項で得られたTEM写真画像を、CanonScanD123Uを用いて画像サイズ720dpiで取り込んだ。画像をビットマップファイル(BMP)もしくは、圧縮画像ファイル(JPEG)でパーソナルコンピューターに保存し、次に、画像処理ソフト Image−Pro Plus ver.4(販売元 プラネトロン(株))を用いて、このファイルを開き、画像解析を行った。画像解析処理は、垂直シックプロファイルモードで、厚み方向位置と幅方向の2本のライン間で挟まれた領域の平均明るさとの関係を、数値データとして読み取った。表計算ソフト(Excel2000)を用いて、位置(nm)と明るさのデータに対してサンプリングステップ1でデータ採用した後に、3点移動平均の数値処理を施した。さらに、この得られた周期的に明るさが変化するデータを微分し、VBA(Visual Basic for Applications)プログラムにより、その微分曲線の極大値と極小値を読み込み、隣り合うこれらの間隔を1層の層厚みとして層厚みを算出した。この操作を写真毎に行い、全ての層の層厚みを算出した。
王子計測機器(株)製 位相差測定装置(KOBRA−21ADH)を用いた。サンプルをフィルム幅方向中央部から幅方向5.0cm×長手方向4.0cmで切り出し、フィルム幅方向が本測定装置にて定義されている角度0°となるように装置に設置し、入射角0°における波長590nmのリタデーションを測定した。
王子計測機器(株)製 位相差測定装置(KOBRA−21ADH)を用いた。サンプルをフィルム幅方向中央部から幅方向5.0cm×長手方向4.0cmで切り出し、フィルム幅方向が本測定装置にて定義されている角度0°となるように装置に設置し、フィルム幅方向に対して時計回りの傾きを+、反時計回りを−とし、その絶対値を測定結果とした。
日立ハイテクノロジーズ製の分光光度計U−4100を使用した。積分球を取り付け、酸化アルミニウム標準白色板(本体付属)の反射光線を利用して測定した透過光線を100%としたときの、380nmおよび400nmにおける相対光線透過率を測定し、各波長における光線透過率とした。条件として、スリットは2nm(可視)、ゲインは2、スキャン速度は600nm/min、サンプリングピッチは1nmに設定し、連続的に測定した。
日立ハイテクノロジーズ製の分光光度計U−4100を使用した。積分球を取り付け、酸化アルミニウム標準白色板(本体付属)の反射光線を100%としたときの、300〜380nm領域での相対光線反射率を測定し、該範囲での平均光線反射率を求めた。条件として、スリットは2nm(可視)、ゲインは2、スキャン速度を600nm/min、サンプリングピッチを1nmに設定し、連続的に測定した。
スガ試験機(株)製 ヘイズメーター(HGM−2DP)を用いた。サンプルをフィルム幅方向中央部から10cm×10cmで切り出し、旧JIS−K−7105に準じて測定を行うことで全光線透過率ならびにヘイズ値を測定した。フィルム幅方向に対して等間隔で3点測定し、その平均値を測定結果とした。
積層二軸延伸ポリエステルフィルムを1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−イソプロパノールに溶解し、室温下でゲル透過クロマトグラフィー法により低分子物質を抽出した。その後、乾燥し得られた粉末をクロロホルムに溶解し、溶液を回収して乾燥することで紫外線吸収剤粉末を得た。得られた粉末試料5mgをアルミニウム製パンおよびパンカバーを用いて封入し、セイコー電子工業(株)製”ロボットDSC−RDC220”、データ解析”ディスクセッションSSC/5200”を用いて示差熱量分析(DSC)を行った。窒素雰囲気下で25℃から300℃まで昇温速度20℃/分で昇温し、そのときの融解エンタルピー(J/g)を読み取った。
エスペック(株)製 恒温恒湿機(LHL−114)を用いた。前記ヘイズ測定と同様にしてサンプルを切り出し、スガ試験機(株)ヘイズメーター(HGM−2DP)でヘイズ値を測定後、サンプルを普通紙に挟んだ状態で恒温恒湿機に静置した。200時間静置後、同ヘイズメーターでヘイズ値を測定し、ヘイズ値の変化量をΔヘイズとして読み取った。
ハードコート層を構成する活性エネルギー線硬化型ウレタンアクリル樹脂(日本合成化学工業(株)製 紫光UV−1700B[屈折率:1.50〜1.51])を、メチルエチルケトン溶媒を用いて30%の濃度に希釈し、積層二軸延伸ポリエステルフィルムの最表面上にバーコーターを用いて均一に塗布した。次いで、ハードコート層の表面から13cmの高さにセットした120W/cm2の照射強度を有する集光型高圧水銀灯(アイグラフィックス(株)製 H04−L41)で、積算照射強度が180mJ/cm2となるように紫外線を照射し、硬化させ、積層二軸延伸ポリエステルフィルム上にハードコート層が積層された積層シートを得た。なお、紫外線の積算照射強度測定には工業用UVチェッカー(日本電池(株)製UVR−N1)を用いた。
PVA中にヨウ素を吸着・配向させて作成した偏光度99.9%の偏光板の一方の面にフィルムの幅方向中央部分から幅方向に420mm、長手方向に310mmのサイズで切り出したサンプルに貼り合わせてテストピースとした。作成したテストピースとフィルムを貼り付けていない偏光板とをクロスニコルの配置にて重ね合わせLED光源(トライテック製A3−101)上においた場合の視認性を確認した。
23℃の暗室にて、LED光源の液晶表示装置に白色画像を表示させ、画像表示装置上に幅方向に420mm、長手方向に310mmのサイズで切り出したフィルムを載せた。フィルムの面直方向を基準として仰角を40°〜80°で変化させながら目視することで、虹状の着色の有無を確認した。
◎:角度の変化に対して、色相変化はほとんど観られない。
○:色相が変化する範囲が、仰角40°〜50°の狭い範囲であり、実用上問題ない
△:色相の変化する範囲が、仰角40°〜60°の範囲であり、使用は出来る限り避けたい
×:角度変化に対して色相が顕著に変化し、実用面で全く適さない。
結晶性ポリエステルAとして、融点が254℃のポリエチレンテレフタレート(PET)を用いた。また熱可塑性樹脂Bとして融点を持たない非晶性樹脂であるシクロヘキサンジカルボン酸20mol%ならびにスピログリコール15mol%を共重合したポリエチレンテレフタレート(PE/SPG15T/CHDC20)を用いた。熱可塑性樹脂B内には、分子量が650g/molのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤をフィルム全体の重量比率で2.0wt%となるように添加し、混練した。準備した結晶性ポリエステルAと熱可塑性樹脂Bをそれぞれ、2台の単軸押出機に投入し、前者は280℃、後者は260℃で溶融させて、混練した。次いで、それぞれFSSタイプのリーフディスクフィルタを5枚介した後、ギアポンプにて計量しながら、スリット数255個のフィードブロックにて合流させて、積層比1.0の厚さ方向に交互に255層積層された積層体とした。ここでは、スリット長さは階段状になるように設計し、間隔は全て一定とした。得られた積層体は、結晶性ポリエステルAからなる層(A層)が128層、熱可塑性樹脂Bからなる層(B層)が127層であり、厚さ方向に交互に積層されていた。最表層の厚みは40nmであった。該積層体をTダイに供給し、シート状に成形した後、ワイヤーで8kVの静電印可電圧をかけながら、表面温度が25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化し、未延伸の積層キャストフィルムを得た。
実施例1において、紫外線吸収剤を添加せずに同様の手法でフィルムを作成した。無色透明の、積層構造による紫外線反射の効果が発揮された積層二軸延伸ポリエステルフィルムを得たが、紫外線吸収剤を添加していないため、波長380nmでの紫外線カット不足が顕著であり、偏光子を保護する目的での光学用途として適さないフィルムであった。
実施例1において、50nm以下の層厚みを有する層数が第2層から数えて連続して5層のみとした以外は、実施例1と同様にして積層二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られた積層二軸延伸ポリエステルフィルムは表層近傍で50nmを超える層厚みを有するため、光干渉に伴うリップルが発現し、紫外線領域において光線透過率の抜けが顕著に確認された。特に、紫外線の透過は偏光子や液晶分子の劣化を引き起こすため、今回得られたフィルムは光学用途としては適さないものであった。
実施例1において、最表層の厚みが80nmとなる設計を施したスリット数255個のフィードブロックで異なる2種類の樹脂を積層し、積層比1.0の交互に255層積層された積層体とした以外は、実施例1と同様にして積層二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムは、最表層が厚いことによるリップルの発生により積層構造の光干渉反射に伴う干渉縞が見られた。
実施例1において、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を、結晶性ポリエステルAのみに2wt%添加した以外は、同様の手法で積層二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。最表層を含む結晶性ポリエステルAからなる層に紫外線吸収剤を添加したため、製膜時に口金付近からの紫外線吸収剤の揮散が確認された。積層二軸延伸ポリエステルフィルムの基本性能は、実施例1と同等であり、光学用途として利用可能なものであった。
実施例1において、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を、結晶性ポリエステルAに対して1wt%共重合、熱可塑性樹脂Bに対して1wt%添加し、異なる2台の押出機に投入して製膜した以外は、実施例1と同様の手法で積層二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。実施例2と異なり、樹脂に紫外線吸収剤を共重合したことで、口金付近からの紫外線吸収剤の揮散が抑制される結果となった。積層二軸延伸ポリエステルフィルムの性能は実施例1と同等であった。
実施例1において、スリット数491個のフィードブロックで樹脂を積層し、積層比1.3の厚さ方向に交互に491層積層された積層体とした。また、最表層の層厚みが5μmとなるように設計した。得られた積層二軸延伸ポリエステルフィルムは、結晶性ポリエステルA層が246層、熱可塑性樹脂B層が245層であり、厚さ方向に交互に積層されていることを透過型電子顕微鏡観察により確認した。その他、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の含有濃度を0.8wt%とした以外は、紫外線吸収剤の添加処方やフィルムの延伸条件は実施例1に記載の手法で行った。得られた積層二軸延伸ポリエステルフィルムは、表1に記載の物性を示し、最表層である結晶性ポリエステルA層が厚く存在するためにRe(0°)の値は少し高かったものの、リップルなく透過率も満足していた。また、最表層の結晶性ポリエステルからなる層(A層)が5μmの厚みを有しているため、熱可塑性樹脂Bに添加したベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の揮散は確認されず、85℃85%RHの信頼性試験におけるΔヘイズは実施例1と比較して、とりわけ低下する結果となった。
(実施例5)
実施例2において、紫外線吸収剤として、分子量が350g/molのベンゾオキサジン系の紫外線吸収剤を0.7wt%添加した以外は、実施例2と同様にしてフィルムを得た。融解エンタルピーは、これまでのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤と比較しても、117J/gと高く、製膜時の昇華性が懸念されたものの、最表層が5μmと厚いために紫外線吸収剤の揮散は抑制され、製膜時の装置の汚染などは確認されなかった。フィルムの物性も、Re(0°)の値や配向角が高いこと以外は概ね目標を満足するものであり、光学部材として利用することができるものであった。
実施例1において、紫外線吸収剤として、分子量が350g/molのベンゾオキサジン系紫外線吸収剤を1.8wt%添加した以外は、実施例1と同様の製膜手法で積層二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られた積層二軸延伸ポリエステルフィルムの物性は表1に記載の通りであるが、最表層の層厚みが40nmと薄いため、口金より吐出した際に昇華した紫外線吸収剤が製膜装置を汚染する結果となったが、得られた積層二軸延伸ポリエステルフィルムは、物性や光学特性ともに目標値を満たした。
実施例1において、紫外線吸収剤として、融解エンタルピーが40J/gを示す、分子量が700g/molのトリアジン系紫外線吸収剤を0.8wt%となるように添加した以外は、実施例1と同様にして積層二軸延伸ポリエステルフィルムを作成した。該トリアジン系紫外線吸収剤は、口金からの揮散もなく、85℃85%RH200時間の信頼性試験においても表面に析出しない結果となった。吸収波長がやや紫外線領域の長波長側まで及んでいるものの、フィルムの基本性能は目標を満足しており、これまでの実施例に用いた紫外線吸収剤の中で最も好適なものであった。
実施例7において、トリアジン系紫外線吸収剤を1.5wt%添加した以外は、実施例7と同様の手法でフィルムを得た。紫外線このトリアジン系紫外線吸収剤は長波長側の紫外線吸収剤を吸収吸収するものであることから、波長400nmの可視光線領域での透過率が73%と低い値を示した。フィルム自体が黄色色相を呈しており、光学用途として利用できないものであった。
実施例1において、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の含有濃度を1.1wt%とし、さらに実施例7に用いたトリアジン系紫外線吸収剤を0.4wt%併用して熱可塑性樹脂Bに添加した以外は、実施例1と同様の手法で積層二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。トリアジン系紫外線吸収剤の併用により、実施例1で確認された口金からの揮散および信頼性試験におけるΔヘイズ上昇が抑制された。
実施例8において、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を結晶性ポリエステルAに共重合し、トリアジン系紫外線吸収剤のみを熱可塑性樹脂Bに添加した以外は、同様の手法で積層二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。実施例3と同じく、共重合による揮散抑制の効果、さらに揮散・析出しにくいトリアジン系紫外線吸収剤の利用により、製膜汚染は全くなかった。得られたフィルムの特性は、実施例8と同等であった。
実施例8において、紫外線吸収剤以外に、熱可塑性樹脂B内にベンゾトリアゾール系の蛍光増白剤を0.2wt%添加した以外は、同様の手法で積層二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。蛍光増白剤の効果により、波長400nmにおける光線透過率は向上し、クリア感が上昇した。その他の基本性能は、実施例8と同等であった。
実施例10において、結晶性ポリエステルAとしてイソフタル酸を5mol%共重合したポリエチレンテレフタレート樹脂を、熱可塑性樹脂Bとしてイソフタル酸を25%共重合したポリエチレンテレフタレート樹脂を用いた。さらに、各樹脂の押出機からの吐出量を変更して積層比を0.7、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤およびトリアジン系紫外線吸収剤の含有濃度をそれぞれ、1.0wt%、0.3wt%と減少させた以外は、実施例10と同様の手法でフィルムを得た。イソフタル酸を共重合して積層比を下げたことで、リタデーションRe(0°)が低減しただけでなく、斜め方向から視認した際の虹斑の低減にも効果を発揮した。
実施例8において、結晶性ポリエステルとしてスピログリコール(SPG)を5mol%共重合したポリエチレンテレフタレート樹脂を、熱可塑性樹脂BとしてSPGを35mol%共重合したポリエチレンテレフタレート樹脂を用いた以外は、実施例8と同様にして積層二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性は実施例8と殆ど変化は無かったが、SPGを両層に添加したことで、85℃85%RH条件でフィルムを処理した際の力学特性変化が強く抑制されており、ディスプレイ用途に適したフィルムであった。
実施例8の積層二軸延伸ポリエステルフィルムを作成後、フィルムの片面にハードコート層を積層した。ハードコート層を積層したことで、分光スペクトルの光干渉によるリップルが低減し、フィルムの透明感が増した。また、架橋性の強いハードコートを積層したため、85℃85%RHの信頼性試験後のΔヘイズは、これまでの実施例の中で最も抑制される結果となった。
実施例8において、結晶性ポリエステルAとして、ポリエチレンナフタレート(PEN)を20mol%添加したポリエチレンテレフタレート樹脂を用いた。また、結晶性ポリエステルAの押出し温度を240℃とし、長手方向への延伸する際のロール温度を125℃、テンター内での熱処理温度を180℃に設定した以外は、同様の逐次二軸延伸で積層二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。また、積層二軸延伸ポリエステルフィルムの厚みが8μm、積層比が0.7となるように押出条件を調整した。8μmと薄膜であったものの、ハンドリング性は問題なかった。また、ポリエチレンナフタレート樹脂本来の吸収があるため、波長380nmにおける光線透過率は、薄膜であっても10%を示しており、目標値を満足した。
結晶性ポリエステルAおよび熱可塑性樹脂Bとして、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂を用いた。2台の押出機の温度を290℃とし、実施例14と同じ条件で延伸後、5μmの単膜の二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。紫外線吸収剤として、実施例8と同様に、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤およびトリアジン系紫外線吸収剤の併用処方を用いた。PENの吸収が強く、波長400nmにおける光線透過率は73%と目標値を満足しなかった。また、フィルム自体が脆弱であり、巻き取り性やハンドリング性に問題が生じた。さらに、リタデーションRe(0°)も200nmを越え、斜め方向からの視認による虹斑が確認されたため、光学用途としては適さないものとなった。
実施例14において、厚みが18μmとなるように設計した以外は、同様の方法で積層二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。ポリエチレンナフタレートの樹脂由来の吸収のため、波長400nmにおける光線透過率は71%と目標値より低い値を示した。また、リタデーションRe(0°)は362nmと高く、比較例5と同様に斜め方向からの視認において虹斑が強く確認され、光学用途として好ましくないものであった。
実施例14において、熱可塑性樹脂BとしてSPGを35mol%添加したポリエチレンテレフタレート樹脂を用いた以外は、同様の手法で積層二軸延伸ポリエチレンテレフタレートを得た。その後、積層二軸延伸ポリエステルフィルムの両面にハードコート層を1μmずつ積層し、積層シートを得た。ハードコートには、分子量が630g/molのトリアジン系紫外線吸収剤を2wt%添加し、光線吸収によるポリエチレンナフタレート成分の劣化を抑制した。両面にハードコート層を積層したことで、揮散や表面析出、リップル抑制に効果が発揮され、外観も良好であった。
Claims (13)
- 結晶性ポリエステルAからなる層(A層)と前記と異なる熱可塑性樹脂Bからなる層(B層)を交互に50層以上積層し、最表層がA層であり、該層の層厚みが5μm以上あるいは50nm以下であり、かつ50nm以下の層厚みを有する層数が第2層から数えて連続して10層以上あり、A層またはB層、あるいはA層とB層の両層に紫外線吸収剤を含有した積層二軸延伸ポリエステルフィルムであって、波長400nmにおける光線透過率T400が80%以上であることを特徴とする積層二軸延伸ポリエステルフィルム。
- 紫外線吸収剤として、分子量が300g/mol以上の、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系、あるいはトリアジン系紫外線吸収剤を1種類以上含有する、請求項1に記載の積層二軸延伸ポリエステルフィルム。
- 紫外線吸収剤として、融解エンタルピーが50J/g以下のトリアジン系紫外線吸収剤を含有する請求項1または2に記載の積層二軸延伸ポリエステルフィルム。
- 紫外線吸収剤として、2種類以上の紫外線吸収剤を含有する、請求項1〜3のいずれかに記載の積層二軸延伸ポリエステルフィルム。
- A層、B層、あるいはA層とB層の両層に蛍光増白剤を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の積層二軸延伸ポリエステルフィルム。
- 波長380nmにおける光線透過率T380が20%以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の積層二軸延伸ポリエステルフィルム。
- 波長300〜380nmにおける平均光線反射率が20%以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の積層二軸延伸ポリエステルフィルム。
- 前記積層フィルムの幅が400mm以上であり、かつリタデーションRe(0°)が150nm以下であって、配向角が15°以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の積層二軸延伸ポリエステルフィルム。
- 85℃85%RHの条件で200時間処理した前後のヘイズ変化量(Δヘイズ)が1.0以下である、請求項1〜8のいずれかに記載の積層二軸延伸ポリエステルフィルム。
- 結晶性ポリエステルAが、ポリエチレンナフタレートを5〜40mol%共重合したポリエチレンテレフタレートおよび/またはポリブチレンテレフタレートを主成分とする、請求項1〜9のいずれかに記載の積層二軸延伸ポリエステルフィルム。
- フィルム厚みが5μm以上15μm以下であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の積層二軸延伸ポリエステルフィルム。
- 光学用途として用いられる、請求項1〜11のいずれかに記載の積層二軸延伸ポリエステルフィルム。
- 請求項1〜12のいずれかに記載の積層二軸延伸ポリエステルフィルムの最表面に、硬化性樹脂Cを主成分とするハードコート層(C層)を設けてなる、積層シート。
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