JP2016186894A - 非水電解質蓄電素子用負極、及び非水電解質蓄電素子 - Google Patents

非水電解質蓄電素子用負極、及び非水電解質蓄電素子 Download PDF

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Abstract

【課題】
Si及びSnから選ばれる少なくとも一つの元素を含む負極活物質の結着性を高めた負極を提供し、充放電サイクル性能が向上した非水電解質蓄電素子を提供する。
【解決手段】
負極活物質とバインダーを含む非水電解質蓄電素子用負極において、前記負極活物質は、Si及びSnから選ばれる少なくとも一つの元素を含む金属単体、合金又は化合物を含み、前記バインダーは、ナフチリジン環構造を有する樹脂であるか、ナフチリジン環構造に加えて、ポリアクリロニトリル構造又はポリアクリル酸(ポリメタクリル酸)構造を有する樹脂である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、非水電解質蓄電素子用負極、及びこの負極を備えた非水電解質蓄電素子に関する。
リチウム二次電池、リチウムイオンキャパシタ等の非水電解質蓄電素子は、携帯用端末、電気自動車、ハイブリッド自動車等に広く用いられており、今後もエネルギー密度の向上が期待されている。
従来、非水電解質蓄電素子の負極には、充放電サイクル性能が良好で、コスト面で有利な炭素材料が用いられてきた。しかし、炭素材料は、リチウムイオンの黒鉛結晶中への吸蔵・放出により充放電がなされるため、最大リチウム導入化合物であるLiCから計算される理論容量372mAh/gを超える充放電容量が得られない。
これに対して、SiやSnの金属単体や、これらの元素を含む合金又は化合物は、炭素材料と比較して大きな理論容量を有するため、これらを負極活物質に用いる検討がなされている。
非水電解質蓄電素子の電極は、一般に、集電体と、該集電体に形成された活物質を含む合剤層からなっている。前記合剤層は、一般に、活物質に、バインダーと、必要に応じて導電剤、増粘剤、フィラー等の他の材料とを混練したものに溶媒を加えてスラリーとし、これを集電体に塗布又は圧着した後、熱処理により溶媒を乾燥除去し、プレス成型して形成される。
特許文献1には、「可逆的にリチウムの吸蔵および放出が可能な活物質粉末と、結着剤と、を含む負極合剤を含み、前記活物質が、SiおよびSnよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含み、前記結着剤が、エチレン−アクリル酸共重合体およびエチレン−メタクリル酸共重合体よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、前記エチレン−アクリル酸共重合体に含まれるアクリル酸単位の含有量が、10mol%〜60mol%であり、前記エチレン−メタクリル酸共重合体に含まれるメタクリル酸単位の含有量が、10mol%〜60mol%である、リチウムイオン二次電池用負極。」(補正書の請求の範囲[1])の発明が記載されている。
そして、この共重合体よりなる結着剤について、「それぞれアクリル酸単位およびメタクリル酸単位の影響により、共重合体の結晶化度は低くなる。よって、これらの共重合体は、柔軟性が高くなる。また、これらの共重合体は、それぞれアクリル酸単位およびメタクリル酸単位を含有するため、高い接着性も有する。」(0022)という作用により、「特に低温でのサイクル特性に優れたリチウムイオン二次電池を提供することが可能となる。」(0017)という効果を奏すると記載されている。
特許文献2には、「電極活物質と導電助材と有機バインダーからなる正極および負極、非水溶媒と支持塩からなる耐熱電解液、耐熱セパレータ、耐熱ガスケット等の部材からなる非水電解質電池において、正極、負極の両方又は一方を200℃〜450℃で熱処理して用いたことを特徴とする非水電解質二次電池。」(請求項1)の発明が記載されている。
また、この非水電解質二次電池について、「前記負極が負極活物質として、リチウムイオンを吸蔵放出可能なケイ素の酸化物または錫の酸化物を用いた」(請求項2)、「有機バインダーがポリアクリル酸からなり、」(請求項5)、「電極活物質と導電助材と有機バインダーからなる電極を200℃〜450℃で熱処理して用いた。」(0013)と記載されている。
そして、この熱処理の効果について、「活物質、有機バインダー、導電助材の熱的に活性な部分(微粉、合成時の未反応部分等)が加熱により変化し、リフロー温度でも安定になったことにあると推測できる。また、200℃以上の加熱は有機物に大きな変化を与える。有機バインダーは、熱処理により大きく電解液との濡れ性が向上する。これは、200℃付近で分解が始まるため、有機バインダーの表面の官能基等が改質されたか、有機バインダーの一部が分解し多孔質になったためと考えられる。」(0024)と記載されている。
特許文献3には、「負極活物質、バインダーおよび導電材を含むリチウム二次電池用負極材料組成物において、前記バインダーは、アクリロニトリルに対しアクリル酸のモル比が0.01〜2のポリアクリロニトリル-アクリル酸共重合体であることを特徴とするリチウム二次電池用負極材料組成物。」(請求項1)の発明が記載されている。
前記負極活物質として挙げられた「シリコン系負極活物質および錫系負極活物質」について、「充放電時、リチウムとの反応による体積変化が200〜300%であって非常に大きい。」(0010)、「負極活物質は、充放電サイクルが行われるにつれ体積が変化し、これにより、電池のサイクル寿命が短縮されるなど電池性能の劣化現象が発生することになる。」(0012)と記載されている。
そして、「負極材料組成物に含まれるバインダーの種類と量は、負極活物質の充放電サイクルによる体積変化に影響を与える。」(0012)、「負極用バインダーとして、分子量が大きいポリアクリロニトリル-アクリル酸共重合体を用いることにより、集電体および電極混合物間の密着性が向上すると共に、有機系電解液に対する溶解、又は膨潤を減少させて、充放電を繰り返しても活物質の剥離及び脱落を防止することができ、これにより、前記負極用バインダーを用いて製造されたリチウム二次電池の容量や出力維持率の低下を抑制できる効果を得ることができる。」(0027)、「上記のような負極混合物を集電体上に塗布、乾燥および圧延して製作される。この際、乾燥温度は200℃以下にし、望ましくは150℃以下が要求される。200℃よりも高い温度ではポリアクリロニトリルが速く分解されて目的とする効果を得ることができない。」(0039)と記載されている。また、実施例に記載されている乾燥温度は130℃のみである(0052)、(0058)。
特許文献4には、「リチウムを電気化学的に吸蔵・放出できる金属粒子Aと、前記金属粒子Aよりも導電性が高く、且つ前記金属粒子Aよりもリチウムの吸蔵・放出能力が低い金属粒子Bと、を用いて得られ‥る複合粒子。」(請求項1)、であって、「前記金属粒子Aが、シリコン及びスズから選ばれる少なくとも1種である」発明(請求項3)が記載されている。
また、集電体と、この複合粒子を有し、さらに炭素質物質及びバインダを含むリチウムイオン二次電池用負極(請求項8,9)の発明、及び、これの製造方法として、前記複合粒子、炭素質物質、及び主骨格がポリアクリロニトリルであるバインダを含む混合物を得る工程、前記混合物を100℃〜160℃の範囲内で熱処理する工程、を含むリチウムイオン二次電池用負極の製造方法(請求項15,16)の発明も記載されている。
そして、上記の各発明について、「高容量で、優れた充放電サイクル性を示す複合粒子‥を用いたリチウムイオン二次電池用負極、リチウムイオン二次電池用負極の製造方法、及びリチウムイオン二次電池を提供することができる。」(0028)と記載され、前記製造方法における熱処理の作用効果として、「溶媒の除去、バインダの高強度化が進み、複合粒子間及び複合粒子と集電体間の密着性を向上することができる。」(0081)と記載されている。
非特許文献1には、ポリアクリロニトリルを200〜300℃で加熱すると、ポリアクリロニトリルの隣接したニトリル基の環化反応と同時に不均化反応(脱水素反応)とが起こり、アクリドン環やナフチリジン環の生成を含む構造変化が生じることが記載されている。
WO2006/075446 特開2001−148242号公報 特表2011−513911号公報 特開2012−59635号公報
経済産業省製造産業局繊維課 外3社 「第1回繊維分野におけるエネルギー使用合理化技術開発補助金プロジェクト事後評価検討会 資料6−3」(平成21年11月19日)第13-15ページhttp://www.meti.go.jp/policy/tech_evaluation/c00/C0000000H21/091119_seni/seni09-1_6-3.pdf
負極活物質にSi及びSnから選ばれる少なくとも一つの元素を含む金属単体、合金又は化合物を用いた非水電解質蓄電素子は、特許文献3(0010)に記載されるように、充放電時の負極での膨張収縮が大きいことが知られている。例えば、炭素材料である黒鉛がLiイオンを吸蔵した場合の体積膨張は、約1.2倍であるのに対し、Si材料ではSiとLiが合金化する際、約4倍の体積変化を起こす。そのため、負極合剤層内のバインダーに大きな応力が印加されるから、活物質粒子間及び負極合剤層と集電体間の密着性が低下し、充放電サイクル性能が低下するという問題がある。
上記の課題に対し、密着性や柔軟性の優れたバインダーについて、ポリアクリル酸又はポリメタクリル酸とエチレンとの共重合体(特許文献1)や、ポリアクリル酸を200℃以上で熱変性したもの(特許文献2)、ポリアクリロニトリル構造を含む樹脂材料(特許文献3,4)等が検討されている。
しかし、充放電サイクル性能の向上は未だ十分でない。また、ポリアクリロニトリル構造を含む樹脂材料をバインダーに用いる場合、熱処理温度として200℃を超えるものについての検討はされていない。
本発明は、Si及びSnから選ばれる少なくとも一つの元素を含む金属単体、合金又は化合物を負極に用いた非水電解質蓄電素子において、充放電サイクル性能を向上させることを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明は以下の手段を有する。
(1)負極活物質とバインダーを含む合剤層を有する非水電解質蓄電素子用負極において、前記負極活物質は、Si及びSnから選ばれる少なくとも一つの元素を含む金属単体、合金又は化合物を含み、前記バインダーは、ナフチリジン環構造を有する樹脂である非水電解質蓄電素子用負極。
(2)前記バインダーは、ナフチリジン環構造に加えて、ポリアクリロニトリル構造を有する樹脂である(1)の非水電解質蓄電素子用負極。
(3)前記バインダーは、ナフチリジン環構造に加えて、ポリアクリル酸構造又はポリメタクリル酸構造の少なくとも一方を有する樹脂である(1)又は(2)の非水電解質蓄電素子用負極。
(4)前記負極活物質は、さらに炭素材料を含む前記(1)〜(3)のいずれかの非水電解質蓄電素子用負極。
(5)正極と、前記(1)〜(4)のいずれかの負極と、非水電解質とを備える非水電解質蓄電素子。
本発明によれば、高容量であるSiやSnを含む負極を用いて、充放電サイクル性能の優れたリチウム二次電池、キャパシタ等の非水電解質蓄電素子を提供することができる。
ポリアクリロニトリル構造を含む樹脂材料の熱処理温度とIR吸収パターンとの関係を示す図 ポリアクリロニトリル構造の耐炎化工程における化学構造変化を示す図 本発明に係る非水電解質蓄電素子の一実施形態を示す外観斜視図 本発明に係る非水電解質蓄電素子を複数個集合した蓄電装置を示す概念図
Si及びSnから選ばれる少なくとも一つの元素を含む負極活物質と、バインダーとしてポリアクリロニトリル構造を含む樹脂材料を用いて負極合剤層を形成する場合、推奨される加熱温度は、従来は160℃以下であり(特許文献4参照)、200℃を超える温度が用いられることはなかった(特許文献3参照)。
本発明者らは、上記の負極合剤層の形成に当たり、分散用の溶媒を含むスラリーを塗布した後の加熱温度を変化させて、加熱温度が蓄電素子の電極特性に与える影響について検討した。すると、驚くべきことに、250℃以上、好ましくは300℃以上の温度を採用することによって、充放電サイクル性能が顕著に向上することを見出した。
この現象の機序を解明すべく、ポリアクリロニトリル構造を有する樹脂材料の熱処理温度による構造変化を、IR吸収スペクトルにより分析した。その結果、図1に示すように、150℃、200℃の熱処理ではCN三重結合に対応する吸収ピークが明白に現れているのに対して、300℃以上の熱処理では消失していることがわかった。
ポリアクリロニトリルを200〜300℃で熱処理すると、ニトリル基の環化反応と同時に不均化反応(脱水素反応)が起こることが知られている。
図2は、非特許文献1に記載の耐炎化工程によるポリアクリロニトリルの構造変化を示している。
図2(a)に記載の構造を有するポリアクリロニトリルを200〜300℃で熱処理すると、図2(b)に記載の隣接したニトリル基の環化反応と同時に不均化反応(脱水素反応)が起こることによって、図2(c)の、一番左の括弧内の構造として表されるアクリドン環、左から2番目の括弧内の構造として表されるナフチリジン環、及び左から3番目の括弧内の構造として表される水素化ナフチリジン環が生成される。
本発明者らが行った300℃以上での熱処理では、ニトリル基の殆どが環化したため、未反応ニトリルのCN三重結合が消失したと考えられる。また、負極作成時の熱処理は、集電体の酸化防止や、バインダーの変性防止のため、減圧下又は不活性雰囲気下で行うから、酸素を含むアクリドン環の生成は起こり難いと考えられる。したがって、上記のIR吸収スペクトルは、アクリロニトリル構造の少なくとも一部がナフチリジン環構造に変化したことを示すものである。
本発明では、ポリアクリロニトリル構造の少なくとも一部がナフチリジン環を含む環状構造に変化し、バインダーの弾性率が高まったと考えられる。そのため、活物質の膨張収縮による応力がナフチリジン環を有するバインダーで効果的に吸収されることにより、負極合剤層の体積変化を抑制できるから、活物質の脱落や合剤層と集電体箔の密着性低下が防止され、充放電サイクル性能が飛躍的に向上したものと推察される。
なお、バインダーがナフチリジン環構造を有することは、熱分解GC/MS分析(Pyrolysis Gas Chromatography Mass Spectrometry)によって確認することができる。
以下、本発明を非水電解質電池やレドックスキャパシタに適用した場合の実施形態について述べる。
なお、本発明を電気二重層キャパシタに適用する場合、電極材料には、活性炭、カーボンナノチューブ、フラーレン等の静電容量の大きい炭素材料等を用いることができる。電極材料以外の部材については、リチウム二次電池と同様の形態で実施することができる。
(負極活物質)
負極活物質としては、Si又はSnの金属単体、Si又はSnと遷移金属(Ti、Cr、Cu、Ni、Co等)との合金、若しくはSi又はSnの酸化物又は窒化物等の化合物の中から1種以上を選択することができる。Siを含む物質を用いることにより、放電容量の大きい、高エネルギー密度の非水電解液蓄電素子を得ることができる。Si又はSnを含む物質は、Liイオンと固溶体や金属間化合物を形成することにより、Liイオンを多量に貯蔵することができる。Si又はSnを含む物質としては、SiとOとを構成元素に含む一般式SiO(x<2)で表される物質が好ましい。
SiO等の導電性が低い活物質を用いる場合、導電性物質で被覆して用いることが好ましい。この場合、負極活物質粒子の表面の少なくとも一部が導電性物質によって被覆されていれば良い。SiOを導電性物質で被覆することにより、表面の導電性物質により導電経路が維持され、充放電サイクル特性が向上するものと推定される。
SiOを被覆する導電性物質としては、Cu、Ni、Ti、Sn、Al、Co、Fe、Zn、Ag若しくはこれらの二種以上の合金又は炭素材料が挙げられるが、これらの中では炭素材料を用いることが好ましい。
SiOを、炭素材料で被覆する方法としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、メタンなどを炭素源として気相中で分解し、粒子の表面に化学的に蒸着させるCVD方法、ピッチ、タールあるいはフルフリルアルコールなどの炭素源を粒子の表面に塗布した後に焼成する方法、あるいは粒子と炭素材料との間に機械的エネルギーを作用させて複合体を形成するメカノケミカル反応を用いた方法を用いることができる。中でも、均一に炭素材料を被覆できることからCVD法を用いることが好ましい。
また、SiOに対する導電性物質の割合は、2〜20質量%であることが好ましい。導電性物質の被覆量は、導電性を充分に確保し、充放電サイクル性能を向上させるためには、2質量%以上であることが好ましく、また、大きな放電容量を得るためには、20%以下であることが好ましい。
Si又はSnを含む活物質は、さらに炭素材料と混合することが好ましい。炭素材料としては、天然黒鉛、人造黒鉛、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、気相成長炭素繊維などが挙げられる。中でも、導電性を充分に確保できることから、平均粒径(D50)が1〜15μmの鱗片状黒鉛を含有することが好ましい。Si又はSnを含む活物質:炭素材料の比は、1:9〜10:0とすることが好ましい。
(負極バインダー)
負極のバインダーには、ポリアクリロニトリル構造を有する樹脂材料に250℃以上の熱処理を加えたものを使用する。当該熱処理により、前記樹脂材料の隣り合うニトリル基の少なくとも一部がナフチジン環に構造変化し、弾性率の高いバインダーを得ることができる。
ポリアクリロニトリル構造を有する樹脂材料は、アクリロニトリルのホモ重合体、又はアクリロニトリルとメタクリロニトリルの共重合体を主骨格とするものである。この主骨格に、接着性を高めるアクリル酸モノマー及び/又はメタクリル酸モノマーを付加重合したアクリロニトリル−アクリル酸(メタクリル酸)共重合体であることが好ましい。この樹脂材料には、さらに柔軟性を付与するために、直鎖エーテル等を適宜付加することができる。
前記の共重合体中、アクリル酸(メタクリル酸)の含有割合は、主骨格100質量部に対して、1〜50質量部であることが好ましく、2〜40質量部がより好ましく、5〜30質量部が特に好ましい。50質量部以下とすることにより、耐電解液性を良好にし、1質量%以上とすることにより、可撓性を付与することができる。
なお、アクリル酸モノマー及び/又はメタクリル酸モノマーの付加重合は、後述の負極活物質と樹脂材料を混合したスラリーを集電体に塗布した後の熱処理と同時に行ってもよい。
アクリル酸モノマーとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−ペンチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−ヘプチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソデシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸イソミリスチル、アクリル酸トリデシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸ナフチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸トリフルオロエチル等のフッ素含有アクリル酸系モノマー等が挙げられる。
メタクリル酸モノマーとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−ペンチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−ヘプチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸イソオクチル、メタクリル酸イソデシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸イソミリスチル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸ナフチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸トリフルオロエチル等のフッ素含有メタクリル酸系モノマー等が挙げられる。
直鎖エーテルとしては、エーテル構造の繰り返し部分が、例えば、エチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、ヘプタエチレングリコール、オクタエチレングリコール、ノナエチレングリコール、デカエチレングリコール、ウンデカエチレングリコール、ドデカエチレングリコール、トリデカエチレングリコール、テトラデカエチレングリコール、ペンタデカエチレングリコール、ヘキサデカエチレングリコール、ヘプタデカエチレングリコール、オクタデカエチレングリコール、ノナデカエチレングリコール、メタンジオール、1,3―プロパンジオール、1,4―ブタンジオール、1,5―ペンタンジオール、1,6―ヘキサンジオール、1,7―ヘプタンジオール、ジアクリル酸1,8―オクタンジオール、1,9―ノナンジオール、1,10―デカンジオール等であるものが挙げられる。
(負極)
上記のSi又はSnを含む負極活物質に、上記のポリアクリロニトリル構造を有する樹脂材料を、負極の総質量に対して1〜50質量%、好ましくは2〜30質量%添加し、必要に応じて導電剤、増粘剤、フィラー等の他の構成成分を混練し、N−メチルピロリドン、トルエン等の有機溶媒又は水に混合させた後、得られた混合液(スラリー)を銅箔等の集電体の上に塗布し又は圧着し、減圧下又は不活性雰囲気下、250℃以上の温度で、2〜50時間熱処理した後、プレスすることにより、集電体上に負極合剤層が形成された負極を作製する。熱処理を減圧下又は不活性雰囲気下で行う理由は、負極集電体に用いる銅箔の酸化防止、及びバインダー樹脂材料の酸化分解の防止のためである。
前記塗布方法については、例えば、アプリケーターロールなどのローラーコーティング、スクリーンコーティング、ドクターブレード方式、スピンコーティング、バーコータ等の手段を用いて任意の厚さ及び任意の形状に塗布することが好ましいが、これらに限定されるものではない。
(正極)
リチウム二次電池に適用する場合の正極活物質としては、二酸化マンガン、五酸化バナジウムのような遷移金属化合物や、硫化鉄、硫化チタンのような遷移金属カルコゲン化合物、Li1+xMeO(1≦x、MeはCo、Ni及びMnから選択される一種以上の遷移金属)で表されるα−NaFeO型、又はLiMn等のスピネル型のリチウム遷移金属複合酸化物、これらの複合酸化物の遷移金属サイト又はリチウムサイトをAl、V、Fe、Cr、Ti、Zn、Sr、Mo、W、Mgなどの金属元素、若しくはP、Bなどの非金属元素で置換した化合物、LiFePO等のオリビン型のリン酸化合物を用いることができる。
この中では、Li1+αMe1−α(0<α、Meは遷移金属)で表されるリチウム過剰型α−NaFeO型の正極活物質が、負極活物質の高容量性を活かす組み合わせとして好ましい。
正極のバインダーには、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE),ポリフッ化ビニリデン(PVDF),ポリエチレン,ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM),スルホン化EPDM,スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム等のゴム弾性を有するポリマーを1種または2種以上の混合物として用いることができる。負極と同じ樹脂材料を用いてもよい。また、バインダーの添加量は、正極の総質量に対して1〜50質量%が好ましく、特に2〜30質量%が好ましい。
正極活物質及びバインダーに、必要に応じて導電剤、増粘剤、フィラー等の他の構成成分を混練し、溶媒と混合した後、負極と同様の手段を用いてアルミニウム箔等の集電体の上に塗布又は圧着し、80〜120℃の温度で乾燥して正極を作製することができる。
(非水電解質)
本発明に係る非水電解質蓄電素子に用いる非水電解質は、限定されるものではなく、一般に非水電解質二次電池等への使用が提案されているものが使用可能である。非水電解質に用いる非水溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等の環状炭酸エステル類;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状エステル類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の鎖状カーボネート類;ギ酸メチル、酢酸メチル、酪酸メチル等の鎖状エステル類;テトラヒドロフランまたはその誘導体;1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジブトキシエタン、メチルジグライム等のエーテル類;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;ジオキソランまたはその誘導体;エチレンスルフィド、スルホラン、スルトンまたはその誘導体等の単独またはそれら2種以上の混合物等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
非水電解質に用いる電解質塩としては、限定されない。例えば、リチウム二次電池の場合、LiClO,LiBF,LiAsF6,LiPF,LiSCN,LiBr,LiI,LiSO,Li10Cl10,NaClO,NaI,NaSCN,NaBr,KClO,KSCN等のリチウム(Li)、ナトリウム(Na)またはカリウム(K)の1種を含む無機イオン塩、LiCFSO,LiN(CFSO,LiN(CSO,LiN(CFSO)(CSO),LiC(CFSO,LiC(CSO,(CHNBF,(CH)4NBr,(CNClO,(CNI,(CNBr,(n−CNClO,(n−CNI,(CN−maleate,(CN−benzoate,(C)4N−phthalate、ステアリルスルホン酸リチウム、オクチルスルホン酸リチウム、ドデシルベンゼンスルホン酸リチウム等の有機イオン塩等が挙げられ、これらのイオン性化合物を単独、あるいは2種類以上混合して用いることが可能である。
リチウム二次電池の場合、LiPF又はLiBFと、LiN(CSOのようなパーフルオロアルキル基を有するリチウム塩とを混合して用いることにより、さらに電解質の粘度を下げることができるので、低温特性をさらに高めることができ、また、自己放電を抑制することができる。
また、非水電解質として常温溶融塩やイオン液体を用いてもよい。
非水電解質における電解質塩の濃度としては、高い電池特性を有するリチウム二次電池を確実に得るために、0.1mol/l〜5mol/Lが好ましく、さらに好ましくは、0.5mol/l〜2.5mol/Lである。
(セパレータ)
セパレータとしては、織布、不織布、合成樹脂微多孔膜等を用いることができ、特に、合成樹脂微多孔膜が好適に用いることができる。その材質としては、ナイロン、セルロースアセテート、ニトロセルロース、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、およびポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン等のポリオレフィンが例示される。なかでもポリエチレンおよびポリプロピレン製微多孔膜、またはこれらを複合した微多孔膜などのポリオレフィン系微多孔膜が、厚さ、膜強度、膜抵抗等の面で好適に用いられる。
(非水電解質蓄電素子の構成)
蓄電素子の形状は特に限定されるものではなく、本発明は、角形、楕円形、コイン形、ボタン形、シート形蓄電素子等の様々な形状の非水電解液蓄電素子に適用可能である。
図3に角型素子の一例を示す。セパレータを挟んで巻回された正極及び負極よりなる電極群2が角形の容器3に収納され、正極リード4’を介して正極端子4が、負極リード5’を介して負極端子5が容器外に導出されている。
(非水電解質蓄電素子装置の構成)
本発明に係る非水電解質蓄電素子は、特に電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)などの自動車用電源として用いる場合に、複数の蓄電素子を集合して構成した蓄電装置として搭載することができる。
図4に、蓄電素子1が集合した蓄電ユニット20をさらに集合した蓄電装置30の一例を示す。
<実施例1>
(負極の作製)
活物質として、カーボンで被覆されたSiO(xは約1、カーボン含有率6質量%、D50=5μm、以下、単に「SiO」という。)、炭素材料として、流動法窒素ガス吸着法により測定されたBET比表面積が7.7m/gであり、粒径(D50)が10μmの鱗片状黒鉛(TIMCAL Ltd製、SFG−15)を使用した。
バインダーに用いる樹脂材料として、ポリアクリロニトリルを主骨格としポリアクリル酸構造を含む樹脂を用いた。前記樹脂は、アクリロニトリルとアクリル酸ブチルとの共重合体である。
前記SiOと前記炭素材料とを4:6の質量比で混合した。前記樹脂材料を固形分として93質量%含有するN−メリルピロリドン溶液を加え、さらに、分散用の溶媒としてN−メチルピロリドンを適量追加して混練分散し、スラリーを調製した。前記スラリーは、固形分換算で、前記SiO、前記炭素材料、及び前記樹脂を54:36:10の質量比で含有する。このスラリーを厚さ20μmの銅箔集電体の片面に塗布した後、ロールプレスを行った。次に、密閉容器中に載置し、トラップを経由した真空ポンプに接続し、該容器をマントルヒーターで加熱することにより、250℃で5時間、10−1Pa以下の減圧下で熱処理して、非水電解液蓄電素子用負極を作製した。このようにして、銅箔集電体上に合剤層を形成した。スラリーの塗布量は、熱処理後の塗布質量が3.2mg/cmとなるように調整した。前記プレス条件は、前記合剤層の多孔度が34%となるように調節した。
(非水電解質蓄電素子の作製)
上記の負極を作用極とし、対極及び参照極をLi金属とし、非水電解質として、1MのLiClOをエチレンカーボネートとジエチルカーボネート(体積比1:1)の混合溶媒に溶解した非水電解液を用い、非水電解質蓄電素子を作製した。
(容量確認試験)
前記非水電解質蓄電素子に対して、1サイクルの初期充放電を行った。充電は、充電電流0.1CmA、充電下限電圧0.02V(vs.Li/Li)、充電時間16hの定電流定電圧充電とし、1サイクル目の放電は、放電電流0.2CmA、放電終止電位2.0V(vs.Li/Li)の定電流放電とした。
次に、初回容量確認試験を行った。充電は、充電電流0.2CmA、充電下限電圧0.02V(vs.Li/Li)、充電時間8hの定電流定電圧充電とし、放電は、放電電流0.2CmA、放電終止電位2.0V(vs.Li/Li)の定電流放電とし、この充放電を2サイクル繰り返した。この容量確認試験における1サイクル目の放電容量を「初回放電容量(mAh/g)」とし、1サイクル目の充電容量に対する放電容量の百分率を「初回クーロン効率(%)」として求めた。
(充放電サイクル試験)
続いて、30サイクルの充放電サイクル試験を行った。充電は、充電電流1.0CmA、充電終止電圧0.02V(vs.Li/Li)、充電時間3hの定電流定電圧充電とし、放電は、放電電流1.0CmA、放電終止電圧2.0V(vs.Li/Li)の定電流放電とし、この充放電を30サイクル繰り返した。
その後、充放電サイクル試験後の容量確認試験を行った。条件は、上記初回容量確認試験と同一である。0.2CmA、0.02V(vs.Li/Li)の定電流定電圧充電を8時間、0.2CmA、2.0V(vs.Li/Li)の定電流放電を2サイクル行い、放電容量を測定した。
この容量確認試験における1サイクル目の放電容量の、上記「初回放電容量」に対する百分率を「容量維持率(%)」として求めた。
<実施例2〜4>
熱処理温度を、それぞれ300℃、350℃、400℃とした以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜4の負極を作製した。
<比較例1〜2>
熱処理温度を、それぞれ150℃、200℃とした以外は、実施例1と同様にして、比較例1,2の負極を作製した。
<比較例3〜8>
バインダーに用いる樹脂材料をアクリロニトリル−アクリル酸共重合体からポリフッ化ビニリデンに変更し、熱処理温度をそれぞれ150℃、200℃、250℃、300℃、350℃、400℃とした以外は、実施例1と同様にして、比較例3〜8の負極を作製した。
各実施例、比較例の負極を作用極とした非水電解質蓄電素子の初回放電容量、初回クーロン効率、及び容量保持率を、以下の表1に示す。
Figure 2016186894
実施例1〜4、及び比較例1,2はポリアクリロニトリルを主骨格とする樹脂材料に対して、熱処理温度を異ならせた結果を示す。
比較例1,2は、従来の推奨温度である150℃や、200℃で熱処理を行った結果であり、容量維持率は40%台以下である。
これに対して、250℃で熱処理を行った実施例1は、67.7%の容量維持率を示し、300℃〜400℃で熱処理を行った実施例2〜4は、96.7%以上と、さらに高い容量維持率を示している。また、300℃〜400℃で熱処理を行った実施例2〜4は、初回クーロン効率についても優れている。
これは、200℃以下の熱処理では、樹脂材料のニトリル基の環状構造への変化が起こらず、弾性率が低いままであるが、250℃以上の熱処理で、環状構造の生成がある程度進行し、さらに、300℃以上の熱処理で、大部分のニトリル基が環状構造に変化し、弾性率が飛躍的に高まったためと推察される。
また、実施例1〜4と比較例1,2とでは、熱処理温度が高いほど、初回放電容量が大きくなっている。
実施例1〜4と比較例1,2の各負極において、SEM−EDX分析を行ったところ、250℃までの熱処理では、CがSi及びOの分布と重なるように不均一に分布していたことから、バインダーがSiO粒子の近傍に凝集していることが認められた。これに対して、300℃以上の熱処理では、Cの分布はSi及びOの分布に依存せず、合剤層全体に比較的均一に分布していた。したがって、負極を300℃以上で熱処理したことにより、一度融解したバインダーが合剤全体の活物質と均一に分布し、且つ、ナフチリジン環構造が形成されたことにより、SiO粒子の膨張収縮に伴う合剤層の体積変化を顕著に抑制する作用が備えられたため、優れた結着性が発現し、高い初回放電容量と良好な充放電サイクル性能を示したものと推察される。
比較例1〜8はポリフッ化ビニリデンをバインダーに用いた負極の試験結果であり、150〜400℃のいずれの温度で熱処理を施しても、容量維持率は実施例1〜4に及ばない。これは、ポリフッ化ビニリデンは環状化する基を有さないから、弾性率が変化する要素がないことによると推察される。
以上のとおり、本発明は、黒鉛に比べて高い理論容量を有する負極材料を備え、良好な充放電サイクル性能を有する非水電解質蓄電素子を提供することができるから、車載用の電源素子としての利用が可能である。
1 蓄電素子
2 電極群
3 容器
4 正極端子
4’正極リード
5 負極端子
5’負極リード
20 蓄電ユニット
30 蓄電装置


Claims (5)

  1. 負極活物質とバインダーを含む合剤層を有する非水電解質蓄電素子用負極において、
    前記負極活物質は、Si及びSnから選ばれる少なくとも一つの元素を含む金属単体、合金又は化合物を含み、
    前記バインダーは、ナフチリジン環構造を有する樹脂であることを特徴とする非水電解質蓄電素子用負極。
  2. 前記バインダーは、ナフチリジン環構造に加えて、ポリアクリロニトリル構造を有する樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の非水電解質蓄電素子用負極。
  3. 前記バインダーは、ナフチリジン環構造に加えて、ポリアクリル酸構造又はポリメタクリル酸構造の少なくとも一方を有する樹脂であることを特徴とする請求項1又は2に記載の非水電解質蓄電素子用負極。
  4. 前記負極活物質は、さらに炭素材料を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の非水電解質蓄電素子用負極。
  5. 正極と、請求項1〜4のいずれかに記載の負極と、非水電解質とを備えることを特徴とする非水電解質蓄電素子。

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