JP2017067524A - 有核赤血球の選別方法および有核赤血球の選別装置 - Google Patents

有核赤血球の選別方法および有核赤血球の選別装置 Download PDF

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Abstract

【課題】遺伝子検査の精度を悪化させることなく、有核赤血球を選別する有核赤血球の選別方法および選別装置を提供する。【解決手段】母体血中の血球細胞から、ヘモグロビンの吸収波長領域にピーク波長を有する第1の波長領域の光を用いて、赤血球を識別する赤血球識別工程と、赤血球識別工程で識別した赤血球から、第2の波長領域の光を照射した際の自家蛍光画像を確認することで、有核赤血球を識別する有核赤血球識別工程と、を有する有核赤血球の選別方法、および、この選別方法に用いられる選別装置である。【選択図】図5

Description

本発明は、有核赤血球の選別方法および有核赤血球の選別装置に係り、特に、光学的な情報を利用して、妊娠母体の血液中の胎児由来の有核赤血球を特定する有核赤血球の選別方法および有核赤血球の選別装置に関する。
出生前診断として、従来より、羊水穿刺により羊水中の胎児細胞の染色体を調べる羊水検査が行われている。しかしながら、この方法では、流産の可能性のあることが問題として指摘されている。
一方、妊娠母体(以下、単に「母体」ともいう)の血液中に胎児細胞が移行し、この胎児細胞が母体中を血液とともに循環していることが最近わかってきた。そこで、母体血を用いて、母体血中の胎児細胞の染色体のDNA(デオキシリボ核酸:deoxyribonucleic acid)を再現性よく確実に分析することができれば、流産の可能性のない安全な出生前診断を実現することができることとなる。
しかしながら、母体の血液中に存在する胎児細胞(有核赤血球)は、母体血数mL中に1個程度しか存在しない。このように非常に少ない胎児細胞(有核赤血球)を確実に取得することが、母体血を利用した出生前診断を行う上で非常に大きな課題である。
母体血中から胎児細胞である有核赤血球を取得する方法として、有核赤血球を濃縮する方法、例えば、密度勾配遠心分離を用いて、血漿成分、および母親の赤血球成分を取り除く技術がある。また、白血球の表面の蛋白質に特異的に免疫反応する抗体を用いて、磁気により母親の白血球を分離する技術(MACS法:Magnetic activated cell sorting)、胎児ヘモグロビンのγ鎖に特異的に免疫反応する抗体と蛍光色素を用いて胎児の有核赤血球を分離する技術(FACS法:Fluorescence activated cell sorting)などを用いて、母体血中の胎児細胞である有核赤血球を取得することが行われている。
また、光学的な情報を用いて、細胞の種類を識別し、求める細胞を取得する技術が開示されている。例えば、特許文献1には、細胞質を染色して透過可視光の吸収画像を生成し、励起光を照射して核の蛍光画像を形成し、細胞質と細胞核のコントラスト画像を用いて有核赤血球を判別することが記載されている。また、特許文献2には、生体組織の光学的性質を利用した生体情報分析装置が記載されている。
特表2002−514304号公報 特開2014−14485号公報
上記の特許文献に記載されているような、光学的な情報を用いて細胞を選別する技術は、有核赤血球を選別する上で非常に有用な技術である。しかしながら、特許文献1に記載の方法は、胎児ヘモグロビンを優先的に染色する色素として、青色沈殿物を使用しており、染色した色素が遺伝子解析の精度を悪化させる懸念があった。また、特許文献2は、酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの区別から生体組織内の病変部の有無を観察するものであり、血球分離を行うものではないため、核を遺伝子解析する際の染色による検査精度の悪化の点については検討されていなかった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、遺伝子検査の精度を悪化させずに、有核赤血球、または、胎児由来の有核赤血球を選別する選別方法、および、有核赤血球の選別装置を提供することを目的とする。
本発明は、上記目的を達成するために、母体血中の血球細胞から、ヘモグロビンの吸収波長領域にピーク波長を有する第1の波長領域の光を用いて、赤血球を識別する赤血球識別工程と、赤血球識別工程で識別した赤血球から、第2の波長領域の光を照射した際の自家蛍光画像を確認することで、有核赤血球を識別する有核赤血球識別工程と、を有する有核赤血球の選別方法を提供する。
本発明の有核赤血球の選別方法によれば、赤血球の識別をヘモグロビンの吸収波長により行い、有核赤血球の核の識別を核の自家蛍光画像を確認することで行っているので、細胞を染色することなく、有核赤血球の選別を行うことができる。したがって、有核赤血球を選別した後、単離回収した有核赤血球の遺伝子検査をする際、染色する色素により遺伝子検査の精度を悪化させる懸念がないので、精度良く遺伝子検査を行うことができる。
本発明の別の態様においては、有核赤血球識別工程は、第2の波長領域の光が、ピーク波長が530nm以下の励起光であり、核から発する自家蛍光により識別することが好ましい。
この態様によれば、有核赤血球を識別する第2の波長領域の光として、ピーク波長が530nm以下の励起光を用いることで、有核赤血球の核が発する自家蛍光を高い蛍光強度で確認することができる。
本発明の別の態様においては、第1の波長領域の光は、ピーク波長が380nm以上650nm以下の波長領域に含まれる光であり、有核赤血球識別工程により識別した有核赤血球を、第1の波長領域の光におけるヘモグロビンの酸素親和性に起因する分光特性により、母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球とに選別する選別工程と、を有することが好ましい。
この態様によれば、ヘモグロビンは、380nmから650nmの間に吸収を持つため、ピーク波長が上記の波長領域に含まれる光を用いることで、ヘモグロビンの吸収により赤血球を識別することができる。また、酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンは、上記の波長領域において、異なる吸光度を示すため、上記の波長領域に含まれる波長の光で測定した吸光度を用いて母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球とに選別することができる。
本発明の別の態様においては、第2の波長領域の光の照射による自家蛍光画像の蛍光の分光特性が、ピーク波長が450nm以上650nm以下の波長領域に含まれる光であることが好ましい。
この態様によれば、自家蛍光画像の蛍光の分光特性を、ピーク波長が上記範囲の波長領域に含まれる光とすることで、有核赤血球の核と細胞質、または、他の細胞との間で蛍光強度の差を明確にすることができる。したがって、有核赤血球の核を確実に識別することができ、有核赤血球を識別することができる。
本発明の別の態様においては、第1の波長領域の光が、ピーク波長が380nm以上470nm以下の波長領域の光であることが好ましい。
この態様は、第1の波長領域の光をさらに限定したものである。ヘモグロビンは、ポルフィリン環に由来する380nmから450nm付近にSoret帯と呼ばれる吸収を有するため、上記範囲の波長領域の光を用いることで、ヘモグロビンの検出を行うことができ、ヘモグロビンの検出の精度を高めることができる。
本発明の別の態様においては、第1の波長領域の光、および、第2の波長領域の光が、LEDまたはLASERの光、および、干渉フィルタを通過した単色光を主波長とする光のいずれかであることが好ましい。
この態様は、第1の波長領域の光、および、第2の波長領域の光として使用できる光源を規定したものであり、上記の光源を用いることで、狭い波長領域の光で血球細胞の識別を行うことができ、吸光度の測定を精度良く行うことができる。
本発明の別の態様においては、第1の波長領域の光、および、第2の波長領域の光が共通の光であり、透過光により赤血球を識別する画像、および、自家蛍光画像を共通の光により取得することが好ましい。
この態様によれば、第1の波長領域の光と第2の波長領域の光を共通の光とし、1度の照射で、赤血球を識別する画像と、有核赤血球を識別するための自家蛍光画像と、を取得することができ、効率良く作業を行うことができる。
本発明の別の態様においては、有核赤血球識別工程は、自家蛍光画像の赤血球像領域内の、蛍光強度の高い領域を核、蛍光強度の低い領域を細胞質と識別し、核の有無を識別することが好ましい。
この態様によれば、有核赤血球から発する自家蛍光は、核が発する蛍光強度と細胞質が発する蛍光強度とを比較すると核が発する蛍光強度の方が高い。したがって、赤血球の領域内で高い蛍光強度と低い蛍光強度を示す赤血球を有核赤血球として識別することができる。
本発明は上記目的を達成するために、母体血に含まれる有核赤血球を選別する有核赤血球の選別装置であって、ヘモグロビンの吸収波長領域にピーク波長を有する第1の波長領域の光、および、有核赤血球の核が自家蛍光を発する第2の波長領域の光を出力する光源装置と、第1の波長領域の光が照射されることにより母体血を透過する透過光を撮像する第1の撮像装置と、第2の波長領域の光が照射されることにより母体血から発せられる自家蛍光のみを透過するエミッションフィルタと、エミッションフィルタを透過した自家蛍光を撮像する第2の撮像装置と、第1の撮像装置で撮像された第1の画像に基づいて赤血球を識別し、第2の撮像装置で撮像された第2の画像に基づいて赤血球から核の有無を識別し、有核赤血球を識別する画像処理装置と、を備える有核赤血球の選別装置を提供する。
本発明の有核赤血球の選別装置によれば、第1の波長領域の光でヘモグロビンの有無により赤血球を識別し、第2の波長領域の光で発する自家蛍光により有核赤血球を識別することで、細胞を染色することなく、有核赤血球を選別することができる。したがって、有核赤血球を選別した後、単離回収した有核赤血球の遺伝子検査をする際、染色する色素により遺伝子検査の精度を悪化させる懸念がないので、精度良く遺伝子検査を行うことができる。
また、赤血球の識別に用いられる画像は、母体血を透過する透過光であり、有核赤血球の識別に用いられる画像は、エミッションフィルタを透過した自家蛍光であるので、第1の波長領域の光、および、第2の波長領域の光に影響されることなく画像を取得することができる。
本発明の別の態様においては、第2の波長領域の光から、ピーク波長が530nm以下の波長領域の励起光のみを通過させる励起フィルタを備え、励起フィルタを通過した光を母体血に照射することが好ましい。
本発明の別の態様においては、第1の波長領域の光が、ピーク波長が380nm以上650nm以下の波長領域に含まれる光であり、画像処理装置は、第1の波長領域の光におけるヘモグロビンの酸素親和性に起因する分光特性により、母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球とに選別することが好ましい。
本発明の別の態様においては、エミッションフィルタは、ピーク波長が450nm以上650nm以下の波長領域に含まれる自家蛍光を通過させることが好ましい。
本発明の別の態様においては、第1の波長領域の光、および、第2の波長領域の光が、LEDまたはLASERの光、および、干渉フィルタを通過した単色光を主波長とする光のいずれかであることが好ましい。
本発明の別の態様においては、光源装置により出力される第1の波長領域の光、および、第2の波長領域の光が共通の光であることが好ましい。
本発明の別の態様においては、画像処理装置は、第2の画像の赤血球像領域中の、蛍光強度の高い領域を核、蛍光強度の低い領域を細胞質と識別し、核の有無を識別することが好ましい。
本発明の有核赤血球の選別方法および有核赤血球の選別装置によれば、ヘモグロビンの吸収波長を用いて赤血球を識別し、赤血球中の核の自家蛍光により有核赤血球の識別をしているので、染色を行うことなく、有核赤血球の選別を行うことができる。したがって、選別した有核赤血球の遺伝子検査をする際に、染色する色素により遺伝子検査の精度を悪化させる懸念がないので、精度良く遺伝子検査を行うことができる。
有核赤血球の選別方法を含む検査方法の手順を示すフローチャート図である。 還元ヘモグロビン(Hb)と、酸化ヘモグロビン(HbO)の波長に対する吸収係数を示すグラフ図である。 塗抹標本の自家蛍光画像の写真(A)および図(B)である。 図3の自家蛍光画像の検出波長に対する蛍光強度の関係を示す図である。 有核赤血球の選別装置の構成を示す概略構成図である。 フィルタキューブの構成を示す図である。
以下、添付図面に従って、本発明に係る有核赤血球の選別方法および有核赤血球の選別装置について説明する。なお、本明細書において「〜」とは、その前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
<有核赤血球の選別方法>
図1は、本発明の有核赤血球の選別方法を含む検査方法の一実施形態の手順を示すフローチャート図である。本発明の有核赤血球の選別方法は、母体血中の有核赤血球を、基板上で検出する態様が好ましい。この態様においては、まず、基板上に、有核赤血球を含む母体血の画分を塗抹する。母体血の画分を塗抹する方法として、妊娠母体からの母体血を採取する採取工程(ステップS12)と、母体血中の有核赤血球を濃縮する濃縮工程(ステップS14)と、濃縮工程により有核赤血球が濃縮された母体血の画分を基板上に塗抹する塗抹工程(ステップS16)と、からなる方法により、基板上に有核赤血球を含む画分を塗抹し、塗抹標本を作製することができる。
次に、本発明の有核赤血球の選別方法は、好ましくは作製した塗抹標本に対して、第1の波長領域の光を用いて、母体血中の血球細胞から赤血球を識別する赤血球識別工程(ステップS18)と、識別した赤血球から第2の波長領域の光を照射した際の自家蛍光画像により、有核赤血球を識別する有核赤血球識別工程と(ステップS20)、を有する。また、本実施形態の選別方法は、ヘモグロビンの吸収波長領域にピーク波長を有する光を用いて、識別した有核赤血球を母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球と、に選別する選別工程(ステップS22)と、を有してもよい。なお、有核赤血球識別工程(ステップS20)、選別工程(ステップS22)で選別した有核赤血球は、光学的情報を基に選別した有核赤血球である確率の高い有核赤血球の候補細胞であり、次の遺伝子解析により、有核赤血球、および、胎児由来または母体由来の有核赤血球であることを確認することができる。
その後、有核赤血球、あるいは、胎児由来の有核赤血球または母体由来の有核赤血球として選別した有核赤血球の候補細胞を基板上から単離する細胞単離工程(ステップS24)と、単離した有核赤血球の染色体に含まれる核酸を増幅する増幅工程(ステップS26)と、増幅産物の量を確定するとともに、遺伝子解析により胎児由来の有核赤血球であることを確定する確定工程(ステップS28)と、により胎児由来の有核赤血球であることを確定することができる。
<採取工程(ステップS12)>
採取工程は、血液試料である母体血を採取する工程である。母体血としては、侵襲のおそれのない妊娠母体の末梢血であることが好ましい。
母体の末梢血には、母体由来の好酸球、好中球、好塩基球、単核球、リンパ球等の白血球や、核のない成熟した赤血球に加えて、母体由来の有核赤血球、そして胎児由来の有核赤血球が含まれる。胎児由来の有核赤血球は、妊娠後、6週程度から母体血中に存在するといわれている。出生前診断を行う本実施形態においては、妊娠後6週程度以降の母体の末梢血を検査することが好ましい。
胎児由来の有核赤血球は、胎盤を通過して、母体の血液中に存在する赤血球前駆体である。母体が妊娠中には、胎児の赤血球は有核であり得る。この赤血球には染色体が存在するため、侵襲性が低い手段で、胎児由来の染色体および胎児遺伝子の入手が可能となる。この胎児由来の有核赤血球は、母体血中の細胞の10個に1個程度の割合で存在しているといわれており、母体の末梢血中には非常に存在確率が少ない。
<濃縮工程(ステップS14)>
次に、濃縮工程により、採取工程で採取した母体血中の有核赤血球の濃縮を行うことが好ましい。濃縮工程としては、公知の方法、例えば、密度勾配遠心分離法、MACS法、FACS法、レクチン法、あるいは、フィルタ濾過法などを用いることができる。なかでも、血球細胞の特性を利用し、簡便な濃縮方法として、密度勾配遠心分離法により濃縮を行うことが好ましい。濃縮工程の一例として、以下に、密度勾配遠心分離法について説明する。
〔密度勾配遠心分離法〕
密度勾配遠心分離法は、血液中の成分の密度の差を利用して分離する方法である。密度勾配遠心分離法は、分離用媒体を使用しない方法、また、1種の分離用媒体を使用してその分離用媒体の上下で分離する方法、あるいは、2種の分離用媒体を使用して目的の成分の密度領域を分離用媒体の間に挟み込むように分離する方法等を利用して、目的の成分(本実施形態においては有核赤血球)を集めることができる。そして、目的の成分を含む画分を採取することで、母体血から有核赤血球を濃縮することができる。
分離用媒体を使用しない方法としては、血液試料である母体の末梢血(希釈液で希釈されていてもよい)を遠心管に充填し、遠心分離を行った後に、目的の成分を採取することで有核赤血球の濃縮を行うことができる。
1種の分離用媒体を使用する方法としては、遠心管の底部に分離用媒体を注入し、分離用媒体の上に血液試料である母体の末梢血(希釈液で希釈されていてもよい)を積層した後に遠心分離を行い、遠心分離後の分離用媒体の上部(分離用媒体の一部を含んでもよい)を採取することで有核赤血球の濃縮を行うことができる。
2種の分離用媒体を使用する方法では、遠心管の底部に第1の分離用媒体を注入し、第1の分離用媒体の上に第2の分離用媒体を積層し、第2の分離用媒体の上に血液試料である母体の末梢血(希釈液で希釈されていてもよい)を積層した後に遠心分離にかけ、遠心分離後の第1の分離用媒体と第2の分離用媒体の間の層(第1の分離用媒体および/または第2の分離用媒体のそれぞれ一部を含んでもよい)を採取することで有核赤血球の濃縮を行うことができる。なお、第1の分離用媒体を積層した遠心管を第2の分離用媒体を積層する前に冷却すると、第1と第2の分離用媒体の境界領域での混合を抑制できる。
国際公開WO2012/023298号公報には、胎児の有核赤血球を含めた母体の血液の密度が記載されている。その記載によると、想定される胎児由来の有核赤血球の密度は、1.065〜1.095g/mL程度、母体の血球の密度は、赤血球が1.070〜1.120g/mL程度、好酸球は1.090〜1.110g/mL程度、好中球は1.075〜1.100g/mL程度、好塩基球が1.070〜1.080g/mL程度、リンパ球が1.060〜1.080g/mL程度、単核球が1.060〜1.070g/mL程度である。
積層する分離用媒体の密度は、密度が1.065〜1.095g/mL程度の胎児由来の有核赤血球を、母体中の他の血球成分と分離するために設定される。例えば、2種の分離用媒体を使用する方法では、胎児由来の有核赤血球の中心の密度は、1.080g/mL程度であるため、この密度を挟む2つの異なる密度の分離用媒体を作成し、隣接して重層することで、その界面に所望の胎児由来の有核赤血球を集めることが可能となる。好ましくは、第1の分離用媒体の密度を1.08g/mL以上1.10g/mL以下、第2の分離用媒体の密度は1.06g/mL以上1.08g/mL以下として設定することが好ましい。更に好ましくは、第1の分離用媒体の密度を1.08g/mL以上1.09g/mL以下、第2の分離用媒体の密度を1.065g/mL以上1.08g/mL以下である。具体的な例としては、第1の分離用媒体の密度を1.085g/mL、第2の分離用媒体の密度を1.075g/mLに設定することで、血漿成分、好酸球および単核球を、回収する所望の画分から分離することが可能となる。また、赤血球、好中球、リンパ球の一部も分離することが可能となる。本実施形態では、第1の分離用媒体と、第2の分離用媒体は同じ種類でも、異なる種類でも、本発明の効果を実現できる限りにおいて制限はないが、同じ種類の媒体を用いることが好ましい態様である。
濃縮工程で用いられる密度勾配遠心分離用の分離用媒体としては、ポリスクロースとジアトリゾ酸ナトリウムを含む溶液であるHistopaque(登録商標)、非透析性ポリビニルピロリドンをコーティングした直径15〜30nmのシリカゾルを含む溶液であるPercoll(登録商標)、ショ糖から作られた側鎖に富んだ中性の親水性ポリマー溶液であるFicoll(登録商標)−Paqueなどの分離用媒体を使用することができる。本実施形態では、HistopaqueおよびPercollを使用することが好ましい。
密度勾配遠心分離の分離用媒体は、希釈液あるいは密度(比重)の異なる分離用媒体の混合により所望の密度に調製することが可能である。例えば、Histopaque(登録商標)は、市販されている密度1.077の媒体と、密度1.119の媒体を用いて、第1の分離用媒体および第2の分離用媒体を所望の密度に調整することが可能である。また、これらの密度勾配遠心分離用媒体は、塩化ナトリウム(NaCl)などの添加により浸透圧を調節することができる。
<塗抹工程(ステップS16)>
次に、濃縮工程で有核赤血球が濃縮された母体血の画分を基板上に塗抹することが好ましい。塗抹工程としては、引きガラス法(ウエッジ法)、クラッシュ法(押し潰し法)、手伸ばし法、スピン法などにより行うことができ、特に引きガラス法で行うことが好ましい。
引きガラス法としては、濃縮工程により有核赤血球が濃縮された母体血の画分を第1の基板上に、滴下する。第1の基板上に滴下した画分に、第2に基板を接触させて、その状態を維持することで、第1の基板と第2の基板とが接触した接触位置で、第1の基板と第2の基板とで囲まれた空間に、母体血の画分を広げる。その後、第2の基板を一定の速度で第1の基板上を移動させることで、第1の基板上に画分を広げ、塗抹標本を作製する。また、塗抹する前に、濃縮工程により有核赤血球が濃縮された母体血の画分の血球濃度を所望の濃度に調整する工程を塗抹工程に含むことも好ましい態様である。
また、濃縮工程により有核赤血球が濃縮された母体血の画分を、チャンバースライドを用いて、遠心塗抹法によりガラス基板上に血球細胞を敷設し、塗抹標本を作製する。この方法によれば、血球細胞を液中に存在させた状態で、塗抹標本を作製することができるので、細胞が乾燥状態を経ることがない。したがって、細胞の物理的ダメージを防止することができ、遺伝子解析の精度を高くすることができる。
上記のようにして作製した塗抹標本に対して、以下のように、有核赤血球の選別を行う。
<赤血球識別工程(ステップS18)>
次に、有核赤血球を識別する前段階として、第1の波長領域の光を用いて塗抹標本上の血球細胞から赤血球を識別する。
図2は、還元ヘモグロビン(Hb)と、酸化ヘモグロビン(HbO)の波長に対する吸収係数を示すグラフ図である(特開2014−14485号公報に記載)。有核赤血球は、脱核して赤血球になる前駆体であり、白血球にないヘモグロビンを有する。よく知られているように、ヘモグロビンは鉄―ポルフィリン錯体であり、ポルフィリン環に由来する380nmから450nm付近にSoret帯と呼ばれる吸収をもち(図2では不図示)、500nmから600nm程度にQ帯と呼ばれる吸収をもつ錯体である。
赤血球識別工程は、このヘモグロビンの有無を識別するために、ヘモグロビンの吸収波長領域にピーク波長を有する第1の波長領域の光を用いて、赤血球を識別する。第1の波長領域の光は、吸収ピークが上記の波長領域に存在する光であり、380nm以上650nm以下の波長領域にピーク波長を有する光が好ましく、より好ましくは380nm以上470nm以下の波長領域にピーク波長を有する光である。
上記条件を満たす光として、例えば、LED(light emitting diode)またはLASER(light amplification by stimulated emission of radiation)の光、および、干渉フィルタを通過した単色光を主波長とする光などが使用可能であり、LEDまたはLASERの光が好ましく使用される。なお、「単色光を主波長とする光」とは、単色光そのものか、あるいは、単色光と単色光の波長近傍の波長の光とを含む光、とする。
第1の波長領域の光として、具体的には、405nmのピークを持つTHORLABS社製のLED,420nmのピークを持つTHORLABS社製のLEDなどを使用する態様が好ましい。405nmのピークを持つLEDを用いて、塗抹標本上の血球細胞の透過光の画像を得た場合には、ヘモグロビンを有する有核赤血球を含む赤血球は、透過光の量が少なくなるので、この画像を記録することで、ヘモグロビンを有する細胞の識別が可能となり、位置を記録することができる。
<有核赤血球識別工程(ステップS20)>
次に、赤血球識別工程で識別した赤血球から、第2の波長領域の光を照射した際に発する自家蛍光画像を確認することで、有核赤血球を識別する。
自家蛍光により有核赤血球を識別することで、核の染色が不要となるため、染色色素を使用する必要がない。したがって、細胞の核もしくは核の周辺に染色色素が付着することがないため、選別された有核赤血球の細胞核からの遺伝子解析をより正確に、精度良く行うことが可能となる。
核の有無を識別する第2の波長領域の光としては、励起波長が530nm以下の励起光であることが好ましく、より好ましくは、励起波長が300nm以上450nm以下の励起光であり、さらに好ましくは、励起波長が350nm以上410nm以下の励起光である。
また、塗抹標本上の有核赤血球の核から発する蛍光発光は、450nm以上650nm以下の波長領域の光として確認することが好ましく、より好ましくは450nm以上550nm以下である。
自家蛍光画像の一例を図3に示す。図3は、塗抹標本に励起波長400nmの励起光を照射させた際の自家蛍光画像を示す写真(A)および図(B)である。また、図4は、図3(B)に示すA〜Eの位置の波長(検出波長)420nm〜700nmに対する蛍光強度の関係を示す図である。
有核赤血球に第2の波長領域の光を照射すると、自家蛍光は核からだけでなく、細胞質からも発生する。しかしながら、蛍光強度は、位置AとBの比較から、核の方が細胞質よりも発光が強いため、赤血球の領域の中で、蛍光の強い領域を核、蛍光の低い領域を細胞質として判断することができる。したがって、赤血球像領域中で、特に発光の強い領域を確認することで、有核赤血球を識別することができる。また、位置Bと、C〜Eの蛍光強度を比較すると、C〜Eの蛍光強度が低い傾向にある。これにより、有核赤血球と核のない赤血球では、有核赤血球の細胞質の方が、蛍光強度が高いため、細胞全体として蛍光強度の高い細胞を有核赤血球の可能性の高い細胞として識別することができる。
第2の波長領域の光は、第1の波長領域の光と同様に、例えば、LEDまたはLASERの光、および、干渉フィルタを通過した単色光を主波長とする光などが使用可能であり、LEDまたはLASERの光が好ましく使用される。
第1の波長領域の光と第2の波長領域の光が、同じ波長の光を使用する場合は、第1の波長の光と第2の波長の光を共通の光とすることができる。共通の光とすることで、1度の照射で、塗抹標本上の血球細胞を透過した透過光により赤血球を識別し、自家蛍光により核の有無を識別し、有核赤血球の識別をすることができる。
<選別工程(ステップS22)>
選別工程は、有核赤血球識別工程で識別した有核赤血球を母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球とに選別する工程である。なお、本実施形態においては、有核赤血球を母体由来、あるいは、胎児由来に選別することは、選別工程で行っても良いし、選別工程は行わず、有核赤血球識別工程で識別した有核赤血球を、次の細胞単離工程で取得し、その後の工程の遺伝子解析により、母体由来、あるいは、胎児由来の有核赤血球であることの確認をすることもできる。
選別工程は、ヘモグロビンの酸素親和性に起因する分光特性により、母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球とに選別する。成人の赤血球中のヘモグロビンは、4量体α2β2(HbA)である。一方、胎児の赤血球中のヘモグロビンは、2本のα鎖と2本のγ鎖によって作られた4量体α2γ2(HbF)であり、生後、大部分を占めるHbAと少数のHbFからなるHbA2に置き換わっていくことが知られている。胎盤中では、血液中の妊娠母体のヘモグロビン(HbA)から酸素の提供を受けることで、胎児のヘモグロビンは酸素を得ている。母体のヘモグロビン(HbA)と胎児のヘモグロビン(HbF)は、静脈中で酸素親和性に差があり、図2に示すように、還元ヘモグロビンと酸化ヘモグロビンは、吸収係数に差が生じるので、この差を用いて母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球を選別する。
選別工程において、ヘモグロビンの酸素親和性に起因する分光特性は、380nm以上650nm以下の波長領域に含まれる波長における吸光度であることが好ましい。酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンは、380nm以上650nm以下の波長領域において、異なる吸光度を示すため、この波長域に含まれる波長において吸光度を測定することで、母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球とを選別することができる。
選別工程は、上記波長の光を照射することで行ってもよく、赤血球識別工程で、第1の波長領域の光が、380nm以上650nm以下の波長領域の光であれば、赤血球識別工程で取得した画像を用いて選別工程を行うこともできる。
また、別の態様においては、分光特性は、380nm以上650nm以下の波長領域から選択される2種類以上の単色光における吸光度であることが好ましい。この態様によれば、分光特性を380nm以上650nm以下の波長領域から選択される2種類以上の単色光を用いて吸光度を測定することで、異なる吸光度を示す波長で分光特性を測定することができる。したがって、分光特性の差異を明確にすることができ、精度良く選別することができる。
さらに、別の態様においては、分光特性は、胎児由来の有核赤血球の吸光度が母体由来の有核赤血球の吸光度を超える第3の波長領域の光と、母体由来の有核赤血球の吸光度が胎児由来の有核赤血球の吸光度を超える第4の波長領域の光と、を含む少なくとも2種類以上の各々の波長の光で有核赤血球の吸光度を測定することが好ましい。
ヘモグロビンの吸収係数をもつ細胞において、分光特性の測定に用いられる波長を、胎児由来の有核赤血球の吸光度が母体由来の有核赤血球の吸光度を超える第3の波長領域の波長と、母体由来の有核赤血球の吸光度が胎児由来の有核赤血球の吸光度を超える第4の波長領域の波長と、から選ばれる各々の波長で測定することで、胎児由来の有核赤血球と母体由来の有核赤血球とで、第3の光波長領域の吸光度の大きさと、第4の光波長領域の吸光度の大きさとが、逆転することになる。したがって、各々の波長で測定した吸光度を比較することで、母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球との差を明確にすることができ、精度良く、有核赤血球の選別を行うことができる。例えば、第3の波長領域の波長、および、第4の波長領域の波長で測定した吸光度の比を求めることで、胎児由来の有核赤血球の吸光度の比と、母体由来の有核接球の吸光度の比と、の差が大きくなるので、有核赤血球を胎児由来と母体由来とに選別することができる。
具体的には、第3の波長領域としては、380nmを超え以上500nm未満の波長領域、525nmを超え550nm未満の波長領域、および、575nmを超え585nm未満の波長領域であり、第4の波長領域としては、550nmを超え575nm未満の波長領域、および、590nmを超え650nm未満の波長領域であることが好ましい。
第3の波長領域である、380nmを超え500nm未満の波長領域で好ましく用いられる光源としては、425nm、455nm、470nmに発光ピークを持つLEDや、410nm、445nmに発光ピークを持つ半導体レーザー、525nmを超え550nm未満の波長領域で好ましく用いられる光源としては、530nmに発光ピークを持つLED、575nmを超え585nm未満の波長領域で好ましく用いられる光源としては、干渉フィルタを用いた単色光を主波長とする光、が挙げられる。また、第4の波長領域である、550nmを超え575nm未満の波長領域で好ましく用いられる光源としては、565nmに発光ピークを持つLED、590nmを超え650nm未満の波長領域で好ましく用いられる光源としては、617nmや、625nmに発光ピークを持つLED、が挙げられる。
また、有核赤血球と、核のない赤血球との吸光度の比、または差分に基づいて、胎児由来の有核赤血球である可能性に順位をつけることで選別することもできる。
核のない赤血球は、母体由来の血液成分であるので、有核赤血球の吸光度と核のない赤血球の吸光度との比が、「1」からの差が一番大きく異なる細胞を胎児由来の有核赤血球、「1」からの差が一番小さい細胞を母体由来の有核赤血球として、胎児由来の有核赤血球である可能性に順位をつけることができる。また、吸光度の差分に基づいて順位をつける場合は、有核赤血球と核のない赤血球との差分が最も大きい有核赤血球を、胎児由来の有核赤血球である可能性の高い赤血球とし、有核赤血球と核のない赤血球との差分が最も小さい赤血球を、母体由来の有核赤血球である可能性の高い赤血球として順位をつけることができる。そして、この順位に基づいて、遺伝子解析を行うことで、複数の有核赤血球の候補細胞の中から胎児由来の有核赤血球を精度良く選別することができる。
<細胞単離工程(ステップS24)>
細胞単離工程は、有核赤血球識別工程で識別した有核赤血球、または、選別工程で胎児由来または母体由来の有核赤血球として選別した有核赤血球を、基板上から選択的に1つずつ単離する工程である。細胞の単離には、レーザーマイクロダイセクション装置や、マイクロマニピュレータを使用することができる。
〔レーザーマイクロダイセクション〕
レーザーマイクロダイセクションとは、例えば市販されているZeiss社のPALM Micro Beamなどの顕微鏡とレーザーを組み合わせて微小領域の切断、加工を行うことができる装置システムのことである。レーザーマイクロダイセクションでは、基板に塗沫されたサンプルの目的の部位のみを選択的にレーザーで切り取り採取することができる装置である。このため、基板に均一に細胞もしくは組織が塗抹されていることが好ましい。これにより、目的の単一細胞のみを取得することが可能となる。
有核赤血球を基板上から単離する細胞単離工程では、分光特性により分別した基板上の細胞の位置情報をあらかじめ取得しておき、レーザーマイクロダイセクション装置へその位置情報を入力する。レーザーマイクロダイセクション装置に基板をセットすると、装置は位置情報を基に目的の位置に自動的に移動し、あらかじめ登録しておいたレーザー出力条件によって目的の細胞のみをレーザーで取得し、専用の回収チューブに細胞を分取する。
〔マイクロマニピュレータ〕
マイクロマニピュレータは,顕微鏡下で細胞をハンドリングすることが可能な装置である。例えば、市販の顕微鏡システムに付け加える形でナリシゲ社のマイクロインジェクションシステムやマイクロマニピュレータシステムなどを使用する。顕微鏡下で目的の細胞を塗沫したサンプル基板から、任意の単一細胞を取得することが可能である。
有核赤血球を基板上から単離する細胞単離工程では、上記レーザーマイクロダイセクションと同様に分光特性により分別した基板上の細胞の位置情報をあらかじめ取得しておき、マイクロマニピュレータシステムに位置座標を入力する。マイクロマニピュレータシステムにセットした基板は位置情報を基に目的の細胞の取得位置まで移動する。その後マニピュレータを動作させ、目的の細胞のみを取得し、細胞回収液を入れたチューブに封入する。チューブに封入した細胞のDNAを解析する場合には、細胞回収液は、DNAフリーである細胞回収液であることが好ましい。
<増幅工程(ステップS26)>
増幅工程は、細胞単離工程で単離された有核赤血球、あるいは、少なくとも胎児由来の有核赤血球の染色体に含まれる核酸を増幅する工程である。
本実施形態で用いる全ゲノム増幅法としては、取得した細胞から、一般的な方法である界面活性剤を用いた細胞溶解、プロテアーゼK等を用いたタンパク質分解工程を経ることで、細胞から溶出することにより得られたゲノムDNAを用いる。
全ゲノム増幅試薬としては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR:Polymerase Chain Reaction)に基づく試薬PicoPLEX WGA kit(New England Biolabs社)、GenomePlex Single Cell Whole Genome Amplification kit(Sigma−Aldrich社)、国際公開WO2012/166425A2号に開示されている、MALBAC法(Multiple Annealing and Looping−Based Amplification Cycles)に係る試薬を用いることができる。また、鎖置換型DNA合成反応に基づく試薬として、例えば、GenomiPhi(GEヘルスケア社、GenomiPhiは登録商標)、REPLI−g(Qiagen社、REPLI−gは登録商標)も同様に用いることができる。本実施形態では、PicoPLEX WGA kit(New England Biolabs社)を用いることが好ましい。
全ゲノム増幅により得られたDNAの増幅産物は、アガロースゲル電気泳動等により増幅有無を確認することが可能である。更に、全ゲノム増幅産物をQIAquick PCR Purification Kit(QIAGEN社)を用いて精製することが好ましい。
また、全ゲノム増幅により得られたDNAの増幅産物の濃度について、NanoDrop(Thermo Fisher Scientific社)、Quantus Fluorometer(Promega社)、BioAnalyzer(Agilent社)、TapeStation(Agilent社)を用いて測定することが好ましい。
増幅工程においては、有核赤血球の染色体に存在する核酸、あるいは、選別工程を行った場合は、少なくとも胎児由来の有核赤血球の染色体に存在する核酸であるDNAを増幅する。胎児由来の有核赤血球の数は、少なくとも1つでよいが、複数の胎児由来の有核赤血球から取得した核酸を増幅することが好ましい。更には、後工程で胎児の染色体の数的異常を決定するために、増幅産物の量を比較する基準として、数的異常が存在しない母体由来の有核赤血球の染色体を選択することも好ましい態様である。母体由来の有核赤血球を基準と比較する場合、選別工程により選別した母体由来の有核赤血球の染色体の核酸を増幅することも好ましい態様の一つである。
<確定工程(ステップS28)>
確定工程は、増幅工程により増幅した有核赤血球の増幅産物の量を確定するとともに、有核赤血球を遺伝子解析により胎児由来あるいは母体由来の有核赤血球であることを確認する工程である。
〔遺伝子解析〕
遺伝子解析は、DNAマイクロアレイ、デジタルPCR、次世代シーケンサー、nCounter System(NanoString社)を用いることが可能であるが、本実施形態においては、解析の精度および速さ、1度に処理可能な試料数の多さ等の点で次世代シーケンサーを用いることが好ましい。
本実施形態において次世代シーケンサーとは、サンガー法を利用したキャピラリーシーケンサー(第一世代シーケンサーと呼ばれる)に対比して分類されるシーケンサーを意味する。次世代シーケンサーは、第二世代、第三世代、第四世代、および今後開発されるシーケンサーを含む。現時点で最も普及している次世代シーケンサーは、DNAポリメラーゼによる相補鎖合成又はDNAリガーゼによる相補鎖結合に連動した蛍光又は発光をとらえ塩基配列を決定する原理のシーケンサーである。具体的には、MiSeq(Illumina社)、HiSeq2000(Illumina社、HiSeqは登録商標)、Roche454(Roche社)などが挙げられる。
増幅工程で得られたDNAの増幅産物を次世代シーケンサーで解析する場合、全ゲノムシーケンス、エキソームシーケンス、アンプリコンシーケンスを用いることが可能である。
次世代シーケンサーで得られた配列データをアライメントする手段としては、Burrows−Wheeler Aligner(BWA)が挙げられ、BWAによって既知のヒトゲノム配列へ配列データをマッピングすることが好ましい。遺伝子を解析する手段としては、SAMtoolsおよびBEDtoolsが挙げられ、これらの解析手段により遺伝子多型、遺伝子変異、および染色体数を解析することが好ましい。
≪対立遺伝子による分析≫
増幅工程により全ゲノム増幅を行った後、対立遺伝子の配列を決定することで、有核赤血球が胎児由来の有核赤血球であることを確認することができる。
選別工程において胎児由来の有核赤血球の細胞として同定され、ポリメラーゼ連鎖反応(増幅工程)により増幅されたDNAであって、数的異常を検査する対象となる染色体に対して、あらかじめ決定された100〜150bp(base pair:ベースペア)の領域の配列を有するDNAの増幅産物の量をシーケンサーで求める。本実施形態においては、検査する対象となる染色体は、13番染色体、18番染色体、21番染色体、X染色体であることが好ましい。胎児由来の有核赤血球は、通常、父親および母親から1組ずつの染色体を受け継いでおり、性染色体を除き、2本ずつの染色体を有している。これらの1組の染色体の対立遺伝子を分析し、父親由来の遺伝子の存在を確認することで、有核赤血球が胎児由来の有核赤血球か母体由来の有核赤血球かを選別することができる。
父親由来の遺伝子の存在の確認は、母親由来の細胞についても同時に遺伝子解析を行い、母親由来の細胞にはない対立遺伝子が存在する場合に、この対立遺伝子が父親由来の遺伝子であると認定することができる。父親由来の遺伝子が確認された場合、その有核赤血球は胎児由来の有核赤血球であると選別することができる。遺伝子解析を行う母親由来の細胞は、特に限定されないが、母体血の塗抹標本上に存在する白血球からのDNA分析を行うことが好ましい。
分析する対立遺伝子は、一塩基多型(SNP(SNPs):Single Nucleotide Polymorphism)、または、コピー数多型(CNP(CNPs)Copy Number Polymorphism),縦列型反復配列(STR:Short Tandem Repeat)を分析することが好ましい。
胎児の遺伝子は、両親から一対ずつの遺伝子を受け継いでおり、遺伝情報は4種類の塩基の化学物質の配列で記録されている。ヒトの場合には、約30億個の塩基があるが、1000〜2000個に1個の割合で、個人によって異なる配列部分が存在し、これを一塩基多型という。この一塩基多型を分析し、母体由来の有核赤血球か、または母体由来の細胞である白血球等の核を有する血球細胞と比較することで、有核赤血球に一塩基多型の配列を確認することができれば、有核赤血球は胎児由来であると確認することができる。
コピー数多型、縦列型反復配列とは、DNAの中に、あるDNA配列が一つの単位となり、このDNA配列が直列に、繰り返し並んでいる領域があり、この繰り返し領域のことである。胎児は、コピー数多型、縦列型反復配列を父親および母親から引き継ぐため、母体由来の有核赤血球か、または母体由来の白血球等の核を有する血球細胞と異なるコピー数多型、縦列型反復配列を有する有核赤血球は胎児由来の有核赤血球であると確認することができる。
≪Y染色体による分析≫
胎児が男児である場合、増幅工程により全ゲノム増幅を行った後、Y染色体の存在の有無を確認することで、有核赤血球が胎児由来の有核赤血球であるかを確認することができる。
Y染色体は、男性にしか存在しないため、母体由来の有核赤血球には存在しない。したがって、胎児が男児である場合、Y染色体の存在を確認することができれば、有核赤血球は胎児由来の有核赤血球であると確認することができる。
<有核赤血球の選別装置>
図5は、有核赤血球の選別装置の構成を示す概略構成図である。
本実施形態の有核赤血球の選別装置10は、光源装置12、励起フィルタ、ダイクロイックミラー、および、吸収フィルタ(エミッションフィルタ)を保持したフィルタキューブ14、レンズ16、18、選別する血球細胞が塗抹された塗抹標本20、第1の撮像装置22、第2の撮像装置24、画像処理装置26、モニター28を備える。
光源装置12は、赤血球識別工程で用いられる第1の波長領域の光、有核赤血球識別工程で用いられる第2の波長領域の光、および、選別工程で用いられる第3の波長領域の光および第4の波長領域の光を出力する装置である。このような光源装置12としては、LED、または、LASERを用いることができる。また、光源装置12としては、タングステンランプ、ハロゲンランプなどを用いることができるが、これらを用いる場合は、干渉フィルタを通過させ、単色光を主波長とする光とすることが好ましい。なお、干渉フィルタとしては、フィルタキューブ14に含まれる励起フィルタを用いることができる。なお、「単色光を主波長とする光」とは、単色光そのものか、あるいは、単色光と単色光の波長近傍の波長の光とを含む光、とする。
第1の波長領域の光は、ヘモグロビンの吸収波長領域にピーク波長を有する光であり、380nm以上650nm以下の波長領域にピーク波長を有する光が好ましく、より好ましくは380nm以上470nm以下の波長領域にピーク波長を有する光である。
第2の波長領域の光は、励起波長が530nm以下の励起光であることが好ましく、より好ましくは、励起波長が300nm以上450nm以下の励起光であり、さらに好ましくは、励起波長が350nm以上410nm以下の励起光である。
また、第3の波長領域の光は、胎児由来の有核赤血球の吸光度が母体由来の有核赤血球の吸光度を超える波長の光であり、380nmを超え以上500nm未満の波長領域、525nmを超え550nm未満の波長領域、および、575nmを超え585nm未満の波長領域である。第4の波長領域の光は、母体由来の有核赤血球の吸光度が胎児由来の有核赤血球の吸光度を超える波長の光であり、550nmを超え575nm未満の波長領域、および、590nmを超え650nm未満の波長領域である。
なお、図5では、1つの光源装置12が、第1の波長領域の光から第4の波長領域の光を出力する装置として記載しているが、それぞれの波長領域の光を出力する光源装置として、複数の光源装置を用いてもよい。
図6は、フィルタキューブ14の構成を説明する図である。フィルタキューブ14は、励起フィルタ32、ダイクロイックミラー34、エミッションフィルタ36を備える。なお、励起フィルタ32は、光源装置12として、LED、または、LASERを用いる場合は設けなくてもよい。このような、励起フィルタ、ダイクロイックミラー、エミッションフィルタを備えるフィルタキューブ14としては、例えば、Zeiss Filter Set 49 (DAPI)を用いることができる。
光源装置12から照射された光は、励起フィルタ32により、赤血球識別工程で用いられる第1の波長領域の光のみ通過する。または、光源装置12から第1の波長領域の光が照射される。ダイクロイックミラー34は、励起フィルタ32を通過した光を塗抹標本20の方向に反射する。赤血球識別工程においては、塗抹標本20を透過した透過光は、レンズ18を経て第1の撮像装置22で第1の画像が撮像される。
また、有核赤血球識別工程においては、光源装置12から照射された光は、励起フィルタ32により、有核赤血球識別工程で用いられる第2の波長領域の光のみ通過し、ダイクロイックミラー34により、塗抹標本20の方向に反射される。または、光源装置12から照射された第2の波長領域の光を、ダイクロイックミラー34により、塗抹標本20の方向に反射する。第2の反射領域の光が照射された塗抹標本20から発せられる蛍光は、レンズ16、ダイクロイックミラー34を通過し、エミッションフィルタ36を通過し、レンズ38(図5において不図示)を経て第2の撮像装置24で第2の画像が撮像される。エミッションフィルタ36は、第2の波長領域の光は通過せず、塗抹標本20から発する蛍光のみ、すなわち、母体血から発する蛍光のみ通過させるため、第2の撮像装置24で、母体血の発する自家蛍光画像を取得することができる。エミッションフィルタ36を通過させる自家蛍光としては、ピーク波長が、450nm以上650nm以下の波長領域に含まれる蛍光であることが好ましい。
第3の波長領域の光、第4の波長領域の光についても、第1の波長領域の光と同様に、励起フィルタ32により、選択工程で用いられる光のみ通過し、ダイクロイックミラー34により塗抹標本20の方向に反射される。または、光源装置12から照射された第3の波長領域の光、および、第4の波長領域の光をダイクロイックミラー34により、塗抹標本20の方向に反射する。選別工程においても、塗抹標本20を透過した透過光を第1の撮像装置22で撮像した画像を用いて、有核赤血球を母体由来および胎児由来の有核赤血球に選別する。
酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンは、380nm以上650nm以下の波長領域において、異なる吸光度を示すため、この波長領域に含まれる波長において吸光度を測定することで、母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球とに選別することができる。吸光度の測定は、母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球とに選別するための画像を新たに取得しても良いが、赤血球を識別するために取得した第1の画像を用いて行うこともできる。また、第3の波長領域の光、第4の波長領域の光を照射した画像を用いて行ってもよい。
また、第1の画像と第2の画像の取得は、使用する波長が同じ光であれば、共通の光を用いて、第1の画像と第2の画像を取得することもできる。光源装置12から出力された光は、励起フィルタ32を通過し、ダイクロイックミラー34に反射され、塗抹標本20を透過した透過光を第1の撮像装置22で撮像することで、第1の画像を取得する。また、塗抹標本20の自家蛍光を第2の撮像装置24で撮像することで、第2の画像として取得する。これにより、1度の光源装置12からの光の照射で、赤血球を識別するための画像と、有核赤血球を識別するための画像を取得することができる。
塗抹標本20としては、上記の有核赤血球の選別方法における、採取工程(ステップS12)から塗抹工程(S16)の工程を経て作製した標本を使用することができる。塗抹標本20は、第1の撮像装置22、第2の撮像装置24で撮像された画像を用いて、単離回収する有核赤血球が選別されるため、X方向、Y方向に移動可能なXYステージ上に設置されることが好ましい。また、有核赤血球の選別装置は、取得する細胞の位置を記録する記録部を備えることが好ましい。
第1の撮像装置22、第2の撮像装置24としては、塗抹標本20の透過光、または、自家蛍光を撮像することができれば特に限定されず、例えば、CCD(charge-coupled device)カメラを用いることができる。
画像処理装置26は、第1の撮像装置22、第2の撮像装置24で撮像された画像を用いて、赤血球、および、有核赤血球を識別する装置である。画像処理装置26は、モニター28を備えており、第1の撮像装置22で撮像された第1の画像、および、第2の撮像装置で撮像された第2の画像を確認することができる。
画像処理装置26では、第1の撮像装置22で撮像された第1の画像に基づいて赤血球を識別する。赤血球の識別は、ヘモグロビンの有無を識別することにより行う。第1の波長領域の光は、ヘモグロビンの吸収波長領域にピーク波長を有する光であり、第1の画像を確認することで、ヘモグロビンの有無を確認することができ、赤血球を識別することができる。
赤血球を識別した後、第2の撮像装置24で撮像された第2の画像に基づいて有核赤血球を識別する。有核赤血球の識別は、第2の波長領域の光を照射した際に塗抹標本(母体血)20が発する自家蛍光により識別する。第2の波長領域の光を照射した際に発する自家蛍光は、赤血球中に核を有する場合、有核赤血球の核の方が細胞質より発光が強いため、赤血球の領域の中で、蛍光の強い領域を有する細胞を有核赤血球として識別することができる。また、有核赤血球の細胞質と、核のない赤血球の細胞質とでは、有核赤血球の細胞質の方が、蛍光強度が強いため、細胞全体として蛍光強度の高い細胞を有核赤血球の可能性の高い細胞として識別することができる。
また、識別した有核赤血球が胎児由来の有核赤血球、または、母体由来の有核赤血球の選別を行うこともできる。母体由来または胎児由来の有核赤血球の選別は、上述した選別工程で記載した方法により選別することができ、取得した画像から酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの吸光度の違いにより選別することができる。また、2種類以上の単色光を用いて吸光度を測定することで、異なる吸光度を示す波長で分光特性を測定することができ、精度良く選別することができる。
また、第3の波長領域の光および第4の波長領域の光を用いて画像を取得し、第3の波長領域の光で測定した吸光度と第4の波長領域の光で測定した吸光度の比を測定することで、母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球とで吸光度の比の差が大きくなるので、有核赤血球を母体由来と胎児由来の有核赤血球に選別することができる。さらに、核のない赤血球は、母体由来の血液成分であるので、有核赤血球と核のない赤血球との吸光度の比、または、差分に基づいて、胎児由来の有核赤血球である可能性に順位をつけ、順位の高い細胞から単離回収をすることで、遺伝子解析する有核赤血球が胎児由来の有核赤血球である確率を高めることができ、効率よく解析を行うことができる。
以下に実施例を挙げ、本発明をより詳細に説明する。ただし、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
(採取工程)
7mL採血管に抗凝固剤として、EDTA(エチレンジアミン四酢酸:ethylenediaminetetraacetic acid)のナトリウム塩を10.5mg添加した後、妊婦のボランティアから、インフォームドコンセントを行った後に、ボランティア血として末梢血7mLを採血管内に得た。その後、PBSバッファー液(リン酸緩衝液:Phosphate buffered saline)を用いて、血液を希釈した。
(濃縮工程)
Histopaque液(登録商標)を使用して、密度1.095g/mLの媒体を調製し、遠沈管の底部に3mLを添加した。その後、密度1.095g/mLの媒体の上に、採血した血液の希釈液12mLをゆっくり、遠沈管に添加した。その後、遠心分離を2000rpmで20分間行った。その後、遠沈管を取り出し、密度媒体と、血漿の間の画分を、ピペットを用いて採取した。
(塗抹工程)
このように採取した血液の画分を、片手で第1のガラス基板を保持し、その1端に1滴採取した血液の画分を置いた。もう一方の手で別のガラス基板(第2のガラス基板)を持ち、第2のガラス基板の1端を第1のガラス基板に30度の角度で接触させ、第2のガラス基板の接触下面を血液の画分に触れると、毛管現象で2枚のガラスに囲まれた空間に広がる。次に角度を保ったまま、第2ガラス基板を第1のガラス基板の血液を置いた領域と反対の領域の方向に滑らせて、第1のガラス基板上に塗抹した。その後、送風で1時間以上十分に乾燥させた。これらの工程を繰り返すことで、血球細胞が塗抹されたスライドガラス基板を複数枚作製した。
(識別工程)
スライドガラス基板上に塗抹した細胞から、有核赤血球候補を選別するため、第1の波長領域の光源である405nmのピークを持つLED(第1の光源)、第2の波長領域の励起光源であるメタルハライドランプ(第2の光源)および、その励起光を分離して蛍光を確認するためのZeiss Filter Set 49 (DAPI)を準備した。
さらに、電動XYステージと、対物レンズ、CCD(charge-coupled device)カメラを備えた蛍光が観察可能な光学顕微鏡の測定系と、XYステージ制御部、Z方向制御部とを備えた制御部と、画像入力部と画像処理部、およびXY位置記録部とを備えた制御ユニット部を準備した。
上記のように準備した、スライドガラス基板上に塗抹した血球細胞をXYステージに乗せて、第1の光源を用いてスライドガラス上に焦点を合わせてスキャンし、光学顕微鏡より得られた画像を取り込んだ。続いて、第2の光源、フィルターセットを用いて励起光を照射し、蛍光顕微鏡により得られた蛍光画像を取り込み、得られた画像を解析することにより、標的細胞である有核赤血球を探索した。
画像解析は、第1の光源を用いて得られた画像を用いて赤血球を識別し、スライドガラス上のXY位置を記録した。続いて、第2の光源、フィルターセットを用いて得られた蛍光画像から核を有する細胞を識別し、スライドガラス上のXY位置を記録した。有核赤血球の核は、適切な励起光を照射することで自家蛍光を発生するため、赤血球の一部に特に高い強度の蛍光を発することを確認することで、容易に有核赤血球の核を識別することができる。識別した赤血球のXY位置と核がある細胞のXY位置の比較により、赤血球でかつ核がある細胞(有核赤血球)を識別した。
(細胞単離工程)
上記工程で識別された有核赤血球を、マイクロマニュピュレータを使用して回収した。
(増幅工程)
有核赤血球と識別された細胞を用いて、New England Biolabs社製Single Cell WGA kitを用いて全ゲノム増幅を行い、説明書記載に則り細胞中の微量なDNAを約100万倍に増幅した。
(確定工程[母体由来または胎児由来の有核赤血球に選別する工程])
各細胞から増幅した全ゲノム増幅産物を用いて、ILLUMINA社製ゲノムアナライザーMiseqにより、13番染色体の C1QTNF9B遺伝子領域、PCDH9遺伝子領域、BRCA2遺伝子領域、MTRF1遺伝子領域のSNP(SNP ID:rs3751355、rs1799955、rs2297555、rs9571740)を比較することで、細胞のSNPを確認でき、有核赤血球を母体由来と胎児由来との選別することができた。
<実施例2>
(採取工程)
実施例1と同様に、ボランティア血として末梢血7mLを採血管内に得た。その後、PBSバッファー液を用いて、血液を希釈した。
(濃縮工程)
Histopaque液(登録商標)を使用して、密度1.095g/mLの媒体を調製し、遠沈管の底部に3mLを添加した。その後、密度1.095g/mLの媒体の上に、採血した血液の希釈液12mLをゆっくり、遠沈管に添加した。その後、遠心分離を2000rpmで20分間行った。その後、遠沈管を取り出し、密度媒体と、血漿の間の画分を、ピペットを用いて採取した。
(塗抹工程)
このように採取した血液の画分、血漿を、チャンバースライドを用いて遠心塗抹法でガラス基板上に血球細胞を敷設した。血球は液中に存在するようにして、乾燥しないように、保湿カバー、高湿度環境下で取り扱った。この方法で血球細胞が敷設されたガラス基板を複数枚作製した。
(赤血球識別工程、有核赤血球識別工程)
スライドガラス基板上に敷設した細胞から、胎児由来の有核赤血球を選別するため、第1の波長領域の光源である405nmのピークを持つLED(第1の光源)、第2の波長領域の励起光源であるメタルハライドランプ(第2の光源)および、その励起光を分離して蛍光を確認するためのZeiss Filter Set 49 (DAPI)を準備した。また、母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球を選別するため、第3の波長領域の光源である470nmに発光ピークを持つLED、第4の波長領域の光源である625nmに発光ピークを持つLEDを準備した。
さらに、電動XYステージと、対物レンズ、CCD(charge-coupled device)カメラを備えた蛍光が観察可能な光学顕微鏡の測定系と、XYステージ制御部、Z方向制御部とを備えた制御部と、画像入力部と画像処理部、およびXY位置記録部とを備えた制御ユニット部を準備した。
上記のように準備した、スライドガラス基板上に塗抹した血球細胞をXYステージに乗せて、第1の光源を用いてスライドガラス上に焦点を合わせてスキャンし、光学顕微鏡より得られた画像を取り込んだ。続いて、第2の光源を用いて蛍光顕微鏡により蛍光画像を取り込み、得られた画像を解析することにより、標的細胞である有核赤血球を探索した。
画像解析は、第1の光源を用いて得られた画像を用いて赤血球を識別し、スライドガラス上のXY位置を記録した。続いて、第2の光源を用いて得られた蛍光画像から、自家蛍光により核を有する細胞を識別し、スライドガラス上のXY位置を記録した。識別した赤血球のXY位置と核がある細胞のXY位置の比較により、赤血球でかつ核がある細胞(有核赤血球)を識別した。
(選別工程)
上記のように、識別された有核赤血球について、顕微分光装置を用いて、光学特性の解析を行った。有核赤血球識別工程により識別されたスライドガラス基板上の有核赤血球の1つに対して、波長が470nmのLED単色光の吸光度1.および波長が625nmのLEDの単色光の吸光度2を測定し、吸光度の比(吸光度1/吸光度2)を計算した。次に、その有核赤血球の近傍位置にある、当該有核赤血球からの距離の短い順に参照赤血球として、核のない赤血球を5個選択し、同様にして一つ一つの参照赤血球に対して、吸光度の比(吸光度1/吸光度2)を計算し、平均値を計算した。
同様の方法で、ガラス基板上の胎児由来の有核赤血球の候補となる残りの有核赤血球の細胞に対しても同様に吸光度の比を計算した。この計算結果から、(有核赤血球の吸光度の比/参照赤血球の吸光度の比の平均値)を求め、この値が「1」からの差が一番大きく異なる細胞を胎児由来の有核赤血球と見なして細胞Aとし、「1」からの差が一番小さい細胞を母体由来の有核赤血球と見なして細胞Bとした。
(細胞単離工程)
上記工程で決定された細胞A、細胞Bを、マイクロマニュピュレータを使用して回収した。
(増幅工程[DNA増幅工程])
有核赤血球の、胎児由来と識別された細胞Aと、母体由来と識別された細胞Bを用いて、New England Biolabs社製Single Cell WGA kitを用いて全ゲノム増幅を行い、説明書記載に則り細胞中の微量なDNAを約100万倍に増幅した。
(確定工程[母体由来または胎児由来の有核赤血球の確定工程])
各細胞から増幅した全ゲノム増幅酸物を等分割してその一方を用いて、ILLUMINA社製ゲノムアナライザーMiseqを用いて、13番染色体の C1QTNF9B遺伝子領域、PCDH9遺伝子領域、BRCA2遺伝子領域、MTRF1遺伝子領域のSNP(SNP ID:rs3751355、rs1799955、rs2297555、rs9571740)を比較することで、細胞Aと細胞BのSNPが異なることが確認できた。別途、白血球と予想される細胞Cをマイクロマニュピュレータで回収し、細胞A、細胞Bと同様にしてSNPを調べたところ、細胞BのSNPと一致することが確認された。以上より、細胞Aが胎児由来の有核赤血球、細胞Bが母体由来の有核赤血球であることが確認された。
<実施例3>
実施例1において、第2の光源を第1の光源と同じ405nmのピークを持つLEDとした(すなわち、第1の光源と第2の光源を共通の光とした)。405nmのピークを持つLEDからスライドガラス基板上に塗抹した血球細胞に光を照射し、その透過光を用いて光学顕微鏡より得られた画像を取り込み、ヘモグロビンの検出用として用いるとともに、自家蛍光取得用の励起光を得た。励起光もスライドガラス基板上に塗抹した血球細胞に照射され、蛍光は、励起光との分離のため、Zeiss Filter Set 49 (DAPI)の蛍光フィルタを用いて分離され、細胞核からの自家蛍光を検出し、その際に得られた蛍光画像を取り込んだ。得られた画像を解析することにより、標的細胞である有核赤血球を探索した。
上記以外は、実施例1と同様に検査を行うことで、細胞のSNPを確認出来た。
10…有核赤血球の選別装置、12…光源装置、14…フィルタキューブ、16、18、38…レンズ、20…塗抹標本、22…第1の撮像装置、24…第2の撮像装置、26…画像処理装置、28…モニター、32…励起フィルタ、34…ダイクロイックミラー、36…エミッションフィルタ

Claims (15)

  1. 母体血中の血球細胞から、ヘモグロビンの吸収波長領域にピーク波長を有する第1の波長領域の光を用いて、赤血球を識別する赤血球識別工程と、
    前記赤血球識別工程で識別した赤血球から、第2の波長領域の光を照射した際の自家蛍光画像を確認することで、有核赤血球を識別する有核赤血球識別工程と、を有する有核赤血球の選別方法。
  2. 前記有核赤血球識別工程は、前記第2の波長領域の光が、ピーク波長が530nm以下の励起光であり、核から発する自家蛍光により識別する請求項1に記載の有核赤血球の選別方法。
  3. 前記第1の波長領域の光は、ピーク波長が380nm以上650nm以下の波長領域に含まれる光であり、
    前記有核赤血球識別工程により識別した有核赤血球を、前記第1の波長領域の光におけるヘモグロビンの酸素親和性に起因する分光特性により、母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球とに選別する選別工程と、を有する請求項1または2に記載の有核赤血球の選別方法。
  4. 前記第2の波長領域の光の照射による自家蛍光画像の蛍光の分光特性が、ピーク波長が450nm以上650nm以下の波長領域に含まれる光である請求項1から3のいずれか1項に記載の有核赤血球の選別方法。
  5. 前記第1の波長領域の光が、ピーク波長が380nm以上470nm以下の波長領域の光である請求項1から4のいずれか1項に記載の有核赤血球の選別方法。
  6. 前記第1の波長領域の光、および、前記第2の波長領域の光が、LEDまたはLASERの光、および、干渉フィルタを通過した単色光を主波長とする光のいずれかである請求項1から5のいずれか1項に記載の有核赤血球の選別方法。
  7. 前記第1の波長領域の光、および、前記第2の波長領域の光が共通の光であり、透過光により赤血球を識別する画像、および、前記自家蛍光画像を前記共通の光により取得する請求項1から6のいずれか1項に記載の有核赤血球の選別方法。
  8. 前記有核赤血球識別工程は、前記自家蛍光画像の赤血球像領域内の、蛍光強度の高い領域を核、蛍光強度の低い領域を細胞質と識別し、核の有無を識別する請求項1から7のいずれか1項に記載の有核赤血球の選別方法。
  9. 母体血に含まれる有核赤血球を選別する有核赤血球の選別装置であって、
    ヘモグロビンの吸収波長領域にピーク波長を有する第1の波長領域の光、および、有核赤血球の核が自家蛍光を発する第2の波長領域の光を出力する光源装置と、
    前記第1の波長領域の光が照射されることにより前記母体血を透過する透過光を撮像する第1の撮像装置と、
    前記第2の波長領域の光が照射されることにより前記母体血から発せられる自家蛍光のみを透過するエミッションフィルタと、
    前記エミッションフィルタを透過した自家蛍光を撮像する第2の撮像装置と、
    前記第1の撮像装置で撮像された第1の画像に基づいて赤血球を識別し、前記第2の撮像装置で撮像された第2の画像に基づいて前記赤血球から核の有無を識別し、有核赤血球を識別する画像処理装置と、を備える有核赤血球の選別装置。
  10. 前記第2の波長領域の光から、ピーク波長が530nm以下の波長領域の励起光のみを通過させる励起フィルタを備え、
    前記励起フィルタを通過した光を前記母体血に照射する請求項9に記載の有核赤血球の選別装置。
  11. 前記第1の波長領域の光が、ピーク波長が380nm以上650nm以下の波長領域に含まれる光であり、
    前記画像処理装置は、前記第1の波長領域の光におけるヘモグロビンの酸素親和性に起因する分光特性により、母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球とに選別する請求項9または10に記載の有核赤血球の選別装置。
  12. 前記エミッションフィルタは、ピーク波長が450nm以上650nm以下の波長領域に含まれる前記自家蛍光を通過させる請求項9から11のいずれか1項に記載の有核赤血球の選別装置。
  13. 前記第1の波長領域の光、および、前記第2の波長領域の光が、LEDまたはLASERの光、および、干渉フィルタを通過した単色光を主波長とする光のいずれかである請求項9から12のいずれか1項に記載の有核赤血球の選別装置。
  14. 前記光源装置により出力される前記第1の波長領域の光、および、前記第2の波長領域の光が共通の光である請求項9から13のいずれか1項に記載の有核赤血球の選別装置。
  15. 前記画像処理装置は、前記第2の画像の赤血球像領域中の、蛍光強度の高い領域を核、蛍光強度の低い領域を細胞質と識別し、核の有無を識別する請求項9から14のいずれか1項に記載の有核赤血球の選別装置。
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