JP2016199776A - オーステナイト系ステンレス鋼 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】
化学組成が、質量%で、C:0.01〜0.12%、Si:0.1〜1.2%、Mn:8.5〜12%、Ni:2〜10%、Cr:11〜19%、Cu:0.5〜3.5%、N:0.05〜0.40%、Al:0.0005〜0.05%、O:0.001〜0.02%、Co:0〜3%、Mo:0〜4%、V:0〜0.5%、Nb:0〜0.5%、Ti:0〜0.5%、B:0〜0.01%、Ca:0〜0.05%、Mg:0〜0.05%、REM:0〜0.5%、ならびに、残部:Feおよび不純物であり、かつ、不純物としてのPおよびSがそれぞれP:0.03%以下およびS:0.01%以下である、オーステナイト系ステンレス鋼。
【選択図】 なし
Description
20Al+8.5≦Mn≦12 ・・・(i)
ただし、(i)式中の各元素記号は、それぞれの元素の含有量(質量%)を表す。
C:0.01〜0.12%、
Si:0.1〜1.2%、
Mn:8.5〜12%、
Ni:2〜10%、
Cr:11〜19%、
Cu:0.5〜3.5%、
N:0.05〜0.40%、
Al:0.0005〜0.05%、
O:0.001〜0.02%、
Co:0〜3%、
Mo:0〜4%、
V:0〜0.5%、
Nb:0〜0.5%、
Ti:0〜0.5%、
B:0〜0.01%、
Ca:0〜0.05%、
Mg:0〜0.05%、
REM:0〜0.5%、ならびに、
残部:Feおよび不純物であり、かつ、
不純物としてのPおよびSがそれぞれP:0.03%以下およびS:0.01%以下である、オーステナイト系ステンレス鋼。
20Al+8.5≦Mn≦12 ・・・(i)
ただし、(i)式中の各元素記号は、それぞれの元素の含有量(質量%)を表す。
Co:0.005〜3%、
Mo:0.01〜4%、
V:0.001〜0.5%、
Nb:0.001〜0.5%、
Ti:0.001〜0.5%、
B:0.0001〜0.01%、
Ca:0.0005〜0.05%、
Mg:0.0005〜0.05%、および、
REM:0.001〜0.5%から選択される1種以上である、上記(1)又は上記(2)に記載のオーステナイト系ステンレス鋼。
Cは、オーステナイト組織を安定化させるのに有効な元素である。この効果を得るためには、Cを0.01%以上含有させる必要がある。しかしながら、過剰に含有させると、溶接時の加熱により粒界に炭化物を形成し、溶接熱影響部の耐食性を劣化させる。そのため、C含有量を0.12%以下とする。C含有量は、0.02%以上であることが好ましく、0.03%以上であることがより好ましい。また、C含有量は、0.11%以下であることが好ましく、0.10%以下であることがより好ましい。
Siは、脱酸剤として含有されるが、耐食性の向上に有効な元素である。その効果を充分に得るためには、0.1%以上含有させる必要がある。しかしながら、過剰に含有させると、オーステナイト組織の安定性を低下させるとともに、延性の低下を招く。さらに、溶加材を用いない溶接では、溶接金属の凝固割れ感受性を高める。そのため、Si含有量を1.2%以下とする。Si含有量は、0.15%以上であることが好ましく、0.2%以上であることがより好ましい。また、Si含有量は、1.1%以下であることが好ましく、1.0%以下であることがより好ましい。
Mnは、製造時の脱酸に寄与するとともに、オーステナイト組織を安定化させるのにも有効な元素である。その効果を充分に得るためには、Mnを8.5%以上含有させる必要がある。また、Mnは、母材製造時および溶接中において、溶融金属中のNの溶解度を大きくし、強度を高めるために有効である。加えて、アークの電流密度を高め、溶け込み深さを深くする効果をも有する元素である。本発明の化学成分範囲において、このMnの効果を活用し、充分な溶け込み深さと溶接金属の高強度とを安定して得るためには、逆の効果を有するAl量に応じて、Mnの下限を調整することが好ましい。具体的には、Mnを20Al+8.5(%)以上含有させることが好ましい。一方、過剰に含有させると、延性の低下を招くため、Mn含有量を12%以下とする。Mn含有量は、11.5%以下であることが好ましく、11%以下であることがより好ましい。
Niは、安定なオーステナイト組織を得るために必須の元素であり、積層欠陥エネルギーを高め、水素環境下での脆化感受性を低下させる。本発明のCr含有範囲で、その効果を充分に得るためには、Niを2%以上含有させる必要がある。しかしながら、高価な元素であるため、その含有量は製造コストに直結する。そのため、Ni含有量を10%以下とする。Ni含有量は、2.5%以上であることが好ましく、3%以上であることがより好ましい。また、Ni含有量は、9.5%以下であることが好ましく、9%以下であることがより好ましい。
Crは、母材製造時および溶接中において、溶融金属中のNの溶解度を大きして強度を高めるのに有効である。その効果を充分に得るためには、Crを11%以上含有させる必要がある。しかしながら、過剰に含有させると、オーステナイト組織を不安定にするとともに、炭化物の過剰な生成による脆化を招く。そのため、Cr含有量を19%以下とする。Cr含有量は、11.5%以上であることが好ましく、12%以上であることがより好ましい。また、Cr含有量は、18.5%以下であることが好ましく、18%以下であることがより好ましい。
Cuは、Niと同様に安定なオーステナイト組織を得るのに有効な元素である。その効果を得るには、Cuを0.5%以上含有させる必要がある。しかしながら、Niと同様、高価な元素であるとともに、過剰に含有させると、溶加材を用いない溶接では、溶接金属の凝固割れ感受性を高める。そのため、Cu含有量を3.5%以下とする。Cu含有量は、0.6%以上であることが好ましく、0.8%以上であることがより好ましい。また、Cu含有量は、3.2%以下であることが好ましく、3.0%以下であることがより好ましい。
Nは、マトリックスに固溶し、強度の向上に有効な元素である。加えて、オーステナイト組織の安定化にも寄与する元素である。この効果を得るためには、Nを0.05%以上含有させる必要がある。しかしながら、過剰に含有させると、母材においては、製造時の熱間加工性低下、溶接金属においては、溶接中のブローホールおよびピットの原因となる。そのため、N含有量を0.40%以下とする。N含有量は、0.08%以上であることが好ましく、0.10%以上であることがより好ましい。また、N含有量は、0.38%以下であることが好ましく、0.35%以下であることがより好ましい。
Alは、Siと同様に脱酸剤として含有され、その効果を得るためには、Alを0.0005%以上含有させる必要がある。しかしながら、Alは溶接中に、Nの溶解度を低めるとともに、凝固後の溶接金属において窒化物を形成して、固溶N量を低減し、強度低下を招く。加えて、溶接中のOの溶解度を小さくすることにより、表面活性元素であるOの効果を小さくし、溶け込み深さを浅くする元素である。そのため、Al含有量を0.05%以下にするとともに、後述するように、Al含有量に応じてMn含有量を管理する必要がある。Al含有量は、0.0008%以上であることが好ましく、0.001%以上であることがより好ましい。また、Al含有量は、0.045%以下であることが好ましく、0.040%以下であることがより好ましい。
Oは、不純物として存在するが、溶接時の溶融金属の表面張力を低下させ、溶け込み深さを増大させる効果を有する。その効果を得るためには、Oを0.001%以上含有させる必要がある。しかしながら、過剰に含有させると、清浄性が低下し、延性の低下を招く。そのため、O含有量を0.02%以下とする必要がある。O含有量は、0.0015%以上であることが好ましく、0.002%以上であることがより好ましい。また、O含有量は、0.018%以下であることが好ましく、0.015%以下であることがより好ましい。
Coは、Ni、Cuと同様に安定なオーステナイト組織を得るのに有効な元素であるため、含有させてもよい。しかしながら、過剰に含有させると、溶接金属の延性を低下させる。そのため、Coを含有させる場合、その含有量を3%以下とする。Co含有量は、上記効果を充分に得るためには、0.005%以上であることが好ましい。Co含有量は、0.008%以上であることがより好ましく、0.01%以上であることがさらに好ましい。また、Co含有量は、2.5%以下であることが好ましく、2.0%以下であることがより好ましい。
Moは、使用環境下での耐食性の向上、および、強度を高めるのに有効な元素であるため、含有させてもよい。しかしながら、Moは非常に高価な元素であるとともに、過剰に含有させると、オーステナイト組織を不安定にする。そのため、Moを含有させる場合には、その含有量を4%以下とする。Mo含有量は、上記効果を充分に得るためには、0.01%以上であることが好ましい。Mo含有量は、0.03%以上であることがより好ましく、0.1%以上であることがさらに好ましい。また、Mo含有量は、3.8%以下であることが好ましく、3.5%以下であることがより好ましい。
Vは、基質に固溶または炭窒化物として析出し、強度を向上させるのに有効な元素であるため、含有させてもよい。しかしながら、過剰に含有させると、炭窒化物が多量に析出し、延性の低下を招く。そのため、Vを含有させる場合、その含有量は0.5%以下とする。V含有量は、上記効果を充分に得るためには、0.001%以上であることが好ましい。V含有量は、0.005%以上であることがより好ましく、0.01%以上であることがさらに好ましい。また、V含有量は、0.45%以下であることが好ましく、0.40%以下であることがより好ましい。
Nbは、Vと同様、基質に固溶または炭窒化物として析出し、強度を向上させるのに有効な元素であるため、含有させてもよい。しかしながら、過剰に含有させると、溶加材を用いない溶接では、溶接金属の凝固割れ感受性を高めるとともに、延性の低下も招く。そのため、Nbを含有させる場合、その含有量は0.5%以下とする。Nb含有量は、上記効果を充分に得るためには、0.001%以上であることが好ましい。Nb含有量は、0.005%以上であることがより好ましく、0.01%以上であることがさらに好ましい。また、Nb含有量は、0.45%以下であることが好ましく、0.40%以下であることがより好ましい。
Tiは、V、Nbと同様に、基質に固溶または炭窒化物として析出し、強度を向上させるのに有効な元素であるため、含有させてもよい。しかしながら、過剰に含有させると、炭窒化物が多量に析出し、延性の低下を招く。そのため、Tiを含有させる場合、その含有量は0.5%以下とする。Ti含有量は、上記効果を充分に得るためには、0.001%以上であることが好ましい。Ti含有量は、0.003%以上であることがより好ましく、0.005%以上であることがさらに好ましい。また、Ti含有量は、0.45%以下であることが好ましく、0.40%以下であることがより好ましい。
Bは、粒界に偏析して粒界固着力を高め、強度向上に寄与するとともに、水素環境下での脆化を抑制する効果を有するため、含有させてもよい。しかしながら、過剰に含有させると、溶加材を使用しない場合、溶接金属において凝固割れ感受性を増大させる。そのため、Bを含有させる場合、その含有量は0.01%以下とする。B含有量は、上記効果を充分に得るためには、0.0001%以上であることが好ましい。B含有量は、0.0002%以上であることがより好ましく、0.0005%以上であることがさらに好ましい。また、B含有量は、0.008%以下であることが好ましく、0.005%以下であることがより好ましい。
Caは、熱間加工性を改善する作用を有するため、含有させてもよい。しかしながら、Caの含有量が過剰になるとOと結合して、清浄性を著しく低下させ、却って熱間加工性を劣化させる。そのため、Caを含有させる場合、その含有量は0.05%以下とする。Ca含有量は、上記効果を充分に得るためには、0.0005%以上であることが好ましい。Ca含有量は、0.0008%以上であることがより好ましく、0.001%以上であることがさらに好ましい。また、Ca含有量は、0.03%以下であることが好ましく、0.01%以下であることがより好ましい。
Mgは、Caと同様、熱間加工性を改善する作用を有するため、含有させてもよい。しかしながら、Mgの含有量が過剰になるとOと結合して、清浄性を著しく低下させ、却って熱間加工性を劣化させる。そのため、Mgを含有させる場合、その含有量は0.05%以下とする。Mg含有量は、上記効果を充分に得るためには、0.0005%以上であることが好ましい。Mg含有量は、0.0008%以上であることがより好ましく、0.001%以上であることがさらに好ましい。また、Mg含有量は0.03%以下であることが好ましく、0.01%以下であることがより好ましい。
REMは、Sとの親和力が強く、熱間加工性を改善する作用を有するため、含有させてもよい。しかしながら、その含有量が過剰になるとOと結合して、清浄性を著しく低下させ、却って熱間加工性を劣化させる。そのため、REMを含有させる場合、その含有量は0.5%以下とする。REM含有量は、上記効果を充分に得るためには、0.001%以上であることが好ましい。REM含有量は、0.002%以上であることがより好ましく、0.005%以上であることがさらに好ましい。また、REM含有量は、0.3%以下であることが好ましく、0.1%以下であることがより好ましい。
不純物として含まれ、母材においては製造時の熱間加工性を阻害するとともに、溶加材を使用しない場合、溶接金属において凝固割れ感受性を増大させる。そのため、可能な限り低減することが好ましいが、極度の低減は製鋼コストの増大を招くため、P含有量を0.03%以下とする。P含有量は、0.025%以下であることが好ましく、0.02%以下であることがより好ましい。
Pと同様、不純物として含まれ、母材においては製造時の熱間加工性を阻害するとともに、溶加材を使用しない場合、溶接金属において凝固割れ感受性を増大させる。そのため、Pと同様に可能な限り低減することが好ましいが、極度の低減は製鋼コストの増大を招く。そのため、S含有量を0.01%以下とする。S含有量は、0.008%以下であることが好ましく、0.005%以下であることがより好ましい。
得られた溶接継手のうち、裏ビードが形成されなかったものを「不合格」と判定し、裏ビードが形成されたものの、裏ビード幅が1mm未満のものを「可」、裏ビート幅が1mm以上のものを「良」として「合格」と判定した。結果を表2に示す。
溶接施工性が「合格」であった溶接継手については、溶接金属を平行部中央にもつ板状引張試験片を採取し、常温での引張試験に供した。そして、引張強度が、母材の目標強度である600MPa以上のものを「良」、600MPa未満であり、かつ、母材の必要強度である560MPa以上のものを「可」として「合格」と判定し、560MPa未満のものを「不合格」と判定した。結果を表2に示す。
引張試験が「合格」であった溶接継手については、溶接金属を平行部とする段付板状低歪速度引張試験片を採取し、大気中および45MPaの高圧水素環境下における低歪速度引張試験に供した。なお、歪速度は3×10−5/sとし、低歪速度引張試験において、高圧水素環境下での破断絞りと大気中での破断絞りの比が90%以上となるものを「合格」、90%未満となるものを「不合格」とした。結果を表2に示す。
Claims (6)
- 化学組成が、質量%で、
C:0.01〜0.12%、
Si:0.1〜1.2%、
Mn:8.5〜12%、
Ni:2〜10%、
Cr:11〜19%、
Cu:0.5〜3.5%、
N:0.05〜0.40%、
Al:0.0005〜0.05%、
O:0.001〜0.02%、
Co:0〜3%、
Mo:0〜4%、
V:0〜0.5%、
Nb:0〜0.5%、
Ti:0〜0.5%、
B:0〜0.01%、
Ca:0〜0.05%、
Mg:0〜0.05%、
REM:0〜0.5%、ならびに、
残部:Feおよび不純物であり、かつ、
不純物としてのPおよびSがそれぞれP:0.03%以下およびS:0.01%以下である、オーステナイト系ステンレス鋼。 - 前記Mnの含有量が下記(i)式を満足する、請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス鋼。
20Al+8.5≦Mn≦12 ・・・(i)
ただし、(i)式中の各元素記号は、それぞれの元素の含有量(質量%)を表す。 - 前記化学組成が、質量%で、
Co:0.005〜3%、
Mo:0.01〜4%、
V:0.001〜0.5%、
Nb:0.001〜0.5%、
Ti:0.001〜0.5%、
B:0.0001〜0.01%、
Ca:0.0005〜0.05%、
Mg:0.0005〜0.05%、および、
REM:0.001〜0.5%から選択される1種以上である、請求項1または請求項2に記載のオーステナイト系ステンレス鋼。 - 常温での引張強度が560MPa以上である、請求項1から請求項3までのいずれか一つに記載のオーステナイト系ステンレス鋼。
- 高圧水素ガス用機器または液体水素貯槽に使用される、請求項1から請求項4までのいずれか一つに記載のオーステナイト系ステンレス鋼。
- 溶加材を用いずに溶接することができる、請求項1から請求項5までのいずれか一つに記載のオーステナイト系ステンレス鋼。
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