JP7363846B2 - 炭素材粒子、電極、二次電池及び二次電池の使用方法 - Google Patents

炭素材粒子、電極、二次電池及び二次電池の使用方法 Download PDF

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Description

本開示は、炭素材粒子、炭素材粒子の製造方法、電極、二次電池及び二次電池の使用方法に関する。
従来、MAG(Massive Artificial Graphite)やPLGL(Porous Lithiated Graphite Lamina)などの黒鉛負極を用い、黒鉛の充放電容量(黒鉛へのリチウムの挿入脱離容量)に加えて、黒鉛上でのリチウムの析出溶解容量を利用する二次電池が検討されている(例えば、非特許文献1~2参照)。また、本発明者らは、不織布状の炭素繊維集合体を負極に用い、炭素繊維の充放電容量(炭素繊維へのリチウム挿入脱離容量)に加えて、炭素繊維上でのリチウム析出溶解容量を利用する二次電池を提案している(例えば、特許文献1~4)。このように、負極でのリチウム挿入脱離容量に加えて、負極でのリチウム析出溶解容量を利用することで、二次電池のエネルギー密度を高めることができる。
特開2019-96475号公報 特開2019-135689号公報 特開2019-160730号公報 特開2020-17479号公報
Chem, 1, 287-297 (2016) ACS Nano, 14, 1837-1845 (2020)
ところで、非特許文献1,2や特許文献1~4の二次電池では、充電時には黒鉛粒子や炭素繊維の外表面にリチウムが析出すると考えられる。二次電池において、黒鉛粒子や炭素繊維の周囲にはイオン伝導媒体が豊富に存在するため、黒鉛粒子や炭素繊維の外表面にリチウムが析出すると、析出したリチウムとイオン伝導媒体との反応によって被膜が生成されることなどにより、充放電を繰り返すと充放電効率が低下することが懸念される。そのため、二次電池のサイクル耐久性をより高めることが望まれていた。
本開示は、このような課題に鑑みなされたものであり、二次電池のサイクル耐久性をより高めることを主目的とする。
上述した目的を達成するために鋭意研究したところ、本発明者らは、所定の材料を含む炭素材のコアの周囲にその材料を含まない炭素材を形成したコアシェル構造の粒子を負極に用いると、二次電池のサイクル耐久性をより高められることを見出し、本開示を完成するに至った。
即ち、本明細書で開示する炭素材粒子は、
アルカリ金属と合金を形成可能な合金形成材料を含む炭素材のコアと、
前記コアの周囲に設けられ、前記合金形成材料を含まない炭素材のシェルと、
を備えたものである。
本明細書で開示する炭素材粒子の製造方法は、
アルカリ金属と合金を形成可能な合金形成材料を含む炭素材のコアの周囲に、前記合金形成材料を含まないシェル炭素原料を用いて炭素材のシェルを形成する、シェル形成工程、
を含むものである。
本明細書で開示する電極は、上述した炭素材粒子を含むものである。
本明細書で開示する二次電池は、
上述した電極である負極と、
正極と、
前記負極と前記正極との間に介在し、前記アルカリ金属のイオンを伝導するイオン伝導媒体と、
を備えたものである。
本明細書で開示する二次電池の使用方法は、
上述した二次電池の使用方法であって、
負極電位が前記アルカリ金属の酸化還元電位よりも低くなるまで充電を行う充電工程、
を含むものである。
本開示では、二次電池のサイクル耐久性をより高めることができる、炭素材粒子、炭素材粒子の製造方法、電極、二次電池、及び二次電池の使用方法を提供できる。このような効果が得られる理由は、以下のように推察される。例えば、合金形成材料を含むコアと、合金形成材料を含まないシェルと、を備えた炭素材粒子を用いた二次電池では、合金形成材料がアルカリ金属の移動や析出の駆動力を生じさせるなどして、コア内の合金形成材料の周辺に優先的にアルカリ金属が析出し、炭素材粒子の外表面でのアルカリ金属の析出が抑制されると考えられる。炭素材粒子の内部にあるコアでは、炭素材粒子の周囲に比べてイオン伝導媒体が豊富ではないため、コア内に優先的にアルカリ金属を析出させることで、析出したアルカリ金属とイオン伝導媒体との反応による被膜の生成等が抑制され、充放電サイクルを繰り返したときの充放電効率の低下を抑制でき、サイクル耐久性をより高めることができると考えられる。また、本開示では、負極電位がアルカリ金属の酸化還元電位よりも低くなるまで充電を行うことで、アルカリ金属の析出溶解容量を利用でき、二次電池のエネルギー密度をより高めることができると考えられる。なお、本明細書において、アルカリ金属の析出及び溶解は、アルカリ金属単体の析出及び溶解に限定されず、アルカリ金属合金の析出及び溶解を含んでもよい。
本開示の炭素材粒子10の一例を示す断面模式図。 コア形成工程の一例を示す説明図。 シェル形成工程の一例を示す説明図。 本開示の二次電池20の一例を示す模式図。 実験例1の電極の表面のSEM像。 実験例1の電極の断面のSEM像。 実験例1の電極の表面のEPS測定結果。 実験例1の電極の断面のEPS測定結果。 実験例1のセルの充放電曲線。
本開示は、例えば、アルカリ金属のイオンをキャリアイオンとする二次電池に好適に適用できる。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムなどが挙げられ、このうち、リチウムが好ましい。以下では、本開示をリチウム二次電池に適用する場合について主に説明する。
[炭素材粒子]
まず、本開示の炭素材粒子について説明する。本開示の炭素材粒子は、合金形成材料を含む炭素材のコアと、合金形成材料を含まない炭素材のシェルと、を備えている。シェルは、コアの周囲に設けられている。
合金形成材料は、リチウムと合金(リチウム合金)を形成可能な材料である。合金形成材料としては、例えば、金、白金、マグネシウム、亜鉛、タングステン、モリブデン、アルミニウム、ガリウム、インジウム、ケイ素、ゲルマニウム、錫、鉛、ヒ素、アンチモン及びビスマスのうちの1以上を含む金属及び/又は化合物が挙げられる。これらは単独で、又は2以上を組み合わせて用いることができる。金属は、純金属でもよいし、合金でもよい。化合物は、酸化物、窒化物、リン化物、硫化物などでもよいし、硝酸塩、リン酸塩、硫酸塩などの無機酸塩でもよく、これらのうち酸化物が好ましい。合金形成材料は、コスト低減の観点からは、安価な亜鉛やアルミニウムを含むものが好ましい。合金形成材料は、炭素材粒子製造時における安定性の観点から、酸化物などの化合物としてもよい。合金形成材料は、酸化亜鉛であることが好ましい。酸化亜鉛は、コスト低減と炭素材粒子製造時における安定性を両立できるため、合金形成材料として好ましい。酸化亜鉛は、ZnO+3Li++3e-→ZnLi+Li2Oの式でリチウムと合金(LiZn)を形成すると考えられる。コアに含まれる合金形成材料は、上述した合金形成材料のうちの1種としてもよいし、2種以上としてもよい。
合金形成材料は、粒子状であることが好ましい。合金形成材料の粒径は、例えば、1nm以上1000nm以下としてもよいし、10nm以上500nm以下としてもよいし、50nm以上200nm以下としてもよい。なお、本明細書において、粒径は、レーザー回折法で測定したメディアン径D50としてもよい。レーザー回折法での測定が困難な場合には、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、代表的な粒子の長径と短径を測定し、その平均値としてもよい。
コアの炭素材としては、例えば、黒鉛、コークス、ガラス状炭素、難黒鉛化炭素及び熱分解炭素のうちの1以上が挙げられる。このうち、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛)や人造黒鉛などの黒鉛が好ましく、天然黒鉛がより好ましい。天然黒鉛は、一般的に、黒鉛化の処理が必要な人造黒鉛よりも安価だからである。黒鉛は、機械的な形状制御を施されたものとしてもよく、例えば、黒鉛の角をとったり、球形となるように丸めたり、粉砕されたものであってもよい。このような形状制御により、選択的配向を抑制し、リチウムイオンの挿入、脱離の阻害を抑制することができると考えられる。コアの炭素材は、例えば、鱗片状黒鉛などの黒鉛の粒子同士を複合化して球形化された球形化黒鉛としてもよい。
コアは、炭素材の重量WC[g]と合金形成材料の重量WA[g]との比であるWA/WCの値が、1/1000以上1/5以下を満たすものとしてもよいし、1/500以上1/10以下を満たすものとしてもよいし、1/100以上1/15以下を満たすものとしてもよい。
コアは、エネルギー分散型X線分析(EDS)で測定した炭素量XC[at%]と合金形成材料の金属成分量XA[at%]との比であるXA/XCの値が、0.001以上0.1以下を満たすものとしてもよいし、0.002以上0.01以下を満たすものとしてもよいし、0.003以上0.005以下を満たすものとしてもよい。
コアは、炭素材に合金形成材料が担持されたものであることが好ましく、内部(中心部)の炭素材まで合金形成材料が担持されたものであることがより好ましい。コアの粒径は、例えば1μm以上100μm以下としてもよく、3μm以上50μm以下としてもよく、5μm以上30μm以下としてもよい。コアの粒径が1μm以上であればコアシェル化が比較的容易であり、100μm以下であれば本開示の炭素材粒子をリチウム二次電池に用いたときにコアのより内側までリチウムイオンが拡散可能で合金形成材料を有効に利用できるため、好ましい。
コアは、リチウムを含むものとしてもよい。この場合、コアは、リチウム金属の状態でリチウムを含むものとしてもよいし、リチウムと合金形成材料とを用いて形成されるリチウム合金の状態でリチウムを含むものとしてもよいし、その両方としてもよい。合金形成材料を含むコアを有する炭素材粒子を負極に備えたリチウム二次電池を、負極電位がリチウムの酸化還元電位よりも低くなるまで充電(還元)すると、炭素材粒子内では、コアの合金形成材料を核としてリチウム(リチウム金属及びリチウム合金の少なくとも一方)が析出する。このため、炭素材粒子において、コアはリチウムを含み得る。
シェルは、合金形成材料を含まない炭素材である。シェルの炭素材としては、例えば、黒鉛、コークス、ガラス状炭素、難黒鉛化炭素及び熱分解炭素のうちの1以上が挙げられる。このうち、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛)や人造黒鉛などの黒鉛が好ましく、天然黒鉛がより好ましい。黒鉛は、コアの炭素材で説明したのと同様に、機械的な形状制御を施されたものとしてもよい。シェルの炭素材は、例えば、コアを内部に有する球形化黒鉛の一部としてもよく、具体的には、コアの表面を覆うように鱗片状黒鉛などの黒鉛の粒子が層状に形成されたものとしてもよい。
シェルの厚みは、例えば1μm以上50μm以下としてもよく、3μm以上30μm以下としてもよく、5μm以上20μm以下としてもよい。シェルの厚みが1μm以上であればコアに含まれる合金形成材料が炭素材粒子の外表面に露出しにくく、シェルの厚みが50μm以下ではリチウムイオンが合金形成材料を含むコアまで円滑に到達できるため、好ましい。シェルの重量は、例えば、コアの重量の0.01倍以上10倍以下としてもよいし、0.1倍以上5倍以下としてもよいし、0.5倍以上2倍以下としてもよい。
炭素材粒子において、シェルが合金形成材料を含むか否かは、例えば、炭素材粒子の外表面をエネルギー分散型X線分析(EDS)で分析して判断できる。具体的には、例えば、炭素材粒子の外表面のEDSスペクトルにおいて、合金形成材料の金属成分のピークが検出されない場合に、シェルが合金形成材料を含まないと判断できる。合金形成材料の金属成分のピークとバックグラウンドとの判別が難しい場合などには、EDSで測定した炭素量XC[at%]と合金形成材料の金属成分量XA[at%]との比であるXA/XCの値が、0.001未満の場合には合金形成材料を含まないと判断し、0.001以上の場合には合金形成材料を含むと判断してもよい(以下同様)。炭素材粒子の外表面をEDSで分析する際には、炭素材粒子を含む電極を後述のように作製し、この電極の表面を分析対象としてもよい。
炭素材粒子において、コアが合金形成材料を含むか否かは、例えば炭素材粒子の断面をエネルギー分散型X線分析(EDS)で分析して判断できる。具体的には、例えば、炭素材粒子の断面のEDSスペクトルにおいて合金形成材料の金属成分のピークが検出され、かつ、上述した炭素材粒子の外表面のEDSスペクトルにおいて合金形成材料の金属成分のピークが検出されない場合に、コアが合金形成材料を含むと判断できる。炭素材粒子の断面をEDSで分析する際には、炭素材粒子を含む電極を後述のように作製し、この電極の断面を分析対象としてもよい。
炭素材粒子は、球形であることが好ましく、球形化黒鉛であることがより好ましい。球形化黒鉛をリチウム二次電池の電極に用いると、リチウムの移動パスにおいて電極膜厚方向の屈曲度が増加しにくく、電極表面での電流集中を抑制可能であり、電極表面でのリチウムの析出をより抑制できる。炭素材粒子の粒径は、例えば3μm以上200μm以下としてもよく、9μm以上110μm以下としてもよく、15μm以上70μm以下としてもよい。
本開示の炭素材粒子の一例を図1に示す。図1は、本開示の炭素材粒子10の一例を示す断面模式図である。炭素材粒子10は、コア12と、シェル16と、を備えた球形の粒子である。炭素粒子10は例えば球形化黒鉛である。コア12は、炭素材13と合金形成材料14とを含み、球形に形成されている。コア12では、内部の炭素材13まで合金形成材料14が担持されている。炭素材13は例えば黒鉛であり、鱗片状黒鉛同士を複合化したものとしてもよい。合金形成材料14は例えば酸化亜鉛である。シェル16は、炭素材17を含み、コア12の外表面に層状に形成されている。シェル16は、合金形成材料を含まない。炭素材17は例えば黒鉛であり、鱗片状黒鉛同士を複合化したものとしてもよい。
[炭素材粒子の製造方法]
次に、本開示の炭素材粒子の製造方法について説明する。この炭素材粒子の製造方法は、例えば、上述した炭素材粒子を製造する製造方法としてもよい。この炭素材粒子の製造方法は、リチウムと合金を形成可能な合金形成材料を含む炭素材のコアの周囲に、合金形成材料を含まないシェル炭素原料を用いて炭素材のシェルを形成する、シェル形成工程を含む。
コアは、上述の炭素材粒子で説明したコアと同様のものとしてもよい。コアは、例えば、合金形成材料を含む球形化黒鉛としてもよい。コアは、例えば、以下のコア形成工程で形成してもよい。
(コア形成工程)
コア形成工程では、コア炭素原料と、合金形成材料と、を用いてコアを形成する。
コア炭素原料としては、例えば、黒鉛、コークス、ガラス状炭素、難黒鉛化炭素及び熱分解炭素のうちの1以上及び/又はこれらの前駆体が挙げられる。このうち、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛)や人造黒鉛などの黒鉛が好ましく、天然黒鉛がより好ましく、鱗片状黒鉛がさらに好ましい。コア炭素原料の粒径は、例えば、1μm以上100μm以下としてもよく、3μm以上50μm以下としてもよく、5μm以上30μm以下としてもよい。
合金形成材料は、リチウムと合金(リチウム合金)を形成可能な材料である。合金形成材料としては、例えば、金、白金、マグネシウム、亜鉛、タングステン、モリブデン、アルミニウム、ガリウム、インジウム、ケイ素、ゲルマニウム、錫、鉛、ヒ素、アンチモン及びビスマスのうちの1以上を含む金属及び/又は化合物が挙げられる。合金形成材料は、酸化亜鉛であることが好ましい。この合金形成材料は、上述の炭素材粒子で説明した合金形成材料と同様としてもよい。
コア形成工程において、コア炭素原料と合金形成材料との配合は、コア炭素原料の重量WC[g]と合金形成材料の重量WA[g]との比であるWA/WCの値が、例えば1/1000以上1/5以下を満たす配合としてもよいし、1/500以上1/10以下を満たす配合としてもよいし、1/100以上1/15以下を満たす配合としてもよい。
コア形成工程では、コア炭素原料の周囲に合金形成材料が形成された表面担持粒子を形成し、表面担持粒子同士を複合化して、コアを形成してもよい。以下では、表面担持粒子を形成する工程を表面担持工程、表面担持粒子同士を複合化する工程を複合化工程とも称する。
表面担持工程では、コア炭素原料の周囲に合金形成材料が形成された表面担持粒子を形成する。表面担持工程では、例えば、コア炭素原料と合金形成材料とをミキサーで混合するなど、機械的な外力によってコア炭素原料と合金形成材料とを複合化することで、コア炭素原料の周囲に合金形成材料を形成してもよい。あるいは、コア炭素原料と合金形成材料とを分散媒に分散させて混合し、分散媒を蒸発乾固や濾過などで除去することで、コア炭素原料の周囲に合金形成材料を形成してもよい。分散媒としては、水を用いてもよいし、メタノールやエタノールなどの有機溶媒を用いてもよい。
複合化工程では、表面担持粒子同士を複合化する。これにより、内部(中心部)の炭素材まで合金形成材料が担持されたコアを形成できる。複合化工程では、例えば、表面担持粒子をミキサーで混合するなど、機械的な外力によって表面担持粒子同士を複合化することで、コアを形成してもよい。その際、球形のコアが得られるような条件で複合化(球形化)を行ってもよい。
(シェル形成工程)
シェル形成工程では、合金形成材料を含まないシェル炭素原料を用いて、コアの周囲に炭素材のシェルを形成する。
シェル炭素原料としては、例えば、黒鉛、コークス、ガラス状炭素、難黒鉛化炭素及び熱分解炭素のうちの1以上及び/又はこれらの前駆体が挙げられる。このうち、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛)や人造黒鉛などの黒鉛が好ましく、天然黒鉛がより好ましく、鱗片状黒鉛がさらに好ましい。シェル炭素原料の粒径は、例えば、1μm以上100μm以下としてもよく、3μm以上50μm以下としてもよく、5μm以上30μm以下としてもよい。シェル炭素原料は、コア炭素原料よりも粒径が大きいものとしてもよい。
シェル炭素原料の使用量は、例えばコアの重量の0.01倍以上10倍以下としてもよいし、0.1倍以上5倍以下としてもよいし、0.5倍以上2倍以下としてもよい。
シェル形成工程では、コアとシェル炭素原料とをミキサーで混合するなど、機械的な外力によって、コアとシェル炭素原料とを複合化したり、シェル炭素原料同士を複合化することで、コアの周囲に炭素材のシェルを形成してもよい。これにより、合金形成材料を含むコアの周囲に合金形成材料を含まない炭素材のシェルが形成された炭素材粒子(コアシェル粒子とも称する)が得られる。シェル形成工程では、球形のコアシェル粒子が得られるような条件で複合化(球形化)を行ってもよい。合金形成材料を含む球形化黒鉛をコアとして用い、シェル形成工程でも球形化処理を行えば、球形化黒鉛である炭素材粒子が得られる。
本開示の炭素材粒子の製造方法の一例として、炭素材粒子10の製造方法を図2と図3とに分けて説明する。図2は、コア形成工程の一例を示す説明図(断面図)であり、図3は、シェル形成工程の一例を示す説明図(断面図)である。コア形成工程は、図2に示すように、コア炭素原料13rの周囲に合金形成材料14を担持した表面担持粒子15を形成する表面担持工程と、表面担持粒子15同士を複合化してコア12を形成する複合化工程と、を含む。コア炭素原料13rは、複合化工程で複合化及び球形化されて、コア12の炭素材13となる。コア炭素原料13rは、例えば黒鉛であり、鱗片状黒鉛としてもよい。コア12の炭素材13は、例えば球形化黒鉛としてもよい。シェル形成工程では、図3に示すように、合金形成材料14を含まないシェル炭素原料17rを用いてコア12の周囲にシェル16を形成する。シェル炭素原料17rは、シェル形成工程で複合化及び球形化されて、シェルの炭素材17となる。シェル炭素原料17rは、例えば黒鉛であり、鱗片状黒鉛としてもよい。以上のようにして、コア12とシェル16とのコアシェル構造を有する炭素材粒子10が得られる。炭素材粒子10は、例えば球形化黒鉛としてもよい。
[電極]
次に、本開示の電極について説明する。この電極は、上述した炭素材粒子を含む。炭素材粒子は、リチウムを吸蔵放出する電極活物質としての機能を有する。この電極において、炭素材粒子は、炭素材へのリチウムの挿入及び脱離による容量(炭素材容量)を発現するほか、リチウムの析出及び溶解による容量(リチウム金属容量)を発現する。この電極は、例えば、上述した炭素材粒子と結着材と必要に応じて導電材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の電極合材としたものを、集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成したものとしてもよい。結着材は、炭素材粒子及び導電材粒子を繋ぎ止める役割を果たすものであり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、或いはポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴム、スルホン化EPDMゴム、天然ブチルゴム(NBR)等を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。また、水系バインダーであるセルロース系やスチレンブタジエンゴム(SBR)の水分散体等を用いることもできる。導電材は、電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば特に限定されず、例えば、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウィスカ、ニードルコークス、炭素繊維、金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金など)などの1種又は2種以上を混合したものを用いることができる。これらの中で、導電材としては、電子伝導性及び塗工性の観点より、カーボンブラック及びアセチレンブラックが好ましい。炭素材粒子、結着材、導電材を分散させる溶剤としては、例えばN-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチレントリアミン、N,N-ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフランなどの有機溶剤を用いることができる。また、水に分散剤、増粘剤等を加え、SBRなどのラテックスで活物質をスラリー化してもよい。増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースなどの多糖類を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。塗布方法としては、例えば、アプリケータロールなどのローラコーティング、スクリーンコーティング、ドクターブレイド方式、スピンコーティング、バーコータなどが挙げられ、これらのいずれかを用いて任意の厚さ・形状とすることができる。集電体としては、銅、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、アルミニウム、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス、Al-Cd合金などのほか、接着性、導電性及び耐還元性向上の目的で、例えば銅などの表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀などで処理したものも用いることができる。これらについては、表面を酸化処理することも可能である。集電体の形状については、箔状、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の形成体などが挙げられる。集電体の厚さは、例えば1~500μmのものが用いられる。
この電極の表面には、合金形成材料が存在しない。電極の表面に合金形成材料が存在するか否かは、例えば、電極の表面をエネルギー分散型X線分析(EDS)で分析して判断できる。具体的には、例えば、電極の表面のEDSスペクトルにおいて、合金形成材料の金属成分のピークが検出されない場合に、電極の表面には合金形成材料が存在しないと判断できる。
この電極の内部には、合金形成材料が存在する。電極の内部に合金形成材料が存在するか否かは、例えば、電極の断面をエネルギー分散型X線分析(EDS)で分析して判断できる。具体的には、例えば、電極の断面のEDSスペクトルにおいて、合金形成材料の金属成分のピークが検出された場合に、電極の断面に合金形成材料が存在すると判断できる。この電極は、電極の断面をEDSで測定したときの炭素量XC[at%]と合金形成材料の金属成分量XA[at%]との比であるXA/XCの値が、0.001以上0.1以下を満たすものとしてもよいし、0.002以上0.01以下を満たすものとしてもよいし、0.003以上0.005以下を満たすものとしてもよい。
[二次電池]
次に、本開示の二次電池について説明する。本開示の二次電池は、負極と、正極と、負極と正極との間に介在し、リチウムイオンを伝導するイオン伝導媒体と、を備える。
負極は、上述した電極である。負極は、リチウムを吸蔵放出する負極活物質として上述した炭素材粒子を有する。
正極は、リチウムを吸蔵及び放出可能な正極活物質を含むものとしてもよい。正極は、例えば正極活物質と導電材と結着材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の正極合材としたものを、集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成してもよい。正極活物質としては、遷移金属元素を含む硫化物や、リチウムと遷移金属元素とを含む酸化物などを用いることができる。具体的には、TiS2、TiS3、MoS3、FeS2などの遷移金属硫化物、基本組成式をLi(1-x)MnO2(0<x<1など、以下同じ)やLi(1-x)Mn24などとするリチウムマンガン複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)CoO2などとするリチウムコバルト複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)NiO2などとするリチウムニッケル複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)NiaCobMnc2(a+b+c=1)などとするリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物、基本組成式をLiV23などとするリチウムバナジウム複合酸化物、基本組成式をV25などとする遷移金属酸化物などを用いることができる。これらのうち、リチウムの遷移金属複合酸化物、例えば、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiV23などが好ましい。なお、「基本組成式」とは、他の元素(例えばAlやMgなど)を含んでもよい趣旨である。正極に用いられる結着材、導電材、溶剤、塗布方法などは、それぞれ上述の電極で例示したものを用いることができる。集電体としては、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、鉄、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラスなどのほか、接着性、導電性及び耐酸化性向上の目的で、アルミニウムや銅などの表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀などで処理したものを用いることができる。これらについては、表面を酸化処理することも可能である。集電体の形状は、上述した電極で例示したものと同様のものを用いることができる。
イオン伝導媒体は、支持塩を含む非水系電解液や非水系ゲル電解液などとしてもよい。非水電解液の溶媒としては、カーボネート類、エステル類、エーテル類、ニトリル類、フラン類、スルホラン類及びジオキソラン類などが挙げられ、これらを単独又は混合して用いることができる。具体的には、カーボネート類としてエチレンカーボネートやプロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネートなどの環状カーボネート類や、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチル-n-ブチルカーボネート、メチル-t-ブチルカーボネート、ジ-i-プロピルカーボネート、t-ブチル-i-プロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート類、γ-ブチルラクトン、γ-バレロラクトンなどの環状エステル類、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酪酸メチルなどの鎖状エステル類、ジメトキシエタン、エトキシメトキシエタン、ジエトキシエタンなどのエーテル類、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、などのフラン類、スルホラン、テトラメチルスルホランなどのスルホラン類、1,3-ジオキソラン、メチルジオキソランなどのジオキソラン類などが挙げられる。このうち、環状カーボネート類と鎖状カーボネート類との組み合わせが好ましい。この組み合わせによると、充放電の繰り返しでの電池特性を表すサイクル特性が優れているばかりでなく、電解液の粘度、得られる電池の電気容量、電池出力などをバランスの取れたものとすることができる。なお、環状カーボネート類は、比誘電率が比較的高く、電解液の誘電率を高めていると考えられ、鎖状カーボネート類は、電解液の粘度を抑えていると考えられる。支持塩は、例えば、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiClO4などの無機塩としてもよいし、LiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiC(CF3SO23などの有機塩としてもよい。この支持塩は、非水電解液中の濃度が0.1mol/L以上5mol/L以下であることが好ましく、0.5mol/L以上2mol/L以下であることがより好ましい。支持塩を溶解する濃度が0.1mol/L以上では、十分な電流密度を得ることができ、5mol/L以下では、電解液をより安定させることができる。このイオン伝導媒体には、リン系、ハロゲン系などの難燃剤を添加してもよい。
この二次電池は、負極と正極との間にセパレータを備えていてもよい。セパレータとしては、二次電池の使用範囲に耐えうる組成であれば特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン製不織布やポリフェニレンスルフィド製不織布などの高分子不織布、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂の薄い微多孔膜が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。
この二次電池は、満充電状態では、負極内(より好ましくは炭素材粒子の内部)にリチウムが析出するものとしてもよい。この場合、リチウムは、リチウム金属として析出してもよいしリチウム合金として析出してもよいし、その両方としてもよい。二次電池が満充電状態か否かは、二次電池の電圧が予め設定された満充電電圧に達しているか否かで判断してもよい。
この二次電池の形状は、特に限定されないが、例えばコイン型、ボタン型、シート型、積層型、円筒型、偏平型、角型などが挙げられる。また、電気自動車等に用いる大型のものなどに適用してもよい。図4は、本開示の二次電池20の一例を示す模式図である。この二次電池20は、カップ形状の電池ケース21と、正極活物質を有しこの電池ケース21の下部に設けられた正極22と、負極活物質を有し正極22に対してセパレータ24を介して対向する位置に設けられた負極23と、絶縁材により形成されたガスケット25と、電池ケース21の開口部に配設されガスケット25を介して電池ケース21を密封する封口板26と、を備えている。この二次電池20は、正極22と負極23との間の空間にイオン伝導媒体27が満たされている。この負極23は、上述した炭素材粒子10を含んでいる。
[二次電池の使用方法]
次に、本開示の二次電池の使用方法について説明する。本開示の二次電池の使用方法は、上述した二次電池の使用方法であって、負極電位がリチウムの酸化還元電位よりも低くなるまで充電を行う充電工程を含む。負極電位がリチウムの酸化還元電位よりも低くなるまで(例えば満充電状態まで)充電すると、負極ではリチウムが析出し、負極にリチウムが貯蔵される。その後、負極電位をリチウムの酸化還元電位よりも高くすると負極ではリチウムが溶解し、そのエネルギーを放電容量として取り出すことができる。このように、この二次電池の使用方法では、リチウムの析出溶解容量を利用できるため、二次電池のエネルギー密度をより高めることができる。
本開示の二次電池の使用方法では、合金形成材料を含むコアと、合金形成材料を含まないシェルと、を備えた炭素材粒子を負極に用いた二次電池に対して、上述した充電工程を行う。この二次電池では、コアの合金形成材料の周辺に優先的にリチウムが析出し、炭素材粒子の外表面でのリチウムの析出が抑制されると考えられる。例えば、合金形成材料が酸化亜鉛の場合、まず、コアの酸化亜鉛がZnO+3Li++3e-→LiZn+Li2Oの式でリチウムと合金(LiZn)を形成すると考えられる。このLiZn上にリチウムが析出する際の生成過電圧は、黒鉛などの炭素材にリチウムが析出する際の生成過電圧よりも非常に小さいため、LiZn上に優先的にリチウムが析出し、炭素材粒子の外表面でのリチウムの析出が抑制されると考えられる。合金形成材料が酸化亜鉛以外の場合にも同様と考えられる。そして、炭素材粒子の内部にあるコアでは、炭素材粒子の周囲に比べてイオン伝導媒体が豊富ではないため、コアに優先的にリチウムを析出させることで、析出したリチウムとイオン伝導媒体との反応による被膜の生成等が抑制され、充放電サイクルを繰り返したときの充放電効率の低下を抑制でき、サイクル耐久性をより高めることができると考えられる。また、炭素材粒子の内部にリチウムを析出させることで、リチウムがデンドライト状に成長するデンドライト成長が抑制されると考えられる。これにより、デンドライト成長したリチウムが折れて失活することなども抑制されると考えられる。
以上詳述した本開示では、二次電池のサイクル耐久性をより高めることができる、炭素材粒子、炭素材粒子の製造方法、電極、二次電池、及び二次電池の使用方法を提供できる。また、本開示では、負極電位がリチウムの酸化還元電位よりも低くなるまで充電を行うことで、リチウムの析出溶解容量を利用でき、二次電池のエネルギー密度をより高めることができる。
なお、本開示は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
例えば、上述した実施形態では、本開示をリチウム二次電池に適用する場合について主に説明したが、リチウム以外のアルカリ金属をキャリアイオンとするアルカリ金属二次電池に適用してもよい。また、上述した実施形態では、合金形成材料は、リチウムと合金を形成可能な材料としたが、リチウムイオン以外のアルカリ金属と合金を形成可能な材料としてもよい。その場合、アルカリ金属はキャリアイオンのアルカリ金属と同じが好ましい。さらに、上述した実施形態では、コアはリチウムを含み得ることを示したが、キャリアイオンがリチウム以外のアルカリ金属の場合にはそのアルカリ金属をコアは含み得る。さらにまた、上述した実施形態では、充電工程では、負極電位がリチウムの酸化還元電位よりも低くなるまで充電を行うものとしたが、負極電位がアルカリ金属の酸化還元電位よりも低くなるまで充電を行い、対応するアルカリ金属の析出溶解容量(アルカリ金属容量)を利用してもよい。その場合も、アルカリ金属はキャリアイオンのアルカリ金属と同じが好ましい。そしてまた、上述した実施形態では、二次電池は、満充電状態でリチウムが析出するものとしたが、キャリアイオンがリチウム以外のアルカリ金属の場合にはそのアルカリ金属が析出するものとしてもよい。
以下には、炭素材粒子及び電極を具体的に作製し、対極にリチウム金属を用いて充放電試験を行った例を、実験例として説明する。なお、実験例1が本開示の実施例に相当し、実験例2~4が比較例に相当する。
[実験例1]
(炭素材粒子の作製)
・表面担持工程
コア炭素原料としての鱗片状天然黒鉛(伊藤黒鉛工業製、CNP7)50gと、合金形成材料としての酸化亜鉛を含む酸化亜鉛分散液(アルドリッチ製、<130nm、40% in エタノール)6.25g(ZnOは2.5g)と、水200gとを混合した後、エバポレータ(日本ビュッヒ)で蒸発乾固させた。こうして、表面に酸化亜鉛粒子を担持させた鱗片状天然黒鉛(表面担持粒子)を形成した。
・複合化工程(球形化工程)
表面担持工程で得られた粉末(表面担持粒子)40gに対して、マルチパーパスミキサ(日本コークス工業)を用いて球形化処理を行った。こうして、内部の黒鉛まで酸化亜鉛粒子を担持させた球形化黒鉛(コア)を形成した。
・シェル形成工程
複合化工程で得られた粉末(コア)30gに対して、シェル炭素原料としての鱗片状天然黒鉛(伊藤黒鉛工業製、CNP15)30gを加えて、再度マルチパーパスミキサを用いて球形化処理を行った。こうして、酸化亜鉛粒子を含む炭素材のコアと、酸化亜鉛を含まない炭素材のシェルと、のコアシェル構造を有する球形化黒鉛(コアシェル粒子)、つまり本開示の炭素材粒子10を得た。
(電極の作製)
シェル形成工程で得られた粉末(コアシェル粒子)とポリフッ化ビニリデン(PVdF、クレハ製、#9300)を90:10の重量比で混合した後、合材目付が4mg/cm2となるように銅箔上に塗布した。真空乾燥をしたのち、ロールプレス機で圧縮処理を施して合材密度1.1g/cm3となるよう調整することで電極シートを作製した。
(SEM観察及びEDS分析)
上記電極について、走査型電子顕微鏡(SEM)によって表面及び断面を観察した。表面のSEM像の一例を図5に、断面のSEM像の一例を図6に示す。また、表面(図5)および断面(図6)のそれぞれについて、視野の中央部かつ複数粒子が含まれる領域(図5,6内の四角で囲われた領域)のエネルギー分散型X線分析(EDS)スペクトルを取得した。表面(図5)のEDSスペクトルの一例を図7に、断面(図6)のEDSスペクトルの一例を図8に示す。なお、図7B及び図8Bは、各々図7A及び図8Aの低強度部について縦軸(強度)を拡大して表示したものである。図7,8を用いて、Zn_L端のピーク(1.04keV)の有無を確認した。なお、SEM観察及びEDS分析は、加速電圧10kVの条件で実施した。なお、図7B及び図8Bで確認されるF_K端のピークは、電極に用いたPVdFのフッ素に起因すると推察された。
(評価セルの作製)
上記電極を、16mmφ(2cm2)に打ち抜いて、セパレータを介してリチウム金属対極と対向をさせた後、電解液を注入して、セルを作製した。電解液としては、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)及びエチルメチルカーボネート(EMC)の混合溶媒に、LiPF6を1Mの濃度となるように溶解したものを用いた。このセルに対して、コンディショニング充放電として、0.15mA/cm2の電流密度、0.005-1.5Vの電圧範囲にて、定電流-定電圧充放電を3サイクル実施した。こうして得られたコンディショニング充放電後のセルを評価セルとして用いて、以下の実験を行った。実験例において、「充電」は炭素材粒子へのLiの挿入及び析出を示し、「放電」は炭素材粒子からのLiの脱離及び溶解を示すものとした。なお、このコンディショニングの電位範囲内(約0.4V付近)で酸化亜鉛がリチウムと反応してLiZn合金が形成されていると推察された。
(レート特性の評価)
上述した評価セルを準備し、0.15mA/cm2の電流値で3mAh/cm2の容量まで定電流充電した後、同じく0.15mA/cm2の電流値で1.5Vまで定電流-定電圧放電を行って、充放電効率を算出した。同様の条件で充放電を3サイクル行ったときの2サイクル目の充放電曲線を図9に示す。続いて、3mA/cm2の電流値(高レート)で3mAh/cm2の容量まで定電流充電した後、0.15mA/cm2の電流値で1.5Vまで定電流-定電圧放電を行って、充放電効率を算出した。
(サイクル耐久性の評価)
レート特性の評価とは別に上述した評価セルを準備し、0.15mA/cm2で3mAh/cm2の容量まで(つまり、20時間にわたって)定電流充電を行い、同じく0.15mA/cm2で1/5Vまで定電流-定電圧放電を行う、という充放電サイクルを30サイクル実施して、充放電効率の推移を評価した。
[実験例2]
炭素材粒子の作製においてシェル形成工程を省略した以外は、つまり、炭素材粒子10に代えて、コア12をそのまま用いた以外は、実験例1と同様に実験例2の評価を行った。
[実験例3]
炭素材粒子の作製において複合化工程及びシェル形成工程を省略した以外は、つまり、炭素材粒子10に代えて表面担持粒子15をそのまま用いた以外は、実験例1と同様に実験例3の評価を行った。
[実験例4]
炭素材粒子の作製において表面担持工程を省略した以外は、つまり、炭素材粒子10に代えて合金形成材料14を含まない以外は炭素材粒子10と同様のコアシェル粒子を用いた以外は、実験例1と同様に実験例4の評価を行った。
[結果]
表1に、実験例1~4について、炭素材粒子の製造工程、電極のEDS測定結果、レート特性の評価結果及びサイクル耐久性の評価結果をまとめた。実験例1では、断面観察時のみにZn_Lピークが検出されたことから、球形化黒鉛粒子の内部空隙に酸化亜鉛粒子が担持されており、外表面には酸化亜鉛粒子が露出していないと判断された。このような炭素材粒子を負極として用いて黒鉛へのLi挿入・脱離に加えてLi析出・溶解の容量を利用した充放電評価を実施したところ、高レートで充電した場合や充放電サイクルを繰り返した場合にも、90%以上の高い充放電効率が得られることがわかった。このことから、実験例1の炭素材粒子では、レート特性およびサイクル耐久性に優れていることがわかった。一方で、シェル形成工程を省略した実験例2では、表面及び断面の両方からZn_Lピークが検出されたことから、球形化黒鉛粒子の外表面にも酸化亜鉛粒子が担持されていると判断された。この場合、レート特性は優れていたが、サイクル耐久性が大幅に低下することが分かった。複合化工程及びシェル形成工程を省略した酸化亜鉛を担持した鱗片状天然黒鉛をそのまま用いた実験例3でも、表面及び断面の両方からZn_Lピークが検出されたことから、鱗片状天然黒鉛の少なくとも外表面に酸化亜鉛粒子が担持されていると判断された。この場合、サイクル耐久性は実験例2よりよいものの実験例1よりは低く、レート特性は大幅に低下した。酸化亜鉛担持無しの球形化天然黒鉛を用いた実験例4では、レート特性は実験例3より優れていたが、サイクル耐久性が低かった。
[考察]
上記の結果より、実験例1のように合金形成材料を含むコアと、合金形成材料を含まないシェルとを有する炭素材粒子を用いた場合のみ、高いサイクル耐久性を実現でき、さらに高いレート特性と両立できることを見出した。この要因としては、球形化黒鉛内部空隙のみに担持された酸化亜鉛粒子がLi析出核として機能することで、球形化黒鉛内部へのLi析出溶解反応を促進したためと推察された。サイクル耐久性の向上には、主に炭素材粒子内部でのみLi析出溶解反応が生じることで、リチウム表面への被膜生成や、いわゆる失活するリチウム金属の生成が抑制されたことなどが寄与したと推察された。また、高レート特性の向上には、炭素材粒子内部にLiを析出させることで、リチウムのデンドライト成長が抑制され、リチウム金属が折れて失活することが抑制されたことなどが寄与したと推察された。なお、高レート特性については電極膜厚方向での反応ムラによる影響も想定されるが、球形化黒鉛粒子を用いることで電極膜厚方向のイオン拡散に要する屈曲度が低減され、これも高レート特性の向上に寄与したと推察された。
Figure 0007363846000001
10 炭素材粒子、12 コア、13 炭素材、13r コア炭素原料、14 合金形成材料、15 表面担持粒子、16 シェル、17 炭素材、17r シェル炭素原料、20 二次電池、21 電池ケース、22 正極、23 負極、24 セパレータ、25 ガスケット、26 封口板、27 イオン伝導媒体。

Claims (13)

  1. アルカリ金属と合金を形成可能な合金形成材料を含む炭素材のコアと、
    前記コアの周囲に設けられ、前記合金形成材料を含まない炭素材のシェルと、
    を備え、前記合金形成材料は、亜鉛金属及び/又は亜鉛化合物である、
    炭素材粒子。
  2. 前記合金形成材料は、前記亜鉛化合物のうちの酸化亜鉛である、
    請求項1に記載の炭素材粒子。
  3. 前記コアは前記炭素材として黒鉛を含むか、
    前記シェルは前記炭素材として黒鉛を含むか、
    の少なくとも一方を満たす、
    請求項1又は2に記載の炭素材粒子。
  4. 前記炭素材粒子は、球形化黒鉛である、
    請求項1~3のいずれか1項に記載の炭素材粒子。
  5. 前記コアは、前記アルカリ金属を含む、
    請求項1~4のいずれか1項に記載の炭素材粒子。
  6. 前記アルカリ金属は、リチウムである、
    請求項1~5のいずれか1項に記載の炭素材粒子。
  7. 請求項1~6のいずれか1項に記載の炭素材粒子を含む、
    電極。
  8. 前記電極の表面には、前記合金形成材料が存在しない、
    請求項に記載の電極。
  9. 請求項又はに記載の電極である負極と、
    正極と、
    前記負極と前記正極との間に介在し、前記アルカリ金属のイオンを伝導するイオン伝導媒体と、
    を備えた、
    二次電池。
  10. 満充電状態では、前記負極内に前記アルカリ金属が析出する、
    請求項に記載の二次電池。
  11. 請求項又は10に記載の二次電池の使用方法であって、
    負極電位が前記アルカリ金属の酸化還元電位よりも低くなるまで充電を行う充電工程、
    を含む、
    二次電池の使用方法。
  12. アルカリ金属と合金を形成可能な合金形成材料を含む炭素材のコアと、前記コアの周囲に設けられ、前記合金形成材料を含まない炭素材のシェルとを備えた炭素材粒子、を含む電極である負極と、正極と、前記負極と前記正極との間に介在し、前記アルカリ金属のイオンを伝導するイオン伝導媒体と、を備え、
    満充電状態では、前記負極内に前記アルカリ金属が析出する、
    二次電池。
  13. アルカリ金属と合金を形成可能な合金形成材料を含む炭素材のコアと、前記コアの周囲に設けられ、前記合金形成材料を含まない炭素材のシェルとを備えた炭素材粒子、を含む電極である負極と、正極と、前記負極と前記正極との間に介在し、前記アルカリ金属のイオンを伝導するイオン伝導媒体と、を備えた二次電池の使用方法であって、
    負極電位が前記アルカリ金属の酸化還元電位よりも低くなるまで充電を行う充電工程、
    を含む、
    二次電池の使用方法。
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