JP2016186452A - 有核赤血球の選別方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】母体血から胎児由来の有核赤血球を選別する有核赤血球の選別方法を提供する。【解決手段】吸収ピーク波長が730nm以上であり、かつ、吸収ピーク波長の吸収値の半値に相当する短波長側の波長が700nm以上である染色物質を用いて、母体血中の血球細胞の核を染色する染色工程と、600nmより長波長領域にピーク波長を有する第1の波長領域の光を用いて、染色した血球細胞から有核細胞を識別する識別工程と、ヘモグロビンの吸収波長領域にピーク波長を有する光を用いて、血球細胞を母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球と、に選別する選別工程と、を有する有核赤血球の選別方法である。【選択図】図1
Description
本発明は、有核赤血球の選別方法に係り、特に、光学的な情報を利用して、妊娠母体の血液中の胎児由来の有核赤血球を特定する有核赤血球の選別方法に関する。
出生前診断として、従来より、羊水穿刺により羊水中の胎児細胞の染色体を調べる羊水検査が行われている。しかしながら、この方法では、流産の可能性のあることが問題として指摘されている。
一方、妊娠母体(以下、単に「母体」ともいう)の血液中に胎児細胞が移行し、この胎児細胞が母体中を血液とともに循環していることが最近わかってきた。そこで、母体血を用いて、母体血中の胎児細胞の染色体のDNA(デオキシリボ核酸:deoxyribonucleic acid)を再現性よく確実に分析することができれば、流産の可能性のない安全な出生前診断を実現することができることとなる。
しかしながら、母体の血液中に存在する胎児細胞(有核赤血球)は、母体血数mL中に1個程度しか存在しない。このように非常に少ない胎児細胞(有核赤血球)を確実に取得することが、母体血を利用した出生前診断を行う上で非常に大きな課題である。
母体血中から胎児細胞である有核赤血球を取得する方法として、有核赤血球を濃縮する方法、例えば、密度勾配遠心分離を用いて、血漿成分、および母親の赤血球成分を取り除く技術がある。また、白血球の表面の蛋白質に特異的に免疫反応する抗体を用いて、磁気により母親の白血球を分離する技術(MACS法:Magnetic activated cell sorting)、胎児ヘモグロビンのγ鎖に特異的に免疫反応する抗体と蛍光色素を用いて胎児の有核赤血球を分離する技術(FACS法:Fluorescence activated cell sorting)などを用いて、母体血中の胎児細胞である有核赤血球を取得することが行われている。
これらの方法は、血液中の胎児由来の有核赤血球の濃度を増加させ、目的の細胞を取得する確率を高めるのに有用な技術である。しかしながら、胎児由来の有核赤血球の周りには、依然として母体由来の血球細胞が存在するため、確実に短時間で胎児由来の有核赤血球を取得できていなかった。
また、光学的な情報を用いて、細胞の種類を識別し、求める細胞を取得する技術が開示されている。例えば、下記の特許文献1には、細胞核および細胞質を染色して透過可視光の吸収画像を生成し、励起光を照射して核の蛍光画像を形成した後、細胞質と核のコントラスト画像を用いて有核赤血球を判別することが記載されている。特許文献2には、ヘモグロビンの最大吸収波長付近の415nmの波長の光を利用して、透過光および散乱光を検出することで、血球の種類を識別する装置が記載されている。特許文献3には、生体組織の光学的性質を利用した生体情報分析装置が記載されている。
上記の特許文献に記載されているような、光学的な情報を用いて細胞を選別する技術は、有核赤血球を選別する上で非常に有用な技術である。しかしながら、特許文献1に記載の方法では、胎児ヘモグロビンを優先的に染色する色素として、青色沈殿物を使用しており、ヘモグロビン自体の吸収と重なり、検出の区別が難しかった。特許文献2では、赤血球の散乱光は、ヘモグロビンに吸収されてしまうため、赤血球と有核赤血球の選別が難しいとの欠点があった。特許文献3では、酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの区別から生体組織内の病変部の有無を観察するものであり、血球分離を行うものではなかった。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、出生前診断を行うにあたり、母体血から有核赤血球、特に、胎児由来の有核赤血球を確実に分離することができる、有核赤血球の選別方法を提供することを目的とする。
本発明は上記目的を達成するために、吸収ピーク波長が730nm以上であり、かつ、吸収ピーク波長の吸収値の半値に相当する短波長側の波長が700nm以上である染色物質を用いて、母体血中の血球細胞の核を染色する染色工程と、600nmより長波長領域にピーク波長を有する第1の波長領域の光を用いて、染色した血球細胞から有核細胞を識別する識別工程と、ヘモグロビンの吸収波長領域にピーク波長を有する光を用いて、血球細胞を母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球と、に選別する選別工程と、を有する有核赤血球の選別方法を提供する。
本発明の有核赤血球の選別方法によれば、吸収ピーク波長が730nm以上であり、かつ、吸収ピーク波長の吸収値の半値に相当する短波長側の波長が700nm以上である染色物質を用いて血球細胞の核を染色することで、有核赤血球の識別、選別を行う際、染色物質の吸収波長領域とヘモグロビンの吸収波長領域が重ならないため、染色した核を確実に検出することができる。また、選別工程において、ヘモグロビンの吸収波長領域にピーク波長を有する光を用いて選別を行うことで、選別する血球細胞がヘモグロビンの吸収を有するか、すなわち、赤血球かその他の細胞かの選別を行うことが可能となる。そして、ヘモグロビンの検出を確実に行うことができ、母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球との選別に際し、染色物質の影響を受けずに、選別を行うことができるので、選別の精度を高めることができる。
本発明の別の態様においては、選別工程は、ヘモグロビンの吸収に起因する分光特性により、血球細胞から赤血球を選別する赤血球選別工程と、ヘモグロビンの酸素親和性に起因する分光特性により、核を有する赤血球を、母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球と、に選別する有核赤血球選別工程と、を有することが好ましい。
この態様によれば、選別工程を、赤血球選別工程と、有核赤血球選別工程と、により行うことで、ヘモグロビンの吸収に起因する分光特性で赤血球を識別し、有核赤血球を検出した後、母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球とを選別することで、胎児由来の有核赤血球を選別する精度を高めることができる。
本発明の別の態様においては、赤血球選別工程は、380nm以上470nm以下の波長領域の光を用いて行われることが好ましい。
この態様は、赤血球選別工程に用いられる光の好ましい波長領域を規定したものである。ヘモグロビンは、ポルフィリン環に由来する380nmから450nm付近にSoret帯と呼ばれる吸収を有するため、上記範囲の波長領域の光を用いることで、ヘモグロビンの検出を行うことができるとともに、染色物質の吸収波長領域とも波長が離れているので、ヘモグロビンの検出の精度を高めることができる。
本発明の別の態様においては、選別工程は、380nm以上650nm以下の波長領域の波長における吸光度により行われることが好ましい。
酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンは、380nm以上650nm以下の波長領域において、異なる吸光度を示す。この態様によれば、上記波長領域に含まれる波長において、吸光度を測定することで、母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球とを選別することができる。
本発明の別の態様においては、選別工程は、380nm以上650nm以下の波長領域から選択される2種類以上の波長における吸光度により行われることが好ましい。
この態様によれば、380nm以上650nm以下の波長領域から選択される2種類以上の波長を用いて吸光度を測定することで、異なる吸光度を示す波長で分光特性を測定することができる。したがって、分光特性の差異を明確にすることができ、有核赤血球を精度よく選別することができる。
本発明の別の態様においては、選別工程は、胎児由来の有核赤血球の吸光度が母体由来の有核赤血球の吸光度を超える第2の波長領域の光と、母体由来の有核赤血球の吸光度が胎児由来の有核赤血球の吸光度を超える第3の波長領域の光と、を含む少なくとも2種類以上の各々の波長の光で血球細胞の吸光度を測定することが好ましい。
この態様によれば、分光特性の測定に用いられる波長を、胎児由来の有核赤血球の吸光度が、母体由来の有核赤血球の吸光度を超える第2の波長領域の波長と、母体由来の有核赤血球の吸光度が胎児由来の有核赤血球の吸光度を超える第3の波長領域の波長と、から選ばれる各々の波長で測定することで、胎児由来の有核赤血球と母体由来の有核赤血球とで、第2の波長領域の吸光度の大きさと第3の波長領域の吸光度の大きさとが逆転することになる。したがって、各々の波長で測定した吸光度を比較することで、母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球との差を明確にすることができ、精度良く、有核赤血球の選別を行うことができる。例えば、各々の波長で測定した吸光度の比を求めることで、胎児由来の有核赤血球における吸光度の比と、胎児由来の有核赤血球の吸光度の比と、の差が大きくなるので、有核赤血球を選別することができる。
本発明の別の態様においては、第2の波長領域は、380nm以上500nm以下の波長領域、525nm以上550nm未満の波長領域、および、575nm以上585nm以下の波長領域であり、第3の波長領域は、550nm以上575nm未満の波長領域、590nm以上650nm以下の波長領域であることが好ましい。
この態様は、第2の波長領域、および、第3の波長領域を具体的に規定したものであり、この範囲の波長領域の光を用いることで、吸光度の大きさを逆転することができ、母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球との光学特性の差異を明確にすることができる。
本発明の別の態様においては、識別工程、および、選別工程で用いられる光は、LEDまたはLASERの光、および、干渉フィルタを通過した単色光を主波長とする光のいずれかであることが好ましい。
この態様は、識別工程、および、選別工程で用いられる光を限定したものであり、上記の光を用いることで、狭い波長領域の光で血球細胞の選別、識別を行うことができ、吸光度の測定を精度良く行うことができる。
本発明の別の態様においては、核の形態により有核赤血球候補となる細胞を選別する工程を有することが好ましい。
この態様によれば、核の形態により選別を行うことで、有核赤血球以外の有核細胞である白血球を排除することができるので、識別工程、選別工程において、有核赤血球の選別を行う際に、有核赤血球である可能性の高い細胞を特定し、その細胞に対して行うことができるので、有核赤血球の選別の効率を高めることができる。
本発明の別の態様においては、染色物質が、塩基性色素であることが好ましい。
この態様によれば、染色物質に塩基性色素を用いることで、細胞核の染色を行うことができるので、有核細胞と核を有さない細胞との識別を行うことができる。
本発明の有核赤血球の選別方法によれば、ヘモグロビンの吸収波長領域と重ならない吸収波長領域を有する染色物質を用いて血球細胞を染色することで、母体血中から有核赤血球を選別する確率を高めることができ、母体血を用いた遺伝子検査を確実に効率良く行うことができる。
以下、添付図面に従って、本発明に係る有核赤血球の選別方法について説明する。なお、本明細書において「〜」とは、その前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
図1は、本発明の有核赤血球の選別方法を含む検査方法の一実施形態の手順を示すフローチャート図である。本発明の有核赤血球の選別方法は、母体血中の有核赤血球を、基板上で検出する態様が好ましい。この態様においては、まず、基板上に、有核赤血球を含む母体血の画分を塗抹する。母体血の画分を塗抹する方法として、妊娠母体からの母体血を採取する採取工程(ステップS12)と、母体血中の有核赤血球を濃縮する濃縮工程(ステップS14)と、濃縮工程により有核赤血球が濃縮された母体血の画分を基板上に塗抹する塗抹工程(ステップS16)と、からなる方法により、基板上に有核赤血球を含む画分を塗抹し、塗抹標本を作製することができる。
次に、本発明の有核赤血球の選別方法は、好ましくは作製した塗抹標本に対して、染色物質を用いて、母体血中の血球細胞の核を染色する染色工程(ステップS18)と、第1の波長領域の光を用いて、染色した血球細胞から有核細胞を識別する識別工程(ステップS20)と、ヘモグロビンの吸収波長領域にピーク波長を有する光を用いて、血球細胞を母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球と、に選別する選別工程(ステップS22)と、を有する。
その後、胎児由来の有核赤血球または母体由来の有核赤血球として選別した有核赤血球の候補細胞を基板上から単離する細胞単離工程(ステップS24)と、単離した有核赤血球の染色体に含まれる核酸を増幅する増幅工程(ステップS26)と、増幅産物の量を確定するとともに、遺伝子解析により胎児由来の有核赤血球であることを確定する確定工程(ステップS28)と、により胎児由来の有核赤血球であることを確定することができる。
<採取工程(ステップS12)>
採取工程は、血液試料である母体血を採取する工程である。母体血としては、侵襲のおそれのない妊娠母体の末梢血であることが好ましい。
採取工程は、血液試料である母体血を採取する工程である。母体血としては、侵襲のおそれのない妊娠母体の末梢血であることが好ましい。
母体の末梢血には、母体由来の好酸球、好中球、好塩基球、単核球、リンパ球等の白血球や、核のない成熟した赤血球に加えて、母体由来の有核赤血球、そして胎児由来の有核赤血球が含まれる。胎児由来の有核赤血球は、妊娠後、6週程度から母体血中に存在するといわれている。出生前診断を行う本実施形態においては、妊娠後6週程度以降の母体の末梢血を検査することが好ましい。
胎児由来の有核赤血球は、胎盤を通過して、母体の血液中に存在する赤血球前駆体である。母体が妊娠中には、胎児の赤血球は有核であり得る。この赤血球には染色体が存在するため、侵襲性が低い手段で、胎児由来の染色体および胎児遺伝子の入手が可能となる。この胎児由来の有核赤血球は、母体血中の細胞の106個に1個程度の割合で存在しているといわれており、母体の末梢血中には非常に存在確率が少ない。
<濃縮工程(ステップS14)>
次に、濃縮工程により、採取工程で採取した母体血中の有核赤血球の濃縮を行うことが好ましい。濃縮工程としては、公知の方法、例えば、密度勾配遠心分離法、MACS法、FACS法、レクチン法、あるいは、フィルタ濾過法などを用いることができる。なかでも、血球細胞の特性を利用し、簡便な濃縮方法として、密度勾配遠心分離法により濃縮を行うことが好ましい。濃縮工程の一例として、以下に、密度勾配遠心分離法について説明する。
次に、濃縮工程により、採取工程で採取した母体血中の有核赤血球の濃縮を行うことが好ましい。濃縮工程としては、公知の方法、例えば、密度勾配遠心分離法、MACS法、FACS法、レクチン法、あるいは、フィルタ濾過法などを用いることができる。なかでも、血球細胞の特性を利用し、簡便な濃縮方法として、密度勾配遠心分離法により濃縮を行うことが好ましい。濃縮工程の一例として、以下に、密度勾配遠心分離法について説明する。
〔密度勾配遠心分離法〕
密度勾配遠心分離法は、血液中の成分の密度の差を利用して分離する方法である。密度勾配遠心分離法は、分離用媒体を使用しない方法、また、1種の分離用媒体を使用してその分離用媒体の上下で分離する方法、あるいは、2種の分離用媒体を使用して目的の成分の密度領域を分離用媒体の間に挟み込むように分離する方法等を利用して、目的の成分(本実施形態においては有核赤血球)を集めることができる。そして、目的の成分を含む画分を採取することで、母体血から有核赤血球を濃縮することができる。
密度勾配遠心分離法は、血液中の成分の密度の差を利用して分離する方法である。密度勾配遠心分離法は、分離用媒体を使用しない方法、また、1種の分離用媒体を使用してその分離用媒体の上下で分離する方法、あるいは、2種の分離用媒体を使用して目的の成分の密度領域を分離用媒体の間に挟み込むように分離する方法等を利用して、目的の成分(本実施形態においては有核赤血球)を集めることができる。そして、目的の成分を含む画分を採取することで、母体血から有核赤血球を濃縮することができる。
分離用媒体を使用しない方法としては、血液試料である母体の末梢血(希釈液で希釈されていてもよい)を遠心管に充填し、遠心分離を行った後に、目的の成分を採取することで有核赤血球の濃縮を行うことができる。
1種の分離用媒体を使用する方法としては、遠心管の底部に分離用媒体を注入し、分離用媒体の上に血液試料である母体の末梢血(希釈液で希釈されていてもよい)を積層した後に遠心分離を行い、遠心分離後の分離用媒体の上部(分離用媒体の一部を含んでもよい)を採取することで有核赤血球の濃縮を行うことができる。
2種の分離用媒体を使用する方法では、遠心管の底部に第1の分離用媒体を注入し、第1の分離用媒体の上に第2の分離用媒体を積層し、第2の分離用媒体の上に血液試料である母体の末梢血(希釈液で希釈されていてもよい)を積層した後に遠心分離にかけ、遠心分離後の第1の分離用媒体と第2の分離用媒体の間の層(第1の分離用媒体および/または第2の分離用媒体のそれぞれ一部を含んでもよい)を採取することで有核赤血球の濃縮を行うことができる。なお、第1の分離用媒体を積層した遠心管を第2の分離用媒体を積層する前に冷却すると、第1と第2の分離用媒体の境界領域での混合を抑制できる。
国際公開WO2012/023298号公報には、胎児の有核赤血球を含めた母体の血液の密度が記載されている。その記載によると、想定される胎児由来の有核赤血球の密度は、1.065〜1.095g/mL程度、母体の血球の密度は、赤血球が1.070〜1.120g/mL程度、好酸球は1.090〜1.110g/mL程度、好中球は1.075〜1.100g/mL程度、好塩基球が1.070〜1.080g/mL程度、リンパ球が1.060〜1.080g/mL程度、単核球が1.060〜1.070g/mL程度である。
積層する分離用媒体の密度は、密度が1.065〜1.095g/mL程度の胎児由来の有核赤血球を、母体中の他の血球成分と分離するために設定される。例えば、2種の分離用媒体を使用する方法では、胎児由来の有核赤血球の中心の密度は、1.080g/mL程度であるため、この密度を挟む2つの異なる密度の分離用媒体を作成し、隣接して重層することで、その界面に所望の胎児由来の有核赤血球を集めることが可能となる。好ましくは、第1の分離用媒体の密度を1.08g/mL以上1.10g/mL以下、第2の分離用媒体の密度は1.06g/mL以上1.08g/mL以下として設定することが好ましい。更に好ましくは、第1の分離用媒体の密度を1.08g/mL以上1.09g/mL以下、第2の分離用媒体の密度を1.065g/mL以上1.08g/mL以下である。具体的な例としては、第1の分離用媒体の密度を1.085g/mL、第2の分離用媒体の密度を1.075g/mLに設定することで、血漿成分、好酸球および単核球を、回収する所望の画分から分離することが可能となる。また、赤血球、好中球、リンパ球の一部も分離することが可能となる。本実施形態では、第1の分離用媒体と、第2の分離用媒体は同じ種類でも、異なる種類でも、本発明の効果を実現できる限りにおいて制限はないが、同じ種類の媒体を用いることが好ましい態様である。
濃縮工程で用いられる密度勾配遠心分離用の分離用媒体としては、ポリスクロースとジアトリゾ酸ナトリウムを含む溶液であるHistopaque(登録商標)、非透析性ポリビニルピロリドンをコーティングした直径15〜30nmのシリカゾルを含む溶液であるPercoll(登録商標)、ショ糖から作られた側鎖に富んだ中性の親水性ポリマー溶液であるFicoll(登録商標)−Paqueなどの分離用媒体を使用することができる。本実施形態では、HistopaqueおよびPercollを使用することが好ましい。
密度勾配遠心分離の分離用媒体は、希釈液あるいは密度(比重)の異なる分離用媒体の混合により所望の密度に調製することが可能である。例えば、Histopaque(登録商標)は、市販されている密度1.077の媒体と、密度1.119の媒体を用いて、第1の分離用媒体および第2の分離用媒体を所望の密度に調整することが可能である。また、これらの密度勾配遠心分離用媒体は、塩化ナトリウム(NaCl)などの添加により浸透圧を調節することができる。
<塗抹工程(ステップS16)>
次に、濃縮工程で有核赤血球が濃縮された母体血の画分を基板上に塗抹することが好ましい。塗抹工程としては、引きガラス法(ウエッジ法)、クラッシュ法(押し潰し法)、手伸ばし法、スピン法などにより行うことができ、特に引きガラス法で行うことが好ましい。
次に、濃縮工程で有核赤血球が濃縮された母体血の画分を基板上に塗抹することが好ましい。塗抹工程としては、引きガラス法(ウエッジ法)、クラッシュ法(押し潰し法)、手伸ばし法、スピン法などにより行うことができ、特に引きガラス法で行うことが好ましい。
引きガラス法としては、濃縮工程により有核赤血球が濃縮された母体血の画分を第1の基板上に、滴下する。第1の基板上に滴下した画分に、第2に基板を接触させて、その状態を維持することで、第1の基板と第2の基板とが接触した接触位置で、第1の基板と第2の基板とで囲まれた空間に、母体血の画分を広げる。その後、第2の基板を一定の速度で第1の基板上を移動させることで、第1の基板上に画分を広げ、塗抹標本を作製する。また、塗抹する前に、濃縮工程により有核赤血球が濃縮された母体血の画分の血球濃度を所望の濃度に調整する工程を塗抹工程に含むことも好ましい態様である。
上記のようにして作製した塗抹標本に対して、以下のように、有核赤血球の選別を行う。
<染色工程(ステップS18)>
染色工程は、塗抹標本上の血球細胞を染色する工程である。染色工程は、公知の方法で行うことができ、例えば、染色物質を水に希釈した水溶液に塗抹標本を浸漬し、純水で洗浄後、乾燥させることで行うことができる。
染色工程は、塗抹標本上の血球細胞を染色する工程である。染色工程は、公知の方法で行うことができ、例えば、染色物質を水に希釈した水溶液に塗抹標本を浸漬し、純水で洗浄後、乾燥させることで行うことができる。
〔染色物質〕
本発明においては、吸収ピーク波長が730nm以上であり、かつ吸収ピーク波長の吸収値の半値に相当する短波長側の波長が700nm以上であるスペクトルを有する染色物質を用いて血球細胞の核を染色する。なお、「吸収ピーク波長が730nm以上であり、かつ吸収ピーク波長の吸収値の半値に相当する短波長側の波長が700nm以上である」とは、血球細胞を塗抹した塗抹標本を乾燥させた後、80%エタノール水溶液に20分間浸漬し、染色物質を適度に希釈した水溶液に5分間浸漬し、純水で洗浄後、乾燥させることにより得られた染色物質で染色した基板の全反射スペクトルから得た波長のことである。本発明においては、このような条件で得られたスペクトルのピーク波長が730nm以上であり、ベースラインに対するピーク波長の高さの半分の値が半値、半値の反射スペクトルの長波長側の波長および短波長側の波長の幅が半値幅に相当し、この短波長側の波長が700nm以上である染色物質を用いる。
本発明においては、吸収ピーク波長が730nm以上であり、かつ吸収ピーク波長の吸収値の半値に相当する短波長側の波長が700nm以上であるスペクトルを有する染色物質を用いて血球細胞の核を染色する。なお、「吸収ピーク波長が730nm以上であり、かつ吸収ピーク波長の吸収値の半値に相当する短波長側の波長が700nm以上である」とは、血球細胞を塗抹した塗抹標本を乾燥させた後、80%エタノール水溶液に20分間浸漬し、染色物質を適度に希釈した水溶液に5分間浸漬し、純水で洗浄後、乾燥させることにより得られた染色物質で染色した基板の全反射スペクトルから得た波長のことである。本発明においては、このような条件で得られたスペクトルのピーク波長が730nm以上であり、ベースラインに対するピーク波長の高さの半分の値が半値、半値の反射スペクトルの長波長側の波長および短波長側の波長の幅が半値幅に相当し、この短波長側の波長が700nm以上である染色物質を用いる。
有核赤血球は、脱核して赤血球になる前駆体であり、白血球にないヘモグロビンを有する。よく知られているように、ヘモグロビンは鉄―ポルフィリン錯体であり、ポルフィリン環に由来する380nmから450nm付近にSoret帯と呼ばれる吸収をもち、500nmから600nm程度にQ帯と呼ばれる吸収をもつ錯体である。染色物質として、上記のスペクトルを有する染色物質を用いることで、ヘモグロビンのSoret帯を測定する380nmから450nmの波長領域、および、500nmから600nm程度にQ帯と呼ばれる吸収をもつ波長領域には、染色物質による吸収がほとんどなく、ヘモグロビン吸収帯の測定および、ヘモグロビンの酸素親和性に起因する分光特性の測定に影響を与えずに、細胞核を染色することが可能となる。
このような染色物質としては、細胞の核のみを染色し、細胞質を染色しない物質を用いることが好ましい。核のみを染色し、細胞質を染色しない物質を用いることで、赤血球の細胞質に含まれるヘモグロビンが染色されることを防止することができ、ヘモグロビンの検出を確実に行うことができる。好ましい染色物質としては、色素であり、細胞核のDNAのリン酸基と相互作用する塩基性色素に分類される一般的な染色剤である色素を使用することが好ましい。具体的に好ましい塩基性色素としては、国際公開WO2012/063964号公報に記載の近赤外線吸収シアニン色素等を用いることができる。
染色物質で染色された細胞の核のスペクトルは、細胞核を染色した状態における全反射スペクトルを測定することにより得ることができる。全反射スペクトルの測定は、市販の分光光度計を用いて測定することが可能であり、日立分光光度計U3210(積分球敷設)装置を用いて行うことが可能である。日立分光光度計U3210(積分球敷設)装置は次のようにして、全反射スペクトルを取得することができる。まず、塗抹していないスライドガラスと白板を重ねたものを2組準備し、積分球の参照用、およびサンプル用測定窓がスライドガラスとなるようにセットし、ベースラインを補正する。次に、サンプル用測定窓の塗抹していないスライドガラスを外した後、染色済みの基板の塗抹していない面を白板と重ね、染色済みガラス基板の塗抹部がサンプル用測定窓側となるように白板を重ねてセットし、測定を行うことで、全反射スペクトルを測定することができる。
<識別工程(ステップS20)>
識別工程は、600nmより長波長領域にピーク波長を有する第1の波長領域の光を用いて、塗抹標本上の染色した血球細胞から有核細胞を識別する工程である。識別工程に用いられる第1の波長領域の光とは、染色物質の吸収波長領域にピーク波長を有する光であり、LED(light emitting diode)またはLASER(light amplification by stimulated emission of radiation)の光、および、干渉フィルタを通過した単色光を主波長とする光のいずれかを用いることが好ましい。具体的には、617nm、625nm、740nm、770nm、810nm、870nmに発光ピーク波長を有するLEDの光を挙げることができる。識別工程における識別は、例えば、810nmのピークを有するLEDを用いて、基板上に塗抹した血球細胞の透過光の画像を取得する。染色物質によって染色された細胞核を有する細胞の核領域のみが透過光量が減少することで、有核細胞の識別をすることができる。この画像を記録することにより、細胞核を有する細胞の基板上の位置を記録することが可能となる。なお、「単色光を主波長とする光」とは、単色光そのものか、あるいは、単色光と単色光の波長近傍の波長の光とを含む光、とする。
識別工程は、600nmより長波長領域にピーク波長を有する第1の波長領域の光を用いて、塗抹標本上の染色した血球細胞から有核細胞を識別する工程である。識別工程に用いられる第1の波長領域の光とは、染色物質の吸収波長領域にピーク波長を有する光であり、LED(light emitting diode)またはLASER(light amplification by stimulated emission of radiation)の光、および、干渉フィルタを通過した単色光を主波長とする光のいずれかを用いることが好ましい。具体的には、617nm、625nm、740nm、770nm、810nm、870nmに発光ピーク波長を有するLEDの光を挙げることができる。識別工程における識別は、例えば、810nmのピークを有するLEDを用いて、基板上に塗抹した血球細胞の透過光の画像を取得する。染色物質によって染色された細胞核を有する細胞の核領域のみが透過光量が減少することで、有核細胞の識別をすることができる。この画像を記録することにより、細胞核を有する細胞の基板上の位置を記録することが可能となる。なお、「単色光を主波長とする光」とは、単色光そのものか、あるいは、単色光と単色光の波長近傍の波長の光とを含む光、とする。
図2は、還元ヘモグロビン(Hb)と、酸化ヘモグロビン(HbO2)の波長に対する吸収係数を示すグラフ図である(特開2014−1485号公報に記載)。図2に示すように、還元ヘモグロビン(Hb)、酸化ヘモグロビン(HbO2)とも、600nm以上において、吸収係数が小さくなる。本発明においては、染色物質として、吸収ピーク波長が730nm以上であり、半値に相当する短波長側の波長が700nm以上の染色物質を用いているため、600nmより長波長領域にピーク波長を有する第1の波長領域の光を用いることで、染色物質で染色された核を識別することができる。
<選別工程(ステップS22)>
選別工程は、ヘモグロビンの吸収波長領域にピーク波長を有する光を用いて血球細胞を母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球と、に選別する工程である。選別工程は、ヘモグロビンの酸素親和性に起因する分光特性により、母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球とに選別する有核赤血球選別工程を有する。赤血球の選別は、有核赤血球選別工程において、ヘモグロビンの吸収波長領域の光を照射した際に、透過光量が減少しない細胞は、赤血球以外の細胞として選別することで可能となる。また、赤血球選別工程として、ヘモグロビンの吸収波長領域にピーク波長を有する光を用いて、ヘモグロビンの吸収に起因する分光特性により赤血球を選別する工程を有核赤血球選別工程とは別に有していてもよい。赤血球選別工程を有する場合は、図1に示すように、識別工程後に行い、識別工程により識別された有核細胞を有核赤血球として選別してもよいし、選別工程とは別に、染色工程後、識別工程の前に、赤血球選別工程を行って赤血球を選別した後に、識別工程で赤血球から有核細胞を有核赤血球として識別してもよい。
選別工程は、ヘモグロビンの吸収波長領域にピーク波長を有する光を用いて血球細胞を母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球と、に選別する工程である。選別工程は、ヘモグロビンの酸素親和性に起因する分光特性により、母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球とに選別する有核赤血球選別工程を有する。赤血球の選別は、有核赤血球選別工程において、ヘモグロビンの吸収波長領域の光を照射した際に、透過光量が減少しない細胞は、赤血球以外の細胞として選別することで可能となる。また、赤血球選別工程として、ヘモグロビンの吸収波長領域にピーク波長を有する光を用いて、ヘモグロビンの吸収に起因する分光特性により赤血球を選別する工程を有核赤血球選別工程とは別に有していてもよい。赤血球選別工程を有する場合は、図1に示すように、識別工程後に行い、識別工程により識別された有核細胞を有核赤血球として選別してもよいし、選別工程とは別に、染色工程後、識別工程の前に、赤血球選別工程を行って赤血球を選別した後に、識別工程で赤血球から有核細胞を有核赤血球として識別してもよい。
選別工程に用いる光は、識別工程で用いた光と同様に、LEDまたはLASERの光、および、干渉フィルタを通過した単色光を主波長とする光のいずれかを用いることが好ましい。
[有核赤血球選別工程]
有核赤血球選別工程は、ヘモグロビンの酸素親和性に起因する分光特性により核を有する赤血球を、母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球と、に選別する工程である。
有核赤血球選別工程は、ヘモグロビンの酸素親和性に起因する分光特性により核を有する赤血球を、母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球と、に選別する工程である。
ヘモグロビンの酸素親和性に起因する分光特性は、380nm以上650nm以下の波長領域の波長における吸光度であることが好ましい。
図2に示すように、ヘモグロビンは酸素との相互作用によって、吸収係数が変化することが知られている。即ち、酸化ヘモグロビンは赤い色調を有しており、還元ヘモグロビンになるに従い、青味を帯びてくる。
酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンは、380nm以上650nm以下の波長領域において、異なる吸光度を示すため、この波長領域に含まれる波長において、吸光度を測定することで、母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球とを選別することができる。
また、380nm以上650nm以下の波長領域から選択される2種類以上の単色光における吸光度を用いることが好ましい。この波長領域から選択される2種類以上の単色光を用いて吸光度の測定を行うことで、異なる吸光度を示す波長で分光特性を測定することができる。したがって、分光特性の差異を明確にすることができ、母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球と、を精度良く選別することができる。
さらに、ヘモグロビンの酸素親和性に起因する分光特性は、胎児由来の有核赤血球の吸光度が母体由来の有核赤血球の吸光度を超える第2の波長領域の光と、母体由来の有核赤血球の吸光度が胎児由来の有核赤血球の吸光度を超える第3の波長領域の光と、を含む少なくとも2種類以上の各々の波長の光で血球細胞の吸光度を測定することが好ましい。
分光特性の測定に用いられる波長を、胎児由来の有核赤血球の吸光度が母体由来の有核赤血球の吸光度を超える第2の波長領域の光と、母体由来の有核赤血球の吸光度が胎児由来の有核赤血球の吸光度を超える第3の波長領域の光と、から選ばれる各々の波長で測定することで、胎児由来の有核赤血球と母体由来の有核赤血球とで、第2の光波長領域の吸光度の大きさと、第3の光波長領域の吸光度の大きさとが、逆転することになる。したがって、各々の波長で測定した吸光度を比較することで、母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球との差を明確にすることができ、精度良く、有核赤血球の選別を行うことができる。例えば、各々の有核赤血球に対して、第2の波長領域の波長で測定した吸光度と、第3の波長領域の波長で測定した吸光度と、の比を求めることで、胎児由来の有核赤血球における吸光度の比と、母体由来の有核赤血球の吸光度の比と、の差が大きくなるので、有核赤血球の選別を行うことができる。
具体的には、第2の波長領域としては、380nm以上500nm以下の波長領域、525nm以上550nm未満の波長領域、および、575nm以上585nm以下の波長領域であり、第3の波長領域としては、550nm以上575nm未満の波長領域、590nm以上650nm以下の波長領域であることが好ましい。
第2の波長領域である、380nm以上500nm以下の波長領域で好ましく用いられる光源としては、425nm、455nm、470nmに発光ピークを持つLEDや、410nm、445nmに発光ピークを持つ半導体レーザー、525nm以上550nm未満の波長領域で好ましく用いられる光源としては、530nmに発光ピークを持つLED、575nm以上585nm以下の波長領域で好ましく用いられる光源としては、干渉フィルタを用いた単色光を主波長とする光、が挙げられる。また、第3の波長領域である、550nm以上575nm未満の波長領域で好ましく用いられる光源としては、565nmに発光ピークを持つLED、590nm以上650nm以下の波長領域で好ましく用いられる光源としては、617nmや、625nmに発光ピークを持つLED、が挙げられる。
(他の実施態様)
また、有核赤血球選別工程の他の態様として、核のない赤血球を参照赤血球として選択し、有核赤血球と参照赤血球と、の吸光度の比、または、差分に基づいて、胎児由来の有核赤血球である可能性に順位をつけることができる。
また、有核赤血球選別工程の他の態様として、核のない赤血球を参照赤血球として選択し、有核赤血球と参照赤血球と、の吸光度の比、または、差分に基づいて、胎児由来の有核赤血球である可能性に順位をつけることができる。
選択対象の有核赤血球に対して、光学特性により選別を行うために、吸光度を測定する波長を2種類選択する。例えば、第2の波長領域である、525nm以上550nm未満の波長領域で用いられる530nmに発光ピークを持つLEDを選択し、測定した吸光度を吸光度1、第3の波長領域である、550nm以上575nm未満の波長領域で用いられる565nmに発光ピークを持つLEDを選択し、測定した吸光度を吸光度2とした場合に、有核赤血球および参照赤血球のそれぞれの細胞ごとに、吸光度の比である、「吸光度1の値/吸光度2の値」を求める。次に、「有核赤血球の吸光度の比/参照赤血球の吸光度の比」を求める。参照赤血球は、母体由来の血液成分であるので、有核赤血球が母体由来である場合は、「有核赤血球の吸光度の比/参照赤血球の吸光度の比」は「1」からの差が小さく、有核赤血球が胎児由来である場合は、「有核赤血球の吸光度の比/参照赤血球の吸光度の比」は「1」からの差が大きくなる。従って、「有核赤血球の吸光度の比/参照赤血球の吸光度の比」が、「1」からの差が一番大きく異なる細胞を胎児由来の有核赤血球、「1」からの差が一番小さい細胞を母体由来の有核赤血球として、胎児由来の有核赤血球である可能性に順位をつけることができる。また、吸光度の差分に基づいて順位をつける場合は、有核赤血球と参照赤血球との吸光度の差分が最も大きい有核赤血球を、胎児由来の有核赤血球である可能性の高い有核赤血球とすることができる。また、有核赤血球と参照赤血球との吸光度の差分が最も小さい有核赤血球を、母体由来の有核赤血球の可能性の高い有核赤血球として順位をつけることができる。
胎児由来の有核赤血球である可能性に順位をつけ、順位の高い細胞からDNAの解析を行うことで、複数の胎児由来の有核赤血球の候補細胞の中から精度良く選別することができ、DNA解析を行う細胞の数を減らすことができる。
[赤血球選別工程]
赤血球選別工程は、ヘモグロビンの吸収に起因する分光特性により、血球細胞から赤血球を選別する工程である。
赤血球選別工程は、ヘモグロビンの吸収に起因する分光特性により、血球細胞から赤血球を選別する工程である。
赤血球選別工程は、ヘモグロビンの吸収波長領域にピーク波長を有する光を用いて行うことが好ましく、380nm以上470nm以下の波長領域の光を用いて行うことが好ましい。上述したように、ヘモグロビンは、380nmから450nm付近にSoret帯と呼ばれる吸収を有するため、380nm以上470nm以下の波長領域の光を用いて行うことで、ヘモグロビンを有する細胞を選別することができ、赤血球の選別を行うことができる。
≪細胞の形状の情報による選別≫
また、細胞の形状の情報(以下、「細胞の形状」ともいう)に基づいて、血球細胞から有核赤血球候補となる細胞を選別することができる。
また、細胞の形状の情報(以下、「細胞の形状」ともいう)に基づいて、血球細胞から有核赤血球候補となる細胞を選別することができる。
細胞の形状による選別としては、細胞質の面積に対する核領域の面積の割合、核の円形度合い、核領域の面積、核の明度、核のつぶれ方、などを挙げることができる。なかでも、細胞質の面積に対する核領域の面積の割合、および、核の円形度合いを満たす条件を有する細胞を、有核赤血球の候補細胞として選別することが好ましい。細胞質の面積、および核領域の面積は、分析用の標本の観察される面における面積である。
細胞の形状による選別は、まず、細胞を抽出する。細胞であるか否かの判断は、2値化画像を用いて行われる。白色光光源を用いて分析用の標本を撮影して得られた画像の輝度情報を所定の閾値を用いて2値化画像を生成し、生成された2値化画像から点状および島状の連続領域を有するもの、すなわち、任意の閉曲線で閉じられている領域を細胞として抽出する。なお、2値化した画像は、Erosion・Dilationなどのモルフォロジー処理を施して、連続領域の形状を整えた上で、大きさを求めてもよい。
次に、抽出した細胞を核の有無により選別する。核の有無は、600nmより長波長領域にピーク波長を有する第1の波長領域の光を用いて、塗抹標本上の染色した血球細胞から有核細胞を識別する識別工程により、選別することができる。この、核の有無の判断にも2値化画像を用いることができる。細胞として抽出された領域の中に、細胞として抽出された領域未満の面積を有する任意の閉曲線で閉じられている領域が存在する場合には、当該領域を核として抽出することができる。
次に、細胞の核の大きさ(点状および島状の連続領域の大きさ)が、1〜5μmのものを抽出する。1〜5μmの大きさの核を有する細胞を選択することは有核赤血球を選別するのに有効である。なお、「点状および島状の連続領域の大きさ」とは、核の外形を表す閉曲線を円形、又は楕円形に近似し、核の外形を近似した円形の直径、又は細胞の外形を近似した楕円形の長径とすることができる。
核の外形を近似した円形の例として、核の外形を表す閉曲線に外接する円形のうち直径が最小のものが挙げられる。核の外形を近似した楕円形の例として、核の外形を表す閉曲線に外接する楕円形のうち長径が最小のものが挙げられる。核の外形を近似した円形の直径、または、核の外形を近似した楕円形の長径が1〜5μmのものを抽出する。
次に、核の形状により細胞を選別する。図3(a)は、選択したい細胞の形状を示す模式図であり、図3(b)は除きたい細胞の形状を示す模式図である。核の形状による選別の具体例として、細胞質の面積に対する核領域の面積の割合により選別を行う方法、および、核の円形度合いにより選別を行う方法を説明する。細胞質の面積に対する核領域の面積の割合が、下記(1)式を満たす場合に、胎児由来の有核赤血球の候補となる有核赤血球として選択される。細胞の細胞質の面積をC、細胞の核の面積をNとした場合、Cに対するNの割合が0.25を超え1.0未満の核を有する細胞が胎児由来の有核赤血球の候補となる有核赤血球として選択される。
0.25<(N/C)<1.0 (1)
0.25<(N/C)<1.0 (1)
また、核の円形度合いの選択条件を満たす場合としては、下記(2)式を満たす場合が挙げられる。核の直径又は核の長径をLとしたとき、核の直径又は核の長径の平方に対する核の面積の割合が0.65を超え0.785未満である核を有する細胞が胎児由来の有核赤血球の候補となる有核赤血球として選択される。なお、核の直径又は核の長径としては、ステップS44で核の大きさを求めた場合と同様の方法により求めることができる。
0.65<(N/(L×L))<0.785 (2)
0.65<(N/(L×L))<0.785 (2)
<細胞単離工程(ステップS24)>
細胞単離工程は、選別工程で胎児由来または母体由来の有核赤血球として選別した有核赤血球の候補細胞を、基板上から選択的に1つずつ単離する工程である。細胞の単離には、レーザーマイクロダイセクション装置や、マイクロマニピュレータを使用することができる。
細胞単離工程は、選別工程で胎児由来または母体由来の有核赤血球として選別した有核赤血球の候補細胞を、基板上から選択的に1つずつ単離する工程である。細胞の単離には、レーザーマイクロダイセクション装置や、マイクロマニピュレータを使用することができる。
〔レーザーマイクロダイセクション〕
レーザーマイクロダイセクションとは、例えば市販されているZeiss社のPALM Micro Beamなどの顕微鏡とレーザーを組み合わせて微小領域の切断、加工を行うことができる装置システムのことである。レーザーマイクロダイセクションでは、基板に塗沫されたサンプルの目的の部位のみを選択的にレーザーで切り取り採取することができる装置である。このため、基板に均一に細胞もしくは組織が塗抹されていることが好ましい。これにより、目的の単一細胞のみを取得することが可能となる。
レーザーマイクロダイセクションとは、例えば市販されているZeiss社のPALM Micro Beamなどの顕微鏡とレーザーを組み合わせて微小領域の切断、加工を行うことができる装置システムのことである。レーザーマイクロダイセクションでは、基板に塗沫されたサンプルの目的の部位のみを選択的にレーザーで切り取り採取することができる装置である。このため、基板に均一に細胞もしくは組織が塗抹されていることが好ましい。これにより、目的の単一細胞のみを取得することが可能となる。
有核赤血球の候補細胞を基板上から単離する細胞単離工程では、分光特性により分別した基板上の細胞の位置情報をあらかじめ取得しておき、レーザーマイクロダイセクション装置へその位置情報を入力する。レーザーマイクロダイセクション装置に基板をセットすると、装置は位置情報を基に目的の位置に自動的に移動し、あらかじめ登録しておいたレーザー出力条件によって目的の細胞のみをレーザーで取得し、専用の回収チューブに細胞を分取する。
〔マイクロマニピュレータ〕
マイクロマニピュレータは,顕微鏡下で細胞をハンドリングすることが可能な装置である。例えば、市販の顕微鏡システムに付け加える形でナリシゲ社のマイクロインジェクションシステムやマイクロマニピュレータシステムなどを使用する。顕微鏡下で目的の細胞を塗沫したサンプル基板から、任意の単一細胞を取得することが可能である。
マイクロマニピュレータは,顕微鏡下で細胞をハンドリングすることが可能な装置である。例えば、市販の顕微鏡システムに付け加える形でナリシゲ社のマイクロインジェクションシステムやマイクロマニピュレータシステムなどを使用する。顕微鏡下で目的の細胞を塗沫したサンプル基板から、任意の単一細胞を取得することが可能である。
有核赤血球の候補細胞を基板上から単離する細胞単離工程では、上記レーザーマイクロダイセクションと同様に分光特性により分別した基板上の細胞の位置情報をあらかじめ取得しておき、マイクロマニピュレータシステムに位置座標を入力する。マイクロマニピュレータシステムにセットした基板は位置情報を基に目的の細胞の取得位置まで移動する。その後マニピュレータを動作させ、目的の細胞のみを取得し、細胞回収液を入れたチューブに封入する。チューブに封入した細胞のDNAを解析する場合には、細胞回収液は、DNAフリーである細胞回収液であることが好ましい。
<増幅工程(ステップS26)>
増幅工程は、細胞単離工程で単離された少なくとも胎児由来の有核赤血球の染色体に含まれる核酸を増幅する工程である。
増幅工程は、細胞単離工程で単離された少なくとも胎児由来の有核赤血球の染色体に含まれる核酸を増幅する工程である。
本実施形態で用いる全ゲノム増幅法としては、取得した細胞から、一般的な方法である界面活性剤を用いた細胞溶解、プロテアーゼK等を用いたタンパク質分解工程を経ることで、細胞から溶出することにより得られたゲノムDNAを用いる。
全ゲノム増幅試薬としては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR:Polymerase Chain Reaction)に基づく試薬PicoPLEX WGA kit(New England Biolabs社)、GenomePlex Single Cell Whole Genome Amplification kit(Sigma−Aldrich社)、国際公開WO2012/166425A2号に開示されている、MALBAC法(Multiple Annealing and Looping−Based Amplification Cycles)に係る試薬を用いることができる。また、鎖置換型DNA合成反応に基づく試薬として、例えば、GenomiPhi(GEヘルスケア社、GenomiPhiは登録商標)、REPLI−g(Qiagen社、REPLI−gは登録商標)も同様に用いることができる。本実施形態では、PicoPLEX WGA kit(New England Biolabs社)を用いることが好ましい。
全ゲノム増幅により得られたDNAの増幅産物は、アガロースゲル電気泳動等により増幅有無を確認することが可能である。更に、全ゲノム増幅産物をQIAquick PCR Purification Kit(QIAGEN社)を用いて精製することが好ましい。
また、全ゲノム増幅により得られたDNAの増幅産物の濃度について、NanoDrop(Thermo Fisher Scientific社)、Quantus Fluorometer(Promega社)、BioAnalyzer(Agilent社)、TapeStation(Agilent社)を用いて測定することが好ましい。
増幅工程においては、少なくとも胎児由来の有核赤血球の染色体に存在する核酸であるDNAを増幅する。増幅工程の対象物である胎児由来の有核赤血球の数は、少なくとも1つでよいが、複数の胎児由来の有核赤血球から取得した核酸を増幅することが好ましい。更には、後工程で胎児の染色体の数的異常を決定するために、増幅産物の量を比較する基準として、数的異常が存在しない母体由来の有核赤血球の染色体を選択することも好ましい態様である。母体由来の有核赤血球を基準と比較する場合、選別工程により選別した母体由来の有核赤血球の染色体の核酸を増幅することも好ましい態様の一つである。
<確定工程(ステップS28)>
確定工程は、増幅工程により増幅した少なくとも胎児由来の有核赤血球の増幅産物の量を確定するとともに、選別工程で選別した胎児由来の有核赤血球を遺伝子解析により胎児由来の有核赤血球であることを確認する工程である。
確定工程は、増幅工程により増幅した少なくとも胎児由来の有核赤血球の増幅産物の量を確定するとともに、選別工程で選別した胎児由来の有核赤血球を遺伝子解析により胎児由来の有核赤血球であることを確認する工程である。
〔遺伝子解析〕
遺伝子解析は、DNAマイクロアレイ、デジタルPCR、次世代シーケンサー、nCounter System(NanoString社)を用いることが可能であるが、本実施形態においては、解析の精度および速さ、1度に処理可能な試料数の多さ等の点で次世代シーケンサーを用いることが好ましい。
遺伝子解析は、DNAマイクロアレイ、デジタルPCR、次世代シーケンサー、nCounter System(NanoString社)を用いることが可能であるが、本実施形態においては、解析の精度および速さ、1度に処理可能な試料数の多さ等の点で次世代シーケンサーを用いることが好ましい。
本発明において次世代シーケンサーとは、サンガー法を利用したキャピラリーシーケンサー(第一世代シーケンサーと呼ばれる)に対比して分類されるシーケンサーを意味する。次世代シーケンサーは、第二世代、第三世代、第四世代、および今後開発されるシーケンサーを含む。現時点で最も普及している次世代シーケンサーは、DNAポリメラーゼによる相補鎖合成又はDNAリガーゼによる相補鎖結合に連動した蛍光又は発光をとらえ塩基配列を決定する原理のシーケンサーである。具体的には、MiSeq(Illumina社)、HiSeq2000(Illumina社、HiSeqは登録商標)、Roche454(Roche社)などが挙げられる。
増幅工程で得られたDNAの増幅産物を次世代シーケンサーで解析する場合、全ゲノムシーケンス、エキソームシーケンス、アンプリコンシーケンスを用いることが可能である。
次世代シーケンサーで得られた配列データをアライメントする手段としては、Burrows−Wheeler Aligner(BWA)が挙げられ、BWAによって既知のヒトゲノム配列へ配列データをマッピングすることが好ましい。遺伝子を解析する手段としては、SAMtoolsおよびBEDtoolsが挙げられ、これらの解析手段により遺伝子多型、遺伝子変異、および染色体数を解析することが好ましい。
≪対立遺伝子による分析≫
増幅工程により全ゲノム増幅を行った後、対立遺伝子の配列を決定することで、有核赤血球が胎児由来の有核赤血球であることを確認することができる。
増幅工程により全ゲノム増幅を行った後、対立遺伝子の配列を決定することで、有核赤血球が胎児由来の有核赤血球であることを確認することができる。
選別工程において胎児由来の有核赤血球の細胞として同定され、ポリメラーゼ連鎖反応(増幅工程)により増幅されたDNAであって、数的異常を検査する対象となる染色体に対して、あらかじめ決定された100〜150bp(base pair:ベースペア)の領域の配列を有するDNAの増幅産物の量をシーケンサーで求める。本実施形態においては、検査する対象となる染色体は、13番染色体、18番染色体、21番染色体、X染色体であることが好ましい。胎児由来の有核赤血球は、通常、父親および母親から1組ずつの染色体を受け継いでおり、性染色体を除き、2本ずつの染色体を有している。これらの1組の染色体の対立遺伝子を分析し、父親由来の遺伝子の存在を確認することで、有核赤血球が胎児由来の有核赤血球か母体由来の有核赤血球かを選別することができる。
父親由来の遺伝子の存在の確認は、母親由来の細胞についても同時に遺伝子解析を行い、母親由来の細胞にはない対立遺伝子が存在する場合に、この対立遺伝子が父親由来の遺伝子であると認定することができる。父親由来の遺伝子が確認された場合、その有核赤血球は胎児由来の有核赤血球であると選別することができる。遺伝子解析を行う母親由来の細胞は、特に限定されないが、母体血の塗抹標本上に存在する白血球からのDNA分析を行うことが好ましい。
分析する対立遺伝子は、一塩基多型(SNP(SNPs):Single Nucleotide Polymorphism)、または、コピー数多型(CNP(CNPs)Copy Number Polymorphism),縦列型反復配列(STR:Short Tandem Repeat)を分析することが好ましい。
胎児の遺伝子は、両親から一対ずつの遺伝子を受け継いでおり、遺伝情報は4種類の塩基の化学物質の配列で記録されている。ヒトの場合には、約30億個の塩基があるが、1000〜2000個に1個の割合で、個人によって異なる配列部分が存在し、これを一塩基多型という。この一塩基多型を分析し、母体由来の有核赤血球か、または母体由来の細胞である白血球等の核を有する血球細胞と比較することで、有核赤血球に一塩基多型の配列を確認することができれば、有核赤血球は胎児由来であると確認することができる。
コピー数多型、縦列型反復配列とは、DNAの中に、あるDNA配列が一つの単位となり、このDNA配列が直列に、繰り返し並んでいる領域があり、この繰り返し領域のことである。胎児は、コピー数多型、縦列型反復配列を父親および母親から引き継ぐため、母体由来の有核赤血球か、または母体由来の白血球等の核を有する血球細胞と異なるコピー数多型、縦列型反復配列を有する有核赤血球は胎児由来の有核赤血球であると確認することができる。
≪Y染色体による分析≫
胎児が男児である場合、増幅工程により全ゲノム増幅を行った後、Y染色体の存在の有無を確認することで、有核赤血球が胎児由来の有核赤血球であるかを確認することができる。
胎児が男児である場合、増幅工程により全ゲノム増幅を行った後、Y染色体の存在の有無を確認することで、有核赤血球が胎児由来の有核赤血球であるかを確認することができる。
Y染色体は、男性にしか存在しないため、母体由来の有核赤血球には存在しない。したがって、胎児が男児である場合、Y染色体の存在を確認することができれば、有核赤血球は胎児由来の有核赤血球であると確認することができる。
以下に実施例を挙げ、本発明をより詳細に説明する。ただし、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
(採取工程)
7mL採血管に抗凝固剤として、EDTA(エチレンジアミン四酢酸:ethylenediaminetetraacetic acid)のナトリウム塩を10.5mg添加した後、妊婦のボランティアから、インフォームドコンセントを行った後に、ボランティア血として末梢血7mLを採血管内に得た。その後、PBSバッファー液(リン酸緩衝液:Phosphate buffered saline)を用いて、血液を希釈した。
(採取工程)
7mL採血管に抗凝固剤として、EDTA(エチレンジアミン四酢酸:ethylenediaminetetraacetic acid)のナトリウム塩を10.5mg添加した後、妊婦のボランティアから、インフォームドコンセントを行った後に、ボランティア血として末梢血7mLを採血管内に得た。その後、PBSバッファー液(リン酸緩衝液:Phosphate buffered saline)を用いて、血液を希釈した。
(濃縮工程)
Histopaque液(登録商標)を使用して、密度1.095g/mLの媒体を調製し、遠沈管の底部に3mLを添加した。その後、密度1.095g/mLの媒体の上に、採血した血液の希釈液12mLをゆっくり、遠沈管に添加した。その後、遠心分離を2000rpmで20分間行った。その後、遠沈管を取り出し、密度媒体と、血漿の間の画分を、ピペットを用いて採取した。
Histopaque液(登録商標)を使用して、密度1.095g/mLの媒体を調製し、遠沈管の底部に3mLを添加した。その後、密度1.095g/mLの媒体の上に、採血した血液の希釈液12mLをゆっくり、遠沈管に添加した。その後、遠心分離を2000rpmで20分間行った。その後、遠沈管を取り出し、密度媒体と、血漿の間の画分を、ピペットを用いて採取した。
(塗抹工程)
片手で第1のガラス基板を保持し、その1端に1滴採取した血液の画分を置いた。もう一方の手で別のガラス基板(第2のガラス基板)を持ち、第2のガラス基板の1端を第1のガラス基板に30度の角度で接触させ、第2のガラス基板の接触下面を血液の画分に触れると、毛管現象で2枚のガラスに囲まれた空間に広がる。次に角度を保ったまま、第2ガラス基板を第1のガラス基板の血液を置いた領域と反対の領域の方向に滑らせて、第1のガラス基板上に塗抹した。その後、送風で1時間以上十分に乾燥させた。
片手で第1のガラス基板を保持し、その1端に1滴採取した血液の画分を置いた。もう一方の手で別のガラス基板(第2のガラス基板)を持ち、第2のガラス基板の1端を第1のガラス基板に30度の角度で接触させ、第2のガラス基板の接触下面を血液の画分に触れると、毛管現象で2枚のガラスに囲まれた空間に広がる。次に角度を保ったまま、第2ガラス基板を第1のガラス基板の血液を置いた領域と反対の領域の方向に滑らせて、第1のガラス基板上に塗抹した。その後、送風で1時間以上十分に乾燥させた。
(染色工程)
このガラス基板を80%エタノール水溶液に20分浸漬した後乾燥させた。その後、染色色素として、下記の式(1)の化合物をエタノール/水混合溶液で希釈して染色液とした。この染色液に塗抹標本を5分浸漬して、細胞核を染色した。その後、純水で洗浄後、乾燥させ、染色済みのガラス基板を複数枚作製した。
このガラス基板を80%エタノール水溶液に20分浸漬した後乾燥させた。その後、染色色素として、下記の式(1)の化合物をエタノール/水混合溶液で希釈して染色液とした。この染色液に塗抹標本を5分浸漬して、細胞核を染色した。その後、純水で洗浄後、乾燥させ、染色済みのガラス基板を複数枚作製した。
(識別工程、選別工程)
日立分光光度計U3210(積分球敷設)装置を用いて染色済みのガラス基板の全反射スペクトルを測定した。塗抹していないスライドガラスと白板を重ねたものを2組準備し、積分球の参照用、およびサンプル用測定窓がスライドガラスとなるようにセットし、ベースラインを補正した。次に、サンプル用測定窓の塗抹していないスライドガラスを外した後、染色済みの基板の塗抹していない面を白板と重ね、染色済みのスライドガラスの塗抹部がサンプル用測定窓側となるように白板を重ねてセットし、全反射スペクトルを測定した。細胞核を染色した状態における(全反射)スペクトルの、半値幅に相当する短波長側の波長は870nm(700nm以上)であり、ピーク波長は990nm(730nm以上)であった。
日立分光光度計U3210(積分球敷設)装置を用いて染色済みのガラス基板の全反射スペクトルを測定した。塗抹していないスライドガラスと白板を重ねたものを2組準備し、積分球の参照用、およびサンプル用測定窓がスライドガラスとなるようにセットし、ベースラインを補正した。次に、サンプル用測定窓の塗抹していないスライドガラスを外した後、染色済みの基板の塗抹していない面を白板と重ね、染色済みのスライドガラスの塗抹部がサンプル用測定窓側となるように白板を重ねてセットし、全反射スペクトルを測定した。細胞核を染色した状態における(全反射)スペクトルの、半値幅に相当する短波長側の波長は870nm(700nm以上)であり、ピーク波長は990nm(730nm以上)であった。
スライドガラス基板上に塗抹した細胞から、有核赤血球の候補細胞を選別するため、ヘモグロビンの検出を行う405nmに発光ピーク波長を有するLED(赤血球選別工程)、第1の波長領域の光源である870nmに発光ピーク波長を有するLED(識別工程)、第2の波長領域の光源である470nmに発光ピーク波長を有するLED、第3の波長領域の光源である625nmに発光ピーク波長を有するLED(有核赤血球選別工程)の光源を準備した。
さらに、電動XYステージと、対物レンズ、CCD(charge-coupled device)カメラを備えた光学顕微鏡の測定系と、XYステージ制御部、Z方向制御部とを備えた制御部と、画像入力部と画像処理部、およびXY位置記録部とを備えた制御ユニット部を準備した。
上記のように準備した、スライドガラス基板上に塗抹した血球細胞をXYステージに乗せて、405nmに発光ピーク波長を有するLED光源を用いてスライドガラス上に焦点を合わせてスキャンし、光学顕微鏡より得られた画像を取り込んだ。続いて、第1の光源(波長が870nmのLED)を用いて同様に光学顕微鏡より画像を取り込み、画像解析により標的細胞である有核赤血球を探索した。
画像解析は、405nmに発光ピーク波長を有するLED光源を用いて赤血球を選別し、スライドガラス上のXY位置を記録した。続いて、第1の光源を用いて、核がある細胞を識別し、スライドガラス上のXY位置を記録した。識別した赤血球のXY位置と核がある細胞のXY位置の比較により、赤血球でかつ核がある細胞(有核赤血球候補)を識別した。
上記のように選別された有核赤血球の候補細胞となる10個について、顕微分光装置を用いて、光学特性の解析を行った。スライドガラス基板上で記録された有核赤血球の候補細胞に対して、波長が470nmのLED単色光(第2の波長領域の光)の吸光度1、および波長が625nmのLED単色光(第2の波長領域の光)の吸光度2を測定し、吸光度の比(吸光度1/吸光度2)を計算した。次に、その有核赤血球の近傍位置にある、当該有核赤血球からの距離の短い順に参照赤血球として、核のない赤血球を5個選択し、同様にして一つ一つの参照赤血球に対して、吸光度の比(吸光度1/吸光度2)を計算し、平均値を計算した。
同様の方法で、ガラス基板上の胎児由来の有核赤血球の候補となる残りの有核赤血球の細胞に対しても吸光度の比を計算した。この計算結果から、(有核赤血球の吸光度の比/参照赤血球の吸光度の比の平均値)を求め、この値が「1」からの差が一番大きく異なる細胞を胎児由来の有核赤血球と見なして細胞Aとし、「1」からの差が一番小さい細胞を母体由来の有核赤血球と見なして細胞Bとした。
(細胞単離工程)
上記工程で決定された細胞A、細胞Bを、マイクロマニュピュレータを使用して回収した。
上記工程で決定された細胞A、細胞Bを、マイクロマニュピュレータを使用して回収した。
(増幅工程)
有核赤血球の、胎児由来と選別された細胞Aと、母体由来と選別された細胞Bを用いて、New England Biolabs社製Single Cell WGA kitを用いて全ゲノム増幅を行い、説明書記載に則り細胞中の微量なDNAを約100万倍に増幅した。
有核赤血球の、胎児由来と選別された細胞Aと、母体由来と選別された細胞Bを用いて、New England Biolabs社製Single Cell WGA kitを用いて全ゲノム増幅を行い、説明書記載に則り細胞中の微量なDNAを約100万倍に増幅した。
(確定工程)
各細胞から増幅した全ゲノム増幅産物を等分割してその一方を用いて、ILLUMINA社製ゲノムアナライザーMiseqを用いて、13番染色体の C1QTNF9B遺伝子領域、PCDH9遺伝子領域、BRCA2遺伝子領域、MTRF1遺伝子領域のSNP(SNP ID:rs3751355、rs1799955、rs2297555、rs9571740)を比較することで、細胞Aと細胞BのSNPが異なることが確認できた。別途、白血球と予想される細胞Cをマイクロマニュピュレータで回収し、細胞A、細胞Bと同様にしてSNPを調べたところ、細胞BのSNPと一致することが確認された。以上より、細胞Aが胎児由来の有核赤血球、細胞Bが、母親由来の有核赤血球であることが確認された。
各細胞から増幅した全ゲノム増幅産物を等分割してその一方を用いて、ILLUMINA社製ゲノムアナライザーMiseqを用いて、13番染色体の C1QTNF9B遺伝子領域、PCDH9遺伝子領域、BRCA2遺伝子領域、MTRF1遺伝子領域のSNP(SNP ID:rs3751355、rs1799955、rs2297555、rs9571740)を比較することで、細胞Aと細胞BのSNPが異なることが確認できた。別途、白血球と予想される細胞Cをマイクロマニュピュレータで回収し、細胞A、細胞Bと同様にしてSNPを調べたところ、細胞BのSNPと一致することが確認された。以上より、細胞Aが胎児由来の有核赤血球、細胞Bが、母親由来の有核赤血球であることが確認された。
<実施例2>
第2の波長領域の光として、455nmに発光ピーク波長を有する光を用いた以外は、実施例1と同様に、有核赤血球を選別し、胎児由来の有核赤血球を確認した。
第2の波長領域の光として、455nmに発光ピーク波長を有する光を用いた以外は、実施例1と同様に、有核赤血球を選別し、胎児由来の有核赤血球を確認した。
<実施例3>
第3の波長領域の光として、LEDによる617nmの単色光を用いた以外は、実施例1と同様に有核赤血球を選別し、胎児由来の有核赤血球を確認した。
第3の波長領域の光として、LEDによる617nmの単色光を用いた以外は、実施例1と同様に有核赤血球を選別し、胎児由来の有核赤血球を確認した。
Claims (10)
- 吸収ピーク波長が730nm以上であり、かつ、前記吸収ピーク波長の吸収値の半値に相当する短波長側の波長が700nm以上である染色物質を用いて、母体血中の血球細胞の核を染色する染色工程と、
600nmより長波長領域にピーク波長を有する第1の波長領域の光を用いて、染色した前記血球細胞から有核細胞を識別する識別工程と、
ヘモグロビンの吸収波長領域にピーク波長を有する光を用いて、前記血球細胞を母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球と、に選別する選別工程と、を有する有核赤血球の選別方法。 - 前記選別工程は、
ヘモグロビンの吸収に起因する分光特性により、前記血球細胞から赤血球を選別する赤血球選別工程と、
ヘモグロビンの酸素親和性に起因する分光特性により、核を有する赤血球を、母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球と、に選別する有核赤血球選別工程と、を有する請求項1に記載の有核赤血球の選別方法。 - 前記赤血球選別工程は、380nm以上470nm以下の波長領域の光を用いて行われる請求項2に記載の有核赤血球の選別方法。
- 前記選別工程は、380nm以上650nm以下の波長領域の波長における吸光度により行われる請求項1から3のいずれか1項に記載の有核赤血球の選別方法。
- 前記選別工程は、380nm以上650nm以下の波長領域から選択される2種類以上の波長における吸光度により行われる請求項1から4のいずれか1項に記載の有核赤血球の選別方法。
- 前記選別工程は、前記胎児由来の有核赤血球の吸光度が前記母体由来の有核赤血球の吸光度を超える第2の波長領域の光と、前記母体由来の有核赤血球の吸光度が前記胎児由来の有核赤血球の吸光度を超える第3の波長領域の光と、を含む少なくとも2種類以上の各々の波長の光で前記血球細胞の吸光度を測定する請求項1から5のいずれか1項に記載の有核赤血球の選別方法。
- 前記第2の波長領域は、380nm以上500nm以下の波長領域、525nm以上550nm未満の波長領域、および、575nm以上585nm以下の波長領域であり、前記第3の波長領域は、550nm以上575nm未満の波長領域、590nm以上650nm以下の波長領域である請求項6に記載の有核赤血球の選別方法。
- 前記識別工程、および、前記選別工程で用いられる光は、LEDまたはLASERの光、および、干渉フィルタを通過した単色光を主波長とする光のいずれかである請求項1から7のいずれか1項に記載の有核赤血球の選別方法。
- 核の形態により有核赤血球候補となる細胞を選別する工程を有する請求項1から8のいずれか1項に記載の有核赤血球の選別方法。
- 前記染色物質が、塩基性色素である請求項1から9のいずれか1項に記載の有核赤血球の選別方法。
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JP2015066575A JP2016186452A (ja) | 2015-03-27 | 2015-03-27 | 有核赤血球の選別方法 |
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JP2020034551A (ja) * | 2018-08-24 | 2020-03-05 | 国立大学法人鳥取大学 | 細胞識別装置及び細胞識別方法 |
-
2015
- 2015-03-27 JP JP2015066575A patent/JP2016186452A/ja active Pending
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