以下、本発明の分子接合剤、さらには、分子接合剤を用いた接合方法、電子部材、配線板、及び半導体装置について詳細に説明する。
本明細書において、化合物又は基の直前に付されている「置換基を有していてもよい」という用語は、該化合物又は基の水素原子が置換基で置換されていない場合、及び、該化合物又は基の水素原子の一部又は全部が置換基で置換されている場合の双方を意味する。
本明細書において、アルキル基、アルキレン基とは、特に断りのない限り、直鎖、分岐鎖、又は環状のアルキル基、アルキレン基の総称である。また、環状のアルキル基は、単環、多環のいずれであってもよい。他の官能基についても同様である。
本明細書において、「Cp〜Cq」(p及びqは正の整数であり、p<qを満たす。)という用語は、この用語の直後に記載された有機基の炭素原子数がp〜qであることを表す。例えば、「C1〜C12アルキル基」は、炭素原子数1〜12のアルキル基を示し、「C1〜C12アルキルエステル」は、炭素原子数1〜12のアルキル基とのエステルを示す。
[分子接合剤]
本発明の分子接合剤は、下記一般式(1)で表される化合物を含むことを特徴とする。
一般式(1):
(一般式(1)中、環Aは、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子から選択されるヘテロ原子を1、2又は4個有する、縮合していてもよい複素環を表し、複数のヘテロ原子は同一でも異なっていてもよい。R
1及びR
2は、それぞれ独立に単結合、又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルキレン基を表し、R
3及びR
4は、それぞれ独立に水素原子、又は炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、複数のR
3及びR
4は互いに同一でも異なっていてもよい。R
5は、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルキル基、又は置換基を有していてもよい芳香族基を表し、複数のR
5は互いに同一でも異なっていてもよい。Xは、単結合、又は二価の連結基を表し、nは0〜3の整数を表し、mは0〜3の整数を表す。)
本発明の分子接合剤は、一般式(1)で表される化合物を含むことを特徴とし、この化合物を含むことにより、耐熱性、耐湿性に優れるようになる。本発明の分子接合剤が耐熱性、耐湿性に優れる詳細なメカニズムは不明であるが、本発明者らは、一般式(1)中の環Aの部位、及び一般式(1)中のケイ素部位が耐熱性、耐湿性の向上に起因しているものと考えている。
以下、本発明の分子接合剤に含まれる材料について説明する。
<一般式(1)で表される化合物>
本発明の分子接合剤は、下記一般式(1)で表される化合物を含む。
一般式(1):
(一般式(1)中、環Aは、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子から選択されるヘテロ原子を1、2又は4個有する、縮合していてもよい複素環を表し、複数のヘテロ原子は同一でも異なっていてもよい。R
1及びR
2は、それぞれ独立に単結合、又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルキレン基を表し、R
3及びR
4は、それぞれ独立に水素原子、又は炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、複数のR
3及びR
4は互いに同一でも異なっていてもよい。R
5は、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルキル基、又は置換基を有していてもよい芳香族基を表し、複数のR
5は互いに同一でも異なっていてもよい。Xは、単結合、又は二価の連結基を表し、nは0〜3の整数を表し、mは0〜3の整数を表す。)
一般式(1)中、環Aは、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子から選択されるヘテロ原子を1、2又は4個有する、縮合していてもよい複素環を表し、複数のヘテロ原子は同一でも異なっていてもよい。「ヘテロ原子を1、2又は4個有する、縮合していてもよい複素環」とは、単環の場合は、ヘテロ原子を1、2又は4個有する複素環を意味し、縮合環の場合、一方の環のみにヘテロ原子を有する縮合複素環や、縮合している環が共にヘテロ原子を有する縮合複素環をも含む趣旨であり、縮合環全体のヘテロ原子が1、2又は4個有する複素環を意味する。
ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子から選択され、窒素原子が好ましい。環A中、ヘテロ原子は、1、2又は4個有し、1又は2個有することが好ましく、2個有することがより好ましい。
環Aは、ヘテロ原子を1、2又は4個有する、縮合していてもよい複素環であれば特に制限はないが、5〜7員環の複素環が好ましく、5員環がより好ましい。また、環Aは、芳香族複素環が好ましい。また、環Aは、カチオン構造又はアニオン構造の複素環であってもよい。
環Aの具体例としては、例えば、アゾリジン環、オキソラン環、チオラン環、アゾール環、オキソール環、チオール環、アジナン環、オキサン環、チアン環、ピリジン環、ピリリウムイオン環、チオピリリウムイオン環、アゼパン環、オキセパン環、チエパン環、アゼピン環、オキセピン環、チエピン環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾリン環、ピラジン環、モルホリン環、チアジン環、インドール環、イソインドール環、ベンゾイミダゾール環、プリン環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、シンノリン環、プテリジン環等が挙げられ、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環が好ましく、イミダゾール環がより好ましい。
R1及びR2は、それぞれ独立に単結合、又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルキレン基を表す。R1及びR2は、炭素原子数1〜20のアルキレン基であり、炭素原子数1〜10のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1〜6のアルキレン基がより好ましく、炭素原子数1〜5のアルキレン基がさらに好ましく、炭素原子数1〜4のアルキレン基が特に好ましい。上記炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。また、R1及びR2が表すアルキレン基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよいが、直鎖のアルキレン基が好ましい。
このようなアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基、ノナデシレン基、イコシレン基、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基、デカヒドロナフタニレン基、ノルボルナニレン基、アダマンタニレン基等が挙げられ、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基が好ましい。
R1及びR2が表すアルキレン基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、特に制限はなく、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、1価の複素環基、アルキリデン基、アミノ基、シリル基、アシル基、アシルオキシ基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、オキソ基等が挙げられる。
置換基として用いられるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
置換基として用いられるアルキル基は、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。該アルキル基の炭素原子数は、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜14、さらに好ましくは1〜12、さらにより好ましくは1〜6、特に好ましくは1〜3である。該アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、及びデシル基が挙げられる。置換基として用いられるアルキル基は、さらに置換基(以下、「二次置換基」という場合がある。)を有していてもよい。斯かる二次置換基を有するアルキル基としては、例えば、ハロゲン原子で置換されたアルキル基が挙げられ、具体的には、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、テトラフルオロエチル基、テトラクロロエチル基等が挙げられる。
置換基として用いられるシクロアルキル基の炭素原子数は、好ましくは3〜20、より好ましくは3〜12、さらに好ましくは3〜6である。該シクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等が挙げられる。
置換基として用いられるアルコキシ基は、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。該アルコキシ基の炭素原子数は、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜12、さらに好ましくは1〜6である。該アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、sec−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、及びデシルオキシ基が挙げられる。
置換基として用いられるシクロアルキルオキシ基の炭素原子数は、好ましくは3〜20、より好ましくは3〜12、さらに好ましくは3〜6である。該シクロアルキルオキシ基としては、例えば、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、及びシクロヘキシルオキシ基が挙げられる。
置換基として用いられるアリール基は、芳香族炭化水素から芳香環上の水素原子を1個除いた基である。置換基として用いられるアリール基の炭素原子数は、好ましくは6〜24、より好ましくは6〜18、さらに好ましくは6〜14、さらにより好ましくは6〜10である。該アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、及びアントラセニル基が挙げられる。
置換基として用いられるアリールオキシ基の炭素原子数は、好ましくは6〜24、より好ましくは6〜18、さらに好ましくは6〜14、さらにより好ましくは6〜10である。置換基として用いられるアリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、及び2−ナフチルオキシ基が挙げられる。
置換基として用いられるアリールアルキル基の炭素原子数は、好ましくは7〜25、より好ましくは7〜19、さらに好ましくは7〜15、さらにより好ましくは7〜11である。該アリールアルキル基としては、例えば、フェニル−C1〜C12アルキル基、ナフチル−C1〜C12アルキル基、及びアントラセニル−C1〜C12アルキル基が挙げられる。
置換基として用いられるアリールアルコキシ基の炭素原子数は、好ましくは7〜25、より好ましくは7〜19、さらに好ましくは7〜15、さらにより好ましくは7〜11である。該アリールアルコキシ基としては、例えば、フェニル−C1〜C12アルコキシ基、及びナフチル−C1〜C12アルコキシ基が挙げられる。
置換基として用いられる1価の複素環基とは、複素環式化合物の複素環から水素原子1個を除いた基をいう。該1価の複素環基の炭素原子数は、好ましくは3〜21、より好ましくは3〜15、さらに好ましくは3〜9である。該1価の複素環基には、1価の芳香族複素環基(ヘテロアリール基)も含まれる。該1価の複素環としては、例えば、チエニル基、ピロリル基、フラニル基、フリル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジル基、ピラジニル基、トリアジニル基、ピロリジル基、ピペリジル基、キノリル基、及びイソキノリル基が挙げられる。
置換基として用いられるアルキリデン基とは、アルカンの同一の炭素原子から水素原子を2個除いた基をいう。該アルキリデン基の炭素原子数は、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜14、さらに好ましくは1〜12、さらにより好ましくは1〜6、特に好ましくは1〜3である。該アルキリデン基としては、例えば、メチリデン基、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、ブチリデン基、sec−ブチリデン基、イソブチリデン基、tert−ブチリデン基、ペンチリデン基、ヘキシリデン基、ヘプチリデン基、オクチリデン基、ノニリデン基、及びデシリデン基が挙げられる。
置換基として用いられるアシル基は、式:−C(=O)−Rで表される基(式中、Rはアルキル基又はアリール基)をいう。Rで表されるアルキル基は直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。Rで表されるアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、及びアントラセニル基が挙げられる。該アシル基の炭素原子数は、好ましくは2〜20、より好ましくは2〜13、さらに好ましくは2〜7である。該アシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、及びベンゾイル基が挙げられる。
置換基として用いられるアシルオキシ基は、式:−O−C(=O)−Rで表される基(式中、Rはアルキル基又はアリール基)をいう。Rで表されるアルキル基は直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。Rで表されるアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、及びアントラセニル基が挙げられる。該アシルオキシ基の炭素原子数は、好ましくは2〜20、より好ましくは2〜13、さらに好ましくは2〜7である。該アシルオキシ基としては、例えば、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基、ピバロイルオキシ基、及びベンゾイルオキシ基が挙げられる。
上述の置換基は、さらに置換基(以下、「二次置換基」という場合がある。)を有していてもよい。二次置換基としては、特に記載のない限り、上述の置換基と同じものを用いてよい。
R3及びR4は、それぞれ独立に水素原子、又は炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、複数のR3及びR4は互いに同一でも異なっていてもよい。R3及びR4は、炭素原子数1〜6のアルキル基であることが好ましい。
R3及びR4が表す炭素原子数1〜6のアルキル基は、炭素原子数1〜4のアルキル基が好ましく、炭素原子数1〜3のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1〜2のアルキル基がさらに好ましい。上記炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。炭素原子数1〜6のアルキル基は、直鎖、分岐鎖、又は環状のいずれであってもよい。炭素原子数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。
R5は、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルキル基、又は置換基を有していてもよい芳香族基を表し、複数のR5は互いに同一でも異なっていてもよい。R5は、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルキル基であることが好ましい。
R5が表す炭素原子数1〜20のアルキル基は、炭素原子数1〜10のアルキル基が好ましく、炭素原子数1〜6のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1〜5のアルキル基がさらに好ましく、炭素原子数1〜3のアルキル基が特に好ましい。上記炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。前記アルキル基は、直鎖、分岐鎖、又は環状のいずれであってもよい。炭素原子数1〜20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられ、メチル基、エチル基、n−プロピル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
R5が表す置換基を有していてもよい芳香族基は、炭素原子数6〜20の芳香族基が好ましく、炭素原子数6〜14の芳香族基がより好ましく、炭素原子数6〜10の芳香族基がさらに好ましい。上記炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。前記芳香族基としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられ、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基が好ましい。
R5が表すアルキル基、芳香族基、及びアミノ基は、置換基を有していてもよい。アルキル基、芳香族基及びアミノ基が有していてもよい置換基としては、R1及びR2が表すアルキレン基が有してもよい置換基と同様である。
Xは、単結合、又は二価の連結基を表し、二価の連結基が好ましい。二価の連結基としては、例えば、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアルキニレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基、置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、ウレア結合、ウレタン結合、−C(=O)−、−S−、−SO−、−NH−で表される基などが挙げられ、これらの基を複数組み合わせた基であってもよい。
置換基を有していてもよいアルキレン基としては、R1及びR2が表すアルキレン基と同様であり、好ましい範囲も同様である。置換基としては、R1及びR2が表すアルキレン基が有してもよい置換基と同様である。
置換基を有していてもよいアルキニレン基としては、炭素原子数2〜60のアルキニレン基が好ましく、炭素原子数2〜40のアルキニレン基がより好ましく、炭素原子数2〜30のアルキニレン基がさらに好ましく、炭素原子数2〜20のアルキニレン基がさらにより好ましく、炭素原子数2〜10のアルキニレン基が特に好ましく、炭素原子数2〜6、又は炭素原子数2〜3である。上記炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。アルキニレン基としては、例えば、エチニレン基、プロピニレン基、ブチニレン基、ペンチニレン基、へキシニレン基、ヘプチニレン基、オクチニレン基が挙げられる。置換基としては、R1及びR2が表すアルキレン基が有してもよい置換基と同様である。
置換基を有していてもよいアリーレン基としては、炭素原子数6〜24のアリーレン基が好ましく、炭素原子数6〜18のアリーレン基がより好ましく、炭素原子数6〜14のアリーレン基がさらに好ましく、炭素原子数6〜10のアリーレン基がさらにより好ましい。上記炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。アリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基等が挙げられる。置換基としては、R1及びR2が表すアルキレン基が有してもよい置換基と同様である。
置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基としては、炭素原子数3〜21のヘテロアリーレン基が好ましく、炭素原子数3〜15のヘテロアリーレン基がより好ましく、炭素原子数3〜9のヘテロアリーレン基がさらに好ましく、炭素原子数3〜6のヘテロアリーレン基がさらにより好ましい。上記炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。ヘテロアリーレン基としては、例えば、フランジイル基、ピリジンジイル基、チオフェンジイル基、キノリンジイル基等が挙げられる。置換基としては、R1及びR2が表すアルキレン基が有してもよい置換基と同様である。
これらの中でも、Xは、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、−NH−、ウレア結合、又はウレタン結合が好ましく、エーテル結合、エステル結合、ウレア結合がより好ましい。
nは0〜3の整数を表し、0又は1が好ましく、0がより好ましい。
mは0〜3の整数を表し、0〜2の整数が好ましい。
一般式(1)で表される化合物は、下記一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。すなわち、一般式(1)で表される化合物の環Aが5員環の芳香族複素環であることが好ましい。
一般式(2):
(一般式(2)中、A
11〜A
15は、それぞれ独立にメチン基、窒素原子、−NH−、酸素原子、又は硫黄原子を表し、R
11及びR
12は、それぞれ独立に単結合、又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルキレン基を表し、R
13及びR
14は、それぞれ独立に水素原子、又は炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、複数のR
13及びR
14は互いに同一でも異なっていてもよい。R
15は、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルキル基、又は置換基を有していてもよい芳香族基を表し、複数のR
15は互いに同一でも異なっていてもよい。X
1は、単結合、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、−NH−、ウレア結合、又はウレタン結合を表し、n
1は0〜3の整数を表し、m
1は0〜3の整数を表す。)
A11〜A15は、それぞれ独立にメチン基、窒素原子、−NH−、酸素原子、又は硫黄原子を表し、A11〜A15で構成される環は芳香族複素環である。A11〜A15の1、2又は4個はヘテロ原子であることが好ましく、A11〜A15は、メチン基、窒素原子、又は−NH−であることが好ましく、1又は2個がヘテロ原子であることがより好ましく、1又は2個が窒素原子又は−NH−であることがさらに好ましい。
A12、A13及びA15はメチン基であることが好ましく、A11及びA14はヘテロ原子又は−NH−であることが好ましい。
R11及びR12は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルキレン基を表す。炭素原子数1〜20のアルキレン基としては、炭素原子数1〜10のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1〜6のアルキレン基がより好ましく、炭素原子数1〜5のアルキレン基がさらに好ましく、炭素原子数1〜4のアルキレン基が特に好ましい。上記炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。また、R11及びR12が表すアルキレン基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよいが、直鎖のアルキレン基が好ましい。R11及びR12は、一般式(1)におけるR1及びR2と同義であり、好ましい範囲も同様である。
R11及びR12が表すアルキレン基が有していてもよい置換基としては、一般式(1)におけるR1及びR2が表すアルキレン基が有してもよい置換基と同様である。
R13及びR14は、それぞれ独立に水素原子、又は炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、複数のR13及びR14は互いに同一でも異なっていてもよい。炭素原子数1〜6のアルキル基としては、炭素原子数1〜4のアルキル基が好ましく、炭素原子数1〜3のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1〜2のアルキル基がさらに好ましい。上記炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。R13及びR14は、一般式(1)におけるR3及びR4と同義であり、好ましい範囲も同様である。
R15は、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルキル基、又は置換基を有していてもよい芳香族基を表し、複数のR15は互いに同一でも異なっていてもよい。炭素原子数1〜20のアルキル基としては、炭素原子数1〜10のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1〜6のアルキル基がさらに好ましく、炭素原子数1〜5のアルキル基がよりさらに好ましく、炭素原子数1〜3のアルキル基が特に好ましい。芳香族基としては、炭素原子数6〜20の芳香族基が好ましく、炭素原子数6〜14の芳香族基がより好ましく、炭素原子数6〜10の芳香族基がさらに好ましい。上記炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。R15は、一般式(1)におけるR5と同義であり、好ましい範囲も同様である。
R15が表すアミノ基、アルキル基、及び芳香族基が有していてもよい置換基としては、一般式(1)におけるR1及びR2が表すアルキレン基が有してもよい置換基と同様である。
X1は、単結合、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、−NH−、ウレア結合、又はウレタン結合を表し、エーテル結合、エステル結合、ウレア結合がより好ましい。
n1は0〜3の整数を表し、0又は1が好ましく、0がより好ましい。
m1は0〜3の整数を表し、0〜2の整数が好ましい。
一般式(1)で表される化合物は、下記一般式(3)で表される化合物であることが好ましい。すなわち、一般式(1)で表される化合物の環Aが5員環の芳香族複素環であるとともに、nが0であることが好ましい。
一般式(3):
(一般式(3)中、A
21〜A
25は、それぞれ独立にメチン基、窒素原子、−NH−、酸素原子、又は硫黄原子を表し、R
21及びR
22は、それぞれ独立に単結合、又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルキレン基を表し、R
23は、水素原子、又は炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、複数のR
23は互いに同一でも異なっていてもよい。R
25は、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルキル基、又は置換基を有していてもよい芳香族基を表し、複数のR
25は互いに同一でも異なっていてもよい。X
2は、単結合、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、−NH−、ウレア結合、又はウレタン結合を表し、m
2は0〜3の整数を表す。)
A21〜A25は、それぞれ独立にメチン基、窒素原子、−NH−、酸素原子、又は硫黄原子を表し、A21〜A25で構成される環は芳香族複素環である。A21〜A25の1、2又は4個はヘテロ原子であることが好ましく、A21〜A25は、メチン基、窒素原子、又は−NH−であることが好ましく、1又は2個がヘテロ原子であることがより好ましく、1又は2個が窒素原子又は−NH−であることがさらに好ましい。
A22、A23、及びA25はメチン基であることが好ましく、A21及びA24はヘテロ原子又は−NH−であることが好ましい。
R21及びR22は、それぞれ独立に単結合、又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルキレン基を表す。炭素原子数1〜20のアルキレン基としては、炭素原子数1〜10のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1〜6のアルキレン基がより好ましく、炭素原子数1〜5のアルキレン基がさらに好ましく、炭素原子数1〜4のアルキレン基が特に好ましい。上記炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。また、R21及びR22が表すアルキレン基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよいが、直鎖のアルキレン基が好ましい。R21及びR22は、一般式(1)におけるR1及びR2と同義であり、好ましい範囲も同様である。アルキレン基が有していてもよい置換基としては、一般式(1)におけるR1及びR2が表すアルキレン基が有してもよい置換基と同様である。
R23は、水素原子、又は炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、複数のR23は互いに同一でも異なっていてもよい。炭素原子数1〜6のアルキル基としては、炭素原子数1〜4のアルキル基が好ましく、炭素原子数1〜3のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1〜2のアルキル基がさらに好ましい。上記炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。R23は、一般式(1)におけるR3と同義であり、好ましい範囲も同様である。
R25は、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルキル基、又は置換基を有していてもよい芳香族基を表し、複数のR25は互いに同一でも異なっていてもよい。炭素原子数1〜20のアルキル基としては、炭素原子数1〜10のアルキル基が好ましく、炭素原子数1〜6のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1〜5のアルキル基がさらに好ましく、炭素原子数1〜3のアルキル基が特に好ましい。芳香族基としては、炭素原子数6〜20の芳香族基が好ましく、炭素原子数6〜14の芳香族基がより好ましく、炭素原子数6〜10の芳香族基がさらに好ましい。上記炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。R25は、一般式(1)におけるR5と同義であり、好ましい範囲も同様である。
R25が表すアミノ基、アルキル基、及び芳香族基が有していてもよい置換基としては、一般式(1)におけるR1及びR2が表すアルキレン基が有してもよい置換基と同様である。
X2は、単結合、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、−NH−、ウレア結合、又はウレタン結合を表し、エーテル結合、エステル結合、ウレア結合がより好ましい。
m2は0〜3の整数を表し、0〜2の整数が好ましい。
一般式(1)で表される化合物は、下記一般式(4)で表される化合物であることが好ましい。
一般式(4):
(一般式(4)中、A
31及びA
32は、それぞれ独立にメチン基、窒素原子、又は−NH−を表し、R
31及びR
32は、それぞれ独立に単結合、又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜10のアルキレン基を表し、R
33及びR
34は、それぞれ独立に水素原子、又は炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、複数のR
33及びR
34は互いに同一でも異なっていてもよい。R
35は、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜10のアルキル基、又は置換基を有していてもよい芳香族基を表し、複数のR
35は互いに同一でも異なっていてもよい。X
3は、単結合、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、−NH−、ウレア結合、又はウレタン結合を表し、m
3は0〜3の整数を表し、n
3は0〜3の整数を表す。)
A31及びA32は、それぞれ独立にメチン基、窒素原子、又は−NH−を表し、A31及びA32の少なくともいずれかが窒素原子又は−NH−を表すことが好ましく、A31及びA32が窒素原子を表すことがより好ましい。
R31及びR32は、それぞれ独立に単結合、又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜10のアルキレン基を表す。R31は、A31と結合していることが好ましい。炭素原子数1〜10のアルキレン基としては、炭素原子数1〜6のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1〜5のアルキレン基がより好ましく、炭素原子数1〜4のアルキレン基がさらに好ましい。上記炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。また、R31及びR32が表すアルキレン基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよいが、直鎖のアルキレン基が好ましい。アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基等が挙げられ、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基が好ましい。
R31及びR32が表すアルキレン基が有していてもよい置換基としては、一般式(1)におけるR1及びR2が表すアルキレン基が有してもよい置換基と同様である。
R33及びR34は、それぞれ独立に水素原子、又は炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、複数のR33及びR34は互いに同一でも異なっていてもよい。炭素原子数1〜6のアルキル基としては、炭素原子数1〜4のアルキル基が好ましく、炭素原子数1〜3のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1〜2のアルキル基がさらに好ましい。上記炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。前記アルキル基は、直鎖、分岐鎖、又は環状のいずれであってもよい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。
R35は、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜10のアルキル基、又は置換基を有していてもよい芳香族基を表し、複数のR35は互いに同一でも異なっていてもよい。炭素原子数1〜10のアルキル基としては、炭素原子数1〜6のアルキル基が好ましく、炭素原子数1〜5のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1〜3のアルキル基がさらに特に好ましい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられ、メチル基、エチル基、n−プロピル基が好ましく、メチル基がより好ましい。芳香族基としては、炭素原子数6〜20の芳香族基が好ましく、炭素原子数6〜14の芳香族基がより好ましく、炭素原子数6〜10の芳香族基がさらに好ましい。芳香族基としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられ、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基が好ましい。上記炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。
R35が表すアルキル基及び芳香族基が有していてもよい置換基としては、一般式(1)におけるR1及びR2が表すアルキレン基が有してもよい置換基と同様である。
X3は、単結合、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、−NH−、ウレア結合、又はウレタン結合を表し、エーテル結合、エステル結合、ウレア結合がより好ましい。
m3は0〜3の整数を表し、0〜2の整数が好ましい。
n3は0〜3の整数を表し、0又は1が好ましく、0がより好ましい。
一般式(1)で表される化合物は、下記一般式(5)で表される化合物であることが好ましい。
一般式(5):
(一般式(5)中、A
41及びA
42は、それぞれ独立にメチン基、窒素原子、又は−NH−を表し、R
41及びR
42は、それぞれ独立に単結合、又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜10のアルキレン基を表し、R
43は、水素原子、又は炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、複数のR
43は互いに同一でも異なっていてもよい。R
45は、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜10のアルキル基、又は置換基を有していてもよい芳香族基を表し、複数のR
45は互いに同一でも異なっていてもよい。X
4は、単結合、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、−NH−、ウレア結合、又はウレタン結合を表し、m
4は0〜3の整数を表す。)
A41及びA42は、それぞれ独立にメチン基、窒素原子、又は−NH−を表し、A41及びA42の少なくともいずれかが窒素原子、又は−NH−を表すことが好ましく、A41及びA42が窒素原子を表すことがより好ましい。
R41及びR42は、それぞれ独立に単結合、又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜10のアルキレン基を表す。R41は、A41と結合していることが好ましい。炭素原子数1〜10のアルキレン基としては、炭素原子数1〜6のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1〜5のアルキレン基がより好ましく、炭素原子数1〜4のアルキレン基がさらに好ましい。上記炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。また、R41及びR42が表すアルキレン基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよいが、直鎖のアルキレン基が好ましい。アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基等が挙げられ、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基が好ましい。
R41及びR42が表すアルキレン基が有していてもよい置換基としては、一般式(1)におけるR1及びR2が表すアルキレン基が有してもよい置換基と同様である。
R43は、水素原子、又は炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、複数のR43は互いに同一でも異なっていてもよい。炭素原子数1〜6のアルキル基としては、炭素原子数1〜4のアルキル基が好ましく、炭素原子数1〜3のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1〜2のアルキル基がさらに好ましい。上記炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等が挙げられ、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。
R45は、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜10のアルキル基、又は置換基を有していてもよい芳香族基を表し、複数のR45は互いに同一でも異なっていてもよい。炭素原子数1〜10のアルキル基としては、炭素原子数1〜6のアルキル基が好ましく、炭素原子数1〜5のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1〜3のアルキル基がさらに好ましい。上記炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられ、メチル基、エチル基、n−プロピル基が好ましく、メチル基がより好ましい。芳香族基としては、炭素原子数6〜20の芳香族基が好ましく、炭素原子数6〜14の芳香族基がより好ましく、炭素原子数6〜10の芳香族基がさらに好ましい。芳香族基としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられ、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基が好ましい。
R45が表すアルキル基及び芳香族基が有していてもよい置換基としては、一般式(1)におけるR1及びR2が表すアルキレン基が有してもよい置換基と同様である。
X4は、単結合、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、−NH−、ウレア結合、又はウレタン結合を表し、エーテル結合、エステル結合、ウレア結合がより好ましい。
m4は0〜3の整数を表し、0〜2の整数が好ましい。
一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(6)で表される化合物であることが好ましい。
一般式(6):
(一般式(6)中、A
51は、窒素原子、又は−NH−を表し、R
51及びR
52は、それぞれ独立に単結合、又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜6のアルキレン基を表し、R
53及びR
54は、それぞれ独立に水素原子、又は炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、複数のR
53及びR
54は互いに同一でも異なっていてもよい。R
55は、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜6のアルキル基、又は置換基を有していてもよい芳香族基を表し、複数のR
55は互いに同一でも異なっていてもよい。X
5は、単結合、エステル結合、又はウレア結合を表し、m
5は0〜3の整数を表し、n
5は0〜3の整数を表す。)
A51は、窒素原子、又は−NH−を表し、窒素原子を表すことが好ましい。
R51及びR52は、それぞれ独立に単結合、又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜6のアルキレン基を表す。R51は、A51と結合していることが好ましい。炭素原子数1〜6のアルキレン基としては、炭素原子数1〜5のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1〜4のアルキレン基がさらに好ましい。上記炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。また、R51及びR52が表すアルキレン基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよいが、直鎖のアルキレン基が好ましい。アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基等が挙げられ、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基が好ましい。
R51及びR52が表すアルキレン基が有していてもよい置換基としては、一般式(1)におけるR1及びR2が表すアルキレン基が有してもよい置換基と同様である。
R53及びR54は、それぞれ独立に水素原子、又は炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、複数のR53及びR54は互いに同一でも異なっていてもよい。炭素原子数1〜6のアルキル基としては、炭素原子数1〜4のアルキル基が好ましく、炭素原子数1〜3のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1〜2のアルキル基がさらに好ましい。上記炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。
R55は、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜6のアルキル基、又は置換基を有していてもよい芳香族基を表し、複数のR55は互いに同一でも異なっていてもよい。炭素原子数1〜6のアルキル基としては、炭素原子数1〜5のアルキル基が好ましく、炭素原子数1〜3のアルキル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。上記炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、メチル基、エチル基、n−プロピル基が好ましく、メチル基がより好ましい。芳香族基としては、炭素原子数6〜20の芳香族基が好ましく、炭素原子数6〜14の芳香族基がより好ましく、炭素原子数6〜10の芳香族基がさらに好ましい。芳香族基としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられ、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基が好ましい。上記炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。
R55が表すアルキル基及び芳香族基が有していてもよい置換基としては、一般式(1)におけるR1及びR2が表すアルキレン基が有してもよい置換基と同様である。
X5は、単結合、エーテル結合、エステル結合、又はウレア結合を表し、エーテル結合、エステル結合、ウレア結合がより好ましい。
m5は0〜3の整数を表し、0〜2の整数が好ましい。
n5は0〜3の整数を表し、0又は1が好ましく、0がより好ましい。
一般式(1)で表される化合物は、下記一般式(7)で表される化合物であることが好ましい。
一般式(7):
(一般式(7)中、A
61は、窒素原子、又は−NH−を表し、R
61及びR
62は、それぞれ独立に単結合、又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜6のアルキレン基を表し、R
63は、水素原子、又は炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、複数のR
63は互いに同一でも異なっていてもよい。R
65は、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜6のアルキル基、又は置換基を有していてもよい芳香族基を表し、複数のR
65は互いに同一でも異なっていてもよい。X
6は、単結合、エーテル結合、エステル結合、又はウレア結合を表し、m
6は0〜3の整数を表す。)
A61は、窒素原子、又は−NH−を表し、窒素原子を表すことが好ましい。
R61及びR62は、それぞれ独立に単結合、又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜6のアルキレン基を表す。R61は、A61と結合していることが好ましい。炭素原子数1〜6のアルキレン基としては、炭素原子数1〜5のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1〜4のアルキレン基がさらに好ましい。上記炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。また、R61及びR62が表すアルキレン基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよいが、直鎖のアルキレン基が好ましい。アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基等が挙げられ、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基が好ましい。
R61及びR62が表すアルキレン基が有していてもよい置換基としては、一般式(1)におけるR1及びR2が表すアルキレン基が有してもよい置換基と同様である。
R63は、水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、複数のR63は互いに同一でも異なっていてもよい。炭素原子数1〜6のアルキル基としては、炭素原子数1〜4のアルキル基が好ましく、炭素原子数1〜3のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1〜2のアルキル基がさらに好ましい。上記炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。
R65は、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜6のアルキル基、又は置換基を有していてもよい芳香族基を表し、複数のR65は互いに同一でも異なっていてもよい。炭素原子数1〜6のアルキル基としては、炭素原子数1〜5のアルキル基が好ましく、炭素原子数1〜3のアルキル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。上記炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、メチル基、エチル基、n−プロピル基が好ましく、メチル基がより好ましい。芳香族基としては、炭素原子数6〜20の芳香族基が好ましく、炭素原子数6〜14の芳香族基がより好ましく、炭素原子数6〜10の芳香族基がさらに好ましい。芳香族基としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられ、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基が好ましい。上記炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。
R65が表すアルキル基及び芳香族基が有していてもよい置換基としては、一般式(1)におけるR1及びR2が表すアルキレン基が有してもよい置換基と同様である。
X6は、単結合、エーテル結合、エステル結合、又はウレア結合を表し、エーテル結合、エステル結合、ウレア結合がより好ましい。
m6は0〜3の整数を表し、0〜2の整数が好ましい。
一般式(1)で表される化合物の具体例としては、例えば、3−(1−イミダゾリル)プロピルカルバモイル−3−アミノプロピル−トリメトキシシラン、3−(1−イミダゾリル)エチルカルバモイル−3−アミノプロピル−トリエトキシシラン、3−(1−イミダゾリル)プロピルカルバモイル−3−アミノブチル−トリエトキシシラン、(N−(2−ヒドロキシプロピルトリメトキシシリルエーテル)−イミダゾール、(N−(2−ヒドロキシプロピルトリエトキシシリルエーテル)−イミダゾール、3−(1−イミダゾリル)プロピルカルバモイル−3−アミノプロピル−トリエトキシシラン、(N−(2−ヒドロキシプロピルトリメトキシシリルエーテル)−イミダゾール、下記構造式で表される化合物等が挙げられる。なお、一般式(1)で表される化合物は、上記具体例に限定されるものではない。
Meはメチル基を表す。
一般式(1)で表される化合物は、市販品を用いてもよく、公知の種々の方法により合成してもよい。
例えば、一般式(1)で表される、3−(1−イミダゾリル)プロピルカルバモイル−3−アミノプロピル−トリエトキシシランは以下のように合成することができる。
(3−イソシアナトプロピル)トリエトキシシランとN−(3−アミノプロピル)イミダゾールを1,4−ジオキサン中に加え、12時間反応させる。その後、溶剤を減圧留去することで、3−(1−イミダゾリル)プロピルカルバモイル-3-アミノプロピル-トリエトキシシランを生成することができる。なお、(3−イソシアナトプロピル)トリエトキシシランに代えて、他の原料を使用することで、一般式(1)で表される種々の化合物を合成することができる。
本発明の分子接合剤において、一般式(1)で表される化合物の含有量としては、分子接合剤全体として、0.01質量%〜100質量%が好ましく、0.05質量%〜50質量%がより好ましく、0.1質量%〜10質量%がさらに好ましい。0.01質量%〜100質量%の範囲内とすることで、耐熱性、耐湿性に優れた分子接合剤を提供可能となる。
<その他の成分>
本発明の分子接合剤は、一般式(1)で表される化合物の他にその他の成分を含んでいてもよい。
その他の成分としては、過酸化物、ビスマレイミド類化合物等が挙げられ、これらは複数含んでいてもよく、これらその他の成分は、公知のものを使用することができる。
過酸化物としては、ジクミルパーオキサイド(DCP)、t−ブチルペルオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン等が挙げられる。ビスマレイミド類化合物としては、m−フェニルビスマレイミド等が挙げられる。
本発明の分子接合剤がその他の成分を含有する場合、その他の成分の含有量としては、分子接合剤全体として、0.01質量%〜90質量%が好ましく、0.05質量%〜50質量%がより好ましく、0.1質量%〜10質量%がさらに好ましい。
[分子接合剤を用いた接合方法]
本発明の分子接合剤は、一般式(1)で表される化合物を含む。斯かる分子接合剤を用いた接合方法は、分子接合剤を含む分子接合層を、第1の材料及び/又は第2の材料(以下、第1の材料及び/又は第2の材料を単に「第1の材料等」ともいう。)の表面に形成し、第1及び第2の材料を接合することを特徴とする。
以下、第1及び第2の材料を接合したもの、すなわち第1の材料、分子接合層、及び第2の材料の順で有する材料(部材)を単に「複合体」という場合がある。
従来、第1及び第2の材料を接合するには、第1及び第2の材料の間に接着剤層又は粘着剤層を介して物理的な力(例えば分子間力)で接合、固定していた。しかし、接着剤層、粘着剤層は固定するためにある程度の厚みが必要であるため、薄型化の要求を満たすことは困難であった。
本発明では、一般式(1)で表される化合物を含む分子接合剤を用いることで、物理的な力ではなく化学的な力で接合、固定することが可能となる。すなわち、各材料と一般式(1)で表される化合物との化学的な結合力により接合、固定することが可能となる。これにより、薄型化の要求を満たすことが可能となる。
本発明の分子接合剤を用いた接合方法は、まず、分子接合剤を含む分子接合層を、第1の材料等の表面に形成する。分子接合層は、第1の材料及び第2の材料の少なくともいずれかの材料の表面に形成すればよく、第1の材料及び第2の材料の両表面に分子接合層を形成することが好ましい。
分子接合層は、例えば、所定の溶剤に分子接合剤を所定の濃度で溶解させた分子接合剤溶液に所定の条件(温度、時間等)で第1の材料等に塗布又は浸漬し、その後取り出された第1の材料等を所定の条件で加熱、乾燥させる等行うことにより、第1の材料等の表面に分子接合層を形成することができる。
塗布方法としては、特に制限されるものではなく、公知の方法を用いて塗布することができ、例えばダイコーター等を用いて塗布することができる。
分子接合剤溶液の塗布量としては、特に制限されるものではないが、例えば0.01mg/cm2〜100mg/cm2が好ましく、1mg/cm2〜10mg/cm2がより好ましく、3mg/cm2〜5mg/cm2がさらに好ましい。
浸漬方法(浸漬条件)としては、分子接合剤溶液の温度、時間及び濃度によって異なり、一定濃度では、温度が低い場合は時間を長くし、また温度が高い場合は時間を短くする必要があるが、例えば、0〜100℃の溶液の温度で、1秒〜60分間の浸漬することが好ましい。
また、加熱、乾燥としては、特に制限されるものではなく、公知の方法を用いることができ、例えば、オーブン、ドライヤー、高周波加熱等を用いる方法を挙げることができる。条件としては、分子接合剤溶液中の溶剤濃度等によって異なるが、例えば、20〜250℃で1秒〜120分間行うことが好ましく、50〜200℃で1〜60分間がより好ましく、さらには80〜180℃で1〜30分間が好ましい。上記条件がこの範囲にあることで、生産性が高く経済的にも好ましい。
分子接合剤を溶解させる溶剤としては特に制限はないが、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、酢酸エチルなどのエステル類、塩化メチレンなどのハロゲン化物、ブタン、ヘキサンなどのオレフィン類、テトラヒドロフラン、ブチルエーテルなどのエーテル類、ベンゼン、トルエンなどの芳香族類、ジメチルホルムアミド、メチルピロリドンなどのアミド類などが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて混合溶媒として使用してもよい。
これらの中でも、水とアルコール類との混合溶剤であることが好ましい。水とアルコール類の混合比率(質量比)としては(水:アルコール類)、0:100〜99.5:0.5が好ましく、20:80〜80:20がより好ましく、40:60〜60:40がさらに好ましい。
本発明の分子接合剤は、一般式(1)で表される化合物が所定の濃度となるように溶剤に溶解させることが好ましい。一般式(1)で表される化合物の濃度としては、0.01質量%〜90質量%が好ましく、0.05質量%〜50質量%がより好ましく、0.1質量%〜10質量%がさらに好ましい。濃度を上記範囲内にすることで、後述する分子接合層を形成しやすくなる。
分子接合層を形成するにあたり、第1の材料等の材質に応じて前処理を行ってもよい。詳細は、第1の材料等の表面にOH基がない場合は、前処理によりOH基を導入しておくことが好ましい。また、第1の材料等がOH基を有していても、分子接合剤との反応性を向上させるために前処理を行ってもよい。前処理としては、コロナ放電処理、大気圧プラズマ処理、UV照射処理等を挙げることができる。
これらの前処理としては、公知の方法を用いることができるが、例えば、コロナ放電処理であれば、「コロナ処理」、日本接着学会誌、Vol.36,No.3,126(2000)に記載された方法、大気圧プラズマ処理であれば、「プラズマ処理」、日本接着学会誌、Vol.41,No.1,4(2005)に記載された方法を好適に用いることができる。これらの処理を行うことで、第1の材料等の表面に、多くの−OH基、−COOH基、−C=O基等が生成する、又は表面に現れるようになる(L.J.Gerenser:J.Adhesion Sci. Technol.7,1019(1997)参照)。一般に、第1の材料等の表面は大気中の汚れ成分を吸収して汚染しているが、上記のような前処理を行うことによって、洗浄と同時にOH基を第1の材料等の表面に発生させることも可能である。
コロナ放電処理は、第1の材料等の材質によって適宜変更することができるが、例えば、コロナ表面改質装置(例えば、春日電気(株)製のコロナ表面改質評価装置TEC−4AX)を用いて、50〜200Wの出力、0.1〜5m/minの速度で1〜20往復の条件で行うことができる。
大気圧プラズマ処理は、第1の材料等の材質によって適宜変更することができるが、例えば、大気圧プラズマ発生装置を用いて、プラズマ処理速度10〜100mm/s、電源:200又は220V AC(30A)、圧縮エア:0.5MPa(1NL/min)、10kHz/300W〜5GHz、電力:100W〜400W、照射時間:0.1〜60秒の条件で行うことができる。
UV照射は、第1の材料等の材質によって適宜変更することができるが、例えば、UV−LED照射装置を用いて、波長:200〜400nm、電源:100V AC、光源ピーク照度:400〜3000mW/cm2、照射時間:1〜60秒の条件で行うことができる。
なお、第1の材料等の材質によっては、前処理にて分子接合剤との反応に十分なOH基が得られない場合もあり、OH基を増幅させる方法として、OH基含有高分子材料、OH基含有感光性材料を使用してもよい。また、予めアルカリ脱脂液等による洗浄や第1の材料等の表面の虚弱酸化膜を除去、又は/及び微細な凹凸を作製する目的で塩基性薬品を使用していてもよい。
なお、分子接合剤溶液と第1の材料等の表面の反応が不充分な場合には、上記の浸漬や塗布と加熱を1〜20回程度(好ましくは1〜10回)繰り返すこともできる。すなわち、1回の浸漬、塗布及び加熱時間を短縮し、反応回数を増やす方が有効である場合もある。また、第1の材料等の一部に分子接合剤を処理することも、適宜複合体の用途に応じて行うことができる。一部に分子接合剤を処理する方法としては特に限定されないが、マスキングにより第1の材料等(基板)の一部を保護したり、マスクを利用した露光による分子接合剤の分解等が挙げられる。
第1の材料としては、特に制限はないが、金属、セラミックス、樹脂、及びゴムから選択されることが好ましい。
金属としては、形状は特に制限はなく、例えば、板状、金属箔、金属積層板、曲面形状体、球体、これらの積層体等が挙げられる。金属材料としては、例えばAl、Mg、Zn、Cu、Sn、Ag、Ni、Si、Au、Fe、Pt、Mo、W、真鍮、これらの合金等を挙げることができる。また、これらの金属のうち、Cu、Ag、Ni、Au、Ni/Fe、Co、Fe、Ptをめっきにより形成することもできる。また、Cu、ステンレス、Al及び/又はこれらの酸化物からなる群から選択される少なくとも一種から成る金属であってもよい。
セラミックスとしては、形状は特に制限はなく、例えば、箔、板状、曲面形状体、球体、これらの積層体等が挙げられる。セラミックス材料としては、例えば、Al、Mg、Zn、Cu、Sn、Ag、Ni、Siの酸化物等を挙げることができる。具体的には、例えばアルミナ、チタン酸バリウム、ジルコニア、フェライト、炭化珪素、窒化珪素、酸化亜鉛、チタン酸ジルコン酸鉛、窒化ホウ素、ガラス、ヒドロキシアパタイト等が挙げられる。
樹脂及びゴムとしては、形状は特に制限はなく、例えば、フィルム、箔、板状、曲面形状体、球体、これらの積層体等が挙げられる。樹脂及びゴム材料としては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、石油樹脂、ポリスチレン、s−ポリスチレン、クロマン・インデン樹脂、テルペン樹脂、スチレン・ジビニルベンゼン共重合体、ABS樹脂、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリルニトリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、ポリシアノアクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル・エチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン・エチレン共重合体、フッ化ビニリデン・プロピレン共重合体、1,4−トランスポリブタジエン、ポリオキシメチレン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、フェノール・ホルマリン樹脂、クレゾール・フォルマリン樹脂、レゾルシン樹脂、メラミン樹脂、キシレン樹脂、トルエン樹脂、グリプタル樹脂、変性グリプタル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アリルエステル樹脂、ポリカーボネート、6−ナイロン、6,6−ナイロン又は6,10−ナイロンなどのポリアミド、ポリベンズイミダゾール、ポリアミドイミド、ケイ素樹脂、シリコンゴム、シリコーン樹脂、フラン樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリジメチルフェニレンオキサイド、ポリフェニレンオキサイド又はポリジメチルフェニレンオキサイドとトリアリルイソシアヌルブレンド物、(ポリフェニレンオキサイド又はポリジメチルフェニレンオキサイド、トリアリルイソシアヌル、パーオキサイド)ブレンド物、ポリキシレン、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PPI、カプトン)、ガラスエポキシ、BTレジン、熱硬化型ポリフェニレンエーテル、液晶樹脂とこれら複数材料のブレンド物などの高分子材料と架橋物などのフィルム等を挙げることができる。熱による変形を防ぎ、形状を保持するためや補強するためには、金属粉、金属繊維、セラミックス、セラミックス繊維、カーボンブラック、炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、湿式及び乾式シリカなどの充填剤やレーヨン、ナイロン、ポリエステル、ビニロン、スチール、ケブラー繊維(デュポン社の登録商標)、炭素繊維、ガラス繊維などの繊維や布を含有させたり、過酸化物などの架橋剤や多官能性モノマーを加えて三次元化して使用してもよい。また、これら樹脂及びゴムは、無機充填材、硬化剤、有機充填材、硬化促進剤、熱可塑性樹脂、難燃剤等の添加剤をさらに含んでいてもよい。
ゴムは、加硫ゴムであってもよく、未加硫ゴムであってもよい。加硫ゴムは、ガラス転移温度が−20℃以下の線状重合体の群の中から選ばれる一種又は二種以上のエラストマーと、添加剤(例えば、架橋剤、架橋促進剤など)とを含む組成物を、0.1〜1200分の間、0〜300℃の温度に保持することで得られる。付加型シリコーンゴムや縮合型シリコーンゴムなどは低温で長時間加熱して得られる場合がある。温度は、一般的には、60〜180℃の場合が多い。
これらのうち、第1の材料としては金属が好ましく、中でも銅箔がより好ましい。
第2の材料は特に制限はないが、金属、セラミックス、樹脂、及びゴムから選択されることが好ましい。
金属、セラミックス、樹脂、及びゴムとしては、第1の材料における金属、セラミックス、樹脂、及びゴムと同様である。第2の材料における金属は、めっき材料が好ましく、めっき材料としては、形状は特に制限はなく、例えば、板状、金属箔、金属積層板、曲面形状体、球体、これらの積層体等が挙げられる。めっき材料としては、例えば、Cu、Ag、Ni、Au、Ni/Fe、Co、Fe、Ptをめっきにより形成したもの等が挙げられる。第2の材料におけるゴムは、未加硫ゴムが好ましい。
第2の材料としては、樹脂が好ましく、中でもポリイミド、PETがより好ましい。
第1の材料等の表面に形成した分子接合層の厚みとしては、特に限定されないが、例えば、1×10−3〜1×102μmであることが好ましく、1×10−3〜1μmであることがより好ましい。分子接合層の厚みを上記範囲内とすることで、薄型化の要求を満たすようになる。
次に、第1及び第2の材料を接合する。詳細は、第1及び/又は第2の材料の表面の全面又は一部に形成させた分子接合層同士を接触させ、加圧下、加熱により接合して形成することができる。
接合としては、例えば溶融接合が好ましく、詳細は、油圧式プレス、真空熱プレス等を挙げることができる。加熱により第1の材料等が溶融及び/又は変形、更に界面の反応を促進させて接合させる場合は、第1の材料等の物性に依存するため決めることはできないが、通常60〜350℃、好ましくは100〜330℃、更に好ましくは150〜250℃で、1〜3600秒間、好ましくは10〜600秒間加熱して複合体を得ることが好ましい。圧力としては、好ましくは0.1MPa〜50MPa、より好ましくは0.5MPa〜20MPa、さらに好ましくは1MPa〜10MPaである。加熱方法としては、オーブン、ドライヤー、高周波加熱等を挙げることができる。
本発明では、真空熱プレスにて加圧することが好ましく、例えば、北川精機(株)製のVH1−1603を用いることができる。
本発明の接合方法により接合された複合体の室温条件下(25℃、湿度40%、1atm)におけるピール強度としては特に制限はないが、0.50kgf/cm以上が好ましく、0.70kgf/cm以上がより好ましい。通常、前記ピール強度は、複合体が破壊する程度(材料破壊)であり、10kgf/cm以下等とし得る。ピール強度は、後述する方法にて測定することが可能である。
本発明の接合方法により接合された複合体を130℃、湿度85%の雰囲気下に100時間静置した後のピール強度としては特に制限はないが、0.40kgf/cm以上が好ましく、0.45kgf/cm以上がより好ましく、0.50kgf/cm以上がさらに好ましい。通常、130℃、湿度85%の雰囲気下に100時間静置した後のピール強度としては、10kgf/cm以下、5kgf/cm以下、3kgf/cm以下とし得る。130℃、湿度85%の雰囲気下に100時間静置した後のピール強度は、後述する方法にて測定することが可能である。これにより、耐熱性、耐湿性に優れる分子接合剤を提供することができる。
[電子部材]
本発明は、本発明の分子接合剤を含む分子接合層を有する電子部材に関する。本発明の分子接合剤は、従来の接着剤や粘着剤に代わるものなので、従来より接着剤や粘着剤を使用していた電子部材に用いることができる。また、本発明の分子接合剤を用いた分子接合層は、従来の接着剤層や粘着剤層よりも薄いため、電子部材全体の薄型化に貢献することが可能となる。また、ねじ等の留め具も不要であることから、電子部材全体の薄型化とともに、軽量化に貢献することも可能となる。
なお、本明細書において、電子部材とは、配線板、半導体装置、ウエアラブル機器等の電子部材、IT分野で用いる電子部材、パワー半導体やLED−PKG等の電子部材を含めた総称であり、電子機器に用いる全ての部材を含めたものである。
本発明の分子接合剤を用いることで、例えば、PETやポリイミド等の樹脂上に配線を形成することが可能になるので、ウエアラブル機器等の電子部材に用いることができる。
本発明の分子接合剤は、耐熱性、耐湿性に優れ、密着力も屈強であることから、例えば、樹脂と銅箔とを接合することで銅回路パターンと樹脂間をフラット化することができるので、高周波伝送ロスを低減することができ、これにより、IT分野で用いる電子部材として使用することができる。
また、本発明の分子接合剤を用いた分子接合層は厚みが極めて薄いため、ヒートシンクへの放熱効率が高くなるのでパワー半導体やLED−PKG等の電子部材の放熱ソリューションとして、熱伝導性シートの代替として使用することができる。
また、本発明では、電子部材以外に、自動車分野、材料分野、ロボット分野、建築建設分野、環境エネルギー分野等の分野で用いる部材でも適用可能である。
例えば、自動車分野においては、自動車で用いる部品には、ブラケット、コンソールリッド・ラゲージボード操作をアシストするヒンジ、ホイールキャップを固定するリテーナ、引張ねじりコイルばね等の金属や、自動車用内・外装射出成形品、サンバイザ関連、ラゲージボードハンドル等の樹脂との複合材料が多数存在し、これら金属と樹脂とを接合・固定するために本発明の分子接合剤を用いることができる。
本発明の分子接合剤を用いた分子接合層は厚みが極めて薄いため、例えば、カメラレンズにおけるレンズ同士の接合に本発明の分子接合剤を用いることで、透過率や屈折率のマッチングなどが不要となる。また、本発明の分子接合剤を用いた分子接合層は厚みが極めて薄いため、光取出しフィルムや、ディスプレイに用いる複屈折ポリマーの接合に本発明の分子接合剤を用いることで複屈折がほぼ0となるので、光の取り出し効率の減少が少なくなったり、ディスプレイの輝度を向上させたりすることができる。
本発明の分子接合剤は、様々な材料を接合することができるので、例えば、家屋、建材、木材等の工業用接着剤の代わりに用いることもできる。具体的には、例えば、壁紙を張り合わせる際の工業用接着剤の代わりに用いたり、ガラスの保護等を目的として、保護フィルムや紫外線防止フィルムを張り合わせる際の工業用接着剤の代わりに用いたりすることができる。この場合、本発明の分子接合剤は耐熱性、耐湿性に優れることから、耐久性やコストダウンに貢献することができる。
また、本発明の分子接合剤は、金属と樹脂とを接合することもできるので、例えば、スポーツ用のスパイクや自動車、自転車の装飾(例えばクロムメッキ等の助剤、エンブレムなどの金属の接着等)にも用いることができる。この場合、ねじ等が不要なので、軽量化に貢献することができる。
<配線板>
本発明の分子接合剤を含む分子接合層を有する電子部材の特に好適な例として、配線板が挙げられる。本発明の配線板は、絶縁層、分子接合剤を含む分子接合層、及び配線層の順で有する。すなわち、本発明の配線板は、本発明の分子接合剤を用いて絶縁層と配線層とを接合する。
絶縁層は、プリプレグが硬化された硬化プリプレグであることが好ましい。プリプレグの材料、すなわち硬化プリプレグの材料として用いられる樹脂組成物は、上記第1又は第2の材料の具体例として挙げた材料を用いることができ、一例は、エポキシ樹脂に無機充填材、硬化剤、有機充填材、硬化促進剤、熱可塑性樹脂、難燃剤等を含んでいる樹脂組成物である。
配線層は、上記第1又は第2の材料の具体例として挙げた材料を用いることができ、例えば、ガラスエポキシ、金属、ポリエステル、ポリイミド、BTレジン、熱硬化型ポリフェニレンエーテル等の基板が挙げられる。
<半導体装置>
本発明の半導体装置は、本発明の配線板を含むことを特徴とし、本発明の配線板を用いて、半導体装置を製造することができる。本発明の配線板を用いることにより、高い半田リフロー温度を採用する実装工程においても、絶縁層の層間剥離を有利に抑制することができ、絶縁層と導体層とのピール強度の安定性の高さも相俟って、高いリフロー信頼性を実現し得る。
かかる半導体装置としては、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
本発明の半導体装置は、配線板の導通箇所に、部品(半導体チップ)を実装することにより製造することができる。「導通箇所」とは、「配線板における電気信号を伝える箇所」であって、その場所は表面であっても、埋め込まれた箇所であってもいずれでも構わない。また、半導体チップは半導体を材料とする電気回路素子であれば特に限定されない。
本発明の半導体装置を製造する際の半導体チップの実装方法は、半導体チップが有効に機能しさえすれば、特に限定されないが、具体的には、ワイヤボンディング実装方法、フリップチップ実装方法、バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法、異方性導電フィルム(ACF)による実装方法、非導電性フィルム(NCF)による実装方法、などが挙げられる。ここで、「バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法」とは、「半導体チップをプリント配線板の凹部に直接埋め込み、半導体チップとプリント配線板上の配線とを接続させる実装方法」のことである。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。なお、以下の記載において、「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
[3−(1−イミダゾリル)プロピルカルバモイル−3−アミノプロピル−トリエトキシシラン(IPCAT)の合成]
IPCAT:
Etはエチル基を表す。
(3−イソシアナトプロピル)トリエトキシシラン2.6gと、N−(3−アミノプロピル)イミダゾール1.4gとを1,4−ジオキサン20ml中に加え、12時間反応させた。反応後、溶剤を減圧留去することで、3−(1−イミダゾリル)プロピルカルバモイル−3-アミノプロピル-トリエトキシシラン(IPCAT)を3.0g得た。
[複合体の作製]
<実施例1>
基板として、銅箔(Cu、150×150mm、厚み30μm、ニラコ(株)製)を用い、コロナ表面改質評価装置(春日電気(株)製、TEC−4AX)を用いて、100Wの出力、1m/minの速度で10往復コロナ放電処理を行い、OH基化処理基板を作製した。IPCATを水/エタノール(50質量%/50質量%)混合溶媒に2質量%となるよう溶解し、この溶液を得られた基板に分子接合層として塗布後、110℃、5分間オーブン中で加熱し、反応性固体表面基板を得た。
ポリイミド(150×150mm、東レ(株)製 カプトン200EN)にコロナ表面改質評価装置(春日電気(株)製、TEC−4AX)を用いて、100Wの出力、1m/minの速度で10往復コロナ放電処理を行い、OH基化処理基板を作製した。得られた基板に分子接合層として上記IPCATの水/エタノール(50質量%/50質量%)溶液を塗布後、110℃、5分間オーブン中で加熱し、反応性固体表面基板を得た。
得られた基板2枚の分子接合剤処理面を、真空熱プレス機(北川精機(株)製、VH1−1603)を用いて180℃、6.5MPa、10分の条件下で銅箔とポリイミドとを熱プレスし、実施例1の複合体を得た。
<実施例2>
実施例1において、ポリイミド基板をPET基板(150×150mm、東レ(株)製、R80)に変更したこと以外は実施例1と同様にして実施例2の複合体を得た。
<実施例3>
実施例1において、IPCATの水/エタノール(50質量%/50質量%)溶液を、N−(2−ヒドロキシプロピルトリメトキシシリルエーテル)−イミダゾール(IS−1000、JX日鉱日石金属(株)製)の2質量%の水/エタノール(50質量%/50質量%)溶液に変更したこと以外は実施例1と同様にして実施例3の複合体を得た。N−(2−ヒドロキシプロピルトリメトキシシリルエーテル)−イミダゾールの構造式は以下の通りである。
Meはメチル基を表す。
<実施例4>
実施例3において、ポリイミド基板をPET基板(150×150mm、東レ(株)製、R80)に変更したこと以外は実施例3と同様にして実施例4の複合体を得た。
<実施例5>
実施例1において、IPCATの水/エタノール(50質量%/50質量%)溶液を、3−(1−(2-メチルイミダゾリル))プロピルカルバモイル-3-アミノプロピル-トリメトキシシラン(2MUSIZ、四国化成工業(株)製)の2質量%の水/エタノール(50質量%/50質量%)溶液に変更したこと以外は実施例1と同様にして実施例5の複合体を得た。2MUSIZの構造は以下の通りである。
Meはメチル基を表す。
<実施例6>
実施例5において、2MUSIZの2質量%の水/エタノール(50質量%/50質量%)溶液を、2MUSIZの2質量%の水/エタノール(80質量%/20質量%)溶液に変更したこと以外は実施例5と同様にして実施例6の複合体を得た。
<実施例7>
実施例5において、ポリイミド基板をPET基板(150×150mm、東レ(株)製、R80)に変更したこと以外は実施例5と同様にして実施例7の複合体を得た。
<比較例1>
実施例1において、IPCATの水/エタノール溶液を、N,N’−ビス(2−アミノエチル)−6−(3−トリエトキシシリルプロピル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジアミン(DTEDEA)の水溶液(2質量%)に変更したこと以外は実施例1と同様にして比較例1の複合体を得た。DTEDEAの構造式は以下の通りである。
Etはエチル基を表す。
<比較例2>
実施例1において、IPCATの水/エタノール溶液を、アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学(株)製、KBE−903)のエタノール溶液(2質量%)に変更したこと以外は実施例1と同様にして比較例2の複合体を得た。KBE−903の構造は以下の通りである。
<比較例3>
実施例1において、IPCATの水/エタノール溶液を、多官能アミノシラン(信越化学(株)製、X12−972F)のエタノール溶液(2質量%)に変更したこと以外は実施例1と同様にして比較例3の複合体を得た。
[評価方法]
<ポリイミド層の引き剥がし強さ(ピール強度)の測定>
接合させたポリイミド基板又はPET基板に、幅10mm、長さ100mmの部分の切込みをいれ、この一端を剥がしてつかみ具((株)ティー・エス・イー製、オートコム型試験機、AC−50C−SL)で掴み、室温(25℃、湿度40%、1atm)中にて、50mm/分の速度で垂直方向に15mmを引き剥がした時の荷重(kgf/cm)を測定した。
<高温高湿下(HAST)後のポリイミド層の引き剥がし強さ(ピール強度)の測定>
作製した各複合体を130℃、湿度85%の雰囲気下に100時間静置した。接合させたポリイミド層又はPET層に、幅10mm、長さ100mmの部分の切込みをいれ、この一端を剥がしてつかみ具((株)ティー・エス・イー製、オートコム型試験機、AC−50C−SL)で掴み、室温(25℃、湿度40%、1atm)にて、50mm/分の速度で垂直方向に15mmを引き剥がした時の荷重(kgf/cm)を測定した。
1)材料破壊とは、ピール強度が十分に高く、引きはがす際に複合体が破壊してしまうことを意味する。
上記表から、実施例1、3、5の複合体は、室温条件下のピール強度だけでなく、高温高湿下後のピール強度も高いことから、耐熱性、耐湿性に優れることがわかる。
一方、従来のトリアジンを含む分子接合剤を用いた比較例1の複合体は、室温条件下のピール強度は実施例1〜7の複合体と同様に優れているが、高温高湿下後のピール強度が低いことから、耐熱性、耐湿性が実施例の複合体よりも劣ることがわかる。
また、本発明の分子接合剤を分子接合層に含まない比較例2〜3の複合体は、室温条件下のピール強度だけでなく、高温高湿下後のピール強度も実施例1〜7の複合体よりも劣ることがわかる。
また、水/エタノール(50質量%/50質量%)溶液を使用した実施例5と、水/エタノール(80質量%/20質量%)溶液を使用した実施例6を比較すると、実施例5のほうが室温条件下のピール強度が優れることから、混合溶媒の混合比としては、水とアルコール類の混合比率(質量比)(水:アルコール類)が40:60〜60:40が好ましいと考えられる。