JP2016191945A - 光学積層体、偏光板及び画像表示装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】トリアセチルセルロース基材の一方の面上にハードコート層を有する光学積層体であって、上記トリアセチルセルロース基材は、厚みが30〜65μmであり、ハードコート層の表面のマルテンス硬度(N1)、ハードコート層の断面中央のマルテンス硬度(N2)及びトリアセチルセルロース基材の断面中央のマルテンス硬度(N3)を、それぞれナノインデンテーション法により測定したときに、N2>N1>N3なる関係を有し、前記ハードコート層は、JIS K5600−5−4(1999)に規定する鉛筆硬度試験に準ずる試験であって、荷重を4.9Nとしたときの鉛筆硬度が、4H以上であることを特徴とする光学積層体。
【選択図】図1
Description
しかしながら、このような紫外線硬化型樹脂を用いてなるハードコート層を備えたハードコートフィルムは、ハードコート層の硬度を充分に高く(例えば、JIS K5600−5−4(1999)に規定する鉛筆硬度試験に準ずる試験であって、荷重を4.9Nとしたときの鉛筆硬度を4H以上)することは困難であった。
また、ハードコートフィルムに要求される性能は、近年益々高くなってきており、より高硬度で耐擦傷性により優れたものが要求されるようになってきているが、従来のハードコートフィルムでは、このような要求に充分に応えることができなかった。
しかしながら、このような球状のシリカ微粒子を含有してなるハードコート層を備えたハードコートフィルムは、上記に規定する鉛筆硬度試験で4Hを達成することは困難であった。更に、ハードコート層の形成材料が架橋性ではないため、ハードコート層を高硬度化するには実施例に記載されているように光硬化時に光照射量を多くしなければならず、ハードコート層を形成する基材として、トリアセチルセルロースフィルムのような熱ダメージを受けやすい基材を用いると、ハードコート層の形成材料を重合させる際の重合熱により基材が熱ダメージを受けて目視で明らかな皺が生じるという問題があった。
本発明の光学積層体において、また、上記トリアセチルセルロース基材は、断面の中央のマルテンス硬度(N3)が、ハードコート層を形成する前のトリアセチルセルロース基材の断面の中央のマルテンス硬度(N3b)よりも高いことが好ましい。
また、上記ハードコート層は、平均1次粒径が1〜50nmの球状シリカ微粒子の3〜20個が無機の化学結合により結合した反応性異型シリカ微粒子を含有することが好ましい。
また、上記ハードコート層中の反応性異型シリカ微粒子は、上記ハードコート層のトリアセチルセルロース基材側により多く含有されていることが好ましい。
また、上記反応性異型シリカの含有量が、ハードコート層中のバインダー樹脂100質量部に対して、10〜70質量部であることが好ましい。
本発明は、最表面に上述の光学積層体、又は、上述の偏光板を備えることを特徴とする画像表示装置でもある。
以下に、本発明を詳細に説明する。
上記トリアセチルセルロース基材は、透明性が高く、複屈折率が小さいため光学異方性が小さく光学的特定に優れ、更に、ディスプレイに搭載し使用するための機械的強度に優れたものである。
上記トリアセチルセルロース基材の厚みは、20〜300μmであることが好ましく、30〜200μmであることがより好ましい。なお、近年のディスプレイ軽量化に伴い、最も好ましい厚みは30〜65μmである。
また、上記トリアセチルセルロース基材は、その上にハードコート層を形成するに際して、接着性向上のために、コロナ放電処理、酸化処理等の物理的な処理のほか、アンカー剤又はプライマーと呼ばれる塗料の塗布を予め行ってもよい。
ここで、上記トリアセチルセルロースは、前述したように光学的特性が優れているため、例えば、偏光板用のフィルムとして好ましく用いられている。しかしながら、セルロースという材料の物理特性上、ディスプレイ表面に用いることができる充分な硬度や耐擦傷性は、トリアセチルセルロース基材だけでは付与できない。具体的には、上記トリアセチルセルロース基材の鉛筆硬度は、荷重を4.9Nとしたとき、Bにも満たない弱さがある。よって、トリアセチルセルロース基材上に高硬度で耐擦傷性のあるハードコート層を積層しても、この弱いままのトリアセチルセルロース基材であると、ハードコート層の物理特性が充分に発揮できていなかった。例えば、同じハードコート層を積層する基材の材料をガラスのような、基材だけで充分な硬度を有するものに変更すると、光学積層体全体の硬度は極めて優れたものになることが知られている。そこで、本発明においては、トリアセチルセルロース基材自身の硬度を向上させることを検討し、上述したような関係で高い硬度とすることができるようにしたものであり、特に30〜65μmと厚みが薄いトリアセチルセルロース基材においても良好に高硬度化ができ好ましい。
上記トリアセチルセルロース基材の断面の中央のマルテンス硬度(N3)を、ハードコート層を形成する前のトリアセチルセルロース基材の断面の中央のマルテンス硬度(N3b)よりも高くする方法としては、後述する浸透性溶剤を含有するハードコート層形成用組成物を用いてハードコート層をトリアセチルセルロース基材上に形成する方法が挙げられる。当該方法により後述するハードコート層形成用組成物がトリアセチルセルロース基材中に浸透し、あたかもトリアセチルセルロース基材内部にハードコート層を設けたような状態になったり、また、ハードコート層を形成する際に乾燥工程で温度がかかったり、紫外線照射されたりすることも上記トリアセチルセルロース基材の断面の中央のマルテンス硬度を上記関係とするのに寄与しているものと推測される。
なお、上記マルテンス硬度とは、(株)フィッシャー・シンスツルメント社製、ピコデンターHM−500を用いてナノインデンテーション法により測定された値を意味する。
上記トリアセチルセルロース基材の断面の中央の硬度が上記範囲にあることで、好適に本発明の光学積層体が優れた硬度を有するものとすることができる。
本発明の光学積層体は、上記ハードコート層の表面のマルテンス硬度(N1)、上記ハードコート層の断面中央のマルテンス硬度(N2)及び上記トリアセチルセルロース基材の断面中央のマルテンス硬度(N3)を、それぞれナノインデンテーション法により測定したときに、N2>N1>N3なる関係を有するものである。このような硬度の関係を有することで、本発明の光学積層体の硬度及び耐擦傷性を、特に優れたものとすることができる。
上記マルテンス硬度についての上述の関係は、例えば、後述する反応性異型シリカ微粒子がハードコート層のトリアセチルセルロース側により多く含有されていることで満たすことができる。
上記反応性異型シリカ微粒子は、該反応性異型シリカ微粒子と同程度の粒径の球状シリカ微粒子等と比較して表面積が大きくなるため、ハードコート層を構成する後述するバインダー成分との密着性が優れたものとなる。その結果、本発明の光学積層体は、上記ハードコート層の硬度が優れたものとなり耐擦傷性に優れたものとなる。
上記反応性官能基としては、後述するハードコート層を構成するバインダー成分に対して反応性を有する官能基が挙げられ、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和結合を有する官能基や、エポキシ基等が挙げられる。
なお、上記球状シリカ微粒子の平均粒径とは、溶液中の当該球状シリカ微粒子を動的光散乱方法で測定し、粒径分布を累積分布で表したときの50%粒子径(d50 メジアン径)を意味する。当該平均粒径は、日機装株式会社製のMicrotrac粒度分析計又はNanotrac粒度分析計を用いて測定することができる。
なお、上記球状シリカ微粒子の平均1次粒径は、上記球状シリカ微粒子をSEM写真又はTEM写真を用いて観察し、観察された球状シリカ微粒子を100個数え、その粒径の平均値として求めることもできる。
このような球状シリカ微粒子としては特に限定されず、従来公知のものが挙げられ、また、市販品を用いることができる。
上記球状シリカ微粒子の市販品としては、例えば、日産化学工業株式会社製のMIBK―ST、MIBK−ST―MS、MIBK−ST―L、MIBK−ST―ZL等が挙げられる。
なお、上記反応性異型シリカ微粒子の大きさ(平均2次粒径)は、ハードコート層の断面をSEM写真又はTEM写真を用いて観察し、観察された反応性異型シリカ微粒子を100個数え、各反応性異型シリカ微粒子の円相当径(Heywood径)を測定しその平均値として求めることができる。
なお、反応性異型シリカ微粒子が、ハードコート層のトリアセチルセルロース基材側により多く含有されているとは、厚み方向に裁断したハードコートフィルムを観察した際に、基材とは反対側の塗膜(空気に近いほう)に比べ、基材側のほうの充填率が高いという状態を意味する。
このようなハードコート層における反応性異型シリカ微粒子の含有状態は、ハードコート層の断面顕微鏡観察により確認することができる。
なお、上記ハードコート層中の反応性異型シリカ微粒子を、該ハードコート層のトリアセチルセルロース基材側により多く含有させる方法については後述する。
上記バインダー樹脂としては、透明性のものが好ましく、例えば、紫外線又は電子線により硬化する樹脂である電離放射線硬化型樹脂、電離放射線硬化型樹脂と溶剤乾燥型樹脂(熱可塑性樹脂等、塗工時に固形分を調整するために添加した溶剤を乾燥させるだけで、被膜となるような樹脂)との混合物、又は、熱硬化型樹脂を挙げることができる。より好ましくは電離放射線硬化型樹脂である。なお、本明細書において、「樹脂」は、モノマー、オリゴマー等の樹脂成分も包含する概念である。
なお、本明細書において「(メタ)アクリレート」は、メタクリレート及びアクリレートを指すものである。
上記熱可塑性樹脂としては特に限定されず、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース誘導体、シリコーン系樹脂及びゴム又はエラストマー等を挙げることができる。上記熱可塑性樹脂は、非結晶性で、かつ有機溶媒(特に複数のポリマーや硬化性化合物を溶解可能な共通溶媒)に可溶であることが好ましい。特に、製膜性、透明性や耐候性という観点から、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース誘導体(セルロースエステル類等)等が好ましい。
このような浸透性溶剤がトリアセチルセルロース基材を膨潤、湿潤することによって、ハードコート層形成用組成物の一部がトリアセチルセルロース基材まで浸透する挙動をとる。上記ハードコート層形成用組成物が浸透性溶剤を含有することで、トリアセチルセルロース基材の断面の中央の硬度を、ハードコート層形成後により高いものとすることができる。特に、重量平均分子量が200以上800以下で、反応性基を3以上有する電離放射線硬化型樹脂がハードコート層形成用組成物に含まれることによって、その一部がトリアセチルセルロース基材の内部に浸透し、内部でそのまま架橋硬化することで硬度を上げることができる。そのような電離放射線硬化型樹脂として、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が好ましい。
また、ハードコート層形成用組成物中において、上記浸透性溶剤は、溶剤全量中10〜100質量%、特に50〜100質量%となることが好ましい。
上記ハードコート層形成用組成物には、ハードコート層の硬度を高くする、硬化収縮を抑える、屈折率を制御する、防眩性を付与する等の目的に応じて、従来公知の分散剤、界面活性剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、増粘剤、着色防止剤、着色剤(顔料、染料)、消泡剤、レベリング剤、難燃剤、紫外線吸収剤、接着付与剤、重合禁止剤、酸化防止剤、表面改質剤、易滑剤、防汚剤、防眩性付与微粒子(拡散性微粒子、低屈折率微粒子、高屈折率微粒子)等を添加していてもよい。
上記塗布の方法としては特に限定されず、例えば、スピンコート法、ディップ法、スプレー法、ダイコート法、バーコート法、ロールコーター法、メニスカスコーター法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ピードコーター法、グラビアコート法等の公知の方法を挙げることができる。
上記活性エネルギー線照射としては、紫外線又は電子線による照射が挙げられる。上記紫外線源の具体例としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、メタルハライドランプ灯等の光源が挙げられる。また、紫外線の波長としては、190〜380nmの波長域を使用することができる。電子線源の具体例としては、コッククロフトワルト型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、又は直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器が挙げられる。
すなわち、上記組成のハードコート層形成用組成物を用いることで、トリアセチルセルロース基材上に形成した塗膜のトリアセチルセルロース基材近くのモノマーが、トリアセチルセルロース基材に浸透性溶剤とともに浸透し、該塗膜中の反応性異型シリカ微粒子の存在比が、トリアセチルセルロース基材側で高くなる。その後、上記塗膜中のモノマーを硬化させることで、トリアセチルセルロース基材近傍の反応性異型シリカ微粒子の存在比を相対的に多いハードコート層を形成することができる。
上記トリアセチルセルロース基材近傍の反応性異型シリカ微粒子の存在比を相対的に多いハードコート層とすることで、該反応性異型シリカ微粒子の硬度が高いことから、上述したハードコート層の表面のマルテンス硬度(N1)、上記ハードコート層の断面中央のマルテンス硬度(N2)及び上記トリアセチルセルロース基材の断面中央のマルテンス硬度(N3)を、それぞれナノインデンテーション法により測定したときに、N2>N1>N3なる関係を有するものとしやすくなる。
より詳細に説明すると、上記ハードコート層中のバインダー樹脂のモノマー成分をトリアセチルセルロース基材中に浸透させ、硬化させることによって、該トリアセチルセルロール基材の硬度を高くできる。そして、そのトリアセチルセルロース基材上に積層されるハードコート層が、上記N2>N1なる関係を有することで、更にトリアセチルセルロース基材の弱さをカバーでき、更にはN1>N3なる関係を有することで最終的に本発明の光学積層体の表面が、ガラスのような高硬度の基材の上にハードコート層が設けられたような状態になり、結果、本発明の光学積層体の硬度が良好なものとなる。
本発明の光学積層体の構成は、トリアセチルセルロース基材上に1層のハードコート層が積層されたものであるが、上記トリアセチルセルロース基材とハードコート層とが上記マルテンス硬度の関係を有することで、あたかもトリアセチルセルロース基材/反応性異形シリカ微粒子層/ハードコート層のような3層構成(疑似3層構成)を有しているようになる。これに対して、例えば、トリアセチルセルロース基材上に全てを反応性異型シリカ微粒子からなるハードコート層を形成した場合、トリアセチルセルロース基材上にいきなり高硬度のハードコート層が存在することになり、トリアセチルセルロース基材との硬度の差が大きい場合はクラックの原因にもなり、また、光学積層体がカールしやすく曲げに対する強度も得られなくなる。一方、本発明のような擬似3層構成であると、実際には2層であるので密着性には問題がなく、かつ、トリアセチルセルロース基材からハードコート最表面に至るにしたがって徐々に物性が変化することになり、最終硬度が得られるだけではなく、クラックやカール、曲げに対しても優れたものにできる。
上記ハードコート層の表面のマルテンス硬度(N1)の具体的な測定方法としては、例えば、図1に示したように、上記N1は、ハードコート層10の表面(トリアセチルセルロース基材と反対側表面)に対して垂直方向から対面角136°のダイヤモンド正四角錐形状のビッカース圧子12を押し込み、得られた荷重−変位曲線から、マルテンス硬度を算出し、これを5箇所について求めた平均をハードコート層の表面のマルテンス硬度(N1)とする。なお、上記マルテンス硬度は、より具体的には、ビッカース圧子の押し込みによりできたピラミッド形のくぼみ13aの対角線の長さからその表面積A(mm2)を計算し、試験荷重F(N)を割る(F/A)ことで求められる。
また、上記ハードコート層の断面中央のマルテンス硬度(N2)は、図1に示したように、ハードコート層10の断面10aの中央(A−A線)に、該断面10aに対して垂直方向からビッカース圧子12を押し込んで形成したくぼみ13bから、上記N1と同様にしてマルテンス硬度(5箇所について求めた平均)を求める。また、上記トリアセチルセルロース基材の断面中央のマルテンス硬度(N3)は、トリアセチルセルロース基材11の断面11aの中央(B−B線)に、該断面11aに対して垂直方向からビッカース圧子12を押し込んで形成したくぼみ13cから、上記N1と同様にしてマルテンス硬度(5箇所について求めた平均)を求める。上記マルテンス硬度は、例えば(株)フィッシャー・インスツルメント社製、ピコデンター HM−500で測定できる。
なお、本発明の光学積層体において、上記ハードコート層の表面のマルテンス硬度(N1)及び断面中央のマルテンス硬度(N2)は、それぞれ負荷荷重が20mNの場合、上記N1は、300〜500N/mm2であることが好ましく、350〜450N/mm2であることがより好ましく、上記N2は、350〜550N/mm2であることが好ましく、400〜500N/mm2であることがより好ましい。
上記ハードコート層の表面及び断面中央のマルテンス硬度が上記範囲にあることで、好適に本発明の光学積層体が優れた硬度を有するものとすることができる。
なお、上記N1及びN2は、具体的なマルテンス硬度が上記範囲にある場合であっても、N2は、N1よりも大きいことが必要である。N1の値がN2の値以上であると、ハードコート層の耐擦傷性は向上するが、鉛筆硬度試験を行ったときに、ハードコート層の表面にクラックが生じてしまい、4H以上とすることができなくなるからである。これは、耐擦傷性は、ハードコート層の最表面のみの硬度が反映されるのに対し、鉛筆硬度試験では、ハードコート層の膜厚方向へ力がかかるため、ハードコート層全体の硬度関係が反映される。上述したような関係のマルテンス硬度であると、ハードコート層が硬いために脆い性質が出てくる。N2>N1なる関係を有するのであれば、このような高硬度のN1部分を、N2部分がガラス基材のように支えることができるので、脆い性質をカバーすることができる。しかしながら、N1>N2であると、N1部分の脆い性質をカバーできる部分がハードコート層にないため、クラックを生じやすくなる。
なお、本明細書において、上記ハードコート層の鉛筆硬度試験による硬度は、5回ひっかき試験をしたうち、1回の引いた長さの3分の1以上の長さに傷が発生した回をNGとし、NGが1回以下であれば合格という基準に基づいて評価した結果を意味する。つまり、5回ひっかき試験をしたうち1回傷が発生した場合は4/5という記述になり合格となる。
なお、上記ハードコート層の鉛筆硬度を4H以上とする具体的な方法としては、例えば、上記ハードコート層形成用組成物に、反応性異型シリカ微粒子を含有させる方法、又は、上記反応性異型シリカ微粒子と6〜15官能の反応性ポリマー又はオリゴマーとを含有させる方法が好適に挙げられる。上記反応性ポリマー又はオリゴマーの反応性基としては、電離放射線硬化型の(メタ)アクリロイル基が好ましい。上記6〜15官能の反応性ポリマー又はオリゴマーとしては、なかでも、6〜15官能のウレタンアクリレートオリゴマーが好ましく、具体的には、日本合成化学工業社製のUV1700B(10官能)等が挙げられる。
上記ハードコート層形成用組成物及びハードコート層の形成方法については、上述したハードコート層において説明したものと同様の材料、方法が挙げられる。
上記画像表示装置は、LCD、PDP、FED、ELD(有機EL、無機EL)、CRT、タッチパネル、電子ペーパー、ダブレットPC等の画像表示装置であってもよい。
<ハードコート層形成用組成物1>
樹脂1;ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬社製;DPHA) 20質量部
反応性異型シリカ微粒子(A−1) 20質量部(固形分)
樹脂2;ポリマーアクリレート(B−1) 10質量部
開始剤1;Irg.184(チバ・ジャパン社製;イルガキュアー184)
2質量部
レベリング剤1;フッ素系界面活性剤(DIC社製;メガファックMCF350−5) 0.05質量部
メチルイソブチルケトン(MIBK) 50質量部
なお、反応性異型シリカ微粒子(A−1)は、平均一次粒径30nmの球状シリカ微粒子4個が無機の化学結合した平均2次粒径100nmであって、MIBKで希釈した固形分40%のものであった。
また、ポリマーアクリレート(B−1)は、1分子におけるアクリロイル基が10個以上(10官能以上)であって、重量平均分子量(Mw)が15000であった。
表1に示した組成及び配合でハードコート層形成用組成物2〜10を調製した。
なお、表1中、
「A−3」とは単分散反応性シリカ微粒子(粒径15nm、固形分30%、MIBK希釈品)を示し、
「A−4」とは平均一次粒径20nmの球状シリカ微粒子5個が無機の化学結合した平均2次粒径80nmであって、MIBKで希釈した固形分40%の反応性異型シリカを示す。
樹脂1;ペンタエリスリトールトリアクリレート;PETA(日本化薬社製;PET30) 30質量部
樹脂2;ポリマーアクリレート(B−1) 20質量部
開始剤1;Irg.184(チバ・ジャパン社製;イルガキュアー184)
1質量部
開始剤2;Irg.907(チバ・ジャパン社製;イルガキュアー907)
1質量部
レベリング剤1;(DIC社製;メガファックMCF350−5)
0.05質量部
MIBK 50質量部
樹脂1;ペンタエリスリトールトリアクリレート;PETA(日本化薬社製;PET30) 30質量部
樹脂2;多官能ウレタンアクリレート(日本合成化学工業社製;UV1700B、10官能) 20質量部
開始剤1;Irg.184(チバ・ジャパン社製;イルガキュアー184)
2質量部
レベリング剤1;(DIC社製;メガファックMCF350−5)
0.05質量部
メチルイソブチルケトン 50質量部
表1に示した組成及び配合でハードコート層形成用組成物13〜21を調製した。
なお、表1中、
「A−2」とは単分散シリカ微粒子(日産化学工業社製;MIBK−ST)を示し、
「A−5」とは平均一次粒径30nmの球状シリカ微粒子30個が無機の化学結合した平均2次粒径500nmであって、MIBKで希釈した固形分40%の反応性異型シリカを示し、
「A−6」とは平均一次粒径60nmの球状シリカ微粒子4個が無機の化学結合した平均2次粒径200nmであって、MIBKで希釈した固形分40%の反応性異型シリカを示す。
トリアセチルセルロース基材(厚み40μm、コニカミノルタ社製;KC4UYW)を準備し、基材の片面に、ハードコート層形成用組成物1を塗布し、温度70℃の熱オーブン中で60秒間乾燥し、塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を積算光量が100mJ/cm2になるように照射して塗膜を硬化させることにより、10g/cm2(乾燥時)のハードコート層を形成し、光学積層体を作製した。
ハードコート層形成用組成物1の代わりにハードコート層形成用組成物2〜21をそれぞれ表2に示したように使用した以外は、実施例1と同様にして実施例2〜10、比較例1〜8及び参考例1〜3に係る光学積層体をそれぞれ作製した。
実施例、比較例及び参考例に係る光学積層体のハードコート層の表面、断面中央、及び、トリアセチルセルロース基材の断面中央を(株)フィッシャー・インスツルメント社製、ピコデンターHM−500を用いてナノインデンテーション法によりマルテンス硬度を測定した。
なお、負荷荷重を20mNとし、ハードコート層の表面を5回測定した平均値をN1(N/mm2)とした。
また、各実施例、比較例及び参考例に係る光学積層体を50μm程度に裁断し、負荷荷重を20mNとし、ハードコート層及びトリアセチルセルロース基材それぞれの断面のほぼ中央となる場所を5回測定した値の平均値をそれぞれN2、N3とした。
また、各実施例、比較例及び参考例に係る光学積層体において、ハードコート層を形成する前のトリアセチルセルロース基材の断面の中央のマルテンス硬度を予め測定し、5回測定した値の平均をN3bとした。なお、マルテンス硬度の詳細な測定方法は、図1を用いて説明したとおりである。
実施例、比較例及び参考例に係る光学積層体を、温度23℃、相対湿度50%の条件で16時間以上調湿した後、JIS−S−6006が規定する試験用鉛筆(硬度4H)を用いて、JIS K5600−5−4(1999)に規定する鉛筆硬度評価方法に準拠し、4.9Nの荷重にて引っかき試験を行い、下記の基準にて評価した。
5回ひっかき試験をしたうち、1回の引いた長さの3分の1以上の長さに傷が発生し充分な明るさの蛍光灯下での目視にて確認できた傷をNGとし、NGが5回中1回以下であれば合格(○)、2回以上傷が発生した場合を不合格(×)とした。
実施例、比較例及び参考例に係る光学積層体のハードコート層表面を、#0000番のスチールウールを用いて、摩擦荷重を変化させ、10往復摩擦し、その後の塗膜の傷、剥がれの有無を目視し下記の基準にて評価した。
◎:1000g/cm2荷重で、傷なし、塗膜の剥がれなし
×:1000g/cm2で傷又は塗膜の剥がれがあった
JIS−K5600−5−1に記載されているマンドレル試験(2mmから32mmの金属製円柱にサンプルを巻きつける試験)に準じ、円柱にハードコート層を外側にした実施例、比較例及び参考例に係る光学積層体の長さ方向で巻き付けたときのクラック(ひび)が発生しなかった棒の最小直径を記載した。つまり、直径15mmの円柱でクラックが発生し、直径16mmで発生しなかった場合は、16mmとした。
実施例、比較例及び参考例に係る光学積層体のヘイズ値(%)を、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製、製品番号;HM−150)を用いてJIS K−7136に従って測定した。
10a 断面
11 トリアセチルセルロース基材
11a 断面
12 ビッカース圧子
13a、13b、13c くぼみ
Claims (7)
- トリアセチルセルロース基材の一方の面上にハードコート層を有する光学積層体であって、
前記トリアセチルセルロース基材は、厚みが30〜65μmであり、
前記ハードコート層の表面のマルテンス硬度(N1)、前記ハードコート層の断面中央のマルテンス硬度(N2)及び前記トリアセチルセルロース基材の断面中央のマルテンス硬度(N3)を、それぞれナノインデンテーション法により測定したときに、N2>N1>N3なる関係を有し、
前記ハードコート層は、JIS K5600−5−4(1999)に規定する鉛筆硬度試験に準ずる試験であって、荷重を4.9Nとしたときの鉛筆硬度が、4H以上である
ことを特徴とする光学積層体。 - トリアセチルセルロース基材は、断面の中央のマルテンス硬度(N3)が、ハードコート層を形成する前のトリアセチルセルロース基材の断面の中央のマルテンス硬度(N3b)よりも高い請求項1記載の光学積層体。
- ハードコート層は、平均1次粒径が1〜50nmの球状シリカ微粒子の3〜20個が無機の化学結合により結合した反応性異型シリカ微粒子を含有する請求項1又は2記載の光学積層体。
- 反応性異型シリカ微粒子は、ハードコート層のトリアセチルセルロース基材側により多く含有されている請求項3記載の光学積層体。
- 反応性異型シリカの含有量が、ハードコート層中のバインダー樹脂100質量部に対して、10〜70質量部である請求項3又は4記載の光学積層体。
- 偏光素子を備えてなる偏光板であって、
偏光素子表面に請求項1、2、3、4又は5記載の光学積層体を備えることを特徴とする偏光板。 - 最表面に請求項1、2、3、4若しくは5記載の光学積層体、又は、請求項6記載の偏光板を備えることを特徴とする画像表示装置。
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