JP2016187786A - タール含有ガス改質用触媒の再生方法 - Google Patents

タール含有ガス改質用触媒の再生方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、活性劣化した改質用触媒を再生する、タール含有ガス改質用触媒の再生方法を提供することを目的とする。【解決手段】ニッケル化合物とマグネシウム化合物との混合溶液に沈殿剤を添加して、ニッケルとマグネシウムを共沈させて沈殿物を生成し、当該沈殿物に、アルミナ粉末と水、または、アルミナゾルを加えて混合して混合物を生成し、当該混合物を、少なくとも乾燥及び焼成する触媒製造工程で製造され、かつ、表面に析出したニッケルの少なくとも一部が水素還元された状態で硫黄を含むタール含有ガスと接触することによって硫黄被毒された前記触媒に、触媒層の温度を400〜800℃に維持したまま空気を接触させる空気接触工程と、前記空気接触工程の後に行われ、かつ、前記触媒に、前記触媒層の温度を600〜800℃に維持したまま水素ガスを接触させる水素ガス接触工程とを有するタール含有ガス改質用触媒の再生方法。【選択図】図1

Description

本発明は、タール含有ガス改質用触媒の再生方法に関する。
鉄鋼業は我が国の総エネルギー消費量の約1割を占めるエネルギー多消費産業である。しかしながら、高炉法一貫製鉄プロセスにおける廃熱のうち約4割が未利用廃熱である。この未利用廃熱のうち、回収が比較的容易ではあるものの、従来は利用されていない熱源としてコークス炉から発生する高温の未精製COG(コークス炉ガス、以下「粗COG」と言う)の顕熱がある。この粗COGの顕熱の回収技術として、従来から間接熱回収を主体とする方法が提案されている。例えば、特許文献1および2には、コークス炉上昇管内部、又は、上昇管部と集気管部との間に伝熱管を設け、この伝熱管内部に熱媒体を循環流通させることによって、顕熱を回収する方法が開示されている。しかし、これらの方法では伝熱管外表面へ、コークス炉から発生した粗COGに随伴するタールや軽油等が付着し、付着物の炭化・凝集による緻密化が進行することによって、経時伝熱効率および熱交換効率が低下するという問題が不可避である。これら問題点を解決する技術として、特許文献3には、伝熱管外表面に結晶性アルミノシリケート、結晶性シリカ等の触媒を塗布し、これらの触媒を介して、タール等の付着物を低分子量の炭化水素に分解し、伝熱効率を安定維持する方法が開示されている。しかし、この方法も粗COG顕熱の間接熱回収技術の域を出ない。また、この方法では、タール等の重質炭化水素の分解生成物がガス燃料等として利用しやすい軽質炭化水素になるかどうかは全く考慮されていない。さらには、粗COG中に含有する高濃度の硫化水素等の触媒被毒性硫黄化合物成分による分解活性の経時劣化の影響についても検討されていない。
従来、高温ガスの顕熱は間接的に回収されるか、若しくは全く利用されず、冷却されたガスを種々処理して利用するケースが殆どであった。なぜなら、粗COGは顕熱を有しているが、硫黄化合物の含有量が2000ppmを越えるので、上述のような、反応性ガスを触媒存在下で直接化学反応を導入して化学エネルギーに転換する技術は、タール等の重質炭化水素の分解反応に関する触媒反応設計の観点から、極めて実現が困難と考えられていたためである。したがって、これまで、高温で生成する反応性ガスを、触媒存在下で、その顕熱を利用して直接化学反応を導入し、化学エネルギーに転換する技術は殆ど報告されてない。
一部では、特許文献4に記載されているように検討はされていた。しかしながら、特許文献4に開示された触媒では、その改質活性は必ずしも十分とは言えなかった。また、エネルギー変換触媒は、一般にシリカ、アルミナなどの多孔質セラミックス担体上に活性金属種を外部から担持する担持法で製造されるが、その方法では担持金属成分の分散性をあげることが難しく、また硫黄被毒や炭素析出を受けやすい。そのため、上記高濃度硫黄化合物を含んだ雰囲気下、炭素析出を起こしやすい縮合多環芳香族主体のタールの分解反応に適する触媒を製造することが困難であった。また、一旦反応して性能劣化した後、再生のため空気燃焼した場合に、担持金属粒子のシンタリング(粗大化)が起こりやすく、再生による活性の再現を実現することも困難であった。
一方、特許文献5や非特許文献1には、ニッケル、マグネシウム及びアルミニウムを含んだ酸化物として、各金属成分を溶かした水溶液から沈殿剤により沈殿物(主にハイドロタルサイト構造を形成)を作成した後、焼成した材料について、開示されている。しかしながら、これらの材料は、改質活性が不十分で且つ炭素析出量が多く、実用化に向けて課題を有していた。
さらに、近年、地球温暖化問題により、二酸化炭素排出量削減の有効手段として炭素質原料の一つであるバイオマスの利用が注目されており、バイオマスの高効率エネルギー転換に関する研究が各所で行われている。また、昨今のエネルギー資源確保の観点から、過去精力的に行われてきた石炭の有効活用に関する研究も実用化に向けて見直されてきている。このような中で、特許文献6などでは、バイオマスの乾留で生成するタールをガス化して、粗ガス(未精製ガス)を生成し、その顕熱を利用する方法について、特に触媒を用いたタールの触媒改質を中心に、種々検討されている。しかしながら、上記石炭由来タールの分解反応と同様に、触媒活性や触媒再生の観点からは必ずしも十分ではない。
特許文献7及び8では、石炭やバイオマスなどの炭素質原料を熱分解した時に発生し、重質鎖式炭化水素や縮合多環芳香族炭化水素などを主成分とするタールを含むと共に硫化水素を高濃度で含むタール含有ガス(粗ガス又は精製ガス等)を、触媒存在下で、高価な白金族を使わずに高性能且つ安定的にメタン、一酸化炭素、水素等の軽質化学物質に変換する、タール含有ガス改質用触媒やその製造方法、タール改質方法及びタール含有ガス改質用触媒の再生方法が検討されている。具体的には、触媒活性劣化時の触媒の再生において、800℃で水蒸気あるいは空気を接触させて、炭素や硫黄を除去する方法が記載されている。
発明者らは、特許文献7及び8に記載された触媒の再生方法を、改質反応と再生とを何度も繰り返し行って、詳しく検討した。その結果、特許文献7及び8に記載された触媒の再生方法において、再生ガスとして水蒸気を用いた場合には、析出した炭素の除去に時間がかかるということがわかった。また、再生ガスとして空気を用いた場合には、炭素の燃焼による発熱が激しく、800℃で空気を導入した場合でも、炭素の燃焼により830℃以上に温度が上昇してしまうことがわかった。触媒温度が830℃程度以上になると、触媒反応器の材質が、高価な特殊合金でない限り、すなわち、通常のSUS316のような材質では、材料強度不足になる問題が生じる。そのため、触媒温度の上昇を抑えるために、空気導入流量を抑える必要があり、炭素の燃焼に時間がかかってしまうという問題があることが判った。従来は、被毒された触媒から硫黄を除去し易いという理由から、特許文献7及び8に示されるように、主に水蒸気が用いられていた。また、改質反応や還元反応と同じ温度で行うという理由から、空気を接触させる場合でも、その温度を制御することは行われていなかった。
特公昭59−44346号公報 特開昭58−76487号公報 特開平8−134456号公報 特開2003−55671号公報 特開昭50−4001号公報 特開2005−53972号公報 国際公開第2010/035430号 国際公開第2010/134326号
F.Basile et al., Stud. Surf. Sci. Catal., Vol.119(1998)
石炭やバイオマスなど炭素質原料の熱分解時に発生する触媒被毒物質である硫化水素を含んだタール含有ガス(未精製ガス)に含有・随伴するタールを、触媒存在下で軽質化学物質へ転換し、メタン、一酸化炭素、水素等主体の燃料構成に転換する化学エネルギー転換のための処理に用いる改質用触媒(タール含有ガス改質用触媒)は、改質を行っていると経時的に性能が劣化(活性劣化)する。本発明は、このような活性劣化した改質用触媒を再生する(触媒性能を回復させる)、タール含有ガス改質用触媒の再生方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、触媒を構成する元素やその組成、および性能劣化後の触媒と空気や水素との反応性に着目して、触媒の再生方法について鋭意検討した。炭素質原料の熱分解時に粗ガスに含有・随伴するタールをメタン、一酸化炭素、水素等主体の軽質化学物質へ転換する触媒としては、従来の担持法とは異なる、固相晶析法により製造された触媒に着眼した。この固相晶析法により製造された触媒は(1)活性種金属の微細析出が可能であるので高速反応が可能である、(2)析出した活性金属がマトリクス(母相)と強固に結合するのでシンタリング(粗大化)しにくく活性劣化を抑制可能である、(3)析出した活性種金属を焼成によりマトリクスへ再度固溶できるのでシンタリングが抑制可能な再生ができる、などの種々の特徴を有する。
検討の結果、本発明者らは、硫黄被毒となり得る硫黄成分の高濃度の雰囲気下、かつタール等重質炭化水素などの炭素析出を起こしやすい成分を多量に含んだ過酷な状況下で、重質炭化水素をメタン、一酸化炭素、水素等の軽質化学物質へ変換し、炭素析出及び硫黄被毒により性能劣化した上記触媒を、空気により炭素を除去し、水素による還元処理で硫黄を除去することで、再び酸化物マトリクスからニッケル金属を酸化物表面にクラスター状に微細析出できることを見出した。上記のようなニッケル金属の微細析出は、予め活性種であるニッケル元素をマトリクスとなるアルミナ、マグネシアなどと化合物化させた触媒では、反応前の還元処理で酸化物マトリクスからニッケル金属が酸化物表面にクラスター状に微細析出することによると考えられる。
また、触媒を再生させる際、触媒層温度が800℃の状態で空気を導入した場合、触媒層温度が焼成温度である1000℃以上に急激に上昇して、触媒の比表面積が低下することで、触媒劣化に繋がる。本発明者らは、空気を導入する際は触媒層温度を400〜800℃に維持し、さらに、水素による還元時には触媒層温度を600〜800℃になるように維持することが重要であることを見出した。
本発明の要旨は、下記の通りである。
(1)硫黄被毒された、タール含有ガス改質用の触媒の再生方法であって、ニッケル化合物とマグネシウム化合物との混合溶液に沈殿剤を添加して、ニッケルとマグネシウムを共沈させて沈殿物を生成し、当該沈殿物に、アルミナ粉末と水、または、アルミナゾルを加えて混合して混合物を生成し、当該混合物を、少なくとも乾燥及び焼成する触媒製造工程で製造され、かつ、表面に析出したニッケルの少なくとも一部が水素還元された状態で硫黄を含むタール含有ガスと接触することによって硫黄被毒された前記触媒に、触媒層の温度を400〜800℃に維持したまま空気を接触させる空気接触工程と、前記空気接触工程の後に行われ、かつ、前記触媒に、前記触媒層の温度を600〜800℃に維持したまま水素ガスを接触させる水素ガス接触工程とを有することを特徴とするタール含有ガス改質用触媒の再生方法。
(2)前記空気接触工程において、前記触媒層の温度を400〜750℃に維持することを特徴とする(1)に記載のタール含有ガス改質用触媒の再生方法。
(3)前記触媒製造工程において、前記沈殿物の生成後、当該沈殿物を仮焼することを特徴とする(1)または(2)に記載のタール含有ガス改質用触媒の再生方法。
(4)前記触媒が、セリウムを含有していることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか一項に記載のタール含有ガス改質用触媒の再生方法。
本発明によれば、バイオマスガス化ガスや粗COG等の高濃度の硫化水素を含有するタール含有ガスに含有・随伴するタールを、触媒存在下で軽質化学物質へ転換し、メタン、一酸化炭素、水素等主体の燃料構成に転換することのできる高活性且つ高い耐炭素析出性を有する改質用触媒が、析出炭素及び硫黄被毒によって劣化した際に、触媒中の析出炭素及び硫黄を効率的に除去することができる。その結果、触媒を繰り返し長期間にわたって用いることができるので、タール含有ガス改質設備の安定した運転が可能になる。
触媒を製造し、製造されたタール含有ガス改質用触媒を用いてタール含有ガスの改質を行い、性能劣化した触媒を再生する場合のフローの例を示す図である。 タール改質反応後の触媒の、空気による再生反応中の脱離ガス分子スペクトルである。 空気によって析出炭素を除去されたタール改質用触媒の、水素による還元反応中の脱離ガス分子スペクトルである。 タール改質反応後の触媒の、水蒸気による再生反応中の脱離ガス分子スペクトルである。
以下、本発明の一実施形態に係るタール含有ガス改質用触媒の再生方法について説明する。本実施形態に係るタール含有ガス改質用触媒の再生方法は、炭素質原料を熱分解した際に発生する高温のタール含有ガスを改質して、水素、一酸化炭素、メタンを中心とするガスへ変換する改質用触媒が、硫黄被毒によって性能劣化した際の、改質用触媒の再生方法に関する。
本実施形態でいう「炭素質原料」とは、熱分解してタールを生成する、炭素を含む原料のことである。具体的には、石炭並びにバイオマスやプラスチックの容器包装類など構成元素に炭素を含む広範囲なものを指す。これらのうち、「バイオマス」とは、林地残材、間伐材、未利用樹、製材残材、建設廃材、またはそれらを原料とした木質チップ、ペレット等の二次製品等の木質系バイオマス、再生紙として再利用できなくなった古紙などの製紙系バイオマス、ササやススキをはじめとして、公園や河川、道路で刈り取られる雑草類などの草本系バイオマス、厨芥類等の食品廃棄物系バイオマス、稲わら、麦わら、籾殻などの農業残渣、さとうきび等の糖質資源やとうもろこし等のでんぷん資源及び菜種等の油脂などの資源作物、汚泥、家畜排泄物などを指す。
また、炭素質原料を熱分解した際に発生する「タール」とは、熱分解される原料により性状が異なるが、炭素が5個以上含まれた常温で液体の有機化合物であって、鎖式炭化水素や環式炭化水素などからなる混合物を指す。具体的には、石炭の熱分解であれば、例えばナフタレン、メチルナフタレン、フェナンスレン、ピレン、アントラセンなど縮合多環芳香族などが主成分である。木質系廃棄物の熱分解であれば、例えばベンゼン、トルエン、ナフタレン、インデン、アントラセン、フェノールなどが主成分である。食品廃棄物の熱分解であれば、例えば上記以外にインドール、ピロールなどの六員環または五員環に窒素元素など異種元素を含むヘテロ化合物も含まれる。しかしながら、特にそれらに限定されるものではない。熱分解タールは、熱分解直後の高温状態ではガス状で存在する。
また、タールを接触分解してガス化するタール改質反応は、重質炭化水素主体のタールからメタン、一酸化炭素、水素等の軽質化学物質へ変換する反応である。反応経路は複雑で必ずしも明らかではないが、タール含有ガス中、若しくは外部より導入する水素や水蒸気、二酸化炭素などとの間で起こりうる水素化反応やスチームリフォーミング反応、ドライリフォーミング反応などが考えられる。
これら一連の反応は吸熱反応のため、実機に適用した場合、反応器に入る高温の顕熱を有するガスが触媒層内で改質されて出口では温度が低下する。しかしながら、より高効率にタール等重質炭化水素成分を改質する場合には、必要に応じて空気若しくは酸素を触媒層内に導入することで、一部の炭化水素成分を燃焼させた燃焼熱で触媒層の温度をある程度保ちながらさらに改質反応を進めることも可能である。
タール含有ガスの発生方法としては、石炭を原料とする場合には一般にコークス炉が用いられ、バイオマスを原料とする場合には外熱式ロータリーキルンや移動床炉、流動床炉などを用いることができるが、特にこれらに限定されるものではない。
本実施形態に係るタール含有ガス改質用触媒の再生方法は、触媒製造工程によって製造された触媒が、タール含有ガスの改質において、炭素析出と硫黄被毒とによって性能劣化した際に、触媒性能を回復させる(再生する)方法に関する。
タール含有ガス改質用触媒は、図1に示すように、触媒製造工程で製造された後、酸化物化しているニッケルを水素ガスで還元(水素還元)することによって触媒活性が高められる(還元工程)。触媒活性が高められた触媒は、タール含有ガスの改質に用いられる(改質工程)。タール含有ガスの改質に用いられた触媒は、炭素析出および硫黄被毒によって性能が劣化するので、性能劣化した触媒を空気及び水素ガスと接触させて再生させる(空気接触工程及び水素ガス接触工程)。空気接触工程及び水素ガス接触工程を経た触媒は、必要に応じて還元工程を経た後、再度タール含有ガスの改質に用いられる。
以下、各工程について、具体例を示して詳細に説明する。
(A)触媒製造工程
触媒製造工程では、本実施形態に係るタール含有ガス改質用触媒の再生方法で使用するタール含有ガスの改質用触媒(以下単に触媒という場合がある)を製造する。
触媒製造工程では、上記触媒を、以下のような固相晶析法で製造する。
具体的には、上記触媒を、ニッケル化合物とマグネシウム化合物との混合溶液に沈殿剤を用いて沈殿物を生成し、当該沈殿物に、アルミナ粉末と水、または、アルミナゾルを加えて混合して混合物を生成し、当該混合物を乾燥及び焼成して製造する。若しくは、ニッケル化合物とマグネシウム化合物との混合溶液に沈殿剤を添加して、ニッケルとマグネシウムを共沈させて沈殿物を生成し、生成後に当該沈殿物を仮焼し、仮焼された当該沈殿物に、アルミナ粉末と水、又は、アルミナゾルを加えて混合して混合物を生成し、当該混合物を乾燥及び焼成して製造する。セリウムを含有させる場合は、セリウム化合物をニッケル化合物とマグネシウム化合物と同じタイミングで溶液に混合することが好ましいが、アルミナ粉末と水、または、アルミナゾルを加えて混合して混合物を生成した後に、セリウム化合物を含浸させてもよい。
アルミナを粉末で加える場合は可能な限り細かい粒径が好ましい。例えば平均粒径は100マイクロメートル以下が好適であり、混合時には水などを加えてスラリー状で用いる。アルミナをアルミナゾルで加える場合は、アルミナの粒子が平均で100ナノメートル以下のものを用いるのが好適である。
上記混合物を乾燥及び焼成する方法としては、(a)乾燥及び焼成、(b)乾燥、粉砕及び焼成、(c)乾燥、粉砕、成型及び焼成、(d)乾燥、仮焼、粉砕、成型及び焼成、または、(e)乾燥、粉砕、仮焼、粉砕、成型及び焼成する方法等が挙げられる。
ここで、上記混合物を乾燥させる方法としては、特に温度や乾燥方法を問わず、一般的な乾燥方法であればよい。乾燥後の混合物は必要に応じて粗粉砕を行った後、焼成すれば良い。ただし、流動層等の乾燥により乾燥後の沈殿物が粉状を保っている場合は、粗粉砕は不要である。
混合物の乾燥の前には、ろ過をしておくことが、好ましい。更に、ろ過後の沈殿物は、純水等で洗浄しておくことが、より好ましい。ろ過した場合、乾燥の手間を少なく且つ乾燥に要するエネルギーを低減することができる。また、純水等で洗浄した場合、不純物量を低減できる。
上記混合物の焼成は、空気中で行うことができ、焼成温度は700〜1300℃の範囲であれば良い。より好ましくは、900〜1150℃である。焼成温度が高いと混合物の焼結が進行し、強度は上昇するが、一方で比表面積が小さくなるために触媒活性は低下する。したがって、そのバランスを考慮して決定することが望ましい。
焼成後は、そのまま触媒として使用することもできるが、プレス成型等で成型して成型物として使用することもできる。乾燥と焼成の間に、仮焼及び成型工程を加えることもできる。さらに仮焼と成型工程との間に、成型前に粉粒状にする必要があれば、粉砕後、成型すればよい。その場合、仮焼は空気中で400〜650℃程度で行えば良く、成型は、プレス成型等で行えば良い。
ここで触媒は、粉体、または成型体のいずれの形態としてもよい。成型体の場合には球状、シリンダー状、リング状、ホイール状、粒状など、さらに金属またはセラミックスのハニカム状基材へ触媒成分をコーティングしたものなどいずれでもよい。流動床で使用する場合には、噴霧乾燥などにより成形したものなどを用いるのが良い。固定床や移動床で使用する場合には、成型方法として、造粒、押出成型、プレス成型、打錠成型等が好適に用いられるが、特にこれに制限されるものではない。
上述のように、ニッケル及びマグネシウムの沈殿物にアルミナ粉末と水、あるいはアルミナゾルを湿式混合することにより、アルミナ成分を含有した水分が、ニッケル及びマグネシアの共沈物との間で高度に均質な混合物を形成することが可能となる。そのため、その混合物を乾燥及び焼成、又は乾燥、仮焼、粉砕、成型及び焼成することで、ニッケルとマグネシウムとの化合物とアルミナが均質に分布した焼結体を形成し、ニッケルマグネシア結晶相がより一層微細化され、そこから析出するNi粒が高度に微細分散することから、高活性で炭素析出量の少ない成型物を得ることができると考えられる。そのため、本実施形態に係るタール含有ガス改質用触媒の再生方法で使用するタール含有ガス改質用触媒は、単にニッケルとマグネシウムの共沈物を形成後、焼成した粉末にアルミナ粉末を物理的に混合して成型及び焼成したものとは異なる。
より具体的には、ニッケル化合物とマグネシウム化合物との混合溶液を調製する際、水に対して溶解度の高い各金属化合物を用いることが適当である。例えば硝酸塩、硫酸塩、塩化物などの無機塩のみならず、酢酸塩などの有機塩も好適に用いられる。特に好ましくは、焼成後に触媒被毒になり得る不純物が残りにくいと考えられる硝酸塩または酢酸塩である。また、それらの溶液から沈殿物を形成する際に用いる沈殿剤は、上記溶液のpHをニッケル、マグネシウムが主に水酸化物として沈殿する中性〜塩基性へ変化させるものであれば何でも用いることができる。中でも、例えば炭酸カリウム水溶液や炭酸ナトリウム水溶液、アンモニア水溶液や尿素溶液などが好適に用いられる。
上述の方法で製造された触媒は、(1)ニッケル、マグネシウム、アルミニウムを構成元素とし、好ましくはさらにセリウムを含有し、(2)アルミナ相(単独化合物としてのアルミナ)を5質量%超含まず、(3)少なくとも1種の複合酸化物(好ましくはNiMgO、MgAl)、及び、セリウムを含む場合には、CeOの結晶相を主に含有する。
上記触媒では、ニッケルが、重質炭化水素をガス中に存在または外部より導入される水蒸気、水素、二酸化炭素との間で改質反応を進行させる主活性成分として機能する。
また、ニッケル元素と化合物化した成分のうち、マグネシアは塩基性酸化物であり、二酸化炭素を吸着する機能を保有することにより、主活性成分元素上での析出炭素と反応して一酸化炭素として酸化除去する役割を発揮する。そのため、触媒表面を清浄に保ち、触媒性能を長期間安定に保持することに寄与すると思われる。アルミナは、化合物マトリクスを安定に保つバインダー的機能を果たすとともに、ニッケル、マグネシウムを含む結晶相を細かく分断して、酸化物固相中で高度に分散させること等により、各結晶相から表面に析出する活性種のニッケル粒が小さく且つ高度な分散状態になるような機能を果たすものと考えられる。
上記触媒は、上述のような金属酸化物を含有している。また、このマトリクス化合物から、還元雰囲気下で、活性金属粒子を微細クラスター状に析出させることができる。すなわち、上記触媒では、ニッケル金属が触媒表面上でクラスター状に微細分散するので表面積が大きく、且つ還元雰囲気下では反応中に活性金属粒子が被毒を受けても新たな活性金属粒子がマトリクスから微細析出するので、タール含有ガス中に高濃度の硫化水素が共存した場合でも、硫黄被毒による活性劣化の影響を受けにくいと考えられる。
本実施形態に係るタール含有ガス改質用触媒の再生方法で使用するタール含有ガス改質用触媒は、主活性成分であるニッケル含有量が1〜50質量%であり、マグネシウム含有量が1〜45質量%であり、アルミナの含有量が20〜80質量%であることが好ましい。触媒がセリウムを含む場合、セリウムの含有量は1〜40質量%であることが好ましい。
ここでいうアルミナはアルミナ粉末またはアルミナゾルの状態でニッケルとマグネシウムの酸化物に加える含有量であり、単独化合物として触媒に含有されている量ではない。
上記触媒において、ニッケル含有量が1質量%以上の場合、ニッケルの改質性能を十分に発揮することができる。また、ニッケル含有量が50質量%以下の場合には、マトリクスを形成するマグネシウム、セリウム、アルミニウムの含有量を適切に保つことができ、触媒上に析出するニッケル金属の濃度が高く且つ粗大化することを回避することができる。このため、改質反応において性能が経時劣化することを抑制できる。したがって、ニッケル含有量は、1〜50質量%であることが好ましい。より好ましくは、1〜35質量%である。
マグネシウム含有量が、1質量%以上の場合、マグネシアの有する塩基性酸化物の性質を活かし易い。そのため、炭化水素の炭素析出を抑制して触媒性能を長期間安定に保持し易くすることができる。マグネシウム含有量が1質量%未満である場合、マグネシウムとニッケルの固溶体中のニッケル濃度が高くなるため、固溶相から析出するニッケル粒が粗大化し易く、タール含有ガスの改質反応後での触媒上の炭素析出量が多くなり易い。また、マグネシウム含有量が45質量%以下の場合、他のニッケル、セリウム、アルミニウムの含有量を適切に保ち、触媒の改質活性を十分に発揮することができる。したがって、マグネシウム含有量は、1〜45質量%であることが好ましい。より好ましくは、1〜35質量%である。
アルミナの含有量が20質量%未満では、ニッケルマグネシア(NiMgO)相主体のセラミックスとなり、MgAl相の割合が少なくなって、NiMgO相が微細化せずにそこから析出するNi粒が大きくなる場合がある。この場合、活性が低くなったり、成型した際、強度が著しく低くなったりする。また、アルミナの含有量が80質量%を超える場合、主活性成分であるニッケルや炭素析出を抑制するマグネシアの割合が低くなるので、触媒の改質活性を十分発揮できなくなる恐れがある。したがって、アルミナの含有量は、20〜80質量%であることが好ましい。
セリウムの含有量が、1質量%以上の場合、酸化セリウムの酸素吸蔵能によって、ニッケルマグネシアからのニッケルの析出が起こり難くなることを回避することができる。また、セリウムの含有量が40質量%以下の場合には、主活性成分であるニッケルや炭素析出を抑制するマグネシアの割合を適正な範囲に保つことができ、触媒の改質活性を十分発揮させることができる。そのため、セリウムを、1〜40質量%含有することが好ましい。より好ましくは、3〜35質量%である。
各金属種の含有量を上記範囲になるように調製するためには、各出発原料を予め計算の上準備しておくことが好ましい。尚、一度触媒が狙いの成分組成となれば、それ以降はその時の配合で調製すればよい。
また、上記の元素以外に触媒製造工程等で混入する不純物や触媒性能が変わらない他成分を含んでも構わないが、できるだけ不純物が混入しないようにするのが望ましい。
上記触媒を構成する各金属種の含有量の測定方法は、誘導結合プラズマ法(ICP)と呼ばれる方法を用いることができる。具体的には、試料を粉砕後、アルカリ融解剤(例えば炭酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウムなど)を加えて白金坩堝内で加熱融解し、冷却後に塩酸溶液に加温下で全量溶解させる。その溶液をICP分析装置へ挿入すると、装置内の高温プラズマ状態の中で試料溶液が原子化・熱励起し、これが基底状態に戻る際に元素固有の波長の発光スペクトルを生じるため、その発光波長及び強度から含有元素種、量を定性的及び定量的に評価することができる。
(B)還元工程
還元工程では、上述のような固相晶析法で製造された触媒に対し、酸化物化しているニッケルを水素で還元して金属微粒子化し、触媒活性を高める。
ここで、比較的高温で且つ還元性雰囲気であれば、触媒から活性金属であるニッケル粒子が微細クラスター状に析出するので、上記触媒を還元する場合の条件としては、特に制限されるものではない。しかしながら、例えば、水素、一酸化炭素、メタンの少なくともいずれかを含むガス雰囲気下、又はそれら還元性ガスに水蒸気を混合したガス雰囲気下、又はそれらのガスに窒素など不活性ガスを混合した雰囲気下であっても良い。還元温度は、触媒層の温度が例えば600℃〜1000℃が好適であり、700〜900℃がより好適である。触媒層温度は触媒層の中心付近にK型熱電対を挿入して計測できる。還元時間は充填する触媒量にも依存し、例えば30分〜2時間が好適であるが、充填した触媒全体が還元するのに必要な時間であればよく、特にこの条件に制限されるものではない。
原料ガス中に水素ガスが多く含まれる場合(例えば、30体積%以上)は、改質工程の初期で、還元工程を兼ねることも可能である。すなわち、原料ガス中に水素ガスが多く含まれる場合、還元工程を設けなくてもよい。
また、再生された触媒を用いて改質を行う場合には、水素ガス接触工程が還元工程を兼ねることができるので、その場合には、改質工程前に別途還元工程を設けなくてもよい。
(C)改質工程
改質工程では、触媒製造工程で製造され、必要に応じて還元工程において水素で還元された触媒を用いて、炭素質原料を熱分解した際に発生する多量の硫化水素を含んでかつ炭素析出を起こしやすい縮合多環芳香族主体のタール含有ガスに随伴するタール等の重質炭化水素を、高効率に改質して水素、一酸化炭素、メタンを主体とする軽質化学物質に変換する。
縮合多環芳香族主体のタールは、乾留直後の高温状態では反応性に富む状態であるので、微細分散して高比表面積を持った高活性なニッケル金属と接触することにより、高効率に軽質炭化水素へ変換・分解されると考えられる。
改質工程では、前記触媒の存在下、又は触媒を還元した後に、炭素質原料を熱分解した際に発生するタール含有ガスに、ガス中に存在する若しくは外部より導入する水素、二酸化炭素または水蒸気を接触させて、タール含有ガス中のタールを改質してガス化する。改質用触媒は改質工程前に還元されることが好ましいが、改質反応中に還元が進行する場合があるため、還元しなくても良い。従って、前記触媒の存在下、又は触媒を還元した後に、炭素質原料を熱分解した際に発生するタール含有ガスに、外部より導入する水蒸気及び空気若しくは酸素を加えた混合ガスを接触させて、タール含有ガス中のタールを改質してガス化する。
改質を行う際の触媒反応器としては、固定床形式、流動床形式、移動床形式等が好適に用いられる。改質を行う際、触媒層の温度がわかるように、反応器の大きさに合わせて1点〜数点にK型熱電対等を挿入して、温度を測定することが望ましい。例えば、触媒層(反応器)が大きい場合には触媒層は均一混合層とは看做せなくなることから、触媒層入口付近、中央付近、出口付近の3ヶ所を測定することが好ましい。
改質を行う場合、その触媒層の入口温度としては、600〜950℃であることが好ましい。触媒層の入口温度が600℃未満の場合は、タールが水素、一酸化炭素、メタンを主体とする軽質炭化水素へ改質する際の触媒活性がほとんど発揮されないことが懸念される。一方、触媒層の入口温度が900℃を超える場合には、耐熱構造化が必要になるなど改質装置が高価になるため経済的に不利となる。より好ましくは、触媒層の入口温度は、650〜900℃である。
炭素質原料が石炭の場合には比較的高温で、木質系バイオマスや製紙系バイオマスまたは食品廃棄物系バイオマス等の場合には比較的低温で反応を進めることも可能である。
以下、本実施形態における触媒層温度の規定は、触媒層が大きい場合は、還元工程では触媒層の中心付近、改質工程及び、後述する空気接触工程及び水素ガス接触工程では触媒層の入口付近温度を指す。これは、還元工程では触媒と水素との反応による発熱は小さいが、改質工程では吸熱、空気接触工程及び水素ガス接触工程では発熱が大きく、触媒層が均一な温度分布になりにくいためである。一方、触媒層が小さく均一混合層と看做せる場合は、中心付近の代表点を指すこととする。
上述した触媒を用いれば、炭素質原料を熱分解又は部分酸化して生成されるタール含有ガスが、コークス炉から排出される高温のコークス炉ガスのような硫化水素濃度が非常に高いタール含有ガスであっても、タールを改質してガス化することができる。
ここで、熱分解又は部分酸化とは、具体的には乾留、又は炭素質原料をガス化のために一部のみ酸化させてタール含有ガスを製造することを言う。現在のコークス炉では、炉内に原料の石炭を充填後、加熱・乾留してコークスを製造するが、付随して発生するコークス炉ガスは炉頂部の上昇管と呼ばれる部分から安水(アンモニア水)を噴霧して冷却後、集気管であるドライメーンに集められる。しかしながら、ガス成分はコークス炉の上昇管で800℃程度の顕熱を保有しているにもかかわらず、安水噴霧後には100℃下まで急冷されてしまい、その顕熱を有効に利用できていない。そのため、このガス顕熱を有効に利用し且つタール等重質炭化水素成分を水素、一酸化炭素、メタン等軽質炭化水素などの燃料成分に転換できれば、エネルギー増幅に繋がるばかりでなく、そこで生成される還元性ガス体積が大幅に増幅されることにより、例えば鉄鉱石に適用して還元鉄を製造するプロセスが可能となれば、現在鉄鉱石をコークスにより還元する高炉プロセスで発生する二酸化炭素排出量を大幅に削減できる可能性がある。上述の触媒を用いて改質を行えば、コークス炉で発生する顕熱を保有するコークス炉ガスを改質用触媒と接触させて、ガス顕熱を有効に利用して改質を行い、水素、一酸化炭素、メタン等軽質炭化水素などの燃料成分に転換させることが可能である。
上述の触媒を用いた場合、硫化水素雰囲気下でも安定して改質反応が進行する。しかしながら、ガス中の硫化水素濃度は低ければ低いほど被毒されないため好ましい。特に、ガス中の硫化水素濃度は、4000ppm以下であることが好ましい。より好ましくは、3000ppm以下である。
触媒反応器に内蔵されるタール含有ガス改質用触媒は、タールから水素、一酸化炭素、メタンを主体とする軽質化学物質への転換時に、触媒表面上炭素が析出したり、もしくは前記熱分解工程で得られた熱分解ガス中に含まれる硫黄成分が触媒に吸着したり、触媒表面に金属微粒子として析出していたニッケルや、酸化セリウムの一部が硫化物化したりすることで、触媒が性能劣化する。触媒の性能劣化とは、タールの分解率低下や、タールが改質されて生成する水素、一酸化炭素、メタン等の軽質化学物質の生成量の低下を示す。タール分解率が30%未満と低くなったり、水素増幅率が1.2未満になったりした場合は、触媒の再生を行うことが望ましい。
(D)空気接触工程及び水素ガス接触工程
空気接触工程及び水素ガス接触工程では、上述した方法で製造され、改質工程において性能劣化した触媒(タール含有ガス改質用触媒)を再生する。
再生に際しては、性能劣化した前記触媒に、触媒層の温度を400〜800℃に維持した状態で空気を接触させて触媒上の析出炭素を除去する空気接触工程と、その後に行う、前記触媒層の温度を600〜800℃に維持して、前記触媒に水素ガスを接触させて硫黄を除去する水素ガス接触工程とを行う。本実施形態に係るタール含有ガス改質用触媒の再生方法においては、空気を接触させて炭素を除去する空気接触工程と、水素ガスを接触させて硫黄を除去する水素ガス接触工程とを分けて、段階的に行うことに特徴がある。
上記再生方法によれば、ニッケルマグネシア触媒性能を回復させることができるので、長期間安定した運転が可能になる。
なお、再生方法における水素ガス接触工程は、還元工程を兼ねることもできる。
空気接触工程において、触媒と空気とを接触させる温度は、触媒層の温度で、炭素が燃焼可能な400℃以上とすることが好ましい。図2にタール改質反応後の炭素析出及び硫黄被毒した触媒に、空気を模擬した20%O/Heバランスガスを流通させながら、触媒を5℃/minで昇温させ、脱離するガスを質量分析計で分析したプロファイルを示す。図2から、炭素が燃焼し、二酸化炭素として十分速く脱離するのに必要な温度は400℃以上であることがわかる。一方、触媒反応器や配管の材質を高価な耐熱合金にしない限り、設備保護上、触媒層温度を約830℃以上には昇温できない。そのため、空気による炭素除去は、触媒層の温度を段階的に上昇させることが好ましく、800℃以下で行うことが好ましい。より好ましくは、750℃以下である。750℃以下とすることで、エネルギー消費量も抑えつつ、反応器等の設備を保護できると共に、燃焼熱による熱暴走等も抑えることができる。この工程では炭素が除去さえできればよく、触媒層出口の二酸化炭素濃度を質量分析計、ガスクロマトグラフ、赤外線式CO分析計等の分析装置で監視し、二酸化炭素濃度が0.5%以下になれば、炭素をほぼ除去できたと判断する。また、事前の検討により、触媒量と空気導入量から適切な時間を算出しておき、空気による再生時間をあらかじめ決定しておいてもよい。
空気を炭素が析出した触媒に接触させると、発熱反応である炭素の燃焼により、触媒層温度が急激に上昇する。触媒反応器や配管の材質を高価な耐熱合金としない限り、設備保護上、約830℃以上に上昇させることは好ましくないので、発熱により830℃以上になりそうな時は、空気導入量を減らしたり、窒素導入量を増やしたりすることが好ましい。
一方、硫黄が酸化して二酸化硫黄として脱離する温度は800℃以上必要である。しかしながら、触媒反応器や配管の材質を高価な耐熱合金にしない限り、設備保護上、触媒層温度を約830℃以上には昇温できない。そのため、空気によって硫黄を除去できるのはごくわずかである。
上記の空気接触工程において触媒上の析出炭素の除去が完了し、窒素等の不活性ガスで触媒層および配管内をパージした後、水素ガスを触媒と接触させる、水素ガス接触工程を行う。水素ガス接触工程における触媒層の温度(還元温度)は、硫黄を除去可能な600℃以上で行うことが好ましい。図3に空気による燃焼後の触媒に水素を流通させながら、触媒を5℃/minで昇温させ、脱離するHSを質量分析計で分析したプロファイルを示す。空気による燃焼後に触媒上に残留していた硫黄は、600℃以上の温度でHSとして十分速く脱離できることがわかる。この水素ガス接触工程では、タール改質反応で活性種となるニッケル金属微粒子をニッケルマグネシア相から析出させる目的もあり、700℃以上で行うことがより好ましい。一方で還元温度は硫黄の除去とニッケル金属微粒子の析出とを鑑みると、800℃以下であれば十分である。
空気接触工程では、空気の代わりに水蒸気を導入することで、析出炭素や触媒上の硫黄を除去することも考えられる。しかしながら、図4に示すように、水蒸気によって析出炭素や触媒上の硫黄を除去する場合、COの脱離が750℃以上の高温でわずかにみられること、HSとしての脱離が高温でごく微量観られるだけである。そのため、水蒸気によって、析出炭素や触媒上の硫黄が除去される速度は、空気による燃焼と水素による還元によって除去される速度と比べ、非常に遅いと言える。したがって、空気の代わりに水蒸気を導入することで、析出炭素や触媒上の硫黄を除去することは、好ましくない。
上述の通り、本実施形態に係るタール含有ガス改質用触媒の再生方法によれば、性能劣化した触媒を再生することができる。具体的には、触媒反応器へ空気を導入し、空気に含まれる酸素と炭素との反応により触媒表面の炭素を燃焼させ、二酸化炭素として除去し、また、触媒表面で硫化物となったニッケルや酸化セリウム中の硫黄の一部を二酸化硫黄として除去し、ニッケルはマトリクスへと戻すことが可能である。さらに、水素を触媒と接触させ還元させることで、触媒表面に残留する硫黄を還元して硫化水素として除去でき、同時に、マトリクスからニッケル金属微粒子を析出させ、触媒活性を回復させることができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定さ
れない。
(実施例1)
まず、以下の要領で触媒を製造した。
硝酸ニッケル、硝酸マグネシウムを各金属元素のモル比(ニッケル:マグネシウム)が1:9になるように精秤して、60℃に加温した混合水溶液を調製し、この混合水溶液に、60℃に加温した炭酸カリウム水溶液を加えた。これにより、ニッケル、マグネシウムを水酸化物として共沈させ、スターラーで十分に攪拌した。水溶液の温度はアルコール温度計を水溶液中に挿入して計測した。その後、混合水溶液の温度を60℃に保持したまま一定時間攪拌を続けて熟成を行った後、吸引ろ過を行い、80℃の純水で十分に洗浄を行った。洗浄後に得られた沈殿物をビーカーに入れ、アルミナゾルを加えた。次に、攪拌羽を取り付けた混合器で十分混合したものを、ナス型フラスコに移してロータリーエバポレーターに取り付け、攪拌しながら吸引することで、水分を蒸発させた。ナス型フラスコ壁面に付着したニッケルとマグネシウムとアルミニウムとの化合物を蒸発皿に移して空気雰囲気温度120℃で乾燥、空気雰囲気温度600℃で仮焼後、粉末を打錠成形器を用いて直径15mm、内径5mm、高さ15mmのリング状に成型し、成型体を得た。その成型体を空気雰囲気中950℃で焼成を行い、Ni0.1Mg0.9Oにアルミニウムをアルミナとして50質量%混合した触媒成型体を調製した。
上記の触媒60Lを、SUS310製の固定床反応器に充填して、触媒層の入口付近、中心付近、出口付近の3ヶ所にK型熱電対を挿入した状態で、電気炉内に設置した。
改質反応を始める前に、まず反応器内を窒素雰囲気下で、触媒層の各温度を800℃まで昇温した後、水素ガスを15Nm/h流しながら30分間還元処理を行った。
その後、コークス炉から発生したCOGを未精製のまま固定床反応器内に導入した。COG中のタール濃度は約60g/mで、硫化水素濃度は約3000ppmであった。COG中には水蒸気も含まれているが、改質活性をさらに向上させるために、外部から水蒸気を追加した。この際、COG中のタール及び炭化水素由来の炭素のモル数に対して、2倍のモル数(水蒸気/炭素=2)となるように水蒸気を添加した。空間速度(SV:Space Velocity)を500h−1として、1回目の改質反応を6時間行った。
反応前後のガス分析を行い、タール分解率及び水素増幅率を以下の方法で求めた。
反応前後のガス分析として、触媒層の入口と出口とから分析装置に悪影響を及ぼすタールを除去するための糸巻きフィルター及び水を充填した三連式のガス洗浄瓶を通して、ガス前処理装置(島津製作所製CFP−8000)のポンプで抜き出した。この抜き出したガスを冷却器で水分を除去した後、四重極質量分析計(AMETEK製、Proline)によりH、N、O、CO、CO、CH、C、Cを3秒ごとに分析した。また、TCD及びFIDガスクロマトグラフ(ラウンドサイエンス製AG−1)によりH、N、CO、CO、CH、C、C、HSを12分間ごとに連続的に分析した。
また、オフラインにて触媒反応器前後のガスサンプリングを行い、ガス中のタール濃度、水分濃度、H、CO、CO、CH、C、C、HS、ベンゼン、トルエン、キシレンの分析を行った。ガス中のタール濃度は、触媒層の入口と出口とからガスを一定時間吸引して、ジクロロメタンを充填した五連式ガス洗浄瓶を通してガス中のタール成分を捕集した後、ジクロロメタンを除去後の成分を定量することにより評価した。そして、タール分解率は、前記手法で捕集した触媒層入口ガス中タール成分の質量に対する触媒層出口ガス中タール成分の質量の割合から求めた。H(水素)増幅率は(式1)により算出した。
水素増幅率(−)=(改質COG中Hモル数)/(COG中Hモル数) (式1)
Figure 2016187786
その結果、表1に示すように改質反応1回目は、6時間平均でタール分解率が53.4%、水素増幅率が1.8であった。
6時間の改質反応後、COG及び水蒸気の導入を止め、窒素50Nm/hでパージしながら、同時に、触媒層の各温度を500℃まで低下させた。触媒反応器や配管の中が十分パージでき、触媒層の各温度が500℃まで低下したら、触媒の再生を開始した。
まず、以下の要領で触媒を空気に接触させた。すなわち、窒素流量を20Nm/hまで低下させ、空気を10Nm/h導入した。触媒層入口付近の温度が上昇し始め、触媒反応器出口の質量分析計によるガス分析でCO濃度が上昇し始めると、触媒層の炭素が燃焼し始めたことを確認できる。触媒層温度が800℃を超えそうになった場合は、空気流量を落とし、N流量を30Nm/hに上げた。触媒層入口付近の温度が下がってくると、次に触媒層中心付近の温度が上昇し始め、触媒層中心付近の温度が下がり始めると、さらに触媒層出口付近の温度が上昇し始める。このような調整を約1時間行っていると、空気15Nm/h、窒素15Nm/hとしても、触媒層の各温度が設定温度である500℃に近づくように低下してきたので、触媒層の各温度を600℃まで上昇させた。以降、触媒層の各温度を見ながら、50〜100℃ずつ750℃まで上昇させた。また、徐々に空気流量を上げ、かつ窒素流量を下げながら、最終的に空気流量30Nm/hとした。最終的に5時間経過した時点で、触媒層出口の二酸化炭素濃度が0.4%となったことを確認して、1回目の空気の導入を停止し、窒素50Nm/hでパージしながら、触媒層の温度を800℃に上昇させた。
続いて、以下の要領で、触媒に水素ガスを接触させて、還元処理を行った。すなわち、十分に窒素パージを行った後、水素ガスを15Nm/h流しながら30分間還元処理を行った。
そして、上記方法で再生を行った後、1回目の改質反応と同じ条件で、2回目の改質反応を行った。その結果、改質反応2回目では、6時間平均でタール分解が51.7率%、水素増幅率が1.8となり、フレッシュな触媒で行った1回目の活性とほぼ同じ活性に回復していた。
2回目の改質反応後に、1回目の再生と同じ条件で再生を行った。そして、3回目の改質反応を1回目および2回目と同じ条件で行った、その結果、改質反応3回目では、6時間平均でタール分解率が50.4%、水素増幅率が1.8となり、フレッシュな触媒で行った1回目の活性と再びほぼ同じ活性に回復していた。以降同じ工程を繰り返したところ、表1に示すように、4〜5回目の改質反応での活性も1回目の活性とほぼ同じ性能を発現できた。すなわち、上記の触媒を用いて、上記の条件で触媒の再生を行うことで、性能劣化した触媒の活性を回復させることができ、COG中タール改質反応を長期間安定して行うことができることがわかった。
(実施例2)
以下の要領で触媒を製造した。
硝酸ニッケル、硝酸セリウム、硝酸マグネシウムを各金属元素のモル比(ニッケル:セリウム:マグネシウム)が1:1:8になるように精秤して、60℃に加温した混合水溶液を調製したものに、60℃に加温した炭酸カリウム水溶液を加えた。これにより、ニッケル、マグネシウム、及び、セリウムを水酸化物として共沈させ、スターラーで十分に攪拌した。水溶液の温度はアルコール温度計を水溶液中に挿入して計測した。その後、60℃に保持したまま一定時間攪拌を続けて熟成を行った後、吸引ろ過を行い、80℃の純水で十分に洗浄を行った。洗浄後に得られた沈殿物をビーカーに入れ、アルミナゾルを加えた。次に、攪拌羽を取り付けた混合器で十分混合したものを、ナス型フラスコに移してロータリーエバポレーターに取り付け、攪拌しながら吸引することで、水分を蒸発させた。ナス型フラスコ壁面に付着したニッケルとマグネシウムとセリウムとアルミニウムの化合物を蒸発皿に移して空気雰囲気温度120℃で乾燥、空気雰囲気温度600℃で仮焼後、粉末を打錠成形器を用いて直径15mm、高さ15mm、内径5mmのリング状に成型し、成型体を得た。その成型体を空気雰囲気中950℃で焼成を行い、Ni0.1Ce0.1Mg0.8Oにアルミニウムをアルミナとして50質量%混合した触媒成型体を調製した。
上記触媒を用いて、実施例1と同様にして、改質反応と再生とを繰り返した。
改質反応(1回目〜5回目)のタール分解率及び水素増幅率を表2に示す。
Figure 2016187786
表2に示すように改質反応1回目は、6時間平均でタール分解率が64.1%、水素増幅率が2.0となった。また、2〜5回目の改質反応での活性もほぼ同じ性能を発現できた。すなわち、本発明の再生方法によれば、触媒活性を回復させ、COG中タール改質反応を長期間安定的に行うことができることがわかった。
なお、実施例1に比べて、タール分解率及び水素増幅率は向上した。すなわち、触媒にセリウムが含有されている方が、タール分解率及び水素増幅率が高くなることがわかった。
(実施例3)
実施例2で使用した触媒を用いて、実施例1と同様にして、1回目の改質反応を行った。その結果、表3に示すように、6時間平均でタール分解率が64.2%、水素増幅率が2.0で、実施例2とほぼ同じであった。
Figure 2016187786
6時間の改質反応後、COG及び水蒸気の導入を止め、窒素50Nm/hでパージしながら、同時に、触媒層の各温度を400℃まで低下させた。触媒反応器や配管の中が十分パージでき、触媒層の各温度が400℃まで低下したら、触媒の再生を開始した。
まず、以下の要領で触媒を空気に接触させた。すなわち、窒素流量を20Nm/hまで低下させ、空気を10Nm/h導入した。触媒層入口付近の温度が上昇し始め、触媒反応器出口の質量分析計によるガス分析でCO濃度が上昇し始めると、触媒層の炭素が燃焼し始めたことを確認できる。830℃を超えそうになった場合は、空気流量を落とし、N流量を30Nm/hに上げた。触媒層入口付近の温度が下がってくると、次に触媒層中心付近の温度が上昇し始め、触媒層中心付近の温度が下がり始めると、さらに触媒層出口付近の温度が上昇し始める。このような調整を約1時間行っていると、空気15Nm/h、窒素15Nm/hとしても、触媒層の各温度が設定温度である500℃に近づくように低下してきたので、触媒層の各温度を600℃まで上昇させた。以降、触媒層の各温度を見ながら、100℃ずつ800℃まで上昇させた。また、徐々に空気流量を上げ、かつ窒素流量を下げながら、最終的に空気流量30Nm/hとした。最終的に5時間経過した時点で、触媒層出口の二酸化炭素濃度が0.4%となったことを確認して、1回目の空気の導入を停止し、窒素50Nm/hでパージした。
続いて、実施例1と同じ要領で、触媒に水素ガスを接触させて、還元処理を行った。
そして、上記方法で再生を行った後、1回目の改質反応と同じ条件で、2回目の改質反応を行った。その結果、改質反応2回目では、6時間平均でタール分解率が62.5%、水素増幅率が1.9となり、フレッシュな触媒で行った1回目の活性とほぼ同じ活性に回復していた。以降同じ工程を繰り返したところ、表3に示すように、3〜5回目の改質反応での活性も1回目の活性とほぼ同じ性能を発現できた。すなわち、空気接触工程で触媒層温度を400℃まで下げ、800℃までの温度で行っても、同様に触媒活性を回復させ、COG中タール改質反応を長期間安定的に行うことができることがわかった。
(実施例4)
以下の要領で触媒を製造した。
硝酸ニッケル、硝酸マグネシウムを各金属元素のモル比が1:9になるようにし、ニッケルとマグネシウムとの沈殿物を空気雰囲気温度120℃で乾燥し、粗粉砕し、空気雰囲気中600℃で仮焼したものを、解砕した後にビーカーに入れ、アルミナゾルを加えた。これ以外の工程は、実施例1と同様に行った。
上記触媒を用いて、実施例1と同様にして、改質反応と再生とを繰り返した。改質反応(1回目〜5回目)のタール分解率及び水素増幅率を表4に示す。
Figure 2016187786
表4に示すように改質反応1回目は、6時間平均でタール分解率が53.4%、水素増幅率が1.8であった。また、2〜5回目の改質反応での活性もほぼ同じ性能を発現できた。すなわち、触媒の調製において、アルミナを混合する前に、ニッケルとマグネシアの共沈物を乾燥・仮焼した触媒を用いても、再生によって触媒活性を回復させて、COG中タール改質反応を長期間安定して行うことができることがわかった。
(実施例5)
触媒調製において、硝酸ニッケル、硝酸セリウム、硝酸マグネシウムを各金属元素のモル比が1:1:8になるようにし、ニッケル、マグネシウム、及び、セリウムの沈殿物を空気雰囲気温度120℃で乾燥し粗粉砕し、空気雰囲気中600℃で仮焼したものを解砕した後にビーカーに入れ、アルミナゾルを加えるとする工程以外は、実施例1と同様に行った。
上記触媒を用いて、実施例1と同様にして、改質反応と再生とを繰り返した。改質反応(1回目〜5回目)のタール分解率及び水素増幅率を表5に示す。
Figure 2016187786
表5に示すように改質反応1回目は、6時間平均でタール分解率63.2%、水素増幅率2.0となった。また、2〜5回目の改質反応での活性もほぼ同じ性能を発現できた。すなわち、触媒がセリウムを含有する場合にも、触媒の調製において、でアルミナを混合する前に、ニッケル、マグネシウム、及び、セリウムの共沈物を乾燥・仮焼していても、再生によって触媒活性を回復させて、COG中タール改質反応を長期間安定して行うことができることがわかった。
(実施例6)
実施例1と同じ触媒を用いて、実施例1と同じ量の触媒を同じ反応器に充填した。充填後、改質反応を始める前に、窒素雰囲気下で触媒層の各温度を800℃まで昇温した後、水素ガスを15Nm/h流しながら30分間還元処理を行った。その後、実施例1と同様に、コークス炉から発生したCOGを未精製のまま導入した。ただし、本実施例では実施例1とは異なり、外部から水蒸気は追加しなかった。そのため、本実施例では水蒸気は、COGに含まれる水分のみであり、モル比で、水蒸気/炭素=0.8であった。このような条件で改質反応を行うと、炭素析出量が大きくなる。
上記触媒を用いて、実施例1と同様にして、改質反応と再生とを繰り返した。改質反応(1回目〜5回目)のタール分解率及び水素増幅率を表6に示す。
Figure 2016187786
表6に示すように改質反応1回目は、6時間平均でタール分解率が45.2%、水素増幅率が1.5であった。また、2〜5回目の改質反応での活性もほぼ同じ性能を発現できた。すなわち、炭素析出量が大きくなるような条件下の改質反応であっても、本発明の再生方法によれば、触媒活性を回復させて、COG中タール改質反応を長期間安定的に行うことができることがわかった。
(実施例7)
実施例2と同じ触媒を用いて、実施例6と同様にして、改質反応と再生とを繰り返した。改質反応(1回目〜5回目)のタール分解率及び水素増幅率を表7に示す。
Figure 2016187786
表7に示すように、改質反応1回目は、6時間平均でタール分解率55.2%、水素増幅率1.7となった。2〜5回目の改質反応での活性もほぼ同じ性能を発現できた。すなわち、炭素析出量が大きくなるような条件下の改質反応でも、本発明の再生方法によれば、触媒活性を回復させて、COG中タール改質反応を長期間安定的に行うことができることがわかった。また、炭素析出量が大きくなるような条件下の改質反応でも、セリウムが含有されている方が、タール分解率及び水素増幅率が高くなることがわかった。
(実施例8)
まず、以下の要領で触媒を製造した。
硝酸ニッケル、硝酸マグネシウムを各金属元素のモル比が1:9になるように精秤して、アルコール温度計を水溶液中に挿入して温度を計測しながら、60℃に加温した混合水溶液を調製した。この混合水溶液に、60℃に加温した炭酸カリウム水溶液を加えた。これにより、ニッケル、及び、マグネシウムを水酸化物として共沈させ、スターラーで十分に攪拌した。その後、60℃に保持したまま一定時間攪拌を続けて熟成を行った後、吸引ろ過を行い、80℃の純水で十分に洗浄を行った。洗浄後に得られた沈殿物をビーカーに入れ、アルミナゾルを加えた。次に、攪拌羽を取り付けた混合器で十分混合したものを、ナス型フラスコに移してロータリーエバポレーターに取り付け、攪拌しながら吸引することで、水分を蒸発させた。ナス型フラスコ壁面に付着したニッケルとマグネシウムとアルミニウムの化合物を蒸発皿に移して空気雰囲気温度120℃で乾燥、空気雰囲気温度600℃で仮焼後、粉末を圧縮成形器を用いて直径3mmの錠剤状にプレス成型し、錠剤成型体を得た。その成型体を空気雰囲気中950℃で焼成を行い、Ni0.1Mg0.9Oにアルミニウムをアルミナとして50質量%混合した触媒成型体を調製した。
上記触媒を20mL用い、SUS316にカロライズ処理した反応管の中央に位置するよう石英ウールで固定した。また、触媒層中央位置にK型熱電対を挿入し、これら固定床反応管を所定の位置にセットした。
改質反応を始める前に、まず窒素雰囲気下で触媒層中心付近の温度を800℃まで昇温した後、水素ガスを100mL/min流しながら30分間還元処理を行った。
その後、コークス炉ガスの模擬ガスとして水素:窒素=1:1、HSを2,000ppm含むガスと、石炭乾留時発生タールの模擬物質として、タール中にも実際に含まれ且つ常温で粘度の低い液体物質である1−メチルナフタレン(1−MN)とを、精密ポンプで0.017g/minの流量で反応管へ導入した。また、S/C=3となるよう、純水を精密ポンプで0.1g/minの流量で反応管へ導入し、トータルで170mL/minになるよう各ガスを調整して導入し、常圧下、800℃で、空間速度(SV:Space Velocity)を500h−1として、1回目の改質反応を8時間行った。
出口から排出された生成ガスを室温トラップ、氷温トラップを経由させて、未反応の1−メチルナフタレン、ナフタレン、水分を除去した後、TCD及びFIDガスクロマトグラフ(ヒューレットパッカード製HP6890)にオンラインで注入して分析を行った。改質反応の反応度合である1−MN分解率(1−メチルナフタレンの分解率)は、メタン選択率、CO選択率、CO選択率、触媒上に堆積した炭素析出率によって判断した。各ガスの選択率は出口ガス中の各成分濃度より、以下の(式2)〜(式4)で算出した。
CH選択率(%)=(CHの体積量)/(供給された1−メチルナフタレンのC量)×100 (式2)
CO選択率(%)=(COの体積量)/(供給された1−メチルナフタレンのC量)×100 (式3)
CO選択率(%)=(COの体積量)/(供給された1−メチルナフタレンのC量)×100 (式4)
また、炭素析出率は、熱重量分析装置(島津製作所製TGA−50H)を用いて、空気流通下で昇温した際の重量減少量を用いて、(式5)より算出した。
炭素析出率(%)=(重量減少量)/(炭素析出した触媒重量)×100 (式5)
また、併せて入口水素ガス体積に対する出口水素ガス体積の比(水素増幅率)も併記した。
結果を表8に示す。
Figure 2016187786
表8に示すように改質反応1回目では、8時間平均でタール分解率が67.8%、CH選択率が2.6%、CO選択率が26.5%、CO選択率が24.1%、炭素析出率が2.5%、水素増幅率が2.0であった。
8時間の改質反応後、ガスの導入を止め、窒素100mL/minでパージしながら、同時に、触媒層の温度を500℃まで低下させた。触媒反応器や配管の中が十分パージでき、触媒層温度が500℃まで低下したら、触媒の再生を開始した。
まず、以下の要領で触媒を空気に接触させた。すなわち、窒素流量を40mL/minまで低下させ、空気を10mL/min導入した。触媒層の温度が上昇し始め、触媒反応器出口のCO分析計によるガス分析でCO濃度が上昇し始めると、触媒層の炭素が燃焼し始めたことを確認できる。800℃を超えそうになった場合は、空気流量を落とし、N流量を50mL/minに上げた。このような調整を約30分行っていると、空気25mL/min、窒素25mL/minとしても、触媒層温度が設定温度である500℃に近づくように低下してきたので、触媒層温度を600℃まで上昇させた。以降、触媒層温度を見ながら、50〜100℃ずつ750℃まで上昇させた。また、徐々に空気流量を上げ、かつ窒素流量を下げながら、最終的に空気流量50mL/minとした。最終的に3時間経過した時点で、触媒層出口の二酸化炭素濃度が0.4%となったことを確認して、空気の導入を停止して、1回目の触媒への空気の接触を完了し、窒素100mL/minでパージしながら、触媒層の温度を800℃に上昇させた。
続いて、以下の要領で、触媒に水素ガスを接触させて、還元処理を行った。すなわち、十分に窒素パージを行った後、水素ガスを100mL/min流しながら30分間還元処理を行った。
そして、上記の方法で再生を行った後、1回目の改質反応と同じ条件で、2回目の改質反応を行った。その結果、改質反応2回目では、8時間平均で1−MN分解率が65.3%、CH選択率が2.5%、CO選択率が24.6%、CO選択率が22.3%、炭素析出率が2.9%、水素増幅率が1.9であった。すなわち、フレッシュな触媒で行った1回目の活性とほぼ同じ活性に回復した。
また、2回目の改質反応後に、1回目の再生と同じ条件で再生(空気接触+水素ガスによる還元)を行った。そして、3回目の改質反応を1〜2回目と同じ条件で行った。その結果、改質反応3回目では、8時間平均で1−MN分解率が69.1%、CH選択率が2.9%、CO選択率が25.3%、CO選択率が23.6%、炭素析出率が2.4%、水素増幅率が2.0となり、フレッシュな触媒で行った1回目の活性と再びほぼ同じ活性を示した。
以降同じ工程を繰り返し、計5回の改質反応を行ったところ、表8に示すように、4〜5回目の改質反応でも、1回目とほぼ同じ性能を発現できた。すなわち、ラボにおけるCOGを模擬した1−MNの改質反応試験でも、実COGの反応と同様に、本発明の再生方法によれば、触媒活性を回復させて、COG中タール改質反応を長期間安定的に行うことができることがわかった。
(実施例9)
まず、以下の要領で触媒を製造した。
触媒調製において、硝酸ニッケル、硝酸セリウム、硝酸マグネシウムを各金属元素のモル比が1:1:8になるように精秤して、アルコール温度計を水溶液中に挿入して計測しながら、60℃に加温して混合水溶液を調製した。この混合水溶液に、60℃に加温した炭酸カリウム水溶液を加えた。これにより、ニッケル、マグネシウム、及び、セリウムを水酸化物として共沈させ、スターラーで十分に攪拌した。その後、60℃に保持したまま一定時間攪拌を続けて熟成を行った後、吸引ろ過を行い、80℃の純水で十分に洗浄を行った。洗浄後に得られた沈殿物をビーカーに入れ、アルミナゾルを加えた。次に、攪拌羽を取り付けた混合器で十分混合したものを、ナス型フラスコに移してロータリーエバポレーターに取り付け、攪拌しながら吸引することで、水分を蒸発させた。ナス型フラスコ壁面に付着したニッケルとマグネシウムとセリウムとアルミニウムの化合物を蒸発皿に移して空気雰囲気温度120℃で乾燥、空気雰囲気温度600℃で仮焼後、粉末を圧縮成形器を用いて直径3mmの錠剤状にプレス成型し、錠剤成型体を得た。その成型体を空気雰囲気中950℃で焼成を行い、Ni0.1Ce0.1Mg0.8Oにアルミニウムをアルミナとして50質量%混合した触媒成型体を調製した。上記触媒を用いて、実施例8と同様にして、改質反応と再生とを繰り返した。結果を表9に示す。
Figure 2016187786
表9に示すように改質反応1回目では、8時間平均でタール分解率が82.1%、CH選択率が3.3%、CO選択率が31.5%、CO選択率が27.6%、炭素析出率が3.5%、水素増幅率が2.1であった。また、2〜5回目の改質反応での活性もほぼ同じ性能を発現できた。すなわち、ラボにおけるCOGを模擬した1−MNの改質反応試験でも、実COGの反応と同様に、触媒活性を回復させて、COG中タール改質反応を長期間安定的に行うことができることがわかった。また、ラボにおけるCOGを模擬した1−MNの改質反応試験でも、セリウムが含有されている方が、分解率及び水素増幅率が高くなることがわかった。
(比較例1)
触媒として含浸担持法で調製された工業触媒の一つであるズードケミー製ナフサ一次リフォーミング触媒(SC11NK;Ni−20質量%担持アルミナ)を用いて、実施例7と同じ実験手法で改質試験を行った。結果を表10に示す。
Figure 2016187786
表10に示すように、1回目の改質反応は8時間の平均で、1−MN分解率が45.4%、メタン選択率が2.5%、CO選択率が4.2%、CO選択率が5.9%、炭素析出率が32.8%、水素増幅率が約1.3であった。
工業触媒は、1−MNのガス成分への変換率が低い(12.6%)一方、炭素析出率が非常に高い結果となった。炭素析出率が非常に高いため、触媒寿命が短い。
また、実施例8と同様にして、改質反応と再生とを繰り返した。再生を行っても触媒活性は回復せず、改質を行うごとに性能が低くなっていった。これは、高温又は長期間酸化処理を行うことで、大きな燃焼熱により、触媒活性粒子がシンタリングを引き起こしたためであると考えられる。
(比較例2)
実施例9と同じ触媒を用いて、実施例8と同じ条件で改質反応1回目を行った。
その後、ガスの導入を止め、触媒層の温度は800℃に維持しながら窒素100mL/minでパージした。触媒反応器や配管の中が十分パージできたら、触媒層温度には注目せず、触媒への空気の接触を開始した。窒素流量を40mL/minまで低下させ、空気を10mL/min導入したところ、触媒層温度が急激に上昇し始め、触媒層温度が1100℃を超えた。その後、1時間ほど高温の状態が続いた後、温度が900℃以下に下がってきたら、空気の比率を上げ、空気25mL/min、窒素25mL/minとして、最終的に3時間経過した時点で、触媒層出口の二酸化炭素濃度が0.3%となったことを確認して、空気の導入を停止し、1回目の空気の接触を完了した。
その後、窒素100mL/minでパージし、十分パージを行った後、水素ガスを100mL/min流しながら30分間還元処理を行った。
そして、1回目の改質反応と同じ条件で、2回目の改質反応を行った。その結果、表10に示すように改質反応2回目では、1−MN分解率が63.5%、メタン選択率が2.5%、CO選択率が21.7%、CO選択率が16.3%、炭素析出率が5.2%、水素増幅率が約1.8となり、大きく活性が低下した。これは、炭素の燃焼熱により触媒の温度が、焼成温度よりも高温になる時間が長く、触媒の比表面積が低下したためと考えられる。
2回目の改質反応後に、1回目と同様に再生を行い、続いて3回目の改質反応を行った。その結果、表11に示すように、更に活性が低下した。また、触媒層の過熱に伴い、触媒反応器も高温になったことで、変形を起こしてしまった。
以上の結果から、空気を導入した際の触媒層の温度が高温になってしまうと、触媒が劣化し、さらに、装置への異常も引き起こすことがわかった。
Figure 2016187786
(実施例10)
ロータリーキルンを乾留炉とし、木質バイオマスの原料である建築廃材チップ(5cm以下に分級)を、10kg/hの速度で炉内温度を800℃に保持したロータリーキルンに供給して乾留することにより、バイオマスタール含有ガスを発生させた。
実施例5と同じ触媒を触媒反応器に45L充填し、触媒層の入口付近、中心付近、出口付近の3ヶ所にK型熱電対を挿入した状態で、電気炉に内に設置した。触媒層の各温度を800℃に保持した反応器に、上記のバイオマスタール含有ガスを10Nm/hになるように供給し、8時間継続して改質反応を行った。なお、原料投入前に水素5Nm/hで30分間の還元処理を行った。
触媒反応器入口と出口とからタール及びガスをサンプリングした。ガスはオンラインのTCDガスクロマトグラフで定量分析し、タールはオフラインで定量分析を行った。タール分解率及び水素増幅率は、実施例1と同様の手法で求めた。触媒入口ガス組成はコークス炉ガスに近く、水素、CO、CO、CHが主成分であった。また、被毒物質である硫化水素は、約25ppm含まれていることを確認した。さらに、原料の建築廃材中に約16%の水分が含まれていたので、その水分が揮発して水蒸気となって含まれていた。
結果を表12に示す。
Figure 2016187786
表12に示すように1回目の反応は、タール分解率が93.8%、水素増幅率が6.5であった。
1回目の改質反応後、原料の供給を止め、窒素10Nm/hでパージしながら、同時に、ロータリーキルン及び触媒層の各温度を500℃まで低下させた。ロータリーキルン、触媒反応器や配管の中が十分パージでき、触媒層の各温度が500℃まで低下したら、触媒への空気の接触を開始した。すなわち、窒素流量を5Nm/hまで低下させ、空気を2Nm/h導入した。触媒層入口付近の温度が上昇し始め、触媒反応器出口のガスクロマトグラフによるガス分析でCO濃度が上昇し始めると、触媒層の炭素が燃焼し始めたことを確認できる。そのため、800℃を超えそうになった場合は、空気流量を落とし、N流量を10Nm/hに上げた。触媒層入口付近の温度が下がってくると、次に触媒層中心付近の温度が上昇し始め、触媒層中心付近の温度が下がり始めると、さらに触媒層出口付近の温度が上昇し始める。このような調整を約1時間行っていると、空気5Nm/h、窒素5Nm/hとしても、触媒層の各温度が設定温度である500℃に近づくように低下してきたので、ロータリーキルン及び触媒層の各温度を600℃まで上昇させた。以降、触媒層の各温度を見ながら、50〜100℃ずつ750℃まで上昇させた。また、徐々に空気流量を上げ、かつ窒素流量を下げながら、最終的に空気流量10Nm/hとした。最終的に4時間経過した時点で、触媒層出口の二酸化炭素濃度が0.5%となったことを確認して、空気の導入を停止し、1回目の触媒への空気の接触を完了した。
その後、窒素30Nm/hでパージしながら、触媒層の温度を800℃に上昇させた。十分パージを行った後、水素を5Nm/h流しながら30分間還元処理を行った。
そして、1回目の改質反応と同じ条件で、2回目の改質反応を行った。その結果、改質反応2回目は、タール分解率が91.2%、水素増幅率が6.3となり、フレッシュな触媒で行った1回目の活性とほぼ同じ活性であった。
2回目の改質反応後に、1回目の再生と同じ条件で再生を行った。そして、3回目の改質反応を1〜2回目と同じ条件で行った。その結果、改質反応3回目では、タール分解率が88.7%、水素増幅率が6.1となり、フレッシュな触媒で行った1回目の活性とほぼ同じ活性であった。以降同じ工程を繰り返し、計5回改質反応を行ったところ、表12に示すように、4〜5回目の改質反応での活性もほぼ同じ性能を発現できた。すなわち、本発明の再生方法によれば、バイオマスタール含有ガスでの改質反応に用いた場合でも、触媒の活性を回復し、長期間安定的に改質反応を行うことができることがわかった。
(比較例3)
再生の際、触媒に空気を接触させる代わりに水蒸気を接触させた以外は、実施例8と同様の条件で、改質反応および再生を行った。結果を表13に示す。
Figure 2016187786
表13に示すように改質反応1回目は実施例8の1回目と同じで、8時間平均で1−MN分解率が67.8%、CH選択率が2.6%、CO選択率が26.5%、CO選択率が24.1%、炭素析出率が2.5%、水素増幅率が2.0であった。8時間の改質反応後、ガスの導入を止め、窒素100mL/minでパージしながら、同時に、触媒層の温度を500℃まで低下させた。触媒反応器や配管の中が十分パージでき、触媒層温度が500℃まで低下したら、触媒に水蒸気を接触させた。すなわち、窒素流量を35mL/minまで低下させ、水蒸気を15mL/min導入した。触媒層の温度が上昇し始め、触媒反応器出口のCO分析計によるガス分析でCO濃度が上昇し始めると、触媒層の炭素が燃焼し始めたことを確認できる。水蒸気の場合、炭素の燃焼速度が遅いので、発熱量もそれほど大きくない。そのため、水蒸気25mL/min、窒素25mL/minとしても、触媒層温度が設定温度である500℃に近づくように低下してきたので、触媒層温度を600℃まで上昇させた。以降、触媒層温度を見ながら、50〜100℃ずつ750℃まで上昇させた。また、徐々に水蒸気流量を上げ、かつ窒素流量を下げながら、最終的に水蒸気流量50mL/minとした。最終的に触媒層出口の二酸化炭素濃度が0.5%となったのは、18時間経過した時点であった。ここで、水蒸気の導入を停止し、1回目の水蒸気による再生を完了した。
その後、窒素100mL/minでパージし、十分パージを行った後、水素ガスを100mL/min流しながら30分間還元処理を行った。
そして、1回目の改質反応と同じ条件で、2回目の改質反応を行った。その結果、改質反応2回目では、8時間平均で1−MN分解率が62.1%、CH選択率が2.9%、CO選択率が25.1%、CO選択率が21.7%、炭素析出率が3.2%、水素増幅率が1.9となり、フレッシュな触媒で行った1回目の活性に近い活性に回復した。2回目の改質反応後に、1回目の再生と同じ条件で再生(触媒への水蒸気の接触及び水素ガスによる還元)を行ったが、触媒への水蒸気の接触に19時間を要した。
3回目以降の改質反応と再生とを同様に繰り返した。その結果、表13に示すように、3〜5回目の改質反応でも9割以上の活性に回復できた。しかしながら、水蒸気を用いた場合、活性の回復度合いは空気を用いた場合より少し劣り、さらに、再生時間に長時間を要してしまうことがわかった。
(比較例4)
再生の際、空気の代わりに水蒸気を用いること以外は、実施例9と同様に行った。
結果を表14に示す。
Figure 2016187786
表14に示すように改質反応1回目では、実施例9の1回目と同じで、8時間平均でタール分解率が82.1%、CH選択率が3.3%、CO選択率が31.5%、CO選択率が27.6%、炭素析出率が3.5%、水素増幅率が2.1であった。また、2〜5回目の改質反応での活性もフレッシュな触媒の活性に対して9割以上の比較的高い1−MN分解率を発現できた。しかしながら、比較例3と同様に、再生に水蒸気を用いた場合は、1度の再生時間に18〜20時間を要することがわかった。そのため、水蒸気による再生では、炭素の除去に長時間が必要で、長期間の繰り返し運転(改質と再生との繰り返し)において、再生時間が占める割合が多くなる。すなわち、改質ガスを発生させられる時間が少なく、非効率であると言える。

Claims (4)

  1. 硫黄被毒された、タール含有ガス改質用の触媒の再生方法であって、
    ニッケル化合物とマグネシウム化合物との混合溶液に沈殿剤を添加して、ニッケルとマグネシウムを共沈させて沈殿物を生成し、当該沈殿物に、アルミナ粉末と水、または、アルミナゾルを加えて混合して混合物を生成し、当該混合物を、少なくとも乾燥及び焼成する触媒製造工程で製造され、かつ、表面に析出したニッケルの少なくとも一部が水素還元された状態で硫黄を含むタール含有ガスと接触することによって硫黄被毒された前記触媒に、触媒層の温度を400〜800℃に維持したまま空気を接触させる空気接触工程と、
    前記空気接触工程の後に行われ、かつ、前記触媒に、前記触媒層の温度を600〜800℃に維持したまま水素ガスを接触させる水素ガス接触工程とを有する、
    ことを特徴とするタール含有ガス改質用触媒の再生方法。
  2. 前記空気接触工程において、前記触媒層の温度を400〜750℃に維持することを特徴とする請求項1に記載のタール含有ガス改質用触媒の再生方法。
  3. 前記触媒製造工程において、前記沈殿物の生成後、当該沈殿物を仮焼することを特徴とする請求項1または2に記載のタール含有ガス改質用触媒の再生方法。
  4. 前記触媒が、セリウムを含有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のタール含有ガス改質用触媒の再生方法。
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