JP2016210666A - カーボンシートの保管方法、複合シートの保管方法、カーボンシート、複合シート、及び巻回体 - Google Patents

カーボンシートの保管方法、複合シートの保管方法、カーボンシート、複合シート、及び巻回体 Download PDF

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Abstract

【課題】使用時のハンドリング性及び保管時の安定性の高いカーボンシートを得ることを目的とする。
【解決手段】本発明のカーボンシートの保管方法は、平均直径100nm以上の第1のカーボンナノチューブと平均直径30nm以下の第2のカーボンナノチューブとを含み、前記第1のカーボンナノチューブの表面に前記第2のカーボンナノチューブが付着し、前記第2のカーボンナノチューブが、複数の前記第1のカーボンナノチューブ間に跨った構造を有するカーボンシートに溶媒を含浸させる。
【選択図】図1

Description

本発明は、カーボンシートの保管方法、複合シートの保管方法、カーボンシート、複合シート、及び巻回体に関する。
炭素材料は、電気伝導性、熱伝導性、耐食性、耐熱性、黒色着色性および薬品安定性など多くの面ですぐれた性能を有する。そのため、様々な用途に使用されている。例えば、帯電防止材、電磁波シールド材、電池部材、ガス拡散体等に用いられている。
炭素材料はシート上に加工された状態で使用されることが多い。例えば、特許文献1及び特許文献2には、カーボンファイバー(PAN系炭素繊維)を含むカーボンフェルト(不織布)やカーボンフリース等が記載されている。
特許文献3には、カーボンナノチューブを塗膜として塗工した複合シートが記載されている。この他にも、比較的硬い樹脂等の上にカーボン膜を形成したシート等も知られている。
特許第3560181号公報 国際公開第2014/033238号 特許第5390001号公報
しかしながら、使用時のハンドリング性及び保管時の安定性の高いカーボンシートを得ることができなかった。
例えば、特許文献1及び2に記載のカーボンフェルトやカーボンフリース等は、圧力に対する体積変化率が非常に大きい。そのため、強度がなく、引張応力等により破損することがある。
特許文献3に記載のカーボンナノチューブからなる膜は、カーボンフェルトやカーボンフリース以上に強度が無いため、加工時や保管時の外力により破損しやすい。複合シート化しても、折り曲げ等の外力に対し、カーボンナノチューブを含む膜が十分追従できず、ひび等の破損が生じる。また特許文献3に記載のカーボンナノチューブからなる膜は、各繊維径がカーボンファイバー等と比較して非常に細いため、比較的高い導電性を有する。しかしながら、近年の市場からの導電性等に対する高い要望にまでは十分対応できているとは言えない。
これに対し、強度が高いカーボンシート等も知られている。しかしながら、これらのカーボンシートは硬い。そのため、折り曲げ時等にカーボン膜にひびが入る等の破損が生じる。
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、使用時のハンドリング性及び保管時の安定性の高いカーボンシートを得ることを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討の結果、所定のカーボンシートを溶媒で含浸させると、使用時のハンドリング性及び保管時の安定性の高いカーボンシートが得られることを見出し、発明を完成させた。
すなわち、本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
(1)本発明の一態様に係るカーボンシートの保管方法は、平均直径100nm以上の第1のカーボンナノチューブと平均直径30nm以下の第2のカーボンナノチューブとを含み、前記第1のカーボンナノチューブの表面に前記第2のカーボンナノチューブが付着し、前記第2のカーボンナノチューブが、複数の前記第1のカーボンナノチューブ間に跨った構造を有するカーボンシートに溶媒を含浸させる。
(2)上記(1)に記載のカーボンシートの保管方法において、溶媒を含浸するカーボンシートの保液率が15%以上であってもよい。
(3)上記(1)または(2)のいずれかに記載のカーボンシートの保管方法において、溶媒が水であってもよい。
(4)本発明の一態様に係る複合シートの保管方法は、平均直径100nm以上の第1のカーボンナノチューブと平均直径30nm以下の第2のカーボンナノチューブとを含み、前記第1のカーボンナノチューブの表面に前記第2のカーボンナノチューブが付着し、前記第2のカーボンナノチューブが、複数の前記第1のカーボンナノチューブ間に跨った構造を有するカーボンシートに溶媒を含浸させる工程と、前記含浸させたカーボンシートを基材に密着させ複合シートとする工程を有する。
(5)上記(4)に記載の複合シートの保管方法において、前記溶媒を含浸させる工程における前記カーボンシートの保液率が15%以上であってもよい。
(6)上記(4)または(5)のいずれかに記載の複合シートの保管方法において、前記基材が、通液性を有してもよい。
(7)上記(4)〜(6)のいずれか一項に記載の複合シートの保管方法において、前記カーボンシートの保管段階における保液率が15%以上または5%以下であってもよい。
(8)本発明の一態様に係る複合シートの保管方法は、前記基材に密着させた複合シートを巻き取る工程をさらに有する。
(9)本発明の一態様に係るカーボンシートは、上記(1)〜(3)のいずれか一項に記載のカーボンシートの保管方法によって保管されたカーボンシート。
(10)本発明の一態様に係る複合シートは、上記(9)に記載のカーボンシートと、前記カーボンシートの少なくともいずれか一面に密着した基材と、を備えた複合シート。
(11)上記(10)に記載の複合シートは、前記基材が通液性を有してもよい。
(12)本発明の一態様に係る巻回体は、上記(10)または(11)のいずれかに記載の複合シートを巻き取ったものである。
使用時のハンドリング性及び保管時の安定性の高いカーボンシートを得ることができる。また、カーボンシートを破損することなく安定的に保管することができる。
本発明の一態様に係るカーボンシートの透過電子顕微鏡写真を示す。 本発明の一態様に係るカーボンシートの斜視模式図である。 本発明の一態様に係る複合シートの斜視模式図である。 本発明の一態様に係る巻回体の模式図である。 カーボンシートの製造方法を説明するための模式図である。 乾燥状態と含浸状態のカーボンシートの荷重に対する圧縮変位を測定した結果を示す。
以下、本発明を適用したカーボンシート、複合シート、巻回体及びこれらの保管方法について詳細に説明する。
以下の説明において例示される材質、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
(カーボンシート、複合シート、巻回体)
図1に本発明の一態様に係るカーボンシートの透過電子顕微鏡写真を示す。図2は、本発明の一態様に係るカーボンシートの斜視模式図である。本発明のカーボンシート10は、平均直径100nm以上の第1のカーボンナノチューブ1と平均直径30nm以下の第2のカーボンナノチューブ2とを含み、第1のカーボンナノチューブ1の表面に第2のカーボンナノチューブ2が付着することで、第2のカーボンナノチューブ2が複数の第1のカーボンナノチューブ1間に跨った構造を有する。このカーボンシートは、電池、所定の物質(触媒、タンパク質、二酸化炭素等)の担持体、電磁波シールド、電気化学用センサー、バイオセンサー等の種々のデバイスに用いることができる。電池としては、例えば、燃料電池(例えば、マグネシウム燃料電池、微生物燃料電池等、固体高分子型燃料電池、直接酸化型燃料電池、グルコース燃料電池、メタノール型燃料電池)、二次電池(例えば、マグネシウム電池、リチウム電池、金属空気電池、アルカリ金属−硫黄系二次電池等)、蓄電池などに用いることができる。また電池の中でも、電極、ガス拡散層等の種々の用途が考えられる。
第2のカーボンナノチューブ2が、複数の第1のカーボンナノチューブ1間に跨った構造となることにより、カーボンシート10がその成形過程でバラバラになることなく形を維持することができる。また第2のカーボンナノチューブ2が、第1のカーボンナノチューブ1に跨っていることで、導電性の主となる第1のカーボンナノチューブ1間の空隙を、第2のカーボンナノチューブ2が埋めることができる。すなわち、カーボンシート10の導電性を高めることができる。したがって、例えばこのカーボンシートを用いた電池は、高い充電や放電の性能を得ることができる。またカーボンシート10を電磁波のシールド材や帯電防止材として用いると、電磁波の高いシールド特性や高い帯電防止性能を得ることができる。
第2のカーボンナノチューブ2は、第1のカーボンナノチューブ1に絡まった構造であることがより好ましい。第1のカーボンナノチューブ1に第2のカーボンナノチューブ2が絡まることにより、カーボンシート10はその形を維持しやすくなるとともに、カーボンシート10の導電性が更に向上する。
ここで、「跨った構造」とは、例えば、透過電子顕微鏡でカーボンシート10を観察した際に、第1のカーボンナノチューブ1に跨った第2のカーボンナノチューブ2が確認できればよい。例えば任意の100本の第2のカーボンナノチューブ2を観察したとき、好ましくは10本以上、より好ましくはその50本以上の第2のカーボンナノチューブ2が複数の第1のカーボンナノチューブ1間を跨った構造の確認ができればよい。複数カ所を観察して、第2のカーボンナノチューブ2を100本観察するのでも構わない。例えば、10カ所について各々10本の第2のカーボンナノチューブ2を観察して、合計100本の第2のカーボンナノチューブを観察することにしてもよい。
第1のカーボンナノチューブ1は、その平均直径が100nm以上であり、好ましくは100〜1000nmであり、より好ましくは100〜300nmである。第2のカーボンナノチューブ2は、その平均直径が30nm以下であり、好ましくは1〜30nmであり、より好ましくは5〜20nmである。第1のカーボンナノチューブ1及び第2のカーボンナノチューブ2の繊維長は、いずれも1〜100μmであることが好ましい。
第1のカーボンナノチューブ1および第2のカーボンナノチューブ2の大きさが上述の範囲であると、カーボンシート10が高い強度および高い導電性を維持できる構造となる。これは、第1のカーボンナノチューブ1が幹となり、第2のカーボンナノチューブ2が、複数の第1のカーボンナノチューブ1間に枝状に懸架されるためである。例えば、第1のカーボンナノチューブ1の平均直径が100nm以下であると、幹が不安定となりカーボンシート10の構造に割れが生じる等の問題が生じ、十分な強度を保つことが難しくなる。一方で、第2のカーボンナノチューブ2の平均直径が30nm以上であると、枝が剛直になりすぎ撓みにくくなるため、第2のカーボンナノチューブ2が十分に第1のカーボンナノチューブ1に絡まることができず、導電性が悪くなる。
第1のカーボンナノチューブ1および第2のカーボンナノチューブ2の平均直径は、電子顕微鏡にて100本以上の第1のカーボンナノチューブ1および第2のカーボンナノチューブ2の繊維の直径をそれぞれ測定し、その算術平均値としてそれぞれ求めることができる。
第2のカーボンナノチューブ2は、100質量部の第1のカーボンナノチューブ1に対し、好ましくは1〜20質量部、より好ましくは4〜17質量部、さらに好ましくは8〜14質量部含まれる。第2のカーボンナノチューブ2がこの範囲で含まれれば、このカーボンシート10の導電性が向上する。これは、第2のカーボンナノチューブ2がこの範囲で含まれていることで、第1のカーボンナノチューブ1が導電の主として機能し、さらに第2のカーボンナノチューブ2が、それぞれの第1のカーボンナノチューブ1間を電気的に繋ぎ、伝導を効率的にサポートするためと考えられる。
カーボンシート10は、水溶性導電性高分子を含むことが好ましい。水溶性高分子は、カーボンナノチューブ(第1のカーボンナノチューブ1及び第2のカーボンナノチューブ2)の表面に吸着し、元来撥水性のカーボンナノチューブの表面を親水化する。カーボンナノチューブの表面が親水化することで、カーボンシート10が溶媒を含浸しやすくなる。親水化は、カーボン材料の表面にOH基、COOH基等を導入しても実現することができる。カーボンシート10の内部まで十分に親水化するという点からは、水溶性導電性高分子をカーボンシート10に含ませることが特に好ましい。カーボンシート10の親水性が高いと、カーボンシート10を溶液中で用いる電極等として用いた際に、プロトンの移動性が高くなる、導電性を高くなる、電解液の保持が容易になる等の利点がある。導電性が高まるのは、カーボンナノチューブで形成される電極の細部にまで電解液が浸透し、効率よく電極反応を起こすためである。またカーボンシート10の親水性が高いと、カーボンシート10を空気電池等のガス拡散層として用いた際に、カーボンシート10を介して外部から供給されるガスを電解質へ溶解させることが容易になる。またカーボンシート10の親水性が高いと、カーボンシート10を触媒担体として用いた際に、触媒を効率よく分散させることができる。
水溶性導電性高分子としては、スルホ基を有する導電性高分子が好ましく、ポリイソチアナフテンスルホン酸がより好ましい。水溶性導電性高分子がスルホ基を有すると、自己ドープ型導電性高分子となり安定した導電性を発現することが可能である。またスルホ基は親水性基でもあるため、溶液中で用いる電極として使用する際に、電解質との親和性が高いという利点を有する。中でもイソチアナフテン骨格はベンゼン環を有するためπ電子を持ち、電極を構成するカーボンナノチューブの骨格のπ電子との親和性が高いため、ポリイソチアナフテンスルホン酸がより好ましい。
カーボンシート10は、さらにカーボン短繊維を含むことが好ましい。カーボン短繊維はカーボンシート10に機械的強度を与え、ひび割れ等を生じにくくする。
カーボンシート10は溶媒を含浸している。含浸させる溶媒は、特に問わない。所定の保存状態が得られれば、極性溶媒でも非極性溶媒でもよく、例えば、水、有機溶媒、電解液等を用いることができる。より具体的には、例えば、有機溶媒として、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、エチルイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;エチレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル等のエチレングリコール類;プロピレングリコール、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル等のプロピレングリコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;N−メチルピロリドン、 N−エチルピロリドン等のピロリドン類;ジメチルスルオキシド、γ−ブチロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチル、β−メトキシイソ酪酸メチル、α−ヒドロキシイソ酪酸メチル等のヒドロキシエステル類等;アニリン、N−メチルアニリン等のアニリン類が挙げられる。電解液としてはイオンを含む水溶液や有機溶媒であり、イオンとしては、例えば、リチウムイオン、バナジウムイオン、鉄イオン、マグネシウムイオン、亜鉛イオンを挙げることができる。
カーボンシート10を保管する際に含浸させる場合は、管理の容易さから溶媒として水を用いることが好ましい。カーボンシートが変質するのを防いだり、カーボンシートの性能を向上させたりする目的で、添加物を加えても良い。例えば、藻や細菌の発生を抑制するために、水に微量の酸やアルコール等の添加物を加えてもよい。この溶媒は、後述する分散液の溶媒と同じものを用いても良い。
カーボンシート10の保液率は15%以上であり、45%以上であることが好ましく、75%以上であることがさらに好ましい。保液率は高ければ高い程好ましいが、原理的に100%が最大となる。カーボンシートの形状を維持するために、保液率は95%以下が好ましい。カーボンシートは溶媒を含浸すると軟らかくなる。そのため、巻取等の作業を行ってもひび等の破損が生じることがない。特に当該範囲まで含浸させると、カーボンシート10のハンドリング性を高くすることができる。
ここで保液率について説明する。保液率とは、カーボンシート内に形成された空隙が溶媒によって置換された置換率を意味する。この保液率は、乾燥状態のカーボンシートの質量に対して、含浸させる溶媒の質量から算出することができる。ここで、乾燥状態とは、カーボンシートを十分乾燥させた状態を意味し、例えばカーボンシートを100℃で1時間程度加熱した後のカーボンシートを意味する。
保液率と含浸させる溶媒の質量との関係について説明する。以下、含浸させる溶媒の質量をg、空隙の体積をV、溶媒の比重をx、置換率をy、空隙の空孔率をz、乾燥状態のカーボンシートの質量をg、カーボンナノチューブ部分の体積をVとする。カーボンナノチューブ部分の比重はkとする。ここで、カーボンナノチューブ部分の比重とは、第1及び第2のカーボンナノチューブの平均比重を意味する。カーボンナノチューブ部分の比重kは、例えば気体(ヘリウムガス等)を使用する乾式自動密度計で測定することができる。空隙の体積Vは、例えば、含浸させる前のカーボンシートの全体の体積(空隙とカーボンナノチューブ分を含む)から、該カーボンシートの質量にカーボンナノチューブ部分の比重kを除して得られるカーボンナノチューブ部分の体積を、差し引いた値である。
加えられる溶媒は、空隙の体積のy%を置換するため、以下の関係が成り立つ。
=V×x×y ・・・(1)
これに対してカーボンシートの質量は以下となる。
=k×V ・・・(2)
一方で、各部分の体積から以下の関係も成り立つ。
z=V/(V+V) ・・・(3)
これらの(1)〜(3)の式を代入すると、以下の関係式が成り立つ。
/g=xyz/k(1−z) ・・・(4)
例えば、空孔率(z)が0.8、含浸させる溶媒を水(本発明では25℃における比重を1.0とする)、カーボンナノチューブ部分の比重(k)を2.0とすると、式(4)は、y=g/2gとなる。すなわち、乾燥状態のカーボンシートの質量と同質量の水を加えると、置換率が50%となる。前述の好ましい保存率は、カーボンナノチューブ部分の比重(k)を2.0として、25℃で算出した場合である。
カーボンシート10の厚みは、使用態様に応じて適宜設計することができる。例えば、電極基材として用いる場合は、0.01〜5.0mmであることが好ましく、0.1〜1.0mmであることが好ましい。厚みが0.01mm以上であれば、十分に高いハンドリング性を有する。厚みが5.0mm以下であれば、通液性や通気性が良く、電極としての性能が良い。
溶媒を含浸させる前のカーボンシート10の嵩密度は、0.05〜0.8g/cmであることが好ましく、0.1〜0.5g/cmであることがより好ましい。嵩密度が0.05g/cm以上であれば、カーボンシートの形状維持が容易である。0.8g/cm以下であれば、高い含水性を有し、含水した際に十分な柔らかさを得ることができる。また電池等に用いる際の通液性や通気性を十分に確保することもできる。
図3に示すように、カーボンシート10は、そのいずれかの面に基材11を有して複合シート20化されていてもよい。カーボンシート10のいずれかの面に基材11を設けることで、強度の高いシートを得ることができる。この基材11は、合紙としても機能する。カーボンシート10同士を接触させ、圧力を加えるとカーボンシート10同士が接合する。例えば、カーボンシート10を巻き取って保管する場合、その中央部には強い圧力が加わる。そのため、カーボンシート10単体を巻き取ったものは、互いに接合することがある。カーボンシート10のいずれかの面に基材11を有する複合シート20では、この問題を考慮することなく巻き取ることができる。
基材11は、用いる用途によって種々選択することができる。例えば、カーボンシートの保管のみを考慮する場合、基材種は特に問わない。例えば、プラスチックのフィルム、紙等適宜選択することができる。
後述する製造工程のことまで考慮すると、基材は溶媒を透過できるものであることが好ましい。カーボンシートは、基材上に塗工したカーボンナノチューブ分散液から、溶媒を基材側から除去して作製される。基材11が溶媒を透過できることで、カーボンナノチューブの分散液から、溶媒を容易に除去することができる。そのため、この製造時に用いた基材をこの複合シートの基材として用いれば、別途新たな基材を準備する必要がない。すなわち、複合シート20に用いられる基材11は、製造段階で用いた基材11と同一であることが好ましいが、必ずしも同一である必要はない。
基材は、カーボンシート10の使用態様まで考慮して、選択してもよい。より薄く、より軽量のものが求められる場合は、紙や樹脂フィルム等を用いることが好ましい。非導電性が求められる場合は、ガラス繊維で構成される不織布(ガラスペーパー)、アラミド、ポリエステル、ナイロン、ビニロン、ポリオレフィン、レーヨン等の合成樹脂繊維で構成される不織布を用いることが好ましい。この他、耐酸性が求められる場合は、フッ素樹脂、フッ素系エラストマー、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド等を用いた不織布等がより好ましい。耐酸化性が求められる場合は、フッ素樹脂、フッ素系エラストマー、ポリエチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド等を用いた不織布等がより好ましい。耐熱性が求められる場合は、フッ素樹脂、フッ素系エラストマー、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド等を用いた不織布、難燃フィルム、難燃紙等が好ましい。耐アルカリ性が求められる場合は、アラミドの樹脂繊維で構成される不織布が好ましい。例えば、電池に用いる場合は、耐酸性、耐酸化性等が求められ、電磁波抑制シート、発熱フィルムに用いられる場合は、耐熱性等が特に求められる。
基材の形状は、カーボンシート10が追従できればよく、平坦でも良いし、凹凸、蛇腹、針状の形状をしていても良い。
溶媒含浸後のカーボンシート10は、基材11に対して表面張力により密着する。カーボンシート10は第1及び第2のカーボンナノチューブによって形成された隙間を有するため、表面張力だけでも十分基材に対して追従する。そのため、カーボンシート10と基材11の間には、特に接着剤等は必要がない。またカーボンシート10は、表面張力により基材に密着しているため、カーボンシート10を乾燥させることで、容易に基材11から剥離することもできる。
複合シート20を巻き取ると、図4に示すような巻回体30を得ることができる。この巻回体30を得るためには、カーボンシート10が変形により破損しない必要がある。カーボンシート10は、乾燥した状態では比較的硬度を有し、ロール状に巻き取る等の加工を行うとひび等が入る。そのため、乾燥させたカーボンシートを巻き取った巻回体から巻き出されたカーボンシート10は、使用時のその性能を十分発揮することができない。これに対し、溶媒を含浸させたカーボンシート10は、乾燥させたカーボンシートの状態と比較して柔らかい。そのため、ロール状に巻き取る等の加工を行っても、その変形に十分追従することができる。したがって、この巻回体30から巻き出されたカーボンシート10は十分な性能を示すことができる。そのため、カーボンシート10を使用する際以外は、巻回体30の状態としておくことで、収納スペースをとらず、効率的に保管することができる。
本発明の一態様に係るカーボンシート10は、第1及び第2のカーボンナノチューブを有し、これらが所定の関係を有している。そのため、このカーボンシート10は溶媒を含浸させることで、乾燥状態と比較して柔らかくなり、変形等にも追従することができる。したがって、容易にハンドリングすることができる。また巻回体30等の形状で、収納スペースをとらず、効率的に保管することができる。
この電池用部材10は、例えば、燃料電池(例えば、マグネシウム燃料電池、微生物燃料電池等、固体高分子型燃料電池、直接酸化型燃料電池、グルコース燃料電池、メタノール型燃料電池)、二次電池(例えば、マグネシウム電池、リチウム電池、金属空気電池、アルカリ金属−硫黄系二次電池等)、蓄電池などに用いることができる。また電池の中でも、電極、ガス拡散層等の種々の用途が考えられる。
(カーボンシートの製造方法)
カーボンシートの製造方法は、カーボンナノチューブの分散液を作製する工程と、作製した分散液をシート状に加工する工程を有する。
カーボンナノチューブの分散液を作製する工程について説明する。平均直径100nm以上の第1のカーボンナノチューブと平均直径30nm以下の第2のカーボンナノチューブとを用意する。これらは、公知の方法で製造することができる。
得られた第1のカーボンナノチューブと第2のカーボンナノチューブを溶媒中に分散させる。分散させる溶媒は、特に問わない。極性溶媒でも非極性溶媒でもよく、例えば、水、有機溶媒、電解液等を用いることができる。この中でも特に、溶媒は、導電性高分子水溶液であることが好ましい。導電性高分子水溶液を用いることにより、カーボンナノチューブが後述する湿式ジェットミル等による混合の際に、分散しやすくなる。詳細は不明であるが、得られたカーボンシート表面に当該導電性高分子が残留するためか、本発明の材料で構成されるカーボンシートはその表面が親水性になりやすい。
導電性高分子水溶液中の導電性高分子としては、スルホ基を有する導電性高分子が好ましく、更に繰り返し単位にチオフェン骨格を含む導電性高分子が好ましく、更にイソチアナフテンスルホン酸を含む導電性高分子がより好ましく、ポリイソチアナフテンスルホン酸がより好ましい。
加える導電性高分子の量は、以下を考慮して添加すれば良い。すなわち、導電性高分子は、カーボンナノチューブを親水化するためと分散性を向上させるために十分な量を添加すれば良い。
これは予備実験により確認でき、例えば、親水化に必要な量は、導電性高分子水溶液中にカーボンナノチューブを投入しても、導電性高分子水溶液中の導電性高分子の濃度が大幅に低下しない量を言う。
また分散性の向上に必要な量は、例えば、後述する方法で200μmの厚さになるようなカーボンシートを作製した際、表面粗さを測定し、導電性高分子を添加しなかったときの算術平均粗さRaの1/5以下になる量である。より好ましくは、1/10以下の量である。
特に、ポリイソチアナフテンスルホン酸は、親水化及び分散性向上に顕著な効果があるため、添加量は極少量で良い。そのため、ポリイソチアナフテンスルホン酸の場合、親水化に必要な量の3倍量添加しておけば、充分分散もできる。
カーボンナノチューブは、凝集しやすい。そのため、第1のカーボンナノチューブと第2のカーボンナノチューブを溶媒に分散させる際は、第1のカーボンナノチューブと第2のカーボンナノチューブを加えた溶液にせん断力を加えながら分散させることが好ましい。せん断力を加える方法としては、湿式ジェットミル等が好ましい。湿式ジェットミルとは、溶液に高圧を加えながら、狭い流路を通過させる方法である。この狭い流路を通過する際に、第1及び第2のカーボンナノチューブにせん断力が加わり、分散性を高めることができる。またこの第1及び第2のカーボンナノチューブの分散性の高さは、カーボンシートの強度を高める。分散性が低いと凝集粒が生じ、そこから破損が生じやすくなる。
湿式ジェットミルを用いることにより、第1のカーボンナノチューブの損傷を抑えつつ、第2のカーボンナノチューブを分散させることができる。混合時の圧力は、好ましくは100MPa以上、より好ましくは150〜250MPaである。当該範囲であれば、より顕著に第1のカーボンナノチューブの損傷を抑えつつ、第2のカーボンナノチューブを分散させることができる。
次いで、作製したカーボンナノチューブを含む分散液からカーボンシートを作製する。この工程は大まかには、紙漉きの要領で作製することができる。
例えば、比較的小さなサイズを作製する際には、数mm程度の穴を有するステンレスのメッシュ上に、通液性を有する基材を設置する。そして、この基材上に分散液を広げる。すると、通液性を有する基材及びメッシュの孔部を通過して、溶媒が排出されカーボンシートを得ることができる。この方法は、比較的小さな面積の電極を少量作製する場合、好適である。
また量産性の観点からは、図5に示すような手順で作成作製してもよい。
通液性を有する基材11上に、作製したカーボンナノチューブの分散液31を供給源32から滴下する。次いで、滴下した分散液31を均一な厚さになるように塗工手段33を用いて塗工する。塗工手段32としては、ワイヤーバーコーター、ナイフコーター、エアーナイフコーター、ブレードコーター、リバースロールコーター、ダイコーター等を用いることが出来る。
塗工された分散液31に含まれる溶媒34は、通液性を有する基材11を通過して、下方から排出される。このとき乾燥機35等を用いて、分散液34の除去を手助けしてもよい。塗工された分散液31から溶媒を除去することで、カーボンシート10を得ることができる。
このとき塗工される分散液の量や塗工される分散液31の厚みは、得られるカーボンシート10の厚みに対して適宜設定することができる。塗工膜の厚みと、得られるカーボンシートの関係を事前に検討しておくことで、所望の厚さのカーボンシートを得ることができる。
ここで、図5に示す手順で作製されるカーボンシート10は、下に基材11が形成された複合シート20の形で得られる。このとき用いる基材11は、溶媒を透過できるものであることが好ましい。基材11が溶媒を透過できることで、カーボンナノチューブの分散液から、溶媒を容易に除去することができる。基材11としては、例えば、プラスチック系のフィルム、紙等適宜選択することができる。
カーボンシート10は、製造段階で用いた基材11とカーボンシート10からなる複合シートの状態、カーボンシート10単体の状態、製造時に用いられた基材11と異なる基材にカーボンシートを移し替え、移し替えた基材とカーボンシート10からなる複合シートの状態のいずれの状態で保管及び使用してもよい。基材は、製造段階で用いたもの及び製造段階で用いた基材から移し替えたもの、のいずれにおいても上述のものを用いることができる。
また基材上にカーボンナノチューブの分散液を塗工する工程は、図5に示すように塗工手段32によって塗工するものに限られない。例えば、基材上にカーボンナノチューブの分散液をスピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法等により塗膜してもよい。その後、乾燥により塗膜から溶媒を除去し、カーボンシート10を得てもよい。また、分散液の分散媒に、保存液と同じ溶媒を用いる場合は、塗工工程の途中で、所定の保液率になるところで溶媒除去を止めれば、そのまま含浸させたカーボンシートとして用いることもできる。
またカーボンシート10を親水化する方法として、水溶性導電性高分子の例を説明したが、親水化の方法はこの方法に限られない。例えば、カーボンナノチューブの電極をフッ素ガスと酸素ガスの共存下で加熱処理することにより親水化してもよい。その他、公知の方法で親水化してもよい。
カーボンシート10の成形に際して、成形しやすくするために適当な構造体を同時に用いてもよい。例えば、カーボンシート10を成形する際に、必要に応じて、導電性の繊維、好ましくは炭素繊維と共に成形してもよい。その他、必要に応じて、触媒金属、バインダー等の添加物を用いて成形してもよい。
(カーボンシートの保管方法)
本発明の一態様に係るカーボンシートの保管方法では、カーボンシートに保存液を含浸させる。換言すると、カーボンシートに溶媒が含浸された状態は、全て保管状態である。すなわち、「保管」とは、長時間に渡る保管に限られない。例えば、製造工程の途中の塗工工程、脱水工程、仕上げ工程のいずれの工程の後に、所定の保液率で短時間保管するものも含まれる。また当然、完成後において、短時間または長時間の保管でもよい。ここで、仕上げ工程とは、例えば、上述の製造方法で長尺のシート上に作製されたカーボンシートをプレス、切断等する工程を意味する。
なお、「保存液」は、特許請求の範囲における「溶媒」の一態様である。例えば塗工工程と脱水工程の工程間における保管では、分散液に使用した溶媒をそのまま保存液とすることができる。分散液に使用した溶媒と異なる溶媒で保管したい場合、及び、使用時の溶媒で保管したい場合は、脱水工程後或いは仕上げ工程後に、所望の保存液を吸液させることができる。
カーボンシートは、平均直径100nm以上の第1のカーボンナノチューブと平均直径30nm以下の第2のカーボンナノチューブとを含み、第1のカーボンナノチューブの表面に第2のカーボンナノチューブが付着し、第2のカーボンナノチューブが、複数の第1のカーボンナノチューブ間に跨った構造を有する。そのため、乾燥状態では比較的硬く、変形によりひび等が生じて破損することがある。しかしながら、カーボンシートは溶媒を含浸すると、乾燥状態と比較して柔らかくなり、変形等に追従できる。すなわち、カーボンシートに保存液を含浸させることで、カーボンシートを破損することなく保管することができる。
カーボンシートに保存液を含浸させる方法は、特に問わない。単純にカーボンシートを保存液中に浸漬させてもよいし、カーボンシートに保存液をかけてもよい。
この際、カーボンシートへの保存液の供給は、カーボンシートの保液率が15%以上となるまで行うことが好ましく、45%以上となるまで行うことがさらに好ましく、75%以上であることがさらに好ましい。保液率をこのようにすることで、よりひび等が入ることを抑制することができる。
保存液を含浸させたカーボンシートは、基材上に密着させた状態で保管することが好ましい。カーボンシートは基材上に載置すれば、表面張力により基材と密着する。また製造段階で用いた基材を、保管時における基材として用いる場合は、製造段階で基材とカーボンシートが密着する。
カーボンシートは、安定状態で保管する。ここで、カーボンシートは単体でも、基材が密着した複合シート化された状態でもよい。安定状態とは、外力を加えない状態を意味する。カーボンシートは、平坦なシート上で保管するだけでなく、保管するスペースを少なくするという保管効率の観点から、山折りと谷折りを繰り返した蛇腹状にしてもよいし、ロール状に巻き取ってもよい。ロール状に巻き取るときは、カーボンシートが基材に密着した複合シート化された状態で行うことが好ましい。ロール状に巻き取る際に、カーボンシートを内側にしてロール状に巻き取ることが好ましい。カーボンシートは引張より圧縮に対する耐性が高く、また取り出す際にも基材がカーボンシートを支持するため扱いやすい。このとき基材は、合紙としての機能も有する。
カーボンシートを安定状態にした後は、カーボンシートの保液率は低下してもよい。カーボンシートを安定状態にした後は、カーボンシートに外力は加えることはない。そのため、カーボンシートの保液率が低下し、カーボンシートの硬度が上昇しても、カーボンシートにひび等が生じることはない。
しかしながら、地震等の不測の外力が加わることは否定できない。そのため、保液率が15%以上または5%以下で保存することが好ましい。カーボンシートが15%以上程度の保液率を有していれば、不測の事態で多少の外力が加わっても、柔軟性があるため、カーボンシートが破損することを十分に抑制することができる。一方、保液率が5%以下であれば、不測の事態で多少の外力が加わっても、耐える強度を有するため、カーボンシートが破損することを十分に抑制することができる。
安定状態での保液率を維持する方法は特に問わない。例えば、容器に貯留された保存液中でカーボンシートを保管してもよいし、カーボンシート全体を、水蒸気透過率が小さいフィルム、例えばプラスチックフィルム(例えばポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム、塩素系プラスチックフィルム等)等で包むことで保存液が蒸発することを抑制してもよい。またカーボンシートの保液率が少ない状態で維持するためには、乾燥状態のカーボンシート全体を、水蒸気透過率が小さいフィルム、例えばプラスチックフィルム(例えばポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム、塩素系プラスチックフィルム等)等で包んだり、乾燥気体を充填した容器にカーボンシート入れて密封しても良い。上記維持方法を施した、溶媒を含浸させたカーボンシートは、使用に支障ない状態で保管したり、製品として出荷したりすることができる。
使用の際には、再度溶媒をカーボンシートに含浸させれば、安定状態から使用態様にカーボンシートを変形させることができる。例えば、巻回体の状態で保管されていた場合は、カーボンシートを巻き出す必要がある。再度カーボンシートを溶液に含浸させることで、カーボンシートを柔らかくすることができ、巻き出し時の破損等を抑制することができる。ここで使用時に用いる溶媒は、保管時の保存液と異なるものであってもよい。保存液は、保存液そのものが腐食したり、保存液によってカーボンシートが変質しないものを選ぶことが好ましい。またカーボンシートが親水性の場合は親水性の溶液が好ましく、腐食防止のために、例えばアルコールを添加しても良い。
本発明の一態様に係るカーボンシートの保管方法を用いることで、変形によるカーボンシートの破損を防ぐことができる。またカーボンシートを所望の保管形状にすることができるため、収納スペースを抑え、効率的に保管することができる。
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1−1)
第1のカーボンナノチューブとして昭和電工製VGCF(登録商標)−H(平均直径150nm、平均繊維長10μm)900gを用い、第2のカーボンナノチューブとして昭和電工製VGCF(登録商標)−X(平均直径15nm、平均繊維長3μm)100gを用いた。この両者を純水50リットルにポリイソチアナフテンスルホン酸0.5gを溶解した溶液に入れて、ミキサー(IKA社製 ULTRA−TURRAX UTC 80)を用いて予備的に混合した。
得られた混合物を湿式ジェットミル(スギノマシン社製StarBurst HJP−25005)を用いて圧力200MPaで処理した。得られた分散液に構造体としてカーボン短繊維(ドナカーボ・チョップS−232、大阪ガス社製)を100g添加して、再び湿式ジェットミル(ULTRA−TURRAX UTC 80)を用いて混合した。
カーボン短繊維を混合したこの分散液を、ポリスチレンスルホン酸(PSS)フィルム上にワイヤーバーを用いて基板上に塗工した。塗工した膜を、乾燥機で200℃に加熱し、保液率を5%まで乾燥させ、カーボンシートが基材上に密着した複合シートを得た。基材上のカーボンシートの厚みは0.27mmであった。この時、基板としては、ポリフェニレンサルファイドからなる不織布(前田工繊社製 目付60g/mグレード、平均繊維径25μm)を用いた。
次いで、得られた複合シートに、溶媒として水を含浸させて、半径45mmのロールに巻き取った。巻き取った複合シートを、保液率18%の状態で7日間保管した。そして保管後の複合シートを再度巻出し、脱水乾燥した。脱水乾燥後のカーボンシートには、ひび等の破損が確認されなかった。
(実施例1−2)
ポリイソチアナフテンスルホン酸15gを溶解したこと、およびカーボン短繊維を添加しなかったことを除いて、実施例1−1と同じ条件でカーボンシートを作製し、ロール状にして7日間保管した。その後、再度カーボンシートを巻き出しても、巻き出した後のカーボンシートにはひび等の破損が確認されなかった。
(実施例1−3)
第1のカーボンナノチューブとして平均直径100nmのカーボンナノチューブ900gを用いたことを除いて、実施例1−1と同じ条件でカーボンシートを作製し、ロール状にして7日間保管した。その後、再度カーボンシートを巻き出しても、巻き出した後のカーボンシートにはひび等の破損が確認されなかった。
(実施例1−4)
第2のカーボンナノチューブとして平均直径30nmのカーボンナノチューブ100gを用いたことを除いて、実施例1−1と同じ条件でカーボンシートを作製しロール状にして7日間保管した。その後、再度カーボンシートを巻き出しても、巻き出した後のカーボンシートにはひび等の破損が確認されなかった。
実施例1−1〜1−4のいずれのカーボンシートでも、作製直後及び保管後における透過電子顕微鏡像において、実施例1と同様に第2のカーボンナノチューブが複数の第1のカーボンナノチューブ間に跨った構造が確認された。実施例1では、合計100本の第2のカーボンナノチューブを観察した結果、72本の第2のカーボンナノチューブ2が複数の第1のカーボンナノチューブ1間を跨った構造をしていた。
実施例1−1〜1−4に示すように、保液率15%以上でロール状に加工されたカーボンシートは、その状態で7日間放置された後も再度使用することができ、保管時の安定性を確認することができた。
(実施例2−1)
実施例1−1と同様に作製したカーボンシートを1辺10mm各で切り出した。カーボンシートの厚みは2.6mmであった。得られたカーボンシートの乾燥状態での荷重による圧縮変位と、含浸状態での荷重による圧縮変位を測定した(最大荷重150kgNまで)。含浸状態とは、カーボンシートに溶媒として水を含浸させた状態を意味する。この際の保液率は20%であった。その結果を図6に示す。図6において縦軸は加えた荷重であり、横軸は荷重を加えた方向に対するカーボンシートまたはカーボンフェルトの厚さの縮小量を示す。
図6に示すように、本発明のカーボンシートは、溶媒を含浸することで、荷重に対する変移量が大きくなっている。すなわち、含浸させることでカーボンシートが軟らかくなり変形に対応できるようになっていることがわかる。
(実施例3−1、比較例3−1)
実施例1−1の手順で作製した乾燥状態のカーボンシートに対する溶媒の含浸量(すなわち、保液率)を変化させながら、曲げ試験を行った。溶媒としては水を用いた。
曲げ試験は、60mm×25mm×0.27mmtのサンプルを準備し、そのサンプルを曲げ半径Rを45mmで、折り曲げた。このときサンプルにひびが入った場合を不良、入らなかった場合を良とした。その結果を表1に示す。
表1の結果から、保液率が18%以上であれば、高いハンドリング性を維持できることが分かった。
所定の保液率を含浸させたものは高いハンドリング性を維持できる。所定の保液率とは、使用時にハンドリングする際にシートに付与する最大曲げ半径においてひび割れが生じないために必要な保液率のことである。
必要な保液率は、例えば、以下の方法で予め求めることができる。
1.使用するシートのサンプル片に溶媒又は保存液を含浸させた状態で、使用時にハンドリングする際にシートに付与する最大曲げ半径でサンプル片を曲げる。
2.ひび割れの発生の有無を確認する。
3.ひび割れが生じていれば溶媒又は保存液の量を増やして同様の確認を繰り返す。ひび割れが生じなければ溶媒又は保存液の量を減じて同様の確認を繰り返す。
4.以上からひび割れが発生しない最低必要な溶媒又は保存液の量から求めた保液率を所定の保液率とする。通常、所定の保液率は15%を超えない。
1…第1のカーボンナノチューブ、2…第2のカーボンナノチューブ、10…カーボンシート、11…基材、20…複合シート、30…巻回体、31…分散体、32…供給源、33…塗工手段、34…溶媒、35…乾燥機

Claims (12)

  1. 平均直径100nm以上の第1のカーボンナノチューブと平均直径30nm以下の第2のカーボンナノチューブとを含み、前記第1のカーボンナノチューブの表面に前記第2のカーボンナノチューブが付着し、前記第2のカーボンナノチューブが、複数の前記第1のカーボンナノチューブ間に跨った構造を有するカーボンシートに溶媒を含浸させるカーボンシートの保管方法。
  2. 溶媒を含浸するカーボンシートの保液率が15%以上である請求項1に記載のカーボンシートの保管方法。
  3. 溶媒が水である請求項1または2のいずれかに記載のカーボンシートの保管方法。
  4. 平均直径100nm以上の第1のカーボンナノチューブと平均直径30nm以下の第2のカーボンナノチューブとを含み、前記第1のカーボンナノチューブの表面に前記第2のカーボンナノチューブが付着し、前記第2のカーボンナノチューブが、複数の前記第1のカーボンナノチューブ間に跨った構造を有するカーボンシートに溶媒を含浸させる工程と、前記含浸させたカーボンシートを基材に密着させ複合シートとする工程を有する複合シートの保管方法。
  5. 前記溶媒を含浸させる工程における前記カーボンシートの保液率が15%以上である請求項4に記載の複合シートの保管方法。
  6. 前記基材が、通液性を有する請求項4または5のいずれかに記載の複合シートの保管方法。
  7. 前記カーボンシートの保管段階における保液率が15%以上または5%以下である請求項4〜6のいずれか一項に記載の複合シートの保管方法。
  8. 前記基材に密着させた複合シートを巻き取る工程をさらに有する請求項4〜7のいずれか一項に記載の複合シートの保管方法。
  9. 請求項1〜3のいずれか一項に記載のカーボンシートの保管方法によって保管されたカーボンシート。
  10. 請求項9に記載のカーボンシートと、前記カーボンシートの少なくともいずれか一面に密着した基材と、を備えた複合シート。
  11. 前記基材が通液性を有する請求項10に記載の複合シート。
  12. 請求項10又は請求項11のいずれかに記載の複合シートを巻き取った巻回体。
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