JP2016070698A - 有核赤血球の選別方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】母体血から確実に胎児由来の有核赤血球を分離することができる、有核赤血球の選別方法を提供する。
【解決手段】ヘモグロビン吸収波長領域に含まれる波長を用いて、透明基板上に作製した血液細胞標本の血液細胞の画像を取得する画像取得工程(ステップS32)と、画像により、有核赤血球の候補細胞を選択する候補細胞選択工程(ステップS34)と、ヘモグロビン吸収波長領域から選択される複数の、波長の異なる単色光を主波長とする光における吸光度の比により、候補細胞を母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球とに選別する選別工程(ステップS36)と、を有する。
【選択図】図2
【解決手段】ヘモグロビン吸収波長領域に含まれる波長を用いて、透明基板上に作製した血液細胞標本の血液細胞の画像を取得する画像取得工程(ステップS32)と、画像により、有核赤血球の候補細胞を選択する候補細胞選択工程(ステップS34)と、ヘモグロビン吸収波長領域から選択される複数の、波長の異なる単色光を主波長とする光における吸光度の比により、候補細胞を母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球とに選別する選別工程(ステップS36)と、を有する。
【選択図】図2
Description
本発明は、有核赤血球の選別方法に係り、特に、光学的な情報を利用して、妊娠母体の血液中の胎児由来の有核赤血球を特定する有核赤血球の選別方法に関する。
出生前診断として、従来より、羊水穿刺により羊水中の胎児細胞の染色体を調べる羊水検査が行われている。しかしながら、この方法では、流産の可能性のあることが問題として指摘されている。
一方、妊娠母体(以下、単に「母体」ともいう)の血液中に胎児細胞が移行し、この胎児細胞が母体中を血液とともに循環していることが最近わかってきた。そこで、母体血を用いて、母体血中の胎児細胞の染色体のDNA(デオキシリボ核酸:deoxyribonucleic acid)を再現性よく確実に分析することができれば、流産の可能性のない安全な出生前診断を実現することができることとなる。
しかしながら、母体の血液中に存在する胎児細胞(有核赤血球)は、母体血数mL(1mL=10−6m3)中に1個程度しか存在しない。このように非常に少ない胎児細胞(有核赤血球)を確実に取得することが、母体血を利用した出生前診断を行う上で非常に大きな課題である。また、妊娠した母体血の中には、母体由来の有核赤血球も存在することが知られており、母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球を分離することも、安全な出生前診断を実現する上で解決すべき課題である。
このような課題に対して下記の特許文献1には、有核赤血球を濃縮する方法、例えば、密度勾配遠心分離を用いて、血漿成分、および母親の赤血球成分を取り除く技術が記載されている。また、白血球の表面の蛋白質に特異的に免疫反応する抗体を用いて、磁気により母親の白血球を分離する技術(MACS法:Magnetic activated cell sorting)、胎児ヘモグロビンのγ鎖に特異的に免疫反応する抗体と蛍光色素を用いて胎児の有核赤血球を分離する技術(FACS法:Fluorescence activated cell sorting)などを用いて、母体血中の胎児細胞である有核赤血球を取得することが記載されている。
これらの方法は、血液中の胎児由来の有核赤血球の濃度を増加させ、目的の細胞を取得する確率を高めるのに有用な技術である。しかしながら、胎児由来の有核赤血球の周りには、依然として母体由来の血液細胞が存在するため、確実に短時間で胎児由来の有核赤血球を取得できていなかった。
また、光学的な情報を用いて、細胞の種類を識別し、求める細胞を取得する技術が開示されている。例えば、特許文献2には、細胞質を染色して透過可視光の吸収画像を生成し、励起光を照射して核の蛍光画像を形成した後、細胞質と核のコントラスト画像を用いて有核赤血球を判別することが記載されている。特許文献3には、ヘモグロビンの最大吸収波長付近の415nmの波長の光を利用して、血球種類を識別する装置が記載されている。特許文献4には、生体組織の光学的性質を利用した生体情報分析を行うことが記載されており、酸化ヘモグロビン、および還元ヘモグロビンの光の吸収の差を利用して、組織の酸素投与状態を検出する装置が記載されている。特許文献5には、血液をスライドガラスに塗布し、胎児細胞を形態により識別し、個々に胎児細胞のみを採取することを目的とする有核細胞探索自動化装置が記載されている。
特許文献2〜4に記載された発明は、ヘモグロビンの存在により、血球の種類を識別する技術であるが、母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球とを分離することはできていなかった。また、特許文献5に記載された発明は、画像情報で有核赤血球を分離する技術に関するものであるが、ヘモグロビンの情報を用いるものではなかった。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、ヘモグロビン特有の情報を画像化することで、母体血から確実に胎児由来の有核赤血球を分離することができる、有核赤血球の選別方法を提供することを目的とする。
本発明は前記目的を達成するために、ヘモグロビン吸収波長領域に含まれる波長を用いて、透明基板上に作製した血液細胞標本の血液細胞の画像を取得する画像取得工程と、画像により、有核赤血球の候補細胞を選択する候補細胞選択工程と、ヘモグロビン吸収波長領域から選択される複数の、波長の異なる単色光を主波長とする光における吸光度の比により、候補細胞を母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球とに選別する選別工程と、を有する有核赤血球の選別方法を提供する。
本発明の有核赤血球の選別方法によれば、ヘモグロビン吸収波長領域に含まれる波長を用いて、画像を取得することで、細胞質にヘモグロビンの吸収の無い白血球を除外することができる。また、細胞内に核を有する有核赤血球は、核の部分に吸収が無いので、細胞質内に吸収の無い領域を有するため、有核赤血球として識別することができる。したがって、有核赤血球の候補細胞を画像から容易に選択することができ、選別工程において、核の無い赤血球の選別を行う確率を減らすことができ、胎児由来の有核赤血球との選別を効率良く行うことができる。
本発明の別の態様においては、画像取得工程で用いられる波長は、450nmを超え500nm未満、525nmを超え550nm未満、575nmを超え585nm未満の波長領域から選択される波長であることが好ましい。
この態様によれば、上記の波長領域においては、胎児由来の有核赤血球の吸収係数が母体由来の有核赤血球の吸収係数より高いため、上記の波長領域から選択される波長を用いて画像を形成し、吸光度の高い細胞を候補細胞として選択することで、胎児由来の有核赤血球を選択することができる。
本発明は前記目的を達成するために、ヘモグロビン吸収波長領域から選択される複数の、波長の異なる単色光を主波長とする光を用いて、透明基板上に作製した血液細胞標本の血液細胞の単色光を主波長とする光におけるそれぞれの画像を取得する画像取得工程と、画像により有核赤血球の候補細胞を選択する候補細胞選択工程と、それぞれの画像の画像情報に基づいて、候補細胞を母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球とに選別する選別工程と、を有する有核赤血球の選別方法を提供する。
本発明の有核赤血球の選別方法によれば、ヘモグロビンの吸収波長領域に含まれる波長を用いて画像を取得することで、細胞質にヘモグロビンの吸収の無い白血球を除外することができる。また、細胞内に核を有する有核赤血球は、核の部分に吸収が無いので、細胞質内に吸収の無い領域を有するため、有核赤血球として識別することができる。また複数の、波長の異なる単色光を主波長とする光を用いて画像を取得することで、ヘモグロビンの吸収係数は波長により異なるので、異なる波長の画像を比較することで、候補細胞選択工程において、より確実に有核赤血球の候補細胞を選択することができる。さらに、画像取得工程において、複数の、波長の異なる単色光を主波長とする光を用いて画像を形成しているので、選別工程において吸光度を測定することなく、画像取得工程において取得した画像に基づいて、有核赤血球の候補細胞の選別を行うことができる。
本発明の別の態様においては、画像情報は、複数の、波長の異なる単色光を主波長とする光における吸光度の比、または、ヘモグロビンの濃度の比であることが好ましい。
この態様は、画像情報の具体例を示したものであり、画像取得工程において、それぞれの波長で取得した画像の吸光度の比、または、ヘモグロビンの濃度を用いて選別することができる。
本発明の別の態様においては、複数の、波長の異なる単色光を主波長とする光は、450nmを超え500nm未満、525nmを超え550nm未満、575nmを超え585nm未満の波長領域から選択される第1の波長領域と、550nmを超え575nm未満の第2の波長領域と、から選ばれる波長を少なくとも含むことが好ましい。
上記の波長領域において、第1の波長領域は、胎児由来の有核赤血球の吸収係数が高い領域であり、第2の波長領域は母体由来の有核赤血球の吸収係数が高い領域である。この態様によれば、第1の波長領域、第2の波長領域のそれぞれから選ばれる波長を用いて吸光度を測定し、吸光度の比を求めることで、母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球とで、吸光度の比の違いを明確にすることができる。したがって、確実に母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球とを識別することができる。
本発明の別の態様においては、選別工程により選別された有核赤血球に含まれる対立遺伝子と、血液細胞標本の白血球の対立遺伝子との比較により、候補細胞が胎児由来の有核赤血球であることを確定する確定工程を、さらに有することが好ましい。
この態様によれば、選別工程後の有核赤血球の対立遺伝子と、母体由来の血液成分である白血球と対立遺伝子と、を比較することで、白血球と異なる対立遺伝子を有することが確認できた場合、有核赤血球は胎児由来の有核赤血球であることを確定することができる。また、白血球とほぼ等しい対立遺伝子を有する場合は、母体由来の有核赤血球であると確定することができる。
本発明の別の態様においては、選別工程により選別された有核赤血球に含まれるY染色体の存在の有無を確認することにより、候補細胞が胎児由来の有核赤血球であることを確定する確定工程を、さらに有することが好ましい。
この態様によれば、胎児が男児である場合は、選別工程後の有核赤血球にY染色体の存在を確認することで、有核赤血球が胎児由来の有核赤血球であると確定することができる。
本発明の有核赤血球の選別方法によれば、母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球と、の分離を効率良く行うことができる。したがって、母体血から胎児由来の有核赤血球を選別することができるので、母体血を用いた出生前診断(遺伝子検査)を安全に、効率良く行うことができる。
以下、添付図面に従って、本発明に係る有核赤血球の選別方法ついて説明する。なお、本明細書において「〜」とは、その前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本発明に係る有核赤血球の選別方法として、胎児の染色体の検査方法を用いて説明する。
図1は、胎児の染色体の検査方法の手順を示したフローチャート図である。胎児の染色体の検査方法は、妊娠母体から母体血を採取する採取工程(ステップS12)と、母体血中の有核赤血球を濃縮する濃縮工程(ステップS14)と、濃縮工程により有核赤血球が濃縮された母体血中の有核赤血球を、画像情報、光学的情報(分光特性)により、母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球とに選別する有核赤血球選別工程(ステップS16)と、少なくとも選別工程で選別した胎児由来の有核赤血球の染色体の核酸を増幅する増幅工程(ステップS18)と、増幅工程により増幅した増幅産物の対立遺伝子を白血球の対立遺伝子と比較することにより、または、増幅工程により増幅した増幅産物のY染色体の有無を確認することにより、胎児由来の有核赤血球であることを確定する確定工程(ステップS20)と、確定した増幅産物の量を、母体の染色体、または、異常がないことが既知の胎児の染色体との比較により、胎児由来の染色体の数的異常の存在の有無を決定する決定工程(ステップS22)と、を有する。本発明の有核赤血球の選別方法は、有核赤血球選別工程(ステップS16)からなる。また、確定工程(ステップS20)を含むことも好ましい態様の一つである。
<採取工程(ステップS12)>
採取工程は、血液試料である母体血を採取する工程である。母体血としては、侵襲のおそれのない妊娠母体の末梢血であることが好ましい。
採取工程は、血液試料である母体血を採取する工程である。母体血としては、侵襲のおそれのない妊娠母体の末梢血であることが好ましい。
母体の末梢血には、母体由来の好酸球、好中球、好塩基球、単核球、リンパ球等の白血球や、核のない成熟した赤血球に加えて、母体由来の有核赤血球、そして胎児由来の有核赤血球が含まれる。胎児由来の有核赤血球は、妊娠後、6週程度から母体血中に存在するといわれている。出生前診断を行う本実施形態においては、妊娠後6週程度以降の母体の末梢血を検査する。この末梢血の中の核を有する細胞としては、白血球由来の細胞、希少な母体由来および胎児由来の有核赤血球が存在する。
胎児由来の有核赤血球は、胎盤を通過して、母体の血液中に存在する赤血球前駆体である。母体が妊娠中には、胎児の赤血球は有核であり得る。この赤血球には染色体が存在するため、侵襲性が低い手段で、胎児由来の染色体および胎児遺伝子の入手が可能となる。この胎児由来の有核赤血球は、母体血中の細胞の106個に1個の割合で存在しているといわれており、母体の末梢血中には非常に存在確率が少ない。
<濃縮工程(ステップS14)>
次に、濃縮工程により、採取工程で採取した母体血中の有核赤血球の濃縮を行う。濃縮工程は、密度勾配遠心分離法により行うことが好ましい。
次に、濃縮工程により、採取工程で採取した母体血中の有核赤血球の濃縮を行う。濃縮工程は、密度勾配遠心分離法により行うことが好ましい。
〔密度勾配遠心分離法〕
密度勾配遠心分離法は、血液中の成分の密度の差により分離する方法であり、分離する成分の密度値を挟むように、第1の媒体および第2の媒体を選択することで、遠心分離後の第1の媒体と第2の媒体の間の界面に目的の成分(本実施形態においては、胎児由来の有核赤血球)を集めることができる。そして、この第1の媒体と第2の媒体の間の界面に存在する画分を採取することで、有核赤血球が濃縮された血液を得ることができる。
密度勾配遠心分離法は、血液中の成分の密度の差により分離する方法であり、分離する成分の密度値を挟むように、第1の媒体および第2の媒体を選択することで、遠心分離後の第1の媒体と第2の媒体の間の界面に目的の成分(本実施形態においては、胎児由来の有核赤血球)を集めることができる。そして、この第1の媒体と第2の媒体の間の界面に存在する画分を採取することで、有核赤血球が濃縮された血液を得ることができる。
具体的には、遠沈管の底部に第1の媒体を注入する工程と、第1の媒体を収めた遠沈管を冷却する工程と、遠沈管内の冷却された第1の媒体の上に第2の媒体を積層する工程と、遠沈管内の第2の媒体の上に血液試料である母体の末梢血を積層する工程と、遠沈管に収容された第1の媒体、第2の媒体および血液試料を遠心分離にかける工程と、遠心分離後の第1の媒体と第2の媒体の間の層から、胎児由来の有核赤血球を含む画分を採取する工程と、を含む方法で有核赤血球の濃縮を行うことができる。
国際公開WO2012/023298号公報には、胎児の有核赤血球を含めた母体の血液の密度が記載されている。その記載によると、想定される胎児由来の有核赤血球の密度は、1.065〜1.095g/mL程度、母体の血球の密度は、赤血球が1.070〜1.120g/mL程度、好酸球は1.090〜1.110g/mL程度、好中球は1.075〜1.100g/mL程度、好塩基球が、1.070〜1.080g/mL程度、リンパ球が、1.060〜1.080g/mL程度、単核球が、1.060〜1.070g/mL程度である。密度の数値に関して、グラム毎ミリリットル[g/mL]で表される単位からSI単位系への換算は容易であり、1グラム毎ミリリットル[g/mL]は、1000キログラム毎立方メートル[kg/m3]である。
積層する媒体(第1の媒体および第2の媒体)の密度は、密度が1.065〜1.095g/mL程度の胎児由来の有核赤血球を、母体中の他の血球成分と分離するために、設定される。胎児由来の有核赤血球の中心の密度は、1.080g/mL程度であるため、この密度を挟む2つの異なる密度の媒体を作成し、隣接して重層することで、その界面に所望の胎児由来の有核赤血球を集めることが可能となる。好ましくは、第1の媒体の密度を1.08g/mL以上1.10g/mL以下、第2の媒体の密度は1.06g/mL以上1.08g/mL以下として設定することが好ましい。更に好ましくは、第1の媒体の密度を1.08g/mL以上1.09g/mL以下、第2の媒体の密度を1.065g/mL以上1.08g/mL以下である。具体的な例としては、第1の媒体の密度を1.085g/mL、第2の媒体の密度を1.075g/mLに設定することで、血漿成分、および好酸球、単核球を、回収する所望の画分から分離することが可能となる。また、赤血球、好中球、リンパ球の一部も分離することが可能となる。本発明では、第1の媒体と、第2の媒体は同じ種類でも、異なる種類でも、本発明の効果を実現できる限りにおいて制限はないが、同じ種類の媒体を用いることが好ましい態様である。
濃縮工程で用いられる、第1の媒体および第2の媒体としては、ポリビニルピロリドンでコートされた直径15〜30nmのケイ酸コロイド粒子分散液であるPercoll(登録商標)、ショ糖から作られた側鎖に富んだ中性の親水性ポリマーであるFicoll(登録商標)−Paque、ポリスクロースとジアトリゾ酸ナトリウムによる溶液であるHistopaque(登録商標)等の媒体を使用することができる。本実施形態では、Percoll(登録商標)、およびHistopaque(登録商標)を使用することが好ましい。Percoll(登録商標)は、密度(比重)1.130の製品が市販されており、希釈することで目的とする密度(比重)の媒体を調製することが可能である。Histopaque(登録商標)は、市販されている密度1.077の媒体と、密度1.119の媒体を用いて、第1の媒体および第2の媒体を所望の密度に調製することが可能である。
〔他の濃縮方法〕
有核赤血球を濃縮する方法として、上記の密度勾配遠心分離法の他に、通常の白血球の抗原であるCD45に特異的に結合する抗体を利用し、磁気効果を用いて、白血球を分離することで、有核赤血球を濃縮することもできる。
有核赤血球を濃縮する方法として、上記の密度勾配遠心分離法の他に、通常の白血球の抗原であるCD45に特異的に結合する抗体を利用し、磁気効果を用いて、白血球を分離することで、有核赤血球を濃縮することもできる。
<有核赤血球選別工程(ステップS16)>
有核赤血球選別工程は、濃縮工程により有核赤血球が濃縮された母体血中から、光学的情報により、有核赤血球を選択し、母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球とに選別する工程である。
有核赤血球選別工程は、濃縮工程により有核赤血球が濃縮された母体血中から、光学的情報により、有核赤血球を選択し、母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球とに選別する工程である。
濃縮工程で濃縮された有核赤血球を含む末梢血には、有核赤血球の他に、白血球などの他の血液成分も含まれる。他の血液成分は、濃縮工程により、母体血から除くことができるが、完全に除去することは困難である。したがって、有核赤血球選別工程において、光学的情報により、母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球を選別する。
有核赤血球選別工程は、濃縮工程で濃縮された有核赤血球を含む末梢血を、透明基板、好ましくは、スライドガラス上に塗布し、血液細胞標本(以下、「分析用の標本」ともいう)を作製し、分析用の標本を用いて行われる。有核赤血球選別工程の詳細は後述する。
<増幅工程(ステップS18)>
増幅工程は、有核赤血球選別工程により選別された少なくとも胎児由来の有核赤血球の染色体に含まれる核酸を増幅する工程である。
増幅工程は、有核赤血球選別工程により選別された少なくとも胎児由来の有核赤血球の染色体に含まれる核酸を増幅する工程である。
有核赤血球選別工程により選別された胎児由来の有核赤血球は、マイクロマニュピュレータを用いて標本から分離される。標本から分離され取得された細胞からDNAを抽出して、全ゲノム増幅を行う。全ゲノム増幅は、市販のキットを用いて行うことが可能である。
本実施形態で用いる全ゲノム増幅法としては、取得した細胞から、一般的な方法である界面活性剤を用いた細胞溶解、プロテアーゼK等を用いたタンパク質分解工程を経ることで、細胞から溶出することにより得られたゲノムDNAを用いる。
全ゲノム増幅試薬としては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR:polymerase chain reaction)に基づく試薬PicoPLEX WGA kit(New England Biolabs社)、GenomePlex Single Cell Whole Genome Amplification kit(Sigma−Aldrich社)、MALBAC法(国際公開WO2012/166425A2号公報に掲載)を用いることが出来る。また、鎖置換型DNA合成反応に基づく試薬GenomiPhi(GEヘルスケア社)、REPLI−g(Qiagen社)も同様に用いることが出来る。本実施形態では、PicoPLEX WGA kit(New England Biolabs社)を用いることが好ましい。
全ゲノム増幅により得られたDNAの増幅産物は、アガロースゲル電気泳動により増幅有無を確認することが好ましい。更に、全ゲノム増幅産物をQIAquick PCR Purification Kit(QIAGEN社)を用いて精製することが好ましい。
また、全ゲノム増幅により得られたDNAの増幅産物の濃度について、NanoDrop(Thermo Fisher Scientific社)、BioAnalyzer(Agilent社)を用いて測定することが好ましい。
増幅工程においては、少なくとも胎児由来の有核赤血球の染色体に存在する核酸であるDNAを増幅する。増幅工程の対象物である胎児由来の有核赤血球の数は、少なくとも1つでよいが、複数の胎児由来の有核赤血球から取得した核酸を増幅することが好ましい。更には、後の決定工程で胎児の染色体の数的異常を決定するために、増幅産物の量を比較する基準として、数的異常が存在しない母体由来の有核赤血球の染色体を選択することも好ましい態様である。母体由来の有核赤血球を基準として比較する場合、有核赤血球選別工程により選別した母体由来の有核赤血球の染色体の核酸を増幅することも好ましい態様の一つである。
<確定工程(ステップS20)>
確定工程は、増幅工程により増幅した少なくとも胎児由来の有核赤血球の増幅産物の量を確定するとともに、有核赤血球選別工程で選別した胎児由来の有核赤血球を遺伝子解析により胎児由来の有核赤血球であることを確認する工程である。
確定工程は、増幅工程により増幅した少なくとも胎児由来の有核赤血球の増幅産物の量を確定するとともに、有核赤血球選別工程で選別した胎児由来の有核赤血球を遺伝子解析により胎児由来の有核赤血球であることを確認する工程である。
(遺伝子解析)
〔対立遺伝子による分析〕
増幅工程により全ゲノム増幅を行った後、対立遺伝子の配列を決定することで、有核赤血球が胎児由来の有核赤血球であることを確認することができる。
〔対立遺伝子による分析〕
増幅工程により全ゲノム増幅を行った後、対立遺伝子の配列を決定することで、有核赤血球が胎児由来の有核赤血球であることを確認することができる。
有核赤血球選別工程において胎児由来の有核赤血球の細胞として同定され、ポリメラーゼ連鎖反応により増幅されたDNAであって、数的異常を検査する対象となる染色体に対して、あらかじめ決定された100〜150bp(base pair:ベースペア)の領域の配列を有するDNAの増幅産物の量をシークエンサーで求める。本実施形態においては、検査する対象となる染色体は、好ましくは13番染色体であることが好ましい。胎児由来の有核赤血球は、通常、父親および母親から1組ずつの染色体を受け継いでおり、性染色体を除き、2本ずつの染色体を有している。これらの1組の染色体の対立遺伝子を分析し、父親由来の遺伝子の存在を確認することで、有核赤血球が胎児由来の有核赤血球か母体由来の有核赤血球かを選別することができる。
父親由来の遺伝子の存在の確認は、母親由来の細胞についても同時に遺伝子解析を行い、母親由来の細胞にはない対立遺伝子が存在する場合に、この対立遺伝子が父親由来の遺伝子であると認定することができる。父親由来の遺伝子が確認された場合、その有核赤血球は胎児由来の有核赤血球であると選別することができる。遺伝子解析を行う母親由来の細胞は、特に限定されないが、有核赤血球選別工程において作製された標本(スライドガラス上)に存在する白血球からのDNA分析を行うことが好ましい。
分析する対立遺伝子は、一塩基多型(SNP(SNPs):Single Nucleotide Polymorphism)、または、縦列型反復配列(STR:short tandem repeat)を分析することが好ましい。
胎児の遺伝子は、両親から一対ずつの遺伝子を受け継いでおり、遺伝情報は4種類の塩基の化学物質の配列で記録されている。ヒトの場合には、約30億個の塩基があるが、1000〜2000個に1個の割合で、個人によって異なる配列部分が存在し、これを一塩基多型という。この一塩基多型を分析し、母体由来の細胞である白血球と比較することで、有核赤血球に一塩基多型の配列を確認することができれば、有核赤血球は胎児由来であると確認することができる。
縦列型反復配列とは、DNAの中に、あるDNA配列が一つの単位となり、このDNA配列が直列に、繰り返し並んでいる領域があり、この繰り返し領域のことである。胎児は、縦列型反復配列を父親および母親から引き継ぐため、母体由来の白血球と異なる縦列型反復配列を有する有核赤血球は胎児由来の有核赤血球であると確認することができる。
〔Y染色体による分析〕
胎児が男児である場合、増幅工程により全ゲノム増幅を行った後、Y染色体の存在の有無を確認することで、有核赤血球が胎児由来の有核赤血球であるかを確認することができる。
胎児が男児である場合、増幅工程により全ゲノム増幅を行った後、Y染色体の存在の有無を確認することで、有核赤血球が胎児由来の有核赤血球であるかを確認することができる。
Y染色体は、男性にしか存在しないため、母体由来の有核赤血球には存在しない。したがって、胎児が男児である場合、Y染色体の存在を確認することができれば、有核赤血球は胎児由来の有核赤血球であると確認することができる。
<決定工程(ステップS22)>
決定工程は、有核赤血球選別工程により選別し、確定工程により確定した胎児由来の有核赤血球のDNAの増幅産物の量を比較することで、胎児由来の染色体の数的異常の存在の有無を決定する工程である。
決定工程は、有核赤血球選別工程により選別し、確定工程により確定した胎児由来の有核赤血球のDNAの増幅産物の量を比較することで、胎児由来の染色体の数的異常の存在の有無を決定する工程である。
胎児由来の染色体の数的異常の存在の有無を決定する基準(あるいは参照)として、数的異常を検査する対象染色体以外の染色体を選択し、予め決定された100〜150bpの領域の配列を有するDNAの増幅産物の増幅量をシークエンサーで求める。基準となる染色体(基準染色体)としては、胎児由来の有核赤血球の染色体の数的異常を検査する対象染色体以外の染色体の少なくとも1つを選択する態様、または、母体由来の有核赤血球であると同定された細胞に存在する染色体を選択する態様から選ばれる。本実施形態においては、母体由来の有核赤血球であると同定された細胞に存在する染色体を選択することが好ましい。
次に、数的異常の検査の対象染色体のDNAの増幅産物の量と、基準染色体のDNAの増幅産物の量との比率により、胎児由来の染色体に数的異常が存在するか決定する。胎児が正常な状態であれば、数的異常を検査する胎児由来の対象染色体のDNAの増幅産物の量と、基準染色体のDNAの増幅産物の量とは、ほぼ、1:1の量比となると予想される。正常であれば2本である染色体が3本存在するトリソミーである数的異常である場合には、1.0:1.5(あるいは2:3)の比になると予想される。
また、決定工程に先立って、予め、複数の妊娠母体から採取した、正常な胎児を妊娠した場合の母体由来の染色体のDNAの増幅産物の量に対する胎児由来の染色体のDNAの増幅産物の量の比を複数求めた結果の分布と、トリソミーの胎児を妊娠した母体の、母親由来のDNAの増幅産物の量に対する胎児由来のDNAの増幅産物の量の比を複数求めた結果の分布とを求め、この2つの分布が重ならない領域にカットオフ値を設定しておき、このカットオフ値と、DNAの増幅産物の量の比を比較して数的異常が存在するかどうかを決定することも可能である。この場合、DNAの増幅産物の量の比がカットオフ値以下であれば、胎児は正常であり、カットオフ値以上であれば、トリソミーである数的異常であると、検査結果を解釈することができる。
≪有核赤血球選別工程の説明≫
次に、本発明の有核赤血球の選別方法である、有核赤血球選別工程について説明する。図2は、有核赤血球選別工程の手順を示すフローチャート図である。有核赤血球選別工程は、透明基板上に作製した血液細胞標本の血液細胞の画像を取得する画像取得工程(ステップS32)と、画像から有核赤血球の候補細胞を選択する候補細胞選択工程(ステップS34)と、候補細胞を母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球とに選別する選別工程(ステップS36)と、を有する。
次に、本発明の有核赤血球の選別方法である、有核赤血球選別工程について説明する。図2は、有核赤血球選別工程の手順を示すフローチャート図である。有核赤血球選別工程は、透明基板上に作製した血液細胞標本の血液細胞の画像を取得する画像取得工程(ステップS32)と、画像から有核赤血球の候補細胞を選択する候補細胞選択工程(ステップS34)と、候補細胞を母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球とに選別する選別工程(ステップS36)と、を有する。
〔第1実施形態〕
まず、第1実施形態の有核赤血球選別工程について説明する。
まず、第1実施形態の有核赤血球選別工程について説明する。
<画像取得工程(ステップS32)>
有核赤血球の選別は、有核赤血球を含む末梢血を、透明基板、好ましくはスライドガラス上に塗布を行い、分析用の標本を作製する。そして、この標本を用いて、細胞の光学情報を取得し、有核赤血球の候補細胞の選択、候補細胞を母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球とに選別する。
有核赤血球の選別は、有核赤血球を含む末梢血を、透明基板、好ましくはスライドガラス上に塗布を行い、分析用の標本を作製する。そして、この標本を用いて、細胞の光学情報を取得し、有核赤血球の候補細胞の選択、候補細胞を母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球とに選別する。
第1実施形態においては、透明基板上に作製した分析用の標本の血液細胞を、ヘモグロビンの吸収波長領域に含まれる波長を用いて画像を取得する。ヘモグロビンの吸収波長領域に含まれる波長を用いて画像を取得することにより、次の候補細胞選択工程で、画像から有核赤血球の候補細胞を選択することができる。
ヘモグロビンの吸収波長領域に含まれる波長としては、400nm〜650nmの波長領域から選択される波長であることが好ましい。さらに、400nm〜485nm、525nm〜585nmの波長領域とすることで、これらの波長領域の吸収係数はヘモグロビンが存在することで、高い値を示すため、ヘモグロビンの存在しない白血球との吸光度の差、および、赤血球の細胞核と細胞質との吸光度の差を明確にすることができるので好ましい。また、画像を形成する波長を、450nmを超え500nm未満、525nmを超え550nm未満、575nmを超え585nm未満の波長領域から選択される波長とすることが好ましい。後述するように、これらの波長領域においては、胎児由来の有核赤血球の吸光度が母体由来の有核赤血球の吸光度より大きいので、次の工程の候補細胞選択工程において、吸光度の高い有核赤血球の候補細胞を選択することで、胎児由来の有核赤血球である確率を高めることができる。
画像の取得は、上記の波長領域から回折格子を用いて波長選択をして得た単色光を主波長とする光を用いて行ってもよく、上記の波長領域の波長を透過する干渉フィルタを用いて画像を取得してもよい。第1実施形態で画像の取得に用いられる、「ヘモグロビンの吸収波長領域に含まれる波長」とは、ヘモグロビンの吸収波長領域から選択される単色光を主波長とする光、および、ヘモグロビンの吸収波長領域に含まれる所定の範囲の波長の両方を含むものである。第1実施形態においては、次の候補細胞選択工程において、ヘモグロビンの有無、細胞核の有無により、有核赤血球の候補細胞を選択することができればよい。したがって、ヘモグロビンの吸収波長領域に含まれる波長であれば、画像から吸光度の違いにより、候補細胞を選択することができるので、特に限定されない。ただし、測定波長により、ヘモグロビンの吸収係数が異なるので、複数の波長で画像を形成し、比較することで、より確実に有核赤血球と他の細胞と、を分離することができるので好ましい。
<候補細胞選択工程(ステップS34)>
次に、画像取得工程により取得した画像を用いて有核赤血球の候補細胞を選択する。画像取得工程において、ヘモグロビンの吸収波長領域に含まれる波長を用いて画像を取得することで、白血球はヘモグロビンを有さないため、細胞質のヘモグロビンの有無による情報を比較することで、赤血球および有核赤血球と、白血球と、を分離することが可能である。
次に、画像取得工程により取得した画像を用いて有核赤血球の候補細胞を選択する。画像取得工程において、ヘモグロビンの吸収波長領域に含まれる波長を用いて画像を取得することで、白血球はヘモグロビンを有さないため、細胞質のヘモグロビンの有無による情報を比較することで、赤血球および有核赤血球と、白血球と、を分離することが可能である。
また、赤血球と有核赤血球と、の分離についてもヘモグロビンの存在の有無を確認することで、分離することができる。分析用の標本を作製する際に、細胞核の存在する細胞は、透明基板上で乾燥する過程で細胞核の成分が豊富な細胞の中心部分と、その周辺に細胞質の成分が豊富な細胞質部分に分離するように乾燥される。したがって、細胞核部分には、細胞質の成分はある割合で含まれるが、細胞核の周囲には細胞質の成分が豊富な領域が存在するため、細胞核部分の細胞質成分の割合は、周囲の領域と比べて少なくなる。したがって、核を有する有核赤血球は、成熟した核を有さない赤血球に対して、細胞核部分に存在するヘモグロビンの量が少なくなる。ヘモグロビンの吸収波長領域に含まれる波長を用いて画像を取得することで、赤血球内の吸光度の低い領域を細胞核として確認することが可能となり、有核赤血球の候補細胞を選択することができる。この有核赤血球の候補細胞の透明基板上の位置を記録し、次の選別工程において、母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球とに選別する。
選択する候補細胞は複数選択することが好ましく、候補細胞の数を多くすることで、胎児由来の有核赤血球が含まれる確率を高めることができるが、候補細胞の数が多くなると、以後の工程の作業が増えるため、2個以上20個以下の数の候補細胞を選別することが好ましい。
なお、取得した画像のヘモグロビン濃度のプロファイルを取得することで、ヘモグロビンの存在の有無を明確にすることができるので、確実に有核赤血球と他の細胞と、を分離することができる。ヘモグロビン濃度のプロファイルは公知の方法により測定することができ、例えば、顕微分光光度計を用いることにより行うことができる。
また、候補細胞選択工程の前に、細胞の形状により、選択する候補細胞を粗ふるいした後、画像からヘモグロビンの有無による吸光度の情報を比較し、有核赤血球の候補細胞を選択してもよい。細胞の形状による選別としては、核の大きさ、核の円形度合い、細胞質の面積に対する核領域の面積の割合などにより選別することができる。
<選別工程(ステップS36)>
選別工程は、候補細胞選択工程で選択された候補細胞を光学的情報により、母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球とに選別する工程である。
選別工程は、候補細胞選択工程で選択された候補細胞を光学的情報により、母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球とに選別する工程である。
光学的情報による選別は、赤血球に含まれるヘモグロビンの酸素親和性の違いに起因する光学的情報を利用することができる。図3は、還元ヘモグロビン(Hb)と、酸化ヘモグロビン(HbO2)の波長に対する吸収係数を示すグラフ図である。ここで、吸収係数とは、光がある媒質に入射したとき、その媒質がどのくらいの光を吸収するかを示す定数である。図3に示すように、ヘモグロビンは酸素との相互作用によって、吸収係数が変化することが知られている。即ち、酸化ヘモグロビンは赤い色調を有しており、還元ヘモグロビンになるに従い、青味を帯びてくる。選別工程においては、このような、ヘモグロビンの酸素への親和性が異なることを利用して、母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球とを選別することが可能となる。
光学的情報(分光特性)とは、還元ヘモグロビンと酸化ヘモグロビンとの吸収係数の差異の存在する波長領域で吸光度の差を検出するものである。成人の赤血球中のヘモグロビンは、4量体α2β2(HbA)である。一方、胎児の赤血球中のヘモグロビンは、2本のα鎖と2本のγ鎖によって作られた4量体α2γ2(HbF)であり、生後、大部分を占めるHbAと少数のHbFからなるHbA2に置き換わっていくことが知られている。胎盤中では、血液中の妊娠母体のヘモグロビン(HbA)から酸素の提供を受けることで、胎児のヘモグロビンは酸素を得ている。そして、成人の血液中の赤血球に含まれるヘモグロビン(HbA)は、4量体α2β2であるが、胎児型のヘモグロビン(HbF)はα2γ2であり、HbAに比べて酸素親和性が高いという特徴を有する。出生前診断においては、血液試料として妊娠母体の末梢血を採取し、検査を行うことが好ましい。末梢血は、通常、静脈から採取するものであり、静脈中の血液の酸素の量は、動脈中の酸素の量より乏しくなる。健常人では、中心静脈血の酸素飽和度は、60〜80%が正常値といわれており、この値は、全身の酸素需要により上下する。HbAとHbFは、酸素親和性が異なるため、静脈血中においても、HbAとHbFの酸素結合量が異なり、HbFの酸素結合量がHbAの酸素結合量よりも高くなるという特徴を有している。
母体のヘモグロビン(HbA)と胎児のヘモグロビン(HbF)においても、静脈中で酸素親和性に差があり、図3に示すように、還元ヘモグロビンと酸化ヘモグロビンは、吸収係数に差が生じるので、母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球の吸光度の差を用いて選別する。吸光度の測定には、400〜650nmの波長領域が適用される。この波長領域から選択される波長の異なる単色光を主波長とする光を複数用いて吸光度を測定し、それぞれの波長の異なる単色光を主波長とする光の測定値の割合(吸光度の比)を検出することでより確実に有核赤血球の選別を行うことができる。なお、「単色光を主波長とする光」とは、単色光そのものか、あるいは、単色光と単色光の波長近傍の波長の光とを含む光、とする。
また、選別工程において、吸光度の測定に用いられる波長としては、400〜500nmの波長領域から選択された波長の単色光を主波長とする光を用いる態様が好ましく、450nmを超え480nm未満の波長領域から選択された波長の単色光を主波長とする光、および、550nmを超え575nm未満の波長領域から選択された波長の単色光を主波長とする光をそれぞれ用い、各波長の吸光度の比により選別することが好ましい。また、波長領域は、550nmを超え575nm未満の波長領域から選択された波長の単色光を主波長とする光、および、575nmを超え585nm未満の波長領域から選択された波長の単色光を主波長とする光をそれぞれ用い、各波長の吸光度の比により選別することが好ましい。波長の異なる単色光を主波長とする光を複数用いて測定した吸光度の比を導出することで、個々の細胞間に、細胞の厚みや面積などの細胞間に起因する吸光度の誤差を排除することができる。これらの波長領域は、図3に示すように、酸素結合能力の違い、すなわち、酸化ヘモグロビン(HbO2)と還元ヘモグロビン(Hb)とで、吸収係数の差が大きいので、この波長領域を用いることで、母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球のとの選別を確実に行うことができる。
また、選別工程において、吸光度の測定に用いられる波長としては、図3に示すグラフの吸収係数が還元ヘモグロビンの吸収係数と酸化ヘモグロビンの吸収係数の大きさが逆転する波長を挟んでそれぞれの波長領域の波長で測定することが好ましい。すなわち、胎児由来の有核赤血球(酸化ヘモグロビンの割合が高い)の吸収係数が、母体由来の有核赤血球(酸化ヘモグロビンの割合が低い)の吸収係数より高い第1の波長領域の波長と、母体由来の有核赤血球の吸収係数が胎児由来の有核赤血球の吸収係数より高い第2の波長領域の波長と、で吸光度を測定する。そして、第1の波長領域の波長で測定した吸光度と、第2の波長領域の波長で測定した吸光度の比を求め、それぞれの候補細胞の吸光度の比を比較することで、胎児由来の有核赤血球の吸光度の比と母体由来の有核赤血球の吸光度の比の数値の差を大きくすることができるので、胎児由来の有核赤血球の選別を確実に行うことができる。
第1の波長領域としては、450nmを超え500nm未満、525nmを超え550nm未満、および、575nmを超え585nm未満の波長領域を挙げることができる。また、第2の波長領域としては、550nmを超え575nm未満の波長領域を挙げることができる。第1の波長領域の波長、および、第2の波長領域の波長を用いて吸光度を測定し、(第1の波長領域の波長での吸光度/第2の波長領域の波長での吸光度)により吸光度の比を求めることで、吸光度の比の数値が高い候補細胞を胎児由来の有核赤血球と選別することができる。また、図3に示すような還元ヘモグロビンと酸化ヘモグロビンの波長に対する吸収係数から、測定した波長において、胎児由来の有核赤血球の吸光度の比が低くなる場合は、吸光度の比の数値が低い候補細胞を胎児由来の有核赤血球と選別することができる。
さらに、測定した吸光度の比の数値の大きさ順に優先順位をつけ、優先順位の高い候補細胞から次工程の増幅工程、及び、確定工程を行うことで、母体由来の有核赤血球に対して作業を行う確率を減らすことができ、効率的である。
また、各波長領域で、複数の波長で吸光度を測定し、それら吸光度の平均値を用いて選別を行うこともできる。吸光度の平均値により選別することで、吸光度の測定値に含まれるノイズの影響を低減することができる。
図4は、吸光度を測定する際の波長の選択方法の説明図である。有核赤血球の候補細胞に対して、選別を行うために、吸光度を測定する波長を2種類選択する。例えば、図4の波長λ1、及び波長λ4を選択する。一方の波長λ1で吸光度1を測定する。同様に、他方の波長λ4で吸光度2を測定する。
吸光度1、吸光度2は、それぞれ1つの波長、波長λ1、および、波長λ4で測定した吸光度とすることができるが、複数の波長で吸光度を測定し、その平均とすることもできる。例えば、図4に示すように、吸光度を測定する波長を2種類λ1、及びλ4を選択した後、波長λ1からずらした波長λ2および波長λ3、波長λ4からずらした波長λ5および波長λ6のそれぞれについても吸光度を測定する。波長λ1、波長λ2、及び波長λ3で測定した吸光度の平均値を求め、この平均値を吸光度1とし、波長λ4、波長λ5、及び波長λ6で測定した吸光度の平均を求め、この平均値を吸光度2とすることができる。このように、複数の波長で測定した吸光度の平均値を吸光度1、および、吸光度2とし、吸光度1と吸光度2の比により選別を行うことで、吸光度の測定値に含まれるノイズの影響を低減することができる。
細胞質の吸光度を測定する場合には、顕微分光光度計を用いることができる。顕微分光光度計は、通常の分光光度計と同じ原理を、顕微鏡の光学系に利用した光度計であり、市販の装置を使用することができる。
また、選別工程に用いられるシステムの構成例としては、光学顕微鏡、デジタルカメラ、スライドガラス用のステージ、光学搬送系、画像処理PC(personal computer)、制御PC、ディスプレイを装備しているシステムを挙げることができる。光学搬送系は、対物レンズとCCD(Charge Coupled Device)カメラを備え、画像処理PCは、データ解析、データ記憶を行う処理系を備える構成が挙げられる。制御PCは、スライドガラス用のステージの位置制御や、全体の処理を制御する制御系を備える構成が挙げられる。
〔第2実施形態〕
次に第2実施形態の有核赤血球選別工程について説明する。第2実施形態についても図2を用いて説明する。
次に第2実施形態の有核赤血球選別工程について説明する。第2実施形態についても図2を用いて説明する。
<画像取得工程(ステップS32)>
第2実施形態の画像取得工程は、ヘモグロビン吸収波長領域から選択される複数の、波長の異なる単色光を主波長とする光を用いて透明基板上に作製した分析用の標本の血液細胞の複数の画像を取得する点が第1実施形態の画像取得工程と異なっている。
第2実施形態の画像取得工程は、ヘモグロビン吸収波長領域から選択される複数の、波長の異なる単色光を主波長とする光を用いて透明基板上に作製した分析用の標本の血液細胞の複数の画像を取得する点が第1実施形態の画像取得工程と異なっている。
第2実施形態で用いられる「ヘモグロビン吸収波長領域から選択される複数の、波長の異なる単色光を主波長とする光」としては、第1実施形態の選別工程において用いられる「ヘモグロビン吸収波長領域から選択される複数の、波長の異なる単色光を主波長とする光」と同様に用いることができ、400〜650nmの波長領域から選択される複数の、波長の異なる単色光を主波長とする光を用いることが好ましい。
また、400〜500nmの波長領域から選択された波長の単色光を主波長とする光を用いる態様が好ましく、450nmを超え480nm未満の波長領域から選択された波長の単色光を主波長とする光、および、550nmを超え575nm未満の波長領域から選択された波長の単色光を主波長とする光、および、575nmを超え585nm未満の波長領域から選択された波長の単色光を主波長とする光をそれぞれ用いることが好ましい。
測定波長によりヘモグロビンの吸収係数が異なるので、複数の、波長の異なる単色光を主波長とする光を用いて複数の画像を取得し比較することで、次の候補細胞選択工程において、より確実に有核赤血球と他の細胞と、を分離することができる。また、画像取得工程において取得した画像情報に基づいて、選別工程を行うことで、第1実施形態のような選別工程で吸光度の測定を行う必要がなくなる。
選別工程において、画像取得工程で取得した画像を用いて選別を行うことを考慮すると、複数の、波長の異なる単色光を主波長とする光は、図3に示すグラフの吸収係数が還元ヘモグロビンの吸収係数と酸化ヘモグロビンの吸収係数の大きさが逆転する波長を挟んでそれぞれの波長領域の単色光を主波長とする光で画像を形成することが好ましい。すなわち、胎児由来の有核赤血球(酸化ヘモグロビンの割合が高い)の吸収係数が、母体由来の有核赤血球(酸化ヘモグロビンの割合が低い)の吸収係数より高い第1の波長領域の波長の単色光を主波長とする光と、母体由来の有核赤血球の吸収係数が胎児由来の有核赤血球の吸収係数より高い第2の波長領域の波長の単色光を主波長とする光と、で画像を形成する。
第1の波長領域としては、450nmを超え500nm未満、525nmを超え550nm未満、および、575nmを超え585nm未満の波長領域を挙げることができる。また、第2の波長領域としては、550nmを超え575nm未満の波長領域を挙げることができる。
また、第2実施形態においても、取得した画像のヘモグロビン濃度のプロファイルを取得することで、有核赤血球と他の細胞と、を分離することができる。
<候補細胞選択工程(ステップS34)>
候補細胞選択工程においては、第1実施形態と同様の方法で、画像取得工程において取得した画像から選択することができるので、その説明は省略する。
候補細胞選択工程においては、第1実施形態と同様の方法で、画像取得工程において取得した画像から選択することができるので、その説明は省略する。
<選別工程(ステップS36)>
第2実施形態の選別工程は、画像取得工程において、ヘモグロビン吸収波長領域から選択される、複数の、波長の異なる単色光を主波長とする光を用いて取得した画像に基づいて、候補細胞を母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球とに選別する。
第2実施形態の選別工程は、画像取得工程において、ヘモグロビン吸収波長領域から選択される、複数の、波長の異なる単色光を主波長とする光を用いて取得した画像に基づいて、候補細胞を母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球とに選別する。
画像から有核赤血球を選別する方法としては、画像を取得する際に測定した吸光度を用いて、吸光度の比を計算し、選別することができる。吸光度の比を用いた選別方法については、第1実施形態と同様の方法により行うことができるので、その説明は省略する。
また、ヘモグロビン濃度のプロファイルを取得した場合は、画像情報として還元ヘモグロビンと酸化ヘモグロビンの濃度の比を計算し、有核赤血球の選別を行うことができる。ヘモグロビンの濃度の比についても吸光度の比により選別を行う場合と同様に、酸化ヘモグロビンの濃度を胎児由来の有核赤血球の吸光度、還元ヘモグロビンの濃度を母体由来の有核赤血球の吸光度と置き換えることで、有核赤血球を母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球とに選別することができる。
<実施例1>
以下に実施例を挙げ、本発明をより詳細に説明する。ただし、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
以下に実施例を挙げ、本発明をより詳細に説明する。ただし、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
(採取工程[末梢血液試料取得工程])
7mL採血管に抗凝固剤として、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)のナトリウム塩を10.5mg添加した後、母体のボランティアから、インフォームドコンセントを行った後にボランティア血として末梢血7mLを採血管内に得た。その後、生理食塩水を用いて、血液を希釈した。
7mL採血管に抗凝固剤として、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)のナトリウム塩を10.5mg添加した後、母体のボランティアから、インフォームドコンセントを行った後にボランティア血として末梢血7mLを採血管内に得た。その後、生理食塩水を用いて、血液を希釈した。
(濃縮工程[有核赤血球の濃縮工程])
Percoll液(登録商標)を使用して、密度1.070g/mLと、密度1.095g/mLの液を調製し、遠沈管に、遠沈管の底部に密度1.095g/mLの液2mlを添加した。続けて、密度1.095g/mLの液の上に、界面が乱れないようにゆっくり、密度1.070g/mLの液2mLを重層した。その後、密度1.070g/mLの媒体の上に、上記で採血した血液の希釈液11mLをゆっくり、遠沈管に添加した。その後、遠心分離を2000rpm(回転数毎分)で20分間行った。その後、遠沈管を取り出し、密度1.070g/mLと、密度1.090g/mLの液の間に沈積した画分を、ピペットを用いて採取した。採取した血液の画分を片手で第1のガラス基板を保持し、その1端に1滴採取した血液の画分を置いた。もう一方の手で別のガラス基板(第2のガラス基板)を持ち、第2のガラス基板の1端を第1のガラス基板に30度の角度で接触させ、第2のガラス基板の接触下面を血液の画分に触れると、毛管現象で2枚のガラスに囲まれた空間に広がる。次に角度を保ったまま、第2ガラス基板を第1のガラス基板の血液を置いた領域と反対の領域の方向に滑らせて、第1のガラス基板上に塗布した。その後、送風で1時間以上十分に乾燥させた。その後、純水で洗浄後乾燥させる事により血液細胞を塗布したガラス基板を複数枚作製した。
Percoll液(登録商標)を使用して、密度1.070g/mLと、密度1.095g/mLの液を調製し、遠沈管に、遠沈管の底部に密度1.095g/mLの液2mlを添加した。続けて、密度1.095g/mLの液の上に、界面が乱れないようにゆっくり、密度1.070g/mLの液2mLを重層した。その後、密度1.070g/mLの媒体の上に、上記で採血した血液の希釈液11mLをゆっくり、遠沈管に添加した。その後、遠心分離を2000rpm(回転数毎分)で20分間行った。その後、遠沈管を取り出し、密度1.070g/mLと、密度1.090g/mLの液の間に沈積した画分を、ピペットを用いて採取した。採取した血液の画分を片手で第1のガラス基板を保持し、その1端に1滴採取した血液の画分を置いた。もう一方の手で別のガラス基板(第2のガラス基板)を持ち、第2のガラス基板の1端を第1のガラス基板に30度の角度で接触させ、第2のガラス基板の接触下面を血液の画分に触れると、毛管現象で2枚のガラスに囲まれた空間に広がる。次に角度を保ったまま、第2ガラス基板を第1のガラス基板の血液を置いた領域と反対の領域の方向に滑らせて、第1のガラス基板上に塗布した。その後、送風で1時間以上十分に乾燥させた。その後、純水で洗浄後乾燥させる事により血液細胞を塗布したガラス基板を複数枚作製した。
(有核赤血球選別工程)
作製したガラス基板に対して、460nm付近の光を透過する干渉フィルタを用いて、暗室中で画像情報を取得した。露光時間については、最適な光学情報が得られるように調整した。得られた画像から、細胞質の吸収係数の高い細胞を選択し、白血球を除外した。さらに、選択した細胞の中から、細胞の中心の吸収係数が低い細胞、すなわち、細胞中に細胞核が認識される細胞を有核赤血球として選択し、スライドガラス上の位置を記録した。
作製したガラス基板に対して、460nm付近の光を透過する干渉フィルタを用いて、暗室中で画像情報を取得した。露光時間については、最適な光学情報が得られるように調整した。得られた画像から、細胞質の吸収係数の高い細胞を選択し、白血球を除外した。さらに、選択した細胞の中から、細胞の中心の吸収係数が低い細胞、すなわち、細胞中に細胞核が認識される細胞を有核赤血球として選択し、スライドガラス上の位置を記録した。
スライドガラス上の位置を記録した複数の細胞に対して、560nm付近の光を透過する干渉フィルタを用いて、暗室中にて別途画像情報を取得した。460nmの画像情報、560nmの画像情報からスライドガラス上の位置を記録した細胞に対して、それぞれの波長の細胞質の吸光度から、細胞周囲(バクグラウンド)の吸光度を引くことで、バックグラウンドに対する細胞質の吸光度を求めた。そして、それぞれの波長のバックグラウンドに対する細胞質の吸光度の比(460nm/560nm)を計算し、この計算結果で、吸光度の比が大きい細胞から、胎児由来の有核赤血球候補として優先順位付けを行った。一番数値の大きい細胞を細胞Aとし、胎児由来の有核赤血球と識別した。また、一番数値の小さい細胞を細胞Bとし、母体由来の有核赤血球と識別した。
(細胞単離工程)
上記工程で決定された細胞Aと細胞Bを、マイクロマニュピュレータを使用して回収した。
上記工程で決定された細胞Aと細胞Bを、マイクロマニュピュレータを使用して回収した。
(増幅工程[DNA増幅工程])
マイクロマニュピュレータを使用して回収した細胞Aと細胞Bを用いて、New England Biolabs社製Single Cell WGA kitを用いて全ゲノム増幅を行い、説明書記載に則り細胞中の微量なDNAを約100万倍に増幅した。
マイクロマニュピュレータを使用して回収した細胞Aと細胞Bを用いて、New England Biolabs社製Single Cell WGA kitを用いて全ゲノム増幅を行い、説明書記載に則り細胞中の微量なDNAを約100万倍に増幅した。
(確定工程[母体由来または胎児由来の確定工程])
各細胞から増幅した全ゲノム増幅産物を等分割してその一方を用いて、ILLUMINA社製ゲノムアナライザーMiseqを用いて、13番染色体の C1QTNF9B遺伝子領域、PCDH9遺伝子領域、BRCA2遺伝子領域、MTRF1遺伝子領域のSNP(SNP ID:rs3751355、rs1799955、rs2297555、rs9571740)を比較することで、細胞Aと細胞BのSNPが異なることを確認できた。別途、スライドガラス上の白血球と予想される細胞Cをマイクロマニュピュレータで回収し、細胞A、細胞Bと同様にSNPを調べたところ、細胞BのSNPと一致することが確認された。以上より、細胞Aが胎児由来の有核赤血球、細胞Bが、母体由来の有核赤血球であることが確認された。
各細胞から増幅した全ゲノム増幅産物を等分割してその一方を用いて、ILLUMINA社製ゲノムアナライザーMiseqを用いて、13番染色体の C1QTNF9B遺伝子領域、PCDH9遺伝子領域、BRCA2遺伝子領域、MTRF1遺伝子領域のSNP(SNP ID:rs3751355、rs1799955、rs2297555、rs9571740)を比較することで、細胞Aと細胞BのSNPが異なることを確認できた。別途、スライドガラス上の白血球と予想される細胞Cをマイクロマニュピュレータで回収し、細胞A、細胞Bと同様にSNPを調べたところ、細胞BのSNPと一致することが確認された。以上より、細胞Aが胎児由来の有核赤血球、細胞Bが、母体由来の有核赤血球であることが確認された。
<実施例2>
実施例1で採血した母体とは別の母体から、末梢血を採血し、実施例1と同様にして、有核赤血球選別工程において、吸光度の比が大きい細胞から、胎児由来の有核赤血球候補として優先順位付けを行った。一番数値の大きい細胞を胎児由来の有核赤血球と識別した。胎児由来の有核赤血球と識別した細胞を、Y染色体のsex-determining factor(SRY)遺伝子領域で作製したPCRプライマーを用いてタカラバイオ社製Multiplex PCR Assay Kitを用いてPCRを行い、Y染色体のPCR増幅物の有無を一般的なアガロースゲル電気泳動法で確認したところ、1つの細胞に対してY染色体由来の情報が検出された。この細胞が胎児由来であり、しかも男児であることが確認できた。
実施例1で採血した母体とは別の母体から、末梢血を採血し、実施例1と同様にして、有核赤血球選別工程において、吸光度の比が大きい細胞から、胎児由来の有核赤血球候補として優先順位付けを行った。一番数値の大きい細胞を胎児由来の有核赤血球と識別した。胎児由来の有核赤血球と識別した細胞を、Y染色体のsex-determining factor(SRY)遺伝子領域で作製したPCRプライマーを用いてタカラバイオ社製Multiplex PCR Assay Kitを用いてPCRを行い、Y染色体のPCR増幅物の有無を一般的なアガロースゲル電気泳動法で確認したところ、1つの細胞に対してY染色体由来の情報が検出された。この細胞が胎児由来であり、しかも男児であることが確認できた。
Claims (7)
- ヘモグロビン吸収波長領域に含まれる波長を用いて、透明基板上に作製した血液細胞標本の血液細胞の画像を取得する画像取得工程と、
前記画像により、有核赤血球の候補細胞を選択する候補細胞選択工程と、
前記ヘモグロビン吸収波長領域から選択される複数の、波長の異なる単色光を主波長とする光における吸光度の比により、前記候補細胞を母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球とに選別する選別工程と、を有する有核赤血球の選別方法。 - 前記画像取得工程で用いられる前記波長は、450nmを超え500nm未満、525nmを超え550nm未満、575nmを超え585nm未満の波長領域から選択される波長である請求項1に記載の有核赤血球の選別方法。
- ヘモグロビン吸収波長領域から選択される複数の、波長の異なる単色光を主波長とする光を用いて、透明基板上に作製した血液細胞標本の血液細胞の前記単色光を主波長とする光におけるそれぞれの画像を取得する画像取得工程と、
前記画像により有核赤血球の候補細胞を選択する候補細胞選択工程と、
前記それぞれの画像の画像情報に基づいて、前記候補細胞を母体由来の有核赤血球と胎児由来の有核赤血球とに選別する選別工程と、を有する有核赤血球の選別方法。 - 前記画像情報は、前記複数の、波長の異なる単色光を主波長とする光における吸光度の比、または、ヘモグロビンの濃度の比である請求項3に記載の有核赤血球の選別方法。
- 前記複数の、波長の異なる単色光を主波長とする光は、450nmを超え500nm未満、525nmを超え550nm未満、575nmを超え585nm未満の波長領域から選択される第1の波長領域と、550nmを超え575nm未満の第2の波長領域と、から選ばれる波長を少なくとも含む請求項1から4のいずれか1項に記載の有核赤血球の選別方法。
- 前記選別工程により選別された前記有核赤血球に含まれる対立遺伝子と、前記血液細胞標本の白血球の対立遺伝子との比較により、前記候補細胞が胎児由来の有核赤血球であることを確定する確定工程を、さらに有する請求項1から5のいずれか1項に記載の有核赤血球の選別方法。
- 前記選別工程により選別された前記有核赤血球に含まれるY染色体の存在の有無を確認することにより、前記候補細胞が胎児由来の有核赤血球であることを確定する確定工程を、さらに有する請求項1から5のいずれか1項に記載の有核赤血球の選別方法。
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JP2018169390A (ja) * | 2017-03-29 | 2018-11-01 | Jfeテクノリサーチ株式会社 | 染色体異常判定装置 |
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JP2022069531A (ja) * | 2018-09-18 | 2022-05-11 | カール・ツアイス・メディテック・アーゲー | 対象物の特性を判断するための方法及び装置 |
-
2014
- 2014-09-26 JP JP2014197283A patent/JP2016070698A/ja active Pending
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