JP2016191885A - ハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの製造方法 - Google Patents

ハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの製造方法 Download PDF

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Abstract

【解決手段】ターゲットに印加する電力を一定として、チャンバー内に導入する反応性ガス流量を掃引したとき、反応性ガス流量と、反応性ガス流量の掃引により測定されるターゲット電圧値又はターゲット電流値とにより形成されるヒステリシス曲線において、メタルモード、遷移モード及び反応モードを設定し、チャンバー内に複数のターゲットを設け、2種以上のスパッタモードが適用されるように、電力を印加して、反応性スパッタにより、ケイ素と、窒素及び酸素の一方又は双方とを含有するハーフトーン位相シフト膜を形成する。【効果】耐薬品性に優れた、ケイ素と窒素及び酸素から選ばれる一方又は双方とを含有するハーフトーン位相シフト膜において、光学特性の面内均一性を改善することができ、所定の位相差を確保した上で、面内均一性が良好なハーフトーン位相シフト膜を有するハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクを提供することができる。【選択図】図3

Description

本発明は、半導体集積回路などの製造などに用いられるハーフトーン位相シフト型フォトマスクの素材であるハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの製造方法に関する。
半導体技術の分野では、パターンの更なる微細化のための研究開発が進められている。特に、近年では、大規模集積回路の高集積化に伴い、回路パターンの微細化や配線パターンの細線化、セルを構成する層間配線のためのコンタクトホールパターンの微細化などが進行し、微細加工技術への要求は、ますます高くなってきている。これに伴い、微細加工の際のフォトリソグラフィ工程で用いられるフォトマスクの製造技術の分野においても、より微細で、かつ正確な回路パターン(マスクパターン)を形成する技術の開発が求められるようになってきている。
一般に、フォトリソグラフィ技術により半導体基板上にパターンを形成する際には、縮小投影が行われる。このため、フォトマスクに形成されるパターンのサイズは、通常、半導体基板上に形成されるパターンのサイズの4倍程度となる。今日のフォトリソグラフィ技術分野においては、描画される回路パターンのサイズは、露光で使用される光の波長をかなり下回るものとなっている。このため、回路パターンのサイズを単純に4倍にしてフォトマスクパターンを形成した場合には、露光の際に生じる光の干渉などの影響によって、半導体基板上のレジスト膜に、本来の形状が転写されない結果となってしまう。
そこで、フォトマスクに形成するパターンを、実際の回路パターンよりも複雑な形状とすることにより、上述の光の干渉などの影響を軽減している。このようなパターン形状としては、例えば、実際の回路パターンに光学近接効果補正(OPC: Optical Proximity Correction)を施した形状がある。また、パターンの微細化と高精度化に応えるべく、変形照明、液浸技術、二重露光(ダブルパターニングリソグラフィ)などの技術も応用されている。
解像度向上技術(RET: Resolution Enhancement Technology)のひとつとして、位相シフト法が用いられている。位相シフト法は、フォトマスク上に、位相を概ね180°反転させる膜のパターンを形成し、光の干渉を利用してコントラストを向上させる方法である。これを応用したフォトマスクのひとつとして、ハーフトーン位相シフト型フォトマスクがある。ハーフトーン位相シフト型フォトマスクは、石英などの露光光に対して透明な基板の上に、位相を概ね180°反転させ、パターン形成に寄与しない程度の透過率を有するハーフトーン位相シフト膜のフォトマスクパターンを形成したものである。ハーフトーン位相シフト型フォトマスクとしては、モリブテンシリサイド酸化物(MoSiO)、モリブテンシリサイド酸化窒化物(MoSiON)からなるハーフトーン位相シフト膜を有するものなどが提案されている(特開平7−140635号公報(特許文献1))。
また、フォトリソグラフィ技術により、より微細な像を得るために、露光光源に、より短波長のものが使われるようになり、現在の最先端の実用加工工程では、露光光源は、KrFエキシマレーザ光(248nm)からArFエキシマレーザ光(193nm)に移行している。ところが、より高エネルギーのArFエキシマレーザ光を使うことにより、KrFエキシマレーザ光では見られなかったマスクダメージが生じることが判明した。そのひとつが、フォトマスクを連続使用すると、フォトマスク上に異物状の成長欠陥が発生する問題である。この成長欠陥は、ヘイズと呼ばれ、その原因は、当初は、マスクパターン表面における硫酸アンモニウム結晶の成長と考えられていたが、現在では、有機物が関与するものも考えられるようになってきている。
ヘイズの問題の対策として、例えば、特開2008−276002号公報(特許文献2)には、フォトマスクに対してArFエキシマレーザ光を長時間照射したときに発生する成長欠陥に対し、所定の段階でフォトマスクを洗浄することにより、フォトマスクの継続使用ができることが開示されている。
特開平7−140635号公報 特開2008−276002号公報 特開2007−33469号公報 特開2007−233179号公報 特開2007−241065号公報
位相シフト膜は、薄い方がパターン形成に有利であるだけでなく、三次元効果を低減することができるため有利である。そのため、フォトリソグラフィにおいて、より微細なパターンを形成するためには、更に、薄い膜が求められる。
また、フォトマスクブランクをフォトマスクの製造プロセスで使用する際、フォトマスクブランク上に異物が存在すると、異物がパターン欠陥の原因となるため、このような異物を除去するために、フォトマスクブランクは、フォトマスク製造過程において何度も洗浄される。更に、フォトマスクをフォトリソグラフィ工程で使用する際、製造されたフォトマスクそのものにパターン欠陥がなくても、フォトリソグラフィ工程中に、フォトマスクに異物が付着すると、これを用いてパターニングされた半導体基板には、パターン転写不良が生じるため、フォトマスクもまた繰り返し洗浄される。
フォトマスクブランクやフォトマスクの異物除去のためには、ほとんどの場合、硫酸過水やオゾン水、アンモニア過水などによる化学的な洗浄が施される。ここで、硫酸過水は、硫酸と過酸化水素水を混合して得られる強力な酸化作用をもった洗浄剤であり、オゾン水はオゾンを水に溶け込ませたものであり、硫酸過水の代替として用いられる。特に、アンモニア過水は、アンモニア水と過酸化水素水を混合して得られる洗浄剤で、表面に付着した有機系異物がアンモニア過水に浸漬されると、アンモニアの溶解作用と過酸化水素の酸化作用により表面から有機系異物が離脱して分離されることで洗浄される。
このような薬液による化学的洗浄は、フォトマスクブランクやフォトマスクに付着したパーティクルや汚染物といった異物を除去するために必要である一方で、フォトマスクブランクやフォトマスクが備えるハーフトーン位相シフト膜などの光学膜にダメージを与えるおそれがある。例えば、上述したような化学的洗浄によって光学膜の表面が変質してしまい、本来備えているはずの光学特性が変化してしまう可能性があり、フォトマスクブランクやフォトマスクの化学的洗浄は、繰り返し施されるものであるから、各洗浄工程で生じる光学膜の特性変化(例えば、位相差変化)は、可能な限り低く抑えられることが必要である。
このような要求を満たすものとしては、ケイ素と窒素及び/又は酸素とを含む膜、例えば、遷移金属を含有しないケイ素と窒素とからなる膜、又は遷移金属を含有しないケイ素と窒素と酸素とからなる膜とすることで、化学的な耐性を向上させることができる。
一般に、フォトマスクブランクのハーフトーン位相シフト膜などのパターン形成用の薄膜は、スパッタリング法を用いて形成される。例えば、透明基板上に、ケイ素と窒素とからなる膜を形成する場合、通常、チャンバー内にケイ素ターゲット1つを配置し、Ar等の希ガスと窒素ガスとの混合ガスを供給することにより、プラズマ化した希ガスがSiターゲットに衝突することで飛び出したケイ素粒子が、透明基板に到達するまでの間に窒素を取り込んで透明基板に堆積する、ターゲット表面で窒素と反応した後に、プラズマ化した希ガスがケイ素ターゲットに衝突することで飛び出した窒化ケイ素粒子が透明基板に堆積する、プラズマ化した希ガスがケイ素ターゲットに衝突することで飛び出したケイ素粒子が透明基板に到達した後に、透明基板上で窒素と反応するなどのプロセスを経て成膜される。窒化ケイ素膜の窒素含有量は、主に混合ガス中の窒素の混合比率を増減させることで調整され、これによって、さまざまな窒素含有量の窒化ケイ素膜を、透明基板上に成膜することが可能である。
しかし、窒化ケイ素膜を、ケイ素ターゲット1つのみを用いてスパッタリングにより成膜する場合、混合ガス中の窒素の流量によっては、安定した成膜が困難となる流量範囲があり、ハーフトーン位相シフト膜の位相差や透過率などの光学特性の制御が難しく、特に、所定の透過率で面内の光学特性が均一な膜を得ることが難しいという問題がある。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、ケイ素と、窒素及び酸素から選ばれる一方又は双方とを含有するハーフトーン位相シフト膜において、面内の光学特性の均一性のよいハーフトーン位相シフト膜を備えるハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するため、耐薬品性に優れたハーフトーン位相シフト膜として、ケイ素と、窒素及び酸素から選ばれる一方又は双方とを含有するハーフトーン位相シフト膜に着目し、所定の位相差を確保した上で、面内均一性が良好なハーフトーン位相シフト膜について鋭意検討を重ねた結果、ケイ素含有膜であるハーフトーン位相シフト膜を形成する反応性スパッタにおいて、ケイ素に対する酸素や窒素の添加量を未添加のものから徐々に増やすと、膜の面内均一性が良好な領域の後、一旦、膜の面内均一性が悪化する領域が存在するが、更に添加量を増やすと、膜の面内均一性が、再び向上することを見出した。
そして、本発明者は、この現象に着目して、更に検討を重ねた結果、ハーフトーン位相シフト膜を、ケイ素を含有するターゲットと、窒素及び酸素の一方又は双方を含有する反応性ガスとを用いて反応性スパッタにより形成する際、ターゲットに印加する電力を一定として、チャンバー内に導入する反応性ガス流量を掃引し、反応性ガス流量と、反応性ガス流量の掃引により測定されるターゲット電圧値又はターゲット電流値とにより形成されるヒステリシス曲線において、反応性ガス流量の下限以下、反応性ガス流量の下限を超えて上限未満、及び反応性ガス流量の上限以上の範囲におけるスパッタモードを、各々、メタルモード、遷移モード及び反応モードとし、チャンバー内に複数のターゲットを設け、これら複数のターゲットに、メタルモード、遷移モード及び反応モードから選ばれる2種以上のスパッタモードが適用されるように、互いに異なる2種以上の電力値で電力を印加してハーフトーン位相シフト膜を形成することにより、面内均一性や成膜安定性が悪いスパッタ領域を避けて、ハーフトーン位相シフト膜を成膜することが可能であり、所定の位相差を確保した上で、耐薬品性が良好であり、更に、単一のターゲットで成膜した場合と比べて、光学特性の面内均一性の良好なハーフトーン位相シフト膜を有するハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクとなり、このような面内均一性の良好なハーフトーン位相シフト膜が再現性よく形成できることを見出し、本発明をなすに至った。
従って、本発明は、以下のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの製造方法を提供する。
請求項1:
透明基板上に、ケイ素を含有するターゲットと、窒素及び酸素の一方又は双方を含有する反応性ガスとを用い、反応性スパッタにより、ケイ素と、窒素及び酸素の一方又は双方とを含有するハーフトーン位相シフト膜を形成するハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの製造方法であって、
上記ターゲットに印加する電力を一定として、チャンバー内に導入する反応性ガス流量を、増加させた後減少させることにより掃引したとき、上記反応性ガス流量と、該反応性ガス流量の掃引により測定されるターゲット電圧値又はターゲット電流値とにより形成されるヒステリシス曲線を設定し、該ヒステリシス曲線において、反応性ガス流量の下限以下、反応性ガス流量の下限を超えて上限未満、及び反応性ガス流量の上限以上の範囲におけるスパッタモードを、各々、メタルモード、遷移モード及び反応モードとし、
上記ハーフトーン位相シフト膜を、チャンバー内に複数のターゲットを設け、上記複数のターゲットに、メタルモード、遷移モード及び反応モードから選ばれる2種以上のスパッタモードが適用されるように、上記複数のターゲットに、互いに異なる2種以上の電力値で電力を印加して形成することを特徴とするハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの製造方法。
請求項2:
上記遷移モードが、遷移モードのメタルモード近傍及び遷移モードの反応モード近傍から選ばれることを特徴とする請求項1記載のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの製造方法。
請求項3:
上記2種以上のスパッタモードが、メタルモード又は遷移モードのメタルモード近傍と、遷移モードの反応モード近傍又は反応モードとの2種のスパッタモードを含むことを特徴とする請求項2記載のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの製造方法。
請求項4:
上記2種以上のスパッタモードが、メタルモード及び反応モードの2種のスパッタモード、又は遷移モードのメタルモード近傍及び反応モードの2種のスパッタモードを含むことを特徴とする請求項3記載のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの製造方法。
請求項5:
上記反応性ガスが、窒素ガス(N2)又は酸素ガス(O2)を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの製造方法。
請求項6:
上記ケイ素を含有するターゲットが、ケイ素のみからなるターゲットであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの製造方法。
請求項7:
上記ハーフトーン位相シフト膜が、遷移金属を含有しないことを特徴とする請求項6記載のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの製造方法。
請求項8:
上記ケイ素を含有するターゲットが、遷移金属を含有し、かつ上記ハーフトーン位相シフト膜が、遷移金属を含有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの製造方法。
請求項9:
更に、遷移金属を含有するターゲットを用い、かつ上記ハーフトーン位相シフト膜が、遷移金属を含有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの製造方法。
本発明によれば、耐薬品性に優れた、ケイ素と窒素及び酸素から選ばれる一方又は双方とを含有するハーフトーン位相シフト膜において、光学特性の面内均一性を改善することができ、所定の位相差を確保した上で、面内均一性が良好なハーフトーン位相シフト膜を有するハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクを提供することができる。
本発明のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランク及びハーフトーン位相シフト型フォトマスクの一例を示す断面図である。 本発明のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの他の例を示す断面図である。 実施例1で得た第1のヒステリシス曲線を示す図である。 実施例1で得た第2のヒステリシス曲線を示す図である。 実施例2で得た第1のヒステリシス曲線を示す図である。 実施例2で得た第2のヒステリシス曲線を示す図である。 比較例1で得たヒステリシス曲線を示す図である。
以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランク(ハーフトーン位相シフトマスクブランク)は、石英基板などの透明基板上に形成された単層、又は多層(即ち、2層以上)からなるハーフトーン位相シフト膜を有する。本発明において、透明基板は、例えば、SEMI規格において規定されている、6インチ角、厚さ25ミリインチの6025基板と呼ばれる透明基板が好適であり、SI単位系を用いた場合、通常、152mm角、厚さ6.35mmの透明基板と表記される。また、本発明のハーフトーン位相シフト型フォトマスク(ハーフトーン位相シフトマスク)は、ハーフトーン位相シフト膜のマスクパターン(フォトマスクパターン)を有する。
図1(A)は、本発明のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの一例を示す断面図であり、このハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランク100は、透明基板10と、透明基板10上に形成されたハーフトーン位相シフト膜1とを備える。また、図1(B)は、本発明のハーフトーン位相シフト型フォトマスクの一例を示す断面図であり、このハーフトーン位相シフト型フォトマスク101は、透明基板10と、透明基板10上に形成されたハーフトーン位相シフト膜パターン11とを備える。
ハーフトーン位相シフト膜は、ハーフトーン位相シフト膜として必要な位相差及び透過率を満たすように、単層で構成してもよいが、例えば、所定の表面反射率を満たすようにするために、反射防止機能性を有する層を含むようにし、全体としてハーフトーン位相シフト膜として必要な位相差及び透過率を満たすように、多層で構成することも好適である。
単層及び多層のいずれの場合においても、各々の層は、組成が厚さ方向に連続的に変化するように形成してもよい。また、ハーフトーン位相シフト膜を多層で構成する場合、構成元素が異なる層及び構成元素が同一で組成比が異なる層から選ばれる2層以上の組み合わせとしてよく、多層を3層以上で構成する場合は、隣接する層としなければ、同じ層を組み合わせることもできる。
本発明のハーフトーン位相シフト膜は、所定の膜厚において、波長200nm以下の光、例えば、ハーフトーン位相シフト型フォトマスクを用いたフォトリソグラフィにおいて用いられるArFエキシマレーザ光(波長193nm)、F2レーザ光(波長157nm)などの露光光に対して、所定の位相シフト量(位相差)と、所定の透過率とを与える膜である。
本発明のハーフトーン位相シフト膜の全体の厚さは、薄いほど微細なパターンを形成しやすいため70nm以下とすることが好ましく、より好ましくは62nm以下である。一方、ハーフトーン位相シフト膜の膜厚の下限は、波長200nm以下の光に対し、必要な光学特性が得られる範囲で設定されるが、フォトマスクパターンは、厚い方が3次元効果をより低減できるため、40nm以上であることが好ましく、50nm以上であることがより好ましい。
本発明のハーフトーン位相シフト膜の露光光に対する位相差は、ハーフトーン位相シフト膜が存在する部分(位相シフト部)と、ハーフトーン位相シフト膜が存在しない部分との境界部において、それぞれを通過する露光光の位相差によって露光光が干渉して、コントラストを増大させることができる位相差であればよく、位相差は150〜200°であればよい。一般的なハーフトーン位相シフト膜では、位相差を略180°に設定するが、上述したコントラスト増大の観点からは、位相差は略180°に限定されず、位相差を180°より小さく又は大きくすることができる。例えば、位相差を180°より小さくすれば、薄膜化に有効である。なお、より高いコントラストが得られる点から、位相差は、180°に近い方が効果的であることは言うまでもなく、160〜190°、特に175〜185°、とりわけ約180°であることが好ましい。
本発明のハーフトーン位相シフト膜の露光光に対する透過率は、3%以上、特に5%以上であることが好ましく、また、30%以下、特に15%以下、とりわけ10%以下であることが好ましい。
本発明においては、ハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクを、石英基板等の透明基板上に、ケイ素を含有するターゲットと、窒素及び酸素の一方又は双方を含有する反応性ガスとを用い、反応性スパッタにより、ケイ素と、窒素及び酸素の一方又は双方とを含有するハーフトーン位相シフト膜を形成する。
真空又は減圧下で、チャンバー内で、ターゲットと反応性ガスとを用いて反応性スパッタを実施すると、ターゲットに印加する電力を一定として、反応性ガス未供給の状態から反応性ガスの量(流量)を徐々に増加させると、反応性ガスが増加するに従って、ターゲットで測定される電圧(ターゲット電圧)が徐々に減少する。この電圧の減少は、始めは徐々に(小さい傾斜で)減少し、その後、急激に(大きい傾斜で)減少する領域を経て、再び徐々に(小さい傾斜で)減少する挙動を示す。一方、反応性ガスの量を増加させて、上述した電圧が再び徐々に減少する領域を経たのち、反転させて反応性ガスの量を減少させると、反応性ガスが減少するに従って、ターゲットで測定される電圧(ターゲット電圧)が徐々に増加する。この電圧の増加は、始めは徐々に(小さい傾斜で)増加し、その後、急激に(大きい傾斜で)増加する領域を経て、再び徐々に(小さい傾斜で)増加する挙動を示す。しかしながら、反応性ガスの量を増加させたときのターゲット電圧と、反応性ガスの量を減少させたときのターゲット電圧とは、上述した急激に(大きい傾斜で)減少及び増加する領域において、反応性ガスの量を減少させたときのターゲット電圧の方が低く測定される。
また、真空又は減圧下で、チャンバー内で、ターゲットと反応性ガスとを用いて反応性スパッタを実施すると、ターゲットに印加する電力を一定として、反応性ガス未供給の状態から反応性ガスの量(流量)を徐々に増加させると、反応性ガスが増加するに従って、ターゲットで測定される電流(ターゲット電流)が徐々に増加する。この電流の増加は、始めは徐々に(小さい傾斜で)増加し、その後、急激に(大きい傾斜で)増加する領域を経て、再び徐々に(小さい傾斜で)増加する挙動を示す。一方、反応性ガスの量を増加させて、上述した電流が再び徐々に減少する領域を経たのち、反転させて反応性ガスの量を減少させると、反応性ガスが減少するに従って、ターゲットで測定される電流(ターゲット電流)が徐々に減少する。この電流の減少は、始めは徐々に(小さい傾斜で)減少し、その後、急激に(大きい傾斜で)減少する領域を経て、再び徐々に(小さい傾斜で)減少する挙動を示す。しかしながら、反応性ガスの量を増加させたときのターゲット電流と、反応性ガスの量を減少させたときのターゲット電流とは、上述した急激に(大きい傾斜で)増加及び減少する領域において、反応性ガスの量を減少させたときのターゲット電流の方が高く測定される。
このように、反応性スパッタにおいては、ターゲットに印加する電力を一定として、チャンバー内に導入する反応性ガス流量を、増加させた後減少させることにより掃引したとき、反応性ガス流量と、反応性ガス流量の掃引により測定されるターゲット電圧値又はターゲット電流値とにより、磁気ヒステリシス曲線(B−H曲線)として知られているヒステリシス曲線に類似した、例えば、図3〜図7に示されるようなヒステリシス曲線が形成される。
反応性ガスの量を増加させたときのターゲット電圧又はターゲット電流と、反応性ガスの量を減少させたときのターゲット電圧又はターゲット電流とにより、ヒステリシス曲線の範囲(ヒステリシス領域)が形成されるが、この領域において、反応性ガスの量の下限及び上限は、反応性ガスの量を増加させたときのターゲット電圧値又はターゲット電流値と、反応性ガスの量を減少させたときのターゲット電圧値又はターゲット電流値とが、実質的に一致した点とすることができ、例えば、
反応性ガス流量増加時のターゲット電圧値をVA、反応性ガス流量減少時のターゲット電圧値をVDとしたとき、下記式(1−1)
(VA−VD)/{(VA+VD)/2}×100 (1−1)
で求められる変化率、又は
反応性ガス流量増加時のターゲット電流値をIA、反応性ガス流量減少時のターゲット電流値をIDとしたとき、下記式(1−2)
(ID−IA)/{(IA+ID)/2}×100 (1−2)
で求められる変化率
が、ヒステリシス領域の中央部から下限側又は上限側に向かって徐々に減少して、例えば2%以下となった点、特に、実質的にほとんどゼロになった点を、ヒステリシス領域の反応性ガスの量の下限又は上限とすることができる。
ヒステリシス領域の下限以下の反応性ガス流量では、スパッタ中、反応性ガスがターゲット表面に吸着しても、ターゲット表面よりスパッタ粒子として放出されるため、ターゲットの表面のエロージョン部が、金属状態(ここでの金属にはケイ素が含まれる)に保たれている状態と考えられる(これをメタルモードと呼ぶ)。また、ヒステリシス領域の上限以上の反応性ガス流量では、スパッタ中、ターゲットの表面が反応性ガスと反応し、ターゲットの表面が金属化合物で完全に覆われている状態と考えられる(これを反応モードと呼ぶ)。一方、ヒステリシス領域の下限を超えて上限未満の反応性ガス流量では、ターゲットの表面のエロージョン部の一部が金属化合物で覆われている状態と考えられる(これを遷移モードと呼ぶ)。
フォトマスクブランクにおいて、面内の均一性は重要である。ハーフトーン位相シフト膜には、ケイ素を含んだものが一般に用いられており、膜にある程度透過率をもたせる必要があり、酸素や窒素などを添加する必要があり、その場合、所定の位相差で所定の透過率となるケイ素含有膜を形成するためには、遷移モードで成膜する必要がある場合がある。しかし、遷移モードでの成膜は、面内の均一性が低下しやすい。
そこで、本発明においては、ハーフトーン位相シフト膜を、複数のターゲットを用い、メタルモード、遷移モード及び反応モードから選ばれる2種以上のスパッタモードを適用してスパッタリングにより成膜する。即ち、スパッタモードの組み合わせとして、メタルモードと反応モードとの組み合わせ、メタルモードと遷移モードとの組み合わせ、遷移モードと反応モードとの組み合わせ、又はメタルモードと遷移モードと反応モードとの組み合わせが適用される。遷移モードを適用する場合、遷移モードの領域のうち、メタルモード近傍の領域又は反応モード近傍の領域となるように設定することが好ましい。
ここで、遷移モードのメタルモード近傍の領域、及び遷移モードの反応モード近傍の領域とは、遷移モードの領域内において、
ヒステリシス領域の反応性ガス流量の下限におけるターゲット電圧値VLと、ヒステリシス領域の反応性ガス流量の上限におけるターゲット電圧値VHとの差に対し、反応性ガス流量の増加時に示されるターゲット電圧値VAと、反応性ガス流量の減少時に示されるターゲット電圧値VDとの差が±15%以内(即ち、−15%〜+15%)、好ましくは±10%以内(即ち、−10%〜+10%)である反応性ガス流量、又は
ヒステリシス領域の反応性ガス流量の下限におけるターゲット電流値ILと、ヒステリシス領域の反応性ガス流量の上限におけるターゲット電流値IHとの差に対し、反応性ガス流量の増加時に示されるターゲット電流値IAと、反応性ガス流量を減少させたときに示されるターゲット電流値IDとの差が±15%以内(即ち、−15%〜+15%)、好ましくは±10%以内(即ち、−10%〜+10%)である反応性ガス流量
の範囲内とすることができる。
スパッタモードの組み合わせとしては、メタルモード又は遷移モードのメタルモード近傍と、遷移モードの反応モード近傍又は反応モードとの2種のスパッタモードを含むことが好ましく、特に、メタルモードと反応モードとの2種のスパッタモード、又は遷移モードのメタルモード近傍と反応モードとの2種のスパッタモードを含むことが好ましい。なかでも、メタルモードと反応モードの組み合わせは、ハーフトーン位相シフト膜の面内均一性が最も高くなり、特に効果的である。
1つのチャンバー内に複数のターゲットを設ける場合、反応性ガスの流量は各々のターゲットに対して共通である。そのため、本発明においては、チャンバー内に複数のターゲットを設け、複数のターゲットに、メタルモード、遷移モード及び反応モードから選ばれる2種以上のスパッタモードが適用されるように、複数のターゲットに、互いに異なる2種以上の電力値で電力を印加してハーフトーン位相シフト膜を形成する。
ターゲットの数は2つでも、3つ以上でもよい。例えば、2つのターゲットを用いる場合は、各々のターゲットに異なる電力値で電力が印加され、各々のターゲットに異なるスパッタモードが適用される。また、3つ以上のターゲットを用いる場合は、各々のターゲットに2種のスパッタモードを適用しても、3種のスパッタモードを適用してもよい。この場合、同種のスパッタモードが適用されるターゲットには、同じ電力値で電力を印加しても、互いに異なる電力値で電力を印加してもよい。
本発明のハーフトーン位相シフト膜は、スパッタ法により成膜するが、DCスパッタ、RFスパッタのいずれの方法をも用いることができる。ターゲットとスパッタガスは、層構成や組成に応じて適宜選択される。ケイ素を含有するターゲットとしては、ケイ素ターゲット(ケイ素のみからなるターゲット)、窒化ケイ素ターゲット、ケイ素と窒化ケイ素の双方を含むターゲットなどが挙げられる。この場合、ハーフトーン位相シフト膜として、遷移金属を含まないもの、例えば、ケイ素酸化物、ケイ素窒化物、ケイ素酸窒化物等のケイ素系材料のハーフトーン位相シフト膜を形成することができる。
ケイ素を含有するターゲットは、モリブデン、タングステン、タンタル、ジルコニウム等の遷移金属を含んでいてもよく、また、ケイ素を含有するターゲットと共に、遷移金属を含有するターゲットを用いてもよい。これらの場合、ハーフトーン位相シフト膜として、モリブデン、タングステン、タンタル、ジルコニウム等の遷移金属を含むもの、例えば、遷移金属ケイ素酸化物、遷移金属ケイ素窒化物、遷移金属ケイ素酸窒化物等の遷移金属ケイ素系材料のハーフトーン位相シフト膜を形成することができる。
ハーフトーン位相シフト膜の成膜中、ターゲットの材料と反応して、膜の成分の一部となる反応性ガスとして具体的には、窒素ガス(N2ガス)、酸素ガス(O2ガス)、窒素酸化物ガス(N2Oガス、NOガス、NO2ガス)などを用いることができる。更に、スパッタガスには、希ガスとして、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガスなどを用いることもできる。ハーフトーン位相シフト膜の窒素と酸素の含有率は、スパッタガスに、反応性ガスとして、窒素を含むガス、酸素を含むガスを用い、これらの導入量を適宜調整して反応性スパッタすることで、調整することができる。なお、スパッタ圧力は通常0.01〜1Pa、好ましくは0.03〜0.2Paである。
ハーフトーン位相シフト膜は、ハーフトーン位相シフト膜の膜質変化を抑えるために、その表面側の層(最表面部の層)として、表面酸化層を設けることができる。この表面酸化層の酸素含有率は20原子%以上であってよく、更には50原子%以上であってもよい。表面酸化層を形成する方法として、具体的には、大気酸化(自然酸化)による酸化の他、強制的に酸化処理する方法としては、ケイ素系材料の膜をオゾンガスやオゾン水により処理する方法や、酸素ガス雰囲気などの酸素存在雰囲気中で、オーブン加熱、ランプアニール、レーザ加熱などにより、300℃以上に加熱する方法などを挙げることができる。この表面酸化層の厚さは10nm以下、特に5nm以下、とりわけ3nm以下であることが好ましく、通常、1nm以上で酸化層としての効果が得られる。表面酸化層は、スパッタ工程で酸素量を増やして形成することもできるが、欠陥のより少ない層とするためには、前述した大気酸化や、酸化処理により形成することが好ましい。
本発明のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクのハーフトーン位相シフト膜の上には、単層又は多層からなる第2の層を設けることができる。第2の層は、通常、ハーフトーン位相シフト膜に隣接して設けられる。この第2の層として具体的には、遮光膜、遮光膜と反射防止膜との組み合わせ、ハーフトーン位相シフト膜のパターン形成においてハードマスクとして機能する加工補助膜などが挙げられる。また、後述する第3の層を設ける場合、この第2の層を、第3の層のパターン形成においてエッチングストッパーとして機能する加工補助膜(エッチングストッパー膜)として利用することもできる。第2の層の材料としては、クロムを含む材料が好適である。
このようなハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクとして具体的には、図2(A)に示されるものが挙げられる。図2(A)は、本発明のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの一例を示す断面図であり、このハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランク100は、透明基板10と、透明基板10上に形成されたハーフトーン位相シフト膜1と、ハーフトーン位相シフト膜1上に形成された第2の層2とを備える。
本発明のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクには、ハーフトーン位相シフト膜の上に、第2の層として、遮光膜を設けることができる。また、第2の層として、遮光膜と反射防止膜とを組み合わせて設けることもできる。遮光膜を含む第2の層を設けることにより、ハーフトーン位相シフト型フォトマスクに、露光光を完全に遮光する領域を設けることができる。この遮光膜及び反射防止膜は、エッチングにおける加工補助膜としても利用可能である。遮光膜及び反射防止膜の膜構成及び材料については多数の報告(例えば、特開2007−33469号公報(特許文献3)、特開2007−233179号公報(特許文献4)など)があるが、好ましい遮光膜と反射防止膜との組み合わせの膜構成としては、例えば、クロムを含む材料の遮光膜を設け、更に、遮光膜からの反射を低減させるクロムを含む材料の反射防止膜を設けたものなどが挙げられる。遮光膜及び反射防止膜は、いずれも単層で構成しても、多層で構成してもよい。遮光膜や反射防止膜のクロムを含む材料としては、クロム単体、クロム酸化物(CrO)、クロム窒化物(CrN)、クロム炭化物(CrC)、クロム酸化窒化物(CrON)、クロム酸化炭化物(CrOC)、クロム窒化炭化物(CrNC)、クロム酸化窒化炭化物(CrONC)等のクロム化合物などが挙げられる。
第2の層が遮光膜、又は遮光膜と反射防止膜との組み合わせである場合、遮光膜のクロム化合物中のクロムの含有率は40原子%以上、特に60原子%以上で、100原子%未満、特に99原子%以下、とりわけ90原子%以下であることが好ましい。酸素の含有率は0原子%以上で、60原子%以下、特に40原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は、1原子%以上であることが好ましい。窒素の含有率は0原子%以上で、50原子%以下、特に40原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は、1原子%以上であることが好ましい。炭素の含有率は0原子%以上で、20原子%以下、特に10原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は、1原子%以上であることが好ましい。この場合、クロム、酸素、窒素及び炭素の合計の含有率は95原子%以上、特に99原子%以上、とりわけ100原子%であることが好ましい。
また、第2の層が遮光膜と反射防止膜との組み合わせである場合、反射防止膜はクロム化合物であることが好ましく、クロム化合物中のクロムの含有率は30原子%以上、特に35原子%以上で、70原子%以下、特に50原子%以下であることが好ましい。酸素の含有率は60原子%以下であることが好ましく、1原子%以上、特に20原子%以上であることがより好ましい。窒素の含有率は50原子%以下、特に30原子%以下であることが好ましく、1原子%以上、特に3原子%以上であることがより好ましい。炭素の含有率は0原子%以上で、20原子%以下、特に5原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は、1原子%以上であることが好ましい。この場合、クロム、酸素、窒素及び炭素の合計の含有率は95原子%以上、特に99原子%以上、とりわけ100原子%であることが好ましい。
第2の層が遮光膜、又は遮光膜と反射防止膜との組み合わせである場合、第2の層の膜厚は、通常20〜100nm、好ましくは40〜70nmである。また、波長200nm以下の露光光に対するハーフトーン位相シフト膜と第2の層との合計の光学濃度が2.0以上、特に2.5以上、とりわけ3.0以上となるようにすることが好ましい。
本発明のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの第2の層の上には、単層又は多層からなる第3の層を設けることができる。第3の層は、通常、第2の層に隣接して設けられる。この第3の層として具体的には、第2の層のパターン形成においてハードマスクとして機能する加工補助膜、遮光膜、遮光膜と反射防止膜との組み合わせなどが挙げられる。第3の層の材料としては、ケイ素を含む材料が好適であり、特に、クロムを含まないものが好ましい。
このようなハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクとして具体的には、図2(B)に示されるものが挙げられる。図2(B)は、本発明のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの一例を示す断面図であり、このハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランク100は、透明基板10と、透明基板10上に形成されたハーフトーン位相シフト膜1と、ハーフトーン位相シフト膜1上に形成された第2の層2と、第2の層2上に形成された第3の層3とを備える。
第2の層が遮光膜、又は遮光膜と反射防止膜との組み合わせである場合、第3の層として、第2の層のパターン形成においてハードマスクとして機能する加工補助膜(エッチングマスク膜)を設けることができる。また、後述する第4の層を設ける場合、この第3の層を、第4の層のパターン形成においてエッチングストッパーとして機能する加工補助膜(エッチングストッパー膜)として利用することもできる。この加工補助膜は、第2の層とエッチング特性が異なる材料、例えば、クロムを含む材料のエッチングに適用される塩素系ドライエッチングに耐性を有する材料、具体的には、SF6やCF4などのフッ素系ガスでエッチングできるケイ素を含む材料とすることが好ましい。ケイ素を含む材料として具体的には、ケイ素単体、ケイ素と、窒素及び酸素の一方又は双方とを含む材料、ケイ素と遷移金属とを含む材料、ケイ素と、窒素及び酸素の一方又は双方と、遷移金属とを含む材料等のケイ素化合物などが挙げられ、遷移金属としては、モリブデン、タンタル、ジルコニウムなどが挙げられる。
第3の層が加工補助膜である場合、加工補助膜はケイ素化合物であることが好ましく、ケイ素化合物中のケイ素の含有率は20原子%以上、特に33原子%以上で、95原子%以下、特に80原子%以下であることが好ましい。窒素の含有率は0原子%以上で、50原子%以下、特に30原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は、1原子%以上であることが好ましい。酸素の含有率は0原子%以上、特に20原子%以上で、70原子%以下、特に66原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は、1原子%以上であることが好ましい。遷移金属の含有率は0原子%以上で、35原子%以下、特に20原子%以下であることが好ましく、遷移金属を含有する場合は、1原子%以上であることが好ましい。この場合、ケイ素、酸素、窒素及び遷移金属の合計の含有率は95原子%以上、特に99原子%以上、とりわけ100原子%であることが好ましい。
第2の層が遮光膜、又は遮光膜と反射防止膜との組み合わせ、第3の層が加工補助膜である場合、第2の層の膜厚は、通常20〜100nm、好ましくは40〜70nmであり、第3の層の膜厚は、通常1〜30nm、好ましくは2〜15nmである。また、波長200nm以下の露光光に対するハーフトーン位相シフト膜と第2の層との合計の光学濃度が2.0以上、特に2.5以上、とりわけ3.0以上となるようにすることが好ましい。
また、第2の層が加工補助膜である場合、第3の層として、遮光膜を設けることができる。また、第3の層として、遮光膜と反射防止膜とを組み合わせて設けることもできる。この場合、第2の層は、ハーフトーン位相シフト膜のパターン形成においてハードマスクとして機能する加工補助膜(エッチングマスク膜)であり、第3の層のパターン形成においてエッチングストッパーとして機能する加工補助膜(エッチングストッパー膜)として利用することもできる。加工補助膜の例としては、特開2007−241065号公報(特許文献5)で示されているようなクロムを含む材料で構成された膜が挙げられる。加工補助膜は、単層で構成しても、多層で構成してもよい。加工補助膜のクロムを含む材料としては、クロム単体、クロム酸化物(CrO)、クロム窒化物(CrN)、クロム炭化物(CrC)、クロム酸化窒化物(CrON)、クロム酸化炭化物(CrOC)、クロム窒化炭化物(CrNC)、クロム酸化窒化炭化物(CrONC)等のクロム化合物などが挙げられる。
第2の層が加工補助膜である場合、第2の層中のクロムの含有率は40原子%以上、特に50原子%以上で、100原子%以下、特に99原子%以下、とりわけ90原子%以下であることが好ましい。酸素の含有率は0原子%以上で、60原子%以下、特に55原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は、1原子%以上であることが好ましい。窒素の含有率は0原子%以上で、50原子%以下、特に40原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は、1原子%以上であることが好ましい。炭素の含有率は0原子%以上で、20原子%以下、特に10原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は、1原子%以上であることが好ましい。この場合、クロム、酸素、窒素及び炭素の合計の含有率は95原子%以上、特に99原子%以上、とりわけ100原子%であることが好ましい。
一方、第3の層の遮光膜及び反射防止膜は、第2の層とエッチング特性が異なる材料、例えば、クロムを含む材料のエッチングに適用される塩素系ドライエッチングに耐性を有する材料、具体的には、SF6やCF4などのフッ素系ガスでエッチングできるケイ素を含む材料とすることが好ましい。ケイ素を含む材料として具体的には、ケイ素単体、ケイ素と、窒素及び酸素の一方又は双方とを含む材料、ケイ素と遷移金属とを含む材料、ケイ素と、窒素及び酸素の一方又は双方と、遷移金属とを含む材料等のケイ素化合物などが挙げられ、遷移金属としては、モリブデン、タンタル、ジルコニウムなどが挙げられる。
第3の層が遮光膜、又は遮光膜と反射防止膜との組み合わせである場合、遮光膜及び反射防止膜はケイ素化合物であることが好ましく、ケイ素化合物中のケイ素の含有率は10原子%以上、特に30原子%以上で、100原子%未満、特に95原子%以下であることが好ましい。窒素の含有率は0原子%以上で、50原子%以下、特に40原子%以下、とりわけ20原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は、1原子%以上であることが好ましい。酸素の含有率は0原子%以上で、60原子%以下、特に30原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は、1原子%以上であることが好ましい。遷移金属の含有率は0原子%以上で、35原子%以下、特に20原子%以下であることが好ましく、遷移金属を含有する場合は、1原子%以上であることが好ましい。この場合、ケイ素、酸素、窒素及び遷移金属の合計の含有率は95原子%以上、特に99原子%以上、とりわけ100原子%であることが好ましい。
第2の層が加工補助膜、第3の層が遮光膜、又は遮光膜と反射防止膜との組み合わせである場合、第2の層の膜厚は、通常1〜20nm、好ましくは2〜10nmであり、第3の層の膜厚は、通常20〜100nm、好ましくは30〜70nmである。また、波長200nm以下の露光光に対するハーフトーン位相シフト膜と第2の層と第3の層との合計の光学濃度が2.0以上、特に2.5以上、とりわけ3.0以上となるようにすることが好ましい。
本発明のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの第3の層の上には、単層又は多層からなる第4の層を設けることができる。第4の層は、通常、第3の層に隣接して設けられる。この第4の層として具体的には、第3の層のパターン形成においてハードマスクとして機能する加工補助膜などが挙げられる。第4の層の材料としては、クロムを含む材料が好適である。
このようなハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクとして具体的には、図2(C)に示されるものが挙げられる。図2(C)は、本発明のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの一例を示す断面図であり、このハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランク100は、透明基板10と、透明基板10上に形成されたハーフトーン位相シフト膜1と、ハーフトーン位相シフト膜1上に形成された第2の層2と、第2の層2上に形成された第3の層3と、第3の層3上に形成された第4の層4とを備える。
第3の層が遮光膜、又は遮光膜と反射防止膜との組み合わせである場合、第4の層として、第3の層のパターン形成においてハードマスクとして機能する加工補助膜(エッチングマスク膜)を設けることができる。この加工補助膜は、第3の層とエッチング特性が異なる材料、例えば、ケイ素を含む材料のエッチングに適用されるフッ素系ドライエッチングに耐性を有する材料、具体的には、酸素を含有する塩素系ガスでエッチングできるクロムを含む材料とすることが好ましい。クロムを含む材料として具体的には、クロム単体、クロム酸化物(CrO)、クロム窒化物(CrN)、クロム炭化物(CrC)、クロム酸化窒化物(CrON)、クロム酸化炭化物(CrOC)、クロム窒化炭化物(CrNC)、クロム酸化窒化炭化物(CrONC)等のクロム化合物などが挙げられる。
第4の層が加工補助膜である場合、第4の層中のクロムの含有率は40原子%以上、特に50原子%以上で、100原子%以下、特に99原子%以下、とりわけ90原子%以下であることが好ましい。酸素の含有率は0原子%以上で、60原子%以下、特に40原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は、1原子%以上であることが好ましい。窒素の含有率は0原子%以上で、50原子%以下、特に40原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は、1原子%以上であることが好ましい。炭素の含有率は0原子%以上で、20原子%以下、特に10原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は、1原子%以上であることが好ましい。この場合、クロム、酸素、窒素及び炭素の合計の含有率は95原子%以上、特に99原子%以上、とりわけ100原子%であることが好ましい。
第2の層が加工補助膜、第3の層が遮光膜、又は遮光膜と反射防止膜との組み合わせ、第4の層が加工補助膜である場合、第2の層の膜厚は、通常1〜20nm、好ましくは2〜10nmであり、第3の層の膜厚は、通常20〜100nm、好ましくは30〜70nmであり、第4の層の膜厚は、通常1〜30nm、好ましくは2〜20nmである。また、波長200nm以下の露光光に対するハーフトーン位相シフト膜と第2の層と第3の層との合計の光学濃度が2.0以上、特に2.5以上、とりわけ3.0以上となるようにすることが好ましい。
第2の層及び第4の層のクロムを含む材料で構成された膜は、クロムターゲット、クロムに酸素、窒素及び炭素から選ばれるいずれか1種又は2種以上を添加したターゲットなどを用い、Ar、He、Neなどの希ガスに、成膜する膜の組成に応じて、酸素含有ガス、窒素含有ガス、炭素含有ガスなどから選ばれる反応性ガスを適宜添加したスパッタガスを用いた反応性スパッタにより成膜することができる。
一方、第3の層のケイ素を含む材料で構成された膜は、ケイ素ターゲット、窒化ケイ素ターゲット、ケイ素と窒化ケイ素の双方を含むターゲット、遷移金属ターゲット、ケイ素と遷移金属との複合ターゲットなどを用い、Ar、He、Neなどの希ガスに、成膜する膜の組成に応じて、酸素含有ガス、窒素含有ガス、炭素含有ガスなどから選ばれる反応性ガスを適宜添加したスパッタガスを用いた反応性スパッタにより成膜することができる。
本発明のハーフトーン位相シフト型フォトマスクは、ハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクから、常法により製造することができる。例えば、ハーフトーン位相シフト膜の上に、第2の層として、クロムを含む材料の膜が形成されているハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクでは、例えば、下記の工程でハーフトーン位相シフト型フォトマスクを製造することができる。
まず、ハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの第2の層上に、電子線レジスト膜を成膜し、電子線によるパターン描画を行った後、所定の現像操作によってレジストパターンを得る。次に、得られたレジストパターンをエッチングマスクとして、酸素を含有する塩素系ドライエッチングにより、第2の層にレジストパターンを転写して、第2の層のパターンを得る。次に、得られた第2の層のパターンをエッチングマスクとして、フッ素系ドライエッチングにより、ハーフトーン位相シフト膜に第2の層のパターンを転写して、ハーフトーン位相シフト膜パターンを得る。ここで、第2の層の一部を残す必要がある場合は、その部分を保護するレジストパターンを、第2の層の上に形成した後、酸素を含有する塩素系ドライエッチングにより、レジストパターンで保護されていない部分の第2の層を除去する。そして、レジストパターンを常法により除去して、ハーフトーン位相シフト型フォトマスクを得ることができる。
また、ハーフトーン位相シフト膜の上に、第2の層として、クロムを含む材料の遮光膜、又は遮光膜と反射防止膜との組み合わせが形成され、第2の層の上に、第3の層として、ケイ素を含む材料の加工補助膜が形成されているハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクでは、例えば、下記の工程でハーフトーン位相シフト型フォトマスクを製造することができる。
まず、ハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの第3の層の上に、電子線レジスト膜を成膜し、電子線によるパターン描画を行った後、所定の現像操作によってレジストパターンを得る。次に、得られたレジストパターンをエッチングマスクとして、フッ素系ドライエッチングにより、第3の層にレジストパターンを転写して、第3の層のパターンを得る。次に、得られた第3の層のパターンをエッチングマスクとして、酸素を含有する塩素系ドライエッチングにより、第2の層に第3の層のパターンを転写して、第2の層のパターンを得る。次に、レジストパターンを除去した後、得られた第2の層のパターンをエッチングマスクとして、フッ素系ドライエッチングにより、ハーフトーン位相シフト膜に第2の層のパターンを転写して、ハーフトーン位相シフト膜パターンを得ると同時に、第3の層のパターンを除去する。次に、第2の層を残す部分を保護するレジストパターンを、第2の層の上に形成した後、酸素を含有する塩素系ドライエッチングにより、レジストパターンで保護されていない部分の第2の層を除去する。そして、レジストパターンを常法により除去して、ハーフトーン位相シフト型フォトマスクを得ることができる。
一方、ハーフトーン位相シフト膜の上に、第2の層として、クロムを含む材料の加工補助膜が形成され、第2の層の上に、第3の層として、ケイ素を含む材料の遮光膜、又は遮光膜と反射防止膜との組み合わせが形成されているハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクでは、例えば、下記の工程でハーフトーン位相シフト型フォトマスクを製造することができる。
まず、ハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの第3の層の上に、電子線レジスト膜を成膜し、電子線によるパターン描画を行った後、所定の現像操作によってレジストパターンを得る。次に、得られたレジストパターンをエッチングマスクとして、フッ素系ドライエッチングにより、第3の層にレジストパターンを転写して、第3の層のパターンを得る。次に、得られた第3の層のパターンをエッチングマスクとして、酸素を含有する塩素系ドライエッチングにより、第2の層に第3の層のパターンを転写して、ハーフトーン位相シフト膜を除去する部分の第2の層が除去された第2の層のパターンを得る。次に、レジストパターンを除去し、第3の層を残す部分を保護するレジストパターンを、第3の層の上に形成した後、得られた第2の層のパターンをエッチングマスクとして、フッ素系ドライエッチングにより、ハーフトーン位相シフト膜に第2の層のパターンを転写して、ハーフトーン位相シフト膜パターンを得ると同時に、レジストパターンで保護されていない部分の第3の層を除去する。次に、レジストパターンを常法により除去する。そして、酸素を含有する塩素系ドライエッチングにより、第3の層が除去された部分の第2の層を除去して、ハーフトーン位相シフト型フォトマスクを得ることができる。
更に、ハーフトーン位相シフト膜の上に、第2の層として、クロムを含む材料の加工補助膜が形成され、第2の層の上に、第3の層として、ケイ素を含む材料の遮光膜、又は遮光膜と反射防止膜との組み合わせが形成され、更に、第3の層の上に、第4の層として、クロムを含む材料の加工補助膜が形成されているハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクでは、例えば、下記の工程でハーフトーン位相シフト型フォトマスクを製造することができる。
まず、ハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの第4の層の上に、電子線レジスト膜を成膜し、電子線によるパターン描画を行った後、所定の現像操作によってレジストパターンを得る。次に、得られたレジストパターンをエッチングマスクとして、酸素を含有する塩素系ドライエッチングにより、第4の層にレジストパターンを転写して、第4の層のパターンを得る。次に、得られた第4の層のパターンをエッチングマスクとして、フッ素系ドライエッチングにより、第3の層に第4の層のパターンを転写して、第3の層のパターンを得る。次に、レジストパターンを除去し、第3の層を残す部分を保護するレジストパターンを、第4の層の上に形成した後、得られた第3の層のパターンをエッチングマスクとして、酸素を含有する塩素系ドライエッチングにより、第2の層に第3の層のパターンを転写して第2の層のパターンを得ると同時に、レジストパターンで保護されていない部分の第4の層を除去する。次に、第2の層のパターンをエッチングマスクとして、フッ素系ドライエッチングにより、ハーフトーン位相シフト膜に第2の層のパターンを転写して、ハーフトーン位相シフト膜パターンを得ると同時に、レジストパターンで保護されていない部分の第3の層を除去する。次に、レジストパターンを常法により除去する。そして、酸素を含有する塩素系ドライエッチングにより、第3の層が除去された部分の第2の層と、レジストパターンが除去された部分の第4の層を除去して、ハーフトーン位相シフト型フォトマスクを得ることができる。
本発明のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクから製造されるハーフトーン位相シフト型フォトマスクは、被加工基板にハーフピッチ50nm以下、特に30nm以下、とりわけ20nm以下のパターンを形成するためのフォトリソグラフィにおいて、被加工基板上に形成したフォトレジスト膜に、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)、F2レーザ光(波長157nm)などの波長200nm以下の露光光でパターンを転写する露光において、特に有効である。
本発明のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクから製造されたハーフトーン位相シフト型フォトマスクを用いたパターン露光方法では、ハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクから製造されたハーフトーン位相シフト型フォトマスクを用い、ハーフトーン位相シフト膜のパターンを含むフォトマスクパターンに、露光光を照射して、被加工基板上に形成したフォトマスクパターンの露光対象であるフォトレジスト膜に、フォトマスクパターンを転写する。露光光の照射は、ドライ条件による露光でも、液浸露光でもよいが、本発明のパターン露光方法は、実生産において比較的短時間に累積照射エネルギー量が上がってしまう、液浸露光により300mm以上のウェハーを被加工基板として、フォトマスクパターンを露光する際に、特に有効である。
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
スパッタ装置のチャンバー内に、152mm角、厚さ6.35mmの石英基板を設置し、スパッタターゲットとしてケイ素ターゲット、スパッタガスとしてアルゴンガス及び窒素ガスを用い、ターゲットに印加する電力及びアルゴンガスの流量を一定にし、窒素ガスの流量を変化させたときにターゲットに流れる電圧を測定することにより、ヒステリシス曲線を得た。具体的には、ターゲットに印加する電力を0.5kWとし、アルゴンガスを20sccm、窒素ガスを5sccmチャンバー内に流した状態でスパッタを開始し、窒素ガス流量を毎秒0.1sccmずつ、最終的に窒素ガス流量を50sccmまで増加させ、その条件を30秒保持した後、今度は、逆に50sccmから毎秒0.1sccmずつ窒素流量を5sccmまで減少させた。得られたヒステリシス曲線を第1のヒステリシス曲線として、図3に示す。同様に、ターゲットに印加する電力を1.5kWとして得られたヒステリシス曲線を第2のヒステリシス曲線として、図4に示す。図3及び図4において、実線は、窒素ガス流量を増加させたときのターゲット電圧、波線は窒素ガス流量を減少させたときのターゲット電圧を示す。
得られた第1のヒステリシス曲線及び第2のヒステリシス曲線に基づき、152mm角、厚さ6.35mmの石英基板に、スパッタターゲットとしてケイ素ターゲットを2つチャンバー内に設置し、スパッタガスとして窒素ガスとアルゴンガスを用い、一方のターゲットには、反応モードとなる条件(アルゴンガス流量:20sccm、窒素ガス流量32.0sccm、ターゲット印加電力:0.5kW)、他方のターゲットには、メタルモードとなる条件(アルゴンガス流量:20sccm、窒素ガス流量32.0sccm、ターゲット印加電力:1.5kW)を適用して、組成が原子比でSi:N=48:52の単層からなるSiNのハーフトーン位相シフト膜を形成した。得られたハーフトーン位相シフト膜の位相差は177deg、透過率は6.0%、膜厚は62nmであった。また、面内分布は位相差が−0.8%、透過率が−5.4%であり、面内均一性は良好であった。
なお、位相差及び透過率の面内分布は、基板のハーフトーン位相シフト膜を形成した面の対角線の交点と、該交点から対角線上で95mmの位置の任意の1点とで位相差及び透過率を測定し、これらの測定値から、下記の式(2−1)及び(2−2)により算出した。
・位相差の面内分布[%]=(PS(I)−PS(E))/{(PS(I)+PS(E))/2}×100 (2−1)
(式中、PS(I)は交点での位相差、PS(E)は上記任意の1点での位相差である。)
・透過率の面内分布[%]=(T(I)−T(E))/{(T(I)+T(E))/2}×100 (2−2)
(式中、T(I)は交点での透過率、T(E)は上記任意の1点での透過率である。)
[実施例2]
スパッタ装置のチャンバー内に、152mm角、厚さ6.35mmの石英基板を設置し、スパッタターゲットとしてケイ素ターゲット、スパッタガスとしてアルゴンガス及び窒素ガスを用い、ターゲットに印加する電力及びアルゴンガスの流量を一定にし、窒素ガスの流量を変化させたときにターゲットに流れる電圧を測定することにより、ヒステリシス曲線を得た。具体的には、ターゲットに印加する電力を0.75kWとし、アルゴンガスを20sccm、窒素ガスを5sccmチャンバー内に流した状態でスパッタを開始し、窒素ガス流量を毎秒0.1sccmずつ、最終的に窒素ガス流量を50sccmまで増加させ、その条件を30秒保持した後、今度は、逆に50sccmから毎秒0.1sccmずつ窒素流量を5sccmまで減少させた。得られたヒステリシス曲線を第1のヒステリシス曲線として、図5に示す。同様に、ターゲットに印加する電力を2kWとして得られたヒステリシス曲線を第2のヒステリシス曲線として、図6に示す。図5及び図6において、実線は、窒素ガス流量を増加させたときのターゲット電圧、波線は窒素ガス流量を減少させたときのターゲット電圧を示す。
得られた第1のヒステリシス曲線及び第2のヒステリシス曲線に基づき、152mm角、厚さ6.35mmの石英基板に、スパッタターゲットとしてケイ素ターゲットを2つチャンバー内に設置し、スパッタガスとして窒素ガスとアルゴンガスを用い、一方のターゲットには、反応モードとなる条件(アルゴンガス流量:20sccm、窒素ガス流量38.0sccm、ターゲット印加電力:0.75kW)、他方のターゲットには、遷移モードのメタルモード近傍の条件(アルゴンガス流量:20sccm、窒素ガス流量38.0sccm、ターゲット印加電力:2.0kW)を適用して、組成が原子比でSi:N=48:52の単層からなるSiNのハーフトーン位相シフト膜を形成した。得られたハーフトーン位相シフト膜の位相差は177deg、透過率は6.0%、膜厚は62nmであった。また、面内分布は位相差が−0.6%、透過率が−7.0%であり、面内均一性は良好であった。
[比較例1]
スパッタ装置のチャンバー内に、152mm角、厚さ6.35mmの石英基板を設置し、スパッタターゲットとしてケイ素ターゲット、スパッタガスとしてアルゴンガス及び窒素ガスを用い、ターゲットに印加する電力及びアルゴンガスの流量を一定にし、窒素ガスの流量を変化させたときにターゲットに流れる電圧を測定することにより、ヒステリシス曲線を得た。具体的には、ターゲットに印加する電力を1kWとし、アルゴンガスを17sccm、窒素ガスを5sccmチャンバー内に流した状態でスパッタを開始し、窒素ガス流量を毎秒0.1sccmずつ、最終的に窒素ガス流量を50sccmまで増加させ、その条件を30秒保持した後、今度は、逆に50sccmから毎秒0.1sccmずつ窒素流量を5sccmまで減少させた。得られたヒステリシス曲線を図7に示す。図7において、実線は、窒素ガス流量を増加させたときのターゲット電圧、波線は窒素ガス流量を減少させたときのターゲット電圧を示す。
得られたヒステリシス曲線に基づき、152mm角、厚さ6.35mmの石英基板に、スパッタターゲットとしてケイ素ターゲットを1つチャンバー内に設置し、スパッタガスとして窒素ガスとアルゴンガスを用い、遷移モードの条件(アルゴンガス流量:17.0sccm、窒素ガス流量:19.1sccm、ターゲット印加電力:1kW)を適用して、組成が原子比でSi:N=47:53の単層からなるSiNのハーフトーン位相シフト膜を形成した。得られたハーフトーン位相シフト膜の位相差は177deg、透過率は6.0%、膜厚は62nmであった。また、面内分布は位相差が−1.0%、透過率が−10.8%であり、面内均一性が悪かった。
1 ハーフトーン位相シフト膜
2 第2の層
3 第3の層
4 第4の層
10 透明基板
11 ハーフトーン位相シフト膜パターン
100 ハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランク
101 ハーフトーン位相シフト型フォトマスク
また、真空又は減圧下で、チャンバー内で、ターゲットと反応性ガスとを用いて反応性スパッタを実施すると、ターゲットに印加する電力を一定として、反応性ガス未供給の状態から反応性ガスの量(流量)を徐々に増加させると、反応性ガスが増加するに従って、ターゲットで測定される電流(ターゲット電流)が徐々に増加する。この電流の増加は、始めは徐々に(小さい傾斜で)増加し、その後、急激に(大きい傾斜で)増加する領域を経て、再び徐々に(小さい傾斜で)増加する挙動を示す。一方、反応性ガスの量を増加させて、上述した電流が再び徐々に増加する領域を経たのち、反転させて反応性ガスの量を減少させると、反応性ガスが減少するに従って、ターゲットで測定される電流(ターゲット電流)が徐々に減少する。この電流の減少は、始めは徐々に(小さい傾斜で)減少し、その後、急激に(大きい傾斜で)減少する領域を経て、再び徐々に(小さい傾斜で)減少する挙動を示す。しかしながら、反応性ガスの量を増加させたときのターゲット電流と、反応性ガスの量を減少させたときのターゲット電流とは、上述した急激に(大きい傾斜で)増加及び減少する領域において、反応性ガスの量を減少させたときのターゲット電流の方が高く測定される。
[実施例1]
スパッタ装置のチャンバー内に、152mm角、厚さ6.35mmの石英基板を設置し、スパッタターゲットとしてケイ素ターゲット、スパッタガスとしてアルゴンガス及び窒素ガスを用い、ターゲットに印加する電力及びアルゴンガスの流量を一定にし、窒素ガスの流量を変化させたときにターゲットに流れる電圧を測定することにより、ヒステリシス曲線を得た。具体的には、ターゲットに印加する電力を0.5kWとし、アルゴンガスを20sccm、窒素ガスを5sccmチャンバー内に流した状態でスパッタを開始し、窒素ガス流量を毎秒0.1sccmずつ、最終的に窒素ガス流量を50sccmまで増加させ、その条件を30秒保持した後、今度は、逆に50sccmから毎秒0.1sccmずつ窒素流量を5sccmまで減少させた。得られたヒステリシス曲線を第1のヒステリシス曲線として、図3に示す。同様に、ターゲットに印加する電力を1.5kWとして得られたヒステリシス曲線を第2のヒステリシス曲線として、図4に示す。図3及び図4において、実線は、窒素ガス流量を増加させたときのターゲット電圧、線は窒素ガス流量を減少させたときのターゲット電圧を示す。
[実施例2]
スパッタ装置のチャンバー内に、152mm角、厚さ6.35mmの石英基板を設置し、スパッタターゲットとしてケイ素ターゲット、スパッタガスとしてアルゴンガス及び窒素ガスを用い、ターゲットに印加する電力及びアルゴンガスの流量を一定にし、窒素ガスの流量を変化させたときにターゲットに流れる電圧を測定することにより、ヒステリシス曲線を得た。具体的には、ターゲットに印加する電力を0.75kWとし、アルゴンガスを20sccm、窒素ガスを5sccmチャンバー内に流した状態でスパッタを開始し、窒素ガス流量を毎秒0.1sccmずつ、最終的に窒素ガス流量を50sccmまで増加させ、その条件を30秒保持した後、今度は、逆に50sccmから毎秒0.1sccmずつ窒素流量を5sccmまで減少させた。得られたヒステリシス曲線を第1のヒステリシス曲線として、図5に示す。同様に、ターゲットに印加する電力を2kWとして得られたヒステリシス曲線を第2のヒステリシス曲線として、図6に示す。図5及び図6において、実線は、窒素ガス流量を増加させたときのターゲット電圧、線は窒素ガス流量を減少させたときのターゲット電圧を示す。

Claims (9)

  1. 透明基板上に、ケイ素を含有するターゲットと、窒素及び酸素の一方又は双方を含有する反応性ガスとを用い、反応性スパッタにより、ケイ素と、窒素及び酸素の一方又は双方とを含有するハーフトーン位相シフト膜を形成するハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの製造方法であって、
    上記ターゲットに印加する電力を一定として、チャンバー内に導入する反応性ガス流量を、増加させた後減少させることにより掃引したとき、上記反応性ガス流量と、該反応性ガス流量の掃引により測定されるターゲット電圧値又はターゲット電流値とにより形成されるヒステリシス曲線を設定し、該ヒステリシス曲線において、反応性ガス流量の下限以下、反応性ガス流量の下限を超えて上限未満、及び反応性ガス流量の上限以上の範囲におけるスパッタモードを、各々、メタルモード、遷移モード及び反応モードとし、
    上記ハーフトーン位相シフト膜を、チャンバー内に複数のターゲットを設け、上記複数のターゲットに、メタルモード、遷移モード及び反応モードから選ばれる2種以上のスパッタモードが適用されるように、上記複数のターゲットに、互いに異なる2種以上の電力値で電力を印加して形成することを特徴とするハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの製造方法。
  2. 上記遷移モードが、遷移モードのメタルモード近傍及び遷移モードの反応モード近傍から選ばれることを特徴とする請求項1記載のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの製造方法。
  3. 上記2種以上のスパッタモードが、メタルモード又は遷移モードのメタルモード近傍と、遷移モードの反応モード近傍又は反応モードとの2種のスパッタモードを含むことを特徴とする請求項2記載のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの製造方法。
  4. 上記2種以上のスパッタモードが、メタルモード及び反応モードの2種のスパッタモード、又は遷移モードのメタルモード近傍及び反応モードの2種のスパッタモードを含むことを特徴とする請求項3記載のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの製造方法。
  5. 上記反応性ガスが、窒素ガス(N2)又は酸素ガス(O2)を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの製造方法。
  6. 上記ケイ素を含有するターゲットが、ケイ素のみからなるターゲットであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの製造方法。
  7. 上記ハーフトーン位相シフト膜が、遷移金属を含有しないことを特徴とする請求項6記載のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの製造方法。
  8. 上記ケイ素を含有するターゲットが、遷移金属を含有し、かつ上記ハーフトーン位相シフト膜が、遷移金属を含有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの製造方法。
  9. 更に、遷移金属を含有するターゲットを用い、かつ上記ハーフトーン位相シフト膜が、遷移金属を含有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの製造方法。
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