JP2016067268A - 胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】母体血中から胎児由来の有核赤血球細胞を確実に取得し、胎児の染色体異数性を判別することができる、胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法を提供する。
【解決手段】母体血中の細胞から、形態的情報に基づいて胎児有核赤血球候補細胞を識別して単離し、遺伝子型解析の結果によって単離した胎児有核赤血球候補細胞が胎児由来であるか否かの判定を行い、胎児由来であった場合に、その細胞の染色体DNAについて染色体異数性の判別を行うことにより、母体血中から胎児由来の有核赤血球細胞を確実に取得し、胎児の染色体異数性を判別する、胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
【選択図】なし
【解決手段】母体血中の細胞から、形態的情報に基づいて胎児有核赤血球候補細胞を識別して単離し、遺伝子型解析の結果によって単離した胎児有核赤血球候補細胞が胎児由来であるか否かの判定を行い、胎児由来であった場合に、その細胞の染色体DNAについて染色体異数性の判別を行うことにより、母体血中から胎児由来の有核赤血球細胞を確実に取得し、胎児の染色体異数性を判別する、胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
【選択図】なし
Description
本発明は、胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法に関する。より詳細には、本発明は、母体血中から単離した有核赤血球細胞の単一細胞解析による胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法に関する。
胎児の染色体異常や遺伝子異常を診断するため、従来、出生前診断として、羊水穿刺や絨毛採取により、胎児細胞を採取し、染色体や遺伝子を調べる方法が行われてきた。しかし、これらの方法は、僅かではあるが検体採取による流産等の合併症リスクが存在することが大きな問題点として指摘されている。
一方、非侵襲で、安全な出生前診断として、特許文献1〜3に記載されているように、母体血液中に存在する無細胞胎児DNAを分析する方法で出生前診断が行われるようになり、非侵襲性で、胎児の遺伝的情報を取得できる方法として注目を集めている。母体血中に存在する無細胞DNAは、母親由来のDNAである高いバックグラウンドと共に、胎児由来のDNAとの混合物として母体血の血漿中に存在する。この状況で、胎児の数的異常が存在するか否かを分析する場合には、母親由来のDNAのバックグラウンドに胎児由来のDNAの数の増加あるいは減少が加わってある割合で増加、または減少する量を検出することにより、胎児異数性を評価することが可能になる。しかし、無細胞DNAを用いたバルク解析では、母親由来の無細胞DNAの高いバックグラウンドのために、正常な状態と数的異常が存在する場合の量的差異が相対的に小さくなるために、ある確率で検出不能な場合があることが指摘されている。
また、母体の血液中に胎児細胞が移行し、母体由来の血液細胞とともに母体中を循環していることが知られるようになった。このような母体血中の胎児細胞の染色体のDNAを再現性よく確実に分析することにより、流産の危険性のない安全な出生前診断が実現できる。しかしながら、母体の血液中に存在する胎児細胞(胎児有核赤血球細胞)は、母体血の数mL中に1個程度しか存在しないことが理解されるようになり、確実に胎児細胞(胎児有核赤血球細胞)を取得することが、この安全な出生前診断を行ううえで非常に大きな課題として存在している。また妊娠した母体の血液中には、母親由来の有核赤血球細胞も存在することが知られるようになり、母親由来の有核赤血球細胞と、胎児由来の有核赤血球細胞(胎児有核赤血球細胞)を分離することもこの安全な出生前診断を実現する上で解決すべき課題として存在する。
母体血中の有核赤血球細胞に着目した胎児の出生前診断方法としては、特許文献4に、母体血からフィルターで分離した有核細胞のゲノムを増幅し、多型マーカーおよびY染色体マーカーを用いて胎児由来細胞を同定し、胎児由来細胞の染色体異常をFISHで検出する方法が記載されている。
また、特許文献5には、母親血液の胎児細胞を豊富化して選択し、胎児細胞であることを実証し、遺伝子座を増幅して多型遺伝子座の存在の有無を同定することにより胎児の染色体異常を検出する方法が記載されている。
また、特許文献6には、複数の胎児細胞のDNAのパラロガスな遺伝子を増幅し、増幅産物の量をシークエンサーで確定し対立遺伝子の比から、数的異常であるトリソミーを分析する方法が記載されている。
以上のように、母体血中の有核赤血球細胞に着目した胎児の出生前診断方法が検討されてきた。しかし、特許文献4の方法は、マーカーの検出精度は高いものの、染色体異数性の検出精度が不十分である。また、特許文献5は、胎児の染色体異数性の判別方法については開示していない。さらに、特許文献6は、母体血中の胎児細胞の選択、および母体由来の細胞と胎児由来の細胞との識別方法については開示していない。このように、妊婦の母体血中から単離した胎児由来有核赤血球細胞の遺伝子解析による胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法は未だに確立されていないのが実情である。技術的視点からは、特に、母体血中から胎児由来の有核赤血球細胞を確実に取得することが大きな問題として存在する。
そこで、本発明は、母体血中から胎児由来の有核赤血球細胞を確実に取得し、胎児の染色体異数性を判別することができる、胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、母体血中の細胞から、形態的情報に基づいて胎児有核赤血球候補細胞を識別して単離し、遺伝子型解析の結果によって単離した胎児有核赤血球候補細胞が胎児由来であるか否かの判定を行い、胎児由来であった場合に、その細胞の染色体DNAについて染色体異数性の判別を行うことにより、母体血中から胎児由来の有核赤血球細胞を確実に取得し、胎児の染色体異数性を判別することで、胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法を提供することができることを知得し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の(1)〜(23)を提供する。
(1)〔工程1〕母体血サンプルから有核赤血球細胞を分画し、有核赤血球細胞を含む画分を回収する工程、
〔工程2〕有核赤血球細胞を含む画分に含まれる細胞を観察し、その形態的情報を取得し、胎児有核赤血球候補細胞を識別し、その順位付けをする工程、
〔工程3〕順位付けをした胎児有核赤血球候補細胞のうち上位のものから順に複数個選択し、それぞれ単離する工程、
〔工程4〕単離した胎児有核赤血球候補細胞の全ゲノム増幅をする工程、
〔工程5〕全ゲノム増幅により得られた全ゲノム増幅産物を用いて、染色体特異的塩基配列を含む2箇所以上の領域であって、少なくとも2箇所の領域は異種の染色体上に存在する領域であり、かつ、少なくとも1箇所の領域はDNA多型部位を含む領域である領域を標的領域に含むマルチプレックスPCRを行う工程、
〔工程6〕マルチプレックスPCRにより得られたDNA断片の塩基配列を解読し、標的領域ごとに塩基配列および配列リード数を確定する工程、
〔工程7〕標的領域の塩基配列に基づいて遺伝子型決定を行い、全ゲノム増幅をした有核赤血球候補細胞が胎児由来であるか否かを判定する工程、ならびに
〔工程8〕全ゲノム増幅をした有核赤血球候補細胞が胎児由来であったと判定した場合に、配列リード数を比較し、全ゲノム増幅をした有核赤血球候補細胞に染色体異数性が存在するか否かを判定する工程
を備える胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
(2)〔工程1´〕母体血サンプルから有核赤血球細胞を分画し、有核赤血球細胞を含む画分を回収する工程、
〔工程2´〕有核赤血球細胞を含む画分に含まれる細胞を観察し、その形態的情報を取得し、胎児有核赤血球候補細胞を識別し、その順位付けをする工程、
〔工程3´〕順位付けをした胎児有核赤血球候補細胞のうち上位のものから順に複数個選択し、それぞれ単離する工程、
〔工程4´〕単離した胎児有核赤血球候補細胞の全ゲノム増幅をする工程、
〔工程5´〕全ゲノム増幅により得られた全ゲノム増幅産物を用いて遺伝子型解析を行い、全ゲノム増幅をした有核赤血球候補細胞が胎児由来であるか否かを判定する工程、
〔工程6´〕全ゲノム増幅をした有核赤血球候補細胞が胎児由来であったと判定した場合に、全ゲノム増幅により得られた全ゲノム増幅産物を用いて、染色体特異的塩基配列を含む2箇所以上の領域であって、少なくとも2箇所の領域は異種の染色体上に存在する領域である領域を標的領域に含むマルチプレックスPCRを行う工程、
〔工程7´〕マルチプレックスPCRにより得られたDNA断片の塩基配列を解読し、標的領域ごとに配列リード数を測定する工程、ならびに
〔工程8´〕配列リード数を比較し、全ゲノム増幅をした有核赤血球候補細胞に染色体異数性が存在するか否かを判定する工程
を備える、胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
(3)染色体特異的塩基配列がY染色体特異的塩基配列を含む、(1)に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
(4)DNA多型部位がSNP部位を含む、(1)または(3)に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
(5)SNP部位が少なくとも15箇所のSNP部位である、(4)に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
(6)SNP解析が、母親由来の有核赤血球細胞、白血球細胞または体細胞のSNP解析を含む、(4)または(5)に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
(7)遺伝子解析がY染色体の検出を含む、(2)に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
(8)遺伝子型解析がSNP解析を含む、(2)または(7)に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
(9)SNP解析が少なくとも15箇所のSNP部位を対象とする、(8)に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
(10)SNP解析が、母親由来の有核赤血球細胞、白血球細胞または体細胞のSNP解析を含む、(8)または(9)に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
(11)母体血サンプルから有核赤血球細胞を分画し、回収する工程において、密度勾配遠心分離法により有核赤血球細胞を含む画分を分画する、(1)〜(10)のいずれか1項に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
(12)有核赤血球細胞を含む画分の比重が1.065〜1.095g/mLの範囲内である、(11)に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
(13)有核赤血球細胞を観察し、その形態的情報を取得し、胎児有核赤血球候補細胞を識別し、その順位付けをする工程において、透明基板に塗布した有核赤血球細胞を観察する、(1)〜(12)のいずれか1項に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
(14)有核赤血球細胞を観察し、その形態的情報を取得し、胎児有核赤血球候補細胞を識別し、その順位付けをする工程において、形態的情報が細胞質の面積に対する核領域の面積の割合および核の円形度合いを含む、(1)〜(13)のいずれか1項に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
(15)形態的情報が細胞質の面積に対する核領域の面積の割合、細胞質の面積および核の長径を含み、下記式(I)および(II)を満たす、(1)〜(14)のいずれか1項に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
0.25<N/C<1.0 (I)
0.65<N/L2<0.785 (II)
ただし、式(I)および式(II)中、C、NおよびLは以下のとおりである。
C:細胞質の面積
N:核領域の面積
L:核の長径
(16)順位付けをした胎児有核赤血球候補細胞のうち上位のものから順に複数個選択し、それぞれ単離する工程において、複数個選択した胎児有核赤血球細胞を、マイクロマニピュレータを用いて単離する、(1)〜(15)のいずれか1項に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
(17)全ゲノム増幅をした有核赤血球候補細胞が胎児由来であるか否かを判定する工程において、全ゲノム増幅をした有核赤血球候補細胞の遺伝子型と、母体由来細胞の遺伝子型とを比較する、(1)〜(16)のいずれか1項に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
(18)母体由来細胞が白血球である、(17)に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
(19)全ゲノム増幅をした有核赤血球候補細胞に染色体異数性が存在するか否かを判定する工程において、母親由来の細胞のあらかじめ決定された80〜150bpの領域をPCR増幅したPCR産物の量をDNAシークエンサーで求め、基準として用いる、(1)〜(18)のいずれか1項に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
(20)全ゲノム増幅をした有核赤血球候補細胞に染色体異数性が存在するか否かを判定する工程において、配列リード数をあらかじめ決定したカットオフ値と比較する、(1)〜(18)のいずれか1項に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
(21)全ゲノム増幅をした有核赤血球候補細胞に染色体異数性が存在するか否かを判定する工程において、有核赤血球候補細胞の特定染色体に関連付けられるマルチプレックスPCR増幅産物の配列リード数と、母体由来細胞について測定した、染色体特異的なPCR増幅産物の配列リード数とを比較する、(1)〜(18)のいずれか1項に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
(22)染色体異数性が、第13番染色体、第18番染色体、第21番染色体、X染色体および/またはY染色体のトリソミーまたはモノソミーである、(1)〜(21)のいずれか1項に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
(23)全ゲノム増幅をした有核赤血球候補細胞が胎児由来であるか否かを判定する工程において、全ゲノム増幅をした有核赤血球候補細胞が胎児由来でなかったと判定した場合には、母体血サンプルから有核赤血球細胞を分画し、有核赤血球細胞を含む画分を回収する工程から、順位付けをした胎児有核赤血球候補細胞のうち上位のものから順に複数個選択し、それぞれ単離する工程までの、いずれかの工程から、以降の工程を繰り返す、(1)〜(22)のいずれか1項に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
(1)〔工程1〕母体血サンプルから有核赤血球細胞を分画し、有核赤血球細胞を含む画分を回収する工程、
〔工程2〕有核赤血球細胞を含む画分に含まれる細胞を観察し、その形態的情報を取得し、胎児有核赤血球候補細胞を識別し、その順位付けをする工程、
〔工程3〕順位付けをした胎児有核赤血球候補細胞のうち上位のものから順に複数個選択し、それぞれ単離する工程、
〔工程4〕単離した胎児有核赤血球候補細胞の全ゲノム増幅をする工程、
〔工程5〕全ゲノム増幅により得られた全ゲノム増幅産物を用いて、染色体特異的塩基配列を含む2箇所以上の領域であって、少なくとも2箇所の領域は異種の染色体上に存在する領域であり、かつ、少なくとも1箇所の領域はDNA多型部位を含む領域である領域を標的領域に含むマルチプレックスPCRを行う工程、
〔工程6〕マルチプレックスPCRにより得られたDNA断片の塩基配列を解読し、標的領域ごとに塩基配列および配列リード数を確定する工程、
〔工程7〕標的領域の塩基配列に基づいて遺伝子型決定を行い、全ゲノム増幅をした有核赤血球候補細胞が胎児由来であるか否かを判定する工程、ならびに
〔工程8〕全ゲノム増幅をした有核赤血球候補細胞が胎児由来であったと判定した場合に、配列リード数を比較し、全ゲノム増幅をした有核赤血球候補細胞に染色体異数性が存在するか否かを判定する工程
を備える胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
(2)〔工程1´〕母体血サンプルから有核赤血球細胞を分画し、有核赤血球細胞を含む画分を回収する工程、
〔工程2´〕有核赤血球細胞を含む画分に含まれる細胞を観察し、その形態的情報を取得し、胎児有核赤血球候補細胞を識別し、その順位付けをする工程、
〔工程3´〕順位付けをした胎児有核赤血球候補細胞のうち上位のものから順に複数個選択し、それぞれ単離する工程、
〔工程4´〕単離した胎児有核赤血球候補細胞の全ゲノム増幅をする工程、
〔工程5´〕全ゲノム増幅により得られた全ゲノム増幅産物を用いて遺伝子型解析を行い、全ゲノム増幅をした有核赤血球候補細胞が胎児由来であるか否かを判定する工程、
〔工程6´〕全ゲノム増幅をした有核赤血球候補細胞が胎児由来であったと判定した場合に、全ゲノム増幅により得られた全ゲノム増幅産物を用いて、染色体特異的塩基配列を含む2箇所以上の領域であって、少なくとも2箇所の領域は異種の染色体上に存在する領域である領域を標的領域に含むマルチプレックスPCRを行う工程、
〔工程7´〕マルチプレックスPCRにより得られたDNA断片の塩基配列を解読し、標的領域ごとに配列リード数を測定する工程、ならびに
〔工程8´〕配列リード数を比較し、全ゲノム増幅をした有核赤血球候補細胞に染色体異数性が存在するか否かを判定する工程
を備える、胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
(3)染色体特異的塩基配列がY染色体特異的塩基配列を含む、(1)に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
(4)DNA多型部位がSNP部位を含む、(1)または(3)に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
(5)SNP部位が少なくとも15箇所のSNP部位である、(4)に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
(6)SNP解析が、母親由来の有核赤血球細胞、白血球細胞または体細胞のSNP解析を含む、(4)または(5)に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
(7)遺伝子解析がY染色体の検出を含む、(2)に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
(8)遺伝子型解析がSNP解析を含む、(2)または(7)に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
(9)SNP解析が少なくとも15箇所のSNP部位を対象とする、(8)に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
(10)SNP解析が、母親由来の有核赤血球細胞、白血球細胞または体細胞のSNP解析を含む、(8)または(9)に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
(11)母体血サンプルから有核赤血球細胞を分画し、回収する工程において、密度勾配遠心分離法により有核赤血球細胞を含む画分を分画する、(1)〜(10)のいずれか1項に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
(12)有核赤血球細胞を含む画分の比重が1.065〜1.095g/mLの範囲内である、(11)に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
(13)有核赤血球細胞を観察し、その形態的情報を取得し、胎児有核赤血球候補細胞を識別し、その順位付けをする工程において、透明基板に塗布した有核赤血球細胞を観察する、(1)〜(12)のいずれか1項に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
(14)有核赤血球細胞を観察し、その形態的情報を取得し、胎児有核赤血球候補細胞を識別し、その順位付けをする工程において、形態的情報が細胞質の面積に対する核領域の面積の割合および核の円形度合いを含む、(1)〜(13)のいずれか1項に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
(15)形態的情報が細胞質の面積に対する核領域の面積の割合、細胞質の面積および核の長径を含み、下記式(I)および(II)を満たす、(1)〜(14)のいずれか1項に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
0.25<N/C<1.0 (I)
0.65<N/L2<0.785 (II)
ただし、式(I)および式(II)中、C、NおよびLは以下のとおりである。
C:細胞質の面積
N:核領域の面積
L:核の長径
(16)順位付けをした胎児有核赤血球候補細胞のうち上位のものから順に複数個選択し、それぞれ単離する工程において、複数個選択した胎児有核赤血球細胞を、マイクロマニピュレータを用いて単離する、(1)〜(15)のいずれか1項に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
(17)全ゲノム増幅をした有核赤血球候補細胞が胎児由来であるか否かを判定する工程において、全ゲノム増幅をした有核赤血球候補細胞の遺伝子型と、母体由来細胞の遺伝子型とを比較する、(1)〜(16)のいずれか1項に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
(18)母体由来細胞が白血球である、(17)に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
(19)全ゲノム増幅をした有核赤血球候補細胞に染色体異数性が存在するか否かを判定する工程において、母親由来の細胞のあらかじめ決定された80〜150bpの領域をPCR増幅したPCR産物の量をDNAシークエンサーで求め、基準として用いる、(1)〜(18)のいずれか1項に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
(20)全ゲノム増幅をした有核赤血球候補細胞に染色体異数性が存在するか否かを判定する工程において、配列リード数をあらかじめ決定したカットオフ値と比較する、(1)〜(18)のいずれか1項に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
(21)全ゲノム増幅をした有核赤血球候補細胞に染色体異数性が存在するか否かを判定する工程において、有核赤血球候補細胞の特定染色体に関連付けられるマルチプレックスPCR増幅産物の配列リード数と、母体由来細胞について測定した、染色体特異的なPCR増幅産物の配列リード数とを比較する、(1)〜(18)のいずれか1項に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
(22)染色体異数性が、第13番染色体、第18番染色体、第21番染色体、X染色体および/またはY染色体のトリソミーまたはモノソミーである、(1)〜(21)のいずれか1項に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
(23)全ゲノム増幅をした有核赤血球候補細胞が胎児由来であるか否かを判定する工程において、全ゲノム増幅をした有核赤血球候補細胞が胎児由来でなかったと判定した場合には、母体血サンプルから有核赤血球細胞を分画し、有核赤血球細胞を含む画分を回収する工程から、順位付けをした胎児有核赤血球候補細胞のうち上位のものから順に複数個選択し、それぞれ単離する工程までの、いずれかの工程から、以降の工程を繰り返す、(1)〜(22)のいずれか1項に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
本発明によれば、母体血中から胎児由来の有核赤血球細胞を確実に取得し、胎児の染色体異数性を判別することができる、胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法を提供することができる。
また、本発明によれば、母体血を用いた胎児の染色体異数性の判別を、非侵襲的に、かつ効率よく、行うことができる。
本発明の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法(以下、単に「本発明の方法」という場合がある。)の特徴的な点は、母体血中から採取した有核赤血球細胞の単細胞分析によって、その有核赤血球細胞に染色体異数性が存在するか否かの判別を行う点にある。本発明の方法は、母体DNAの影響を受けないので、無細胞DNAのバルク分析によって胎児に染色体異数性が存在するか否かの判別を行う方法(特許文献1〜3)と比較して、より精度よく、確実に、胎児の染色体異数性を判別することができる。
また、本発明の別の特徴的な点は、染色体異数性を判別する胎児有核赤血球細胞を選別するにあたり、母体血中の細胞から、形態的情報に基づいて胎児有核赤血球候補細胞を識別して単離し、遺伝子型解析の結果よって単離した胎児有核赤血球候補細胞が胎児由来であるか否かの判定を行い、染色体異数性の判別に用いる染色体DNAが胎児由来の染色体DNAであることを確実なものとする点にある。
また、本発明のさらに別の特徴的な点は、染色体異数性の判別を、マルチプレックスPCRにより得られたDNA断片の配列リード数を比較することによって行う点にある。この特徴により、FISH(Fluorescence In Situ Hybridization)のような、標的領域にハイブリダイズした蛍光プローブからの蛍光を測定する方法に比べ、より直接的に染色体の数的異常を検出できるので、精度を向上させることができる。
[胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法]
本発明は、胎児の染色体に数的異常が存在するか否かを判別するための非侵襲的方法に関するものである。より詳細には、本発明は、妊婦の母体血中に存在する胎児由来の有核赤血球細胞を単細胞DNA分析することにより、主として、13番染色体、18番染色体または21番染色体に、トリソミーまたはモノソミー等の数的異常が存在するか否かを判別する方法に関する。
本発明は、胎児の染色体に数的異常が存在するか否かを判別するための非侵襲的方法に関するものである。より詳細には、本発明は、妊婦の母体血中に存在する胎児由来の有核赤血球細胞を単細胞DNA分析することにより、主として、13番染色体、18番染色体または21番染色体に、トリソミーまたはモノソミー等の数的異常が存在するか否かを判別する方法に関する。
母体血中の胎児由来の有核赤血球細胞(胎児有核赤血球細胞)は、血液細胞106個中に1個あるかどうかの確率で妊娠母体の血液中に存在すると指摘されており、非常に存在が少ない。また、母体血中には、母体由来の有核赤血球細胞も存在することから、胎児有核赤血球候補細胞を単離しても、胎児由来であるか、母親由来であるかを選別する手段としては、男児の場合はY染色体を確認するか、対立遺伝子の違いにより、母親とは異なる遺伝子を有することを検出することになり、ここで胎児由来の有核赤血球が選別できないと、再度、妊娠母体から採血を行う必要が生じていた。
本発明では、単離された胎児有核赤血球候補細胞が、Y染色体の検出、対立遺伝子の評価等の遺伝子型解析の結果により、胎児由来の細胞であったと判定された場合には、DNA増幅産物の量の確定工程に進み、胎児由来の細胞でなかったと判定された場合には、細胞を観察し、その形態的情報を取得し、胎児有核赤血球候補細胞を識別し、その順位付けをする工程に戻り、その工程以降を再度行う。胎児有核赤血球候補細胞を識別して順位付けする工程で、胎児由来有核赤血球候補細胞がなくなった場合には、母体血サンプルから有核赤血球細胞を分画し、有核赤血球細胞を含む画分を回収する工程まで戻り、その工程以降を再度行う。
このように段階的に、非常に少ない胎児由来の細胞を取得する工程を有し、確実に母体から採取した血液中に存在する胎児由来の有核赤血球を取得して、単細胞DNA分析をして、胎児の染色体に数的異常が存在するか否かを判別する方法に関するものである。
本発明の第一態様は、〔工程1〕母体血サンプルから有核赤血球細胞を分画し、有核赤血球細胞を含む画分を回収する工程、〔工程2〕有核赤血球細胞を含む画分に含まれる細胞を観察し、その形態的情報を取得し、胎児有核赤血球候補細胞を識別し、その順位付けをする工程、〔工程3〕順位付けをした胎児有核赤血球候補細胞のうち上位のものから順に複数個選択し、それぞれ単離する工程、〔工程4〕単離した胎児有核赤血球候補細胞の全ゲノム増幅をする工程、〔工程5〕全ゲノム増幅により得られた全ゲノム増幅産物を用いて、染色体特異的塩基配列を含む2箇所以上の領域であって、少なくとも2箇所の領域は異種の染色体上に存在する領域であり、かつ、少なくとも1箇所の領域はDNA多型部位を含む領域である領域を標的領域に含むマルチプレックスPCRを行う工程、〔工程6〕マルチプレックスPCRにより得られたDNA断片の塩基配列を解読し、標的領域ごとに塩基配列および配列リード数を確定する工程、〔工程7〕標的領域の塩基配列に基づいて遺伝子型決定を行い、全ゲノム増幅をした有核赤血球候補細胞が胎児由来であるか否かを判定する工程、ならびに〔工程8〕全ゲノム増幅をした有核赤血球候補細胞が胎児由来であったと判定した場合に、配列リード数を比較し、全ゲノム増幅をした有核赤血球候補細胞に染色体異数性が存在するか否かを判定する工程を備える胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法である。
本発明の第二態様は、第一態様の〔工程1〕〜〔工程4〕と同様の〔工程1´〕〜〔工程4´〕の後、〔工程5´〕全ゲノム増幅により得られた全ゲノム増幅産物を用いて、染色体特異的塩基配列を含む2箇所以上の領域であって、少なくとも2箇所の領域は異種の染色体上に存在する領域であり、かつ、少なくとも1箇所の領域はDNA多型部位を含む領域である領域を標的領域に含むマルチプレックスPCRを行う工程、〔工程6´〕マルチプレックスPCRにより得られたDNA断片の塩基配列を解読し、標的領域ごとに塩基配列および配列リード数を確定する工程、〔工程7´〕標的領域の塩基配列に基づいて遺伝子型決定を行い、全ゲノム増幅をした有核赤血球候補細胞が胎児由来であるか否かを判定する工程、ならびに〔工程8´〕全ゲノム増幅をした有核赤血球候補細胞が胎児由来であったと判定した場合に、配列リード数を比較し、全ゲノム増幅をした有核赤血球候補細胞に染色体異数性が存在するか否かを判定する工程を備える胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法である。
〈本発明の第一態様の工程〉
《工程1:母体血サンプルから有核赤血球細胞を分画し、有核赤血球細胞を含む画分を回収する工程》
(母体血サンプル)
本発明においては、母体血は、妊婦の妊婦から採取する血液であり、非侵襲であるためには、末梢血であることが好ましい。
母体の母体血には、母体由来の好酸球、好中球、好塩基球、単核球、リンパ球等の白血球や、核のない成熟した赤血球に加えて、母体由来の有核赤血球、そして胎児由来の有核赤血球が含まれる。胎児由来の有核赤血球は、妊娠後、6週程度から母体血中に存在するといわれており、そのため本発明では、妊娠後6週程度以降の妊婦の末梢血を検査することが好ましい。
《工程1:母体血サンプルから有核赤血球細胞を分画し、有核赤血球細胞を含む画分を回収する工程》
(母体血サンプル)
本発明においては、母体血は、妊婦の妊婦から採取する血液であり、非侵襲であるためには、末梢血であることが好ましい。
母体の母体血には、母体由来の好酸球、好中球、好塩基球、単核球、リンパ球等の白血球や、核のない成熟した赤血球に加えて、母体由来の有核赤血球、そして胎児由来の有核赤血球が含まれる。胎児由来の有核赤血球は、妊娠後、6週程度から母体血中に存在するといわれており、そのため本発明では、妊娠後6週程度以降の妊婦の末梢血を検査することが好ましい。
(有核赤血球細胞の分画、有核赤血球細胞を含む画分の回収)
胎児由来の有核赤血球細胞(胎児有核赤血球細胞)は、胎盤を通過して、母親の血液中に存在する赤血球前駆体である。母親が妊娠中には、胎児の赤血球は有核であり得る。胎児有核赤血球細胞には染色体が存在するため、侵襲性が低い手段で、胎児由来の染色体および胎児遺伝子の入手が可能となる。胎児有核赤血球細胞は、母体血中の細胞の106個に1個の割合でしか存在しないといわれており、妊婦の抹消血中には非常に存在確率が少ない。
胎児由来の有核赤血球細胞(胎児有核赤血球細胞)は、胎盤を通過して、母親の血液中に存在する赤血球前駆体である。母親が妊娠中には、胎児の赤血球は有核であり得る。胎児有核赤血球細胞には染色体が存在するため、侵襲性が低い手段で、胎児由来の染色体および胎児遺伝子の入手が可能となる。胎児有核赤血球細胞は、母体血中の細胞の106個に1個の割合でしか存在しないといわれており、妊婦の抹消血中には非常に存在確率が少ない。
そのため、母体血サンプルから有核赤血球細胞を分画し、有核赤血球細胞を含む画分を回収することが必要となる。
母体血サンプルから有核赤血球細胞を分画し、有核赤血球細胞を含む画分を回収する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、FACS(Fluorescence−Activated Cell Sorting)法(特表2001−502805号公報を参照)、MACS(Magnetic−Activated Cell Sorting)法(特表平10−507632号公報を参照)、密度勾配遠心分離法(国際公開第2012/023298号を参照)などにより、胎児有核赤血球細胞を回収する方法、または胎児有核赤血球細胞以外の細胞を除去する方法が挙げられる。これらの方法は、胎児有核赤血球細胞を濃縮し、目的の細胞を取得する確率を高めるために有用な技術である。
例示した方法の中でも、操作が簡便で有核赤血球細胞の回収効率がよい点で、密度勾配遠心分離法が好ましい。
国際公開第2012/023298号に、胎児由来の有核赤血球を含めた母体の血球の密度が記載されている。その記載によると、想定される胎児由来の有核赤血球細胞の密度は、1.065〜1.095g/mL程度、母体の血球の密度は、赤血球が1.070〜1.120g/mL程度、好酸球は1.090〜1.110g/mL程度、好中球は1.075〜1.100g/mL程度、好塩基球が、1.070〜1.080g/mL程度、リンパ球が、1.060〜1.080g/mL程度、単核球が、1.060〜1.070g/mL程度である。
国際公開第2012/023298号に、胎児由来の有核赤血球を含めた母体の血球の密度が記載されている。その記載によると、想定される胎児由来の有核赤血球細胞の密度は、1.065〜1.095g/mL程度、母体の血球の密度は、赤血球が1.070〜1.120g/mL程度、好酸球は1.090〜1.110g/mL程度、好中球は1.075〜1.100g/mL程度、好塩基球が、1.070〜1.080g/mL程度、リンパ球が、1.060〜1.080g/mL程度、単核球が、1.060〜1.070g/mL程度である。
本発明で用いる、第一の媒体および第二の媒体としては、ポリビニルピロリドンでコートされた直径15〜30nmのケイ酸コロイド粒子分散液であるパーコール(Percoll、登録商標、GEヘルスケアバイオサイエンス社製)、ショ糖から作られた側鎖に富んだ中性の親水性ポリマーであるフィコール−パック(Ficoll−Paque、登録商標、GEヘルスケアバイオサイエンス社製)、ポリスクロースおよびジアトリゾ酸ナトリウムの混合物であるヒストパック(Histopaque、登録商標、シグマアルドリッチ社製)等の媒体を使用することができる。本発明では、パーコールおよびヒストパックのいずれでも好ましく使用することができる。パーコールは、密度1.130g/mLの製品が市販されており、希釈することで目的とする密度の媒体を調製することが可能である。ヒストパックは、密度1.077g/mLの媒体および密度1.119g/mLの媒体が市販されており、これらを混合することにより所望の密度の媒体を調製することができる。
密度1.065〜1.095g/mL程度の胎児由来の有核赤血球細胞を、母体中の他の血球成分と分離するために、積層する媒体の密度が設定される。胎児由来の有核赤血球細胞の密度の中央値は1.080g/mL程度であるため、密度1.08g/mL以上の媒体(第一の媒体)と密度1.08g/mL未満の媒体(第二の媒体)を調製し、隣接して重層することで、その界面に所望の胎児由来の有核赤血球細胞を含有する画分を集めることが可能となる。第一の媒体の密度を1.08g/mL以上1.10g/mL以下、第二の媒体の密度を1.06g/mL以上1.08g/mL未満として設定することが好ましく、第一の媒体の密度を1.08g/mL以上1.00g/mL以下、第二の媒体の密度を1.065g/mL以上1.08g/mL未満として設定することがより好ましい。具体的には、例えば、第一の媒体の密度を1.085g/mL、第二の媒体の密度を1.075g/mLに設定することで、血漿成分、および好酸球、単核球を回収する所望の画分から分離することが可能となる。また、赤血球、好中球、リンパ球の一部も分離することが可能となる。本発明においては、第一の媒体の種類と第二の媒体の種類とは、望の胎児由来の有核赤血球細胞を含有する画分を分画することができる限りにおいて、同一であっても相違してもよいが、同一種類の媒体であることが好ましい。例えば、第一の媒体がパーコールである場合には、第二の媒体もパーコールであることが好ましく、第一の媒体がヒストパックである場合には、第二の媒体もヒストパックであることが好ましい。
密度勾配遠心分離法の好ましい実施形態としては、遠沈管の底部に、第一の媒体を凝固点以上、かつ、14℃以下の温度の状態で収容し、または遠沈管の底部に収容した第一媒体を、遠沈管とともに14℃以下の温度の状態で保存し、その後、第一媒体の上に、第一媒体よりも低密度の第二媒体を積層し、さらに第二媒体の上に、血液試料を積層し、遠心分離を行うことで、非常に均一に所望の胎児由来の有核赤血球を有する画分を取得することが可能となる。ここで、第一媒体を収容する温度、あるいは保存する温度は、さらには5℃以下である実施態様がさらに好ましい。
《工程2:有核赤血球細胞を含む画分に含まれる細胞を観察し、その形態的情報を取得し、胎児有核赤血球候補細胞を識別し、その順位付けをする工程》
(細胞を観察、細胞の形態的情報の取得)
有核赤血球細胞を含む画分に含まれる細胞を観察する方法としては、有核赤血球細胞を含む画分を透明基板上に塗布し、乾燥して得られる細胞を観察する方法が挙げられる。このように乾燥した細胞を得ることで、細胞の形態的情報に基づいて胎児由来の有核赤血球細胞の候補(胎児有核赤血球候補細胞)を識別することが容易になる。
(細胞を観察、細胞の形態的情報の取得)
有核赤血球細胞を含む画分に含まれる細胞を観察する方法としては、有核赤血球細胞を含む画分を透明基板上に塗布し、乾燥して得られる細胞を観察する方法が挙げられる。このように乾燥した細胞を得ることで、細胞の形態的情報に基づいて胎児由来の有核赤血球細胞の候補(胎児有核赤血球候補細胞)を識別することが容易になる。
透明基板としては、スライドガラスが好ましく、複数のスライドガラスを準備して、回収した有核赤血球細胞を含む画分を分割して各スライドガラス上に塗布して乾燥したサンプルを作製することが好ましい。このように作製した複数のスライドガラスに対して、下記に説明するように、すべてのスライドガラスの画像情報を一度に取得してもよく、何回かに分けて、画像情報を取得してもよい。好ましい態様としては、何回かに分割して画像情報を取得し、胎児有核赤血球候補細胞が胎児由来であるか否かの判定を行った結果、すべての胎児有核赤血球候補細胞が胎児由来でなかったと判定された場合、すなわち、胎児有核赤血球細胞が単離されなかった場合に、画像情報を取得していないスライドガラスから画像情報を得るようにすることが好ましい。
(胎児有核赤血球候補細胞の識別)
本発明では、有核赤血球細胞を含む画分に含有される細胞の形態的情報を取得する際に、有核赤血球細胞を含む画分を透明基板上に塗布し、乾燥して得られた標本を観察することが好ましい。この標本を観察することにより、細胞の形態的情報を取得し、その形態的情報を用いて、胎児由来の有核赤血球の候補(胎児有核赤血球候補細胞)を識別する。胎児有核赤血球候補細胞を識別するための形態的情報としては、細胞の、細胞質の面積に対する核領域の面積の割合、核の円形度合い、および核領域の面積等から一つ以上を、所望により組み合わせて利用することができる。特には、細胞質の面積、核領域の面積および核の長径の長さが特定の条件を満たす細胞を、胎児有核赤血球候補細胞として識別することが好ましい。
本発明では、有核赤血球細胞を含む画分に含有される細胞の形態的情報を取得する際に、有核赤血球細胞を含む画分を透明基板上に塗布し、乾燥して得られた標本を観察することが好ましい。この標本を観察することにより、細胞の形態的情報を取得し、その形態的情報を用いて、胎児由来の有核赤血球の候補(胎児有核赤血球候補細胞)を識別する。胎児有核赤血球候補細胞を識別するための形態的情報としては、細胞の、細胞質の面積に対する核領域の面積の割合、核の円形度合い、および核領域の面積等から一つ以上を、所望により組み合わせて利用することができる。特には、細胞質の面積、核領域の面積および核の長径の長さが特定の条件を満たす細胞を、胎児有核赤血球候補細胞として識別することが好ましい。
上記特定の条件としては、下記式(I)を満たすことが挙げられる。
0.25<N/C<1.0 ・・・(I)
ただし、式(I)中、
Cは、画像解析を行う細胞の細胞質の面積(μm2)であり、
Nは、画像解析を行う細胞の核領域の面積(μm2)である。
上記特定の条件としては、さらに、下記式(II)を満たすことが挙げられる。
0.65<N/L2<0.785 ・・・(II)
ただし、式(II)中、
Lは、画像解析する細胞の核の長径の長さ(μm)であり、
Nは、式(I)中におけるものと同義である。
すなわち、細胞の細胞質の面積に対する核領域の面積の割合(N/C)が0.25超、1.0未満であり、かつ、複雑な形をした細胞核に外接する楕円形の長径の長さである、画像解析する細胞の核の長径の長さLの平方L2に対する核領域の面積の割合が0.65超、0.785未満である細胞を胎児有核赤血球候補細胞として識別することが好ましい。
0.25<N/C<1.0 ・・・(I)
ただし、式(I)中、
Cは、画像解析を行う細胞の細胞質の面積(μm2)であり、
Nは、画像解析を行う細胞の核領域の面積(μm2)である。
上記特定の条件としては、さらに、下記式(II)を満たすことが挙げられる。
0.65<N/L2<0.785 ・・・(II)
ただし、式(II)中、
Lは、画像解析する細胞の核の長径の長さ(μm)であり、
Nは、式(I)中におけるものと同義である。
すなわち、細胞の細胞質の面積に対する核領域の面積の割合(N/C)が0.25超、1.0未満であり、かつ、複雑な形をした細胞核に外接する楕円形の長径の長さである、画像解析する細胞の核の長径の長さLの平方L2に対する核領域の面積の割合が0.65超、0.785未満である細胞を胎児有核赤血球候補細胞として識別することが好ましい。
(識別した胎児有核赤血球候補細胞の順位付け)
本発明においては、識別した胎児有核赤血球候補細胞に順位付けをするが、取得した形態的情報に基いて順位付けをすることが好ましい。具体的には、上記式(I)および(II)を満たす、透明基板上に存在する胎児有核赤血球候補細胞を識別し、上記式(I)および(II)の式を満たす細胞のうち、核の形状が真の円形または楕円形に近いものから順位をつけることが好ましい。
本発明においては、識別した胎児有核赤血球候補細胞に順位付けをするが、取得した形態的情報に基いて順位付けをすることが好ましい。具体的には、上記式(I)および(II)を満たす、透明基板上に存在する胎児有核赤血球候補細胞を識別し、上記式(I)および(II)の式を満たす細胞のうち、核の形状が真の円形または楕円形に近いものから順位をつけることが好ましい。
(細胞の形態的情報を取得し、胎児有核赤血球候補細胞を識別するシステム)
本発明において、細胞の形態的情報を取得し、胎児有核赤血球候補細胞を識別するシステムは、光学顕微鏡、デジタルカメラ、スライドガラス用のステージ、光学搬送系、画像処理PC、制御PC、ディスプレイを装備することが好ましい。光学搬送系は、対物レンズとCCDカメラを備えることが好ましい。画像処理PCは、データ解析およびデータ記憶を行う処理系を備えることが好ましい。制御PCは、スライドガラス用のステージの位置制御および全体の処理を制御する制御系を備えることが好ましい。
本発明において、細胞の形態的情報を取得し、胎児有核赤血球候補細胞を識別するシステムは、光学顕微鏡、デジタルカメラ、スライドガラス用のステージ、光学搬送系、画像処理PC、制御PC、ディスプレイを装備することが好ましい。光学搬送系は、対物レンズとCCDカメラを備えることが好ましい。画像処理PCは、データ解析およびデータ記憶を行う処理系を備えることが好ましい。制御PCは、スライドガラス用のステージの位置制御および全体の処理を制御する制御系を備えることが好ましい。
(細胞の光学的情報の取得)
本発明においては、細胞の形態的情報に代えて、細胞の光学的情報を取得してもよい。
人を含むすべての脊椎動物の血液中にある赤血球に存在する蛋白質がヘモグロビンである。成人のヘモグロビンは、αサブユニットとβサブユニットと呼ばれる2種類のサブユニットの2つから構成される4量体α2β2(HbA)の構造をしている。一方、胎児のヘモグロビンは、2本のα鎖と2本のγ鎖によって作られた4量体α2γ2(HbF)であり、生後、大部分を占めるHbAと少数のHbFからなるHbA2に置き換わっていくことが知られている。
本発明においては、細胞の形態的情報に代えて、細胞の光学的情報を取得してもよい。
人を含むすべての脊椎動物の血液中にある赤血球に存在する蛋白質がヘモグロビンである。成人のヘモグロビンは、αサブユニットとβサブユニットと呼ばれる2種類のサブユニットの2つから構成される4量体α2β2(HbA)の構造をしている。一方、胎児のヘモグロビンは、2本のα鎖と2本のγ鎖によって作られた4量体α2γ2(HbF)であり、生後、大部分を占めるHbAと少数のHbFからなるHbA2に置き換わっていくことが知られている。
有核赤血球細胞は、血液中の他の有核細胞である白血球細胞とはヘモグロビンを有する点が相違する。ヘモグロビンは、酸素と結合した場合、鮮明な赤色を呈する酸化ヘモグロビン、酸素と結合していない場合、暗赤色を呈する還元ヘモグロビンであり、動脈、静脈中には、酸素結合量が異なるヘモグロビンが流れている。
そこで、本発明の実施形態として、有核赤血球と、白血球との、光学的な情報の差異を利用して、有核赤血球を識別する工程により、有核赤血球候補細胞から、主として母体由来の白血球を除去する工程も、好ましい態様である。用いる光学的な情報は、ヘモグロビン起因の情報である態様が好ましく、400〜650nmの吸光度の違いに起因する少なくとも1つの単色光の情報であることが好ましい。この単色光とは、ヘモグロビンの吸収が大きい400〜450nmの波長領域の単波長の光や、525〜580nmの波長領域の単色光を選択することができる。これらの波長領域の吸収係数は、ヘモグロビンが存在することで高い値を示すため、白血球の細胞質の吸収係数に比べて格段に大きな値となる。
細胞質の吸収係数を測定する場合には、顕微分光光度計を用いることが可能である。顕微分光光度計は、通常の分光光度計と同じ原理を、顕微鏡の光学系を利用する光度計であり、市販の装置を使用することが可能である。
細胞の形態的情報を用いて胎児由来の有核赤血球候補細胞を選別した後に、顕微分光光度計を用いて、有核赤血球候補細胞に、入射光を照射し、目的の波長の吸光度を検出する態様が好ましい。その後、有核赤血球候補細胞の近傍にある白血球を選択し、有核赤血球候補細胞で検出した方法と同様の方法で、入射光を照射し、目的の波長のときの吸収係数を検出し、複数の白血球の目的の波長での吸光度を求める。この場合、複数の白血球の吸光度を求めてそれぞれの値の平均値を採用しても良い。この場合、有核赤血球候補細胞から近い順に、好ましくは2個以上20個以下の白血球を選択する態様が好ましい。この平均値に対する、有核赤血球候補細胞の、目的の波長での吸収係数の比を算出し、有核赤血球候補細胞が確実に有核赤血球であるかの見極めが可能となる。
《工程3:順位付けをした胎児有核赤血球候補細胞のうち上位のものから順に複数個選択し、それぞれ単離する工程》
前工程において順位付けをした胎児有核赤血球候補細胞から、順位の高い細胞から所望の個数、例えば5個、の細胞を選択して、単離する。
選択した胎児有核赤血球候補細胞を単離する方法としては、マイクロマニピュレータを用いて、単一の細胞を単離することが好ましい。
選択しなかった残りの細胞については、胎児有核赤血球候補細胞が胎児由来であるか否かの判定を行った結果、選択し、単離した細胞に胎児有核赤血球細胞が含まれていないことが判明した際に、改めて胎児有核赤血球候補細胞として選択し、それぞれ単離することが可能である。
前工程において順位付けをした胎児有核赤血球候補細胞から、順位の高い細胞から所望の個数、例えば5個、の細胞を選択して、単離する。
選択した胎児有核赤血球候補細胞を単離する方法としては、マイクロマニピュレータを用いて、単一の細胞を単離することが好ましい。
選択しなかった残りの細胞については、胎児有核赤血球候補細胞が胎児由来であるか否かの判定を行った結果、選択し、単離した細胞に胎児有核赤血球細胞が含まれていないことが判明した際に、改めて胎児有核赤血球候補細胞として選択し、それぞれ単離することが可能である。
《工程4:単離した胎児有核赤血球候補細胞の全ゲノム増幅をする工程》
胎児有核赤血球候補細胞からゲノムDNAを抽出して、全ゲノム増幅を行う。
本発明で用いる全ゲノム増幅法としては、取得した細胞から、一般的な方法である界面活性剤を用いた細胞溶解、プロテアーゼK等を用いたタンパク質分解工程を経ることで、細胞から溶出することにより得られたゲノムDNAを用いることが好ましいが、反応溶液中に単離した細胞を1個まるごと添加してもよい。
全ゲノム増幅は、市販の増幅試薬(キット)を用いて行うことが可能である。全ゲノム増幅試薬としては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に基づく試薬PicoPLEX WGA kit(New England Biolabs社製)、GenomePlex Single Cell Whole Genome Amplification kit(シグマアルドリッチ社製)、MALBAC法(国際公開第2012/166425号)などを用いることが出来る。また、鎖置換型DNA合成反応に基づく試薬GenomiPhi(GEヘルスケア社製)、REPLI−g(QIAGEN社製)も同様に用いることが出来る。本発明においては、Single cell WGA kit(New England Biolabs社製)を用いることが好ましい。
胎児有核赤血球候補細胞からゲノムDNAを抽出して、全ゲノム増幅を行う。
本発明で用いる全ゲノム増幅法としては、取得した細胞から、一般的な方法である界面活性剤を用いた細胞溶解、プロテアーゼK等を用いたタンパク質分解工程を経ることで、細胞から溶出することにより得られたゲノムDNAを用いることが好ましいが、反応溶液中に単離した細胞を1個まるごと添加してもよい。
全ゲノム増幅は、市販の増幅試薬(キット)を用いて行うことが可能である。全ゲノム増幅試薬としては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に基づく試薬PicoPLEX WGA kit(New England Biolabs社製)、GenomePlex Single Cell Whole Genome Amplification kit(シグマアルドリッチ社製)、MALBAC法(国際公開第2012/166425号)などを用いることが出来る。また、鎖置換型DNA合成反応に基づく試薬GenomiPhi(GEヘルスケア社製)、REPLI−g(QIAGEN社製)も同様に用いることが出来る。本発明においては、Single cell WGA kit(New England Biolabs社製)を用いることが好ましい。
全ゲノム増幅により得られた増幅産物(全ゲノム増幅産物)は、アガロースゲル電気泳動により増幅の有無を確認することが好ましい。さらに、全ゲノム増幅産物をPCR増幅産物精製キット、例えば、QIAquick PCR Purification Kit(QIAGEN社製)、を用いて精製することが好ましい。
また、全ゲノム増幅産物の濃度を測定することが好ましく、例えば、NanoDrop(Thermo Fisher Scientific社製)等の分光光度計、BioAnalyzer(Agilent社製)等のDNA濃度測定機能を有する分析装置を用いて測定することが好ましい。
本発明の第一態様では、全ゲノム増幅により得られた全ゲノム増幅産物を用いて、染色体特異的塩基配列を含む2箇所以上の領域であって、少なくとも2箇所の領域は異種の染色体上に存在する領域であり、かつ、少なくとも1箇所の領域はDNA多型部位を含む領域である領域を標的領域に含むマルチプレックスPCRを行う。
また、本発明の第二態様では、全ゲノム増幅により得られた全ゲノム増幅産物を用いて遺伝子型解析を行い、全ゲノム増幅をした有核赤血球候補細胞が胎児由来であるか否かを判定する。さらに、全ゲノム増幅をした有核赤血球候補細胞が胎児由来であったと判定した場合には、全ゲノム増幅により得られた全ゲノム増幅産物を用いて、染色体特異的塩基配列を含む2箇所以上の領域であって、少なくとも2箇所の領域は異種の染色体上に存在する領域である領域を標的領域に含むマルチプレックスPCRを行う。
《工程5:全ゲノム増幅により得られた全ゲノム増幅産物を用いて、染色体特異的塩基配列を含む2箇所以上の領域であって、少なくとも2箇所の領域は異種の染色体上に存在する領域であり、かつ、少なくとも1箇所の領域はDNA多型部位を含む領域である領域を標的領域に含むマルチプレックスPCRを行う工程》
PCR(Polymerase Chain Reaction、ポリメラーゼ連鎖反応)は、DNAポリメラーゼを使用して鋳型DNAを繰り返し複製させる反応である。増幅させるDNA塩基配列(標的領域)の始めと終わりの部分で鋳型DNAとハイブリダイズするオリゴDNA(プライマー)を加えてポリメラーゼにより複製を開始する。プライマーとしては、始めの部分で鋳型DNAにハイブリダイズするプライマーと終わりの部分で鋳型DNAにハイブリダイズするプライマーとを対(ペア)にして用いる。このプライマーの対をプライマーセットともいう。複製を繰り返すたびに鋳型2本鎖DNAの2本の鎖が解離し別々に複製される。
PCR(Polymerase Chain Reaction、ポリメラーゼ連鎖反応)は、DNAポリメラーゼを使用して鋳型DNAを繰り返し複製させる反応である。増幅させるDNA塩基配列(標的領域)の始めと終わりの部分で鋳型DNAとハイブリダイズするオリゴDNA(プライマー)を加えてポリメラーゼにより複製を開始する。プライマーとしては、始めの部分で鋳型DNAにハイブリダイズするプライマーと終わりの部分で鋳型DNAにハイブリダイズするプライマーとを対(ペア)にして用いる。このプライマーの対をプライマーセットともいう。複製を繰り返すたびに鋳型2本鎖DNAの2本の鎖が解離し別々に複製される。
(マルチプレックスPCR)
マルチプレックスPCRは、プライマー対を複数用いるPCRであり、同時に複数の標的領域のPCR増幅をすることができる。マルチプレックスPCRにおいては、一般的なPCRに用いられる耐熱性DNAポリメラーゼ、反応バッファー等の反応試薬を用いることが可能であるが、それぞれのプライマー対が鋳型DNAにアニーリングする温度が異なるため、反応条件の検討が必要な場合がある。そのため、マルチプレックスPCRに最適化された耐熱性DNAポリメラーゼ、反応バッファー等の反応試薬を用いることが好ましく、Multiplex PCR Assay kit(タカラバイオ(株)社製)を用いて反応することが好ましい。
マルチプレックスPCRは、プライマー対を複数用いるPCRであり、同時に複数の標的領域のPCR増幅をすることができる。マルチプレックスPCRにおいては、一般的なPCRに用いられる耐熱性DNAポリメラーゼ、反応バッファー等の反応試薬を用いることが可能であるが、それぞれのプライマー対が鋳型DNAにアニーリングする温度が異なるため、反応条件の検討が必要な場合がある。そのため、マルチプレックスPCRに最適化された耐熱性DNAポリメラーゼ、反応バッファー等の反応試薬を用いることが好ましく、Multiplex PCR Assay kit(タカラバイオ(株)社製)を用いて反応することが好ましい。
本発明の第一態様では、マルチプレックスPCRの標的領域としては、染色体特異的塩基配列を含む2箇所以上の領域であって、少なくとも2箇所の領域は異種の染色体上に存在する領域であり、かつ、少なくとも1箇所の領域はDNA多型部位を含む領域である領域を標的領域に含む。染色体特異的塩基配列を含む領域は、特定種類の染色体上には存在するが、その他の種類の染色体上には存在しない塩基配列を含む領域であり、その領域のPCR増幅によってその染色体の存在を示すことができる領域である。本発明の第一態様においては、染色体特異的塩基配列を含む領域は2箇所以上である。
染色体特異的塩基配列を含む領域のうち少なくとも2箇所の領域は異種の染色体上に存在する領域である。染色体異数性の判別をする染色体の種類の数以上であることが好ましい。例えば、13番染色体、18番染色体および21番染色体の異数性の判別を行う場合には、染色体特異的塩基配列を含む領域が3箇所以上で、少なくとも3箇所の領域は異種の染色体上に存在する領域であり、さらに加えて性染色体(X染色体およびY染色体)の異数性の判別を行う場合には、染色体特異的塩基配列を含む領域が5箇所以上で、少なくとも5箇所の領域は異種の染色体上に存在する領域である。
染色体特異的塩基配列を含む領域のうち少なくとも1箇所の領域はDNA多型部位を含む領域である。DNA多型部位の塩基配列に基いて遺伝子型解析を行うために用いられる。母親の遺伝子型と相違する遺伝子型であれば全ゲノム増幅をした胎児有核赤血球候補細胞が胎児由来であったと判定することができる。母親の遺伝子型と同一の遺伝子型であれば全ゲノム増幅をした胎児有核赤血球候補細胞が胎児由来でなかったと判定することができる。判定精度を向上させるため、染色体特異的塩基配列を含む領域が10箇所以上で、少なくとも10箇所の領域は異種の染色体上に存在し、かつ、少なくとも10箇所以上の領域がDNA多型部位を含むことが好ましく、染色体特異的塩基配列を含む領域が15箇所以上で、少なくとも15箇所の領域は異種の染色体上に存在し、かつ、少なくとも15箇所以上の領域がDNA多型部位を含むことがより好ましい。
染色体特異的塩基配列を含む領域の長さは特に限定されないが、塩基配列の解読および配列リード数の測定がより精度よく行えることから、80〜150bpが好ましい。
染色体特異的塩基配列を含む領域の長さは特に限定されないが、塩基配列の解読および配列リード数の測定がより精度よく行えることから、80〜150bpが好ましい。
上記染色体特異的塩基配列を含む領域は、Y染色体特異的塩基配列を含む領域を含むことが好ましい。Y染色体は母親由来の細胞には存在しないため、その存在の検出は、胎児由来であることを示す有力な証拠となる。なお、染色体特異的塩基配列を含む領域としてY染色体特異的領域を含み、マルチプレックスPCRの結果、Y染色体特異的領域のPCR増幅が確認された場合には、工程7において遺伝子型決定を行うことなく、全ゲノム増幅をした有核赤血球候補細胞が胎児由来であると判定してもよい。
上記DNA多型部位のDNA多型は特に限定されないが、既に多くの知見が蓄積されていて、母親由来と胎児由来との判別ができるように標的領域を選択できる点で、SNP(一塩基多型)またはSTR(ショートタンデムリピート)が好ましく、SNPがより好ましい。
《工程6:マルチプレックスPCRにより得られたDNA断片の塩基配列を解読し、標的領域ごとに塩基配列および配列リード数を確定する工程》
マルチプレックスPCRにより得られたDNA断片の塩基配列の解読および標的領域ごとの塩基配列および配列リード数の確定は、次世代シークエンサー(第2世代シークエンサー)を用いて行うことが好ましい。次世代シークエンサーとしては、MiSeqシステム(イルミナ社製)、HiSeqシステム(イルミナ社製)、Genome Analyzer IIx(イルミナ社製)、Genome Sequencer−FLX(ロシュ社製)等が挙げられる。これらの中でも、MiSeqシステムが好ましい。
マルチプレックスPCRにより得られたDNA断片の塩基配列の解読および標的領域ごとの塩基配列および配列リード数の確定は、次世代シークエンサー(第2世代シークエンサー)を用いて行うことが好ましい。次世代シークエンサーとしては、MiSeqシステム(イルミナ社製)、HiSeqシステム(イルミナ社製)、Genome Analyzer IIx(イルミナ社製)、Genome Sequencer−FLX(ロシュ社製)等が挙げられる。これらの中でも、MiSeqシステムが好ましい。
《工程7:標的領域の塩基配列に基づいて遺伝子型決定を行い、全ゲノム増幅をした有核赤血球候補細胞が胎児由来であるか否かを判定する工程》
DNA多型部位を含む領域の塩基配列を確定した後、遺伝子型決定を行い、全ゲノム増幅をした有核赤血球候補細胞が胎児由来であるか否かを判定する。遺伝子型決定の方法としては、Y染色体の検出、SNP(一塩基多型)解析、STR(ショートタンデムリピート)解析等が挙げられる。採用する方法によって、マルチプレックスPCRの標的領域を選択することが好ましい。母親由来の細胞にはY染色体が存在しないため、Y染色体の存在を検出することは、胎児由来であることを示す有力な証拠となる。また、既に多くの知見が蓄積されていて、母親由来と胎児由来との判別ができるように解析方法を設計できることから、SNP解析が好ましい。
また、母親由来の細胞、好ましくは母親由来の有核赤血球細胞、白血球細胞または体細胞、より好ましくは母親由来の有核赤血球細胞または白血球細胞について、同様の遺伝子型決定方法によって解析し、比較対象として用いることが好ましい。
DNA多型部位を含む領域の塩基配列を確定した後、遺伝子型決定を行い、全ゲノム増幅をした有核赤血球候補細胞が胎児由来であるか否かを判定する。遺伝子型決定の方法としては、Y染色体の検出、SNP(一塩基多型)解析、STR(ショートタンデムリピート)解析等が挙げられる。採用する方法によって、マルチプレックスPCRの標的領域を選択することが好ましい。母親由来の細胞にはY染色体が存在しないため、Y染色体の存在を検出することは、胎児由来であることを示す有力な証拠となる。また、既に多くの知見が蓄積されていて、母親由来と胎児由来との判別ができるように解析方法を設計できることから、SNP解析が好ましい。
また、母親由来の細胞、好ましくは母親由来の有核赤血球細胞、白血球細胞または体細胞、より好ましくは母親由来の有核赤血球細胞または白血球細胞について、同様の遺伝子型決定方法によって解析し、比較対象として用いることが好ましい。
《工程8:全ゲノム増幅をした有核赤血球候補細胞が胎児由来であったと判定した場合に、配列リード数を比較し、全ゲノム増幅をした有核赤血球候補細胞に染色体異数性が存在するか否かを判定する工程》
母親由来の細胞のあらかじめ決定された80〜150bp(塩基対)の領域をPCR増幅した場合PCR産物の量をDNAシークエンサーで求め、基準(または参照)として用いることが好ましい。胎児が正常な状態であれば、胎児由来の増幅産物の増幅量と、母親由来の増幅産物の増幅量とは、ほぼ、1:1の量比となると予想される。胎児が増幅した染色体由来のトリソミーである疾患を有する場合には、その比は、1:1.5(あるいは2:3)の比となると予想される。
母親由来の細胞としては、母親由来の白血球細胞、有核赤血球細胞または体細胞が好ましく、母親由来の有核赤血球細胞がより好ましい。
母親由来の細胞のあらかじめ決定された80〜150bp(塩基対)の領域をPCR増幅した場合PCR産物の量をDNAシークエンサーで求め、基準(または参照)として用いることが好ましい。胎児が正常な状態であれば、胎児由来の増幅産物の増幅量と、母親由来の増幅産物の増幅量とは、ほぼ、1:1の量比となると予想される。胎児が増幅した染色体由来のトリソミーである疾患を有する場合には、その比は、1:1.5(あるいは2:3)の比となると予想される。
母親由来の細胞としては、母親由来の白血球細胞、有核赤血球細胞または体細胞が好ましく、母親由来の有核赤血球細胞がより好ましい。
本発明においては、あらかじめ、複数の妊娠母体から採取した、正常な胎児を妊娠した場合母親由来の増幅産物の量に対する胎児由来の増幅産物の量の比を複数求め、その分布を求める。また、トリソミーの胎児を妊娠した母体の、母親由来の増幅産物の量に対する胎児由来の増幅産物の量の比を複数求め、その分布を求める。この2つの分布が重ならない領域にカットオフ値を設定することもできる。この、あらかじめ決定したカットオフ値と、増幅産物の比を求めた結果とを比較して、その比がカットオフ値以下であれば、胎児は正常であり、カットオフ値以上であれば、トリソミーである、と検査結果を解釈することが可能である。
〈本発明の第二態様の工程〉
本発明の第二態様の工程1’〜4’は、それぞれ、第一態様の工程1〜4と同様である。
以下、第一態様と相違する工程5’〜8’について説明する。
本発明の第二態様の工程1’〜4’は、それぞれ、第一態様の工程1〜4と同様である。
以下、第一態様と相違する工程5’〜8’について説明する。
《工程5’:全ゲノム増幅により得られた全ゲノム増幅産物を用いて遺伝子型解析を行い、全ゲノム増幅をした有核赤血球候補細胞が胎児由来であるか否かを判定する工程》
本発明の第二態様では、全ゲノム増幅により得られた全ゲノム増幅産物を用いて遺伝子型解析を行い、全ゲノム増幅をした有核赤血球候補細胞が胎児由来であるか否かを判定する。遺伝子型解析としては、Y染色体の検出、SNP(一塩基多型)解析、STR(ショートタンデムリピート)解析等が挙げられる。母親由来の細胞にはY染色体が存在しないため、Y染色体の存在を検出することは、胎児由来であることを示す有力な証拠となる。また、既に多くの知見が蓄積されていて、母親由来と胎児由来との判別ができるように解析方法を設計できることから、SNP解析が好ましい。
また、母親由来の細胞、好ましくは母親由来の有核赤血球細胞、白血球細胞または体細胞、より好ましくは母親由来の有核赤血球細胞または白血球細胞について、同様の遺伝子型解析を行い、比較対象として用いることが好ましい。
本発明の第二態様では、全ゲノム増幅により得られた全ゲノム増幅産物を用いて遺伝子型解析を行い、全ゲノム増幅をした有核赤血球候補細胞が胎児由来であるか否かを判定する。遺伝子型解析としては、Y染色体の検出、SNP(一塩基多型)解析、STR(ショートタンデムリピート)解析等が挙げられる。母親由来の細胞にはY染色体が存在しないため、Y染色体の存在を検出することは、胎児由来であることを示す有力な証拠となる。また、既に多くの知見が蓄積されていて、母親由来と胎児由来との判別ができるように解析方法を設計できることから、SNP解析が好ましい。
また、母親由来の細胞、好ましくは母親由来の有核赤血球細胞、白血球細胞または体細胞、より好ましくは母親由来の有核赤血球細胞または白血球細胞について、同様の遺伝子型解析を行い、比較対象として用いることが好ましい。
《工程6:全ゲノム増幅をした有核赤血球候補細胞が胎児由来であったと判定した場合に、全ゲノム増幅により得られた全ゲノム増幅産物を用いて、染色体特異的塩基配列を含む2箇所以上の領域であって、少なくとも2箇所の領域は異種の染色体上に存在する領域である領域を標的領域に含むマルチプレックスPCRを行う工程》
本発明の第二態様では、マルチプレックスPCRの標的領域としては、染色体特異的塩基配列を含む2箇所以上の領域であって、少なくとも2箇所の領域は異種の染色体上に存在する領域である領域を標的領域に含む。この標的領域は、本発明の第一態様における染色体特異的塩基配列を含む2箇所以上の領域であって、少なくとも2箇所の領域は異種の染色体上に存在する領域と同義である。
本発明の第二態様では、マルチプレックスPCRの標的領域としては、染色体特異的塩基配列を含む2箇所以上の領域であって、少なくとも2箇所の領域は異種の染色体上に存在する領域である領域を標的領域に含む。この標的領域は、本発明の第一態様における染色体特異的塩基配列を含む2箇所以上の領域であって、少なくとも2箇所の領域は異種の染色体上に存在する領域と同義である。
《工程7’マルチプレックスPCRにより得られたDNA断片の塩基配列を解読し、標的領域ごとに配列リード数を測定する工程》
本発明の第一態様の工程6「マルチプレックスPCRにより得られたDNA断片の塩基配列を解読し、標的領域ごとに塩基配列および配列リード数を確定する工程」と同様である。
本発明の第一態様の工程6「マルチプレックスPCRにより得られたDNA断片の塩基配列を解読し、標的領域ごとに塩基配列および配列リード数を確定する工程」と同様である。
《工程8’:配列リード数を比較し、全ゲノム増幅をした有核赤血球候補細胞に染色体異数性が存在するか否かを判定する工程》
本発明の第一態様の工程8「全ゲノム増幅をした有核赤血球候補細胞が胎児由来であったと判定した場合に、配列リード数を比較し、全ゲノム増幅をした有核赤血球候補細胞に染色体異数性が存在するか否かを判定する工程」と同様である。
本発明の第一態様の工程8「全ゲノム増幅をした有核赤血球候補細胞が胎児由来であったと判定した場合に、配列リード数を比較し、全ゲノム増幅をした有核赤血球候補細胞に染色体異数性が存在するか否かを判定する工程」と同様である。
[実施例1]
(母体血サンプルの準備)
7mL採血管に抗凝固剤として、EDTAのナトリウム塩を10.5mg添加した後、妊婦のボランティアから、インフォームドコンセントを行った後にボランティア血として末梢血7mLを採血管内に得た。その後、生理食塩水を用いて血液を希釈し、母体血サンプルとした。
(母体血サンプルの準備)
7mL採血管に抗凝固剤として、EDTAのナトリウム塩を10.5mg添加した後、妊婦のボランティアから、インフォームドコンセントを行った後にボランティア血として末梢血7mLを採血管内に得た。その後、生理食塩水を用いて血液を希釈し、母体血サンプルとした。
(母体血サンプルの分画および有核赤血球画分の回収)
パーコール(Percoll)液(登録商標、シグマアルドリッチ社製)を使用して、密度1.070g/mLの液および密度1.095g/mLの液を調製した。
遠沈管の底部に密度1.095g/mLの液2mLを添加した。続けて、密度1.095mg/Lの液の上に、界面が乱れないようにゆっくり、密度1.070g/mLの液2mLを重層した。その後、母体血サンプル11mLを、ゆっくり、密度1.070g/mLの液の上から添加した。その後、22℃、2000rpm(400×g)で遠心分離を20分間行った。その後、遠沈管を取り出し、密度1.070g/mLの液と密度1.090g/mLの液との間に沈積した画分(有核赤血球画分)を、ピペットを用いて回収した。
パーコール(Percoll)液(登録商標、シグマアルドリッチ社製)を使用して、密度1.070g/mLの液および密度1.095g/mLの液を調製した。
遠沈管の底部に密度1.095g/mLの液2mLを添加した。続けて、密度1.095mg/Lの液の上に、界面が乱れないようにゆっくり、密度1.070g/mLの液2mLを重層した。その後、母体血サンプル11mLを、ゆっくり、密度1.070g/mLの液の上から添加した。その後、22℃、2000rpm(400×g)で遠心分離を20分間行った。その後、遠沈管を取り出し、密度1.070g/mLの液と密度1.090g/mLの液との間に沈積した画分(有核赤血球画分)を、ピペットを用いて回収した。
(有核赤血球細胞の観察、胎児有核赤血球候補細胞の識別および順位付け)
・ガラススライド塗布
回収した有核赤血球画分を、片手でスライドガラス基板(以下「スライドガラス基板1」という。)を保持し、その一端に有核赤血球画分の1滴を置いた。もう一方の手で別のスライドガラス基板(以下「スライドガラス基板2」という。)を持ち、一端をスライドガラス基板1に30度の角度で接触させ、スライドガラス基板2の接触下面を、有核赤血球画分に触れさせると、2枚のスライドガラス基板に囲まれた空間に毛管現象で広がった。次に、上記角度を保ったまま、スライドガラス基板2をスライドガラス基板1の血液を置いた領域と反対の領域の方向に滑らせて、スライドガラス基板1上に均一に塗布した。その後、1時間以上送風し、十分に乾燥させた。
・ガラススライド塗布
回収した有核赤血球画分を、片手でスライドガラス基板(以下「スライドガラス基板1」という。)を保持し、その一端に有核赤血球画分の1滴を置いた。もう一方の手で別のスライドガラス基板(以下「スライドガラス基板2」という。)を持ち、一端をスライドガラス基板1に30度の角度で接触させ、スライドガラス基板2の接触下面を、有核赤血球画分に触れさせると、2枚のスライドガラス基板に囲まれた空間に毛管現象で広がった。次に、上記角度を保ったまま、スライドガラス基板2をスライドガラス基板1の血液を置いた領域と反対の領域の方向に滑らせて、スライドガラス基板1上に均一に塗布した。その後、1時間以上送風し、十分に乾燥させた。
・染色
有核赤血球画分を塗布したスライドガラス基板1を、メイ・ギュルンワルド染色液に3分間浸漬し、続いて、リン酸緩衝液(pH6.4)に浸漬して洗浄後、リン酸緩衝液(pH6.4)で希釈して濃度3%としたギムザ染色液に10分浸漬した。その後、純水で洗浄し、25℃で乾燥させて、染色済みのガラススライド基板を複数枚作製した。
有核赤血球画分を塗布したスライドガラス基板1を、メイ・ギュルンワルド染色液に3分間浸漬し、続いて、リン酸緩衝液(pH6.4)に浸漬して洗浄後、リン酸緩衝液(pH6.4)で希釈して濃度3%としたギムザ染色液に10分浸漬した。その後、純水で洗浄し、25℃で乾燥させて、染色済みのガラススライド基板を複数枚作製した。
・形態観察
スライドガラス基板1上に塗布した有核赤血球画分から、胎児有核赤血球候補細胞を選別するため、電動XYステージと、対物レンズおよびCCDカメラを備えた光学顕微鏡の測定系と、XYステージ制御部およびZ方向制御部を備えた制御部と、画像入力部、画像処理部およびXY位置記録部を備えた制御ユニット部とを準備した。
有核赤血球画分を塗布したスライドガラス基板1をXYステージに乗せて、スライドガラス上に焦点を合わせてスキャンし、光学顕微鏡より得られた画像を取り込み、画像解析により有核赤血球細胞を探索した。
画像解析は、以下の2つの条件を満たす細胞を検出し、XY位置を記録した。
0.25<(N/C)<1.0 ・・・・・・・・・・・(I)
0.65<(N/(L×L))<0.785 ・・・・・(II)
ここで、Cは画像解析を行う細胞の細胞質の面積であり、Nは画像解析をおこなう細胞の核の面積であり、Lは画像解析する細胞の核の長径の長さ、すなわち、複雑な形をした細胞核に外接する楕円形の長径の長さである。
スライドガラス基板上に存在する有核細胞から、上記式(I)および(II)を満たす有核赤血球候補細胞(胎児有核赤血球候補細胞)を識別した。さらに、上記式(I)および(II)を満たす細胞のうち、核の形状が真の円形または楕円形に近いものから優先順位をつけた。
スライドガラス基板1上に塗布した有核赤血球画分から、胎児有核赤血球候補細胞を選別するため、電動XYステージと、対物レンズおよびCCDカメラを備えた光学顕微鏡の測定系と、XYステージ制御部およびZ方向制御部を備えた制御部と、画像入力部、画像処理部およびXY位置記録部を備えた制御ユニット部とを準備した。
有核赤血球画分を塗布したスライドガラス基板1をXYステージに乗せて、スライドガラス上に焦点を合わせてスキャンし、光学顕微鏡より得られた画像を取り込み、画像解析により有核赤血球細胞を探索した。
画像解析は、以下の2つの条件を満たす細胞を検出し、XY位置を記録した。
0.25<(N/C)<1.0 ・・・・・・・・・・・(I)
0.65<(N/(L×L))<0.785 ・・・・・(II)
ここで、Cは画像解析を行う細胞の細胞質の面積であり、Nは画像解析をおこなう細胞の核の面積であり、Lは画像解析する細胞の核の長径の長さ、すなわち、複雑な形をした細胞核に外接する楕円形の長径の長さである。
スライドガラス基板上に存在する有核細胞から、上記式(I)および(II)を満たす有核赤血球候補細胞(胎児有核赤血球候補細胞)を識別した。さらに、上記式(I)および(II)を満たす細胞のうち、核の形状が真の円形または楕円形に近いものから優先順位をつけた。
(胎児由来有核赤血球候補細胞の単離)
順位付けした有核赤血球候補細胞のうち順位が上位のものから5個選択し、これらをマイクロマニピュレータ(NARISHIGE社製)を使用して、スライドガラス基板1上から単離した。
順位付けした有核赤血球候補細胞のうち順位が上位のものから5個選択し、これらをマイクロマニピュレータ(NARISHIGE社製)を使用して、スライドガラス基板1上から単離した。
(全ゲノム増幅)
単離した5個の有核赤血球候補細胞に対して、PicoPLEX WGA kit(New England Biolabs社製)を用いて全ゲノム増幅を行い、説明書記載に則り細胞中の微量なゲノムDNAを約100万倍に増幅した。
得られた増幅産物をQIAquick PCR Purification Kit(QIAGEN社製)を用いて精製した後、Quantus Fluorometer dsDNA System(Promega社製)を用いて増幅産物の濃度を測定した。
単離した5個の有核赤血球候補細胞に対して、PicoPLEX WGA kit(New England Biolabs社製)を用いて全ゲノム増幅を行い、説明書記載に則り細胞中の微量なゲノムDNAを約100万倍に増幅した。
得られた増幅産物をQIAquick PCR Purification Kit(QIAGEN社製)を用いて精製した後、Quantus Fluorometer dsDNA System(Promega社製)を用いて増幅産物の濃度を測定した。
(マルチプレックスPCR)
胎児細胞の分析、染色体の数的異常を分析する目的で、複数箇所の染色体位置からマルチプレックスPCRに用いるプライマーを作製した(配列番号1〜46;表1および表2)。
各検出領域のPCR増幅塩基長としては、100〜150塩基対となるようにプライマーを作製、また、各検出領域内は遺伝的多型を含有するようにプライマーの位置を設計した。46種類のプライマーは、各プライマーの終濃度が25nmol/Lとなるように混合した。
胎児細胞の分析、染色体の数的異常を分析する目的で、複数箇所の染色体位置からマルチプレックスPCRに用いるプライマーを作製した(配列番号1〜46;表1および表2)。
各検出領域のPCR増幅塩基長としては、100〜150塩基対となるようにプライマーを作製、また、各検出領域内は遺伝的多型を含有するようにプライマーの位置を設計した。46種類のプライマーは、各プライマーの終濃度が25nmol/Lとなるように混合した。
マルチプレックスPCRは、Multiplex PCR Assay kit(タカラバイオ(株)社製)を用いて反応を行った。反応条件としては、鋳型として胎児有核赤血球候補細胞の各細胞から得られた全ゲノム増幅産物を10ng、46種類混合プライマーを8μL、0.125μL Multiplex PCR Mix1、12.5μL Multiplex PCR Mix2および水で25μLの最終液量で反応を行った。
PCR条件としては、94℃ 60秒で変性した後、94℃ 30秒、60℃ 90秒、72℃ 30秒を30サイクルで反応を行った。
得られたPCR産物は、QIAquick PCR Purification Kit(QIAGEN社製)を用いて精製した。
PCR条件としては、94℃ 60秒で変性した後、94℃ 30秒、60℃ 90秒、72℃ 30秒を30サイクルで反応を行った。
得られたPCR産物は、QIAquick PCR Purification Kit(QIAGEN社製)を用いて精製した。
次に、Miseqを用いたシーケンス反応を行う為に、サンプル識別用のインデックス配列、フローセル結合用P5、P7配列をマルチプレックスPCR産物の両末端へ付加を行った。
プライマーとしては、表3に示すD501−F(配列番号47)、D701−R(配列番号48)、D702−R(配列番号49)、D703−R(配列番号50)、D704−R(配列番号51)、D705−R(配列番号52)およびD706−R(配列番号53)を各1.25μmol/L濃度で用いて、Multiplex PCR Assay kitを用いてPCRを行った。
PCR条件としては、94℃ 3分で変性した後、94℃ 45秒、50℃ 60秒、72℃ 30秒を5サイクルで反応した後、94℃ 45秒、55℃ 60秒、72℃ 30秒を11サイクルで反応を行った。
得られたPCR産物は、AMPure XP Kit(BECKMAN COULTER社製)を用いて精製し、BioAnalyzerを用いて濃度を測定した。
さらに正確な増幅産物の定量として、日本ジェネティクス(株)社製のKAPA Library Quantification Kitsを用いて定量を行った。
プライマーとしては、表3に示すD501−F(配列番号47)、D701−R(配列番号48)、D702−R(配列番号49)、D703−R(配列番号50)、D704−R(配列番号51)、D705−R(配列番号52)およびD706−R(配列番号53)を各1.25μmol/L濃度で用いて、Multiplex PCR Assay kitを用いてPCRを行った。
PCR条件としては、94℃ 3分で変性した後、94℃ 45秒、50℃ 60秒、72℃ 30秒を5サイクルで反応した後、94℃ 45秒、55℃ 60秒、72℃ 30秒を11サイクルで反応を行った。
得られたPCR産物は、AMPure XP Kit(BECKMAN COULTER社製)を用いて精製し、BioAnalyzerを用いて濃度を測定した。
さらに正確な増幅産物の定量として、日本ジェネティクス(株)社製のKAPA Library Quantification Kitsを用いて定量を行った。
(胎児由来であるか否かの判定)
5個の細胞から増幅した全ゲノム増幅産物を用いて、ILLUMINA社製ゲノムアナライザーMiseqを用いて、13番、18番、21番染色体の複数の遺伝子領域のSNPを比較した。その結果、5個の細胞すべて、同じSNP情報を有しており、別途、核の形状より白血球と予想される細胞を、マイクロマニュピュレータを用いて、血液を塗布したスライド上から回収し、同様にしてDNAを増幅し、SNPを調べたところ、SNPが一致し、5個の細胞すべて、母親由来であることが判明した。
5個の細胞から増幅した全ゲノム増幅産物を用いて、ILLUMINA社製ゲノムアナライザーMiseqを用いて、13番、18番、21番染色体の複数の遺伝子領域のSNPを比較した。その結果、5個の細胞すべて、同じSNP情報を有しており、別途、核の形状より白血球と予想される細胞を、マイクロマニュピュレータを用いて、血液を塗布したスライド上から回収し、同様にしてDNAを増幅し、SNPを調べたところ、SNPが一致し、5個の細胞すべて、母親由来であることが判明した。
ここで、細胞の形態的情報により胎児有核赤血球候補細胞を識別する工程で、選択しなかった有核赤血球候補細胞で、優先順位の高い細胞から5個を再度選択し、上記と同様に、マニュピュレータで回収し、全ゲノム増幅、マルチプレックスPCR増幅を行い、21番染色体の複数の遺伝子領域のSNPを比較した。その結果、1つの細胞のDNAが、白血球と予想されるDNAからのSNPと異なる結果となり、この細胞が胎児由来であることが確定し、残りの4個の細胞が母親由来であることが確認された。
(マルチプレックスPCR増幅産物の配列解析)
1個の胎児由来の細胞のDNAを含む5個の細胞由来のマルチプレックスPCR産物を、Miseq Reagent Kit v2 300 Cycle(イルミナ社製)を用いてシーケンスを行い、得られたFastQファイルをBWAを用いてヒトゲノム配列(hg19)へマッピングを行い、SAMtoolsにより遺伝子多型情報を抽出、BEDtoolsにより各検出領域のシーケンスリード数を算出することで解析を行った。この5つの細胞由来のリード数を比較したところ、すべて同じ増幅産物の量が検出されたことから、胎児は正常であることが推定された。
1個の胎児由来の細胞のDNAを含む5個の細胞由来のマルチプレックスPCR産物を、Miseq Reagent Kit v2 300 Cycle(イルミナ社製)を用いてシーケンスを行い、得られたFastQファイルをBWAを用いてヒトゲノム配列(hg19)へマッピングを行い、SAMtoolsにより遺伝子多型情報を抽出、BEDtoolsにより各検出領域のシーケンスリード数を算出することで解析を行った。この5つの細胞由来のリード数を比較したところ、すべて同じ増幅産物の量が検出されたことから、胎児は正常であることが推定された。
[実施例2]
実施例1で採血した妊婦とは別の妊婦で、超音波診断で男児を妊娠しているとの情報のある妊婦から、末梢血を採血し、実施例1と同様にして、胎児有核赤血球の選別工程において5個の細胞を回収し、全ゲノム増幅工程まで同様におこなった。以下の遺伝情報の確定工程を行った。
実施例1で採血した妊婦とは別の妊婦で、超音波診断で男児を妊娠しているとの情報のある妊婦から、末梢血を採血し、実施例1と同様にして、胎児有核赤血球の選別工程において5個の細胞を回収し、全ゲノム増幅工程まで同様におこなった。以下の遺伝情報の確定工程を行った。
(胎児由来であるか否かの判別・染色体異数性の判別)
Y染色体のsex−determining factor(SRY)遺伝子領域で作製したPCRプライマーを含む実施例1で使用したプライマー(配列番号1〜46;表1および表2)を用いてタカラバイオ(株)社製Multiplex PCR Assay Kitを用いてPCRを行い、Y染色体のPCR増幅物の有無を一般的なアガロースゲル電気泳動法で確認したところ、1個の細胞でY染色体由来の情報が検出され、残りの4個の細胞すべてにおいてY染色体由来の情報が検出されなかった。この結果より、Y染色体由来の情報が検出された細胞が胎児由来であり、しかも男児であることが確認出来た。他の4個の細胞はY染色体由来の情報が観察されず、母親由来の有核赤血球であると認識された。
Y染色体のsex−determining factor(SRY)遺伝子領域で作製したPCRプライマーを含む実施例1で使用したプライマー(配列番号1〜46;表1および表2)を用いてタカラバイオ(株)社製Multiplex PCR Assay Kitを用いてPCRを行い、Y染色体のPCR増幅物の有無を一般的なアガロースゲル電気泳動法で確認したところ、1個の細胞でY染色体由来の情報が検出され、残りの4個の細胞すべてにおいてY染色体由来の情報が検出されなかった。この結果より、Y染色体由来の情報が検出された細胞が胎児由来であり、しかも男児であることが確認出来た。他の4個の細胞はY染色体由来の情報が観察されず、母親由来の有核赤血球であると認識された。
この後、実施例1と同様にして、5つの細胞のリード数を比較し、すべて同じ増幅産物の量が検出されたことから、胎児は正常であることが推定された。
[実施例3]
実施例1あるいは実施例2で採血した妊婦とは、さらに別の妊婦から末梢血を採取し、実施例1と同様にして、核の面積が、真の円形、あるいは楕円形に近いものから優先順位をつけ、次の工程の有核赤血球の候補細胞を選択した。この後、560nmの波長領域で有核赤血球の候補細胞の吸収係数を測定した。また、有核赤血球候補細胞を中心とし、有核赤血球候補細胞の直径で10細胞分の半径を有する円の内部に存在する白血球を4個選択し、560nmの波長領域でそれぞれの白血球の吸収係数を測定し、4個の平均値を求め、有核赤血球候補細胞の吸収係数と比較した。白血球の吸収係数の平均値に比べて優位に高い吸収係数を持つ有核赤血球候補細胞のみを選択した。この細胞を、細胞単離工程で単離し、その後は、実施例1と同様にして、胎児細胞の存在を確認し、遺伝子のリード数の確認を行った。
実施例1あるいは実施例2で採血した妊婦とは、さらに別の妊婦から末梢血を採取し、実施例1と同様にして、核の面積が、真の円形、あるいは楕円形に近いものから優先順位をつけ、次の工程の有核赤血球の候補細胞を選択した。この後、560nmの波長領域で有核赤血球の候補細胞の吸収係数を測定した。また、有核赤血球候補細胞を中心とし、有核赤血球候補細胞の直径で10細胞分の半径を有する円の内部に存在する白血球を4個選択し、560nmの波長領域でそれぞれの白血球の吸収係数を測定し、4個の平均値を求め、有核赤血球候補細胞の吸収係数と比較した。白血球の吸収係数の平均値に比べて優位に高い吸収係数を持つ有核赤血球候補細胞のみを選択した。この細胞を、細胞単離工程で単離し、その後は、実施例1と同様にして、胎児細胞の存在を確認し、遺伝子のリード数の確認を行った。
本発明によれば、母体血中から胎児由来の有核赤血球細胞を確実に取得し、胎児の染色体異数性を非侵襲的に判別することができる方法を提供することができる。
また、本発明によれば、母体血を用いた胎児の染色体異数性の判別を、非侵襲的に、かつ効率よく、行うことができる。
Claims (23)
- 〔工程1〕母体血サンプルから有核赤血球細胞を分画し、有核赤血球細胞を含む画分を回収する工程、
〔工程2〕前記有核赤血球細胞を含む画分に含まれる細胞を観察し、その形態的情報を取得し、胎児有核赤血球候補細胞を識別し、その順位付けをする工程、
〔工程3〕順位付けをした胎児有核赤血球候補細胞のうち上位のものから順に複数個選択し、それぞれ単離する工程、
〔工程4〕単離した胎児有核赤血球候補細胞の全ゲノム増幅をする工程、
〔工程5〕前記全ゲノム増幅により得られた全ゲノム増幅産物を用いて、染色体特異的塩基配列を含む2箇所以上の領域であって、少なくとも2箇所の領域は異種の染色体上に存在する領域であり、かつ、少なくとも1箇所の領域はDNA多型部位を含む領域である領域を標的領域に含むマルチプレックスPCRを行う工程、
〔工程6〕前記マルチプレックスPCRにより得られたDNA断片の塩基配列を解読し、前記標的領域ごとに塩基配列および配列リード数を確定する工程、
〔工程7〕前記標的領域の塩基配列に基づいて遺伝子型決定を行い、前記全ゲノム増幅をした有核赤血球候補細胞が胎児由来であるか否かを判定する工程、ならびに
〔工程8〕前記全ゲノム増幅をした有核赤血球候補細胞が胎児由来であったと判定した場合に、前記配列リード数を比較し、前記全ゲノム増幅をした有核赤血球候補細胞に染色体異数性が存在するか否かを判定する工程
を備える胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。 - 〔工程1´〕母体血サンプルから有核赤血球細胞を分画し、有核赤血球細胞を含む画分を回収する工程、
〔工程2´〕前記有核赤血球細胞を含む画分に含まれる細胞を観察し、その形態的情報を取得し、胎児有核赤血球候補細胞を識別し、その順位付けをする工程、
〔工程3´〕順位付けをした胎児有核赤血球候補細胞のうち上位のものから順に複数個選択し、それぞれ単離する工程、
〔工程4´〕単離した胎児有核赤血球候補細胞の全ゲノム増幅をする工程、
〔工程5´〕前記全ゲノム増幅により得られた全ゲノム増幅産物を用いて遺伝子型解析を行い、前記全ゲノム増幅をした有核赤血球候補細胞が胎児由来であるか否かを判定する工程、
〔工程6´〕前記全ゲノム増幅をした有核赤血球候補細胞が胎児由来であったと判定した場合に、前記全ゲノム増幅により得られた全ゲノム増幅産物を用いて、染色体特異的塩基配列を含む2箇所以上の領域であって、少なくとも2箇所の領域は異種の染色体上に存在する領域である領域を標的領域に含むマルチプレックスPCRを行う工程、
〔工程7´〕前記マルチプレックスPCRにより得られたDNA断片の塩基配列を解読し、前記標的領域ごとに配列リード数を測定する工程、ならびに
〔工程8´〕前記配列リード数を比較し、前記全ゲノム増幅をした有核赤血球候補細胞に染色体異数性が存在するか否かを判定する工程
を備える、胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。 - 前記染色体特異的塩基配列がY染色体特異的塩基配列を含む、請求項1に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
- 前記DNA多型部位がSNP部位を含む、請求項1または3に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
- 前記SNP部位が少なくとも15箇所のSNP部位である、請求項4に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
- 前記SNP解析が、母親由来の有核赤血球細胞、白血球細胞または体細胞のSNP解析を含む、請求項4または5に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
- 前記遺伝子解析がY染色体の検出を含む、請求項2に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
- 前記遺伝子型解析がSNP解析を含む、請求項2または7に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
- 前記SNP解析が少なくとも15箇所のSNP部位を対象とする、請求項8に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
- 前記SNP解析が、母親由来の有核赤血球細胞、白血球細胞または体細胞のSNP解析を含む、請求項8または9に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
- 前記母体血サンプルから有核赤血球細胞を分画し、回収する工程において、密度勾配遠心分離法により前記有核赤血球細胞を含む画分を分画する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
- 前記有核赤血球細胞を含む画分の比重が1.065〜1.095g/mLの範囲内である、請求項11に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
- 前記有核赤血球細胞を観察し、その形態的情報を取得し、胎児有核赤血球候補細胞を識別し、その順位付けをする工程において、透明基板に塗布した有核赤血球細胞を観察する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
- 前記有核赤血球細胞を観察し、その形態的情報を取得し、胎児有核赤血球候補細胞を識別し、その順位付けをする工程において、前記形態的情報が細胞質の面積に対する核領域の面積の割合および核の円形度合いを含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
- 前記形態的情報が細胞質の面積に対する核領域の面積の割合、細胞質の面積および核の長径を含み、下記式(I)および(II)を満たす、請求項1〜14のいずれか1項に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
0.25<N/C<1.0 (I)
0.65<N/L2<0.785 (II)
ただし、式(I)および式(II)中、C、NおよびLは以下のとおりである。
C:細胞質の面積
N:核領域の面積
L:核の長径 - 前記順位付けをした胎児有核赤血球候補細胞のうち上位のものから順に複数個選択し、それぞれ単離する工程において、複数個選択した胎児有核赤血球細胞を、マイクロマニピュレータを用いて単離する、請求項1〜15のいずれか1項に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
- 前記全ゲノム増幅をした有核赤血球候補細胞が胎児由来であるか否かを判定する工程において、前記全ゲノム増幅をした有核赤血球候補細胞の遺伝子型と、母体由来細胞の遺伝子型とを比較する、請求項1〜16のいずれか1項に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
- 前記母体由来細胞が白血球である、請求項17に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
- 前記全ゲノム増幅をした有核赤血球候補細胞に染色体異数性が存在するか否かを判定する工程において、母親由来の細胞のあらかじめ決定された80〜150bpの領域をPCR増幅したPCR産物の量をDNAシークエンサーで求め、基準として用いる、請求項1〜18のいずれか1項に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
- 前記全ゲノム増幅をした有核赤血球候補細胞に染色体異数性が存在するか否かを判定する工程において、前記配列リード数をあらかじめ決定したカットオフ値と比較する、請求項1〜18のいずれか1項に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
- 前記全ゲノム増幅をした有核赤血球候補細胞に染色体異数性が存在するか否かを判定する工程において、前記有核赤血球候補細胞の特定染色体に関連付けられるマルチプレックスPCR増幅産物の配列リード数と、母体由来細胞について測定した、染色体特異的なPCR増幅産物の配列リード数とを比較する、請求項1〜18のいずれか1項に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
- 前記染色体異数性が、第13番染色体、第18番染色体、第21番染色体、X染色体および/またはY染色体のトリソミーまたはモノソミーである、請求項1〜21のいずれか1項に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
- 前記全ゲノム増幅をした有核赤血球候補細胞が胎児由来であるか否かを判定する工程において、前記全ゲノム増幅をした有核赤血球候補細胞が胎児由来でなかったと判定した場合には、母体血サンプルから有核赤血球細胞を分画し、有核赤血球細胞を含む画分を回収する工程から、順位付けをした胎児有核赤血球候補細胞のうち上位のものから順に複数個選択し、それぞれ単離する工程までの、いずれかの工程から、以降の工程を繰り返す、請求項1〜22のいずれか1項に記載の胎児の染色体異数性の非侵襲的判別方法。
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